(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】IAP阻害剤としてのSMAC模倣物の結晶及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 403/06 20060101AFI20241113BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241113BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C07D403/06 CSP
A61P35/00
A61K31/404
(21)【出願番号】P 2021566285
(86)(22)【出願日】2020-05-09
(86)【国際出願番号】 CN2020089437
(87)【国際公開番号】W WO2020228642
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】201910389970.8
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 迎 春
(72)【発明者】
【氏名】徐 招 兵
(72)【発明者】
【氏名】胡 利 紅
(72)【発明者】
【氏名】丁 照 中
(72)【発明者】
【氏名】朱 興 訓
(72)【発明者】
【氏名】陳 曙 輝
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-520770(JP,A)
【文献】特表2009-544727(JP,A)
【文献】特表2010-513561(JP,A)
【文献】特表2007-532504(JP,A)
【文献】特表2010-506847(JP,A)
【文献】特表2008-505904(JP,A)
【文献】特表2008-524333(JP,A)
【文献】特開2011-251990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 403/06
A61P 35/00
A61K 31/404
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)化合物の結晶。
【化1】
【請求項2】
式(I)化合物の結晶Aであって、CuKα線を用いるX線粉末回折パターンでは、2θ角度12.1°±0.200°、16.1°±0.200°、18.5°±0.200°、20.2°±0.200°、21.3°±0.200°及び23.0°±0.200°に特徴的な回折ピークを有する請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
CuKα線を用いるX線粉末回折パターンでは、2θ角度12.1°±0.200°、16.1°±0.200°、18.5°±0.200°、18.8°±0.200°、19.2°±0.200°、19.8°±0.200°、20.2°±0.200°、21.3°±0.200°、23.0°±0.200°、26.6°±0.200°及び27.4°±0.200°に特徴的な回折ピークを有する請求項2に記載の式(I)化合物の結晶A。
【請求項4】
CuKα線を用いるX線粉末回折パターンでは、2θ角度7.0°±0.200°、8.7°±0.200°、12.1°±0.200°、13.2°±0.200°、13.9°±0.200°、16.1°±0.200°、16.7°±0.200°、18.5°±0.200°、18.8°±0.200°、19.2°±0.200°、19.8°±0.200°、20.2°±0.200°、21.0°±0.200°、21.3°±0.200°、23.0°±0.200°、24.3°±0.200°、25.3°±0.200°、26.6°±0.200°及び27.4°±0.200°に特徴的な回折ピークを有する請求項3に記載の式(I)化合物の結晶A。
【請求項5】
CuKα線を用いるX線粉末回折パターンでは、2θ角度7.0°±0.200°、8.7°±0.200°、12.1°±0.200°、13.2°±0.200°、13.9°±0.200°、16.1°±0.200°、16.5°±0.200°、16.7°±0.200°、18.5°±0.200°、18.8°±0.200°、19.2°±0.200°、19.8°±0.200°、20.2°±0.200°、21.0°±0.200°、21.3°±0.200°、23.0°±0.200°、23.2°±0.200°、24.3°±0.200°、25.3°±0.200°、26.6°±0.200°、26.9°±0.200°、27.4°±0.200°及び29.4°±0.200°に特徴的な回折ピークを有する請求項4に記載の式(I)化合物の結晶A。
【請求項6】
CuKα線を用いるX線粉末回折パターンでは、2θ角度7.0°±0.200°、8.7°±0.200°、9.7°±0.200°、10.6°±0.200°、11.4°±0.200°、12.1°±0.200°、13.2°±0.200°、13.9°±0.200°、16.1°±0.200°、16.5°±0.200°、16.7°±
0.200°、17.5°±0.200°、18.5°±0.200°、18.8°±0.200°、19.2°±0.200°、19.5°±0.200°、19.8°±0.200°、20.2°±0.200°、21.0°±0.200°、21.3°±0.200°、22.5°±0.200°、23.0°±0.200°、23.2°±0.200°、23.8°±0.200°、24.3°±0.200°、24.6°±0.200°、25.3°±0.200°、25.8°±0.200°、26.6°±0.200°、26.9°±0.200°、27.4°±0.200°、28.1°±0.200°、29.1°±0.200°、29.4°±0.200°、30.1°±0.200°、30.6°±0.200°、30.8°±0.200°、31.3°±0.200°、31.8°±0.200°、32.2°±0.200°、32.8°±0.200°、33.7°±0.200°、34.0°±0.200°、34.8°±0.200°、35.5°±0.200°、36.6°±0.200°、37.6°±0.200°、38.6°±0.200°及び39.6°±0.200°に特徴的な回折ピークを有する請求項5に記載の式(I)化合物の結晶A。
【請求項7】
示差走査熱量測定結果図では、吸収ピークのピーク値が202.5℃にある請求項2~6のいずれか1項に記載の式(I)化合物の結晶A。
【請求項8】
示差走査熱量測定結果図では、吸収ピークの開始位置が約200.8℃にある請求項2~6のいずれか1項に記載の式(I)化合物の結晶A。
【請求項9】
請求項1に記載の式(I)化合物結晶が結晶組成物の重量の50%以
