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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/367 20210101AFI20241113BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20241113BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20241113BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20241113BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20241113BHJP
   H01M 50/276 20210101ALI20241113BHJP
   H01M 50/278 20210101ALI20241113BHJP
   H01M 50/282 20210101ALI20241113BHJP
   H01M 50/231 20210101ALI20241113BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20241113BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241113BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20241113BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20241113BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20241113BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241113BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H01M50/367
H01M50/35 201
H01M50/227
H01M50/213
H01M50/224
H01M50/276
H01M50/278
H01M50/282
H01M50/231
H01M50/271 B
H01M10/613
H01M10/0566
H01M10/643
H01M10/6554
B29C45/14
H05K5/02 L
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021509312
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012309
(87)【国際公開番号】W WO2020196267
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019060103
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 学
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武
(72)【発明者】
【氏名】辻口 隆介
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/064096(WO,A1)
【文献】特開2000-158478(JP,A)
【文献】特開2004-006116(JP,A)
【文献】特開2012-252946(JP,A)
【文献】特開2008-251262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/30-50/392
H01M 50/20-50/298
H01M 10/613
H01M 10/0566
H01M 10/643
H01M 10/6554
B29C 45/14
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧が設定圧力よりも高くなると開弁する排出弁を有する複数の電池と、
前記電池を収納してなるケースとを備え、
前記ケースが、
プラスチック製の樹脂ケースと金属プレートとの一体構造で、
前記樹脂ケースは、
前記金属プレートで閉塞してなる放熱開口を有し、
