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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】電解液、電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20241113BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241113BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021533327
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2020138741
(87)【国際公開番号】W WO2022133836
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2021-06-10
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】彭謝学
(72)【発明者】
【氏名】鄭建明
(72)【発明者】
【氏名】唐超
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】須原 宏光
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0144672(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105958120(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111740165(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111628219(CN,A)
【文献】特表2016-536776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I-Aで示される化合物を含む電解液であって、
【化1】
ここで、A、A、Aは、それぞれ独立して、式I-B及び式I-Cから選択され、A、A、及びAの少なくとも2つは、式I-Cであり、
【化2】
ここで、式I-Aにおいて、nは1から10までの整数から選択され、mは0及び1から選択され、
ここで、式I-B及び式I-Cにおいて、数1は、2つの隣接する原子の結合部位を表し、
ここで、R11、R13は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-C10アルキレン基、置換もしくは非置換のC-C10アルケニレン基、置換もしくは非置換のC-C10アルキニレン基、置換もしくは非置換のC-C10アレニレン基、置換もしくは非置換のC-C10アリーレン基、置換もしくは非置換のC-C10脂環式ヒドロカルビレン基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、
12は、それぞれ独立して、ハロゲン、置換もしくは非置換のC-C10アルキル基、置換もしくは非置換のC-C10アルケニル基、置換もしくは非置換のC-C10アルキニル基、置換もしくは非置換のC-C10累積ジエン基、置換もしくは非置換のC-C10アリール基、置換もしくは非置換のC-C10脂環式ヒドロカルビル基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、
前記電解液は、式II-Aで示される化合物を更に含み、
【化5】
ここで、R21、R22は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニル基、置換もしくは非置換のC-Cアルキニル基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、R21及びR22が結合して環状構造を形成していてもよく
前記電解液の質量に対して、前記式I-Aで示される化合物の質量百分率は、0.01%~10%であり、前記式II-Aで示される化合物の質量百分率は、0.5%~2.0%である、電解液。
【数1】
【請求項2】
前記式I-Aで示される化合物は、式(I-1)で示される化合物~式(I-30)で示される化合物の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電解液。
【化3】
【化4】
【請求項3】
前記電解液は、式III-Aで示される化合物、式IV-Aで示される化合物、式V-Aで示される化合物、式V-Bで示される化合物、及びポリニトリル化合物の少なくとも1種を更に含み、
【化6】
ここで、A31、A32、A33、A34は、それぞれ独立して、ハロゲン、式III-X、式III-Y、式III-Zからなる群から選ばれる1種であり、且つ、式III-Yが選択されている場合、環状構造を形成するように、A31、A32、A33、A34における二つ又は四つは、式III-Yから選ばれ、
【化7】
ここで、R31、R33は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニル基からなる群から選ばれ、
32は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキレン基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニレン基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、
数1は、2つの隣接する原子の結合部位を表し、
式III-Yにおいて、O原子は、式III-AにおけるB原子と結合し、kは、0又は1であり、
【化8】
ここで、
数2は、単結合又は二重結合を表し、x、yは、それぞれ独立して、0又は1を表し、
式IV-Aにおける前記数2の一つは単結合を表す場合、x、yのうちの一つは1であり、他の一つは0であり、
式IV-Aにおける前記数2の二つはいずれも単結合を表す場合、x、yはいずれも1であり、
式IV-Aにおける前記数2の二つはいずれも二重結合を表す場合、x、yはいずれも0であり、
42、A43、A45、A46は、それぞれ独立して、ハロゲン、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、式IV-B、式IV-C、式IV-Dからなる群から選ばれ、且つ、式IV-Cが選択されている場合、環状構造を形成するように、A42、A43、A45、A46における二つ又は四つは、式IV-Cから選ばれ、A41、A44は、それぞれ独立して、酸素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、式IV-B、式IV-C、式IV-Dからなる群から選ばれ、且つ、式IV-Cが選択されている場合、環状構造を形成するように、A41、A44は、いずれも式IV-Cから選ばれ、ここで、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、
41、A42、A43、A44、A45、A46は全てフッ素であることはなく、
【化9】
式IV-B、式IV-C、式IV-Dにおいて、
41、R43は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニル基からなる群から選ばれ、
42は、置換もしくは非置換のC-Cアルキレン基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニレン基からなる群から選ばれ、
ここで、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、
式IV-Cにおいて、
O原子は、式IV-AにおけるP原子と結合し、zは、0又は1を表し、
【化10】
ここで、R51、R52、R53、R54は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-C10アルケニル基、置換もしくは非置換のC-C10アルキニル基、置換もしくは非置換のC-C10の脂環式基、置換もしくは非置換のC-C10アリール基、置換もしくは非置換のC-C脂肪族複素環基、置換もしくは非置換のC-C芳香族複素環基、置換もしくは非置換のC-Cヘテロ原子含有官能基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、R51、R52が結合して環状構造を形成していてもよく、R53、R54が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子含有官能基におけるヘテロ原子は、B、N、O、Si、P及びSの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電解液。
【数1】
【数2】
【請求項4】
下記の条件の少なくとも一つを満たす電解液であって、
b)前記電解液の質量に対して、前記式III-Aで示される化合物の質量百分率は、0.1%~5%であり、
c)前記電解液の質量に対して、前記式IV-Aで示される化合物の質量百分率は、0.1%~5%であり、
d)前記電解液の質量に対して、前記式V-Aで示される化合物及び式V-Bで示される化合物の質量百分率の合計は、0.01%~10%であり、及び
