(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】圧延接合されたろう付けシートのための中間ライナー
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20241113BHJP
B23K 35/22 20060101ALI20241113BHJP
B23K 35/28 20060101ALI20241113BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C22C21/00 E
C22C21/00 J
C22C21/00 D
B23K35/22 310E
B23K35/28 310B
B32B15/04 B
(21)【出願番号】P 2021562360
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 US2019028824
(87)【国際公開番号】W WO2020219032
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-04-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520119242
【氏名又は名称】アーコニック テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ARCONIC TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】バウマン,ステフェン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】レン,バオルート
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-240084(JP,A)
【文献】特開2009-167509(JP,A)
【文献】特開平11-140574(JP,A)
【文献】特開2007-152422(JP,A)
【文献】特開2007-152421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0237793(US,A1)
【文献】特開2009-197300(JP,A)
【文献】特開2001-269794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00 - 21/18
B23K 35/00 - 35/40
B32B 15/00 - 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層シート材料であって、
2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のうちの1つのアルミニウム合金のコアと、
4XXXアルミニウム合金のろう付けライナーと、
中間ライナーと、を備え、前記中間ライナーが、
0.31~1.0重量%のSi、
0.1重量%未満のMg、
0.2~0.35重量%のMn、
最大0.1重量%のZn、
最大0.3重量%のFe、
最大0.2重量%のCu、
最大0.05重量%のTi、を含むと共に、
任意選択で最大0.125重量%のZr、を含み、
残部Al及び他の元素であって、前記他の元素は各々が0.05重量%以下で合計が0.15重量%以下である合金からなる、多層シート材料。
【請求項2】
前記中間ライナーが、
0.34~0.5重量%のSiと、
0.05重量%未満のMgと、
0.25~0.35重量%のMnと、
最大0.05重量%のZnと、
最大0.05重量%のCuと、を含有する、請求項1に記載のシート材料。
【請求項3】
前記中間ライナーが、0.4~0.5重量%のSiを含有する、請求項2に記載のシート材料。
【請求項4】
前記中間ライナーが、0.25~0.34重量%のMnを含有する、請求項2に記載のシート材料。
【請求項5】
前記中間ライナーが、0.05~0.1重量%のZnを含有する、請求項1に記載のシート材料。
【請求項6】
前記コアが、3003アルミニウム合金である、請求項1に記載のシート材料。
【請求項7】
前記コアが、 0.1~1.0重量%のSiと、最大0.5重量%のFeと、0.2~1.0重量%のCuと、1.0~1.5重量%のMnと、0.2~0.3重量%のMgと、最大0.05重量%のZnと、0.1~0.2重量%のTiと、を含む、請求項1に記載のシート材料。
【請求項8】
前記ろう付けライナーが、6.8~8.2重量%のSiと、最大0.8重量%のFeと、最大0.25重量%のCuと、最大0.1重量%のMnと、最大0.2重量%のZnと、を含む、請求項1に記載のシート材料。
【請求項9】
前記中間ライナーおよび前記ろう付けライナーの遠位にある前記コア上に配置された別のライナーをさらに備える、請求項1に記載のシート材料。
【請求項10】
前記別のライナーが、第2のろう付けライナーおよび第2の中間ライナーを含み、前記第2の中間ライナーが、前記コアと前記第2のろう付けライナーとの間に配置されている、請求項
9に記載のシート材料。
【請求項11】
前記中間ライナーが、0.34~0.5重量%のSiを含有する、請求項1に記載のシート材料。
【請求項12】
前記中間ライナーが、0.05重量%未満のCuを含有する、請求項
11に記載のシート材料。
【請求項13】
前記シート材料が、0.09mm~2.85mmのコア厚さを含む、0.1mm~3.0mmの合計厚さを有し、前記ろう付けライナーが、2.5%~20%のクラッド比を有し、前記中間ライナーが、2.5~20%のクラッド比を有する、請求項1に記載のシート材料。
【請求項14】
前記シート材料が、Oテンパーである、請求項1に記載のシート材料。
【請求項15】
請求項1に記載のシート材料を含む管、フィン、ヘッダプレート、またはタンクのうちの少なくとも1つを備える、熱交換器。
【請求項16】
