(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】導電助剤の分散性を改善する蓄電デバイス用結着剤
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20241113BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20241113BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01G11/38
(21)【出願番号】P 2021543036
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032585
(87)【国際公開番号】W WO2021039959
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2019156698
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020057233
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020125295
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】富士フイルム和光純薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(72)【発明者】
【氏名】森 歌穂
(72)【発明者】
【氏名】森 朋行
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 一樹
(72)【発明者】
【氏名】高野 和浩
(72)【発明者】
【氏名】河野 景
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-038073(JP,A)
【文献】特開2005-187605(JP,A)
【文献】特開平10-324822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01G 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイス用結着剤であって;
測定温度25℃、周波数1Hzの測定条件下でのひずみ分散測定において、前記結着剤0.5質量%及び導電助剤4.6質量%の水分散液の線形領域における損失正接tanδがtanδ>1であり、
ここで、前記導電助剤は、平均粒径30nm以上40nm以下且つ比表面積65m
2/g以上70m
2/g以下のアセチレンブラックであ
り、
前記結着剤が、(i)エチレン性不飽和カルボン酸単量体、並びに(ii)ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体またはその塩を含有するものである、蓄電デバイス用結着剤。
【請求項2】
前記(ii)の単量体の20℃での水に対する溶解度が1g/L以上である、請求項
1記載の結着剤。
【請求項3】
前記(ii)の単量体のSP値が11.5(cal/cm
3)
1/2以上である、請求項
1記載の結着剤。
【請求項4】
前記(ii)の単量体が下記一般式[1]で示される単量体である、請求項
1記載の結着剤。
【化1】
(一般式[1]中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、Y
1は、-O-又は-NR
2-を表し、R
2は、水素原子又はメチル基を表し、A
1は、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有する1価の基を表す。)
【請求項5】
前記(ii)の単量体が下記一般式[2]で示される単量体である、請求項
1記載の結着剤。
【化2】
(一般式[2]中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、Y
1は、-O-又は-NR
2-を表し、R
2は、水素原子又はメチル基を表し、A
2は、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基のいずれか1種を1~3個有する炭素数1~10のアルキル基;又はヒドロキシ基を1個有し、且つ鎖中にエステル結合を1~5個有する直鎖状の炭素数3~36のアルキル基を表す。)
【請求項6】
前記重合体またはその塩が、さらに(iii)重合性不飽和基を2つ以上有する単量体に由来する構造単位を含むものである、請求項
1記載の結着剤。
【請求項7】
前記重合体またはその塩が、アルカリ金属の水酸化物及び/又はアミン価が21以上である多価アミンで中和されたものである、請求項
1記載の結着剤。
【請求項8】
請求項1に記載の結着剤を含む蓄電デバイス用のスラリー組成物。
【請求項9】
請求項
8に記載のスラリー組成物からなる蓄電デバイス用の電極。
【請求項10】
請求項
9に記載の電極を備える蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスにおいて用いられる結着剤、スラリー組成物及び電極、並びに該電極を備える蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン、携帯電話機をはじめとする携帯端末、ハイブリッドカー、電気自動車、電動アシスト自転車等に用いられるバッテリー(蓄電デバイス)は、急速に普及するとともに更なる小型化や軽量化が求められている。これらの製品に用いられる蓄電デバイスとして、エネルギー密度が高く軽量であるという利点を有するリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
通常、リチウムイオン二次電池等に用いられる電極は、集電体と、集電体上に形成された電極合材層とを備えている。そして、負極における電極合材層である負極合材層は一般的に、グラファイトやシリコンに代表される負極活物質、アセチレンブラックやカーボンブラックに代表される導電助剤、バインダー(結着剤)等を分散媒に分散又は溶解させてなる負極合材層用スラリー(電極合材層用スラリー)を集電体上に塗布し、乾燥させて負極活物質と導電助剤等とをバインダーで結着することにより形成される。
【0004】
この電極合材層用スラリーに求められる特性として、活物質や導電助剤が分散媒に分散又は溶解されたときの均一性が挙げられる。これは、電極合材層用スラリー中の活物質や導電助剤の分散状態が、電極合材層中の活物質や導電助剤の分布状態に関連しており、電極物性、ひいては電池性能に影響するためである。とりわけ、導電助剤のなかでも導電性に優れる炭素材料は、粒子径が小さく比表面積が大きいため、凝集力が強く、電極合材層用スラリー中に均一に混合・分散することが困難である。そして、炭素材料の分散性や粒度の制御が不十分な場合、均一な導電ネットワークが形成されないために電極の内部抵抗の低減が図れず、その結果、電極材料の性能を十分に引き出せないという問題が生じる。そのため、導電助剤の分散性の向上は重要な課題である。
【0005】
そこで、電極合材層用スラリー中の導電助剤を分散させる方法が、種々検討されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、カーボンブラックを溶剤に分散させる際に、分散剤として界面活性剤を用いる例が記載されている。また、特許文献3及び特許文献4には、導電助剤を分散させる際に種々の添加剤を加える例が記載されている。
【0006】
またスラリーを塗布した電極には、電池の製造時の巻取りおよびトリミングや、充放電の繰り返しにおける活物質の膨張・収縮に起因するクラックを防止するために柔軟性を向上させる検討が種々検討されている。例えば、特許文献5及び特許文献6には、特定のモノマー成分を所定の割合で含む重合体を用いる例が記載されている。また、特許文献7には、カーボンナノチューブの複合体を加えることで柔軟性を改善する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-236258号公報
【文献】特開平8-190912号公報
【文献】特開2013-206759号公報
【文献】特開2012-195243号公報
【文献】特開2016-155927号公報
【文献】国際公報第2018/003636号
【文献】特開2016-054113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2に記載の界面活性剤は、炭素材料表面への吸着力が弱いため、良好な分散安定性を得るためには添加量を多くしなければならず、その結果、電極合材層中に含有可能な活物質の量が少なくなり、電池容量が低下してしまうという問題があった。加えて、界面活性剤の炭素材料への吸着が不十分であると、炭素材料の凝集が抑制出来ず、分散性が不十分なままであるという問題があった。
また、上述した特許文献3及び特許文献4に記載の分散剤は、低分子であるが故に電極合材層から電解液に溶出し、電池性能に悪影響を与える可能性があった。加えて、添加する分散剤と、バインダーポリマーや溶剤との相溶性が悪い場合、電池性能が低下してしまうという問題があった。
【0009】
一方、電極柔軟性においては、上述した特許文献5及び特許文献6に記載のモノマーを付与した重合体は、重合体の主骨格が柔軟化するため、充放電に伴う活物質の膨張・収縮により活物質間の導電パスが失われ、電池容量が低下してしまうという問題があった。加えて、水分散系の重合体は粘度が低いためカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤と併用する必要があるという問題があった。
また、上述した特許文献7に記載のカーボンナノチューブの複合体はバインダーポリマーを含まないため、充放電を繰り返すと電極の集電箔から剥離して、長期間の使用に耐えられない可能性があった。加えて、複合体シートの強度を上げるためにはカーボンナノチューブの配合量を多くしなければならず、その結果、電極中の活物質の割合が少なくなり、電池のエネルギー密度が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、上述の如き問題を解決する優れた分散性を有する結着剤、又は電極に優れた柔軟性を付与し得る結着剤、それらを用いたスラリー組成物及び電極、並びに該電極を備える蓄電デバイスの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ひずみ分散測定において、特定量の導電助剤及び結着剤を含む水分散液の線形領域における損失正接tanδがtanδ>1となる結着剤を蓄電デバイスに用いることで、導電助剤の分散性に優れ、長期にわたり高容量を保持し得る蓄電デバイスが得られることを見出し、第一発明を完成するに至った。
【0012】
また、本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の中和剤により中和された重合体の塩を含有する結着剤を用いることで、電極の柔軟性が向上し、捲回性に優れた電極及び該電極を備える蓄電デバイスの製造が可能となることを見出し、第二発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、第一発明は、以下の発明[i]~[xi]を内包する。
[i]蓄電デバイス用結着剤であって;
測定温度25℃、周波数1Hzの測定条件下でのひずみ分散測定において、上記結着剤0.5質量%及び導電助剤4.6質量%の水分散液の線形領域における損失正接tanδがtanδ>1であり、ここで、前記導電助剤は、平均粒径30nm以上40nm以下且つ比表面積65m
2/g以上70m
2/g以下のアセチレンブラックである、蓄電デバイス用結着剤(以下、第一発明の結着剤と略記する場合がある。)。
[ii]上記結着剤が、(i)エチレン性不飽和カルボン酸単量体、並びに(ii)ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体またはその塩を含有するものである、上記発明[i]記載の結着剤。
[iii]上記(ii)の単量体の20℃での水に対する溶解度が1g/L以上である、上記発明[ii]記載の結着剤。
[iv]上記(ii)の単量体のSP値が11.5(cal/cm
3)
1/2以上である、上記発明[ii]又は[iii]記載の結着剤。
[v]上記(ii)の単量体が下記一般式[1]で示される単量体である、上記発明[ii]~[iv]の何れか1つに記載の結着剤。
(一般式[1]中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、Y
1は、-O-又は-NR
2-を表し、R
2は、水素原子又はメチル基を表し、A
1は、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有する1価の基を表す。)
[vi]上記(ii)の単量体が下記一般式[2]で示される単量体である、上記発明[ii]~[v]の何れか1つに記載の結着剤。
(一般式[2]中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、Y
1は、-O-又は-NR
2-を表し、R
2は、水素原子又はメチル基を表し、A
2は、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基のいずれか1種を1~3個有する炭素数1~10のアルキル基;又はヒドロキシ基を1個有し、且つ鎖中にエステル結合を1~5個有する直鎖状の炭素数3~36のアルキル基を表す。)
[vii]上記重合体またはその塩が、さらに(iii)重合性不飽和基を2つ以上有する単量体に由来する構造単位を含むものである、上記発明[ii]~[vi]の何れか1つに記載の結着剤。
[viii]上記重合体またはその塩が、アルカリ金属の水酸化物及び/又はアミン価が21以上である多価アミンで中和されたものである、上記発明[ii]~[vii]の何れか1つに記載の結着剤。
[ix]上記発明[i]~[viii]の何れか1つに記載の結着剤を含む蓄電デバイス用のスラリー組成物(以下、第一発明のスラリー組成物と略記する場合がある。)。
[x]上記発明[ix]記載のスラリー組成物からなる蓄電デバイス用の電極(以下、第一発明の電極と略記する場合がある。)。
[xi]上記発明[x]記載の電極を備える蓄電デバイス(以下、第一発明の蓄電デバイスと略記する場合がある。)。
【0014】
また、第二発明は、以下の発明[xii]~[xxi]を内包する。
[xii](i)エチレン性不飽和カルボン酸単量体、並びに(ii)ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含み、且つ、モノアミン、アミン価が21未満である多価アミン及び/又はオニウムヒドロキシドで中和された重合体の塩を含有するものである、蓄電デバイス用結着剤(以下、第二発明の結着剤と略記する場合がある。)。
[xiii]上記多価アミンの分子量が600以下である、上記発明[xii]記載の結着剤。
[xiv]上記(ii)の単量体の20℃での水に対する溶解度が1g/L以上である、上記発明[xii]又は[xiii]記載の結着剤。
[xv]上記(ii)の単量体のSP値が11.5(cal/cm
3)
1/2以上である、上記発明[xii]~[xiv]の何れか1つに記載の結着剤。
[xvi]上記(ii)の単量体が下記一般式[1]で示される単量体である、上記発明[xii]~[xv]の何れか1つに記載の結着剤。
(一般式[1]中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、Y
1は、-O-又は-NR
2-を表し、R
2は、水素原子又はメチル基を表し、A
1は、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有する1価の基を表す。)
[xvii]上記(ii)の単量体が下記一般式[2]で示される単量体である、上記発明[xii]~[xvi]の何れか1つに記載の結着剤。
(一般式[2]中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、Y
1は、-O-又は-NR
2-を表し、R
2は、水素原子又はメチル基を表し、A
2は、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基のいずれか1種を1~3個有する炭素数1~10のアルキル基;又はヒドロキシ基を1個有し、且つ鎖中にエステル結合を1~5個有する直鎖状の炭素数3~36のアルキル基を表す。)
[xviii]上記発明[xii]~[xvii]の何れか1つに記載の結着剤を含む蓄電デバイス用のスラリー組成物(以下、第二発明のスラリー組成物と略記する場合がある。)。