e)前記電解液の質量に対して、前記ポリニトリル化合物の質量百分率は、0.1%~10%である、請求項に記載の電解液。
【請求項5】
前記式II-Aで示される化合物は、式(II-1)で示される化合物~式(II-22)で示される化合物の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電解液。
【化11】
【請求項6】
前記式III-Aで示される化合物は、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、及びジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムの少なくとも1種を含む、請求項に記載の電解液。
【請求項7】
前記式IV-Aで示される化合物は、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムの少なくとも1種を含む、請求項に記載の電解液。
【請求項8】
前記式V-Aで示される化合物は、式(V-1)で示される化合物~式(V-16)で示される化合物の少なくとも1種を含み、
【化12】
式V-Bで示される化合物は、式(V-17)で示される化合物~式(V-20)で示される化合物の少なくとも1種を含む、請求項に記載の電解液。
【化13】
【請求項9】
前記ポリニトリル化合物は、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2-ビス(2-シアノエトキシ)エタン、及びアジポニトリルの少なくとも1種を含む、請求項に記載の電解液。
【請求項10】
正極シート、負極シート、セパレータ及び請求項1~のいずれか1項に記載の電解液を含む、電気化学装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学分野に関し、具体的には、電解液、電気化学装置及び電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの電気化学装置は、高いエネルギー密度、高い出力密度及び安定した使用寿命などの特性により、広く注目を集め、広く利用されている。技術の急速な発展、マーケットニーズの多様性、並びに、エネルギー貯蔵システム及び電気自動車産業の将来の勃興に伴い、リチウムイオン電池に対して、より薄い、より軽い、より多様化な外形、より高い安全性、より高いエネルギー密度などの多くの要求がなってきている。
【発明の概要】
【0003】
一部の実施例において、本発明は、式I-Aで示される化合物を含む電解液であって、
【化1】
ここで、A、A、Aは、それぞれ独立して、式I-B及び式I-Cから選択され、A、A、及びAの少なくとも2つは、式I-Cであり、
【化2】
ここで、式I-Aにおいて、nは1から10までの整数から選択され、mは0及び1から選択され、式I-B及び式I-Cにおいて、R11、R13は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-C10アルキレン基、置換もしくは非置換のC-C10アルケニレン基、置換もしくは非置換のC-C10アルキニレン基、置換もしくは非置換のC-C10アレニレン基(allenylene group)、置換もしくは非置換のC-C10アリーレン基、置換もしくは非置換のC-C10脂環式ヒドロカルビレン基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、R12は、それぞれ独立して、ハロゲン、置換もしくは非置換のC-C10アルキル基、置換もしくは非置換のC-C10アルケニル基、置換もしくは非置換のC-C10アルキニル基、置換もしくは非置換のC-C10累積ジエン基(cumulative diene group)、置換もしくは非置換のC-C10アリール基、置換もしくは非置換のC-C10脂環式ヒドロカルビル基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含む電解液を提供する。下記に示す数1は、2つの隣接する原子の結合部位を表す。
【数1】
【0004】
一部の実施例において、式I-Aで示される化合物は、式(I-1)で示される化合物~式(I-30)で示される化合物の少なくとも1種を含む。
【化3】
【化4】
【0005】
一部の実施例において、電解液の質量に対して、式I-Aで示される化合物の質量百分率は、0.01%~10%である。
【0006】
一部の実施例において、電解液は、さらに、式II-Aで示される化合物、式III-Aで示される化合物、式IV-Aで示される化合物、式V-Aで示される化合物、式V-Bで示される化合物、及びポリニトリル化合物の少なくとも1種を含み、
【化5】
ここで、R21、R22は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニル基、置換もしくは非置換のC-Cアルキニル基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、R21及びR22が結合して環状構造を形成していてもよく、
【化6】
ここで、A31、A32、A33、A34は、それぞれ独立して、ハロゲン、式III-X、式III-Y、式III-Zからなる群から選ばれる1種であり、且つ、式III-Yが選択されている場合、環状構造を形成するように、A31、A32、A33、A34における二つ又は四つは、式III-Yから選ばれ、
【化7】
ここで、R31、R33は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニル基からなる群から選ばれ、R32は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキレン基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニレン基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、上記数1は、2つの隣接する原子の結合部位を表し、式III-Yにおいて、O原子は、式III-AにおけるB原子と結合し、kは、0又は1であり、
【化8】
ここで、x、yは、それぞれ独立して、0又は1を表し、式IV-Aにおける上記数2の一つが単結合を表す場合、x、yのうちの一つは1であり、他の一つは0であり、式IV-Aにおける上記数2の二つは、いずれも単結合を表す場合、x、yはいずれも1であり、式IV-Aにおける上記数2の二つは、いずれも二重結合を表す場合、x、yはいずれも0であり、A42、A43、A45、A46は、それぞれ独立して、ハロゲン、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、式IV-B、式IV-C、式IV-Dからなる群から選ばれ、且つ、式IV-Cが選択されている場合、環状構造を形成するように、A42、A43、A45、A46における二つ又は四つは、式IV-Cから選ばれ、A41、A44は、それぞれ独立して、酸素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、式IV-B、式IV-C、式IV-Dからなる群から選ばれ、且つ、式IV-Cが選択されている場合、環状構造を形成するように、A41、A44は、いずれも式IV-Cから選ばれ、ここで、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、A41、A42、A43、A44、A45、A46は全てフッ素であることはなく、
【化9】
式IV-B、式IV-C、式IV-Dにおいて、R41、R43は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニル基からなる群から選ばれ、R42は、置換もしくは非置換のC-Cアルキレン基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニレン基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、式IV-Cにおいて、O原子は、式IV-AにおけるP原子と結合し、zは、0又は1を表し、
【化10】
ここで、R51、R52、R53、R54は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-C10アルケニル基、置換もしくは非置換のC-C10アルキニル基、置換もしくは非置換のC-C10の脂環式基、置換もしくは非置換のC-C10アリール基、置換もしくは非置換のC-C脂肪族複素環基、置換もしくは非置換のC-C芳香族複素環基、置換もしくは非置換のC-Cヘテロ原子含有官能基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、R51、R52が結合して環状構造を形成していてもよく、R53、R54が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子含有官能基におけるヘテロ原子は、B、N、O、Si、P及びSの少なくとも1種を含む。下記の数2は、単結合又は二重結合を表す。
【数2】
【0007】
一部の実施例において、電解液は、下記の条件の少なくとも一つを満たし、a)電解液の質量に対して、式II-Aで示される化合物の質量百分率は、0.01%~10%であり、b)電解液の質量に対して、式III-Aで示される化合物の質量百分率は、0.1%~5%であり、c)電解液の質量に対して、式IV-Aで示される化合物の質量百分率は、0.1%~5%であり、d)電解液の質量に対して、式V-Aで示される化合物及び式V-Bで示される化合物の質量百分率の合計は、0.01%~10%であり、e)電解液の質量に対して、ポリニトリル化合物の質量百分率は、0.1%~10%である。
