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▶ トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】多機能性融合タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241113BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20241113BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20241113BHJP
   C07K 14/005 20060101ALI20241113BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241113BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241113BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/00
C07K14/705
C07K14/005
C12P21/02 C
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/62 Z
C12N15/13
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021539880
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 US2020012624
(87)【国際公開番号】W WO2020146423
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】62/789,212
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597177242
【氏名又は名称】トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Thomas Jefferson University
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テュコシンスキー、マーク エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー、マシュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】スミス、カーメラ ロメオ
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/162797(WO,A1)
【文献】特表2013-511966(JP,A)
【文献】国際公開第2014/121085(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/083204(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/093408(WO,A1)
【文献】特表2018-516969(JP,A)
【文献】特表2016-527303(JP,A)
【文献】特表2003-521521(JP,A)
【文献】Protein Expression and Purification,2013年,Vol.87, No.1,p.47-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 19/00
C07K 16/00
C07K 14/00
C12P 21/02
A61K 39/395
C12N 15/62
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素A、構成要素B、及び構成要素Cを含む融合タンパク質であって、
構成要素Aが、配列番号14~配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、
構成要素Bが、配列番号49~配列番号55からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、
構成要素Cが、配列番号57~配列番号63からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、
構成要素Aはジスルフィド結合を介して構成要素Bと結合しており、構成要素Bはジスルフィド結合を介して構成要素Cと結合しており、
前記融合タンパク質は、(i)PD-L1、(ii)CXCR4、及び(iii)Fc受容体に結合可能である、前記融合タンパク質。
【請求項2】
前記融合タンパク質が、(i)がん細胞上のPD-L1、(ii)前記がん細胞上のCXCR4、及び(iii)免疫ナチュラルキラー(NK)細胞上のFc受容体に結合可能である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記構成要素Aが、配列番号14のアミノ酸配列を含み、
前記構成要素Bが、配列番号49のアミノ酸配列を含み、
前記構成要素Cが、配列番号57のアミノ酸配列を含む、
請求項1又は請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記構成要素Aが、配列番号14のアミノ酸配列を含み、
前記構成要素Bが、配列番号53のアミノ酸配列を含み、
前記構成要素Cが、配列番号61のアミノ酸配列を含む、
請求項1又は請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
哺乳類細胞中で第1の核酸の発現を指示するための制御エレメントに機能可能に結合している前記構成要素Aをコードする第1の核酸;
哺乳類細胞中で第2の核酸の発現を指示するための制御エレメントに機能可能に結合している前記構成要素Bをコードする第2の核酸;及び
哺乳類細胞中で第3の核酸の発現を指示するための制御エレメントに機能可能に結合している前記構成要素Cをコードする第3の核酸
を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、核酸系。
【請求項6】
哺乳類細胞に、請求項5に記載の核酸系をインビトロで付与すること、
前記付与後に、前記哺乳類細胞を培養すること、及び
前記培養後に、前記融合タンパク質を精製すること
を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の融合タンパク質をインビトロで製造する方法。
【請求項7】
増殖性障害の治療が必要な患者における増殖性障害の治療に使用される、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記増殖性障害ががんである、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記がんが固形腫瘍である、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記がんが、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、黒色腫、神経膠芽腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、又は結腸がんである、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記がんが黒色腫である、請求項8に記載の融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月7日に出願された米国仮特許出願第62/789212号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張するものであり、その仮特許出願の全体は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
複数の経路によって、感染細胞及びがん細胞の生存、並びにT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫系細胞の活性化又は抑制が制御される。T細胞に対して共刺激性及び抑制性第2シグナルを伝える1つの経路はプログラムド・デス1(PD-1、CD279としても知られる)受容体並びにそのリガンドであるPD-L1(B7-H1;CD274)及びPD-L2(B7-DC;CD273)によって代表される。PD-1は、休止T細胞ではなく、活性化を受けたT細胞の上で発現されるCD28/CTL4ファミリーメンバーである(Nishimuraら著、(1996年)、Int. Immunol.誌、第8巻:773頁)。リガンドのPD-1への結合は、サイトカイン生産の低下及びT細胞の生存率低下を引き起こす抑制シグナルを成立させる(Nishimuraら著、(1999年)、Immunity誌、第11巻:141頁、Nishimuraら著、(2001年)、Science誌、第291巻:319頁、Chemitzら著、(2004年)、J. Immunol.誌、第173巻:945頁)。
【0003】
ウイルスマクロファージ炎症タンパク質-II(vMIP-II)は、CCR5ケモカイン受容体及びCXCR4ケモカイン受容体を含むCCケモカイン受容体及びCXCケモカイン受容体と相互作用するヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)によってコードされるケモカインである。HIV-1侵入のvMIP-IIによる阻害は、標的細胞内へHIV-1が侵入するためのHIV-1受容体であるCCR3、CCR5、及びCXCR4を介して行われる。
【0004】
T細胞の活性化及びT細胞のエフェクター機能の維持は、正と負のシグナルの複雑な相互作用によって制御されている。TNFリガンド/TNF受容体スーパーファミリーのメンバーがこのシグナル集団において重要な位置を占めており、シグナルの免疫系細胞間での橋渡し並びに免疫系細胞と他の器官系の細胞との間での橋渡しを行っている。このようにして、TNFスーパーファミリーメンバーは、細胞生存と細胞死、細胞分化、及び炎症に対する作用を介して恒常性及び発病の両方に寄与している。
【0005】
がんなどの疾患の治療用の治療薬には改善の必要性がある。本発明はこの必要性に取り組む。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載されるように、本発明は、多点分子付着能(multipoint molecular attachment capability)を有する融合タンパク質、及びその融合タンパク質の使用に関する。
【0007】
本発明の1つの態様は、構成要素A及び/又は構成要素Bを含む融合タンパク質を含む。構成要素Aは、構成要素Y、構成要素Z、及び構成要素Zを含む。構成要素Bは、構成要素X’、構成要素Z’、及び構成要素Z’を含む。
【0008】
本発明の別の態様は、構成要素A、構成要素B、及び構成要素Cを含む融合タンパク質を含む。構成要素Aは、構成要素Y、構成要素Z、及び構成要素Zを含む。構成要素Bは、構成要素X’、構成要素Z’、及び構成要素Z’を含む。構成要素Cは、構成要素X及び構成要素C’を含む。構成要素YはPD-1の少なくとも一部を含み、構成要素Z2及び構成要素Z2’はヒトFcのCH2ドメインを含み、構成要素Z3及び構成要素Z3’はヒトFcのCH3ドメインを含む。構成要素X’及び構成要素XはvMIP-IIの少なくとも一部を含み、構成要素CL’はヒトIgG1κの少なくとも1つのCH1ドメインを含む。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、融合タンパク質を生成する方法を含む。上記方法は、ヒトPD-1-hFcAをコードする第1核酸、vMIPII-CH’-hFcBをコードする第2核酸、及びvMIPII-CL’をコードする第3核酸を細胞に投与することを含む。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、配列番号14、配列番号49、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む。
【0011】
本発明の別の態様は、薬学的に許容可能な担体と、本明細書に開示される融合タンパク質のいずれかと、を含む医薬組成物を含む。
【0012】
本発明の別の態様は、患者の増殖性障害を治療する方法を含む。上記方法は、そのような治療が必要な患者に、治療有効量の本明細書に開示される融合タンパク質のいずれかを投与することを含む。
【0013】
上記態様の様々な実施形態又は本明細書において詳述される本発明の他のいずれかの態様では、構成要素Bは構成要素Z’をさらに含む。ある特定の実施形態では、構成要素Aは構成要素Zをさらに含む。
【0014】
ある特定の実施形態では、上記融合タンパク質は構成要素Cをさらに含み、構成要素Cは構成要素X及び構成要素C’を含む。
【0015】
ある特定の実施形態では、上記融合タンパク質は構成要素Dをさらに含み、構成要素Dは構成要素Q及び構成要素Cを含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、構成要素Yはリガンドドメイン、受容体ドメイン、scFvドメイン、又はリポカリンドメインを含む。ある特定の実施形態では、構成要素YはPD-1、CD112R、CD113、又はMHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)の少なくとも一部を含む。
【0017】
ある特定の実施形態では、上記融合タンパク質はPD-L1又はPD-L2に結合する。
【0018】
ある特定の実施形態では、構成要素X’はウイルス由来ペプチド、リガンド由来ペプチド、受容体由来ペプチド、又はHTS選択ペプチドを含む。
【0019】
ある特定の実施形態では、構成要素X’はvMIP-IIの少なくとも一部を含む。ある特定の実施形態では、構成要素X’はV1又はV1Δを含む。
【0020】
ある特定の実施形態では、構成要素Xはウイルス由来ペプチド、リガンド由来ペプチド、受容体由来ペプチド、又はHTS選択ペプチドを含む。ある特定の実施形態では、構成要素XはV1又はV1Δを含む。
【0021】
ある特定の実施形態では、上記融合タンパク質はCXCR4に結合する。
【0022】
ある特定の実施形態では、構成要素Y及び構成要素Zはヒンジを介して接続されている。ある特定の実施形態では、構成要素Z’及び構成要素Z’はヒンジを介して接続されている。
【0023】
ある特定の実施形態では、構成要素X’及び構成要素Z’はリンカーを介して接続されている。ある特定の実施形態では、構成要素X及び構成要素Cはリンカーを介して接続されている。ある特定の実施形態では、構成要素Q及び構成要素Cはリンカーを介して接続されている。
【0024】
ある特定の実施形態では、融合タンパク質は免疫細胞上の受容体又はリガンドに結合する。ある特定の実施形態では、上記受容体はFc受容体である。
【0025】
ある特定の実施形態では、構成要素X’はPD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。
【0026】
ある特定の実施形態では、構成要素YはPD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。
【0027】
ある特定の実施形態では、構成要素XはPD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、構成要素QはPD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、構成要素Aは配列番号14~配列番号22のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0030】
ある特定の実施形態では、構成要素Bは配列番号32~配列番号35のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、構成要素Bは配列番号49~配列番号55のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0031】
ある特定の実施形態では、構成要素Aは配列番号14~配列番号22のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、構成要素Bは配列番号32~配列番号35のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、構成要素Cは配列番号57~配列番号63のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0033】
ある特定の実施形態では、構成要素Bは配列番号49~配列番号55のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、構成要素Cは配列番号57~配列番号63のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0034】
ある特定の実施形態では、上記融合タンパク質は、(i)PD-L1又はPD-L2、(ii)CXCR4、及び(iii)免疫細胞上のFc受容体又はリガンドに結合可能である。
【0035】
ある特定の実施形態では、構成要素Aは配列番号29のアミノ酸配列を含み、構成要素Bは配列番号30のアミノ酸配列を含む。
【0036】
ある特定の実施形態では、構成要素Yは配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0037】
ある特定の実施形態では、構成要素Zは配列番号12のアミノ酸配列を含み、且つ/又は構成要素Zは配列番号13のアミノ酸配列を含む。
【0038】
ある特定の実施形態では、構成要素Aは配列番号14又は配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0039】
ある特定の実施形態では、構成要素Bは配列番号49のアミノ酸配列を含む。
【0040】
ある特定の実施形態では、構成要素X’は配列番号37のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、構成要素Xは配列番号37のアミノ酸配列を含む。
【0041】
ある特定の実施形態では、構成要素Z’は配列番号12を含み、且つ/又は構成要素Z’は配列番号48を含む。
【0042】
ある特定の実施形態では、構成要素C’は配列番号64のアミノ酸配列を含む。
【0043】
ある特定の実施形態では、構成要素Bは配列番号53のアミノ酸配列を含む。
【0044】
ある特定の実施形態では、構成要素Cは配列番号61のアミノ酸配列を含む。
【0045】
ある特定の実施形態では、構成要素Aは配列番号14のアミノ酸配列を含み、構成要素Bは配列番号53のアミノ酸配列を含み、構成要素Cは配列番号61のアミノ酸配列を含む。
【0046】
ある特定の実施形態では、上記方法は、上記第1核酸が配列番号14のアミノ酸配列をコードし、且つ/又は上記第2核酸が配列番号49のアミノ酸配列をコードし、且つ/又は上記第3核酸が配列番号57のアミノ酸配列をコードすることを含む。
【0047】
ある特定の実施形態では、上記増殖性障害はがんである。ある特定の実施形態では、上記がんは固形腫瘍である。ある特定の実施形態では、上記がんは、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、黒色腫、神経膠芽腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、又は結腸がんである。
【0048】
添付図面と併せて読むと以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明がより良く理解されることになる。目下の好ましい実施形態が本発明を例示する目的で添付図面に示されている。しかしながら、本発明はこれら図面に示されている実施形態の正確な構成及び手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1A図1Aは、融合タンパク質プラットフォームの幾つかの実施形態の概略図である。
図1B図1Bは、融合タンパク質プラットフォームの幾つかの実施形態の概略図である。
図2図2は、融合タンパク質プラットフォームの幾つかの実施形態の概略図である。この図では、ナチュラルキラー(NK)細胞と腫瘍細胞との間の接触面を標的とする融合タンパク質が例示されている。
図3図3は、CXCR4、PD-L1、及びFcγRIIIaに結合する融合タンパク質の概略図である。
図4図4は、CXCR4、PD-L1、及びFcγRIIIaに結合する融合タンパク質のがん細胞との及びNK細胞との相互作用の概略図である。
図5図5は、CXCR4、PD-L1、及びFcγRIIIaに結合する融合タンパク質と様々な種類の細胞とに生じ得る相互作用の概略図である。
図6図6は、様々な融合タンパク質と様々な種類の細胞とに生じ得る相互作用の概略図である。
図7図7は、様々な融合タンパク質と様々な種類の細胞とに生じ得る相互作用の概略図である。
図8図8は、様々な融合タンパク質と腫瘍随伴マクロファージ(M1)とに生じ得る相互作用の概略図である。
図9図9は、hPD-1-FcA/hFcB(配列番号14及び配列番号36)のクマシーブルー染色(還元)SDS-PAGEゲルである。
図10図10は、hFcA/hFcB(配列番号23及び配列番号36)のクマシーブルー染色SDS-PAGEゲルである。
図11図11は、hMICA-FcA/hFcB(配列番号22及び配列番号36)のクマシーブルー染色SDS-PAGEゲルである。
図12図12は、hFcA/hTIGIT-FcB(配列番号14及び配列番号36)、hFcA/hCD155-FcB(配列番号23及び配列番号32)、hFcA/hFcB(配列番号23及び配列番号36)、及びhMICA-FcA/hTIGIT-FcB(配列番号22及び配列番号33)のクマシーブルー染色(還元)SDS-PAGEゲルである。
図13図13は、hCD112R-FcA/hFcB(配列番号16及び配列番号36)のクマシーブルー染色SDS-PAGEゲルである。
図14図14は、HA-PD-1-FcA/hCD113-FcB(配列番号15及び配列番号35)のクマシーブルー染色SDS-PAGEゲルである。
図15図15は、hFcA/hCD113-FcB(配列番号23及び配列番号33)及びPD-1-hFcA/hCD113-FcB(配列番号14及び配列番号35)のクマシーブルー染色SDS-PAGEゲルである。
図16図16は、hFcA/hCD155-FcB(配列番号23及びと配列番号32)のクマシーブルー染色SDS-PAGEゲルである。
図17図17は、hFcA/TIM-3-hFcB(配列番号23及び配列番号34)及びPD-1-hFcA/TIM-3-hFcB(配列番号14と配列番号34)のクマシーブルー染色SDS-PAGEゲルである。
図18図18は、hFcA/hTIGIT-FcB(配列番号23及び配列番号33)がヒトCD155発現細胞に結合することを示す図である。
図19図19は、hFcA/hTIGIT-FcB(配列番号23及びと配列番号33)がヒトCD112発現細胞に結合することを示す図である。
図20図20は、hFcA/hCD155-FcB(配列番号23及び配列番号32)がヒトTIGIT発現細胞に結合することを示す図である。
図21図21は、hFcA/hTIGIT-FcB(配列番号23及び配列番号33)及びhFcA/hCD155-FcB(配列番号23及び配列番号32)がCD16(FcγRIIIa)発現細胞に結合することを示す図である。
図22図22は、SDS-PAGE時に分離及び還元(R)され、クマシーゲル染色された融合タンパク質を示す図である。示されているように、「A」はhFcA/hFcB(配列番号23及び配列番号36)を指し、「B」はPD-1-hFcA/FcB(配列番号14及び配列番号36)を指し、「C」はhFcA/VpI-CH’-FcB/VpI-CL(配列番号23に加えて配列番号53及び配列番号61)を指し、「D」はPD-1-hFcA/VpI-CH’-FcB/VpI-CL(配列番号14に加えて配列番号53及び配列番号61)を指す。
図23A図23A図23Dは、一連のウエスタンブロットを示す図である。図22に示されている発現コンストラクトを形質移入されたExpi-CHO細胞の調整培地から精製されたプロテインA精製融合タンパク質に対してウエスタンブロット分析を実施した。観察されたバンドはPD-1-hFcA(配列番号14)及びvMIPII-CL’(配列番号57)の予測サイズと一致した。非還元(NR)試料については125kDaであり、還元(R)試料についてはそれぞれ60kDaと20kDaである。抗PD1抗体(図23A)、抗IgGκ軽鎖抗体(図23B)、抗IgG重鎖抗体(図23C)、及び抗vMIP-II抗体(図23D)をウエスタンブロットのプローブとして使用した。
図23B図23A図23Dは、一連のウエスタンブロットを示す図である。図22に示されている発現コンストラクトを形質移入されたExpi-CHO細胞の調整培地から精製されたプロテインA精製融合タンパク質に対してウエスタンブロット分析を実施した。観察されたバンドはPD-1-hFcA(配列番号14)及びvMIPII-CL’(配列番号57)の予測サイズと一致した。非還元(NR)試料については125kDaであり、還元(R)試料についてはそれぞれ60kDaと20kDaである。抗PD1抗体(図23A)、抗IgGκ軽鎖抗体(図23B)、抗IgG重鎖抗体(図23C)、及び抗vMIP-II抗体(図23D)をウエスタンブロットのプローブとして使用した。
図23C図23A図23Dは、一連のウエスタンブロットを示す図である。図22に示されている発現コンストラクトを形質移入されたExpi-CHO細胞の調整培地から精製されたプロテインA精製融合タンパク質に対してウエスタンブロット分析を実施した。観察されたバンドはPD-1-hFcA(配列番号14)及びvMIPII-CL’(配列番号57)の予測サイズと一致した。非還元(NR)試料については125kDaであり、還元(R)試料についてはそれぞれ60kDaと20kDaである。抗PD1抗体(図23A)、抗IgGκ軽鎖抗体(図23B)、抗IgG重鎖抗体(図23C)、及び抗vMIP-II抗体(図23D)をウエスタンブロットのプローブとして使用した。
図23D図23A図23Dは、一連のウエスタンブロットを示す図である。図22に示されている発現コンストラクトを形質移入されたExpi-CHO細胞の調整培地から精製されたプロテインA精製融合タンパク質に対してウエスタンブロット分析を実施した。観察されたバンドはPD-1-hFcA(配列番号14)及びvMIPII-CL’(配列番号57)の予測サイズと一致した。非還元(NR)試料については125kDaであり、還元(R)試料についてはそれぞれ60kDaと20kDaである。抗PD1抗体(図23A)、抗IgGκ軽鎖抗体(図23B)、抗IgG重鎖抗体(図23C)、及び抗vMIP-II抗体(図23D)をウエスタンブロットのプローブとして使用した。
図24図24は、融合タンパク質が細胞表面上にPD-L1及びCXCR4又はCXCR7を発現するB16黒色腫細胞株に結合することを示す図である。試験した融合タンパク質は(上から下へ順に)hFcA/hFcB(配列番号23及び配列番号36)、PD-1-hFcA/FcB(配列番号14及び配列番号36)、hFcA/V1Δmut-CH’-FcB/V1Δmut-CL’(配列番号23に加えて配列番号52及び配列番号60)、hFcA/V1Δ-CH’-FcB/V1Δ-CL’(配列番号23に加えて配列番号51及び配列番号59)、PD-1-hFcA/V1Δmut-CH’-FcB/V1Δmut-CL’(配列番号14と配列番号52及び配列番号60)、及びPD-1-hFcA/V1Δ-CH’-FcB/V1Δ-CL’(配列番号14に加えて配列番号51及び配列番号59)である。
