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  • 特許-角度可変スパナ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】角度可変スパナ
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/02 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
B25B13/02 M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021131586
(22)【出願日】2021-08-12
(65)【公開番号】P2023026016
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博則
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3123414(JP,U)
【文献】登録実用新案第3116359(JP,U)
【文献】特開2019-118970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0163403(US,A1)
【文献】特開2006-305305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/00
B25B 23/16
B25G 3/38
B25B 1/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掛口部と把持部との組み合わせ角度を変更可能な角度可変スパナであって、
前記掛口部には、歯車が固定され、
前記把持部には、開口部が形成され、
前記開口部の周囲には、前記歯車の歯形に噛み合う歯形が形成され、
前記開口部に対する前記歯車の角度を変更することによって前記開口部に前記歯車を嵌め合わせて前記把持部に対する前記掛口部の前記組み合わせ角度を変更し、
前記掛口部には、前記歯車が回転自在に支持され、また、第1凹部と、第2凹部と、が形成され、
前記歯車には、第1ピン孔と、第2ピン孔と、が形成され、
前記第1ピン孔及び前記第1凹部にピンを差し込むことによって前記歯車が前記掛口部に固定される第1位置は、前記第2ピン孔及び前記第2凹部にピンを差し込むことによって前記歯車が前記掛口部に固定される第2位置から前記歯車の歯形の1/2ピッチだけずれた位置である、
角度可変スパナ。
【請求項2】
掛口部と把持部との組み合わせ角度を変更可能な角度可変スパナであって、
前記掛口部には、歯車が固定され、
前記把持部には、開口部が形成され、
前記開口部の周囲には、前記歯車の歯形に噛み合う歯形が形成され、
前記開口部に対する前記歯車の角度を変更することによって前記開口部に前記歯車を嵌め合わせて前記把持部に対する前記掛口部の前記組み合わせ角度を変更し、
前記開口部に前記歯車を嵌め合わせた状態で前記開口部及び前記歯車を一体に被装するケースを備える、
角度可変スパナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掛口部と把持部との組み合わせ角度を変更可能な角度可変スパナに関する。
【背景技術】
【0002】
スパナ(レンチ)は、ボルト又はナットを回すことによって、対象物を締め付けて固定する、又は対象物を緩めて外す作業(締緩作業)を行うための工具である。スパナは、締緩されるボルトヘッド幅又はナット幅と同一幅に開口された掛口部と、作業者が把持する把持部とを有している。
【0003】
スパナは、ボルト又はナットを適正トルクにて締め付けるために所定長さを有している。しかし、狭い場所において締緩作業を行う場合には、所定長さを有するスパナでは作業性が悪い。そのため、例えば、特許文献1には、掛口部と把持部とを回動軸で連結した角度可変スパナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-284751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空調装置の室外機に設けられるリニア膨張弁のコイルの取替作業では、コイルを固定しているナットの締緩作業が行われる。このとき、リニア膨張弁の周囲の配管及びその他の機器が干渉するため、スパナを掛ける角度が限られる、又はスパナを回動操作するスペースが十分にない非常に狭い場所において締緩作業を行う必要がある。
【0006】
従来、上述したリニア膨張弁のコイルの取替作業等では、異なる掛口角度のスパナを複数本用意して、スパナを複数回取り替えながら締緩作業を行う、或いは、市販されていない掛口角度のスパナを自作して締緩作業を行うことによって対応しているものの作業性が悪かった。
