(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】手摺り用保持具及び手摺り装置
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20241113BHJP
A47K 17/02 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
E04F11/18
A47K17/02 A
(21)【出願番号】P 2021132389
(22)【出願日】2021-08-16
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠司
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-215010(JP,A)
【文献】特開平09-158436(JP,A)
【文献】特開平10-179438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
A47K 13/00-17/02
A61H 1/00- 5/00
A61H 99/00
A63B 1/00-26/00
A47K 3/02- 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に沿って配置される手摺りを解放可能に保持する手摺り用保持具であって、
前記壁面に設置される支持部と、
前記支持部に揺動可能に設けられ、所定位置に前記手摺りを保持する保持位置と前記手摺りを解放している解放位置を切り替えるアーム部と、
前記アーム部を前記解放位置に向けて付勢する付勢手段と、
前記付勢手段の付勢力に抗して前記アーム部を前記保持位置にロックし、前記支持部に設けられた操作部の操作により前記アーム部のロックを解除するロック機構と、
前記アーム部が前記保持位置から前記解放位置に向かって揺動する際に前記手摺りを前記所定位置から押し出す押出し部と、
を有する手摺り用保持具。
【請求項2】
前記押出し部は、前記アーム部と一体に形成されている、請求項1に記載の手摺り用保持具。
【請求項3】
前記アーム部が1つ設けられ、
前記支持部には、前記押出し部を挟んで前記アーム部と対向する非可動の延出部が設けられている、請求項1又は請求項2に記載の手摺り用保持具。
【請求項4】
前記アーム部が一対設けられ、
前記押出し部が一対の前記アーム部の何れか又は双方に形成されている、請求項1又は請求項2に記載の手摺り用保持具。
【請求項5】
前記ロック機構は、前記アーム部側に付勢されて前記アーム部の係止部に係合可能なストッパを有し、
前記保持位置に位置する前記アーム部において、前記ストッパの前記係止部への係合により該アーム部をロックし、
前記操作部が操作されて前記ストッパが付勢力に抗して移動し、前記ストッパの前記係止部への係合が解除されると、前記アーム部のロックが解除される、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の手摺り用保持具。
【請求項6】
前記操作部は、前記支持部において前記ストッパと交わり、前記支持部に対して押し込まれたときに前記ストッパを前記係止部への係合を解除する方向へ移動させる、請求項5に記載の手摺り用保持具。
【請求項7】
前記ストッパは、前記操作部と摺動し前記操作部との間で荷重を伝達する傾斜面を有する、請求項6に記載の手摺り用保持具。
【請求項8】
前記操作部は、前記支持部に設けられる支点軸に揺動可能に支持されるレバーであり、前記支持部内に配置される前記レバーの先端部が前記ストッパとされ、
前記支持部外に配置される前記レバーの後端部が操作されると、前記レバーが揺動して前記ストッパの前記係止部への係合が解除される、請求項5に記載の手摺り用保持具。
【請求項9】
前記操作部は、前記支持部において前記ストッパの進退方向と交差し且つ傾動可能に設けられ、
前記支持部外に配置される前記操作部の端部が操作されると、前記操作部が傾動して前記ストッパを前記係止部への係合を解除させる方向へ移動させる、請求項5に記載の手摺り用保持具。
【請求項10】
壁面に沿う所定位置に配置される手摺りと、
請求項1~請求項9の何れか1項に記載の手摺り用保持具と、
を有する手摺り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺り用保持具及び手摺り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、身体障害者や足腰の弱くなった高齢者のトイレの便宜(座ったり、立ち上がったりする際に身体を支えるための便宜)を図るべく、腰掛便器の後壁に可動式手摺りを設けることが提案されている。この可動式手摺りは、広いスペースが必要とならないようにすべく、その基部が後壁に支持されて上下方向に揺動可能とされており、使用時には、その可動式手摺りは、前方に突出するように張り出された状態となる。その一方、非使用時には、可動式手摺りは、後壁に沿うように収納配置され、その収納配置状態は、後壁に取付けられている保持具に手摺りを保持させることにより維持される。
【0003】
この手摺りの保持に用いられる保持具として、取付面に設置される支持部と、一対のアーム部と、アーム部を保持位置にロックする制御片と、を有する手摺り用保持具が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の従来例では、手摺り用保持具による手摺りの保持を解除する際には、アーム部のロックを解除する動作を行いながら、手摺りを取り出す動作を行わなければならない。したがって、両手を使わなければ手摺りを取り出すことができない。
【0006】
本発明は、片手でアーム部のロックを解除して手摺りを取り出すことができる手摺り用保持具及び手摺り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る手摺り用保持具は、壁面に沿って配置される手摺りを解放可能に保持する手摺り用保持具であって、前記壁面に設置される支持部と、前記支持部に揺動可能に設けられ、所定位置に前記手摺りを保持する保持位置と前記手摺りを解放している解放位置を切り替えるアーム部と、前記アーム部を前記解放位置に向けて付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記アーム部を前記保持位置にロックし、前記支持部に設けられた操作部の操作により前記アーム部のロックを解除するロック機構と、前記アーム部が前記保持位置から前記解放位置に向かって揺動する際に前記手摺りを前記所定位置から押し出す押出し部と、を有する。
