(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】水硬性結合材を摩砕する方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/52 20060101AFI20241113BHJP
C04B 24/02 20060101ALI20241113BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20241113BHJP
C04B 24/04 20060101ALI20241113BHJP
C04B 103/52 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
C04B7/52
C04B24/02
C04B24/12 Z
C04B24/12 A
C04B24/04
C04B103:52
(21)【出願番号】P 2021572704
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020054878
(87)【国際公開番号】W WO2020173927
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-25
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506044649
【氏名又は名称】クリソ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フセイン・オイトゥン・ヤザン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ギヨ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ボウスティンゴリー
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-118332(JP,A)
【文献】特開昭56-059656(JP,A)
【文献】特開2013-018677(JP,A)
【文献】実開平03-115633(JP,U)
【文献】特開昭48-044855(JP,A)
【文献】特表2015-526371(JP,A)
【文献】特開2004-284865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
B02C 1/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性結合材を摩砕する方法であって、
a)第1のチャンバ(12)及び最終チャンバ(14)を含む数個のチャンバ(12、14)を含み、各チャンバ(12)が隣接するチャンバ(14)から隔壁(17)によって隔てられている水平摩砕機(11)の第1のチャンバ(12)に、
- 水硬性結合材、及び
- 少なくとも1種の摩砕助剤Bを含む組成物B
を導入し、それにより第1のチャンバ(12)において水硬性結合材と組成物Bとを含む組成物βが得られる工程と、
b)水平摩砕機(11)において組成物βを摩砕し、それにより組成物βが第1のチャンバ(12)から最終チャンバ(14)へと移動し、最終チャンバ(14)の出口で摩砕された組成物Cが得られる工程と
を含み、
摩砕工程は、アミノアルコールを含む少なくとも1種の摩砕助剤Aを含む、組成物βとは異なる組成物Aを最終チャンバ(14)に導入することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程b)の後に、
c)摩砕された組成物Cを分離器(23)によって細粒と分離器除去物とに分離する工程であって、分離器除去物の粒子の平均サイズが細粒の粒子の平均サイズよりも大きい、工程と;
d)細粒を回収する工程と;
e)分離器除去物を水平摩砕機(11)の第1のチャンバ(12)に戻す工程と
を含む、請求項1に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項3】
水平摩砕機(11)が、2つのチャンバ(12,14)のみを有する、請求項1又は2に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項4】
水硬性結合材がセメントであ
る、請求項1から3のいずれか一項に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項5】
摩砕助剤Bが、ポリオールを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項6】
摩砕助剤Bの前記ポリオールが、
- ジオール、
- トリオール、及び
- テトラオール、
又はこれらの混合物
から選択される、請求項5に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項7】
前記ジオールが、アルキレングリコールである、請求項6に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項8】
前記アルキレングリコールが、1~20個の炭素原子を有する、請求項7に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項9】
摩砕助剤Bが、1~20個の炭素原子を有するアルキレングリコール、又はその混合物を含
む、請求項6に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項10】
摩砕助剤Bの前記ポリオールが、
- 2-メチル-1,3-プロパンジオール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物から選択されるジオール、
- グリセロールであるトリオール、及び
- エリトリロールであるテトラオール、
から選択される、請求項6に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項11】
摩砕助剤Bが、
- アミノアルコール、又はその塩の1種
を含
む、請求項1から10のいずれか一項に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項12】
摩砕助剤Bが、
- アミノアルコール、又はその塩の1種を含み、かつ、
- 酢酸若しくはその塩の1種、ギ酸若しくはその塩の1種、又はこれらの混合物から選択されるカルボン酸、を含む、請求項11に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項13】
摩砕助剤Bの前記アミノアルコールが、
- 2~8個の炭素原子、及び/又は
- 1、2若しくは3個のアルコール官能基
を有する、請求項11又は12に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項14】
