(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】第XI因子抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20241113BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241113BHJP
C07K 16/36 20060101ALI20241113BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241113BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241113BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241113BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241113BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C12P21/08
C12N15/13
C07K16/36 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022079828
(22)【出願日】2022-05-13
(62)【分割の表示】P 2020039843の分割
【原出願日】2016-06-24
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2015-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】エデル,ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】エヴェルト,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ハッシーペン,ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】カダー,ヤッサー
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ローレンツ エム.
(72)【発明者】
【氏名】メルコ,サム
(72)【発明者】
【氏名】シーリング,ニコラウス
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-504371(JP,A)
【文献】特表2015-517305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト第XI因子(FXI)および/または第XIa因子(FXIa)に結合する抗体またはその抗原結合断片を製造する方法であって、
(a)
重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を、前記宿主細胞が前記VHおよび
VLを含む
1つ以上のポリペプチドを発現する条件下で、増殖させ、それにより前記抗体またはその抗原結合断片を製造することと、
ここで、
i.前記VHは、配列番号23のCDR1アミノ酸配列;配列番号24のCDR2アミノ酸配列;および配列番号25のCDR3アミノ酸配列を含み;ならびに前記VLは、配列番号33のCDR1アミノ酸配列;配列番号34のCDR2アミノ酸配列;および配列番号35のCDR3アミノ酸配列を含む;
ii.前記VHは、配列番号26のCDR1アミノ酸配列;配列番号27のCDR2アミノ酸配列;および配列番号28のCDR3アミノ酸配列を含み;ならびに前記VLは、配列番号36のCDR1アミノ酸配列;配列番号37のCDR2アミノ酸配列;および配列番号38のCDR3アミノ酸配列を含む;
iii.前記VHは、配列番号43のCDR1アミノ酸配列;配列番号44のCDR2アミノ酸配列;および配列番号45のCDR3アミノ酸配列を含み;ならびに前記VLは、配列番号47のCDR1アミノ酸配列;配列番号37のCDR2アミノ酸配列;および配列番号15のCDR3アミノ酸配列を含む;または
iv.前記VHは、配列番号46のCDR1アミノ酸配列;配列番号4のCDR2アミノ酸配列;および配列番号5のCDR3アミノ酸配列を含み;ならびに前記VLは、配列番号33のCDR1アミノ酸配列;配列番号14のCDR2アミノ酸配列;および配列番号15のCDR3アミノ酸配列を含む、
(b)前記抗体またはその抗原結合断片を精製することと
を含む方法。
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合断片が、
(i)配列番号9の可変領域重鎖
配列と配列番号19の可変領域軽鎖配列を含む抗体または断片、または(ii)配列番号29の可変領域重鎖
配列と配列番号39の可変領域軽鎖配列を含む抗体または断片を含むか、あるいは、
前記抗体が、(iii)配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体、または(iv)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を含む、
請求項1
に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体が、
D265A置換およびP329A置換を含む
Fcドメインを含む、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、ヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、ヒトIgG1アイソタイプである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記宿主細胞が、真核細胞である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記宿主細胞が、CHO細胞、HeLa細胞、骨髄腫細胞、および形質転換B細胞からなる群から選択される、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記宿主細胞が、CHO細胞である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、それらの各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、20
15年6月26日に出願された、米国仮出願第62/184,955号明細書、および、
2016年5月25日に出願された、米国仮出願第62/341,568号明細書の利益
を主張する。
【0002】
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体において
本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2016年6月23日に作成された前記AS
CIIコピーは、「PAT056955-WO-PCT_SL.txt」と名付けられ、45,685バイトのサ
イズである。
【0003】
背景
血栓症とは、血栓性素因または凝固亢進状態として公知の遺伝性危険因子と、後天性危
険因子との組合せに後続する、血管内部の血栓形成を指す。血管壁の損傷、うっ血、血小
板の反応性の増大、および凝血因子の活性化は、血栓症の根源的な特色のうちの一部であ
る。血栓症は、静脈循環および動脈循環のいずれにおいても生じる可能性があり、深部静
脈血栓症(DVT)、肺塞栓症、および脳卒中の発症を結果としてもたらしうる。動脈系
内で血栓が生じると、下流で虚血症が生じることから、急性冠動脈症候群(ACS)、虚
血性脳卒中、および急性下肢虚血症がもたらされうる。静脈系内の血栓形成は、深部静脈
血栓症、肺塞栓症、および慢性血栓塞栓性肺高血圧症をもたらすことが典型的である。凝
血はまた、心房細動(AF)を伴う患者の左心耳内でも形成される可能性があり、脱離し
た血栓は、重篤となる可能性のある合併症、すなわち、血栓塞栓性脳卒中および全身性塞
栓症を結果としてもたらしうる。低分子量ヘパリン(LMWH)、トロンビンインヒビタ
ー、および第Xa因子(FXa)インヒビターを含む、現在利用可能な抗血栓薬は全て、
著明な出血の危険性と関連する(Weitz J.I. (2010) Thromb. Haemost. 103, 62)。止血
に影響を及ぼさず、したがって、出血合併症を結果としてもたらさない抗血栓剤の開発が
、強く所望される。
【0004】
現行の抗凝固剤は、注射されるか、または経口服用される。注射用の抗凝固性LMWH
は、広く使用されており、かつて適用された未分画ヘパリンを上回る治療プロファイルの
改善をもたらしている。過去数十年間にわたり、最も一般に使用された経口抗凝固剤は、
ワルファリンであった。ワルファリンは、治療ウィンドウが狭く、このため、凝固状態に
ついての頻繁なモニタリングを要求し、様々な薬物間相互作用を示す。より近年では、経
口で利用可能な直接的FXaおよびトロンビンインヒビターが、抗凝固剤市場に参入し、
適用を増大させている。
【0005】
LMWH、FXaインヒビター、およびトロンビンインヒビターは全て、手術後の静脈
血栓塞栓性疾患の防止、自発的なDVTおよび肺塞栓症の処置、ならびに心房細動におけ
る脳卒中の防止に効果的である。しかし、これらの抗凝固剤はまた、旧来の薬物であるワ
ルファリンおよび未分画ヘパリンについて観察される出血合併症と一般に同等な出血合併
症とも関連する。ADVANCE-2臨床試験では、FXaインヒビターアピキサバン(
Eliquis)が、人工膝関節置換術後の患者において、LMWHであるエノキサパリ
ンと比較された。急性アピキサバン療法は、静脈血栓塞栓性疾患を防止するのに、エノキ
サパリンより効果的であったが、いずれの薬剤も、出血の著明な危険性と関連した。臨床
的に関与性の出血は、アピキサバンを施される患者のうちの4%、およびエノキサパリン
で処置された患者のうちの5%において生じた(Lassen, M.R., et al. (2009) N. Engl.
J. Med. 361, 594)。
【0006】
RE-LY試験では、直接的トロンビンインヒビターであるダビガトラン(Prada
xa)が、心房細動および脳卒中の危険性を伴う患者において、ワルファリンと比較され
た(Connolly, S.J., et al. (2009) N. Engl. J. Med. 361, 1139)。慢性ダビガトラン
療法は、脳卒中または全身性塞栓症の危険性の著明な低下と関連した。しかし、大量出血
の合併症が、毎日150mgのダビガトランを施される患者のうちの3.1%、およびワ
ルファリンを施される患者のうちの3.4%において生じた(p=0.31)。
【0007】
心房細動(AF)は依然として、臨床実践において、最も一般的な心不整脈であり、心
調律異常のための入院のうちの約3分の1を占める。現在、AFは、欧州において、60
0万を超える患者に、および米国において、約230万に影響を及ぼすと推定されており
、老化人口の比率の増大のため、この数は、急速に増大し続けている。65歳を超える人
口のうちの約5%、および80歳を超える人々のうちの10%が、AFを発症すると推定
されているが、AFの有病数は、年齢だけで説明される有病数を超えて増大しつつある。
高血圧症、うっ血性心不全、左室肥大、冠動脈疾患、および糖尿病、ならびに閉塞性睡眠
時無呼吸症などのAF危険因子もまた、増加しつつある。AFに罹患する個体の数はそれ
自体、欧米人において、今後30年間で、2~3倍に増大することが期待される(Kannel
and Benjamin (2008) Med Clin North Am. 2008; 92:17-40; Bunch, et al. (2012) J I
nnovations of Card Rhythm Manag 2012; 3: 855-63)。
【0008】
AFの主要な危険性は、塞栓性脳卒中の4~5倍の増大である。AFとの関連に帰着し
うる脳卒中の危険性は、年齢と共に急激に増大し、80~89歳では、23.5%へと増
大する。AFは、いずれの性別においても、死亡率の倍増と関連する(Kannel and Benja
min 2008)。AFはまた、認知機能の低下および認知症の全ての形態とも非依存的に関連
する(Marzona, et al. (2012) CMAJ 2012; 184: 329-36; Geita et al 2013; Bunch et
al 2012)。
【0009】
AFを伴う大半の患者は、心塞栓性脳卒中および全身性塞栓症を防止するのに、生涯に
わたる抗凝固療法を要求する。CHA2DS2-VASc危険性スコアは、妥当性が確認
され、心房細動患者における血栓塞栓性の危険性を予測し、抗凝固療法から利益を得る患
者を同定するのに広く使用されている層別化ツールであり(LIP 2011;Camm, et al. (20
12) Eur Heart J 2012; 33: 2719-2747)、証拠の蓄積は、CHA2DS2-VAScが
、脳卒中および血栓塞栓症を発症する患者を同定するのに、CHADS2などのスコアと
少なくとも同程度に正確であるか、または、おそらく、これらより優れており、AFを伴
う患者であって、「真に危険性の小さな」患者を同定するのには、決定的に優れているこ
とを示す。AF患者のうちの85~90%は、抗凝固療法を要求することが推定される。
【0010】
脳卒中および全身性塞栓症の低減における、ビタミンKアンタゴニスト(VKA)の効
果について査定する、6つの試験を含むメタアナリシスでは、脳卒中発症率の危険性の、
高度に有意な低減が観察された(脳卒中の危険性の相対的低減は67%であった)。全死
因死亡率は、用量を調整したVKAにより、対照と対比して有意に低減された(26%)
(Hart, Pearce, and Aguilar (2007) Ann Intern Med 2007; 146:857-867)。2~3の
間のINR(international normalized ratio)目標値が、最良の利益-危険比と関連し
(Hylek et al (2003) N Engl J Med; 349:1019-1026)、国際ガイドラインおよび国内ガ
イドラインで広く採択されている。
【0011】
近年では、直接的経口抗凝固剤(DOAC)とも称する、新たな経口抗凝固剤(NOA
C)が、承認され、臨床実践へと導入されている。これらの薬物は、血栓塞栓性疾患の低
減において、ワルファリンと、少なくとも同程度に効果的であるか、またはなお優れてい
る(Connolly, et al. (2009) N Engl J Med; 361:1139-51; Connolly, et al. (2011) N
Engl J Med; 364:806-17; Patel, et al. (2011) N Engl J Med 2011; 365:883-91)。
NOACはまた、ワルファリンの最も重篤な合併症、すなわち、出血性脳卒中および頭蓋
内出血の大幅な低減とも関連した。大量出血事象は、良好に施されたワルファリン療法と
同等であるか、またはわずかに少なかった。加えて、NOACは、ワルファリンより小さ
な薬物間相互作用の可能性と関連し、ルーチンのモニタリングを伴わずに使用することが
でき、これは、日常的な医療実践におけるそれらの使用を容易とすることが期待される。
【0012】
近年の改善にもかかわらず、抗凝固剤の使用に伴う出血の危険性は、依然として高いま
まである。例えば、大量出血および臨床的に関与性の非大量出血の年間発症率は、14.
9%であり、ROCKET研究で、リバーロキサバンにより処置された患者における、大
量出血事象の年間発症率は、3.6%であった(Patel et al 2011)。出血の危険性が高
く、HAS Bled危険性スコアが≧3であると規定された患者における、大量出血の
年間発症率は>5%であった(Gallego, et al. (2012) Carc Arrhythm Electrophysiol.
; 5:312-318)。大量出血は、特に関与性の大きな臨床転帰であり、例えば、ROCKE
T研究では、大量出血が生じた場合、全死因死亡率は、リバーロキサバン群において20
.4%およびワルファリン群において26.1%であった。大量出血事象が生じた場合、
リバーロキサバン群およびワルファリン群、それぞれの患者のうちの4.7%および5.
4%で、脳卒中および全身性塞栓症が生じた(Piccini, et al. (2014) Eur Heart J; 35
:1873-80)。入院、血液製剤の輸液、および血液供給源の活用もまた、大量出血の発生か
ら重大な影響を受けた。出血の危険性はまた、適格性患者において抗凝固剤を施さない、
主要な理由でもある。35カ国の182の病院ならびに5333人の外来AF患者および
入院AF患者からのデータを含む、Euro Heart Survey on Art
ial Fibrillationでは、適格性患者のうちの67%が、退院時に経口抗
凝固剤を施されるに過ぎなかった(Nieuwlaat, et al (2005) Eur Heart J;26, 2422-243
4)。
【0013】
したがって、既存の治療と同等な有効性を伴うが、易出血性を低下させた、脳卒中、全
身性塞栓症、認知機能の低下、および死亡率など、AFの血栓塞栓性合併症を低減しうる
、より安全な治療に対する満たされていない大きな医療上の必要が存在する。
【0014】
概要
本発明は、ヒトの第XI凝固因子およびXIa(活性化型第XI因子)(以下、場合に
よって、「FXI」、「FXIa」、および類似の用語で称する)に結合するモノクロー
ナル抗体、およびこれを含む医薬組成物、およびこれを投与するステップを含む処置方法
に関する。血栓症または血栓塞栓性疾患/障害(例えば、血栓性脳卒中、心房細動、心房
細動における脳卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、肺塞栓症、
急性冠動脈症候群(ACS)、虚血性脳卒中、急性下肢虚血症、慢性血栓塞栓性肺高血圧
症、全身性塞栓症)の防止および処置において効果的であるが、出血の危険性を保有しな
いか、または最小限の出血の危険性を保有するに過ぎない抗血栓剤を開発すれば、満たさ
れていない大きな医療上の必要が満たされるであろう。
【0015】
具体的な態様では、本明細書で提示される抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体、キ
メラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体)は、ヒトのFXIaおよびFXI
の触媒ドメイン(CD)に、同様の高アフィニティーで結合し、FXIa内で、不活性の
プロテアーゼドメインコンフォメーションを誘導する。
【0016】
本明細書で記載される、単離抗FXI抗体および/または抗FXIa抗体、例えば、本
明細書で記載される2つの結合性部位を伴う全長IgGは、FXIおよび/またはFXI
aに、100pM以下の平衡解離定数(KD)で結合する。例えば、本明細書で記載され
る単離抗体は、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに、100pM以下、50pM以下
、45pM以下、40pM以下、35pM以下、20pM以下、または10pM以下のK
Dで結合しうる。より具体的には、本明細書で記載される単離抗体はまた、ヒトのFXI
および/またはFXIaに、表面プラズモン共鳴(SPR)、例えば、BIACORE(
商標)アッセイにより測定される34pM以下の、または溶液中平衡滴定アッセイ(SE
T)により測定される4pM以下のKDで結合することも可能であり;また、カニクイザ
ルのFXIおよび/またはFXIaに、BIACORE(商標)アッセイにより測定され
る53pM以下の、またはSETにより測定される4pM以下のKDで結合することも可
能である。具体的な態様では、本明細書で記載される単離抗体(例えば、NOV1401
)は、ヒトのFXIおよびFXIaに、例えば、溶液中平衡滴定アッセイ(SET)によ
り測定される、それぞれ、約5pM(例えば、4.7pM)および2pM(例えば、1.
3pM)以下の見かけのKDで結合する。具体的な実施形態では、本明細書で記載される
抗FXI/FXIa抗体は、カニクイザルのFXI/FXIaに、SET(例えば、実施
例2を参照されたい)により測定される、FXIaに対する約12.5(±6.6)pM
および約5.0(±0.7)pMの見かけのKDで結合する。具体的な実施形態では、本
明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体は、ウサギのFXIおよび/またはFXIa
に、約20(±2)nMのKDで結合する。具体的な態様では、本明細書で記載される抗
FXI/FXIa抗体は、ヒト、カニクイザル、およびウサギのFXIおよび/またはF
XIaに結合するが、マウスまたはラットのFXIには特異的に結合しない。
【0017】
本明細書で記載される、単離抗FXI抗原結合性断片および/または抗FXIa抗原結
合性断片、例えば、1つの結合性部位を含有する、Fab断片および他の断片は、FXI
および/またはFXIaに、10nM以下の平衡解離定数(KD)で結合する。例えば、
本明細書で記載される、単離抗原結合性断片は、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに
、10nM以下、5nM以下、1nM以下、500pM以下、305pM以下、62pM
以下のKDで結合しうる。より具体的には、本明細書で記載される、単離抗原結合性断片
はまた、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに、305pM以下のKDで結合すること
も可能である。
【0018】
本発明は、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIaに結合する単離抗体またはそ
の抗原結合性断片に関する。本発明はまた、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイ
ン内、具体的には、活性部位領域の表面に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片に
も関する。
【0019】
本発明はまた、FXIおよび/またはFXIaに結合し、表1に記載されている抗体(
例えば、NOV1401)との結合についてさらに競合する単離抗体またはその抗原結合
性断片にも関する。本明細書で記載される、抗体および/またはその抗原結合性断片の間
の「競合」とは、両方の抗体(またはその結合性断片)が、同じまたは重複するFXIエ
ピトープおよび/もしくはFXIaエピトープに結合すること(例えば、当業者に周知の
方法のうちのいずれかにより、競合結合アッセイにおいて決定される)を意味する。本明
細書で使用される抗体またはその抗原結合性断片は、前記競合抗体またはその抗原結合性
断片が、本発明の抗体または抗原結合性断片と同じFXIエピトープおよび/もしくはF
XIaエピトープ、またはこれと重複するFXIエピトープおよび/もしくはFXIaエ
ピトープに結合しない限りにおいて、本発明のFXI抗体および/もしくはFXIa抗体
または抗原結合性断片(例えば、NOV1401またはNOV1090)と「競合」しな
い。本明細書で使用される競合抗体またはその抗原結合性断片は、(i)本発明の抗体ま
たは抗原結合性断片が、その標的に結合することを、立体的に遮断し(例えば、前記競合
抗体が、近傍の、重複しないFXIエピトープおよび/またはFXIaエピトープに結合
し、本発明の抗体または抗原結合性断片が、その標的に結合することを物理的に防止する
場合);かつ/あるいは(ii)異なる、重複しないFXIエピトープおよび/またはF
XIaエピトープに結合し、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質に、本
発明のFXI抗体および/もしくはFXIa抗体または抗原結合性断片が、コンフォメー
ション変化の非存在下で生じる形ではもはや結合できないように、前記コンフォメーショ
ン変化を、前記タンパク質に誘導する、競合抗体またはその抗原結合性断片を含まない。
【0020】
一実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに結合し、表1に記載されている抗体
との結合についてさらに競合する単離抗体またはその抗原結合性断片は、表1の前記抗体
が結合するエピトープの大部分のアミノ酸に結合する。別の実施形態では、FXIおよび
/またはFXIaに結合し、表1に記載されている抗体との結合についてさらに競合する
単離抗体またはその抗原結合性断片は、表1の前記抗体が結合するエピトープの全てに結
合する。
【0021】
一実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、活性のFXI(FXIa)に
結合するが、活性のFXI(FXIa)触媒ドメインに結合すると、FXIaに、そのコ
ンフォメーションを、不活性コンフォメーションへと変化させる。別の実施形態では、前
記単離抗体またはその抗原結合性断片は、前記不活性コンフォメーションのN末端の4つ
の残基、ループ145、188、および220が、活性コンフォメーションと比較して、
シフトし、かつ/または不規則的になる変化をさらに誘導する。
【0022】
一実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、FXI(例えば、ヒトFXI
)に結合するが、FXIに結合すると、FXI触媒ドメインが、ループ145、188、
および220がFXIa触媒ドメインの構造内と同様に規則的である活性コンフォメーシ
ョンを取ることを防止する。
【0023】
一実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、FXIに結合するが、FXI
に結合すると、FXI触媒ドメインが、N末端の4つの残基、ループ145、188、お
よび220がFXIa触媒ドメインの構造内と同様に規則的である活性コンフォメーショ
ンを取ることを防止する。
【0024】
一実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、FXIに結合するが、FXI
に結合すると、チモーゲン構造内のコンフォメーション変化を誘導し、FXIaに結合す
るときに観察される阻害性FXIコンフォメーションと緊密に関連する阻害性FXIコン
フォメーションをさらにもたらすことにより、FXI触媒ドメインが、活性コンフォメー
ションを取ることを防止する。
【0025】
一実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、FXIおよび/またはFXI
aに結合するが、FXIおよび/またはFXIaに結合し、FXIおよび/またはFXI
aの触媒ドメインと、抗体:抗原複合体を形成すると、ループ145、188、および2
20の、活性の第XI因子(FXIa)の触媒ドメインの、複合体化していない構造と比
較した場合のシフトおよび/または配向性の喪失を引き起こす。
【0026】
一実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、FXIおよび/またはFXI
aに結合するが、FXIおよび/またはFXIaに結合し、FXIおよび/またはFXI
aの触媒ドメインと抗体:抗原複合体を形成すると、N末端の4つの残基、ループ145
、188、および220の、活性の第XI因子(FXIa)の触媒ドメインの、複合体化
していない構造と比較した場合のシフトおよび/または配向性の喪失を引き起こす。
【0027】
一実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、活性のFXI(FXIa)に
結合し、FXI(FXIa)触媒ドメインに、そのコンフォメーションを、ループ145
、188、および220が活性コンフォメーションと比較してシフトし、かつ/または配
向性が喪失している不活性コンフォメーションへと変化させる。
【0028】
一実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、FXIに結合するが、チモー
ゲン構造内のコンフォメーション変化を誘導し、これにより、FXIaに結合するときに
観察される阻害性FXIコンフォメーションと緊密に関連する阻害性FXIコンフォメー
ションをもたらすことにより、触媒ドメインが、活性コンフォメーションを取ることを防
止する。
【0029】
本発明はまた、表1に記載されている抗体(例えば、NOV1401)と同じエピトー
プに結合する単離抗体またはその抗原結合性断片にもさらに関する。
【0030】
本明細書で記載される単離抗体および抗原結合性断片の結合アフィニティーは、溶解平
衡滴定(SET)により決定することができる。当技術分野では、SET法が知られてお
り、以下でさらに詳細に記載される。代替的に、本明細書で記載される単離抗体または断
片の結合アフィニティーは、例えば、BIACORE(商標)アッセイにおける、表面プ
ラズモン共鳴測定により決定することができる。当技術分野では、BIACORE(商標
)反応速度アッセイのための方法が知られており、以下でさらに詳細に記載される。
【0031】
本明細書で記載される、単離抗FXI抗体および/または単離FXIa抗体ならびに抗
原結合性断片を使用して、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(
FX)、および/もしくはトロンビンの、直接的もしくは間接的な活性化、ならびに/ま
たは血小板受容体への結合を阻害することができ、これにより、内因系凝固経路および/
または共通凝固経路の活性化を防止することができる。
【0032】
本明細書で記載される、単離抗FXI抗体および/または単離FXIa抗体ならびに抗
原結合性断片を使用して、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(
FX)、および/またはトロンビンの、直接的または間接的な活性化を、100nM以下
、50nM以下、35nM以下、25nM以下、10nM以下、または5.2nM以下の
IC50で阻害することができる。より具体的には、本明細書で記載される単離抗体また
はその抗原結合性断片は、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(
FX)、および/またはトロンビンの、直接的または間接的な活性化を、100nM以下
、50nM以下、35nM以下、25nM以下、10nM以下、または5.2nM以下の
IC50で阻害しうる。より具体的には、本明細書で記載される単離抗体またはその抗原
結合性断片は、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(FX)、お
よび/またはトロンビンの、直接的または間接的な活性化を、100nM以下、50nM
以下、35nM以下、25nM以下、20nM以下、または18nM以下のIC50で阻
害しうる。より具体的には、本明細書で記載される単離抗体またはその抗原結合性断片は
、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(FX)、および/または
トロンビンの、直接的または間接的な活性化を、100nM以下、50nM以下、35n
M以下、25nM以下、10nM以下、または5nM以下のIC50で阻害しうる。具体
的な実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体またはその抗原結合性
断片は、その天然の基質であるFIXの、FXIaを媒介する活性化を、2nM以下の、
例えば、1.8nMのIC50で阻害する。
【0033】
単離抗FXI抗体および/もしくは単離抗FXIa抗体、またはそれらの抗原結合性断
片を使用して、例えば、FXIおよび/またはFXIaを媒介するFIXの活性化の阻害
を介して、内因系凝固経路および/または共通凝固経路を阻害する(例えば、これらの活
性化を遮断する)ことができる。したがって、単離抗FXI/FXIa抗体、またはそれ
らの抗原結合性断片を使用して、凝血または凝血の拡大を防止することができる。単離抗
体またはその抗原結合性断片は、FXIを媒介するFIXの活性化を阻害することにより
、深部静脈血栓症などの凝固障害および脳卒中(例えば、虚血性脳卒中)を防止、処置、
または改善するのに使用することができる。
【0034】
具体的な実施形態では、抗FXI抗体および/もしくは抗FXIa抗体、またはそれら
の抗原結合性断片は、例えば、実施例節で記載されるaPTTアッセイにより決定される
通り、濃度依存的に、ヒト血漿の凝血時間(例えば、血餅が形成し始めるまでの時間)を
延長することが可能である。具体的な実施形態では、凝血時間(aPTT)は、aPTT
アッセイにより決定される通り、10nM~20nMの範囲、例えば、約14nMまたは
15nMの全抗FXI抗体(例えば、NOV1401)濃度で、ベースラインと比較して
倍増した。特定の実施形態では、抗FXI抗体および/もしくは抗FXIa抗体、または
それらの抗原結合性断片は、例えば、実施例節で記載されるaPTTアッセイにより決定
される通り、5nM~20nMの範囲、例えば、約13nMのIC50で、濃度依存的に
、ヒト血漿の凝血時間を延長することが可能である。
【0035】
具体的な実施形態では、本明細書で記載される抗FXI抗体および/もしくは抗FXI
a抗体、またはそれらの抗原結合性断片は、例えば、実施例節で記載されるaPTTアッ
セイにより決定される通り、例えば、濃度依存的に、少なくとも1.1倍、1.2倍、1
.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、または2倍、
ヒト血漿の凝血時間(例えば、血餅が形成し始めるまでの時間)を延長することが可能で
ある。具体的な実施形態では、本明細書で記載される抗FXI抗体および/もしくは抗F
XIa抗体、またはそれらの抗原結合性断片は、例えば、実施例節で記載されるaPTT
アッセイにより決定される通り、少なくとも1.4倍、1.5倍、1.6倍、または1.