前記金属プレートは、
前記樹脂ケースの放熱開口を閉塞してなる閉塞領域に複数の排煙穴を有し、
前記閉塞領域の表面に付着してなる可撓性のある絶縁シートのラベルを備え
前記ラベルが、
前記閉塞領域の表面に付着してなる付着領域と、
前記閉塞領域の表面に付着されない非付着領域とからなり、
前記非付着領域が前記排煙穴に連通して設けられてなり、
前記ラベルの前記非付着領域が、
隣接する前記排煙穴を連通してなることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
内圧が設定圧力よりも高くなると開弁する排出弁を有する複数の電池と、
前記電池を収納してなるケースとを備え、
前記ケースが、
プラスチック製の樹脂ケースと金属プレートとの一体構造で、
前記樹脂ケースは、
前記金属プレートで閉塞してなる放熱開口を有し、
前記金属プレートは、
前記樹脂ケースの放熱開口を閉塞してなる閉塞領域に複数の排煙穴を有し、
前記ケースが、第1ケースと第2ケースとからなり、
前記第1ケースと前記第2ケースが、
前記金属プレートの外周部を熱可塑性樹脂の前記樹脂ケースとして、
前記第1ケースの樹脂ケースと、前記第2ケースの樹脂ケースを連結してなることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項に記載する電池パックであって、
前記樹脂ケースが、
前記金属プレートの外周縁に沿って設けられた樹脂周壁を有し、
前記第1ケースと前記第2ケースが、
前記樹脂周壁を熱結合して内部を閉鎖構造としてなることを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項に記載する電池パックであって、
前記樹脂ケースが、
前記樹脂周壁の連結部に、
熱可塑性樹脂を溶融して熱結合する発熱線を埋設しており、
前記発熱線の発熱で前記樹脂周壁が熱溶着されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項又はに記載する電池パックであって、
前記金属プレートが、
表面プレート部の外周に金属周壁を設けた金属製のプレス板で、
前記金属周壁が前記樹脂周壁に埋設されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項6】
請求項に記載する電池パックであって、
前記樹脂周壁の連結部で、
前記第1ケースと前記第2ケースの前記金属周壁が、互いに積層されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項7】
請求項ないしのいずれかに記載する電池パックであって、
前記第1ケースは、
前記樹脂ケースの放熱開口を閉塞する前記閉塞領域を有し、
前記第2ケースは、
前記樹脂ケースの底面プレート部の内面に前記金属プレートを露出して積層してなることを特徴する電池パック。
【請求項8】
請求項に記載する電池パックであって、
前記第2ケースが、
絶縁状態に分割された複数の金属プレートを前記樹脂ケースの内面に固定されてなり、
絶縁状態に分割された前記金属プレートが、
電位差のある前記電池の対向位置に配置されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項9】
請求項ないしのいずれかに記載する電池パックであって、
前記第1ケースの前記金属プレートが、
前記閉塞領域全体の50%以上を排気領域として、排気領域に複数の排煙穴を設けており、
前記排煙穴の開口面積は5mm2以下で、
全ての前記排煙穴の開口面積を加算したトータル開口面積が、
排気領域全体の10%以上であることを特徴とする電池パック。
【請求項10】
請求項に記載する電池パックであって、
複数の排煙穴のトータル開口面積が、前記閉塞領域面積の5%以上であることを特徴とする電池パック。
【請求項11】
請求項ないし10のいずれかに記載する電池パックであって、
前記第1ケースが、
前記金属プレートの前記閉塞領域の内側に、
複数の電池を複数列に配置して、前記電池と前記金属プレートとの間に排煙隙間を設けてなることを特徴とする電池パック。
【請求項12】
請求項11に記載する電池パックであって、
前記電池が円筒形電池で、
複数の円筒形電池が直線状に並べられて直線状の電池ユニットを構成しており、
直線状の前記電池ユニットが、前記金属プレートの前記閉塞領域に対向して配置されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項13】
