(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】尿素含有液状肥料、その製造方法及び尿素針状結晶成長の抑制方法
(51)【国際特許分類】
C05C 9/00 20060101AFI20241113BHJP
C05G 5/20 20200101ALI20241113BHJP
C05G 3/00 20200101ALI20241113BHJP
【FI】
C05C9/00 Z
C05G5/20
C05G3/00 Z
(21)【出願番号】P 2022174600
(22)【出願日】2022-10-31
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000240950
【氏名又は名称】片倉コープアグリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 有宏
(72)【発明者】
【氏名】八月朔日 英二
(72)【発明者】
【氏名】山中 啓史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 伸治
(72)【発明者】
【氏名】三星 暢公
(72)【発明者】
【氏名】山田 茂
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 英司
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-60083(JP,A)
【文献】特開2004-2107(JP,A)
【文献】特開昭58-104091(JP,A)
【文献】特開2011-162424(JP,A)
【文献】特開2019-31628(JP,A)
【文献】特開昭55-126594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05C、C05G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素、化合物A、
ウレアホルム、及び水を含む尿素含有液状肥料であって、化合物Aが、炭素数6以上の直鎖構造を有し、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基を1つ以上有し、1気圧、20℃において、水100gに対して0.01g以上溶解する溶解度を有するポリエチレングリコールであり、化合物Aの数平均分子量が、200~30000であ
り、化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、0.05重量%~25重量%である、尿素含有液状肥料。
【請求項2】
水の含有量が、尿素含有液状肥料の総重量に対して、20重量%~80重量%である、請求項1に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項3】
尿素の含有量が、水の重量に対して、50重量%以上である、請求項1に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項4】
尿素の含有量が、水の重量に対して、50重量%以上である、請求項2に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項5】
化合物Aの数平均分子量が、2000~4000であり、化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、5重量%~
25重量%である、請求項3に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項6】
化合物Aの数平均分子量が、5000~10000であり、化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、0.5重量%~
25重量%である、請求項3に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項7】
化合物Aの数平均分子量が、10000~30000であり、化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、0.1重量%~
25重量%である、請求項3に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項8】
尿素以外の肥効成分、粘度調節剤、相分離防止剤、
ウレアホルム以外の化学緩効性肥料、追加元素、カルボン酸類、キレート剤、硝酸化成抑制剤、農薬、防腐剤、及び有機成分からなる群から選択される1種以上の他の成分をさらに含み、
追加元素が、カルシウム、ケイ素、硫黄、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、マンガン、マグネシウム、ホウ素、塩素、及びニッケルからなる群から選択される1種以上であり、
カルボン酸類が、酢酸及びクエン酸からなる群から選択される1種以上であり、
有機成分が、骨粉、発酵廃液、及び油粕からなる群から選択される1種以上である、
請求項1に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項9】
尿素以外の肥効成分が、アンモニア、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、リン酸、及び苛性加里からなる群から選択される1種以上であり、
粘度調節剤及び相分離防止剤が、カルボキシメチルセルロース、グァーガム、アルギン酸ソーダ、キサンタンガム、ポリアクリルアミド、澱粉、ベントナイト、アタパルジャイト、ホワイトカーボン、ケイソウ土、アクリル酸ナトリウムのホモポリマー、アクリル酸ナトリウム-メタクリル酸ヒドロキシエチルエステルコポリマー、アクリル酸ナトリウム-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムアリルエーテルコポリマー、マレイン酸ホモポリマー、及びマレイン酸-グリセリンモノアリルエーテルコポリマーからなる群から選択される1種以上であり、
ウレアホルム以外の化学緩効性肥料が
、アセトアルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素、オキサミド、グアニル尿素、及びグリオキサール尿素からなる群から選択される1種以上である、
請求項
8に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項10】
ウレアホルム及び前記他の成分の総含有量が、尿素含有液状肥料の総重量に対して、1~50重量%である、請求項
8に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項11】
結晶形態の尿素が存在し、かつ、結晶の平均長径が2mm以下であり、かつ、結晶の平均アスペクト比が1~20である、請求項1に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項12】
施肥時の粘度が、300mPa・s(cp)~7000mPa・s(cp)である、請求項
8に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項13】
