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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/55 20060101AFI20241113BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20241113BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241113BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 8/14 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K8/63
A61K8/34
A61K8/891
A61K8/06
A61Q19/00
A61Q1/10
A61K8/14
A61K8/37
A61K8/44
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022188928
(22)【出願日】2022-11-28
(65)【公開番号】P2023097368
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2021212177
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】竹下 志緒
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-325076(JP,A)
【文献】特開2008-222650(JP,A)
【文献】特開2019-112314(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090740(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/149162(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/112193(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0044578(KR,A)
【文献】特許第6377381(JP,B2)
【文献】特許第5825934(JP,B2)
【文献】中国特許第101686911(CN,B)
【文献】特許第5756344(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~成分(F)を含有する皮膚外用組成物であり、当該皮膚外用組成物は、
成分(A)リン脂質
成分(B)フィトステロール
成分(C)IOB値が1.8~3.5の多価アルコール及びIOB値が4.5~5.5
の多価アルコール
を含有するリポソームと、
成分(D)リン脂質
成分(E)油剤
成分(F)高級アルコール
を含有するエマルションと、
を含有し、
前記成分(E)油剤は、ジメチコン及び25℃においてペースト状の極性油を少なくとも含有し、
前記ペースト状の極性油は、25℃を超える温度に融点を持ち、かつ30℃の粘度が5000~100000mPa・sの極性油であり、
前記ペースト状の極性油が、N-アシルアミノ酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ダイマー酸エステル、ジペンタエリストール脂肪酸エステル、脂肪酸コレステリルエステル、脂肪酸フィトステリルエステルから選択される1種又は2種以上であり、
前記皮膚外用組成物に含まれる前記成分(E)油剤の含有量が、前記皮膚外用組成物全体に対して10質量%以上であり、かつ、前記皮膚外用組成物に含まれる前記25℃においてペースト状の極性油の含有量が、前記皮膚外用組成物全体に対して1~5質量%である、
前記皮膚外用組成物。
【請求項2】
前記皮膚外用組成物に含まれる前記成分(E)中の、ジメチコンを含む非極性油と、25℃においてペースト状の極性油を含む極性油との含有質量割合:(非極性油含有質量)/(極性油含有質量)が0.8~2であり、当該ペースト状の極性油は、25℃を超える温度に融点を持ち、かつ30℃の粘度が5000~100000mPa・sの極性油である、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
前記皮膚外用組成物における変化率が、40%未満である、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
変化率=40℃にて1カ月保存したサンプルのリポソーム由来の平均粒子径/製造直後のサンプルのリポソーム由来の平均粒子径
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リン脂質の閉鎖小胞であるリポソームは、医薬品分野、化粧料分野において、有効成分のデリバリーや角層貯留効果を目的としたスキンケア基材として、広く応用されている(例えば、特許文献1、2参照)。近年、化粧料分野においては、より高いスキンケア効果と幅広い感触の選択が求められるようになり、リポソームとエマルションとを高濃度で含有する試みがなされている(例えば、特許文献3参照)。しかし、リポソームとエマルションとを共存させると、両粒子が衝突・凝集・合一等することにより、リポソームとエマルション各々の粒子形態が変化してしまう場合があり、両粒子を長期にわたり安定に共存させることには課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-183726号公報
【文献】特開2008-266324号公報
【文献】国際公開第2000/000178号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでに、リポソームとエマルションが共存する製品も知られているが、リポソーム配合組成物としての高い浸透感は得られるものの、クリームとしてのコク感の点では、満足のいくものが得られていなかった。なお、本明細書における「コク感」とは、しっとりとして濃厚な使用感、又は油感のある使用感を指す。