【0008】
この手摺り用保持具では、アーム部が揺動して、所定位置に手摺りを保持する保持位置と手摺りを解放している解放位置を切り替える。ロック機構は、付勢手段の付勢力に抗してアーム部を保持位置にロックする。また、ロック機構は、支持部に設けられた操作部の操作によりアーム部のロックを解除する。すると、アーム部は、付勢手段の付勢力により保持位置から解放位置に向かって揺動する。この際、押出し部が手摺りを所定位置から押し出す。つまり、アーム部に保持された手摺りを操作部の操作により解放すると共に、該手摺りを取り出し易い位置に押し出すことができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る手摺り用保持具において、前記押出し部が、前記アーム部と一体に形成されている。
【0010】
この手摺り用保持具では、押出し部は、アーム部と一体に形成されているので、構造が簡素となり、コストが低減されると共に、動作の確実性が向上する。
【0011】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る手摺り用保持具において、前記アーム部が1つ設けられ、前記支持部には、前記押出し部を挟んで前記アーム部と対向する非可動の延出部が設けられている。
【0012】
この手摺り用保持具では、揺動するアーム部と非可動の延出部により手摺りの保持が可能である。揺動するアーム部は1つであるので、構造が簡素となり、コストが低減される。
【0013】
第4の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る手摺り用保持具において、前記アーム部が一対設けられ、前記押出し部が一対の前記アーム部の何れか又は双方に形成されている。
【0014】
この手摺り用保持具では、一対のアーム部により手摺りの保持が可能である。アーム部が1つの場合と比較して、手摺りに対する保持能力を高めることができる。
【0015】
第5の態様は、第1~第4の態様の何れか1態様に係る手摺り用保持具において、前記ロック機構は、前記アーム部側に付勢されて前記アーム部の係止部に係合可能なストッパを有し、前記保持位置に位置する前記アーム部において、前記ストッパの前記係止部への係合により該アーム部をロックし、前記操作部が操作されて前記ストッパが付勢力に抗して移動し、前記ストッパの前記係止部への係合が解除されると、前記アーム部のロックが解除される。
【0016】
この手摺り用保持具では、ロック機構のストッパが付勢されており、該ストッパがアーム部の係止部に係合することで、アーム部が保持位置にロックされる。ストッパは、操作部の操作により付勢力に抗して移動し、アーム部の係止部との係合が解除される。これにより、アーム部が付勢手段の付勢力により保持位置から解放位置に向かって揺動する。
【0017】
また、この手摺り用保持具では、アーム部が解放位置から保持位置に向かって揺動すると、ストッパがアーム部に押されて後退するが、係止部がストッパを乗り越えると、ストッパが前進して係止部に係合することにより、アーム部が保持位置にロックされるように形成することができる。
【0018】
第6の態様は、第5の態様に係る手摺り用保持具において、前記支持部において前記ストッパと交わり、前記支持部に対して押し込まれたときに前記ストッパを前記係止部への係合を解除する方向へ移動させる。
【0019】
この手摺り用保持具では、操作部が支持部に対して押し込まれたときにストッパを係止部への係合を解除する方向へ移動させる。ストッパとアーム部の係止部との係合が解除されると、アーム部が付勢手段の付勢力により保持位置から解放位置に向かって揺動する。つまり、支持部に対する操作部の押込みにより、アーム部のロック状態を解除できる。
【0020】
第7の態様は、第6の態様に係る手摺り用保持具において、前記ストッパが、前記操作部と摺動し前記操作部との間で荷重を伝達する傾斜面を有する
【0021】
この手摺り用保持具では、操作部に外力を作用させ初期位置から押し込むと、操作部がストッパの傾斜面と摺動し、操作部の押込み荷重がストッパに伝達される。この押込み荷重により、ストッパが付勢力に抗してアーム部から離れる方向に移動し、ストッパとアーム部の係止部との係合が解除される。
【0022】
また、操作部に対する外力がなくなると、ストッパが付勢力によりアーム部側へ移動する。このとき、ストッパの傾斜面が操作部と摺動し、該付勢力が操作部に伝達され、操作部が初期位置に復帰する。これにより、アーム部が解放位置から保持位置に向かって揺動する際に、ストッパを係止部に係合させることが可能となる。
【0023】
第8の態様は、第5の態様に係る手摺り用保持具において、前記操作部が、前記支持部に設けられる支点軸に揺動可能に支持されるレバーであり、前記支持部内に配置される前記レバーの先端部が前記ストッパとされ、前記支持部外に配置される前記レバーの後端部が操作されると、前記レバーが揺動して前記ストッパの前記係止部への係合が解除される。
【0024】
この手摺り用保持具では、支持部外に配置されるレバーの後端部に外力を作用させて該後端部が操作されると、レバーが揺動し、ストッパが付勢力に抗して後退して、ストッパの係止部への係合が解除される。
【0025】
また、レバーの後端部に対する外力がなくなると、ストッパが付勢力によりアーム部側へ移動し、レバーが初期位置に復帰する。これにより、アーム部が解放位置から保持位置に向かって揺動する際に、ストッパを係止部に係合させることが可能となる。
【0026】
第9の態様は、第5の態様に係る手摺り用保持具において、前記操作部は、前記支持部において前記ストッパの進退方向と交差し且つ傾動可能に設けられ、前記支持部外に配置される前記操作部の端部が操作されると、前記操作部が傾動して前記ストッパを前記係止部への係合を解除させる方向へ移動させる。
【0027】
この手摺り用保持具では、操作部の端部が操作されると、操作部が傾動してストッパを係止部への係合を解除させる方向へ移動させ、ストッパとアーム部の係止部との係合が解除される。これにより、アーム部が解放位置から保持位置に向かって揺動する際に、ストッパを係止部に係合させることが可能となる。
【0028】
また、操作部に対する外力がなくなると、ストッパが付勢力によりアーム部側へ移動し、操作部が初期位置に復帰する。
【0029】
第10の態様に係る手摺り装置は、壁面に沿う所定位置に配置される手摺りと、第1~第9の態様の何れか1態様に係る手摺り用保持具と、を有する。
【0030】