7倍、ヒト血漿の凝血時間(例えば、血餅が形成し始めるまでの時間)を延長することが
可能である。
【0036】
具体的な態様では、本明細書で記載される抗FXI抗体および/もしくは抗FXIa抗
体、またはそれらの抗原結合性断片は、非常に低濃度の組織因子(TF)の存在下におい
て、FXIa阻害の、トロンビン→FXIaのフィードフォワードループに対する効果を
測定する、ヒト血漿中のトロンビン生成アッセイ(TGA)において、トロンビンの量を
濃度依存的に低減することが可能である。特定の実施形態では、本明細書で記載される抗
FXI抗体および/もしくは抗FXIa抗体、またはそれらの抗原結合性断片は、ヒト血
漿中のトロンビン生成アッセイ(TGA)において、10nM~30nMの範囲、例えば
、約20nMまたは24nMのIC50値および約159nMの残留トロンビン濃度で、
トロンビンの量を低減することが可能である。
【0037】
本明細書の具体的な態様では、ヒトのFXIおよび/またはFXIaの触媒ドメインに
特異的に結合し、カニクイザルにおける全抗体の終末相消失半減期(t1/2)を、約1
4~15日間とする、抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のHCDR
1~3およびLCDR1~3を含む抗体など、表1における抗体)、またはその抗原結合
性断片が提示される。具体的な実施形態では、このような抗FXI/FXIa抗体は、約
61~66%の絶対皮下(s.c.)バイオアベイラビリティを呈する。
【0038】
具体的な実施形態では、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本
明細書で提示される抗体またはその抗原結合性断片(例えば、NOV1401など、表1
に記載されている抗体)は、以下の特徴:
(i)例えば、それぞれ、約1~2pMおよび4~5pMの見かけのKDで、ヒトのF
XIおよびFXIaの触媒ドメイン(CD)に特異的に結合すること;
(ii)活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイにより査定された凝
血時間を延長すること;
(iii)活性化型第XII因子(FXIIa)およびトロンビンのそれぞれによるF
XI活性化の阻害を介して、ヒト血漿中のトロンビン生成を阻害すること;
(iv)ヒトFXIで再構成されたFXI-/-マウスにおいて、抗血栓活性および抗
凝固活性を示すこと;
(v)例えば、カニクイザルにおいて、遊離FXI(FXIf)レベルを低減するか、
または低減を延長すること;
(vi)例えば、カニクイザルにおける全抗体の終末相消失半減期を、約14~15日
間とすること;
(vii)ヒトおよびサルのFXIおよび/またはFXIaには特異的に結合するが、
マウスまたはラットのFXIおよび/またはFXIaには特異的に結合しないこと;なら
びに
(viii)ヒトFXIの以下の残基(Swissprotによる番号付け):Pro
410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、T
yr434、Gly435、Glu437、Tyr472~Glu476、Tyr521
~Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594~Glu5
97、およびArg602~Arg604のうちの1つまたは複数(例えば、2つ、3つ
、4つ、5つ、6つ、もしくは7つ、またはこれを超える)、または一部、または全てに
接触すること
のうちの1つまたは複数(例えば、2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または
6つ、または7つ)、または全てを呈する。
【0039】
本明細書で記載される単離抗FXI抗体および/もしくは単離FXIa抗体、またはそ
の抗原結合性断片は、モノクローナル抗体、ヒトまたはヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗
体、Fab断片、Fv断片、F(ab’)2断片、またはscFv断片、および/または
IgGのアイソタイプ(例えば、ヒトIgG1などのIgG1)でありうる。具体的な実
施形態では、本明細書で記載される抗FXI抗体および/または抗FXIa抗体は、組換
えヒト抗体である。具体的な実施形態では、本明細書で記載される抗FXI抗体および/
または抗FXIa抗体は、ヒトIgG1/ラムダ(λ)抗体である。具体的な実施形態で
は、本明細書で記載される抗FXI抗体および/または抗FXIa抗体は、エフェクター
機能(例えば、ADCCおよび/またはCDC)の可能性を低減するように操作されたF
cドメイン、例えば、D265A置換および/またはP329A置換を含むヒトFcドメ
インを含むヒトIgG1/ラムダ(λ)抗体である。
【0040】
本明細書で記載される単離抗FXI抗体および/もしくは単離FXIa抗体またはそれ
らの抗原結合性断片はまた、アミノ酸が、ヒトVH生殖細胞系列配列またはヒトVL生殖
細胞系列配列のそれぞれに由来する抗体フレームワークへと置換されたフレームワークも
含みうる。
【0041】
本発明の別の態様は、表1に記載されているFabの完全重鎖および軽鎖配列を有する
単離抗体またはその抗原結合性断片を含む。より具体的には、単離抗体またはその抗原結
合性断片は、NOV1090およびNOV1401の重鎖および軽鎖配列を有しうる。
【0042】
本発明のさらなる態様は、表1に記載されているFabの重鎖および軽鎖可変ドメイン
配列を有する単離抗体またはその抗原結合性断片を含む。より具体的には、単離抗体また
はその抗原結合性断片は、NOV1090およびNOV1401の重鎖および軽鎖可変ド
メイン配列を有しうる。
【0043】
本発明のさらなる態様は、Kabat CDR、IMGT CDR、Chothia
CDR、または組合せCDRなど、表1に記載されている抗体の、重鎖可変ドメインCD
R(すなわち、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)配列と、軽鎖可変ドメイン
CDR(すなわち、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)配列とを有する、単離
抗体またはその抗原結合性断片を含む。より具体的には、単離抗体またはその抗原結合性
断片は、Kabat CDR、IMGT CDR、Chothia CDR、または組合
せCDRなど、例えば、表1に提示された、NOV1090およびNOV1401の、H
CDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、お
よびLCDR3配列を有しうる。
【0044】
本発明はまた、配列番号3および23からなる群から選択される重鎖CDR1、配列番
号4および24からなる群から選択される重鎖CDR2、ならびに配列番号5および25
からなる群から選択される重鎖CDR3を含み、ヒトFXIおよび/もしくはヒトFXI
aに結合する単離抗体またはその抗原結合性断片にも関する。別の態様では、このような
単離抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号13および33からなる群から選択され
る軽鎖CDR1、配列番号14および34からなる群から選択される軽鎖CDR2、なら
びに配列番号15および35からなる群から選択される軽鎖CDR3をさらに含む。
【0045】
本発明はまた、配列番号13および33からなる群から選択される軽鎖CDR1、配列
番号14および34からなる群から選択される軽鎖CDR2、ならびに配列番号15およ
び35からなる群から選択される軽鎖CDR3を含み、ヒトFXIおよび/もしくはヒト
FXIaに結合する単離抗体またはその抗原結合性断片にも関する。
【0046】
本発明はまた、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する単離抗体またはその抗原結
合性断片であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、
LCDR2、およびLCDR3を有し、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、
配列番号3、4、および5を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号1
3、14、および15を含むか、またはHCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、
配列番号23、24、および25を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列
番号33、34、および35を含む単離抗体またはその抗原結合性断片にも関する。
【0047】
本発明はまた、FXIおよび/またはFXIaに結合する単離抗体またはその抗原結合
性断片であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、L
CDR2、およびLCDR3を有し、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、そ
れぞれ、配列番号43、44、および45を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3
が、それぞれ、配列番号47、37、および15を含む単離抗体またはその抗原結合性断
片にも関する。
【0048】
本発明はまた、FXIおよび/またはFXIaに結合する単離抗体またはその抗原結合
性断片であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、L
CDR2、およびLCDR3を有し、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、そ
れぞれ、配列番号46、4、および5を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、
それぞれ、配列番号33、14、および15を含む単離抗体またはその抗原結合性断片に
も関する。
【0049】
本発明はまた、Chothiaにより規定される、配列番号9および29の可変重鎖の
HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに配列番号19および39の可変軽
鎖のLCDR1、LCDR2、LCDR3を有する、抗体または抗原結合性断片にも関す
る。本発明の別の態様では、抗体または抗原結合性断片は、Kabatにより規定される
、配列番号9および29の重鎖可変ドメイン配列のHCDR1、HCDR2、およびHC
DR3、ならびに配列番号19および39の軽鎖可変ドメイン配列のLCDR1、LCD
R2、およびLCDR3を有しうる。
【0050】
本発明はまた、IMGTにより規定される、配列番号9および29の可変重鎖のHCD
R1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに配列番号19および39の可変軽鎖のL
CDR1、LCDR2、およびLCDR3を有する抗体または抗原結合性断片にも関する
。本発明の別の態様では、抗体または抗原結合性断片は、Combinedにより規定さ
れる、配列番号9および29の重鎖可変ドメイン配列のHCDR1、HCDR2、および
HCDR3、ならびに配列番号19および39の軽鎖可変ドメイン配列のLCDR1、L
CDR2、およびLCDR3を有しうる。
【0051】
本発明の一態様では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9および29か
らなる群から選択される重鎖可変ドメイン配列を含む。単離抗体または抗原結合性断片は
、軽鎖可変ドメイン配列をさらに含むことが可能であり、この場合、重鎖可変ドメインと
軽鎖可変ドメインとは、組み合わさって、FXIaに対する抗原結合性部位を形成する。
特に、軽鎖可変ドメイン配列は、配列番号19および39から選択することができ、この
場合、前記単離抗体またはその抗原結合性断片は、FXIおよび/もしくはFXIaに結
合する。
【0052】
本発明はまた、配列番号19および39からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン配
列を含み、ヒトFXIおよび/もしくはヒトFXIaに結合する単離抗体またはその抗原
結合性断片にも関する。単離抗体または抗原結合性断片は、重鎖可変ドメイン配列をさら
に含むことが可能であり、この場合、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとは、組み合
わさって、FXIおよび/もしくはFXIaに対する抗原結合性部位を形成する。
【0053】
特に、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する単離抗体またはその抗原結合性断片
は、配列番号9および19;または19および39の配列をそれぞれ含む、重鎖および軽
鎖可変ドメインを有しうる。
【0054】
本発明はさらに、配列番号9および29からなる群から選択される配列と少なくとも8
0%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する重
鎖可変ドメインを含む単離抗体またはその抗原結合性断片にも関し、この場合、前記抗体
は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する。一態様では、単離抗体またはその抗原
結合性断片はまた、配列番号19および39からなる群から選択される配列と少なくとも
80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する
軽鎖可変ドメインも含む。本発明のさらなる態様では、単離抗体または抗原結合性断片は
、Kabatにより規定され、表1に記載されている、HCDR1、HCDR2、HCD
R3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を有する。具体的な実施形態では、単
離抗体または抗原結合性断片は、Chothia、IMGT、または組合せにより規定さ
れ、表1に記載されている、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCD
R2、およびLCDR3を有する。
【0055】
本発明はまた、配列番号19および39からなる群から選択される配列と少なくとも8
0%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する軽
鎖可変ドメインを有する単離抗体またはその抗原結合性断片にも関し、この場合、前記抗
体は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する。
【0056】
本発明の別の態様では、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する単離抗体またはそ
の抗原結合性断片は、配列番号11または31の配列を含む重鎖を有しうる。単離抗体は
また、重鎖と組み合わさって、ヒトFXIおよび/もしくはヒトFXIaに対する抗原結
合性部位を形成しうる軽鎖も含みうる。特に、軽鎖は、配列番号21または41を含む配
列を有しうる。特に、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する単離抗体またはその抗
原結合性断片は、配列番号11および21;または31および41のそれぞれの配列を含
む重鎖および軽鎖を有しうる。
【0057】
本発明はなおさらに、配列番号11または31からなる群から選択される配列と少なく
とも90%の配列同一性を有する重鎖を含む単離抗体またはその抗原結合性断片にも関し
、この場合、前記抗体は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する。一態様では、単
離抗体またはその抗原結合性断片はまた、配列番号21または41からなる群から選択さ
れる配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%
の配列同一性を有する軽鎖も含む。
【0058】
本発明はなおさらに、配列番号21または41からなる群から選択される配列と少なく
とも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有
する軽鎖を含む単離抗体またはその抗原結合性断片にも関し、この場合、前記抗体は、F
XIおよび/もしくはFXIaに結合する。
【0059】
本発明はまた、本明細書で記載される単離抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物
にも関し、同様に、薬学的に許容される担体と組み合わせた抗体組成物にも関する。とり
わけ、本発明は、例えば、抗体のNOV1090およびNOV1401など、表1の抗体
またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物をさらに含む。本発明はまた、表1の単離抗
体またはそれらの抗原結合性断片のうちの2つ以上の組合せを含む医薬組成物にも関する
。
【0060】
本発明はまた、配列番号9および29から選択される配列を有する可変重鎖をコードす
る単離核酸配列にも関する。特に、核酸は、配列番号10および30からなる群から選択
される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99
%の配列同一性を有する。本発明のさらなる態様では、配列は、配列番号10または30
である。
【0061】
本発明はまた、配列番号20および40から選択される配列を有する可変軽鎖をコード
する単離核酸配列にも関する。特に、核酸は、配列番号20および40からなる群から選
択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または9
9%の配列同一性を有する。本発明のさらなる態様では、配列は、配列番号20および4
0である。
【0062】
本発明はまた、配列番号20および40からなる群から選択される配列と少なくとも9
0%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含むポリペプチドをコードする配列を含む
単離核酸にも関する。
【0063】
本発明はまた、本明細書で記載される核酸分子のうちの1つまたは複数を含むベクター
にも関する。
【0064】
本発明はまた、上記で記載した抗体の重鎖をコードする組換えDNA配列と、上記で記
載した抗体の軽鎖をコードする第2の組換えDNA配列とを含む単離宿主細胞にも関し、
この場合、前記DNA配列は、プロモーターに作動可能に連結され、宿主細胞内で発現す
ることが可能である。抗体は、ヒトモノクローナル抗体でありうることが企図される。ま
た、宿主細胞は、非ヒト哺乳動物細胞であることも企図される。
【0065】
本発明はまた、FXIおよび/もしくはFXIaの発現、ならびに/または内因系凝固
経路および/もしくは共通凝固経路の活性化を低減する方法であって、細胞を、有効量の
、本明細書で記載される単離抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物と接触させるス
テップを含む方法にも関する。
【0066】
本発明はまた、FXIおよび/もしくはFXIaの、FIXへの結合を阻害する方法で
あって、細胞を、有効量の、本明細書で記載される単離抗体またはその抗原結合性断片を
含む組成物と接触させるステップを含む、方法にも関する。
【0067】
細胞は、ヒト細胞であることが企図される。細胞は、対象中にあることがさらに企図さ
れる。一実施形態では、細胞は、血小板であることが企図される。対象は、ヒトであるこ
とがなおさらに企図される。
【0068】
本発明はまた、対象における血栓塞栓性疾患を処置、改善、または防止する方法であっ
て、対象へと、有効量の、本明細書で記載される抗体またはその抗原結合性断片を含む組
成物を、投与するステップを含む方法にも関する。一態様では、血栓塞栓性疾患は、血栓
性障害(例えば、血栓症、血栓性脳卒中、心房細動、心房細動における脳卒中の防止(S
PAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、および肺塞栓症)である。対象は、ヒトで
あることも企図される。
【0069】
前出の単離抗体またはそれらの抗原結合性断片のうちのいずれも、モノクローナル抗体
またはその抗原結合性断片でありうる。
【0070】
本開示の非限定的な実施形態を、以下の態様において記載する:
1.FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する単離抗FXI抗体および
/もしくは単離抗FXIa抗体またはそれらの断片。
2.抗FXIおよび/またはFXIaの1つまたは複数のエピトープに結合する単離抗体
またはその断片であって、エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、
Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu43
7、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr
521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、L
ys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595
、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のう
ちの2つ以上のアミノ酸残基を含む単離抗体またはその断片。
3.エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His
431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、L
ys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522
、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg5
48、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Gl
u597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの4つ以上のアミノ
酸残基を含む、態様2の単離抗体または断片。
4.エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His
431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、L
ys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522
、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg5
48、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Gl
u597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの6つ以上のアミノ
酸残基を含む、態様2の単離抗体または断片。
5.エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His
431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、L
ys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522
、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg5
48、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Gl
u597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの8つ以上のアミノ
酸残基を含む、態様2の単離抗体または断片。
6.エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His
431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、L
ys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522
、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg5
48、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Gl
u597、Arg602、Glu603、およびArg604の残基を含む、態様2の単
離抗体または断片。
7.エピトープが、Pro410、Arg413、Lys527のアミノ酸残基と、Le
u415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、
Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu47
6、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp
526、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、G
ly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの
1つまたは複数のアミノ酸残基とを含む、態様2の単離抗体または断片。
8.エピトープが、Pro410、Arg413、Lys527のアミノ酸残基と、Le
u415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、
Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu47
6、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp
526、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、G
ly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの
4つ以上のアミノ酸残基とを含む、態様2の単離抗体または断片。
9.エピトープが、Pro410、Arg413、Lys527のアミノ酸残基と、Le
u415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、
Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu47
6、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp
526、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、G
ly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの
6つ以上のアミノ酸残基とを含む、態様2の単離抗体または断片。
10.FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する単離抗FXI抗体およ
び/もしくは単離抗FXIa抗体またはそれらの断片であって、FXIおよび/またはF
XIaの、第IX因子、第XIIa因子、およびトロンビンのうちの1つまたは複数への
結合を遮断する単離抗体または断片。
11.FXIおよび/またはFXIaの、第IX因子、第XIIa因子、またはトロンビ
ン、および凝固経路の他の成分のうちの1つまたは複数への結合を遮断する、態様10の
単離抗体または断片。
12.FIX、FXI、およびFXIaのうちの1つまたは複数の、血小板受容体への結
合を遮断する、態様1の単離抗体または断片。
13.内因系凝固経路または共通凝固経路の活性化を防止する、態様1の単離抗体または
断片。
14.ヒトFXIタンパク質および/またはヒトFXIaタンパク質に、BIACORE
(商標)アッセイにより測定される34nM以下の、または溶液中平衡滴定アッセイ(S
ET)により測定される4pM以下のKDで結合する単離抗体またはその断片。
15.表1に列挙されたCDRのうちの少なくとも1つに対して、少なくとも90%の同
一性を有する、少なくとも1つの相補性決定領域を含む、態様1の単離抗体または断片。
16.表1のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、態様1の単離抗体または断片
。
17.態様1の抗体または断片の単離変異体であって、前記抗体または断片が、表1のC
DR1、CDR2、およびCDR3を含み、変異体が、CDR1、CDR2、またはCD
R3のうちの1つにおいて、少なくとも1~4カ所のアミノ酸変化を有する、単離変異体
。
18.配列番号5および25からなる群から選択される重鎖CDR3を含む、態様1の単
離抗体または断片。
20.配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して90%
の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択さ
れるVL、またはそれに対して90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1の単
離抗体または断片。
21.配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して95%
の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択さ
れるVL、またはそれに対して95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1の単
離抗体または断片。
22.配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して97%
の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択さ
れるVL、またはそれに対して97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1の単
離抗体または断片。
23.配列番号9および29からなる群から選択される可変重鎖配列を含む、態様1の単
離抗体または断片。
24.配列番号19および39からなる群から選択される可変軽鎖配列を含む、態様1の
単離抗体または断片。
25.配列番号9および29からなる群から選択される可変重鎖;ならびに配列番号19
および39からなる群から選択される可変軽鎖配列を含む、態様1の単離抗体または断片
。
26.配列番号9の可変重鎖および配列番号19の可変軽鎖配列を含む抗体または断片、
ならびに配列番号29の可変重鎖および配列番号39の可変軽鎖配列を含む抗体または断
片からなる群から選択される、態様1の単離抗体または断片。
27.配列番号46からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1;配列番号4から
なる群から選択されるCDR2;5からなる群から選択されるCDR3;配列番号33か
らなる群から選択される軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14からなる群から選択され
るCDR2;および配列番号15からなる群から選択されるCDR3を含む、態様1の単
離抗体または断片。
28.配列番号3および23からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1;配列番
号4および24からなる群から選択されるCDR2;5および25からなる群から選択さ
れるCDR3;配列番号13および33からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDR
1;配列番号14および34からなる群から選択されるCDR2;ならびに配列番号15
および35からなる群から選択されるCDR3を含む、態様1の単離抗体または断片。
29.配列番号6および26からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1;配列番
号7および27からなる群から選択されるCDR2;8および28からなる群から選択さ
れるCDR3;配列番号16および36からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDR
1;配列番号17および37からなる群から選択されるCDR2;ならびに配列番号18
および38からなる群から選択されるCDR3を含む、態様1の単離抗体または断片。
30.配列番号3の重鎖可変領域のCDR1;配列番号4の重鎖可変領域のCDR2;配
列番号5の重鎖可変領域のCDR3;配列番号13の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号
14の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域のCDR3を含む、
態様1の単離抗体または断片。
31.配列番号23の重鎖可変領域のCDR1;配列番号24の重鎖可変領域のCDR2
;配列番号25の重鎖可変領域のCDR3;配列番号33の軽鎖可変領域のCDR1;配
列番号34の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域のCDR3を
含む、態様1の単離抗体または断片。
32.配列番号6の重鎖可変領域のCDR1;配列番号7の重鎖可変領域のCDR2;配
列番号8の重鎖可変領域のCDR3;配列番号16の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号
17の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号18の軽鎖可変領域のCDR3を含む、
態様1の単離抗体または断片。
33.配列番号26の重鎖可変領域のCDR1;配列番号27の重鎖可変領域のCDR2
;配列番号28の重鎖可変領域のCDR3;配列番号36の軽鎖可変領域のCDR1;配
列番号37の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域のCDR3を
含む、態様1の単離抗体または断片。
34.上記態様の一つの抗体またはその断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組
成物。
35.前記態様のいずれかに記載の単離抗体または断片と同じエピトープに結合する、態
様1の単離抗体または断片。
36.ヒトFXIタンパク質および/またはヒトFXIaタンパク質への結合について、
前記態様のいずれかに記載の単離抗体または断片と競合する、態様1の単離抗体または断
片。
37.NOV1090およびNOV1401からなる群から選択される、態様1の単離抗
体または断片。
38.血栓塞栓性障害を処置する方法であって、有効量の、前記態様のいずれかに記載の
抗体または断片を含む医薬組成物を、血栓塞栓性障害に罹患している対象へと投与するス
テップを含む方法。
39.対象が、心房細動と関連する虚血性脳卒中および深部静脈血栓症のうちの1つまた
は複数に罹患している、態様38の方法。
40.対象が、心房細動と関連する虚血性脳卒中に罹患している、態様38の方法。
41.血栓塞栓性障害を処置する方法であって、有効量の、前記態様のいずれかに記載の
抗体または断片を含む医薬組成物を、スタチン療法と組み合わせて、血栓塞栓性障害に罹
患している対象へと投与するステップを含む方法。
42.前記態様のいずれかに記載の抗体を含む医薬。
43.前記態様のいずれかに記載の抗体のうちの1つまたは複数をコードする核酸。
44.態様43に記載の核酸を含むベクター。
45.態様44に記載のベクターを含む宿主細胞。
46.活性のFXI(FXIa)触媒ドメインに結合すると、FXIaに、そのコンフォ
メーションを、N末端の4つの残基、ループ145、188、および220が活性コンフ
ォメーションと比較してシフトし、かつ/または不規則的である不活性コンフォメーショ
ンへと変化させる、態様1の単離抗体または断片。
47.FXIに結合すると、FXI触媒ドメインが、ループ145、188、および22
0がFXIa触媒ドメインの構造内と同様に規則的である活性コンフォメーションを取る
ことを防止する、態様1の単離抗体または断片。
48.FXIに結合すると、FXI触媒ドメインが、N末端の4つの残基、ループ145
、188、および220がFXIa触媒ドメインの構造内と同様に規則的である活性コン
フォメーションを取ることを防止する、態様1の単離抗体または断片。
49.FXIに結合すると、チモーゲン構造内のコンフォメーション変化を誘導し、FX
Iaに結合するときに観察される阻害性FXIコンフォメーションと緊密に関連する阻害
性FXIコンフォメーションをさらにもたらすことにより、FXI触媒ドメインが、活性
コンフォメーションを取ることを防止する、態様1の単離抗体または断片。
50.FXIおよび/またはFXIaに結合し、FXIおよび/またはFXIaの触媒ド
メインと、抗体:抗原複合体を形成すると、ループ145、188、および220の、活
性の第XI因子(FXIa)の触媒ドメインの、複合体化していない構造と比較した場合
のシフトおよび/または配向性の喪失を引き起こす、態様1の単離抗体または断片。
51.FXIおよび/またはFXIaに結合し、FXIおよび/またはFXIaの触媒ド
メインと、抗体:抗原複合体を形成すると、N末端の4つの残基、ループ145、188
、および220の、活性の第XI因子(FXIa)の触媒ドメインの、複合体化していな
い構造と比較した場合のシフトおよび/または配向性の喪失を引き起こす、態様1の単離
抗体または断片。
52.活性のFXI(FXIa)に結合し、FXI(FXIa)触媒ドメインに、そのコ
ンフォメーションを、ループ145、188、および220が活性コンフォメーションと
比較してシフトし、かつ/または配向性が喪失している不活性コンフォメーションへと変
化させる、態様1の単離抗体または断片。
【0071】
定義
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本
発明が関する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0072】
「FXIタンパク質」、「FXI抗原」、および「FXI」という用語は、互換的に使
用され、異なる種における第XI因子タンパク質を指す。第XI因子とは、限定的なタン
パク質分解により、活性のセリンプロテアーゼへと転換されると、血液凝固の内因系経路
に参与するチモーゲンとして、ヒト血漿中に、25~30nMの濃度で存在する糖タンパ
ク質である、哺乳動物の第XI血漿凝固因子である。
【0073】
「FXIaタンパク質」、「FXIa抗原」、および「FXIa」という用語は、互換
的に使用され、異なる種における活性化型FXIタンパク質を指す。チモーゲンである第
XI因子は、血液凝固の接触相を介して、または血小板表面上の、トロンビンを媒介する
活性化を介して、その活性形態である第Xla凝固因子(FXIa)へと転換される。第
XI因子のこの活性化時に、内部のペプチド結合は、2つの鎖の各々に切断され、ジスル
フィド結合により共に保持された、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成されるセリンプ
ロテアーゼである、活性化型第Xla因子を結果としてもたらす。このセリンプロテアー
ゼであるFXIaは、第IX凝固因子を、IXaへと転換し、続いて、IXaは、第X凝
固因子を活性化させる(Xa)。次いで、Xaは、第ll凝固因子/トロンビンの活性化
を媒介しうる。例えば、ヒトFXIは、表1(配列番号1)に示される配列を有し、先行
の報告および文献(Mandle RJ Jr, et al. (1979) Blood;54(4):850;NCBI基準配列
:AAA51985)において記載されている。
【0074】
本発明の文脈では、「FXI」および「FXIa」(など)という用語は、天然のFX
Iタンパク質およびFXIaタンパク質のそれぞれの突然変異体および変異体であって、
上述の報告において記載されている、天然の一次構造(アミノ酸配列)のアミノ酸配列と
実質的に同じアミノ酸配列を有する突然変異体および変異体を含む。
【0075】
「触媒ドメイン」、「セリンプロテアーゼ触媒ドメイン」という用語、および本明細書
で使用される同様な用語は、循環中の成熟タンパク質のN末端のGlu1から数えた、ア
ミノ酸Ile370~Val607を意味する。これはまた、FXIのC末端における残
基388~625としても記載することができる。本明細書で使用される「活性部位」と
いう用語は、アミノ酸であるHis413、Asp462、およびSe557を含む、触
媒性三残基を意味する(Bane and Gailani (2014) Drug Disc. 19(9))。
【0076】
数値xに関する「約」という用語は、例えば、x±10%を意味する。
【0077】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、全抗体および任意の抗原結合性断片(す
なわち、「抗原結合性部分」)またはそれらの単鎖体を意味する。全抗体は、ジスルフィ
ド結合により相互接続される少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む
糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、VHと略記する)および
重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインであるCH1、CH2、およびC
H3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、VLと略記する)および軽鎖定常
領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメインであるCLを含む。VH領域およびVL領
域は、フレームワーク領域(FR)と称するより保存的な領域を散在させた、相補性決定
領域(CDR)と称する超可変性の領域へとさらに細分することができる。各VHおよび
各VLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、以下の順序で配置される3つのCDRお
よび4つのFR:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4から
なる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗
体の定常領域は、免疫グロブリンの、宿主組織または免疫系の多様な細胞(例えば、エフ
ェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(Clq)を含む因子への結合を媒介し
うる。
【0078】
本明細書で使用される、抗体の「抗原結合性部分」または「抗原結合性断片」という用
語は、所与の抗原(例えば、XIa因子(FXIa))に特異的に結合する能力を保持す
る、インタクトな抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合性機能は、インタ
クトな抗体の断片により果たされうる。抗体の抗原結合性部分または抗原結合性断片とい
う用語内に包含される結合性断片の例は、Fab断片、VLドメイン、VHドメイン、C
Lドメイン、およびCH1ドメインからなる一価断片;ヒンジ領域においてジスルフィド
架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;VHド
メインおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一のアームのVLドメインおよ
びVHドメインからなるFv断片;VHドメインまたはVLドメインからなる単一ドメイ
ン抗体(dAb)断片(Wardら、1989 Nature 341:544~546);ならびに単離相補性決定
領域(CDR)を含む。
【0079】
さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLドメインおよびVHドメインは、個別の
遺伝子によりコードされるが、組換え法を使用して、それらを単一のタンパク質鎖として
作製することを可能とする人工のペプチドリンカーにより付着することができ、この場合
、VL領域およびVH領域は、対合して一価分子(単鎖Fv(scFv)として公知であ
り、例えば、Birdら、1988 Science 242:423~426;およびHustonら、1988 Proc. Natl.
Acad. Sci. 85:5879~5883を参照されたい)を形成する。このような単鎖抗体は、抗体の
1つまたは複数の抗原結合性部分または抗原結合性断片を含む。これらの抗体断片は、当
業者に公知の従来の技法を使用して得られ、断片も、インタクトな抗体と同じ形で有用性
についてスクリーニングされる。
【0080】
抗原結合性断片はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボデ
ィ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびbis-scFv
(例えば、HollingerおよびHudson、2005、Nature Biotechnology、23、9、1126~1136を
参照されたい)へと組み込むこともできる。抗体の抗原結合性部分は、III型フィブロ
ネクチン(Fn3)などのポリペプチド(フィブロネクチンポリペプチドモノボディにつ
いて記載する米国特許第6,703,199号明細書を参照されたい)に基づく足場へと
グラフトすることができる。
【0081】
抗原結合性断片は、相補的な軽鎖ポリペプチドと併せて抗原結合性領域の対を形成する
、タンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)の対を含む単鎖分子へと組み
込むことができる(Zapataら、1995 Protein Eng. 8(10):1057~1062;および米国特許
第5,641,870号明細書)。
【0082】
本明細書で使用される「アフィニティー」という用語は、単一の抗原性部位における抗
体と抗原との間の相互作用の強度を指す。各抗原性部位内では、抗体「アーム」の可変領
域は、多数の部位において、弱い非共有結合的力を介して抗原と相互作用し、相互作用が
大きいほど、アフィニティーは強くなる。抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fa
b断片)について本明細書で使用される「高アフィニティー」という用語は一般に、10
-9M以下のKD(例えば、10-10M以下のKD、10-11M以下のKD、10-
12M以下のKD、10-13M以下のKD、10-14M以下のKDなど)を有する抗
体または抗原結合性断片を指す。
【0083】
「アミノ酸」という用語は、自然発生のアミノ酸および合成アミノ酸のほか、自然発生
のアミノ酸と同様の形で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体も指す。自然発生
のアミノ酸とは、遺伝子コードによりコードされるアミノ酸のほか、後で修飾されたアミ
ノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセ
リンでもある。アミノ酸類似体とは、自然発生のアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわ
ち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン
、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムに結合したアルファ炭素を有
する化合物を指す。このような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾
ペプチド骨格を有するが、自然発生のアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ
酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、自然発生のアミノ
酸と同様の形で機能する化学化合物を指す。
【0084】
本明細書で使用される「結合特異性」という用語は、1つの抗原決定基だけと反応する
個別の抗原結合部位の能力を指す。
【0085】
抗体(例えば、FXI結合性抗体および/またはFXIa結合性抗体)に「特異的に(
または選択的に)結合する」という語句は、タンパク質および他の生体物質の異質な集団
内のコグネイト抗原(例えば、ヒトのFXIおよび/もしくはFXIaまたはカニクイザ
ルのFXIおよび/もしくはFXIa)の存在を決定する結合反応を指す。本明細書では
、「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という語句は、「抗原に特異的
に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。
【0086】
「FXIおよび/またはFXIaを媒介する」という用語は、FXIおよび/またはF
XIaが、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(FX)、および
/もしくはトロンビンを、直接的もしくは間接的に活性化させることにより、かつ/また
は血小板受容体に結合することにより、内因系凝固経路および/または共通凝固経路を媒
介するという事実を指す。
【0087】
「止血」という用語は、損傷部位における血流を止めるための主要な機構、および創傷
治癒時に血管の開存を回復するための主要な機構のそれぞれを表す。正常な止血および病
理学的血栓症では、3つの機構:活性化血小板の、血管壁との相互作用を意味する一次止
血、フィブリンの形成、および線溶と称する過程が同時に活性化する。
【0088】
「凝固および凝固カスケード」、「凝固のカスケードモデル」などという用語は、創傷
を密封するように形成される凝血を安定化させるのに用いられる、タンパク質ベースの系
を指す。凝固経路とは、タンパク質分解性カスケードである。経路の各酵素は、血漿中に
、活性化すると、タンパク質分解性切断を受けて、前駆体分子から活性の因子を放出する
、チモーゲン(不活性形態にある)として存在する。凝固カスケードは、活性化過程を制
御する一連の正および負のフィードバックループとして機能する。経路の最終目標は、次
いで、可溶性フィブリノゲンを、凝血を形成するフィブリンへと転換しうる、トロンビン
を産生することである。
【0089】
トロンビンの生成過程は、3つの相:内因系経路、および活性の凝血因子:FXa(活
性化型第X因子)を生成させるための代替的な経路である外因系経路、およびトロンビン
の形成を結果としてもたらす、最終的な共通経路に分けることができる(Hoffman M.M. a
nd Monroe D.M. (2005) Curr Hematol Rep. 4:391 -396; Johne J, et al. (2006) Biol
Chem. 387:173-178)。
【0090】
「血小板の凝集」とは、血管の破断が生じたら、正常では血流と直接接触しない物質が
曝露される過程を指す。これらの物質(主に、コラーゲンおよびフォンヴィレブランド因
子)は、血小板が、破断した表面に接着することを可能とする。血小板は、表面に付着す
ると、さらなる血小板を損傷領域へと誘引する化学物質を放出するが、これを血小板の凝
集と称する。これらの2つの過程が、出血を止める最初の応答である。
【0091】
本明細書で使用される「血栓塞栓性障害」という用語または類似の用語は、内因系凝固
経路および/または共通凝固経路が、異常に活性化しているか、または自然に不活化しな
い(例えば、治療手段を伴わずに)、任意の数の状態または疾患を指す。これらの状態は
、血栓性脳卒中、心房細動、心房細動における脳卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓
症、静脈血栓塞栓症、および肺塞栓症を含むがこれらに限定されない。これらはまた、カ
テーテルが血栓性となるカテーテル関連状態(例えば、がん患者におけるヒックマンカテ
ーテル)、およびチュービングが凝血を発症させる体外式膜型人工肺(ECMO)も含み
うる。
【0092】
本明細書で使用される「血栓塞栓性」という用語または類似の用語はまた、本発明の抗
FXI Abおよび/もしくは抗FXIa Abまたはそれらの抗原結合性断片を使用し
て防止または処置しうる、以下:
・発作性心房細動もしくは発作性心房粗動、遷延性心房細動もしくは遷延性心房粗動、
または永続性心房細動もしくは永続性心房粗動などの心不整脈を疑われるか、または確認
されている対象における血栓塞栓症;
・心房細動における脳卒中の防止(SPAF)を伴う対象であって、その亜集団が、経
皮冠動脈インターベンション(PCI)を受けるAF患者である対象;
・出血の危険性が大きな患者における、急性静脈血栓塞栓性事象(VTE)の処置、お
よび長期的な続発性VTEの防止;
・一過性虚血性発作(TIA)または非機能障害誘発性脳卒中の後の二次防止における
大脳および心血管事象、ならびに洞調律を伴う心不全における、血栓塞栓性事象の防止に
おける大脳および心血管事象;
・心不整脈のための心除細動を受ける対象における、左心房内の凝血形成および血栓塞
栓症;
・心不整脈のためのアブレーション手順の前、その間、およびその後における血栓症;
・静脈血栓症であり、これは、下肢または上肢における、深部静脈血栓症または表在静
脈血栓症、腹部静脈および胸部静脈における血栓症、静脈洞血栓症および頸静脈血栓症の
処置および二次防止を含むがこれらに限定されない;
・カテーテルまたはペースメーカーの導線など、静脈内の任意の人工表面上の血栓症;
・静脈血栓症を伴うかまたは伴わない患者における肺塞栓症;
・慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH);
・破裂したアテローム性プラーク上の動脈血栓症、動脈内の人工装具上またはカテーテ
ル上の血栓症、および見かけ上正常な動脈内の血栓症であり、これらは、急性冠動脈症候
群、ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症、ステント血栓症、動脈
系内の任意の人工表面の血栓症、および肺高血圧症を伴うかまたは伴わない対象における
肺動脈血栓症を含むがこれらに限定されない;
・経皮冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者における、血栓症および血栓
塞栓症;
・心塞栓性脳卒中および潜因性脳卒中;
・侵襲性および非侵襲性のがん性悪性腫瘍を伴う患者における血栓症;
・留置カテーテルにわたる血栓症;
・重病患者における血栓症および血栓塞栓症;
・心血栓症および血栓塞栓症であり、これらは、心筋梗塞後における心血栓症、心動脈
瘤、心筋線維症、心肥大および心機能不全、心筋炎、ならびに心臓内の人工表面などの状
態と関連する心血栓症を含むがこれらに限定されない;
・心房細動を伴うかまたは伴わない、心弁性心疾患を伴う患者における血栓塞栓症;
・心弁用の機械的または生物学的人工装具にわたる血栓塞栓症;
・単純型心奇形または複合型心奇形の心臓修復術後において、天然または人工の心パッ
チ、動脈または静脈の導管を有した患者における血栓塞栓症;
・人工膝関節置換術、人工股関節置換術、および整形外科術、胸部手術または腹部手術
の後における、静脈血栓症および血栓塞栓症;
・頭蓋内インターベンションおよび脊髄インターベンションを含む神経外科術の後にお
ける、動脈血栓症または静脈血栓症;
・第V因子 Leiden、プロトロンビンの突然変異、抗トロンビンIII、プロテ
インC欠損症およびプロテインS欠損症、第XIII因子の突然変異、家族性異常フィブ
リノゲン血症、先天性プラスミノゲン欠損症、第XI因子レベルの上昇、鎌状赤血球病、
抗リン脂質症候群、自己免疫疾患、慢性腸疾患、ネフローゼ症候群、溶血性尿毒症、骨髄
増殖性疾患、播種性血管内凝固、発作性夜間ヘモグロビン尿症、およびヘパリン誘導性血
小板減少症を含むがこれらに限定されない、先天性または後天性の血栓性素因;
・慢性腎疾患における血栓症および血栓塞栓症;ならびに
・血液透析を受ける患者、および体外式膜型人工肺を受ける患者における、血栓症およ
び血栓塞栓症
のうちの任意の数も指す場合がある。
【0093】
「キメラ抗体」という用語は、(a)抗原結合性部位(可変領域)を、クラス、エフェ
クター機能、および/もしくは種が異なるか、またはクラス、エフェクター機能、および
/もしくは種を改変された定常領域、あるいはキメラ抗体に新たな特性を付与する全く異
なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などへと連結するように、定
常領域またはその一部を、改変するか、置きかえるか、または交換した抗体分子;あるい
は(b)可変領域またはその一部を、抗原特異性が異なるか、または抗原特異性を改変さ
れた可変領域により改変するか、置きかえるか、またはこれと交換した抗体分子を指す。
例えば、マウス抗体は、その定常領域を、ヒト免疫グロブリンに由来する定常領域で置き
かえることにより修飾することができる。ヒト定常領域による置きかえに起因して、キメ
ラ抗体は、ヒトにおける抗原性を、元のマウス抗体と比較して低減しながら、抗原の認識
におけるその特異性を保持しうる。
【0094】
「保存的に修飾された変異体」という用語は、アミノ酸配列および核酸配列のいずれに
も適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体とは、同一なアミノ
酸配列もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配
列をコードしない場合は、本質的に同一な配列を指す。遺伝子コードの縮重性のために、
多数の機能的に同一な核酸が、所与の任意のタンパク質をコードする。例えば、コドンで
あるGCA、GCC、GCG、およびGCUのいずれも、アミノ酸であるアラニンをコー
ドする。したがって、アラニンがコドンにより指定されるあらゆる位置で、コードされる
ポリペプチドを改変せずに、コドンを、記載された対応するコドンのうちのいずれかへと
改変することができる。このような核酸変異は、保存的に修飾された変異のうちの1種で
ある「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする、本明細書のあらゆる核酸配
列はまた、核酸のあらゆる可能なサイレント変異についても記載する。当業者は、核酸内
の各コドン(通常メチオニンだけのコドンであるAUG、および通常トリプトファンだけ
のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一な分子をもたらしうることを認
識するであろう。したがって、記載される各配列内では、ポリペプチドをコードする核酸
の各サイレント変異が含意されている。
【0095】
ポリペプチド配列では、「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸の、化学的に類似
するアミノ酸による置換を結果としてもたらす、ポリペプチド配列への個別の置換、欠失
、または付加を含む。当技術分野では、機能的に類似するアミノ酸を提示する保存的置換
表が周知である。このような保存的に修飾された変異体は、本発明の多型変異体、種間相
同体、および対立遺伝子に追加されるものであり、これらを除外するものではない。以下
の8つの群:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタ
ミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リ
シン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V
);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン
(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)は、互いに
対して保存的置換であるアミノ酸を含有する(例えば、Creighton、Proteins(1984)を
参照されたい)。いくつかの実施形態では、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸
配列を含有する抗体の結合特徴にそれほど大きな影響を及ぼしたりこれを改変したりしな
いアミノ酸修飾を指すのに使用する。
【0096】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的な結合が可能なタンパク質決定基を意味
する。エピトープは通例、アミノ酸または糖側鎖など、化学的に活性な表面分子群からな
り、通例、特異的な三次元構造特徴のほか、特異的な電荷特徴も有する。コンフォメーシ
ョナルエピトープと非コンフォメーショナルエピトープとは、前者への結合は、変性溶媒
の存在下で失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。競合結合アッ
セイにおいて、当業者に周知の方法のうちのいずれかにより、一方の抗体が、第2の抗体
と同じエピトープに結合することが示される場合、2つの抗体は、「競合する」という。
【0097】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク領域およびCDR領
域のいずれもが、ヒト由来の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図する
。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もまた、このようなヒト配列、例え
ば、ヒト生殖細胞系列配列またはヒト生殖細胞系列配列の突然変異させたバージョンに由
来する。本発明のヒト抗体は、ヒト配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、i
n vitroにおけるランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発により導
入された突然変異、またはin vivoにおける体細胞突然変異により導入された突然
変異)を含みうる。
【0098】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、単一の結合特異性を提示する抗体であって
、フレームワーク領域およびCDR領域のいずれもが、ヒト配列に由来する可変領域を有
する抗体を指す。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝
子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を使用して調製す
る。
【0099】
「ヒト化」抗体とは、ヒトにおける免疫原性は小さいが、非ヒト抗体の反応性を保持す
る抗体である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残りの部分を、それ
らのヒト対応物(すなわち、可変領域の定常領域ならびにフレームワーク部分)で置きか
えることにより達成することができる。例えば、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA、81:6851~6855、1984; MorrisonおよびOi、Adv. Immunol.、44:65~92、1988; Verho
eyenら、Science、239:1534~1536、1988; Padlan、Molec. Immun.、28:489~498、1991
;およびPadlan、Molec. Immun.、31:169~217、1994を参照されたい。ヒト操作技術の他
の例は、US5,766,886において開示されているXoma技術を含むがこれらに
限定されない。
【0100】
2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における「同一な」または「同一性
」パーセントという用語は、2つ以上の配列または部分配列が同じであることを指す。以
下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、または手作業のアライメントおよび
目視により測定される比較域または指定領域にわたり、最大の対応性について比較され、
配列決定された場合の、2つの配列の、指定された百分率のアミノ酸残基またはヌクレオ
チドが同じであれば(すなわち、指定される領域にわたる、または、指定されない場合は
、配列全体にわたる、60%の同一性、任意選択で、65%、70%、75%、80%、
85%、90%、95%、または99%の同一性を有すれば)、2つの配列は「実質的に
同一」である。任意選択で、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド(または10アミ
ノ酸)の長さの領域にわたり、またはより好ましくは、100~500、または1000
ヌクレオチド以上(または20、50、または200アミノ酸以上)の長さの領域にわた
り存在する。
【0101】
配列比較では、1つの配列が、それに照らして被験配列を比較する基準配列として働く
ことが典型的である。配列比較アルゴリズムを使用する場合、被験配列および基準配列を
コンピュータへと入力し、必要な場合は、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプロ
グラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用することもでき
、代替的なパラメータを指定することもできる。次いで、配列比較アルゴリズムにより、
プログラムパラメータに基づき、被験配列について、基準配列と比べた配列同一性パーセ
ントを計算する。
【0102】
本明細書で使用される「比較域」は、2つの配列を最適に配列決定した後で、配列を、
同じ数の連続的な位置による基準配列と比較しうる、20~600、通例約50~約20
0、より通例では、約100~約150からなる群から選択される連続的な位置の数のう
ちのいずれか1つによるセグメントに対する言及を含む。当技術分野では、比較のための
配列アライメント法が周知である。比較のための最適な配列アライメントは、例えば、Sm
ithおよびWaterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cによる局所相同性アルゴリズムに
より行うこともでき、NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48:443、1970による相同
性アライメントアルゴリズムにより行うこともでき、PearsonおよびLipman、Proc. Nat'l
. Acad. Sci. USA 85:2444、1988による類似性検索法により行うこともでき、これらアル
ゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Sof
tware Package、Genetics Computer Group、57
5 Science Dr.、Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、
FASTA、およびTFASTA)により行うこともでき、手作業のアライメントおよび
目視(例えば、Brentら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons
, Inc.(Ringbou編、2003)を参照されたい)により行うこともできる。
【0103】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するのに適するアルゴリズム
の2つの例は、それぞれ、Altschulら、(1977) Nuc. Acids Res. 25:3389~3402;およ
びAltschulら、(1990) J. Mol. Biol. 215:403~410において記載されている、BLA
STアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST解析を実施
するためのソフトウェアは、National Center for Biotech
nology Informationにより公表されている。このアルゴリズムは、デ
ータベース配列内の同じ長さのワードで配列決定したときに、ある正の値の閾値スコアT
にマッチするかまたはこれを満たす、クエリー配列内の短いワード長Wを同定することに
より、高スコア配列対(HSP)をまず同定することを伴う。Tを、隣接ワードスコア閾
値(Altschulら、前出)と称する。これらの初期の隣接ワードヒットが、これらを含有す
るより長いHSPを見出す検索を開始するためのシードとして働く。累積アライメントス
コアが増大しうる限りにおいて、ワードヒットを、各配列に沿っていずれの方向にも拡張
する。累積スコアは、ヌクレオチド配列では、パラメータM(マッチする残基の対につい
てのリウォードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティース
コア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列では、スコアリングマトリックスを
使用して、累積スコアを計算する。累積アライメントスコアが、達成されたその最大値か
ら量Xだけ低下した場合;1つまたは複数の負スコア残基のアライメントの累積のために
、累積スコアが、ゼロ以下に低下した場合;または配列のいずれかの末端に達した場合は
、各方向へのワードヒットの拡張を停止させる。BLASTアルゴリズムパラメータであ
るW、T、およびXにより、アライメントの感度および速度が決定される。BLASTN
プログラム(ヌクレオチド配列の場合)では、11のワード長(W)、10の期待値(E
)、M=5、N=-4をデフォルトとして使用し、両方の鎖の比較を行う。アミノ酸配列
のためのBLASTPプログラムでは、3のワード長、および10の期待値(E)、およ
び50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff、Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 89:10915、1989を参照されたい)アライメント(B)、10の期
待値(E)、M=5、N=-4をデフォルトとして使用し、両方の鎖の比較を行う。
【0104】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性についての統計学的解析(例
えば、KarlinおよびAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873~5787、1993を参照
されたい)も実施する。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は
、2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間のマッチングが偶然に生じる確率の指
標をもたらす最小合計確率(P(N))である。例えば、被験核酸を基準核酸に照らして
比較したときの最小合計確率が約0.2未満であり、より好ましくは、約0.01未満で
あり、最も好ましくは、約0.001未満であれば、核酸は基準配列と類似すると考えら
れる。
【0105】
2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントはまた、PAM120重みづけ残基表、1
2のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーを使用するALIGNプ
ログラム(バージョン2.0)へと組み込まれた、E. MeyersおよびW. Miller(Comput.