[xix]上記発明[xviii]記載のスラリー組成物からなる蓄電デバイス用の電極(以下、第二発明の電極と略記する場合がある。)。
[xx]上記発明[xix]記載の電極を備える蓄電デバイス(以下、第二発明の蓄電デバイスと略記する場合がある。)。
【発明の効果】
【0015】
第一発明の結着剤を用いることにより、導電助剤の分散性に優れ、長期にわたり高容量を保持し得る蓄電デバイスの提供を可能とする。
【0016】
また、第二発明の結着剤を電極製造に用いることにより、電極の柔軟性が向上し、捲回性に優れた電極、及び該電極を備える蓄電デバイスの提供を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一発明の結着剤]
第一発明の結着剤は、測定温度25℃、周波数1Hzの測定条件下でのひずみ分散測定において、結着剤0.5質量%及び導電助剤4.6質量%の水分散液の線形領域における損失正接tanδがtanδ>1となるものである。tanδの上限値に特に制限はないが、例えば1<tanδ≦100であり、好ましくは1<tanδ≦50であり、より好ましくは1<tanδ≦10である。
【0018】
上記「線形領域」とは、ひずみ分散測定において測定を開始した時点から測定試料の構造破壊が始まる時点までの領域を示し、ひずみ分散測定において得られる弾性率がひずみ量の増加に依存せず一定値を示す領域のことをいう。なお、構造破壊開始後の領域(ひずみ量の増加に依存して弾性率が減少する範囲)を非線形領域という。
【0019】
上記「損失正接tanδ」とは、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の比(損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’)を示し、ここで、貯蔵弾性率G’は弾性的性質の指標であり、損失弾性率G’’は粘性的性質の指標である。貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’は共に、ひずみ分散測定を行うことで得られる。
【0020】
上記「損失正接tanδ」の算出方法としては、具体的には、レオメーター MCR 102(動的粘弾性測定装置:Anton Paar社製)を用いて、測定温度25℃、周波数1Hzの測定条件下で、ひずみ量を10-2%から103%まで増加させた際の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を測定し、得られた値を基に損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’を算出すればよい。
【0021】
上記「導電助剤」としては、平均粒径が30nm以上40nm以下であり、且つ比表面積が65m2/g以上70m2/g以下であるアセチレンブラックを用いるものとする。該平均粒径条件及び比表面積条件を満たすアセチレンブラックとしては、具体的には、デンカ(株)製のデンカブラック(登録商標)粉状品(平均粒径:35nm、比表面積:68m2/g (デンカ(株)HP掲載代表値))等を用いればよい。
【0022】
上記「水分散液」における分散媒である「水」としては、イオン交換水を用いればよい。
【0023】
第一発明の結着剤の具体的な構成としては、例えば、(i)エチレン性不飽和カルボン酸単量体、並びに(ii)ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体(以下、第一発明に係る重合体と略記する場合がある。)またはその塩を含有するものが挙げられる。
【0024】
上記(i)エチレン性不飽和カルボン酸単量体(以下、(i)の単量体と略記する場合がある。)は、1分子中にエチレン性不飽和基とカルボキシ基の両方を有する単量体である。ただし、後述する(iii)の単量体とは異なり、(i)の単量体はエチレン性不飽和基を1個有するものである。また、(i)の単量体は酸無水物であってもよい。
【0025】
(i)の単量体としては、具体的には例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)サクシネート、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)フタレート、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸単量体等が挙げられる。これらの具体例の中でも、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましく、アクリル酸が特に好ましい。なお、(i)の単量体は、1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、1種のみ単独で用いるのが好ましい。
【0026】
上記(ii)ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和単量体(以下、(ii)の単量体と略記する場合がある。)は、1分子中に「ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基」とエチレン性不飽和基の両方を有する単量体であり、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されない。ただし、(i)の単量体と(ii)の単量体は異なる構造のものであり、(ii)の単量体におけるヒドロキシ基は、カルボキシ基、スルホ基及びリン酸基を含まない(カルボキシ基、スルホ基及びリン酸基中に存在するOHは、(ii)の単量体におけるヒドロキシ基には該当しない)。また、後述する(iii)の単量体とは異なり、(ii)の単量体はエチレン性不飽和基を1個有するものである。
【0027】
(ii)の単量体におけるジアルキルアミノ基としては、例えば炭素数2~12のジアルキルアミノ基が挙げられ、炭素数2~8のものが好ましい。また、該ジアルキルアミノ基中の2つのアルキル基は、それぞれ直鎖状、分枝状及び環状のうちいずれであってもよく、直鎖状又は分枝状が好ましい。さらに、該ジアルキルアミノ基中の2つのアルキル基は同一でも異なっていてもよく、2つのアルキル基が結合して複素環構造を形成していてもよい。具体的には例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ(n-ブチル)アミノ基、ジイソブチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基等が挙げられる。
【0028】
(ii)の単量体としては、水に対する溶解性が高い単量体が挙げられ、具体的には、20℃での水に対する溶解度が1g/L以上であるものが好ましく、溶解度が100g/L以上であるものがより好ましく、水に任意の割合で溶解するものが特に好ましい。
【0029】
また、(ii)の単量体としては、SP値が11.5(cal/cm3)1/2以上であるものが好ましい。(ii)の単量体のSP値の上限値に特に制限はないが、25(cal/cm3)1/2以下が好ましい。なお、本発明(第一発明及び第二発明)におけるSP値(Solubility Parameter:溶解度パラメータ)は、Fedors法に従って算出されるものであり、具体的には以下に示す計算式から求めることができる。
計算式:δ=(ΔEcoh/ΔV)1/2
(上記計算式中、δはSP値(cal/cm3)1/2、ΔEcohはモル凝集エネルギー(cal/mol)、ΔVはモル分子容量(cm3/mol)を表す。)
【0030】
(ii)の単量体におけるエチレン性不飽和基としては、アリル基、ビニルアリール基、ビニルオキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられ、中でもアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。
【0031】
(ii)の単量体としては、例えば、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有し、且つアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する単量体が挙げられる。より具体的には例えば、下記一般式[1]で示される単量体が挙げられる。
(一般式[1]中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、Y
1は、-O-又は-NR
2-を表し、R
2は、水素原子又はメチル基を表し、A
1は、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有する1価の基を表す。)
【0032】
一般式[1]のR1としては、水素原子が好ましい。
【0033】
一般式[1]のY1において、-NR2-中のR2としては、水素原子が好ましい。
【0034】
一般式[1]のY1としては、-O-及び-NH-が好ましく、-O-がより好ましい。
【0035】
一般式[1]のA1におけるジアルキルアミノ基としては、(ii)の単量体におけるジアルキルアミノ基と同じものが挙げられる。
【0036】
一般式[1]のA1の有する「ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基」としては、1種のみであっても2種以上であってもよく;ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基のいずれか1種が好ましく;ヒドロキシ基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基のいずれか1種がより好ましく;ヒドロキシ基、スルホ基及びリン酸基から選ばれる基のいずれか1種がさらに好ましく;ヒドロキシ基が特に好ましい。また、一般式[1]のA1は、「ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基」を少なくとも1個有していればよく、中でも1~3個有するものが好ましく、1~2個有するものがより好ましく、1個有するものが特に好ましい。
【0037】
一般式[1]のA1における「1価の基」は、例えば、鎖中にエステル結合を有していてもよいアルキル基が挙げられる。
上記「鎖中にエステル結合を有していてもよいアルキル基」がエステル結合を有さない場合のアルキル基としては、例えば炭素数1~30のアルキル基が挙げられ、中でも炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましく、炭素数1~4のものがさらに好ましい。また、該アルキル基は、直鎖状、分枝状及び環状のうちいずれであってもよく、直鎖状又は分枝状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
上記「鎖中にエステル結合を有していてもよいアルキル基」がエステル結合を有する場合のアルキル基としては、例えば炭素数3~66のアルキル基が挙げられ、中でも炭素数3~36のものが好ましく、炭素数5~24のものがより好ましく、炭素数7~18のものがさらに好ましい。なお、該アルキル基の炭素数には、エステル結合中の炭素原子の個数も含むものとする。また、該アルキル基としては、直鎖状が好ましい。さらに、該アルキル基の有するエステル結合の個数としては、1~10個が挙げられ、1~5個が好ましく、1~3個がより好ましく、1~2個がさらに好ましい。
【0038】
一般式[1]のA1としては、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有し、且つ鎖中にエステル結合を有していてもよいアルキル基が挙げられる。その中でも、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を1~3個有する炭素数1~30のアルキル基;及びヒドロキシ基を1個有し、且つ鎖中にエステル結合を1~10個有する炭素数3~66のアルキル基が好ましく、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基のいずれか1種を1~3個有する炭素数1~10のアルキル基;及びヒドロキシ基を1個有し、且つ鎖中にエステル結合を1~5個有する直鎖状の炭素数3~36のアルキル基がより好ましく、ヒドロキシ基を1~2個有する炭素数1~10のアルキル基;ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基のいずれか1種を1個有する炭素数1~10のアルキル基;及びヒドロキシ基を1個有し、且つ鎖中にエステル結合を1~3個有する直鎖状の炭素数5~24のアルキル基がさらに好ましい。
【0039】
一般式[1]のA
1の具体例としては、例えば、下記一般式[1-1]~[1-4]で示される基が挙げられ、中でも一般式[1-1]で示される基が好ましい。
(一般式[1-1]~[1-4]中、A
1-1及びA
1-2はそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基を表し、R
3は、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基又はシアノ基を表し、aは、0~4の整数を表し、bは、1~5の整数を表し、cは、1~6の整数を表し、dは、3~5の整数を表し、eは、1~3の整数を表す。)
【0040】
一般式[1-1]のA1-1における炭素数1~10のアルキレン基としては、炭素数1~6のものが好ましく、炭素数1~4のものがより好ましい。また、直鎖状、分枝状及び環状のうちいずれであってもよく、直鎖状又は分枝状が好ましく、直鎖状がより好ましい。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、プロピルメチレン基、エチルメチルメチレン基、ペンタメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、1-エチルトリメチレン基、n-プロピルエチレン基、n-ブチルメチレン基、ヘキサメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、1-n-プロピルトリメチレン基、n-ブチルエチレン基、n-ペンチルメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、-C6H10-基、-CH2-C6H10-基、-C2H4-C6H10-基、-C3H6-C6H10-基、-C4H8-C6H10-基、-C6H10-CH2-基、-C6H10-C2H4-基、-C6H10-C3H6-基、-C6H10-C4H8-基、-CH2-C6H10-CH2-基、-C2H4-C6H10-C2H4-基等が挙げられる。これらの具体例の中でも、炭素数1~6の直鎖状又は分枝状のアルキレン基及び炭素数6~8の環状のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基がより好ましく、炭素数2~4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基がさらに好ましい。
【0041】
一般式[1-2]のR3におけるジアルキルアミノ基としては、(ii)の単量体におけるジアルキルアミノ基と同じものが挙げられる。
【0042】
一般式[1-1]で示される基の具体例としては、例えば、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルプロピル基、2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル基、1-ヒドロキシブチル基、1-ヒドロキシ-1-メチルプロピル基、5-ヒドロキシペンチル基、4-ヒドロキシペンチル基、2-ヒドロキシペンチル基、1-ヒドロキシペンチル基、6-ヒドロキシヘキシル基、5-ヒドロキシヘキシル基、2-ヒドロキシヘキシル基、1-ヒドロキシヘキシル基、7-ヒドロキシヘプチル基、6-ヒドロキシヘプチル基、2-ヒドロキシヘプチル基、1-ヒドロキシヘプチル基、8-ヒドロキシオクチル基、7-ヒドロキシオクチル基、2-ヒドロキシオクチル基、1-ヒドロキシオクチル基、9-ヒドロキシノニル基、8-ヒドロキシノニル基、2-ヒドロキシノニル基、1-ヒドロキシノニル基、10-ヒドロキシデシル基、9-ヒドロキシデシル基、2-ヒドロキシデシル基、1-ヒドロキシデシル基、-C6H10-OH基、-CH2-C6H10-CH2-OH基、-C2H4-C6H10-C2H4-OH基等が挙げられる。
【0043】