多層シート材料であって、
2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のうちの1つのアルミニウム合金のコアと、
4XXXアルミニウム合金のろう付けライナーと、
中間ライナーと、を備え、前記中間ライナーが、
0.31~1.0重量%のSi、
0.1~0.5重量%のMg、
0.05~0.3重量%のMn、
最大0.1重量%のZn、
最大0.3重量%のFe、
最大0.2重量%のCu、
最大0.05重量%のTi、を含むと共に、
任意選択で最大0.125重量%のZr、を含み、
残部がAl及び他の元素であって、前記他の元素は各々が0.05重量%以下で合計が0.15重量%以下である合金からなる、多層シート材料。
【請求項17】
前記中間ライナーが、0.05~0.1重量%のZnを含有する、請求項
16に記載のシート材料。
【請求項18】
ろう付けシートを作製するための方法であって、
請求項1、2、3、4、5、
11、12、16または17の何れかに記載された中間ライナーの層を提供するステップと、
2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のうちの1つから選択されるコア材料の層を提供するステップと、
4XXXアルミニウム合金のろう付けライナー材料の層を提供するステップと、
前記中間ライナーの層、前記コア材料の層、および前記ろう付けライナー材料の層をスタックに積み重ねるステップであって、前記中間ライナーが、前記コア材料の層と前記ろう付けライナー材料の層との間に配置される、積み重ねるステップと、
前記スタックを圧延して、接合多層ろう付けシートを形成するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付けシート材料、熱交換器、これらを作製するための方法、より具体的には、圧延接合によって形成された多層アルミニウム合金のろう付けシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コア、ろう付けライナー、および中間ライナーを形成するための異なるアルミニウム合金の複数の層が積み重ねられ、圧延ミルを通過する、圧延接合多層ろう付けシート材料が知られている。典型的には、層のスタックが予め加熱され、圧延ミルがスタックに高い圧力を及ぼすことにより、スタックの累積厚さが低減し、ならびに個々の層の厚さが低減する。圧延プロセスおよび厚さの減少によりまた、個々の層が互いに接合し、複数の層を有する単一の複合シートの厚さが低減する。中間ライナー/中間ライナー層を多層ろう付けシートで使用して、例えば、耐食性の減少につながる、ろう付け中のコアとろう付けライナーとの間の元素の移動を低減することができる。EGR(排ガス再循環)関連のCAC(チャージエアクーラー)などの低pH環境下では、コア材料は、中間ライナーの保護なしに、容易に、粒間腐食などの腐食の影響を受けやすい可能性がある。米国ペンシルベニア州ピッツバーグのArconic,Inc.から入手可能な合金0140またはAA1145などの既知の中間ライナーは、圧延接合してラミネートを形成する場合に、隣接する層に接合する際に困難を呈する場合がある。既知の方法、材料、および装置にもかかわらず、多層圧延接合ろう付け加熱材料を作製するための代替的な方法、装置、および材料は依然として望ましい。
【発明の概要】
【0003】
開示される主題は、多層シート材料であって、2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のうちの1つのアルミニウム合金のコアと、4XXXアルミニウム合金のろう付けライナーと、中間ライナーと、を有し、中間ライナーが、0.31~1.0重量%のSi、<0.1重量%のMg、0.25~1.0重量%のMn、最大5.0重量%のZn、最大0.3重量%のFe、最大0.2重量%のCu、最大0.125重量%のZr、各々が≦0.05重量%であり、合計が≦0.15重量%である他の元素、を含み、残りがAlである、組成を有する、多層シート材料に関する。
【0004】
別の実施形態では、中間ライナーは、0.34~0.5重量%のSiと、<0.05重量%のMgおよび0.25~0.35重量%のMnと、≦0.05重量%のZnと、≦0.3重量%のFeと、≦0.05重量%のCuと、を含有する。
【0005】
別の実施形態では、中間ライナーは、ろう付けライナーとコアとの間に配置されている。
【0006】
別の実施形態では、中間ライナーは、0.4~0.5重量%のSiを含有する。
【0007】
別の実施形態では、中間ライナーは、0.25~0.34重量%のMnを含有する。
【0008】
別の実施形態では、中間ライナーは、0.05~5.0重量%のZnをさらに含む。
【0009】
別の実施形態では、MgおよびMnのうちの少なくとも1つの存在に起因する中間ライナーにおける流れ応力の増加は、MgおよびMnのうちの少なくとも1つの存在を伴わずに、中間ライナーにおける流れ応力に対して20%~52%の範囲内である。
【0010】
別の実施形態では、コアは、3003アルミニウム合金である。
【0011】
別の実施形態では、コアは、0.1~1.0重量%のSiと、最大0.5重量%のFeと、0.2~1.0重量%のCuと、1.0~1.5重量%のMnと、0.2~0.3重量%のMgと、最大0.05重量%のZnと、0.1~0.2重量%のTiと、を含む。
【0012】
別の実施形態では、ろう付けライナーは、6.8~8.2重量%のSiと、最大0.8重量%のFeと、最大0.25重量%のCuと、最大0.1重量%のMnと、最大0.2重量%のZnと、を含む。
【0013】
別の実施形態では、中間ライナーおよびろう付けライナーの遠位にあるコア上に配置された別のライナーをさらに含む。
【0014】
別の実施形態では、この別のライナーは、第2のろう付けライナーおよび第2の中間ライナーを含み、第2の中間ライナーは、コアと第2のろう付けライナーとの間に配置されている。
