(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】デジタル織物印刷のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
D06B 11/00 20060101AFI20241113BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20241113BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
D06B11/00 E
B05D7/00 A
B05D7/00 G
B05D3/00 D
(21)【出願番号】P 2021560710
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 GB2020050929
(87)【国際公開番号】W WO2020208362
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-13
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521446406
【氏名又は名称】アルケミー・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100210398
【氏名又は名称】横尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】キュー,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】フッド,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ブライス,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】パシェコ,アイディー
(72)【発明者】
【氏名】タオ,アンディ
(72)【発明者】
【氏名】タオ,グオライ
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-039861(JP,A)
【文献】特開平07-276673(JP,A)
【文献】特開平11-042781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00 - 23/30
D06C 3/00 - 29/00
D06G 1/00 - 5/00
D06H 1/00 - 7/24
D06J 1/00 - 1/12
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物(10)の1つまたは複数のパラメータを決定することと、
プロセッサ(50)によって、処理ライン(32)の流路ディスペンサ(38)のアレイについての少なくとも1つの用量設定を決定することであって、前記少なくとも1つの用量設定を決定することは、前記1つまたは複数のパラメータ(12)に基づくことと、
前記流路ディスペンサの前記アレイによって、前記少なくとも1つの用量設定(14)に従って前記織物上に染料を配量することと、
前記織物にエネルギーを伝えて、前記織物内に前記染料を固着させることと
を含
み、
液体小滴を前記織物の内部構造内に向けるために気流が使用される、
処理ライン上の織物に対する染料のデジタルに制御される塗布および固着の方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数のパラメータが、染色すべき織物のパラメータを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のパラメータが、染色された織物のパラメータを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数のパラメータが、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで決定される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数のパラメータが継続的に決定される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記流路ディスペンサのそれぞれが独立して制御される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記織物上に配量すべき染料の量が、前記織物の飽和吸収能力以下であり、
前記飽和吸収能力が、前記1つまたは複数のパラメータに少なくとも部分的に基づいて決定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記織物上に配量すべき染料の量が、前記織物の飽和吸収能力を超過し、
前記飽和吸収能力が、前記1つまたは複数のパラメータに少なくとも部分的に基づいて決定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
用量設定が、目標色合いに少なくとも部分的に基づいて決定される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
配量することが、少なくとも1つのセンサによって、色不整合を含む織物表面の領域を検出したことに応答して、検出した不整合を補正するフィードバックを行うことをさらに含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
検出した不整合を補正することが、前記プロセッサによって気流(40)を制御して、配量される染料を偏向させ、前記織物表面(44)の下塗り領域を
補正することを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記流路ディスペンサの前記アレイが、前記織物に対する染料のほぼ均質な塗布を達成する
ために、前記流路ディスペンサの配量先端を前記織
物に極めて近接させて構成される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記流路ディスペンサが、
前記流路ディスペンサの配量先端を前記織物表面から5mmから50mmの間の距離にして構成される、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記流路ディスペンサの前記アレイが、前記織物の対向する表面上に染料を配量する
前記流路ディスペンサの2つのサブアレイを備える、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記流路ディスペンサの前記アレイ内の不整合を検出することと、
前記プロセッサによって、前記流路ディスペンサのうちの少なくとも1つまたは複数、および/または、配量される染料に当てられる気流を制御して、前記配量される染料の流量または流跡線を調節し、検出された不整合を
補正すること
をさらに含む、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記流路ディスペンサの前記アレイ内の不整合を検出することと、
前記プロセッサによって前記処理ラインを完全に休止すること
をさらに含む、
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記プロセッサが、前記流路ディスペンサのそれぞれを独立に制御する、
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記流路ディスペンサの配量先端が超音波噴霧器ノズルである、
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
流体塗布器がインクジェット印刷ヘッドである、
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記流体塗布器がスプレーシステムである、
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
配量される染料の流量が、プロセッサによって、圧力、超音波エネルギー、および容積式ポンピングのうちの少なくとも1つを使用して制御される、
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記流路ディスペンサの前記アレイによって、織物の少なくとも1つの別個の位置に染料を配量することをさらに含む、
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記プロセッサによって、染色すべき前記織物の表面積を最大にするように構成された別個の位置の最適またはほぼ最適なレイアウトを決定することをさらに含み、
前記レイアウトが、染色すべき織物の少なくとも1つの別個の位置を含む、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記プロセッサによって、染色された織物の位置と、未染色の織物の位置との間の少な
くとも1つの連続的境界を決定することであって、前記連続的境界が、前記染色された織物の位置を取り囲むことと、
分離モジュールによって、前記境界内に囲まれた前記染色された織物の部分を分離すること、
をさらに含む、
請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記プロセッサによって、染色された織物の位置と、未染色の織物の位置との間の少なくとも1つの連続的境界を決定することと、
分離モジュールによって、前記少なくとも1つの連続的境界の全体を含む前記織物の部分を分離すること
をさらに含む、
請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記連続的境界を含む、前記分離された部分が、前記境界を取り囲む織物のストリップも含み、
前記ストリップは所定の幅である、
請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記織物内の不整合を検出することと、
前記プロセッサによって、前記流路ディスペンサのうちの1つまたは複数のジェッティング周波数、および前記流量を調節するために配量される染料に当てられる気流、または、前記配量される染料の流跡線、のうちの少なくとも1つを制御して、前記検出された不整合を
補正すること
をさらに含む、
請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
1つまたは複数のパラメータを決定することが、
前記1つまたは複数のパラメータを含むデータ入力を受け取ることと、
1つまたは複数のセンサを使用して前記1つまたは複数のパラメータを検出すること
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記1つまたは複数のパラメータが、坪量、速度、染料濃度、
織物厚さ、直径、織物バッチコード、吸着能力、含水量、色、色合い、パントン、および反射率のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記流路ディスペンサから配量される前記染料が、5ms
-1を超える速度の噴霧小滴の形態である、
請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記配量された染料を前記織物上に固着させることをさらに含む、