摩砕助剤Bの前記アミノアルコールが、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、トリエタノールアミン(TEA)、エタノール-ジイソプロパノールアミン(EDIPA)、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)又はこれらの混合物である、請求項13に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項15】
摩砕助剤Aの前記アミノアルコールが、
- 2~8個の炭素原子、及び/又は
- 1、2若しくは3個のアルコール官能基
を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項16】
摩砕助剤Aの前記アミノアルコールが、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、トリエタノールアミン(TEA)、エタノール-ジイソプロパノールアミン(EDIPA)、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)又はこれらの混合物である、請求項15に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項17】
組成物Aが、
隣接するチャンバから最終チャンバを隔てる隔壁の位置、
又は、最終チャンバの筺体中、
又は、最終チャンバの出口
のいずれかで最終チャンバに注入される、請求項1から16のいずれか一項に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【請求項18】
組成物Aが、最終チャンバの出口に備えられた排出格子の位置で、最終チャンバの出口に注入される、請求項17に記載の水硬性結合材を摩砕する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性結合材、例えばセメントを摩砕する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性結合材を調製する方法は、摩砕して結合材の粒径を低減することにより、反応性を高め、結合材に所望のレオロジー特性を付与することを含む。
【0003】
摩砕助剤を使用すると、水硬性結合材の摩砕の収率の向上が可能となる。摩砕助剤は、
- 1つの同じエネルギー消費及び1つの同じ粉末度での摩砕の際の生産性の向上、又は
- 1つの同じエネルギー消費での粉末度の上昇
を可能とする。
【0004】
数個の摩砕チャンバを有する水平摩砕ミルを水硬性結合材の摩砕に使用する場合、摩砕助剤は、摩砕すべき水硬性結合材と共に、又はそれとは別々に、摩砕ミルの第1のチャンバに注入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
摩砕された水硬性結合材の品質(特に、ブレーン粉末度及び/若しくは粒径分布)の向上、並びに/又はコスト削減のための摩砕収率の向上を可能とする、水硬性結合材を摩砕する方法の開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明の第1の主題は、水硬性結合材を摩砕する方法であって、
a)第1のチャンバ及び最終チャンバを含む数個のチャンバを含み、各チャンバが隣接するチャンバから隔壁によって隔てられている水平摩砕機の第1のチャンバに、
- 水硬性結合材、及び
- 少なくとも1種の摩砕助剤Bを含む組成物B
を導入し、それにより第1のチャンバにおいて水硬性結合材と組成物Bとを含む組成物βが得られる工程と、
b)水平摩砕機において組成物βを摩砕し、それにより組成物βが第1のチャンバから最終チャンバへと移動し、最終チャンバの出口で摩砕された組成物Cが得られる工程と
を含み、
摩砕工程では、アミノアルコールを含む少なくとも1種の摩砕助剤Aを含む、組成物βとは異なる組成物Aを最終チャンバに導入することを含むことを特徴とする、方法である。
【0007】
方法は、第1のチャンバ及び最終チャンバを含み、各チャンバが隣接するチャンバから隔壁によって隔てられている数個のチャンバ(「コンパートメント」と呼ばれることもある)を含む水平摩砕機を使用する。一般に、チャンバは直径が同じである、及び/又は最終チャンバは第1のチャンバよりも長い。好ましくは、摩砕用装入物(金属球…)は、チャンバ毎にサイズが異なる。
【0008】
第1のチャンバは、摩砕すべき水硬性結合材を受け入れるチャンバである。最終チャンバは、摩砕された組成物Cが摩砕機から出てくるチャンバである。摩砕された組成物Cは、摩砕された水硬性結合材、摩砕助剤A及び摩砕助剤Bを含む。
【0009】
摩砕中、水硬性結合材は、第1のチャンバから、最終チャンバに到達するまで隣接するチャンバへと移動する。2つの隣接するチャンバを隔てる隔壁は、後続の隣接するチャンバでの更に微細な摩砕にとって十分にサイズが小さくなった水硬性結合材の粒子のみの通過を許容する。したがって、水硬性結合材の粒径は、第1のチャンバで最大であり、最終チャンバで最小である。
【0010】
典型的には、摩砕機は、第1のチャンバ及び最終チャンバ(以降、第2のチャンバとする)の2つのチャンバのみを有し、これらは隔壁によって隔てられている。
【0011】
摩砕機は一般に、ボールミルである。第1のチャンバの平均ボール径は一般に、最終チャンバの平均ボール径よりも大きい。
【0012】
方法は、摩砕機の第1のチャンバに、水硬性結合材、及び少なくとも1種の摩砕助剤Bを含む組成物Bを導入する工程a)を含む。
【0013】
「水硬性結合材」という用語は、水の存在下で水和状態になる性質を有する任意の配合物を意味し、その水和は、機械的特性を有する固体を得ることを可能とする。水硬性結合材は、2012年の規格EN 197-1に適合するセメント、特に、2012年のセメント規格NF EN 197-1に従うCEM I、CEM Il、CEM III、CEM IV又はCEM Vタイプのセメントとすることができる。したがって、セメントは、特にミネラル追加物を含むことができる。
【0014】
「ミネラル追加物」という表現は、スラグ(2012年のセメント規格NF EN 197-1、段落5.2.2に定義されるようなもの)、製鋼スラグ、ポゾラン材料(セメント規格NF EN 197-1、段落5.2.3に定義されるようなもの)、フライアッシュ(セメント規格NF EN 197-1、段落5.2.4に定義されるようなもの)、焼成片岩(セメント規格NF EN 197-1、段落5.2.5に定義されるようなもの)、石灰岩(セメント規格NF EN 197-1、段落5.2.6に定義されるようなもの)、若しくはヒュームドシリカ(セメント規格NF EN 197-1、段落5.2.7に定義されるようなもの)、又はこれらの組成物を指す。現在セメント規格NF EN 197-1(2012)には認められていない他の追加物も、使用することができる。これらは主にメタカオリン、例えば2012年の規格NF P 18-513に適合するタイプAメタカオリン、及び2012年の規格NF P 18-509に適合するQz鉱物学のケイ質追加物である。
【0015】
第1の実施形態において、摩砕助剤Bは、ポリオール、好ましくは、