【0007】
また、上述したリニア膨張弁のコイルの取替作業等では、例えばラチエット式スパナを用いて締緩作業を行うことも考えられる。しかし、ラチエットの遊び代がラチエットの回転可能な角度よりも大きい場合もあるため作業性が悪かった。
【0008】
さらに、上述したリニア膨張弁のコイルの取替作業等では、例えば多方向から差し込み可能なギザ形状の開口を有するスパナを用いて締緩作業を行うことも考えられる。しかし、このようなスパナでは、コイルを固定するナットに面接触しかできないため適正トルクにて締め付けることが困難であるため作業性が悪かった。
【0009】
本発明の目的は、スパナを掛ける角度が限られる、又はスパナを回動操作するスペースが十分にない非常に狭い場所において締緩作業性を向上させることができる角度可変スパナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る角度可変スパナは、掛口部と把持部との組み合わせ角度を変更可能な角度可変スパナであって、掛口部には、歯車が固定され、把持部には、開口部が形成され、開口部の周囲には、歯車の歯形に噛み合う歯形が形成され、開口部に対する歯車の角度を変更することによって開口部に歯車を嵌め合わせて把持部に対する掛口部の組み合わせ角度を変更することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る角度可変スパナにおいて、掛口部には、歯車が回転自在に支持され、また、第1凹部と、第2凹部と、が形成され、歯車には、第1ピン孔と、第2ピン孔と、が形成され、第1ピン孔及び第1凹部にピンを差し込むことによって歯車が掛口部に固定される第1位置は、第2ピン孔及び第2凹部にピンを差し込むことによって歯車が掛口部に固定される第2位置から歯車の歯形の1/2ピッチだけずれた位置であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る角度可変スパナにおいて、開口部に歯車を嵌め合わせた状態で開口部及び歯車を一体に被装するケースを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る角度可変スパナによれば、掛口部と把持部との組み合わせ角度を小刻みに変更可能な構成とすることによって、スパナを掛ける角度が限られる、又はスパナを回動操作するスペースが十分にない非常に狭い場所において締緩作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の一例である角度可変スパナを示す平面図である。
図2】実施形態の一例である角度可変スパナを示す側面図である。
図3】実施形態の他の一例である角度可変スパナの歯車を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0016】
図1及び図2を用いて、実施形態の一例である角度可変スパナ10の構成について説明する。
【0017】
角度可変スパナ10は、後述する掛口部11と後述する把持部12との組み合わせ角度が変更可能なスパナである。角度可変スパナ10によれば、掛口部11と把持部12との組み合わせ角度を小刻みに変更可能な構成とすることによって、通常のスパナを掛ける角度が限られる、又は通常のスパナを回動操作するスペースが十分にない非常に狭い場所において締緩作業性を向上させることができる。角度可変スパナ10は、例えば、空調装置の室外機に設けられるリニア膨張弁のコイルの取替作業等において有効に用いられる。
【0018】
角度可変スパナ10は、締緩されるボルトヘッド幅又はナット幅と同一幅に開口された掛口部11と、作業者が把持する把持部12と、把持部12の開口部16に後述する雄歯車15を嵌め合わせた状態で開口部27及び雄歯車15を一体に被装するケース13とを備える。
【0019】
掛口部11は、把持部12に対し組み合わせ角度が変更可能であると共に、把持部12に対し所定の組み合わせ角度で固定される。掛口部11は、Y字状の本体14と、本体14の基端部に固定される歯車としての雄歯車15とを有する。
【0020】
本体14の先端部には、締緩されるボルトヘッド又はナットに嵌め合わせる口部14Aが形成される。口部14Aは、締緩されるボルトヘッド幅又はナット幅と同一幅に開口されている。本体14の基端部には、雄歯車15が固定されている。また、本体14の基端部は、円弧状に形成されている。
【0021】
雄歯車15は、後述する把持部12の開口部16の雌歯車に嵌め合わされる。雄歯車15の歯形のピッチは、全周を変更最小角度で乗じた数とする。変更最小角度とは、掛口部11が把持部12に対し変更可能な最小の組み合わせ角度である。
【0022】