請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
固着させることが、150℃から250℃の範囲内の温度の蒸気の適用によって行われる、
請求項17に記載の方法。
【請求項33】
固着させることが乾熱の適用によって行われる、
請求項17に記載の方法。
【請求項34】
固着させることが、赤外線、マイクロ波、および無線周波数放射のうちの少なくとも1つを含む放射の適用によって行われる、
請求項17に記載の方法。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された装置(29)であって、
織物を搬送するための処理ライン(32)と、
プロセッサ(50)と、
前記流路ディスペンサのアレイであって、各流路ディスペンサ(38)が、前記プロセッサによって独立に制御され、搬送される織物(44)の前記表面上に染料を配量するように構成される、
前記流路ディスペンサのアレイと
、
配量された染料を搬送される織物上に固着させるための固着手段と
を備える、
装置。
【請求項36】
搬送される織物の1つまたは複数のパラメータ、ならびに/あるいは1つまたは複数の不整合を検出するための感知手段をさらに備える、
請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記処理ラインの初めに配置された織物巻出しモジュール(30)と、
前記処理ラインの終わりの織物巻戻しモジュール(36)と、
をさらに備える、
請求項
35または36に記載の装置。
【請求項38】
液体染料の表面張力が、織
物への塗布後に流体拡散に影響を及ぼすために制御される、
請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
乾燥のための赤外線エネルギーの適用が、前記
織物内の液体染料の移染を制御するために使用される、
請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物生地上に染料を配量するための方法および装置に関し、詳細には、洗い出しからの廃水の発生をなくし、エネルギーコストを削減する、処理ライン上の独立してデジタルに制御される流路ディスペンサのアレイおよび固着エネルギー源を使用する、織物染色のための工程設計に関する。
【背景技術】
【0002】
流路ディスペンサオリフィスのデジタル制御を通じて精密コーティングまたは染色が達成され、それによって、工業染料液の2Dおよび3D分布が、目標値の数パーセント以内に制御され得る。染料液の精密塗布のこの原理は、多くの工業材料に適用可能である。この技法は、周囲の気流の制御と共に液体塗布の制御を利用して、織物材料内の液体染料の均質な3次元分布を達成する。
【0003】
赤外線放射源などのエネルギー源を使用するエネルギー適用のデジタル制御を通じて精密固着が達成され、それによって、目標値の数パーセント以内の固着を達成するようにエネルギーの2Dおよび3D分布が制御され得る。
【0004】
現在、織物コーティングまたは染色は、主として、通常は織物重量の数倍の著しい量の廃水の発生のために、環境を損なう工程である。染色塗布のための従来の工程は、吸尽またはジェット染色や、ローラ塗布機構を用いるパディングなどの浴浸漬方法である。すべての従来の方法は一般に、過剰な染料を織物材料に過剰投与し、染料は、高温洗浄の反復を介して除去されなければならず、多量の汚染された廃水が発生する。
【0005】
染料で汚染された水を含む、汚染された廃水は、かなりの世界的環境問題であり、環境的被害を回避するために包括的な廃水処理を必要とする。
従来、浴浸漬コーティングまたは染色は、繊維表面への染料の吸収を可能にするために行われる。コーティングまたは染料は、水にほぼ不溶性であり得、繊維表面上に吸着して繊維内に拡散し、または繊維と反応して閉じ込められ、もしくは化学的に結合されるために時間および高温を必要とし得る。代替として、ローラ「パディング」工程を介してコーティングまたは染料が織物に塗布され得る。次いで、染料を固着させるために、塗布された染料が乾燥され、加熱される。これらの従来の染色の方法のどちらについても、過剰な未結合の染料および補助化学物質を除去するために洗浄が必要とされる。洗浄は通常、高い温度で運用されるいくつかの浴を含み、たとえば塩基性pHが使用される「還元洗浄」の工程で、追加の化学物質を導入し得る。
【0006】
洗浄ステップを実施する必要のない、織物染色のための本明細書で開示される新しい工業工程は、この背景とは対照的である。この工程は、染色され固着された材料を達成するために過剰な染料の塗布を必要としない、織物生地に対して必要とされる量の染料およびエネルギーのみの精密な3次元分布に基づく。開示される手法は、洗浄工程を通じて生み出される廃水の排除、または少なくとも劇的な削減を通じて、業界の持続可能性方策の大きな変化を可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、処理ライン上の織物に対する染料のデジタルに制御される塗布および固着の方法が提供される。方法は、織物の1つまたは複数のパラメータを決定するステップと、プロセッサによって、処理ラインの流路ディスペンサのアレイについての少なくとも1つの用量設定を決定するステップであって、少なくとも1つの用量設定を決定することが1つまたは複数のパラメータに基づくステップと、流路ディスペンサのアレイによって、少なくとも1つの用量設定に従って織物上に染料を配量するステップと、生地にエネルギーを伝え、織物内に染料を固着させるステップとを含む。
【0008】
さらに、方法は、染色すべき織物の1つまたは複数のパラメータを決定するステップと、プロセッサによって、処理ラインの流路ディスペンサのアレイについての少なくとも1つの用量設定を決定するステップであって、少なくとも1つの用量設定を決定することが1つまたは複数のパラメータに基づくステップと、流路ディスペンサのアレイによって、少なくとも1つの用量設定に従って織物上に染料を配量するステップとを含み得る。
【0009】
方法はまた、染色すべき織物の1つまたは複数のパラメータと、染料塗布用量設定の1つまたは複数のパラメータとに基づいてプロセッサによって決定される、デジタルに制御される乾燥工程の設定を含み得る。
【0010】
さらに、方法はまた、染色すべき織物の1つまたは複数のパラメータと、染料塗布用量設定の1つまたは複数のパラメータとに基づいてプロセッサによって決定される、デジタルに制御される固着工程の設定を含み得る。
【0011】
流路ディスペンサのアレイのデジタル制御は、リアルタイムまたはほぼリアルタイムの色不整合補正などの汎用性を実現し得、かつ/または同一の処理ライン上のほぼ即時の色切換えが達成され得る。たとえば、分散染料浴内に織物を液浸する従来の方法ではなく、流路ディスペンサのアレイを介する織物に対する染料の塗布が、織物の測定されたパラメータに従う、染料の厳密に正しい用量の沈着を可能にする。
【0012】
エネルギーの精密な投与を可能にするように、適用されるエネルギー、たとえば赤外線、UV、無線周波数、またはマイクロ波の出力および分布をデジタル入力が制御することを可能にする方法を使用する、固着のためのエネルギーの適用。これは、固着を達成するために通常は過剰なエネルギーが適用される、従来の浴染色工程および連続的染色工程とは対照的である。
【0013】
たとえば、分散染料浴内に織物を液浸する従来の方法ではなく、液体ディスペンサのアレイを介する織物に対する染料の塗布は、染色すべき織物の測定されたパラメータに基づいて決定され得る織物の吸収能力に従う、染料の厳密に正しい用量の沈着を可能にし得る。これは、染料を分散させるための水、濃度勾配を保証するために必要とされる過剰な染料、固着尾後続の洗浄のために必要とされるエネルギーなどの廃棄資源量の膨大な削減を伴う。
【0014】
さらに、上記液体ディスペンサおよび固着のためのエネルギー放射源のデジタル制御が、同一の処理ライン上の不整合補正およびほぼ即時の色切換えなどの追加の汎用性をもたらす。
【0015】
1つまたは複数のパラメータを決定することは、1つまたは複数のパラメータを含むデータ入力を受け取ること、および1つまたは複数のセンサを使用して1つまたは複数のパラメータを検出することのうちの少なくとも1つを含み得る。入力されるパラメータは、織物製造業者によって、または予備オフライン評価/テストによって与えられ得る。これは、精密で制御されたパラメータ詳細が特注環境で得られることを可能にする。
【0016】
センサを使用する織物のパラメータの検出は、織物のパラメータを入力および記録する際のヒューマンエラーの危険、および織物の誤ったラベリングのために生じ得る誤りの固有の可能性を低減する。
【0017】
織物のパラメータは、処理ライン上でリアルタイムまたはほぼリアルタイムに検出され得、したがって、織物内の不整合または誤りのリアルタイムまたはほぼリアルタイムの検出が可能となる。これは、染料およびエネルギー用量設定をプロセッサによって迅速に、独立して調節することを可能にし、かつ/または連続的な長さの最適以下の織物または不整合の織物が染色されることを防止する。
【0018】
1つまたは複数のパラメータは、織物の坪量、織物の吸収能力、織物の含水量、システムを通る織物の速度、染料濃度、織物厚さ、織物直径、織物バッチコード;色;色合い;パントン;反射率および任意の他の織物表面光学的特性のうちの少なくとも1つを含み得る。1つまたは複数のパラメータを決定することは、織物が染色される前、織物が染色されている間、および/または織物が染色された後に行われ得る。この手法は、工程全体にわたって複数のパラメータを測定することを可能にする。用量設定を最適化するために、処理ラインに沿った相異なる地点で測定されたパラメータ間の比較もプロセッサによって行われ得る。これは最終製品の品質を向上させ得る。たとえば、織物の両面が同時に染色されない構成では、パラメータの決定は、織物の第1の面が染色された後であるが、織物の第2の面が染色される前に行われ得る。染料は布に浸透するので、布の第2の面が染色されるとき、布の第1の面の外観が変更され得る。その結果、第2の面についての用量設定は、第2の面の染色の後の第1の面の外観を考慮に入れ得る。
【0019】
一実施形態では、方法は、染色すべき織物の1つまたは複数のパラメータを決定するステップを含む。
染色される前の織物、すなわち染色すべき織物のパラメータを決定することは、染色すべき織物のパラメータを反映するために用量設定を精密に選択することを可能にし、したがって、染色された織物の品質および整合性を向上させる。織物が染色される前に織物のパラメータを決定することはまた、新しい織物が使用されるごとに流路ディスペンサを較正することから生じ得る廃棄染料および廃棄織物を削減する。
【0020】
一実施形態では、方法は、染色すべき織物の1つまたは複数のパラメータを継続的に決定するステップを含む。
織物が染色される前に織物のパラメータを継続的に決定することは、用量設定および/または流路ディスペンサのリアルタイムまたはほぼリアルタイムの独立した調節を可能にし、したがって、織物の断続的な不整合または変動が調節され得、流路ディスペンサのアレイ全体にわたって正しい用量設定が指定され得る。
【0021】
用量設定は、染料色、染料濃度および量、ならびに/あるいは流量染料のうちの少なくとも1つを含み得る。