【0015】
別の実施形態では、中間ライナーは、0.34~0.5重量%のSiと、最大0.1重量%のZnと、を含有し、最大0.3重量%のFeと、最大0.2重量%のCuと、残りがAlであり、各々が<0.05重量%であり、合計が0.15重量%である他の元素と、をさらに含む。
【0016】
別の実施形態では、中間ライナーは、<0.05重量%のCuを含有し、最大0.125重量%のZrをさらに含む。
【0017】
別の実施形態では、シート材料は、0.09mm~2.85mmのコア厚さを含む、0.1mm~3.0mmの合計厚さを有し、ろう付けライナーは、2.5%~20%のクラッド比を有し、中間ライナーは、2.5~20%のクラッド比を有する。
【0018】
別の実施形態では、シート材料は、Oテンパーである。
【0019】
別の実施形態では、熱交換器は、シート材料を含む管、フィン、ヘッダプレート、またはタンクのうちの少なくとも1つを有し、シート材料は、2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のうちの1つのアルミニウム合金のコアと、4XXXアルミニウム合金のろう付けライナーと、中間ライナーと、を有し、中間ライナーは、0.31~1.0重量%のSi、<0.1重量%のMg、0.25~1.0重量%のMn、各々が≦0.05重量%であり、合計が≦0.15重量%である他の元素、残りがAlである、組成を有する。
【0020】
別の実施形態では、多層シート材料は、2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のうちの1つのアルミニウム合金のコアと、4XXXアルミニウム合金のろう付けライナーと、中間ライナーと、を有し、中間ライナーは、0.31~1.0重量%のSi、0.1~0.5重量%のMg、0.05~0.3重量%のMn、最大5.0重量%のZn、各々が≦0.05重量%であり、合計が≦0.15重量%である他の元素、残りがAlである、組成を有する。
【0021】
別の実施形態では、中間ライナーは、0.05~5.0重量%のZnを含有する。
【0022】
別の実施形態では、ろう付けシートを作製するための方法は、
中間ライナーの層を提供するステップであって、中間ライナーの層が、0.31~1.0重量%のSi、<0.1重量%のMg、0.25~1.0重量%のMnを含む、提供するステップと、2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のうちの1つから選択されるコア材料の層を提供するステップと、4XXXアルミニウム合金のろう付けライナー材料の層を提供するステップと、中間ライナーの層、コア材料の層、およびろう付けライナー材料の層をスタックに積み重ねるステップであって、中間ライナーが、コア材料の層とろう付けライナー材料の層との間に配置される、積み重ねるステップと、スタックを圧延して、接合された多層ろう付けシートを形成するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示をより完全に理解するために、添付の図面と併せて考慮される例示的な実施形態の以下の詳細な説明を参照する。
【0024】
【
図1】本開示の一実施形態による、ろう付けシートの線図である。
【
図2】本開示の別の実施形態による、ろう付けシートの線図である。
【
図3】複数の材料についての応力対歪みのグラフである。
【
図4】複数の材料についての流れ応力対歪み速度のグラフである。
【
図5】予歪みを受けなかった複数のろう付け後の多層材料の微細構造の画像のセットである。
【
図6】予歪みを受けた複数のろう付け後の多層材料の微細構造の画像のセットである。
【
図7】腐食試験に応答した、複数の材料についての腐食深度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の一態様は、ろう付けシートが、いくつかの目的、例えば、軽量、高強度、および耐食性を有し、さらにこれらの属性がしばしば矛盾するという認識である。例えば、ろう付けシートのコア層に3XXXアルミニウム合金を使用することは、ろう付け後のシート材料の全体的な強度に寄与するが、典型的な4XXXろう付けライナーは、ろう付け時に重度の液膜移動(LFM)を引き起こし、耐食性の低減をもたらす。これは、3XXXコアおよび4XXXろう付けライナー(ろう付け層としても知られる)を使用したOテンパーろう付けシート(またはろう付けシート)に関して特に当てはまる。Arconic合金0140およびAA1145などの高純度アルミニウム合金から作製された中間ライナー(層間または中間ライナー層としても知られる)を保護層として使用して、耐食性の改善をもたらすことができるが、かかる中間ライナー材料は、場合によっては、圧延接合の欠陥をもたらし、中間ライナー界面において、コアおよびろう付け層の全体または一部のデラミネーション(ブリスタリング)を生じさせる。
【0026】
本開示の一態様は、高純度の中間ライナー合金が軟質である、特に、例えば、3003アルミニウム合金などの2XXX、3XXX、5XXX、および6XXX合金シリーズのコア合金、ならびに/または4047、4045、4343、4147、4004、4104合金、および亜鉛添加物を含むこれらの合金の誘導体などの4XXXろう付け合金、に対して軟質であるという認識である。多層ろう付け製品の典型的な圧延温度は、700~1000°Fの範囲を有し、特定の製造プロセスおよび圧延される材料に基づいて変化し得る。この温度範囲での圧延中、これらの合金の流れ応力の大きな差異により、材料が明確に変形する可能性があり、これは、接合製品を形成することへの課題を提示する。圧延温度でのこれらの層の流れ応力は、それらの機械的挙動を定義し、圧延挙動および接合性に関連する。
【0027】