把持部12は、短冊状であって、作業者が把持すると共に、掛口部11を所定の組み合わせ角度で固定する。把持部12の先端部には、開口部16が形成される。開口部16には、雄歯車15が嵌合するように雄歯車15と噛み合う雌歯形が形成される。把持部12の基端部の側面には、ケース13を係止する中空の半球状の凸部17が形成される。
【0023】
ケース13は、上述したように、把持部12の開口部16に雄歯車15を嵌め合わせた状態で開口部16及び雄歯車15を一体に被装する。ケース13は、基端側及び先端側が開放された箱状に形成され、把持部12を短尺方向にスライド可能に構成される。 ケース13の側面には、把持部12の凸部17が係止する係止部18が設けられる。係止部18は、凸部17の外側に嵌合するように半球状に形成される。
【0024】
ケース13によれば、開口部16から雄歯車15が抜けることを防止して、締緩作業中に把持部12から掛口部11が外れることを防止することができる。また、ケース13によれば、スライドさせるのみで開口部16及び雄歯車15を露出させることができ、角度可変スパナ10の組み合わせ角度の変更を簡単に行うことができる。
【0025】
ここで、角度可変スパナ10の角度変更方法について説明する。まず、把持部12に係止されているケース13を把持部12の基端側にスライドさせる。次に、把持部12の開口部16から掛口部11の雄歯車15を取り外し、掛口部11と把持部12とが狙いの組み合わせ角度となるように開口部16に雄歯車15を嵌め合わせる。そして、ケース13を把持部12の先端側にスライドさせて雄歯車15及び開口部16を一体に被装する。
【0026】
図3を用いて、実施形態の他の一例である角度可変スパナ20の構成について説明する。
【0027】
角度可変スパナ20は、後述する掛口部21と把持部との組み合わせ角度が変更可能なスパナである。角度可変スパナ20は、上述した角度可変スパナ10に対し、掛口部21に対し歯車25を回動自在に支持し、ピン30によって歯車25を固定する構成を加えた例である。
【0028】
角度可変スパナ20によれば、上述した角度可変スパナ10における変更最小角度(歯車25によって掛口部21が把持部に対し変更可能な最小角度)よりも小さい角度で掛口部21と把持部との組み合わせ角度を変更することができる。これにより、通常のスパナを掛ける角度が限られる、又は通常のスパナを回動操作するスペースが十分にない非常に狭い場所において締緩作業の作業性を向上させることができる。
【0029】
以下では、角度可変スパナ20において、上述した角度可変スパナ10に対し加えた構成について説明し、上述した角度可変スパナ10と同様の構成については説明を省略する。
【0030】
角度可変スパナ20は、上述した角度可変スパナ10と同様に、締緩されるボルトヘッド幅又はナット幅と同一幅に開口された掛口部21と、作業者が把持する把持部(図示なし)と、把持部の開口部に歯車25を嵌め合わせた状態で開口部及び歯車25を一体に被装するケース(図示なし)と、歯車25を掛口部21に固定するピン30とを備える。
【0031】
角度可変スパナ20の掛口部21には、歯車25が回動自在に支持されている。また掛口部21には、ピン30が差し込まれる第1凹部21Aと、ピン30が差し込まれる第2凹部21Bとが形成されている。歯車25には、ピン30が貫通する第1ピン孔25Aと、ピン30が貫通する第2ピン孔25Bとが形成されている。なお、ピン30を第1凹部21A又は第2凹部21Bに螺合する構成であってもよい。
【0032】
ここで、第1ピン孔25A及び第1凹部21Aにピン30を差し込むことによって歯車26が掛口部21に固定される第1位置は、第2ピン孔25B及び第2凹部21Bにピン30を差し込むことによって歯車26が掛口部21に固定される第2位置から歯車25の歯形の1/2ピッチだけずれた位置である。
【0033】
これにより、歯車25の歯数によって決定される変更最小角度よりも小さな角度で掛口部21と把持部との組み合わせ角度を変更することができる。この結果、上述した角度可変スパナ10よりも小さい角度で掛口部21と把持部との組み合わせ角度を変更することができる。なお、通常使用では、第1ピン孔25A又は第2ピン孔25Bのどちらかにピン30を差し込むことによって歯車25が掛口部21に固定される。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
10 角度可変スパナ、11 掛口部、12 把持部、13 ケース、14 本体、
14A 口部、15 雄歯車(歯車)、16 開口部、17 凸部、18 係止部、20 角度可変スパナ、21 掛口部、21A 第1ピン孔、21B 第2ピン孔、
25 歯車、25A 第1凹部、25B 第2凹部、30 ピン
図1
図2
図3