織物上に配量すべき染料の量は、織物の飽和吸収能力以下であり得、飽和吸収能力は、1つまたは複数のパラメータに少なくとも部分的に基づいて決定される。
【0022】
代替として、織物上に配量すべき染料の量は、織物の飽和吸収能力を超過し得、飽和吸収能力は、1つまたは複数のパラメータに少なくとも部分的に基づいて決定される。
用量設定は、目標色合いに少なくとも部分的に基づいて決定され得る。
【0023】
配量するステップは、少なくとも1つのセンサによって、色不整合を含む織物表面の領域を検出したことに応答して、検出した不整合を補正するフィードバックステップをさらに含み得る。
【0024】
検出した不整合を補正することは、染料またはエネルギーの用量設定を調節して、将来の不整合を防止し得る。代替または追加として、染料の第2の塗布中に不整合がある場合にそれを補正するために、不整合織物が処理ライン上に再供給され得る。織物の両面が別々に染色される場合、織物の第1の面の感知された状況を補償するために、第2の面についての用量設定が変更され得る。
【0025】
同一の処理ラインでフィードバックおよび補正機構を有することはまた、さらなる品質チェックおよび補正装置の必要をなくすので、処理ライン装置の全体的な複雑さと、完成品に至るのにかかる時間を低減する。
【0026】
色不整合は、織物の長さにわたる色不整合であり得、すなわち不整合は経時的に変動する。代替または追加として、色不整合は、織物の幅にわたる色不整合であり得、すなわち不整合は経時的に一貫している。
【0027】
検出した不整合を補正することは、プロセッサによって気流の使用の噴霧液体染料の流れを制御して、配量される染料を偏向させ、織物表面の下塗り領域を補償することを含み得る。
【0028】
代替または追加として、プロセッサは、最終的製品で使用されることが意図されない織物の領域内の染色を除去するように、2次元で画定された形状を染色するために使用され得る。この工程は、両面塗布の両面のトンボで行われ得る。織物の少なくとも1つの別個の位置に染料を配量することは、必要とされる染料の量を削減する。配量位置は、織物についての望ましい最終製品とほぼ同様であり得、したがって、染料を必要としないことが知られている織物の任意の位置または領域が、未染色のままにされ得る。未染色の織物は、より容易にリサイクルまたは再利用され得る。これらの位置は、オフカットとなる位置を含み得、かつ/または最終的製品で見えなくなる位置を含み得る。
【0029】
少なくとも1つの別個の位置はプロセッサによって決定され得る。さらに、少なくとも1つの別個の位置は所定の形状であり得る。形状は、織物の幅および/または長さ全体をカバーし得る。代替として、形状は、織物の幅および/または長さ全体をカバーしないことがある。形状は衣服の形状であり得る。
【0030】
方法は、プロセッサによって、染色すべき織物の表面積を最大にするように構成された別個の位置の最適またはほぼ最適なレイアウトを決定するステップを含み得、レイアウトは、染色すべき織物の少なくとも1つの別個の位置を含む。
【0031】
レイアウトは、染色すべき織物の複数の別個の位置を含み得る。それぞれの別個の位置は同一であり得る。代替または追加として、それぞれの別個の位置は異なり得る。別個の位置は、形状、サイズ、色、および形のうちの少なくとも1つが異なり得る。レイアウトは、同一の別個の位置と、異なる別個の位置の組合せを含み得る。
【0032】
最適なレイアウトは2つ以上のモザイク形状を含み得る。ほぼ最適なレイアウトは、未染色の織物の全面積を最小限に抑える。
方法は、プロセッサによって、染色された織物の位置と、未染色の織物の位置との間の少なくとも1つの連続的境界を決定するステップと、分離モジュールによって、境界内に囲まれた染色された織物の部分を分離するステップとをさらに含み得る。
【0033】
染色された織物の分離された部分は完全に染色され得る。染色された織物の分離された部分は、染色された織物の別個の位置とほぼ同一の形状であり得る。代替または追加として、染色された織物の分離された部分は、染色された織物の位置よりも小さいものであり得る。
【0034】
分離モジュールは、ギロチンや穴あけ機などの切断機構を備え得る。
方法は、プロセッサによって、染色された織物の位置と、未染色の織物の位置との間の少なくとも1つの連続的境界を決定するステップと、分離モジュールによって、少なくとも1つの境界の全体を含む織物の部分を分離するステップとをさらに含み得る。
【0035】
境界全体を含む織物の部分を分離することは、残りの織物が完全に染色され、または完全に未染色であることを保証する。これは、染色された織物を必要に応じてさらに処理することを可能にし、未染色の織物をリサイクルまたは再利用することを可能にする。
【0036】
境界を含む分離された部分は、境界を取り囲む織物のストリップも含み得、ストリップは所定の幅であり得る。
境界を取り囲むストリップを分離することは、残りの織物が完全に染色され、または完全に未染色であることを保証する。ストリップの所定の幅は、1000、500、250、100、50、25、10、5、3、または1ミリメートル(mm)未満であり得る。所定の幅は、プロセッサによってリアルタイムまたはほぼリアルタイムに決定され得る。代替または追加として、所定の幅はプロセッサの入力であり得る。
【0037】
染料を塗布することと、デジタル制御下で固着を実施することの両方の最終的結果は、典型的な業界規格を満たすために洗浄を必要としない、染色され固着された材料を製造することが可能であることである。
【0038】
染料塗布の工程は、吹付け、インクジェット印刷、または最も好ましくは、気流を使用して移送される液体染料の噴霧スプレーを生成する、独立して制御される流路ディスペンサのアレイによって達成され得る。
【0039】
流路ディスペンサのアレイは、織物に対する液体染料のほぼ均質な塗布を達成するために、流路ディスペンサの配量先端を織物生地に極めて近接させて構成され得る。
流路ディスペンサは、流路ディスペンサの配量先端を織物表面から5mmから50mmの間の距離にして構成され得る。
【0040】
流路ディスペンサのアレイは、織物の両面上に染料を配量する流路ディスペンサの2つのサブアレイを備え得る。
流路ディスペンサのアレイは、冗長性および投与平均化を達成するために、配量領域でかなりの重複を与え得る。
【0041】
最も好ましくは、気流は、染料塗布と反対側の織物の面に対して当てられるように構成される。
プロセッサは、流路ディスペンサのそれぞれを独立して制御し得る。流路ディスペンサのアレイ内のそれぞれの個々の配量要素が、プロセッサによってオンおよびオフされ得る。さらに、各流路ディスペンサによって配量されている染料の量も、プロセッサによって制御され得る。
【0042】
各流路ディスペンサの独立した制御は、配量されている染料の精密で局所化された調節を可能にする。これは、染色すべき織物が不整合を有するときであっても、正確で一貫した目標色合いを達成することを可能にする。さらに、染色された織物内の局所化された不整合が防止され得る。
【0043】
流路配量先端は超音波噴霧器ノズルの形態であり得る。
配量される染料の流量は、流体圧力、ノズルデューティサイクル、超音波エネルギー、容積式ポンピングのうちの少なくとも1つを使用して制御され得、それぞれはプロセッサによって制御され得る。
【0044】
流路ディスペンサから配量される染料は、5ms-1を超える速度の噴霧小滴の形態であり得る。
噴霧小滴は1~50ミクロンの範囲内の平均径を有し得る。
【0045】
気流は、メートル幅当たり50~500kg hr-1の範囲内であり得る。
生地に対して主に垂直となるような速度で移動する噴霧小滴は、さらなる吸着工程を必要としないように工業織物に十分に浸透するように決定された。
【0046】
方法は、織物内の不整合を検出するステップと、プロセッサによって、流路ディスペンサのうちの1つまたは複数のジェッティング周波数、流量を調節するために、配量される染料に当てられる気流、配量される染料の流跡線、検出された不整合を補償するためにエネルギー源によって放射された出力のうちの少なくとも1つを制御するステップとをさらに含み得る。スループット液体ディスペンサおよび当てられる気流のデジタルに制御される変動は、すべて同一の処理ライン上で、織物の染色での欠陥の補正を実施するための、汎用的で瞬間的な機構を実現する。
【0047】
染色すべき織物内の不整合を検出することは、それに応じて流路ディスペンサのそれぞれを調節することを可能にし、したがってより一貫した、均質な、染色された織物を生成する。さらに、不整合が染色された織物内でも検出され得、フィードバック機構を使用して、染料またはエネルギーの用量設定がそれに応じて調節され、不整合が再発することが防止される。
【0048】
方法は、流路ディスペンサのアレイ内の不整合を検出するステップと、プロセッサによって、流路ディスペンサのうちの少なくとも1つまたは複数、および/または配量される染料に当てられる気流を制御して、配量される染料の流量または流跡線を調節し、検出された不整合を補償するステップとをさらに含み得る。
【0049】
変動する染料流量などの流路ディスペンサのアレイ内の不整合は、閉塞、部分的閉塞、および/または配量要素内の気泡に起因し得る。
代替として、方法は、流路ディスペンサのアレイ内の不整合を検出するステップと、プロセッサによって処理ラインを完全に休止するステップとを含み得る。
【0050】
流路ディスペンサ内の誤りの識別の結果、処理ラインが休止され、標準以下の織物または不整合な織物が引き続き製造されることが防止され、したがってコストと時間の両方が節約され得る。
【0051】
方法は、配量された染料を織物上に「バルク」固着させるステップをさらに含み得る。固着させるステップは、180℃から250℃の範囲内の温度の乾燥空気または蒸気の適用によって行われ得る。代替または追加として、固着させるステップは、赤外線、マイクロ波、および無線周波数放射のうちの少なくとも1つの形態の放射の適用と共に、乾熱または蒸気の適用によって行われ得る。
【0052】
方法は、流路ディスペンサのアレイによって、織物少なくとも1つの別個の位置の上に染料を配量するステップをさらに含み得る。
さらに、本発明によれば、開示される方法を実施するように構成された装置も提供され得、装置は、織物を搬送するための処理ラインと、プロセッサと、流路ディスペンサのアレイであって、各流路ディスペンサが、プロセッサによって独立して制御され、搬送される織物の表面上に染料を配量するように構成される流路ディスペンサのアレイとを備える。
【0053】
装置は、搬送される織物の1つまたは複数のパラメータおよび/または1つまたは複数の不整合、ならびに/あるいは染色された織物と未染色の織物との間の1つまたは複数の境界を検出するための感知手段を備え得る。
【0054】
装置は、織物の染色された部分と未染色の部分とを分離するための分離モジュールをさらに備え得る。
装置は、配量された染料を搬送される織物上に固着させるための固着手段をさらに備え得る。
【0055】
装置は、処理ラインの初めに配置された織物巻出しモジュールと、処理ラインの終わりの織物巻戻しモジュールとをさらに備え得る。