使用用途が機械施肥である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の尿素含有液状肥料。
【請求項14】
尿素、化合物A、
ウレアホルム、及び水を含む尿素含有液状肥料を製造する方法であって、水中において尿素と化合物Aとを混合する工程、ここで、化合物Aは、炭素数6以上の直鎖構造を有し、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基を1つ以上有し、1気圧、20℃において、水100gに対して0.01g以上溶解する溶解度を有するポリエチレングリコールであり、化合物Aの数平均分子量は、200~30000であ
り、化合物Aの含有量は、尿素の重量に対して、0.05重量%~25重量%である、を含む方法。
【請求項15】
水の含有量が、尿素含有液状肥料の総重量に対して、20重量%~80重量%である、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
尿素の含有量が、水の重量に対して、50重量%以上である、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
尿素の含有量が、水の重量に対して、50重量%以上である、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
化合物Aの数平均分子量が、2000~4000であり、化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、5重量%~
25重量%である、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
化合物Aの数平均分子量が、5000~10000であり、化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、0.5重量%~
25重量%である、請求項
16に記載の方法。
【請求項20】
化合物Aの数平均分子量が、10000~30000であり、化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、0.1重量%~
25重量%である、請求項
16に記載の方法。
【請求項21】
尿素以外の肥効成分、粘度調節剤、相分離防止剤、
ウレアホルム以外の化学緩効性肥料、追加元素、カルボン酸類、キレート剤、硝酸化成抑制剤、農薬、防腐剤、及び有機成分からなる群から選択される1種以上の他の成分を添加する工程をさらに含み、
追加元素が、カルシウム、ケイ素、硫黄、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、マンガン、マグネシウム、ホウ素、塩素、及びニッケルからなる群から選択される1種以上であり、
カルボン酸類が、酢酸及びクエン酸からなる群から選択される1種以上であり、
有機成分が、骨粉、発酵廃液、及び油粕からなる群から選択される1種以上である、
請求項
14に記載の方法。
【請求項22】
尿素以外の肥効成分が、アンモニア、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、リン酸、及び苛性加里からなる群から選択される1種以上であり、
粘度調節剤及び相分離防止剤が、カルボキシメチルセルロース、グァーガム、アルギン酸ソーダ、キサンタンガム、ポリアクリルアミド、澱粉、ベントナイト、アタパルジャイト、ホワイトカーボン、ケイソウ土、アクリル酸ナトリウムのホモポリマー、アクリル酸ナトリウム-メタクリル酸ヒドロキシエチルエステルコポリマー、アクリル酸ナトリウム-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムアリルエーテルコポリマー、マレイン酸ホモポリマー、及びマレイン酸-グリセリンモノアリルエーテルコポリマーからなる群から選択される1種以上であり、
ウレアホルム以外の化学緩効性肥料が
、アセトアルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素、オキサミド、グアニル尿素、及びグリオキサール尿素からなる群から選択される1種以上である、
請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
ウレアホルム及び前記他の成分の総含有量が、尿素含有液状肥料の総重量に対して、1~50重量%である、請求項
21に記載の方法。
【請求項24】
化合物Aとの混合により、得られる尿素含有液状肥料に結晶形態の尿素が析出し、かつ、結晶の平均長径が2mm以下になり、かつ、結晶の平均アスペクト比が1~20になる、請求項
14に記載の方法。
【請求項25】
得られる尿素含有液状肥料の施肥時の粘度が、300mPa・s(cp)~7000mPa・s(cp)である、請求項
21に記載の方法。
【請求項26】
使用用途が機械施肥である、請求項
14~
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
尿素含有液状肥料における尿素の針状結晶成長の抑制方法であって、尿素含有液状肥料と化合物Aとを混合して化合物Aを含む尿素含有液状肥料を調製する工程、ここで、
尿素含有液状肥料は、ウレアホルムを含み、化合物Aは、炭素数6以上の直鎖構造を有し、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基を1つ以上有し、1気圧、20℃において、水100gに対して0.01g以上溶解する溶解度を有するポリエチレングリコールであり、化合物Aの数平均分子量は、200~30000であ
り、化合物Aを含む尿素含有液状肥料中の化合物Aの含有量は、尿素の重量に対して、0.05重量%~25重量%である、を含む方法。
【請求項28】
化合物Aを含む尿素含有液状肥料中の水の含有量が、化合物Aを含む尿素含有液状肥料の総重量に対して、20重量%~80重量%である、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
化合物Aを含む尿素含有液状肥料中の尿素の含有量が、水の重量に対して、50重量%以上である、請求項
27に記載の方法。
【請求項30】
化合物Aを含む尿素含有液状肥料中の尿素の含有量が、水の重量に対して、50重量%以上である、請求項
28に記載の方法。
【請求項31】
化合物Aの数平均分子量が、2000~4000であり、化合物Aを含む尿素含有液状肥料中の化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、5重量%~
25重量%である、請求項
29に記載の方法。
【請求項32】
化合物Aの数平均分子量が、5000~10000であり、化合物Aを含む尿素含有液状肥料中の化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、0.5重量%~
25重量%である、請求項
29に記載の方法。
【請求項33】
化合物Aの数平均分子量が、10000~30000であり、化合物Aを含む尿素含有液状肥料中の化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、0.1重量%~
25重量%である、請求項
29に記載の方法。
【請求項34】
尿素含有液状肥料が、尿素以外の肥効成分、粘度調節剤、相分離防止剤、