本開示の一態様は、圧延接合多層シートの様々な層、例えば、コアおよび/またはろう付けライナーに対する中間ライナーの流れ応力のより小さな差異が、多層間のより良好な接合を生じさせ得るという認識、ならびに多層圧延接合シートの層の流れ応力の値がより近い場合に、多層シートを圧延接合することによって生成される接合が容易になるという認識である。「接合性」という用語を使用して、圧延接合することによって一緒に接合される隣接する層の性質を示すことができる。例えば、より高い接合性を有する隣接するシートは、より低い接合性を有する隣接するシートと比較して、圧延接合時に、互いにより容易に、および/またはよりうまく接合することになる。
【0028】
本出願の一態様は、多層圧延接合ろう付けシート中の比較的軟質の層の流れ応力が、軟質層を強化して、それが接合される他の層の流れ応力により密接に近づく元素を添加することによって調節され得るという認識、ならびにこの硬さの調節が、以前より軟質の層の接合性を改善するであろうという認識である。
【0029】
本開示の一態様は、多層圧延接合ろう付けシート中の軟質層を強化することが、流れ応力の増加をもたらすという認識である。さらに、その圧延接合は、隣接する層の流れ応力の値が互いに近い場合に促進される。例えば、Arconic合金0140(表2、IL0を参照)から作製された中間ライナー層に関して、この合金は、900°Fにおいて、0.01、0.1、および1/秒の歪み速度で、それぞれ1.25、1.91、および3.15ksiの流れ応力を有するように観察され得る(以下の表4を参照)。比較すると、3003などの3XXXコア合金の流れ応力は、0.01、0.1、および1/秒の歪み速度で、それぞれ2.09、3.19、および5.16ksiの流れ応力を有し、4343などの4XXXろう付けライナーは、0.01、0.1、および1/秒の歪み速度で、それぞれ1.7、2.62、および4.55ksiの流れ応力を有する(表4)。0.2~0.3重量%のMnを0140アルミニウム合金(表2のIL4、IL5、およびIL6)に添加することによって、流れ応力を、0.01、0.1、および1/秒で、IL4では、それぞれ1.72、2.35、および3.78ksi、IL6では、1.9、2.6、および3.87ksiに増加させることができ、20%~52%の流れ応力の増加を表す。0.1~0.4重量%のMgを0140アルミニウム合金(表4のIL7、IL8、およびIL10合金)にさらに添加することにより、結果として生じる合金の流れ応力をより高いレベルに増加させることができる。複数のアルミニウム合金の層に対する良好な圧延接合は、下のアルミニウムを冶金学的に接合することができるように、すべての表面の酸化アルミニウムを同時に破壊することを必要とする。より軟質の中間ライナーを使用して多層材料を作製する場合、それをより容易に変形させることができるが、より硬質のろう付けライナーおよびコア合金の両方が比較的低い量の変形を有する。ろう付けライナーおよびコアのより低い変形は、表面酸化物を分解するのにあまり効果的ではなく、中間ライナーとの良好な冶金的接合の形成をより困難にする。本開示によれば、良好な接合を促進するために、層間の流れ応力の差異がより小さいことが好ましい。中間ライナーとろう付けライナーとの間の流れ応力のより緊密な一致は、圧延接合にとって有益であり、多層ろう付けシート中のろう付けライナーと中間ライナー合金との間にしばしば見られるブリスタを防止するのに役立つ。
【0030】
図1は、3XXXシリーズのアルミニウム合金のアルミニウム合金コア12、例えば、以下の表1のコアB合金、Arconic合金0359を含む、ろう付けシート材料10を示しており、組成が示されている。1つの実施形態では、コアは、≦0.2重量%のSi、≦0.35重量%のFe、0.4~0.6重量%のCu、1.0~1.3重量%のMn、0.2~0.3重量%のMg、≦0.05重量%のZn、0.1~0.2重量%のTi、の組成であって、残部が、Alおよび避けられない不純物である、組成を有する。
図1のろう付けシート10は、4XXX(4000)シリーズのアルミニウム合金、例えば、4343のベース組成を有するろう付けライナー(層)14を含む。1つの実施形態では、ろう付けライナー14は、6.8~8.2重量%のSi、≦0.8重量%のFe、≦0.25重量%のCu、≦0.1重量%のMn、≦0.2重量%のZn、の組成であって、残部が、Alおよび避けられない不純物である、組成を有する。中間ライナー(中間ライナー層)16は、コア12とろう付けライナー14との間に位置付けられる。1つの実施形態では、中間ライナー16(表2のIL0、0140)は、0.34~0.5重量%のSi、<0.3重量%のFe、<0.05重量%のCu、<0.1重量%のMnおよび<0.05重量%のMg、<0.1重量%のZnの組成を有する。これは、中間ライナー16中のMnおよび/またはMgの存在に鑑みて、改良された1XXXシリーズのアルミニウム合金として説明され得る。1つの実施形態では、0140アルミニウム合金は、最大0.10~0.30重量%のMn、または0.10~0.40重量%のMgを添加することによって改良することができ、代替的にまたは組み合わせることができる。最大0.2重量%のCu、および最大0.125重量%のZrを添加することも、これらの強化効果について研究した。別の実施形態では、中間ライナーは、0.31~1.0重量%のSi、最大0.1重量%のMg、および0.25~1.0重量%のMnを有する。
【0031】
ろう付けシート材料10は0.1~3mmの厚さの範囲を有し、コアは0.1~2.85mmの厚さを有し、ろう付けライナーは0.005~0.6mmの厚さ、または2.5~20%のクラッド比を有し、中間ライナーは0.005~0.6mmの厚さ(2.5~20%のクラッド比)を有する。
【0032】
