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特許7587566銅箔積層フィルム、及びそれを含む電子素子
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  • 特許-銅箔積層フィルム、及びそれを含む電子素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】銅箔積層フィルム、及びそれを含む電子素子
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20241113BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H05K1/03 630H
B32B15/08 J
H05K1/03 610N
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022201354
(22)【出願日】2022-12-16
(65)【公開番号】P2023091764
(43)【公開日】2023-06-30
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0183083
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】千 鐘勳
(72)【発明者】
【氏名】李 河樹
(72)【発明者】
【氏名】朴 鍾容
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-143491(JP,A)
【文献】特表2000-508265(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素基材と、
前記含フッ素基材上に配されたタイ層と、
前記タイ層上に配された銅層と、を含み、
前記タイ層が金属・酸素(M-O)結合解離エネルギーが400kJ/mol以上である金属を含む金属層または金属合金層であり、
前記タイ層が、W、Ti、Sn、Al及びMoのうちから選択された1種以上の金属または金属合金であり、
前記タイ層の厚みが10nmないし100nmである、銅箔積層フィルム。
【請求項2】
前記含フッ素基材に係わる水接触角が120°以下である、請求項1に記載の銅箔積層フィルム。
【請求項3】
前記含フッ素基材に係わるジヨードメタン接触角が90°以下である、請求項1に記載の銅箔積層フィルム。
【請求項4】
前記含フッ素基材の表面エネルギーが11dyne/cmないし25dyne/cmである、請求項1に記載の銅箔積層フィルム。
【請求項5】
前記含フッ素基材表面のフッ素含量が60原子%ないし75原子%である、請求項1に記載の銅箔積層フィルム。
【請求項6】
常温(25℃)で3日間放置した後で測定した前記含フッ素基材に対する銅シード層及び銅メッキ層の剥離強度が、0.65kgf/cm以上である、請求項1に記載の銅箔積層フィルム。
【請求項7】
150℃以上の温度で2回以上熱処理し、1日放置した後で測定した前記含フッ素基材に対する銅シード層及び銅メッキ層の剥離強度が、0.35kgf/cm以上である、請求項1に記載の銅箔積層フィルム。
【請求項8】
前記銅層は銅シード層及び銅メッキ層を含み、前記銅メッキ層の厚みが12μm以下である、請求項1に記載の銅箔積層フィルム。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の銅箔積層フィルムを含む、電子素子。
【請求項10】
アンテナ素子またはアンテナケーブルを含む、請求項に記載の電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅箔積層フィルム、及びそれを含む電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
銅箔積層フィルムは、基材と伝導性銅箔との積層体である。該銅箔積層フィルムは、電子機器の小型化及び軽量化の趨勢と共に、使用量が増大している。最近、5G移動通信機器の開発により、GHz帯域の信号伝送速度が一般化されている。そのような信号の高周波化傾向により、印刷回路またはアンテナ素子に使用される基材につき、高周波数において誘電特性を向上させようとする研究が進められている。そのような要求に合わせ、基材表面にコーティング層を形成する方法が利用されている。しかしながら、そのようなコーティング層が形成された基材は、基材表面の塗布性、及び基材と銅箔との常温接着力及び/または高温接着力が低下してしまう。その結果、パターンエッチング性、及び酸または塩基の下において、耐化学性が低下するという傾向がある。従って、高周波数において、向上された誘電特性と共に、基材表面の塗布性、及び基材と銅箔との優秀な常温接着力及び高温接着力を有する銅箔積層フィルムへの要求が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、高周波数において、向上された誘電特性と共に、基材表面の塗布性、及び基材と銅箔との優秀な常温接着力及び高温接着力を有する銅箔積層フィルムを提供することである。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、また、前記銅箔積層フィルムを含む電子素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様により、