図25図25は、黒色腫細胞の細胞移動に対する融合タンパク質の阻害効果を評価するトランスウェルアッセイを示す図である。移動したB16-F10細胞を100ng/mLのCXCL12及び融合タンパク質で処理する一回のトランスウェル移動アッセイの代表的画像が示されている。試験した融合タンパク質は(上から下へ順に)hFcA/hFcB(配列番号23及び配列番号36)、PD-1-hFcA/FcB(配列番号14及び配列番号36)、hFcA/V1Δmut-CH’-FcB/V1Δmut-CL’(配列番号23に加えて配列番号52及び配列番号60)、hFcA/V1Δ-CH’-FcB/V1Δ-CL’(配列番号23に加えて配列番号51及び配列番号59)、PD-1-hFcA/V1Δmut-CH’-FcB/V1Δmut-CL’(配列番号14に加えて配列番号52及び配列番号60)、及びPD-1-hFcA/V1Δ-CH’-FcB/V1Δ-CL’(配列番号14と配列番号51及び配列番号59)である。2%クリスタルバイオレットを使用して上記アッセイを染色した。
図26A図26Aは、B16F10黒色腫皮下モデルにおける融合タンパク質(FP)PD1-hFcA/v1Δ-CH’-hFcB/v1Δ-CL’(配列番号14に加えて配列番号51及び配列番号59)が媒介する腫瘍増殖の阻害を示す図である。1×10個のB16F10腫瘍細胞の皮下接種後13日目、14日目、15日目、16日目、及び21日目にC57BL/6マウスを100μlのPBS中の(10μg/mL)FP(マウスR、マウス2L、及びマウス2R)又はPBSのみ(マウスX又はマウスL)で処理した。経時的腫瘍サイズを測定し、各マウスについて図26Aにプロットした。
図26B図26Bは、PBSのみの処理群の1匹のマウス(上)及びPD1-hFcA/v1Δ-CH’-hFcB/v1Δ-CL’(FP)処理群の1匹のマウス(下)の代表像を示す図である。
図27図27は、NK細胞介在性ADCCが多機能性融合タンパク質の添加により増大することを示す図である。SKOV-3卵巣細胞株[標的細胞(T)]を96ウェルプレート中に3000細胞/ウェルの割合で播種して接着させ、そしてセルトラッカー・レッドCMTPX試薬を使用して標識した。その後、緑色蛍光カスパーゼ-3試薬を使用してSKOV-3細胞を標識した。CD16.NK-92細胞株[V158変異体;エフェクター細胞(E)である]を5:1のエフェクター:標的比率で上記ウェルに25mg/mlの濃度の様々な融合タンパク質と共に添加するか、又はタンパク質無しで添加し、Incucyte生細胞分析システムを使用して蛍光二重陽性(赤色+緑色)細胞の数を測定して分析した。示されている結果は20時間の時点での結果を示している。試験した融合タンパク質は高親和性(HA)-PD-1-hFcA/FcB(配列番号15及び配列番号36)、hFcA/hCD113-FcB(配列番号23及び配列番号35)及び高親和性(HA)-PD-1-hFcA/hCD113-FcB(配列番号15及び配列番号35)である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
定義
別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語と科学用語は本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と類似又は同等のどの方法及び材料も本発明の試験の実施に使用可能であるが、本明細書に記載される材料及び方法は好ましい材料及び方法である。本発明の説明と請求では以下の用語が使用される。
【0051】
本明細書において使用される用語は特定の実施形態を説明することだけを目的としており、限定することを目的としてはいないことも理解されたい。
【0052】
冠詞「a」及び「an」はその冠詞の文法上の目的語の1つ又は1つより多く(すなわち少なくとも1つ)を指すために本明細書において使用される。例として、「要素(an element)」は1つの要素又は1つより多くの要素を意味する。
【0053】
量、時間等のような測定可能な値に言及するときに本明細書において使用される「約」は、明示されている値からの±20%又は±10%の変動、より好ましくは±5%の変動、さらにより好ましくは±1%の変動、及びさらにより好ましくは±0.1%の変動のような本開示の方法の実施にとって適切である変動を包含することを意味する。
【0054】
本明細書において使用される場合、「活性化」とは、充分に刺激を受けることにより、サイトカイン生産、検出可能なエフェクター機能、及び細胞増殖のうちの1以上が誘導されているT細胞の状態を指す。「活性化T細胞」という用語は、特に、これらの活性化の特徴のうちの1以上を示しているT細胞を指す。
【0055】
本明細書において使用される場合、「抗体」という用語は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然起源又は組換え起源の完全免疫グロブリンであり得、完全免疫グロブリンの免疫反応性部分であり得る。抗体は四量体免疫グロブリン分子であることが典型的であり、このような四量体から成るさらに高次の多量体として存在してもよい。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab、及びF(ab)、並びに単鎖抗体(scFv)及びヒト化抗体を含む様々な形態で存在する場合がある(Harlowら著、1999年、Using Antibodies: A Laboratory Manual内、コールドスプリングハーバーラボラトリー・プレス、ニューヨーク州、Harlowら著、1989年、Antibodies: A Laboratory Manual内、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、Houstonら著、1988年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA誌、第85巻:5879~5883頁、Birdら著、1988年、Science誌、第242巻:423~426頁)。
【0056】
「抗体断片」という用語は、完全抗体の一部を指し、完全抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片、直鎖抗体、scFv抗体、及び抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0057】
本明細書において使用される場合、「抗体重鎖」は、自然と生じる立体構造の状態において全ての抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの大きい方のポリペプチド鎖を指す。ガンマ(γ)重鎖、ミュー(μ)重鎖、デルタ(δ)重鎖、アルファ(α)重鎖、及びイプシロン(ε)重鎖が5種類の主要抗体重鎖アイソタイプである。
【0058】
本明細書において使用される場合、「抗体軽鎖」は、自然と生じる立体構造の状態において全ての抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの小さい方のポリペプチド鎖を指す。カッパ(κ)軽鎖及びラムダ(λ)軽鎖が2種類の主要抗体軽鎖アイソタイプである。
【0059】
本明細書において使用される「合成抗体」という用語は、組換えDNA技術を使用して生成される抗体、例えば、本明細書に記載されているバクテリオファージによって発現される抗体等を意味する。この用語は、抗体をコードし、且つ、抗体タンパク質をコードするRNAを発現するDNA分子の合成、又は上記抗体を規定するアミノ酸配列の合成によって生成される抗体を意味するとも解釈されるべきであり、上記DNA、RNA又はアミノ酸配列は当技術分野において利用可能且つよく知られている核酸配列合成技術又はアミノ酸配列合成技術を使用して得られたものである。
【0060】
本明細書において使用される「抗原」又は「Ag」という用語は、免疫応答を引き起こす分子又はT細胞受容体などの免疫認識部分に結合する分子として定義される。この免疫応答は、抗体の生産又は特定の免疫適格細胞の活性化のどちらか又は両方を伴う場合がある。当業者は、実質的に全てのタンパク質又はペプチドを含むいずれの巨大分子も抗原として働き得ることを理解するであろう。さらに、抗原は組換えDNA又はゲノムDNAから導出され得る。当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分ヌクレオチド配列を含むいずれのDNAもそれ故に本明細書において使用される用語としての「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が必ずしも遺伝子の全長ヌクレオチド配列だけによってコードされるわけではないことを理解するであろう。本発明が、限定されるものではないが、1つより多くの遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むこと、及び所望の免疫応答を誘発するためにこれらのヌクレオチド配列が様々な組合せで編成されることは容易に理解できる。また、当業者は、抗原が必ずしも全て「遺伝子」によってコードされるわけではないことを理解するであろう。抗原は、生成可能であること、合成可能であること、又は生物試料から導出可能であることが容易に理解できる。このような生物試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞試料、又は生体液が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書において使用される「抗腫瘍作用」という用語は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移巣数の減少、余命の増加、又はがん症状に付随する様々な生理的症状の改善によって明白になり得る生物作用を指す。「抗腫瘍作用」は、まず何よりも腫瘍発生の防止における本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞、及び抗体の能力によっても明白になる場合がある。
【0062】
本発明によると、「自己抗原」という用語は、免疫系によって外来性であると認識されるあらゆる自己抗原を意味する。自己抗原には、細胞表面受容体をはじめとして細胞タンパク質、リンタンパク質、細胞表面タンパク質、細胞脂質、核酸、糖タンパク質が含まれるがこれらに限定されない。
【0063】
本明細書において使用される「自己免疫疾患」という用語は、自己免疫応答の結果生じる障害として定義される。自己免疫疾患は自己抗原に対する不適切且つ過剰な応答の結果である。自己免疫疾患の例には、特に、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、自己免疫肝炎、自己免疫耳下腺炎、クローン病、糖尿病(I型)、栄養障害型表皮水疱症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リューマチ熱、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、脈管炎、尋常性白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰瘍性大腸炎が挙げられるがこれらに限定されない。
【0064】
本明細書において使用される場合、「自己(autologous)」という用語は、ある個体から導出され、後に同じ個体に再導入されることになるあらゆる物質を意味する。
【0065】
「同種異系間(allogeneic)」とは、同じ種の異なる動物に由来する移植片を指す。
【0066】
「異種間(xenogeneic)」とは、異なる種の動物に由来する移植片を指す。
【0067】
本明細書において使用される「がん(cancer)」という用語は、異常な細胞の急速且つ制御されていない増殖及び/又は蓄積を特徴とする疾患として定義される。がん細胞は局所的に広がるか、又は血流及びリンパ系を介して体の他の部分に広がり得る。様々ながんの例には、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸部がん、皮膚がん、膵臓がん、大腸がん、腎臓がん、肝臓がん、脳がん、リンパ腫、白血病、肺がん等が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、がんは甲状腺髄様がんである。
【0068】
「切断(cleavage)」という用語は、共有結合の切断、例えば核酸分子の骨格の切断を指す。切断は様々な方法によって開始可能であり、それらの方法にはホスホジエステル結合の酵素加水分解又は化学加水分解が含まれるが、これらに限定されない。一本鎖切断と二本鎖切断の両方が可能である。二本鎖切断は2回の別々の一本鎖切断イベントの結果として生じる場合がある。DNA切断は平滑末端又は突出末端のどちらかを生じさせ得る。ある特定の実施形態では、融合ポリペプチドは切断された二本鎖DNAを標的とするために使用される場合がある。
【0069】
本明細書において使用される場合、「保存的配列改変(conservative sequence modification)」という用語は、そのアミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に大きくは影響しない、又はその結合特性を大きくは変えないアミノ酸改変を指すものとされる。そのような保存的改変には、アミノ酸の置換、付加、及び欠失が含まれる。改変は、部位特異的変異形成及びPCR介在性変異形成などの当技術分野において知られている標準的技法によって本発明の抗体に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、同様の側鎖を有するアミノ酸残基でアミノ酸残基を置き換える改変である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野において明らかになっている。これらのファミリーには塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族性側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、抗体のCDR領域内の1以上のアミノ酸残基は同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置換可能であり、その改変抗体は本明細書に記載される機能アッセイを用いて抗原への結合能について検査され得る。
【0070】
「疾患(disease)」とは、恒常性を維持できていない動物の健康状態であって、その疾患が改善されないと当該動物の健康が悪化し続ける健康状態である。一方、動物の「障害(disorder)」とは、恒常性を維持できているが、その障害が存在しない場合よりも健康状態が好ましくない動物の健康状態である。障害は治療されずにいても必ずしもその動物の健康状態をさらに悪化させるわけではない。
【0071】
「有効量」又は「治療有効量」とは、本明細書において互換的に使用され、特定の生物学的成果を達成するため、又は治療若しくは予防利益を実現するために有効な本明細書に記載されるような化合物、製剤、物質、又は組成物の量を指す。そのような成果には、当技術分野において適切ないずれかの手段によって判定されるような抗腫瘍活性が挙げられる場合があるが、これに限定されない。
【0072】
「コードする(encoding)」とは、規定のヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)又は規定のアミノ酸配列のいずれかを有し、且つ、その配列から生じる生物学的特性を有する他の重合体及び巨大分子の生物学的過程における合成用の鋳型として働くための、ポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列(遺伝子、cDNA、又はmRNAなど)の固有の特性を指す。したがって、遺伝子に対応するmRNAへの転写とmRNAの翻訳によって細胞内又は他の生物学的系内でタンパク質が生じる場合に、上記遺伝子は上記タンパク質をコードしている。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、且つ、配列表内に提示されることが通常であるコード鎖と遺伝子の転写又はcDNAの鋳型として使用される非コード鎖の両方が、上記遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードしていると言及され得る。
【0073】
本明細書において使用される場合、「内在性(endogenous)」とは、生物、細胞、組織、又は系の内側に由来する、又は内側で生産されるあらゆる物質を指す。
【0074】
本明細書において使用される場合、「外来性(exogenous)」という用語は、生物、細胞、組織、又は系の外側から導入される、又は外側で生産されるあらゆる物質を指す。
【0075】
本明細書において使用される「拡大(expand)」という用語は、T細胞数の増加のように、数の増加を指す。1つの実施形態では、生体外で拡大したT細胞は、培養時に元々存在した数と比較して数が増えている。別の実施形態では、生体外で拡大したT細胞は、培養時に他の種類の細胞と比較して数が増えている。本明細書において使用される場合、「生体外(ex vivo)」という用語は、生体(例えばヒト)から取り出され、上記生体の外部で(例えば、培養皿、試験管、又はバイオリアクターの中で)繁殖された細胞を指す。
【0076】
本明細書において使用される「発現(expression)」という用語は、プロモーターなどの、制御エレメントによって誘導される特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳として定義される。
【0077】
「発現ベクター」とは、発現されるヌクレオチド配列に機能的に結合されている発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現にとって充分なcis作用性エレメントを含み、発現用の他のエレメントは宿主細胞又はインビトロ発現系に供給される場合がある。発現ベクターには、上記組換えポリヌクレオチドが組み込まれている当技術分野において知られている全てのベクター、例えばコスミド、プラスミド(例えば、裸又はリポソームに含有されている)及びウイルス(例えば、センダイウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。
【0078】
本明細書において使用される「相同な(homologous)」とは、2つの高分子間の小単位配列同一性、例えば2つのDNA分子又は2つのRNA分子などの2つの核酸分子間又は2つのポリペプチド分子間の小単位配列同一性を指す。上記2分子の両方の小単位位置が同じ単量体小単位によって占められている場合、例えば2つのDNA分子のそれぞれのある位置がアデニンによって占められている場合に、上記分子は上記位置において相同である。2つの配列間の相同性はマッチする位置又は相同な位置の数の一次関数である。例えば、2つの配列内の位置の半分(例えば、長さが10小単位の高分子内の5か所の位置)が相同である場合に上記2つの配列は50%相同であり、上記位置の90%(例えば、10のうちの9か所)がマッチする、又は相同である場合に上記2つの配列は90%相同である。
【0079】
「ヒト化(humanized)」型の非ヒト(例えばマウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそれらの断片(例えば抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は他の抗原結合小配列)である。大部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらに、ヒト化抗体はレシピエント抗体にも移入されたCDR配列又はフレームワーク配列にも見られない残基を含む場合がある。抗体の性能をさらに洗練されたものにし、且つ、最適化するためにこれらの改変が行われる。一般に、ヒト化抗体は少なくとも1つ、典型的に2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含み、上記可変ドメインではCDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。上記ヒト化抗体は免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含むことが最適である。さらに詳細についてはJonesら著、Nature誌、第321巻: 522~525頁、1986年、Reichmannら著、Nature誌、第332巻: 323~329頁、1988年、Presta著、Curr. Op. Struct. Biol.誌、第2巻: 593~596頁、1992年を参照されたい。
【0080】
「完全にヒト(fully human)」とは、分子全体がヒト起源である抗体又は分子全体がヒト型の上記抗体と同じアミノ酸配列から成る抗体などの免疫グロブリンを指す。
【0081】
本明細書において使用される「同一性(identity)」とは、2つの高分子間、特に2つのアミノ酸分子間、例えば2つのポリペプチド分子間の小単位配列同一性を指す。2つのアミノ酸配列が同じ位置において同じ残基を有する場合、例えば2つのポリペプチド分子のそれぞれのある位置がアルギニンによって占められている場合に、上記分子は上記位置において同一である。同一性、又は2つのアミノ酸配列が整列した中で同じ位置に同じ残基を有する程度はパーセンテージで表されることが多い。2つのアミノ酸配列間の同一性はマッチする位置又は同一の位置の数の一次関数である。例えば、2つの配列内の位置の半分(例えば、長さが10アミノ酸の高分子内の5か所の位置)が同一である場合に、上記2つの配列は50%同一であり、上記位置の90%(例えば、10のうちの9か所)がマッチする、又は同一である場合に上記2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0082】
本明細書において使用される場合、「免疫グロブリン」又は「Ig」という用語は、抗体として機能するタンパク質のクラスとして定義される。B細胞が発現する抗体は、時にBCR(B細胞受容体)又は抗原受容体と呼ばれることがある。このクラスのタンパク質に含まれる5つのメンバーはIgG、IgM、IgD、IgA、及びIgEである。IgGは最も一般的な循環抗体である。IgMは大半の対象の初期免疫応答において生産される主要な免疫グロブリンである。この免疫グロブリンは凝集、補体結合、及び他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌とウイルスに対する防御において重要である。IgDは抗体機能が知られていないが、抗原受容体として働く可能性がある免疫グロブリンである。IgAは、唾液、涙液、母乳、胃腸分泌液、並びに呼吸器及び生殖器の粘性分泌液の中に存在する主要な抗体である。IgEは、アレルゲンに曝露されると肥満細胞及び好塩基球からメディエーターの放出を引き起こすことにより即時過敏症を成立させる免疫グロブリンである。
【0083】
本明細書において使用される「免疫応答」という用語は、リンパ球が抗原分子を外来性と認識し、上記抗原を除去するために抗体の形成を誘導し、且つ/又はリンパ球を活性化するときに生じる抗原に対する細胞応答として定義される。
【0084】
本明細書において使用される「リポカリン」という用語は、天然の設定ではステロイド、ビリン、レチノイド、及び脂質などの疎水性小分子を輸送するように機能するタンパク質のクラスとして定義される。上記タンパク質は、限定的な配列相動性領域を共有し、且つ、内部リガンド結合部位を取り囲む反復+1トポロジーを有する8重鎖アンチパラレルβバレルを含む共通の三次構造を共有する。リポカリンはグラム陰性細菌、脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、及び植物に見られ、多数の生物学的過程、何よりも免疫応答、フェロモン輸送、プロスタグランジン生合成、レチノイド結合、及びがん細胞相互作用と関連付けられている。リポカリンは、結合特性を変更又は強化するために、例えば細胞表面分子に結合し、こうして機能特性を妨害、強化、又はそれ以外には改変するために抗体の改変について記載された同じ方法のうちの多くの方法で改変可能である。
【0085】
本明細書において使用される場合、「説明資料」には、本発明の組成物及び方法の有用性を伝えるために使用可能な刊行物、記録物、図表、又は他のあらゆる表現手段が含まれる。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の核酸、ペプチド、及び/又は組成物を含んでいる容器に貼り付けられても、上記核酸、ペプチド、及び/又は組成物を含んでいる容器と共に出荷されてもよい。あるいは、この説明資料は、受領者がこの説明資料とこの化合物を協同的に使用するものとして容器とは別に出荷されてもよい。
【0086】
「単離(isolated)」とは、天然の状態からの変更又は移動を意味する。例えば、生きている動物に天然状態で存在する核酸又はペプチドは「単離」されていないが、その天然の状態で共に存在する物質から部分的又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは「単離」されている。単離された核酸又はタンパク質は実質的に精製された形で存在する場合もあれば、例えば宿主細胞などの天然とは異なる環境の中に存在する場合もある。
【0087】
本明細書において使用される「レンチウイルス」とは、レトロウイルス科の属を指す。レンチウイルスは非分裂細胞に感染可能である点でレトロウイルスの中でも独特であり、レンチウイルスは耐量の遺伝情報を宿主細胞のDNA中に送達することができるのでレンチウイルスは最も効率的な遺伝子送達ベクター方法のうちの1つである。HIV、SIV、及びFIVは全てがレンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターはインビボで高レベルの遺伝子移入を達成するための手段になる。
【0088】
本明細書において使用される場合、「改変(modified)」という用語は、本発明の分子又は細胞の状態又は構造の変化を意味する。分子は化学、構造、及び機能をはじめとする多くの面で改変される場合がある。細胞は核酸の導入を介して改変される場合がある。
【0089】
本明細書において使用される場合、「調節(modulating)」という用語は、対象の応答レベルが、治療又は化合物が存在しない状態での上記対象の応答レベル及び/又は治療されていないが他の面では同一の対象の応答レベルと比較して検出可能なレベルに上昇又は低下させることを意味する。この用語は元来のシグナル又は応答を混乱させ、且つ/又は作用することにより対象、好ましくはヒトにおいて有益な治療反応を成立させることを包含する。
【0090】
本発明の中では以下の一般に生じる核酸塩基の略語が使用される。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0091】
別途指定されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、お互いに縮重型であり、且つ、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という言葉は、上記タンパク質をコードする上記ヌクレオチド配列がイントロンを含む種類の配列である場合に限りイントロンを含んでもよい。
【0092】
「機能可能であるように結合されている」という用語は、異種核酸配列の発現を引き起こす調節性配列と上記異種核酸配列との間の機能的結合を指す。例えば、第1核酸配列が第2核酸配列と機能的に関係する状態で配置されている場合、上記第1核酸配列は上記第2核酸配列と機能可能であるように結合している。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響する場合、上記プロモーターは上記コード配列に機能可能であるように結合している。機能可能であるように結合されたDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結することが必要である場合には同じリーディングフレームにあることが一般的である。
【0093】
「過剰発現した」腫瘍抗原、又は腫瘍抗原の「過剰発現」という用語は、患者の特定の組織又は器官内の固形腫瘍のような疾患領域に由来する細胞における腫瘍抗原の発現レベルがその組織又は器官に由来する正常細胞における発現レベルと比較して異常であることを示すものとされる。腫瘍抗原の過剰発現を特徴とする固形腫瘍又は血液悪性腫瘍を有する患者は当技術分野において知られている標準的アッセイによって判定され得る。
【0094】
免疫原性組成物の「非経口」投与の例には、皮下(s.c.)注射、静脈内(i.v.)注射、筋肉内(i.m.)注射、又は胸骨内注射、又は輸液技術が含まれる。