上記具体例の中でも、炭素数1~6の直鎖状又は分枝状のヒドロキシアルキル基及び炭素数6~8の環状のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のヒドロキシアルキル基がより好ましく、炭素数2~4の直鎖状又は分枝状のヒドロキシアルキル基がさらに好ましい。より具体的には、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、5-ヒドロキシペンチル基、2-ヒドロキシペンチル基、1-ヒドロキシペンチル基、6-ヒドロキシヘキシル基、5-ヒドロキシヘキシル基、2-ヒドロキシヘキシル基、1-ヒドロキシヘキシル基、-C6H10-OH基、-CH2-C6H10-CH2-OH基が好ましく、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、5-ヒドロキシペンチル基、6-ヒドロキシヘキシル基、-CH2-C6H10-CH2-OH基がより好ましく、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、4-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基がさらに好ましく、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、4-ヒドロキシブチル基が特に好ましい。
【0044】
一般式[1-2]のA1-2における炭素数1~10のアルキレン基としては、一般式[1-1]のA1-1における炭素数1~10のアルキレン基の具体例と同じものが挙げられ、中でも炭素数1~6の直鎖状又は分枝状のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基がより好ましい。
【0045】
一般式[1-2]のR3としては、スルホ基、リン酸基、シアノ基が好ましく、スルホ基、リン酸基がより好ましい。
【0046】
一般式[1-2]で示される基の具体例としては、例えば、ジメチルアミノメチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基、3-(ジメチルアミノ)プロピル基、4-(ジメチルアミノ)ブチル基、ジエチルアミノメチル基、2-(ジエチルアミノ)エチル基、3-(ジエチルアミノ)プロピル基、4-(ジエチルアミノ)ブチル基、ジ(n-プロピル)アミノメチル基、2-[ジ(n-プロピル)アミノ]エチル基、3-[ジ(n-プロピル)アミノ]プロピル基、4-[ジ(n-プロピル)アミノ]ブチル基、ジイソプロピルアミノメチル基、2-(ジイソプロピルアミノ)エチル基、3-(ジイソプロピルアミノ)プロピル基、4-(ジイソプロピルアミノ)ブチル基、ジ(n-ブチル)アミノメチル基、2-[ジ(n-ブチル)アミノ]エチル基、3-[ジ(n-ブチル)アミノ]プロピル基、4-[ジ(n-ブチル)アミノ]ブチル基、ジイソブチルアミノメチル基、2-(ジイソブチルアミノ)エチル基、3-(ジイソブチルアミノ)プロピル基、4-(ジイソブチルアミノ)ブチル基、モルホリノメチル基、2-モルホリノエチル基、3-モルホリノプロピル基、4-モルホリノブチル基、ピペリジノメチル基、2-ピペリジノエチル基、3-ピペリジノプロピル基、4-ピペリジノブチル基等の炭素数3~12のジアルキルアミノアルキル基;アセトメチル基、2-アセトエチル基、3-アセトプロピル基、4-アセトブチル基、1,1-ジメチル-2-アセトエチル基等の炭素数3~6のアセトアルキル基;スルホメチル基、2-スルホエチル基、1-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、2-スルホプロピル基、1-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、3-スルホブチル基、2-スルホブチル基、1,1-ジメチル-2-スルホエチレン基、1-スルホブチル基、5-スルホペンチル基、6-スルホヘキシル基等の炭素数1~6のスルホアルキル基;ホスホノオキシメチル基、2-ホスホノオキシエチル基、1-ホスホノオキシエチル基、3-ホスホノオキシプロピル基、2-ホスホノオキシプロピル基、1-ホスホノオキシプロピル基、4-ホスホノオキシブチル基、3-ホスホノオキシブチル基、2-ホスホノオキシブチル基、1-ホスホノオキシブチル基、5-ホスホノオキシペンチル基、6-ホスホノオキシヘキシル基等の炭素数1~6のホスホノオキシアルキル基(リン酸アルキル基);シアノメチル基、2-シアノエチル基、1-シアノエチル基、3-シアノプロピル基、2-シアノプロピル基、1-シアノプロピル基、4-シアノブチル基、3-シアノブチル基、2-シアノブチル基、1-シアノブチル基、5-シアノペンチル基、6-シアノヘキシル基等の炭素数2~7のシアノアルキル基等が挙げられる。
【0047】
上記具体例の中でも、炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のスルホアルキル基、炭素数1~4の直鎖状のホスホノオキシアルキル基、炭素数2~5の直鎖状のシアノアルキル基が好ましく;炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のスルホアルキル基、炭素数1~4の直鎖状のホスホノオキシアルキル基がより好ましい。より具体的には、2-(ジメチルアミノ)エチル基、2-(ジエチルアミノ)エチル基、2-[ジ(n-プロピル)アミノ]エチル基、2-(ジイソプロピルアミノ)エチル基、2-[ジ(n-ブチル)アミノ]エチル基、2-(ジイソブチルアミノ)エチル基、2-モルホリノエチル基、2-ピペリジノエチル基;アセトメチル基、2-アセトエチル基、1,1-ジメチル-2-アセトエチル基;スルホメチル基、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、2-スルホプロピル基、1-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、3-スルホブチル基、2-スルホブチル基、1,1-ジメチル-2-スルホエチレン基;ホスホノオキシメチル基、2-ホスホノオキシエチル基、1-ホスホノオキシエチル基、3-ホスホノオキシプロピル基、2-ホスホノオキシプロピル基、4-ホスホノオキシブチル基;シアノメチル基、2-シアノエチル基、1-シアノエチル基、3-シアノプロピル基、1-シアノプロピル基、4-シアノブチル基、1-シアノブチル基が好ましく、スルホメチル基、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、1,1-ジメチル-2-スルホエチレン基;ホスホノオキシメチル基、2-ホスホノオキシエチル基、3-ホスホノオキシプロピル基、4-ホスホノオキシブチル基;シアノメチル基、2-シアノエチル基、3-シアノプロピル基、4-シアノブチル基がより好ましく、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、2-ホスホノオキシエチル基がさらに好ましい。
【0048】
一般式[1-3]のa及びbとしては、1~4の整数が好ましく、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0049】
一般式[1-3]で示される基の具体例としては、例えば、1,2-ジヒドロキシプロピル基、1,3-ジヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、1,2-ジヒドロキシブチル基、1,3-ジヒドロキシブチル基、1,4-ジヒドロキシブチル基、2,3-ジヒドロキシブチル基、2,4-ジヒドロキシブチル基、3,4-ジヒドロキシブチル基、1,2-ジヒドロキシペンチル基、1,3-ジヒドロキシペンチル基、1,4-ジヒドロキシペンチル基、1,5-ヒドロキシペンチル基、2,3-ジヒドロキシペンチル基、2,4-ジヒドロキシペンチル基、2,5-ヒドロキシペンチル基、3,4-ジヒドロキシペンチル基、3,5-ジヒドロキシペンチル基、4,5-ヒドロキシペンチル基、1,2-ジヒドロキシヘキシル基、1,3-ジヒドロキシヘキシル基、1,4-ジヒドロキシヘキシル基、1,5-ヒドロキシヘキシル基、1,6-ヒドロキシヘキシル基、2,3-ジヒドロキシヘキシル基、2,4-ジヒドロキシヘキシル基、2,5-ヒドロキシヘキシル基、2,6-ヒドロキシヘキシル基、3,4-ジヒドロキシヘキシル基、3,5-ジヒドロキシヘキシル基、3,6-ジヒドロキシヘキシル基、4,5-ヒドロキシヘキシル基、4,6-ヒドロキシヘキシル基、5,6-ヒドロキシヘキシル基等が挙げられ、中でも2,3-ジヒドロキシプロピル基、2,4-ジヒドロキシブチル基、3,4-ジヒドロキシブチル基、2,5-ヒドロキシペンチル基、4,5-ヒドロキシペンチル基、2,6-ヒドロキシヘキシル基、5,6-ヒドロキシヘキシル基が好ましく、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2,4-ジヒドロキシブチル基、3,4-ジヒドロキシブチル基がより好ましく、2,3-ジヒドロキシプロピル基がさらに好ましい。
【0050】
一般式[1-4]のcとしては、2又は4が好ましく、2がより好ましい。
【0051】
一般式[1-4]のdとしては、3又は5が好ましく、5がより好ましい。
【0052】
一般式[1-4]のeとしては、1又は2が好ましい。
【0053】
一般式[1-4]で示される基の具体例としては、例えば、下記で示される基が挙げられる。
【0054】
【0055】
上記具体例の中でも、下記で示される基がより好ましい。
【0056】
一般式[1]のA
1の好ましい具体例としては、上述した一般式[1-1]~[1-4]で示される基の具体例と同じものが挙げられ、中でもヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、5-ヒドロキシペンチル基、6-ヒドロキシヘキシル基、-CH
2-C
6H
10-CH
2-OH基;スルホメチル基、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、1,1-ジメチル-2-スルホエチレン基;ホスホノオキシメチル基、2-ホスホノオキシエチル基、3-ホスホノオキシプロピル基、4-ホスホノオキシブチル基;シアノメチル基、2-シアノエチル基、3-シアノプロピル基、4-シアノブチル基;2,3-ジヒドロキシプロピル基、2,4-ジヒドロキシブチル基、3,4-ジヒドロキシブチル基;下記で示される基がより好ましい。
【0057】
上記の好ましい具体例の中でも、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、4-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、2-ホスホノオキシエチル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基がさらに好ましく、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、4-ヒドロキシブチル基が特に好ましい。
【0058】
一般式[1]におけるA
1、R
1及びY
1の組み合わせとしては、例えば下記表記載の組み合わせ1~12が挙げられる。これらの組み合わせの中でも、組み合わせ1~10が好ましく、組み合わせ1、2、9及び10がより好ましく、組み合わせ1、2及び9がさらに好ましく、組み合わせ1が特に好ましい。
【0059】
一般式[1]で示される単量体の好ましい具体例としては、例えば、下記一般式[2]で示される単量体が挙げられる。
(一般式[2]中、A
2は、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基のいずれか1種を1~3個有する炭素数1~10のアルキル基;又はヒドロキシ基を1個有し、且つ鎖中にエステル結合を1~5個有する直鎖状の炭素数3~36のアルキル基を表し、R
1及びY
1は、上記と同じ。)
【0060】
一般式[2]のA2の「ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基のいずれか1種を1~3個有する炭素数1~10のアルキル基」及び「ヒドロキシ基を1個有し、且つ鎖中にエステル結合を1~5個有する直鎖状の炭素数3~36のアルキル基」の具体例としては、一般式[1-1]~[1-4]で示される基の具体例と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0061】
一般式[2]のA2としては、ヒドロキシ基を1~2個有する炭素数1~10のアルキル基;ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基のいずれか1種を1個有する炭素数1~10のアルキル基;及びヒドロキシ基を1個有し、且つ鎖中にエステル結合を1~3個有する直鎖状の炭素数5~24のアルキル基が好ましく、一般式[1-1]~[1-4]で示される基がより好ましく、一般式[1-1]で示される基がさらに好ましい。より具体的には、一般式[1]のA1の好ましい具体例と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0062】
一般式[2]におけるA2、R1及びY1の組み合わせとしては、一般式[1]におけるA1、R1及びY1の組み合わせと同じものが挙げられ、好ましい組み合わせも同じである。
【0063】
一般式[2]で示される単量体の具体例としては、下記単量体が挙げられる。
【0064】
【0065】
上記具体例の中でも、ヒドロキシメチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-(アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、3-(アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、2-(アクリロイルオキシ)エチルアシッドホスフェート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、3-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、2-(メタクリロイルオキシ)エチルアシッドホスフェート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレートが好ましい。
【0066】
一般式[1]で示される単量体のより好ましい具体例としては、例えば、下記一般式[3]で示される単量体が挙げられる。
(一般式[3]中、A
3は、炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、R
1は、上記と同じ。)
【0067】
一般式[3]のA3としては、炭素数2~4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基が好ましい。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基等が挙げられ、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基が好ましく、エチレン基、テトラメチレン基がより好ましい。
【0068】
一般式[3]で示される単量体の具体例としては、ヒドロキシメチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられ、中でも2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートが特に好ましい。
【0069】
なお、(ii)の単量体は、1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、1種のみ単独で用いる又は2種を併用するのが好ましい。
【0070】
第一発明に係る重合体における、(i)の単量体に由来する構造単位と(ii)の単量体に由来する構造単位との含有比率(モル比)は、通常(i)の単量体:(ii)の単量体=5:95~95:5であり、好ましくは10:90~90:10であり、より好ましくは15:85~85:15である。なお、(i)の単量体及び/又は(ii)の単量体を2種以上組み合わせて用いる場合、(i)の単量体に由来する構造単位の合計モル数と(ii)の単量体に由来する構造単位の合計モル数の比率が、上記含有比率となればよい。
【0071】
第一発明に係る重合体は、(i)の単量体及び(ii)の単量体の他に、さらに(iii)重合性不飽和基を2つ以上有する単量体に由来する構造単位を含むものであってもよい。
【0072】
上記(iii)重合性不飽和基を2つ以上有する単量体(以下、(iii)の単量体と略記する場合がある。)は、(i)の単量体及び(ii)の単量体とは異なる構造のものである。
【0073】