上を占める結晶組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の式(I)化合物結晶が結晶組成物の重量の90%以上を占める、請求項9に記載の結晶組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の式(I)化合物結晶が結晶組成物の重量の95%以上を占める、請求項9に記載の結晶組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の式(I)化合物の結晶又は請求項9
~11のいずれか1項に記載の結晶組成物を含む医薬組成物。
【請求項13】
cIAP1阻害に関わるがんの治療薬物を製造するための、請求項1に記載の式(I)化合物結晶、請求項9
~11のいずれか1項に記載の結晶組成物、又は請求項
12に記載の医薬組成物の
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は2019年5月10日に中国国家知識産権局へ提出された中国特許出願第201910389970.8号の優先権を主張し、当該出願の全ての内容が援用で本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本願は医薬品化学の分野に属し、IAP阻害剤としてのSMAC模倣物の結晶及びその製造方法、そして、cIAP1阻害に関わるがんの治療薬物を製造するための前記結晶の用途に関する。
【背景技術】
【0003】
プログラム細胞死は細胞の数量調節と正常な組織からのストレス細胞又は損傷細胞の除去で重要な役割を果たす。実際には、殆どのタイプの細胞では固有のアポトーシスシグナル伝達ネットワークメカニズムによってヒトがんの発生と悪化を防ぐための主なバリアが提供される。しかし、全てのがん細胞にはアポトーシスプログラムを実行できないという共通点があり、しかも正常なアポトーシスメカニズムの欠如で適切なアポトーシスが欠ける。当面化学療法、放射線療法、免疫療法を含む殆どのがん治療は、がん細胞のアポトーシスの間接的な誘導で効果を発揮する。そのため、がん細胞が正常なアポトーシスメカニズムの欠陥でアポトーシスプログラムを実行できないのは一般に化学療法、放射線療法又は免疫療法から誘導されるアポトーシスの耐性向上に関係がある。したがって、がん細胞のアポトーシスで重要な役割を果たす重要な負の調節因子の直接的な阻害をターゲットとすれば、新規抗がん薬の設計で治療方法を得ることを期待できよう。
【0004】
現在、2種類の重要なアポトーシスの負の調節因子が確認されている。第1種の調節因子はBcl-2ファミリータンパク質であり、例えば、Bcl-2とBcl-XLタンパク質の2つの効果的な抗アポトーシス分子である。
【0005】
第2種のアポトーシスの重要な負の調節因子はアポトーシスタンパク質阻害剤(IAPs)である。IAPはP35タンパク質に代わって機能することで最初にバキュロウイルスから発現された。このようなタンパク質は、XIAP、cIAP1、cIAP2、ML-IAP、ILP-2、NAIP、アポロン(Apollon)、サバイビン(Survivin)を含む。そのうちX染色体連鎖アポトーシス阻害剤(XIAP)はカスパーゼ-3、カスパーゼ-7、カスパーゼ-9を直接的に阻害して、抗アポトーシス効果を果たす。cIAPsは主にデスレセプター経路の遮断でアポトーシスを阻害するもので、cIAPsが分解すると、その基質NIK(NF-κB-inducing kinase、NF-κB誘導キナーゼ)は分解せず蓄積され、蓄積されるNIKは非古典的経路によってNF-κBを活性化させ、NF-κBの活性化がTNFαの分泌を促し、TNFαがTNF-R1(TNF receptor1、TNF受容体1)と結合してデスレセプター経路を開始し、cIAPsの分解により、RIPK1(receptor interacting protein kinase 1、受容体相互作用プロテインキナーゼ1)の分泌が増加し、それがFADD(Fas-associated death domin、Fas関連デスドメイン)及びcaspase-8(カスパーゼ-8)と共にアポトーシス促進性RIPK1-FADD-caspase-8複合体を形成して、その後カスパーゼ-3の活性化で、アポトーシスを引き起こす。
【0006】
複数種の悪性疾患で11q21-q23領域(2種の遺伝子を含む)の頻繁な染色体増幅によるcIAP1及びcIAP2の過剰発現が観察され、当該複数種の悪性疾患は神経芽細胞腫、腎細胞がん、結腸直腸がん、胃がんなどを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の一態様では、式(I)化合物の結晶が提供される。
【0008】
【0009】
本願の別の態様では、式(I)化合物の結晶組成物が提供され、前記式(I)化合物の結晶が前記結晶組成物の重量の50%以上を、好ましくは75%以上を、より好ましくは90%以上を、最も好ましくは95%以上を占める。
【0010】
本願の別の態様では、治療有効量の前記式(I)化合物の結晶又は前記式(I)化合物の結晶組成物を含む医薬組成物が提供され、前記医薬組成物は少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は他の賦形剤を含んでもよい。
【0011】
本願の別の態様では、cIAP1阻害に関わるがんの治療薬物を製造するための、前記式(I)化合物の結晶、前記式(I)化合物の結晶組成物又は前記医薬組成物の用途が提供される。
【0012】
本願の別の態様では、哺乳動物におけるcIAP1阻害に関わるがんを治療するための、前記式(I)化合物の結晶、前記式(I)化合物の結晶組成物又は前記医薬組成物の用途が提供される。
【0013】
本願の別の態様では、哺乳動物におけるcIAP1阻害に関わるがんの治療方法であって、必要とする哺乳動物に治療有効量の前記式(I)化合物の結晶、前記式(I)化合物の結晶組成物又は前記医薬組成物を投与することを含む前記方法が提供される。
【0014】
本願の別の態様では、哺乳動物におけるcIAP1阻害に関わるがんを治療するための、前記式(I)化合物の結晶、前記式(I)化合物の結晶組成物又は前記医薬組成物が提供される。
【0015】
(発明の内容)
本願の一態様では、式(I)化合物の結晶が提供される。
【0016】
【0017】
本願にかかる結晶は非溶媒和物の形態でもよいし、溶媒和物の形態でもよく、例えば、水和物でもよい。
【0018】
本願の一実施形態において、式(I)化合物の結晶は結晶Aであり、CuKα線を用いるX線粉末回折パターンでは、2θ角度12.1°±0.200°、16.1°±0.200°、18.5°±0.200°、20.2°±0.200°、21.3°±0.200°及び23.0°±0.200°に特徴的な回折ピークを有する。