この手摺り装置では、手摺りの不使用時に該手摺りを手摺り用保持具により保持したり、手摺りの使用時に該手摺りを解放したりすることができる。また、手摺りを解放する際には、アーム部に保持された手摺りを操作部の操作により解放すると共に、該手摺りを取り出し易い位置に押し出すことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、片手でアーム部のロックを解除して手摺りを取り出すことができる手摺り用保持具及び手摺り装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】手摺り装置において、手摺りが手摺り用保持具に保持された状態を示す斜視図である。
【
図2】手摺り装置において、手摺りが使用位置にある状態を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る手摺り用保持具を示す分解正面図である。
【
図4】(A)は、第1実施形態に係る手摺り用保持具において、アーム部が保持位置にロックされたときの内部状態を示す段面図である。(B)は、(A)における4B-4B矢視断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る手摺り用保持具において、押込み部材の操作によりストッパとアーム部の係止部との係合が解除されたときの内部状態を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る手摺り用保持具において、アーム部が解放位置にあるときの内部状態を示す断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る手摺り用保持具において、圧縮ばねによりストッパがアーム部側へ移動し、これに伴い押込み部材が初期位置に復帰したときの内部状態を示す断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る手摺り用保持具において、アーム部が保持位置にロックされたときの内部状態を示す断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る手摺り用保持具において、押込み部材の操作によりストッパとアーム部の係止部との係合が解除され、アーム部が解放位置にあるときの内部状態を示す断面図である。
【
図12】第3実施形態に係る手摺り用保持具において、アーム部が保持位置にロックされたときの内部状態を示す断面図である。
【
図13】第3実施形態に係る手摺り用保持具において、押込み部材の操作によりストッパとアーム部の係止部との係合が解除され、アーム部が解放位置にあるときの内部状態を示す断面図である。
【
図14】(A)は、第4実施形態に係る手摺り用保持具において、アーム部が保持位置にロックされたときの内部状態を示す断面図である。(B)は、第4実施形態に係る手摺り用保持具において、アーム部が保持位置にロックされたときの内部状態を示す斜視図である。
【
図15】(A)は、第4実施形態に係る手摺り用保持具において、レバーの左側の操作によりストッパとアーム部の係止部との係合が解除され、アーム部が解放位置にあるときの内部状態を示す断面図である。(B)は、第4実施形態に係る手摺り用保持具において、レバーの左側の操作によりストッパとアーム部の係止部との係合が解除され、アーム部が解放位置にあるときの内部状態を示す斜視図である。
【
図16】(A)は、第4実施形態に係る手摺り用保持具において、レバーの右側の操作によりストッパとアーム部の係止部との係合が解除され、アーム部が解放位置にあるときの内部状態を示す断面図である。(B)は、第4実施形態に係る手摺り用保持具において、レバーの右側の操作によりストッパとアーム部の係止部との係合が解除され、アーム部が解放位置にあるときの内部状態を示す斜視図である。
【
図17】第5実施形態に係る手摺り用保持具において、アーム部が保持位置にロックされたときの内部状態を示す断面図である。
【
図18】第5実施形態に係る手摺り用保持具において、押込み部材の操作によりストッパとアーム部の係止部との係合が解除され、アーム部が解放位置にあるときの内部状態を示す断面図である。
【
図19】第6実施形態に係る手摺り用保持具において、アーム部が保持位置にロックされたときの内部状態を示す断面図である。
【
図20】第6実施形態に係る手摺り用保持具において、押込み部材の操作によりストッパとアーム部の係止部との係合が解除され、アーム部が解放位置にあるときの内部状態を示す断面図である。
【
図21】第7実施形態に係る手摺り用保持具において、アーム部が保持位置にロックされたときの内部状態を示す断面図である。
【
図23】第7実施形態に係る手摺り用保持具において、押込み部材の操作によりストッパとアーム部の係止部との係合が解除され、アーム部が解放位置にあるときの内部状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0034】
[第1実施形態]
図1、
図2において、本実施形態に係る手摺り装置1は、手摺り12と、手摺り用保持具10とを有している。
【0035】
(手摺り)
手摺り12は、壁面の一例としての後壁14に沿って取り付けられる可動式手摺りである。後壁14は、例えば腰掛便器(図示せず)に対する壁である。なお、壁面は後壁14に限られず、例えば床面であってもよい。この手摺り12は、その基端側が水平回動軸心を中心として回動可能に、例えば後壁14に支持された跳ね上げ式とされている。
【0036】
手摺り12は、使用時には、後壁14から突出して腰掛便器の側方を通るように延び、非使用時には、後壁14に沿うような収納位置に配置される。具体的には、この手摺り12は、互いに並設された状態で延びる第1手摺り部21及び第2手摺り部22を備えている。第1手摺り部21は、使用時に水平状態をもって後壁14から突出するようにすべく、ほぼ真っ直ぐに延びており、第2手摺り部22は、使用時に、第1手摺り部21の下方側に配置されている。この第1手摺り部21及び第2手摺り部22は、その先端側が、湾曲した連結部24により連結され、その第1手摺り21の基端側は回転部材26に結合されている。回転部材26は、後壁14に取付けられた支持部材28に回転可能に支持されている。また、一例として、第1手摺り部21及び第2手摺り部22の基端側は、連結部材32により連結されている。
【0037】
支持部材28の下側には、化粧部材34が隣接して設けられている。一例として、支持部材28と化粧部材34の輪郭は連続している。化粧部材34には、切欠き34Aが設けられている。手摺り12の使用時に、第2手摺り部22の基端は、化粧部材34の切欠き34Aに入り込むようになっている。なお、手摺り12の形状や構造は、本実施形態及び図示される例には限られない。