ウレアホルム以外の化学緩効性肥料、追加元素、カルボン酸類、キレート剤、硝酸化成抑制剤、農薬、防腐剤、及び有機成分からなる群から選択される1種以上の他の成分を含み、
追加元素が、カルシウム、ケイ素、硫黄、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、マンガン、マグネシウム、ホウ素、塩素、及びニッケルからなる群から選択される1種以上であり、
カルボン酸類が、酢酸及びクエン酸からなる群から選択される1種以上であり、
有機成分が、骨粉、発酵廃液、及び油粕からなる群から選択される1種以上である、
請求項
27に記載の方法。
【請求項35】
尿素以外の肥効成分が、アンモニア、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、リン酸、及び苛性加里からなる群から選択される1種以上であり、
粘度調節剤及び相分離防止剤が、カルボキシメチルセルロース、グァーガム、アルギン酸ソーダ、キサンタンガム、ポリアクリルアミド、澱粉、ベントナイト、アタパルジャイト、ホワイトカーボン、ケイソウ土、アクリル酸ナトリウムのホモポリマー、アクリル酸ナトリウム-メタクリル酸ヒドロキシエチルエステルコポリマー、アクリル酸ナトリウム-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムアリルエーテルコポリマー、マレイン酸ホモポリマー、及びマレイン酸-グリセリンモノアリルエーテルコポリマーからなる群から選択される1種以上であり、
ウレアホルム以外の化学緩効性肥料が
、アセトアルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素、オキサミド、グアニル尿素、及びグリオキサール尿素からなる群から選択される1種以上である、請求項
34に記載の方法。
【請求項36】
ウレアホルム及び前記他の成分の総含有量が、化合物Aを含む尿素含有液状肥料の総重量に対して、1~50重量%である、請求項
34に記載の方法。
【請求項37】
化合物Aとの混合により、化合物Aを含む尿素含有液状肥料中に結晶形態の尿素が析出し、結晶の平均長径が2mm以下になり、かつ、結晶の平均アスペクト比が1~20になる、請求項
27に記載の方法。
【請求項38】
化合物Aを含む尿素含有液状肥料の施肥時の粘度が、300mPa・s(cp)~7000mPa・s(cp)である、請求項
34に記載の方法。
【請求項39】
使用用途が機械施肥である、請求項
27~
38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素含有液状肥料に関し、具体的には、尿素の針状結晶の成長が抑制された尿素含有液状肥料、その製造方法、及び尿素含有液状肥料における尿素針状結晶成長の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業労働力の減少と生産原価低減の必要性に対処するため、機械施肥が広く普及している。さらに、側条施肥においては雨天でも使用できる液状肥料が普及してきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、肥料塩類及び懸濁安定化剤を共に湿式粉砕し、ペースト肥料を製造する方法において、湿式粉砕を剪断及び/又は摩擦を主とする作用により行ない、その作用により、液中に分散する固体粒子を30~100μmの平均粒径とすることを特徴とするペースト肥料の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、水溶性のポリ態のリン酸及び/又はその塩をP2O5として1~10重量%と、グァーガム、キサンタンガム、ポリアクリルアミドから選ばれる少なくとも1つの水溶性高分子を0.05~1.5重量%含有することを特徴とする幅広い温度範囲で長期にわたり結晶析出や2層分離現象がなく、且つ流動性に優れ、取扱いが容易で、機械施肥が容易なペースト肥料が記載されている。
【0005】
特許文献3には、液状肥料にフミン酸カリウム及び/又はポリカルボン酸型高分子活性剤を添加することを特徴とする液状肥料の結晶成長防止方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-206567号公報
【文献】特開平9-40485号公報
【文献】特開平9-48687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらなる省力化と運送コスト低減の点から、窒素成分等の成分の高濃度化が求められている。さらに、マイクロプラスチック問題から、液状肥料の再評価がなされている。液状肥料の高濃度化においては、尿素が用いられることが多い。これは、尿素の窒素成分が46%であり、他の窒素原料に比べて高く窒素源として優れていることに加え、水への溶解度が高く、また安価であるためである。
【0008】
しかしながら、尿素は温度による溶解度変化が大きく、保管中に容易に粗大な針状結晶が析出後に成長し、機械施肥時にノズルが詰まる原因となる。
【0009】
したがって、本発明は、尿素含有液状肥料中において、尿素の針状結晶の成長が抑制された液状肥料、その製造方法、及び尿素針状結晶成長の抑制方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、尿素含有液状肥料中に炭素数6以上の直鎖構造を有し、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基を1つ以上有する水溶性の有機化合物を添加したところ、尿素の針状結晶の成長が抑制されることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)尿素、化合物A、及び水を含む尿素含有液状肥料であって、化合物Aが、炭素数6以上の直鎖構造を有し、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基を1つ以上有し、1気圧、20℃において、水100gに対して0.01g以上溶解する溶解度を有する有機化合物である、尿素含有液状肥料。(2)化合物Aが、ポリエーテル類、ポリカルボン酸類、ポリビニルアルコール類、ポリアミン類及びポリアミド類からなる群から選択される1種以上である、(1)に記載の尿素含有液状肥料。
(3)化合物Aが、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヘキサメチレンジアミン及びポリアミドからなる群から選択される1種以上である、(1)又は(2)に記載の尿素含有液状肥料。
(4)尿素の含有量が、水の重量に対して、50重量%以上である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の尿素含有液状肥料。
(5)化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、0.01重量%~100重量%である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の尿素含有液状肥料。
(6)尿素以外の肥効成分、粘度調節剤、相分離防止剤、化学緩効性肥料、追加元素、カルボン酸類、キレート剤、硝酸化成抑制剤、農薬、及び防腐剤からなる群から選択される1種以上の他の成分をさらに含む、(1)~(5)のいずれか1つに記載の尿素含有液状肥料。