【0008】
一部の実施例において、式II-Aで示される化合物は、式(II-1)で示される化合物~式(II-22)で示される化合物の少なくとも1種を含む。
【化11】
【0009】
一部の実施例において、式III-Aで示される化合物は、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、及びジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムの少なくとも1種を含む。
【0010】
一部の実施例において、式IV-Aで示される化合物は、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムの少なくとも1種を含む。
【0011】
一部の実施例において、式V-Aで示される化合物は、式(V-1)で示される化合物~式(V-16)で示される化合物の少なくとも1種を含む。
【化12】
式V-Bで示される化合物は、式(V-17)で示される化合物~式(V-20)で示される化合物の少なくとも1種を含む。
【化13】
【0012】
一部の実施例において、ポリニトリル化合物は、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2-ビス(2-シアノエトキシ)エタン、及びアジポニトリルの少なくとも1種を含む。
【0013】
一部の実施例において、本発明は、さらに、正極シート、負極シート、セパレータ及び本発明の電解液を含む電気化学装置を提供する。
【0014】
一部の実施例において、本発明は、さらに、本発明の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0015】
本発明の電解液は、これを用いた電気化学装置の高温貯蔵性能、サイクル性能及びフロート充電性能を著しく向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
開示された実施例は、本発明の単なる例であり、本発明は、様々な形態で実施され得る。従って、本発明の明細書に開示された特定の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に、様々な形態で本発明を実施するように当業者に教示するための特許請求の範囲の基礎として、且つ代表的な基礎として解釈されるべきであることが理解されるべきである。
【0017】
本発明の説明において、特に明記及び限定されない限り、「添加剤A」、「添加剤B」、「添加剤C」、「添加剤D」、「添加剤E」、「添加剤F」などの用語は、単に、説明の目的で使用され、相対的な重要性及び互いに関係あることを示したり暗示したりするものとして理解されることはできない。本発明の説明において、特に明記及び限定されない限り、「式I-A」、「式I-B」、「式I-1」、「式II-A」、「式II-B」、「式II-1」などの用語における文字と数字は、単に、マーキングの目的で使用され、相対的な重要性、互いに関係あること、又は化学元素を示したり暗示したりするものとして理解されることはできない。
【0018】
本発明の説明において、特に断らない限り、全ての化合物の官能基は、置換又は非置換であり得る。
【0019】
本発明の説明において、特に断らない限り、「ヘテロ原子」との用語は、C、H以外の原子を表す。一部の実施例において、ヘテロ原子は、B、N、O、Si、P、Sの少なくとも1種を含む。本発明の説明において、「ヘテロ原子含有官能基」との用語は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む官能基を指す。本発明の説明において、「複素環基」との用語は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む環状基を指す。一部の実施例において、複素環基は、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基の少なくとも1種を含む。
【0020】
本発明の説明において、「脂環式ヒドロカルビル基」との用語は、脂肪族性の環状炭化水素基を表し、分子内に閉環炭素環を有する。
【0021】
本発明の説明において、アルキレン基はアルキル基から水素原子が1つ失われて形成された二価の基であり、アルケニレン基は、アルケニル基から水素原子が1つ失われて形成された二価の基であり、アルキニレン基は、アルキニル基から水素原子が1つ失われて形成された二価の基であり、アルキレンオキシ基は、アルコキシ基から水素原子が1つ失われて形成された二価の基であり、アリーレン基は、アリール基から水素原子が1つ失われて形成された二価の基である。本発明の説明において、明確に説明されていない二価基の構造は、この段落の説明に従って解読される。
【0022】
本発明の説明において、累積ジエン基は、2つの二重結合が一つの炭素を共有する基を表し、累積ジエン基の構造式は、
【化14】
である。
【0023】
本発明の説明において、明確に説明されていない用語、構造式における置換等は、当業者の公知、一般的、慣用の手段又は様式に従って理解されるべきである。
【0024】
以下には、本発明の電解液、電気化学装置、及び電子装置を詳しく説明する。
【0025】
[電解液]
<添加剤A>
一部の実施例において、電解液は、添加剤Aを含有し、添加剤Aは、式(I-A)で示される化合物の少なくとも1種である。
【化15】
ここで、A、A、Aは、それぞれ独立して、式I-B及び式I-Cから選択され、A、A、及びAの少なくとも2つは、式I-Cであり、
【化16】
ここで、式(I-A)において、nは1から10までの整数から選択され、mは0及び1から選択され、式(I-B)及び式(I-C)において、R11、R13は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-C10アルキレン基、置換もしくは非置換のC-C10アルケニレン基、置換もしくは非置換のC-C10アルキニレン基、置換もしくは非置換のC-C10アレニレン基、置換もしくは非置換のC-C10アリーレン基、置換もしくは非置換のC-C10脂環式ヒドロカルビレン基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、R12は、それぞれ独立して、ハロゲン、置換もしくは非置換のC-C10アルキル基、置換もしくは非置換のC-C10アルケニル基、置換もしくは非置換のC-C10アルキニル基、置換もしくは非置換のC-C10累積ジエン基、置換もしくは非置換のC-C10アリール基、置換もしくは非置換のC-C10脂環式ヒドロカルビル基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含む。下記に示す数1は、2つの隣接する原子の結合部位を表す。
【数1】
【0026】
本発明の電解液において、添加剤Aはホスフィンオキシポリシアノ官能基化合物である。ホスフィンオキシポリシアノ官能基化合物の構造に含まれるシアノ(-CN)官能基は、電気化学装置の正極活物質中の遷移金属と錯体を形成することができるので、正極活物質表面の遷移金属を安定化させることができる。同時に、ホスフィンオキシポリシアノ官能基化合物は、分子にホスフィンオキシ官能基があるので、この遷移金属錯体の耐酸化性を向上させ、電解液の連続的な分解を効果的に抑制し、高温でのガス発生を抑制することができる。そのため、当該電解液は、電気化学装置の高温貯蔵性能、サイクル性能及びフロート充電性能を著しく向上させることができる。
【0027】
一部の実施例において、添加剤Aは、式(I-1)で示される化合物~式(I-30)で示される化合物の少なくとも1種を含む。
【化17】
【化18】
【0028】
一部の実施例において、電解液の質量に対して、電解液中の添加剤Aの質量百分率は、0.01%~10%である。一部の実施例において、電解液の質量に対して、添加剤Aの質量百分率が0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%であってもい。
【0029】
<添加剤B>
一部の実施例において、電解液は、さらに、添加剤Bを含んでもよく、添加剤Bは、式(II-A)で示される化合物の少なくとも1種である。
【化19】
ここで、R21、R22は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニル基、置換もしくは非置換のC-Cアルキニル基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、R21及びR22が結合して環状構造を形成していてもよい。
添加剤Bはカルボン酸無水物系化合物である。添加剤Aと添加剤Bを同時に電解液に添加すると、電気化学装置の高温貯蔵性能をさらに向上させることができる。カルボン酸無水物が正極活物質及び負極活物質の表面に膜を形成することができ、正極の表面の活物質のアルカリ性を中和することもできるので、電解液の分解をさらに抑制し、ガス発生が少なくなって、高温貯蔵性能を向上させることができると考えられる。
【0030】
一部の実施例において、添加剤Bは、式(II-1)で示される化合物~(II-22)で示される化合物の少なくとも1種を含む。