よって本発明では、リポソームとエマルションの両粒子が、各々長期にわたり安定であること、及び、リポソーム粒子による浸透感とエマルション粒子によるコク感に優れた皮膚外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究の結果、リポソーム、エマルションそれぞれの組成を検討するに至り、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、
成分(A)リン脂質
成分(B)フィトステロール
成分(C)IOB値が1.8~3.5の多価アルコール及びIOB値が4.5~5.5の多価アルコール を含有するリポソームと、
成分(D)リン脂質
成分(E)ジメチコン及び25℃においてペースト状の極性油を含有する油剤
成分(F)高級アルコール を含有するエマルションと、
を含有し、
前記成分(E)の皮膚外用組成物全体に対する含有量が10質量%以上であり、かつ、25℃においてペースト状の極性油を皮膚外用組成物全体に対して1~5質量%含有する、皮膚外用組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の皮膚外用組成物は、リポソームとエマルションの共存安定性に優れ、皮膚に適用した際の浸透感とコク感にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、各数値範囲(~)の上限値(以下)と下限値(以上)は、所望により、任意に組み合わせることができる。また、本明細書の含有量等において、「皮膚外用組成物中」とは「皮膚外用組成物全質量中」の意味である。本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である(質量/質量%)。
【0009】
本発明は、(i)成分(A)リン脂質、成分(B)フィトステロール、及び成分(C)IOB値が1.8~3.5の多価アルコール及びIOB値が4.5~5.5の多価アルコール、を含有するリポソームと、(ii)成分(D)リン脂質、成分(E)ジメチコン及び25℃においてペースト状の極性油を含有する油剤、及び成分(F)高級アルコール、を含有するエマルションと、を含有する皮膚外用組成物を提供することができる。当該皮膚外用組成物には、成分(A)~(F)が含まれること又は使用されることが好適である。前記皮膚外用剤は、前記成分(E)の含有量は、皮膚外用組成物の全質量中、10質量%以上であり、かつ、25℃においてペースト状の極性油の含有量は、皮膚外用組成物の全質量中、1~5質量%であることが好適である。
【0010】
<リポソーム>
本発明中のリポソームとは、リン脂質二分子膜による球状の閉鎖小胞体を指し、水性溶媒中に成分(A)~(C)を分散することにより、リポソーム分散液として得られるものである。
【0011】
(成分(A)リン脂質)
本発明中のリポソームに用いられる成分(A)リン脂質は、分子構造中にリン酸エステル部位を持つ脂質であり、二分子膜を形成するものであれば特に限定はないが、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジン酸等を挙げることができる。これらの中でも、リポソーム粒子の安定性の観点から、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンが好ましく、ホスファチジルコリン(PC)がより好ましい。具体的には、その由来(例えば、大豆由来、卵黄由来)によって組成が異なる上記リン脂質の混合物を用いることができ、通常の化粧品、医薬部外品、医薬品等に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、大豆由来リン脂質、大豆由来水素添加リン脂質、大豆由来リゾリン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来リン脂質、卵黄由来水素添加リン脂質、卵黄由来リゾリン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質、が挙げられる。これらのリン脂質は、必要に応じて一種又は二種以上を選択して用いることができる。安定性の観点から、より好ましくは、大豆由来水素添加リン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質が挙げられ、大豆由来水素添加リン脂質及び/又は大豆由来水素添加リゾリン脂質を用いることがより好ましい。それらリン脂質の中でも、リポソーム粒子安定性の観点から、ホスファチジルコリン(PC)純度が高いもの(好ましくはリン脂質中PC70質量%以上)を好ましく用いることができる。具体的には、NIKKOLレシノールS-10E(日光ケミカルズ社製;大豆由来)、ベイシスLS-60HR(日清オイリオグループ社製;大豆由来)、卵黄レシチンPL-100P(キューピー社製;卵黄由来)、HSL-70(ワイエムシィ社製;大豆由来)等の市販品を用いることができる。
【0012】
成分(A)は、皮膚外用組成物中の、リポソーム粒子の脂質二分子膜を形成する主成分として含有されるものである。また、リン脂質自体が持つ保湿効果や皮膚親和性により、本発明の皮膚外用組成物に、より高い浸透感や保湿効果を付与することが出来る。
【0013】
本発明における成分(A)の含有量は、特に制限されるものではないが、リポソームとエマルションの共存安定性の観点から、皮膚外用組成物中に0.5質量%(以下、単に「%」と表記する)以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることがさらにより好ましい。また、リポソームとエマルションの共存安定性の観点から、皮膚外用組成物中に10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらにより好ましい。
【0014】
(成分(B)フィトステロール)
本発明中のリポソームに用いられる成分(B)フィトステロールは、ステロール類の一種であるが、大豆やナタネ等の植物に微量含まれている成分であり、通常の化粧品、医薬部外品、医薬品等に使用されるものであれば特に限定されず、市販品を用いてもよい。本発明に用いられる成分(B)フィトステロールは、βシトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール等のようなフィトステロールが複数種含まれるステロールの混合物である。成分(B)は、脂質二分子膜構造の安定性に寄与しており、成分(A)と組み合わせることにより、リポソームの安定性を向上させることができる。市販品としては、フィトステロールQI(三菱ケミカルフーズ社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明における成分(B)の含有量は、特に制限されるものではないが、リポソームとエマルションの共存安定性の観点から、皮膚外用組成物中に0.1%以上であることが好ましく、0.3%以上であることがより好ましい。また皮膚外用組成物中に1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0016】