【0019】
本願の一実施形態において、前記結晶AのCuKα線を用いるX線粉末回折パターンでは、2θ角度12.1°±0.200°、16.1°±0.200°、18.5°±0.200°、18.8°±0.200°、19.2°±0.200°、19.8°±0.200°、20.2°±0.200°、21.3°±0.200°、23.0°±0.200°、26.6°±0.200°及び27.4°±0.200°に特徴的な回折ピークを有する。
【0020】
本願の一実施形態において、前記結晶AのCuKα線を用いるX線粉末回折パターンでは、2θ角度7.0°±0.200°、8.7°±0.200°、12.1°±0.200°、13.2°±0.200°、13.9°±0.200°、16.1°±0.200°、16.7°±0.200°、18.5°±0.200°、18.8°±0.200°、19.2°±0.200°、19.8°±0.200°、20.2°±0.200°、21.0°±0.200°、21.3°±0.200°、23.0°±0.200°、24.3°±0.200°、25.3°±0.200°、26.6°±0.200°及び27.4°±0.200°に特徴的な回折ピークを有する。
【0021】
本願の一実施形態において、前記結晶AのCuKα線を用いるX線粉末回折パターンでは、2θ角度7.0°±0.200°、8.7°±0.200°、12.1°±0.200°、13.2°±0.200°、13.9°±0.200°、16.1°±0.200°、16.5°±0.200°、16.7°±0.200°、18.5°±0.200°、18.8°±0.200°、19.2°±0.200°、19.8°±0.200°、20.2°±0.200°、21.0°±0.200°、21.3°±0.200°、23.0°±0.200°、23.2°±0.200°、24.3°±0.200°、25.3°±0.200°、26.6°±0.200°、26.9°±0.200°、27.4°±0.200°及び29.4°±0.200°に特徴的な回折ピークを有する。
【0022】
本願の一実施形態において、前記結晶AのCuKα線を用いるX線粉末回折パターンでは、2θ角度7.0°±0.200°、8.7°±0.200°、9.7°±0.200°、10.6°±0.200°、11.4°±0.200°、12.1°±0.200°、13.2°±0.200°、13.9°±0.200°、16.1°±0.200°、16.5°±0.200°、16.7°±0.200°、17.5°±0.200°、18.5°±0.200°、18.8°±0.200°、19.2°±0.200°、19.5°±0.200°、19.8°±0.200°、20.2°±0.200°、21.0°±0.200°、21.3°±0.200°、22.5°±0.200°、23.0°±0.200°、23.2°±0.200°、23.8°±0.200°、24.3°±0.200°、24.6°±0.200°、25.3°±0.200°、25.8°±0.200°、26.6°±0.200°、26.9°±0.200°、27.4°±0.200°、28.1°±0.200°、29.1°±0.200°、29.4°±0.200°、30.1°±0.200°、30.6°±0.200°、30.8°±0.200°、31.3°±0.200°、31.8°±0.200°、32.2°±0.200°、32.8°±0.200°、33.7°±0.200°、34.0°±0.200°、34.8°±0.200°、35.5°±0.200°、36.6°±0.200°、37.6°±0.200°、38.6°±0.200°及び39.6°±0.200°に特徴的な回折ピークを有する。
【0023】
本願の一実施形態において、式(I)化合物の結晶AのCuKα線を用いるX線粉末回折パターンにおける特徴的なピークのピーク位置と強度は表1に示すとおりである。
【0024】
【0025】
本願の一実施形態において、式(I)化合物の結晶AのCuKα線を用いるX線粉末回折パターンは
図1に示すとおりである。
【0026】
本願の一実施形態において、式(I)化合物の結晶Aの示差走査熱量測定(DSC)結果図では、吸収ピークのピーク値が202.5℃にある。
【0027】
本願の一実施形態において、式(I)化合物の結晶Aの示差走査熱量測定(DSC)結果図では、吸収ピークの開始位置が200.8℃にある。
【0028】
本願の一実施形態において、式(I)化合物の結晶Aの示差走査熱量測定(DSC)結果図は
図2に示すとおりである。
【0029】
本願の一実施形態において、式(I)化合物の結晶Aの熱重量分析(TGA)結果図は
図3に示すとおりである。
【0030】
本願の別の態様では、
(a)式(I)化合物を溶媒に入れて、懸濁液又は溶液にするステップと、
(b)前記懸濁液又は溶液を加熱して還流させて、清澄化させるステップと、
(c)前記清澄化液を熱いうちに濾過し、冷却して結晶化し、濾過し、乾燥して、式(I)化合物の結晶Aを得るステップとを含む、式(I)化合物の結晶Aの製造方法が提供される。
【0031】
本願の一実施形態において、前記ステップ(a)で溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、水、水と前記いずれかの溶媒との混合溶媒から選ばれ、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、又はそれらと水の混合溶媒であり、より好ましくはエタノールである。
【0032】
本願の別の態様では、
(d)式(I)化合物を溶媒に入れて、超音波より均一に混合して、懸濁液又は溶液にするステップと、
(e)恒温振盪機において前記懸濁液又は溶液を加熱して攪拌し、遠心分離し、乾燥して、式(I)化合物の結晶Aを得るステップとを含む、式(I)化合物の結晶Aの製造方法がさらに提供される。
【0033】
本願の一実施形態において、前記ステップ(d)で溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、水、水と前記いずれかの溶媒との混合溶媒から選ばれ、好ましくはメタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、水、水とメタノールの混合溶媒、水とエタノールの混合溶媒、水とアセトンの混合溶媒である。前記水とメタノール、水とエタノール、水とアセトンの体積比は1:1~5から選ばれ、好ましくは1:1~3である。
【0034】
本願の一実施形態において、前記ステップ(a)で式(I)化合物と溶媒のモル体積比は1mmol:1~10mLであり、好ましくは1mmol:2~6mLであり、より好ましくは1mmol:2~4mLである。
【0035】