【化20】
【0031】
一部の実施例において、電解液の質量に対して、電解液中の添加剤Bの質量百分率は、0.01%~10%である。一部の実施例において、電解液の質量に対して、添加剤Bの質量百分率が0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%であってもい。
【0032】
<添加剤C>
一部の実施例において、電解液は、さらに、添加剤Cを含んでもよく、添加剤Cは、式(III-A)で示される化合物の少なくとも1種である。
【化21】
ここで、A31、A32、A33、A34は、それぞれ独立して、ハロゲン、式(III-X)、(式III-Y)、(式III-Z)からなる群から選ばれる1種であり、且つ、式(III-Y)が選択されている場合、環状構造を形成するように、A31、A32、A33、A34における二つ又は四つは、式(III-Y)から選ばれ、
【化22】
ここで、R31、R33は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニル基からなる群から選ばれ、R32は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキレン基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニレン基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、上記数1は、2つの隣接する原子の結合部位を表し、式(III-Y)において、O原子は、式(III-A)におけるB原子と結合し、kは、0又は1である。
【0033】
添加剤Cはホウ素系リチウム塩化合物である。添加剤Aと添加剤Cを同時に電解液に添加すると、電気化学装置の高温貯蔵性能をさらに向上させることができる。ホウ素系リチウム塩化合物が正極活物質の表面に安定な界面膜を形成し、正極と電解液との接触をさらに減らし、電解液の分解を減らして、さらに高温貯蔵性能を向上させることができると考えられる。
【0034】
一部の実施例において、添加剤Cは、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、及びジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)の少なくとも1種を含む。
【0035】
一部の実施例において、電解液の質量に対して、電解液中の添加剤Cの質量百分率は、0.1%~5%である。一部の実施例において、電解液の質量に対して、電解液中の添加剤Cの質量百分率は、0.2%、0.3%、0.5%、1%、2%、3%であってもい。
【0036】
<添加剤D>
一部の実施例において、電解液は、さらに、添加剤Dを含んでもよく、添加剤Dは、式(IV-A)で示される化合物の少なくとも1種である。
【化23】
ここで、x、yは、それぞれ独立して、0又は1を表し、式(IV-A)における上記数2の一つが単結合を表す場合、x、yのうちの一つは1であり、他の一つは0であり、式(IV-A)における上記数2の二つは、いずれも単結合を表す場合、x、yはいずれも1であり、式(IV-A)における数2の二つは、いずれも二重結合を表す場合、x、yはいずれも0であり、A42、A43、A45、A46は、それぞれ独立して、ハロゲン、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、式(IV-B)、式(IV-C)、式(IV-D)からなる群から選ばれ、且つ、式(IV-C)が選択されている場合、環状構造を形成するように、A42、A43、A45、A46における二つ又は四つは、式(IV-C)から選ばれ、A41、A44は、それぞれ独立して、酸素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、式(IV-B)、式(IV-C)、式(IV-D)からなる群から選ばれ、且つ、式(IV-C)が選択されている場合、環状構造を形成するように、A41、A44は、いずれも式(IV-C)から選ばれ、ここで、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、A41、A42、A43、A44、A45、A46は全てフッ素であることはなく、
【化24】
式(IV-B)、式(IV-C)、式(IV-D)において、R41、R43は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニル基からなる群から選ばれ、R42は、置換もしくは非置換のC-Cアルキレン基、置換もしくは非置換のC-Cアルケニレン基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、式(IV-C)において、O原子は、式(IV-A)におけるP原子と結合し、zは、0又は1を表す。下記数2は、単結合又は二重結合を表す。
【数2】
【0037】
添加剤Dはリン系リチウム塩化合物である。添加剤Aと添加剤Dを同時に電解液に添加すると、電気化学装置の高温貯蔵性能をさらに向上させることができる。リン系リチウム塩化合物が正極活物質の表面に界面膜を形成し、且つ、リン系リチウム塩化合物を含む界面膜の耐酸化性が高く、電解液の酸化分解をさらに抑制し、ガス発生が少ないことができて、さらに高温貯蔵性能を向上させることができると考えられる。
【0038】
一部の実施例において、添加剤Dは、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDFOP)、及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(LiTFOP)の少なくとも1種を含む。
【0039】
一部の実施例において、電解液の質量に対して、電解液中の前記添加剤Dの質量百分率は、0.1%-5%である。一部の実施例において、電解液の質量に対して、電解液中の添加剤Dの質量百分率は、0.2%、0.3%、0.5%、1%、2%、3%であってもい。
【0040】
<添加剤E>
一部の実施例において、電解液は、さらに、添加剤Eを含んでもよく、添加剤Eは、式(V-A)で示される化合物及び式(V-B)で示される化合物の少なくとも1種である。
【化25】
ここで、R51、R52、R53、R54は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC-Cアルキル基、置換もしくは非置換のC-C10アルケニル基、置換もしくは非置換のC-C10アルキニル基、置換もしくは非置換のC-C10の脂環式基、置換もしくは非置換のC-C10アリール基、置換もしくは非置換のC-C脂肪族複素環基、置換もしくは非置換のC-C芳香族複素環基、置換もしくは非置換のC-Cヘテロ原子含有官能基からなる群から選ばれ、置換されている場合、置換基は、ハロゲンを含み、R51、R52が結合して環状構造を形成していてもよく、R53、R54が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子含有官能基におけるヘテロ原子は、B、N、O、Si、P及びSの少なくとも1種を含む。
【0041】
添加剤Eは、硫黄-酸素二重結合官能基含有化合物である。硫黄-酸素二重結合含有化合物は強力な抗酸化能を持っているので、正極活物質の表面で電解液が酸化されにくくなる。一方、硫黄-酸素二重結合官能基含有化合物は負極活物質の表面に膜を形成することができるので、活物質の保護をさらに強化することができる。
【0042】
一部の実施例において、式(V-A)で示される化合物は、式(V-1)で示される化合物~式(V-16)で示される化合物の少なくとも1種を含む。
【化26】
【0043】
一部の実施例において、式(V-B)で示される化合物は、式(V-17)で示される化合物~式(V-20)で示される化合物の少なくとも1種を含む。
【化27】
【0044】
一部の実施例において、電解液の質量に対して、電解液中の添加剤Eの質量百分率は、0.01%~10%であり、好ましくは、0.1%~8%である。一部の実施例において、電解液の質量に対して、電解液中の添加剤Eの質量百分率が0.02%、0.05%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、6.0%、7.0%、9.0%であってもい。
【0045】
<添加剤F>
一部の実施例において、電解液は、さらに、添加剤Fを含んでもよい。添加剤Fは、ポリニトリル化合物である。一部の実施例において、ポリニトリル化合物は、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2-ビス(2-シアノエトキシ)エタン、及びアジポニトリルの少なくとも1種を含む。
【0046】
添加剤Aと添加剤Fを同時に電解液に添加すると、電気化学装置の高温貯蔵性能及びサイクル性能をさらに向上させることができる。添加剤Aの添加量が多すぎると、電解液の粘度が高くなりすぎて電気化学装置の動的性能に影響を与え、サイクル性能が低下すると考えられるが、添加剤Fの添加により、電解液の粘度が高くなりすぎることを効果的に防止でき、正極活物質の安定性を効果的に高めることができ、電解液の分解をさらに減少させて、電気化学装置の高温貯蔵性能及びサイクル性能を向上させることができると考えられる。
【0047】