(iii)の単量体おける重合性不飽和基としては、具体的には例えば、ビニルオキシ基、アリル基、ビニルアリール基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のエチレン性不飽和基;イソシアネート基;カルボジイミド基等が挙げられ、中でもエチレン性不飽和基が好ましく、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
【0074】
(iii)の単量体としては、例えば、下記一般式[11]又は[12]で示される単量体が挙げられ、一般式[11]で示される単量体が好ましい。
{一般式[11]中、R
11は、水素原子又はメチル基を表し、Y
11は、-O-又は-NR
12-を表し、R
12は、水素原子又はメチル基を表し、A
11は、下記一般式[11-1]~[11-3]で示される基を表し、2つのR
11及び2つのY
11は、それぞれ同一である:
(一般式[11-1]~[11-3]中、R
13及びR
14はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Y
12は、-O-又は-NR
15-を表し、R
15は、水素原子又はメチル基を表し、A
12~A
15はそれぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表し、A
16及びA
17はそれぞれ独立して、鎖中にエーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、gは、0~30の整数を表し、hは、1~3の整数を表し、iは、0~6の整数を表し、jは、1~3の整数を表し、2つのA
16、2つのR
14及び2つのY
12は、それぞれ同一である。)。}
【0075】
(一般式[12]中、R
16~R
22はそれぞれ独立して、炭素数1~3のアルキレン基を表す。)
【0076】
一般式[11]のR11としては、水素原子が好ましい。
【0077】
一般式[11]のY11において、-NR12-中のR12としては、水素原子が好ましい。
【0078】
一般式[11]のY11としては、-O-及び-NH-が好ましく、-NH-がより好ましい。
【0079】
一般式[11-1]のA12及びA13における炭素数1~6のアルキレン基としては、炭素数1~4のものが好ましく、炭素数2~3のものがより好ましい。また、直鎖状、分枝状及び環状のうちいずれであってもよく、直鎖状又は分枝状が好ましく、直鎖状がより好ましい。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、プロピルメチレン基、エチルメチルメチレン基、ペンタメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、1-エチルトリメチレン基、n-プロピルエチレン基、n-ブチルメチレン基、ヘキサメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、1-n-プロピルトリメチレン基、n-ブチルエチレン基、n-ペンチルメチレン基、-C6H10-基等が挙げられ、中でも炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基がより好ましい。
【0080】
一般式[11-1]中のg個の繰り返し単位においては、繰り返し単位が同一でも異なっていてもよく、全て同一であるのが好ましい。また、一般式[11-1]中のg個のA13は同一でも異なっていてもよい。一般式[11-1]のgが1以上の整数である場合、A12とg個目の繰り返し単位におけるA13とが同一であるのが好ましく;A12とg個目の繰り返し単位におけるA13とが同一であり、且つ1個目からg-1個目までの繰り返し単位におけるA13は全て同一であるのがより好ましい。なお、一般式[11-1]中の繰り返し単位は、A12に隣接している側から1個目、2個目、と数えるものとし、g個目の繰り返し単位はA12から最も離れたところに位置するもの(一般式[11]におけるY11の一方と隣接しているもの)とする。
【0081】
一般式[11-1]のgとしては、0~15の整数が好ましく、0~10の整数がより好ましく、0~3の整数がさらに好ましい。
【0082】
一般式[11-1]におけるA
12、A
13及びgの組み合わせとしては、例えば下記表記載の組み合わせ1~29が挙げられる。これらの組み合わせの中でも、組み合わせ1、2、7~13、15、17~19、24及び25が好ましく、組み合わせ1、7~10、12、15、17、18及び24がより好ましい。
【0083】
一般式[11-2]中のh個の繰り返し単位においては、繰り返し単位が同一でも異なっていてもよく、全て同一であるのが好ましい。また、一般式[11-2]中のh個のR13は同一でも異なっていてもよく、全てのR13が同一であるのが好ましく、全てのR13が一般式[11]のR11と同一であるのがより好ましい。
【0084】
一般式[11-2]のA14及びA15における炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[11-1]のA12及びA13における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、中でも炭素数1~4の直鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0085】
一般式[11-2]中のh個のA15は同一でも異なっていてもよく、全てのA15が同一であるのが好ましい。また、一般式[11-2]のA14とh個目の繰り返し単位におけるA15とが同一であるのが好ましく、A14と全ての繰り返し単位におけるA15とが同一であるのがより好ましい。なお、一般式[11-2]中の繰り返し単位は、A14に隣接している側から1個目、2個目、と数えるものとし、h個目の繰り返し単位はA14から最も離れたところに位置するもの(一般式[11]におけるY11の一方と隣接しているもの)とする。
【0086】
一般式[11-2]のeとしては、1又は2が好ましい。
【0087】
一般式[11-2]におけるA
14、A
15、R
13及びhの組み合わせとしては、例えば下記表記載の組み合わせ1~12が挙げられる。これらの組み合わせの中でも、組み合わせ4~6が好ましく、組み合わせ4及び5がより好ましい。
【0088】
一般式[11-3]中のj個の繰り返し単位においては、繰り返し単位が同一でも異なっていてもよく、全て同一であるのが好ましい。また、一般式[11-3]中の2j個のR14は同一でも異なっていてもよく、全てのR14が同一であるのが好ましく、全てのR14が一般式[11]のR11と同一であるのがより好ましい。ただし、同じ繰り返し単位中に存在する2つのR14は、必ず同一である。
【0089】
一般式[11-3]のY12において、-NR15-中のR15としては、水素原子が好ましい。
【0090】
一般式[11-3]中の2j個のY12は同一でも異なっていてもよく、全てのY12が同一であるのが好ましく、全てのY12が一般式[11]のY11と同一であるのがより好ましい。ただし、同じ繰り返し単位中に存在する2つのY12は、必ず同一である。
【0091】
一般式[11-3]のA16及びA17における「鎖中にエーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基」がエーテル結合を有さない場合の具体例としては、一般式[11-1]のA12及びA13における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、中でも炭素数1~4の直鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0092】
一般式[11-3]のA16及びA17における「鎖中にエーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基」がエーテル結合を有する場合の具体例としては、-CH2-O-CH2-、-CH2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)3-、-CH2-O-(CH2)4-、-CH2-O-(CH2)5-、-(CH2)2-O-CH2-、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)2-O-(CH2)3-、-(CH2)2-O-(CH2)4-、-(CH2)3-O-CH2-、-(CH2)3-O-(CH2)2-、-(CH2)3-O-(CH2)3-、-(CH2)4-O-CH2-、-(CH2)4-O-(CH2)2-、-(CH2)5-O-CH2-が挙げられ、中でも鎖中にエーテル結合を有する炭素数2~4の直鎖状のアルキレン基が好ましく、-CH2-O-CH2-、-CH2-O-(CH2)3-がより好ましい。
【0093】
一般式[11-3]中の2j個のA16及びj個のA17は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、同じ繰り返し単位中に存在する2つのA16は、必ず同一である。また、一般式[11-3]の全てのA16とj個目の繰り返し単位におけるA17とが同一であるのが好ましい。なお、一般式[11-3]中の繰り返し単位は、-(CH2)i-に隣接している側から1個目、2個目、と数えるものとし、j個目の繰り返し単位は-(CH2)i-から最も離れたところに位置するもの(一般式[11]におけるY11の一方と隣接しているもの)とする。
【0094】
一般式[11-3]のiとしては、0~4の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0095】
一般式[11-3]のjとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0096】
一般式[11-3]における2つのA
16、A
17、2つのY
12、2つのR
14、i及びjの組み合わせとしては、例えば下記表記載の組み合わせ1~20が挙げられる。これらの組み合わせの中でも、組み合わせ1~6及び11~16が好ましく、組み合わせ1、2、11、12、13及び14がより好ましく、組み合わせ1、11及び13が特に好ましい。なお、2つのA
16における「-CH
2-O-(CH
2)
3-」は、左側末端が主鎖に結合しており、右側末端がY
12に結合しているものとする。
【0097】
一般式[11]におけるA
11、2つのY
11及び2つのR
11の組み合わせとしては、例えば下記表記載の組み合わせ1~14が挙げられる。
【0098】
一般式[12]のR16~R22における炭素数1~3のアルキレン基としては、直鎖状でも分枝状でもよく、直鎖状が好ましい。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基が好ましく、メチレン基、トリメチレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0099】
一般式[12]のR16~R22は、同一でも異なっていてもよく、R17~R19及びR20~R22がそれぞれ同一であるのが好ましく、R16~R22の全てが同一であるのが好ましい。
【0100】
一般式[12]におけるR
16~R
22の組み合わせとしては、例えば下記表記載の組み合わせ1~27が挙げられる。これらの組み合わせの中でも、組み合わせ1~3が好ましく、組み合わせ1及び3がより好ましく、組み合わせ1が特に好ましい。
【0101】
一般式[11]及び[12]で示される単量体の具体例としては、下記単量体が挙げられる。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
上記好ましい具体例の中でも、メチレンジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチレンジアクリレート、プロピレンジアクリレート、テトラメチレンジアクリレート、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、N,N'-エチレンビスアクリルアミド、N,N'-(4,7,10-トリオキシトリデカメチレン)ビスアクリルアミド、N,N',N''-トリアクリロイルジエチレントリアミン、N,N',N'',N'''-テトラアクリロイルトリエチレンテトラミン、N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド、メチレンジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチレンジメタクリレート、プロピレンジメタクリレート、テトラメチレンジメタクリレート、N,N'-メチレンビスメタクリルアミド、N,N'-エチレンビスメタクリルアミド、N,N'-(4,7,10-トリオキシトリデカメチレン)ビスメタクリルアミド、N,N',N''-トリメタクリロイルジエチレントリアミン、N,N',N'',N'''-テトラメタクリロイルトリエチレンテトラミン、N-[トリス(3-メタクリルアミドプロポキシメチル)メチル]メタクリルアミド、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルがより好ましい。尚、これらのより好ましい具体例を「(iii)の単量体のより好ましい具体例群」と呼ぶこととする。
【0107】
(iii)の単量体は、上述した具体例以外にも通常この分野で「架橋剤」として一般的に使用されるものを適宜用いることができ、例えば、国際公開第2014/065407号公報、国際公開第2015/163302号、国際公開第2018/143382号、国際公開第2018/143383号等に記載の架橋剤を用いることができる。
【0108】
第一発明に係る重合体が(iii)の単量体に由来する構造単位を含む場合、その含有量は、(i)の単量体及び(ii)の単量体に由来する構造単位の合計含有量に対して、通常0.01mol%以上5mol%以下であり、好ましくは0.05mol%以上2mol%以下であり、より好ましくは0.1mol%以上1mol%以下である。
【0109】
(i)の単量体、(ii)の単量体、及び(iii)の単量体はいずれも、市販のものでも、自体公知の方法によって適宜合成したものでもよい。
【0110】
第一発明に係る重合体は、(i)の単量体、(ii)の単量体、及び(iii)の単量体以外にも、通常この分野で一般的に使用される単量体(以下、その他の単量体と略記する場合がある。)に由来する構造単位を適宜含んでいてもよい。第一発明に係る重合体がその他の単量体に由来する構造単位を含む場合、その含有量は、(i)の単量体及び(ii)の単量体に由来する構造単位の合計含有量に対して、通常0.01mol%以上5mol%以下であり、好ましくは0.05mol%以上2mol%以下であり、より好ましくは0.1mol%以上1mol%以下である。
【0111】
また、第一発明に係る重合体は、(i)の単量体、(ii)の単量体、及び(iii)の単量体に由来する構造単位を、それぞれ2種以上含んでいてもよい。
【0112】
第一発明に係る重合体としては、(i)の単量体1種及び(ii)の単量体1~2種に由来する構造単位からなる重合体;或いは(i)の単量体1種、(ii)の単量体1~2種、及び(iii)の単量体1種に由来する構造単位からなる重合体が好ましく、(i)の単量体1種、及び(ii)の単量体のうち20℃での水に対する溶解度が1g/L以上である単量体1~2種に由来する構造単位からなる重合体;(i)の単量体1種、及び(ii)の単量体のうちSP値が11.5(cal/cm3)1/2以上である単量体1~2種に由来する構造単位からなる重合体;(i)の単量体1種、(ii)の単量体のうち20℃での水に対する溶解度が1g/L以上である単量体1~2種、及び(iii)の単量体1種に由来する構造単位からなる重合体;或いは(i)の単量体1種、(ii)の単量体のうちSP値が11.5(cal/cm3)1/2以上である単量体1~2種、及び(iii)の単量体1種に由来する構造単位からなる重合体がより好ましい。
【0113】
より具体的には、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体1種、及び一般式[1]で示される単量体1~2種に由来する構造単位からなる重合体;或いはエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体1種、一般式[1]で示される単量体1~2種、及び一般式[11]で示される単量体1種に由来する構造単位からなる重合体が好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体1種、及び一般式[2]で示される単量体1~2種に由来する構造単位からなる重合体;或いはエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体1種、一般式[2]で示される単量体1~2種、及び一般式[11]で示される単量体1種に由来する構造単位からなる重合体がより好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸1種、及び一般式[3]で示される単量体1~2種に由来する構造単位からなる重合体;或いはアクリル酸又はメタクリル酸1種、一般式[3]で示される単量体1~2種、及び一般式[11]で示される単量体1種に由来する構造単位からなる重合体がさらに好ましい。