【0095】
本明細書において使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドの重合体である。したがって、本明細書において使用される核酸及びポリヌクレオチドは置き換え可能である。当業者は核酸がポリヌクレオチドであり、単量体の「ヌクレオチド」に加水分解可能であるという一般的知識を有している。上記単量体ヌクレオチドはヌクレオシドに加水分解可能である。本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドには、限定されないが、組換え技術、すなわち通常のクローニング技術及びPCR(商標)等を用いる組換えライブラリー又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング、及び合成技術をはじめとする当技術分野において利用可能なあらゆる手段によって得られる全ての核酸配列が含まれるがこれらに限定されない。
【0096】
本明細書において使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合しているアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含有していなくてはならず、タンパク質又はペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数には制限がない。ポリペプチドにはペプチド結合によって連結している2つ以上のアミノ酸を含むあらゆるペプチド又はタンパク質が含まれる。本明細書において使用される場合、この用語は短鎖と長鎖の両方を指し、短鎖は当技術分野では一般的にペプチド、オリゴペプチド、及びオリゴマー等とも呼ばれ、長鎖は多くの種類が存在するタンパク質と当技術分野では一般的に呼ばれる。「ポリペプチド」には何よりも、例えば、生物学的活性断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチド変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。上記ポリペプチドには天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組合せが含まれる。
【0097】
本明細書において使用される場合、「融合タンパク質」及び「キメラタンパク質」という用語は互換的に使用され、2つ以上のポリペプチドから構成される化合物を指す。幾つかの実施形態では、2つ以上のポリペプチドは共有結合している。その他の実施形態では、2つ以上のポリペプチドはペプチド結合、リンカー、又はジスルフィド結合によって共有結合している。融合タンパク質は当業者によく知られた多数の方法によって作製可能であり、最も一般的には融合タンパク質アミノ酸配列をコード又は指定する核酸配列を含むベクターを細胞に導入することにより作製可能である。その他の機能的特性、例えば安定性、半減期、多量体化、精製しやすさを引き出すために追加のアミノ酸又はポリペプチドを融合タンパク質に組み込むことが可能である。そのような要素の一例はポリペプチドリンカーである。
【0098】
本明細書において使用される「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するために必要とされ、細胞の合成装置によって認識される、又は合成装置に導入されるDNA配列として定義される。
【0099】
本明細書において使用される場合、「プロモーター/調節性配列」という用語は、プロモーター/調節性配列に機能可能であるように結合している遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を意味する。幾つかの例では、この配列はコアプロモーター配列である場合があり、他の例ではこの配列はエンハンサー配列及び上記遺伝子産物の発現に必要な他の調節性エレメントを含む場合もある。このプロモーター/調節性配列は、例えば、組織特異的に上記遺伝子産物を発現させるものであってよい。
【0100】
「構成的(constitutive)」プロモーターとは、遺伝子産物をコード又は指定するポリヌクレオチドと機能可能であるように結合している場合に、細胞のほとんど又は全ての生理的条件下において、当該細胞中で上記遺伝子産物を生産させるヌクレオチド配列である。
【0101】
「誘導性(inducible)」プロモーターとは、遺伝子産物をコード又は指定するポリヌクレオチドと機能可能であるように結合している場合に、実質的にはプロモーターに対応する誘導物質が細胞中に存在する場合にのみ、上記細胞中で上記遺伝子産物を生産させるヌクレオチド配列である。
【0102】
「組織特異的(tissue-specific)」プロモーターとは、遺伝子産物をコード又は指定するポリヌクレオチドと機能可能であるように結合している場合、実質的には細胞がプロモーターに対応する種類の組織の細胞である場合にのみ、上記細胞中で上記遺伝子産物を生産させるヌクレオチド配列である。
【0103】
「シグナル伝達経路」とは、細胞の1つの部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達に役割を果たす様々なシグナル伝達分子の間の生化学的関係を指す。「細胞表面受容体」という言葉には、細胞の原形質膜を越えてシグナルを受信及び伝達することが可能である分子及び分子の複合体が含まれる。
【0104】
抗体に関して本明細書において使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、試料中の特定の抗原を認識するが、他の分子を実質的に認識又は結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種の抗原に特異的に結合する抗体は1又は複数の種のその抗原にも結合する場合がある。しかしながら、そのような異種間交差反応性自体は特異的であるとの抗体の分類を変更しない。別の例では抗原に特異的に結合する抗体は、抗原の異なるアレル型にも結合する場合がある。しかしながら、そのような交差反応性自体は特異的であるとの抗体の分類を変更しない。幾つかの例では「特異的結合」又は「特異的に結合する」という用語は、抗体、タンパク質、又はペプチドの第2の化学種との相互作用を参照する場合、上記相互作用が上記化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存していることを意味するために使用され得る。例えば、抗体はタンパク質全体よりもむしろ特定のタンパク質構造を認識し、結合する。抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、エピトープAを含む分子(又は遊離した無標識のA)の存在は標識された「A」と上記抗体を含む反応において上記抗体に結合する標識されたAの量を減少させる。
【0105】
「対象(subject)」という用語は、免疫応答を誘発させることが可能な生物(例えば哺乳類動物)を含むものとされる。本明細書において使用される場合、「対象」又は「患者(patient)」とは、ヒト又は非ヒト哺乳類動物であってよい。非ヒト哺乳類動物の例には、家畜及びペット、例えばヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、及びマウス哺乳類動物が含まれる。この対象はヒトであることが好ましい。
【0106】
本明細書において使用される場合、「実質的に精製された」細胞とは、基本的に他の種類の細胞を含まない細胞である。実質的に精製された細胞は、通常ではその天然の状態で結合している他の種類の細胞から分離された細胞も指す。幾つかの例では、実質的に精製された細胞の集団は同種の細胞集団を指す。他の例では、この言葉は単に、通常ではその天然の状態で結合している細胞から分離された細胞を指す。幾つかの実施形態では、上記細胞はインビトロ培養されている。他の実施形態では、上記細胞はインビトロ培養されていない。
【0107】
「標的部位(target site)」又は「標的配列(target sequence)」とは、結合が起こるために充分な条件下で結合分子が特異的に結合し得る核酸の一部を規定するゲノム核酸配列を指す。
【0108】
本明細書において使用される「治療(therapeutic)」という用語は、治療(treatment)及び/又は予防(prophylaxis)を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解、又は根絶によって得られる。
【0109】
本明細書において使用される「形質移入される(transfected)」又は「形質転換される(transformed)」又は「形質導入される(transduced)」という用語は、外来性核酸を宿主細胞に移入又は導入するための処理を指す。「形質移入された」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞は外来性核酸で形質移入、形質転換、又は形質導入された細胞である。上記細胞には初期対象細胞及びその子孫細胞が含まれる。
【0110】
「導入遺伝子(transgene)」という用語は、動物、具体的には哺乳類動物、より具体的には生きている哺乳類動物細胞のゲノムに人工的に挿入された、又は挿入されようとしている遺伝物質を指す。
【0111】
本明細書において使用される場合、疾患を「治療する(treat)」ことは、対象が経験している疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重症度を低下させることを意味する。
【0112】
本明細書において使用される「転写制御下」又は「機能的に結合している」という言葉は、RNAポリメラーゼによる転写の開始及びポリヌクレオチドの発現を制御するためのポリヌクレオチドに関してプロモーターが正しい場所及び方向にあることを意味する。
【0113】
「ベクター」は、単離核酸を含み、且つ、この単離核酸を細胞内部に送達するために使用可能な組成物である。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン化合物又は両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むがこれらに限定されない多数のベクターが当技術分野において知られている。したがって、「ベクター」という用語には、自律複製性プラスミド又はウイルスが含まれる。また、この用語は、例えばポリリシン化合物、リポソーム等のような細胞中への核酸の移入を促進する非プラスミド化合物及び非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。プラスミドベクターの一例は、ウイルス、例えばエプスタイン・バールウイルス及びBKウイルスに由来する調節性エレメントによって自己複製が引き起こされる、又は引き立てられるエピソーム性ベクターである。ウイルスベクターの例には、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
範囲
本開示を通じて、範囲形式で本発明の様々な態様が提示され得る。範囲形式での記述は、単に簡便性及び簡潔性を理由としていることが理解されるべきであり、その記述は本発明の範囲を確固として限定することと解釈されるべきではない。よって、範囲の記述は、その範囲内の個々の数値と同様に全ての可能な小範囲を具体的に開示していると考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等のような小範囲、並びにその範囲内の個々の数(例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6)を具体的に開示していると考えられるべきである。このことは、範囲の大きさと無関係に適用される。
【0115】
任意のアミノ酸配列がGENBANK(登録商標)受入番号によって具体的に参照されている場合、この配列は、一部及び/又は全体が参照により本明細書に援用される。受入番号に付随するシグナルペプチド、細胞外ドメイン、経膜ドメイン、プロモーター配列、及び翻訳開始部位の特定などの情報も一部及び/又は全体が参照により本明細書に援用される。
【0116】
本開示の組成物及び方法に関して本発明において想定されているように、1つの態様では、本発明の実施形態は本明細書において開示される構成要素及び/又は工程を含む。別の態様では、本発明の実施形態は本明細書において開示される構成要素及び/又は工程から基本的に成る。さらに別の態様では、本発明の実施形態は本明細書において開示される構成要素及び/又は工程から成る。
【0117】
説明
融合タンパク質が提供される。幾つかの例示的な実施形態では、融合タンパク質の上記第1構成要素は(融合タンパク質内のvMIPIIペプチド又はV1ペプチド又はそれらの誘導体の結合を介して)ケモカイン受容体(例えば、CXCR4及び/又はCXCR7)を妨害し、この妨害が腫瘍細胞を動けないようにし、その移動性、浸潤性、転移性、及び他の腫瘍原性特性に支障をきたすように働く。上記融合タンパク質の上記第2構成要素は(融合タンパク質内のPD1又はその誘導体の結合を介して)上記腫瘍細胞上のチェックポイント阻害因子(例えば、PD-L1及び/又はPD-L2)を妨害し、この妨害が腫瘍指向性免疫エフェクター細胞、例えばNK細胞の阻害に支障をきたすように働く。上記融合タンパク質の上記第3構成要素は、(融合タンパク質内のFcγ又はその誘導体の結合を介して)同じ免疫エフェクター細胞上の活性化受容体、例えばFcγRIIIa受容体を刺激し、それによりNK細胞の活性化を引き起こし、ADCC及びADCPを促進する。
【0118】
幾つかの例示的な実施形態では、融合タンパク質の1つの構成要素が腫瘍細胞又は他の細胞上のチェックポイント阻害因子を妨害し、他の2つの構成要素がそれぞれ免疫エフェクター細胞上の別個の活性化受容体を刺激する。幾つかの実施形態では、融合タンパク質は、チェックポイント阻害因子が腫瘍細胞上に存在する場合に、免疫エフェクター細胞と標的腫瘍細胞に分子架橋を形成する。さらに、チェックポイント阻害経路の妨害と活性化受容体の刺激の連携である融合タンパク質の3つの相互作用が互いを機能的に補強するように働き、それらの3つの相互作用の全てが協同して上記免疫エフェクター細胞、例えばNK細胞の活性化を引き起こす。好ましい実施形態では、融合タンパク質により妨害されるチェックポイント阻害因子は、PD-L1、PD-L2、CD113、CD112、CD155、又はCD111から成り、融合タンパク質が共刺激する2つの活性化受容体は、NK細胞上の4-1BB及びFcγRIIIa受容体である。
【0119】
融合タンパク質
構成要素A及び/又は構成要素Bを含む融合タンパク質であって、
構成要素Aが、構成要素Y、構成要素Z、及び構成要素Zを含み、
構成要素Bが、構成要素X’、構成要素Z’、及び構成要素Z’を含む上記融合タンパク質が提供される。幾つかの実施形態では、構成要素Bは構成要素Z’をさらに含む。したがって、幾つかの実施形態では、構成要素Bは、構成要素X’、構成要素Z’、構成要素Z’、及び構成要素Z’を含む。
【0120】
幾つかの実施形態では、構成要素Aは構成要素Zをさらに含む。したがって、幾つかの実施形態では、構成要素Aは、構成要素Y、構成要素Z、構成要素Z、及び構成要素Zを含む。
【0121】
幾つかの実施形態では、融合タンパク質は構成要素Cをさらに含み、構成要素Cは構成要素X及び構成要素C’を含む。その他の実施形態では、構成要素C’は免疫グロブリン軽鎖の少なくとも一部を含む。幾つかの実施形態では、融合タンパク質は構成要素Dをさらに含み、構成要素Dは構成要素Q及び構成要素Cを含む。その他の実施形態では、構成要素Cは免疫グロブリン軽鎖の少なくとも一部を含む。
【0122】
幾つかの実施形態では、構成要素Aはリーダー配列をさらに含む。その他の実施形態では、上記リーダー配列はヒトアルブミンリーダー配列である。
【0123】
幾つかの実施形態では、構成要素Bはリーダー配列をさらに含む。その他の実施形態では、上記リーダー配列はヒトアルブミンリーダー配列である。
【0124】
幾つかの実施形態では、構成要素Yは、リガンドドメイン、受容体ドメイン、scFvドメイン、又はリポカリンドメインを含む。その他の実施形態では、構成要素Yは、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。さらにその他の実施形態では、融合タンパク質はPD-L1又はPD-L2に結合する。
【0125】
幾つかの実施形態では、構成要素Zは、免疫グロブリンのドメイン、TNFスーパーファミリーメンバー、TNF-Lスーパーファミリーメンバー、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、ヒト血清アルブミン、又はリポカリンを含む。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンのドメインはCH1ドメインである。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンはIgGである。さらにその他の実施形態では、免疫グロブリンはIgEである。
【0126】
幾つかの実施形態では、構成要素Zは、免疫グロブリンのドメイン、TNFスーパーファミリーメンバー、TNF-Lスーパーファミリーメンバー、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、ヒト血清アルブミン、又はリポカリンを含む。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンのドメインはCH2ドメインである。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンはIgGである。さらにその他の実施形態では、免疫グロブリンはIgEである。
【0127】
幾つかの実施形態では、構成要素Zは、免疫グロブリンのドメイン、TNFスーパーファミリーメンバー、TNF-Lスーパーファミリーメンバー、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、ヒト血清アルブミン、又はリポカリンを含む。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンのドメインはCH3ドメインである。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンはIgGである。さらにその他の実施形態では、免疫グロブリンはIgEである。
【0128】
幾つかの実施形態では、構成要素Z’は、免疫グロブリンのドメイン、TNFスーパーファミリーメンバー、TNF-Lスーパーファミリーメンバー、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、ヒト血清アルブミン、又はリポカリンを含む。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンのドメインはCH1ドメインである。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンはIgGである。さらにその他の実施形態では、免疫グロブリンはIgEである。
【0129】
幾つかの実施形態では、構成要素Z’は、免疫グロブリンのドメイン、TNFスーパーファミリーメンバー、TNF-Lスーパーファミリーメンバー、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、ヒト血清アルブミン、又はリポカリンを含む。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンのドメインはCH2ドメインである。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンはIgGである。さらにその他の実施形態では、免疫グロブリンはIgEである。
【0130】
幾つかの実施形態では、構成要素Z’は、免疫グロブリンのドメイン、TNFスーパーファミリーメンバー、TNF-Lスーパーファミリーメンバー、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、ヒト血清アルブミン、又はリポカリンを含む。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンのドメインはCH3ドメインである。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンはIgGである。さらにその他の実施形態では、免疫グロブリンはIgEである。
【0131】
幾つかの実施形態では、構成要素X’は、ウイルス由来ペプチド、リガンド由来、受容体由来ペプチド、又はハイスループットスクリーン(HTS)選択ペプチドを含む。幾つかの実施形態では、構成要素X’は、ケモカイン受容体、サイトカイン受容体、機能リガンドのカウンター受容体、インテグリン、リガンド、又は膜シグナル伝達複合体の一部に結合するペプチド配列を含む。幾つかの実施形態では、構成要素X’はPD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。その他の実施形態では、構成要素X’はvMIP-IIの少なくとも一部を含む。その他の実施形態では、構成要素X’はV1ポリペプチド又はV1Δポリペプチドを含む。さらにその他の実施形態では、融合タンパク質はCXCR4に結合する。
【0132】
幾つかの実施形態では、構成要素Qは、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。
【0133】
幾つかの実施形態では、構成要素Xは、ウイルス由来ペプチド、リガンド由来ペプチド、受容体由来ペプチド、又はHTS選択ペプチドを含む。その他の実施形態では、構成要素XはV1ポリペプチド又はV1Δポリペプチドを含む。その他の実施形態では、融合タンパク質はCXCR4に結合する。
【0134】
幾つかの実施形態では、構成要素Yと構成要素Zとはヒンジ(例えばIgGヒンジ)を介して接続されている。幾つかの実施形態では、構成要素Z’と構成要素Z’とはヒンジ(例えばIgGヒンジ)を介して接続されている。幾つかの実施形態では、構成要素X’と構成要素Z’とはリンカーを介して接続されている。幾つかの実施形態では、構成要素Xと構成要素Cとはリンカーを介して接続されている。
【0135】
幾つかの実施形態では、融合タンパク質は構成要素A及びFcを含む。その他の実施形態では、融合タンパク質は構成要素A及びヒトFcB(hFcB)を含む。
【0136】
幾つかの実施形態では、融合タンパク質は構成要素B及びFcを含む。その他の実施形態では、融合タンパク質は構成要素B及びヒトFcA(hFcA)を含む。
【0137】
幾つかの実施形態では、構成要素Aと構成要素Bとは共有結合している。幾つかの実施形態では、共有結合はジスルフィド結合又はリンカーを介している。
【0138】
幾つかの実施形態では、構成要素Aは構成要素Bと共有結合していない。幾つかの実施形態では、構成要素Aと構成要素Bとは、ノブ・イントゥ・ホール相互作用を介してつなぎ合わせられている。幾つかの実施形態では、構成要素Aと構成要素Bとは、ノブ・イントゥ・ホール変異及びジスルフィド結合を介した共有結合を含む。幾つかの実施形態では、構成要素Aは変異Y349C及び変異T366Wを含み、構成要素Bは変異D356C、変異T366S、変異L368A、及び変異Y407V(「ノブ・イントゥ・ホール」変異)を含む。これらの構成要素鎖内の変異及び変化の位置はKabat番号付与法(Johnson, G及びWu, TT著、(2001年)、Nucleic Acids Res.誌、第28巻(第1号)、214~18頁)によって規定される。
【0139】
幾つかの実施形態では、融合タンパク質は、構成要素A及び免疫グロブリンのドメインを含む。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンドメインはFcドメインである。
【0140】
幾つかの実施形態では、融合タンパク質は、構成要素B及び免疫グロブリンのドメインを含む。幾つかの実施形態では、免疫グロブリンドメインはFcドメインである。
【0141】
幾つかの実施形態では、構成要素Bと構成要素Cとは共有結合している。幾つかの実施形態では、共有結合はジスルフィド結合を介している。
【0142】
幾つかの実施形態では、構成要素Bは構成要素Cと共有結合していない。
【0143】
幾つかの実施形態では、構成要素Aと構成要素Dとは共有結合している。幾つかの実施形態では、共有結合はジスルフィド結合を介している。
【0144】
幾つかの実施形態では、構成要素Aと構成要素Dとは共有結合していない。
【0145】
幾つかの実施形態では、融合タンパク質は免疫細胞上の受容体又はリガンドに結合する。
【0146】
幾つかの実施形態では、受容体はFc受容体である。
【0147】
薬学的に許容可能な担体と、上述の実施形態のうちのいずれか1つの融合タンパク質と、を含む医薬組成物も提供される。
【0148】
増殖性障害の治療が必要な患者に、上述の実施形態のうちのいずれか1つの融合タンパク質の治療有効量を投与することを含む、患者の増殖性障害を治療する方法も提供される。幾つかの実施形態では、増殖性障害はがんである。その他の実施形態では、がんは固形腫瘍である。さらにその他の実施形態では、がんは、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、黒色腫、神経膠芽腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、結腸がん、肺がん、肝臓がん、又はいずれかの固形若しくは液性腫瘍種である。
【0149】
本発明は、がんなどの増殖性障害の治療に有用な新規融合タンパク質を提供する。構成要素Yの受容体又はリガンド及び構成要素X’の受容体又はリガンドを発現する細胞上で、本発明の融合タンパク質は一方又は両方の受容体又はリガンドを妨害することが可能である。したがって、構成要素Yの受容体又はリガンド及び構成要素X’の受容体又はリガンドを共発現する細胞上で、本発明の融合タンパク質は腫瘍細胞の細胞死、不動化、及びクリアランスを引き起こすことが可能である。さらに、構成要素Z又は構成要素Z’の受容体又はリガンドを発現する細胞上、例えばナチュラルキラー(NK)細胞上で、本発明の融合タンパク質は上記受容体又はリガンドを刺激する場合があり、上記細胞の活性化を引き起こす場合がある。したがって、本発明の融合タンパク質は、2つの隣接する細胞に及ぶことによりその活性を成立させる場合がある。さらに、本発明の融合タンパク質は、細胞上の3つ以上の異なる分子に結合する場合がある。幾つかの実施形態では、融合タンパク質は、ある特定の細胞の阻害又は減少の原因となることにより、又はある特定の細胞の活性化若しくは増加の原因となることにより、がんなどの疾患を治療するように作用する場合がある。
【0150】
構成要素A
構成要素Aは、構成要素Y、構成要素Z、及び構成要素Zを含む。
【0151】
構成要素Y
幾つかの実施形態では、構成要素Yは、リガンドドメイン、受容体ドメイン、scFvドメイン、又はリポカリンドメインを含む。その他の実施形態では、構成要素Yは、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。
【0152】
構成要素Yの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
GWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQ
(配列番号1)ヒトPD-1細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_005018.3
【0153】
構成要素Yの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
GWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFHVVWHRESPSGQTDTLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYVCGVISLAPKIQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQ
(配列番号2)高親和性ヒトPD-1細胞外ドメイン