図2は、ろう付けライナー64、中間ライナー66、コア62、別のろう付けライナー68、および別の中間ライナー70を有する、多層(4層または5層)ろう付けシート20を示す。ろう付けライナー64および68は、4343、4045、および4047合金などの、4XXXシリーズのアルミニウム合金で作製され得る。コア62は、3003合金などの、2XXX、3XXX、および6XXX合金で作製され得る。上述のように、中間ライナー66および70は、ある量のMnおよび/またはMgを含む、高純度のアルミニウム合金で作製され得る。ろう付けライナー64は、典型的には、中間ライナー66と外部環境Oとの間に介在するろう付けシート20から形成される構造の外部表面を形成するために使用され得る。中間ライナー70は、任意選択である追加のろう付けライナー68がない場合、コア62と、ろう付けシート20から形成される構造の内部環境Iとの間に介在するように使用され得る。存在する場合、ろう付けライナー68は、中間ライナー70と内部環境Iとの間に介在する構造の内部表面を形成することになる。中間ライナー66、70中の0.25~1.0重量%または0.25~0.35重量%のMnの量は、圧延温度における流れ応力の劇的な増加を示した。0.2重量%のMnの添加もまた、中間ライナー合金IL0(以下の表2)などの高純度の中間ライナーと比較して、流れ応力の効果的な増加を示す。別の実施形態では、Siは、0.4~0.5重量%の量で存在し得る。
【0033】
別の実施形態では、少量、すなわち、0.05~0.3重量%のMnを含むか、または潜在的に含まない、0.10~0.5重量%のMgは、上述のように、0.25~1.0重量%のMnの存在と同様の有益な効果を提供し得る。
【0034】
別の実施形態では、最大5重量%の亜鉛の添加が、本明細書のろう付けライナーおよび中間ライナー合金の流れ応力およびLFM挙動を変化させることなく、耐食性を補助するために、本開示に従って中間ライナー合金に添加され得る。1つの実施例では、内部環境Iは、内燃機関からの排ガスであってもよく、外部環境Oは、空気または冷却剤であってもよい。
【0035】
本開示の一態様は、3XXXシリーズの合金などの高強度アルミニウム合金を含むろう付けシート中に中間ライナーが使用される場合、中間ライナーは、ろう付け中に著しい液膜移動(LFM)を経験する傾向があり、これは、耐食性に悪影響を及ぼす可能性があるという認識である。これは、Oテンパー材料に特に当てはまる。ろう付けシートは、多くの場合、Oテンパー、すなわち、完全にアニールした後に供給される。Oテンパーろう付けシートは、シートを、EGRタイプのCAC(チャージエアクーラー)および熱交換器部品、例えば、管、エンドプレート、マニホールド、コレクタータンクなどといった構成要素を作製するために必要とされる必要な形状に形成することを可能にする、良好な形成性を示す。これらの多層材料で作製された構成要素が腐食環境に曝露された場合に、中間ライナーの腐食保護機能を維持することが重要である。多層シート材料を形成することによって、Oテンパーが好ましい場合、形成プロセスが、形成された形状内に、材料中の残留歪みを作り出す場合がある。Oテンパーの、低い残留歪み(すなわち、<10%)を有する3XXX中間ライナーを含む多層ろう付けシートは、ろう付け充填剤材料と反応することによって、ろう付け中に重度のLFMを経験し得ることが知られている。この理由から、0140などの、高純度の中間ライナー合金は、ろう付けサイクル中の早期に再結晶するため好ましく、LFMを防止することができる。本開示の一態様は、圧延接合の改善のためにより高い流れ応力を達成するための、およびまた、例えば、3XXX合金の中間ライナーよりも耐食性に対するLFMの影響がはるかに少ない、強化元素およびこれらの濃度限界の識別である。本開示のさらなる態様は、耐食性を減少させることなくLFMを最小化すると同時に、圧延接合性の改善を達成することである。本開示による中間ライナー16は、ろう付けライナー14を介して、LFMに対する良好な耐性、耐食性、およびろう付け性を保ちながら、圧延接合を促進する。中間ライナー16が、0.34重量%を超えるMnなどの強化元素を含み、ろう付け前に形成プロセスからの少量の歪みを経験する場合、LFMは、中間ライナー層の微細構造および化学組成を変化させることができる。これは、概して、ろう付けされた熱交換器または他の構成要素には好ましくなく、重度のLFMを示した、
図6に示されるIL8によって例示される。
【0036】
図1に示されるろう付けシート材料10は、EGRタイプのCACおよび蒸発器熱交換器などの、腐食性の環境で使用される熱交換器を作製するために使用される材料として、特に好適であり得る。これらの用途では、ろう付けシート材料は、通常の使用の商業的に許容可能な期間にわたって、腐食することなく、空気、冷却剤、および排ガスなどといった、適用可能な内部および外部流体への曝露に耐えるように耐食性でなければならない。さらに、結果として得られる熱交換器HEは、強靭で軽量でなければならない。
【0037】
<製造方法-組成>
様々な組成を有するコア、中間ライナー、およびろう付けライナーの様々な実施例を調製した。コア合金の組成を表1に示し、中間ライナーの組成を表2に示し、ろう付けライナーの組成を表3に示す。「0359」(表1)および「0611」(表2)として識別される合金は、米国ペンシルベニア州ピッツバーグのArconic,Inc.が販売する合金である。
【表1】
【表2】
【表3】
【0038】
本明細書に開示されるコア、ろう付けライナー、および中間ライナーの組成の各々において、組成は、組成の残部として、すなわち、各々が≦0.05であり、合計が≦0.15重量%である、アルミニウムおよび不純物と共に列挙される各々の重量パーセントで表わされる、アルミニウム合金である。元素の組成範囲は、本明細書に文字通り表されるように、すべての中間値を含む。例えば、上記の組成において、0.1~0.3重量%の範囲のMnは、0.01重量%の増分で、0.01、0.02、0.03、0.04...、0.28、0.29、および0.30重量%、ならびに0.11、0.24重量%などといったすべての中間値を含む。
【0039】
<ろう付けシートの調製に使用される機械的および熱的方法>