【0114】
さらに具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸1種、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチルアクリレート又は4-ヒドロキシブチルアクリレートから選ばれる1~2種に由来する構造単位からなる重合体;或いはアクリル酸又はメタクリル酸1種、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチルアクリレート又は4-ヒドロキシブチルアクリレートから選ばれる1~2種、及び(iii)の単量体のより好ましい具体例群から選ばれる1種に由来する構造単位からなる重合体が好ましく、アクリル酸1種並びに2-ヒドロキシエチルアクリレート及び/又は4-ヒドロキシブチルアクリレートに由来する構造単位からなる重合体;或いはアクリル酸1種、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び/又は4-ヒドロキシブチルアクリレート、並びに(iii)の単量体のより好ましい具体例群から選ばれる1種に由来する構造単位からなる重合体がより好ましい。
【0115】
第一発明に係る重合体が中和されている(塩を形成している)場合、(i)の単量体に由来する構造単位中のカルボキシ基及び/又は(ii)の単量体に由来する構造単位中のスルホ基もしくはリン酸基の一部又は全部が中和されたものが好ましい。また、第一発明に係る重合体を中和する場合に用いられる中和剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等の無機塩基;アミン価が21以上である多価アミン、アンモニウム塩、脂肪族ホスフィン、芳香族ホスフィン、ホスホニウム塩、脂肪族チオール、芳香族チオール、チオール誘導体、スルホニウム塩等の有機塩基が挙げられる。具体的には例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、ビス(2-アミノエチル)アミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリエチレンイミン等のアミン価が21以上である多価アミン;テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート等のアンモニウム塩;トリメチルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;トリフェニルホスフィン等の芳香族ホスフィン;テトラエチルホスホニウムヘキサフルオロホスファート、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート等のホスホニウム塩;1-ブタンチオール等の脂肪族チオール;フェニルメタンチオール、チオフェン等の芳香族チオール; 2-ヒドロキシエチルメルカプタン等のチオール誘導体;テトラフルオロほう酸1,3-ベンゾジチオリリウム、テトラフルオロほう酸ジメチルフェナシルスルホニウム等のスルホニウム塩等が挙げられる。これらの具体例の中でも、アルカリ金属の水酸化物、アミン価が21以上である多価アミンが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリエチレンイミンがより好ましく、水酸化ナトリウム、ポリエチレンイミンが特に好ましい。中和剤は1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、1種のみ単独で用いる又は2種を併用するのが好ましい。特に、アルカリ金属の水酸化物1種のみを単独で用いる;或いはアルカリ金属の水酸化物1種と、アミン価が21以上である多価アミン1種とを併用するのが好ましい。
【0116】
なお、上記「アミン価が21以上である多価アミン」とは、アミノ基等の塩基性官能基を2個以上有する多価のアミンのうち、その構造中に占める塩基性官能基の量を示すアミン価が21以上のものである。本発明(第一発明及び第二発明)におけるアミン価とは、具体的には以下に示す計算式から求めることができる。なお、本発明(第一発明及び第二発明)における塩基性官能基とは、アミノ基、アミジノ基(アミジン構造)、グアニジノ基(グアニジン構造)、ピリジノ基(ピリジン構造)、ホスファゼノ基(ホスファゼン構造)等の塩基性を示す官能基を表す。
計算式:アミン価(meq./g)=塩基性官能基の数/分子量
(但し、高分子量体の場合には、上記分子量をモノマー単位当たりの分子量とし、上記塩基性官能基の数をモノマー単位当たりの塩基性官能基の数として計算を行うものとする。)
【0117】
第一発明に係る重合体が中和されている場合の中和度は、通常50%以上200%以下であり、好ましくは60%以上150%以下であり、より好ましくは70%以上100%以下である。なお、ここでいう中和度とは、第一発明に係る重合体に含まれているカルボキシ基、スルホ基及びリン酸基の合計モル数に対する、上記中和剤の合計モル数の比率を表すものとする。第一発明の結着剤が第一発明に係る重合体の塩を含有する場合、導電助剤の分散性がより向上し、集電体上に導電助剤をより均一に分布させることができるため、電極の電気特性をより向上させることが可能となる。
【0118】
第一発明に係る重合体は、自体公知の方法に準じて重合反応を行い、製造すればよい。具体的には例えば、所望の重合体に合わせて、(i)の単量体及び(ii)の単量体、並びに要すれば(iii)の単量体及び/又はその他の単量体を、重合開始剤の存在下で、重合反応させることにより製造し得る。
【0119】
上記重合反応における(i)の単量体及び(ii)の単量体の使用量は、第一発明に係る重合体における(i)の単量体に由来する構造単位と(ii)の単量体に由来する構造単位との含有比率(モル比)に応じて適宜設定すればよい。また、上記重合反応における(iii)の単量体及び/又はその他の単量体の使用量は、第一発明に係る重合体が(iii)の単量体及び/又はその他の単量体に由来する構造単位を含む場合の含有量に応じて適宜設定すればよい。
【0120】
上記重合反応は、自体公知の方法に準じて行えばよく、具体的には、適当な溶媒中、通常30℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下で、通常0.1時間以上24時間以下、好ましくは1時間以上10時間以下反応させればよい。
【0121】
上記重合開始剤としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されず、具体的には例えば2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、過硫酸アンモニウム(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)、過硫酸カリウム(ペルオキソ二硫酸カリウム)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が挙げられる。これらは1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該重合開始剤の使用量は、反応物の総質量に対して通常0.001mol%以上30mol%以下である。
【0122】
上記溶媒としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されず、具体的には例えば水、メタノール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トルエン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、中でも水が好ましい。これらは1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該溶媒の使用量は、反応物の総質量に対して1倍(等量)以上20倍以下である。
【0123】
上記重合反応後に得られた生成物に対し、必要に応じて、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作を行ってもよい。具体的には例えば、ろ過、洗浄、抽出、減圧濃縮、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィ-等を行ってもよい。
【0124】
第一発明に係る重合体を中和する場合、上記重合反応によって得られた第一発明に係る重合体に対して、自体公知の方法に準じて中和を行えばよい。具体的には例えば、第一発明に係る重合体が所望の中和度となる量の上記中和剤を添加して中和を行えばよい。中和を行う際に用いられる溶媒としては、上記重合反応において用いられる溶媒と同じものが挙げられる。
【0125】
第一発明に係る重合体またはその塩は、具体的には以下の如く製造される。
すなわち、モル比5:95~95:5の(i)の単量体及び(ii)の単量体と、要すれば(i)の単量体及び(ii)の単量体に由来する構造単位の含有量に対して0.01mol%以上5mol%以下の(iii)の単量体及び/又はその他の単量体の使用量とを、反応物の総質量に対して0.001mol%以上30mol%以下の2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)等の重合開始剤の存在下、反応物の総質量に対して等量以上20倍以下の水等の溶媒に、溶解又は分散させる。その後、30℃以上200℃以下で0.1時間以上24時間以下重合反応を行い、第一発明に係る重合体を製造する。また、要すれば、得られた第一発明に係る重合体が所望の中和度となる量の上記中和剤を添加し、第一発明に係る重合体の塩としてもよい。
【0126】
[バインダー溶液]
第一発明の結着剤は、溶媒に溶解された形態で、後述する第一発明のスラリー組成物や第一発明の電極に含まれていてもよい。第一発明では、結着剤を溶媒に溶解したものを「バインダー溶液」と呼び、特に第一発明の結着剤を溶媒に溶解したものを「第一発明に係るバインダー溶液」と呼ぶこととする。
【0127】
第一発明に係るバインダー溶液における溶媒としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されず、具体的には例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサン等が挙げられ、中でも水が好ましい。これらは1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、1種のみ単独で用いるのが好ましい。なお、該溶媒が水である場合には、これを「第一発明に係るバインダー水溶液」と呼んでもよい。
【0128】
第一発明に係るバインダー溶液における第一発明の結着剤の含有量(固形分の質量)は、所望する第一発明に係るバインダー溶液の濃度に合わせて適宜設定すればよく、通常1質量%以上70質量%以下であり、好ましくは5質量%以上50質量%以下である。
【0129】
第一発明に係るバインダー溶液は、第一発明の結着剤及び溶媒以外にも、通常この分野で一般的に使用される種々の添加剤を含んでいてもよい。例えば、分散剤、増粘剤、金属結着剤(例えばアミノトリアゾール等)、還元剤(例えばアスコルビン酸等)、防腐剤(例えば塩化セチルピリジニウム等)、防錆剤、防黴剤、抗菌剤、消臭剤、レベリング剤、消泡剤、ブリスター防止剤、黄変防止剤、静電防止剤、帯電調整剤、電解液分解抑制剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、チクソ化剤、凍結安定剤、pH調整剤、潤滑剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤などが挙げられる。これらは目的に応じて、1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。第一発明に係るバインダー溶液における種々の添加剤の含有量は、第一発明の結着剤の含有量に対して、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0130】
[第一発明のスラリー組成物]
第一発明のスラリー組成物は、第一発明の結着剤を含む、蓄電デバイス用の電極作製のための組成物である。より詳細には、第一発明の結着剤(又は第一発明に係るバインダー溶液)の他に、活物質及び溶媒、並びに要すれば導電助剤を含む組成物である。第一発明のスラリー組成物は、正極作製用であっても負極作製用であってもよいが、負極作製用であるのが好ましい。
【0131】
第一発明のスラリー組成物における第一発明の結着剤の含有量は、溶媒を含まない第一発明のスラリー組成物の総質量に対して、通常0.1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0132】
第一発明のスラリー組成物における活物質としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されず、具体的には例えば、炭素、シリコン、ゲルマニウム、錫、鉛、亜鉛、アルミニウム、インジウム、アンチモン、ビスマス、ナトリウム、マグネシウム、チタン、これらを元素として含む化合物(酸化物など)等が挙げられ、中でも炭素、シリコン又はシリコンを元素として含む化合物が好ましい。これらは1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
上記炭素としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛系炭素材料(黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。これらの具体例の中でも、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛が好ましい。該天然黒鉛としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛等が挙げられる。該人造黒鉛としては、塊状黒鉛、気相成長黒鉛、鱗片状黒鉛、繊維状黒鉛等が挙げられる。
【0134】
上記シリコン又はシリコンを元素として含む化合物としては、シリコンの他に、SiO、SiO2等のシリコン酸化物、金属と結合したシリコンSiM(Mは、マグネシウム、鉄、カルシウム、コバルト、ニッケル、ホウ素、銅、マンガン、銀、バナジウム、セリウム、亜鉛等の金属を表す)等が挙げられ、中でもシリコン、シリコン酸化物が好ましく、シリコンがより好ましい。また、シリコン表面の一部又は全部に炭素を被覆(コーティング)したものであってもよく、例えば、炭素コーティングされたシリコン、シリコン酸化物、金属と結合したシリコン等が挙げられ、中でも炭素コーティングされたシリコン、シリコン酸化物が好ましく、炭素コーティングされたシリコン酸化物がより好ましい。
【0135】
第一発明のスラリー組成物における活物質としては、上記炭素を1種以上及び/又は上記シリコン又はシリコンを元素として含む化合物を1種以上含有するものが好ましく、上記炭素を1種以上及び上記シリコン又はシリコンを元素として含む化合物を1種以上含有するものがより好ましい。より具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛又は膨張黒鉛から選ばれる少なくとも1種と、シリコン、シリコン酸化物、炭素コーティングされたシリコン又は炭素コーティングされたシリコン酸化物から選ばれる少なくとも1種とを混合したものを含有する活物質が挙げられ、天然黒鉛と炭素コーティングされたシリコン酸化物とを含有する活物質が好ましい。
【0136】
第一発明のスラリー組成物における活物質の平均粒子径は、使用する活物質の種類により異なるが、通常0.001μm以上100μm以下であり、好ましくは0.01μm以上50μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上30μm以下である。
【0137】
第一発明のスラリー組成物における活物質の含有量は、溶媒を含まない第一発明のスラリー組成物の総質量に対して、通常30質量%以上99.9質量%以下であり、好ましくは40質量%以上99質量%以下であり、好ましくは50質量%以上98質量%以下である。