(7)粘度調節剤及び相分離防止剤が、カルボキシメチルセルロース、グァーガム、アルギン酸ソーダ、キサンタンガム、ポリアクリルアミド、水溶性高分子、無機性添加剤、及びポリカルボン酸型高分子活性剤からなる群から選択される1種以上である、(6)に記載の尿素含有液状肥料。
(8)化学緩効性肥料が、ウレアホルム、アセトアルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素、オキサミド、グアニル尿素、及びグリオキサール尿素からなる群から選択される1種以上である、(6)又は(7)に記載の尿素含有液状肥料。
(9)他の成分の総含有量が、尿素含有液状肥料の総重量に対して、1~50重量%である、(6)~(8)のいずれか1つに記載の尿素含有液状肥料。
(10)結晶形態の尿素が存在し、かつ、結晶の平均長径が2mm以下であり、かつ、結晶の平均アスペクト比が1~20である、(1)~(9)のいずれか1つに記載の尿素含有液状肥料。
(11)使用用途が機械施肥である、(1)~(10)のいずれか1つに記載の尿素含有液状肥料。
(12)尿素、化合物A、及び水を含む尿素含有液状肥料を製造する方法であって、水中において尿素と化合物Aとを混合する工程、ここで、化合物Aは、炭素数6以上の直鎖構造を有し、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基を1つ以上有し、1気圧、20℃において、水100gに対して0.01g以上溶解する溶解度を有する有機化合物である、を含む方法。
(13)化合物Aが、ポリエーテル類、ポリカルボン酸類、ポリビニルアルコール類、ポリアミン類及びポリアミド類からなる群から選択される1種以上である、(12)に記載の方法。
(14)化合物Aが、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヘキサメチレンジアミン及びポリアミドからなる群から選択される1種以上である、(12)又は(13)に記載の方法。
(15)尿素の含有量が、水の重量に対して、50重量%以上である、(12)~(14)のいずれか1つに記載の方法。
(16)化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、0.01重量%~100重量%である、(12)~(15)のいずれか1つに記載の方法。
(17)尿素以外の肥効成分、粘度調節剤、相分離防止剤、化学緩効性肥料、追加元素、カルボン酸類、キレート剤、硝酸化成抑制剤、農薬、及び防腐剤からなる群から選択される1種以上の他の成分を添加する工程をさらに含む、(12)~(16)のいずれか1つに記載の方法。
(18)粘度調節剤及び相分離防止剤が、カルボキシメチルセルロース、グァーガム、アルギン酸ソーダ、キサンタンガム、ポリアクリルアミド、水溶性高分子、無機性添加剤、及びポリカルボン酸型高分子活性剤からなる群から選択される1種以上である、(17)に記載の方法。
(19)化学緩効性肥料が、ウレアホルム、アセトアルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素、オキサミド、グアニル尿素、及びグリオキサール尿素からなる群から選択される1種以上である、(17)又は(18)に記載の方法。
(20)他の成分の総含有量が、尿素含有液状肥料の総重量に対して、1~50重量%である、(17)~(19)のいずれか1つに記載の方法。
(21)化合物Aとの混合により、得られる尿素含有液状肥料に結晶形態の尿素が析出し、かつ、結晶の平均長径が2mm以下になり、かつ、結晶の平均アスペクト比が1~20になる、(12)~(20)のいずれか1つに記載の方法。
(22)使用用途が機械施肥である、(12)~(21)のいずれか1つに記載の方法。
(23)尿素含有液状肥料における尿素の針状結晶成長の抑制方法であって、尿素含有液状肥料と化合物Aとを混合する工程、ここで、化合物Aは、炭素数6以上の直鎖構造を有し、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基を1つ以上有し、1気圧、20℃において、水100gに対して0.01g以上溶解する溶解度を有する有機化合物である、を含む方法。
(24)化合物Aが、ポリエーテル類、ポリカルボン酸類、ポリビニルアルコール類、ポリアミン類及びポリアミド類からなる群から選択される1種以上である、(23)に記載の方法。
(25)化合物Aが、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヘキサメチレンジアミン及びポリアミドからなる群から選択される1種以上である、(23)又は(24)に記載の方法。
(26)尿素含有液状肥料中の化合物Aの含有量が、尿素の重量に対して、0.01重量%~100重量%である、(23)~(25)のいずれか1つに記載の方法。
(27)化合物Aとの混合により、尿素含有液状肥料中に結晶形態の尿素が析出し、結晶の平均長径が2mm以下になり、かつ、結晶の平均アスペクト比が1~20になる、(23)~(26)のいずれか1つに記載の方法。
(28)使用用途が機械施肥である、(23)~(27)のいずれか1つに記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、尿素含有液状肥料中において、尿素の針状結晶の成長が抑制された液状肥料、その製造方法、及び尿素針状結晶成長の抑制方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者がおこない得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0014】
本発明は、尿素、化合物A、及び水を含む尿素含有液状肥料であって、化合物Aが、炭素数6以上の直鎖構造を有し、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基を1つ以上有し、1気圧、20℃において、水100gに対して0.01g以上溶解する溶解度を有する有機化合物である、尿素含有液状肥料に関する。
【0015】
ここで、本発明において、液状肥料とは、液体肥料、懸濁肥料、又はペースト肥料を指す。液体肥料とは、液体媒体、例えば水中に肥料成分が完全に溶解し、液状になっている肥料である。液体肥料は、場合により、さらなる媒体、例えば水により希釈して使用される。懸濁肥料とは、液体媒体、例えば水中に肥料成分が分散しており、懸濁状態になっている肥料である。ペースト肥料とは、液体肥料中に肥料成分が分散している高粘度の液状肥料である。
【0016】
本発明の尿素含有液状肥料に含まれている成分として、尿素は、肥効成分であり、以下の化学式
【化1】
を有する化合物である。
【0017】
窒素は植物の多量必須元素の一つであり、タンパク質の合成などに利用される。したがって、植物栽培では多量の窒素を施肥する必要がある。また、液状肥料では、窒素成分を高濃度化することで、少量で窒素成分の目標量を施肥することができ、施肥の省力化と運送コスト低減につながる。本発明において、液状肥料の窒素成分として尿素を使用することにより、尿素は自重の46%が窒素で構成されており、最も窒素を多く含む物質なので、窒素成分を高濃度化することができる。
【0018】