- ジオール、好ましくは、1~20個の炭素原子、特に1~10個の炭素原子を有し、アルキレン基が場合によりメチルを有するアルキレングリコールであるジオール、典型的には、2-メチル-1,3-プロパンジオール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物の中から選択されるジオール、
- トリオール、好ましくはグリセロール、
- テトラオール、好ましくはエリトリトール、並びに
- これらの混合物
の中から選択されるポリオールを含む。
例えば、摩砕助剤Bは、アルキレングリコール、又はアルキレングリコールの混合物を含み、任意選択でグリセロールを含んでいてもよく、グリセロールは、全体(グリセロールとアルキレングリコール)の質量に対して好ましくは0~5質量%の割合で含有される。
そのため、摩砕助剤B(及び組成物B)は、好ましくはアミノアルコール、特に以下に列挙したもののうちの1種を含まない。
【0016】
第2の実施形態において、摩砕助剤Bは、アミノアルコール、又はその塩の1種を含み、前記アミノアルコールは、好ましくは
- 2~8個の炭素原子、特に4~6個の炭素原子、及び/又は
- 1、2若しくは3個のアルコール官能基
を含み、例えば、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、トリエタノールアミン(TEA)、エタノール-ジイソプロパノールアミン(EDIPA)、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、及びこれらの混合物の中から選択される。例えば、摩砕助剤Bは、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、トリエタノールアミン(TEA)、又はこれらの混合物を含む。好ましいアミノアルコール塩は、塩酸塩、例えばTEA.HCl、TIPA.HCl、EDIPA.HCl及びDEIPA.HClである。
この第2の実施形態において、摩砕助剤B(及び組成物B)は、好ましくはポリオール、特に先に列挙したもののうちの1種を含まない。
この第2の実施形態は、ポリオールが摩砕にとって有害な凝集を誘発する可能性があり、したがって回避すべきである軟質の水硬性結合材の摩砕に特に適している。
【0017】
第3の実施形態において、摩砕助剤Bは、ポリオールとアミノアルコールとを含む。
【0018】
第2及び第3の実施形態において(摩砕助剤Bがアミノアルコールを含む場合)、摩砕助剤Bは、カルボン酸又はその塩を含んでもよく、それは、例えば、酢酸及びその塩の1種、ギ酸若しくはその塩の1種、又はこれらの混合物の中から選択される。そのため、摩砕助剤Bは、アミノアルコール、カルボン酸又はその塩を含み、任意選択でポリオールを含んでいてもよい。塩は、アミノアルコールとカルボン酸との間で形成される塩とすることができる。カルボン酸は一般に、組成物Bの分散力の調節を可能とし、この力は、カルボン酸なしでアミノアルコールを使用する場合に強くなりすぎることがある。
【0019】
摩砕助剤Bは、組成物Bの活物質である。組成物Bは、1種又は複数種の摩砕助剤Bを含んでもよい。
【0020】
摩砕助剤Bに加えて、組成物Bは、溶媒、一般的には水を含んでもよい。組成物Bは、少なくとも1種の摩砕助剤B(この助剤は、好ましくは、1種若しくは複数種のポリオール、1種若しくは複数種のアミノアルコール、又はそれらの混合物と、摩砕助剤がアミノアルコールを含む場合、任意選択で1種若しくは複数種のカルボン酸又はその塩から構成される)の水溶液、更には水と摩砕助剤Bとの混合物で構成することができる。
【0021】
工程a)で第1のチャンバに導入される摩砕助剤Bの割合は、工程a)で第1のチャンバに供給される水硬性結合材1トン当たり典型的には50~2500g、特に75~500g、好ましくは90~250gである。この値より低いと、摩砕助剤の効率が低下し、この値を超えると、コストが高くなりすぎる。割合は、組成物B中のいずれの溶媒又は任意選択の他の添加剤も考慮しない「乾燥」摩砕助剤に関する。組成物Bが数種の摩砕助剤Bを含む場合、考慮するのはそれらの割合の合計である。
【0022】
水硬性結合材と組成物Bの供給は、同時であっても同時でなくてもよい。加えて、水硬性結合材と組成物Bの供給は、第1のチャンバの別々の入口から、又は1つの同じ入口から行うことができる。例えば、第1のチャンバには、水硬性結合材と組成物Bとを含む組成物βを充填する(水硬性結合材と組成物Bを1つの同じ入口から同時に導入する)ことができる。好ましくは、組成物Bと水硬性結合材は、第1のチャンバの1つの同じ入口から同時に導入される。典型的には、例えば、液滴を水硬性結合材の供給ホッパーに放出する噴霧傾斜路又はパイプを介して、水硬性結合材の供給ホッパー中の水硬性結合材に組成物Bを分散させる。この場合、結果として水平摩砕機の第1のチャンバに導入されるのは、組成物βとなる。
【0023】
方法は、摩砕機において組成物βを摩砕し、それにより組成物βが第1のチャンバから最終チャンバへと移動し、最終チャンバの出口で摩砕された組成物Cが得られる工程b)を含む。したがって、組成物Cの平均粒径は、組成物βの平均粒径よりも小さい。粒径の測定は、サイズ分布を与えるレーザー粒径測定によって、又は32、45及び/又は63μmの規定のスクリーンメッシュ上の除去物の質量割合を典型的には与える圧力下でのふるい分けによって(サイズの比較のためには同じ測定方法を使用しなければならないという理解の下で)遂行することができる。
【0024】
本発明の方法の摩砕工程b)では、アミノアルコールを含む少なくとも1種の摩砕助剤Aを含む組成物Aが、摩砕機の最終チャンバに注入される。
【0025】
典型的には、組成物Aは、
隣接するチャンバから最終チャンバを隔てる隔壁の位置、
又は、最終チャンバの筺体中、最終チャンバの出口よりも隣接するチャンバから最終チャンバを隔てる隔壁に概して近いゾーン、
又は、最終チャンバの出口、典型的には最終チャンバの出口を備える排出格子の位置
のいずれかで最終チャンバに注入される。
【0026】
方法は、少なくとも2種の摩砕助剤A及びBを採用し、これらは摩砕機の異なる地点に、即ち、一方は第1のチャンバに、他方は最終チャンバに導入される。
【0027】
本発明者らは、摩砕助剤A及びBが、摩砕ユニット内で同じように分布しないことを示した。摩砕ユニットに沿った摩砕助剤の用量は、摩砕助剤のタイプに応じて変化する。先行技術におけるように、この摩砕助剤が両方とも第1のチャンバに導入される場合、
- 水硬性結合材の粒子上に見られる摩砕助剤の量は、粒子が摩砕機の第1のチャンバを出るとすぐに、本質的に水硬性結合材粒子の比表面積によって支配され;
- 摩砕機の第1のチャンバ内部では、摩砕助剤Bがアルキレングリコールを含む場合、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aよりも、水硬性結合材の単位表面積当たりで豊富となり、
- 水硬性結合材の単位表面積当たりの摩砕助剤の量は、摩砕機の第2のチャンバでは安定し、最終チャンバでは2種類の摩砕助剤間の差は小さくなる。
【0028】
アミノアルコールを含む摩砕助剤Aは一般に、粒子の流れを流動化する能力が良好であり、これは、アルキレングリコールを含む摩砕助剤には見られないものである。特定の理論に縛られることを望むものではないが、下記の実施例を踏まえ、本発明者らは、以下のように推測する:
- 摩砕助剤は、比表面積が大きな水硬性結合材の粒子、したがって小さなサイズの粒子によって運ばれ;
- この効果は、摩砕助剤が流動化効果を有する場合に増幅される可能性があり、それは、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aの場合に見られ、小さなサイズの水硬性結合材粒子の流速を増加させる。したがって、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aは、大きなサイズの水硬性結合材粒子を含む第1の摩砕チャンバでは、あまり豊富にならない。
【0029】
これは、2種の摩砕助剤を摩砕ライン上の異なる地点で導入すること、即ち、摩砕機中での水硬性結合材の十分に長い滞留時間を可能とするために摩砕助剤Bを第1のチャンバに導入し、摩砕機から小さなサイズの粒子を取り出す、及び/又は摩砕された組成物Cの粒子を流動化するためにアミノアルコールを含む摩砕助剤Aを最終チャンバに導入することにより、その後のその処理性を向上させ、その後の分離(以下に記載する第2の代替形態)を容易にすることの利点を実証する。
【0030】
組成物Aは、組成物βとは異なる。換言すれば、最終チャンバに注入される組成物Aは、摩砕機内で摩砕に供される組成物ではない。
【0031】
摩砕助剤Aは、少なくとも1種のアミノアルコールを含み、好ましくは
- 2~8個の炭素原子、特に4~6個の炭素原子、及び/又は
- 1、2若しくは3個のアルコール官能基
を含み、例えば、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、トリエタノールアミン(TEA)、エタノールジイソプロパノールアミン(EDIPA)、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、及びこれらの混合物の中から選択されるアミノアルコールを含む。例えば、摩砕助剤Aは、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、トリエタノールアミン(TEA)、又はこれらの混合物を含む。
【0032】
摩砕助剤Aは、カルボン酸又はその塩を含んでもよく、それは、例えば、酢酸若しくはその塩の1種、ギ酸若しくはその塩の1種、又はそれらの混合物の中から選択される。したがって、摩砕助剤Aは、アミノアルコールと、カルボン酸又はその塩とを含む。塩は、アミノアルコールとカルボン酸との間で形成される塩とすることができる。カルボン酸は一般に、組成物Aの分散力の調節を可能とし、これは、カルボン酸なしでアミノアルコールを使用した場合に強くなりすぎることがある。
【0033】
一実施形態において、摩砕助剤Aは、摩砕助剤Bと同じである。組成物Aは、組成物Bと同じものとすることができる。
【0034】
別の実施形態において、摩砕助剤Aは、摩砕助剤Bとは異なる。組成物Aは、組成物Bとは異なる。
【0035】
摩砕助剤Aは、組成物Aの活物質である。組成物Aは、1種又は複数種の摩砕助剤Aを含んでもよい。
【0036】
摩砕助剤Aに加えて、組成物Aは、溶媒、一般的には水を含んでもよい。組成物Aは、少なくとも1種の摩砕助剤Aの水溶液から、更には水と摩砕助剤Aとの混合物から構成することができる。
【0037】
工程b)で最終チャンバに注入される摩砕助剤Aの割合は、工程a)で第1のチャンバに供給される水硬性結合材1トン当たり典型的には50~2500g、特に75~500g、好ましくは90~250gである。この値より低いと、摩砕助剤の効率が低下し、この値を超えると、コストが高くなりすぎる。この割合は、組成物Aへのいずれの溶媒及び任意の他の添加剤も考慮しない「乾燥」摩砕助剤に関する。組成物Aが数種の摩砕助剤Aを含む場合、考慮するのはそれらの割合の合計である。
【0038】
摩砕工程b)では、第1のチャンバから最終チャンバに向けて空気を流通させることができる。空気は、第1のチャンバから入り、最終チャンバから出て行く。この空気は、摩砕を受けている組成物βのほとんどの揮発性粒子の移動を可能とする。次いで、方法は、工程b)の後に、
i)最終チャンバを出る空気をフィルターにかけ、それにより水硬性結合材のほとんどの摩砕された揮発性粒子が回収される工程と;次いで
ii)回収されたほとんどの揮発性粒子を、一般的には空気流下の流れによって摩砕された組成物Cと一緒にする工程と
を含んでもよい。
【0039】
第1の代替形態において、工程b)の後に、方法は、摩砕された組成物Cを回収する工程b1)を含む。このとき、摩砕された組成物Cは、所望のサイズ/比表面積を有する。このとき、方法は、連続、半連続、又はバッチプロセスにより実施することができる。
【0040】
この第1の代替形態において、アミノアルコールを含む少なくとも1種の摩砕助剤Aを含む組成物Aを最終チャンバに注入することの主な利点は、摩砕された組成物Cの流動化が達成されることであり、それは、摩砕された組成物Cの流動性を高め、例えばサイロ内で、又はトラックへの積み卸しの際に流れを促進するので、その後のその処理性を向上させる。一般に、摩砕された組成物Cの適切な流動性を得るために必要なアミノアルコールを含む摩砕助剤Aの用量は、水硬性結合材の効率的な摩砕のために必要な用量よりも多い。したがって、摩砕助剤Aを摩砕機の最終チャンバに注入することが有利であり、それには、摩砕助剤Aが最終チャンバの出口の位置、典型的には最終チャンバの出口を備える排出格子の位置で注入される実施形態が含まれる。
【0041】
第2の代替形態において、工程b)の後に、方法は、
c)摩砕された組成物Cを分離器によって細粒と分離器除去物とに分離する工程であって、分離器除去物の平均粒径が細粒の平均粒径よりも大きい、工程と;
d)細粒を回収する工程と;
e)分離器除去物を水平摩砕機の第1のチャンバに戻す工程と
を含む。
【0042】
この第2の代替形態において、方法は、摩砕された組成物Cを細粒と分離器除去物とに分離する工程c)を含む。
【0043】
発明者らは、
- 分離は、限界効率に到達するまでは、摩砕助剤A又はBの量が多いほど効率的であり;
- 分離の有効性は、使用する摩砕助剤に依存する。分離は、ポリオールを含む摩砕助剤よりも、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aを使用した方が効率的となる
ことを示した。
【0044】
したがって、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aを摩砕機の最終チャンバに注入すると、分離の際に摩砕された組成物Cの流動化をより良好とし、分離をより効率的にすることができる。
【0045】
加えて、アミノアルコールを含む少なくとも1種の摩砕助剤Aを含む組成物Aの最終チャンバへの導入は、摩砕された組成物C及び回収される細粒を流動化するという利点も有し、それは、例えばサイロ内で、又はトラックへの積み卸しの際に細粒の流れの流動性が増すため、その後のその処理性を向上させる。一般に、回収された細粒の許容できる流動性を得るために必要なアミノアルコールを含む摩砕助剤Aの用量は、水硬性結合材の効率的な摩砕に必要な用量よりも多い。