Appl. Biosci.、4:11~17、1988)によるアルゴリズムを使用しても決定することができ
る。加えて、2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントは、Blossom 62マト
リックスまたはPAM250マトリックス、および16、14、12、10、8、6、ま
たは4のギャップ重みづけ、および1、2、3、4、5、または6の長さ重みづけを使用
する、GCGソフトウェアパッケージ(インターネット上のgcg.comで入手可能である)
内のGAPプログラムへと組み込まれた、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol, Biol. 48:44
4~453、1970)によるアルゴリズムを使用しても決定することができる。
【0106】
上記で言及した配列同一性百分率以外の、2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的
に同一であることの別の指標は、下記で記載される通り、第1の核酸によりコードされる
ポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドに対する抗体と免疫学的に
交差反応性であることである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的置換だけに
よって異なる場合、ポリペプチドは、第2のポリペプチドと実質的に同一なことが典型的
である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、下記で記載される通り
、2つの分子またはそれらの相補体が、厳密な条件下で、互いとハイブリダイズすること
である。2つの核酸配列が実質的に同一であることのさらに別の指標は、同じプライマー
を使用して配列を増幅しうることである。
【0107】
「単離抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗
体を指す(例えば、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合する単離抗体は、F
XIおよび/もしくはFXIa以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)
。しかし、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合する単離抗体は、他の抗原に
対する交差反応性を有しうる。さらに、単離抗体は、他の細胞内物質および/または化学
物質を実質的に含まない場合もある。
【0108】
「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によりもたらされる抗体クラス(
例えば、IgM、IgE、IgG1またはIgG4などのIgG)を指す。アイソタイプ
はまた、これらのクラスのうちの1つの修飾バージョンも含み、その修飾は、Fc機能を
改変する、例えば、エフェクター機能またはFc受容体への結合を増強または低減するよ
うに施されている。
【0109】
本明細書で使用される「Kassoc」または「Ka」という用語が、特定の抗体-抗
原間相互作用の会合速度を指すことを意図するのに対し、本明細書で使用される「Kdi
s」または「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原間相互作用の解離速度を指すことを
意図する。本明細書で使用される「KD」という用語は、KdのKaに対する比(すなわ
ち、Kd/Ka)から得られる解離定数を指すことを意図し、モル濃度(M)として表す
。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる
。抗体のKDを決定するための方法は、BIACORE(商標)システムなどのバイオセ
ンサーシステムを使用して表面プラズモン共鳴を測定するか、または溶液平衡滴定(SE
T)により溶液中のアフィニティーを測定するステップを含む。
【0110】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」と
いう用語は、単一の分子組成による抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物
は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性およびアフィニティーを提示する。
【0111】
本明細書では、「核酸」という用語が、「ポリヌクレオチド」という用語と互換的に使
用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらの一本鎖形態ま
たは二本鎖形態におけるポリマーを指す。「核酸」という用語は、公知のヌクレオチド類
似体または修飾骨格残基もしくは修飾連結を含有する核酸であって、合成の核酸、自然発
生の核酸、および非自然発生の核酸であり、基準核酸と同様の結合特性を有し、基準ヌク
レオチドと同様の形で代謝される核酸を包含する。このような類似体の例は、限定なしに
述べると、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチ
ルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)を含む。
【0112】
別段に指し示されない限りにおいて、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたその
変異体(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列も暗示的に包含するほか、明示的に
指し示される配列も包含する。とりわけ、下記で詳述される通り、縮重コドン置換は、1
つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が、混合塩基および/ま
たはデオキシイノシン残基で置換された配列を作り出すことにより達成することができる
(Batzerら、Nucleic Acid Res. 19:5081、1991; Ohtsukaら、J. Biol. Chem. 260:2605
~2608、1985;およびRossoliniら、Mol. Cell. Probes 8:91~98、1994)。
【0113】
「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DN
A)セグメントの間の機能的関係を指す。「作動可能に連結された」という用語は、転写
調節配列の、転写される配列に対する機能的関係を指すことが典型的である。例えば、プ
ロモーター配列またはエンハンサー配列は、それが、適切な宿主細胞内または他の発現系
内のコード配列の転写を刺激またはモジュレートするとき、コード配列に作動可能に連結
されている。一般に、転写される配列に作動可能に連結されたプロモーター転写調節配列
は、転写される配列と物理的に隣接する、すなわち、シス作用型である。しかし、エンハ
ンサーなど、一部の転写調節配列は、その転写をそれらが増強するコード配列に物理的に
隣接する必要も、近接して配置される必要もない。
【0114】
本明細書で使用される「最適化された」という用語は、ヌクレオチド配列を、産生細胞
または産生生物、一般に、真核細胞、例えば、ピキア(Pichia)属細胞、チャイニーズハ
ムスター卵巣細胞(CHO)、またはヒト細胞において好ましいコドンを使用してアミノ
酸配列をコードするように改変していることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列
は、「親」配列としてもまた公知の出発ヌクレオチド配列により本来コードされるアミノ
酸配列を、完全に、または可能な限り多く保持するように操作する。本明細書の最適化さ
れた配列は、哺乳動物細胞において好ましいコドンを有するように操作されている。しか
し、本明細書ではまた、他の真核細胞または原核細胞におけるこれらの配列の最適化され
た発現も企図される。最適化されたヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列も
また、最適化されていると称する。
【0115】
本明細書では、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語が、アミノ酸残基の
ポリマーを指すように互換的に使用される。「ポリペプチド」および「タンパク質」とい
う用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する自然発生のアミノ酸の人工の化学
的模倣体であるアミノ酸ポリマーのほか、自然発生のアミノ酸ポリマーおよび非自然発生
のアミノ酸ポリマーにも適用される。別段に指し示されない限りにおいて、特定のポリペ
プチド配列はまた、保存的に修飾されたその変異体も暗示的に包含する。
【0116】
本明細書で使用される「組換えヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン遺伝子に
ついてトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウス)
またはこれにより調製されるハイブリドーマから単離される抗体、ヒト抗体を発現させる
ように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離される抗体、組
換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、およびヒト免疫グロ
ブリン遺伝子配列の全部または一部の、他のDNA配列へのスプライシングを伴う、他の
任意の手段により調製されるか、発現させるか、創出されるか、または単離される抗体な
ど、組換え手段により調製されるか、発現させるか、創出されるか、または単離される、
全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域およびCDR
領域が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、
ある種の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、in vitroの突然変異誘発
(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を使用する場合は、in
vivoの体細胞突然変異誘発)にかけることができ、したがって、組換え抗体のVH
領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVH配列およびVL配列に由
来し、これらに関連するが、in vivoのヒト抗体の生殖細胞系列レパートリー内で
天然には存在しない可能性がある配列である。
【0117】
「組換え宿主細胞」(または、簡単に、「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベク
ターを導入した細胞を指す。このような用語は、特定の対象細胞だけを指すことを意図す
るものではなく、このような細胞の子孫細胞も指すことを意図するものであることを理解
されたい。後続する世代では、突然変異または環境的影響に起因して、ある種の修飾が生
じうるため、このような子孫細胞は、実のところ、親細胞と同一ではない可能性もあるが
、やはり本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0118】
「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、非ヒト霊長動物
(例えば、カニクイザル)、ヒツジ、ウサギ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、および爬
虫類など、全ての脊椎動物(例えば、哺乳動物および非哺乳動物)を含む。特記される場
合を除き、本明細書では、「患者」または「対象」という用語が互換的に使用される。本
明細書で使用される「カニクイザル(cyno)」または「カニクイザル(cynomolgus)」と
いう用語は、カニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(Macaca fascicularis
))を指す。具体的な態様では、患者または対象は、ヒトである。
【0119】
一実施形態では、本明細書で使用される、任意の疾患または障害(例えば、血栓塞栓性
障害)「~を処置すること」またはこれらの「処置」という用語は、疾患または障害を改
善すること(すなわち、疾患またはその臨床症状のうちの少なくとも1つの発症を緩徐化
するか、停止させるか、または軽減すること)を指す。別の実施形態では、「~を処置す
ること」または「処置」とは、患者により識別可能でない可能性があるパラメータを含む
少なくとも1つの物理的パラメータを緩和または改善することを指す。さらに別の実施形
態では、「~を処置すること」または「処置」とは、疾患または障害を、物理的にモジュ
レートする(例えば、識別可能な症状の安定化)か、生理学的にモジュレートする(例え
ば、物理的パラメータの安定化)か、または物理的かつ生理学的にモジュレートすること
を指す。さらに別の実施形態では、「~を処置すること」または「処置」とは、疾患また
は障害の発生または発症または進行を防止するかまたは遅延させることを指す。
【0120】
例えば血栓塞栓性障害を含む、本明細書で記載される適応に関する場合の「防止」とは
、例えば、前記悪化の危険性がある患者における、下記で記載される、血栓塞栓性疾患パ
ラメータの悪化を防止または緩徐化する任意の作用を意味する。
【0121】
「ベクター」という用語は、それが連結された別のポリヌクレオチドを輸送することが
可能なポリヌクレオチド分子を指すことを意図する。ベクターのうちの1つの種類は、さ
らなるDNAセグメントをライゲーションしうる、環状の二本鎖DNAループを指す「プ
ラスミド」である。ベクターの別の種類は、さらなるDNAセグメントを、ウイルスゲノ
ムへとライゲーションしうる、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVまたはAAV2)な
どのウイルスベクターである。ある種のベクター(例えば、細菌の複製起点を有する細菌
ベクターおよび哺乳動物のエピソームベクター)は、それらが導入された宿主細胞におけ
る自己複製が可能である。他のベクター(例えば、非哺乳動物のエピソームベクター)は
、宿主細胞へと導入すると、宿主細胞のゲノムへと組み込むことができ、これにより、宿
主ゲノムと共に複製する。さらに、ある種のベクターは、それらが作動的に連結された遺
伝子の発現を方向付けることが可能である。本明細書では、このようなベクターを、「組
換え発現ベクター」(または簡単に、「発現ベクター」)と称する。一般に、組換えDN
A法において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態にあることが多い。プラスミドは
ベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書では、「プラスミド」と「
ベクター」とを互換的に使用することができる。しかし、本発明は、同等な機能をもたら
すウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ
随伴ウイルス)など、発現ベクターの他の形態も含むことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【
図1-1】
図1A~1Cは、ヒトFXIタンパク質で再構成されたFXI
-/-マウスにおける、FeCl
3誘導性血栓症に対する、NOV1401の効果を示す図である。NOV1401は、血栓症を、用量依存的に阻害した。抗体は、非処置FXI
-/-マウスにおける場合と同じ程度に、aPTTを延長した。
【
図2】
図2A~2Bは、3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kgのNOV1401の、複数回にわたる静脈内(i.v.)(A;N=2)投与または皮下(s.c.)(B;N=2)投与の、aPTT(ひし形)に対する効果と、カニクイザルにおける総血漿NOV1401レベル(四角)に対する関係とを示す図である。3mg/kgの単回投与は、約2倍のaPTTをもたらし、これを、5~6週間にわたり維持した。全ての被験用量は、aPTTを、同様な程度に延長し、高被験用量が、3mg/kgの用量で観察されるaPTTの延長の大きさを増大させるとは考えられなかった。
【
図3】
図3A~3Bは、3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kgのNOV1401の、複数回にわたるi.v.(A;N=2)投与またはs.c.(B;N=2)投与の、血漿遊離FXI(四角)に対する効果と、カニクイザルにおけるaPTT(ひし形)に対する関係とを示す図である。3mg/kgの単回投与は、遊離FXIを、5~6週間にわたり、約90%低減した。全ての被験用量は、遊離FXIを、同様な程度に低減し、高被験用量が、3mg/kgの用量で観察される遊離FXIの低減の大きさを増大させるとは考えられなかった。
【
図4】
図4A~4Bは、FXIに結合した、本発明のNOV1401抗体のFabのX線構造を示す図である。
図4Aは、NOV1401 Fab-FXI CD複合体のX線構造を示す。FXI触媒ドメインを、グレーの表面として示し、Fabを、ライトグレー(軽鎖)およびダークグレー(重鎖)のリボンとして示す。
図4Bは、チモーゲンFXIと重ね合わせた、NOV1401 Fab-FXI CD複合体のX線構造を示す。FXI触媒ドメインを、グレーのリボンとして示す。Fabの可変ドメインを、ライトグレー(VL)およびダークグレー(VH)のリボンとして示す。4つのアップルドメインを含むチモーゲン構造を、構造の底部におけるダークグレーリボンとして重ね合わせる(PDB 2F83)。活性化切断部位(Ile370)を指し示す。
【
図5】
図5A~5Bは、NOV1401 Fabの結合時における、FXIaの構造的変化を示す図である。
図5Aは、Fabの結合前における、FXIaの活性部位についての視図を示す。FXIaを、透明な表面を伴うリボンとして表す。Fabの結合時にコンフォメーションを変化させる構造の断面を標識する(ループ145、ループ188、およびループ220)。S1およびS1のサブポケットを指し示す。
図5Bは、Fab複合体内のFXIの不活性コンフォメーションを示す。(Fabは示さない)。
【
図6-1】
図6A~6Cは、抗FXI/FXIa抗体についての複合応答曲線を示す図である。
図6Aは、NOV1401による第XIa因子活性の阻害を示す。全長ヒトFXIaの酵素活性を阻害する抗体であるNOV1401の代表的な複合応答曲線。アッセイは、実施例3で記載される通り、蛍光標識されたペプチドの切断を測定する。ロジスティック当てはめモデル[y=A2+(A1-A2)/(1+(x/IC50)
p)[式中、yは、インヒビター濃度をxとするときの阻害%であり、A1は、最小の阻害値であり、A2は、最大の阻害値である。指数pは、ヒル係数である]による非線形曲線の当てはめを、この代表的データセットにおいて使用することにより、160pMのIC
50値がもたらされる。
図6Bは、aPTTについての複合応答曲線を示す。プールされたヒト血漿を使用するaPTTアッセイにおける、抗体であるNOV1401による、凝固時間の延長についての代表的な複合応答曲線。アッセイは、実施例4で記載される通り、異なる濃度のNOV1401の存在下で、内因系凝血カスケードを開始させた後における、凝固時間を測定する。黒線は、ロジスティック非線形当てはめモデルを使用する当てはめを表す。点線は、NOV1401の非存在下における、プールされたヒト血漿の、ベースラインの凝固時間を表す。ベースラインの凝固時間は、32.3秒間であり、グラフ内では、グレーの破線で指し示される。グレーの点線は、凝血時間が、ベースラインと比較して倍増したとき、すなわち、2×aPTT値となるときの抗体濃度を指し示し、これは、14nMである。
図6Cは、TGA応答曲線を示す。プールされたヒト血漿を伴うTGAにおける、抗体であるNOV1401による、トロンビン生成の阻害についての代表的な複合応答曲線を示す。アッセイは、実施例4で記載される通り、異なる濃度のNOV1401の、いわゆるトロンビン→FXIaフィードフォワードループを介する、非常に低濃度の組織因子(TF)により誘発されうるトロンビン生成に対する効果を測定する。黒線は、4パラメータ用量応答曲線モデルを使用する当てはめを表す。点線は、少量のTFにより誘導されるトロンビン生成に起因する、残留トロンビン濃度を表す。24nMのIC
5
0値および159nMの残留トロンビン濃度(点線)を、この複合応答曲線について計算した。
【
図7-1】
図7A~7Bは、NOV1401の、毎週10mg/kg(N=3)および100mg/kg(N=5)の13週間(14回の投与)にわたるs.c.投与、または毎週50mg/kg(N=3)の4週間(5回の投与)にわたるi.v.投与の、aPTTおよびFXI活性(FXI:C)に対する効果を示す図である。
図7Aは、研究の2、23、および79日目に測定される、aPTTに対する効果を示す。aPTTは、NOV1401を施される全ての動物において、2.1~3倍に増加され、研究の投与期を通して、高値を維持した。用量依存性は、観察されず、性別に関連する差違も、認められなかった。
図7Bは、研究の2、23、および79日目に測定され、血漿FXI活性に対するパーセントとして描示される、FXI:Cに対する効果を示す。FXI:Cは、NOV1401を施される全ての動物において、5~12%のレベルまで低下し、研究の投与期を通して、これらのレベルを維持した。用量依存性は、観察されず、性別に関連する差違も、認められなかった。
【0123】
詳細な記載
本発明は、部分的に、FXIaに特異的に結合し、その生物学的活性を阻害する抗体分
子の発見に基づく。本発明は、全長IgGフォーマット抗体、ならびにFab断片(例え
ば、抗体NOV1090およびNOV1401)など、その抗原結合性断片の両方に関す
る。
【0124】
したがって、本発明は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、およ
びカニクイザルのFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合する抗体、医薬組成物
、このような抗体および組成物の作製法および使用法を提供する。
【0125】
第XI因子
FXIは、内因系凝固経路および外因系凝固経路の両方において、ならびに血漿による
止血の開始期および増幅期の橋渡しにおいて重要な役割を果たす。第XIIa因子および
トロンビンのいずれも、FXIを活性化させる結果として、持続的なトロンビンの生成お
よび線溶の阻害をもたらしうる。FXIは、「血管損傷後」に、高組織因子環境下にある
、正常な止血で果たす役割は小さいが、血栓症では、鍵となる役割を果たすと考えられる
。重度の第XI因子欠損症は、虚血性脳卒中および静脈の血栓塞栓性事象の発症率の低下
と関連する(Salomon et al 2008; Salomon, et al. (2011) Thromb Haemost.; 105:269-
73)。重度の第XI因子欠損症を伴う対象における出血症状は、低頻度であり、軽度で、
損傷誘導性であることが多く、口腔粘膜、鼻腔粘膜、および尿路など、線溶活性が増大し
た組織に影響することが好ましい(Salomon et al 2011)。致命的な臓器における出血は
、極めてまれであるか、または認められていない。
【0126】
血漿凝固とは、血中の凝固因子が相互作用し、活性化する、逐次的な過程であり、最終
的には、フィブリンの生成および凝血の形成を結果としてもたらす。凝固の古典的カスケ
ードモデルでは、フィブリン生成の過程は、2つの顕著に異なる経路、すなわち、内因系
経路および外因系経路のそれぞれにより開始されうる(Mackman, 2008)。
【0127】
外因系経路では、血管損傷は、血管外組織因子(TF)を、第VII因子(FVII)
と相互作用させ、これを活性化させ、これにより、第X因子およびプロトロンビンの活性
化を逐次的にもたらす。活性トロンビンは最終的に、可溶性フィブリノゲンを、フィブリ
ンへと転換する。外因系経路は、止血に中心的であり、この経路内の凝固因子に対する干
渉は、出血の危険性を結果としてもたらす。
【0128】
内因系経路では、第XII因子は場合によって、接触活性化と称する過程により活性化
しうる。活性化型第XIIa因子の生成は、第XI因子および第IX因子の逐次的な活性
化をもたらす。第IXa因子は、第X因子を活性化させるので、外因系経路と、内因系経
路とは、この段階で合流する(共通経路)。トロンビン活性は、トロンビンが、第XI因
子を、第XII因子に依存せずに活性化させる、フィードフォワードループを介して、そ
れ自体の生成を増幅することによりブーストされる。このフィードフォワードループは、
持続的な血栓成長には寄与するが、凝血の形成には、血管外組織因子による強力な活性化
で十分であるので、止血への関与は、最小限に限られる。したがって、内因系経路は、止
血には実質的に関与しない(Gailani and Renne (2007) Arterioscler Thromb Vasc Biol
. 2007, 27(12):2507-13, Muller, Gailiani, and Renne 2011)。
【0129】
様々な手法を使用して、様々な種にわたるFXIまたはFXIaを阻害する前臨床研究
が、この標的の検証に寄与している。FXI-/-マウスは、実験による静脈血栓症(Wa
ng, et al. (2006) J Thromb Haemost; 4:1982-8)および動脈血栓症(Wang, et al. (20
05) J Thromb Haemost; 3:695-702)に対して抵抗性である。FXIIaによるFXIの
活性化を遮断する抗体(Ab;14E11)によるマウスの処置は、実験による血栓症の
阻害を結果としてもたらし(Cheng, et al. (2010) Blood, 116:3981-9)、虚血性脳卒中
のマウスモデルにおける脳梗塞サイズを低減した(Leung, et al. (2012) Transl Stroke
Res 2012; 3:381-9)。FXIaによるFIXの結合および活性化を遮断する抗FXI
Abを投与されたヒヒでは、コラーゲンでコーティングされた血管グラフト上において、
血小板に富む血栓の増殖の低減が観察され(Tucker, et al. (2009) Blood 2009; 113:93
6-44)、同様の結果は、このモデルにおいて、14E11によっても見出された(Cheng
2010)。これらの研究のうちのいずれにおいても、過剰な出血は認められなかった。
【0130】
マウス(Zhang, et al. (2010) Blood 2010; 116:4684-92)、カニクイザル(Younis,
et al. (2012) Blood 2012; 119:2401-8)、およびヒヒ(Crosby, et al. (2013) Arteri
oscler Thromb Vasc Biol 2013; 33:1670-8)において、アンチセンスオリゴヌクレオチ
ドにより、FXIの合成を遮断することは、過剰な出血を伴わずに、抗血栓効果および抗
凝固効果を結果としてもたらした。さらに、ラット(Schumacher, et al. (2007) Eur J
Pharmacol 2007; 570:167-74)およびウサギ(Wong, et al. (2011) J Thromb Thromboly
sis 2011; 32:129-37)の静脈血栓症モデルおよび動脈血栓症モデルにおいて、低分子量
インヒビターでFXIaを遮断することによっても、同様な効果がもたらされている。
【0131】
重度のFXI欠損症を伴う患者は、自発的に出血することがまれであり、線溶活性が高
度な組織内を除き、軽度の外傷誘導性出血を示すにとどまる。重度のFXI欠損症の希少
性は、これらの患者について、一般集団と比べた血栓プロファイルを明らかにする集団研
究の使用を必然化する。とりわけ、このような研究は、これらの患者では、虚血性脳卒中
(Salomon 2008)および深部静脈血栓症(DVT)(Salomon, et al. (2011) Blood 200
8; 111: 4113-17)の発症率が低減されることを報告している。こうして、重度のFXI
欠損症を伴う115例の患者において観察される虚血性脳卒中の数(N=1)は、イスラ
エルの一般集団において予測される発症数(N=8.6)より少なく(p<0.003)
、重度のFXI欠損症を伴う患者におけるDVTの発症数(N=0)は、対照集団におい
て予測される発症数(N=4.7)より少なかった(p<0.019)。逆に、FXIレ
ベルが第90百分位数を上回る個体は、DVTを発症する危険性が2倍であった(Meijer
s, et al. (2000) N Engl J Med. 2000; 342:696-701)。
【0132】
近年、DVTの素因となる手順である、人工膝関節置換術を受ける患者を、FXIアン
チセンス療法または標準治療(エノキサパリン)で処置した。アンチセンス群(300m
g)は、標準治療と比較した、静脈血栓症の発症率の7分の1の低下と、出血事象の減少
(有意ではない)とを示した(Buller et al, (2014) N Engl J Med. 372(3):232-40. do
i: 10.1056/NEJMoa1405760. Epub 2014 Dec 7)。
【0133】
まとめると、上記研究は、FXIを、抗血栓療法に妥当な標的として、強く支持する。
【0134】
FXIa抗体および抗原結合性断片
本発明は、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合する抗体を提供する。いく
つかの実施形態では、本発明は、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIおよび/も
しくはFXIaにも特異的に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、実施例で記載さ
れる通りに単離されたヒトモノクローナル抗体およびFabを含むがこれらに限定されな
い。
【0135】
本発明は、FXIタンパク質および/もしくはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウ
サギ、およびカニクイザルのFXIおよび/もしくはFXIa)に特異的に結合する抗体
であって、配列番号9および29のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む抗体を提供
する。本発明はまた、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質に特異的に結
合する抗体であって、以下の表1に列挙されるVH CDRのうちのいずれか1つのアミ
ノ酸配列を有するVH CDRを含む抗体も提供する。特に、本発明は、FXIタンパク
質および/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのF
XIおよび/またはFXIa)に特異的に結合する抗体であって、以下の表1に列挙され
るVH CDRのうちのいずれかのアミノ酸配列を有する、1つ、2つ、3つ以上のVH
CDRを含む(または、代替的に、これらからなる)抗体を提供する。
【0136】
本発明は、FXIaタンパク質に特異的に結合する抗体であって、配列番号19または
39のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む抗体を提供する。本発明はまた、FXI
タンパク質および/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、およびカニクイ
ザルのFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合する抗体であって、以下の表1に
列挙されるVL CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含
む抗体も提供する。特に、本発明は、FXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、およ
びカニクイザルのFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合する抗体であって、以
下の表1に列挙されるVL CDRのうちのいずれかのアミノ酸配列を有する、1つ、2
つ、3つ以上のVL CDRを含む(または、代替的に、これらからなる)抗体を提供す
る。
【0137】
本発明の他の抗体は、突然変異させているが、なお、CDR領域内で、表1に記載され
ている配列内で描示されるCDR領域と、少なくとも60、70、80、85、90、ま
たは95パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、本発明
の他の抗体は、CDR領域内で、表1に記載されている配列内で描示されるCDR領域と
比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下のアミノ酸を突然変異させた、突然
変異体のアミノ酸配列を含む。
【0138】
本発明はまた、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、
ウサギ、およびカニクイザルのFXIa)に特異的に結合する抗体のVH、VL、全長重
鎖、および全長軽鎖をコードする核酸配列も提供する。このような核酸配列は、哺乳動物
細胞における発現について最適化することができる(例えば、表1は、本発明の抗体の重
鎖および軽鎖に最適化された核酸配列を示す)。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
本発明の他の抗体は、アミノ酸またはアミノ酸をコードする核酸を突然変異させている
が、表1に記載されている配列となお少なくとも60、65、70、75、80、85、
90、または95パーセントの同一性を有する抗体を含む。いくつかの実施形態は、可変
領域内で、実質的に同じ抗原結合活性を保持しながら、表1に記載されている配列内で描
示された可変領域と比較した場合に、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下のアミノ
酸を突然変異させている、突然変異体のアミノ酸配列を含む。
【0146】
これらの抗体の各々は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合しうるので、VH配列
、VL配列、全長軽鎖配列、および全長重鎖配列(アミノ酸配列と、アミノ酸配列をコー
ドするヌクレオチド配列と)を「混合し、マッチさせて」、本発明の他のFXI結合性抗
体および/もしくはFXIa結合性抗体を創出することができる。このような「混合し、
マッチさせた」FXI結合性抗体および/もしくはFXIa結合性抗体は、当技術分野で
公知の結合アッセイ(例えば、ELISAおよび実施例節で記載される他のアッセイ)を
使用して調べることができる。これらの鎖を混合し、マッチさせる場合、特定のVH/V
L対合に由来するVH配列を、構造的に類似するVH配列で置きかえるものとする。同様
に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合に由来する全長重鎖配列を、構造的に類似する全長重
鎖配列で置きかえるものとする。同様に、特定のVH/VL対合に由来するVL配列を、
構造的に類似するVL配列で置きかえるものとする。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖
対合に由来する全長軽鎖配列を、構造的に類似する全長軽鎖配列で置きかえるものとする
。
【0147】
したがって、一態様では、本発明は、配列番号9および29からなる群から選択される
アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、ならびに配列番号19および39からなる群から
選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを有する単離抗体またはその抗原結合性
領域を提供し、この場合、抗体は、FXIおよび/もしくはFXIa(例えば、ヒト、ウ
サギ、およびカニクイザルのFXIa)に特異的に結合する。
【0148】
より具体的に、ある種の態様では、本発明は、配列番号9および29;または19およ
び39のそれぞれから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ド
メインを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域を提供する。
【0149】
具体的な実施形態では、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本
明細書で提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含む
重鎖可変領域と、配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0150】
具体的な実施形態では、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本
明細書で提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号29のアミノ酸配列を含
む重鎖可変領域と、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0151】
別の態様では、本発明は、(i)哺乳動物細胞における発現について最適化されたアミ
ノ酸配列であって、配列番号11または31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含
む全長重鎖、ならびに哺乳動物細胞における発現について最適化されたアミノ酸配列であ
って、配列番号21または41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む全長軽鎖を
有する単離抗体、または(ii)その抗原結合性部分を含む機能的タンパク質を提供する
。より具体的に、ある種の態様では、本発明は、配列番号11および31;または19お
よび39のそれぞれから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖を有する単離抗体
またはその抗原結合性領域を提供する。
【0152】
具体的な実施形態では、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本
明細書で提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含
む重鎖と、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0153】
具体的な実施形態では、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本
明細書で提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列を含
む重鎖可変領域と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0154】
本明細書で使用される「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、抗原特異性
および抗原結合アフィニティーを付与する、抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一
般に、各重鎖可変領域(HCDR1、HCDR2、HCDR3)内には、3つのCDRが
あり、各軽鎖可変領域(LCDR1、LCDR2、LCDR3)内には、3つのCDRが
ある。
【0155】
所与のCDRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al. (1991), “Sequences of
Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National In
stitutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」番号付けスキーム)、Al-Lazikani
et al., (1997) JMB 273, 927-948(「Chothia」番号付けスキーム)、Lefranc e
t al., (2003) Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77(「IMGT」番号付けスキーム)によ
り記載されているスキーム、または「組合せ」システムを含む、周知の多数のスキームの
うちのいずれかを使用して、たやすく決定することができる。
【0156】
例えば、Kabatによれば、重鎖可変ドメイン(VH)内の抗体であるNOV109
0のCDRアミノ酸残基は、31~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、お
よび99~111(HCDR3)と番号付けされており、軽鎖可変ドメイン(VL)内の
CDRアミノ酸残基は、22~35(LCDR1)、51~57(LCDR2)、および
90~100(LCDR3)と番号付けされている。Chothiaによれば、VH内の
CDRアミノ酸は、26~32(HCDR1)、52~57(HCDR2)、および99
~111(HCDR3)と番号付けされており、VL内のアミノ酸残基は、25~33(
LCDR1)、51~53(LCDR2)、および92~99(LCDR3)と番号付け
されている。KabatおよびChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることに
より、CDRは、ヒトVH内のアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~66(H
CDR2)、および99~111(HCDR3)、ならびにヒトVL内のアミノ酸残基2
2~35(LCDR1)、51~57(LCDR2)、および90~100(LCDR3
)からなる。KabatおよびChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることに
より、「組合せ」CDRは、ヒトVH内のアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50
~66(HCDR2)、および99~108(HCDR3)、ならびにヒトVL内のアミ
ノ酸残基24~38(LCDR1)、54~60(LCDR2)、および93~101(
LCDR3)からなる。別の例として、IMGTによれば、重鎖可変ドメイン(VH)内
のCDRアミノ酸残基は、26~33(HCDR1)、51~58(HCDR2)、およ
び97~108(HCDR3)と番号付けされており、軽鎖可変ドメイン(VL)内のC
DRアミノ酸残基は、27~36(LCDR1)、54~56(LCDR2)、および9
3~101(LCDR3)と番号付けされている。表1は、抗FXI/FXIa抗体、例
えば、NOV1090およびNOV1401について、Kabat、Chothia、組
合せ、およびIMGTによる、例示的なHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR
1、LCDR2、およびLCDR3を提示する。別の態様では、本発明は、表1に記載さ
れている、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3、またはそれらの組合
せを含むFXIa結合性抗体を提供する。抗体のVH CDR1のアミノ酸配列を、配列
番号3および23に示す。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4および2
4に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5および25に示
されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号13および33に示され
ている。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号14および34に示されてい
る。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号15および35に示されている。
これらのCDR領域は、Kabatシステムを使用して表される。
【0157】
代替的に、Chothiaシステム(Al-Lazikaniら、(1997)、JMB 273 927~948)
を使用して規定される通り、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号6および
26に示されている。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号7および27に
示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号8および28に示され
ている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号16および36に示されてい
る。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号17および37に示されている。
抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号18および38に示されている。
【0158】
代替的に、組合せシステムを使用して規定される通り、抗体のVH CDR1のアミノ
酸配列は、配列番号46に示されている。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列
番号4に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5に示されて
いる。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号33に示されている。抗体のV
L CDR2のアミノ酸配列は、配列番号14に示されている。抗体のVL CDR3の
アミノ酸配列は、配列番号15に示されている。
【0159】
代替的に、IMGT番号付けスキームを使用して規定される通り、抗体のVH CDR
1のアミノ酸配列は、配列番号43に示されている。抗体のVH CDR2のアミノ酸配
列は、配列番号44に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号
45に示されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号47に示されて
いる。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号37に示されている。抗体のV
L CDR3のアミノ酸配列は、配列番号15に示されている。
【0160】
これらの抗体の各々は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合することが可能であり
、抗原結合特異性は主に、CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域によりもた
らされることを踏まえれば、各抗体は、本発明の他のFXI結合性分子および/もしくは
FXIa結合性分子を創出するのに、VH CDR1、VH CDR2、およびVH C
DR3、ならびにVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含有するこ
とが好ましいが、VH CDR1配列、VH CDR2配列、およびVH CDR3配列
、ならびにVL CDR1配列、VL CDR2配列、およびVL CDR3配列を、「
混合し、マッチさせる」ことができる(すなわち、異なる抗体に由来するCDRを、混合
し、マッチさせることができる)。このような「混合し、マッチさせた」FXI結合性分
子および/もしくはFXIa結合性抗体は、当技術分野で公知の結合アッセイおよび実施
例で記載される結合アッセイ(例えば、ELISA、SET、BIACORE(商標)ア
ッセイ)を使用して調べることができる。VH CDR配列を混合し、マッチさせる場合
は、特定のVH配列に由来するCDR1配列、CDR2配列、および/またはCDR3配
列を、構造的に類似するCDR配列で置きかえるものとする。同様に、VL CDR配列
を混合し、マッチさせる場合は、特定のVL配列に由来するCDR1配列、CDR2配列
、および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列で置きかえるものとする
。当業者には、新規のVH配列およびVL配列を、1つまたは複数のVH CDR領域配
列および/またはVL CDR領域配列を、本発明のモノクローナル抗体のための、本明
細書で示されるCDR配列に由来する、構造的に類似する配列で置換することにより創出
しうることがたやすく明らかであろう。前出に加えて、一実施形態では、本明細書で記載
される抗体の抗原結合性断片は、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR
3、またはVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むことが可能で
あり、この場合、断片は、FXIおよび/もしくはFXIaに、単一の可変ドメインとし
て結合する。
【0161】
本発明のある種の実施形態では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、表1に記載さ
れているFabの重鎖および軽鎖配列を有しうる。より具体的には、抗体またはその抗原
結合性断片は、NOV1090およびNOV1401の重鎖および軽鎖配列を有しうる。
【0162】
本発明の他の実施形態では、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合する抗体
または抗原結合性断片は、Kabatにより規定され、表1に記載されている、重鎖可変
領域のCDR1、重鎖可変領域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のC
DR1、軽鎖可変領域のCDR2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。本発明のさら
に他の実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原
結合性断片は、Chothiaにより規定され、表1において記載されている重鎖可変領
域のCDR1、重鎖可変領域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のCD
R1、軽鎖可変領域のCDR2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。他の実施形態で
は、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、組
合せシステムにより規定され、表1において記載されている重鎖可変領域のCDR1、重
鎖可変領域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のCDR1、軽鎖可変領
域のCDR2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。本発明のさらに他の実施形態では
、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、IM
GTにより規定され、表1において記載されている重鎖可変領域のCDR1、重鎖可変領
域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のCDR1、軽鎖可変領域のCD
R2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。
【0163】
具体的な実施形態では、本発明は、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する
抗体であって、配列番号3の重鎖可変領域のCDR1;配列番号4の重鎖可変領域のCD
R2;配列番号5の重鎖可変領域のCDR3;配列番号13の軽鎖可変領域のCDR1;
配列番号14の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域のCDR3
を含む抗体を含む。
【0164】
具体的な実施形態では、本発明は、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合す
る抗体であって、配列番号23の重鎖可変領域のCDR1、配列番号24の重鎖可変領域
のCDR2、配列番号25の重鎖可変領域のCDR3、配列番号33の軽鎖可変領域のC
DR1、配列番号34の軽鎖可変領域のCDR2、および配列番号35の軽鎖可変領域の
CDR3を含む抗体を含む。
【0165】
具体的な実施形態では、本発明は、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合す
る抗体であって、配列番号6の重鎖可変領域のCDR1、配列番号7の重鎖可変領域のC
DR2、配列番号8の重鎖可変領域のCDR3、配列番号16の軽鎖可変領域のCDR1
、配列番号17の軽鎖可変領域のCDR2、および配列番号18の軽鎖可変領域のCDR
3を含む抗体を含む。
【0166】
具体的な実施形態では、本発明は、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合す
る抗体であって、配列番号26の重鎖可変領域のCDR1、配列番号27の重鎖可変領域
のCDR2、配列番号28の重鎖可変領域のCDR3、配列番号36の軽鎖可変領域のC
DR1、配列番号37の軽鎖可変領域のCDR2、および配列番号38の軽鎖可変領域の
CDR3を含む抗体を含む。
【0167】
本明細書の具体的な実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する
抗体であって、配列番号43の重鎖可変領域のCDR1;配列番号44の重鎖可変領域の
CDR2;配列番号45の重鎖可変領域のCDR3;配列番号47の軽鎖可変領域のCD
R1;配列番号37の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域のC
DR3を含む抗体が提示される。
【0168】
本明細書の具体的な実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する
抗体であって、配列番号46の重鎖可変領域のCDR1;配列番号4の重鎖可変領域のC
DR2;配列番号5の重鎖可変領域のCDR3;配列番号33の軽鎖可変領域のCDR1
;配列番号14の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域のCDR
3を含む抗体が提示される。
【0169】
ある種の実施形態では、本発明は、表1に記載されている、FXIおよび/またはFX
Iaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片を含む。好ましい実施形態では、FX
Iおよび/またはFXIaに結合する抗体または抗原結合性断片は、NOV1090およ
びNOV1401である。
【0170】
抗体の可変領域または全長鎖が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子を使用する
系から得られる場合、本明細書で使用されるヒト抗体は、特定の生殖細胞系列配列「の産
物」であるかまたはこれ「に由来する」、重鎖もしくは軽鎖可変領域または全長重鎖もし
くは軽鎖を含む。このような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニ
ックマウスを、対象の抗原で免疫化するか、または対象の抗原を伴うファージ上で提示さ
れるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることを含む。ヒト生殖
細胞系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるかまたはこれ「に由来する」ヒト抗体は
、ヒト抗体のアミノ酸配列を、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し
、配列がヒト抗体の配列と最も近似する(すなわち、同一性%が最大である)ヒト生殖細
胞系列の免疫グロブリン配列を選択することにより、それ自体として同定することができ
る。
【0171】
特定のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるかまたはこれ「に由来
する」ヒト抗体は、例えば、自然発生の体細胞突然変異または部位特異的突然変異の意図
的な導入に起因して、生殖細胞系列配列と比較したアミノ酸の差異を含有しうる。しかし
、VHフレームワーク領域またはVLフレームワーク領域では、選択されたヒト抗体は、
アミノ酸配列が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸
配列と少なくとも90%の同一であり、ヒト抗体を、他の種の生殖細胞系列免疫グロブリ
ンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較した場合に、ヒトとして同定
するアミノ酸残基を含有することが典型的である。ある種の場合には、ヒト抗体は、アミ
ノ酸配列が、生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、
少なくとも60%、70%、80%、90%、または少なくとも95%、なおまたは、少
なくとも96%、97%、98%、または99%同一でありうる。
【0172】
組換えヒト抗体は、VHフレームワーク領域内またはVLフレームワーク領域内のヒト
生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との、10アミノ
酸以下の差異を提示することが典型的である。ある種の場合には、ヒト抗体は、生殖細胞
系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との、5アミノ酸以下、な
おまたは、4、3、2、または1アミノ酸以下の差異を提示しうる。ヒト生殖細胞系列の
免疫グロブリン遺伝子の例は、下記で記載される生殖細胞系列の可変ドメイン断片のほか
、DP47およびDPK9も含むがこれらに限定されない。
【0173】
相同抗体
さらに別の実施形態では、本発明は、表1に記載されている配列(例えば、配列番号2
9、31、39、または41)と相同なアミノ酸配列を含む、抗体またはその抗原結合性
断片を提供するが、抗体は、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質(例え
ば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およびカニクイザルFXIa)に結合し、NOV1
090およびNOV1401など、表1に記載されている抗体の、所望の機能的特性を保
持する。具体的な態様では、このような相同抗体は、表1に記載されているCDRアミノ
酸配列(例えば、Kabat CDR、Chothia CDR、IMGT CDR、ま
たは組合せCDR)を保持する。
【0174】
例えば、本発明は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む単離抗体またはそ
の機能的な抗原結合性断片を提供し、この場合、重鎖可変ドメインは、配列番号9および
29からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、
または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖可変ドメインは、配列番号19
および39からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも9
0%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、FXIおよび/また
はFXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およびカニクイザルFXIa)に
特異的に結合する。一実施形態では、単離抗体またはその機能的な抗原結合性断片は、重
鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、この場合、重鎖可変ドメインは、配列番
号9のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%
同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖可変ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列と、少な
くとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;
抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およ
びカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。一実施形態では、単離抗体またはその機
能的な抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、この場合、
重鎖可変ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも9
0%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖可変ドメインは、配列番
号39のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95
%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒトF
XIa、ウサギFXIa、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。本発明の
ある種の態様では、重鎖および軽鎖配列は、Kabatにより規定される、HCDR1配
列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCD
R3配列、例えば、それぞれ、配列番号3、4、5、13、14、および15をさらに含
む。本発明のある種の他の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、Chothiaにより
規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LC
DR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号6、7、8、16、1
7、および18をさらに含む。ある種の他の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、組合
せシステムにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LC
DR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号46
、4、5、33、14、および15をさらに含む。ある種の他の態様では、重鎖配列およ
び軽鎖配列は、IMGTにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR
3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、
配列番号43、44、45、47、37、および15をさらに含む。
【0175】
他の実施形態では、VHアミノ酸配列および/またはVLアミノ酸配列は、表1に示さ
れる配列と、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98
%、または99%同一でありうる。他の実施形態では、VHアミノ酸配列および/または
VLアミノ酸配列は、1、2、3、4、または5カ所以下のアミノ酸位置におけるアミノ
酸置換を除き同一でありうる。表1に記載されている抗体のVH領域およびVL領域と大
きな(すなわち、80%以上の)同一性を有するVH領域およびVL領域を有する抗体は
、配列番号10または30、および配列番号20および40のそれぞれをコードする核酸
分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発)
の後、本明細書で記載される機能アッセイを使用して、コードされる改変抗体を、機能の
保持について調べることにより得ることができる。
【0176】
他の実施形態では、全長重鎖アミノ酸配列および/または全長軽鎖アミノ酸配列は、表
1に示される配列と(例えば、配列番号11および/もしくは21、または31および/
もしくは41)、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、
98%、または99%同一でありうる。配列番号11または31のうちのいずれかの全長
重鎖、および配列番号21または41のうちのいずれかの全長軽鎖と大きな(すなわち、
80%以上の)同一性を有する全長重鎖および全長軽鎖を有する抗体は、このようなポリ
ペプチドをコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発または
PCR媒介突然変異誘発)の後、本明細書で記載される機能アッセイを使用して、コード
される改変抗体を、機能の保持について調べることにより得ることができる。
【0177】
本明細書の一態様では、重鎖および軽鎖を含む単離抗体またはその機能的な抗原結合性
断片を提示し、この場合、重鎖は、配列番号11および31からなる群から選択されるア
ミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なア
ミノ酸配列を含み;軽鎖は、配列番号21および41からなる群から選択されるアミノ酸
配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸
配列を含み;抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギF
XIa、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。一実施形態では、単離抗体
またはその機能的な抗原結合性断片は、重鎖および軽鎖を含み、この場合、重鎖は、配列
番号11のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも9
5%同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖は、配列番号21のアミノ酸配列と、少なくとも8
0%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、
FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およびカニク
イザルFXIa)に特異的に結合する。一実施形態では、単離抗体またはその機能的な抗
原結合性断片は、重鎖および軽鎖を含み、この場合、重鎖は、配列番号31のアミノ酸配
列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配
列を含み;軽鎖は、配列番号41のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90
%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、FXIおよび/または
FXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およびカニクイザルFXIa)に特
異的に結合する。本発明のある種の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、Kabatに
より規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、
LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号3、4、5、13
、14、および15をさらに含む。本発明のある種の他の態様では、重鎖配列および軽鎖
配列は、Chothiaにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR
3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、
配列番号6、7、8、16、17、および18をさらに含む。ある種の他の態様では、重
鎖配列および軽鎖配列は、組合せシステムにより規定される、HCDR1配列、HCDR
2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例
えば、それぞれ、配列番号46、4、5、33、14、および15をさらに含む。ある種
の他の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、IMGTにより規定される、HCDR1配
列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCD
R3配列、例えば、それぞれ、配列番号43、44、45、47、37、および15をさ
らに含む。
【0178】
他の実施形態では、全長重鎖および/または全長軽鎖のヌクレオチド配列は、表1に示
される配列(例えば、配列番号12および/もしくは22、または32および/もしくは
42)と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99
%同一でありうる。
【0179】
他の実施形態では、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域のヌクレオチド配列は、
表1に示される配列(例えば、配列番号10および/もしくは20、または30および/
もしくは40)と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%ま
たは99%同一でありうる。
【0180】
本明細書で使用される、2つの配列の間の同一性パーセントとは、2つの配列の最適な
アライメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮
する配列により共有される、同一な位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一な位置の
数/位置の総数×100)である。2つの配列の間の配列の比較および同一性パーセント
の決定は、下記の非限定的な例で記載されている、数学的アルゴリズムを使用して達成す
ることができる。
【0181】
加えて、または代替的に、本発明のタンパク質配列は、公表されたデータベースに照ら
して検索を実施する、例えば、関連の配列を同定するための「クエリー配列」としてさら
に使用することもできる。例えば、このような検索は、Altschulら、1990 J. Mol. Biol.
215:403~10によるBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施すること
ができる。
【0182】
保存的修飾を伴う抗体
ある種の実施形態では、本発明の抗体は、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR
3配列を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列
を含む軽鎖可変領域を有し、この場合、これらのCDR配列のうちの1つまたは複数は、
本明細書で記載される抗体またはそれらの保存的修飾に基づき指定されたアミノ酸配列を
有し、抗体は、本発明のFXIa結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。
【0183】
したがって、本発明は、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖
可変領域、ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領
域からなる単離抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域のCDR1アミノ
酸配列が、配列番号3および23、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され
、重鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、配列番号4および24、ならびにそれらの保
存的修飾からなる群から選択され、重鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号5
および25、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、軽鎖可変領域のCD
R1アミノ酸配列が、配列番号13および33、ならびにそれらの保存的修飾からなる群
から選択され、軽鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、配列番号14および34、なら
びにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、軽鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列
が、配列番号15および35、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、L
OX-1に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0184】
本明細書の一態様では、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖
可変領域、ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領
域からなる単離抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域のCDR1アミノ
酸配列が、表1に記載されているアミノ酸配列およびその保存的修飾からなる群から選択
され;重鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、表1に記載されているアミノ酸配列およ
びその保存的修飾からなる群から選択され;重鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、表
1に記載されているアミノ酸配列およびその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可
変領域のCDR1アミノ酸配列が、表1に記載されているアミノ酸配列およびその保存的
修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、表1に記載され
ているアミノ酸配列およびその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCD
R3アミノ酸配列が、表1に記載されているアミノ酸配列およびその保存的修飾からなる
群から選択され;抗体またはその抗原結合性断片が、FXIaに特異的に結合する。
【0185】
他の実施形態では、本発明の抗体は、哺乳動物細胞における発現について最適化されて
おり、全長重鎖配列および全長軽鎖配列を有し、これらの配列のうちの1つまたは複数は
、本明細書で記載される抗体またはそれらの保存的修飾に基づき指定されたアミノ酸配列
を有し、抗体は、本発明のFXIa結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。したがっ
て、本発明は、全長重鎖および全長軽鎖からなる、哺乳動物細胞における発現について最
適化された単離抗体であって、全長重鎖が、配列番号11または31、ならびにそれらの
保存的修飾の群から選択されるアミノ酸配列を有し、全長軽鎖が、配列番号21または4
1、ならびにそれらの保存的修飾の群から選択されるアミノ酸配列を有し、FXIおよび
/もしくはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIa)に特異的
に結合する抗体を提供する。
【0186】
同じエピトープに結合する抗体
本発明は、表1に記載されているFXI結合性抗体および/もしくはFXIa結合性抗
体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。したがって、FXIおよび/またはFX
Ia結合アッセイ(実施例節で記載されるFXIおよび/またはFXIa結合アッセイな
ど)において、本発明の他の抗体と競合する(例えば、本発明の他の抗体の結合を、同じ
エピトープまたは重複するエピトープへの結合により、統計学的に有意な形で競合的に阻
害する)それらの能力に基づき、さらなる抗体を同定することができる。本発明の抗体の
、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質への結合を阻害する被験抗体の能
力により、被験抗体が、その抗体と、FXIおよび/またはFXIaへの結合について競
合することが可能であり、このような抗体は、非限定的な理論によれば、FXIタンパク
質および/またはFXIaタンパク質上の、それが競合する抗体と同じであるかまたは関
連の(例えば、構造的に類似するか、または空間的に近接した)エピトープに結合しうる
ことが裏付けられる。ある種の実施形態では、本発明の抗体と同じFXIおよび/または
FXIa上のエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このような
ヒトモノクローナル抗体は、本明細書で記載される通りに、調製および単離することがで
きる。
【0187】
本明細書で使用される通り、等モル濃度の競合抗体の存在下で、競合抗体が、本発明の
抗体または抗原結合性断片(例えば、NOV1401またはNOV1090)と同じFX
Iエピトープおよび/またはFXIaエピトープに結合し、本発明の抗体または抗原結合
性断片の、FXIおよび/またはFXIaへの結合を、50%を超えて(例えば、80%
、85%、90%、95%、98%、または99%)阻害する場合、抗体は、結合につい
て「競合する」。これは、例えば、当業者に周知の方法のうちのいずれかにより、競合結
合アッセイにおいて決定することができる。
【0188】
本明細書で使用される抗体またはその抗原結合性断片は、前記競合抗体またはその抗原
結合性断片が、本発明の抗体または抗原結合性断片と同じFXIエピトープおよび/もし
くはFXIaエピトープ、またはこれと重複するFXIエピトープおよび/もしくはFX
Iaエピトープに結合しない限りにおいて、本発明のFXI抗体および/もしくはFXI
a抗体または抗原結合性断片(例えば、NOV1401またはNOV1090)と「競合
」しない。本明細書で使用される競合抗体またはその抗原結合性断片は、(i)本発明の
抗体または抗原結合性断片が、その標的に結合することを、立体的に遮断し(例えば、前
記競合抗体が、重複しないFXIエピトープおよび/またはFXIaエピトープの近傍に
結合し、本発明の抗体または抗原結合性断片が、その標的に結合することを物理的に防止
する場合);かつ/あるいは(ii)異なる、重複しないFXIエピトープおよび/また
はFXIaエピトープに結合し、前記タンパク質に、本発明のFXI抗体および/もしく
はFXIa抗体または抗原結合性断片が、前記コンフォメーション変化の非存在下で生じ
る形では結合しないように、コンフォメーション変化を、FXIタンパク質および/また
はFXIaタンパク質に誘導する、競合抗体またはその抗原結合性断片を含まない。
【0189】
操作抗体および修飾抗体
出発抗体から特性を改変した修飾抗体を操作する出発材料として、本明細書で示される
VH配列および/またはVL配列のうちの1つまたは複数を有する抗体を使用して、本発
明の抗体をさらに調製することができる。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち
、VHおよび/またはVL)内、例えば、1つもしくは複数のCDR領域内、および/ま
たは1つもしくは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を修飾することに
より操作することができる。加えて、または代替的に、抗体は、定常領域内の残基を修飾
して、例えば、抗体のエフェクター機能を改変することによっても操作することができる
。
【0190】
実施しうる可変領域操作のうちの1つの種類は、CDRグラフティングである。抗体は
、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)内に位置するアミノ酸残基を介し
て、標的抗原と相互作用する。この理由で、CDR内のアミノ酸配列は、個別の抗体の間
の多様性が、CDRの外部の配列より大きい。CDR配列は、大半の抗体-抗原間相互作
用の一因となるため、異なる特性を伴う異なる抗体に由来するフレームワーク配列へとグ
ラフトされた特異的自然発生抗体に由来するCDR配列を含む発現ベクターを構築するこ
とにより、特異的自然発生抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能であ
る(例えば、Riechmann, L.ら、1998 Nature 332:323~327; Jones, P.ら、1986 Nature
321:522~525; Queen, C.ら、1989 Proc. Natl. Acad. U.S.A. 86:10029~10033;Win
terによる米国特許第5,225,539号明細書、ならびにQueenらによる米国
特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693
,762号明細書;および同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0191】
したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号3および23からなる群から選択され
るアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号4および24からなる群から選択される
アミノ酸配列を有するCDR2配列、配列番号5および25からなる群から選択されるア
ミノ酸配列を有するCDR3配列のそれぞれを含む重鎖可変領域と、配列番号13および
33からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号14および
34からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列、ならびに配列番号1
5および35からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるCDR3配列のそれぞれを
有する軽鎖可変領域とを含む単離抗体またはその抗原結合性断片に関する。したがって、
このような抗体は、モノクローナル抗体のVH CDR配列およびVL CDR配列を含
有するが、これらの抗体に由来する異なるフレームワーク配列を含有しうる。
【0192】
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列の抗体遺伝子配列を含む公表されたD
NAデータベースまたは公表された参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖お
よび軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、ヒト生殖細胞系列の配列データベ
ースである「VBase」(インターネットのmrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能であ
る)のほか、それらの各々の内容が、参照により本明細書に明示的に組み込まれる、Kaba
t, E. A.ら、1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、U.S. Depa
rtment of Health and Human Services、NIH Publication第91-3242号; Tomlinson, I. M
.ら、1992 J. Mol. Biol. 227:776~798;およびCox, J. P. L.ら、1994 Eur. J Immunol
. 24:827~836においても見出すことができる。
【0193】
本発明の抗体における使用のためのフレームワーク配列の例は、本発明の選択された抗
体により使用されるフレームワーク配列、例えば、本発明のモノクローナル抗体により使
用されるコンセンサス配列および/またはフレームワーク配列と構造的に類似するフレー
ムワーク配列である。VH CDR1配列、VH CDR2配列、およびVH CDR3
配列、ならびにVL CDR1配列、VL CDR2配列、およびVL CDR3配列は
、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子内で見出される配
列と同一の配列を有するフレームワーク領域へとグラフトすることもでき、CDR配列は
、生殖細胞系列配列と比較して、1つまたは複数の突然変異を含有するフレームワーク領
域へとグラフトすることもできる。例えば、ある種の場合には、フレームワーク領域内の
残基を突然変異させて、抗体の抗原結合能力を維持または増強することが有益であると見
出されている(例えば、Queenらによる米国特許第5,530,101号明細書;同
第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書;および同第6,18
0,370号明細書を参照されたい)。本明細書で記載される抗体および抗原結合性断片
をその上に構築する足場として活用されうるフレームワークは、VH1A、VH1B、V
H3、Vk1、Vl2、およびVk2を含むがこれらに限定されない。当技術分野では、
さらなるフレームワークが知られており、例えば、インターネットのvbase.mrc-cpe.cam.