本開示の方法は、デジタルに制御される投与システムを介して、2Dまたは3D生地、たとえば織物および布に染料液を塗布するための工業工程であり、コーティングの吸収についての織物生地の能力の領域内で染料が送達されるという利点を有する。これは、たとえば、重量センサを使用して織物の重量などの染色すべき織物の1つまたは複数のパラメータを検出することによって行われ得る。次いで、プロセッサは、測定されたパラメータに基づいて、織物についての目標色合いを達成するのに必要とされる染料の量および固着エネルギーを計算する。したがって、本明細書で説明される方法は、浸漬浴の必要、および織物から過剰なコーティングを洗浄する必要を低減するために使用され得る。
【0056】
本発明によって利用される技術的原理は、染色すべき織物のパラメータの正確な測定と、プロセッサによる、パラメータに基づく織物についての用量設定の決定である。この工程の後に、織物表面上に厳密に正しい量の染料を沈着させるための、流路ディスペンサのアレイからの染料の制御された塗布が続く。
【0057】
したがって、開示されるデジタル染色工程は、無廃水または低廃水のどちらかであり、織物のオンデマンドデジタル染色のための新しい製造技術プラットフォームを可能にする。この技術は廃水排出をなくし、または劇的に低減する。開示される方法はまた、たとえば、最小染色「ラン」レングスを削減すること、および相異なる色および織物材料の間の迅速な切換えを可能にすることによって、製造コスト削減および収益性の利点を達成する。
【0058】
投与制御のデジタルの性質は、たとえば織物が処理ラインの開始で巻き出され、処理ラインの終わりで巻き戻される構成で、単一の処理ライン上で目標染料色合いを達成することを可能にする。
【0059】
利点は、正確な染料投与による廃水の解消を含む。廃水の削減は、従来の染料塗布方法と比べて95%超である。目標色合いが達成されることを保証するために過剰な染料を塗布する必要がないので、染料使用量の低減も可能にされ、所与の織物を染色するのに必要とされる染料および補助化学物質の量が最大で30%削減される。開示される方法はまた、カーボンフットプリントの削減も達成し、従来の方法と比べたときに最大で80%の省エネルギーである。
【0060】
代替または追加として、プロセッサは、染色された織物の1つまたは複数のパラメータを決定し、用量設定に対応するリアルタイムまたはほぼリアルタイムのフィードバックを提供し得る。プロセッサは、染色された織物の品質、精度、および整合性を決定し得、ディスペンサにリアルタイムまたはほぼリアルタイムのフィードバックを提供し得る。ほぼリアルタイムとは10ミリ秒未満を意味し得る。これは、必要な場合に用量設定を調節すること、および/または染料の配量を一時的に休止して、著しい長さの欠陥のある織物、または不整合に染色された織物の製造を防止することを可能にし得る。さらに、開示される工程のデジタルの性質は、織物のオンデマンド染色を可能にし、織物生地上で精密な目標色合いを達成することを可能にする。時間がかかる織物前処理および浸漬を必要とし、織物のデジタルに制御されるシェーディングを実現しない従来の方法は、オンデマンド染色を可能にしない。
【0061】
さらに別の利点は、開示される方法を利用するプラットフォームは、毎時2000平方メートルを超えるスループットで動作し得、したがって高スループット工業生産環境に適していることである。
【0062】
工程は、デジタルに制御される流路ディスペンサのアレイの使用により、織物ウエブにわたってデルタ値<0.5の変動の優秀な色整合性を達成し得る。工程は、塗布される容量のデジタル制御を介して精密な色整合および色合い制御が可能であり、広範な布と共に使用され得る。
【0063】
開示される方法を実施するように構成された装置の例示的技術仕様が表1.1で与えられる。
【0064】
【0065】
次に、添付の図を参照しながら、本発明が単に例としてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図2】開示される方法の実施形態による詳細な例示的ワークフローの流れ図である。
【
図3】染料塗布の様々な段階での例示的織物繊維を示す図である。
【
図4】開示される方法を実施するための例示的装置を示す図である。
【
図5】織物生地上に染料を配量する流路ディスペンサの例示的構成を示す図である。
【
図6】第1のパスおよび第2のパスを備える、本発明のいくつかの実施形態による例示的処理ラインを示す図である。
【
図7】真空室が追加された、織物生地上に染料を配量する流路ディスペンサの例示的構成を示す図である。
【
図8】2パス処理ラインの間の第1のパス上の染料の塗布中の例示的織物生地を示す図である。
【
図9】処理ラインのいくつかの実施形態内の乾燥段階の一例を示す図である。
【
図10】処理ラインのいくつかの実施形態内の乾燥段階の間の例示的織物生地を示す図である。
【
図11】温度の変化が加えられるときに織物生地上の染料の含水量が時間に関してどのように変動し得るかという一例を示す図である。
【
図12】処理ラインのいくつかの実施形態内の固着段階の一例を示す図である。
【
図14】少なくとも1つのセンサを備える、本発明のいくつかの実施形態による例示的処理ラインを示す図である。
【
図15A】織物生地のほぼ水平な表面に染料が塗布される例示的処理ラインを示す図である。
【
図15B】織物生地のほぼ垂直な表面に染料が塗布される例示的処理ラインを示す図である。
【
図15C】織物生地の経路を決定するように構成されたドラムを備える処理ラインの一実施形態を示す図である。
【
図16】本発明の配量要素についての例示的染料供給、循環、および排水システムを示す図である。
【
図17】ヘッダタンクを備える本発明の配量要素についての染料供給、循環、および排水システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本開示の様々な態様をさらに説明するために、これから本開示の特定の実施形態が添付の図面と共に詳細に説明される。この説明は、限定的なものではなく例示的なものとなる。
【0068】
図1を参照すると、本発明による例示的方法が、処理ライン上で搬送される織物の1つまたは複数のパラメータの決定10を含む。決定は、ユーザ入力、自動入力、あるいは処理ライン装置上の1つまたは複数のセンサのデジタル感知を介して行われ得る。入力または感知され得る例示的パラメータは、通常は50から500gm
-2の間の織物の坪量、織物の繊維デニール/直径、および織物織型である。
【0069】
図示される方法は、第1のステップで決定される1つまたは複数のパラメータに基づいて、流路ディスペンサのアレイについての少なくとも1つの用量設定を決定するステップ12をさらに含む。決定は、プロセッサ50によって実施され、プロセッサは、流路ディスペンサのアレイを制御するように構成される。いくつかの実施形態では、流路ディスペンサのアレイは、染料を配量するように構成された印刷ヘッドの部分を備え得る。
【0070】
センサを使用する織物のパラメータの検出は、織物のパラメータを入力/記録する際のヒューマンエラーの危険と、織物の誤ったラベリングのために生じ得る誤りの固有の可能性とを低減する。
【0071】
織物表面上への染料液の沈着のための用量設定への1つまたは複数のパラメータの変換は、処理ライン上で搬送される織物の最大吸収能力に従う流体の沈着を可能にする。これは、目標色合いが達成されることを保証するための、織物表面上への過剰な流体の沈着の必要を除去し、その後に必要とされる最小限の洗浄で厳密に正しい量の染料を沈着させることを可能にする。決定された用量設定は、通常は単位幅当たりの質量流量である(mL/min/m)。
【0072】
少なくとも1つの用量設定が決定された後、方法は、少なくとも1つの用量設定に従って織物上に流体を配量すること(14)をさらに含み、たとえば、染料液が、織物についての目標色合いを達成するように計算された用量設定に従って織物表面上に配量され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、方法は、目標色合いを達成していない織物内の不整合のインライン補正のための、閉じたフィードバックループをさらに含む。たとえば、織物内の色不整合を検出してプロセッサ50に通知するために色センサが使用され得る。色センサはカメラであり得、または光ファイバ分光分析によって色感知が実施され得る。LABを使用するセンサ色整合の適切な選択で、デルタe<0.5の精度までの値が達成され得る。次いで、配量される流体のジェッティング周波数を修正し、または配量される流体を偏向させるように気流を当て、検出された不整合を補償することによって、デジタルに制御される流路ディスペンサを調節することなどの様々な方法が、検出された不整合を補正するために利用され得る。
【0074】
液体ディスペンサのジェッティング周波数、適用されるエネルギー、および/または当てられる気流のデジタルに制御される変動は、すべて同一の処理ライン上で、織物の染色での欠陥の補正を実施するための、汎用的で瞬間的な機構を提供する。
【0075】
同一の処理ラインでフィードバックおよび補正機構を有することはまた、さらなる品質チェックおよび染色後補正装置の必要をなくことによって、染色工程全体の複雑さと、完成品に至るのにかかる時間を低減する。
【0076】
図2を参照すると、織物の単一の染色「ラン」についての例示的ワークフローが示されている。
織物が巻き出され、処理ライン上に供給され、次いで、パラメータ前処理段階16で、織物のパラメータが測定され、プロセッサ50に送られる。このケースでは、決定されるパラメータは織物の坪量である。次いで、織物は120℃の蒸気の適用によって前処理され、織物の表面が、染料が吸収され得る状態にあることが保証される。
【0077】
次の段階は染料塗布段階18であり、任意選択の洗浄浴から始まり、その後に、織物によって吸収された蒸気および水の量を計算するための第2の坪量検出が続く。第2の坪量検出に基づいて、織物が目標含水量を含むまで、織物の制御された乾燥が実施される。乾燥は、赤外線(IR)加熱、近赤外線(NIR)加熱、中赤外線(MIR)加熱、マイクロ波加熱のうちの少なくとも1つによって実施される。
【0078】
織物が正しい含水量にあると判定されるとき、流路ディスペンサのデジタルに制御されるアレイによって染料が塗布される。任意選択で、この段階で、染料の均質な塗布が織物表面上で達成されることを保証するために、インライン色感知および補正が適用され得る。次いで、さらなる乾燥が実施され、その後に最終感知ステップが続き、含水量および染料吸収が決定される。乾燥は、赤外線(IR)加熱、近赤外線(NIR)加熱、中赤外線(MIR)加熱、マイクロ波加熱のうちの少なくとも1つによって実施される。最終感知ステップは坪量のさらなる測定を含み得る。
【0079】
染料塗布工程の最終段階はインライン固着段階20である。染色された織物に対する約150~250℃の高温の蒸気または乾熱の適用を介して染料の固着が実施される。織物が同一の処理ライン上にある間の、染料のほぼ瞬間的な空間的固着は、従来の方法に伴う問題である、染料の塗布後の染料移染を回避するという利点を有する。
【0080】
いくつかの実施形態では、インライン固着工程はまた、赤外線(IR)加熱、近赤外線(NIR)加熱、機械赤外線(MIR)加熱、およびマイクロ波加熱のうちの少なくとも1つの適用を含み得る。
【0081】
図3を参照すると、染色工程の様々な段階の間の例示的織物繊維が示されている。