【0038】
(手摺り用保持具)
図1から
図7において、手摺り用保持具10は、手摺り12を解放可能に保持する手摺り用保持具であって、支持部16と、アーム部18と、付勢手段の一例としての引張りばね36と、ロック機構38と、押出し部42と、を有している。
【0039】
(支持部)
図3に示されるように、支持部16は、壁面の一例としての後壁14に設置される部位であり、例えば本体44と蓋46を備えている。正面視における本体44と蓋46の輪郭は、ほぼ同様となっている。
【0040】
本体44には、後壁14への固定部となる例えば一対の取付け部44Aが、該本体44の幅方向(
図3の左右方向)に張り出して形成されている。取付け部44Aには、ねじ等(図示せず)を通すための貫通孔44Bが形成されている。本体44の取付け部44Aと反対側の端部には、非可動の突出部44C及び延出部44Dが形成され、該突出部44C及び延出部44Dの間に手摺り12を受け入れる受け部44Eが形成されている。受け部44Eは、本体44の先端側に開口している。本体44の先端側とは、取付け部44Aを基準とした本体44の高さ方向の上方(
図3の上方)である。
【0041】
本体44における突出部44C側には、アーム部18を枢支する支持軸44Fと、引張りばね36の一端36Aが係止される引掛け部44Gとが設けられている。引張りばね36は、アーム部18を解放位置に向けて付勢する付勢手段である。引掛け部44Gは、支持軸44Fよりも本体44の幅方向外側に位置している。また、本体44の幅方向における例えば中央部には、ロック機構38における後述するストッパ48の移動を案内するガイド部44Hが設けられている。ガイド部44Hは例えばガイド溝であり、本体44の高さ方向に延びている。本体44の高さ方向におけるガイド部44Hの基端側(取付け部44A側)には、後述する圧縮ばね52の一端が当接するばね受け44Jが設けられている。
【0042】
更に、本体44には、後述する押込み部材54の移動を案内するガイド部44M,44Nが設けられている。ガイド部44M,44Nは例えばガイド溝であり、本体44の幅方向に延びている。ガイド部44M,44Nの案内方向は、ガイド部44Hの案内方向と例えば直交している。ガイド部44Mはガイド部44H側に位置し、該ガイド部44Hに通じている。ガイド部44Nはガイド部44Mに連なると共にガイド部44Hと反対側に位置し、本体44の側部に開口している。また、ガイド部44Nは、押込み部材54の形状に合わせて、本体44の高さ方向においてガイド部44Mよりも幅広に形成されて、ガイド部44Mとガイド部44Nとの間が段差部44Pとなっている。
図5に示されるように、押込み部材54に設けられた張出し部54Aが段差部44Pに当接し、本体44内への更なる押し込みが規制される。
図4(B)に示されるように、本体44の側部には、押込み部材54に設けられた張出し部54Aと係合し、本体44からの押込み部材54の突出量を定める抜け止め部44Kが形成されている。なお、蓋46にも同様の抜け止め部46Kが形成されている。
【0043】
上記のように、本体44には各種の可動部品が取り付けられ、これらの各種可動部品を支持部16に保持するために、蓋46が取り付けられている。蓋46の取付けには、例えばねじ(図示せず)が用いられる。一例として、蓋46側から本体44側への締結点56が1箇所設けられ、本体44側から蓋46側への締結点58が2箇所設けられている。
【0044】
(アーム部)
アーム部18は、支持部16に揺動可能に設けられ、所定位置に手摺りを保持する保持位置と手摺りを解放している解放位置を切り替える可動部材である。本実施形態では、アーム部18が1つ設けられている。アーム部18の基端側には、支持軸44Fに嵌挿される取付け穴18Aと、引張りばね36の他端36Bが係止される引掛け部18Bが設けられている。引掛け部18Bは、取付け穴18Aよりも本体44の幅方向外側に配置されている。これにより、アーム部18は、引張りばね36により、支持軸44Fを中心として、先端部18Cが延出部44Dから離れる方向(保持位置から解放位置に向かう方向)に回転付勢されている。このときのアーム部18は、本体44の側壁に設けられたストッパ面44Lに当たることで、更なる回転が制限される。
【0045】
アーム部18の先端部18Cは、本体44の幅方向内側に向かって張り出しており、アーム部18が保持位置にあるときに手摺り12が手摺り用保持具10から離脱することを抑制するようになっている(
図4)。
【0046】
アーム部18の基端側には、押出し部42が一体に形成されている。押出し部42は、アーム部18が保持位置から解放位置に向かって揺動する際に手摺り12を所定位置から押し出す部位である。押出し部42は、例えば、後述するストッパ48の進退方向の前方側(圧縮ばね52による付勢方向)に位置している。支持部16の本体44の延出部44Dは、押出し部42を挟んでアーム部18と対向している。
【0047】
また、アーム部18の基端側には、ストッパ48を受ける略L字形のストッパ受け18Eが設けられており、このストッパ受け18Eの一部が保持位置においてストッパ48と係合する係止部18Dとなっている。アーム部18が保持位置にあるとき、ストッパ48がストッパ受け18Eに当接することにより、このストッパ48の上端側部が係止部18Dと本体44の幅方向に対向して当接し、引張りばね36の付勢力によるアーム部18の回転を抑制している。また、ストッパ48が後退してストッパ受け18Eから離脱することで、アーム部18の係止部18Dとストッパ48の上端側部との係合が解除されるようになっている。
【0048】
(ロック機構)
ロック機構38は、引張りばね36の付勢力に抗してアーム部18を保持位置にロックし、支持部16に設けられた操作部としての押込み部材54の操作によりアーム部18のロックを解除する機構である。このロック機構38は、ストッパ48を有している。
【0049】
このストッパ48は、例えば圧縮ばね52によりアーム部18側に付勢され、上述したように、ストッパ48の前方端側部がアーム部18の係止部18Dに係合可能とされている。また、ストッパ48は、押込み部材54の操作により圧縮ばね52の付勢力に抗して移動し、ストッパ48の前方端側部とアーム部18の係止部18Dとの係合が解除される。ストッパ48の移動は、本体44のガイド部44Hにより案内される。
【0050】
ストッパ48には、ばね受け48A及び傾斜面48Bが設けられている。傾斜面48Bは、操作部としての押込み部材54と摺動し押込み部材54との間で荷重を伝達する面であり、ストッパ48の進退方向の前方側(