(成分(C)IOB値が1.8~3.5の多価アルコール及びIOB値が4.5~5.5の多価アルコール)
本発明中のリポソームに用いられる成分(C)の多価アルコールは、分子内にヒドロキシル基を2つ以上有する構造をもつものであり、化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば、特に制限されないが、そのIOB値が1.8~3.5の範囲ものと4.5~5.5の範囲ものとを組み合わせて用いる。成分(C)は、成分(A)及び成分(B)の溶解性に寄与しており、特定のIOB値を有するものを組み合わせることにより、リポソームの安定性を向上させることができる。
【0017】
なお、本発明におけるIOB値とは、有機概念図(藤田穆、有機化合物の予測と有機概念図、化学の領域VOL).11,No.10(1957)719-715)に基づき求められる値である。より詳しくは、この有機概念図では、化合物の物理化学的物性について、主にファンデルワールス(Van Der Waals)力による物性の程度を「有機性」、主に電気的親和力による物性の程度を「無機性」と定義して表現する値である。IOB値は、無機性(inorganic)と有機性(organic)のバランスを示す指標であり、IOB値=無機性値/有機性値として表される。この値が大きい化合物ほど親水性の性質、極性が高い性質を示す化合物と言える。
【0018】
成分(C)として具体的には、IOB値が1.8~3.5の範囲の多価アルコールとしては、ジプロピレングリコール(IOB値=1.8)、1,3-ブチレングリコール(IOB値=2.5)、1,3-プロパンジオール(IOB値=3.3)、ジグリセリン(IOB値=3.5)等が挙げられ、IOB値が4.5~5.5の範囲の多価アルコールとしては、グリセリン(IOB値=5.0)、ソルビトール(IOB値=5.0)等が挙げられ、それぞれ必要に応じて一種又は二種以上を選択して用いることができる。リポソームの安定性の観点から、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールからなる群から選ばれる一種又は二種以上と、グリセリンとの組み合わせであることが好ましく、ジプロピレングリコール及び/又は1,3-ブチレングリコールと、グリセリンとの組み合わせがより好ましく、1,3-ブチレングリコール及びグリセリンの組み合わせであることがさらに好ましい。成分(C)として、リポソームの安定性の観点から、1,3-ブチレングリコール及びグリセリンを少なくとも含有又は使用することがより好ましく、これらにさらに他成分を組み合わせること、例えば、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールと、グリセリンとの組み合わせが挙げられる。
【0019】
本発明における成分(C)の含有量は、特に制限されるものではないが、リポソームの安定性の観点から、成分(C)の多価アルコールの合計含有量として、皮膚外用組成物中に1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましい。また皮膚外用組成物中に10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明における成分(C)の含有量の内訳としては、IOB値が1.8~3.5の範囲の多価アルコールの含有量は、皮膚外用組成物中に0.5~9.5%であることが好ましく、1~5%であることがより好ましい。また、IOB値が4.5~5.5の範囲の多価アルコールの含有量は、皮膚外用組成物中に0.5~9.5%であることが好ましく、1~5%であることがより好ましい。この範囲であれば、リポソーム自体の安定性が確保されるため、好ましい。
また、IOB値が1.8~3.5の範囲の多価アルコール:IOB値が4.5~5.5の範囲の多価アルコールの含有質量割合又は使用質量割合は、好ましくは0.5~9.5:9.5~0.5、より好ましくは1~5:5~1である。
【0021】
本発明中のリポソームは、前述のように水性溶媒に分散した状態で存在するため、当該水性溶媒として水、低級アルコール(好適には炭素数1~4、例えばEtOH)等から選択される一種又は二種以上の水性成分を含有する。また、成分(A)~成分(C)の必須成分以外に、油剤、界面活性剤、水溶性高分子、各種美容有効成分、香料等から選択される一種又は二種以上を、リポソームの構造を損なわない範囲で適宜、含有することができる。
【0022】
リポソームの製造方法は、特に限定されず、常法により調製される。例えば、成分(A)~成分(C)をあらかじめ加熱して均一に混合しておき、そこに攪拌しながら加熱した水性成分を添加しリポソーム分散液を得る。このときの混合温度として特に限定されないが例えば60~80℃などが挙げられる。このようにして得られた分散液について、直交ニコル下で偏光顕微鏡観察を行い、マルテーゼクロス像を確認することにより、脂質二分子膜が形成されていることを確認可能である。
【0023】
本発明中のリポソームの平均粒子径は、特に制限されるものではないが、本発明の効果をより好適に発揮する観点から、50~600nmであることが好ましく、100~500nmであることがより好ましい。なお、平均粒子径の測定方法は、リアルタイムナノ粒子径測定装置DelsaMax CORE(ベックマン・コールター株式会社製)にて測定できる(後記〔実施例〕の(平均粒子径の測定方法)参照)。
【0024】
<エマルション>
本発明中のエマルションとは、水性溶媒中に成分(D)~成分(F)を乳化することにより得られる、水中油型乳化組成物における乳化滴を指す。
【0025】
(成分(D)リン脂質)