【0154】
構成要素Yの例示的な配列は以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
MMTGTIETTGNISAEKGGSIILQCHLSSTTAQVTQVNWEQQDQLLAICNADLGWHISPSFKDRVAPGPGLGLTLQSLTVNDTGEYFCIYHTYPDGTYTGRIFLEVLESSVAEHGARFQIP
(配列番号3)ヒトTIGIT細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_173799.4
【0155】
構成要素Yの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
VWEKTVNTEENVYATLGSDVNLTCQTQTVGFFVQMQWSKVTNKIDLIAVYHPQYGFYCAYGRPCESLVTFTETPENGSKWTLHLRNMSCSVSGRYECMLVLYPEGIQTKIYNLLIQTHVTADEWNSNHTIEIEINQTLEIPCFQNSSSKISSEFTYAWSVENSSTDSWVLLSKGIKEDNGTQETLISQNHLISNSTLLKDRVKLGTDYRLHLSPVQIFDDGRKFSCHIRVGPNKILRSSTTVKVFAKPEIPVIVENNSTDVLVERRFTCLLKNVFPKANITWFIDGSFLHDEKEGIYITNEERKGKDGFLELKSVLTRVHSNKPAQSDNLTIWCMALSPVPGNKVWNISSEKITFLLGSEISSTDPPLSVTESTLDTQPSPASSVSPARYPATSSVTLVDVSALRPNTTPQPSNSSMTTRGFNYPWTSSGTDTKKSVSRIPSETYSSSPSGAGSTLHDNVFTSTARAFSEVPTTANGSTKTNHVHITGIVVNKPKDGM
(配列番号4)ヒトCD96細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_198196.2
【0156】
構成要素Yの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
MGHRTLVLPWVLLTLCVTAGTPEVWVQVRMEATELSSFTIRCGFLGSGSISLVTVSWGGPNGAGGTTLAVLHPERGIRQWAPARQARWETQSSISLILEGSGASSPCANTTFCCKFASFPEGSWEACGSLPPSSDPGLSAPPTPAPILRAD
(配列番号5)ヒトCD112R細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_024070.3
【0157】
構成要素Yの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
EEVLWHTSVPFAENMSLECVYPSMGILTQVEWFKIGTQQDSIAIFSPTHGMVIRKPYAERVYFLNSTMASNNMTLFFRNASEDDVGYYSCSLYTYPQGTWQKVIQVVQSDSFEAAVPSNSHIVSEPGKNVTLTCQPQMTWPVQAVRWEKIQPRQIDLLTYCNLVHGRNFTSKFPRQIVSNCSHGRWSVIVIPDVTVSDSGLYRCYLQASAGENETFVMRLTVAEGKTDNQYTLFVA
(配列番号6)ヒトCD226細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_006566.3
【0158】
構成要素Yの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
QNLFTKDVTVIEGEVATISCQVNKSDDSVIQLLNPNRQTIYFRDFRPLKDSRFQLLNFSSSELKVSLTNVSISDEGRYFCQLYTDPPQESYTTITVLVPPRNLMIDIQKDTAVEGEEIEVNCTAMASKPATTIRWFKGNTELKGKSEVEEWSDMYTVTSQLMLKVHKEDDGVPVICQVEHPAVTGNLQTQRYLEVQYKPQVHIQMTYPLQGLTREGDALELTCEAIGKPQPVMVTWVRVDDEMPQHAVLSGPNLFINNLNKTDNGTYRCEASNIVGKAHSDYMLYVYDPPTTIPPPTTTTTTTTTTTTTILTIITDSRAGEEGSIRAVDH
(配列番号7)ヒトNECL2細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_014333.3
【0159】
構成要素Yの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
PIIVEPHVTAVWGKNVSLKCLIEVNETITQISWEKIHGKSSQTVAVHHPQYGFSVQGEYQGRVLFKNYSLNDATITLHNIGFSDSGKYICKAVTFPLGNAQSSTTVTVLVEPTVSLIKGPDSLIDGGNETVAAICIAATGKPVAHIDWEGDLGEMESTTTSFPNETATIISQYKLFPTRFARGRRITCVVKHPALEKDIRYSFILDIQYAPEVSVTGYDGNWFVGRKGVNLKCNADANPPPFKSVWSRLDGQWPDGLLASDNTLHFVHPLTFNYSGVYICKVTNSLGQRSDQKVIYISDPPTTTTLQPTIQWHPSTADIEDLATEPKKLPFPLSTLATIKDD
(配列番号8)ヒトCD113細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_015480.3
【0160】
構成要素Yの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
AEPHSLRYNLTVLSWDGSVQSGFLTEVHLDGQPFLRCDRQKCRAKPQGQWAEDVLGNKTWDRETRDLTGNGKDLRMTLAHIKDQKEGLHSLQEIRVCEIHEDNSTRSSQHFYYDGELFLSQNLETKEWTMPQSSRAQTLAMNVRNFLKEDAMKTKTHYHAMHADCLQELRRYLKSGVVLRRTVPPMVNVTRSEASEGNITVTCRASGFYPWNITLSWRQDGVSLSHDTQQWGDVLPDGNGTYQTWVATRICQGEEQRFTCYMEHSGNHSTHPVPSGKVLVLQSHW
(配列番号9)ヒトMICA(MHC-Iポリペプチド関連配列A)細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_000247.3
【0161】
リーダー配列
リーダー配列の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
MKWVTFISLLFLFSSAYS
(配列番号10)ヒトアルブミンリーダー配列
【0162】
ヒンジ
ヒンジの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
EPKSSDKTHTCPPCPAPELLGG
(配列番号11)ヒトIgGヒンジ
【0163】
構成要素Z
構成要素Zの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
PSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAK
(配列番号12)IgG1
【0164】
構成要素Z
構成要素Zの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
GQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVLHEALHSHYTQKSLSLSPGK
(配列番号13)IgG1
【0165】
構成要素Aの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化1】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:ヒトPD-1細胞外ドメイン;Yドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0166】
構成要素Aの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化2】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:高親和性ヒトPD-1細胞外ドメイン;Yドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0167】
構成要素Aの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化3】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:ヒトCD112R細胞外ドメイン;Yドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0168】
構成要素Aの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化4】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:高親和性ヒトTIGIT細胞外ドメイン;Yドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0169】
構成要素Aの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化5】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:ヒトCD96細胞外ドメイン;Yドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0170】
構成要素Aの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化6】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:ヒトCD226細胞外ドメイン;Yドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0171】
構成要素Aの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化7】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:ヒトNECL2細胞外ドメイン;Yドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0172】
構成要素Aの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化8】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:ヒトCD113細胞外ドメイン;Yドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0173】
構成要素Aの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化9】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:ヒトMICA細胞外ドメイン;Yドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0174】
【化10】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0175】
構成要素B
構成要素Bは、構成要素X’、構成要素Z’、及び構成要素Z’を含む。幾つかの実施形態では、構成要素X’は、ウイルス由来ペプチド、リガンド由来ペプチド、受容体由来ペプチド、又はHTS選択ペプチドを含む。幾つかの実施形態では、構成要素X’は、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。
【0176】
構成要素X’
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
WPPPGTGDVVVQAPTQVPGFLGDSVTLPCYLQVPNMEVTHVSQLTWARHGESGSMAVFHQTQGPSYSESKRLEFVAARLGAELRNASLRMFGLRVEDEGNYTCLFVTFPQGSRSVDIWLRVLAKPQNTAEVQKVQLTGEPVPMARCVSTGGRPPAQITWHSDLGGMPNTSQVPGFLSGTVTVTSLWILVPSSQVDGKNVTCKVEHESFEKPQLLTVNLTVYYPPEVSISGYDNNWYLGQNEATLTCDARSNPEPTGYNWSTTMGPLPPFAVAQGAQLLIRPVDKPINTTLICNVTNALGARQAELTVQVKEGPPSEHSGMSRN
(配列番号24)ヒトCD155(ポリオウイルス受容体、PVR)細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_006505.5
【0177】
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
MMTGTIETTGNISAEKGGSIILQCHLSSTTAQVTQVNWEQQDQLLAICNADLGWHISPSFKDRVAPGPGLGLTLQSLTVNDTGEYFCIYHTYPDGTYTGRIFLEVLESSVAEHGARFQIP
(配列番号25)ヒトTIGIT(Igドメイン・ITIMドメイン含有T細胞免疫受容体)細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_173799.4
【0178】
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LEDGYKVEVGKNAYLPCSYTLPTSGTLVPMCWGKGFCPWSQCTNELLRTDERNVTYQKSSRYQLKGDLNKGDVSLIIKNVTLDDHGTYCCRIQFPGLMNDKKLELKLDIKAAKVTPAQTAHGDSTTASPRTLTTERNGSETQTLVTLHNNNGTKISTWADEIKDSGETIR
(配列番号26)マウスTim-3細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_134250.2
マウスTIM-3はヒトガラクチン-9に対して良好な結合性を有する。
【0179】
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
PIIVEPHVTAVWGKNVSLKCLIEVNETITQISWEKIHGKSSQTVAVHHPQYGFSVQGEYQGRVLFKNYSLNDATITLHNIGFSDSGKYICKAVTFPLGNAQSSTTVTVLVEPTVSLIKGPDSLIDGGNETVAAICIAATGKPVAHIDWEGDLGEMESTTTSFPNETATIISQYKLFPTRFARGRRITCVVKHPALEKDIRYSFILDIQYAPEVSVTGYDGNWFVGRKGVNLKCNADANPPPFKSVWSRLDGQWPDGLLASDNTLHFVHPLTFNYSGVYICKVTNSLGQRSDQKVIYISDPPTTTTLQPTIQWHPSTADIEDLATEPKKLPFPLSTLATIKDD
(配列番号27)ヒトCD113細胞外ドメイン、GENBANK(登録商標)受入番号NM_015480.3
【0180】
リーダー配列
リーダー配列の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
MKWVTFISLLFLFSSAYS
(配列番号10)ヒトアルブミンリーダー配列
【0181】
ヒンジ
ヒンジの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
EPKSSDKTHTCPPCPAPELLGG
(配列番号11)ヒトIgGヒンジ
【0182】
構成要素Z
構成要素Z’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
PSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAK
(配列番号12)IgG1
【0183】
構成要素Z
構成要素Z’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
GQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVLHEALHSHYTQKSLSLSPGK
(配列番号13)IgG1
【0184】
構成要素Bの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化11】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:ヒトCD155(ポリオウイルス受容体、PVR)細胞外ドメイン;X’ドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0185】
構成要素Bの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化12】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:ヒトTIGIT(Igドメイン・ITIMドメイン含有T細胞免疫受容体)細胞外ドメイン;X’ドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0186】
構成要素Bの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化13】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:マウスTIM-3細胞外ドメイン;X’ドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0187】
構成要素Bの別の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化14】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:ヒトCD113細胞外ドメイン;X’ドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0188】
【化15】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0189】
構成要素Z’を含む構成要素B
幾つかの実施形態では、構成要素Bは構成要素Z’をさらに含む。したがって、幾つかの実施形態では、構成要素Bは、構成要素X’、構成要素Z’、構成要素Z’、及び構成要素Z’を含む。
【0190】
幾つかの実施形態では、構成要素X’は、ウイルス由来ペプチド、リガンド由来ペプチド、受容体由来ペプチド、又はHTS選択ペプチドを含む。幾つかの実施形態では、構成要素X’は、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。その他の実施形態では、構成要素X’は、CD155、TIGIT、TIM-3、又はCD113の少なくとも一部を含む。
【0191】
構成要素X’
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDKCCLGYQKRPLPQVLLSSWYPTSQLCSKPGVIFLTKRGRQVCADKSKDWVKKLMQQLPVTAR
(配列番号37)vMIPII、GENBANK(登録商標)受入番号YP_001129362
【0192】
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDKCCLGYQKRPLP
(配列番号38)V1
【0193】
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDKCALGYQKRPLP
(配列番号39)V1Δ
【0194】
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDACALGYQKRPLP
(配列番号40)V1Δmut
【0195】
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDKCCLGYQKRPLPQVLLSSWYPTSQL
(配列番号41)Vp1
【0196】
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDKCALGYQKRPLPQVLLSSWYPTSQL
(配列番号42)Vp1Δ
【0197】
構成要素X’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDACALGYQKRPLPQVLLSSWYPTSQL
(配列番号43)Vp1Δmut
【0198】
リーダー配列
リーダー配列の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
MKWVTFISLLFLFSSAYS
(配列番号10)ヒトアルブミンリーダー配列
【0199】
構成要素Z
構成要素Z’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
SSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVX
(配列番号45)
【0200】
ヒンジ
ヒンジの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
EPKSSDKTHTCPPCPAPELLGG
(配列番号11)
【0201】
構成要素Z
構成要素Z’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
PSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAK
(配列番号12)
【0202】
構成要素Z
構成要素Z’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
GQPREPQVYTLPPSRCELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVLHEALHSHYTQKSLSLSPGK
(配列番号48)
【0203】
構成要素Bの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化16】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:vMIPII
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CH’
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0204】
構成要素Bの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化17】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:V1(V1はVMIPIIの最初の21アミノ酸である)
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CH’
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0205】
構成要素Bの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化18】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:V1Δ(V1Δは、2つのV1ペプチドの二量体化を増強するアミノ酸11におけるCからAへの変異を有するV1である)
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CH’
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0206】
構成要素Bの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化19】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:V1Δmut(V1ΔmutはV1と同じアミノ酸11におけるCからAへの変異を有するが、受容体結合を防止するアミノ酸9におけるKからAへの変異が加えられている)
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CH’
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0207】
構成要素Bの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化20】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:Vp1(Vp1はvMIPIIの最初の34アミノ酸である)
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CH’
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0208】
構成要素Bの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化21】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:Vp1Δ
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CH’
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0209】
【化22】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:Vp1Δmut
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CH’
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Z’ドメイン
太線:IgG1 Z’ドメイン
【0210】
構成要素C
幾つかの実施形態では、融合タンパク質は構成要素Cをさらに含み、構成要素Cは構成要素X及び構成要素C’を含む。
【0211】
構成要素X
構成要素Xの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDKCCLGYQKRPLPQVLLSSWYPTSQLCSKPGVIFLTKRGRQVCADKSKDWVKKLMQQLPVTAR
(配列番号37)vMIPII、GENBANK(登録商標)受入番号YP_001129362
【0212】
構成要素Xの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDKCCLGYQKRPLP
(配列番号38)V1
【0213】
構成要素Xの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDKCALGYQKRPLP
(配列番号39)V1Δ
【0214】
構成要素Xの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDACALGYQKRPLP
(配列番号40)V1Δmut
【0215】
構成要素Xの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDKCCLGYQKRPLPQVLLSSWYPTSQL