ac.uk/index.php?&MMN_position=1:1上のvBaseデータベースにおいて見出すことが
できる。
【0194】
したがって、本発明の実施形態は、配列番号9および29からなる群から選択されるア
ミノ酸配列、またはこのような配列のフレームワーク領域内に1、2、3、4、もしくは
5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を含
む重鎖可変領域を含み、配列番号19または39からなる群から選択されるアミノ酸配列
、またはこのような配列のフレームワーク領域内に1、2、3、4、もしくは5カ所のア
ミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可
変領域をさらに含む、単離FXIa結合性抗体またはそれらの抗原結合性断片に関する。
【0195】
可変領域修飾の別の種類は、「アフィニティー成熟」として公知の、VH CDR1領
域内、VH CDR2領域内、および/もしくはVH CDR3領域内、ならびに/また
はVL CDR1領域内、VL CDR2領域内、および/もしくはVL CDR3領域
内のアミノ酸残基を突然変異させて、これにより、対象の抗体の1つまたは複数の結合特
性(例えば、アフィニティー)を改善することである。部位特異的突然変異誘発またはP
CR媒介突然変異誘発を実施して、突然変異を導入することができ、本明細書で記載され
、実施例節でも提示される、in vitroアッセイまたはin vivoアッセイに
おいて、抗体結合性または他の対象の機能的特性に対する効果を査定することができる。
保存的修飾(上記で論じた)を導入することができる。突然変異は、アミノ酸の置換の場
合もあり、付加の場合もあり、欠失の場合もある。さらに、CDR領域内の、典型的には
1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下の残基も改変する。
【0196】
したがって、別の実施形態では、本発明は、配列番号3および23からなる群から選択
されるアミノ酸配列、または配列番号3および23と比較して、1、2、3、4、もしく
は5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を
有するVH CDR1領域、配列番号4および24からなる群から選択されるアミノ酸配
列、または配列番号4および24と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ
酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CD
R2領域、配列番号5および25からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番
号5および25と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸
欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域、配列番
号13および33からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号13および3
3と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしく
はアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域、配列番号14および
34からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号14および34と比較して
、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付
加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域、ならびに配列番号15および35
からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号15および35と比較して、1
、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を
有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域を有する重鎖可変領域からなる単離FX
Ia結合性抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。
【0197】
したがって、別の実施形態では、本発明は、配列番号6および26からなる群から選択
されるアミノ酸配列、または配列番号6および26と比較して、1、2、3、4、もしく
は5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を
有するVH CDR1領域、配列番号7および27からなる群から選択されるアミノ酸配
列、または配列番号7および27と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ
酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CD
R2領域、ならびに配列番号8および28からなる群から選択されるアミノ酸配列、また
は配列番号8および28と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、
アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域
を有する重鎖可変領域と、配列番号16および36からなる群から選択されるアミノ酸配
列、または配列番号16および36と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミ
ノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL C
DR1領域、配列番号17および37からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配
列番号17および37と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、ア
ミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域、
ならびに配列番号18および38からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番
号18および38と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ
酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域を有す
る軽鎖可変領域とからなる単離FXIa結合性抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供
する。
【0198】
抗原結合性ドメインの、代替的なフレームワークまたは足場へのグラフティング
結果として得られるポリペプチドが、FXIaに特異的に結合する少なくとも1つの結
合性領域を含む限りにおいて、多種多様な抗体/免疫グロブリンのフレームワークまたは
足場を援用することができる。このようなフレームワークまたは足場は、ヒト免疫グロブ
リンまたはそれらの断片の5つの主要なイディオタイプを含み、好ましくはヒト化側面を
有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。この点で、ラクダ科動物において同定される
単一重鎖抗体などの単一重鎖抗体は、特に対象である。当業者により、新規のフレームワ
ーク、足場、および断片が、発見および開発され続けている。
【0199】
一態様では、本発明は、本発明のCDRをグラフトしうる非免疫グロブリン足場を使用
して、非免疫グロブリンベースの抗体を作り出すことに関する。それらが、標的のFXI
タンパク質および/またはFXIaタンパク質に特異的な結合性領域を含む限りにおいて
、公知または将来の非免疫グロブリンフレームワークおよび非免疫グロブリン足場を援用
することができる。公知の非免疫グロブリンフレームワークおよび非免疫グロブリン足場
は、フィブロネクチン(Compound Therapeutics,Inc.、Wa
ltham、MA)、アンキリン(Molecular Partners AG、Zu
rich、Switzerland)、ドメイン抗体(Domantis,Ltd.、C
ambridge、MA;およびAblynx nv、Zwijnaarde、Belg
ium)、リポカリン(Pieris Proteolab AG、Freising、
Germany)、低分子モジュラー免疫医薬(Trubion Pharmaceut
icals Inc.、Seattle、WA)、マキシボディ(Avidia,Inc
.、Mountain View、CA)、プロテインA(Affibody AG、S
weden)、およびアフィリン(ガンマ-クリスタリンまたはユビキチン)(Scil
Proteins GmbH、Halle、Germany)を含むがこれらに限定さ
れない。
【0200】
フィブロネクチン足場は、III型フィブロネクチンドメイン(例えば、III型フィ
ブロネクチンの第10モジュール(10 Fn3ドメイン))に基づく。III型フィブ
ロネクチンドメインは、それら自体が互いに対してパックされてタンパク質のコアを形成
し、ベータ鎖を互いへと接続し、溶媒へと露出されるループもさらに含有する(CDRと
類似する)、2つのベータシートの間に分配された、7つまたは8つのベータ鎖を有する
。ベータシートサンドイッチの各エッジには、少なくとも3つのこのようなループがあり
、エッジは、ベータ鎖の方向に対して垂直なタンパク質の境界である(US6,818,
418を参照されたい)。全体的なフォールドは、ラクダおよびラマIgG内の抗原認識
単位全体を含む最小の機能的抗体断片である重鎖可変領域のフォールドと密接に関連する
が、これらのフィブロネクチンベースの足場は、免疫グロブリンではない。この構造のた
めに、非免疫グロブリン抗体は、性質およびアフィニティーが抗体の性質およびアフィニ
ティーと類似する抗原結合特性を模倣する。これらの足場は、in vivoにおける抗
体のアフィニティー成熟の工程と類似する、in vitroにおけるループのランダム
化戦略およびシャフリング戦略において使用することができる。これらのフィブロネクチ
ンベースの分子は、標準的なクローニング法を使用して、分子のループ領域を本発明のC
DRで置きかえうる、足場として使用することができる。
【0201】
アンキリン技術は、アンキリンに由来するリピートモジュールを伴うタンパク質を、異
なる標的への結合に使用しうる可変領域を保有する足場として使用することに基づく。ア
ンキリンリピートモジュールとは、2つのアンチパラレルのα-ヘリックスおよびβ-タ
ーンからなる、33アミノ酸のポリペプチドである。可変領域の結合は、リボソームディ
スプレイを使用することにより大部分が最適化される。
【0202】
アビマーは、LRP-1など、天然のAドメイン含有タンパク質に由来する。これらの
ドメインは、本来、タンパク質間相互作用に使用され、ヒトでは、250を超えるタンパ
ク質が、構造的にAドメインに基づく。アビマーは、アミノ酸リンカーを介して連結され
た多数の(2つ~10の)異なる「Aドメイン」単量体からなる。標的抗原に結合しうる
アビマーは、例えば、米国特許出願公開第20040175756号明細書;同第200
50053973号明細書;同第20050048512号明細書;および同第2006
0008844号明細書において記載されている方法を使用して創出することができる。
【0203】
アフィニティーリガンドであるアフィボディとは、プロテインAのIgG結合性ドメイ
ンのうちの1つの足場に基づく3ヘリックスバンドルからなる、低分子の単純なタンパク
質である。プロテインAとは、細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に
由来する表面タンパク質である。この足場ドメインは、それらのうちの13が、多数のリ
ガンド変異体を伴うアフィボディライブラリーを作り出す、ランダム化されている58ア
ミノ酸からなる(例えば、US5,831,012を参照されたい)。アフィボディ分子
は、抗体を模倣し、150kDaである抗体の分子量と比較して、分子量が6kDaであ
る。その小サイズにもかかわらず、アフィボディ分子の結合部位は、抗体の結合部位と同
様である。
【0204】
アンチカリンとは、Pieris ProteoLab AG社により開発された生成
物である。アンチカリンは、通例、化学的に感受性の化合物または不溶性の化合物の生理
学的輸送または貯蔵に関与する、広範にわたる低分子の頑健なタンパク質群であるリポカ
リンに由来する。いくつかの天然リポカリンは、ヒト組織内またはヒト体液中で生じる。
タンパク質のアーキテクチャーは、リジッドフレームワークの上部の超可変ループを伴う
免疫グロブリンを連想させる。しかし、抗体またはそれらの組換え断片とは対照的に、リ
ポカリンは、単一の免疫グロブリンドメインよりかろうじて大きい、160~180アミ
ノ酸残基を伴う単一のポリペプチド鎖からなる。結合性ポケットを構成する4つのループ
のセットは、顕著な構造可塑性を示し、様々な側鎖を許容する。したがって、異なる形状
の規定の標的分子を、高度なアフィニティーおよび特異性で認識するために、結合性部位
を独自の工程で再形成することができる。4つのループのセットを突然変異誘発すること
によりアンチカリンを開発するのには、リポカリンファミリーの1つのタンパク質である
、オオモンシロチョウ(Pieris Brassicae)のビリン結合性タンパク質(BBP)が使用
されている。アンチカリンについて記載する特許出願の1つの例は、PCT公開国際公開
第199916873号パンフレットにある。
【0205】
アフィリン分子とは、タンパク質および低分子に対する特異的なアフィニティーのため
にデザインされた低分子非免疫グロブリンタンパク質である。新たなアフィリン分子は、
それらの各々が、異なるヒト由来の足場タンパク質に基づく2つのライブラリーから非常
に迅速に選択することができる。アフィリン分子は、免疫グロブリンタンパク質に対する
いかなる構造相同性も示さない。現在、2つのアフィリン足場が援用されており、それら
のうちの一方は、ヒト水晶体の構造タンパク質であるガンマクリスタリンであり、他方は
、「ユビキチン」スーパーファミリータンパク質である。いずれのヒト足場も非常に小型
で、高度な熱安定性を示し、pH変化および変性剤に対してほぼ耐性である。この高度な
安定性は主に、タンパク質のベータシート構造の展開に起因する。ガンマクリスタリンに
由来するタンパク質の例は、WO200104144において記載されており、「ユビキ
チン様」タンパク質の例は、WO2004106368において記載されている。
【0206】
タンパク質エピトープ模倣体(PEM)とは、タンパク質間相互作用に関与する主要な
二次構造である、タンパク質のベータ-ヘアピン二次構造を模倣する、中程度のサイズの
環状ペプチド様分子(分子量:1~2kDa)である。
【0207】
本発明は、FXIaタンパク質に特異的に結合する完全ヒト抗体を提供する。キメラ抗
体またはヒト化抗体と比較して、本発明のヒトFXIa結合性抗体は、ヒト対象へと投与
された場合の抗原性がさらに低減されている。
【0208】
ラクダ科動物抗体
ラマ種(アルパカ(Lama paccos)、ラマ(Lama glama)、およびビクーニャ(Lama vi
cugna))などの新世界メンバーを含む、ラクダおよびヒトコブラクダ(dromedary)(フ
タコブラクダ(Camelus bactrianus)およびヒトコブラクダ(Calelus dromaderius))
ファミリーのメンバーから得られる抗体タンパク質は、サイズ、構造的複雑性、およびヒ
ト対象に対する抗原性に関して特徴付けられている。天然で見出されるこのファミリーの
哺乳動物に由来するある種のIgG抗体は、軽鎖を欠き、したがって、他の動物に由来す
る抗体の場合の、2つの重鎖および2つの軽鎖を有する、典型的な4つの鎖の四次構造と
は構造的に異なっている。PCT/EP93/02214(1994年3月3日に公表さ
れた国際公開第94/04678号パンフレット)を参照されたい。
【0209】
VHHとして同定される小型の単一の可変ドメインである、ラクダ科動物抗体の領域は
、標的に対して高いアフィニティーを有する低分子タンパク質をもたらすことから、「ラ
クダ科動物ナノボディ」として公知の低分子量抗体由来タンパク質を結果としてもたらす
遺伝子操作により得ることができる。1998年6月2日に取得された米国特許第5,7
59,808号を参照されたい。また、Stijlemans, B.ら、2004 J Biol Chem 279:1256
~1261; Dumoulin, M.ら、2003 Nature 424:783~788; Pleschberger, M.ら、2003 Bioco
njugate Chem 14:440~448; Cortez-Retamozo, V.ら、2002 Int J Cancer 89:456~62;
およびLauwereys, M.ら、1998 EMBO J 17:3512~3520も参照されたい。ラクダ科動物抗体
および抗体断片の操作ライブラリーは、例えば、Ablynx、Ghent、Belgi
umから市販されている。非ヒト由来の他の抗体と同様に、ラクダ科動物抗体のアミノ酸
配列は、ヒト配列により酷似する配列を得るように、組換えにより改変することができる
、すなわち、ナノボディは、「ヒト化」することができる。したがって、ヒトに対するラ
クダ科動物抗体の天然の小さな抗原性を、さらに低減することができる。
【0210】
ラクダ科動物ナノボディの分子量は、ヒトIgG分子の分子量の約10分の1で、タン
パク質の物理的直径は、数ナノメートルに過ぎない。サイズが小さいことの1つの帰結は
、大型の抗体タンパク質には機能的に不可視である抗原性部位に結合するラクダ科動物ナ
ノボディの能力である、すなわち、ラクダ科動物ナノボディは、古典的な免疫学的技法を
使用するこれ以外の形では隠蔽されたままの抗原を検出する試薬として有用であり、可能
な治療剤として有用である。したがって、サイズが小さいことのさらに別の帰結は、ラク
ダ科動物ナノボディが、標的タンパク質のグルーブ内または狭小なクレフト内の特異的部
位に結合することの結果として、標的タンパク質を阻害することが可能であり、よって、
古典的な抗体の機能よりも、古典的な低分子量の薬物の機能により酷似する能力において
用いられうることである。
【0211】
低分子量およびコンパクトなサイズはさらに、熱安定性が極めて大きく、極端なpHお
よびタンパク質分解性消化に対して安定的であり、抗原性が小さいラクダ科動物ナノボデ
ィを結果としてもたらす。別の帰結は、ラクダ科動物ナノボディが、循環系から組織へと
たやすく移動し、血液脳関門もなお越え、神経組織に影響を及ぼす障害も処置しうること
である。ナノボディはさらに、血液脳関門を越える薬物輸送も容易としうる。2004年
8月19日に公表された米国特許出願第20040161738号明細書を参照されたい
。これらの特色を、ヒトに対する抗原性が小さいことと組み合わせることにより、大きな
治療的可能性が指し示される。さらに、これらの分子は、大腸菌(E. coli)などの原核
細胞内で完全に発現させることができ、バクテリオファージとの融合タンパク質として発
現させ、機能的である。
【0212】
したがって、本発明の特色は、FXIおよび/またはFXIaに対して高いアフィニテ
ィーを有するラクダ科動物抗体またはラクダ科動物ナノボディである。本明細書のある種
の実施形態では、ラクダ科動物抗体またはラクダ科動物ナノボディは、天然ではラクダ科
動物において産生される、すなわち、他の抗体について本明細書で記載される技法を使用
する、FXIおよび/またはFXIaまたはそのペプチド断片による免疫化の後で、ラク
ダ科動物により産生される。代替的に、FXIおよび/またはFXIa結合性ラクダ科動
物ナノボディは、操作されたものである、すなわち、例えば、本明細書の実施例において
記載されている、標的としてのFXIおよび/もしくはFXIa、ならびに/またはその
ドメインおよび/もしくはペプチド断片を伴うパニング手順を使用する、適切に突然変異
誘発させたラクダ科動物ナノボディタンパク質を提示するファージライブラリーからの選
択によって作製される。操作されたナノボディはさらに、遺伝子操作により、レシピエン
ト対象における半減期が、45分間~2週間となるようにカスタマイズすることもできる
。具体的な実施形態では、ラクダ科動物抗体またはラクダ科動物ナノボディを、例えば、
PCT/EP93/02214において記載されている通り、本発明のヒト抗体の重鎖ま
たは軽鎖のCDR配列を、ナノボディまたは単一ドメイン抗体フレームワーク配列へとグ
ラフトすることにより得る。
【0213】
二特異性分子および多価抗体
別の態様では、本発明は、本発明のFXI結合性抗体および/またはFXIa結合性抗
体またはその断片を含む二特異性分子または多特異性分子を特色とする。本発明の抗体ま
たはその抗原結合性領域は、少なくとも2つの異なる結合性部位または標的分子に結合す
る二特異性分子を作り出すように誘導体化することもでき、別の機能的分子、例えば、別
のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)へと連
結することもできる。本発明の抗体は実際、3つ以上の異なる結合性部位および/または
標的分子に結合する多特異性分子を作り出すように誘導体化することもでき、他の2つ以
上の機能的分子へと連結することもでき、このような多特異性分子はまた、本明細書で使
用される「二特異性分子」という用語により包含されることも意図される。本発明の二特
異性分子を創出するには、本発明の抗体を、二特異性分子が結果として得られるように、
別の抗体、抗体断片、ペプチド、または結合性模倣体など、1つまたは複数の他の結合性
分子へと機能的に連結する(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会
合により、またはこれら以外の形で)ことができる。
【0214】
したがって、本発明は、FXIおよび/もしくはFXIaに対する少なくとも1つの第
1の結合特異性および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二特異性分
子を含む。例えば、第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープと異なる、FXIお
よび/もしくはFXIaの別のエピトープである。
【0215】
加えて、二特異性分子が多特異性である本発明では、分子は、第1の標的エピトープお
よび第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性もさらに含みうる。
【0216】
一実施形態では、本発明の二特異性分子は、結合特異性として、例えば、Fab、Fa
b’、F(ab’)2、Fv、または単鎖Fvを含む、少なくとも1つの抗体またはその
抗体断片を含む。抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖の二量体、またはLadnerら、米国
特許第4,946,778号明細書において記載されている、Fvもしくは単鎖構築物な
ど、その任意の最小断片でありうる。
【0217】
ダイアボディとは、同じ鎖上の2つのドメインの間の対合を可能とするには短すぎるリ
ンカーにより接続されたVHドメインおよびVLドメインを単一のポリペプチド鎖上で発
現させた、二価の二特異性分子である。VHドメインおよびVLドメインは、別の鎖の相
補的なドメインと対合し、これにより、2つの抗原結合性部位を創出する(例えば、Holl
igerら、1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444~6448; Poljakら、1994 Structure
2:1121~1123を参照されたい)。ダイアボディは、VHA-VLBおよびVHB-VLA
構造(VH-VL立体配置)、またはVLA-VHBおよびVLB-VHA構造(VL-
VH立体配置)を伴う2つのポリペプチド鎖を、同じ細胞内で発現させることにより作製
することができる。ダイアボディの大半は、細菌内の可溶性形態で発現させることができ
る。単鎖ダイアボディ(scDb)は、2つのダイアボディ形成ポリペプチド鎖を、約1
5アミノ酸残基のリンカーで接続することにより作製する(HolligerおよびWinter、1997
Cancer Immunol. Immunother.、45(3~4):128~30; Wuら、1996 Immunotechnology、2
(1):21~36を参照されたい)。scDbは、細菌内の可溶性で活性の単量体形態で発現
させることができる(HolligerおよびWinter、1997 Cancer Immunol. Immunother.、45(
34):128~30; Wuら、1996 Immunotechnology、2(1):21~36; PluckthunおよびPack、1
997 Immunotechnology、3(2):83~105; Ridgwayら、1996 Protein Eng.、9(7):617~
21を参照されたい)。ダイアボディをFcへと融合させて、「ジダイアボディ」を作り出
すことができる(Luら、2004 J. Biol. Chem.、279(4):2856~65を参照されたい)。
【0218】
本発明の二特異性分子内で援用しうる他の抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラ
モノクローナル抗体、およびヒト化モノクローナル抗体である。
【0219】
二特異性分子は、当技術分野で公知の方法を使用して、構成要素である結合特異性をコ
ンジュゲートさせることにより調製することができる。例えば、二特異性分子の各結合特
異性は、個別に作り出し、次いで、互いとコンジュゲートさせることができる。結合特異
性がタンパク質またはペプチドである場合は、様々なカップリング剤または架橋剤を、共
有結合的コンジュゲーションに使用することができる。架橋剤の例は、プロテインA、カ
ルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5
,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド
(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(S
PDP)、およびスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン
-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)を含む(例えば、Karpovskyら、1984 J. E
xp. Med. 160:1686; Liu, MAら、1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照され
たい)。他の方法は、Paulus、1985 Behring Ins. Mitt. 78号、118~132; Brennanら、1
985 Science 229:81~83;およびGlennieら、1987 J. Immunol. 139:2367~2375において
記載されている方法を含む。コンジュゲート剤は、SATAおよびスルホ-SMCCであ
り、いずれも、Pierce Chemical Co.(Rockford、IL)か
ら入手可能である。
【0220】
結合特異性が、抗体である場合、それらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域をスルフヒ
ドリル結合させることによりコンジュゲートさせることができる。特定の実施形態では、
コンジュゲーションの前に、奇数のスルフヒドリル残基、例えば、1つのスルフヒドリル
残基を含有するように、ヒンジ領域を修飾する。
【0221】
代替的に、いずれの結合特異性も、同じベクター内でコードさせ、同じ宿主細胞内で発
現およびアセンブルさせることができる。この方法は、二特異性分子が、mAb×mAb
融合タンパク質、mAb×Fab融合タンパク質、Fab×F(ab’)2融合タンパク
質、またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、特に有用である。本発明の二
特異性分子は、1つの単鎖抗体および結合決定基を含む単鎖分子の場合もあり、2つの結
合決定基を含む単鎖二特異性分子の場合もある。二特異性分子は、少なくとも2つの単鎖
分子を含みうる。二特異性分子を調製する方法については、例えば、米国特許第5,26
0,203号明細書;米国特許第5,455,030号明細書;米国特許第4,881,
175号明細書;米国特許第5,132,405号明細書;米国特許第5,091,51
3号明細書;米国特許第5,476,786号明細書;米国特許第5,013,653号
明細書;米国特許第5,258,498号明細書;および米国特許第5,482,858
号明細書において記載されている。
【0222】
それらの特異的な標的に対する二特異性分子の結合は、例えば、酵素免疫測定アッセイ
(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS解析、バイオアッセイ(例
えば、成長阻害アッセイ)、またはウェスタンブロットアッセイにより確認することがで
きる。これらのアッセイの各々では一般に、対象の複合体に特異的な、標識された試薬(
例えば、抗体)を援用することにより、特に対象となるタンパク質-抗体間複合体の存在
が検出される。
【0223】
別の態様では、本発明は、FXIaに結合する、本発明の抗体の少なくとも2つの同一
であるかまたは異なる抗原結合性部分を含む、多価化合物を提供する。抗原結合性部分は
、タンパク質の融合または共有結合的連結もしくは非共有結合的連結を介して、併せて連
結することができる。代替的に、二特異性分子のための連結法も記載されている。四価化
合物は、例えば、本発明の抗体を、本発明の抗体の定常領域に結合する抗体、例えば、F
c領域またはヒンジ領域と架橋することにより得ることができる。
【0224】
三量体化ドメインについては、例えば、Boreanによる特許であるEP10122
80B1において記載されている。五量体化モジュールについては、例えば、PCT/E
P97/05897において記載されている。
【0225】
半減期を延長した抗体
本発明は、in vivoにおける半減期を延長した、FXIaタンパク質に特異的に
結合する抗体を提供する。
【0226】
多くの因子が、in vivoにおけるタンパク質の半減期に影響を及ぼしうる。例え
ば、腎臓における濾過、肝臓における代謝、タンパク質分解性酵素(プロテアーゼ)によ
る分解、および免疫原性応答(例えば、抗体によるタンパク質の中和およびマクロファー
ジおよび樹状細胞による取込み)。様々な戦略を使用して、本発明の抗体の半減期を延長
することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、reCODE PEG
、抗体足場、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミ
ン結合性リガンド、および炭水化物シールドとの化学的連結により、アルブミン、IgG
、FcRn、およびトランスフェリンなどの血清タンパク質に結合するタンパク質との遺
伝子融合により、ナノボディ、Fab、DARPin、アビマー、アフィボディ、および
アンチカリンなど、血清タンパク質に結合する他の結合部分とカップリングする(遺伝子
的または化学的に)ことにより、rPEG、アルブミン、アルブミンのドメイン、アルブ
ミン結合性タンパク質、およびFcとの遺伝子融合により、またはナノ担体、徐放製剤、
もしくは医療デバイスへの組込みにより、本発明の抗体の半減期を延長することができる
。
【0227】
in vivoにおける抗体の血清中循環を延長するため、高分子量のPEGなど、不
活性のポリマー分子を、PEGの、抗体のN末端もしくはC末端への部位特異的コンジュ
ゲーションを介して、またはリシン残基上に存在するイプシロン-アミノ基を介して、多
官能性リンカーを伴うかまたは多官能性リンカーを伴わない、抗体またはそれらの断片へ
と付着することができる。抗体をPEG化するには、抗体またはその断片を、ポリエチレ
ングリコール(PEG)の反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのPEGと、1つ
または複数のPEG基が抗体または抗体断片に付着する条件下で反応させることが典型的
である。PEG化は、反応性PEG分子(または類似する反応性の水溶性ポリマー)との
アシル化反応またはアルキル化反応により実行することができる。本明細書で使用される
「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-ポリエチ
レングリコールもしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレング
リコール-マレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するのに使用されているPEGの
形態のうちのいずれかを包含することを意図するものである。ある種の実施形態では、P
EG化される抗体は、脱グリコシル化抗体である。直鎖状ポリマーまたは分枝状ポリマー
の誘導体化であって、生物学的活性の喪失を結果として最小とする誘導体化が、使用され
るであろう。コンジュゲーションの程度を、SDS-PAGEおよび質量分析により緊密
にモニタリングして、PEG分子の抗体への適正なコンジュゲーションを確認することが
できる。反応しなかったPEGは、サイズ除外クロマトグラフィーまたはイオン交換クロ
マトグラフィーにより、抗体-PEGコンジュゲートから分離することができる。PEG
誘導体化抗体は、当業者に周知の方法を使用して、例えば、本明細書で記載されるイムノ
アッセイにより、結合活性ならびにin vivoにおける有効性について調べることが
できる。当技術分野では、タンパク質をPEG化する方法が知られており、本発明の抗体
に適用することができる。例えば、NishimuraらによるEP0154316およ
びIshikawaらによるEP0401384を参照されたい。
【0228】
他の改変されたPEG化技術は、tRNAシンセターゼおよびtRNAを含む再構成系
を介して、化学的に特定された側鎖を、生合成タンパク質へと組み込む、再構成化学的直
交性直接操作技術(reconstituting chemically orthogonal directed engineering)(
ReCODE PEG)を含む。この技術は、30を超える新たなアミノ酸の、大腸菌(
E. coli)細胞内、酵母細胞内、および哺乳動物細胞内の生合成タンパク質への組込みを
可能とする。tRNAは、非天然アミノ酸を、アンバーコドンが配置される任意の位置へ
と組み込み、終止アンバーコドンから、化学的に特定されたアミノ酸の組込みシグナルを
伝達するコドンへと転換する。
【0229】
組換えPEG化技術(rPEG)はまた、血清半減期の延長にも使用することができる
。この技術は、300~600アミノ酸の非構造化タンパク質テールを、既存の医薬用タ
ンパク質へと遺伝子融合させることを伴う。このような非構造化タンパク質鎖の見かけの
分子量は、その実際の分子量の約15倍であるため、タンパク質の血清半減期は、大きく
増大する。化学的コンジュゲーションおよび再精製を要求する従来のPEG化とは対照的
に、製造工程は大きく簡略化され、生成物は、均質である。
【0230】
ポリシアリル化は、天然のポリマーであるポリシアル酸(PSA)を使用して、活性寿
命を延長し、治療用ペプチドおよび治療用タンパク質の安定性を改善する、別の技術であ
る。PSAとは、シアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質および治療用ペプチドの
薬物送達に使用される場合、コンジュゲーション時に、ポリシアル酸は、保護的微小環境
をもたらす。これは、循環内の治療用タンパク質の活性寿命を延長し、それが免疫系によ
り認識されることを防止する。PSAポリマーは、天然では、ヒト体内で見出される。P
SAは、数百万年にわたり、それらの壁をPSAでコーティングするように進化したある
種の細菌により採用された。次いで、これらの天然でポリシアリル化した細菌は、分子的
模倣により、体内の防御系を失効化することが可能となった。自然の究極のステルス技術
であるPSAは、このような細菌から、大量に、かつ、所定の物理的特徴を伴って、容易
に作製することができる。細菌PSAは、ヒト体内ではPSAと化学的に同一であるので
、タンパク質へとカップリングさせた場合でもなお、完全に非免疫原性である。
【0231】
別の技術は、抗体に連結されたヒドロキシエチルデンプン(「HES」)誘導体の使用
を含む。HESとは、蝋状トウモロコシデンプンに由来する、修飾された天然ポリマーで
あり、体内の酵素により代謝されうる。HES溶液は通例、血液量不足を補い、血液のレ
オロジー特性を改善するために投与される。抗体のHES化は、分子の安定性を増大させ
ることのほか、腎クリアランスを低減することによっても、循環半減期の延長を可能とし
、生物学的活性の増大を結果としてもたらす。HESの分子量など、異なるパラメータを
改変することにより、広範にわたるHES抗体コンジュゲートをカスタマイズすることが
できる。
【0232】
in vivoにおける半減期を延長した抗体はまた、1つまたは複数のアミノ酸修飾
(すなわち、置換、挿入、または欠失)を、IgG定常ドメインまたはそのFcRn結合
性断片(好ましくはFcドメイン断片またはヒンジFcドメイン断片)へと導入しても作
り出すことができる。例えば、国際特許公開第98/23289号パンフレット、国際特
許公開第97/34631号パンフレット;および米国特許第6,277,375号明細
書を参照されたい。
【0233】
さらに、抗体または抗体断片を、in vivoにおいてより安定的とするか、または
in vivoにおける半減期を延長するために、抗体を、アルブミン(例えば、ヒト血
清アルブミン;HSA)へとコンジュゲートさせることもできる。当技術分野では、技法
が周知であり、例えば、国際特許公開第93/15199号パンフレット、同第93/1
5200号パンフレット、および同01/77137号パンフレット;ならびに欧州特許
第413,622号明細書を参照されたい。加えて、上記で記載した二特異性抗体の文脈
では、抗体の特異性は、抗体の1つの結合性ドメインが、FXIaに結合するのに対し、
抗体の第2の結合性ドメインは、血清アルブミン、好ましくは、HSAに結合するように
デザインすることもできる。
【0234】
半減期を延長するための戦略は、in vivoにおける半減期の延長が所望される、
ナノボディ、フィブロネクチンベースの結合剤、および他の抗体またはタンパク質におい
てとりわけ有用である。
【0235】
抗体コンジュゲート
本発明は、融合タンパク質を作り出すように、異種タンパク質または異種ポリペプチド
へと(またはその断片、好ましくは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30
、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80
、少なくとも90、または少なくとも100アミノ酸のポリペプチドへと)、組換えによ
り融合させるかまたは化学的にコンジュゲートさせた(共有結合的コンジュゲーションお
よび非共有結合的コンジュゲーションの両方を含む)、FXIaタンパク質に特異的に結
合する抗体またはそれらの断片を提供する。特に、本発明は、本明細書で記載される抗体
の抗原結合性断片(例えば、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VH
ドメイン、VH CDR、VLドメイン、またはVL CDR)と、異種タンパク質、異
種ポリペプチド、または異種ペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。当技術分野で
は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを、抗体または抗体断片と融合またはコ
ンジュゲートさせる方法が知られている。例えば、米国特許第5,336,603号明細
書、同第5,622,929号明細書、同第5,359,046号明細書、同第5,34
9,053号明細書、同第5,447,851号明細書、および同第5,112,946
号明細書;欧州特許第307,434号明細書および同第EP367,166号明細書;
国際特許公開第96/04388号パンフレットおよび同第91/06570号パンフレ
ット;Ashkenaziら、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535~10539; Zhengら、19
95、J. Immunol. 154:5590~5600;およびVilら、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89
:11337~11341を参照されたい。
【0236】
さらなる融合タンパク質は、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシ
ャフリング、および/またはコドンシャフリング(まとめて、「DNAシャフリング」と
称する)の技法を介して作り出すことができる。DNAシャフリングを援用して、本発明
の抗体またはそれらの断片の活性を改変する(例えば、アフィニティーが大きく、解離速
度が小さい抗体またはそれらの断片)ことができる。一般に、米国特許第5,605,7
93号明細書、同第5,811,238号明細書、同第5,830,721号明細書、同
第5,834,252号明細書、および同第5,837,458号明細書;Pattenら、19
97、Curr. Opinion Biotechnol. 8:724~33; Harayama、1998、Trends Biotechnol. 16(
2):76~82; Hanssonら、1999、J. Mol. Biol. 287:265~76;ならびにLorenzoおよびBla
sco、1998、Biotechniques 24(2):308~313(これらの特許および刊行物の各々は、参
照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる)を参照されたい。抗体もしくは
それらの断片、またはコードされる抗体もしくはそれらの断片は、組換えの前に、エラー
プローンPCRによるランダム突然変異誘発、ランダムヌクレオチド挿入、または他の方
法にかけることにより改変することができる。FXIaタンパク質に特異的に結合する抗
体またはその断片をコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数の異種分子の1つま
たは複数の成分、モチーフ、区間、一部、ドメイン、断片などで組み換えることができる
。
【0237】
さらに、抗体またはそれらの断片は、精製を容易とするペプチドなどのマーカー配列へ
と融合させることもできる。好ましい実施形態では、マーカーのアミノ酸配列は、それら
のうちの多くが市販されている中でとりわけ、pQEベクター(QIAGEN,Inc.
、9259 Eton Avenue、Chatsworth、CA、91311)にお
いて提供されているタグなどのヘキサヒスチジンペプチド(配列番号48)である。Gent
zら、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821~824において記載されている通り、例
えば、ヘキサヒスチジン(配列番号48)は、融合タンパク質の簡便な精製をもたらす。
精製に有用な他のペプチドタグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来する
エピトープ(Wilsonら、1984、Cell 37:767)に対応するヘマグルチニン(「HA」)タ
グ、および「フラッグ」タグを含むがこれらに限定されない。
【0238】
他の実施形態では、本発明の抗体またはそれらの断片を、診断剤または検出可能薬剤へ
とコンジュゲートさせる。このような抗体は、疾患または障害の発生、発症、進行、およ
び/または重症度を、特定の治療の有効性を決定することなど、臨床検査手順の一部とし
てモニタリングまたは予後診断するのに有用でありうる。このような診断および検出は、
抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダ
ーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなどであるがこれらに限定されない多様な酵素
;ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどであるがこれらに限定さ
れない補欠分子族;ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイ
ン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、また
はフィコエリトリンなどであるがこれらに限定されない蛍光材料;ルミノールなどである
がこれらに限定されない発光材料;ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンな
どであるがこれらに限定されない生物発光材料;ヨウ素(131I、125I、123I
、および121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウ
ム(115In、113In、112In、および111In)、テクネシウム(99T
c)、タリウム(201Tl)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103
Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153
Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、9
0Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68G
e、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54
Mn、75Se、113Sn、および117Tinなどであるがこれらに限定されない放
射性材料;ならびに多様なポジトロン断層法を使用するポジトロン放出金属および非放射
性の常磁性金属イオンを含むがこれらに限定されない検出可能な物質へとカップリングす
ることにより達成することができる。
【0239】
本発明は、治療用部分へとコンジュゲートさせた抗体またはそれらの断片の使用もさら
に包含する。抗体またはその断片は、細胞毒素、例えば、細胞増殖抑制剤または殺細胞剤
、治療剤または放射性金属イオン、例えば、アルファ放射体などの治療用部分へとコンジ
ュゲートさせることができる。細胞毒素または細胞傷害剤は、細胞に有害な任意の薬剤を
含む。
【0240】
さらに、抗体またはその断片は、所与の生物学的応答を修飾する治療用部分または薬物
部分へとコンジュゲートさせることもできる。治療用部分または薬物部分は、古典的化学
的治療剤に限定されるとはみなされないものとする。例えば、薬物部分は、所望の生物学
的活性を保有するタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドでありうる。このようなタ
ンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス属外毒素、コレラ毒素、また
はジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェ
ロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子、アポトーシ
ス剤、抗血管新生剤;または例えば、リンホカインなどの生体応答修飾剤などのタンパク
質を含みうる。
【0241】
さらに、抗体は、213Biなどのアルファ放射体などの放射性金属イオン、131I
n、131LU、131Y、131Ho、131Smを含むがこれらに限定されない放射
性金属イオンを、ポリペプチドへとコンジュゲートするのに有用な大環状キレート化剤な
どの治療用部分へとコンジュゲートさせることもできる。ある種の実施形態では、大環状
キレート化剤は、リンカー分子を介して抗体へと付着させうる、1,4,7,10-テト
ラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-テトラ酢酸(DOTA)である。
当技術分野では、このようなリンカー分子が一般に公知であり、各々が参照によりそれら
の全体において組み込まれる、Denardoら、1998、Clin Cancer Res. 4(10):2483~90;
Petersonら、1999、Bioconjug. Chem. 10(4):553~7;およびZimmermanら、1999、Nucl
. Med. Biol. 26(8):943~50において記載されている。
【0242】
治療用部分を、抗体へとコンジュゲートさせるための技法は周知であり、例えば、Arno
nら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、M
onoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、243~56頁(Alan R. Li
ss, Inc. 1985); Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug
Delivery(2版)、Robinsonら(編)、623~53頁(Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe
、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」、Monoclo
nal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、475~
506頁(1985); 「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Us
e Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer
Detection And Therapy、Baldwinら(編)、303~16頁(Academic Press 1985);およ
びThorpeら、1982、Immunol. Rev. 62:119~58を参照されたい。
【0243】
抗体はまた、特に、イムノアッセイまたは標的抗原の精製に有用な固体支持体へと付着
させることもできる。このような固体支持体は、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミ
ド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンを含むがこれらに
限定されない。
【0244】
抗体を作製する方法
抗体をコードする核酸
本発明は、上記で記載したFXIa結合性抗体鎖のセグメントまたはドメインを含むポ
リペプチドをコードする、実質的に精製された核酸分子を提供する。本発明の核酸のいく
つかは、配列番号10または30に示される重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
、および/または配列番号20または40に示される軽鎖可変領域をコードするヌクレオ
チド配列を含む。具体的な実施形態では、核酸分子は、表1において同定される核酸分子
である。本発明の他のいくつかの核酸分子は、表1において同定される核酸分子のヌクレ
オチド配列と実質的に(例えば、少なくとも65、80%、95%、または99%)同一
なヌクレオチド配列を含む。適切な発現ベクターから発現させるとき、これらのポリヌク
レオチドによりコードされるポリペプチドは、FXIおよび/もしくはFXIa抗原結合
能を呈示することが可能である。
【0245】
本発明ではまた、上記で示したFXIa結合性抗体の重鎖または軽鎖に由来する少なく
とも1つのCDR領域、および、通例3つ全てのCDR領域をコードするポリヌクレオチ
ドも提供される。他のいくつかのポリヌクレオチドは、上記で示したFXIa結合性抗体
の重鎖および/または軽鎖の可変領域配列の全てまたは実質的に全てをコードする。コー
ドの縮重性のために、様々な核酸配列は、免疫グロブリンアミノ酸配列の各々をコードす
るであろう。
【0246】
本発明の核酸分子は、抗体の可変領域および定常領域の両方をコードしうる。本発明の
核酸配列のうちのいくつかは、配列番号11または31に示される重鎖配列と実質的に(
例えば、少なくとも80%、90%、または99%)同一な重鎖配列をコードするヌクレ
オチドを含む。他のいくつかの核酸配列は、配列番号21または41に示される軽鎖配列
と実質的に(例えば、少なくとも80%、90%、または99%)同一な軽鎖配列をコー
ドするヌクレオチドを含む。
【0247】
ポリヌクレオチド配列は、デノボの固相DNA合成、またはFXIa結合性抗体または
その結合性断片をコードする既存の配列(例えば、下記の実施例で記載される配列)に対
するPCRによる突然変異誘発により作製することができる。核酸の直接的な化学合成は
、Narangら、1979、Meth. Enzymol. 68:90によるホスホトリエステル法;Brownら、Meth.