一部の実施例において、電解液の質量に対して、電解液中の添加剤Fの質量百分率は、0.01%~10%であり、好ましくは、0.5%~5%である。一部の実施例において、電解液の質量に対して、電解液中の添加剤Fの質量百分率が0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、6.0%、7.0%、9.0%であってもい。
【0048】
一部の実施例において、添加剤A及び添加剤Fを同時に電解液に添加する場合、添加剤Aの質量百分率と添加剤Fの質量百分率との比は0.01~1である。
【0049】
本発明の前記添加剤について、電解液に添加剤Aを含有する場合、添加剤B、添加剤C、添加剤D、添加剤E、及び添加剤Fの少なくとも1種を添加することもできる。電解液において、添加剤Aと添加剤B、添加剤C、添加剤D、添加剤E、及び添加剤Fの少なくとも1種を組み合わせて使用することにより、電気化学装置の電気化学的性能をさらに改善することができる。
【0050】
<有機溶媒>
一部の実施例において、電解液は、さらに、有機溶媒を含む。有機溶媒は、電気化学装置に適した本技術分野において周知の有機溶媒であり、例えば非水系有機溶媒が通常に使用されるものである。一部の実施例において、非水系有機溶媒は、カーボネート系溶媒、カルボン酸エステル系溶媒、エーテル系溶媒、スルホン系溶媒、及びその他の非プロトン性溶媒の少なくとも1種を含む。
【0051】
一部の実施例において、カーボネート系溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートの少なくとも1種を含む。
【0052】
一部の実施例において、カルボン酸エステル系溶媒は、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酢酸2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロ酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、バレロラクトン、及びブチロラクトンの少なくとも1種を含む。
【0053】
一部の実施例において、エーテル系溶媒は、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランの少なくとも1種を含む。
【0054】
一部の実施例において、スルホン系溶媒は、エチルビニルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、イソプロピルsec-ブチルスルホン、スルホランの少なくとも1種を含む。
【0055】
本発明では、電解液中の有機溶媒は、非水系有機溶媒を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。混合溶媒を使用する場合、混合比を制御することにより、異なる性能の電気化学装置を得ることができる。
【0056】
<電解質塩>
一部の実施例において、電解液は、さらに、電解質塩を含む。電解質塩は、電気化学装置に適した本技術分野において周知の電解質塩である。さまざまな電気化学装置に対して、適切な電解質塩を選択することができる。例えば、リチウムイオン電池に対して、電解質塩は、一般的にリチウム塩を使用する。
【0057】
一部の実施例において、リチウム塩は、有機リチウム塩又は無機リチウム塩の少なくとも一種を含む。
【0058】
一部の実施例において、本発明に用いるリチウム塩は、フッ素元素、リン元素の少なくとも一種を含む。
【0059】
一部の実施例において、本発明のリチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ビススルホンイミドリチウム(LiN(C2y+1SO)(C2z+1SO)、ここで、y及びzは自然数である)の少なくとも一種を含む。
【0060】
一部の実施例において、電解液の体積の合計で、電解液中のリチウム塩の濃度は、約0.5-3mol/Lであり、好ましくは約0.5-2mol/Lであり、より好ましくは約0.8-1.5mol/Lである。
【0061】
本発明では、電解液の調製方法は限定されず、当業者に周知の電解液の従来の調製方法に従って調製することができる。
【0062】
[電気化学装置]
次に、本発明の電気化学装置を説明する。
【0063】
本発明の電気化学装置は、例えば、一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、又はコンデンサである。二次電池は、例えば、リチウム二次電池である。リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム重合体二次電池、又はリチウムイオン重合体二次電池を含むが、これらに限定されない。
【0064】
一部の実施例において、電気化学装置は、正極シート、負極シート、セパレータ及び本発明の前記電解液を含む。
【0065】
一部の実施例において、本発明の電気化学装置の充電カットオフ電圧は4.2V以上である。
【0066】
<正極シート>
正極シートは、電気化学装置に使用され得る本技術分野において周知の正極シートである。一部の実施例において、正極シートは、正極集電体と、正極集電体に設けられた正極活物質層とを含む。正極活物質層は、正極活物質、正極導電剤、及び正極バインダーを含む。
【0067】
正極活物質は、電気化学装置の正極活物質として使用され得、活性イオンを可逆的に挿入及び脱離することができる本技術分野において周知の物質を使用してもよい。一部の実施例において、正極活物質は、リチウムと、コバルト、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも一種とを含む複合酸化物を含む。
【0068】
一部の実施例において、正極活物質は、
Li1-b(ここで、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5)、Li1-b2-c(ここで、0.90≦a≦1.8,0<b≦0.5,0≦c≦0.05)、LiE2-b4-c(ここで、0≦b≦0.5,0≦c≦0.05)、LiNi1-b-cCoα(ここで、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α≦2)、LiNi1-b-cCo2-αα(ここで、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2)、LiNi1-b-cCo2-α(ここで、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2)、LiNi1-b-cMnα(ここで、0.90≦a≦1.8,0<b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2)、LiNi1-b-cMn2-αα(ここで、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2)、LiNi1-b-cMn2-α(ここで、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2)、LiNi(ここで、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0.001≦d≦0.1)、LiNiCoMn(ここで、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0≦d≦0.5,0.001≦e≦0.1)、LiNiG(ここで、0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1)、LiCoG(ここで、0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1)、LiMnG(ここで、0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1)、LiMn(ここで、0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1)、QO、QS、LiQS、V、LiV、LiIO、LiNiVO、Li3-f(PO(0≦f≦2)、Li3-fFe(PO(0≦f≦2)及びLiFePOの少なくとも1種を含む。
【0069】
上記の化学式において、AはNi、Co、Mn又はそれらの組み合わせであり、BはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素又はそれらの組み合わせであり、DはO、F、S、P又はその組み合わせであり、EはCo、Mn又はその組み合わせであり、FはF、S、P又はその組み合わせであり、GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V又はその組み合わせであり、QはTi、Mo、Mn又はそれらの組み合わせであり、IはCr、V、Fe、Sc、Y又はそれらの組み合わせであり、JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cu又はそれらの組み合わせである。
【0070】
一部の実施例において、前記正極活物質のD10が18μm以下である。
【0071】
一部の実施例において、前記正極活物質の比表面積BETが0.5m/g以下である。
【0072】