請求項12に記載する電池パックであって、
前記電池ユニットを構成する各電池が直列に接続され、
前記第2ケースの前記金属プレートが分割されて、
分割された前記金属プレートの境界部が、直線状に連結してなる電池の連結部の対向位置に配置されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載する電池パックであって、
前記金属プレートが、
前記樹脂ケースにアウトサート成形されて一体構造に密着されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載する電池パックであって、
前記電池が非水系電解液二次電池であることを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出弁のある電池をケースに収納してなる電池パックに関し、とくに、ケースの一部を金属製とする構造に最適な電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
ケースの一部に金属板を設けて高い難燃性を実現する電池パックは開発されている。(特許文献1参照)
この電池パックは、ケースを上ケースと下ケースで構成して、上ケースと下ケースの主要部を金属プレートとして、上ケースと下ケースの周壁を樹脂ケースとして互いに接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-185756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケースの主要部を金属板とする従来の電池パックは、ケースを難燃性として強固にできる。しかしながら、リチウムイオン二次電池のように、排出弁を設けている電池をケース内に配置する電池パックにおいては、開弁する排出弁からの放出ガスを安全に排気することが大切である。主要部を金属板とする強靭なケースの電池パックにあっては、高温・高圧の放出ガスが噴出される状態で安全性を保障できない。高温・高圧の放出ガスでケースが破裂すると、電解液の気化した高温のガスが一時に外部に放出され、放出された高温のガスがケース外で発火する等の弊害が発生するからである。
【0005】
本発明は、さらに以上の弊害を防止することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、ケースを強靭な構造としながら、高温・高圧の放出ガスによってケース外に火炎が放出されるのを抑制して安全に使用できる電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る電池パックは、内圧が設定圧力よりも高くなると開弁する排出弁を有する複数の電池1と、電池1を収納してなるケース2とを備えている。ケース2は、プラスチック製の樹脂ケース3と金属プレート4との一体構造で、樹脂ケース3は、金属プレート4で閉塞してなる放熱開口5を有し、金属プレート4は、樹脂ケース3の放熱開口5を閉塞してなる閉塞領域6に複数の排煙穴7を有している。
【発明の効果】
【0007】
以上の電池パックは、ケースを強靭な構造にでき、しかも高温・高圧の放出ガスによってケース外に火炎が放出されるのを抑制して安全に使用できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る電池パックの斜視図である。
図2図1に示す電池パックの分解斜視図である。
図3図1に示す電池パックの一部拡大III-III線断面図である。
図4図1に示す電池パックの一部拡大IV-IV線断面図である。
図5図3に示す電池パックの拡大断面図である。
図6図4に示す電池パックの拡大断面図である。
図7図1に示す電池パックのラベル部分を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0010】
本発明の第1の発明の電池パックは、内圧が設定圧力よりも高くなると開弁する排出弁を有する複数の電池と、電池を収納してなるケースとを備え、ケースが、プラスチック製の樹脂ケースと金属プレートとの一体構造で、樹脂ケースは、金属プレートで閉塞してなる放熱開口を有し、金属プレートは、樹脂ケースの放熱開口を閉塞してなる閉塞領域に複数の排煙穴を有している。
【0011】