本発明中のエマルションに用いられる成分(D)リン脂質は、前述のリポソームに用いられる成分(A)と同様であり、成分(A)での記載内容を適宜採用することができる。成分(D)は、水中油型乳化組成物の乳化剤として含有されるものであり、成分(A)とは独立に、最適なものを選択し得るが、皮膚外用組成物としての安定性の観点から、成分(A)と同種のリン脂質であることが好ましい。成分(D)として、大豆由来水素添加リン脂質及び/又は大豆由来水素添加リゾリン脂質を用いることがより好ましい。また、リン脂質自体が持つ保湿効果や皮膚親和性により、本発明の皮膚外用組成物に、より高い浸透感や保湿効果を付与することが出来る。
【0026】
本発明における成分(D)の含有量は、特に制限されるものではないが、リポソームとエマルションの共存安定性の観点から、皮膚外用組成物中、0.5%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましい。また、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらにより好ましい。
【0027】
(成分(E)ジメチコン及び25℃においてペースト状の極性油を含有する油剤)
本発明中のエマルションに用いられる成分(E)の油剤は、ジメチコンと、25℃においてペースト状の極性油とを少なくとも含有する。当該成分(E)油剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば特に制限されず、固体、ペースト状、液状等の性状や、極性、非極性等の物性は問わないが、25℃においてペースト状の極性油を必須に含有する。また植物油、鉱物油、合成油等の由来を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、エステル類、脂肪酸類、シリコーン油類、フッ素系油等が挙げられるが、ジメチコンを必須に含有する。油剤として、具体的には、流動パラフィン、スクワラン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、ワセリン等の炭化水素油;トリエチルヘキサノイン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル・カプリン)酸グリセリン、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル等のエステル油;メドウフォーム油、サフラワー油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油等の植物油;デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等のシリコーン油;油溶性美容成分等を挙げることができ、これらは必要に応じて一種又は二種以上を選択して用いることが出来る。
【0028】
成分(E)の油剤中のジメチコンとは、直鎖状のシリコーン油であり、ジメチルポリシロキサンとも呼ばれ、ポリシロキサンの側鎖及び末端がすべてメチル基であるものである。ジメチコンは、特に制限されないが、リポソームとエマルションの共存安定性や浸透性の観点から、25℃における動粘度が100mm/s以下であるものが好ましい。なお、本発明において動粘度は、ASTM D445に従う測定方法によって25℃で測定された値である。
【0029】
成分(E)の油剤中の25℃においてペースト状の極性油とは、25℃を超える温度に融点を持ち、かつ30℃の粘度が5000~100000mPa・sの極性油を指す。なお、本発明において前記粘度は、試料を30℃で一日放置後、単一円筒型回転粘度計ビスメトロン型式VS-A1(芝浦システム社製)を用いて測定したものを指す。その融点は、特に限定されないが、25℃を超え60℃以下のものがより好ましく、30~55℃であるものが特に好ましい。また、エステル油等、極性を有するものであれば、いずれのものも使用でき、25℃においてペースト状の極性油として、具体的には、例えば、N-アシルアミノ酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ダイマー酸エステル、ジペンタエリストール脂肪酸エステル、脂肪酸コレステリルエステル、脂肪酸フィトステリルエステル等が挙げられる。さらに具体的には、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジオクチルドデシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)等のN-アシルアミノ酸エステル;ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、(アジピン酸/2-エチルヘキサン酸/ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油等のグリセリン脂肪酸エステル;ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスイソステアリル等のダイマー酸エステル;(12-ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリトール、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリトール、(12-ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリトール等のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル;イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、リシノール酸コレステリル等の脂肪酸コレステリルエステル;マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等の脂肪酸フィトステリルエステル;等などが挙げられ、これらは必要に応じて一種又は二種以上を選択して用いることが出来る。これらペースト状の極性油により、より良好にエモリエント感を皮膚外用組成物に付与することができる。これらの中でも、コク感と皮膚外用組成物の安定性の観点から、オレイン酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル及びこれらから選択される二種以上の混合物が好ましく、エモリエント効果の観点からもより望ましい。
【0030】