(配列番号41)Vp1
【0216】
構成要素Xの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDKCALGYQKRPLPQVLLSSWYPTSQL
(配列番号42)Vp1Δ
【0217】
構成要素Xの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
LGASWHRPDACALGYQKRPLPQVLLSSWYPTSQL
(配列番号43)Vp1Δmut
【0218】
幾つかの実施形態では、構成要素Xと構成要素X’とは同じである。その他の実施形態では、構成要素Xは構成要素X’とは異なっている。
【0219】
リーダー配列
リーダー配列の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
MKWVTFISLLFLFSSAYS
(配列番号10)ヒトアルブミンリーダー配列
【0220】
構成要素C
構成要素C’の例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
KRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号64)
【0221】
構成要素Cの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化23】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:vMIPII
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CL’
【0222】
構成要素Cの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化24】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:V1
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CL’
【0223】
構成要素Cの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化25】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:V1Δ
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CL’
【0224】
構成要素Cの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化26】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:V1Δmut
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CL’
【0225】
構成要素Cの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は例示的なの配列から成る。
【化27】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:Vp1
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CL’
【0226】
構成要素Cの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化28】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:Vp1Δ
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CL’
【0227】
構成要素Cの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
【化29】


斜体:ヒトアルブミンリーダー配列
波線:Vp1Δmut
太波線:V1、V1Δ、及びV1Δmut間のアミノ酸の違い
太線:CL’
【0228】
構成要素D
幾つかの実施形態では、融合タンパク質は構成要素Dをさらに含み、構成要素Dは構成要素Q及び構成要素Cを含む。幾つかの実施形態では、構成要素Qは、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む。
【0229】
構成要素Qの例示的な配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは9を含むか、又は配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは9から成る。幾つかの実施形態では、構成要素Qと構成要素Yとは同じである。その他の実施形態では、構成要素Qは構成要素Yとは異なっている。
【0230】
構成要素C
構成要素Cの例示的な配列は、以下の配列を含むか、又は以下の配列から成る。
KRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号64)
【0231】
融合タンパク質の構成
本発明の融合タンパク質の幾つかの実施形態では、本明細書の別の箇所に記載される組換え技法により調製される場合、構成要素Aの構成要素のコード配列は直接的に、又はリンカーを介してインフレームで共に融合される。本明細書において使用される場合、「直接的に」という用語は、間にペプチドリンカーを含まずに2つの構成要素を融合することを指す(すなわち、発現コンストラクト内で構成要素Y、構成要素Z、及び構成要素Zをコードするコドンが連続する)。本明細書において使用される場合、「インフレームで融合される」とは、融合コード配列の発現の結果として、ポリペプチド構成要素の全てを含む融合タンパク質が生じることを意味し、例えば、幾つかの実施形態では、構成要素Aは構成要素Y、構成要素Z、及び構成要素Zのポリペプチド構成要素の全てをインフレームで含む。
【0232】
本発明の融合タンパク質の幾つかの実施形態では、本明細書の別の箇所に記載される組換え技法により調製される場合、構成要素Bの構成要素のコード配列は直接的に、又はリンカーを介してインフレームで共に融合される。幾つかの実施形態では、構成要素Bの発現コンストラクトにおいて、構成要素X’、構成要素Z及び構成要素Z’をコードするコドンが連続する。その他の実施形態では、構成要素Bの発現コンストラクトにおいて、構成要素X’、構成要素Z’、構成要素Z、及び構成要素Z’をコードするコドンが連続する。幾つかの実施形態では、構成要素Bは、構成要素X’、構成要素Z、及び構成要素Z’のポリペプチド構成要素の全てをインフレームで含む。その他の実施形態では、構成要素Bは、構成要素X’、構成要素Z’、構成要素Z’、及び構成要素Z’のポリペプチド構成要素の全てをインフレームで含む。
【0233】
本発明の融合タンパク質の幾つかの実施形態では、本明細書の別の箇所に記載される組換え技法により調製される場合、構成要素Cの構成要素のコード配列は直接的に、又はリンカーを介してインフレームで共に融合される。幾つかの実施形態では、構成要素Cの発現コンストラクトにおいて、構成要素X及び構成要素C’をコードするコドンが連続する。幾つかの実施形態では、構成要素Cは、構成要素X及び構成要素C’のポリペプチド構成要素の全てをインフレームで含む。
【0234】
幾つかの実施形態では、任意の構成要素Aと任意の構成要素Bとを互いに組み合わせて混合することが可能である。本発明の融合タンパク質の幾つかの例示的な実施形態では、構成要素A及び構成要素Bは表1に示される通りである。幾つかの実施形態では、表1の構成要素A及び構成要素Bを互いに組み合わせて混合しても、追加の構成要素A及び構成要素Bのオプションと共に組み合わせることが可能である。上記追加オプションも互いに組み合わせて混合することが可能である。構成要素A又は構成要素Bの追加オプションは、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含み得る。
【0235】
幾つかの実施形態では、融合タンパク質は、構成要素A及びhFcBを含む。幾つかの実施形態では、融合タンパク質は、構成要素B及びhFcAを含む。
【0236】
幾つかの例示的な実施形態では、融合タンパク質の構成要素の1つが抑制性受容体を妨害し、融合タンパク質の他の2つの構成要素がそれぞれ別個の活性化受容体を刺激する。好ましい実施形態では、これらの3種類の受容体は同じ免疫エフェクター細胞、例えばNK細胞の表面上に共局在し、阻害経路の妨害及び活性化受容体の刺激の連携である融合タンパク質の3つの相互作用が互いを補強するように働き、それらの3つの相互作用の全てが協同してNK細胞の活性化を引き起こす。
【0237】
他の例示的な実施形態では、融合タンパク質の構成要素の2つがそれぞれ別個の抑制性受容体を妨害し、融合タンパク質の他の1つの構成要素が活性化受容体を刺激する。好ましい実施形態では、これらの3種類の受容体は同じ免疫エフェクター細胞、例えばNK細胞の表面上に共局在し、阻害経路の妨害及び活性化受容体の刺激の連携である融合タンパク質の3つの相互作用が互いを機能的に補強するように働き、それらの3つの相互作用の全てが協同してNK細胞の活性化を引き起こす。
【0238】
さらに他の例示的な実施形態では、融合タンパク質の3つの構成要素がそれぞれ活性化受容体を刺激する。好ましい実施形態では、これらの3種類の受容体は同じ免疫エフェクター細胞、例えばNK細胞の表面上に共局在し、全て活性化受容体の刺激である融合タンパク質の3つの相互作用が互いを機能的に補強するように働き、それらの3つの相互作用の全てが協同してNK細胞の活性化を引き起こす。
【0239】
NK細胞について、前述の実施形態における活性化受容体は、NK細胞の活性化を引き起こし、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)を促進するFcγRIIIa受容体であり得る。
【0240】
【表1】

【0241】
幾つかの例示的な実施形態では、融合タンパク質は、構成要素B及び構成要素Cを含む。幾つかの実施形態では、任意の構成要素Bと任意の構成要素Cとを互いに組み合わせて混合することが可能である。幾つかの実施形態では、構成要素B及び構成要素Cは表2に示される通りである。幾つかの実施形態では、表2の各行は融合タンパク質内の構成要素Bと構成要素Cの組合せを示している。
【0242】
【表2】

【0243】
幾つかの実施形態では、構成要素Aと構成要素Bとは、ジスルフィド結合で安定化されているノブ・イントゥ・ホール相互作用(KiHS-S)を介してつなぎ合わされている。幾つかの実施形態では、構成要素Aは変異Y349C及び変異T366W(例えば配列番号29)を含み、構成要素Bは変異D356C、変異T366S、変異L368A、及び変異Y407V(例えば配列番号30)(「ノブ・イントゥ・ホール」変異)を含み、それにより構成要素Aと構成要素Bとの強制二量体化が可能になる。構成要素Z、構成要素Z、及び構成要素ZはそれぞれヒトIgG1のCH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインのポリペプチドアミノ酸骨格に基づいている。これらの構成要素鎖内の変異及び変化の位置はKabat番号付与法(Johnson, G及びWu, TT著、(2011年)、Nucleic Acids Res.誌、第28巻(第1号)、214~18頁)によって規定され、野生型ヒトIgG1配列に基づいている。
【0244】
【化30】


波線:IgG1 Zドメイン
太字:IgG1ヒンジ領域
二重下線:IgG1 Zドメイン
太線:IgG1 Zドメイン
【0245】
幾つかの実施形態では、構成要素Aは、以下の配列(Y349C及びT366W)を含むか、又は以下の配列から成る。
【化31】


波線:IgG1 Zドメイン(配列番号67)(例えば図1a参照)
太字:IgG1ヒンジ領域(配列番号68)
:野生型と比較して異なる別のシステインとの結合を行う可能性がある非対システイン(C)を除去するためにこの変異をヒンジ領域に付加した。
二重下線:IgG1 Zドメイン(配列番号69)
**:C1q結合を減少させるために付加された変異(例えば図1a参照)
太線:IgG1 Zドメイン(配列番号44)
***及びS***:FcRn結合を増加させるために付加された変異(例えば図1a参照)
【0246】
幾つかの実施形態では、構成要素Bは以下の配列(D356C、T366S、L368A及びY407V)を含むか、又は以下の配列から成る。
【化32】


波線:IgG1 Z’ドメイン
【0247】
表1及び表2に示される構成要素は例であり、限定する意図はない。
【0248】
幾つかの例示的な実施形態では、融合タンパク質の1つの構成要素が腫瘍細胞の腫瘍形成性及び/又は転移能に寄与する、腫瘍細胞上の受容体を妨害し、融合タンパク質の第2の構成要素が腫瘍細胞上のチェックポイント阻害因子を妨害し、融合タンパク質の第3の構成要素が免疫エフェクター細胞上の活性化受容体を刺激する。理論に捉われることを望むものではないが、融合タンパク質は免疫エフェクター細胞と標的腫瘍細胞に分子架橋を形成するように働き、融合タンパク質の第2の構成要素及び第3の構成要素は、チェックポイント阻害因子の妨害及び免疫エフェクター細胞、例えばNK細胞上の活性化受容体の刺激の連携によって互いを補強するように働くと共に協同して、免疫エフェクター細胞の活性化を引き起こす。
【0249】
好ましい実施形態では、融合タンパク質の第1構成要素は(融合タンパク質内のvMIPIIペプチド又はV1ペプチド又はそれらの誘導体の結合を介して)ケモカイン受容体(例えば、CXCR4及び/又はCXCR7)を妨害し、この妨害が腫瘍細胞を動けないようにし、その移動性、浸潤性、転移性、及び他の腫瘍原性特性に支障をきたすように働く。融合タンパク質の第2構成要素は(融合タンパク質内のPD1又はその誘導体の結合を介して)腫瘍細胞上のチェックポイント阻害因子、例えばPD-L1及び/又はPD-L2を妨害し、この妨害が腫瘍指向性免疫エフェクター細胞、例えばNK細胞の阻害に支障をきたすように働く。融合タンパク質の第3構成要素は、(融合タンパク質内のFcγ又はその誘導体の結合を介して)同じ免疫エフェクター細胞上の活性化受容体、例えばFcγRIIIa受容体を刺激し、それによりNK細胞の活性化を引き起こし、ADCC及びADCPを促進する。上記実施形態の有益な特徴は、同じ融合タンパク質が正味の抗腫瘍作用を有するNK細胞以外の他の免疫細胞も協調的に調整することである(図5参照)。
【0250】
幾つかの例示的な実施形態では、融合タンパク質の1つの構成要素が腫瘍細胞又は他の細胞上のチェックポイント阻害因子を妨害し、その他の2つの構成要素がそれぞれ免疫エフェクター細胞上の別個の活性化受容体を刺激する。チェックポイント阻害因子が腫瘍細胞上に存在する場合、融合タンパク質が事実上免疫エフェクター細胞と標的腫瘍細胞に分子架橋を形成するように働く。さらに、チェックポイント阻害経路の妨害及び活性化受容体の刺激の連携である融合タンパク質の3つの相互作用が互いを機能的に補強するように働き、それらの3つの相互作用の全てが協同して免疫エフェクター細胞、例えばNK細胞の活性化を引き起こす。好ましい実施形態では、融合タンパク質により妨害されるチェックポイント阻害因子は、PD-L1、PD-L2、CD113、CD112、CD155、又はCD111から成り、融合タンパク質が共刺激する2つの活性化受容体はNK細胞上のFcγRIIIa受容体と4-1BBである(図6参照)。
【0251】
幾つかの例示的な実施形態では、融合タンパク質の1つの構成要素が腫瘍細胞又は他の細胞上のチェックポイント阻害因子を妨害し、融合タンパク質の第2の構成要素が免疫エフェクター細胞上の同じ又は異なるチェックポイント阻害因子の共抑制性受容体を妨害し、融合タンパク質の第3の構成要素が免疫エフェクター細胞上の活性化受容体を刺激する。チェックポイント阻害因子が腫瘍細胞上に存在する場合、融合タンパク質が事実上免疫エフェクター細胞と標的腫瘍細胞に分子架橋を形成するように働き、チェックポイント阻害経路の妨害及び活性化受容体の刺激の連携である融合タンパク質の3つの相互作用が互いを機能的に補強するように働き、それらの3つの相互作用の全てが協同して免疫エフェクター細胞、例えばNK細胞の活性化を引き起こす。好ましい実施形態では、融合タンパク質の第1構成要素が妨害するチェックポイント阻害因子は、PD-L1、PD-L2、CD113、CD112、CD155、又はCD111から成り、融合タンパク質が妨害するNK細胞上の共抑制性受容体はPD-1、TIGIT、CD96、又はCD112Rから成り、融合タンパク質が刺激する活性化受容体は同じNK細胞上のFcγRIIIa受容体である(図7参照)。
【0252】
幾つかの例示的な実施形態では、融合タンパク質の1つの構成要素がM1型腫瘍随伴マクロファージ上の抑制性「ドント・イート・ミー」シグナル受容体を妨害することにより、上記受容体の抗腫瘍貪食活性及び他の活性を解除し、融合タンパク質の他の2つの構成要素がそれぞれ腫瘍随伴マクロファージ上の別個の活性化受容体を刺激する。マクロファージ阻害経路の妨害及びマクロファージ上の別個の活性化受容体の刺激の連携である融合タンパク質の3つの相互作用が互いを機能的に補強するように働き、それらの3つの相互作用の全てが協同して腫瘍随伴マクロファージの活性化を引き起こし、その抗腫瘍機能を促進する。好ましい実施形態では、融合タンパク質の第1構成要素が妨害する「ドント・イート・ミー」シグナル受容体はSIRPαであり、融合タンパク質が刺激する活性化受容体は同じマクロファージ上のCD40とFcγRIIIa受容体である(図8左パネル参照)。
【0253】
幾つかの例示的な実施形態では、融合タンパク質の1つの構成要素がM1型腫瘍随伴マクロファージ上の抑制性「ドント・イート・ミー」シグナル受容体を妨害することにより、上記受容体の抗腫瘍貪食活性及び他の活性を解除し、融合タンパク質の第2の構成要素がマクロファージ上の別個の抑制性受容体を妨害し、融合タンパク質の第3の構成要素が腫瘍随伴マクロファージ上の活性化受容体を刺激する。2つのマクロファージ阻害経路の妨害及びマクロファージ上の活性化受容体の刺激の連携である融合タンパク質の3つの相互作用が互いを機能的に補強するように働き、それらの3つの相互作用の全てが協同して腫瘍随伴マクロファージの活性化及び/又は抗腫瘍エフェクター機能を引き起こす。好ましい実施形態では、融合タンパク質の第1構成要素が妨害する「ドント・イート・ミー」シグナル受容体はSIRPαであり、融合タンパク質の第2構成要素が妨害する抑制性受容体はPD-1であり、融合タンパク質が刺激する活性化受容体はFcγRIIIa受容体である(図8右パネル参照)。
【0254】
本発明の融合タンパク質の好ましい実施形態は、サイトカイン又はその一部若しくは誘導体を含み、それは構成要素A、構成要素B、構成要素C、及び/又は構成要素Dに組み込まれ得る。このサイトカインには当業者によく知られている広範囲のサイトカインが含まれ、それらのサイトカインは多種多様なクラス、例えば、インターロイキン、腫瘍壊死因子、インターフェロン、コロニー刺激因子、及びその他に分類され、一連の活性化特性又は阻害特性を有する様々な機能、例えば適応免疫、炎症促進性シグナル伝達、炎症抑制性シグナル伝達、幹細胞の改変と分化、化学遊走、食作用、細胞傷害、及び抗ウイルス作用に関連するとされており、一連の免疫細胞標的及び非免疫細胞標的、例えばB細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ/単球、樹状細胞、骨髄間質細胞、幹細胞、線維芽細胞、内皮細胞、及び上皮細胞と関連付けられている。好ましい実施形態は、適応免疫に関連するサイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21、GM-CSF)、炎症促進性シグナル伝達に関連するサイトカイン[例えば、IL-1ファミリー(IL-1、IL-18、IL-33、IL-36)、IL-6ファミリー(IL-6、IL-11、IL-31、CNTF、CT-1、LIF、OPN、OSM)、TNFαファミリー(TNFα、TNFβ、BAFF、APRIL)、IL-17ファミリー(IL-17A-F、IL-25)、I型IFNファミリー(IFNα、IFNβ、IFNκ、リミチン)、II型IFNファミリー(IFNγ)、及びIII型IFNファミリー(IFNλ1/IL-29、IFNλ2/IL-28A、IFNλ3/IL-28B)]、及び炎症抑制性シグナル伝達に関連するサイトカイン[IL-12ファミリー(IL-12、IL-23、IL-27、IL-35)及びIL-10ファミリー(IL-10、IL-19、IL-20、IL-22、IL-24、IL-26、IL-28、IL-29)]を含む。Turner, Mark D.著、「Cytokines and Chemokines: At the Crossroads of Cell Signaling and Inflammatory Disease」、Biochimica et Biophysica Acta誌、第1843巻(2014年)、2563~2582頁を参照されたい。
【0255】
vMIP-II
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はvMIP-II又はその変異体を含み得る。ウイルスマクロファージ炎症タンパク質-II(vMIP-II)は、CCR5ケモカイン受容体及びCXCR4ケモカイン受容体を含むCCケモカイン受容体及びCXCケモカイン受容体と相互作用するケモカインである。CCR5及びCXCR4は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)の細胞侵入に必要とされる主要な共受容体である。CXCR4はがん細胞上、例えば腫瘍細胞上に見られる場合もある。ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)がコードするケモカインであるvMIP-II(Moore, P.S.ら著、Science誌、第274巻:1739~1744頁、1996年)は、CCケモカイン受容体及びCXCケモカイン受容体の両方との多様な相互作用を示し、CCR3、CCR5、及びCXCR4を介したHIV-1侵入を妨害する。参照により全体が本明細書に援用される米国特許出願公開第2003/0220482号明細書を参照されたい。vMIP-IIはCXCR7にも結合し、これはCXCR4のように腫瘍形成に関係するとされている。V1(vMIP-IIのアミノ酸1~アミノ酸21)及びその関連のDV1(Dアミノ酸異性体)はCXCR4及びCXCR7に対してアンタゴニスト活性を示すが、CCR5に対してはアンタゴニスト活性を示さない。
【0256】
vMIPは天然のリガンドであるCXCL12の結合を阻害する。幾つかの実施形態では、Δは、構成要素Bと構成要素Cの2つのペプチド間での二量体化を引き起こす、12番アミノ酸における変異を意味している。幾つかの実施形態では、Δmutは、ペプチドの結合を妨害する、10番アミノ酸における変異を意味しており、陰性対照として作用する。
【0257】
PD-1
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はPD-1又はその変異体を含み得る。PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)はCD279としても知られており、細胞に対する免疫系の応答を制御する役割を有する当該細胞の表面上のタンパク質である。PD-1は免疫系を下方制御し、T細胞炎症活性を抑制することにより自己免疫寛容を助長する。理論に捉われることを望むものではないが、PD-1は少なくとも2つの機序を通して免疫チェックポイントとして作用する。PD-1はリンパ節において抗原特異的T細胞のアポトーシスを促進する。PD-1はまた調節性T細胞のアポトーシスを減少させる。PD-1はB7ファミリーメンバーであるリガンドPD-L1及びPD-L2に結合する。PD-L1及びPD-L2は幾つかの腫瘍細胞の表面上に発現する。腫瘍細胞上に発現したPD-L1はエフェクターT細胞上及びNK細胞上のPD-1と結合し、これらの細胞の機能を阻害する。したがって、腫瘍細胞上に発現したPD-L1はエフェクターT細胞の抗腫瘍活性を阻害する。
【0258】
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質のPD-1変異体は高親和性PD-1である。天然のPD-1がそのリガンドであるPD-L1及びPD-L2に対して有する親和性は比較的に低い。PD-1エクトドメインの高親和性変異体であればPD-1リガンドに対するより競合的なアンタゴニストとして機能するだろう。ヒトPD-1とPD-L1との間のPD-1接触残基に変異を形成した後にその残基を結合について評価した。本明細書に記載される高親和性PD-1は、10カ所のアミノ酸が変異していることにより10,000倍を超えるPD-L1に対する親和性の向上が達成されている。その他の詳細についてはMauteら著、PNAS誌、第112巻(第47号):6506~6514頁、2015年を参照されたい。
【0259】
CD112R
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD112R又はその変異体を含み得る。CD112RはT細胞上及びNK細胞上に発現し、活性化応答を抑制する。抗原提示細胞上及び腫瘍細胞上に広く発現するCD112はCD112Rのリガンドである。CD112Rは共抑制性受容体であるCD226とCD112への結合について競合する。理論に捉われることを望むものではないが、CD112R-CD112間の相互作用の破壊がT細胞応答を増加させる可能性がある。ヒトCD112Rは単一の細胞外IgVドメインを含む。本明細書に記載されるCD112R融合タンパク質変異体は、ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインに結合しているヒトCD112Rのエクトドメイン全体から構成される。CD112R及び変異体はそのリガンドであるCD112に結合し、NK細胞上及びT細胞上の天然CD112Rに対する競合的アンタゴニストとして作用して抑制性シグナル伝達を阻害する可能性がある。
【0260】
CD113
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD113又はその変異体を含み得る。CD113はポリオウイルス受容体関連タンパク質3(PVRL3)又はネクチン-3としても知られており、接着結合部を形成する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CD113は、限定されないが、MLLT4、PARD3、及びPTPRMと相互作用することが示されている。また、CD113はTIGIT、CD111、CD112、CD155、及び自分自身と結合する。本明細書に記載されるCD113融合タンパク質変異体は、ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインに結合している天然ヒトCD113の細胞外ドメイン全体から構成される。CD113含有融合タンパク質はNK細胞上及びT細胞上の天然TIGITに対する競合的アンタゴニストとして作用して抑制性シグナル伝達を阻害する可能性がある。あるいは、CD113融合タンパク質はCD112、CD155、及び/又はCD111に結合し、抑制性受容体CD112R、TIGIT、及びCD96とそれらの結合をそれぞれ妨害してNK細胞及びT細胞の細胞傷害性及びサイトカイン生産を回復させる可能性がある。
【0261】
MICA
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はMHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)又はその変異体を含み得る。MICAはMHC座位内に位置するMICA遺伝子がコードする細胞表面糖タンパク質である。MICAはβ2マイクログロブリンにも従来のMHCクラスI分子が結合するようなペプチドにも結合しない。理論に捉われることを望むものではないが、MICAはNKG2D受容体のストレス誘導性リガンドとして作用する可能性がある。MICAは細胞表面上にNKG2Dを発現するNK細胞、γδT細胞、及びCD8+αβT細胞によって大まかに認識される。MICAを発現する腫瘍細胞に対するT細胞及びNK細胞のエフェクター細胞溶解反応はNKG2D-MICA間の結合の結果として開始される。幾つかの実施形態では、MICA変異体は、ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインに結合しているMICAエクトドメイン全体から構成される。NK細胞上及び細胞傷害性T細胞上でのNKG2Dシグナル伝達のMICA刺激は抗腫瘍活性の重要な介在因子である。