本願の一実施形態において、前記ステップ(d)で式(I)化合物と溶媒のモル体積比は1mmol:1~15mLであり、好ましくは1mmol:4~10mLであり、より好ましくは1mmol:8~10mLである。
【0036】
本願の一実施形態において、前記ステップ(b)で還流温度は60~120℃であり、好ましくは80~90℃である。
【0037】
本願の一実施形態において、前記ステップ(e)で攪拌温度は30~50℃であり、好ましくは40~50℃である。
【0038】
本願の別の態様では、式(I)化合物の結晶組成物が提供され、前記式(I)化合物の結晶が前記結晶組成物の重量の50%以上を、好ましくは75%以上を、より好ましくは90%以上を、最も好ましくは95%以上を占める。前記結晶組成物には、式(I)化合物の他の結晶又は非結晶の形態がわずかに含まれてもよい。
【0039】
本願の別の態様では、治療有効量の前記式(I)化合物の結晶又は前記式(I)化合物の結晶組成物を含む医薬組成物が提供され、前記医薬組成物は少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は他の賦形剤を含んでもよい。
【0040】
本願の別の態様では、cIAP1阻害に関わるがんの治療薬物を製造するための、前記式(I)化合物の結晶、前記式(I)化合物の結晶組成物又は前記医薬組成物の用途が提供される。
【0041】
本願の別の態様では、哺乳動物におけるcIAP1阻害に関わるがんを治療するための、前記式(I)化合物の結晶、前記式(I)化合物の結晶組成物又は前記医薬組成物の用途が提供される。
【0042】
本願の別の態様では、哺乳動物におけるcIAP1阻害に関わるがんの治療方法であって、必要とする哺乳動物に治療有効量の前記式(I)化合物の結晶、前記式(I)化合物の結晶組成物又は前記医薬組成物を投与することを含む前記方法が提供される。
【0043】
本願の別の態様では、哺乳動物におけるcIAP1阻害に関わるがんを治療するための、前記式(I)化合物の結晶、前記式(I)化合物の結晶組成物又は前記医薬組成物が提供される。
【0044】
本願の一実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。
本願の一実施形態において、前記cIAP1阻害に関わるがんは乳がんから選ばれる。
【0045】
本願の一実施形態において、前記cIAP1阻害に関わるがんはトリプルネガティブ乳がんから選ばれる。
【0046】
本願にかかる式(I)化合物の結晶は生理活性、安全性、生物学的利用能などの少なくとも1つにおいて優れた効果を有し、式(I)化合物の結晶Aは安定性が高く、吸湿性が低く、しかもcIAP1阻害活性が良好で、薬物として価値が高い。式(I)化合物の結晶Aは良好な薬物動態特性をも有し、薬物としての使用に相応しく、前記薬物動態特性は、SDラット、ビーグル犬などに対する臨床前動物試験で測定されてもよいし、ヒトに対する臨床試験で測定されてもよい。
【0047】
本願では、医薬組成物を特定の剤形にすることができ、投与経路として好ましいのは経口投与、非経口投与(皮下、筋肉内、静脈内を含む)、直腸投与などである。例えば、経口投与に適する剤形はタブレット剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、ピル剤、粉末剤、錠剤、シロップ剤、懸濁剤を含み、非経口投与に適する剤形は水系又は非水系の注射用溶液やエマルションを含み、直腸投与に適する剤形は親水性又は疎水性の担体を使用する坐剤を含む。
【0048】
本願では、サンプルのX線粉末回折パターンは次の条件下で測定する。装置:Bruker D8 ADVANCE X線回折装置、ターゲット:CuKα、波長:λ=1.54056Å、2θ角度範囲:3~40°、発散スリット:0.60mm、検出器スリット:10.50mm、発散制限スリット:7.10mm、ステップ長:0.02°、時間/ステップ:0.12秒、試料回転数:15rpm、Cuターゲットの管電圧、管電流:40kV、40mA。
【0049】
本願では、DSC曲線は次の条件下で測定する。装置:TA Q2000示差走査熱量測定機、温度範囲:30~300℃、加熱速度:10℃/min。
【0050】
本願では、TGA曲線は次の条件下で測定する。装置:TA Q5000熱重量分析計、温度範囲:25~300℃、加熱速度:10℃/min。
【0051】
なお、X線粉末回折パターンで、ピークの位置又はピークの相対強度が測定装置、測定方法/条件などによって異なる可能性がある。いずれの特定の結晶形でも、ピークの位置には誤差があってもよく、2θ値の測定誤差は±0.2°であってもよい。そのため、各種の結晶形を同定する時は、当該誤差を考慮すべきであり、誤差内にあるものは本願の範囲に含まれる。
【0052】
なお、同じ結晶形でも、DSCにおける吸収ピークの出現位置は測定装置、測定方法/条件などによって異なる可能性がある。いずれの特定の結晶形でも、吸収ピークの位置には誤差があってもよく、誤差は±5℃であってもよい。そのため、各種の結晶形を決定する時は、当該誤差を考慮すべきであり、誤差内にあるものは本願の範囲に含まれる。
【0053】
なお、同じ結晶形でも、TGAにおける重量減少温度の出現位置は測定装置、測定方法/条件などにより異なる可能性がある。いずれの特定の結晶形でも、重量減少温度の位置には誤差があってもよく、誤差は±5℃であってもよい。そのため、各種の結晶形を決定する時は、当該誤差を考慮すべきであり、誤差内にあるものは本願の範囲に含まれる。
【0054】
(定義及び説明)
本願の明細書、特許請求の範囲で使用する下記の用語は、特段の断りがある場合を除き、下記の意味を有する。
【0055】
「哺乳動物」はヒト、実験室用哺乳動物や愛玩動物(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、羊、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)のような飼育動物、野生哺乳動物などの非飼育の哺乳動物を含む。
【0056】
用語「医薬組成物」とは、生理活性化合物を哺乳動物、例えばヒトに伝達するための本分野で一般的に許容される媒体と本願化合物とからなる製剤である。前記媒体は薬学的に許容される全ての使用可能な担体を含む。医薬組成物の方は化合物が生体に投与しやすい。
【0057】
用語「治療有効量」とは、毒性はなく所望の効果を得るための薬物又は製剤の十分な用量を指す。有効量には個体差があり、対象の年齢や一般状況に関係があり、有効成分にも関係し、適切な有効量は場合によって当業者が通常の試験で決めることができる。
【0058】