工程の第1の段階で、未修正の繊維22が測定され、たとえば織物の坪量が決定される。工程の第2の段階で、織物が事前水和され、任意選択で水中に浸漬され、表面24に含水量が増大した層を有する繊維が得られる。工程の第3の段階で、染料のデジタルに制御される塗布が織物に適用される。投与および沈着の精度は、事前水和済み繊維26の表面にわたって均質な分布を染料に形成させる。最後に、工程の第4の段階で、染料が織物に固着され、染料と繊維28との間の結合が強固にされ、蓄積した高含水量の層が放散し、蒸発する。
図4を参照すると、開示される方法を実施するための例示的処理ライン装置29が示されている。
【0082】
図示される装置は、前処理、染色、および固着エンクロージャ32内に含まれるコンベヤベルト上にロードする前に、織物のロールを巻き出すための巻出しモジュール30を含む。デジタルに制御される流路ディスペンサ38のアレイはエンクロージャ32内に含まれ、いくつかの染料供給タンク34によって、搬送される織物上に配量すべき染料液が供給される。最後に処理ラインの終わりに、工程が完了した後に、染色され固着された織物を巻き戻すための巻戻しモジュール36がある。
【0083】
流路ディスペンサ38は、搬送される織物のウエブにわたる、織物のウエブに沿った投与変動を可能にするように、独立して制御可能なデジタル要素のアレイで構成される。ディスペンサは、織物のバルクを完全に浸透するように高速に液体染料を送達することができる。
【0084】
エンクロージャ32内部に構成された流路ディスペンサ38のアレイは、単一のアレイとして、または搬送される織物の両面に面する2つのサブアレイとして構成され得る。2つのサブアレイで構成された流路ディスペンサは、織物についての2つの別々の搬送工程を必要とすることなく、搬送される織物の両面上に染料を同時に、または順に配量することができるという利点を有する。これは、より効率的な染色工程を可能にし、各ランを実施するために必要な時間が短縮される。
【0085】
開示される方法を実施するために使用される流路ディスペンサ38は、いくつかのタイプから選択され得る。たとえば、流路ディスペンサは、参照によりその内容が本明細書に組み込まれるWO第2017/187153号で開示される印刷ヘッド構成内に含まれ得る。他の実施形態では、デジタルに制御される質量流量コントローラを備えるスプレー塗工機、またはデジタルインクジェット印刷ヘッドのデジタルに制御される質量流量コントローラを備えるスロットダイ塗工機が使用される。
【0086】
WO第2017/187153号で開示される印刷ヘッド内に構成されるものに基づく、本明細書で開示される流路ディスペンサ38のアレイは、この方法に特に適している。このアレイは、搬送方向と横断方向の両方でデジタルに制御可能な染料の流れ、非常に正確な沈着、高い横断ウエブ均質性、要素のデジタル制御による瞬間的色切換えの可能性、および平行気流を加えるが、さらなる吸着促進ステップなしに織物への浸透を保証する、5ms-1を越える高い小滴速度という特徴を有する。
【0087】
図5を参照すると、噴霧染料小滴42を織物生地44の事前水和済み繊維上に配量するアレイの例示的流路ディスペンサ38が示されている。
気流40が流路ディスペンサ38の配量先端に対して向けられることも示されている。気流40は、流路ディスペンサ38の長さに対してほぼ垂直の方向であり、配量される流体の移動方向とほぼ平行である。
【0088】
前述のように、開示される装置のいくつかの実施形態では、気流40は、流路ディスペンサ38から配量される流体の小滴を偏向させ、したがって織物生地44に対して配量される流体の噴霧小滴42の拡散プロファイルを制御することができる。
【0089】
有益なことに、小滴プロファイルおよび拡散を制御することは、より高い解像度で流体を配量することを可能にし、織物生地44内の検出された不整合をインラインで修正することを可能にする。気流の速度はプロセッサ50によって制御され得る。
【0090】
さらに、流路ディスペンサ38の先端に対して気流40を向けることは、配量される流体が配量要素のノズル先端に蓄積し、ノズルを遮断し、または配量される流体の均質性を低下させるという、インクなどの他のタイプの流体を配量するための印刷ヘッドで知られている問題の危険を低減する。
【0091】
配量される流体を気流40で偏向させ、したがって織物生地44上の流体の拡散領域を制御する能力はまた、インラインでの織物に対する染料の塗布の、リアルタイムの汎用的な制御を可能にする。
【0092】
いくつかの実施形態では、配量される噴霧小滴42に気流40が周期的に当てられる。たとえば、プロセッサ50は、1~1,000Hzの範囲の周波数で気流を配量させ得る。
【0093】
スプレーの周期的偏向は、隣接するノズル間の平均化を向上させ、流路ディスペンサのアレイにわたる、配量される流体の均質性を向上させ、またはインラインで織物生地44内の検出された不整合を補正するために使用され得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、2~10PSI、すなわち14~69kPaの範囲内の圧力、毎分1~100立方フィート、すなわち0.00047~0.047m3s-1の流量で気流が駆動される。
【0095】
前述のように、流路ディスペンサのアレイはプロセッサによって個々に独立して制御される。同様に、気流40は気流コントローラ(図示せず)によって調整され、気流コントローラはプロセッサ50によってデジタルに制御される。
【0096】
織物の1つまたは複数のパラメータを決定し、織物内の不整合を検出するためのセンサもプロセッサ50と通信している。代替として、センサは、異なるプロセッサ50と通信している。
【0097】
例示的実施形態では、プロセッサ50は、マイクロコントローラ、システムオンチップ、またはシングルボードコンピュータに対応する。プロセッサ50は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、およびインターフェースを含む。いくつかの対応する実施形態では、プロセッサ50は、複数の揮発性メモリ、不揮発性メモリ、および/またはインターフェースを含み得る。揮発性メモリ、不揮発性メモリ、およびインターフェースは、バスまたは他の形態の相互接続を介して互いに通信する。プロセッサ50は、本明細書で説明されるシステムのいくつかの態様を制御するためのコンピュータ可読命令、たとえば1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する。コンピュータ可読命令は不揮発性メモリ内に記憶される。プロセッサ50には電源から電力が供給され、電源は電池を含み得る。
【0098】
[1.染料塗布]
[流体送達(ジェッティング[ノズル500um]、真空)]
図6は、第1のパスおよび第2のパスを備える例示的処理ライン100を示す。第1のパスは、流路ディスペンサの第1のアレイ138を介する染料の第1の塗布によって画定され、第2のパスは、流路ディスペンサの第2のアレイ139を介する染料の第2の塗布によって画定される。3、4、5、6、8、10、または11以上のパスおよび/または流路ディスペンサのアレイなど、任意の数のパスおよび/または流路ディスペンサのアレイが使用され得る。
【0099】
図6に示される処理ラインの例では、織物生地44の経路が、複数のローラ110によって画定される。ローラ110は、織物生地44の転換点を画定し、その結果、処理ライン100が、ローラ110によって形成される織物生地内の多数の折曲げによって巻き込まれるので、ラインの全長は、入口から出口までの水平距離よりもかなり短い。一般にオフセッティングと呼ばれる、織物生地とローラ110との間の水性染料の転写を防止するために、ローラ110は、テフロン(登録商標)などの疎水性外面および/またはコーティングを有する。
【0100】
図6に示される処理ライン100は、2パス工程が得られる、流路ディスペンサの第1のアレイ138および第2のアレイ139を備える。流路ディスペンサの第1のアレイ138の後に第1の乾燥段階140が続き、流路ディスペンサの第2のアレイ139の後に第2の乾燥段階141が続く。第1および第2の乾燥段階はそれぞれ、赤外線(IR)加熱、近赤外線(NIR)加熱、機械赤外線(MIR)加熱、マイクロ波加熱、紫外線(UV)加熱、およびプラズマ加熱のうちの少なくとも1つを備える。処理ライン100は、流路ディスペンサの第1のアレイ138の下の織物生地44の下の第1の真空室145と、流路ディスペンサの第2のアレイ139の下の織物生地44の下の第2の真空室146とをさらに備える。第1の真空室145は第1の真空ポンプ171に接続され、第2の真空室146は第2の真空ポンプ172に接続され、第1および第2の真空ポンプは、プロセッサ50を介して、各真空室によって生成される気流を制御するように構成される。
【0101】
図7は、少なくとも1つの真空室145を加えた、織物生地44上に染料を配量する流路ディスペンサの第1のアレイ138内の流路ディスペンサ200の例示的構成を示す。流路ディスペンサ200および真空室145に対する織物生地44の移動の方向が矢印D
Sで示されている。織物生地は、配量要素138および/または真空室145に対して最大で毎分25メートルで移動し得る。織物生地は、配量要素138および/または真空室145に対して最大で毎分100、75、50、30、25、20、15、12、10、8、5、3、2、または1メートルの速度で移動し得る。代替として、ライン100は、織物生地44が配量要素138および/または真空室145に対して毎分1、0.8、0.5、0.3、または0.1メートル未満で移動するように構成され得る。織物生地の速度は、ランごとに、または染料ラン中にリアルタイムもしくはほぼリアルタイムで調節され得る。たとえば、織物生地44は、配量要素138および/または真空室145に対して最大で毎分35メートルの速度で移動され得る。具体的には、織物生地44は、配量要素138および/または真空室145に対して毎分約25メートルの速度で移動され得る。
【0102】
真空室145は、矢印DAで示される、真空室に向かう気流を生み出すように構成され、それによって、染料小滴42が織物生地44に向かって引き寄せられる。真空室の追加は、織物生地44に達する、配量される染料の容積を増大させ、スプレーしぶきを著しく低減する。いくつかの実施形態では、配量される染料のほぼすべてが織物生地44に達する。これは、経時的にシステムの内部部材および要素をコーティングする染料の量が著しく削減され、またはなくなるので、配量要素のアレイ内の保守の必要を低減する。配量先端上、および/または配量先端の周りの染料の蓄積も除去され、または著しく削減され得る。
【0103】
配量要素200は約500μmの直径であり得る。いくつかの実施形態では、配量要素200は、最大で1000μm、800μm、600μm、500μm、400μm、200μm、または100μmの直径であり得る。
【0104】
配量要素200は、染料がそこから配量され得る先端201を備え得る。配量要素の先端は、織物生地の約15mm上であり得る。いくつかの実施形態では、配量要素は、織物生地の最大で30mm、25mm、20mm、17mm、15mm、13mm、10mm、5mm、または1mm上であり得る。
【0105】