本発明における成分(E)の含有量は、リポソームとエマルションの共存安定性、コク感及びエモリエント効果の観点から、油剤の合計含有量として、皮膚外用組成物中に、10%以上であり、12%以上であることがより好ましく、また、30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましい。
【0031】
本発明における成分(E)の含有量の内訳としては、25℃においてペースト状の極性油の含有量は、十分なコク感を演出する観点から、皮膚外用組成物中に1~5%であり、2~4%であることがより好ましい。またジメチコンの含有量は、皮膚外用組成物中に0.1~5%であることが好ましく、0.5~3%であることがより好ましい。なお、油剤の合計含有量中、25℃においてペースト状の極性油及びジメチコンのこれらの含有量は、好ましくは5~100%、より好ましくは10~60%である。
【0032】
また、本発明中のエマルションにおいて、成分(E)の油剤は、ジメチコンを含む非極性油と、25℃においてペースト状の極性油を含む極性油とを含有するが、成分(E)中の極性油と非極性油との含有質量割合は、(非極性油含有質量)/(極性油含有質量)が0.8~2であることが好ましく、1~1.8であることがより好ましい。なお、この含有質量割合は、使用質量割合であってもよい。当該割合がこの範囲であれば、リポソームとエマルションの共存安定性、皮膚外用組成物の浸透感が、より向上するため好ましい。
【0033】
(成分(F)高級アルコール)
本発明中のエマルションに用いられる成分(F)高級アルコールは、好ましくは炭素数12~22の、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基を有する1価アルコールである。化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば、特に制限されず用いることができるが、具体的には、ベヘニルアルコールやステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ラウリルアルコール、アレイルアルコール、2-オクチルドデカノール、ヘキサデシルアルコール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの中でも、リポソームとエマルションの共存安定性、浸透感、コク感の観点から、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコールからなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましく、セトステアリルアルコール及び/又はベヘニルアルコールが好ましく、これらの混合割合は例えば1~2:2~1が挙げられる。
【0034】
本発明における成分(F)の含有量は、特に制限されるものではないが、リポソームとエマルションの共存安定性、浸透感、コク感の観点から、皮膚外用組成物中0.2%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましく、0.8%以上であることがさらに好ましく、また、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらにより好ましい。
【0035】
本発明中のエマルションは、前述のように水中油型乳化組成物の状態で存在するため、水相を構成する成分として、水及び多価アルコール、低級アルコール等の水性成分、あるいは通常の水中油型乳化化粧料に使用される成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜、含有することができる。例えば、成分(E)以外の油剤、成分(D)、(F)以外の界面活性(助)剤、水溶性高分子、紫外線吸収剤、抗酸化剤、抗菌剤、防腐剤、保湿剤、pH調整剤、清涼剤、粉体、ビタミン類、美容成分、香料等を含有することができる。
【0036】
エマルションの製造方法は、特に限定されず、常法により調製される。例えば、成分(D)~成分(F)と、必要に応じてその他成分を加熱溶解したもの(例えば60~80℃程度)を、水性成分に添加混合して、これを攪拌することにより乳化し、水中油型乳化組成物として調製する方法が挙げられる。
【0037】
本発明中のエマルションの平均粒子径は、特に制限されるものではないが、本発明の効果をより好適に発揮する観点から、0.8~10μmであることが好ましく、1~7μmであることがより好ましい。なお、エマルションの平均粒子径の測定は、透過型顕微鏡を用いて、目視にて測定可能である(後記〔実施例〕の(平均粒子径の測定方法)参照)。
【0038】
<皮膚外用組成物>
本発明は、上述のとおり、(i)前記成分(A)~(C)を含有するリポソームと、(ii)前記成分(D)~(F)を含有するエマルションと、を含む皮膚外用組成物を提供することができる。さらに、前記成分(E)を皮膚外用組成物の全質量中に10質量%以上含有すること、かつ、25℃においてペースト状の極性油を皮膚外用組成物の全質量中に1~5質量%含有すること、が好適である。
なお、皮膚外用組成物中における、成分(A)及び成分(D)の合計の含有量は、上述のとおりであるが、これら両者の合計量は、特に制限されるものではないが、好適な下限値として、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは2.5%以上であり、また、好適な上限値として、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下である。
【0039】
本発明の皮膚外用組成物は、リポソームとエマルションの共存安定性に優れ、皮膚に適用した際の浸透感とコク感にも優れるものである。さらに、本発明の皮膚外用組成物は、エモリエント効果の高いスキンケア化粧料として有用なものとすることができる。本発明の皮膚外用組成物は、エモリエント感の高い組成物であることがより好適であり、これは、前記成分(E)を含ませること、より具体的には、ジメチコン及び25℃においてペースト状の極性油を含ませることにより、より良好にエモリエント感の高い組成物にすることができる。また、極性油は、コク感の観点でも好ましい。なお、エモリエント感を評価する場合には、後記実施例の「2.「コク感」「浸透感」」の評価方法を用いて評価することができる。
【0040】