以上の電池パックは、ケースを樹脂ケースと金属プレートの一体構造として強靭な構造とし、さらに電池の排出弁から噴出される高温・高圧の放出ガスを、金属プレートが樹脂ケースの放熱開口を閉塞している閉塞領域に設けた排煙穴に通過させて外部に排気する。金属プレートの閉塞領域は、通過する放出ガスの熱エネルギーを吸収し、温度を低下させてケースの外部に排気する。この電池パックは、電池から噴出される放出ガスを金属プレートの閉塞領域で冷却してケース外に排気するので、放出ガスがケース外で火炎となって噴出されるのを抑制する。樹脂ケースの放熱開口を閉塞して、両面が樹脂ケースの両面に露出する金属プレートの閉塞領域は、内面をケース内との熱伝導を好ましい状態として、外面を樹脂ケース外部との熱伝導を好ましい状態としている。この状態に配置された金属プレートの閉塞領域は、ケース内で電池が熱暴走して高温の放出ガスを噴出して内部温度が上昇すると、放出ガスの熱エネルギーを効率よく吸収し、さらに吸収した熱エネルギーを樹脂ケースの外面に効率よく放熱する。とくに、ケース内に噴射される高温の放出ガスは、金属プレートの閉塞領域内面に沿って流動し、さらに、排煙穴を高速で流動して金属プレートに熱エネルギーを効率よく伝導する。金属プレートは、放出ガスのエネルギーを吸収して温度が上昇し、温度上昇して吸収した熱エネルギーを閉塞領域表面から効率よく放熱する。
【0012】
さらに、以上の電池パックは、金属プレートと樹脂ケースを一体構造に連結して、樹脂ケースの放熱開口を、排煙穴のある金属プレートで閉塞している。樹脂ケースの放熱開口を閉塞する金属プレートは、樹脂ケースのプラスチックに比較して極めて熱伝導特性が優れている。ちなみに、樹脂ケースに最適なプラスチックであるポリカーボネートの熱伝導率は、約0.2W/(m・K)、金属プレートに最適なアルミニウムの熱伝導率は約200W/(m・K)と1000倍も大きい。したがって、樹脂ケースの放熱開口を排煙穴のある金属プレートで閉塞して、高温の放出ガスを金属プレートの閉塞領域の排煙穴から排気する構造は、熱伝導特性の極めて優れた金属プレートでもって、放出ガスの熱エネルギーを極めて効率よく吸収して排気する。したがって、ケース内に噴出される高温・高圧の放出ガスがケース外に排気されて火炎となるのを効率よく抑制して安全性を高くできる。さらに、以上の電池パックは、高温の放出ガスを金属プレートの閉塞領域に設けた排煙穴から外部に排気するので、放出ガスの熱エネルギーで排煙穴やその近傍が損傷されることがなく、放出ガスを安全に、しかも火炎を防止して外部に排気できる特徴も実現する。
【0013】
本発明の第2の発明の電池パックは、金属プレートが、樹脂ケースにアウトサート成形されて一体構造に密着している。
【0014】
以上の電池パックは、金属プレートと樹脂ケースとを隙間なく一体構造に連結でき、さらに、金属プレートと樹脂ケースを密着できるので、ケースを薄く、強くできる特徴がある。
【0015】
本発明の第3の発明の電池パックは、ケースが第1ケースと第2ケースとからなり、第1ケースと第2ケースが、金属プレートの外周部を熱可塑性樹脂の樹脂ケースとして、第1ケースの樹脂ケースと、第2ケースの樹脂ケースを連結している。
【0016】
以上の電池パックは、金属プレートの外周部に樹脂ケースを設けて、樹脂ケースを連結してケースを閉鎖構造にできるので、第1ケースと第2ケースの連結部を、連結に最適な形状にプラスチックで成形して製作できる。したがって、第1ケースと第2ケースを、簡単かつ容易に、しかも確実に連結できる特徴がある。
【0017】
本発明の第4の発明の電池パックは、樹脂ケースが、金属プレートの外周縁に沿って設けられた樹脂周壁を有し、第1ケースと第2ケースが、樹脂周壁を熱結合して内部を閉鎖構造としている。
【0018】
以上の電池パックは、樹脂周壁を熱結合して第1ケースと第2ケースを閉鎖構造に連結しているので、樹脂周壁をガス漏れしないように連結できる。このため、ケース内に噴射される放出ガスの周壁連結部からの漏れを抑制して、放出ガスを金属プレートに設けた排煙穴に集中して排気できる。放出ガスが金属プレートの排煙穴に集中して排気されるので、放出ガスの熱エネルギーを効率よく金属プレートに放熱して、放出ガスを火炎が発生しないように安全にケース外に排気できる。
【0019】
本発明の第5の発明の電池パックは、樹脂ケースが、樹脂周壁の連結部に、熱可塑性樹脂を溶融して熱結合する発熱線を埋設しており、発熱線の発熱で樹脂周壁を熱溶着している。
【0020】