図3の上方側)かつ押込み部材54側に形成されている。ばね受け48Aは、ストッパ48の進退方向の後方側(
図3の下方側)に設けられている。ばね受け48Aには、圧縮ばね52の他端が当接している。
【0051】
押込み部材54は、支持部16においてストッパ48と交わり、支持部16に対して押し込まれたときにストッパ48を係止部18Dへの係合を解除する方向へ移動させる部材である。具体的には、押込み部材54は、ストッパ48の進退方向と交差する方向、例えば支持部16の正面視でストッパ48の進退方向と直交する方向に進退し、支持部16に対して押し込まれたときにストッパ48とアーム部18の係止部18Dとの係合を解除させる部材である。押込み部材54の移動は、本体44のガイド部44M,44Nにより案内される。
【0052】
押込み部材54は、ストッパ48と摺動しストッパ48との間で荷重を伝達する傾斜面54Bを有する。この傾斜面54Bは、例えば押込み部材54のうち、ガイド部44Mに案内される軸部54Cの先端の下面側(ストッパ48の傾斜面48Bと対向する側)に形成されている。押込み部材54の傾斜面54Bと、ストッパ48の傾斜面48Bは、押込み部材54の操作時に互いに摺動するように構成されている。
【0053】
図4に示されるように、アーム部18が保持位置にあるとき、押込み部材54の頭部54Dの一部が支持部16から突出しており、押込み部材54がロック解除のボタンとして認識し易くなっている。この状態が、押込み部材54の初期位置である。
【0054】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。
図4から
図7において、本実施形態に係る手摺り用保持具10では、アーム部18が揺動することで、所定位置に手摺り12を保持する保持位置と手摺り12を解放している解放位置を切り替えることができる。
図4に示されるように、ロック機構38は、引張りばね36の付勢力に抗してアーム部18を保持位置にロックする。具体的には、ロック機構38のストッパ48が圧縮ばね52により付勢されており、該ストッパ48がアーム部18の係止部18Dに係合することで、アーム部18が保持位置にロックされる。この状態で、アーム部18の先端部18Cと本体44の延出部44Dとの離間距離Aは、手摺り12の幅寸法Bよりも小さい(
図4(A))。このように、本実施形態では、揺動するアーム部18と非可動の延出部44Dにより手摺り12の保持が可能である。揺動するアーム部18は1つであるので、構造が簡素となり、コストが低減される。
【0055】
また、ロック機構38は、支持部16に設けられた押込み部材54の操作によりアーム部18のロックを解除する。押込み部材54は、ストッパ48の進退方向と交差する方向に進退する。
図5、
図6に示されるように、操作者(図示せず)が押込み部材54に外力を作用させ、該押込み部材54を初期位置から支持部16内に押し込むと、押込み部材54の傾斜面54Bがストッパ48の傾斜面48Bと摺動し、押込み部材54の押込み荷重がストッパ48に伝達される。この押込み荷重により、ストッパ48が圧縮ばね52の付勢力に抗してアーム部18から離れる方向に移動(後退)し、ストッパ48とアーム部18の係止部18Dとの係合が解除される。これにより、アーム部18が引張りばね36の付勢力により保持位置から解放位置に向かって揺動する。つまり、押込み部材54の操作により、アーム部18のロック状態を解除できる。
【0056】
またこのとき、アーム部18の揺動に伴い、押出し部42が手摺り12を所定位置から押し出す(
図7の矢印OUT方向)。つまり、アーム部18に保持された手摺り12を押込み部材54の操作により解放すると共に、該手摺り12を取り出し易い位置に押し出すことができる。押出し部42はアーム部18と一体に形成されているので、構造が簡素となり、コストが低減されると共に、動作の確実性が向上する。
【0057】
図7に示されるように、ロック解除後に操作者が押込み部材54の操作を止め、押込み部材54に対する外力がなくなると、ストッパ48が圧縮ばね52の付勢力によりアーム部18側へ移動(前進)し、ストッパ78がアーム部18の端面に当接した位置で停止する。このとき、ストッパ48の傾斜面48Bが押込み部材54の傾斜面54Bと摺動し、該付勢力が押込み部材54に伝達される。これにより、押込み部材54が初期位置に復帰する。
【0058】
手摺り用保持具10により手摺り12を保持する場合には、手摺り12を支持部16に対して押し込む(
図7の矢印IN方向)。すると、手摺り12が押出し部42を押圧することで、アーム部18が引張りばね36の付勢力に抗して回動する。このとき、ストッパ48は一時的にアーム部18に押されて後退するが、係止部18Dがストッパ48を乗り越えると該ストッパ48が前進し、係止部18Dに係合する。これにより、アーム部18が保持位置にロックされ、手摺り12が保持される(
図4)。
【0059】
また、
図1、
図2に示されるように、手摺り用保持具10を備えた手摺り装置1では、手摺り12の不使用時に該手摺り12を手摺り用保持具10により保持したり、手摺り12の使用時に該手摺り12を解放したりすることができる。また、手摺り12を解放する際には、アーム部18に保持された手摺り12を押込み部材54の操作により解放すると共に、該手摺り12を押出し部42により取り出し易い位置に押し出すことができる。
【0060】
このように、本実施形態によれば、片手でアーム部18のロックを解除して手摺り12を取り出すことができる。
【0061】
[第2実施形態]
図8から
図11において、本実施形態に係る手摺り用保持具20では、押込み部材54が1つの部材から構成されている。具体的には、この押込み部材54は、
図8に示される初期位置において、支持部16の幅方向の両側に突出している。図示されるように、ストッパ48及び圧縮ばね52が支持部16の幅方向中央より例えば左側にオフセットされていてもよい。
図8、
図9に示されるように、保持位置にあるアーム部18のストッパ受け18Eにストッパ48の前方端部が当接し、アーム部18の係止部18Dとストッパ48の前方端側部とが係合している。
【0062】
図9、
図11に示されるように、押込み部材54はストッパ48の直上で立体交差している。押込み部材54には、取付け部44A側から本体44の先端側に向けて窪む谷部54Eが形成され、ストッパ48にはこの谷部54Eに嵌合する山部48Cが設けられている。山部48Cの先端側には本体44の幅方向において対称な2つの傾斜面48Bが形成されている。谷部54Eには、山部48Cの傾斜面48Bに対応する2つの傾斜面54Bが形成されている。
【0063】