本発明の皮膚外用組成物における変化率は、好ましくは変化率60%未満、より好ましくは50%未満、さらに好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満であることが、好適である。当該変化率が低いほど、リポソーム及びエマルションの共存安定性が高いと考える。
【0041】
本発明の皮膚外用組成物は、成分(A)~(C)を含有するリポソームを含む溶液と、成分(D)~(F)を含有するエマルションを含む溶液とを、混合することにより得ることができる。また、成分(D)~(F)を含有するエマルションを含む溶液に、成分(A)~(C)を含有するリポソームを含む分散液を添加し、混合することにより得ることができる。混合する際に温度は、20~50℃程度が好ましい。このとき、成分(A):成分(B):成分(C)の含有質量割合又は使用質量割合は、特に限定されないが、好適には0.5~10:0.1~1:1~10、より好適には1~7:0.3~0.8::3~7、さらに好適には1.5~5:0.3~0.5::3~7である。また、成分(D):成分(E):成分(F)の含有質量割合又は使用質量割合は、特に限定されないが、好適には0.5~5:10~30:0.2~5、より好適には1~3:12~25:0.5~3、さらに好適にはより好適には1~3:12~25:0.8~3である。なお、上述した各成分(成分(A)~成分(F))の含有量を適宜組み合わせて、含有質量割合又は使用質量割合としてもよい。
【0042】
本発明の皮膚外用組成物は、前記リポソーム(分散液)及びエマルション(水中油型乳化組成物)に加え、本発明の効果を妨げない範囲かつコク感及び浸透感等の感触調整やリポソーム及びエマルションの共存安定性の向上等を目的として、通常の化粧料や皮膚外用組成物に配合される成分を、適宜、用いることができる。このような成分として、具体的には、低級アルコール類、保湿剤等の水性成分、水溶性高分子、粉体、皮膜形成剤、必須成分以外の界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、皮膚有効成等が挙げられる。
【0043】
水性成分としては、例えば、ソルビトール、マルチトール、グルコースなどの糖アルコール類、エタノール等の低級アルコール類、ポリグリセリン-3、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3BO)(8EO)(5PO)、ポリオキシプロピレン(9)ジグリセリル等のグリセリン誘導体類、多価アルコール類等が挙げられる。
【0044】
水溶性高分子としては、例えば、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ムコ多糖体等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらのうち、皮膚外用組成物としての安定性や使用感の観点から、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムがより好ましい。
【0045】
本発明の皮膚外用組成物は、皮膚外用組成物の安定性の観点から、pHが4~7であることが好ましい。なお、本発明においてpH測定は20℃にて測定したものであり、測定には、ガラス電極式水素イオン濃度計(堀場製作所社製)を用いた。
【0046】
また本発明の皮膚外用組成物は、医薬用の皮膚外用剤、医薬部外品、化粧料として利用可能であり、例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、日焼け止め料、頭皮用トリートメント、医薬用ローション剤等を例示することができる。コク感を実感できるという点では、乳液、クリームが好ましく、その使用方法は、手や指、コットンで使用する方法が好ましく挙げられる。
【0047】
本技術は、以下の構成又は技術的特徴を適宜採用することができる。
・〔1〕
成分(A)リン脂質
成分(B)フィトステロール
成分(C)IOB値が1.8~3.5の多価アルコール及びIOB値が4.5~5.5の多価アルコール
を含有するリポソームと、
成分(D)リン脂質
成分(E)ジメチコン及び25℃においてペースト状の極性油を含有する油剤
成分(F)高級アルコール
を含有するエマルションと、
を含有し、
前記成分(E)の皮膚外用組成物全体に対する含有量が10質量%以上であり、かつ、25℃においてペースト状の極性油を皮膚外用組成物全体に対して1~5質量%含有する、皮膚外用組成物。
・〔2〕
前記成分(E)中の、ジメチコンを含む非極性油と、25℃においてペースト状の極性油を含む極性油との含有質量割合:(非極性油含有質量)/(極性油含有質量)が0.8~2である、前記〔1〕に記載の皮膚外用組成物。
【0048】
・〔3〕
前記成分(A)の含有量は、皮膚外用組成物中、0.5~10質量%である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の皮膚外用組成物。
・〔4〕
前記成分(B)の含有量は、皮膚外用組成物中、0.1~1質量%である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔5〕
前記成分(C)の含有量は、皮膚外用組成物中、1~10質量%である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔6〕
前記成分(C)におけるIOB値が1.8~3.5の多価アルコール:IOB値が4.5~5.5の多価アルコールの含有質量割合又は使用質量割合は、0.5~9.5:9.5~0.5である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔7〕
前記成分(C)におけるIOB値が1.8~3.5の多価アルコールの含有量は、皮膚外用組成物中、0.5~9.5質量%、及び/又は、IOB値が4.5~5.5の多価アルコールの含有量は、皮膚外用組成物中、0.5~9.5質量%である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔8〕
前記成分(C)は、1,3-ブチレングリコール及びグリセリンを少なくとも含むものである、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
【0049】
・〔9〕
前記成分(D)の含有量は、皮膚外用組成物中、0.5~5質量%である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔10〕