【0046】
この第2の代替形態において、先に規定した工程i)及びii)は、遂行される場合、好ましくは、摩砕された組成物Cと一緒にした粒子を分離器に戻す工程iii)が後に続く。工程i)、ii)及びiii)は、工程b)とc)の間に実施される。
【0047】
この第2の代替形態において、細粒は、工程d)で回収される。これは、この方法を用いて得られる、所望のサイズ/比表面積に摩砕された水硬性結合材の組成物である。典型的には、水硬性結合材がセメントである場合、ブレーン法で測定した細粒の比表面積は、3200~4500cm2/gのオーダーである。
【0048】
分離器除去物は、所望のサイズには大きすぎる粒子を含む。これは、第1の摩砕チャンバに戻されて再摩砕される。したがって、第1のチャンバ内に含まれる組成物βは、水硬性結合材、分離器除去物、及び組成物Bを含む、或いはそれらからなる(除去物は、水硬性結合材、摩砕助剤A及び摩砕助剤Bを含むことに留意)。
【0049】
一般に、この第2の代替形態において、摩砕方法は、連続プロセスである。
【0050】
本発明の第2の主題は、本発明の方法を実施することを意図した摩砕ユニットであって、
- 水硬性結合材の供給源と;
- 少なくとも1種の摩砕助剤Bを含む組成物Bの供給源と;
- アミノアルコールを含む少なくとも1種の摩砕助剤Aを含む組成物Aの供給源と;
- 少なくとも1つの入口を有する第1のチャンバ及び出口を有する最終チャンバを含む数個のチャンバを含み、各チャンバが隣接するチャンバから隔壁によって隔てられている水平摩砕機と
を含み、
最終チャンバが組成物Aの供給源に接続された入口を備えることを特徴とする、摩砕ユニットである。
【0051】
上記の実施形態は、特に摩砕機の実施形態に適用可能である。
【0052】
一般に、最終チャンバは、最終チャンバを隣接するチャンバから隔てる隔壁から排出格子まで延びており、排出格子は、摩砕された組成物Cを摩砕機から排出させることができる。典型的には、組成物Aの供給源に接続された最終チャンバの入口は、
- 隣接するチャンバから最終チャンバを隔てる隔壁の位置;
- 又は、最終チャンバの筺体中、最終チャンバの出口よりも隣接するチャンバから最終チャンバを隔てる隔壁に概して近いゾーン;
- 又は、最終チャンバの出口、典型的には最終チャンバの出口を備える排出格子の位置
のいずれかに位置している。
【0053】
摩砕機がボール摩砕機である場合、最終チャンバの出口は一般に、摩砕ボールが摩砕機から出て行くことを防止するように構成された排出格子を備えている。
【0054】
典型的には、摩砕機は、第1のチャンバ及び最終チャンバ(以降、第2のチャンバとする)の2つのチャンバのみを有し、これらは隔壁によって隔てられている。
【0055】
摩砕機は、典型的には、第1のチャンバの入口から第2のチャンバの出口に向かって空気が流通できるように構成されている。ユニットは、最終チャンバの出口に接続され、空気をフィルターにかけ、摩砕された水硬性結合材のほとんどの揮発性粒子を回収するように構成されたフィルターを含む。
【0056】
第1の代替形態において、摩砕ユニットは、分離器を有していない。摩砕ユニットのこの第1の代替形態は、上記の方法の第1の代替形態の実施を可能とする。
【0057】
このユニット第1の代替形態において、フィルターは、存在する場合、空気をフィルターにかけ、摩砕された水硬性結合材のほとんどの揮発性粒子を回収し、摩砕された組成物Cへと戻すように構成されている。
【0058】
この第1の代替形態において、第1のチャンバは、
- 水硬性結合材の供給源と組成物Bの供給源とに接続された単一の入口を備える、
- 又は、水硬性結合材の供給源に接続された第1の入口と、組成物Bの供給源に接続された第2の入口との2つの入口を備える
のいずれかである。
【0059】
第2の代替形態において、摩砕ユニットは、分離器を含む。分離器は、典型的には、回転チャンバ若しくは静的フィルター分離器、又はこれらの組み合わせを有する動的空気又はサイクロン分離器である。このとき、摩砕機の最終チャンバの出口は一般に、分離器の入口に接続されており、分離器は、サイズに応じて粒子を分離でき、2つの出口を備え、出口の1つが水平摩砕機の第1のチャンバの入口に接続されている。この摩砕ユニットの第2の代替形態は、上記方法の第2の代替形態の実施を可能とする。このとき、摩砕ユニットは、最終摩砕チャンバの出口が分離器の入口に接続され、その出口の1つが摩砕機の第1のチャンバに接続されているため、閉回路を含む。
【0060】
この第2の代替形態において、第1のチャンバは、
- 水硬性結合材の供給源、組成物Bの供給源、及び分離器の出口に接続された単一の入口を備える;
- 又は、水硬性結合材の供給源と組成物Bの供給源とに接続された第1の入口、及び分離器の出口に接続された第2の入口の2つの入口を備える;
- 又は、水硬性結合材の供給源に接続された第1の入口、組成物Bの供給源に接続された第2の入口、及び分離器の出口に接続された第3の入口の3つの入口を備える
のいずれかである。
【0061】
ユニットのこの第2の代替形態において、フィルターは、存在する場合、摩砕機の最終チャンバと分離器との間に位置している。フィルターは、空気をフィルターにかけ、水硬性結合材のほとんどの揮発性粒子を回収し、分離器に戻すように構成されている。
【0062】
本発明を、下記の実施例及び添付の図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明の第2の代替形態による摩砕ユニットの模式図である。
【
図2】実施例1で使用したような先行技術の摩砕ユニットの模式図であり、実施例1の場合のサンプル採取地点1、2、3、4、5及び6を示している。
【
図3】トロンプ曲線の例である。μm単位の粒径に応じて摩砕機に戻された分離器除去物のパーセンテージである。
【
図4】セメントm
2単位で測定した、各摩砕助剤及び摩砕助剤の各用量についての、分離器に入る摩砕助剤の量に応じた分離器の効率Cである。グラフに示される値は、セメント質量に対する摩砕助剤のppm単位の初期乾燥用量に対応する。バツは、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aに対応し、マルは、アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bに対応する。
【
図5】セメントのm
2単位で測定した、各摩砕助剤及び摩砕助剤の各用量についての、分離器に入る摩砕助剤の量に応じた分離器の釣り針形状の傾きβである。バツは、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aに対応し、マルは、アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bに対応する。グラフに示される値は、セメント質量に対する摩砕助剤のppm単位の初期乾燥用量に対応する。
【
図6】摩砕機のチャンバ内で、サンプルを採取したユニットの様々な地点でのセメント1m