【0262】
CD155
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD155又はその変異体を含み得る。CD155は免疫グロブリンスーパーファミリーのI型経膜糖タンパク質である。ヒトではCD155はポリオウイルス受容体(PVR)遺伝子によってコードされる。CD155は上皮細胞間の細胞間接着結合の構築に関与する。CD155の外部ドメインは細胞外マトリックス分子であるビトロネクチンへの細胞接着に関係する一方、その細胞内ドメインはダイニン軽鎖Tctex-1/DYNLT1と相互作用する。また、CD155はNK細胞抑制性受容体であるTIGIT及びCD96と結合し、NK細胞の細胞傷害性及び活性化受容体CD226(DNAM-1)を制限する。CD155細胞外ドメイン含有融合タンパク質はNK細胞上及びT細胞上のTIGIT又はCD96に結合し、腫瘍細胞又は抗原提示細胞(APC)が発現した内在性CD155に対する競合的アンタゴニストとして作用する可能性がある。CD155含有融合タンパク質は共刺激受容体であるCD226に結合し、腫瘍標的のNK細胞介在性溶解を誘導する可能性もある。
【0263】
TIGIT
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はTIGIT又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、TIGITはマウスTIGITである。その他の実施形態では、TIGITはヒトTIGITである。幾つかの実施形態では、TIGIT変異体は、ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインに結合しているTIGIT細胞外IgV様ドメイン全体を含む。
【0264】
TIGITは、Igドメイン・ITIMドメイン含有T細胞免疫受容体としても知られており、幾つかのT細胞上及びNK細胞上に存在する免疫受容体である。TIGITはWUCAM又はVstm3としても知られている。TIGITは樹状細胞(DC)及びマクロファージなどの細胞上のCD155(PVR)に高い親和性で結合し、CD112(PVRL2)にも低い親和性で結合する。TIGITはチェックポイント阻害因子であり、がん、例えば黒色腫の個体に由来する腫瘍抗原特異的(TA特異的)CD8+T細胞上及びCD8+腫瘍浸潤リンパ球(TIL)上に過剰発現する。理論に捉われることを望むものではないが、TIGITの妨害は細胞増殖、サイトカイン生産、並びに腫瘍抗原特異的CD8+T細胞及びTIL CD8+T細胞の脱顆粒の増加を引き起こす可能性がある。TIGIT含有融合タンパク質はその受容体であるCD155(PVR)及びCD112(PVRL2)に結合し、NK細胞上のTIGITとのそれらの相互作用を妨害する可能性がある。TIGITのがん細胞上のリガンドとの相互作用の破壊はNK細胞の細胞傷害活性及びサイトカイン生産を回復させることになる。
【0265】
TIM-3
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はTIM-3又はその変異体を含み得る。T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有タンパク質-3(TIM-3)はA型肝炎ウイルス細胞性受容体2(HAVCR2)としても知られており、ヒトではHAVCR2遺伝子によってコードされるタンパク質である。HAVCR2はIFNγ産生CD4+Th1細胞上及びCD8+Tc1細胞上に発現する細胞表面分子である。TIM-3の発現はTh17細胞、調節性T細胞、及び先天的免疫細胞(樹状細胞、NK細胞、単球)でも検出されている。TIM-3は免疫チェックポイントであり、T細胞疲弊に関係する。理論に捉われることを望むものではないが、TIM-3は、肺がん、胃がん、頭頚部がん、シュワン細胞腫、黒色腫、及び濾胞B細胞非ホジキンリンパ腫を含むがこれらに限定されない数種類のがんの中の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)において発現上昇している。幾つかの実施形態では、TIM-3変異体は、N末端IgV様ドメインを含み、ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインに結合しているTIM-3エクトドメイン全体を含む。TIM-3含有融合タンパク質はその天然のリガンドであるガレクチン-9、セアカム-1、及びホスファチジルセリンに結合し、NK細胞上、T細胞上、及びAPC上に発現した内在性TIM-3とのそれらの相互作用を妨害してT細胞疲弊を元に戻し、NK細胞の細胞傷害性及びサイトカイン生産を回復させる可能性がある。
【0266】
腫瘍細胞受容体標的
幾つかの実施形態では、融合タンパク質又はその1以上の構成要素は、腫瘍細胞受容体標的に結合する。幾つかの実施形態では、融合タンパク質又はその1以上の構成要素はリガンドの腫瘍細胞受容体標的への結合を妨害する。幾つかの実施形態では、腫瘍細胞受容体標的は、限定されないが、ケモカイン受容体、ノッチ受容体、免疫チェックポイント阻害因子、並びに腫瘍血管系リガンド及び受容体を含む。幾つかの実施形態では、ケモカイン受容体は、CXCR4、CCR10、又はCCR7を含む。幾つかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害因子はPD-L1又はPD-L2を含む。幾つかの実施形態では、腫瘍血管系標的はανβ3、ανβ5、CD13(アミノペプチダーゼN)、NGFモチーフペプチドの標的、又はTie2(アンジオポエチン-2の受容体)を含む。
【0267】
免疫細胞受容体標的
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はCD40である。幾つかの実施形態では、融合タンパク質又はその1以上の構成要素はアゴニストCD40 scFvを含む。その他の実施形態では、免疫細胞受容体標的はSIRPαである。幾つかの実施形態では、融合タンパク質又はその1以上の構成要素はアンタゴニストSIRPαペプチドを含む。幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的は4-1BBである。幾つかの実施形態では、融合タンパク質又はその1以上の構成要素はアゴニスト4-1BB scFv又はアゴニスト4-1BBペプチドを含む。
【0268】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はCD96である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD96又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD96のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0269】
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD226又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD226のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0270】
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はTIM-3又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はTIM-3のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0271】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はCD111である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD111又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD111のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0272】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はCD112である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD112又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD112のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0273】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はCD113である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD113又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD113のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0274】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はCD115である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD115又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD115のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0275】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はTIGITである。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はTIGIT又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はTIGITのアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0276】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はKIR2DL1、KIR2DL2若しくはKIR2DL3、又はその変異体である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はKIR2DL1、KIR2DL2若しくはKIR2DL3、又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はKIR2DL1、KIR2DL2、又はKIR2DL3のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0277】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はHLA-Cである。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はHLA-Cのアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はHLA-Cのアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0278】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はNKG2A(CD94)又はその変異体である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はNKG2A(CD94)又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はNKG2A(CD94)又はその変異体のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0279】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はHLA-Eである。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はHLA-Eのアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はHLA-Eのアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0280】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的は2B4又はその変異体である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素は2B4又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素は2B4又はその変異体のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0281】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はCD48又はその変異体である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD48のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はCD48又はその変異体のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0282】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はNKG2D又はその変異体である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はNKG2D又はその変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はNKG2D又はその変異体のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0283】
幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体標的はMICA/B若しくはULBP1又はその変異体である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はMICA/B又はULBP1のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素はMICA/B若しくはULBP1又はその変異体のアンタゴニスト又はアゴニストを含み得る。
【0284】
上述の実施形態のうちのいずれの1つにおいても、免疫細胞は、NK細胞、T細胞、樹状細胞(DC)、抗原提示細胞(APC)、マクロファージ、又は腫瘍随伴マクロファージ(M1)である。
【0285】
免疫細胞受容体又はリガンド
幾つかの実施形態では、融合タンパク質又はその1以上の構成要素は免疫細胞受容体又はリガンドに結合する。幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体又はリガンドへの結合によって、NK細胞の活性化(サイトカイン(IFNγ及びTNF)生産、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、及び抗体依存性細胞貪食(ADCP))が起こる。幾つかの実施形態では、受容体はFc受容体である。幾つかの実施形態では、Fc受容体への結合によってNK細胞の活性化(ADCC及びADCP)が起こる。幾つかの実施形態では、Fc受容体は、Fcγ受容体、Fcε受容体、Fcα受容体、Fcμ受容体、又はFcδ受容体である。幾つかの実施形態では、免疫細胞受容体又はリガンドはTNFスーパーファミリーメンバー若しくはその受容体、TNF-Lスーパーファミリーメンバー若しくはその受容体、トランスフェリン若しくはその受容体、ヒト血清アルブミン若しくはその受容体、又はリポカリン構造ファミリーメンバー若しくはその受容体である。
【0286】
リンカー
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成要素は、任意選択的にペプチドリンカーを介して接続されていてよい。リンカーの残基は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及び修飾型アミノ酸から選択され得る。リンカーによって、第1構成要素のカルボキシ末端が第2構成要素のアミノ末端に接続されることが典型的である。リンカーによって、融合タンパク質の2つの構造的構成要素間の距離が変えられ、また、この領域の柔軟性(flexibility)が変化し得る。リンカーは任意の数のアミノ酸を含んでよい。したがって、リンカーは、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、又はそれより多くのアミノ酸を含んでよい。幾つかの実施形態では、リンカーは、3~60個のアミノ酸残基、3~40個のアミノ酸残基、3~30個のアミノ酸残基、3~24個のアミノ酸残基、3~18個のアミノ酸残基、又は3~15個のアミノ酸残基から構成されてよい。リンカーは、例えば、2個、3個、4個、5個、又はそれより多くのアミノ酸残基から成る反復小配列を含んでよく、2単位、3単位、4単位、5単位、6単位、7単位、8単位、9単位、10単位、11単位、12単位、又はそれより多くの単位のこの反復小配列を含んでよい。
【0287】
リンカーは天然の配列でも設計された配列でもよい。本発明の融合タンパク質における有用なペプチドリンカーには、グリシンリンカー、高グリシンリンカー、セリングリシンリンカー等が挙げられるが、これらに限定されない。高グリシンリンカーは、少なくとも約50%のグリシン、好ましくは少なくとも約60%のグリシンを含む。一実施形態では、リンカーはGly-Serというアミノ酸配列又はその反復を含む。例えば、Hustonら著、Methods in Enzymology、第203巻:46~88頁、(1991年)を参照されたい。別の実施形態では、リンカーはGly-Lysというアミノ酸配列又はその反復を含む。例えば、Whitlowら著、Protein Eng.誌、第6巻:989頁、(1993年)を参照されたい。別の実施形態では、リンカーはGly-Gly-Serというアミノ酸配列又はその反復を含む。別の実施形態では、リンカーはアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号29)というアミノ酸配列又はその反復を含む。ある特定の実施形態では、リンカーはGly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号30)というアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、リンカーはGly-Gly-Ser又はGly-Gly-Gly-Ser、又はGly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号29)の2~12単位の反復を含む。ペプチドリンカーの例については米国特許第6541219号明細書を参照されたい。一実施形態では、リンカーはGDPLVTAASVLEFGGSGGGSEGGGSEGGGSEGGGSDI(配列番号31)という配列を含んでもよい。
【0288】
リンカーは、融合タンパク質の2つの構成要素の分離に有用であり、この分離が構成要素の正しい折り畳みを可能にし、立体障害の可能性を低下させ、且つ/又は最適な受容体結合に貢献する。当業者はペプチドリンカーの設計と選択を熟知している。例えば、Robisonら著、1998年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA誌、第95巻:5929~5934頁を参照されたい。自動プログラムもペプチドリンカーの設計に利用可能である(例えば、Crastoら著、2000年、Protein Engineering誌、第13巻:309~312頁)。
【0289】
任意選択的な他の要素
融合タンパク質は、任意選択的に、構成要素A、構成要素B、構成要素C、及び/又は構成要素Dとは異なる要素をさらに含んでもよい。そのような追加要素は、開始メチオニン、シグナルペプチド、抗原ポリペプチド、三量体化ドメイン、高次多量体化ドメイン、及びHis-6などの精製タグを含む場合があるが、これらに限定されない。例示的な精製タグはASHHHHHHM(配列番号46)である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、任意選択的に三量体化ドメインを含む。
【0290】
本発明の融合タンパク質は、任意選択的にシグナルペプチドを含む。シグナルペプチドは、当業者が理解するように、使用者のニーズ、発現系、及び他の因子に応じて変化し得る。シグナルペプチドは当技術分野においてよく知られており、当業者に知られている公開シグナルペプチド認識ソフトウェアによって認識/予測されるシグナルペプチドを含む任意の所望のシグナルペプチドが使用可能である。
【0291】
幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質は構成要素間に柔軟性を与えるヒンジ領域を含む。Lobnerら著、(2016年)、Immunol. Reviews誌、第270巻:113~131頁を参照されたい。幾つかの実施形態では、構成要素Yと構成要素Zとはヒンジ(例えばIgGヒンジ)を介して接続されている。幾つかの実施形態では、構成要素Z’と構成要素Z’とはヒンジ(例えばIgGヒンジ)を介して接続されている。
【0292】
幾つかの実施形態では、N結合型グリカンが構成要素A上及び/又は構成要素B上のAsnに結合している。幾つかの実施形態では、N結合型グリカンが構成要素A上及び/又は構成要素B上のAsn297に結合している。理論に捉われることを望むものではないが、これによりFcR結合が促進され、融合タンパク質の構造的完全性及び熱安定性が増進する可能性がある。Arnoldら著、(2007年)、Annu Rev Immunol、第25巻:21~50頁を参照されたい。
【0293】
幾つかの実施形態では、構成要素A及び/又は構成要素BはKからAへの変異を含む。幾つかの実施形態では、構成要素A及び/又は構成要素BはK322A変異を含む。理論に捉われることを望むものではないが、これによりC1q結合と補体介在性溶解及び補体介在性溶解が減少する可能性がある。Idusogieら著、(2000年)、J. Immunol誌、第164巻:4178~4184頁を参照されたい。
【0294】
幾つかの実施形態では、構成要素A及び構成要素Bはノブ・イントゥ・ホール変異を含む。幾つかの実施形態では、構成要素Aは変異Y349C及び変異T366Wを含み、構成要素Bは変異D356C、変異T366S、変異L368A、及び変異Y407V(「ノブ・イントゥ・ホール」変異)を含む。理論に捉われることを望むものではないが、これによりホモ二量体化よりもヘテロ二量体化が促進される可能性がある。Merchantら著、(1998年)、Nature Biotech.誌、第16巻:677~681頁を参照されたい。
【0295】
幾つかの実施形態では、構成要素A及び/又は構成要素Bは新生児型Fc受容体(FcRn)への結合を増加させる変異を含む。幾つかの実施形態では、構成要素A及び/又は構成要素Bは変異M428L及び変異N434Sを含む。理論に捉われることを望むものではないが、これにより様々な細胞上の新生児型Fc受容体(FcRn)への結合が増加し、血清半減期が延長される可能性がある。Kuo及びAveson著、(2011年)、mAbs誌、第3巻:422~430頁を参照されたい。
【0296】
三量体化ドメイン
三量体化ドメインは当技術分野においてよく知られている。本発明の融合タンパク質中の異種三量体化ドメインとして適切な三量体化ドメインの非限定的な例には、GCN4ロイシンジッパー(Harburyら著、1993年、「A switch between two-, three-, and four-stranded coiled coils in GCN4 leucine zipper mutants」、Science誌、第262巻(第5138号):1401~7頁)、肺サーファクタントタンパク質由来35アミノ酸配列(Hoppeら著、1994年、「A parallel three stranded alpha helical bundle at the nucleation site of collagen triple-helix formation」、FEBS letters誌、第344巻(第2~3号):191~5頁)、コラーゲン由来短反復ヘプタッド配列(McAlindenら著、2003年、「Alpha-helical coiled-coil oligomerization domains are almost ubiquitous in the collagen superfamily」、J Biol Chem.誌、第278巻(第43号):42200-7頁、2003年8月14日電子出版)、及びバクテリオファージT4フィブリチン「フォールドン」(例えば、Miroshnikovら著、1998年、「Engineering trimeric fibrous proteins based on bacteriophage T4 adhesins」、Protein Eng.誌、第11巻(第4号):329~32頁参照)が挙げられる。例示的な三量体化ドメインは、米国特許第6911205号明細書及び同第8147843号明細書及び米国特許出願公開第2010/0136032号明細書にも開示されている。例示的な三量体化配列は、GYIPEAPRDGQAYVRKRGEWVLLSTFL(配列番号47)という配列を有するT4「フォールドン」である。別の例示的な三量体化ドメインはトロンボスポンジン-1に由来し、VTTLQDSIRKVTEENKELANELRR(配列番号56)という配列を有する。
【0297】
修飾
本発明は、本明細書に記載される融合タンパク質の変異体を包含する。変異体は概して所与の分子への結合能の強化を示すことが望ましいが、幾つかの実施形態では、例えば活性の減弱化が意図的に望まれている場合では、本発明の他の融合タンパク質と比較してわずかに低下した活性を有する変異体が設計されてもよい。さらに、多量体化特性が改変された変異体又は誘導体を生成することも可能である。
【0298】
本発明の融合タンパク質の変異体又は誘導体は、アミノ酸配列の疎水性/親水性を維持していることが望ましい。
【0299】
追加の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、配列番号14、15、16、17、18、19、20、21、22、32、33、34、35、49、50、51、52、53、54、55、65、66、67、68、69、70、又は71に示されているアミノ酸配列の変異体及び/又は誘導体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質の変異体は、配列番号14、15、16、17、18、19、20、21、22、32、33、34、35、49、50、51、52、53、54、55、65、66、67、68、69、70、又は71に対して少なくとも80%以上の当技術分野で理解されているような配列同一性又は相同性を有し、より好ましくは配列番号14、15、16、17、18、19、20、21、22、32、33、34、35、49、50、51、52、53、54、55、65、66、67、68、69、70、又は71に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%もの配列同一性を有する。