本願では、「薬学的に許容される担体」とは有効成分と共に投与され、生体に明らかな刺激はなく、しかも活性化合物の生理活性や特性を損わない担体を指す。担体の他の情報に関しては、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,Lippincott,Williams&Wilkins(2005)を参照することができ、当該文献の内容は援用で本明細書に組み込まれる。
【0059】
本願では、「室温」とは20℃~30℃を指す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は実施例1に係る式(I)化合物の結晶AのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図2】
図2は実施例1に係る式(I)化合物の結晶Aの示差走査熱量測定(DSC)結果図である。
【
図3】
図3は実施例1に係る式(I)化合物の結晶Aの熱重量分析(TGA)結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
下記の具体的な実施例は、当業者に本願をより明確に理解させ実施させられるためのものである。それは本願の範囲への限定と見なされず、本願の例示的な説明と典型的な例に過ぎない。
【0062】
本願で中間化合物は、下記の具体的な実施形態、それと他の化学的合成方法と組み合わせた実施形態及び当業者が熟知する代替的な入れ替え形態を含む、当業者が熟知する様々な合成方法で調製することができる。好ましい実施形態は本願の実施例を含み、ただしそれらに限定されない。
【0063】
本願の具体的な実施形態に係る化学反応は適切な溶媒において行われ、前記溶媒は本願に係る化学的変化及び使用する試薬と材料に適合すべきである。本願化合物を得るためには、当業者が既存の実施形態を踏まえて合成ステップ又は反応プロセスに変更又は選択を行うことがある。
【0064】
本願で使用する全ての溶媒が市販品で、精製しなくてもそのまま使用できる。
【実施例1】
【0065】
実施例1:式(I)化合物の結晶Aの製造
【0066】
【0067】
ステップ1:
反応ケトルにジクロロメタン(16.0L)を加え、温度を0℃に下げて、化合物1(2.0kg、9.94mol、1.0Eq)を加えて攪拌し、さらにトリエチルアミン(4.42L、29.81mol、3.0Eq)、4-ジメチルアミノピリジン(61.00g、496.86mmol、0.05Eq)を加えて、数回に分けてp-トルエンスルホニルクロリド(2.18kg、11.43mol、1.15Eq)を加え、内部温度を0~10℃に制御して、さらに、反応ケトルにジクロロメタン(4L)を加え、温度を20℃に上げて引き続き16時間攪拌した。反応ケトルに水(20L)を加え、5分間攪拌して静置して分液し、水相を除去して、有機相を10%のクエン酸水溶液(15.0L*2)と塩水(15.0L*2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(2.0kg)で1時間乾燥して、濾過し、濾液をロータリーエバポレータに移し濃縮して、化合物2を得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.78(br d,J=8.2Hz,2H),7.47(br d,J=7.9Hz,2H),4.13-3.93(m,2H),3.92-3.81(m,1H),3.22-3.11(m,2H),1.96-1.80(m,2H),1.74-1.65(m,2H),1.40(s,3H),1.38-1.23(m,9H)。
【0068】
ステップ2:
乾燥した反応ケトルにジクロロメタン(1.30L)、そして化合物3(1.28kg、8.49mol、1.0Eq)を加えて攪拌して溶解し、温度を下げて、内部温度が0℃になるまで冷却すると、窒素ガス保護下で塩化アセチル(606.0mL、8.49mol、1.0Eq)を30分間で滴加し、さらに、反応ケトルに1Mのジエチルアルミニウムクロリドのn-ヘキサン溶液(8.50L、8.49mol、1.0Eq)を滴加して、内部温度を0~5℃に制御して、3時間をかけ滴加したら、1時間反応させた。反応液をゆっくりとかつ数回に分けて攪拌しながら氷水(20.0L)に注ぐと、大量の赤色の固体が析出し、混合物をクエンチしてロータリーエバポレータに移し、30℃下で濃縮して、ジクロロメタン及びn-ヘキサンを除去し、残留物に2-メチルテトラヒドロフラン(20.0L)を加え、分液装置に移して15分間攪拌した後、分液し、水相を除去して、有機相を塩水(20L*2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(3.0kg)で乾燥して、濾過し、ケーキを2-メチルテトラヒドロフラン(2L)で洗浄して、濾液をロータリーエバポレータに移し濃縮して、残留物を50L反応ケトルに移し、酢酸エチル:n-ヘプタン(V:V)=1:1(10.0L)を加えて10時間攪拌し、濾過して、ケーキを酢酸エチル:n-ヘプタン(V:V)=1:1(300mL)ですすぎ、吸引乾燥し、オーブンに移して35℃で減圧下で乾燥して化合物4を得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.10(br s,1H),8.38(d,J=3.2Hz,1H),8.16(d,J=2.2Hz,1H),7.50(d,J=8.7Hz,1H),7.23(dd,J=8.6,2.1Hz,1H),2.46(s,3H)。
【0069】
ステップ3:
窒素ガス保護下で反応ケトルにN,N-ジメチルアセトアミド(6.0L)を加えて、25℃下で化合物2(3.95kg、11.12mol、1.30Eq)、化合物4(1.73kg、8.56mol、1.0Eq)を加え、数回に分けて10分間で炭酸セシウム(4.18kg、12.85mol、1.50Eq)を加え、反応ケトルの壁をN,N-ジエチルアセトアミド(1.0L)で洗い流し、温度を80~85℃に上げて16時間反応させた。温度を25℃に下げて、反応液にゆっくりと水(30L)、そして酢酸エチル(20L)を加えて攪拌し、分液装置に移して分液させ、水相を酢酸エチル(10.0L)で1回抽出して、有機相を合わせ、水(15.0L*2)と塩水(15.0L*2)で洗浄して、無水硫酸ナトリウム(3.0kg)で1時間乾燥し、濾過し、ケーキを酢酸エチル(2.0L)ですすぎして、濾液をロータリーエバポレータに移し濃縮して、粗生物を得、反応ケトルに移し、酢酸エチル:n-ヘプタン(V:V)=1:2(9.0L)を加えて2時間攪拌し、濾過し、ケーキを酢酸エチル:n-ヘプタン(V:V)=1:2(500mL)ですすぎして、吸引乾燥し、オーブンに移して35℃で減圧下で乾燥して化合物5を得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.43-8.28(m,1H),8.17(s,1H),7.74-7.52(m,1H),7.27(br s,1H),4.40-4.05(m,3H),3.31-3.11(m,2H),2.50-2.35(m,3H),1.90-1.69(m,4H),1.39(br d,J=6.7Hz,5H),1.08(br s,4H)。