2当たりで測定した摩砕助剤の用量(乾燥g単位)である。バツは、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aに対応し、マルは、アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bに対応する。
【
図7】サンプルに対してセメント1トンにつき測定した摩砕助剤(乾燥g単位)の量と、cm
2/g単位のセメントの比表面積との関係である。バツは、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aに対応し、マルは、アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bに対応する。
【
図8】第2の代替形態による摩砕ユニットの模式図、及び実施例2におけるサンプル採取地点である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、本発明の第2の代替形態による摩砕ユニットを示し、摩砕ユニットがフィルターを含む場合である。水平摩砕機11は、
- 第1の入口13を備える第1のチャンバ12;及び
- 入口15と出口16を備える第2のチャンバ(最終チャンバ)14
の2つのチャンバを含み、第1のチャンバ12は、第2のチャンバ14から隔壁17によって隔てられている。第1のチャンバ12の入口13は、水硬性結合材供給源18、組成物Bの供給源19、及び分離器23の出口24に接続されている。第2のチャンバ14の入口15は、組成物Aの供給源20に接続されている。摩砕機11は、第1のチャンバの入口13から第2のチャンバ14の出口16に向かって空気が流通できるように構成されている。第2のチャンバ14の出口16は、
- 空気をフィルターにかけ、フィルターを通した粒子を分離器23の入口22に戻すように構成されたフィルター21;及び
- 粒径に応じて粒子を分離でき、第1のチャンバ12の入口13に接続された出口24と出口25の2つの出口を備える分離器23の入口22
に接続されている。
【0065】
地点1、2、3、4、5及び6は、ユニットの構成要素には対応していないが、下記の例を参照してサンプルを採取した様々な地点を示している。
【実施例】
【0066】
下記の例において、摩砕助剤A及びBは、異なる方法で、即ち、入口13から第1のチャンバ12の中に、又は第2のチャンバの出口16を備える排出格子の位置で、又はこれらの両方の位置のいずれかで供給された。実施した実験は、アミノアルコールを含む摩砕助剤A、又はアルキレングリコールを含む摩砕助剤Bの分散、及び粒径とセメントの流量、更に、方法における材料の流速に対するそれらの影響を実証し、水平摩砕機11の第2のチャンバ14に摩砕助剤Aを注入することの利点を示している。
【0067】
(実施例1)
材料
テストを行ったセメントは、CEM I 42.5Rタイプ(94%クリンカー;5.5%石こう;5.5%石灰岩)であった。
【0068】
摩砕助剤は、調査のために特別に配合した。それらの組成を以下のTable 1(表1)に示す。
【0069】
【0070】
使用した摩砕ユニットは、
図2に示す通りのものである。
【0071】
水平摩砕機11は、隔壁17によって隔てられた2つのチャンバを含む。
【0072】
摩砕助剤を含まないセメント、及びそれぞれ異なる濃度で摩砕助剤を含有するセメントについて、摩砕ライン上で平衡状態に達した後、
図2に示す回路上の異なる地点でサンプルを採取した。
【0073】
また、摩砕助剤を含有するセメントについて、水平摩砕機11の第1のチャンバ12では1.2m毎に、第2のチャンバでは1m毎にサンプルを採取した。
【0074】
この第1の実施例において、水硬性結合材の供給ホッパーに液体形態の摩砕助剤を滴状で注入した。水硬性結合材と摩砕助剤との混合物を、水平摩砕機11の入口13に供給した。
【0075】
以下のTable 2(表2)は、分析した様々なサンプルを要約する。
【0076】
【0077】
摩砕助剤を用いないテストT3は、調査の参照である。様々な初期用量を、以下D1、D2及びD3と呼ぶ。
【0078】
方法
混合:
Kenwood Chef EliteミキサーKVC5305Sを使用してセメントと超純水とを所望の水/セメント比(以下「W/C」)で混合した。400gのセメントを、Table 3(表3)に示す手順に従い、ミキサーのボウルに準備した超純水に添加した:
【0079】
【0080】
セメント中に多くの粗大粒子があった場合、混合は手作業で遂行した。セメントを超純水に30秒間添加し、その後ペーストをへらで2分間混合した。
【0081】
摩砕助剤の分析:
摩砕助剤の分析は、セメントを洗浄し、セメントグラウト中の炭素濃度を測定することによって行った。
【0082】
上記混合プロトコルに従ってセメントを超純水と混合し、次いで、30分間放置した。手作業で均質化した後、グラウトをブフナーを通してろ過し、ろ液を0.2μmのろ過後に溶血チューブに集め、炭酸化を避けるために酸性化した。これらの溶液を総有機炭素(以下「TOC」)分析器に通し、炭素濃度を判定した。
【0083】
摩砕助剤を含まないセメント中の炭素の量を、摩砕助剤を含有するセメントに対して得られた測定値から差し引いた。
【0084】
摩砕助剤が水中の固相上で吸着等温線を有していないことを検証するため、W/C分離器の出口25で採取した微粒子のサンプルに対し、0.4及び0.6の2つの水/セメントW/C比で測定を行った(テストT3、T6、T9、摩砕回路上の地点(6))。吸着等温線が存在しない場合、溶液/セメント中の炭素の比率は初期のW/C比に依存せず、摩砕助剤の全てが分析される。
【0085】
SHIMADZU TOC-VCPN分析器を使用し、酸性化したろ液に対して総有機炭素(TOC)の測定を遂行した。TOCは、総炭素量(溶液を炭化し、赤外下で放出されるCO2量を測定することで得られる)と、無機炭素の量(溶液をpH1未満に酸性化し、合成空気でのバブリングにより溶存CO2を放出させることで得られる)との差によって計算した。摩砕助剤のそれぞれについての較正曲線が、セメントグラウト中のその濃度の判定を可能にした。これは、g/Lで表される。
【0086】
結果
摩砕助剤の量は、ppm(セメント1トン当たりの摩砕助剤の乾燥質量g)、又はg/m2(セメント表面積1平方メートル当たりの摩砕助剤の乾燥質量g)で表される。
【0087】
TOC較正
アミノアルコールを含む摩砕助剤A及びアルキレングリコールを含む摩砕助剤Bについて得られた較正曲線は、相関係数1を示し、したがって、サンプルで測定されたTOCの量から摩砕剤の量を計算するのに使用することができた。
【0088】
したがって、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aの濃度(CA)は、TOC値から
CA=0.0019*TOC+0.0115
に従い計算した。したがって、アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bの濃度(CB)は、TOC値から
CB=0.0026*TOC+0.0111
に従い計算した。
【0089】
セメント洗浄の検証