以上の電池パックは、発熱線で樹脂周壁を熱溶融して連結できるので、第1ケースと第2ケースを連結部からのガス漏れを防止して確実に連結できる。さらに、第1ケースと第2ケースの樹脂周壁を強固に確実に連結して、高温・高圧の放出ガスでケースの連結部が破損されるのを有効に防止して、放出ガスを金属プレートの排煙穴に集中して排気して高い安全性を確保できる特徴がある。
【0021】
本発明の第6の発明の電池パックは、金属プレートが、表面プレート部の外周に金属周壁を設けた金属製のプレス板で、金属周壁を樹脂周壁に埋設している。
【0022】
以上の電池パックは、金属プレートを、表面プレート部と金属周壁を設けた金属製のプレス板として、金属周壁を樹脂周壁に積層しているので、ケース全体を極めて頑丈な構造にできる。したがって、この電池パックは、内部に噴射される高温・高圧の放出ガスでケースが破損されることがなく、また落下などの衝撃でケースが破損するのを防止できる特徴がある。
【0023】
本発明の第7の発明の電池パックは、樹脂周壁の連結部で、第1ケースと第2ケースの金属周壁を互いに積層している。
【0024】
以上の電池パックは、樹脂周壁の連結部で、第1ケースと第2ケースの金属周壁を積層しているので、周壁の連結部を極めて強固にでき、放出ガスによる連結部の損傷や落下などの衝撃できるケースの破損をより確実に防止できる特徴がある。
【0025】
本発明の第8の発明の電池パックは、第1ケースが、樹脂ケースの放熱開口を閉塞する閉塞領域を有し、第2ケースが、樹脂ケースの底面プレート部の内面に金属プレートを露出して積層している。
【0026】
以上の電池パックは、第2ケースの底面プレート部の内面に露出する金属プレートで、内部の熱エネルギーを効率よく吸収して、放熱できる特徴がある。
【0027】
本発明の第9の発明の電池パックは、第2ケースが、絶縁状態に分割された複数の金属プレートを樹脂ケースの内面に固定されており、絶縁状態に分割された金属プレートが、電位差のある電池の対向位置に配置されている。
【0028】
以上の電池パックは、第2ケースの金属プレートを複数に分割し、分割された金属プレートを絶縁して配置して、分割された金属プレートに対向して電位差のある電池を配置するので、電位差のある電池を対向して配置している金属プレートで効率よく冷却しながら、金属プレートによる電位差のある電池の短絡を防止できる特徴がある。
【0029】
本発明の第10の発明の電池パックは、第1ケースの金属プレートが、閉塞領域全体の50%以上を排気領域として、排気領域に複数の排煙穴を設けており、排煙穴の開口面積は5mm以下で、全ての排煙穴の開口面積を加算したトータル開口面積が、排気領域全体の10%以上としている。
【0030】
以上の電池パックは、開口面積を5mm以下とする複数の排煙穴を、閉塞領域全体の50%以上を排気領域として、この排気領域にトータル開口面積が排気領域全体の10%以上となるように開口しているので、広い閉塞領域に小さい排煙穴を多数に設けて、放出ガスの熱エネルギーを金属プレートで効率よく吸収し、さらに小さい開口面積の排煙穴で放出ガスのエネルギーを減衰させながら外部に排気できる特徴がある。それは、小さい排煙穴を通過する放出ガスの圧力損失でエネルギーが減衰されるからである。
【0031】
本発明の第11の発明の電池パックは、複数の排煙穴のトータル開口面積を、閉塞領域面積の5%以上としている。
【0032】
以上の電池パックは、複数の排煙穴のトータル開口面積を閉塞領域面積の5%以上とするので、多数の排煙穴から放出ガスを外部に排気して、放出ガスのエネルギーを低減して排気できる特徴がある。
【0033】
本発明の第12の発明の電池パックは、第1ケースが、金属プレートの閉塞領域の内側に、複数の電池を複数列に配置して、電池と金属プレートとの間に排煙隙間を設けている。
【0034】
以上の電池パックは、金属プレートの閉塞領域の内面に、排煙隙間を介して複数の電池を複数列に並べて配置するので、電池と金属プレートとを絶縁しながら、各々の電池の熱エネルギーを効率よく金属プレートで吸収できる。
【0035】
本発明の第13の発明の電池パックは、電池が円筒形電池で、複数の円筒形電池が直線状に並べられて直線状の電池ユニットを構成しており、直線状の電池ユニットが、金属プレートの閉塞領域に対向して配置されてなることを特徴とする電池パック。
【0036】
以上の電池パックは、複数の円筒形電池をケース内に配置して、各々の円筒形電池を金属プレートで効率よく冷却できる特徴がある。
【0037】