【0070】
ステップ4:
乾燥した反応ケトルに酢酸エチル(16.5L)、そして化合物5(1.65kg、4.38mol、1.0Eq)を加えて攪拌して溶解し、温度を下げて、内部温度が0℃になるまで冷却すると、用時調製した塩酸-酢酸エチル溶液(15.0L、4.0mol/L)を1時間で滴加し、室温20~30℃に戻して16時間反応させた。反応液を濾過して、ケーキを酢酸エチル(5L*2)ですすぎし、ケーキを吸引乾燥して粗生物を得、粗生物を酢酸エチルに懸濁させて4時間攪拌した。濾過し、乾燥して化合物6を得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ10.00(br s,1H),9.54(br s,1H),8.76(s,1H),8.16(d,J=1.8Hz,1H),7.84(d,J=8.8Hz,1H),7.30(dd,J=8.7,1.8Hz,1H),4.80-4.72(m,1H),4.62(br d,J=5.4Hz,1H),3.92(br s,1H),3.27(br d,J=6.8Hz,1H),3.18-3.00(m,1H),2.44(s,3H),2.17-1.63(m,4H)。
【0071】
ステップ5:
化合物7(2.13kg、8.30mol、1.05Eq)、N,N-ジメチルホルムアミド(12.50L)をこの順に反応ケトルに加えて、反応ケトルの温度を0~10℃に調節して、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(3.15kg、8.30mol、1.05Eq)を加えて、白色の懸濁液を得、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.06kg、23.71mol、3.0Eq)を滴加し、内部温度を10℃以下に制御して、その間に固体が徐々に溶解して清澄液を得た。滴加が完了すると、内部温度を5~10℃に制御して、攪拌しながら30分間反応させた。数回に分けて化合物6(2.50kg、7.90mol、1.0Eq)を加え、内部温度を5~10℃に制御して、その間に白煙が発生した。滴加が完了すると、徐々に温度を25~30℃に上げて、1.5時間反応させた。攪拌しながら、半分の反応液をゆっくりと水(30.0L)の入った反応ケトルに滴加すると、大量の固体が析出し、30分間攪拌した後、吸引濾過し、ケーキを吸引乾燥して、同様の手法で残り半分の反応液を処理した。ケーキは共に50℃で真空下で重量が一定になるまで乾燥して、化合物8を得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.47-8.41(m,1H),8.15(d,J=2.1Hz,1H),7.97-7.91(m,1H),7.32(dd,J=8.7,2.0Hz,1H),6.87(br d,J=8.4Hz,1H),4.49-4.30(m,2H),4.15-3.89(m,2H),3.62(br dd,J=8.0,5.0Hz,2H),2.44(s,3H),2.17-1.97(m,1H),1.96-1.85(m,1H),1.78-1.52(m,9H),1.38-1.31(m,9H),1.20-1.06(m,4H)。
【0072】
ステップ6:
酢酸エチル(17.70L)を50L反応ケトルに加えて、反応ケトルの温度を0~5℃に調節し、化合物8(1.70kg、3.37mol、1.0Eq)を加えて、白色の懸濁液を得、蠕動ポンプで用時調製した塩酸-酢酸エチル溶液(17.70L、4mol/L、21.0Eq)を加え、その間に固体が徐々に溶解して赤褐色の溶液を得た。滴加が完了すると、徐々に温度を10~25℃に上げて2.5時間反応させて、大量の赤褐色の固体が析出した。反応液を濾過して、ケーキ及びケトル壁上の固体をメタノール(7.0L)で溶解し、有機相をロータリーエバポレータに移して、減圧下で濃縮して固体を得、当該固体を酢酸エチル(8.85L)に懸濁させて一晩攪拌した。混合物を濾過して、35~45℃で真空下でケーキを重量が一定になるまで乾燥して、化合物9を得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.50(s,1H),8.30(br d,J=3.1Hz,3H),8.15(d,J=2.1Hz,1H),7.89(d,J=8.8Hz,1H),7.31(dd,J=2.1,8.7Hz,1H),4.56-4.45(m,1H),4.45-4.36(m,1H),4.15(dd,J=13.8,8.3Hz,1H),3.86(br t,J=5.1Hz,1H),3.70-3.62(m,1H),3.61-3.56(m,1H),2.44(s,3H),2.19-2.03(m,1H),1.96-1.87(m,1H),1.83-1.66(m,5H),1.60(br d,J=10.3Hz,3H),1.14-0.93(m,4H)。
【0073】
ステップ7:
N,N-ジメチルホルムアミド(11.88L)を反応ケトルに加え、反応ケトルの温度を0~5℃に調節して、化合物10(1.36kg、6.71mol、1.05Eq)及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(2.54kg、6.71mol、1.05Eq)を加え、固体が一部溶解して、白色の懸濁液を得、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.48kg、19.16mol、3.0Eq)を滴加し、反応ケトルの温度を0~5℃に制御して、固体が徐々に溶解して清澄液を得た。滴加が完了すると、反応ケトルの温度を0~5℃に制御して30分間反応させ、ゆっくりと化合物9(2.9kg、6.39mol、1.0Eq)を加え、その間に白煙が発生し、顕著な放熱が伴い、原料の添加速度の制御で反応温度を0~5℃に制御し、滴加が完了すると、温度を25~30℃に上げて23時間反応させた。5回に分けて反応液を処理し、攪拌しながら反応液(約5.0L)を35.0Lの水に滴加すると、大量の白色の固体が析出し、30分間攪拌して濾過し、ケーキを吸引乾燥して、ケーキを合わせた。ケーキとケトル壁上の固体を酢酸エチル(30.0L)で溶解した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して化合物11を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ8.34(d,J=2.0Hz,1H),7.73(s,1H),7.67(br d,J=8.7Hz,1H),7.29-7.22(m,1H),6.78(br s,1H),4.78-4.45(m,4H),3.88-3.55(m,4H),2.84-2.76(m,3H),2.50(s,3H),2.06-1.94(m,2H),1.73(br d,J=10.3Hz,6H),1.51(s,9H),1.39(d,J=6.7Hz,2H),1.33(br d,J=7.0Hz,3H),1.16(br s,4H)。