前記成分(E)の含有量は、皮膚外用組成物中、10~30質量%である、前記〔1〕~〔9〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔11〕
前記成分(E)25℃においてペースト状の極性油の含有量は、皮膚外用組成物中、1~5質量%、及び/又は、前記成分(E)ジメチコンの含有量は、皮膚外用組成物中、0.1~5質量%である、前記〔1〕~〔10〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔12〕
前記成分(E)25℃においてペースト状の極性油は、オレイン酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選択される1種又は2種以上である、前記〔1〕~〔11〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔13〕
前記成分(E)中の、ジメチコンを含む非極性油と、25℃においてペースト状の極性油を含む極性油との含有質量割合:(非極性油含有質量)/(極性油含有質量)が1~1.8である、前記〔1〕~〔12〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔14〕
前記成分(F)の含有量は、皮膚外用組成物中、0.2~5質量%である、前記〔1〕~〔13〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔15〕
前記成分(F)は、セトステアリルアルコール及び/又はベヘニルアルコールである、前記〔1〕~〔14〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
【0050】
・〔16〕
前記リポソームの平均粒子径は、50~600nmである、及び/又は、前記エマルションの平均粒子径は、0.8~10μmである、前記〔1〕~〔15〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
・〔17〕
前記皮膚外用組成物における変化率が、40%未満である、前記〔1〕~〔16〕のいずれか一つに記載の皮膚外用組成物。
変化率=40℃にて1カ月保存したサンプルのリポソーム由来の平均粒子径/製造直後のサンプルのリポソーム由来の平均粒子径
【実施例
【0051】
以下、本発明を実施例等により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0052】
実施例1~21、比較例1~4:クリーム
表1の組成、以下に示す製造方法により、実施例及び比較例のクリームを調製した。得られたクリームについて下記の評価方法・判定基準により、「(リポソームとエマルションの)共存安定性」、「コク感」、「浸透感」について評価・判定した。結果を表1に示す。表1の成分(A)(D)のリン脂質(No.1及びNo.7:*1)は、大豆由来の水素添加リン脂質(*1:NIKKOLレシノールS-10E (日光ケミカルズ社製);水素添加大豆リン脂質,PC含量75~85%)であり、PCが70%以上のものである。表1の成分(B)フィトステロール(No.2:*2)は、フィトステロール(*2:フィトステロールQI (三菱ケミカルフーズ社製))である。表1の成分(E)の25℃においてペースト状の極性油(No. 15,16)は、融点が30~55℃である。また、実施例1~21の皮膚外用組成物のpHが4~7である。なお、実施例22以降で使用している、リン脂質及びフィトステロールは、*1及び*2と同じものである。
【0053】
【表1】
【0054】
<製造方法>
A:成分(1)~(5)を70℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(6)を70℃に加熱する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて分散する。
D:Cを室温まで冷却し、リポソーム分散液を調整した。
E:成分(7)~(9)を70℃に加熱し、均一に混合する。
F:成分(10)~(19)を70℃に加熱し、均一に混合する。
G:成分(20)~(22)を70℃に加熱し、均一に混合する。
H:EにFを徐々に添加し、デスパミキサーにて分散する。
I:HにGを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
J:Iを40℃まで冷却し、成分(23)~(26)を徐々に添加し、デスパミキサーにて分散して、エマルション組成物を調整した。
K:JにDを徐々に添加し、デスパミキサーにて混合し、リポソームとエマルションの共存するクリームを得た。
【0055】
<評価方法>
1.リポソームとエマルションの「共存安定性」
下記に示す方法にて実施例及び比較例のクリームの粒子径を測定すると、リポソームの粒子径とエマルションの粒子径が、それぞれのピークとして検出される。リポソームとエマルションの共存安定性が悪いということは、リポソームの崩壊や、リポソームとエマルションとの合一等により、リポソームの粒子径が変化することである。そのため、製造直後のリポソーム由来の粒子径のピーク値を基準として、40℃の恒温下で1カ月保存後の同ピーク値を測定し、その「変化率」を算出することで、リポソームとエマルションの共存安定性を評価した。
(平均粒子径の測定方法)
室温及び40℃の恒温下でそれぞれ1カ月保管後の組成物において、プラスチックキュベットUVette 220-1600 nm(Eppendorf社製)に各試料を500倍に希釈して充填し、リアルタイムナノ粒子径測定装置DelsaMax CORE(ベックマン・コールター株式会社製)にてリポソーム及びエマルションそれぞれの粒子径のピーク値を測定した。同サンプルを3回測定し、3回の測定値の平均値を「平均粒子径」とした。なお、「変化率」は下記の式により算出した。
変化率=40℃にて1カ月保存したサンプルのリポソーム由来の平均粒子径/製造直後のサンプルのリポソーム由来の平均粒子径
(判定基準)
◎:平均粒子径の変化率が、20%未満
○:平均粒子径の変化率が、20%以上±40%未満
△:平均粒子径の変化率が、40%以上±60%未満
×:平均粒子径の変化率が、60%以上
【0056】
2.「コク感」「浸透感」