Enzymol. 68:109、1979によるホスホジエステル法;Beaucageら、Tetra. Lett., 22:185
9、1981によるジエチルホスホルアミダイト法;および米国特許第4,458,066号
明細書による固体支持体法など、当技術分野で公知の方法により達成することができる。
PCRによる、突然変異の、ポリヌクレオチド配列への導入は、例えば、PCR Technology
: Principles and Applications for DNA Amplification、H.A. Erlich(編)、Freeman
Press、NY、NY、1992;PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications、Innisら
(編)、Academic Press、San Diego、CA、1990; Mattilaら、Nucleic Acids Res. 19:96
7、1991;およびEckertら、PCR Methods and Applications 1:17、1991において記載され
ている通りに実施することができる。
【0248】
本発明ではまた、上記で記載したFXI結合性抗体および/もしくはFXIa結合性抗
体を作製するための発現ベクターおよび宿主細胞も提供される。多様な発現ベクターを、
援用して、FXIa結合性抗体鎖または結合性断片をコードするポリヌクレオチドを発現
させることができる。ウイルスベースの発現ベクターおよび非ウイルス発現ベクターのい
ずれを使用しても、哺乳動物宿主細胞内で抗体を作製することができる。非ウイルスベク
ターおよび非ウイルス系は、プラスミド、典型的に、タンパク質またはRNAを発現させ
るための発現カセットを伴うエピソームベクター、およびヒト人工染色体を含む(例えば
、Harringtonら、Nat Genet 15:345、1997を参照されたい)。例えば、哺乳動物(例えば
、ヒト)細胞内のFXIa結合性ポリヌクレオチドおよびLOX-1結合性ポリペプチド
の発現に有用な非ウイルスベクターは、pThioHis A、pThioHis B、
およびpThioHis C、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、pEB
VHis B、およびpEBVHis C(Invitrogen、San Diego
、CA)、MPSVベクター、ならびに他のタンパク質を発現させるための、当技術分野
で公知の他の多数のベクターを含む。有用なウイルスベクターは、レトロウイルス、アデ
ノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40に基づ
くベクター、パピローマウイルス、HBPエプスタインバーウイルス、ワクシニアウイル
スベクター、およびセムリキ森林熱ウイルス(SFV)を含む。Brentら、前出; Smith、
Annu. Rev. Microbiol. 49:807、1995;およびRosenfeldら、Cell 68:143、1992を参照さ
れたい。
【0249】
発現ベクターの選択は、その中でベクターを発現させる、意図される宿主細胞に依存す
る。発現ベクターは、FXIa結合性抗体鎖または断片をコードするポリヌクレオチドに
作動可能に連結されたプロモーターおよび他の調節配列(例えば、エンハンサー)を含有
することが典型的である。いくつかの実施形態では、誘導条件下を除き、挿入された配列
の発現を防止するのに、誘導的プロモーターを援用する。誘導的プロモーターは、例えば
、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーター、または熱ショックプロモー
ターを含む。形質転換された生物の培養物は、それらの発現産物が宿主細胞により良好に
許容されるコード配列の集団にバイアスをかけずに、非誘導条件下で増殖させることがで
きる。プロモーターに加えて、他の調節的エレメントもまた、FXIa結合性抗体鎖また
は断片の効率的な発現に要求または所望される可能性がある。これらのエレメントは、A
TG開始コドンおよび隣接のリボソーム結合性部位または他の配列を典型的に含む。加え
て、発現の効率は、使用される細胞系に適するエンハンサーを組み入れることにより増強
することもできる(例えば、Scharfら、Results Probl. Cell Differ. 20:125、1994;お
よびBittnerら、Meth. Enzymol., 153:516、1987を参照されたい)。例えば、SV40エ
ンハンサーまたはCMVエンハンサーを使用して、哺乳動物宿主細胞内の発現を増大させ
ることができる。
【0250】
発現ベクターはまた、挿入されたFXIa結合性抗体配列によりコードされるポリペプ
チドとの融合タンパク質を形成するように、分泌シグナル配列の位置ももたらしうる。挿
入されたFXI結合性抗体配列および/もしくはFXIa結合性抗体配列は、ベクター内
に組み入れる前に、シグナル配列へと連結することが多い。FXI結合性抗体および/も
しくはFXIa結合性抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインをコードする配列
を受容するのに使用されるベクターは、場合によってまた、定常領域またはそれらの一部
もコードする。このようなベクターは、定常領域との融合タンパク質としての可変領域の
発現を可能とし、これにより、インタクトな抗体またはそれらの断片の作製をもたらす。
このような定常領域は、ヒト定常領域であることが典型的である。
【0251】
FXI結合性抗体鎖および/もしくはFXIa結合性抗体鎖を保有し、これを発現させ
るための宿主細胞は、原核細胞の場合もあり、真核細胞の場合もある。大腸菌(E. coli
)は、本発明のポリヌクレオチドをクローニングし、発現させるのに有用な1つの原核生
物宿主である。使用に適する他の微生物宿主は、枯草菌(Bacillus subtilis)などの桿
菌、およびサルモネラ(Salmonella)属種、セラチア(Serratia)属種、および多様なシ
ュードモナス(Pseudomonas)属種など、他の腸内細菌科を含む。これらの原核生物宿主
内ではまた、典型的に、宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば、複製起点)を含有す
る発現ベクターも作製することができる。加えて、ラクトースプロモーター系、トリプト
ファン(trp)プロモーター系、ベータ-ラクタマーゼプロモーター系、またはファー
ジラムダに由来するプロモーター系など、任意の数の、様々な周知のプロモーターも存在
する。プロモーターは、任意選択で、オペレーター配列により発現を制御することが典型
的であるが、転写および翻訳を開始して終結させるためのリボソーム結合性部位配列など
も有する。本発明のFXIa結合性ポリペプチドを発現させるのに、酵母など、他の微生
物もまた援用することができる。また、バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細
胞も使用することができる。
【0252】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明のFXI結合性ポリペプチドおよび/もしく
はFXIa結合性ポリペプチドを発現させ、作製するのに、哺乳動物宿主細胞を使用する
。哺乳動物宿主細胞は、任意の正常非不死化動物細胞または正常不死化動物細胞もしくは
非正常不死化動物細胞またはヒト細胞を含む。例えば、CHO細胞系、多様なCos細胞
系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、および形質転換B細胞を含む、インタクトな免疫グロ
ブリンを分泌することが可能な多数の適切な宿主細胞系が開発されている。ポリペプチド
を発現させるための、哺乳動物組織細胞培養物の使用については、例えば、Winnacker、F
ROM GENES TO CLONES、VCH Publishers、N.Y.、N.Y.、1987において一般に論じられてい
る。哺乳動物宿主細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハ
ンサーなどの発現制御配列(例えば、Queenら、Immunol. Rev. 89:49~68、1986を参照さ
れたい)、ならびにリボソーム結合性部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位
、および転写ターミネーター配列などの、必要なプロセシング情報部位を含みうる。
【0253】
これらの発現ベクターは通例、哺乳動物遺伝子に由来するプロモーターまたは哺乳動物
ウイルスに由来するプロモーターを含有する。適切なプロモーターは、構成的プロモータ
ー、細胞型特異的プロモーター、段階特異的プロモーター、および/またはモジュレート
可能プロモーターもしくは調節可能プロモーターでありうる。有用なプロモーターは、メ
タロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタ
ゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモ
ーター、構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(ヒ
ト即初期CMVプロモーターなど)、構成的CMVプロモーター、および当技術分野で公
知のプロモーター-エンハンサーの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0254】
対象のポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主の種
類に応じて変化する。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションが一般に原核細胞に
活用されるのに対し、リン酸カルシウム処理または電気穿孔は、他の細胞宿主に使用する
ことができる(一般に、Sambrookら、前出を参照されたい)。他の方法は、例えば、電気
穿孔、リン酸カルシウム処理、リポソーム媒介型形質転換、注射およびマイクロインジェ
クション、遺伝子銃法、ウィロソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン:核酸コンジュ
ゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質であるVP
22との融合体(ElliotおよびO'Hare、Cell 88:223、1997)、DNAの薬剤増強型取込
み、およびex vivoにおける形質導入を含む。組換えタンパク質の長期にわたる高
収率作製のためには、安定的発現が所望されることが多い。例えば、FXIa結合性抗体
鎖または結合性断片を安定的に発現させる細胞系は、ウイルス複製起点または内因性発現
エレメント、および選択マーカー遺伝子を含有する、本発明の発現ベクターを使用して調
製することができる。ベクターを導入した後、細胞は、強化培地中で1~2日間にわたり
成長させてから、選択培地へと切り替えることができる。選択マーカーの目的は、選択に
対する耐性を付与し、その存在により細胞の成長を可能とし、これにより、導入された配
列を選択培地中で発現させることに成功することである。耐性で安定的にトランスフェク
トされた細胞は、細胞型に適する組織培養法を使用して増殖させることができる。
【0255】
フレームワークまたはFcの操作
本発明の操作抗体は、例えば、抗体の特性を改善するように、VHおよび/またはVL
内のフレームワーク残基へと修飾を施した操作抗体を含む。このようなフレームワーク修
飾は、抗体の免疫原性を低下させるように施すことが典型的である。例えば、1つの手法
は、1つまたは複数のフレームワーク残基を、対応する生殖細胞系列配列へと「復帰突然
変異させる」ことである。より具体的には、体細胞突然変異を経た抗体は、抗体が由来す
る生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含有しうる。このような残基は、抗体
フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することにより同定する
ことができる。フレームワーク領域配列を、それらの生殖細胞系列の立体配置へと戻すに
は、例えば、部位特異的突然変異誘発により、体細胞突然変異を、生殖細胞系列配列へと
「復帰突然変異させる」ことができる。このような「復帰突然変異させた」抗体もまた、
本発明により包含されることを意図する。
【0256】
フレームワーク修飾の別の種類は、1つもしくは複数のフレームワーク領域内の残基、
なおまたは、1つもしくは複数のCDR領域内の残基を突然変異させて、T細胞エピトー
プを除去して、これにより、抗体の潜在的な免疫原性を低減することを伴う。この手法は
また、「脱免疫化」とも称し、Carrらによる米国特許公開第20030153043
号明細書においてさらに詳細に記載されている。
【0257】
フレームワーク内またはCDR領域内に施された修飾に加えて、またはこれと代替的に
、本発明の抗体は、Fc領域内の修飾を含んで、典型的に、血清半減期、補体の結合、F
c受容体の結合、および/または抗原依存性細胞性細胞傷害など、抗体の1つまたは複数
の機能的特性を改変するように操作することもできる。さらに、本発明の抗体は、化学的
に修飾することもでき(例えば、1つまたは複数の化学的部分を抗体に付着することがで
きる)、そのグリコシル化を改変して、ここでもまた、抗体の1つまたは複数の機能的特
性を改変するように修飾することもできる。これらの実施形態の各々については、下記で
さらに詳細に記載する。Fc領域内の残基の番号付けは、KabatによるEUインデッ
クスである。
【0258】
一実施形態では、ヒンジ領域内のシステイン残基の数を改変する、例えば、増大または
減少させるように、CH1のヒンジ領域を修飾する。この手法は、Bodmerらによる
米国特許第5,677,425号明細書においてさらに記載されている。CH1のヒンジ
領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖のアセンブリーを容易とするか
、または抗体の安定性を増大もしくは低下させるように改変する。
【0259】
別の実施形態では、抗体のFcヒンジ領域を突然変異させて、抗体の生物学的半減期を
短縮する。より具体的には、抗体のブドウ球菌属プロテインA(SpA)への結合が、天
然Fc-ヒンジドメインのSpAへの結合と比べて損なわれるように、1つまたは複数の
アミノ酸突然変異を、Fc-ヒンジ断片のCH2ドメイン-CH3ドメイン間界面領域へ
と導入する。この手法は、Wardらによる米国特許第6,165,745号明細書にお
いてさらに詳細に記載されている。
【0260】
別の実施形態では、抗体は、その生物学的半減期を延長するように修飾する。多様な手
法が可能である。例えば、Wardによる米国特許第6,277,375号明細書におい
て記載されている突然変異のうちの1つまたは複数を使用することができる。代替的に、
生物学的半減期を延長するために、抗体を、Prestaらによる米国特許第5,869
,046号明細書;および同第6,121,022号明細書において記載されている、I
gGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから採取されたサルベージ受容体結合性
エピトープを含有するように、CH1領域内またはCL領域内で改変することもできる。
【0261】
さらに他の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸残基を、抗体のエフェクター機能
を改変する異なるアミノ酸残基で置きかえることにより、Fc領域を改変する。例えば、
抗体が、エフェクターリガンドに対するアフィニティーを改変しているが、親抗体の抗原
結合能は保持するように、1つまたは複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基で置きかえ
ることができる。それに対するアフィニティーを改変するエフェクターリガンドは、例え
ば、Fc受容体または補体のC1成分でありうる。この手法は、両方ともWinterら
による米国特許第5,624,821号明細書;および同第5,648,260号明細書
においてさらに詳細に記載されている。
【0262】
別の実施形態では、抗体が、C1qへの結合を改変し、かつ/または補体依存性細胞傷
害作用(CDC)を低減もしくは消失させるように、アミノ酸残基から選択される1つま
たは複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基で置きかえることができる。この手法は、I
dusogieらによる米国特許第6,194,551号明細書においてさらに詳細に記
載されている。
【0263】
別の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸残基を改変して、これにより、補体に結
合する抗体の能力を改変する。この手法は、BodmerらによるPCT公開国際公開第
94/29351号パンフレットにおいてさらに記載されている。
【0264】
具体的な実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)は、任意の表面関連FXIに
より引き起こされる、ADCCまたはCDCの可能性を低減するように、2つのアミノ酸
置換である、D265AおよびP329Aを含むヒトIgG(例えば、IgG1)Fc領
域を含む。これらのアラニン置換は、ADCCおよびCDCを低減することが示されてい
る(例えば、Idosugie et al., J. Immunol. 164:4178-4184, 2000; Shields et al., J.
Biol. Chem. 276:6591-6604, 2001を参照されたい)。
【0265】
さらに別の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸を修飾することにより、抗体依存
性細胞性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体の能力を増大させ、かつ/またはFcγ受
容体に対する抗体のアフィニティーを増大させるように、Fc領域を修飾する。この手法
は、PrestaによるPCT公開国際公開第00/42072号パンフレットにおいて
さらに記載されている。さらに、ヒトIgG1上の、FcγRI、FcγRII、Fcγ
RIII、およびFcRnに対する結合性部位もマップされており、結合を改善させた変
異体も記載されている(Shields, R.L.ら、2001 J. Biol. Chen. 276:6591~6604を参照
されたい)。
【0266】
さらに別の実施形態では、抗体のグリコシル化を修飾する。例えば、脱グリコシル化抗
体(すなわち、抗体は、グリコシル化を欠く)を作製することができる。グリコシル化は
、例えば、「抗原」に対する抗体のアフィニティーを増大させるように改変することがで
きる。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1つまたは複数のグリコシル化
部位を改変することにより達成することができる。例えば、1つまたは複数の可変領域フ
レームワークグリコシル化部位の消失を結果としてもたらす、1つまたは複数のアミノ酸
置換を作製して、これにより、その部位におけるグリコシル化を消失させることができる
。このような脱グリコシル化により、抗原に対する抗体のアフィニティーを増大させるこ
とができる。このような手法は、Coらによる米国特許第5,714,350号明細書;
および同第6,350,861号明細書においてさらに詳細に記載されている。
【0267】
加えて、または代替的に、フコシル残基の量を低減した低フコシル化抗体または二分枝
型GlcNac構造を増大させた抗体など、グリコシル化の種類を改変した抗体を作製す
ることもできる。このようなグリコシル化パターンの改変は、抗体のADCC能を増大さ
せることが裏付けられている。このような炭水化物修飾は、例えば、グリコシル化機構を
改変した宿主細胞内で抗体を発現させることにより達成することができる。当技術分野で
は、グリコシル化機構を改変した細胞が記載されており、本発明の組換え抗体を発現させ
、これにより、グリコシル化を改変した抗体を産生するための宿主細胞として使用するこ
とができる。例えば、HangらによるEP1,176,195は、このような細胞系内
で発現させた抗体が、低フコシル化を呈示するように、フコシルトランスフェラーゼをコ
ードするFUT8遺伝子を機能的に破壊した細胞系について記載している。Presta
によるPCT公開国際公開第03/035835号パンフレットは、フコースをAsn(
297)連結された炭水化物へと付着する能力を低減し、また、その宿主細胞内で発現さ
せた抗体の低フコシル化も結果としてもたらす、変異体のCHO細胞系である、Lecl
3細胞について記載している(また、Shields, R.L.ら、2002 J. Biol. Chem. 277:26733
~26740も参照されたい)。UmanaらによるPCT公開国際公開第99/54342
号パンフレットは、操作細胞系内で発現させた抗体が、抗体のADCC活性の増大を結果
としてもたらす二分枝型GlcNac構造の増大を呈示するように、糖タンパク質を修飾
するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)-Nアセチルグルコサミ
ニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現させるように操作された細胞系
について記載している(また、Umanaら、1999 Nat. Biotech. 17:176~180も参照された
い)。
【0268】
改変抗体を操作する方法
上記で論じた通り、本明細書で示されるVH配列およびVL配列または全長重鎖および
全長軽鎖配列を有するFXIa結合性抗体は、全長重鎖配列および/もしくは全長軽鎖配
列、VH配列および/もしくはVL配列、またはこれらへと付着された定常領域を修飾す
ることにより、新たなFXIa結合性抗体を創出するのに使用することができる。したが
って、本発明の別の態様では、本発明のFXIa結合性抗体の構造特色を使用して、ヒト
FXIaに結合し、また、FXIaの1つまたは複数の機能的特性も阻害すること(例え
ば、FXIaとFXIa受容体の結合を阻害する、FXIa依存性の細胞増殖を阻害する
)など、本発明の抗体の少なくとも1つの機能的特性を保持する、構造的に関連するFX
Ia結合性抗体を創出する。
【0269】
例えば、本発明の抗体の1つまたは複数のCDR領域またはそれらの突然変異は、組換
えにより、公知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組み合わせて、組換え
により操作された、上記で論じた、本発明の、さらなるFXIa結合性抗体を創出するこ
とができる。他の種類の修飾は、前出の節で記載した修飾を含む。操作法のための出発材
料は、本明細書で提示されるVH配列および/もしくはVL配列のうちの1つもしくは複
数、またはそれらの1つもしくは複数のCDR領域である。操作抗体を創出するのに、本
明細書で提示されるVH配列および/もしくはVL配列のうちの1つもしくは複数、また
はそれらの1つもしくは複数のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわち、タ
ンパク質として発現させる)ことは必要ではない。そうではなくて、配列内に含有される
情報を、元の配列に由来する「第2世代の」配列を創出するための出発材料として使用し
、次いで、「第2世代の」配列を、タンパク質として調製し、発現させる。
【0270】
したがって、別の実施形態では、本発明は、配列番号3および23からなる群から選択
されるCDR1配列、配列番号4および24からなる群から選択されるCDR2配列、な
らびに/または配列番号5および25からなる群から選択されるCDR3配列を有する重
鎖可変領域の抗体配列と;配列番号13および33からなる群から選択されるCDR1配
列、配列番号14および34からなる群から選択されるCDR2配列、ならびに/または
配列番号15および35からなる群から選択されるCDR3配列を有する軽鎖可変領域の
抗体配列とからなるFXIa結合性抗体を調製し;重鎖可変領域の抗体配列および/また
は軽鎖可変領域の抗体配列内の、少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して、少なくとも
1つの改変抗体配列を創出し;改変抗体配列を、タンパク質として発現させるための方法
を提供する。
【0271】
したがって、別の実施形態では、本発明は、配列番号6および26からなる群から選択
されるCDR1配列、配列番号7および27からなる群から選択されるCDR2配列、な
らびに/または配列番号8および28からなる群から選択されるCDR3配列を有する重
鎖可変領域の抗体配列と;配列番号16および36からなる群から選択されるCDR1配
列、配列番号17および37からなる群から選択されるCDR2配列、ならびに/または
配列番号18および38からなる群から選択されるCDR3配列を有する軽鎖可変領域の
抗体配列とからなるFXIa結合性抗体を調製し;重鎖可変領域の抗体配列および/また
は軽鎖可変領域の抗体配列内の、少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して、少なくとも
1つの改変抗体配列を創出し;改変抗体配列を、タンパク質として発現させるための方法
を提供する。
【0272】
したがって、別の実施形態では、本発明は、哺乳動物細胞における発現について最適化
されたFXIa結合性抗体であって、配列番号11または31の群から選択される配列を
有する全長重鎖抗体配列と、配列番号21または41の群から選択される配列を有する全
長軽鎖抗体配列とからなるFXIa結合性抗体を調製し、全長重鎖抗体配列および/また
は全長軽鎖抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して、少なくとも1つの改
変抗体配列を創出し、改変抗体配列を、タンパク質として発現させるための方法を提供す
る。一実施形態では、重鎖または軽鎖の改変は、重鎖または軽鎖のフレームワーク領域内
である。
【0273】
改変抗体配列はまた、CDR3配列、またはUS2005/0255552において記
載されている、最小限の不可欠な結合決定基を固定し、CDR1配列およびCDR2配列
には多様性を持たせた抗体ライブラリーをスクリーニングすることによっても調製するこ
とができる。スクリーニングは、ファージディスプレイ技術など、抗体を、抗体ライブラ
リーからスクリーニングするのに適切な任意のスクリーニング技術に従い実施することが
できる。
【0274】
標準的な分子生物学の技法を使用して、改変抗体配列を調製し、発現させることができ
る。改変抗体配列によりコードされる抗体は、ヒト、カニクイザル、ラットおよび/また
はマウスFXIaに特異的に結合すること;ならびに抗体が、F36E細胞増殖アッセイ
および/またはBa/F3-FXIaR細胞増殖アッセイにおいて、FXIa依存性の細
胞増殖を阻害することを含むがこれらに限定されない、本明細書で記載されるFXIa結
合性抗体の機能的特性のうちの1つ、一部、または全部を保持する抗体である。
【0275】
本発明の抗体を操作する方法のある種の実施形態では、FXIa結合性抗体コード配列
の全部または一部に沿って、ランダムに、または選択的に、突然変異を導入することがで
き、結果として得られる修飾FXIa結合性抗体を、本明細書で記載される結合活性およ
び/または他の機能的特性についてスクリーニングすることができる。当技術分野では、
突然変異法が記載されている。例えば、ShortによるPCT公開国際公開第02/0
92780号パンフレットは、飽和突然変異誘発、合成ライゲーションアセンブリー、ま
たはこれらの組合せを使用して、抗体の突然変異を創出し、スクリーニングするための方
法について記載している。代替的に、LazarらによるPCT公開国際公開第03/0
74679号パンフレットは、コンピュータによるスクリーニング法を使用して、抗体の
生理化学的特性を最適化する方法について記載している。
【0276】
本発明のある種の実施形態では、抗体は、脱アミド化部位を除去するように操作されて
いる。脱アミド化は、ペプチド内またはタンパク質内の構造的変化および機能的変化を引
き起こすことが公知である。脱アミドは、生物学的活性の低下のほか、タンパク質医薬品
の薬物動態および抗原性の改変も結果としてもたらしうる(Anal Chem. 2005年3月1日;77
(5):1432~9)。
【0277】
本発明のある種の実施形態では、抗体は、pIを増大させ、それらの薬物様特性を改善
するように操作されている。タンパク質のpIは、分子の全体的な生物物理的特性の鍵と
なる決定因子である。pIが小さな抗体は、可溶性が小さく、安定性が小さく、凝集しや
すいことが公知である。さらに、pIが小さな抗体の精製は、とりわけ、臨床における使
用のためのスケールアップにおいて、困難であり、問題を生じる可能性がある。本発明の
抗FXI抗体および/もしくは抗FXIa抗体またはFabのpIを増大させることによ
り、それらの可溶性が改善され、抗体を高濃度(>100mg/ml)で製剤化すること
が可能となった。抗体を高濃度(例えば、>100mg/ml)で製剤化することにより
、高用量の抗体を投与することが可能であるという利点がもたらされ、これにより、血栓
性障害および/または血栓塞栓性障害を含む慢性疾患を処置するための著明な利点である
、投与頻度の低減を可能とすることができる。pIの増大はまた、抗体のIgGバージョ
ンのFcRnを媒介するリサイクリングも増大させ、これにより、薬物が長時間にわたり
体内にとどまり、要求される注射の回数を少なくすることも可能としうる。最後に、pI
の増大に起因して、抗体の全体的な安定性が著明に改善され、その結果として、保管寿命
およびin vivoにおける生物学的活性の延長がもたらされる。pIは、8.2以上
であることが好ましい。
【0278】
改変抗体の機能的特性は、実施例において示されるアッセイ(例えば、ELISA)な
ど、当技術分野において利用可能であり、かつ/または本明細書で記載される標準的なア
ッセイを使用して評価することができる。
【0279】
予防的使用および治療的使用
本明細書で記載される、FXIおよび/またはFXIaに結合する抗体(例えば、NO
V1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1
に記載されている抗体)は、有効量の、本発明の抗体または抗原結合性断片を、それを必
要とする対象へと投与することにより、血栓塞栓性疾患または血栓塞栓性障害(例えば、
血栓性脳卒中、心房細動、心房細動における脳卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓症
、静脈血栓塞栓症、肺塞栓症、急性冠動脈症候群(ACS)、虚血性脳卒中、急性下肢虚
血症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、または全身性塞栓症)を処置するために、治療的に有
用な濃度で使用することができる。本発明は、有効量の、本発明の抗体を、それを必要と
する対象へと投与することにより、血栓塞栓性障害(例えば、血栓性障害)を処置する方
法を提供する。本発明は、有効量の、本発明の抗体を、それを必要とする対象へと投与す
ることにより、血栓塞栓性障害(例えば、血栓性脳卒中、心房細動、心房細動における脳
卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、肺塞栓症、急性冠動脈症候
群(ACS)、虚血性脳卒中、急性下肢虚血症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、または全身
性塞栓症)を処置する方法を提供する。
【0280】
本明細書で記載される抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL
CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗
体)はとりわけ、本明細書でより詳細に記載される通り、血栓性障害を含むがこれらに限
定されない、血栓塞栓性状態または血栓塞栓性障害を処置、防止、および改善するのに使
用することができる。
【0281】
本明細書で提示される抗体(例えば、NOV1401のVL CDRおよびVH CD
Rを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗体)はまた、血栓塞栓性
障害を防止、処置、または改善するために、他の薬剤と組み合わせて使用することもでき
る。例えば、スタチン療法は、血栓性障害および/または血栓塞栓性障害を伴う患者を処
置するために、本発明のFXIa抗体および抗原結合性断片と組み合わせて使用すること
ができる。
【0282】
本明細書の具体的な実施形態では、心房細動を伴う患者における脳卒中を処置または防
止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば
、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗F
XI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要
とする患者へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0283】
本明細書の具体的な実施形態では、心房細動を伴う患者における塞栓性脳卒中および全
身性塞栓症など、心房細動(AF)と関連する危険性または状態を管理または防止する方
法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV
1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/F
XIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする患
者へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0284】
本明細書の具体的な実施形態では、心房細動を伴う患者における塞栓性脳卒中および全
身性塞栓症など、心房細動(AF)と関連する状態を処置、管理、または防止する方法で
あって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV14
01、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXI
a抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする患者へ
と投与するステップを含む方法が提示される。特定の実施形態では、AF患者は、出血の
危険性が高い。
【0285】
本明細書の具体的な実施形態では、対象(例えば、深部静脈血栓症を伴うか、またはこ
れを発症する危険性がある対象)における深部静脈血栓症またはこれと関連する状態を処
置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/F
XIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH
CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa
抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0286】
本明細書の具体的な実施形態では、対象(例えば、静脈血栓塞栓症を伴うか、またはこ
れを発症する危険性がある対象)における静脈血栓塞栓症(VTE)またはこれと関連す
る状態を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗
FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDR
およびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI
/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される
。特定の実施形態では、本明細書で提示される抗FXI/FXIa抗体で処置される対象
は、がん患者を含め、1)出血の危険性が低い、初回の特発性VTE、2)特発性VTE
の再発、または3)血栓性素因と関連するVTEを経ている。
【0287】
本明細書の具体的な実施形態では、対象(例えば、肺塞栓症を伴うか、またはこれを発
症する危険性がある対象)における肺塞栓症またはこれと関連する状態を処置、管理、ま
たは防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、
例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含
む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それ
を必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0288】
本明細書の具体的な実施形態では、対象における急性冠動脈症候群(ACS)またはこ
れと関連する状態を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記
載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のV
L CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されてい
る抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が
提示される。
【0289】
本明細書の具体的な実施形態では、対象(例えば、虚血性脳卒中を伴うか、またはこれ
を発症する危険性がある対象)における虚血性脳卒中を処置、管理、または防止する方法
であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1
401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FX
Ia抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象
へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0290】
本明細書の具体的な実施形態では、対象における急性下肢虚血症を処置、管理、または
防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例え
ば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗
FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必
要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0291】
本明細書の具体的な実施形態では、対象における慢性血栓塞栓性肺高血圧症を処置、管
理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa
抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CD
Rを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を
、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0292】
本明細書の具体的な実施形態では、対象(例えば、全身性塞栓症を伴うか、またはこれ
を発症する危険性がある対象)における全身性塞栓症を処置、管理、または防止する方法
であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1
401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FX
Ia抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象
へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0293】
本明細書のある種の実施形態では、カテーテルが血栓性となったカテーテル(例えば、
がん患者におけるヒックマンカテーテル)関連状態である、またはチュービングが凝血を
発症させる体外式膜型人工肺(ECMO)である血栓塞栓性状態を処置、管理、または防
止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば
、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗F
XI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要
とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0294】
特定の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV
1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/F
XIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体による処置を必要とする
対象は、
・慢性の抗凝固療法の適応(例えば、AF、左室性血栓、既往の心塞栓性脳卒中)を伴
う対象;
・大量出血の危険性が中等度~高度である対象;
・ステント血栓症を防止するように、二重の抗血小板療法(アスピリンおよびP2Y1
2受容体アンタゴニスト)を施すことを要求しうるステント留置を伴う、待機的経皮冠動
脈インターベンション(PCI)または直接的PCIを受ける対象
を含みうる。
【0295】
特定の実施形態では、以下の状態:
・発作性心房細動もしくは発作性心房粗動、遷延性心房細動もしくは遷延性心房粗動、
または永続性心房細動もしくは永続性心房粗動などの心不整脈を疑われるか、または確認
されている対象における血栓塞栓症;
・心房細動における脳卒中の防止(SPAF)を伴う対象であって、その亜集団が、経
皮冠動脈インターベンション(PCI)を受けるAF患者である対象;
・出血の危険性が大きな患者における、急性静脈血栓塞栓性事象(VTE)の処置、お
よび長期的な続発性VTEの防止;
・一過性虚血性発作(TIA)または非機能障害誘発性脳卒中の後の二次防止における
大脳および心血管事象、ならびに洞調律を伴う心不全における血栓塞栓性事象の防止にお
ける大脳および心血管事象;
・心不整脈のための心除細動を受ける対象における、左心房内の凝血形成および血栓塞
栓症;
・心不整脈のためのアブレーション手順の前、その間、およびその後における血栓症;
・静脈血栓症であり、これは、下肢または上肢における、深部静脈血栓症または表在静
脈血栓症、腹部静脈および胸部静脈における血栓症、静脈洞血栓症および頸静脈血栓症の
処置および二次防止を含むがこれらに限定されない;
・カテーテルまたはペースメーカーの導線など、静脈内の任意の人工表面上の血栓症;
・静脈血栓症を伴うかまたは伴わない患者における肺塞栓症;
・慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH);
・破裂したアテローム性プラーク上の動脈血栓症、動脈内の人工装具上またはカテーテ
ル上の血栓症、および見かけ上正常な動脈内の血栓症であり、これらは、急性冠動脈症候
群、ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症、ステント血栓症、動脈
系内の任意の人工表面の血栓症、および肺高血圧症を伴うかまたは伴わない対象における
肺動脈血栓症を含むがこれらに限定されない;
・経皮冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者における、血栓症および血栓
塞栓症;
・心塞栓性脳卒中および潜因性脳卒中;
・侵襲性および非侵襲性のがん性悪性腫瘍を伴う患者における血栓症;
・留置カテーテルにわたる血栓症;
・重病患者における血栓症および血栓塞栓症;
・心血栓症および血栓塞栓症であり、これらは、心筋梗塞後における心血栓症、心動脈
瘤、心筋線維症、心肥大および心機能不全、心筋炎、ならびに心臓内の人工表面などの状
態と関連する心血栓症を含むがこれらに限定されない;
・心房細動を伴うかまたは伴わない、心弁性心疾患を伴う患者における血栓塞栓症;
・心弁用の機械的または生物学的人工装具にわたる血栓塞栓症;
・単純型心奇形または複合型心奇形の心臓修復術後において、天然または人工の心パッ
チ、動脈または静脈の導管を有した患者における傷害または外傷;
・人工膝関節置換術、人工股関節置換術、および整形外科術、胸部手術または腹部手術
の後における、静脈血栓症および血栓塞栓症;
・頭蓋内インターベンションおよび脊髄インターベンションを含む神経外科術の後にお
ける、動脈血栓症または静脈血栓症;
・第V因子 Leiden、プロトロンビンの突然変異、抗トロンビンIII、プロテ
インC欠損症およびプロテインS欠損症、第XIII因子の突然変異、家族性異常フィブ
リノゲン血症、先天性プラスミノゲン欠損症、第XI因子レベルの上昇、鎌状赤血球病、
抗リン脂質症候群、自己免疫疾患、慢性腸疾患、ネフローゼ症候群、溶血性尿毒症、骨髄
増殖性疾患、播種性血管内凝固、発作性夜間ヘモグロビン尿症、およびヘパリン誘導性血
小板減少症を含むがこれらに限定されない、先天性または後天性の血栓性素因;
・慢性腎疾患における血栓症および血栓塞栓症;ならびに
・血液透析を受ける患者、および体外式膜型人工肺を受ける患者における、血栓症およ
び血栓塞栓症
のうちの1つを、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV140
1、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa
抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体で処置または管理することがで
きる。
【0296】
本明細書の具体的な態様では、本明細書で提示される抗FXI/FXIa抗体(例えば
、NOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など
、表1に記載されている抗体)で処置されるかまたはこれを投与される患者における出血
、例えば、外傷、手術、月経、または産後と関連する出血を管理する方法であって、抗凝
固効果の反転を含む方法が提示される。FXI欠損症は、自発的な出血症状と関連するこ
とがまれであり、具体的な態様では、出血は、外傷、手術、月経、または産後と関連する
ことが最も典型的である。出血の遷延は、大きな外傷の後、または口腔粘膜、鼻腔粘膜、
生殖器粘膜、または泌尿器粘膜などの高線溶領域を伴う臓器に関与する手術の後で生じう
る。抜歯、扁桃摘出術、および子宮または前立腺のアブレーションは、出血の大きな危険
性を伴う手術の例である。また、障害を伴う人々も、鼻血および斑状出血を発症させる傾
向が強く、まれだが、尿中または腸内への出血を発症させる場合もある。FXI欠損症を
伴う患者では、自発的な筋肉または関節の出血および頭蓋内出血の頻度は増大しない。静
脈穿刺は通例、出血の長期化と関連しない。FXI欠損症と関連する他の遺伝子突然変異
は、重度のFXI欠損症を伴う患者における、異質な予測外の出血傾向に寄与しうる。抗
血小板剤、他の抗凝固剤、および線溶薬剤の併用は、出血の危険性を増大させうる。
【0297】
本明細書の特定の実施形態では、本明細書で提示される抗FXI/FXIa抗体(例え
ば、NOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体な
ど、表1に記載されている抗体)で処置される患者における出血を管理する方法であって
、出血を管理するのに十分な時間にわたる、一次的な抗凝固効果の反転を含む方法が提示
される。具体的な実施形態では、抗凝固効果を反転するステップは、(i)コロイド、晶
質、ヒト血漿、もしくはアルブミンなどの血漿タンパク質を使用する体液の置きかえ;ま
たは(ii)濃厚赤血球もしくは全血液による輸血を含む。特定の実施形態では、例えば
、重度の救急症例における、抗凝固剤の効果の反転のための治療剤は、新鮮凍結血漿(F
FP)、プロトロンビン複合体濃縮物(PCC)、および活性化PCC[(APCC);
例えば、第VIII因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)]ならびに組換え活性
化型第VII因子(rFVIIa)など、止血促進性の血液成分を含むがこれらに限定さ
れない。一実施形態では、30μg/kgの用量におけるrFVIIaの投与に続き、6
時間ごと、5~7日間にわたる、1gのトラネキサム酸に加えて、2~4時間ごとに15
~30μg/kgの用量で、24~48時間にわたるrFVIIaの投与を含むレジメン
は、大きな手術を受ける本明細書で提示される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV
1401またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)で処置さ
れる対象、および接近不可能な出血が進行中の部位を伴う患者における止血を回復させ、
出血を止める可能性を有しうる。例えば、Riddelleらは、インヒビターを伴わな
い重度のFXI欠損症を伴う、手術を受ける患者4例における経験について報告したが(
Riddell et al., 2011, Thromb. Haemost.; 106: 521-527)、患者は、30μg/kgの
rFVIIaおよび1gのトラネキサム酸を、麻酔導入時にi.v.投与された。後続の
、15~30μg/kgのrFVIIaのボーラス投与は、Rotational Th
romboelastometry(ROTEM)結果により示される指針の通り、2~
4時間間隔で投与された。患者は、上述の用量のrFVIIaで、24~48時間にわた
り処置された。6時間ごとに1gのトラネキサム酸は、5日間にわたり継続された。この
少量シリーズでは、トラネキサム酸と組み合わせた、15~30μg/kgという低用量
のrFVIIaは、この研究の重度のFXI欠損症における止血異常の矯正において、安
全かつ有効であった。インヒビター(通例、重度のFXI欠損症を伴う患者への輸血また
は血液製剤の投与の後で獲得される、自家FXI中和抗体)を伴う重度のFXI欠損症を
伴う、5件の手術を経た患者4例を含む別の研究では、著者ら(Livnat et al., 2009, T
hromb. Haemost.; 102: 487-492)は、以下のプロトコールを適用した:手術の2時間前
における、経口トラネキサム酸1g、次いで、インターベンションの直前に、患者に、別
のi.v.トラネキサム酸1gを施した。用量を15~30μg/kgの範囲とする組換
えFVIIaを、手術の完了時に注入した。その後、経口トラネキサム酸1gを、6時間
ごとに、少なくとも7日間にわたり施した。フィブリン接着剤を、患者1例における、摘
出された胆嚢床に噴霧した。このプロトコールは、インヒビターを伴う重度のFXI欠損
症を伴う患者における、正常な止血を確保した。
【0298】
一態様では、フィブリン接着剤を使用して、FXI欠損症を伴う患者における、歯科手
術時の局所止血を回復させることができる(Bolton-Maggs (2000) Haemophilia; 6 (S1):
100-9)。本明細書で提示される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)で
処置される患者における出血を管理する方法に関する、ある種の実施形態では、フィブリ
ン接着剤の使用と関連する、6時間ごと、5~7日間にわたるトラネキサム酸1gからな
るレジメンは、小さな手術を受ける対象、および口腔および鼻腔における出血事象を含む
、出血している部位が接近可能な対象において、局所的な止血を確立するのに使用されう
る。
【0299】
医薬組成物
本発明は、薬学的に許容される担体と併せて製剤化されたFXIa結合性抗体(インタ
クトなまたは結合性断片)を含む医薬組成物を提供する。組成物は加えて、例えば、血栓
塞栓性障害(例えば、血栓性障害)の処置または防止に適する1つまたは複数の他の治療
剤も含有しうる。薬学的に許容される担体は、組成物を増強するかもしくは安定化させる
か、または、組成物の調製を容易とするのに使用することもできる。薬学的に許容される
担体は、生理学的に適合性の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張
剤および吸収遅延剤などを含む。
【0300】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知の様々な方法により投与することができる。
投与経路および/または投与方式は、所望される結果に応じて変化する。投与は、静脈内
投与(i.v.)、筋内投与(i.m.)、腹腔内投与(i.p.)、もしくは皮下投与
(s.c.)であるか、または標的部位に近接して投与することが好ましい。薬学的に許
容される担体は、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、または表皮
投与(例えば、注射または注入による)に適するものとする。投与経路に応じて、活性化
合物、すなわち、二特異性分子および多特異性分子である抗体は、化合物を、化合物を不
活化しうる酸および他の天然の状態の作用から保護する材料でコーティングすることがで
きる。
【0301】
特定の態様では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV14
01、またはNOV1401のLCDRおよびHCDRを含む抗体など、表1に記載され
ている抗体)を、皮下注射のための流体バイアル中に1mL当たり約75mg~1mL当
たり約200mgの濃度で製剤化する。特定の実施形態では、医薬組成物は、医薬担体ま
たは医薬賦形剤、例えば、スクロースおよびポリソルベート20を含む。特定の実施形態
では、医薬組成物は、L-ヒスチジンおよび/またはヒスチジンHCl一水和物を含む。
ある種の実施形態では、医薬組成物は、約4~7または5~6のpHを有する。
【0302】
特定の態様では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV14
01、またはNOV1401のLCDRおよびHCDRを含む抗体など、表1に記載され
ている抗体)を、皮下注射のための流体バイアル中に1mL当たり150mgの濃度で製
剤化する。一実施形態では、150mg/mLの流体製剤は、pH=5.5±0.5とし
て、150mgの抗FXI/FXIa抗体、L-ヒスチジン、ヒスチジンHCl一水和物
、スクロース、およびポリソルベート20を含有する。組成物は、滅菌であり、かつ、流
体であるものとする。適正な流体性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用する
ことにより維持することができ、分散液の場合には、要求される粒子サイズを維持し、界
面活性剤を使用することにより維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、
例えば、糖、マンニトールまたはソルビトールなどの多価アルコール、および塩化ナトリ
ウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長時間吸収は、組成物中に、吸収を遅延させ
る薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組み入れることにより
もたらすことができる。
【0303】
本発明の医薬組成物は、当技術分野において周知であり、日常的に実施されている方法
に従い調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharm
acy、Mack Publishing Co.、20版、2000;およびSustained and Controlled Release Dru
g Delivery Systems、J.R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc.、New York、1978を参照さ
れたい。医薬組成物は、GMP条件下で製造することが好ましい。本発明の医薬組成物中
では、FXIa結合性抗体の治療的に有効な用量または治療的に効果的な用量を援用する
ことが典型的である。FXIa結合性抗体は、当業者に公知の従来の方法により、薬学的
に許容される剤形へと製剤化する。投与レジメンは、所望される最適応答(例えば、治療
的応答)をもたらすように調整する。例えば、単一のボーラスを投与することもでき、複
数に分割された用量をある期間にわたり投与することもでき、治療状況の要件により指し
示されるのに応じて、用量を比例的に低減するかまたは増大させることもできる。投与の
容易さおよび投与量の均一性のために、非経口組成物を、投与量単位形態で製剤化するこ
とがとりわけ有利である。本明細書で使用される投与量単位形態とは、処置される対象の
ための単位投与量として適する、物理的に個別の単位を指す。各単位は、要求される医薬
担体との関連で、所望の治療効果をもたらすように計算された、所定量の活性化合物を含
有する。
【0304】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性とならずに、特
定の患者、組成物、および投与方式に所望される治療的応答を達成するのに有効な量の有
効成分を得るように変化させることができる。選択される投与量レベルは、援用される本
発明の特定の組成物、それらの活性、投与経路、投与時期、援用される特定の化合物の排
出速度、処置の持続期間、援用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、
化合物、および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康、
および医療既往歴などの因子を含む様々な薬物動態因子に依存する。
【0305】
医師は、医薬組成物中で援用される本発明の抗体の投与を、所望の治療効果を達成する
のに要求されるレベル未満のレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで、投与量を漸
増させることができる。一般に、本明細書で記載される血栓性および/または血栓塞栓性
障害を処置するのに有効な、本発明の組成物の用量は、投与手段、標的部位、患者の生理
学的状態、投与される他の薬物、および処置が予防的であるのか治療的であるのかを含む
、多くの異なる因子に応じて変化する。処置投与量は、安全性および有効性を最適化する
ように滴定することが必要である。抗体の全身投与では、投与量は、宿主の体重1kg当
たり約0.01~15mgの範囲である。抗体の投与(例えば、皮下投与)では、投与量
は、0.1mg~5mgまたは1mg~600mgの範囲でありうる。例えば、本明細書
で記載される抗FXI/FXIa抗体は、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3
mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/k
g、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.