尿素の含有量は、溶媒となる水の重量に対して、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。尿素の含有量の上限値は、尿素含有液状肥料が液状である限り限定されないが、水の重量に対して、通常200重量%以下、好ましくは180重量%以下である。
【0019】
本発明において、化合物Aは、炭素数6以上の直鎖構造を有し、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基を1つ以上有し、1気圧、20℃において、水100gに対して0.01g以上溶解する溶解度を有する有機化合物である。化合物Aは、1気圧、20℃において、水100gに対して0.05g以上溶解する溶解度を有することが好ましい。また、直鎖構造とは、主鎖を構成する炭素原子全てが、第1級炭素又は第2級炭素である、直線状に連なっている構造のことを意味し、例えばポリマーである場合、繰り返し単位(モノマー)間の結合様式に分岐も環もないことを意味する。化合物Aとしては、例えば、ポリエーテル類、ポリカルボン酸類、ポリビニルアルコール類、ポリアミン類及びポリアミド類からなる群から選択される1種以上が挙げられる。化合物Aとしては、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヘキサメチレンジアミン及びポリアミド、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。化合物Aとしては、ポリエチレングリコール及び/又はポリビニルアルコールが好ましい。これらの化合物Aの分子量は、限定されないが、例えば、数平均分子量として、通常200~100,000、好ましくは300~90,000、さらにより好ましくは300~80,000、特に400~80,000である。これらの化合物Aでは、例えば、けん化度は、通常70mol%以上100mol%未満、好ましくは71mol%~99mol%であり、平均重合度は、例えば、通常300~2000、好ましくは500~1800である。
【0020】
例えば、化合物Aは、数平均分子量として、通常200~30,000、好ましくは300~30,000の分子量を有するポリエーテル類、例えばポリエチレングリコールである。例えば、化合物Aは、けん化度が通常70mol%以上100mol%未満、好ましくは71mol%~99mol%であり、平均重合度が通常300~2000、好ましくは500~1800であるポリビニルアルコール類、例えばポリビニルアルコールである。
【0021】
本発明の尿素含有液状肥料では、当該液状肥料中に前記で説明した化合物Aが存在すれば、当該液状肥料での尿素の針状結晶の成長は抑制される。したがって、化合物Aの含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常100重量%以下、好ましくは0.01重量%~100重量%、より好ましくは0.05重量%~100重量%、さらにより好ましくは0.05重量%~50重量%、特に0.05重量%~25重量%である。あるいは、尿素と化合物Aとの重量比(尿素/化合物A)は、限定されないが、通常1以上、好ましくは1~10000、より好ましくは1~2000、さらにより好ましくは2~2000、特に4~2000である。
【0022】
例えば、化合物Aがポリエーテル類の場合、ポリエーテル類の含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常0.01重量%~100重量%、好ましくは0.05重量%~50重量%である。例えば、化合物Aが通常200~500、好ましくは360~400の数平均分子量を有するポリエチレングリコールの場合、当該ポリエチレングリコールの含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常10重量%~100重量%、好ましくは30重量%~60重量%である。例えば、化合物Aが通常2000~4000、好ましくは2700~3300の数平均分子量を有するポリエチレングリコールの場合、当該ポリエチレングリコールの含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常5重量%~100重量%、好ましくは10重量%~60重量%である。例えば、化合物Aが通常5000~10000、好ましくは7300~9300の数平均分子量を有するポリエチレングリコールの場合、当該ポリエチレングリコールの含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常0.5重量%~100重量%、好ましくは5重量%~60重量%である。例えば、化合物Aが通常10000~30000、好ましくは15000~25000の数平均分子量を有するポリエチレングリコールの場合、当該ポリエチレングリコールの含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常0.1重量%~100重量%、好ましくは0.5重量%~60重量%である。例えば、化合物Aがポリビニルアルコール類の場合、当該ポリビニルアルコール類の含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常0.01重量%~100重量%、好ましくは0.10重量%~25重量%である。例えば、化合物Aがけん化度通常70mol%~85mol%、好ましくは78mol%~82mol%、平均重合度通常1000~2000、好ましくは1500~1800であるポリビニルアルコール類の場合、当該ポリビニルアルコール類の含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常0.01重量%~100重量%、好ましくは0.30重量%~25重量%である。例えば、化合物Aがけん化度通常85mol%~95mol%、好ましくは86mol%~90mol%であり、平均重合度通常250~750、好ましくは約500であるポリビニルアルコールの場合、当該ポリビニルアルコールの含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常0.01重量%~100重量%、好ましくは0.30重量%~25重量%である。例えば、化合物Aがけん化度通常85mol%~95mol%、好ましくは86mol%~90mol%であり、平均重合度通常750~1250、好ましくは1000であるポリビニルアルコールの場合、当該ポリビニルアルコールの含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常0.01重量%~100重量%、好ましくは0.10重量%~25重量%である。例えば、化合物Aがけん化度通常85mol%~95mol%、好ましくは86mol%~90mol%であり、平均重合度通常1250~1750、好ましくは1500であるポリビニルアルコールの場合、当該ポリビニルアルコールの含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常0.01重量%~100重量%、好ましくは0.10重量%~25重量%である。例えば、化合物Aがけん化度通常95mol%以上、好ましくは96mol%以上であり、平均重合度通常200~750、好ましくは400~600であるポリビニルアルコールの場合、当該ポリビニルアルコールの含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常0.01重量%~100重量%、好ましくは0.30重量%~25重量%である。例えば、化合物Aがけん化度通常95mol%以上、好ましくは96mol%以上であり、平均重合度通常750~1500、好ましくは900~1000であるポリビニルアルコールの場合、当該ポリビニルアルコールの含有量は、限定されないが、尿素の重量に対して、通常0.01重量%~100重量%、好ましくは0.10重量%~25重量%である。