セメント上の摩砕助剤の吸着等温線が存在しないことを確認するため、0.4と0.6の2つのW/C比で、テストT6及びT9の場合に地点(6)でTOC測定を行い、結果は以下の通りであった。
【0090】
【0091】
結果は、TOC値はW/C比に実質的に依存していないことを示している。摩砕助剤は、セメント粒子の表面に吸着されず、したがって、洗浄は、様々なサンプル中の摩砕助剤の量を判定するのに有効である。
以下に記載する実験では、溶液中の炭素濃度を高くするために、セメントを0.4のW/C比で分析した。
【0092】
摩砕助剤を含有しないサンプルのTOC-テストT3
摩砕ライン上の地点(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)と、水平摩砕機11内部で、摩砕助剤なしで摩砕されたサンプル(参照)に対してTOCを測定した。セメント質量に関連したTOC値をTable 5(表5)~Table 7(表7)に示す:
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
摩砕助剤なしで行ったテストにおけるサンプルのセメントは、摩砕ラインに沿って5ppm未満のTOCを含有していた。
【0097】
以下に記載する実験における摩砕助剤を含有する対応するサンプルでは、摩砕助剤のみを考慮するためにこの量を差し引いた。
【0098】
摩砕助剤を用いて摩砕されたサンプルのTOC
結果を、セメント1トン当たりの摩砕助剤の乾燥用量、又はppmで表す。
【0099】
初期用量の影響
各摩砕助剤を3種の初期容量D1、D2又はD3(Table 2(表2))で供給した。様々なセメントサンプルで測定した摩砕助剤の量を、以下のTable 8(表8)に示す。
【0100】
【0101】
以下のことが観察された:
- 摩砕ラインに沿った様々な地点でのセメント中の摩砕助剤の量は、摩砕助剤に関係なく用量D1の場合に測定された用量が用量D2の場合に測定された用量よりも多いフィルター21を除き、初期用量と共に増加する。
- フィルター21では、用量D1でのアミノアルコールを含む摩砕助剤Aの場合、セメント中の測定された摩砕助剤の量は、初期用量よりも多かった。本発明者らは、この過剰は、摩砕ラインに再注入された分離器除去物の粒子の表面上の摩砕助剤の量、又は回路内の懸濁液における摩砕助剤の吸着に起因する可能性があると推測する。
- 大きな粒子(水平摩砕機11に戻された分離器除去物の粒子)上の摩砕剤の用量は、小さなサイズの粒子(分離器を出る細粒)上よりも少ない。より具体的には、本発明者らは、両方の摩砕助剤について、様々なサンプルで測定された摩砕助剤の活物質の量が、下記の等式の通り、0.9528の相関係数R2でセメント粒子の比表面積と相関していることを観察した:
- 活物質の量(単位g/t)=0.0329*(セメントの比表面積(単位cm2/g))-1.637
したがって、測定された摩砕助剤の量は、粒子の比表面積と関連しており、以下のTable 9(表9)に示す通りである。
【0102】
【0103】
セメント1m2当たりのgで表すと、回路の異なる地点での摩砕助剤の量の差は初期用量が同じ場合には小さくなり、セメント粒子の比表面積、したがってその粒径が、摩砕助剤とセメントとの間の相互作用を支配する。
【0104】
分離器効率-釣り針形状(β)及びバイパス補完量(C)
トロンプ曲線は、分離器の有効性を記述する。これは、各粒径クラスについて、分離器除去物(水平摩砕機11に戻される)の流量と、分離器供給物の流量との比として計算される。完璧な分離器有効性の場合、除去物のパーセンテージは、最大許容粒径に到達するまでゼロであり、次いで100%になる。実際のケースでは、分離器のトロンプ曲線は、
図3に示す形状を有する。
- バイパスは、全ての粒径のクラスについて、水平摩砕機11に常に再注入される粒子の一部が存在することを実証している。分離器の効率は、
C=1-バイパス
によって記述され、分離器は、Cの値が高いほど高効率である。
- 「釣り針形状」は、粒径がバイパスに対応する粒径よりも小さいときの曲線の部分であり、水平摩砕機11に向かう細粒の漏れ出しを実証する。勾配(β)がなだらかなほど水平摩砕機11に戻される細粒量が少なく、分離器の効率が良好である。
【0105】
図4及び
図5に示す結果は、分離器の効率が使用する摩砕助剤に依存することを示している:
- アミノアルコールを含む摩砕助剤Aの方が、常にCが高く、βが低い。
- βは、アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bの初期用量に伴い非単調な変化を呈し、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aの初期用量が増加すると、単調に低下する。
- アミノアルコールを含む摩砕助剤Aの中間用量以降に限界分離器効率に到達する(Cはもはや変化せず、βは安定する)。
【0106】
摩砕機内部-テストT6及びT9
サンプルは、第1のチャンバ12では1.2m毎に、第2のチャンバでは1m毎に採取した。セメント1m
2当たりの摩砕助剤の用量を
図6に示す。
【0107】
アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bの場合、第1のチャンバ12では量がわずかに減少し、次いで第2のチャンバ14では低下して安定する。アミノアルコールを含む摩砕助剤Aの場合、この量は、第1のチャンバ12では増加し、第2のチャンバ14では安定する。
【0108】
水平摩砕機11の第1のチャンバ12では、質量でのセメントの摩砕助剤の量は、セメントの比表面積に伴って直線的に増加しない。この関係は、
図7に示すように、第2のチャンバから真となる。
【0109】
水平摩砕機11内部において、第1のチャンバ12では2種の摩砕助剤が異なり、アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bが、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aよりも単位表面積当たりでは豊富である。セメントの単位表面積当たりの摩砕助剤の量は、水平摩砕機11の第2のチャンバでは安定化し、2種の摩砕助剤間の差は小さくなる。
【0110】
(実施例2)
材料
調査したセメントは、CEM I 42.5Rタイプ(94%クリンカー;5.5%石こう;5.5%石灰岩)であった。
【0111】
摩砕助剤は、実施例2のために特別に配合した。それらの組成を以下のTable 10(表10)に示す。摩砕助剤B1は、摩砕助剤Aと同じタイプである。摩砕助剤B2は異なる。
【0112】
【0113】
使用した摩砕ユニットは、
図8に示す通りのものである。
図8は、以下を除き
図1と同一である:
-
図8にはサンプル採取地点2~6が示されている;
- 組成物Aの供給源20に接続されている第2のチャンバ14の入口15は、第2のチャンバの出口16を備える排出格子の位置に位置している。したがって、入口15と出口16は、同じ位置にある。
【0114】
使用した水平摩砕機11は、隔壁17によって隔てられた2つのチャンバを含む。
【0115】