製作実験には、
図1に示される3層構造の、高強度コア合金、4XXXろう付けライナー合金、および中間ライナー合金のインゴットを鋳造することが含まれるが、これに限定されない。一部の実施形態では、中間ライナーインゴットは、中間ライナー層に圧延する前に、最大24時間の浸漬時間にわたって、450℃~550℃の範囲の温度で予加熱または均質化に供され得る。高強度コアインゴットもまた、同様の熱処理に供され得る。一部の実施形態では、インゴットは、圧延前に熱処理に供されない。一部の実施形態では、高強度コアインゴットは、熱間圧延前に熱処理に供されない。3層ろう付けシートは、ろう付けライナー、中間ライナー、およびコアを有する。ろう付けライナーおよび中間ライナーは各々、シートの合計厚さの5~30%に寄与し得る。
【0040】
一部の実施形態では、スタックアップ/複合材は、熱間圧延の再加熱プロセスに供される3層からなる。熱間圧延温度は、400℃~520℃の範囲である。
【0041】
一部の実施形態では、結果として得られる多層複合材は、中間ゲージに冷間圧延され、次いで、340℃~420℃の範囲の温度で最大8時間の浸漬時間、中間アニールを通過する。中間アニール後、複合材は、再度、0.1~3mmのライトゲージまたは最終ゲージに冷間圧延される。一部の実施形態では、材料は、2つ以上の中間アニールに供され、次いで、ライトゲージに圧延され、その後別の中間アニールを供され得る。一部の実施形態では、最終ゲージで材料は、150℃~420℃の範囲の温度で最大8時間の浸漬時間、最終部分アニールまたは完全アニールに供される。
【0042】
一部の実施形態では、複合材は、中間アニールなしで最終ゲージに直接冷間圧延され、次いで、150℃~420℃の範囲の温度で最大8時間の浸漬時間、最終部分アニールまたは完全アニールに供される。
【0043】
<実験結果>
Mn、Mg、Cu、およびZrなどの強化元素を添加することで、一連の実験的な中間ライナー合金(表2に列挙)を、寸法14インチ×10インチ×2インチのインゴットに鋳造した。円筒状クーポン(10mmの直径および15mmの長さ)を、予加熱処理後にインゴット材料から調製した。これらのクーポンを、これらの、代表的な圧延温度における流れ応力について測定した。コア合金、ろう付けライナー4343、およびベースラインの高純度中間ライナー(IL0)も比較のために測定した。コア合金およびろう付けライナーの組成を、それぞれ上記の表1および表3に列挙する。本開示の一態様によれば、これらの層の間の圧延温度における流れ応力のより小さな差異は、特に軟質の中間ライナー層に対する圧延接合を促進する。流れ応力試験を、Gleeble熱機械的シミュレーターを用いて実施した。試験は、多層ろう付けシートの圧延温度範囲(400~520℃)を代表する、900°F(482℃)の温度で行った。流れ応力測定には、0.01、0.1、および1/秒の3つの歪み速度を適用した。これらの歪み速度は、ろう付けシートの圧延動作のための幅広い典型的な低減を網羅するように選択した。以下の表4は、0.01、0.1、および1/秒の歪み速度でそれぞれ測定された、900°Fでの関連合金の流れ応力を列挙する。各歪み速度での流れ応力の値を、Gleeble熱機械的シミュレーターを用いて圧縮試験から0.2~0.7の真歪みの値を平均化することによって計算した。
【表4】
【0044】
表4の記録の結果は、
図3に示されており、これは、900°Fで1/秒の歪み速度で試験した合金の流れ応力曲線を示しており、流れ応力は、0.2~0.7の歪みの値によって平均化する。
【0045】
図4は、900°Fにおける、0.01、0.1、および1/秒の歪み速度で試験した合金の流れ応力を示す。流れ応力は、
図3に示す試験からの0.2~0.7の歪みの値によって平均化する。本開示による中間ライナー合金の0.01/秒および0.1/秒などのより低い歪み速度における流れ応力は、多層ろう付けシートの圧延接合に使用されるものなど、低速還元プロセスにおいて良好な接合を促進するろう付けライナー合金4343の流れ応力と同様である。より高い歪み速度は、多くの場合、接合がすでに完了した後の圧延プロセスの後期段階でのスタックアップの厚さの低
減に適用される。
【0046】
圧延接合中、
IL0(0140合金)などの高純度の中間ライナーは、4343(合金B)などのろう付け層、ならびに3003/0359(コア合金AおよびB)などのコア合金と比較してより容易に変形し、これは、多くの場合、多層インゴット/プレートアセンブリのデラミネーション、ブリスタリング、および湾曲を引き起こし得る。高純度の中間ライナー(
IL0、0140)合金、ならびにろう付けライナー4343および3003/0359(コアAおよびB)の測定された流れ応力を、比較のためにいくつかの他の材料と共に
図3に示す。すべての実験用合金の流れ応力の値のまとめを表4に示す。中間ライナーIL4(0.2Mn)、IL6(0.3Mn)、IL7(0.1Mn 0.1Mg 0.125Zr)、IL8合金(0.2Mn 0.2Cu 0.15Mg)、およびIL10(0.4Mg)は、
IL0と比較して高い流れ応力を示した。本開示の一実施形態によれば、追加の強化元素を含む中間ライナーは、流れ応力の増加、圧延接合性の改善を示す。上述の中間ライナー合金の最も高い流れ応力は、圧延接合に対して最良の性能を提供すると考えられる。しかしながら、本開示によれば、以下に説明される試験における腐食の評価によって示されるように、強化元素のより高い含有量に関連付けられるLFM現象も考慮される。
【0047】
図5および
図6は、典型的なCABろう付けサイクル後の、予歪みなし、および4%の予歪みの多層材料の微細構造をそれぞれ示す。ろう付けサイクルは、35℃/分で577℃まで加熱し、次いで、600℃での2分間のステップを用いて、12℃/分で600℃まで加熱することを含む。次いで、炉内で約-125℃/分で250℃まで冷却を行い、次いで、空冷した。
図6において、中間ライナーの上部および底部を二重矢印で示す。