2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/
kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kg、2
.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg
/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.8mg/kg、2.9mg/kg、
3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4m
g/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg
、3.9mg/kg、4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3
mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/k
g、4.8mg/kg、4.9mg/kg、または5.0mg/kgの用量で投与するこ
とができる。例示的な処置レジメは、2週間ごとに1回、または毎月1回、または3~6
カ月ごとに1回の全身投与を伴う。例示的な処置レジメは、毎週1回、2週間ごとに1回
、3週間ごとに1回、毎月1回、もしくは3~6カ月ごとに1回、または必要に応じて(
PRN)の全身投与を伴う。
【0306】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.またはs.c.により、3mg/kg
の用量で投与する。
【0307】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.またはs.c.により、10mg/k
gの用量で投与する。
【0308】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.またはs.c.により、30mg/k
gの用量で投与する。
【0309】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.またはs.c.により、50mg/k
gの用量で投与する。
【0310】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.またはs.c.により、100mg/
kgの用量で投与する。
【0311】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.経路またはs.c.経路により、5m
g~600mgの範囲の用量で投与する。
【0312】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.経路またはs.c.経路により、約5
mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、90
mg、100mg、120mg、150mg、180mg、200mg、210mg、2
40mg、250mg、270mg、300mg、330mg、350mg、360mg
、390mg、400mg、420mg、450mg、480mg、500mg、510
mg、540mg、550mg、570mg、または600mgの用量で投与する。
【0313】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、s.c.経路により、5mgの用量で投与する
。
【0314】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、s.c.経路により、15mgの用量で投与す
る。
【0315】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、s.c.経路により、50mgの用量で投与す
る。
【0316】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、s.c.経路により、150mgの用量で投与
する。
【0317】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、s.c.経路により、300mgの用量で投与
する。
【0318】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、s.c.経路により、600mgの用量で投与
する。
【0319】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.経路またはs.c.経路により、aP
TTの平均持続時間の、2倍以上の延長を、30日間、35日間、36日間、37日間、
38日間、39日間、40日間、41日間、42日間、43日間、44日間、45日間、
または50日間を超えない期間にわたり達成するのに十分な用量で投与する。
【0320】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NO
V1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、
表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.経路またはs.c.経路により、aP
TTの平均持続時間の、2倍以上の超える延長を、42日間を超えない期間にわたり達成
するのに十分な用量で投与する。
【0321】
抗体は通例、複数回投与する。単回の投与の間の間隔は、毎週、隔週、毎月、または毎
年でありうる。間隔はまた、患者におけるFXI結合性抗体および/もしくはFXIa結
合性抗体の血中レベルを測定することにより指し示される通り、不規則でもありうる。加
えて、医師が代替的な投与間隔を決定する場合もあり、毎月または効果的であるのに必要
な間隔で投与する。全身投与のいくつかの方法では、投与量は、抗体の血漿中濃度1~1
000μg/mLまたは1~1200μg/mLを達成するように調整し、いくつかの方
法では、25~500μg/mLを達成するように調整する。代替的に、抗体は、持続放
出製剤として投与することもでき、この場合は、低頻度の投与が要求される。投与量およ
び頻度は、患者における抗体およびその標的の半減期に応じて変化する。一般に、ヒトお
よびヒト化抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体の半減期より長いヒトにおける半減期を
示す。投与量および投与頻度は、処置が予防的であるのか治療的であるのかに応じて変化
しうる。予防的適用では、比較的低投与量を、比較的低頻度の間隔で、長期にわたり投与
する。一部の患者には、彼らの余生にわたり処置を施し続ける。治療的適用では場合によ
って、比較的高投与量が、疾患の進行が軽減されるか終結するまで、比較的短い間隔で要
求され、好ましくは、患者が、疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで要求され
る。その後、患者には、予防的レジメンを投与することができる。
【実施例】
【0322】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するために提示されるものであり、その範囲を限
定するために提示されるものではない。当業者には、本発明の他の変形がたやすく明らか
であろうし、添付の特許請求の範囲によっても包含される。
【0323】
実施例1
ヒトFabファージライブラリーによるパニング
ヒト第XI因子を認識する抗体を選択するために、複数のパニング戦略を活用した。ヒ
ト第XI因子およびウサギ第XIa因子の触媒ドメインタンパク質の異なる変異体に対す
る治療用抗体は、抗体の供給源として、市販の相ディスプレイライブラリーである、Mo
rphosys HuCAL PLATINUM(登録商標)ライブラリーを使用して、
第XI因子に結合したクローンを選択することにより作り出した。ファージミドライブラ
リーは、ファージ表面上にFabを提示するために、HuCAL(登録商標)概念(Knap
pik et al., 2000, J Mol Biol 296: 57-86)に基づき、CysDisplay(商標)
技術を援用する(国際公開第01/05950号パンフレット)。抗第XI因子抗体の流
体相を単離するために、パニング戦略を援用した。
【0324】
交差反応性解析
精製Fabを、ELISAにおいて、ヒト第XI因子(第XI因子、第XIa因子、お
よび第XIa因子の触媒ドメイン)およびウサギ第XIa因子の触媒ドメインのビオチニ
ル化タンパク質の、異なる変異体への結合について調べた。この目的で、Maxisor
p(商標)(Nunc)384ウェルプレートを、4℃、PBS中10ug/mlのNe
utrAvidinで一晩にわたりコーティングした。抗原は、NeutrAvidin
上、ビオチンを介して、室温(RT)で30分間にわたり捕捉した。異なる濃度のFab
の結合は、Attophos蛍光基質(Roche:型番11681982001)を使
用して、アルカリホスファターゼ(1:5000に希釈した)へとコンジュゲートさせた
、F(ab)2特異的ヤギ抗ヒトIgGにより検出した。535nmにおける蛍光発光は
、430nmにおける励起により記録した。
【0325】
IgGへの転換およびIgGの発現
全長IgGを、CAP-T細胞内で発現させるために、重鎖の可変ドメイン(VH)断
片および軽鎖の可変ドメイン(VL)断片を、Fabの発現ベクターから、ヒトIgG1
に適切なpMorph(登録商標)_hIgベクターへとサブクローニングした。2カ所
のアミノ酸置換(D265AおよびP329A)を、Fc部分に導入して、任意の表面関
連FXIにより引き起こされる、ADCCまたはCDCの可能性を低減した。これらのア
ラニン置換は、ADCCおよびCDCを低減することが示されている(例えば、Idosugie
et al., J. Immunol. 164:4178-4184, 2000; Shields et al., J. Biol. Chem. 276:659
1-6604, 2001を参照されたい)。トランスフェクションの7日後に、細胞培養物上清を採
取した。滅菌濾過の後で、リキッドハンドリングステーションを使用して、溶液を、プロ
テインAアフィニティークロマトグラフィーにかけた。試料を、50nMのクエン酸、1
40nMのNaOH中で溶出させ、1Mのトリス緩衝液でpHを中和し、滅菌濾過した(
0.2μmの小孔サイズ)。タンパク質濃度は、280nmにおけるUV分光光度法によ
り決定し、IgGの純度は、SDS-PAGE中の変性還元条件下で解析した。
【0326】
実施例2
結合データ
FXI触媒ドメインについての表面プラズモン共鳴(SPR)解析
SPR測定は、表面プラズモン共鳴ベースの光学バイオセンサーであるBIACORE
(商標)T200(BIACORE(商標)、GE Healthcare、Uppsa
la)上で実施した。Series Sセンサーチップ(CM5)、固定化キット、およ
び再生緩衝液は、GE Healthcare(Uppsala)から購入した。IgG
またはFabのリガンドフォーマットに応じて、2つの異なるアッセイセットアップを実
施した。まず、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびN-(3-ジメチルアミ
ノプロピル)-N-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDC)により、表面を活性
化させた。標準的なアミンカップリング法(GE Healthcare、Uppsal
a)により、NOV1401-Fabを、CM5チップ上の活性化デキストランマトリッ
クスへと共有結合的に付着させた。NOV1401-IgGについて捕捉アッセイを実施
し、ヤギ抗ヒトIgG-Fc抗体(JIR)を、14000RUで、チップ上に固定化し
た。残りの活性表面基は、エタノールアミン(EA)で不活化した。リガンドを固定化さ
せていない基準細胞を調製し、システムを、1倍濃度のHBS-EP+緩衝液(10mM
のHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%のP20、pH7
.4;Teknova H8022)で平衡化させた。
【0327】
全ての結合実験は、HBS-EP+緩衝液を使用して、25℃、50μL/分の流量で
実施した。捕捉アッセイのために、NOV1401-IgGを、80のRUレベルに達す
るまで捕捉した。反応速度研究のために、HBS-EP+緩衝液中0~200nMの範囲
の濃度で、FXI触媒ドメインの希釈系列を使用した。会合時間は、120秒間であり、
解離時間は、180秒間であった。表面は、10mMグリシン、pH1.5の単回注入(
接触時間を60秒間とし、安定化時間を120秒間とする)により再生させた。データの
加工ならびにkon、koff、およびKDの決定は、T200 BiaEvaluat
ionソフトウェアバージョン1.0により達成した。二重基準(基準注入およびブラン
ク注入の控除)を適用して、バルク効果および他の系統的アーチファクトについて補正し
た。1:1結合モデル(Rmaxをグローバルに設定した)を適用することにより、セン
サーグラムを当てはめた。
【0328】
FXIおよびFXIaについての溶液中平衡滴定(SET)
22の1.6倍抗原希釈系列(serial 1.6 n dilution)を、試料緩衝液(0.5%の
BSAおよび0.02%のTween 20を含有する、pH7.4のPBS)中で調製
し、一定濃度のNOV1401-Fab(huFXIについては、200pMとし、hu
FXIaについては、500pMとした)またはNOV1401抗体(huFXIおよび
huFXIaについては、10pMとする)を、各抗原濃度へと添加した。抗原希釈系列
の出発濃度は、huFXIaについては、100nMとし、huFXIについては、20
nM(Fabアッセイ)または1nM(IgGアッセイ)とした。ウェル1つ当たり60
μlずつの希釈ミックスを、二連で、384ウェルのポリプロピレンMTPへと分配した
。試料緩衝液を、陰性対照として用い、抗原を含有しない試料を、陽性対照(Bmax)
として用いた。プレートを、シェーカー上、室温で一晩にわたり、シーリングおよびイン
キュベートした。標準的な384ウェルMSDアレイMTPを、PBS中で希釈された、
0.1μg/mlのhuFXIa(huFXIaおよびhuFXIについて)ウェル1つ
当たり30μlでコーティングし、4℃で一晩にわたり、シーリングおよびインキュベー
トした。
【0329】
インキュベーションおよびTBST(0.05%のTween 20を含有するTBS
)による3回にわたる洗浄の後、抗原でコーティングしたMSDプレートを、ウェル1つ
当たり50μlのブロッキング緩衝液(5%のBSAを含有するPBS)でブロッキング
し、シェーカー上、室温で1時間にわたりインキュベートした。洗浄ステップを繰り返し
、ウェル1つ当たり30μlのFab-抗原調製物/IgG-抗原調製物を、ポリプロピ
レンMTPから、抗原でコーティングしたMSDプレートへと移し、シェーカー上、室温
で20分間にわたりインキュベートした。さらなる洗浄ステップの後、試料緩衝液中で希
釈された、0.5μg/mlのECL標識ヤギ抗ヒト-IgG/Fab検出抗体(MSD
)30μlを、各ウェルへと添加し、振とうしながら、室温で30分間にわたりインキュ
ベートした。再度、プレートを3回にわたり洗浄した後で、35μlのリード緩衝液(M
SD)を、各ウェルへと添加した。電気化学発光(ECL)シグナルを発生させ、MSD
Sector Imager 6000で検出した。
【0330】
平均ECLシグナルを、各アッセイ内の二連の測定から計算した。データは、全てのデ
ータ点から最低値を控除することにより、ベースラインで調整し、対応する抗原濃度に対
してプロットした。KD値は、プロットを、以下の1:1(Fabについて)または1:
2(IgGについて)の当てはめモデル(Piehler et al,. 1997に従う)で当てはめるこ
とにより決定した。
【0331】
結果
結果を、表3および4にまとめる。FabおよびIgGのいずれのNOV1401フォ
ーマットについても、BIACORE(商標)により決定される通り、FXI触媒ドメイ
ンについて、約20nMのKD値を得た。Fabの、活性化型FXIおよびチモーゲンF
XIのいずれに対するアフィニティーもpMの範囲であり、触媒ドメインに対するアフィ
ニティーの、それぞれ、66および300倍であった。それらの高アフィニティーに基づ
き、これらの相互作用を、SETアッセイにより測定した。NOV1401-Fabは、
チモーゲンFXI(62pM)に対して、活性化型FXI(305pM)に対する場合の
5倍のアフィニティーを呈した。相互作用は、アビディティー効果による影響を受ける可
能性があるので、NOV1401-IgGの、二量体のチモーゲンFXIおよび活性化型
FXIのいずれに対するアフィニティーも、見かけのKD値として記録される。
【0332】
NOV2401はまた、カニクイザルFXIにも結合することを確認するため、SET
実験を、カニクイザル活性化型FXIおよびカニクイザルチモーゲンFXIについて実施
し、結果として、それぞれ、12.5±6.6pM(N=2)および5.0±0.7pM
(N=2)の、見かけのKD値を得た。よって、NOV1401の、カニクイザルFXI
タンパク質(活性形態およびチモーゲン)に対するアフィニティーは、ヒトFXIへの結
合についてのアフィニティーと同等である(表3)。
【0333】
【0334】
【0335】
実施例3
生化学アッセイ:蛍光ペプチドを基質として使用する活性アッセイにおけるFXIaの阻
害
ヒトFXIa(Kordia Life Science NL:型番HFXIa 1
111a)の活性は、配列D-Leu-Pro-Arg*Rh110-D-Pro(製品
番号:BS-2494;Biosyntan GmbH、Berlin、Germany
)を伴う、蛍光標識されたペプチドの切断をモニタリングすることにより決定する。上に
記載した基質配列では、*は、切断性結合である、D-Leu:D-ロイシン、Pro:
プロリン、Arg:アルギニン、Rh110:ローダミン110、D-Pro:D-プロ
リン)を指し示す。ペプチド基質の切断性結合の、FXIaを媒介する切断は、それぞれ
、485nmおよび535nmの励起波長および発光波長を使用する場合の、ローダミン
110の蛍光強度の増大をもたらす。蛍光強度は、室温(RT)で、マイクロタイタープ
レートリーダーSafire2(TECAN、Maennedorf、Switzerl
and)を使用して連続して測定する。アッセイ緩衝液は、pH7.4の50mM HE
PES、125mMのNaCl、5mMのCaCl2、および0.05%(w/v)のC
HAPSを含有する。最終的な活性アッセイでは、ヒトFXIaおよび基質であるBS-
2494は、それぞれ、0.1nMおよび0.5μMのアッセイ濃度を有する。これらの
条件下で、時間経過にわたる蛍光強度の増大は、少なくとも60分間にわたり直線的であ
る。
【0336】
抗体の阻害活性について調べるため、0.05%(w/v)のCHAPSを含有するP
BS緩衝液(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、10mMのNa2HPO4、
1.8mMのKH2PO4)中で、抗体の希釈系列を調製する。2μLの抗体溶液を、1
0μLのFXIa溶液(アッセイ緩衝液中)と共に、室温で60分間にわたりプレインキ
ュベートする。プレインキュベーションステップの後で、10μLの基質であるBS-2
494(アッセイ緩衝液中で希釈した)を添加し、酵素反応を60分間にわたり進行させ
、その後、蛍光強度を測定する。対照反応(阻害されていない反応物のシグナルは、0%
の阻害と同等であり、酵素を含有しない反応物のシグナルは、100%の阻害と同等であ
る)および値を移行させるための以下の式:
y=100%-[FI(x)-FI(min)]/[FI(max)-FI(min)]
[式中、yは、抗体濃度をxとするときの阻害%であり、FI(x)は、抗体濃度をxと
するときに測定される蛍光強度であり、FI(min)は、抗体の非存在下にある対照反
応において測定される蛍光強度であり、FI(max)は、阻害されていない対照反応に
おいて測定される蛍光強度である]を使用することにより、蛍光強度値を、阻害パーセン
トへと変換する。データは、Origin 7.5SR6プログラム(OriginLa
b Corporation、USA)を使用して解析する。平均データによるIC50
値は、ロジスティックス関数:
y=A2+(A1-A2)/(1+(x/IC50)p)
[式中、yは、抗体濃度をxとするときの阻害%であり、A1は、最小の阻害値であり、
A2は、最大の阻害値である。指数pは、ヒル係数である]を使用して計算する。
【0337】
図6Aは、抗体であるNOV1401の、全長ヒトFXIaの酵素活性に対する阻害に
ついての代表的な複合応答曲線を示す。結果は、NOV1401が、ヒト全長FXIaの
酵素活性を、濃度依存的に阻害することを示す(
図6A)。ロジスティック当てはめモデ
ルによる当てはめは、約160pMのIC
50値をもたらす。
【0338】
実施例4
抗FXIa Abの抗凝固活性
活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイおよびトロンビン生成アッセ
イ(TGA)を使用することにより、抗体であるNOV1401およびNOV1090の
抗血栓活性について調べた。
【0339】
aPTTアッセイ:
凍結乾燥正常ヒト血漿「凝固対照N」(参照番号:5020050)は、Techno
clone GmbH(Vienna、Austria)から購入した。凝固対照Nは、
選択された健常ドナーのクエン酸血漿からプールされた。この正常血漿に関して得られる
凝血時間は、凝血に関与する凝固因子の正常濃度を反映する。凍結乾燥血漿は、4℃で保
管した。その使用前に、バイアルを注意深く回転させ、次いで、室温で10分間にわたり
保つことにより、血漿を、1mLの蒸留水中に再懸濁させた。
【0340】
内因系経路誘発試薬である「aPTT-s」(参照番号:TE0350)は、SYCO
med(Lemgo、Germany)から購入したものであり、緩衝液(塩化ナトリウ
ム、ポリエチレングリコール20000;スクロース、アジ化ナトリウム)中に、リン脂
質およびケイ酸塩(コロイド状)を含有する。溶液は、4℃で保管した。
【0341】
塩化カルシウム(参照番号:C1016-500G;Sigma-Aldrich C
hemie GmbH、Steinheim、Germany)は、二回蒸留水中に25
mMの原液濃度で調製した。
【0342】
pH7.5のUltraPureトリス/HCl緩衝液(参照番号:15567-02
7;Life Technologies Corporation、NY、USA)お
よびリン酸緩衝生理食塩液(PBS;参照番号:P4417-100TAB;Sigma
-Aldrich Chemie GmbH、Steinheim、Germany)を
、複合希釈剤とした。
【0343】
3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネートヒ
ドレート(CHAPS;参照番号:C3023-25G)および無水ジメチルスルホキシ
ド(DMSO、参照番号:276855-100ML)は、Sigma-Aldrich
Chemie GmbH(Steinheim、Germany)から購入した。
【0344】
凝血時間の測定は、半自動式の機械的凝血検出システムである、Amelung ba
ll coagulometer model KC4A(SYCOmed、Lemgo
、Germanyから購入した)により実施した。システムは、ステンレス鋼製のボール
(参照番号:AI5000;SYCOmed)を入れた特製のキュベット(参照番号:A
I4000;SYCOmed)を活用する。
【0345】
試料を、キュベットへと添加する。適切なインキュベーション時間の後、キュベットを
、Amelung ball coagulometerの測定ウェルに入れる。測定ウ
ェルは、ゆっくりと回転し、キュベットにその長軸の周りを回転させる。キュベットは、
やや傾いて置かれるため、重力および慣性力は、ボールを、常にキュベットの最も低い位
置に置く。ボール位置の正反対の位置に、磁気センサーがある。誘発試薬を添加したら、
タイマーを始動させる。凝固が生じると、反応混合物中に、フィブリン鎖が形成される。
フィブリン鎖は、ボールを、その慣性位置から引き離し、これにより、磁気センサー内に
、インパルスを誘発する。このインパルスは、タイマーを電気的に停止させる。ピペッテ
ィングスキームは、以下(表4a)の通りであった。
【0346】
【0347】
試料は、Amelung ball coagulometer内、二連、37℃の温
度で測定した。
【0348】
図6Bは、aPTT凝血時間の濃度依存的延長をもたらす抗体であるNOV1401の
代表的な複合応答曲線を示す。結果は、NOV1401が、ヒト血漿のaPTT凝血時間
の延長を、濃度依存的にもたらすことを示唆する。aPTT凝血時間は、約14nMの濃
度のNOV1401でベースラインと比較して、倍増する。IC
50値は、約13nMで
あると計算された。
【0349】
トロンビン生成アッセイ(TGA):
TGA凍結乾燥正常ヒト血漿(凝固対照N)は、Technoclone GmbH(
参照番号:5020040、ロット番号:1P37B00)から購入し、製造元により示
唆される容量中の蒸留水中で再構成する。
【0350】
Technoclone GmbH(参照番号:5006230、ロット番号:8F4
1B00)製の蛍光性基質であるZ-Gly-Gly-Arg-AMCを使用して、基質
溶液を調製した。凍結乾燥基質のアリコートを、4℃に保った。アッセイにおけるその使
用の20分前に、バイアル上に表示の容量の蒸留水中に新たに基質を溶解させた。再構成
された基質溶液は、1mMの濃度の蛍光性ペプチドと、15mMの濃度のCaCl2とを
含有する。
【0351】
内因系経路および外因系経路をそれぞれ誘発するための2つの異なる試薬である、「T
GA RD」(参照番号:500622)および「TGA RC Low」(参照番号:
5006213)は、Technoclone GmbH(Vienna、Austri
a)から購入した。誘発試薬である「PPP(乏血小板血漿)-Reagent Low
」は、Thrombinoscope(TS31.00、ロット番号:PPL1409/
01)から購入し、バイアル上に表示の蒸留水中で再構成した。「PPP-Reagen
t Low」は、リン脂質と組織因子との混合物を、非常に低濃度で含有する。試薬は、
使用の直前に、pH7.4の80mMトリス/HCl、0.05%(w/v)のCHAP
S中で8倍希釈した。
【0352】
試料は、Costar(製品番号:3603)から購入した96ウェル黒透明底プレー
トにアリコート分割し、この中で測定した。自動化移入のために、試料を、V字底96ウ
ェルプレート(Costar、3894)に入れ、CyBio自動化システム(Anal
ytik Jena US、Woburn、MA、USA)を使用して移した。
【0353】
再構成されたヒト血漿、誘発試薬である「PPP-Reagent Low」、および
基質を、水浴中37℃で10分間にわたり、あらかじめ加熱した。PBS中に1:3の抗
体希釈系列を、96ウェルプレート内、5μM(1μMの最終最高濃度の5倍の濃度)の
NOV1401濃度で始めて、合計8つの希釈率にわたり調製した。222μlの誘発試
薬を、1108μlの基質溶液と混合して、10+50誘発試薬基質ミックスを作り出し
た。自動化システムを使用する後続の移入のために、ウェル1つ当たり80μlを、V字
底96ウェルプレートへと添加した。プレートは、37℃に保った。試薬は、表4bに示
すスキームに従い添加した。
【0354】
【0355】
自動化を使用して、誘発剤/基質混合物を移した。混合物を添加した後で、Syner
gy Neo instrument(BioTek Instrument Inc.