本発明の第14の発明の電池パックは、電池ユニットを構成する各電池を直列に接続し、第2ケースの金属プレートを分割して、分割された金属プレートの境界部を、直線状に連結してなる電池の連結部の対向位置に配置している。
【0038】
以上の電池パックは、分割された金属プレートの境界部の対向位置に、直線状に連結している電池の連結部を配置するので、分割さたれ金属プレートで、直線状に配置している円筒形電池を高効率に冷却しながら、直線状に連結している電池に電位差のある状態において、金属プレートによる電池の短絡を防止できる特徴がある。
【0039】
本発明の第15の発明の電池パックは、閉塞領域の表面に付着してなる可撓性のある絶縁シートのラベルを備えている。
【0040】
以上の電池パックは、金属プレートが樹脂ケースから露出している閉塞領域の排煙穴をラベルで閉塞しているので、排煙穴から異物が侵入し、あるいはユーザーが異物を挿通するのを防止して安全に使用できる特徴がある。また、金属プレートの表面をラベルで絶縁してさらに安全に使用できる。さらに、可撓性の絶縁シートからなるラベルは、排煙穴を閉塞しているので、ケース内の圧力が上昇し、さらにこの状態では放出ガスに加熱されているので、金属プレートから剥離されて排煙穴を開口して、放出ガスを外部に排気する。
【0041】
本発明の第16の発明の電池パックは、ラベルが、閉塞領域の表面に付着してなる付着領域と、閉塞領域の表面に付着されない非付着領域とからなり、非付着領域が排煙穴に連通して設けられている。
【0042】
以上の電池パックは、放出ガスでラベルが剥離するまでの時間に、金属プレートによる放出ガスの熱エネルギーの吸収効果をより高くできる特徴がある。それは、電池から噴出された放出ガスが、排煙穴を通過して金属プレートの表面に流れ、さらに金属プレート表面に流れた放出ガスは、金属プレートとラベルとの間の非付着領域を高速流動して熱エネルギーを金属プレートに効率よく熱伝導するからである。とくに、可撓性のある絶縁シートのラベルは、高速流動する高温の放出ガスで非付着領域を拡開して放出ガスの流量を増加して金属プレートへの放熱効果を高くして、放出ガスの温度を低下する。
【0043】
本発明の第17の発明の電池パックは、ラベルの非付着領域が、隣接する排煙穴を連通している。
【0044】
以上の電池パックは、非付着領域が隣の排煙穴を連通しているので経路が長く、放出ガスが長い経路の非付着領域を高速流動してより効率よく放出ガスを冷却する。ラベルの非付着領域を流動した放出ガスは、ケース内の圧力が上昇してラベルが剥離される状態では、放出ガスを排煙穴からケース外に排気する。
【0045】
さらに、本発明の第18の発明の電池パックは、電池を非水系電解液二次電池としている。
【0046】
(実施の形態1)
図1の斜視図と図2の分解斜視図に示す電池パックは、内圧が設定圧力よりも高くなると開弁する排出弁を有する複数の電池1と、電池1を収納しているケース2とを備える。ケース2はプラスチック製の樹脂ケース3と金属プレート4との一体構造である。樹脂ケース3は、金属プレート4で閉塞している放熱開口5を有し、金属プレート4は、樹脂ケース3の放熱開口5を閉塞している閉塞領域6に複数の排煙穴7を設けている。金属プレート4は、樹脂ケース3をアウトサート成形して、樹脂ケース3に密着されて一体構造に連結されている。
【0047】
ケース2は第1ケース2Aと第2ケース2Bとからなり、第1ケース2Aと第2ケース2Bは、金属プレート4の外周部を熱可塑性樹脂の樹脂ケース3として、第1ケース2Aの樹脂ケース3と、第2ケース2Bの樹脂ケース3を連結している。樹脂ケース3は、金属プレート4の外周縁に沿って設けている樹脂周壁3Bを有し、第1ケース2Aと第2ケース2Bは、樹脂周壁3Bを熱結合して内部を閉鎖構造としている。
【0048】
第1ケース2Aと第2ケース2Bは、樹脂ケース3の樹脂周壁3Bを熱結合している。樹脂周壁3Bは、開口端面を熱溶融して連結している。樹脂ケース3は、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂である。ただし、樹脂ケース3は、ポリカーボネートに特定するものでなく、たとえばポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が使用できる。
【0049】