図5に示されるように、ろう付け前の予歪みがないすべての中間ライナー合金は、ろう付けサイクル中に完全に再結晶化され、LFMは観察されなかった。4%の予歪みでは、LFMが、いくつかの実験用材料において、
図6の様々なレベルの重度で観察され得る。
IL0およびIL10の中間ライナー合金は、LFMが発生することを防ぐように材料が完全に再結晶されたため、LFMを示さなかった。IL10は、簡単な圧延接合のために流れ応力を増加させ得る、0.4Mg含有量を有した。合金IL4、IL6、およびIL7(それぞれ0.2Mn、0.3Mn、および0.1Mn、0.1Mg、0.125Zrを有する)は、LFMを示したが、主に中間ライナーILの元の厚さの50%未満に限定された。より高度に合金化されたIL8は、より重大なLFMを示し、これは、ほぼIL層全体に影響を与えた。これらの材料で作製された構成要素が腐食環境に曝露された場合に、中間ライナーの腐食保護機能を維持することが重要である。この観点から、IL8などのより高い合金含有量は好ましくない。本開示の一態様は、LFMの限定された効果を維持しながら流れ応力を増加させるために、0140などの中間ライナー合金に添加され得る強化元素には限界があるという認識である。本開示の中間ライナー合金の選択基準は、耐食性である。
【0048】
表2の中間ライナー合金を評価するために使用した腐食試験は、pH2.4および50mg/Lの塩化ナトリウムを含む、硫酸、硝酸、ギ酸、および酢酸の混合物であった溶液を使用した。溶液は、排ガス再循環(EGR)タイプの環境をシミュレートするためであった。この試験方法のために、乾燥(空気中で16時間)および湿潤(溶液中で8時間)のサイクルを交互に使用し、通気を湿潤サイクルの溶液に適用して、腐食を加速させた。
【0049】
図7は、この方法を用いて60日間の試験を行った後の腐食ピット数および深度の測定を示す。すべての材料は、著しいLFM条件をシミュレートするために、ろう付けサイクルの前に4%の予歪みで処置した。
図7に示される腐食深度は、中間ライナーの上部位置(ろう付けライナーの真下)から任意の腐食部位の最も深い場所まで測定した。IL4、6、および7はすべて、両方ともいかなるLFM効果も有していなかったIL0およびIL10と比較して、同様の耐食性を示す。最も重大なLFMを示したIL8は、劣化した耐食性を示した。結果は、最適化された組成が、流れ応力を増加させ、優れた耐食性も維持し、ならびに高純度の中間ライナー(
IL0など)を提供することができることを実証した。
【0050】
図1に示されるように、多層ろう付けシートは、ろう付けライナーの層、中間ライナー合金、およびコア合金を含む。ろう付けライナーは、4343、4045、および4047合金などの、4XXXシリーズのアルミニウム合金で作製され得る。コア合金は、3003合金などの、2XXX、3XXX、および6XXX合金で作製され得る。上述のように、中間ライナー合金は、最適な量のMnおよび/またはMgを含む、高純度のアルミニウム合金で作製され得る。実験は、少量のMnの有無にかかわらず、0.15重量%のMgの最大0.4重量%の添加を、0.3重量%のMnの同じ効果に行うことができることを示した。最大5重量%の亜鉛は、本明細書のろう付けライナーおよび中間ライナー合金の流れ応力およびLFM挙動を変化させないため、潜在的な耐食性の改善のために、これらの合金に最大5重量%の亜鉛を添加することができる。
【0051】
本開示は、元素の周期表に現れる元素の標準的な略語、例えば、Mg(マグネシウム)、O(酸素)、Si(シリコン)、Al(アルミニウム)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、F(フッ素)、K(カリウム)、Cs(セシウム)を利用する。
【0052】
図は、本明細書の一部を構成し、本開示の例示的な実施形態を含み、様々な対象物およびその特徴を例示する。加えて、図に示される任意の測定値、仕様等は、例示的であり、限定的ではないことを意図する。したがって、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定として解釈されるべきではなく、本発明を様々に用いることを当業者に教示するための単に代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0053】
本発明の詳細な実施形態は、本明細書に開示されているが、しかしながら、開示された実施形態は、様々な形態で具現化され得る本発明を単に例示するものであることを理解されたい。さらに、本発明の様々な実施形態に関連して得られる各実施例は例示的であり、限定的ではないことが意図される。
【0054】
明細書および特許請求の範囲全体を通して、以下の用語は、文脈が別途明確に指示していない限り、本明細書に明示的に関連する意味を取る。本明細書で使用される場合、「1つの実施形態では」および「一部の実施形態では」という言い回しは、必ずしも同じ実施形態を指さないが、それを指す場合もある。さらに、本明細書で使用する句「別の実施形態では」および「いくつかの別の実施形態では」は、必ずしも異なる実施形態を指さないが、それを指す場合もある。したがって、下記に説明するように、本発明の様々な実施形態を、本発明の主題の範囲と趣旨から逸脱することなく、容易に組合せてもよい。
【0055】
加えて、本明細書で使用される場合、「または」という用語は包括的な「または」であり、文脈から判断して明らかに他の意味に解釈すべき場合を除き、「および/または」と同等である。「に基づく」という用語は排他的ではなく、文脈から判断して明らかに他の意味に解釈すべき場合を除き、記述されていない追加的な要因に基づくことができる。加えて、本明細書を通して、「a」、「an」、および「the」の意味は複数の参照を含む。「中に(in)」の意味は、「中に(in)」および「上に(on)」を含む。
【0056】