【0138】
第一発明のスラリー組成物における導電助剤は、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されず、具体的には例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等のナノカーボンなどが挙げられ、中でもアセチレンブラック、ケッチェンブラックが好ましく、アセチレンブラックがより好ましい。これらは1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
第一発明のスラリー組成物における導電助剤の平均粒子径は、使用する導電助剤の種類により異なるが、通常0.001μm以上50μm以下であり、好ましくは0.01μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.02μm以上1μm以下である。
【0140】
第一発明のスラリー組成物における導電助剤の含有量は、溶媒を含まない第一発明のスラリー組成物の総質量に対して、通常0.1質量%以上40質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上30質量%以下であり、好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
【0141】
第一発明のスラリー組成物における溶媒としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されず、具体的には例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサン等が挙げられ、中でも水が好ましい。これらは1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、1種のみ単独で用いるのが好ましい。また、第一発明の結着剤がバインダー溶液の形態で第一発明のスラリー組成物に含まれている場合、第一発明のスラリー組成物における溶媒は、第一発明に係るバインダー溶液における溶媒と同一であるのが好ましい。
【0142】
第一発明のスラリー組成物は、第一発明の結着剤、活物質、導電助剤及び溶媒以外にも、通常この分野で一般的に使用される支持塩、添加剤等を含んでいてもよい。
該支持塩としては、例えばLi(C2F5SO2)2N(LiBETI)、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3等が挙げられる。該添加剤としては、分散剤、増粘剤、金属結着剤、還元剤、防腐剤、防錆剤、防黴剤、抗菌剤、消臭剤、レベリング剤、消泡剤、ブリスター防止剤、黄変防止剤、静電防止剤、帯電調整剤、電解液分解抑制剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、チクソ化剤、凍結安定剤、pH調整剤、潤滑剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤などが挙げられる。これらは目的に応じて、1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該支持塩及び該添加剤の含有量は、通常この分野で用いられる量に準じて適宜設定すればよい。
【0143】
第一発明のスラリー組成物は自体公知の方法に準じて調製すればよく、具体的には例えば、所望のスラリー組成物に合わせて、第一発明の結着剤、活物質、並びに要すれば導電助剤、支持塩及び/又は添加剤を、溶媒中で上記含有量となるよう適宜混合することにより調製し得る。
【0144】
[第一発明の電極]
第一発明の電極は、第一発明のスラリー組成物からなる、蓄電デバイス用の電極である。より詳細には、第一発明の結着剤(又は第一発明に係るバインダー溶液)、活物質、溶媒、並びに要すれば導電助剤、支持塩及び/又は添加剤を含む第一発明のスラリー組成物由来の電極合材層と、集電体とを有するものである。第一発明の電極は、負極としても正極としても用いることができるが、正極として用いるのが好ましい。
【0145】
第一発明の電極における集電体は、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されず、具体的には例えば、白金、銅、ステンレス(SUS)、ハステロイ、アルミニウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、インコネル、モリブデン、グラファイト、カーボン等の導電性の材料から構成され、板、箔(シート、ペーパー)、メッシュ、エキスパンドグリッド(エキスパンドメタル)、パンチドメタル等の形状を有する集電体が挙げられる。該集電体のメッシュの目開き、線径、メッシュ数等は特に制限されず、従来公知のものが使用できる。該集電体の厚さは、通常1μm以上300μm以下であり、好ましくは5μm以上30μm以下である。該集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられ、小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
【0146】
第一発明の電極は自体公知の方法に準じて製造すればよく、具体的には例えば、第一発明のスラリー組成物を集電体上に塗布又は圧着し、これを乾燥させて集電体上に電極合材層を形成させることで作製しうる。該電極合材層の厚さは、通常1μm以上1000μm以下であり、好ましくは1μm以上500μm以下であり、より好ましくは1μm以上300μm以下である。
【0147】
第一発明の電極の製造において、第一発明のスラリー組成物の使用量は、乾燥後に電極合材層の厚さが上記範囲になるよう適宜設定すればよい。
【0148】
第一発明の電極の製造において、第一発明のスラリー組成物の集電体上への塗布又は圧着は、自体公知の方法に準じてなされればよく、具体的な塗布・圧着方法としては例えば、自走型コータ、インクジェット法、ドクターブレード法、スプレー法、ダイコート法、またはこれらの組み合わせを用いることができる。これらの具体例の中でも、薄い層を形成できるドクターブレード法、インクジェット法、ダイコート法が好ましく、ドクターブレード法、ダイコート法がより好ましい。
【0149】
第一発明の電極の製造において、第一発明のスラリー組成物の乾燥は、自体公知の方法に準じてなされればよく、通常加熱処理によりなされる。加熱時の乾燥条件(真空の要否、乾燥時間、乾燥温度)は、第一発明のスラリー組成物の塗布量や第一発明のスラリー組成物中の溶媒の揮発速度に応じて適宜設定すればよい。具体的な乾燥方法としては例えば、空気中又は真空中で、通常50℃以上400℃以下、好ましくは70℃以上200℃以下で、通常1時間以上20時間以下、好ましくは3時間以上15時間以下乾燥させればよい。また、乾燥条件を変えて2回以上加熱処理を行ってもよい。
【0150】
第一発明の電極の製造において、要すれば上記乾燥の前後にプレス処理を行ってもよい。該プレス処理は自体公知の方法に準じてなされればよく、具体的なプレス処理の方法としては例えば、カレンダーロール法、平板プレス等が挙げられ、カレンダーロール法が好ましい。
【0151】
[第一発明の蓄電デバイス]
第一発明の蓄電デバイスは、第一発明の電極を有し、化学的、物理的または物理化学的に電気を蓄えることのできる装置または素子等のことを指し、具体的には例えば、マグネシウムイオンなどの多価イオン二次電池;リチウムイオン二次電池;ナトリウムイオン二次電池;カリウムイオン二次電池;ニッケル水素蓄電池;ニッケルカドミウム蓄電池;鉛蓄電池等の二次電池(蓄電池)、リチウムイオンキャパシタ等の電気二重層キャパシタ(電気二重層コンデンサ)など、充放電可能なデバイスが挙げられる。これらの具体例の中でも、リチウムイオンキャパシタやリチウムイオン二次電池等のリチウムイオンを用いた蓄電デバイスが好ましく、リチウムイオン二次電池がより好ましい。
【0152】
第一発明の蓄電デバイスの構成は、通常この分野で用いられる一般的な蓄電デバイスと同様の構成でよく、具体的には例えば、正極及び負極をセパレータを介して対向配置し、要すれば電解液を含浸させたものである。第一発明の蓄電デバイスは、該正極及び/又は負極として第一発明の電極を備えているものであればよく、第一発明の電極以外に第一発明の蓄電デバイスを構成する部材としては、通常この分野で一般的に使用される部材を適宜採用することができる。
【0153】
第一発明の蓄電デバイスにおけるセパレータとしては、正極と負極を電気的に絶縁する一方でイオンが透過可能なものであればよく、例えば、ガラス繊維(グラスファイバー)、多孔性ポリオレフィン等の微多孔性高分子などが挙げられる。該多孔性ポリオレフィンの具体例としては、例えば、多孔性ポリエチレン、多孔性ポリプロピレン、多孔性ポリエチレンと多孔性ポリプロピレンとを重ね合わせて複層としたもの等が挙げられる。
【0154】
第一発明の蓄電デバイスにおける電解液としては、電解質、有機溶媒及び添加剤を含む非水電解液が好ましい。該電解質は所望の蓄電デバイスによって異なるが、例えばリチウムイオン二次電池の場合、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiClO4、LiBrO4、LiIO4、LiCH3SO3、LiCF3SO3等のリチウム塩が挙げられ、中でもLiPF6が好ましい。これらは1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。非水電解液中の電解質の含有量は、通常0.05mol/L以上15mol/L以下であり、好ましくは0.1mol/L以上5mol/L以下である。
【0155】
上記非水電解液中の有機溶媒としては、具体的には例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン(ラクトン類)、スルホラン等が挙げられ、中でもエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネートが好ましい。これらは1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
上記非水電解液中の添加剤としては、具体的には例えば、ビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、フルオロメチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、ブチルビニレンカーボンネード、ジプロピルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、4,5-ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、ジアリルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1,3-プロパンスルトン、ブタンスルトン等が挙げられ、中でもビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートが好ましい。これらは1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。非水電解液中の添加剤の含有量は、通常0.05質量%以上15質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。
【0157】
第一発明の蓄電デバイスにおける非水電解液は、電解質及び有機溶媒の他に、通常この分野で用いられる被膜形成剤、過充電防止剤、脱酸素剤、脱水剤、難燃剤等の添加剤、及びクラウンエーテル等の配位性の添加剤を含んでいてもよい。
【0158】
第一発明の蓄電デバイスは、その形状に特に制限はなく、内部形状として捲回型、積層型等、外部形状としてコイン型、ラミネート型(パウチ型)、角型、円筒型等、通常この分野で一般的に使用される形状を適宜採用することができる。
【0159】
[第二発明の結着剤]
第二発明に係る結着剤は、(i)エチレン性不飽和カルボン酸単量体、並びに(ii)ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、アセチル基、スルホ基、リン酸基及びシアノ基から選ばれる基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含み、且つ、モノアミン、アミン価が21未満である多価アミン及び/又はオニウムヒドロキシドで中和された重合体の塩(以下、第二発明に係る重合体と略記する場合がある。)を含有するものである。
【0160】
第二発明に係る重合体における(i)の単量体及び(ii)の単量体の具体例としては、第一発明に係る重合体における(i)の単量体及び(ii)の単量体の具体例とそれぞれ同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。また、第二発明に係る重合体における、(i)の単量体に由来する構造単位と(ii)の単量体に由来する構造単位との含有比率(モル比)は、第一発明に係る重合体における含有比率と同じである。
【0161】
第二発明に係る重合体は、(i)の単量体及び(ii)の単量体の他に、さらに(iii)重合性不飽和基を2つ以上有する単量体に由来する構造単位を含むものであってもよい。第二発明に係る重合体における(iii)の単量体の具体例としては、第一発明に係る重合体における(iii)の単量体の具体例と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。また、第二発明に係る重合体が(iii)の単量体に由来する構造単位を含む場合、その含有量は、第一発明に係る重合体が(iii)の単量体に由来する構造単位を含む場合の(iii)の単量体の含有量と同じである。
【0162】
第二発明に係る重合体は、(i)の単量体、(ii)の単量体、及び(iii)の単量体以外にも、通常この分野で一般的に使用される単量体に由来する構造単位を適宜含んでいてもよい。当該単量体は、第一発明に係る重合体におけるその他の単量体と同じであり、その含有量も、第一発明に係る重合体がその他の単量体に由来する構造単位を含む場合のその他の単量体の含有量と同じである。
【0163】
また、第二発明に係る重合体は、(i)の単量体、(ii)の単量体、及び(iii)の単量体に由来する構造単位を、それぞれ2種以上含んでいてもよい。
【0164】
第二発明に係る重合体の具体例としては、第一発明に係る重合体の具体例と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0165】
第二発明に係る重合体は、モノアミン、アミン価が21未満である多価アミン及び/又はオニウムヒドロキシド(以下、第二発明に係る中和剤と略記する場合がある。)で中和された重合体の塩である。第二発明に係る重合体は、第二発明に係る中和剤により、(i)の単量体に由来する構造単位中のカルボキシ基及び/又は(ii)の単量体に由来する構造単位中のスルホ基もしくはリン酸基の一部又は全部が中和されたものが好ましい。
【0166】
第二発明に係る中和剤におけるモノアミンとは、塩基性官能基を1個のみ有する単価のアミンである。具体的には例えば、tert-ブチルアミン、アミルアミン(ペンチルアミン)、オクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、アニリン、モノエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、ビス(2-シアノエチル)アミン、トリス(2-シアノエチル)アミン、3-アミノプロピオニトリル、3-メトキシプロピルアミン、3-アミノトリアゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を1個有するモノアミン又はその誘導体;ジアザビシクロノネン等のアミジノ基(アミジン構造)を1個有するモノアミン又はその誘導体;テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロウンデセン等のグアニジノ基(グアニジン構造)を1個有するモノアミン又はその誘導体;ピリジン等のピリジノ基(ピリジン構造)を1個有するモノアミン又はその誘導体;ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン等のホスファゼノ基(ホスファゼン構造)を1個有するモノアミン又はその誘導体等が挙げられる。これらの具体例の中でも、モノエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-アミノトリアゾールが好ましく、3-メトキシプロピルアミン、3-アミノトリアゾールが特に好ましい。
【0167】