この第2の実施例では、摩砕助剤を2つのチャンバのそれぞれに注入することの利点が示される。
【0116】
様々なケース、即ち:
- 摩砕助剤を注入しない(参照-テストT1);
- 又は、摩砕助剤B1を第1のチャンバの入口13に注入し、第2のチャンバには摩砕助剤を注入しない(比較-テストT2、T3及びT4);
- 又は、第1のチャンバには摩砕助剤を注入せず、第2のチャンバの出口16を備える排出格子の位置で摩砕助剤Aを注入する(比較-テストT5及びT6);
- 又は、第1のチャンバの入口13から摩砕助剤B2を注入し、第2のチャンバには摩砕助剤を注入しない(比較-テストT8);
- 又は、第1のチャンバの入口13から摩砕助剤Bを注入し、第2のチャンバの出口16を備える排出格子の位置で、排出格子の軸上の注入チューブを介して摩砕助剤Aを注入する(本発明-テストT7、T9及びT10)、
のいずれかを、
- 摩砕助剤BがB1(摩砕助剤Aと同じ)であり、したがって第1及び第2のチャンバに注入した摩砕助剤が同じタイプである(テストT7)、
- 又は、摩砕助剤BがB2(摩砕助剤Aとは異なる)であり、第1及び第2のチャンバに注入した摩砕助剤が異なるタイプである(テストT9及びT10)、
という2つの異なるケースのいずれかでテストを行った。
【0117】
摩砕ライン上で平衡状態に到達した後、
図8に示す回路の異なる地点2、3、4、5及び6でサンプルを採取した。
【0118】
Table 11(表11)は、行った全てのテスト、初期用量、及び注入地点を要約する。
【0119】
【0120】
回路のサンプル採取地点での異なる流量を記録し、回路に入る新鮮な材料の流量(ここでは、全てのテストで48トン/時)と、分離器によって出口24から戻される材料の流量との比として計算される循環負荷のパーセンテージを計算した。このパーセンテージは、プロセスが材料で飽和する、即ち、その相対的な滞留、及び効率に直接影響を与える様子を測定する。したがって、このパーセンテージを低下させてその方法の流速を増加させるようにすることが求められる。
【0121】
サンプルに対する粒径分析により、45μmスクリーン上の除去物によって、出口で得られるセメントの粉末度の測定も可能であった。除去物が少ないほど、セメントは微細である。
【0122】
テスト中、分離器のバイパス値も測定した。パラメータCの値が大きいほど、分離器でのフィルタリングの品質が良好である。
【0123】
フィルターの位置での流速も測定した。フィルター21は微粒子が充填されるため、容易に飽和する可能性がある。したがって、フィルター21の位置では流速が低いことが好ましい。
【0124】
測定値を全て、Table 12(表12)にまとめる。
【0125】
【0126】
第2のチャンバに何も注入せずに第1のチャンバに摩砕助剤B1を注入する(テストT2~T4)と、微細なセメントを得ることが可能である(除去物が参照T1よりも少ない)が、循環負荷の著しい上昇と、パラメータCによって示されるように、分離器でのフィルタリング品質の著しい低下に繋がる。
【0127】
第2のチャンバに摩砕助剤Aを注入すると、
- 第1のチャンバには何も注入せずに(テストT5及びT6)、
- 又は、第1のチャンバに摩砕助剤B1を注入することにより(テストT7)、
方法の緩和が可能となり、テストT2~T4で得られるよりも循環負荷が低くなり、分離パラメータCが良好となる。
【0128】
第1のチャンバに摩砕助剤B2を注入する(テストT8)と、循環負荷の低下と分離器でのフィルタリング品質の向上が可能となる。それでもなお、フィルター21の位置での流速は最大である。テストT8は、テストT9及びT10よりもこのフィルターに重い負荷をかけるものであり、即ち、後者の方が、より良好な妥協点を提供する。
【0129】
最も効率的な組み合わせは、摩砕助剤B2の第1のチャンバへの注入と、第2のチャンバへの摩砕助剤Aの注入(テストT9~T10)であり、その場合、最低の循環負荷、最大の分離パラメータC、及び許容できる粉末度のセメントが得られる。テストT9及びT10で測定した循環負荷及び摩砕機出口のフィルターの位置での流速であれば、供給流速を増加させ、したがって、方法を飽和させるリスクなしに方法の一般的な生産性を高めることが可能となる。
【0130】
結論
これらの結果は、以下を示している:
- セメント粒子上に見られる摩砕助剤の量は、セメント粒子が水平摩砕機11の第1のチャンバ12を出るとすぐに、セメント粒子の比表面積によって本質的に支配される;
- 摩砕助剤の初期用量を増加させるほど、摩砕助剤の量は、摩砕ラインに沿って増加する。しかし、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aの場合、中間用量D2では、最初に添加された量よりも多量の摩砕助剤が存在する。この差は、フィルター21が最小サイズの粒子を選択し、そのために生じる面積効果に加えて摩砕助剤の濃度が更に高くなるという事実に起因する可能性がある。
- 摩砕ラインに沿った摩砕助剤の喪失は、初期用量と共に増加し、これは、水平摩砕機11における動的平衡時の気固吸着から生じる可能性がある。この喪失を制限するには、使用する用量を減らすべきであるが、そうすると、摩砕助剤は、水平摩砕機11のパラメータを最適化しても所望の粉末度に到達することを可能としない。
- 水平摩砕機11内部では、第1のチャンバ12で2種の摩砕助剤の濃度が異なり、アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bの方が高濃度である。
- 分離器では、アミノアルコールを含む摩砕助剤Aが、アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bよりも、釣り針形状の傾き(β)及びバイパス補完量(C)に対して好ましい効果を有する。アミノアルコールを含む摩砕助剤Aの中間用量D2は、アルキレングリコールを含む摩砕助剤Bとは対照的に、分離器において効率のプラトーに到達することを既に可能にしている。
- 第2のチャンバに摩砕助剤Aを注入し、第1のチャンバに摩砕助剤B2を注入すると、
- 第2のチャンバに摩砕助剤を注入せずに摩砕助剤B1を第1のチャンバに注入する;
- 第1のチャンバに摩砕助剤B1を注入し、第2のチャンバに摩砕助剤B2を注入する
場合と比較して、
分離器の有効性、循環負荷、セメント粉末度及びフィルターの位置での流速との間で最良の妥協点を得ることが可能であった。
これらの結果は、2種の摩砕助剤を摩砕ラインの異なる地点で注入すること、即ち、細粒の急速すぎる取り出しを行うことなく水平摩砕機11におけるセメントの十分に長い滞留時間を可能とするために摩砕助剤Bを水平摩砕機11の入口13の位置で注入し、分離器ラインにおける粉末の流動化を向上させるためにアミノアルコールを含む摩砕助剤Aを水平摩砕機11の第2のチャンバ14に注入すること、の利点を示している。
【符号の説明】
【0131】
11 水平摩砕機
12 第1のチャンバ
13 入口
14 最終チャンバ
15 入口
16 出口
17 隔壁
18 水硬性結合材の供給源
19 組成物Bの供給源
20 組成物Aの供給源
21 フィルター
22 入口
23 分離器
24 出口
25 出口