、Winooski、VT、USA)を使用して、それぞれ360nmおよび460nm
の励起および発光を、速やかに記録した。試料は、プレートリーダー内、37℃の温度で
、55秒間隔の二連で、90分間にわたり測定した。
【0356】
ピークを生成するために、Technocloneから提供されるTGA査定ソフトウ
ェアファイルを使用して、トロンビン濃度値データを加工した。ピークについてのプロッ
トを作り出すために、GraphPadソフトウェアを使用して、トロンビン濃度対抗体
濃度のデータを当てはめた。これらのデータを、GraphPad Prism5ソフト
ウェア(GraphPad Software Inc.、La Jolla、CA、U
SA)内の非線形回帰モデルへと当てはめた。IC50値は、ビルトイン型の4パラメー
タ用量応答曲線式(傾き可変型):y=Bottom+(Top-Bottom)/(1
+10(Log IC50-x)×HillSlope)[式中、yは、インヒビター濃
度をxとするときに形成される最大トロンビン濃度であり、TopおよびBottomは
、それぞれ、インヒビターを伴わない場合のトロンビン濃度およびインヒビターの最大濃
度におけるトロンビン濃度を表す]を使用して決定した。
【0357】
図6Cは、TGAでのトロンビン生成の濃度依存的な阻害を表示する、抗体であるNO
V1401についての代表的な複合応答曲線を示す。24nMのIC
50値および159
nMの残留トロンビン濃度(点線)を、この複合応答曲線について計算した。
【0358】
実施例5
NOV1401(Fab)-FXI(触媒ドメイン)のタンパク質発現、複合体形成、結
晶化、および構造決定
第XI因子触媒ドメインを伴う複合体内のパパイン切断により得られる、抗体NOV1
401のFab部分の構造は、2.04Åの分解能で共結晶化により得た。
【0359】
タンパク質の発現:
FXI触媒ドメインの発現構築物は、システインへと突然変異した、不対合システイン
であるC500を伴う、アミノ酸残基388~625(Swissprot P0395
1)からなり、アミノ酸であるMGSS(配列番号49)、オクタヒスチジンタグ(配列
番号50)、PreScission(商標)切断部位に続く、エンテロキナーゼ切断部
位から構成されるN末端伸長を伴った。構築物は、遺伝子合成によりアセンブルし、pE
T24a発現ベクターへとクローニングし、LB培地中で増殖させた、大腸菌(E. coli
)のBL21(DE3)株内の封入体として発現させた。封入体は、50mMのトリス/
HCl pH8.0、6.0Mの塩化グアニジニウム、50mMのDTT中で、2時間に
わたり可溶化させ、組換えタンパク質を完全に変性させた。大過剰量のリフォールディン
グ緩衝液(0.5MのトリスpH8.0、0.9MのアルギニンHCl、5mMのGSH
、0.5mMのGSSG、1mMのEDTAを、IB溶液へと、最終タンパク質濃度50
ug/mlまで速やかに添加して、4℃で5日間にわたりインキュベートした。リフォー
ルディングおよびジスルフィド架橋形成は、3日間にわたる、緩衝液A(50mMのトリ
スpH8.0)を伴う透析により達成した。
【0360】
リフォールディングしたタンパク質は、緩衝液Aで平衡化させ、洗浄した、Q-Sep
harose(登録商標)FF(GE Healthcare)を含有するアニオン交換
クロマトグラフィーカラムへとロードした。結合しなかった組換えタンパク質は、フロー
スルーおよび洗浄画分から回収した。エンテロキナーゼ(エンテロキナーゼ:組換えタン
パク質の比を1:100とし、インキュベーション時間を2.5時間とする)を使用して
、N末端のタグ配列を除去する前に、pH7.4の50mMトリスを伴う透析により、p
Hを、7.4へと調整した。切断反応は、試料を、緩衝液B(pH7.4の50mMトリ
ス、0.5MのNaCl)で平衡化させ、洗浄された、Benzamidine Sep
harose 4 FF(high sub)(GE Healthcare)を含有す
るベンズアミジンアフィニティーカラムへとロードすることにより停止させ、緩衝液C(
50mMのベンズアミジンを含有する緩衝液B)で溶出させた。活性FXI触媒ドメイン
を、pH5.3の20mM酢酸Na、75mMのNaClで平衡化させた、XK 26/
600 Superdex 75サイズ除外カラム(GE Healthcare)へと
ロードした。最終タンパク質濃度は、1.07mg/mlであった。
【0361】
NOV1401のFab部分は、IgGのパパイン切断により得た。最終Fab濃度は
、PBS中に11mg/mlであった。消化は、1:100の比(w/w)で抗体へと添
加されたパパイン(Roche Diagnostics:108 014;10mg/
ml)を使用し、かつ、1mMのシステイン(元のIgG溶液へと添加した)の存在下、
37℃で一晩にわたり実施した。消化は、50μMの特異的パパインインヒビターである
E64(N-[N-(L-3-trans-カルボキシラン-2-カルボニル)-L-ロ
イシル]-アグマチン)を添加することにより停止させ、Fc部分を除去するために、消
化物を、小型のプロテインAカラム(5mL)に通過させた。Fabは、フロースルー中
で回収し、PBSに対して透析し、限外濾過により、その最終濃度まで濃縮し、滅菌濾過
した(0.22μm)。
【0362】
複合体形成、結晶化、および構造分解:
FXI触媒ドメインとFabとを、等モル比で混合し、約9mg/mlの最終濃度まで
濃縮した。
【0363】
データ収集のために使用する結晶は、0.3μLのレザバー溶液(0.2Mの塩化アン
モニウム、20%のPEG 3350)、0.2μLのFab-FXI複合体、および第
1のラウンドの結晶スクリーニングで得られた結晶に由来する、0.1μLの結晶シード
を混合する、シッティングドロップ蒸気拡散法を援用して、277Kで得た。
【0364】
データ収集のために、結晶を、液体窒素中で、直接瞬時凍結させた。データは、100
Kで、Pilatusピクセル検出器(Dectris)を使用して、1.00002Å
の波長で、Swiss Light SourceビームラインX10SAで収集した。
データの加工およびスケーリングは、XDSおよびXSCALEにより実施した(Kabsch
, W. (2010) Acta Cryst. D66, 125-132)。結晶は、非対称単位1つ当たりの複合体1コ
ピーを伴い、単位胞の寸法を、a=191.27、b=53.22、c=65.164と
し、アルファ=90.0、ベータ=94.56、ガンマ=90.0(C2空間群)として
、2.04Åの分解能まで回折した。
【0365】
複合体の構造は、PHASERを使用して、FXI触媒ドメインの構造、および自社内
で既に解いた切断型Fabを探索モデルとして使用する分子置換法により解いた(McCoy,
A.J. et al. (2007) J. Appl. Cryst. 40, 658-674)。代替的なリファインメントおよ
び再構築のサイクルは、busterおよびcoot rsp.を使用して実施した(Br
icogne, G. et al. (2010) BUSTER version 2.9. Cambridge, United Kingdom: Global P
hasing Ltd.; Emsley, P. and Cowtan, K. (2004). Acta Crystallogr. D60, 2126-2132
)。データ収集およびリファインメント統計値を、表5にまとめる。
【0366】
【0367】
構造の記載:
構造は、抗体NOV1401の結合性エピトープが、S3、S2、S1-ベータ、およ
びS1の亜部位の部分をカバーする重鎖CDR3ループにより、活性部位表面に結合する
ことを明らかにする。隣接する重鎖CDR1ループおよび重鎖CDR2ループは、FXI
の145ループ内および220ループ(キモトリプシンの番号付け)内のコンフォメーシ
ョン変化を誘導する。加えて、FXIの4つのN末端残基の他、Asp189の周囲の残
基も不規則となるが、いずれも、FXIの触媒活性の鍵となる機能を伴う部分である。1
45ループのコンフォメーション変化は、Arg144によるS1ポケットの閉塞および
Tyr143によるS2の亜部位の閉塞をもたらす。よって、抗体の結合は、複数の機構
を介して、FXIのコンフォメーションの阻害をもたらす。
【0368】
観察される阻害形態は、FXIの全長チモーゲン形態(PDB 2F83)について記
載されている特徴を共有する。抗体の結合の結果として、コンフォメーションを変化させ
ているかまたは不規則となっているFXI触媒ドメインの部分はまた、チモーゲン内でも
不規則である。これはまた、NOV1401の、FXIのチモーゲン形態への強い結合も
説明する。
【0369】
本発明者らによる、NOV1401は、チモーゲンFXIの活性化を阻害しないという
知見は、結合性エピトープの、FXIaチモーゲン活性化切断部位からの距離と符合する
。NOV1401は、FXIおよびFXIaの両方に結合する。Fab-FXI CD複
合体のX線構造は、FXIaの固有の結合方式および阻害機構を明らかにする。NOV1
401は、FXIaの活性部位に結合し(
図4)、4つのN末端残基および触媒ドメイン
ループのコンフォメーション変化を誘導することから、不活性コンフォメーションをもた
らす。この不活性コンフォメーションは、チモーゲン内の、不活性の触媒ドメイン構造と
特徴を共有する(
図5)ことから、NOV1401が、どのようにして、FXIおよびF
XIaのいずれにも、高アフィニティーで結合しうるのかについての説明が与えられる。
例えば、チモーゲン構造内で不規則な、3つの触媒性部位であるループ(例えば、ループ
220、ループ188、およびループ145)はまた、NOV1401 Fab-FXI
CD複合体構造においても不規則であるか、またはシフトしており、活性コンフォメー
ション内で観察されるN末端の塩架橋は、チモーゲン構造およびNOV1401 Fab
-FXI CD複合体構造のいずれにおいても存在しない(表6)。よって、NOV14
01は、CD内のコンフォメーション変化を誘導し、不活性の、チモーゲン様のコンフォ
メーションをもたらすと考えられる。
【0370】
【0371】
実施例6
X線構造ベースのエピトープマッピング
AREAIMOL(Briggs, P.J. (2000) CCP4 Newsletter No. 38)を使用して、以下
の表7および表8a(Swissprotによる番号付け)の通り記載されるFabと接
触するFXIの残基を解析し、Fabを結合させずに計算した場合の残基表面積と、Fa
bと複合体化させて計算した場合の残基表面積との差違を決定する。
【0372】
【0373】
【0374】
触媒ドメイン配列にマッピングされたX線エピトープ(エピトープを形成する残基を、
太字とし、かつ、これらに下線を付す)である。
【0375】
【0376】
表8bは、FXIと接触する抗体の残基(パラトープ)を示す。
【0377】
【0378】
実施例7
FXI抗体の、マウスにおけるFeCl3誘導性血栓症に対する効果
C57Blバックグラウンド上でFXIを欠損するマウス(FXI-/-マウス)を、
Novartis(E.Hanover、NJ)において飼育し、NOV1401の抗血
栓有効性を評価するのに使用した。ヒトFXI(hFXI)により静脈内で再構成する場
合、これらのマウスは、血栓形成刺激へと曝露されると、野生型の、血栓性素因のある表
現型を獲得する。本明細書の研究では、動脈の表面へと、塩化第二鉄(FeCl3)を適
用することにより、頸動脈内に血栓症を誘導した。
【0379】
NOV1401を、麻酔下にあるマウスの頸静脈を介するボーラスとして、血栓症を誘
導する15分前に注射した。抗体の用量は、0.24mg/kg~0.47mg/kgの
範囲であった。FeCl3チャレンジの10分前に、頸静脈を介して、0.47mg/k
gのヒトFXIを注射することにより、FXI-/-マウスを、ヒトFXIで再構成した
。次いで、3.5%のFeCl3を含浸させた1mm×1.5mmの濾紙小片2枚を、そ
の外膜表面と接触させて、頸動脈の反対側に貼付し、3分後に除去するのに続き、生理食
塩液で完全に洗浄した。頸動脈を介する血流は、Transonic flow pro
beにより測定した。ベースラインの血流は、FeCl3適用前の5分間にわたり、次い
で、FeCl3の適用後30分間(すなわち、血栓形成期)にわたり得た。実験の終了時
に、血液を、大静脈から、3.8%のクエン酸ナトリウムを含有するシリンジへとサンプ
リングし、血漿を調製し、aPTTアッセイにかけた。
【0380】
図1Aは、ヒトFXIで再構成されたFXI
-/-マウス(ヒト化FXIマウスモデル
)における、FeCl
3誘導性血栓症に対する、NOV1401の効果を示す。
図1Bは
、同じマウスモデルにおけるaPTTに対するNOV1401の効果を示す。
図1Cは、
野生型マウスと比較した、FXI
-/-マウスにおけるaPTT延長を示す。
【0381】
NOV1401は、0.24mg/kgから始めて、hFXIで再構成されたFXI
-
/-マウス(
図1A)におけるFeCl
3誘導性血栓の形成を完全に阻害した。急勾配の
用量応答が観察され、化学量論的で悉無律的な抗血栓応答を反映する可能性が高い。aP
TTは、高用量群において、媒体対照の1.6倍超まで延長され(
図1B)、FXIの遺
伝子枯渇による同じレベルの延長(
図1C)、すなわち、最大効果に対応する。これらの
結果は、NOV1401が、マウスFeCl
3血栓症モデルにおいて、抗血栓活性を有す
ることを示す。
【0382】
実施例8
FXI抗体の、カニクイザルにおける遊離FXIおよびaPTTに対する効果
NOV1401など、抗FXI/FXIa抗体の薬物動態(PK)プロファイルおよび
薬理学的効果について査定するため、用量漸増研究において、抗体を、皮下(s.c.)
注射または静脈内(i.v.)注射を介して、カニクイザルへと投与した。
【0383】
カニクイザルにおいて、aPTTを延長し、3mg/kgの単回静脈内投与(N=2)
または単回皮下投与(N=2)の後において、遊離FXI(FXIf)レベルを低減する
抗体の能力について調べることにより、NOV1401の抗凝固効果を特徴付けた。10
mg/kgの第2の用量を、全ての動物へと投与するのに続いて、30mg/kgの第3
の用量を、全ての動物へと投与して、3mg/kgで観察された効果が、高用量により強
化されうるのかどうかを決定した。これらの結果は、NOV1401が、カニクイザルに
おいて、持続的な抗凝固活性を有することを示す。次いで、aPTTおよびFXIfレベ
ルにより決定される、その抗凝固効果を特徴とする、NOV1401の薬力学(PD)を
、PKプロファイルと比較した。比較は、良好なPK/PD相関が存在することを指し示
す。
【0384】
動物に、NOV1401を研究の1日目に、3mg/kg、85日目に、10mg/k
g、114日目に、30mg/kgで、i.v.(N=2)投与するか、またはS.C.
(N=2)投与した。血液試料は、クエン酸ナトリウム凝固チューブへと、i.v.投与
された動物では、投与の15分後および2時間後において回収し、全ての動物では、試験
前、投与の6、24、48、72、および96時間後(1日目、85日目、および114
日目)、ならびに投与の8、11、15、18、22、25、29、32、36、39、
43、46、50、53、57、60、64、66、71、75、および78日後(92
、95、99、102、107、110、121、124、128日目、および114日
目の投与前にもまた、血液の回収だけ行った)において回収した。全ての血液試料を遠心
分離し、血漿試料を得、約-70℃以下で凍結させた。
【0385】
NOV1401の血漿総濃度は、捕捉抗体としてのマウス抗ヒトIgGモノクローナル
抗体と、検出抗体としての、HRP標識を伴うヤギ抗ヒトIgGとによる、サンドイッチ
イムノアッセイを使用するELISAにより、ヒトIgGを検出するための標準的な方法
により測定した。
【0386】
FXIおよびNOV1401の両方を含有する血漿試料中の遊離FXIを測定するため
に、結合していないFXIを、固定化NOV1401により捕捉し、NOV1401と既
に複合体したFXIは、洗い流した。次いで、プレートに結合したFXIを、FXIのA
2ドメインに結合し、文献(Cheng, et al. Blood, 116:3981-3989, 2010)において記載
されているモノクローナル抗体である、抗体14E11を含有するマウスFcにより検出
した。NOV1401の、FXIおよびFXIaの両方に対する非常に大きなアフィニテ
ィー、ならびにNOV1401および検出抗体14E11に対する異なる結合性部位は、
遊離FXIの正確な決定を可能とした。
【0387】
遊離FXIを結合させるために、ELISAプレート(384-Well LUMIT
RAC(商標)600 HB)を、NOV1401(PBS中に5μg/mL)でコーテ
ィングした。ブロッキング(ミルクによるブロッカー:KPL:型番50-82-01、
1:20希釈液)し、プレートを洗浄緩衝液(PBS;0.05%のTween 20)
で洗浄した後、アッセイ緩衝液(pH7.4の50mM HEPES、125mMのNa
Cl、5mMのCaCl2、5mMのEDTA、および0.05%(w/v)のCHAP
S)中で1:40に希釈した血漿試料を、室温で30分間にわたりインキュベートし、洗
浄緩衝液で3回にわたり洗浄した。検出抗体である14E11を、0.7%のカゼインを
含有する希釈緩衝液(1.7mMの一塩基性リン酸ナトリウム、8.1mMの二塩基性リ
ン酸ナトリウム七水和物、0.15Mの塩化ナトリウム、0.7%のTriton X-
100、および0.1%のアジ化ナトリウム、pH7)中、1μg/mLで添加した。洗
浄緩衝液によりプレートを洗浄した後、二次検出抗体である、ペルオキシダーゼで標識さ
れた抗マウスIgG(Sigma:型番A5278)を、0.4%のカゼインを含有する
希釈緩衝液中、0.5μg/mLで添加した。洗浄緩衝液中でプレートを洗浄した後、5
0μLのペルオキシダーゼ化学発光基質溶液(LumiGLO;KPL:型番54-61
-01)を添加し、発光シグナルを、マルチモードのマイクロプレートリーダー(SPE
CTRAMAX M5E)上で速やかに読み取った。各試料中の遊離FXI濃度は、10
0nMのFXIから始め、希釈係数を2および希釈ステップを22として、Enzyme
Research Laboratories(型番:HFXI 1111)製のヒト
FXI(チモーゲン)について作成した検量線を使用して決定した。測定前の1:40の
希釈率を考慮し、定量下限(LLOQ)を、0.24nMのFXIとした。
【0388】
全ての時点の血漿試料を、aPTT解析にかけ、aPTT結果を、総血漿NOV140
1濃度および遊離FXIレベルと比較した。
図2Aおよび2Bは、i.v.およびS.C
.投与された動物について、総血漿NOV1401レベルとの関係におけるaPTT凝血
時間の変化を示す。
図3Aおよび3Bは、i.v.およびS.C.投与された動物につい
て、遊離FXIレベルとの関係におけるaPTT凝血時間の変化を示す。
【0389】
i.v.投与されたNOV1401について、最高血漿総NOV1401レベルは、投
与の15分後に観察された(
図2A)。この時点で、aPTTは、いずれの動物において
も、ベースラインと対比してほぼ倍増し、平均で5~6週間にわたりこのレベルを維持し
た。投与の15分後から、ベースラインへの減衰に先立つ測定までの、平均のaPTT延
長は、各動物について、2.0±0.02倍および1.9±0.03倍であった。
【0390】
2回目の投与を行う前の85日目までに、aPTTは、ベースラインレベルに達し、N
OV1401の血漿濃度は、10nMを下回って降下した。10mg/kgの2回目の投
与を、85日目に行ったところ、血漿総NOV1401濃度が少なくとも約3倍に増大し
、結果として、1回目の投与後に観察されたaPTT延長と同様のaPTT延長がもたら
された。30mg/kgの3回目の投与を、114日目に行ったところ、aPTTは延長
を保ったが、血漿総NOV1401濃度は、さらに少なくとも3倍増大したにもかかわら
ず、さらなる著明なaPTT延長を結果としてもたらすことはなかった(
図2A)。した
がって、3mg/kgより高用量のNOV1401が達成するaPTT延長は、3mg/
kgの用量による場合と同等であり、aPTT延長の大きさを増大させることはないと考
えられた。予測される通り、NOV1401のs.c.投与は、i.v.投与の場合より
緩徐なaPTTの延長を結果としてもたらしたが、延長の程度は、i.v.群の場合と同
等であった(
図2B)。aPTTは、2つの動物において、ベースラインと対比して、平
均で5~6週間にわたり延長された。平均aPTT延長倍数は、i.v.処置動物の場合
と同様:投与の6時間後からベースラインへの減衰に先立つ測定まで、2.0±0.03
および1.8±0.02であった。i.vの場合と同様、高用量の投与は、高血漿NOV
1401曝露量にもかかわらず、高度なaPTT応答をもたらさなかった。
【0391】
図2A~2Bにおける結果は、カニクイザルにおいて、NOV1401が、aPTTを
延長することを裏付ける。
【0392】
i.v.群では、平均ベースライン血漿FXI
f濃度は、10.9±0.3nMであり
、NOV1401を注射して急速に(15分後までに)降下した(
図3A)。血漿FXI
fレベルは、総NOV1401血漿レベルが、15nM~25nMの間に低下するまで、
低値を維持した(
図2A、
図3A)。s.c.群では、平均ベースラインのFXI
f濃度
は、14.3±1.0nMであった。FXI
fは、処置の6時間後までに、ベースライン
と対比して、急激に減少し(
図3B)、NOV1401血漿レベルが、15nM~25n
Mの間に低下するまで、低値を維持した(
図2B、
図3B)。FXI
fは、全ての動物に
おいて、10mg/kgの2回目の投与の後で、再び急激に減少し、研究の終了時まで、
低値を維持した。2回にわたる高用量の投与は、ベースラインと比べて、FXI
fをさら
に低減することはなかった。
【0393】
全ての処置動物において、FXIfレベルの低下および回復は、一時的であり、aPT
TのNOV1401誘導性延長と反比例したことから、NOV1401は、FXIfを減
少させることにより、内因系凝固経路の機能を阻害する(aPTTを延長する)ことが確
認される。
【0394】
これらの結果(例えば、
図3Aおよび3B)は、NOV1401が、カニクイザルにお
いて、血漿FXI
fレベルを低下させることを裏付ける。カニクイザル研究では、過剰な
出血の証拠は、静脈穿刺部位においても、剖検時の粗観察によっても観察されなかった。
さらに、研究を通して、糞便中の潜血も検出されなかった。
【0395】
NOV1401の持続的な抗凝固効果はまた、カニクイザルにおける、13週間にわた
るs.c./4週間にわたるi.v.反復投与毒性研究でも観察された。この研究では、
NOV1401を、毎週10mg/kg(N=3、雄および雌の組合せ)および100m
g/kg(N=5、雄および雌の組合せ)の用量で13週間(14回の投与)にわたりs
.c.投与するか、または毎週50mg/kg(N=3、雄および雌の組合せ)の用量で
4週間(5回の投与)にわたりi.v.投与した。対照群(N=5、雄および雌の組合せ
)には、媒体を、13および4週間にわたり、それぞれ、s.c.およびi.v.で施し
た。FXI:Cは、ヒトFXIを欠損する血漿の存在下で、カニクイザル血漿試料の凝血
時間(一段階aPTT)を測定することにより評価した。aPTTおよびFXI:Cは、
s.c.群については、研究の2、23、および79日目において測定し、i.v.群に
ついては、2および23日目において測定した。全ての動物および全ての処置群にわたり
、2.1~3倍のaPTT延長が観察された(
図7A)。効果は、研究の投与期を通して
持続的であり、先行の漸増用量研究における観察と同様な用量依存性は観察されなかった
。FXI:Cは、動物および処置群にわたり、88~95%低減され、研究の投与期を通
してこれらのレベルで維持された(
図7B)。FXI:Cに対する効果もまた、これらの
用量にわたり、用量非依存的であった。
【0396】
過剰な出血を含む、出血の肉眼的兆候または顕微鏡的兆候についての証拠は、静脈穿刺
部位(s.c.注射部位およびi.v.注射部位ならびに採血部位を含む)においても、
剖検時の粗観察によっても観察されなかった。さらに、研究の終了時において、糞便中の
潜血も検出されなかった。加えて、死亡も生じず、臨床徴候、体重、食物摂取、眼科パラ
メータおよび心電図パラメータ、血液学、臨床化学、または尿検査に対する被験物質関連
効果も見られなかった。毒性の標的臓器は、同定されなかった。
【0397】
雄における100mg/kgのs.c.では、甲状腺重量の増大は観察されなかった。
しかし、組織学的相関物は見られないので、この所見の毒性学的意義は結論的なものでは
ない。甲状腺重量には、動物間で大きなばらつきが見られ、所見が認められたのは、1つ
の性別に限られた。顕微鏡的には、s.c.注射部位では、用量依存的な線維症が、いず
れの性別でも、毎週10および100mg/kgのs.c.で観察された。これらの所見
は、有害とは考えられなかった。
【0398】
著明な毒性所見は、最長13週間にわたる、カニクイザルにおける、単回用量漸増投与
または反復投与による一般的毒性研究では観察されなかった。したがって、13週間にわ
たるGLP毒性研究で投与された最高のs.c.用量レベル(毎週100mg/kg)を
、NOAELと規定した。
【0399】
実施例9
カニクイザル(単回投与)における薬物動態
カニクイザル(雌、N=2)に、3mg/kgのNOV1401の単回i.v.投与ま
たは単回s.c.投与を行い、血漿FXIf濃度およびaPTTが、投与前の値に戻るま
で観察した。次いで、動物に、10mg/kgのNOV1401の単回i.v.投与また
は単回s.c.投与の2週間後、30mg/kgのi.v.投与またはs.c.投与を行
い、さらに2週間にわたる観察期間を設けた。NOV1401のPKは、総NOV140
1を測定することにより評価した。最大観察総NOV1401濃度(Cmax)または総
NOV1401濃度-時間曲線下面積(AUC0-14d)により測定される、総NOV
1401への曝露量は、各群内の個別の動物間で同等であった。曝露量(Cmaxまたは
AUC0-14d)は、各投与経路について、ほぼ用量に比例した(表9)。Cmaxは
、i.v.群において、s.c.群の約3倍であった。しかし、血漿総NOV1401濃
度は、初期分布期後のいずれの群においても同等であった。終末相消失半減期(t1/2
)は、3mg/kgの用量の投与後において、各動物について、2コンパートメントモデ
ルを使用して推定した。t1/2は、14~15日間の範囲であった(N=2)。s.c
.注射後における絶対バイオアベイラビリティは、61~66%の範囲であった(3つの
用量レベル)。抗NOV1401抗体は、いずれの動物へのi.v.投与後においても、
s.c.投与後においても検出されなかった。
【0400】
【0401】
実施例10
カニクイザル(反復投与)におけるトキシコキネティクス
カニクイザルに、NOV1401を毎週10もしくは100mg/kgの用量で13週
間(14回の投与)にわたりs.c.投与するか、または毎週50mg/kgの用量で4
週間(5回の投与)にわたりi.v.投与した。NOV1401で処置された動物は、研
究の投与期中に、NOV1401へと曝露されたが、対照動物における曝露は認められな
かった。血漿総NOV1401への曝露の、性別に関連する差違は、観察されなかった。
曝露量(CmaxおよびAUC0-7dの両方)の増大は、雄動物および雌動物のいずれ
においても、用量に比例した(表10)。抗NOV1401抗体は、毎週10mg/kg
のs.c.における動物6匹中5匹、毎週100mg/kgのs.c.における動物10
匹中1匹、および毎週50mg/kgのi.v.における動物6匹中1匹で検出された。
いずれのs.c.投与群においても、総NOV1401への曝露は損なわれなかった。抗
薬物抗体(ADA)陽性動物1匹だけは、研究の22日目におけるAUC0-7dが、同
じ群(毎週50mg/kgのi.v.)内の他の動物より小さかった。この動物において
、aPTT延長に対する影響は認められず、毒性も観察されなかった。
【0402】
【0403】
実施例11
ヒトにおける用量漸増研究
ヒト研究を実行して、健常対象における単回用量投与後の、NOV1401など、抗F
XI/FXIa抗体の安全性および忍容性を評価する。18~55歳の間の、健常男性対
象および閉経期後不妊/手術による不妊の健常女性対象の合計約60例を、この研究に登
録する。良好な健康は、過去の医療履歴、スクリーニング時における身体検診、神経学的
検診、バイタルサイン、心電図(ECG)、および検査室検査により決定する。選択され
た対象は、体重が、少なくとも50kgであり、ボディマス指数(BMI)が、18~3
5kg/m2の範囲内である。BMI=体重(kg)/[身長(m)]2。
【0404】
いかなる被験用量でも、≧2倍のaPTTの予測平均持続時間の延長が、≧42日間に
わたり持続することはないという条件で、ヒト研究では、5、15、50、150、30
0、および600mgの、6つのs.c.用量レベルについて調べるものとする。2回に
わたる中間解析(IA)を行って、2つの最高用量レベルについて、用量の選択を確認す
る。300mgまたは600mgの用量で、モデルにより予測されるaPTTの平均持続
時間の延長が、42日間を超える期間にわたり、≧2倍である場合、用量を、例えば、モ
デルシミュレーションに基づき減少させて、aPTTの平均持続時間の延長が、≧42日
間にわたり、2倍を超えないことを確保することができる。非限定的で例示的な用量の調
整は、10mg、20mg、30mg、40mg、または50mgの減少量を使用する、
用量の減少を伴いうる。
【0405】
最初の3つの用量漸増ステップは、約1/2 logの増分で行う。最後の2つの用量
漸増ステップは、標的飽和の遷延およびaPTT延長の延伸の危険性を軽減するように、
≦2倍の増分とする。
【0406】
FXIを標的化する治療による、2倍のaPTT延長の、ある種の日数(例えば、30
日間、35日間、40日間、42日間など)にわたる最大持続時間は、重度のFXI欠損
症を伴う患者において、軽度の出血表現型を示す遺伝子データ、後天性インヒビターを伴
うFXI欠損症を伴う患者に由来するデータ、およびヒト研究、例えば、6週間にわたる
、FXI-ASOの複数回投与が、>6週間(42日間)にわたり、出血事象を伴わない
、頑健で持続的なFXI枯渇を結果としてもたらした、FXI-ASO研究(例えば、Li
u et al., (2011) “ISIS-FXIRx, a novel and specific antisense inhibitor of facto
r XI, caused significant reduction in FXI antigen and activity and increased aPT
T without causing bleeding in healthy volunteers.” Presented at the 53rd Americ
an Society of Hematology annual meeting and exposition, San Diego, California. B
lood; 118: Abstract 209を参照されたい)に由来するデータにも基づいて評価すること
ができる。ある種の実施形態では、モデルベースの解析は、50mgのNOV1401の
s.c.投与(60kgの対象)で、約2.7倍(投与前と比べて)の最大aPTT延長
を、一過性に達成しうることを予測する。ある種の実施形態では、高用量は、この2.7
倍の最大aPTT延長の持続時間を延伸することが予測される。
【0407】
対象は、身体検診、神経学的検診、バイタルサイン、心電図(ECG)、安全性につい
ての検査室検査、および重篤なAE(SAE)を含む有害事象(AE)など、安全性パラ
メータおよび/または安全性評価項目について、研究を通して、投与後106日目を含む
、それまでの期間においてモニタリングされる。
【0408】
抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)の、aPTTに対する効果は、ベ
ースラインからの相対変化に基づき評価する。抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV
1401)の総血漿濃度を測定して、これらの対象における単回投与についてのPKを評
価する。
【0409】
抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)の免疫原性(IG)を評価するた
めに、ADAについてのスクリーニングおよび確認を行う。
【0410】
遊離FXIおよび総FXIならびに遊離FXI凝固活性(FXI:C)および総FXI
:Cを測定して、抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)の、ターゲットエ
ンゲージメントおよび標的に関連するPDパラメータに対する効果を評価する。
【0411】
D-二量体、プロトロンビン断片1.2(F1.2)、およびプロトロンビン-抗トロ
ンビン複合体(TAT)について評価して、抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1
401)の、血栓形成パラメータに対する効果を決定する。
【0412】
抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)の、他の凝固パラメータに対する
効果について研究するためには、以下:対象における、プロトロンビン時間(PT)、ト
ロンビン時間(TT)、ならびにトロンビン活性化可能な線溶インヒビター、フィブリノ
ゲン、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、およびTGAなど、凝固についての探
索的な検査室パラメータについて評価することができる。
【0413】
研究されるバイオマーカーは、D-二量体、FXI活性、PT/INR、TT、F1.
2、フィブリノゲン、TGA、TAFI活性、TAT、PAI-1抗原、TFPi活性、
tPA活性、およびvWF活性を含みうるがこれらに限定されない。
【0414】
参照による組込み
本明細書で引用される全ての参考文献であって、特許、特許出願、論文、出版物、教科
書などを含む参考文献、およびそれらにおいて引用された参考文献は、それらについて既
に言及した程度において、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。
【0415】
同等物
前出の明細書は、当業者が、本発明を実施することを可能とするのに十分であると考えられる。前出の記載および実施例は、本発明のある種の好ましい実施形態について詳述し、本発明者らにより企図される最良の方式について記載する。しかし、前出の記載および実施例が、本文中でいかに詳述されているように見えるとしても、本発明は、多くの様式で実施することができ、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの任意の同等物に従うとみなされるべきであることが察知されるであろう。
本発明は以下の態様を包含し得る。
[1] FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する単離抗FXI抗体および/もしくは単離抗FXIa抗体またはそれらの断片。
[2] 抗FXIおよび/またはFXIaの1つまたは複数のエピトープに結合する単離抗体またはその断片であって、前記エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの2つ以上のアミノ酸残基を含む単離抗体またはその断片。
[3] 前記エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの4つ以上のアミノ酸残基を含む、上記[2]に記載の単離抗体または断片。
[4] 前記エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの6つ以上のアミノ酸残基を含む、上記[2]に記載の単離抗体または断片。
[5] 前記エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの8つ以上のアミノ酸残基を含む、上記[2]に記載の単離抗体または断片。
[6] 前記エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604の残基を含む、上記[2]に記載の単離抗体または断片。
[7] 前記エピトープが、Pro410、Arg413、Lys527のアミノ酸残基と、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの1つまたは複数のアミノ酸残基とを含む、上記[2]に記載の単離抗体または断片。
[8] 前記エピトープが、Pro410、Arg413、Lys527のアミノ酸残基と、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの4つ以上のアミノ酸残基とを含む、上記[2]に記載の単離抗体または断片。
[9] 前記エピトープが、Pro410、Arg413、Lys527のアミノ酸残基と、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの6つ以上のアミノ酸残基とを含む、上記[2]に記載の単離抗体または断片。
[10] FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する単離抗FXI抗体および/もしくは単離抗FXIa抗体またはそれらの断片であって、FXIおよび/またはFXIaの、第X因子、第XIIa因子、およびトロンビンのうちの1つまたは複数への結合を遮断する単離抗体または断片。
[11] FXIおよび/またはFXIaの、第IX因子、第XIIa因子、またはトロンビン、および凝固経路の他の成分のうちの1つまたは複数への結合を遮断する、上記[10]に記載の単離抗体または断片。
[12] FIX、FXI、およびFXIaのうちの1つまたは複数の、血小板受容体への結合を遮断する、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[13] 内因系凝固経路または共通凝固経路の活性化を防止する、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[14] ヒトFXIタンパク質および/またはヒトFXIaタンパク質に、BIACORE(商標)アッセイにより測定される34nM以下の、または溶液中平衡滴定アッセイ(SET)により測定される4pM以下のK
D
で結合する単離抗体またはその断片。
[15] 表1に列挙されたCDRのうちの少なくとも1つに対して、少なくとも90%の同一性を有する、少なくとも1つの相補性決定領域を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[16] 表1のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[17] 上記[1]に記載の抗体または断片の単離変異体であって、前記抗体または断片が、表1のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、前記変異体が、CDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つにおいて、少なくとも1~4カ所のアミノ酸変化を有する、単離変異体。
[18] 配列番号5および25からなる群から選択される重鎖CDR3を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[20] 配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して90%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[21] 配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して95%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[22] 配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して97%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[23] 配列番号9および29からなる群から選択される可変重鎖配列を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[24] 配列番号19および39からなる群から選択される可変軽鎖配列を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[25] 配列番号9および29からなる群から選択される可変重鎖;ならびに配列番号19および39からなる群から選択される可変軽鎖配列を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[26] 配列番号9の可変重鎖および配列番号19の可変軽鎖配列を含む抗体または断片、ならびに配列番号29の可変重鎖および配列番号39の可変軽鎖配列を含む抗体または断片からなる群から選択される、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[27] 配列番号46からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1;配列番号4からなる群から選択されるCDR2;5からなる群から選択されるCDR3;配列番号33からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14からなる群から選択されるCDR2;および配列番号15からなる群から選択されるCDR3を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[28] 配列番号3および23からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1;配列番号4および24からなる群から選択されるCDR2;5および25からなる群から選択されるCDR3;配列番号13および33からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14および34からなる群から選択されるCDR2;ならびに配列番号15および35からなる群から選択されるCDR3を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[29] 配列番号6および26からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1;配列番号7および27からなる群から選択されるCDR2;8および28からなる群から選択されるCDR3;配列番号16および36からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDR1;配列番号17および37からなる群から選択されるCDR2;ならびに配列番号18および38からなる群から選択されるCDR3を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[30] 配列番号3の重鎖可変領域のCDR1;配列番号4の重鎖可変領域のCDR2;配列番号5の重鎖可変領域のCDR3;配列番号13の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域のCDR3を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[31] 配列番号23の重鎖可変領域のCDR1;配列番号24の重鎖可変領域のCDR2;配列番号25の重鎖可変領域のCDR3;配列番号33の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号34の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域のCDR3を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[32] 配列番号6の重鎖可変領域のCDR1;配列番号7の重鎖可変領域のCDR2;配列番号8の重鎖可変領域のCDR3;配列番号16の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号17の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号18の軽鎖可変領域のCDR3を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[33] 配列番号26の重鎖可変領域のCDR1;配列番号27の重鎖可変領域のCDR2;配列番号28の重鎖可変領域のCDR3;配列番号36の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号37の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域のCDR3を含む、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[34] 上記の一項に記載の抗体またはその断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
[35] 前記のいずれかに記載の単離抗体または断片と同じエピトープに結合する、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[36] ヒトFXIタンパク質および/またはヒトFXIaタンパク質への結合について、前記のいずれかに記載の単離抗体または断片と競合する、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[37] NOV1090およびNOV1401からなる群から選択される、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[38] 血栓塞栓性障害を処置する方法であって、有効量の、前記のいずれかに記載の抗体または断片を含む医薬組成物を、血栓塞栓性障害に罹患している対象へと投与するステップを含む方法。
[39] 前記対象が、心房細動と関連する虚血性脳卒中および深部静脈血栓症のうちの1つまたは複数に罹患している、上記[38]に記載の方法。
[40] 前記対象が、心房細動と関連する虚血性脳卒中に罹患している、上記[38]に記載の方法。
[41] 血栓塞栓性障害を処置する方法であって、有効量の、前記のいずれかに記載の抗体または断片を含む医薬組成物を、スタチン療法と組み合わせて、血栓塞栓性障害に罹患している対象へと投与するステップを含む方法。
[42] 前記のいずれかに記載の抗体を含む医薬。
[43] 前記のいずれかに記載の抗体のうちの1つまたは複数をコードする核酸。
[44] 上記[43]に記載の核酸を含むベクター。
[45] 上記[44]に記載のベクターを含む宿主細胞。
[46] 活性のFXI(FXIa)触媒ドメインに結合すると、FXIaに、そのコンフォメーションを、N末端の4つの残基、ループ145、188、および220が、活性コンフォメーションと比較して、シフトし、かつ/または不規則的である不活性コンフォメーションへと変化させる、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[47] FXIに結合すると、FXI触媒ドメインが、ループ145、188、および220がFXIa触媒ドメインの構造内と同様に規則的である活性コンフォメーションを取ることを防止する、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[48] FXIに結合すると、FXI触媒ドメインが、N末端の4つの残基、ループ145、188、および220がFXIa触媒ドメインの構造内と同様に規則的である活性コンフォメーションを取ることを防止する、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[49] FXIに結合すると、チモーゲン構造内のコンフォメーション変化を誘導し、FXIaに結合するときに観察される阻害性FXIコンフォメーションと緊密に関連する阻害性FXIコンフォメーションをさらにもたらすことにより、FXI触媒ドメインが、活性コンフォメーションを取ることを防止する、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[50] FXIおよび/またはFXIaに結合し、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメインと、抗体:抗原複合体を形成すると、ループ145、188、および220の、活性の第XI因子(FXIa)の触媒ドメインの、複合体化していない構造と比較した場合のシフトおよび/または配向性の喪失を引き起こす、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[51] FXIおよび/またはFXIaに結合し、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメインと、抗体:抗原複合体を形成すると、N末端の4つの残基、ループ145、188、および220の、活性の第XI因子(FXIa)の触媒ドメインの、複合体化していない構造と比較した場合のシフトおよび/または配向性の喪失を引き起こす、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
[52] 活性のFXI(FXIa)に結合し、FXI(FXIa)触媒ドメインに、そのコンフォメーションを、ループ145、188、および220が活性コンフォメーションと比較してシフトし、かつ/または配向性が喪失している不活性コンフォメーションへと変化させる、上記[1]に記載の単離抗体または断片。
【配列表】