第二発明に係る中和剤におけるアミン価が21未満である多価アミンとは、塩基性官能基を2個以上有する多価のアミンのうち、その構造中に占める塩基性官能基の量を示すアミン価が21未満のものである。当該多価アミンの中でも低分子のものが好ましく、具体的には当該多価アミンの分子量が600以下のものが好ましい。具体的には例えば、3,5-ジアミノトリアゾール、4-ジメチルアミノピリジン、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(JEFFAMINE(登録商標) D-400)、O,O’-ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコ-ブロック-ポリエチレングリコール-ブロック-ポリプロピレングリコール(JEFFAMINE(登録商標) ED-600)等が挙げられる。これらの具体例の中でも、3,5-ジアミノトリアゾール、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、O,O’-ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコ-ブロック-ポリエチレングリコール-ブロック-ポリプロピレングリコールが好ましく、3,5-ジアミノトリアゾール、O,O’-ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコ-ブロック-ポリエチレングリコール-ブロック-ポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0168】
第二発明に係る中和剤におけるオニウムヒドロキシドとしては、置換基を有していてもよいアンモニウムヒドロキシド、ホスホニウムヒドロキシド、スルホニウムヒドロキシド等が挙げられる。具体的には例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド;テトラブチルホスホニウムヒドロキシド等のホスホニウムヒドロキシド;トリメチルスルホニウムヒドロキシド等のスルホニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらの具体例の中でも、アンモニウムヒドロキシドが好ましく、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドが特に好ましい。
【0169】
第二発明に係る中和剤の具体例の中でも、3-メトキシプロピルアミン、3-アミノトリアゾール、3,5-ジアミノトリアゾール、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(JEFFAMINE(登録商標) D-400)、O,O’-ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコ-ブロック-ポリエチレングリコール-ブロック-ポリプロピレングリコール(JEFFAMINE(登録商標) ED-600)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく、3-メトキシプロピルアミン、3-アミノトリアゾール、3,5-ジアミノトリアゾール、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(JEFFAMINE(登録商標) D-400)、O,O’-ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコ-ブロック-ポリエチレングリコール-ブロック-ポリプロピレングリコール(JEFFAMINE(登録商標) ED-600)、がより好ましく、3,5-ジアミノトリアゾール、O,O’-ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコ-ブロック-ポリエチレングリコール-ブロック-ポリプロピレングリコール(JEFFAMINE(登録商標) ED-600)が特に好ましい。第二発明に係る中和剤は1種のみ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、1種のみ単独で用いるのが好ましい。
【0170】
また、第二発明に係る中和剤の他にも、従来公知の中和剤を併用しても良い。併用する中和剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等の無機塩基が挙げられる。具体的には例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩等が挙げられる。これらの具体例の中でも、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。併用する中和剤は、1種のみを第二発明に係る中和剤と併用しても、2種以上を組み合わせて第二発明に係る中和剤と併用してもよく、1種のみを第二発明に係る中和剤と併用するのが好ましい。特に、アルカリ金属の水酸化物1種のみを第二発明に係る中和剤と併用するのが好ましい。
【0171】
第二発明に係る重合体の中和度は、通常50%以上300%以下であり、好ましくは60%以上200%以下であり、より好ましくは70%以上150%以下である。なお、ここでいう中和度とは、第二発明に係る重合体に含まれているカルボキシ基、スルホ基及びリン酸基の合計モル数に対する、第二発明に係る中和剤の合計モル数の比率を表すものとする。第二発明の結着剤は、第二発明に係る重合体を含有することにより製造する電極の柔軟性が向上し、捲回性に優れた電極の製造が可能となる。
【0172】
第二発明に係る重合体は、自体公知の方法に準じて重合反応及び中和を行い、製造すればよい。具体的には例えば、第一発明に係る重合体と同様の重合反応を行い、当該重合反応によって得られた重合体に対して、所望の中和度となる量の第二発明に係る中和剤を添加して中和を行えばよい。中和を行う際に用いられる溶媒としては、第一発明に係る重合体の重合反応において用いられる溶媒と同じものが挙げられる。
【0173】
[バインダー溶液]
第二発明の結着剤は、溶媒に溶解された形態で、後述する第二発明のスラリー組成物や第二発明の電極に含まれていてもよい。第二発明では、結着剤を溶媒に溶解したものを「バインダー溶液」と呼び、特に第二発明の結着剤を溶媒に溶解したものを「第二発明に係るバインダー溶液」と呼ぶこととする。
【0174】
第二発明に係るバインダー溶液における溶媒としては、第二発明に係るバインダー溶液における溶媒と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。なお、該溶媒が水である場合には、これを「第二発明に係るバインダー水溶液」と呼んでもよい。
【0175】
第二発明に係るバインダー溶液における第二発明の結着剤の含有量(固形分の質量)は、所望する第二発明に係るバインダー溶液の濃度に合わせて適宜設定すればよく、通常1質量%以上70質量%以下であり、好ましくは5質量%以上50質量%以下である。
【0176】
第二発明に係るバインダー溶液は、第二発明の結着剤及び溶媒以外にも、通常この分野で一般的に使用される種々の添加剤を含んでいてもよい。該添加剤は、第一発明に係るバインダー溶液における種々の添加剤と同じものが挙げられ、その含有量も、第一発明に係るバインダー溶液が種々の添加剤を含む場合の添加剤の含有量と同じである。
【0177】
[第二発明のスラリー組成物]
第二発明のスラリー組成物は、第二発明の結着剤を含む、蓄電デバイス用の電極作製のための組成物である。より詳細には、第二発明の結着剤(又は第二発明に係るバインダー溶液)の他に、活物質及び溶媒、並びに要すれば導電助剤を含む組成物である。第二発明のスラリー組成物は、正極作製用であっても負極作製用であってもよいが、負極作製用であるのが好ましい。
【0178】
第二発明のスラリー組成物における第二発明の結着剤の含有量は、溶媒を含まない第二発明のスラリー組成物の総質量に対して、通常0.1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0179】
第二発明のスラリー組成物における活物質、導電助剤及び溶媒としては、第一発明のスラリー組成物における活物質、導電助剤及び溶媒と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。また、第二発明のスラリー組成物における活物質、導電助剤及び溶媒の含有量は、第一発明のスラリー組成物における活物質、導電助剤及び溶媒の含有量と同じである。
【0180】
第二発明のスラリー組成物は、第二発明の結着剤、活物質、導電助剤及び溶媒以外にも、通常この分野で一般的に使用される支持塩、添加剤等を含んでいてもよい。該支持塩及び該添加剤は、第一発明のスラリー組成物における支持塩及び添加剤と同じものが挙げられ、その含有量は、通常この分野で用いられる量に準じて適宜設定すればよい。
【0181】
第二発明のスラリー組成物は自体公知の方法に準じて調製すればよく、具体的には例えば、所望のスラリー組成物に合わせて、第二発明の結着剤、活物質、並びに要すれば導電助剤、支持塩及び/又は添加剤を、溶媒中で上記含有量となるよう適宜混合することにより調製し得る。
【0182】
[第二発明の電極]
第二発明の電極は、第二発明のスラリー組成物からなる、蓄電デバイス用の電極である。より詳細には、第二発明の結着剤(又は第二発明に係るバインダー溶液)、活物質、溶媒、並びに要すれば導電助剤、支持塩及び/又は添加剤を含む第二発明のスラリー組成物由来の電極合材層と、集電体とを有するものである。第二発明の電極は、負極としても正極としても用いることができるが、正極として用いるのが好ましい。
【0183】
第二発明の電極における集電体としては、第一発明の電極における集電体と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0184】
第二発明の電極は、第一発明の電極と同様の製造方法で製造すればよい。
【0185】
第二発明の電極の製造において、第二発明のスラリー組成物の使用量は、乾燥後に電極合材層の厚さが所望の厚さになるよう適宜設定すればよい。
【0186】
第二発明の電極の製造において、第二発明のスラリー組成物の集電体上への塗布又は圧着は、第一発明のスラリー組成物の集電体上への塗布又は圧着と同様に行えばよい。
【0187】
第二発明の電極の製造において、第二発明のスラリー組成物の乾燥は、第一発明のスラリー組成物の乾燥と同様に行えばよい。
【0188】
第二発明の電極の製造において、要すれば上記乾燥の前後にプレス処理を行ってもよい。該プレス処理は、第一発明の電極の製造におけるプレス処理と同様に行えばよい。
【0189】
[第二発明の蓄電デバイス]
第二発明の蓄電デバイスは、第二発明の電極を有し、化学的、物理的または物理化学的に電気を蓄えることのできる装置または素子等のことを指す。具体的には例えば、第一発明の蓄電デバイスと同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0190】
第二発明の蓄電デバイスの構成は、第一発明の蓄電デバイスと同じものが挙げられる。また、第二発明の電極以外に第二発明の蓄電デバイスを構成する部材としては、第一発明の電極以外に第一発明の蓄電デバイスを構成する部材と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0191】
第二発明の蓄電デバイスは、その形状に特に制限はなく、内部形状として捲回型、積層型等、外部形状としてコイン型、ラミネート型(パウチ型)、角型、円筒型等、通常この分野で一般的に使用される形状を適宜採用することができる。
【0192】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明(第一発明及び第二発明)を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0193】
(実施例1)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水435質量部、アクリル酸22質量部(0.31mol)(東亞合成(株)製)、2-ヒドロキシエチルアクリレート22質量部(0.19mol)(大阪有機化学工業(株)製)、及びN,N-メチレンビスアクリルアミド0.21質量部(0.0014mol)(富士フイルム和光純薬(株)製)を入れ、窒素気流下で内温が77℃になるまで加熱した。次いで、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物0.34質量部(商品名:VA-057、富士フイルム和光純薬(株)製)を加え、得られた溶液を77℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液20質量部(東亞合成(株)製)を加えて、バインダー水溶液1(固形分10%)を得た。
【0194】
(実施例2)
イオン交換水を435質量部の代わりに461質量部、アクリル酸を22質量部の代わりに5.0質量部(0.069mol)、2-ヒドロキシエチルアクリレートを22質量部の代わりに45質量部(0.39mol)、N,N-メチレンビスアクリルアミドを0.21質量部の代わりに0.20質量部(0.0013mol)、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物を0.34質量部の代わりに0.31質量部、48%水酸化ナトリウム水溶液を20質量部の代わりに4.6質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法によりバインダー水溶液2(固形分10%)を得た。
【0195】
(実施例3)
イオン交換水を435質量部の代わりに521質量部、アクリル酸を22質量部の代わりに11質量部(0.15mol)、2-ヒドロキシエチルアクリレートを22質量部の代わりに44質量部(0.38mol)、N,N-メチレンビスアクリルアミドを0.21質量部の代わりに0.27質量部(0.0018mol)、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物を0.34質量部の代わりに0.42質量部、48%水酸化ナトリウム水溶液を20質量部の代わりに4.9質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法によりバインダー水溶液3(固形分10%)を得た。
【0196】
(実施例4)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水460質量部、アクリル酸36質量部(0.50mol)、4-ヒドロキシブチルアクリレート9質量部(0.11mol)(大阪有機化学工業(株)製)、及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.20質量部(0.00078mol)(富士フイルム和光純薬(株)製)を入れ、窒素気流下で内温が77℃になるまで加熱した。次いで、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物0.084質量部を加え、得られた溶液を77℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液32質量部(東亞合成(株)製)を加えて、バインダー水溶液4(固形分10%)を得た。
【0197】
(実施例5)
イオン交換水を435質量部の代わりに400質量部、アクリル酸を22質量部の代わりに5.0質量部(0.069mol)、2-ヒドロキシエチルアクリレートを22質量部の代わりに45質量部(0.39mol)、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物を0.34質量部の代わりに0.38質量部、48%水酸化ナトリウム水溶液を20質量部の代わりに4.6質量部用い、且つN,N-メチレンビスアクリルアミドを使用しない以外は、実施例1と同様の方法によりバインダー水溶液5(固形分10%)を得た。
【0198】
(実施例6)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水720質量部、アクリル酸9.0質量部(0.12mol)、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート81質量部(0.70mol)を入れ、窒素気流下で内温が77℃になるまで加熱した。次いで、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物0.69質量部を加え、得られた溶液を77℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液7.3質量部及びポリエチレンイミン水溶液0.43質量部(分子量 約10,000、富士フイルム和光純薬(株)製)を加えて、バインダー水溶液6(固形分11%)を得た。