【0023】
あるいは、例えば、化合物Aがポリエーテル類の場合、尿素とポリエーテル類との重量比(尿素/ポリエーテル類)は、限定されないが、通常1以上、好ましくは2~2000である。例えば、化合物Aがポリビニルアルコール類の場合、尿素とポリビニルアルコール類との重量比(尿素/ポリビニルアルコール類)は、限定されないが通常1以上、好ましくは4~2000である。
【0024】
本発明の尿素含有液状肥料が尿素と前記で説明した化合物Aを含むことによって、尿素が液状肥料中に針状結晶として析出後成長することがなく、液状肥料を長期にわたって安定して貯蔵することができる。
【0025】
水は、尿素含有液状肥料中に尿素及び化合物Aを分散させる媒体である。したがって、水の含有量は、尿素、化合物A及びその他成分の含有量に依存して変わり得る。水の含有量は、限定されないが、尿素含有液状肥料の総重量に対して、通常10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%である。
【0026】
尿素含有液状肥料の媒体として水を使用することにより、様々な状況での施肥において、本発明の尿素含有液状肥料を使用することができる。
【0027】
本発明の尿素含有液状肥料において、尿素が結晶として存在する場合、尿素の結晶の平均長径は、通常2mm以下、好ましくは1mm以下である。なお、尿素は、溶解していてもよいため、尿素の結晶の平均長径の下限値は限定されない。
【0028】
尿素含有液状肥料中の尿素の結晶の平均長径は、光学顕微鏡により10個の結晶の重心を通る長径を測定し、それらを平均化することにより算出することができる。
【0029】
本発明の尿素含有液状肥料において、尿素が、結晶として存在する場合、尿素の結晶の平均アスペクト比(長径/短径)は、通常1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10、さらにより好ましくは1~5、特に1~3である。
【0030】
尿素の結晶の平均アスペクト比は、光学顕微鏡により10個の結晶の重心を通る長径及び短径並びにアスペクト比(長径/短径)を測定し、それらを平均化することにより算出することができる。
【0031】
尿素含有液状肥料において使用され得る尿素は、尿素を溶解させる水の温度により溶解度が著しく変化するため、貯蔵時や施肥時の温度に依存して、針状に結晶析出し、結晶成長してしまうという問題点があった。本発明の尿素含有液状肥料は、窒素成分として使用される尿素の結晶化を抑制するものではなく、尿素を析出させたうえで、析出時の結晶成長を抑制することで、尿素を水中に懸濁安定させ、さらには施肥時におけるデバイスのノズル(例えば、楕円形吐出部の内径、短径約3mm×長径約7mm)の詰まりを抑制するものである。
【0032】
さらに、本発明の尿素含有液状肥料は、通常肥料原料として使用することができる他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0033】
他の成分としては、限定されないが、尿素以外の肥効成分(尿素とは別の窒素分、リン酸分、カリウム分)、粘度調節剤、相分離防止剤(分散剤)、化学緩効性肥料、追加元素、他の添加剤などが挙げられる。
【0034】
尿素以外の肥効成分としては、アンモニア、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、リン酸、及び苛性加里などを挙げることができる。なお、アンモニアは気体であっても液体であってもよく、アンモニア水であってもよい。
【0035】
本発明の尿素含有液状肥料が尿素以外の肥効成分をさらに含むことにより、施肥する肥料の窒素分、リン酸分及びカリウム分を適切に調整することができる。
【0036】
粘度調節剤及び/又は相分離防止剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グァーガム、アルギン酸ソーダ、キサンタンガム、ポリアクリルアミド、澱粉などの水溶性高分子、ベントナイト、アタパルジャイト、ホワイトカーボン、ケイソウ土などの無機性添加剤、アクリル酸ナトリウムのホモポリマー、アクリル酸ナトリウム-メタクリル酸ヒドロキシエチルエステルコポリマー、アクリル酸ナトリウム-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムアリルエーテルコポリマー、マレイン酸ホモポリマー、マレイン酸-グリセリンモノアリルエーテルコポリマーなどのポリカルボン酸型高分子活性剤などが挙げられる。
【0037】
本発明の尿素含有液状肥料が粘度調節剤及び/又は相分離防止剤をさらに含むことにより、液状肥料の粘度を施肥の状況に合わせて適切に調節し、さらに微粒子状で析出した尿素を水中に安定して懸濁させることができる。
【0038】
化学緩効性肥料としては、ウレアホルム、アセトアルデヒド縮合尿素(CDU)、イソブチルアルデヒド縮合尿素(IB)、オキサミド、グアニル尿素、グリオキサール尿素などを挙げることができる。
【0039】
本発明の尿素含有液状肥料が化学緩効性肥料をさらに含むことにより、本発明の尿素含有液状肥料に緩効性を持たせることができる。
【0040】
追加元素としては、カルシウム、ケイ素、硫黄、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、マンガン、マグネシウム、ホウ素、塩素、及びニッケルなどを挙げることができる。
【0041】
他の添加剤としては、例えば、酢酸及びクエン酸などのカルボン酸類、EDTAなどのキレート剤、硝酸化成抑制剤、農薬、防腐剤、並びに有機成分としての骨粉、各種発酵廃液、及び油粕などを含んでいてもよい。
【0042】
他の成分のそれぞれの含有量は、添加したそれぞれの成分が本来の効果を適切に発揮できる量であれば限定されないが、尿素含有液状肥料の総重量に対して、通常0~90重量%、好ましくは0~50重量%である。
【0043】
他の成分の総含有量(他の成分全てを足しわせた含有量)は、限定されないが、尿素含有液状肥料の総重量に対して、通常0.05~90重量%、好ましくは1~50重量%である。
【0044】
本発明の尿素含有液状肥料の粘度は、限定されないが、通常100cp~10000cp、好ましくは300cp~7000cpである。
【0045】
本発明の尿素含有液状肥料の粘度が前記範囲になることで、効率よく施肥することができる。
【0046】
本発明の尿素含有液状肥料は、構成成分として、尿素、前記で説明した化合物A、及び水を少なくとも使用する以外は、当該技術分野において公知の方法により製造することができる。
【0047】
本発明の尿素含有液状肥料は、例えば、水中に尿素及び化合物Aを添加し、混合、例えば撹拌、及び溶解することにより製造することができる。
【0048】