正極導電剤は、正極に導電性を提供するために使用され、正極の導電率を改善することができる。正極導電剤は、正極活物質層として使用され得る本技術分野において周知の導電材である。正極導電剤は、化学変化を引き起こさない限り、任意の導電材から選ばれることができる。一部の実施例において、正極導電剤は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素による材料;例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含む金属粉末又は金属繊維などの金属による材料;例えば、ポリフェニレン誘導体などの導電性重合体;の少なくとも1種を含む。
【0073】
正極バインダーは、正極活物質層として使用され得る本技術分野において周知のバインダーである。正極バインダーは、正極活物質粒子同士の粘着性能、及び、正極活物質粒子と正極集電体との粘着性能を改善することができる。一部の実施例において、正極バインダーは、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンの少なくとも1種を含む。
【0074】
一部の実施例において、正極活物質層の圧縮密度は、4.5g/cm未満である。一部の実施例において、正極活物質層の圧縮密度は、4.0-4.3g/cmである。
【0075】
正極集電体は、金属であり、一部の実施例において、金属は、例えば、アルミニウム箔であるが、これに限定されない。
【0076】
一部の実施例において、正極シートの構造は、電気化学装置に使用され得る本技術分野において周知の正極シートの構造である。
【0077】
一部の実施例において、正極シートの調製方法は、電気化学装置に使用され得る本技術分野において周知の正極シートの調製方法である。一部の実施例において、正極スラリーの調製では、通常、正極活物質とバインダーを添加し、必要に応じて導電材と増粘剤を添加し、溶媒に溶解又は分散させて、正極スラリーを作製する。溶媒は、乾燥プロセス中に揮発して除去される。溶媒は、正極活物質層として使用され得る本技術分野において周知の溶媒であり、溶媒は、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)であるが、これに限定されない。
【0078】
<負極シート>
負極シートは、電気化学装置に使用され得る本技術分野において周知の負極シートである。一部の実施例において、負極シートは、負極集電体と、負極集電体に設けられた負極活物質層とを含む。負極活物質層は、負極活物質、負極導電剤、及び負極バインダーを含む。
【0079】
負極活物質は、電気化学装置の負極活物質として使用され得、活性イオンを挿入と脱離すること、及び活性イオンをドープとアンドープすることができる本技術分野において周知の物質を使用してもよい。
【0080】
一部の実施例において、負極活物質は、リチウム金属、リチウム金属合金、リチウムをドープ/アンドープすることができる材料、遷移金属酸化物、及び炭素材料の少なくとも1種を含む。
【0081】
一部の実施例において、リチウム金属合金は、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、並びに、リチウムを含む。
【0082】
一部の実施例において、リチウムをドープ/アンドープすることができる材料は、Si、SiO(0<x<2)、Si/C複合化物、Si-Q合金(ここで、Qは、Siではなく、且つ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族~第16族元素、遷移元素、希土類元素又はそれらの組み合わせである)、Sn、SnO(0<z<2)、Sn/C複合化物、Sn-R合金(ここで、Rは、Snではなく、且つ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族~第16族元素、遷移元素、希土類元素又はそれらの組み合わせである)の少なくとも1種を含む。
【0083】
ここで、Q及びRの例示的な元素は、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poの少なくとも1種であってもよい。
【0084】
一部の実施例において、SiO(0<x<2)は、多孔質シリコン系負極活物質であり、多孔質SiO粒子の平均粒子径D50は1μm~20μmである。一部の実施例において、表面で測定を行う場合、SiO粒子の気孔の平均直径は30nm~500nmであり、SiO粒子の比表面積は5m/g~50m/gである。一部の実施例において、前記SiO粒子シリコン系負極活物質は、さらに、LiSiO及びLiSiOの少なくとも1種を含有してもよい。
【0085】
一部の実施例において、Si/C複合化物における炭素は、凝集して塊状にSi粒子内に分散するのではなく、原子状態でSi粒子内に均一に分散する。一部の実施例において、CとSiとのモル比(即ち、C/Si)は、0超18未満の範囲内にあり得る。一部の実施例において、Si/C複合化物の総重量に対して、Si/C複合化物における炭素の含有量は1%-50%である。一部の実施例において、Si/C複合化物の粒子径は、10nm-100μmであり得る。
【0086】
炭素材料は、電気化学装置の炭素による負極活物質として使用され得る本技術分野において周知の様々な炭素材料を選択して使用することができる。一部の実施例において、炭素材料は、結晶性炭素及びアモルファス炭素の少なくとも1種を含む。一部の実施例において、結晶性炭素は、天然黒鉛又は人造黒鉛である。一部の実施例において、結晶性炭素の形状は、アモルファス、プレート形状、プレートレット形状、球形、又は繊維形状である。一部の実施例において、結晶性炭素は、低結晶性炭素及び高結晶性炭素である。一部の実施例において、低結晶性炭素は、ソフトカーボン及びハードカーボンの少なくとも1種を含む。一部の実施例において、高結晶性炭素は、天然黒鉛、結晶性黒鉛、熱分解炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズカーボンビーズ、メソフェーズピッチ、及び高温焼成炭の少なくとも1種を含む。一部の実施例において、高温焼成炭は、石油又はコールタールピッチ由来のコークスである。一部の実施例において、アモルファス炭素は、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化生成物、及び燃焼コークスの少なくとも1種を含む。
【0087】
負極導電剤は、負極に導電性を提供するために使用され、負極の導電率を改善することができる。負極導電剤は、負極活物質層として使用され得る本技術分野において周知の導電材である。負極導電剤は、化学変化を引き起こさない限り、任意の導電材から選ばれることができる。一部の実施例において、負極導電剤は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素による材料;例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含む金属粉末又は金属繊維などの金属による材料;例えば、ポリフェニレン誘導体などの導電性重合体;の少なくとも1種を含む。
負極バインダーは、負極活物質層として使用され得る本技術分野において周知のバインダーである。一部の実施例において、負極バインダーは、ジフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-co-HFP)、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンの少なくとも1種を含む。
【0088】
負極集電体は、金属である。一部の実施例において、負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、発泡ニッケル、発泡銅、導電性金属被覆重合体基板、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
一部の実施例において、負極シートの構造は、電気化学装置に使用され得る本技術分野において周知の負極シートの構造である。
【0090】
一部の実施例において、負極シートの調製方法は、電気化学装置に使用され得る本技術分野において周知の負極シートの調製方法である。一部の実施例において、負極スラリーの調製では、通常、負極活物質とバインダーを添加し、必要に応じて導電材と増粘剤を添加し、溶媒に溶解又は分散させて、負極スラリーを作製する。溶媒は、乾燥プロセス中に揮発して除去される。溶媒は、負極活物質層として使用され得る本技術分野において周知の溶媒であり、溶媒は、例えば、水であるが、これに限定されない。増粘剤は、負極活物質層として使用され得る本技術分野において周知の増粘剤であり、増粘剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムであるが、これに限定されない。
【0091】
<セパレータ>
セパレータは、電気化学装置に使用され得る本技術分野において周知のセパレータであり、例えば、ポリオレフィン系多孔質膜であるが、これに限定されない。一部の実施例において、ポリオレフィン系多孔質膜は、ポリエチレン(PE)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリプロピレン(PP)、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体からなる群から選ばれる一種又は多種からなる単層フィルム又は多層フィルムである。
【0092】