【0300】
本発明は、本発明の融合タンパク質の化学修飾も提供する。このような修飾の非限定的な例には、カルボキシル末端又はカルボキシル側鎖含有残基の脂肪族エステル又はアミド、ヒドロキシル基含有残基のO-アシル誘導体、及びアミノ末端アミノ酸又はアミノ基含有残基、例えばリシン又はアルギニンのN-アシル誘導体が挙げられる場合があるが、これらに限定されない。
【0301】
本発明の融合タンパク質の他の誘導体は、組み込まれた非天然アミノ酸残基、又はホスホチロシン残基、ホスホセリン残基、若しくはホスホトレオニン残基などのリン酸化アミノ酸残基を含む。他の潜在的な修飾には、スルホン化、ビオチン化、又は他の部分の付加、特にリン酸基に類似の分子形状を有する部分の付加が挙げられる。
【0302】
誘導体はグリコシル化により修飾されたポリペプチドも含む。これらの誘導体は様々な代替的真核生物宿主発現系での合成及びプロセッシング時、又はその他のプロセッシング工程時のグリコシル化パターンを改変することにより作製され得る。グリコシル化修飾を行うための方法は、通常時にこのようなプロセッシングを行う細胞に由来するグリコシル化酵素、例えば哺乳類グリコシル化酵素に対して上記融合タンパク質を曝露することを含む。あるいは、脱グリコシル化酵素を使用して真核生物発現系内での生産時に取り付けられた炭水化物を除去することができる。また、コード配列を改変してグリコシル化部位を付加したり、又はグリコシル化部位を欠失したり働かなくすることもできる。さらに、グリコシル化が望ましくない場合では原核生物宿主発現系内で上記タンパク質を生産することができる。
【0303】
本発明の融合タンパク質の変異体及び/又は誘導体は、化学合成によって、又は完全型受容体をコードする核酸を改変するために部位特異的変異形成(Gillmanら著、Gene誌、第8巻:81頁(1979年)、 Robertsら著、Nature誌、第328巻:731頁(1987年)、又はInnis編、1990年、PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications、Academic Press、ニューヨーク、ニューヨーク州)若しくはDaughertyら著、Nucleic Acids Res.誌、第19巻:2471頁、(1991年)によって例示されているように、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR;Saikiら著、Science誌、第239巻:487頁、(1988年))を使用することによって調製され得る。
【0304】
追加の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、タンパク質精製を容易にするため、組換えタンパク質の発現を増加させるため、又は組換えタンパク質の溶解性を増加させるために付加された1以上の追加ポリペプチドドメインをさらに含んでもよい。このような精製/発現/溶解性増進ドメインには、固定化金属上での精製を可能にするヒスチジン-トリプトファンモジュールなどの金属キレートペプチド(Porath著、1992年、Protein Expr Purif誌、第3巻、263~281頁)、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、及びFLAGSエクステンション/アフィニティー精製システムで利用されるドメイン(Immunex社、シアトル、ワシントン州)が挙げられるが、これらに限定されない。上記精製ドメインと構成要素A及びBの融合体との間に、ファクターXa又はエンテロキナーゼ(Invitrogen社、サンディエゴ、カリフォルニア州)などの切断可能リンカー配列を含めることは精製を容易にするうえで有用である。
【0305】
融合発現ベクターにはそれぞれグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトースB結合タンパク質、又はプロテインAを標的組換えタンパク質に融合するpGEX(Pharmacia社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)、pMAL(New England Biolabs社、ビバリー、マサチューセッツ州)、及びpRITS(Pharmacia社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)が含まれる。EBV、BKV、及び他のエピソーム性発現ベクター(Invitrogen社)も使用可能である。また、レトロウイルス発現ベクター及びレンチウイルス発現ベクターも使用可能である。さらに、生物内での組換えタンパク質の高レベル発現のために設計されている多数のインビボ発現系のうちのいずれか1つの系も本明細書において明示されている融合タンパク質の生産のために援用可能である。
【0306】
上で考察したように、本発明の融合タンパク質はそのN末端に異種シグナル配列を含む場合がある。ある特定の宿主細胞(例えば、哺乳類宿主細胞)では、融合タンパク質の発現及び/又は分泌は異種シグナル配列の使用によって増加し得る。シグナル配列は疎水性アミノ酸から成るコアを特徴とすることが典型的であり、これらの疎水性アミノ酸は概して1以上の切断イベントで分泌の間に成熟タンパク質から切除される。このようなシグナルペプチドは、成熟タンパク質が分泌経路を通過すると共にシグナル配列を成熟タンパク質から切断させるプロセッシング部位を含む。したがって、本発明は、シグナル配列を有するポリペプチド並びにシグナル配列がタンパク質分解により切断されたポリペプチド(すなわち切断産物)に関する。
【0307】
安定性及び/又は反応性を増進するために、本発明の融合タンパク質は、天然のアレル変異から生じるアミノ酸配列の中に1以上の多型を組み込むように改変されてもよい。また、D-アミノ酸、非天然アミノ酸、又は非アミノ酸類似体で置換又は付加することで、本発明の範囲内の改変融合タンパク質を作製することも可能である。
【0308】
本発明のアミノ酸配列は、同アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の適切な発現系における発現によって作製されてもよい。
【0309】
加えて、又は代わりに、所望のアミノ酸配列を合成するための化学的方法を使用して、融合タンパク質自体を全体的又は部分的に作製することも可能である。例えば、ポリペプチドを固相法によって合成し、樹脂から切り離し、分取高速液体クロマトグラフィーによって精製することも可能である(例えば、Creighton著、(1983年)、Proteins: Structures And Molecular Principles、WH Freeman and Co、ニューヨーク、ニューヨーク州)。合成ポリペプチドの組成は、アミノ酸分析又はシーケンシング(例えば、エドマン分解法)によって確認され得る。また、変異体ポリペプチドを作製するために、本発明の融合タンパク質のアミノ酸配列又はそのいずれかの部分を直接的に合成時に変更してもよく、且つ/又は化学的方法を用いて他の小単位の配列若しくはそのいずれかの部分と組み合わせてもよい。
【0310】
本発明の任意の融合タンパク質のあらゆる相同体、誘導体、又は変異体の生物活性を測定するためのアッセイは当技術分野においてよく知られている。
【0311】
活性及び有用性
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、事実上腫瘍細胞を不動化して、この細胞が移動すること、近隣の組織に浸潤すること、及び/又は離れた部位まで転移することを抑制又は防止する。別の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、腫瘍細胞がマクロファージなどの食細胞による食作用から逃れることを抑制又は防止する一方、腫瘍細胞のアポトーシス及び/又は免疫破壊を促進する。他の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、腫瘍細胞が食細胞による食作用から逃れることを抑制又は防止する一方、近隣の腫瘍細胞のアポトーシスを促進する。こうして本発明の融合タンパク質は、多数の機序のうちのいずれか1つによる腫瘍細胞破壊を促進する。
【0312】
PD-1のリガンド又は受容体は、固形腫瘍細胞などの広範囲の腫瘍細胞上で発現する。したがって、一実施形態では、本発明は増殖性障害と診断された対象に本発明の融合タンパク質の治療有効量を投与することにより、増殖性障害を治療する方法を提供する。
【0313】
本発明の融合タンパク質は、がんなどの細胞増殖性障害並びに悪性腫瘍及び良性腫瘍にかかっている個体(例えば、動物及びヒトを含む哺乳類動物)に投与され得る。本発明の特定の実施形態では、治療を受ける個体はヒトである。
【0314】
融合タンパク質は広範囲の腫瘍種に対して有効であると考えられており、腫瘍種には、卵巣がん、子宮頸部がん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、肺がん、腎臓がん、大腸がん、皮膚がん、脳がん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、及び慢性リンパ性白血病を含む白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0315】
より具体的には、本発明の化合物、組成物、及び方法によって治療され得るがんには、限定されるものではないが、以下のがんが含まれる:
血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、及び脂肪肉腫などの肉腫、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、並びに奇形腫等を含む噴門がん、
扁平上皮がん、未分化小細胞がん、未分化大細胞がん、及び腺がんなどの気管支原性がん、細気管支肺胞上皮がん、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、並びに中皮腫等を含む肺がん、
扁平上皮がん、腺がん、平滑筋肉腫、及びリンパ腫などの食道がん、がん腫、リンパ腫、及び平滑筋肉腫などの胃がん、膵管腺がん、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、及びビポーマなどの膵臓がん、腺がん、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、及び線維腫などの小腸がん、並びに腺がん、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、及び平滑筋腫などの大腸がん等を含む胃腸がん、
腺がん、ウィルムス腫瘍(腎芽腫)、リンパ腫、及び白血病などの腎臓がん、扁平上皮がん、移行上皮がん、及び腺がんなどの膀胱尿路がん、腺がん及び肉腫などの前立腺がん、並びに精上皮腫、奇形腫、胎生期がん、奇形がん腫、絨毛がん、肉腫、間質細胞がん、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、及び脂肪腫などの精巣がん等を含む泌尿生殖路がん、
原発性肝細胞がんなどの肝細胞がん、胆管がん、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、及び血管腫等を含む肝臓がん、
骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫軟骨腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨症)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、及び巨細胞腫瘍等を含む骨がん、
骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、及び変形性骨炎などの頭骨がん、髄膜腫、髄膜肉腫、及び神経膠腫症などの髄膜がん、星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫(松果体腫)、多形膠芽腫、希突起神経膠腫、シュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、及び先天性腫瘍などの脳がん、並びに神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、及び肉腫などの脊髄がん等を含む神経系がん、
子宮内膜がんなどの子宮がん、子宮頸部がん腫及び前がん子宮頸部異形成症などの子宮頸部がん、漿液性嚢胞腺がん、粘液性嚢胞腺がん、非分類がん、顆粒膜卵胞膜細胞腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、及び悪性奇形腫を含む卵巣がん腫などの卵巣がん、扁平上皮がん、上皮内がん、腺がん、線維肉腫、及び黒色腫などの陰門がん、明細胞がん、扁平上皮がん、ブドウ状肉腫、及び胎児型横紋筋肉腫などの膣がん、並びにがん腫などの卵管がん等を含む婦人科がん、
急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、及び骨髄異型性症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄球性白血病、骨髄性顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞白血病、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞白血病、シリング白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、無白血性白血病、無白血球症性白血病、好塩基球性白血病、芽細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄球性白血病、皮膚白血病、胎児細胞白血病、未分化細胞白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリー細胞白血病、血芽球性白血病、血球芽細胞性白血病、組織球白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ性白血病、リンパ性白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞白血病、巨核球性白血病、並びに小骨髄芽球性白血病などの血液のがんを含む血液がん、
悪性黒色腫、基底細胞がん、扁平上皮がん、カポジ肉腫、異形性母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、及び乾癬等を含む皮膚がん、並びに
神経芽細胞腫等を含む副腎がん。
【0316】
このようながんのより具体的な例には、腎臓がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、大腸がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、及び肺扁平上皮がんを含む肺がん;扁平上皮がん(例えば扁平上皮細胞がん)、子宮頸部がん、卵巣がん、前立腺がん、肝臓がん、膀胱がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃がん、胃腸間質腫瘍(GIST)、膵臓がん、頭頚部がん、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、莢膜細胞腫、男性化細胞腫、肝がん、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫、及び急性血液悪性腫瘍を含む血液悪性腫瘍;子宮内膜がん又は子宮がん、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛がん、唾腺がん腫、陰門がん、甲状腺がん、食道がん、肝臓がん、肛門がん、陰茎がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚がん、シュワン細胞腫、希突起神経膠腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路がん、甲状腺がん、ウィルムス腫瘍、並びにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小非分割細胞性NHL;巨大腫瘤病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症付随異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に付随する浮腫など)、及びメイグス症候群が挙げられる。本明細書において使用される場合、「腫瘍(tumor)」は、悪性でも良性でも全ての新生細胞成長及び増殖、並びに全ての前がん状態及びがん状態の細胞及び組織を指す。
【0317】
がんは、転移性でも転移性でなくてもよい固形腫瘍であり得る。がんは白血病の場合のようにまとまりのない組織に生じる場合もある。したがって、本明細書において提示される場合、「腫瘍細胞(tumor cell)」という用語は、上述された障害のうちのいずれか1つにかかっている細胞を含む。
【0318】
好ましい実施形態では、がんは固形腫瘍である。好ましい実施形態では、がんは、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、黒色腫、及び神経膠芽腫のうちの1つである。
【0319】
別の実施形態では、がんは血液がんである。好ましい実施形態では、血液がんは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)のうちの1つである。
【0320】
医薬組成物及び投与法
典型的には、本発明の組成物の投与は非経口投与であり、皮下注射、静脈内注射、筋肉内投与、又は腹腔内注射による投与であり、又は輸液若しくは他のあらゆる許容可能な全身投与方法による投与である。好ましい実施形態では、投与は皮下注射による投与である。別の好ましい実施形態では、投与は静脈内輸液による投与であり、通常ではこの投与は約1~5時間にわたって行われ得る。また、治療用タンパク質の投与には様々な経口送達方法が存在し、これらの方法は本発明の治療用融合タンパク質に適用可能である。
【0321】
安全性及び有効性を最適化するために、治療のための投与量は低レベルから高レベルへと用量設定されることが多い。一日投与量は体重1キログラム当たり約0.01~20mgのタンパク質の範囲内になることが一般的である。投与量の範囲は、体重1キログラムに対してタンパク質量が約0.1~5mgになることが典型的である。融合タンパク質の薬物動態学的特性及び/又は薬力学的特性に影響を与えるために、ポリエチレングリコール鎖の付加(PEG化)などの融合タンパク質の様々な修飾体又は誘導体が作製される場合がある。
【0322】
非経口投与以外の方法により融合タンパク質を投与するためには、タンパク質の不活化を防ぐ物質でタンパク質を被覆するか、その物質と共にタンパク質を共投与することが必要な場合がある。例えば、タンパク質を不完全アジュバントの中に入れて投与するか、酵素阻害剤と共投与するか、リポソーム中に入れて投与してもよい。酵素阻害剤には、膵臓トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DEP)、及びトラジロールが挙げられる。リポソームには水中油中水型CGF乳剤並びに従来型リポソームが挙げられる(Strejanら著、1984年、J. Neuroimmunol.誌、第7巻:27頁)。
【0323】
本発明の組成物は単純な溶液状で投与することが可能であるが、担体、好ましくは薬学的に許容可能な担体などの他の物質と併用されることがより典型的である。有用な薬学的に許容可能な担体は、本発明の組成物を患者に送達するために適切な適合性のある任意の無毒の物質であり得る。担体としては、無菌水、アルコール、脂肪、ワックス、及び不活性固形物が挙げられる。薬学的に許容可能なアジュバント(緩衝剤、分散剤)を医薬組成物の中に組み入れてもよい。一般的にこのような薬品の非経口投与に有用な組成物は周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science、第17版(Mack Publishing社、イーストン、ペンシルバニア州、1990年)。あるいは、本発明の組成物は、移植可能薬物送達系によって患者の体内に導入されてもよい(Urquhartら著、1984年、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol.、第24巻:199頁)。
【0324】
治療用製剤は、多くの従来の剤形で投与される場合がある。製剤は少なくとも1種類の有効成分を1以上の薬学的に許容可能な担体と共に含むことが典型的である。製剤には、経口投与、直腸投与、経鼻投与、又は非経口投与(皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、及び皮内投与を含む)に適切な製剤が含まれ得る。
【0325】
上記製剤は、単位投与剤形で提供されることが便利である場合があり、薬学分野においてよく知られているあらゆる方法によって調製され得る。例えば、Gilmanら編、(1990年)、The Pharmacological Bases of Therapeutics、第8版、Pergamon Press、及びRemington’s Pharmaceutical Sciences、上掲、イーストン、ペンシルバニア州、Avisら編、(1993年)、Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications、Dekker、ニューヨーク、Liebermanら編、(1990年)、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets、Dekker、ニューヨーク、及びLiebermanら編、(1990年)、Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems、Dekker、ニューヨークを参照されたい。
【0326】
追加の実施形態では、本発明は、遺伝子治療法により融合タンパク質を投与すること、例えば、目的の融合タンパク質をコードする単離核酸を投与することを企図している。本発明の融合タンパク質のタンパク質基本要素(例えば、構成要素A及び構成要素B)は、タンパク質をコードする核酸配列の点でもそれらにより生じるタンパク質のアミノ酸配列の点でも特徴が分析されている。このような単離核酸の組換えDNA法による操作は当業者の能力の範囲内である。特定の細胞背景において組換えタンパク質収量を最大化すること目的としたコドン最適化も優に当業者の能力の範囲内である。融合タンパク質をコードする単離核酸の投与は「本発明の融合タンパク質の治療有効量の投与」という表現に包含される。遺伝子治療法は当技術分野においてよく知られている。例えば、細胞内抗体を生成するための遺伝子治療法の使用法を開示している国際公開第96/07321号パンフレットを参照されたい。遺伝子治療法はヒト患者での実証にも成功している。例えば、Baumgartnerら著、1998年、Circulation誌、第97巻:第12号、1114~1123頁、最近のものでは両方とも参照により本明細書に援用されるFatham著、2007年、「A gene therapy approach to treatment of autoimmune diseases」、Immun. Res.誌、第18巻:15~26頁、及び米国特許第7378089号明細書を参照されたい。Bainbridgeら著、2008年、「Effect of gene therapy on visual function in Leber’s congenital Amaurosis」、N Engl Med誌、第358巻:2231~2239頁、及びMaguireら著、2008年、「Safety and efficacy of gene transfer for Leber’s congenital Amaurosis」、N Engl J Med誌、第358巻:2240~8頁も参照されたい。生体内及び生体外の患者細胞内に融合タンパク質をコードする核酸(所望によりベクター内に含まれる核酸)を導入するためには、2種類の主要な方法が存在する。生体内送達については、核酸は直接的に患者内に、通常では融合タンパク質が必要とされる部位に注入される。生体外処理については、患者細胞を取り出し、これらの単離細胞に核酸を導入し、そして改変細胞を直接的に患者に投与するか、又は例えば患者に移植される多孔性膜内に封入して患者に投与する(例えば、米国特許第4892538号明細書及び同5283187号明細書を参照されたい)。生細胞内へ核酸を導入するために利用可能な様々な技法が存在する。上記技法は、核酸がインビトロで培養細胞内に導入されるのか、又は目的の宿主の細胞内にインビボで導入されるのかに応じて変化する。核酸を哺乳類細胞にインビトロで導入するために適切な技法にはリポソームの使用、電気穿孔法、マイクロインジェクション法、細胞融合法、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム沈殿法などが挙げられる。遺伝子の生体外送達に一般的に使用されるベクターはレトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターである。
【0327】
好ましいインビボ核酸導入法には、アデノウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクターを使用する形質移入、脂質ベースの系(上記遺伝子の脂質介在性導入に有用な脂質はDOTMA、DOPE、及びDC-Chol等である)を使用する形質移入、裸DNAを使用する形質移入、及びトランスポゾンベースの発現系を使用する形質移入が挙げられる。現在公知の遺伝子マーキングプロトコルと遺伝子治療プロトコルの概論についてはAndersonら著、Science誌、第256巻:808~813頁、(1992年)を参照されたい。国際公開第93/25673号パンフレット及びその中に引用されている参照文献も参照されたい。
【0328】
「遺伝子治療」には、一回の治療で長期作用が達成される従来の遺伝子治療と治療上有効なDNA又はmRNAの1回の投与又は反復投与を伴う遺伝子治療薬の投与の両方が挙げられる。オリゴヌクレオチドの取込みを向上させるために、例えば、オリゴヌクレオチドの負に帯電したホスホジエステル基を非荷電基で置換することによってオリゴヌクレオチドを改変する場合がある。本発明の融合タンパク質は遺伝子治療法を用いて(例えば、特定の組織種を選択的に標的とするベクター、例えば組織特異的アデノ随伴ウイルスベクターによって)例えば腫瘍床に局所的に、髄腔内に、又は全身に送達可能である。幾つかの実施形態では、本発明の融合タンパク質のいずれかをコードする遺伝子を、個体に由来する初期細胞(リンパ球又は幹細胞など)に生体外で形質移入した後、形質移入細胞を個体の体に戻す場合がある。
【0329】
「治療すること(treating)」又は「治療(treatment)」とは、標的とする病的状態又は障害を防止すること又は遅らせること(やわらげること)が目的である治療を指す。本発明の方法に従って本発明の融合タンパク質の治療的量を受けた後に、対象がその特定の疾患の1以上の徴候及び症状の観察可能及び/又は測定可能な減少又は喪失を示す場合、その対象は順調に「治療」されている。例えば、がんについては、がん細胞数が減少又はがん細胞が喪失し、腫瘍サイズが減少し、腫瘍転移が抑制され(すなわち、ある程度遅延し、好ましくは停止し)、腫瘍増殖がある程度抑制され、寛解時間が延長し、且つ/又は特定のがんに関連する症状のうちの1以上がある程度軽減し、罹患率及び死亡率が減少し、且つ、クオリティ・オブ・ライフ問題が改善される場合、その対象は順調に「治療」されている。患者が疾患の徴候又は症状の減少を感じる場合もある。がんの全ての徴候の消失として定義される完全奏功、又は腫瘍サイズが減少し、好ましくは50%を超えて減少し、より好ましくは75%まで減少する部分的奏功が治療によって達成可能である。患者が疾患の安定を体験する場合にも、その患者は治療されていると考えられる。治療の成功及び疾患の改善を評価するためのこれらのパラメータは、当技術分野の医師によく知られている日常的方法によって容易に測定され得る。
【0330】