樹脂ケース3は、開口面積の一方に、樹脂周壁3Bに沿って発熱線13を埋設している。発熱線13は、第1ケース2Aと第2ケース2Bの開口端面を互いに密接させる状態で通電されて発熱し、樹脂周壁3Bを熱溶融して溶着する。図3図5の断面図は、熱溶着した樹脂周壁3Bの連結部を示している。これらの図に示す連結部は、一方の樹脂周壁3Bに、長手方向に嵌合溝3aを設けて、他方の樹脂周壁3Bには嵌合溝3aに案内される嵌合凸部3bを設けて、嵌合溝3aの底部に発熱線13を配置している。この樹脂周壁3Bは、嵌合凸部3bを嵌合溝3aに挿入して互いに密接させる状態で、発熱線13に通電し、発熱線13が近傍の樹脂を熱溶融して一対の樹脂周壁3Bを熱溶着する。
【0050】
金属プレート4はアルミニウム(アルミニウム合金を含む)が適している。アルミニウムは、軽くて熱伝導特性に優れているので、軽量化して電池1の放熱効率を高くできる。ただ、金属プレート4は、アルミニウム以外の金属、たとえば銅、ニッケル、亜鉛、鉄、さらにこれ等の合金等も使用できる。金属プレート4は、厚くして吸収する熱エネルギーを大きくできるが、厚い金属プレート4は重くなるので、用途を考慮して最適な厚さに設定される。たとえば、金属プレート4の厚さは0.2mm~1mmとして、軽量化しながら、必要な放熱特性を実現できる。
【0051】
金属プレート4は、平面状の表面プレート部4Aの外周に沿って金属周壁4Bを設けた形状の金属成形板である。金属周壁4Bは樹脂周壁3Bに埋設されて樹脂ケース3に連結されている。第1ケース2Aと第2ケース2Bは、金属周壁4Bの両面に樹脂周壁3Bを積層する状態で、金属周壁4Bを樹脂周壁3Bに埋設している。金属周壁4Bは、第1ケース2Aと第2ケース2Bの樹脂周壁3Bの連結状態で、端縁部をラップ状態としている。金属周壁4Bをラップ状態で樹脂周壁3Bの連結部に埋設しているケース2は、樹脂周壁3Bの連結部を充分な強度にできる。さらに、ラップ部において、第1ケース2Aと第2ケース2Bの金属周壁4Bが互いに接近するので、第1ケース2Aの金属周壁4Bから第2ケース2Bの金属周壁4Bに熱伝導して、第1ケース2Aの金属プレート4の放熱効率を高くできる。
【0052】
第1ケース2Aは、樹脂ケース3の放熱開口5を金属プレート4Xで閉塞している。金属プレート4Xは、樹脂ケース3の放熱開口5を閉塞している閉塞領域6に複数の排煙穴7を設けている。金属プレート4Xの閉塞領域6は、排煙穴7を設ける領域を排気領域6Aとして、排気領域6Aに排煙穴7を設けている。閉塞領域6は、排煙穴7を設けている排気領域6Aの面積を広くして、放出ガスをより効率よく冷却できる。排気領域6Aは多数の排煙穴7を設けている。金属プレート4Xは、たとえば閉塞領域6全体の50%以上を排気領域6Aとして、排気領域6Aに多数の排煙穴7を設けている。図の排煙穴7は円形としているが、排煙穴7は必ずしも円形とする必要はなく、楕円形、多角形、スリット等種々の形状とすることができる。排煙穴7は、例えば、開口面積を5mm以下として、全ての排煙穴7の開口面積を加算したトータル開口面積を、排気領域6A全体の10%以上とする。さらに好ましくは、排煙穴7の開口面積は4mm以下、排気領域6Aを閉塞領域6全体の60%以上、排煙穴7のトータル開口面積を排気領域6A全体の15%以上とする。小さい排煙穴7は、通過する放出ガスの圧力損失が大きくなるので、個数を多くして、放出ガスを速やかに通過できる構造とする。
【0053】
第2ケース2Bは、樹脂ケース3の底面プレート部3Aの内面に金属プレート4Yを露出して積層している。図3図5の第2ケースは、樹脂ケース3の内側に露出するように金属プレート4Yをアウトサート成形して固定している。第2ケース2Bの内面に露出する金属プレート4Yは、表面を絶縁している電池1に接触して、電池1の熱エネルギーを効率よく吸収する構造としている。電池1は、表面を熱収縮チューブなどで被覆し、あるいは絶縁皮膜を設けて絶縁している。第2ケース2Bの金属プレート4Yは、複数に分割され、互いに絶縁して樹脂ケース3の内面に固定される。分割して配置された金属プレート4Yは、電位差のある電池1に対向して配置される。この構造は、電位差のある電池1に金属プレート4Yを接触させて効率よく冷却できる。分割された金属プレート4Yは、互いに絶縁して配置されて、電位差のある電池1に接触するので、各々の金属プレート4Yは、電位差のある電池1に接触されるが、互いに絶縁状態に分割されて配置されるので、金属プレート4Yが電池1を短絡することがなく、また、電池1の間に配置される導電性のパーツ、たとえば、電池1を電気接続する金属板のリード板11などに接触してショートさせることがない。
【0054】