一部の実施例において、ポリオレフィン系多孔質膜には、コート層が被覆されている。一部の実施例において、コート層は、有機コート層及び無機コート層を含む。一部の実施例において、有機コート層は、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、アクリル酸-スチレン共重合体、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムの少なくとも1種を含む。一部の実施例において、無機コート層は、SiO、Al、CaO、TiO、ZnO、MgO、ZrO及びSnOの少なくとも1種を含む。
【0093】
本発明は、セパレータの形状及び厚みについて特に制限していない。セパレータの調製方法は、電気化学装置に使用され得る本技術分野において周知のセパレータの調製方法である。
【0094】
<外装ケース>
一部の実施例において、電気化学装置は、さらに外装ケースを含む。外装ケースは、電気化学装置に使用され得、使用された電解液に対して安定である、本技術分野において周知の外装ケースである。外装ケースとしては、金属系外装ケースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
[電子装置]
最後には、本発明の電子装置を説明する。
【0096】
本発明の電子装置は、例えば、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、リチウムイオンコンデンサーなどの任意の電子装置であるが、これらに限定されない。なお、本発明の電気化学装置は、上記の電子装置に加えて、エネルギー貯蔵発電所、海上輸送工具、及び航空輸送工具にも適している。航空輸送装置は、大気中の航空輸送装置及び大気外の航空輸送装置を含む。
【0097】
一部の実施例において、電子装置は、本発明の前記電気化学装置を含む。
【0098】
以下では、実施例を参照して、本発明をさらに説明する。本発明の以下の具体的な実施形態では、電池がリチウムイオン電池である実施形態のみが示されているが、本発明はそれに限定されない。以下の実施例及び比較例において、使用される試薬、材料、及び機器は、別に断らない限り、すべて市販又は合成的に入手可能なものである。
【0099】
実施例に使用される具体的な化合物は、以下のとおりである。
添加剤A:
【化28】
添加剤B:
クエン酸無水物
【化29】
2,3-ジメチルマレイン酸無水物
【化30】
添加剤C:
テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)。
添加剤D:
ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(LiTFOP)。
添加剤E:
2,4-ブタンスルトン
【化31】
1,3-プロパンスルトン
【化32】
エチレンスルファート
【化33】
4-メチルエチレンスルファート
【化34】
添加剤F:
1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン
【化35】
1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル
【化36】
アジポニトリル
【化37】
1,2-ビス(2-シアノエトキシ)エタン
【化38】
【0100】
実施例1-62、比較例1-6、実施例S1-S11、及び比較例′のリチウムイオン電池は、すべて以下の方法で作製した。
【0101】
(1)電解液の調製
含水量が10ppm未満のアルゴン雰囲気グローブボックスで、エチレンカーボネート(ECと略記する)、プロピレンカーボネート(PCと略記する)、ジエチルカーボネート(DECと略記する)、プロピオン酸エチル(EPと略記する)、プロピオン酸プロピル(PPと略記する)を1:1:1:1:1の質量比で均一に混合して、非水性有機溶媒が得られ、完全に乾燥したリチウム塩LiPF(1M)を上記非水性有機溶媒に溶解して、基礎電解液を得た。所定の質量の添加剤を基礎電解液に添加して、実施例1-62、比較例1-6、実施例S1-S11、及び比較例S′の電解液を調製した。
【0102】
(2)正極シートの調製
正極活物質であるLCO(分子式がLiCoOである)、導電性カーボンブラック、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDFと略記する)を97.9:0.9:1.2の重量比で溶媒である適量のN-メチルピロリドン(NMPと略記する)に十分攪拌し、混合して、均一な正極スラリーを形成した。当該スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に塗布し、乾燥し、コールドプレスして、正極シートを得た。
【0103】
(3)負極シートの調製
負極活物質であるグラファイト、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBRと略記する)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCと略記する)を97.4:1.4:1.2の重量比で溶媒である適量の脱イオン水に十分攪拌し、混合して、均一な負極スラリーを形成した。当該スラリーを負極集電体であるCu箔に塗布し、乾燥し、コールドプレスして、負極シートを得た。
【0104】
(4)セパレータの調製
セパレータとしては、PE多孔質ポリマーフィルムを使用した。
【0105】
(5)リチウムイオン電池の調製
セパレータが正極シートと負極シートとの間に介在して隔離の役割を果たすように、調製された正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層して、次に、巻き取って電極アセンブリを得た。電極アセンブリを外装箔に入れ、液体注入口を残し、上記にて調製した電解液を液体注入口から注いだ。真空パッケージ、静置、化成、整形などの工程を経って、リチウムイオン電池の調製を完了した。
【0106】
次には、実施例1-62、比較例1-6、実施例S1-S11、及び比較例S′のリチウムイオン電池の性能試験手順を説明する。
【0107】
(1)4.45Vでの高温貯蔵性能試験
電池を25℃で0.5Cの定電流で4.45Vまで充電し、次に定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、リチウムイオン電池の厚みを測定し、d0として記録し、85℃のオーブンに24h間入れ、この時の厚みを監視し、dとして記録した。24hの高温貯蔵後のリチウムイオン電池の厚み膨張率(%)=(d-d0)/d0×100%である。厚み膨張率が50%を超えると、試験を中止した。
【0108】
(2)4.5Vでの高温貯蔵性能試験
電池を25℃で0.5Cの定電流で4.5Vまで充電し、次に定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、リチウムイオン電池の厚みを測定し、d0として記録し、85℃のオーブンに24h間入れ、この時の厚みを監視し、dとして記録した。24hの高温貯蔵後のリチウムイオン電池の厚み膨張率(%)=(d-d0)/d0×100%である。厚み膨張率が50%を超えると、試験を中止した。
【0109】
(3)サイクル性能試験
電池を25℃の条件下で0.7Cで4.45Vまで充電し、4.45Vの条件下で定電圧で0.05Cまで充電した。その後、1Cの電流で3.0Vまで放電し、0.7Cで充電して1Cで放電する過程で800サイクルを行い、この時の容量維持率を記録した。
【0110】
(4)フロート充電性能試験
電池を25℃で0.5Cで3.0Vまで放電し、次に0.5Cで4.45Vまで充電し、4.45Vで0.05Cまで定電圧充電し、リチウムイオン電池の厚みを測定し、d0として記録し、45℃のオーブンに入れ、4.45Vで42日間に定電圧充電し、厚みの変化を監視し、厚みはdとして記録した。リチウムイオン電池のフロート充電の厚み膨張率(%)=(d-d0)/d0×100%である。
【0111】
実施例1-62、比較例1-6、実施例S1-S11、及び比較例S′に使用された電解液における添加剤の種類や含有量とリチウムイオン電池の性能試験結果は、それぞれ表1-4に示す。ここで、各添加剤の含有量は、電解液の質量に対して得られた質量百分率である。
【0112】
【表1】
注:表1中の空白部分は未添加を示す。
【0113】
表1の実施例及び比較例から、添加剤Aとしての化合物I-5は、リチウムイオン電池の4.45V高温貯蔵性能を改善できるだけでなく、4.5V高温貯蔵性能も改善でき、それと同時に、電池のサイクル性能も大幅に向上することがわかる。異なる充電カットオフ電圧に対して、改善効果が異なる。含有量が増えるにつれて、改善の度合いは最初に増加し、次に減少し、最後にバランスを取る傾向がある。添加剤Aでもある化合物I-11、I-12及びI-30は、さまざまな充電カットオフ電圧でのリチウム電池の高温貯蔵性能及びサイクル性能もさまざまな程度で改善される。添加剤Aを含む電解液に添加剤Eを添加すると、異なる充電カットオフ電圧でのリチウム電池の高温貯蔵性能及びサイクル性能がさらに改善される。
【0114】