図8は、流路ディスペンサの第1のバンクAと、流路ディスペンサの第2のバンクBとを備える流路ディスペンサのアレイを示す。流路ディスペンサの各バンクは、最大でメートル当たり500個の配量要素を設けるように構成される。流路ディスペンサの各バンクは、約0.5mmから10mmの間隔で配置された配量要素を備え得る。いくつかの実施形態では、間隔は約1mmから5mm、または2mmから3mmの間隔である。いくつかの実施形態では、流路ディスペンサの各アレイは、約1mmから2mmの間隔で配置された配量要素を設けるように構成された流路ディスペンサの少なくとも2つのバンクを備え得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、流路ディスペンサの各アレイおよび/またはバンクは、別々の染料供給タンクを備え得る。各染料供給タンクは、異なる色、トーン、色合い、表面仕上げ、および/または機能を含み得る。
【0107】
代替として、流路ディスペンサの複数のアレイおよび/またはバンクは、単一の共有染料供給タンクを備え得る。
流路ディスペンサの各アレイは、最大で200g/m2の液体染料を織物生地上に配量するように構成され得る。いくつかの実施形態では、流路ディスペンサの各アレイは、最大で150g/m2、120g/m2、100g/m2、80g/m2、60g/m2、または50g/m2の液体染料を織物生地上に配量するように構成され得る。いくつかの実施形態では、流路ディスペンサの各アレイは、0g/m2から200g/m2の間、5g/m2から1500g/m2の間、または10g/m2から80g/m2の間の染料を織物生地上に配量するように構成され得る。
【0108】
代替または追加として、処理ラインは、毎分3から5リットルの間の染料を配量するように構成され得る。いくつかの実施形態では、処理ラインは、毎分2から8リットルの間、1から10リットルの間、および/または0から15リットルの間の染料を配量するように構成される。
【0109】
各配量要素は、0から10m/sの間の速度で染料を配量するように構成され得る。いくつかの実施形態では、配量要素は、最大で1m/s、2m/s、5m/s、8m/s、10m/s、12m/s、15m/s、20m/s、25m/s、および/または30m/sで染料を配量するように構成され得る。
【0110】
各配量要素の流量は、所望の流量の1%以内まで正確であり得る。いくつかの実施形態では、流量は、所望の流量の0.3%、0.5%、0.8%、1%、1.5%、2.5%、および/または10%以内まで正確であり得る。
【0111】
[両面(均質な色/2色/コーティング[2つの機能、色、仕上げ])]
図8は、2パス処理ラインの間の第1のパス上の染料の塗布中の例示的織物生地44を示す。織物生地は、第1の表面45および第2の表面46を有し得、第1のパスは、第1の表面上に染料を配量するように構成され、第2のパスは、第2の表面46上に染料を配量するように構成される。流路ディスペンサ200、201、202、203、および真空室145に対する織物生地44の移動の方向が、矢印D
Sで示されている。染料小滴42が、織物生地44の第1の表面45に向けて吹き付けられる。真空室145は、破線150で示されるように、染料小滴42が織物生地を貫く経路の100%未満に浸透するような気流を生み出すように構成され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、真空室145は、染料小滴42が織物生地を貫く経路の最大で95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、または55%に浸透するような気流を生み出すように構成され得る。真空室145は、染料小滴42が織物生地を貫く経路の少なくとも50%に浸透するような気流を生み出すように構成され得る。好ましくは、真空室145は、染料小滴42が織物生地を貫く経路の50%から95%の間で浸透するような気流を生み出すように構成され得る。最も好ましくは、真空室145は、染料小滴42が織物生地を貫く経路の55%から75%の間で浸透するような気流を生み出すように構成され得る。
【0113】
染料が織物を貫く経路の100%に浸透し、それによって織物生地44の第2の表面46から現れ、真空室に入るのを防止することが意図される。さらに、第2の表面46が、下流側ローラ110に転写され得る染料を受けることも防止し、したがって「オフセッティング」を防止し得る。
【0114】
真空室によって生み出される気流の強さは、様々な織物生地への染料の浸透を最適化するように制御される。織物および染料に応じて、染料が織物生地に完全に浸透しないように、浸透の最適化が適切に設定され得る。
【0115】
図6に示されるように、第2のパスの間に、染料が織物生地44の第2の表面46に塗布され得る。染料小滴42が織物生地44の第2の表面46に向けて吹き付けられ得、真空室146は、染料小滴42が織物を貫く経路の100%未満に浸透するような気流を生み出すように構成され得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、真空室146は、染料小滴42が織物生地を貫く経路の最大で95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、または55%まで浸透するような気流を生み出すように構成され得る。真空室146は、染料小滴42が織物生地を貫く経路の少なくとも50%に浸透するような気流を生み出すように構成され得る。好ましくは、真空室146は、染料小滴42が織物生地を貫く経路の50%から95%の間で浸透するような気流を生み出すように構成され得る。最も好ましくは、真空室146は、染料小滴42が織物生地を貫く経路の55%から75%の間で浸透するような気流を生み出すように構成され得る。
【0117】
したがって、2パス工程は、織物生地厚さの全体にわたって染料を塗布することを可能にする。第1のパスと第2のパスとの間の時間は、織物生地とローラ110との間でオフセッティングが生じないように、染料が乾燥および/または固着することを可能にし得る(染料分子が織物生地内に拡散する場合)。
【0118】
さらに、第1のパスの間に織物生地厚さ内の所与の深さに塗布される染料の濃度は、第1の表面45に塗布される染料の濃度未満となることを理解されたい。しかしながら、第2のパスの間に、染料が織物生地の全体の厚さを貫く経路の少なくとも50%に再び浸透し得、したがって織物生地厚さの少なくとも一部が再コーティングされ得る。第1のパスと第2のパスの両方の間に染料を受ける織物生地の部分も最適化されるように、第1および第2のパスの間の染料の浸透深さが最適化され得る。いくつかの実施形態では、織物生地のいずれも、第1のパスと第2のパスの両方の間に染料を受けない。
【0119】
いくつかの実施形態では、各パスの間に塗布される染料は異なり得る。染料の量すなわち色合い、色、仕上げ、および/または機能は各パスの間で異なり得る。
第1のパスの間に塗布される第1の量の染料が、第1の色、第1の仕上げ、および第1の機能を有し得る。第2のパスの間に塗布される第2の量の染料が、第2の色、第2の仕上げ、および/または第2の機能のうちの少なくとも1つを有し得る。任意の数のパスが使用され得、任意の数および/または組合せの色、仕上げ、および機能が塗布され得る。第1および第2の量の塗布される染料は同一であり得、かつ/または異なる量であり得る。第1および第2のパスの間に異なる量の染料を塗布することが、第1の45および第2の46表面上の染色された織物生地の色合いを制御、変更、および/または調節するために使用され得る。
【0120】
たとえば、染料の色、トーン、および/または色合いが、配量要素のアレイの間で変動することがあり、または変動しないことがある。配量要素の各アレイで配量される染料の仕上げは、たとえば、つや消し、つや、光沢、および/または模様付きのうちの少なくとも1つであり得る。代替または追加として、配量要素の各アレイで配量される染料は、たとえば、耐水性、難燃性、および/または蛍光ラベルのうちの少なくとも1つを与え得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、配量要素の各アレイは、同一の色、仕上げ、および機能を有する同一の染料を配量し得る。
【0122】
[形状/幅]
いくつかの実施形態では、織物生地が処理ライン上に複数回供給され得る。そのようにすることは、任意の数の異なる色、仕上げ、および機能を織物生地に塗布することを可能にする。各流路配量要素には、織物生地のそれぞれの後続の処理の間に異なる用量設定が施され得、色、パターン、仕上げ、色合い、および/または画像の組合せが織物生地上に転写され得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、配量要素の単一のアレイから配量される染料の量が、織物生地の幅および/または長さに沿って変動し得る。たとえば、アレイ内のいくつかの配量要素が、隣接する配量要素と比べて異なる量の染料を配量するようにプロセッサによって調節され得る。いくつかの実施形態では、複数の配量要素が、一時的または永続的に、完全に配量を停止するように構成され得る。これは、水平および/または垂直ストライプなどのパターンを有する織物を製造するために使用され得る。
【0124】
代替または追加として、処理ライン上に織物生地を継続的に供給しながら、織物生地の形状、パターン、別個の長さ、および/または変動する幅が染料に施され得るように、各ディスペンサが、オフ位置とオン位置の間で変更され得るように構成され得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、流路ディスペンサのアレイは約1.8mの幅である。いくつかの実施形態では、流路ディスペンサのアレイは、最大で0.1m、0.3m、0.5m、1m、1.5、1.8m、2m、2.5m、3m、5m、10m、または10mを超える幅であり得る。流路ディスペンサの各アレイは、使用中の、染料を配量する配量要素の幅が、流路ディスペンサのアレイの全体の幅の最大で100%、80%、60%、50%、30%、20%、10%、または10%未満であり得るように構成され得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、処理ラインが、流路配量要素の第1のアレイによって配量された形状および/またはパターンに、流路配量要素の第2のアレイによって配量される形状および/またはパターンを同期するように構成される。たとえば、
図6および8を参照すると、第1のTシャツ形状が、第1のアレイ配量要素138によって織物生地の第1の表面45上に配量され得る。したがって、第2のTシャツ形状が、第1のTシャツ形状とほぼ同一の領域であるが、織物生地の異なる表面上に配量されるように、配量要素139の第2のアレイが、織物生地の第2の表面46上に第2のTシャツ形状に染料を配量するように構成され得る。
【0127】
[インラインでの乾燥および固着(放射/エネルギー[IR/nIR/UV/プラズマ])]
図9は、処理ラインの乾燥段階の一例を示す。乾燥段階140は、織物生地44の上に配置され、電磁波143としてエネルギーを放出するように構成された乾燥ユニット142を備える。乾燥ユニットは、20kWから200kWの間のエネルギーを放出し得る。たとえば、乾燥ユニットは、約50kWのエネルギーを織物生地に伝達するように構成される。したがって、90~150kWの乾燥ユニットが使用され得る。エネルギー放出は、赤外線(IR)、近赤外線(NIR)、中赤外線(MIR)、マイクロ波、および/または紫外線(UV)の形態であり得る。代替または追加として、プラズマ加熱も使用され得る。
【0128】