なお、押込み部材54は、後述する第3実施形態のように、2箇所の傾斜面54Bが交わる部分で2つに分割された、一対の部材であってもよい。この場合、一対の押込み部材54は、本体44の幅方向において、例えば対称に配置されていてもよい。
【0064】
これにより、どちらの押込み部材54を何れの側から押し込んでも、ストッパ48を圧縮ばね52の付勢力に抗してアーム部18から離れる方向に移動(後退)させて、ストッパ48とアーム部18の係止部18Dとの係合を解除し、アーム部18のロックを解除することができる。
図10、
図11は、右側からの押込み部材54を押し込んだ状態を示している。このとき、左側の押込み部材54は、右側の押込み部材54の押込み量に応じて左側に押し出される。左側から押込み部材54を操作した場合でも、同様にしてアーム部18のロックを解除することができる。
【0065】
押込み部材54に対する外力がなくなると、ストッパ48が圧縮ばね52の付勢力によりアーム部18側へ移動(前進)する。このとき、山部48Cの傾斜面48Bが谷部54Eの傾斜面54Bと摺動し、該付勢力が押込み部材54に伝達される。これにより、押込み部材54が初期位置に復帰し、谷部54Eと山部48Cとが嵌合する。
【0066】
この手摺り用保持具20では、押込み部材54が支持部16の2箇所から外方に突出して設けられているので、押込み部材54を認識し易く、後壁14(
図1、
図2)への取付け方の自由度が高い。また、押込み部材54を二方向から操作できるので、アーム部18のロックの解除操作を行い易い。特に押込み部材54が1つの部材に一体化されているので、部品点数を削減すると共に、支持部16内での押込み部材54の遊びを少なくして、品質感を高めることができる。
【0067】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同様の構成には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0068】
[第3実施形態]
図12、
図13において、本実施形態に係る手摺り用保持具30では、可動式のアーム部18が互いに別体で一対設けられている。また、一対のアーム部18は、例えば互いに対称な形状とされており、押出し部42が一対のアーム部18の双方に形成されている。
図12に示されるように、保持位置にある一対のアーム部18に対し、各ストッパ受け18Eにストッパ48の前方端が当接しており、この前方端の左右の側部には、それぞれアーム部18の係止部18Dが係合している。支持部16には、ストッパ48(山部)を挟んで一対の押込み部材54が設けられており、押込み部材54の傾斜面54Bは、対向する山部48Cの傾斜面48Bに当接可能となっている。
図12に示されるように、アーム部18が保持位置にあるとき、アーム部18の先端部18C同士が近接又は当接するようにしてもよい。
【0069】
また、この手摺り用保持具では、一対のアーム部18が解放位置から保持位置に向かって揺動すると、ストッパが一対のアーム部18に押されて後退するが、それぞれの係止部18Dがストッパ48を乗り越えると、ストッパ48が前進して各係止部18Dに係合することにより、一対のアーム部18が保持位置にロックされる。
【0070】
なお、一対のアーム部18は、対称形状には限られず、非対称であってもよい。例えば、押出し部42が、一対のアーム部18の片方に形成されていてもよい。
【0071】
この手摺り用保持具30では、一対のアーム部18により手摺り12の保持が可能である。アーム部18が1つの場合と比較して、手摺り12に対する保持能力を高めることができる。特に、アーム部18が保持位置にあるときにアーム部18の先端部18C同士が近接又は当接するようにすることで、手摺り12に対する保持力を更に高め、また外観上から、手摺り12が確実に保持されているという安心感を使用者に与えることができる。
【0072】
他の部分については、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので、同様の構成には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
[第4実施形態]
図14から
図16において、本実施形態に係る手摺り用保持具40では、操作部が、支持部16においてストッパ48の進退方向と交差し且つ傾動可能に設けられた、例えば1本のレバー84で構成されている。このレバー84は、ストッパ48を圧縮ばね52の付勢力に抗して後退させる。このレバー84の端部である一端84Aと他端84Bは支持部16外に配置されており、例えば支持部16の側部に形成された窓部86,88からそれぞれ外側に突出している。図面において、一端84Aは右側、他端84Bは左側に位置している。
【0074】
また、
図14から
図16に示されるように、レバー84は、ストッパ48の直上で立体交差しており、本体44に対してストッパ48の進退方向に所定範囲で移動可能となっている。ストッパ48には、レバー84の後方に隆起する隆起部48Eが設けられており、隆起部48Eの前方側には、レバー84の後方側の面に当接する被押圧部48Dが形成されている。本実施形態では、被押圧部48Dが平面状に形成されている。なお、ストッパ48とレバー84は、レバー84が傾動するに連れてストッパ48の被押圧部48Dを後方に押し動かすものであればよく、これらの形状は本実施形態には限られない。レバー84は、引張りばね36との干渉を避けるため、部分的に幅が小さく形成されている。
【0075】
また、レバー84には、本体44の厚さ方向に突出する例えば2箇所の突起84C,84Dが形成されている。
図14、
図15において、突起84Cは右側に位置し、突起84Dは突起84Cの左側に位置している。右側の突起84Cは、レバー84が一端84A側に移動しようとすると、本体44の側部に設けられた抜け止め44Kと係合するようになっている。また、左側の突起84Dは、レバー84が他端84B側に移動しようとすると、抜け止め44Kとストッパ48の間に設けられた壁部44Qに係合するようになっている。これにより、本体44からのレバー84の離脱が抑制されている。また、本体44の幅方向における抜け止め44Kと壁部44Qの距離は、突起84C,84Dの外側同士間の寸法よりも若干大きく設定されている。これは、レバー84の傾動を許容するためである。このように、レバー84は、軸支されることなく、支持部16に対して傾動可能に取り付けられている。なお、レバー84の離脱抑制手段はこれに限られるものではない。
【0076】
図14において、アーム部18が保持位置に位置すると共に、ストッパ48の前方端部とアーム部18の係止部18Dとが係合している。レバー84は、ストッパ48の被押圧部48Dにより前方側に位置されて、レバー84の両側端部が窓部86,88の前縁に近接している。