がんを治療する文脈において、本発明の融合タンパク質は、任意選択的に患者に他の化学療法剤と併用投与され得る。適切な化学療法剤には、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド(シトキサン(商標))などのアルキル化剤、ブスルファン、インプロシイルファン(improsiilfan)、及びピポスルファンなどのアルキルスルホン類、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa)などのアジリジン類、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類(methylamelamines)、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、及びウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード類、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア類、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、及びゾルビシンなどの抗生物質、メトトレキサート及び5‐フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、及びトリメトレキサートなどの葉酸類似体、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニンなどのプリン類似体、アンシタビン、アザシチジン、6‐アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、及び5-FUなどのピリミジン類似体、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトンなどのアンドロゲン類、アミノグルテチミド、ミトタン、及びトリロスタンなどの抗副腎剤、フォリン酸などの葉酸補充剤、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトラキサート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン、ジアジコン、エルフォルミチン(elformithine)、酢酸エリプチニウム、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン、アラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ・オンコロジー社、プリンストン、ニュージャージー州)及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローヌ・プーラン・ローラー社、アントニー、フランス)などのタキサン類、クロラムブシル、ゲムシタビン、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、シスプラチン及びカルボプラチンなどのプラチナ類似体、ビンブラスチン、プラチナ、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン、ノバントロン、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロネート、CPT-11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチノイン酸、エスペラマイシン、カペシタビン、並びに上記の化学療法剤のうちのいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、又は誘導体が挙げられる。
【0331】
他の化学療法剤には、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(フェアストン)等をはじめとする抗エストロゲン剤並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤等、腫瘍に対するホルモンの作用を制御又は阻害するように作用する抗ホルモン剤及び上記の抗ホルモン剤のうちのいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、又は誘導体がさらに挙げられる。
【0332】
本発明の融合タンパク質と併用可能な他の腫瘍細胞傷害剤は、それら自体が融合タンパク質である。腫瘍細胞傷害性融合タンパク質の例は、CTLA-4-FasL及びFn14-TRAILであり、それらはcisループ・バックタンパク質として自己アポトーシスシグナル伝達ループを腫瘍細胞の表面に形成することにより作用し得る。それぞれ全体が参照により援用される米国特許第7569663号明細書、同第8329657号明細書、及び同第8039437号明細書を参照されたい。次に、TRAIL構成要素を組み入れているこれらのcisループ・バックタンパク質は、プロテアソーム阻害剤及びヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、シクロへキシミド、メシル酸イマチニブ及び他のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、三酸化ヒ素、及びX連鎖アポトーシス阻害因子タンパク質小分子アンタゴニスト等、腫瘍細胞をTRAILに対して高感度にし、且つ、TRAIL耐性に打ち勝つことができる化学療法剤及びこれらの化学療法剤のうちのいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、又は誘導体と併用投与され得る。
【0333】
参照により全体が援用される米国特許第7285522号明細書に、がん治療の方法に関する追加情報が提示されている。
【0334】
以下の非限定的な例によって本発明の実施が例示される。本発明は、本明細書に記載される組成物及び方法のみに限定されると解釈されるべきではなく、他の組成物及び方法も同様に含むと解釈されるべきである。当業者は本明細書に記載される手順を実施するために他の組成物及び方法が利用可能であることを理解するであろう。
【0335】
本発明の実施は、別段の指示が無い限り、分生生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技法を使用し、上記技法は優に当業者の範囲内にある。このような技法は、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第4版、(Sambrook編、2012年)、「Oligonucleotide Synthesis」、(Gait著、1984年)、「Culture of Animal Cells」、(Freshney著、2010年)、「Methods in Enzymology」「Handbook of Experimental Immunology」、(Weir著、1997年)、「Gene Transfer Vectors for Mammalian cells」、(Miller及びCalos著、1987年)、「Short Protocols in Molecular Biology」、(Ausubel著、2002年)、「Polymerase Chain Reaction: Principles, Applications and Troubleshooting」、(Babar著、2011年)、「Current Protocols in Immunology」、(Coligan著、2002年)などの文献において十分に説明されている。これらの技法は本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの生産に適用可能であり、したがって本発明の実行実施において考慮される可能性がある。特定の実施形態にとって特に有用な技法を以下の節において考察する。
【実施例
【0336】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は例示のみを目的に提示されており、別段の指定が無い限り限定を意図したものではない。したがって、本発明は決して以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ本明細書において提示される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変化を包含すると解釈されるべきである。
【0337】
当業者は、さらに説明されなくても、これまでの説明と以下の例となる実施例を用いて本発明の化合物を作製及び利用し、本請求の方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘するものであり、それ以外の開示を多少なりとも限定すると解釈されるべきではない。
【0338】
<実施例1:融合タンパク質の結合>
融合タンパク質コンストラクトと発現
A鎖又はB鎖のどちらかのヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン(すなわち、Zドメイン、Zドメイン、Z’ドメイン、又はZ’ドメイン)の合成遺伝子断片に連結された、所望のリガンド/受容体構成要素の各々の新規に合成された遺伝子断片(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社)を使用して、これらの融合タンパク質の発現プラスミドコンストラクトを生成した。高コピー数で染色体外複製するEBVエピソーム性発現ベクター(元はチクチンスキー研究室において開発された)であるpCEP4発現プラスミドにクローニングするための制限部位を末端に含むプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によっ、て個々の構成要素を接ぎ合わせた。遺伝子合成の際に、チャイニーズハムスター卵巣懸濁液(CHO-S)細胞での発現用にコドン最適化をDNA断片に対して実施する。TransIT-Pro試薬(MIRUS社)を37℃で使用して24時間にわたってExpiCHO-S振盪フラスコ培養物中にA鎖コンストラクト及びB鎖コンストラクトを一時的に共形質移入した後で、これらの培養物を全体で8~10日間にわたって32℃で培養することで、融合タンパク質を作製した。調整済み培養上清を6℃で一晩にわたってプロテインAアガロース樹脂と混合した後に回収し、非変性中性pH溶出緩衝液(PIERCE社)を使用して溶出することにより、この調整済み培養上清からタンパク質を精製した。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により各融合タンパク質を大きさ及び品質について検証した。
【0339】
融合タンパク質結合試験
ヒトCD155、免疫グロブリンドメイン・ITIMドメイン含有T細胞免疫受容体(TIGIT)、CD112、及びCD16(FcγRIIIa)の全長cDNAを発現するリガンドコンストラクトをPCRによって生成し、pcDNA3.1+(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社)発現プラスミドにクローン化した。リポフェクタミン3000(サーモフィッシャー社)を使用して各発現コンストラクトをCHO-S細胞に形質移入し、G418を添加することで安定形質移入体を選択した。適切なフルオロクローム結合抗リガンド抗体(黒色線)又は適切なフルオロクローム結合アイソタイプ対照抗体(灰色の線と塗りつぶし)を使用する免疫染色後のフローサイトメトリーによってリガンドの発現を判定した。FCSalyzerソフトウェアを使用してデータを分析した。融合タンパク質結合試験のために対照としての形質移入されていないCHO-S細胞(灰色の線と塗りつぶし)又は対応するリガンドを発現するCHO-S形質移入体のどちらかに融合タンパク質を添加し、6℃で1時間にわたってインキュベートし、その後で洗浄し、Cy5結合抗ヒトIgG-Fcγ特異的抗体(黒色の線)で免疫染色し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。図18図20を参照されたい。CD16結合試験については融合タンパク質を含有するTIGIT又はCD155を対照としての形質移入されていないCHO-S細胞(灰色の線と塗りつぶし)又はCD16発現性CHO-S形質移入体のどちらかと共にインキュベートし、それぞれTIGIT又はCD155を認識するAPC結合抗体又はPE結合抗体を使用する免疫染色によって検出を行った(黒色の線)。図21を参照されたい。
【0340】
<実施例2:融合タンパク質の結合アッセイ及び移動度アッセイ>
タンパク質ゲル分析
融合タンパク質を、12%SDS-PAGEゲル上で還元するか(R)、又は還元せずに(NR)分離し、そしてPageBlueタンパク質染色液(サーモ・サイエンティフィック社)中で12時間にわたって染色した。図22を参照されたい。
【0341】
イムノブロット分析
その後、融合タンパク質をピアースBCAタンパク質アッセイキット(サーモフィッシャー社)によって定量し、12%SDS-PAGEゲルに負荷した。タンパク質をImmobilon-Pメンブレン(EMDミリポア社、ビレリカ、マサチューセッツ州)に電気泳動転写し、オデッセイ・ブロッキング緩衝液(Licor社、リンカーン、ネブラスカ州)中で(A)抗PD1一次抗体及び(B)抗IgG軽鎖一次抗体と共に12時間にわたってインキュベートした。対応する二次抗体(Santa Cruz社)を1:10,000の希釈率で使用した。オデッセイ・インフレア・イメージングシステム(LI-CORバイオサイエンス社、モデル番号9120)を使用してイムノブロットをスキャニングした。図23を参照されたい。
【0342】
融合タンパク質結合試験
図24に示されているように、CXCR4/7及びPD1+黒色腫細胞株である(A)YUMMER1.7細胞又は(B)B16細胞は表示融合タンパク質と共に6℃で1時間にわたってインキュベートされ、その後で洗浄され、Cy5結合抗ヒトIgG-Fcγ特異的抗体を使用して免疫染色され、そしてフローサイトメトリーにより分析され(黒色の実線)、対照試料は融合タンパク質を抜いてインキュベートされた(塗りつぶされた灰色の線)。
【0343】
トランスウェルアッセイ
トランスウェル挿入物を24ウェルコンパニオンプレート(Corning社、カタログ番号353504)中に差し込んだ。細胞懸濁液を上部細胞浸潤チャンバーに25,000細胞/チャンバーの割合で播種した。下部の各ウェルに100ng/mLのCXCL12を含むDMEMを化学誘引物質として添加した。試料を37℃で24時間にわたってインキュベートして細胞移動させた。コットンスワブを使用して上記挿入物の先端面上の非浸潤細胞を取り除き、2%クリスタルバイオレットを使用して上記支持体の下面まで移動した細胞を染色した。図25を参照されたい。
【0344】
<実施例3:TriTouch-101は黒色腫退縮を誘導する>
腫瘍増殖の抑制が、インビボでTriTouch-101 PD1hFcA*vMIPIICH-hFcB*CL(FP)によって誘導された。B16F10黒色腫皮下モデルを使用して、PD1hFcA*vMIPIICH-hFcB*CL(FP)による黒色腫退縮の誘導を実証した。簡単に説明すると、1×10個のB16F10細胞の皮下接種後13日目、14日目、15日目、16日目、及び21日目の5回にわたってBL16マウスを100μlの(10ug/mLの)FP(マウスR、マウス2L、及びマウス2R)又はPBS(マウスX又はマウスL)で処理した。腫瘍サイズを測定した(図26A)。図26Bに各処理群の1匹のマウスの代表的画像(上パネルにはX、下パネルには2R)が示されている。TriTouch-101が黒色腫退縮を誘導することを示しているこれらのインビボデータは移動アッセイにおいてこの融合タンパク質が黒色腫細胞を抑制することを示している以前のデータ(図25)と合う。
【0345】
<実施例4:NKはTriTouchタンパク質種を調節する>
ADCCは多機能性融合タンパク質の添加により増大した(図27)。SKOV-3卵巣細胞株を96ウェルプレート中に3000細胞/ウェルの割合で播種して接着させ、そしてセルトラッカー・レッドCMTPX試薬を使用して標識した。その後、緑色蛍光カスパーゼ-3試薬を使用して上記SKOV-3細胞を標識した。CD16.NK-92細胞株(V158変異体)を5:1のエフェクター:標的比率で上記ウェルに25mg/mlの濃度の様々な融合タンパク質と共に添加するか、又はタンパク質無しで添加し、Incucyte生細胞分析システムを使用して蛍光二重陽性(赤色+緑色)細胞の数を測定して分析した。示されている結果は20時間の時点での結果を示している(図27)。
【0346】
他の実施形態
本明細書における変数の定義において複数の要素の記載を取り上げることは、記載される要素のうちのいずれか単数の要素としての、又は記載される要素の組合せ(又は部分的組合せ)としてのその変数の定義を含む。本明細書において一実施形態として取り上げることは、いずれか1つの実施形態としての、又は他のあらゆる実施形態又はその部分との組合せとしてその実施形態を含む。
【0347】
本明細書において引用される一つ一つの特許、特許出願、及び刊行物の開示内容の全体が参照により本明細書に援用される。特定の実施形態を参照して本発明が開示されてきたが、当業者が本発明の主旨と範囲から逸脱せずに本発明の他の実施形態及び変種を考案する可能性があることは明らかである。添付される特許請求の範囲には全てのこのような実施形態及び等価の変種が含まれると解釈されたい。
本発明は以下の態様を含む。
<1>
構成要素A及び/又は構成要素Bを含む融合タンパク質であって、
構成要素Aが、構成要素Y、構成要素Z 、及び構成要素Z を含み、且つ
構成要素Bが、構成要素X’、構成要素Z ’、及び構成要素Z ’を含む、
前記融合タンパク質。
<2>
構成要素Bが構成要素Z ’をさらに含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<3>
構成要素Aが構成要素Z をさらに含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<4>
構成要素Cをさらに含み、
構成要素Cが、構成要素X及び構成要素C ’を含む、<1>~<3>のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
<5>
構成要素Dをさらに含み、
構成要素Dが、構成要素Q及び構成要素C を含む、<1>~<4>のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
<6>
構成要素Yが、リガンドドメイン、受容体ドメイン、scFvドメイン、又はリポカリンドメインを含む、<1>~<5>のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
<7>
構成要素Yが、PD-1、CD112R、CD113、又はMHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)の少なくとも一部を含む、<6>に記載の融合タンパク質。
<8>
前記融合タンパク質がPD-L1又はPD-L2に結合する、<7>に記載の融合タンパク質。
<9>
構成要素X’が、ウイルス由来ペプチド、リガンド由来ペプチド、受容体由来ペプチド、又はHTS選択ペプチドを含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<10>
構成要素X’が、vMIP-IIの少なくとも一部を含む、<9>に記載の融合タンパク質。
<11>
構成要素X’が、V1又はV1Δを含む、<10>に記載の融合タンパク質。
<12>
構成要素Xが、ウイルス由来ペプチド、リガンド由来ペプチド、受容体由来ペプチド、又はHTS選択ペプチドを含む、<4>に記載の融合タンパク質。
<13>
構成要素Xが、V1又はV1Δを含む、<12>に記載の融合タンパク質。
<14>
前記融合タンパク質がCXCR4に結合する、<9>~<13>のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
<15>
構成要素Yと構成要素Z とがヒンジを介して接続されている、<1>に記載の融合タンパク質。
<16>
構成要素Z ’と構成要素Z ’とがヒンジを介して接続されている、<1>に記載の融合タンパク質。
<17>
構成要素X’と構成要素Z ’とがリンカーを介して接続されている、<1>に記載の融合タンパク質。
<18>
構成要素Xと構成要素C とがリンカーを介して接続されている、<4>に記載の融合タンパク質。
<19>
構成要素Qと構成要素C とがリンカーを介して接続されている、<5>に記載の融合タンパク質。
<20>
前記融合タンパク質が、免疫細胞上の受容体又はリガンドに結合する、<1>~<19>のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
<21>
前記受容体がFc受容体である、<20>に記載の融合タンパク質。
<22>
構成要素X’が、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む、<1>~<21>のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
<23>
構成要素Yが、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む、<1>~<22>のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
<24>
構成要素Xが、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む、<4>に記載の融合タンパク質。
<25>
構成要素Qが、PD-1、TIGIT、CD96、CD112R、CD113、CD155、CD111、CD112、MHC-Iポリペプチド関連配列A(MICA)、NKG2A(CD94)、MICB、ULBP1~5、TIM-3、CD226、NECL2、CRTAM、CD80、CTLA-4、KIR2DL1/2/3、又はCD48の少なくとも一部を含む、<5>に記載の融合タンパク質。
<26>
構成要素Aが、配列番号14~配列番号22のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<27>
構成要素Bが、配列番号32~配列番号35のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<28>
構成要素Aが、配列番号14~配列番号22のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、構成要素Bが配列番号32~配列番号35のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<29>
構成要素Bが、配列番号49~配列番号55のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<30>
構成要素Cが、配列番号57~配列番号63のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<31>
構成要素Bが、配列番号49~配列番号55のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、構成要素Cが、配列番号57~配列番号63のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<32>
構成要素A、構成要素B、及び構成要素Cを含む融合タンパク質であって、
構成要素Aが、構成要素Y、構成要素Z 、及び構成要素Z を含み、
構成要素Bが、構成要素X’、構成要素Z ’、及び構成要素Z ’を含み、
構成要素Cが、構成要素X及び構成要素C’ を含み、
構成要素YがPD-1の少なくとも一部を含み、
構成要素Z 及び構成要素Z ’がヒトFcのCH2ドメインを含み、
構成要素Z 及び構成要素Z ’がヒトFcのCH3ドメインを含み、
構成要素X’及び構成要素XがvMIP-IIの少なくとも一部を含み、且つ
構成要素C ’がヒトIgG1κの少なくとも1つのCH1ドメインを含む、
前記融合タンパク質。
<33>
前記融合タンパク質が、(i)PD-L1又はPD-L2、(ii)CXCR4、及び(iii)免疫細胞上のFc受容体又はリガンドに結合可能である、<32>に記載の融合タンパク質。
<34>
構成要素Aが配列番号29のアミノ酸配列を含み、構成要素Bが配列番号30のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<35>
構成要素Yが配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<36>
構成要素Z が配列番号12のアミノ酸配列を含み、且つ/又は構成要素Z が配列番号13のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<37>
構成要素Aが配列番号14又は配列番号15のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<38>
構成要素Bが配列番号49のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<39>
構成要素X’が配列番号37のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<40>
構成要素Z ’が配列番号12を含み、且つ/又は構成要素Z ’が配列番号48を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<41>
構成要素Xが配列番号37のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<42>
構成要素C ’が配列番号64のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<43>
構成要素Bが配列番号53のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<44>
構成要素Cが配列番号61のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<45>
構成要素Aが配列番号14のアミノ酸配列を含み、構成要素Bが配列番号53のアミノ酸配列を含み、構成要素Cが配列番号61のアミノ酸配列を含む、<32>に記載の融合タンパク質。
<46>
ヒトPD-1-hFcAをコードする第1核酸、vMIPII-CH’-hFcBをコードする第2核酸、及びvMIPII-CL’をコードする第3核酸を細胞に投与することを含む、融合タンパク質を生成する方法。
<47>
前記第1核酸が配列番号14のアミノ酸配列をコードし、且つ/又は前記第2核酸が配列番号49のアミノ酸配列をコードし、且つ/又は前記第3核酸が配列番号57のアミノ酸配列をコードする、<46>に記載の方法。
<48>
薬学的に許容可能な担体と、<1>~<45>のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、を含む、医薬組成物。
<49>
治療が必要な患者に<1>~<45>のいずれか一項に記載の融合タンパク質の治療有効量を投与することを含む、患者の増殖性障害を治療する方法。
<50>
前記増殖性障害ががんである、<49>に記載の方法。
<51>
前記がんが固形腫瘍である、<50>に記載の方法。
<52>
前記がんが、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、黒色腫、神経膠芽腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、又は結腸がんである、<50>に記載の方法。
<53>
配列番号14、配列番号49、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む、融合タンパク質。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図24
図25
図26A
図26B
図27
【配列表】
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