比較例1の添加剤は、シアノ基及びホスフィノオキシ基も含むが、その高温貯蔵性能及びサイクル性能は、添加剤Aを含む実施例よりもはるかに劣っている。添加剤Aはホスフィンオキシポリシアノ官能基化合物であるので、その構造に含まれるシアノ(-CN)官能基は、正極活物質における遷移金属と錯体を形成することができるため、正極活物質表面の遷移金属を安定化させることができるとともに、分子にホスフィンオキシ官能基があるので、シアノと同時に正極活物質の表面に付着させて、当該遷移金属錯体の耐酸化性を向上させ、これにより、電解液の連続的な分解を効果的に抑制し、高温でのガス発生を抑制することができると考えられる。
【0115】
【表2】
注:表2中の空白部分は未添加を示す。
【0116】
表2の実施例及び比較例から、添加剤Aを含む電解液に添加剤Cを添加すると、4.5Vでのリチウムイオン電池の高温貯蔵性能がさらに向上することがわかる。
【0117】
【表3】
注:表3中の空白部分は未添加を示す。
【0118】
表3の実施例及び比較例から、添加剤Aと添加剤Fを組み合わせて使用することで、リチウムイオン電池のフロート充電性能を大幅に向上させることができると分かる。
【0119】
【表4】
注:表4中の空白部分は未添加を示す。
【0120】
表4の実施例及び比較例から、添加剤C~Fの複数種と添加剤Aを組み合わせて使用することで、リチウムイオン電池の高温貯蔵性能を大幅に向上させることができると分かる。
【0121】
実施例63-80、及び比較例7-9のリチウムイオン電池は、すべて以下の方法で作製した。
【0122】
(1)電解液の調製
含水量が10ppm未満のアルゴン雰囲気グローブボックスで、エチレンカーボネート(ECと略記する)、プロピレンカーボネート(PCと略記する)、ジエチルカーボネート(DECと略記する)を3:3:4の質量比で均一に混合し、完全に乾燥したリチウム塩LiPF(1M)を上記非水性有機溶媒に溶解して、基礎電解液を得た。所定の質量の添加剤を基礎電解液に添加して、実施例63-80、及び比較例7-9の電解液を調製した。
【0123】
(2)正極シートの調製
正極活物質であるNCM811(分子式がLiNi0.8Mn0.1Co0.1である)、導電剤であるアセチレンブラック、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDFと略記する)を96:2:2の重量比で溶媒である適量のN-メチルピロリドン(NMPと略記する)に十分攪拌し、混合して、均一な正極スラリーを形成した。当該スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に塗布し、乾燥し、コールドプレスして、正極シートを得た。
【0124】
(3)負極シートの調製
負極活物質であるグラファイト、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBRと略記する)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCと略記する)を97.4:1.4:1.2の重量比で溶媒である適量の脱イオン水に十分攪拌し、混合して、均一な負極スラリーを形成した。当該スラリーを負極集電体であるCu箔に塗布し、乾燥し、コールドプレスして、負極シートを得た。
【0125】
(4)セパレータの調製
セパレータとしては、PE多孔質ポリマーフィルムを使用した。
【0126】
(5)リチウムイオン電池の調製
セパレータが正極シートと負極シートとの間に介在して隔離の役割を果たすように、調製された正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層して、次に、巻き取って電極アセンブリを得た。電極アセンブリを外装箔に入れ、液体注入口を残し、上記にて調製した電解液を液体注入口からに注いだ。真空パッケージ、静置、化成、整形などの工程を経って、リチウムイオン電池の調製を完了した。
【0127】
続いて、実施例63-80及び比較例7-9のリチウムイオン電池の85℃での高温貯蔵性能の試験プロセスを説明する。
【0128】
電池を25℃で0.5Cの定電流で4.25Vまで充電し、次に定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、リチウムイオン電池の厚みを測定し、d0として記録し、85℃のオーブンに24h間入れ、この時の厚みを監視し、dとして記録した。24hの高温貯蔵後のリチウムイオン電池の厚み膨張率(%)=(d-d0)/d0×100%である。厚み膨張率が50%を超えると、試験を中止した。
【0129】
実施例63-80、及び比較例7-9に使用された電解液における添加剤の種類や含有量とリチウムイオン電池の性能試験結果は、表5に示す。ここで、各添加剤の含有量は、電解液の質量に対して得られた質量百分率である。
【0130】
【表5】
注:表5中の空白部分は未添加を示す。
【0131】
表5の実施例及び比較例から、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(LiTFOP)がカソードに膜を形成することができ、電解液の連続的な酸化と連続的な分解を抑制し、ガス発生を低減できることがわかる。そのため、添加剤Aを含有する電解液に添加剤Dを添加すると、高温貯蔵性能をさらに向上させることができる。
【0132】
実施例81-96、及び比較例10-12のリチウムイオン電池は、すべて以下の方法で作製した。
【0133】
(1)電解液の調製
含水量が10ppm未満のアルゴン雰囲気グローブボックスで、エチレンカーボネート(ECと略記する)、プロピレンカーボネート(PCと略記する)、ジエチルカーボネート(DECと略記する)、プロピオン酸エチル(EPと略記する)を1:2:6:1の質量比で均一に混合し、完全に乾燥したリチウム塩LiPF(1M)を上記非水性有機溶媒に溶解して、基礎電解液を得た。所定の質量の添加剤を基礎電解液に添加して、実施例81-96、及び比較例10-12の電解液を調製した。
【0134】
(2)正極シートの調製
正極活物質であるLCO(分子式がLiCoOである)、導電性カーボンブラック、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDFと略記する)を97.9:0.9:1.2の重量比で溶媒である適量のN-メチルピロリドン(NMPと略記する)に十分攪拌し、混合して、均一な正極スラリーを形成した。当該スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に塗布し、乾燥し、コールドプレスして、正極シートを得た。
【0135】
(3)負極シートの調製
負極活物質であるグラファイト、ケイ素酸素材料、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCと略記する)、変性ポリアクリル酸を87:10:0.6:2.4の重量比で適量の脱イオン水溶媒に十分攪拌し、混合して、均一な負極スラリーを形成した。当該スラリーを負極集電体であるCu箔に塗布し、乾燥し、コールドプレスして、負極シートを得た。
【0136】
(4)セパレータの調製
セパレータとしては、PE多孔質ポリマーフィルムを使用した。
【0137】
(5)リチウムイオン電池の調製
セパレータが正極シートと負極シートとの間に介在して隔離の役割を果たすように、調製された正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層して、次に、巻き取って電極アセンブリを得た。電極アセンブリを外装箔に入れ、液体注入口を残し、上記にて調製した電解液を液体注入口からに注いだ。真空パッケージ、静置、化成、整形などの工程を経って、リチウムイオン電池の調製を完了した。
【0138】
続いて、実施例81-96及び比較例10-12のリチウムイオン電池の60℃での高温貯蔵性能の試験プロセスを説明する。
【0139】
電池を25℃で0.5Cの定電流で4.45Vまで充電し、次に定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、リチウムイオン電池の厚みを測定し、d0として記録し、60℃のオーブンに12日間置き、この時の厚みを監視し、dとして記録し、4日ごとに厚みを測定した。60℃で12日貯蔵した後のリチウムイオン電池の厚み膨張率(%)=(d-d0)/d0×100%である。厚み膨張率が100%を超えると、試験を中止した。
【0140】
実施例81-96、及び比較例10-12に使用された電解液における添加剤の種類や含有量とリチウムイオン電池の性能試験結果は、表5に示す。ここで、各添加剤の含有量は、電解液の質量に対して得られた質量百分率である。
【0141】
【表6】
注:表6中の空白部分は未添加を示す。
【0142】
表6の実施例及び比較例から、化合物II-8又は化合物II-9を添加剤Aと組み合わせると、リチウムイオン電池の高温貯蔵性能を向上させることができると分かる。化合物II-8又は化合物II-9はシリコン負極に膜を形成することができ、そして添加剤Aは正極保護添加剤として使用されるため、添加剤Aと添加剤Bの両方が相乗効果を発揮してリチウムイオン電池の高温貯蔵性能を向上させることができると考えられる。
【0143】
前記は、本発明の示例に過ぎず、本発明に対していかなる形態の制限ではない。本発明の好ましい実施形態は、上記のように開示されているが、本発明を限定することを意図するものではない。当業者は本発明技術案を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。上記にて開示された技術的内容を使用していくつかの変更又は修正を行うことは、同等の実施形態とし、すべて本発明の技術案の範囲内である。