35~50歳の化粧品評価の専門パネル10名により、1日2回朝晩の洗顔後、実施例及び比較例のクリームを米粒大程度、全顔に塗布してもらった。各試料について、使用中のコク感、浸透感を、下記の評価基準にて5段階で評価し、更に各試料の評点の平均値を下記の判定基準を用いて判定した。
(評価基準)
[評価結果]:[評点]
非常に良好 :5点
良好 :4点
普通(どちらともいえない):3点
やや不良 :2点
不良 :1点
(判定基準)
[判定]:[評点平均点]
◎ :4.5以上
○ :3.5以上~4.5未満
△ :1.5以上~3.5未満
× :1.5未満
【0057】
<結果>
前記表1から明らかなように、実施例1~21のクリームはいずれも、リポソームとエマルションの共存安定性に優れ、十分なコク感があり、浸透感にも優れることが分かった。
一方で、エマルションの乳化剤としてリン脂質を用いていない比較例1では、リポソームとエマルションの共存安定性、浸透感において満足のいくものが得られなかった。油剤量が10%以下の比較例2と、25℃においてペースト状の極性油の量が1%未満の比較例3では、コク感が不十分であった。また、高級アルコールを含有しない比較例4では、リポソームとエマルションの共存安定性、コク感において満足のいくものが得られなかった。
【0058】
実施例22:アイクリーム
(成分) (%)
(1)リン脂質 3
(2)フィトステロール 0.5
(3)グリセリン 5
(4)1,3-ブチレングリコール 5
(5)精製水 20
(6)リン脂質 2.5
(7)グリセリン 10
(8)1,3-ブチレングリコール 5
(9)スクワラン 3
(10)ジメチコン(6CS) 3
(11)水添ポリイソブテン 1
(12)ジフェニルシロキフェニルトリメチコン 1
(13)ホホバ油 4
(14)ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)

(15)ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)
ジペンタエリスリチル 1
(16)ステアリン酸水添ヒマシ油 1
(17)セトステアリルアルコール 2
(18)ベヘニルアルコール 1.5
(19)精製水 残量
(20)PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン 3
(21)メチルグルセス-10 3
(22)カルボマー 0.18
(23)アルカリゲネス酸性多糖体 0.01
(24)アルギン酸ナトリウム 0.01
(25)水酸化ナトリウム 0.05
(26)精製水 1
(注2)
【0059】
(製造方法)
A:成分(1)~(4)を70℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(5)を70℃に加熱する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて分散する。
D:Cを室温まで冷却し、リポソームを調整した。
E:成分(6)~(8)を70℃に加熱し、均一に混合する。
F:成分(9)~(18)を70℃に加熱し、均一に混合する。
G:成分(20)~(21)を70℃に加熱し、均一に混合する。
H:EにFを徐々に添加し、デスパミキサーにて分散する。
I:HにGを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
J:Iを40℃まで冷却し、成分(22)~(26)を徐々に添加し、デスパミキサーにて分散して、エマルションを調整した。
K:JにDを徐々に添加し、デスパミキサーにて混合し、リポソームとエマルションの共存したアイクリームを得た。
【0060】
(結果)
得られたアイクリームは、リポソームとエマルションの共存安定性、コク感及び浸透感に優れたものであった。
【0061】
実施例23:ボディクリーム
(成分) (%)
(1)リン脂質 1
(2)フィトステロール 0.2
(3)グリセリン 2
(4)DPG 2
(5)精製水 20
(6)リン脂質 1
(7)グリセリン 3
(8)1,3-ブチレングリコール 10
(9)ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 0.2
(10)ジメチコン(100CS) 1
(11)流動パラフィン 5
(12)ワセリン 1
(13)エチルヘキサン酸セチル 3
(14)ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)
0.7
(15)オレイン酸フィトステリル 0.3
(16)セトステアリルアルコール 0.6
(17)ベヘニルアルコール 0.8
(18)精製水 残量
(19)グリセリン 5
(20)PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン 3
(21)グリセレス-26 3
(22)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.2
(23)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.05
(24)水酸化ナトリウム 0.05
(25)精製水 1
【0062】
(製造方法)
A:成分(1)~(4)を70℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(5)を70℃に加熱する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて分散する。
D:Cを室温まで冷却し、リポソームを調整した。
E:成分(6)~(8)を70℃に加熱し、均一に混合する。
F:成分(9)~(17)を70℃に加熱し、均一に混合する。
G:成分(18)~(21)を70℃に加熱し、均一に混合する。
H:EにFを徐々に添加し、デスパミキサーにて分散する。
I:HにGを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
J:Iを40℃まで冷却し、成分(22)~(25)を徐々に添加し、デスパミキサーにて分散して、エマルションを調整した。
K:JにDを徐々に添加し、デスパミキサーにて混合し、リポソームとエマルションの共存したボディクリームを得た。
【0063】
(結果)
得られたボディクリームは、リポソームとエマルションの共存安定性、コク感及び浸透感に優れたものであった。