図15において、この手摺り用保持具40では、操作部としてのレバー84の端部が操作されると、レバー84が傾動してストッパ48を係止部18Dへの係合を解除させる方向へ移動させる。具体的には、操作部としてのレバー84の一端84Aに矢印D方向に外力を作用させると、レバー84が他端84B側の窓部88の前縁との当接部を中心として傾動し、ストッパ48の被押圧部48Dを押圧する。一端84Aに対する外力を更に高めると、被押圧部48Dを押圧されたストッパ48が圧縮ばね52の付勢力に抗して後退し、ストッパ48の前方端部とアーム部18の係止部18Dとの係合が解除される。一端84Aは、該一端84A側の窓部86の後縁に当接するまで傾動することができる。
【0077】
また、
図16において、レバー84の他端84Bに矢印D方向に外力を作用させると、まずレバー84が一端84A側の窓部86の前縁との当接部を中心として傾動し、ストッパ48の被押圧部48Dを押圧する。他端84Bに対する外力を更に高めると、被押圧部48Dを押圧されたストッパ48が圧縮ばね52の付勢力に抗して後退し、ストッパ48の前方端部とアーム部18の係止部18Dとの係合が解除される。他端84Bは、該他端84B側の窓部88の後縁に当接するまで傾動することができる。
【0078】
このように、レバー84の一端84Aと他端84Bのいずれを操作しても、ストッパ48とアーム部18の係止部18Dとの係合を解除できる。また、図示は省略するが、レバー84の一端84Aと他端84Bに対して同時に矢印D方向に外力を作用させても、ストッパ48とアーム部18の係止部18Dとの係合を解除できる。
【0079】
ストッパ48とアーム部18の係止部18Dとの係合が解除されると、アーム部18が引張りばね36の付勢力により保持位置から解放位置に向かって揺動する。つまり、レバー84の操作により、アーム部18のロック状態を解除できる。そして、押出し部42により手摺り12(ストッパ1)が押し出される。レバー84に対する外力がなくなると、ストッパ48が圧縮ばね52の付勢力により前進し、ストッパ48の被押圧部48Dがレバー84に面接触することで、レバー84が被押圧部48Dに沿う状態となる。
【0080】
手摺り12(
図1)を手摺り用保持具40で保持する際には、手摺り12で押出し部42を押圧すると、アーム部18が引張りばね36の付勢力に抗して揺動する。このとき、ストッパ48がアーム部18に押されて一時的に後退するが、係止部18Dがストッパ48を乗り越えると該ストッパ48が前進し、係止部18Dに係合する。これにより、アーム部18が保持位置にロックされる。
【0081】
本実施形態では、レバー84が支持部16に対して傾動可能とされ、その一端84A及び他端84Bがロックの解除の操作部となっているので、操作部を認識し易く、後壁14(
図1、
図2)への取付け方の自由度が高い。また、レバー84が1本で、かつ支持部16に軸支されていないので、構造が簡素となり、コストが低減される。
【0082】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同様の構成には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0083】
[第5実施形態]
図17、
図18において、本実施形態に係る手摺り用保持具50では、操作部が、支持部16に設けられる支点軸62に揺動可能に支持されるレバー64とされている。レバー64は、揺動することでストッパ48を圧縮ばね52の付勢力に抗して後退させる。このレバー64は、本体44に設けられた支点軸62に枢支され、支持部16内に配置されたその先端部が、アーム部18の係止部18Dと係合するストッパ68とされている。ストッパ68には、ばね受け68Aが設けられている。ばね受け68Aは、ストッパ68の進退方向の後方側(
図17の下方側)に設けられている。ばね受け68Aには、圧縮ばね52の他端が当接している。
【0084】
レバー64の後端部64Dは、支持部16外に配置され、支持部16から突出している。レバー64における支点軸62から後端部64Dまでの長さは、支点軸62から先端部までの長さよりも長く設定されている。後端部64Dに入力された外力は、てこの原理により増幅されて、ストッパ68から圧縮ばね52に作用するようになっている。そして、レバー64の後端部64Dが操作されると、レバー64が揺動してストッパ68の係止部18Dへの係合が解除されるようになっている。
【0085】
この手摺り用保持具50では、レバー64の後端部64Dに矢印U方向に外力を作用させてレバー64を初期位置から揺動させると、ストッパ68が圧縮ばね52の付勢力に抗して後退し、ストッパ68とアーム部18の係止部18Dとの係合が解除される。レバー64の後端部64Dに対する外力がなくなると、ストッパ68が圧縮ばね52の付勢力に押されて揺動し、ストッパ68がアーム部18に当接した位置で停止する。
【0086】
手摺り12(
図1)を手摺り用保持具50で保持する際には、手摺り12で押出し部42を押圧すると、アーム部18が引張りばね36の付勢力に抗して回動する。このとき、レバー64がアーム部18に押されて
図18中反時計回りに揺動し、ストッパ68が一時的に後退するが、係止部18Dがストッパ68を乗り越えると該ストッパ68が前進し、係止部18Dに係合する。これにより、アーム部18が保持位置にロックされる。
【0087】
本実施形態では、レバー64が操作部とストッパ68を兼ねているので、構造が簡素となり、コストが低減される。
【0088】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同様の構成には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0089】
[第6実施形態]
図19、
図20において、本実施形態に係る手摺り用保持具60では、第5実施形態における操作部材としてのレバー64の他に、該レバー64と連動するレバー74が設けられている。つまり、操作部として、レバー64,74が設けられている。レバー74は、支持部16の幅方向において、例えばレバー64と対称となる位置に設けられており、支点軸72に枢支されている。
【0090】
レバー64,74には、セクタギヤ66,77がそれぞれ設けられ、互いに噛み合っている。これにより、レバー64,74の揺動が互いに連動するようになっている。
【0091】