【0074】
ステップ8:
酢酸エチル(10.0L)を反応ケトルに加え、反応ケトルの温度を0~5℃に調節して、化合物11(3.84kg、6.03mol、1.0Eq)を酢酸エチル(9.20L)で溶解して反応ケトルを加えた。蠕動ポンプで用時調製した塩酸-酢酸エチル溶液(4mol/L、19.20L)に加え、流速を0.50L/minとして、滴加が完了すると、徐々に温度を室温から25~30℃に上げて19時間反応させ、ケトルの壁に大量の固体が出現した。反応ケトルにメチルtert-ブチルエーテル(10.0L)を加えて、反応液を2.0時間攪拌し、反応液を濾過して、ケーキを吸引乾燥した。ケーキとケトル壁上の固体を水(30.0L)で溶解し、内部温度が5~10℃に下がると、酢酸エチル(10.0L*2)で2回抽出して、水相を集めた。2回に分けて水相を処理し、15.0Lの水を反応ケトルに加え、内部温度が5~10℃に下がると、pHが9になるまで質量分率が10%の炭酸カリウム水溶液を滴加して、反応液が赤紫色から無色に変わって、固体が析出し、30分間攪拌して濾過した。固体がきめ細かい場合には、酢酸エチル(1.50L)を加えて30分間攪拌して濾過し、ケーキを吸引乾燥して反応ケトルに移し、イソプロパノールを加えて2.0時間攪拌してもよい。混合物を濾過して、ケーキを45℃で真空下で重量が一定になるまで乾燥して、式(I)化合物を得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.50-8.39(m,1H),8.20-8.09(m,1H),7.96-7.82(m,2H),7.32(dd,J=8.7,2.1Hz,1H),4.58-4.34(m,3H),4.14-4.02(m,1H),3.79-3.54(m,2H),3.06-2.88(m,1H),2.48-2.41(m,3H),2.24-2.13(m,3H),2.09-1.95(m,3H),1.93-1.85(m,1H),1.79-1.54(m,8H),1.12-1.01(m,6H),0.99-0.86(m,1H)。
【0075】
ステップ9:
エタノール(14.0L)を反応ケトルに加えて、攪拌を開始し、式(I)化合物(1.74kg、3.41mol、1.0Eq)を反応ケトルに加え、固体が溶解しきれず、懸濁液を得た。循環浴の温度を90℃に設定して、ケトル内にエタノールが還流し始め、固体が徐々に清澄化していき、15分間保温した後、熱いうちに濾過し、濾液を反応ケトルに移して温度が徐々に室温に下がると、大量の固体が析出した。反応液を濾過して、ケーキを35~45℃で真空下で重量が一定になるまで乾燥して、式(I)化合物の結晶Aを得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.47-8.39(m,1H),8.19-8.08(m,1H),7.97-7.67(m,2H),7.38-7.20(m,1H),4.59-4.29(m,3H),4.17-4.00(m,1H),3.63(td,J=7.6,3.8Hz,2H),2.97(q,J=6.8Hz,1H),2.47-2.39(m,3H),2.24-2.14(m,3H),2.11-1.96(m,2H),1.94-1.81(m,1H),1.78-1.49(m,8H),1.25-0.87(m,8H)。
【0076】
実施例2:式(I)化合物の結晶Aの製造
それぞれ約50mgの式(I)化合物を秤量して、それぞれ1.5mL液相保存用バイアルに加え、それぞれ適量の溶媒又は溶媒混合物を加え(表2参照)、超音波より均一に混合又は溶解した。懸濁液サンプルを恒温振盪機にセットして40℃で遮光下で60時間攪拌した。その後、液体サンプルを高速遠心分離して、遠心分離後に固体を35℃の真空オーブンに入れて一晩乾燥して、乾燥サンプルを得、XRPD測定を行った。
【0077】
【0078】
実験例1:式(I)化合物の結晶Aの吸湿性試験
実験条件:
装置型番:SMSDVS Advantage動的ガス吸着装置(DVS)。
【0079】
試験条件:式(I)化合物の結晶A(10~15mg)をDVSサンプルパンに入れて試験を行った。
【0080】
DVSパラメータは次のとおりである。
温度:25℃。
【0081】
平衡:dm/dt=0.01%/min(最短10min、最長180min)。
乾燥:0%RH下で120min乾燥。
【0082】
RH(%)測定勾配:10%。
RH(%)測定勾配範囲:0%~90%~0%。
【0083】
吸湿性の評価基準は表3を参照する。
【0084】
【0085】
注:*25℃/80%RH下の吸湿による重量増加。
実験結果:式(I)化合物の結晶Aの25℃で80%RH下の吸湿による重量増加は0.72%であった。
【0086】
実験結論:式(I)化合物の結晶Aはやや吸湿性があり、保存しやすく、潮解、変形、カビなどが起こりにくいため、薬物として価値が高い。
【0087】
実験例2:式(I)化合物の結晶Aの安定性試験
実験方法:
影響因子実験:式(I)化合物の結晶Aを12部秤量して、各1.50gであり、各条件では3部を使用して調べた。各サンプルを開放した計量ボトルに入れて、高温下で異なる条件に設定したデシケータに入れ、その後、対応の安定化ボックスに入れて検討した。高湿度条件については相当の条件の安定化ボックスに入れて検討した。
【0088】
光安定性実験:式(I)化合物の結晶Aを4部秤量して、各1.50gであり、2部は光照射サンプル(一方は5日間光照射サンプル、他方は10日間光照射サンプル)とし、残りの2部は対照サンプル(一方は5日間対照サンプル、他方は10日間対照サンプル)とし、光照射サンプルを清潔な計量ボトルに入れて、単層にして敷き詰め、上が覆われないよう透明な蓋をして、光照射ボックスに入れて光照射を与えた。対照サンプルの包装方法は光照射サンプルと一致し、ただし計量ボトルの外側をアルミニウムフィルムで覆った。
【0089】
長期加速実験:式(I)化合物の結晶Aを22部秤量して、各1.50gであった。各サンプルをそれぞれ2層LDPEバッグに入れ、各層のLDPEバッグをそれぞれバックルで密封して、さらにアルミ箔バッグに入れてヒートシールした。検出時点に、対応の試験サンプルを取り出して蓋をし、0日のサンプルを冷蔵庫から取り出して、サンプルが室温に戻ったら分析した。約10mgの試料を用いてXRPDを測定した。化合物を下記の条件下で静置し異なる時点にサンプルを採取して性状、XRPD、含有量及び関連物質を検出した。試験条件及び検出項目は表4、表5を参照する。