なお、尿素、化合物A、水、及び場合により他の成分の添加順序、混合装置などは、限定されない。例えば、原料が固体原料である場合、固体原料をあらかじめ粉砕し、他の原料と共に所定量の水に添加し、撹拌、分散させて、尿素含有液状肥料を製造することができる。なお、粉砕操作は、通常の乾式粉砕機若しくは湿式粉砕機、又はそれらを併用して使用することができる。具体的に、尿素、化合物A、及び水の添加順序としては、例えば、水中に尿素を添加し、尿素を溶解、均一に混合後、化合物Aを添加して混合してもよく、あるいは、水中に化合物Aを添加し、化合物Aを溶解、均一に混合後、尿素を添加して混合してもよく、あるいは、尿素及び化合物Aが装填された容器中に水を添加し、混合、溶解してもよい。
【0049】
尿素は、水に溶解し、溶解した状態で化合物Aと混合することが好ましい。したがって、尿素は、水に溶解する濃度(前記で説明した濃度)、時間、例えば通常1分~60分及び温度、例えば通常0℃~80℃で使用することが好ましい。しかしながら、尿素の水中での溶解及び析出は平衡により起こり得るため、水中に尿素及び化合物Aを添加し、例えば撹拌などにより混合すれば、本発明の尿素含有液状肥料を製造することができる。
【0050】
本発明は、尿素含有液状肥料に前記で説明した化合物Aを添加することにより尿素の針状結晶の成長を抑制する方法にも関する。
【0051】
本発明の尿素含有液状肥料における尿素針状結晶成長の抑制方法では、尿素含有液状肥料及び化合物Aは、前記した通りのものを使用することができる。
【0052】
本発明の尿素含有液状肥料における尿素針状結晶成長の抑制方法では、尿素含有液状肥料中に、尿素と、前記で説明した化合物Aとを共存させることにより、液状肥料中で、針状の尿素結晶の析出成長を抑制し、代わりに微粒子状の尿素結晶を析出させる。したがって、本発明の当該方法は、窒素成分として使用される尿素の結晶化を抑制するものではなく、尿素を析出させたうえで、析出時の結晶成長を抑制し、結晶を微粒子状にするものであり、尿素を水中に懸濁安定させ、さらには施肥時におけるデバイスのノズル(例えば、楕円形吐出部の内径、短径約3mm×長径約7mm)の詰まりを抑制することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲は
これら実施例に限定されるものではない。
【0054】
I-1.実施例の尿素含有液状肥料の製造及び評価
(1)尿素100gを、40℃に加温した水100gに添加し、撹拌溶解して尿素含有溶液を調製した。
(2)(1)で調製した尿素含有溶液に、化合物Aとして、
(i)ポリエチレングリコール400、数平均分子量約360~400(実施例1~4)、
(ii)ポリエチレングリコール4000、数平均分子量約2700~3300(実施例5~9)、
(iii)ポリエチレングリコール6000、数平均分子量約7300~9300(実施例10~17)、
(iv)ポリエチレングリコール20000、数平均分子量約15000~25000(実施例18~26)、
(ポリエチレングリコールは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)、
(v)ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(実施例27~32)、
(ポリオキシエチレンラウリルエーテルは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)、
(vi)ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート(実施例33~40)、
(ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)、
(vii)ポリビニルアルコール(PVA):
(vii-1)けん化度78mol%~82mol%、平均重合度1500~1800(実施例41~49)、
(vii-2)けん化度86.0mol%~90.0mol%、重合度約500(実施例50~58)、
(vii-3)けん化度86mol%~90mol%、平均重合度1000(実施例59~67)、
(vii-4)けん化度86.0mol%~90.0mol%、重合度約1500(実施例68~76)、
(vii-5)けん化度96mol+%、平均重合度約400~600(実施例77~85)、
(vii-6)けん化度96mol+%、平均重合度約900~1000(実施例86~94)、
(各種ポリビニルアルコールは、富士フイルム和光純薬株式会社製である)、
(viii)ポリアクリル酸5000(実施例95~102)、
(ポリアクリル酸は、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)
(ix)ヘキサメチレンジアミン(実施例103~106)、
(ヘキサメチレンジアミンは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)
(x)ポリアミドB-0(実施例107~109)、
(ポリアミドB-0は、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)
を、尿素の総重量に対して、100重量%、50重量%、25重量%、12.5重量%、6.25重量%、3.125重量%、1.5625重量%、0.78125重量%、0.390625重量%、0.1953125重量%又は0.09765625重量%で添加し、撹拌して、各有機化合物の溶解性を確認して、試料を調製した。
(3)(2)で調製した試料を、-5℃で24時間静置して、結晶を発生させ、当該結晶の結晶形態を目視で評価した。
【0055】
I-2.比較例の尿素含有液状肥料の製造及び評価
実施例の尿素含有液状肥料の製造において、化合物Aを、
(I)アルギン酸ナトリウム(比較例1)、
(アルギン酸ナトリウムは、富士フイルム和光純薬株式会社製である)、
(II)メチルセルロース4000(比較例2)、
(メチルセルロースは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)、
(III)キャリボンL-400(比較例3~6)、
(キャリボンL-400は、アクリル酸系のポリカルボン酸型高分子活性剤であり、三洋化成工業株式会社製であり、商品名にて記載)、
(IV)ポリプロピレングリコール,トリオール型,3000(比較例7~10)、
(ポリプロピレングリコールは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)、
に変更した以外は、実施例と同様にして尿素含有液状肥料を製造し、評価した。
【0056】
I-3.結果
表1~2に結果を示す。
【0057】
【0058】
【0059】
表中、粗大結晶の割合における数字は、一定量の尿素含有液状肥料の析出物を採取し、2mm以上の粗大結晶の存在程度を目視評価した際の粗大結晶(残存尿素)の存在割合を示す。したがって、4は、粗大結晶の存在を確認できなかったことを示し、3は尿素含有液状肥料の体積に対し0%~25体積%未満の粗大結晶が存在したことを示し、2は、微小結晶が確認できたが、尿素含有液状肥料の体積に対し25体積%以上の粗大結晶が存在したことを示し、1は、粗大結晶のみ確認できたことを示す。
【0060】
表中、液状肥料としての適用性について、×は、液状肥料への適用性がないことを示し、△は、液状肥料への適用性があることを示し、○は、液状肥料への適用性が高いことを示し、◎は、液状肥料への適用性がより高いことを示す。