乾燥ユニット142は、織物生地44の近傍から、蒸気および/または湿度がある場合にそれを除去するように構成された気流をさらに含む。気流は、織物生地の近傍から最大で毎分5リットルの水蒸気を除去するように構成され得る。いくつかの実施形態では、気流は、織物生地の近傍から最大で毎分4、3、2、1.5、1 0.5、および/または0リットルの水蒸気を除去するように構成される。いくつかの実施形態では、除去された水蒸気が廃棄物として処理される。いくつかの実施形態、廃水および/または熱が取り込まれ、リサイクルまたは再利用される。
【0129】
織物生地は、約25%の含水量で乾燥段階に入り得る。いくつかの実施形態では、織物生地は含水量0%~5%で乾燥段階から離れる。いくつかの実施形態では、乾燥段階から離れる織物生地の含水量は2%~10%の間である。
【0130】
乾燥段階は、織物生地の下に配置され、織物生地44に伝達される、放出されるエネルギー量を最適化するように構成された反射器147を備える。
乾燥段階は、織物生地44が乾燥段階から離れるときに織物生地44の温度を測定するように構成された少なくとも1つの温度センサ160を備える。織物生地は、ほぼ室温で乾燥段階に入り、室温は、5℃から45℃の間であり得るが、より好ましくは10℃から35℃の間であり得、最も好ましくは15℃から30℃の間であり得る。乾燥段階の間に、織物生地は、5℃から60℃、より具体的には20℃から40℃の間だけ温度が上昇し得る。たとえば、織物生地は、約25℃で乾燥段階に入り、約60℃で乾燥段階から離れる得る。
【0131】
[塗布での固着]
図10は、乾燥段階140の間の例示的織物生地44を示す。乾燥段階は、最初に染料小滴142の含水量149を低減する。
図11に示されるように、織物生地および染料小滴からの含水量の除去は、水を蒸発させるのに必要とされる蒸発の潜熱による著しい温度上昇を防止する。織物生地の含水量が約10%未満に低下すると、織物生地に対する/織物生地内の染料の固着が生じ始める。
【0132】
いくつかの実施形態では、乾燥段階が、織物生地に染料を少なくとも部分的に固着させるように構成され得る。乾燥ユニット142によって供給されるエネルギーが、織物繊維と反応し、または織物繊維内に拡散するのに十分なエネルギーを有し得る染料の少なくとも一部を局所的に活性化するように構成され得る。これは、化学的または物理的固着工程を開始し得る。したがって、いくつかの実施形態では、染料と織物生地との間の固着工程を開始するために赤外線(IR)が使用され得る。より具体的には、いくつかの実施形態では、染料を含む織物生地の含水量を低減し、付随して染料と織物生地との間の固着工程をするために赤外線(IR)が使用され得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、乾燥ユニットによって放出されるエネルギーが制御され、調節され、かつ/または最適化され得る。さらに、いくつかの実施形態では、乾燥ユニットによって供給されるエネルギーは、乾燥ユニットの長さに沿って非一様であり得る。エネルギーの量、タイプ、および/または波長は、乾燥ユニットの長さに沿って変動し得る。そのようにすることは、染料の吸収、除去もしくは水、および/または染料と織物生地との間の固着工程を最適化することを可能にし得る。たとえば、乾燥ユニットは、織物生地および染料から含水量を効率的に除去するために、当初は織物生地に中赤外線波長を放射し得る。次いで、乾燥ユニットは、さらに工程に沿って、染料と、ポリエステルやナイロンなどの織物生地との間の固着工程を効率的に開始するために、近赤外線(NIR)を放射することに変化し得る。
【0134】
乾燥段階の間に固着工程を開始すること、およびいくつかの実施形態で完了することは、処理ラインの終わりの別々の固着段階の必要を完全に除去するために使用され得る。これは、IRなどの電磁波を使用して固着を乾燥段階に組み込むことに約0.5~10秒かかり得るので、織物生地を処理するためにかかる時間を著しく短縮し得る。
【0135】
乾燥段階の間に織物生地への染料の固着を完了する結果、織物生地が最大で200℃以上の温度に達する。代替または追加として、固着を完了することを可能にするために乾燥段階で織物生地が費やす時間が最大で10秒まで向上され得る。
【0136】
[温度(150℃~240℃)]
図11は、温度の変化が加えられるときに、織物生地上の染料の含水量が時間に対してどのように変動するかの一例を示す。線Aは、乾燥工程の間に含水量が時間に対してどのように減少するかを示す。線Bは、乾燥工程の間に織物生地の温度が時間と共にどのように変動するかを示す。線Cは、織物生地への染料の固着が生じ始める時点を示す。線Bのほぼ水平な部分、すなわち時間に対する織物生地の温度の最小の変化が、織物生地および/または染料内の水の蒸発の潜熱を克服するのに必要なエネルギーの結果として生じる。
【0137】
[化学]
いくつかの実施形態では、処理ラインは、10、7、5、または3未満の成分を含む染料を配量し得る。成分のうちの少なくとも1つは、顔料および水の少なくとも一方であり得る。染料は、ポリエステルなどの疎水性繊維内に物理的に閉じ込められる分散染料であり得る。染料は結合剤を使用して繊維に固着され得、結合剤は繊維と熱的に融合する。染料は、酸塩基静電相互作用などの化学反応を使用して繊維に固着され得る。染料は、2つの液体成分を含む沈殿反応を介して固着され得る。配量される染料のすべて、またはほぼすべてが、最後には織物生地上にあり、したがって簡略化された化学が必要とされる。これは、染色された布から染料の一定の構成部分を除去するために複数の洗浄ステップを使用する現況技術システムとは対照的である。簡略化された化学の結果、染料が安価となり得、必要とされる添加剤が少ないために、環境に対する影響が著しく低くなり得る。さらに、染料は、0.1μmから20μm、0.5μmから10μm、または1μmから5μmの間の平均染料粒子サイズ(D50)を有し得る。
【0138】
本発明の染料は、たとえば、ポリエステル、綿、ナイロン、ポリコットン、エラスタン、およびビスコースを含む任意の織物生地と共に使用され得る。本発明の染料は、たとえば、吹付けおよびインクジェット印刷を含む任意の配量手段と共に使用され得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、染料が染料供給タンク内で継続的に再循環される。染料供給タンク内で染料を継続的に再循環することは、染料粒子の懸濁を保ち、したがって必要とされる均染剤などの助剤が少なくなる。いくつかの実施形態では、染料は軟沈殿懸濁、すなわち流体流で再懸濁され得る分散であり得る。
【0140】
[2.固着の完了]
図12は、処理ライン100のいくつかの実施形態内の固着段階20の一例を示す。織物生地44は、固着エンクロージャを貫く織物生地の経路を画定するように構成された複数のローラ210から216を備える固着エンクロージャ33に入る。任意の数のローラが固着エンクロージャ内で使用され得る。固着エンクロージャからの退出時に、織物生地44は巻戻しモジュール36上に巻かれる。
【0141】
固着エンクロージャは、染料が織物生地内にさらに拡散して生地と化学反応し、生地と熱的に融合することを可能にするように構成される。固着工程は、固体拡散、気相昇華、融解、化学反応、沈殿のうちの少なくとも1つを含み得る。たとえば、染料は昇華を受け得る。いくつかの実施形態では、染料の昇華は、染料が布内に拡散する効率を向上させる。代替として、いくつかの実施形態では、染料の昇華が防止される。染料の昇華を防止することは、固着エンクロージャの温度を低下させること、および/または固着エンクロージャ内の生地によって費やされる時間を短縮することによって達成され得る。
【0142】
[制御(時間)]
複数のローラ210~216は、固着エンクロージャ33内で生地が取らなければならない経路の長さを延長または短縮するために、互いに対して移動するように構成される。たとえば、ローラ211、213、および215がローラ210、212、214、および216に向かって下方に移動し、かつ/またはローラ212および214がローラ211、213、および215に向かって上方に移動する。そのようにすることは、織物生地44の経路の長さを短縮し、したがって固着エンクロージャ33内で織物生地が費やす時間を短縮する。
【0143】
織物生地44は、固着エンクロージャ33内で約60秒を費やし得る。いくつかの実施形態では、織物生地は、固着エンクロージャ内で最大で60、90、120、または180秒を費やし得る。いくつかの実施形態では、織物生地は、固着エンクロージャ内で60、50、40、30、20、10、8、6、5、3、または1秒未満を費やし得る。固着エンクロージャ内で費やされる時間を短縮することは、ポリエステルなどの織物生地44が収縮することを防止し、良好な手触りまたは「風合い」を保証し得る。
【0144】
織物生地は、処理ラインに沿って毎分約25メートルで移動し得る。したがって、織物生地は、毎分約25メートルで固着エンクロージャを貫いて移動し得る。
【0145】
[機械的制御(熱設定/ステンタ)]
バルク固着エンクロージャ33は、100℃から300℃の間にあるように構成され得る。いくつかの実施形態では、固着エンクロージャは、140℃から220℃の間となるように構成され、いくつかの実施形態では、固着エンクロージャは、180℃から200℃の間となるように構成される。固着エンクロージャ33の温度が制御および/または調節され得、したがって室温から300℃の間の任意の温度が達成可能である。
【0146】
いくつかの実施形態では、固着エンクロージャ33が不活性ガスで充填され得る。不活性ガスは窒素および/または蒸気であり得る。
いくつかの実施形態では、固着段階は、固着工程の間に織物生地が収縮するのを防止するように構成された、ステンタなどの機械的制約をさらに備える。機械的制約は、織物生地が収縮するのを防止するために、固着工程の持続時間にわたって織物生地をつかみ、かつ/または引っ張り得る。
【0147】
[IR]
いくつかの実施形態では、固着エンクロージャは赤外線(IR)または近赤外線(NIR)電磁波を含み得る。これは、固着エンクロージャの間にかかる時間を著しく短縮し得る。たとえば、固着室内で織物生地によって費やされる時間は20秒未満であり得る。いくつかの実施形態では、固着室内で織物生地によって費やされる時間は、15、10、8、6、5、4、3、2、または1秒未満であり得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、固着室33が完全に存在しない。そのような実施形態では、固着工程が乾燥段階内で完全に行われ得る。
【0149】
[3.デジタル染色]
図13は、プロセッサ50によって実施される例示的方法の流れ図を示す。入力データ300がプロセッサ50内に入力される。プロセッサは、入力データ300に基づいて少なくとも1つのプロセッサ設定340を決定するように構成されたインテリジェンスモジュール320を備える。次いで、プロセッサ50は、工程設定340に基づいて出力360を生成する。
【0150】
[インテリジェンス(流体塗布/IR/流体固着)]