図2の電池パック100の電池1は円筒形電池である。さらに電池1はリチウムイオン二次電池などの非水系電解液二次電池である。この電池パック100は、軽量化して充放電できる容量を大きくできる。ただ、電池パックは電池をリチウムイオン二次電池等の非水系電解液二次電池に特定するものでなく、開弁する排出弁から放出ガスを噴出する他の電池も使用できる。
【0055】
この図の電池パック100は、3個の円筒形電池1を直線状に並べて直線状の電池ユニット10としている。直線状に配列される電池1は、リード板11を介して直列に接続される。電池ユニット10は平行姿勢で2列に並べて配置している。3個の電池1を直線状に配置する電池パック100は、金属プレート4Yを3枚に分割して、各々の金属プレート4Yを電池1に接触させて放熱する。第2ケース2Bの金属プレート4Yは、表面プレート部4Aの両側であって、金属周壁4Bとの境界部分を電池1の表面に沿う形状に湾曲して、電池1の接触面積を広くして、電池1を効率よく放熱する。
【0056】
第1ケース2Aは、金属プレート4Xの閉塞領域6に対向して配置されて、2列の電池ユニット10を配置して、各々の電池1からの放出ガスを排煙穴7から外部に排気する。図3図5に示す第1ケース2Aは、金属プレート4Xの閉塞領域6の内側に、複数の電池1を複数列に配置しており、電池1と金属プレート4Xとの間に排煙隙間12を設けている。図に示す第1ケース2Aは、電池1と金属プレート4Xとの間に隙間を設けて排煙隙間12としている。この電池パックは、電池1と金属プレート4Xとの間に形成される排煙隙間12により、電池1と金属プレート4Xとを絶縁するとともに、電池1の排出弁から排出される放出ガスを金属プレート4Xの排煙穴7に向かって通過させる排煙ダクトとしている。図5及び図6における矢印は、電池1の封口板に設けた排出弁が開口し、電池1から排出された放出ガスが排煙穴7から排出される経路を示している。
【0057】
第1ケース2Aは、金属プレート4Xの閉塞領域6の表面にラベル8を付着している。ラベル8は、排煙穴7からの異物の侵入を防止し、また、ユーザーが異物を挿通するのを防止して安全性を向上できる。ラベル8は可撓性の絶縁シートで、放出ガスに押圧されて変形する。ラベル8は接着層9を介して金属プレート4Xの表面に接着される。接着層9は好ましくし粘着層である。接着層9は、放出ガスに加熱され、押圧されてラベル8を金属プレート4Xの表面から剥離する。ラベル8の外形は、金属プレート4Xの閉塞領域6の外形に等しく、閉塞領域6全面に付着されて全ての排煙穴7を閉塞する。ラベル8は、閉塞領域6の全面を被覆するが、全面を閉塞領域6表面に接着されない。ラベル8は、図6図7に示すように、接着層9で接着される閉塞領域6に接着される付着領域8Aと、付着されない非付着領域8Bとを設けている。非付着領域8Bは排煙穴7に連通して設けられ、さらに隣接する排煙穴7を連通して、複数の排煙穴7に連通される。排煙穴7に連結された非付着領域8Bは、排煙穴7を通過した放出ガスが流入する。非付着領域8Bに流入した高温・高圧の放出ガスは、ラベル8を変形してラベル8と金属プレート4Xとの隙間14を拡開してさらに多量の放出ガスを流動させる。非付着領域8Bを流動する放出ガスは、金属プレート4Xの表面を高速流動して金属プレート4Xに熱エネルギーを放熱する。長い非付着領域8Bに流入して、熱エネルギーを金属プレート4Xに伝導した放出ガスは、ラベル8の内面の押圧力を強くしてラベル8を金属プレート4Xから剥離する。長い非付着領域8Bは、放出ガスから金属プレート4Xへの放熱効率を高くできる。非付着領域8Bは、図7に示すように、ジグザグ状や波形として実質経路を長くして、放出ガスの放熱効率を高くできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、放出ガスを安全に排気する電池パックに有効に使用できる。
【符号の説明】
【0059】
100…電池パック
1…電池
2…ケース
2A…第1ケース
2B…第2ケース
3…樹脂ケース
3A…底面プレート部
3B…樹脂周壁
3a…嵌合溝
3b…嵌合凸部
4、4X、4Y…金属プレート
4A…表面プレート部
4B…金属周壁
5…放熱開口
6…閉塞領域
6A…排気領域
7…排煙穴
8…ラベル
8A…付着領域
8B…非付着領域
9…接着層
10…電池ユニット
11…リード板
12…排煙隙間
13…発熱線
14…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7