本発明の態様を、以下の番号の条項を参照して説明する。
【0057】
1.多層シート材料であって、
2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のうちの1つのアルミニウム合金のコアと、
4XXXアルミニウム合金のろう付けライナーと、
中間ライナーと、を備え、中間ライナーが、
0.31~1.0重量%のSiと、
<0.1重量%のMgと、
0.25~1.0重量%のMnと、
最大5.0重量%のZnと、
最大0.3重量%のFeと、
最大0.125重量%のZrと、
各々が≦0.05重量%であり、合計が≦0.15重量%である他の元素、を含み、残りがAlである、多層シート材料。
【0058】
2.中間ライナーが
0.34~0.5重量%のSiと、
<0.05重量%のMgと、
0.25~0.35重量%のMnと、
≦0.05重量%のZnと、
≦0.05重量%のCu、を含有する。
【0059】
3.中間ライナーが、ろう付けライナーとコアとの間に配置されている、条項1または2に記載のシート材料。
【0060】
4.中間ライナーが、0.4~0.5重量%のSiを含有する、条項2または3に記載のシート材料。
【0061】
5.中間ライナーが、0.25~0.34重量%のMnを含有する、条項2~4のいずれか一項に記載のシート材料。
【0062】
6.中間ライナーが、0.05~5.0重量%のZnをさらに含む、条項1~5のいずれか一項に記載のシート材料。
【0063】
7.MgおよびMnのうちの少なくとも1つの存在に起因する中間ライナーにおける流れ応力の増加が、MgおよびMnのうちの少なくとも1つの存在を伴わずに、中間ライナーにおける流れ応力に対して20%~52%の範囲内である、条項1~6のいずれか一項に記載のシート材料。
【0064】
8.コアが、3003アルミニウム合金である、条項1~7のいずれか一項に記載のシート材料。
【0065】
9.コアが、0.1~1.0重量%のSiと、最大0.5重量%のFeと、0.2~1.0重量%のCuと、1.0~1.5重量%のMnと、0.2~0.3重量%のMgと、最大0.05重量%のZnと、0.1~0.2重量%のTiと、を含む、条項1~7のいずれか一項に記載のシート材料。
【0066】
10.ろう付けライナーが、6.8~8.2重量%のSiと、最大0.8重量%のFeと、最大0.25重量%のCuと、最大0.1重量%のMnと、最大0.2重量%のZnと、を含む、条項1~9のいずれか一項に記載のシート材料。
【0067】
11.中間ライナーおよびろう付けライナーの遠位にあるコア上に配置された別のライナーをさらに備える、条項1~10のいずれか一項に記載のシート材料。
【0068】
12.別のライナーが、第2のろう付けライナーおよび第2の中間ライナーを含み、第2の中間ライナーが、コアと第2のろう付けライナーとの間に配置されている、条項11に記載のシート材料。
【0069】
13.中間ライナーが、0.34~0.5重量%のSiと、最大0.1重量%のZnと、を含有する、条項1に記載のシート材料。
【0070】
14.中間ライナーが、<0.05重量%のCuを含有する、条項13に記載のシート材料。
【0071】
15.シート材料が、0.09mm~2.85mmのコア厚さを含む、0.1mm~3.0mmの合計厚さを有し、ろう付けライナーが、2.5%~20%のクラッド比を有し、中間ライナーが、2.5~20%のクラッド比を有する、条項1~14のいずれか一項に記載のシート材料。
【0072】
16.シート材料が、Oテンパーである、条項1~15のいずれか一項に記載のシート材料。
【0073】
17.条項1~16のいずれか一項に記載のシート材料を含む管、フィン、ヘッダプレート、またはタンクのうちの少なくとも1つを備える、熱交換器。
【0074】
18.多層シート材料であって、
2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のうちの1つのアルミニウム合金のコアと、
4XXXアルミニウム合金のろう付けライナーと、
中間ライナーと、を備え、中間ライナーが、
0.31~1.0重量%のSiと、
0.1~0.5重量%のMgと、
0.05~0.3重量%のMnと、
最大5.0重量%のZnと、
各々が≦0.05重量%であり、合計が≦0.15重量%である他の元素、を含み、残りがAlである、多層シート材料。
【0075】
19.中間ライナーが、0.05~5.0重量%のZnを含有する、条項18に記載のシート材料。
【0076】
20.ろう付けシートを作製するための方法であって、
中間ライナーの層を提供するステップであって、中間ライナーの層が、0.31~1.0重量%のSi、<0.1重量%のMg、0.25~1.0重量%のMn、を含む、中間ライナーの層を提供するステップと、
2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のうちの1つから選択されるコア材料の層を提供するステップと、
4XXXアルミニウム合金のろう付けライナー材料の層を提供するステップと、
中間ライナーの層、コア材料の層、およびろう付けライナー材料の層をスタックに積み重ねるステップであって、中間ライナーが、コア材料の層とろう付けライナー材料の層との間に配置される、積み重ねるステップと、
スタックを圧延して、接合多層ろう付けシートを形成するステップと、を含む、方法。
本発明の一部の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものにすぎず、限定的なものではなく、多くの変更が当業者には明らかになり得ることを理解されたい。さらになお、様々なステップを任意の所望の順序で実行することができる(ならびに任意の所望のステップを追加することができ、および/または任意の所望のステップを排除することができる)。そのような変形および変更のすべては、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。