入力データ300は、織物生地坪量(GSM)、織物生地含水量(%)、織物生地厚さ(mm)、織物生地通気性(H/m)、乾燥工程の前、乾燥工程の間、および/または乾燥工程の後の織物生地温度(℃)、染色工程の前、染色工程の間、および/または染色工程の後の織物生地色(HU)、固着工程の前、固着工程の間、および/または固着工程の後の織物生地色(HU)、固着工程の前、固着工程の間、および/または固着工程の後の織物生地温度(℃)(℃)、処理ライン全体にわたる織物生地速度(m/s)、染料タイプ、染料濃度(mol)、ならびに流量のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、入力データが処理ライン上で計算または測定され得る。
【0151】
インテリジェンスモジュール320は、データを記憶するように構成されたデータベース380を含み得る。データベースは、プロセッサ設定340およびプロセッサ出力360のうちの少なくとも1つと入力データ300をマッチングするように構成されたデータを記憶し得る。たとえば、所与の入力または入力の組合せが、所望の出力および/または最適な出力を生成するためにプロセッサ設定の特定の組合せを必要とし得る。最適な出力が迅速かつ効率的に達成され得るように、データのこの組合せがデータベース内に記憶され得る。そのようにすることは、最適以下の織物生地の量を削減し、したがって完成した織物生地を製造するための時間およびコストを削減する。
【0152】
[制御]
プロセッサ設定340は、配量される染料の流量(l/min)、染色および/または固着段階の間に供給されるエネルギー量(J)、ならびに固着エンクロージャ内の温度(℃)のうちの少なくとも1つを含み得る。これらの設定のうちのそれぞれは、使用中にプロセッサによって調節可能であり得る。
【0153】
[測定]
図14は、少なくとも1つのセンサを備える例示的処理ライン100を示す。少なくとも1つのセンサは、入力データ300を決定するように構成され得る。入力データは、染色工程の前、染色工程の間、または染色工程の後に決定され得る。処理ラインは、織物生地の坪量を決定するように構成された第1のセンサ400と、織物生地の含水量を決定するように構成された第2のセンサ404と、流路ディスペンサ138の第1のアレイによって配量されている染料の流量を決定するように構成された第3のセンサ408と、第1の乾燥段階140の後に織物生地の温度を決定するように構成された第4のセンサ412と、第1の乾燥段階140の後に織物生地の色を決定するように構成された第5のセンサ416と、流路配量要素139の第2のアレイによって配量されている染料の流量を決定するように構成された第6のセンサ420と、第2の乾燥段階141の後に織物生地の温度を決定するように構成された第7のセンサ424と、第2の乾燥段階141の後に織物生地の色を決定するように構成された第8のセンサ428と、第1の真空室145の流量を決定するように構成された第9のセンサ432と、第2の真空室146の流量を決定するように構成された第10のセンサ436と、固着段階20の後に織物生地の色を決定するように構成された第11のセンサ440とを備える。
【0154】
図15Aは、織物生地のほぼ水平な表面に第1および第2の染料が塗布される処理ライン100を示す。処理ラインは、織物生地の第1のほぼ水平な表面185を染色されるように構成された第1の染色および乾燥/固着段階180と、織物生地の第2のほぼ水平な表面186を染色するように構成された第2の染色および乾燥/固着段階181とを備える。第1の染色および乾燥/固着段階180と、第2の染色および乾燥/固着段階181との間で、複数のローラ110を使用して織物生地が反転される。
【0155】
図15Bは、織物生地のほぼ垂直な表面に染料が塗布される例示的処理ラインを示す。処理ラインは、織物生地の第1の表面187を染色するように構成された第1の染色および乾燥/固着段階180と、織物生地の第2の表面188を染色するように構成された第2の染色および乾燥/固着段階181とを備える。第1の段階180および第2の段階181は、織物生地の同一のスパン上に設けられ、すなわちローラ110が第1の段階180と第2の段階181との間で布方向を変更することなく設けられる。ローラ110は、第1の段階180も第2の段階181も垂直に近づき過ぎないように、織物生地が水平に対してほぼ45°に移動しているように構成される。これは、染料が少なくとも部分的に重力供給される方が容易であるからである。図示される例は、第1の段階180と第2の段階181の偏位を示すが、布が両端から同時に染色されるようにそれらを位置合せすることも可能である。
【0156】
図15Cは、織物生地44の経路を決定するように構成されたドラム111を備える処理ライン110を示す。ローラ110の代わりにドラム111を使用することは、生地との接触領域を増大させ、処理ライン上の移動する構成要素の総数を減少させる。
【0157】
[切換え(流体)]
図16は、本発明の配量要素についての染料供給、循環、および排水システムを示す。流路ディスペンサ200は、液体染料を収容するように構成された染料保持タンク500と流体連通している。最初に、染料保持タンク500には染料がないことがある。保持タンク500は、供給入口510および戻り出口520を介して供給タンク34と流体連通している。供給入口510は、ワイヤ516を介して保持タンク液面センサ514に動作可能に接続された入口ポンプ512を備える。保持タンク液面センサ514は、保持タンク500内の染料の液面、したがって容積を監視するように構成される。入口ポンプ512は、供給タンク34から保持タンク500に染料をポンピングするためにオンにされる。次いで、保持タンク500内の液面が所定の液面に達すると、ポンプ512はオフにされる。次いで、システムは使用する準備ができている。
【0158】
保持タンク内の染料の液面および/または容積が所定の液面および/または容積未満に低下したとき、液面センサ514は、ポンプ512をオンにし、供給入口510を介して供給タンク34から保持タンク500に染料をポンピングするように構成される警報を発行する。保持タンク内の染料の液面および/または容積が所定の液面および/または容積に達すると、液面センサ514は、ポンプ512にオフするように警報を送り、したがって染料の供給過剰を防止する。染料が配量要素200から配量されているとき、保持タンク内の染料の液面および/または容積がほぼ一定のままとなるように、この工程が継続的に運用される。
【0159】
保持タンクは、染料保持タンク500から供給タンク34に染料をポンピングするように構成された出口ポンプ522を含む戻り出口520をさらに備える。
供給入口510および入口ポンプ512はオフにされ/閉じられ得る。次いで、戻り出口520および出口ポンプ522は、保持タンク500から染料のほぼすべてを排出するように構成される。これは、供給タンク500および配量要素200を洗浄し、維持し、かつ/または染料色、表面仕上げ、機能、および/または任意の他の特性を変更することを可能にする。たとえば、供給タンク34が新しい供給タンクに交換され得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、供給入口510および戻り出口520が同時に動作する。これは、供給タンク34から保持タンク500へ、そして再び戻る染料の連続的再循環を可能にする。配量要素が使用中であるとき、保持タンク内の染料の液面および/または容積がほぼ一定のままとなるように、供給入口510は戻り出口520よりも高い流量を有し得る。戻り出口520での流量は約50ml/分であり得る。代替または追加として、戻り出口520での流量は、供給入口510の流量の約10%であり得る。供給入口510および戻り出口520を使用して染料を再循環させることは、染料内の粒子の懸濁を保つために使用され得、したがって染料内で必要とされる添加剤または薬剤の数が削減される。
【0161】
いくつかの実施形態では、保持タンク500内の染料の液面および/または容積が変動し得る。いくつかの実施形態では、液面センサは、保持タンク500内の染料の液面が所定のしきい値未満の液面に達したとき、入口ポンプ516に警報するように構成される。所定のしきい値液面は、配量要素200の上端と同水準にあり得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、保持タンク500は真空入口530を備える。真空入口530は、保持タンク500内の負の圧力を生み出すように構成された真空ポンプ535に接続される。保持タンク内の負の圧力は、染料が配量要素200から配量されることを防止するように構成され得る。たとえば、保持タンク500が染料で満たされるとき、配量要素200も染料で満たされ始める。ある時点で、保持タンクが部分的に満たされるとき、配量要素200は満杯となる。しかしながら、保持タンク500内の、真空入口530によって生み出される負の圧力の注意深い制御により、配量要素から染料が滴下し、かつ/または配量されることが防止され得、したがって保持タンク500を所望の液面まで満たすことが可能となる。
【0163】
いくつかの実施形態では、保持タンク500および/または配量要素200が所望の量の染料を含むと、配量要素が所定の量の染料を配量するように、保持タンク内の負の圧力が低減され得る。これは、正しい染料がシステム内に存在することを確認することに加えて、システムが動作効果的かつ効率的であることを保証するために使用され得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、染料が配量要素200に完全に入ることを防止するように、真空入口530が保持タンク500内の負の圧力を生み出すために構成される。
図17は、保持タンク500を備える配量要素についての例示的染料供給、循環、および排水システムを示す。保持タンク500は、コンジット555を介して保持タンク510と流体連通しているヘッダタンク550を備える。真空入口530および供給入口514がヘッダタンク550に接続され得る。
【0165】
真空入口530は、真空入口530に意図せずに吸引される任意の染料を収集するように構成された滴下タンク560と流体連通している。滴下タンク560は、染料が真空ポンプ535に入ることを防止するように構成される。
【0166】
供給入口510、供給ポンプ512、保持タンク500、コンジット555、ヘッダタンク550、戻り出口520、および出口ポンプ522の少なくとも1つが、テフロン(登録商標)などの疎水性材料でコーティングされる。コーティングは、染料と流体接触することが意図される任意の表面に適用される。
【0167】
配置される切換え方法は、特定の染料および染色すべき織物の要件に従って変更され得る。しかしながら、工程は概して、ヘッダタンク550からすべての残りの染料を除去するために供給ポンプ512および出口ポンプ522のスイッチオフが開始されることを含む。次いで、洗浄サイクルが開始され得、水および洗剤がヘッダタンク550内に導入され、次いでヘッダタンク550から流される。染料、具体的には染料の色の性質に応じて、1つまたは複数の洗浄サイクルが設けられ得る。各洗浄サイクル内の洗剤の投与は、第1の洗浄サイクルで与えられる最大の洗剤と、最後の洗浄サイクルで与えられる最小の洗剤に変更され得る。実際、最後の洗浄サイクルは、洗剤を全く用いずに達成され得る。最後の洗浄サイクルが完了すると、ヘッダタンク550に新しい染料が補充され得る。洗浄サイクル数の選択に関連して、切換え前および切換え後の2つの染料の色が考慮に入れられ得る。たとえば、黄色の染料から黒色に変更することは、単一の洗浄サイクルで達成可能であり得るのに対して、黒色の染料から黄色に変更することは、3つの洗浄サイクルを必要とし得る。