【0199】
(実施例7)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水350質量部、アクリル酸5.0質量部(0.069mol)、2-ヒドロキシエチルアクリレート40質量部(0.34mol)、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート5.0質量部(0.035mol)を入れ、窒素気流下で内温が77℃になるまで加熱した。次いで、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物0.38質量部を加え、得られた溶液を77℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液4.5質量部を加えて、バインダー水溶液7(固形分11%)を得た。
【0200】
(実施例8)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水320質量部、アクリル酸4.0質量部(0.056mol)、2-ヒドロキシエチルアクリレート32質量部(0.28mol)、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート4.0質量部(0.028mol)を入れ、窒素気流下で内温が77℃になるまで加熱した。次いで、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物0.31質量部を加え、得られた溶液を77℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液4.5質量部及びポリエチレンイミン水溶液0.19質量部(分子量 約10,000)を加えて、バインダー水溶液8(固形分11%)を得た。
【0201】
(比較例1)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水420質量部、アクリル酸40質量部(0.59mol)、及びN,N-メチレンビスアクリルアミド0.24質量部(0.0016mol)を入れ、窒素気流下で内温が77℃になるまで加熱した。次いで、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物0.30質量部を加え、得られた溶液を77℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液37質量部を加えて、バインダー水溶液101(固形分10%)を得た。
【0202】
(比較例2)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた200mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水135質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート15質量部(0.13mol)を入れ、窒素気流下で内温が75℃になるまで加熱した。次いで、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物0.054質量部を加え、得られた溶液を75℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、バインダー水溶液102(固形分10%)を得た。
【0203】
(比較例3)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水575質量部、アクリル酸45質量部(0.62mol)、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート11質量部(0.056mol)(商品名:ライトアクリレートP-1A(N)、共栄社化学(株)製)、及びジエチレングリコールジアリルエーテル0.18質量部(0.00097mol)(富士フイルム和光純薬(株)製)を入れ、窒素気流下で内温が77℃になるまで加熱した。次いで、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物0.10質量部を加え、得られた溶液を77℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液41質量部を加えて、バインダー水溶液103(固形分10%)を得た。
【0204】
実施例1~8で得られたバインダー水溶液1~8、及び比較例1~3で得られたバインダー水溶液101~103について、各バインダー水溶液中の結着剤における「(i)の単量体に該当する結着剤構成成分」、「(ii)の単量体に該当する結着剤構成成分」、「(i)の単量体に由来する構造単位と(ii)の単量体に由来する構造単位との含有比率(モル比)」、「(iii)の単量体に該当する結着剤構成成分」及び「(i)の単量体及び(ii)の単量体に由来する構造単位の合計含有量に対する(iii)の単量体に由来する構造単位の含有量(mol%)」を、表1に示す。また、各バインダー水溶液中の結着剤に対する「中和剤の構成成分」及び「当該中和剤による中和度(%)」も、表1に示す。
【0205】
【0206】
(実験例1)
(1)サンプル調製
導電助剤としてアセチレンブラック0.92質量部(商品名:デンカブラック(登録商標)粉状品、平均粒径:35nm、比表面積:68m2/g、デンカ(株)製)と、実施例1で得られたバインダー水溶液1(固形分10%)1.0質量部と、溶媒として水18.1質量部とを、自公転式ミキサー(製品名:あわとり練太郎、型式ARE-310、(株)シンキー製)を用いて混合攪拌した。得られた導電助剤及び結着剤の水分散液を測定用スラリーと呼ぶ。
【0207】
(2)損失正接tanδの測定方法
得られた測定用スラリーをサンプル台にセットし、パラレルプレート(PP50)で測定用スラリーを厚さ1mmに調整したのち、レオメーター(製品名:MCR 102、Anton Paar社製)を用いて測定温度25℃、周波数1Hz、ひずみ量10-2~103%の範囲でひずみ分散測定を行った。得られた貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’の値から、測定用スラリーの線形領域での損失正接tanδ(損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’)を算出した。
【0208】
(実験例2~8)
バインダー水溶液1の代わりに、実施例2~8で得られたバインダー水溶液2~8をそれぞれ用いた以外は、実験例1と同様にして測定用スラリーを作製し、損失正接tanδを算出した。
【0209】
(比較実験例1~3)
バインダー水溶液1の代わりに、比較例1~3で得られたバインダー水溶液101~103をそれぞれ用いた以外は、実験例1と同様にして測定用スラリーを作製し、損失正接tanδを算出した。
【0210】
(実験例9)
(1)スラリー組成物の作製
炭素コーティングされたSiO粉末2.1g(粒子サイズ:5μm、大阪チタニウム社製)、天然黒鉛5.0g(粒子サイズ:20μm、日立化成工業社製)、アセチレンブラック0.50g(商品名:デンカブラック(登録商標)粉状品、デンカ(株)製)、及び実施例1で得られたバインダー水溶液1(固形分10%)4.0gを計りとり、さらに水8.6gを加えて、自公転式ミキサー(製品名あわとり練太郎、型式ARE-310、(株)シンキー製)を用いて回転速度2000rpmで30分混合攪拌した。得られた混合物をスラリー組成物とした。
【0211】
(2)リチウム二次電池用電極の製造
(1)で得られたスラリー組成物を、ドクターブレードを用いて銅集電体上に厚さ75μmとなるように塗布した。その後、空気中にて80℃で一次乾燥し、次いで乾燥後の電極をロールプレス機にて体積密度1.5g/cm3になるようにプレスした。プレス後の電極を真空下にて150℃で12時間乾燥した。
【0212】
(3)コイン型電池の製造
コイン型電池を、アルゴンで満たしたグローブボックス中で製造した。ここでは、(2)で得られた電極、リチウム箔電極、1MのLiPF6を含む炭酸エチレン(EC)/炭酸ジメチル(DMC)(体積比1:1)にビニレンカーボネート(VC)を2質量%添加した溶液、及びセパレータからなるコイン型電池を組み立てた。
【0213】
(4)充放電試験
(3)で製造したコイン型電池を用いて、下記条件で充放電試験を行った。
・対極:リチウム箔
・電解液:1M LiPF6 EC/DMC混合溶液(体積比1:1)+VC 2質量%
・測定装置:ABE1024-5V 0.1A-4充放電試験装置(エレクトロフィールド社製)
・充放電条件
初回サイクル
充電 定電流定電圧 0.1C 0.02V 15時間 終止
放電 定電流 0.1C 1.5V 終止
2サイクル目以降
充電 定電流定電圧 0.5C 0.02V 3時間 終止
放電 定電流 0.5C 1.5V 終止
初回充放電及び20サイクル後の負極((2)で得られた電極)の放電容量の値から、下記式を用いて20サイクル後の容量維持率(%)を算出した。
容量維持率(%)=20サイクル後の放電容量÷初回の放電容量×100
【0214】
(実験例10~16)
バインダー水溶液1の代わりに、実施例2~8で得られたバインダー水溶液2~8をそれぞれ用いた以外は、実験例9と同様にしてコイン型電池を製造し、充放電試験にて20サイクル後の容量維持率(%)を算出した。
【0215】
(比較実験例4~6)
バインダー水溶液1の代わりに、比較例1~3で得られたバインダー水溶液101~103をそれぞれ用いた以外は、実験例9と同様にしてコイン型電池を製造し、充放電試験にて20サイクル後の容量維持率(%)を算出した。
【0216】
実験例1~8及び比較実験例1~3で得られたtanδ、並びに実験例9~16及び比較実験例4~6で得られた容量維持率を、表2に示す。
【0217】
【0218】
表2より、実施例1~8で得られたバインダー水溶液1~8は、測定用スラリーのtanδが1より大きい値を示し、充放電試験における容量維持率が80%以上となった。これは、第一発明における測定条件下でtanδ>1となる結着剤が導電助剤の分散性に優れていたため、この結着剤を用いた電池は充放電を20サイクル行った後も良好な電池特性を維持することができたと考えられる。
一方、比較例1~3で得られたバインダー水溶液101~103は、測定用スラリーのtanδが1以下となり、充放電試験における容量維持率が80%未満となった。これは、第一発明における測定条件下でtanδ≦1となる結着剤では導電助剤の分散性が不十分であり、この結着剤を用いた電池では電子を十分に伝達することができなかったためと考えられる。
【0219】
(実施例9)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水280質量部、アクリル酸4質量部(0.06mol)(東亞合成(株)製)、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート36質量部(0.76mol)(大阪有機化学工業(株)製)を入れ、窒素気流下で内温が77℃になるまで加熱した。次いで、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物0.31質量部(商品名:VA-057、富士フイルム和光純薬(株)製)を加え、得られた溶液を77℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、ペンチルアミン4.6質量部(富士フイルム和光純薬(株)製)にイオン交換水40質量部を加えた水溶液を滴下、バインダー水溶液9(固形分14%)を得た。
【0220】
(実施例10~34)
ペンチルアミン4.6質量部の代わりに、下記表3に記載のアミンをそれぞれ用いた以外は、実施例9と同様にしてバインダー水溶液10~34を得た。
【0221】
【0222】
(実施例35)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水320質量部、アクリル酸20質量部(0.28mol)(東亞合成(株)製)、2-ヒドロキシエチルアクリレート20質量部(0.43mol)(大阪有機化学工業(株)製)、及びN,N-メチレンビスアクリルアミド0.19質量部(0.0013mol)(富士フイルム和光純薬(株)製)を入れ、窒素気流下で内温が77℃になるまで加熱した。次いで、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物0.31質量部(商品名:VA-057、富士フイルム和光純薬(株)製)を加え、得られた溶液を77℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液18.5質量部(東亞合成(株)製)にイオン交換水40質量部を加えた水溶液を滴下、ペンチルアミン3.6質量部(富士フイルム和光純薬(株)製)にイオン交換水40質量部を加えた水溶液を滴下、バインダー水溶液35(固形分11%)を得た。
【0223】
(実施例36~39)
ペンチルアミン3.6質量部の代わりに、下記表4に記載のアミンをそれぞれ用いた以外は、実施例35と同様にしてバインダー水溶液36~39を得た。
【0224】
【0225】
(実験例17)
(1)スラリー組成物の作製及びリチウム二次電池用電極の製造
バインダー水溶液1の代わりに、実施例9で得られたバインダー水溶液9を用いた以外は、実験例9の(1)スラリー組成物の作製及び(2)リチウム二次電池用電極の製造と同様にして、リチウム二次電池用電極を製造した。
【0226】
(2)耐屈曲性試験
(1)で製造した電極を10 mm×100 mmの大きさに切り出し、マンドレル試験機(BEVS1603 円筒曲げテスター)にセットして、電極を巻き付けるマンドレル棒の径を32 mmから徐々に小さくして行き、電極にクラックが生じる径(マンドレル径)を計測した。マンドレル径が2 mm~6 mmの場合をA、7 mm~9 mmの場合をB、10 mm~12 mmの場合をC、13 mm以上の場合をDとして評価した。
【0227】
(3)コイン型電池の製造
コイン型電池を、アルゴンで満たしたグローブボックス中で製造した。ここでは、(1)で得られた電極、リチウム箔電極、1MのLiPF6を含む炭酸エチレン(EC)/炭酸ジメチル(DMC)(体積比1:1)にビニレンカーボネート(VC)を2質量%添加した溶液、及びセパレータからなるコイン型電池を組み立てた。
【0228】
(4)充放電試験
(3)で製造したコイン型電池を用いて、実験例9の(4)充放電試験に記載の条件と同一の条件で充放電試験を行った。
【0229】
(実験例18~42)
バインダー水溶液9の代わりに、実施例10~34で得られたバインダー水溶液10~34をそれぞれ用いた以外は、実験例17と同様にして耐屈曲性試験及び充放電試験を実施した。
【0230】
実験例17~42における耐屈曲性試験で得られた評価結果、並びに実験例17~42における充放電試験で得られた容量維持率を、表4に示す。
【0231】
【0232】
(実験例43~47)
バインダー水溶液9の代わりに、実施例35~39で得られたバインダー水溶液35~39をそれぞれ用いた以外は、実験例17と同様にして耐屈曲性試験及び充放電試験を実施した。
【0233】
実験例43~47における耐屈曲性試験で得られた評価結果、並びに実験例43~47における充放電試験で得られた容量維持率を、表6に示す。
【0234】
【0235】
表5より、実施例9~29で得られたバインダー水溶液9~29を用いた電極(実験例17~34)では、マンドレル径評価がA~Cとなり、耐屈曲性が高く、容量維持率が80%以上となった。中和に用いたアミンのもつ疎水性基により、バインダーのガラス転移点が下がり、バインダーが柔軟化することで、耐屈曲性が高くなったと考えられる。また、第一発明と類似の構造であるため、良好な電池特性を維持していると考えられる。
【0236】
また、表6より、実施例35~39で得られたバインダー水溶液35~39を用いた電極(実験例43~47)では、マンドレル径がA~Bとなり、耐屈曲性が高く、且つ容量維持率も85%以上となった。従って、(i)の単量体と(ii)の単量体のモル比や架橋構造の有無が異なっても、実験例17~34の電極と同様にバインダーのガラス転移点の低減効果が発現することで、耐屈曲性が高くなったと考えらえる。
【0237】
一方、実施例30~34で得られたバインダー水溶液30~34を用いた電極(実験例38~42)では、マンドレル径評価がDとなり、耐屈曲性が悪くなった。アミン価が高い多価アミンでは、中和アミン間の距離が短いため、バインダーが剛直になり、電極も硬くなり、耐屈曲性が悪くなったと考えられる。