この手摺り用保持具60では、レバー64の後端部64Dに矢印U方向に外力を作用させてレバー64を初期位置から揺動させると、ストッパ68が圧縮ばね52の付勢力に抗して後退し、ストッパ68とアーム部18の係止部18Dとの係合が解除される。このとき、レバー64,74は、セクタギヤ66,77を介して噛み合っているので、レバー64の揺動に伴い、レバー74も揺動する。したがって、レバー74の後端部74Dに矢印U方向に外力を作用させても、レバー64が揺動して、ストッパ68とアーム部18の係止部18Dとの係合が解除される。これにより、
図20に示されるように、アーム部18が引張りばね36の付勢力により保持位置から解放位置に向かって揺動する。つまり、レバー64,74のうち、少なくとも何れか一方の操作により、アーム部18のロック状態を解除できる。レバー64の後端部64Dに対する外力がなくなると、ストッパ68が圧縮ばね52の付勢力に押されて揺動し、ストッパ68がアーム部18に当接した位置で停止する。
【0092】
手摺り12(
図1)を手摺り用保持具60で保持する際には、押出し部42を押圧すると、アーム部18が引張りばね36の付勢力に抗して回動する。このとき、レバー64がアーム部18に押されて
図20中反時計回りに揺動すると共にレバー74が時計回りに揺動し、ストッパ68が一時的に後退するが、係止部18Dがストッパ68を乗り越えると該ストッパ68が前進し、係止部18Dに係合する。これにより、アーム部18が保持位置にロックされる。
【0093】
本実施形態では、操作部として2箇所のレバー64,74が設けられているので、レバー64,74を認識し易く、後壁14(
図1、
図2)への取付け方の自由度が高い。また、レバー64,74を二方向から操作できるので、アーム部18のロックの解除操作を行い易い。
【0094】
他の部分については、第1実施形態又は第5実施形態と同様であるので、同様の構成には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0095】
[第7実施形態]
図21から
図24において、本実施形態に係る手摺り用保持具70では、一対の可動式のアーム部18が設けられ、該アーム部18の引掛け部18B同士が引張りばね36により連結され、支持軸44Fを中心として、アーム部18の先端部18C同士が互いに離れる方向に付勢されている。
【0096】
図22に示されるように、本実施形態では、操作部としての押込み部材76が設けられている。この押込み部材76は、支持部16における本体44の中央部に、本体44の厚さ方向に進退可能に構成されている。具体的には、押込み部材76は、軸部76Cと頭部76Dを有し、その軸方向が支持部16の厚さ方向となるように配置されている。本体44には、圧縮ばね52の一端が当接するばね受け44Jが設けられている。圧縮ばね52の他端は、押込み部材76の頭部76Dに当接している。初期位置において、頭部76Dは、支持部16から突出している。
【0097】
軸部76Cの先端側には、例えば円板状のストッパ78が取り付けられている。軸部76Cに対するストッパ78の取付け手段は任意であるが、加締め、割りピン、ナット等による締結等を用いることができる。
図22の上側に位置するアーム部18には、ストッパ78と係合可能な例えば円弧状に凹設された係止部18Dが設けられている。
【0098】
この手摺り用保持具70では、操作部としての押込み部材76に支持部16の厚さ方向である矢印C方向に外力を作用させると、該押込み部材76及びストッパ78が圧縮ばね52の付勢力に抗して矢印C方向に移動し、ストッパ78と係止部18Dとの係合が解除される。これにより、
図23、
図24に示されるように、一対のアーム部18が引張りばね36の付勢力により保持位置から解放位置に向かって揺動する。つまり、押込み部材76の操作により、アーム部18のロック状態を解除できる。押込み部材76に対する外力がなくなると、押込み部材76が圧縮ばね52の付勢力により初期位置側に戻ろうとし、ストッパ78がアーム部18の端面に当接した位置で停止する。
【0099】
手摺り12(
図1)を手摺り用保持具70で保持する際には、手摺り12で押出し部42を押圧すると、一対のアーム部18が引張りばね36の付勢力に抗して回動する。一対のアーム部18が保持位置まで戻ると、係止部18Dがストッパ78を受け入れ可能となる。ストッパ78は押込み部材76に取り付けられており、押込み部材76は圧縮ばね52により付勢されているため、ストッパ78が係止部18Dに入り込んで係合した状態となる。これにより、アーム部18がロックされる。またこのとき、押込み部材76は初期位置に復帰する。
【0100】
本実施形態では、支持部16の厚さ方向に押込み部材76を押し込むことで、アーム部18のロックの解除が可能である。
【0101】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同様の機能を持つ部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0102】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0103】
1…手摺り装置、10…手摺り用保持具、12…手摺り、14…後壁(壁面)、16…支持部、18…アーム部、18A…取付け穴、18B…引掛け部、18C…先端部、18D…係止部、18E…ストッパ受け、20…手摺り用保持具、21…第1手摺り部、22…第2手摺り部、24…連結部、26…回転部材、28…支持部材、30…手摺り用保持具、32…連結部材、34…化粧部材、34A…切欠き、36…引張りばね(付勢手段)、36A…一端、36B…他端、38…ロック機構、40…手摺り用保持具、42…押出し部、44…本体、44A…取付け部、44B…貫通孔、44C…突出部、44D…延出部、44E…受け部、44F…支持軸、44G…引掛け部、44H…ガイド部、44J…ばね受け、44K…抜け止め部、44L…ストッパ面、44M…ガイド部、44N…ガイド部、44P…段差部、44Q…壁部、46…蓋、46K…抜け止め部、48…ストッパ、48A…ばね受け、48B…傾斜面、48C…山部、48D…被押圧部、50…手摺り用保持具、52…圧縮ばね、54…押込み部材(操作部)、54A…張出し部、54B…傾斜面、54C…軸部、54D…頭部、54E…谷部、56…締結点、58…締結点、60…手摺り用保持具、62…支点軸、64…レバー(操作部)、64D…後端部、66…セクタギヤ、68…ストッパ、68A…ばね受け、70…手摺り用保持具、72…支点軸、74…レバー(操作部)、74D…後端部、76…押込み部材(操作部)、76C…軸部、76D…頭部、77…セクタギヤ、78…ストッパ、86…窓部、88…窓部