【0061】
表1及び2より、尿素含有液状肥料中に、炭素数6以上の直鎖構造を有し、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基を1つ以上有する有機化合物である化合物Aを少量でも添加することにより、粗大結晶の析出が抑制できることがわかった。特に、化合物Aとして、ポリエチレングリコール又はポリビニルアルコールを使用すると、粗大結晶析出の抑制効果がより顕著になることがわかった。
【0062】
なお、表2には記載していないが、水及び尿素からなる尿素含有液状肥料も製造した。その結果、水及び尿素からなる尿素含有液状肥料では、微細な針状結晶が析出後、全て粗大な針状結晶に成長し(評価結果:1)、液状肥料としての適用性もなかった(評価結果:×)。
【0063】
II-1.実施例の尿素含有液状肥料の微細析出結晶のアスペクト比及び長径の評価
(1)尿素100gを、40℃に加温した水100gに添加し、撹拌溶解して尿素含有溶液を調製した。
(2)(1)で調製した尿素含有溶液に、化合物Aとして、
(i)ポリエチレングリコール400、数平均分子量約360~400(実施例110)、
(ii)ポリエチレングリコール4000、数平均分子量約2700~3300(実施例111)、
(iii)ポリエチレングリコール6000、数平均分子量約7300~9300(実施例112)、
(iv)ポリエチレングリコール20000、数平均分子量約15000~25000(実施例113)、
(ポリエチレングリコールは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)、
(v)ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(実施例114)、
(ポリオキシエチレンラウリルエーテルは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)、
(vi)ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート(実施例115)、
(ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)、
(vii)ポリビニルアルコール(PVA):
(vii-1)けん化度78mol%~82mol%、平均重合度1500~1800(実施例116)、
(vii-2)けん化度86.0mol%~90.0mol%、重合度約500(実施例117)、
(vii-3)けん化度86mol%~90mol%、平均重合度1000(実施例118)、
(vii-4)けん化度86.0mol%~90.0mol%、重合度約1500(実施例119)、
(vii-5)けん化度96mol+%、平均重合度約400~600(実施例120)、
(vii-6)けん化度96mol+%、平均重合度約900~1000(実施例121)、
(各種ポリビニルアルコールは、富士フイルム和光純薬株式会社製である)、
(viii)ポリアクリル酸5000(実施例122)、
(ポリアクリル酸は、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)
(ix)ヘキサメチレンジアミン(実施例123)、
(ヘキサメチレンジアミンは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)
(x)ポリアミドB-0(実施例124)、
(ポリアミドB-0は、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)
を、尿素の総重量に対して、50重量%、25重量%、12.5重量%又は6.25重量%で添加し、撹拌して、試料を調製した。
(3)(2)で調製した試料を、-5℃で24時間静置して、結晶を発生させ、当該結晶の結晶形態を光学顕微鏡で観察した。尿素の結晶の平均アスペクト比は、光学顕微鏡により10個の結晶の長径及び短径並びにアスペクト比(長径/短径)を測定し、それらを平均化することにより算出した。また、尿素の結晶の長径は、10個の結晶の長径を実測し、それらを平均化することにより算出した。
【0064】
II-2.尿素以外の肥効成分を含有する、尿素含有液状肥料の微細析出結晶のアスペクト比及び長径の評価
(1)尿素100gを、40℃に加温した水100gに添加し、撹拌溶解して尿素含有溶液を調製した。
(2)(1)で調製した尿素含有溶液に、化合物Aとして、
ポリエチレングリコール6000、数平均分子量約7300~9300
(ポリエチレングリコールは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)、
を、尿素の総重量に対して、25重量%で添加し、撹拌した。
(3)(2)で調整した化合物A及び尿素含有溶液に、肥効成分として、
(xi)塩化カリウム(実施例125)、
(塩化カリウムは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)
(xii)塩化アンモニウム(実施例126)、
(塩化アンモニウムは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)
(xiii)硫酸アンモニウム(実施例127)、
(硫酸アンモニウムは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)
(xiv)リン酸二水素アンモニウム(実施例128)、
(リン酸二水素アンモニウムは、富士フイルム和光純薬株式会社製であり、商品名にて記載)
(xv)ウレアホルム(実施例129)、
(ウレアホルムは、住友化学株式会社製であり、商品名:スミカホルム)
を、尿素の総重量に対して、25重量%で添加し、撹拌して、試料を調製した。
(4)(3)で調製した試料を、-5℃で24時間静置して、結晶を発生させ、当該結晶の結晶形態を光学顕微鏡で観察した。尿素の結晶の平均アスペクト比は、光学顕微鏡により10個の結晶の長径及び短径並びにアスペクト比(長径/短径)を測定し、それらを平均化することにより算出した。また、尿素の結晶の長径は、10個の結晶の長径を実測し、それらを平均化することにより算出した。
【0065】
II-3.比較例11の尿素含有液状肥料の析出結晶のアスペクト比及び長径の評価
(1)尿素100gを、40℃に加温した水100gに添加し、撹拌溶解して尿素含有溶液を調製した。
(2)(1)で調製した尿素含有溶液を、-5℃で24時間静置して、結晶を発生させ、当該結晶の結晶形態を目視で観察した。尿素の結晶の平均アスペクト比は、10個の結晶の長径及び短径並びにアスペクト比(長径/短径)を実測し、それらを平均化することにより算出した。また、尿素の結晶の長径は、10個の結晶の長径を実測し、それらを平均化することにより算出した。
【0066】
II-4.結果
表3~5に結果を示す。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
表1~5より、化合物Aとして、水溶性を示し、かつ直鎖構造を有する有機化合物を使用した場合、尿素針状結晶成長を抑制し、微粒子状への形態変化を確認することができた。特に、化合物Aとして、ポリエーテル類、ポリビニルアルコール類、ポリアミド類を使用した場合、平均アスペクト比及び長径を共に小さくすることができ、結晶成長の抑制程度が良好であった。