【0090】
【0091】
【0092】
実験結論:
XRPD測定結果から、式(I)化合物の結晶Aが0日と変わりはなく、様々な試験条件下で式(I)化合物の結晶Aが安定的であることが示された。
【0093】
実験例3:cIAP1 BIR3とXIAP BIR3の結合実験
実験材料:
試験緩衝系(cIAP1 BIR3又はXIAP BIR3のバッファー):0.1mol/Lのリン酸カリウム、pH7.5、0.1%のウシ血清アルブミン、0.005%トリトンX-100、1%ジメチルスルホキシド。
【0094】
プローブ:ARPFAQ-K(5-FAM)-NH2。
目標:
cIAP1-BIR3-his:RBC(カタログ番号APT-11-370)、ヒトcIAP1のBIR3ドメイン(アミノ酸258~363を含むcIAP1 BIR3)をGST-融合タンパク質として大腸菌(E.coli)から発現及び精製した。
【0095】
XIAP-BIR3-his:RBC(カタログ番号APT-11-374)、XIAPのBIR3ドメイン(アミノ酸255~356を含むXIAP BIR3)をGST-融合タンパク質として大腸菌(E.coli)から発現及び精製した。
【0096】
反応条件:5nMのARPFAQ-K(5-FAM)-NH2、20nMのcIAP1 BIR3、30nMのXIAP BIR3。
【0097】
実験ステップ:
まずcIAP1 BIR3又はXIAP BIR3のバッファーを使用前に調製して、2倍のcIAP1 BIR3又はXIAP BIR3溶液を加え、さらに、音響学的手法で、100%DMSOで溶解した被験化合物をcIAP1 BIR3又はXIAP BIR3のバッファーに加え、その後、2倍のプローブを加え、室温下で暗所において混合して60分間インキュベートし、蛍光偏光を測定してmP値を計算し、最後にIC50値を得た。
【0098】
実験結果:表6に示すとおりである。
実験結論:
本願の式(I)化合物は良好なcIAP1 BIR3結合活性を示し、しかもcIAP1及びXIAPに良好な選択性を示している。
【0099】
実験例4:インビトロ細胞活性試験
実験材料:
RPMI 1640培地(Invitrogen-22400089)、ウシ胎児血清(Invitrogen-10099141)、トリプシン(Trypsin)、0.05%EDTA・4Na(Invitrogen-25300062)、発光法細胞生存率検出キット(Promega-G7573)、ダルベッコリン酸バッファー(HyClone-SH30028.01B)、384ウェルプレート(Corning-6007680)。Envisionマルチラベルアナライザ。
【0100】
実験方法:
1. 384マイクロウェルプレートのウェルに、250個のMDA-MB-231細胞を含む30μLのMDA-MB-231細胞懸濁液を加えた。
【0101】
2. 20μLの被験化合物(被験化合物の最高濃度が10μMで、被験化合物を5倍で勾配希釈し、各化合物を10つの濃度勾配に希釈した)を加え、その後、細胞培養プレートを二酸化炭素インキュベータに戻して7日間培養した。
【0102】
3.細胞培養プレートを室温下で水平に30分間静置した。
4.細胞培養プレートの各ウェルに20μLのPromega CellTiter-Glo試薬を加えた。
【0103】
5. 10分間後、Envisionマルチラベルアナライザで読み取った。
実験結果:表6参照。
【0104】
実験結論:
本願の式(I)化合物は良好なMDA-MB-231細胞抗増殖活性を有する。
【0105】
【0106】
実験例5:インビボ薬効研究1
MDA-MB-231トリプルネガティブ乳がん患者からのヒト由来腫瘍細胞株を皮下移植された異種移植(CDX)BALB/cヌードマウスにおいてインビボ薬効実験を行った。
【0107】
実験手順:
雌の6~8週齢で、体重が約18~22gのBALB/cヌードマウスを、病原体のない特殊な環境で、換気ケージに保持した(1ケージ当たりマウス3匹)。全てのケージ、床敷と水は使用前に消毒した。全ての動物は不自由なく認証済みの標準的な実験動物用飼料を摂取することができる。上海西普爾必凱実験動物有限公司(Shanghai BK Laboratory Animal Co.,LTD)から合計で48匹のマウスを購入して実験に使用した。各マウスには右脇腹で腫瘍細胞(0.2mLのリン酸塩バッファー中10×106個)を皮下移植して、腫瘍を増殖させた。平均腫瘍体積が約147mm3になると投与を開始した。試験化合物を毎日経口投与し、投与用量は30mg/kgであった。3日ごとに二次元測定器ノギスで腫瘍体積を測定し、体積単位はmm3であり、式:V=0.5a×b2で計算し、式中、aは腫瘍の長径、bは短径であった。抗腫瘍効果は化合物で処理した動物の平均腫瘍増加体積を未処理動物の平均腫瘍増加体積で割って判定した。
【0108】
実験結果:表7参照。
実験結論:
MDA-MB-231トリプルネガティブ乳がんCDXインビボ薬効モデルにおいて、本願の式(I)化合物が良好な薬効を示している。
【0109】
【0110】
実験例6:インビボ薬効研究2
MDA-MB-231トリプルネガティブ乳がん患者からのヒト由来腫瘍細胞株を皮下移植された異種移植(CDX)BALB/cヌードマウスにおいてインビボ薬効実験を行った。
【0111】
実験手順:
雌の6~8週齢で、体重が約18~22gのBALB/cヌードマウスを、病原体のない特殊な環境で、換気ケージに保持した(1ケージ当たりマウス3匹)。全てのケージ、床敷と水は使用前に消毒した。全ての動物は不自由なく認証済みの標準的な実験動物用飼料を摂取することができる。上海西普爾必凱実験動物有限公司(Shanghai BK Laboratory Animal Co.,LTD)から合計で48匹のマウスを購入し実験に使用した。各匹マウスには右脇腹で腫瘍細胞(0.2mLのリン酸塩バッファー中10×106個)を皮下移植して、腫瘍を増殖させた。平均腫瘍体積が約110mm3になると投与を開始した。試験化合物を毎日経口投与し、投与用量は30mg/kgであった。3日ごとに二次元測定器ノギスで腫瘍体積を測定し、体積単位はmm3であり、式:V=0.5a×b2で計算し、式中、aは腫瘍の長径、bは短径であった。抗腫瘍効果は化合物で処理した動物の平均腫瘍増加体積を未処理動物の平均腫瘍増加体積で割って判定した。
【0112】
実験結果:表8参照。
実験結論:
MDA-MB-231トリプルネガティブ乳がんCDXインビボ薬効モデルにおいて、本願の式(I)化合物が良好な薬効を示している。
【0113】