含フッ素基材と、
前記含フッ素基材上に配されたタイ(tie)層と、
前記タイ層上に配された銅層と、を含み、
前記タイ層は、金属・酸素(M-O)結合解離エネルギー(M-O bond dissociation energy)が400kJ/mol以上である金属を含む金属層または金属合金層であり、
前記タイ層の厚みは、10nmないし100nmである銅箔積層フィルムが提供される。
【0006】
前記含フッ素基材に対する水接触角は、120°以下でもある。
【0007】
前記含フッ素基材に対するジヨードメタン接触角は、90°以下でもある。
【0008】
前記含フッ素基材の表面エネルギーは、11dyne/cmないし25dyne/cmでもある。
【0009】
前記含フッ素基材表面のフッ素含量は、60原子%ないし75原子%でもある。
【0010】
前記タイ層は、W、Ti、Sn、Cr、Al及びMoのうちから選択された1種以上の金属または金属合金を含むものでもある。
【0011】
前記タイ層は、Niをさらに含み、前記Niの含量が50重量%以下でもある。
【0012】
常温(25℃)で3日間放置した後で測定した前記フッ素層が配されたポリイミド系基材に対する銅シード層及び銅メッキ層の剥離強度は、0.65kgf/cm以上でもある。
【0013】
150℃以上の温度で2回以上熱処理し、1日放置した後で測定した前記フッ素層が配されたポリイミド系基材に対する銅シード層及び銅メッキ層の剥離強度は、0.35kgf/cm以上でもある。
【0014】
前記銅メッキ層の厚みは、12μm以下でもある。
【0015】
他の態様により、
前述の銅箔積層フィルムを含む電子素子が提供される。
【0016】
前記電子素子は、アンテナ素子またはアンテナケーブルを含むものでもある。
【発明の効果】
【0017】
一態様による銅箔積層フィルムは、含フッ素基材と、前記含フッ素基材上に配されたタイ層と、前記タイ層上に配された銅層と、を含む。前記タイ層は、金属・酸素(M-O)結合解離エネルギーが400kJ/mol以上である金属を含む金属層または金属合金層であり、前記タイ層の厚みは、10nmないし100nmでもある。前記銅箔積層フィルムは、高周波数において、向上された誘電特性と共に、基材表面の塗布性、及び基材と銅箔との優秀な常温接着力及び高温接着力を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一具現例による銅箔積層フィルムの断面模式図である。
図2】他の一具現例による両面銅箔積層フィルムの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例と図面とを参照し、銅箔積層フィルム、及びそれを含む電子素子について詳細に説明する。それら実施例は、ただ本発明についてさらに具体的に説明するために例示的に提示されたものであるのみ、本発明の範囲は、それら実施例によって制限されるものではないということは、当業界で当業者において自明であろう。
【0020】
取り立てて定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野の熟練者により、一般的に理解されるところと同一の意味を有する。相反する場合、定義を含む本明細書が優先されるのである。
【0021】
本明細書で説明されるところと類似しているか、あるいは同等な方法及び材料が、本発明の実施または試験にも使用されるが、適する方法及び材料が本明細書に記載される。
【0022】
本明細書において、「含み」という用語は、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むものでもあるということを意味する。
【0023】
本明細書において、「及び/または」という用語は、関連記載された1以上の項目の任意の組み合わせ、及び全ての組み合わせを含むことを意味する。本明細書において、「または」という用語は、「及び/または」を意味する。本明細書において、構成要素の前に、「少なくとも1種」、または「1以上」という表現は、全体構成要素のリストを補完することができ、前述の記載の個別構成要素を補完することができるということを意味するものではない。
【0024】
本明細書において、「ポリイミド系基材」は、「ポリイミド基材」及び「ポリイミド含有誘導体基材」を含むことを意味する。
【0025】
本明細書において、1構成要素が他の構成要素の「上」に配されていると言及される場合、該1構成要素は、他の構成要素上に直接配されうるか、あるいは前記構成要素間に介在された構成要素が存在しうる。一方、該1構成要素が他の構成要素の「上に直接」配されていると言及される場合、介在された構成要素が存在しないのである。
【0026】
電子素子において、アンテナ素子は、一般的に、基材上に無線信号による電気的フローがなされる金属層、例えば、銅箔をラミネートする方式によって製造される。
【0027】
アンテナの信号受信と係わって生じる損失は、基材の誘電率による損失、及び無線信号、すなわち、電気信号が金属層を流れる場合、電気的抵抗によって物理的に生じる信号損失を有しうる。高周波数帯域を有する無線信号は、相対的に低周波数帯域を有する無線信号と比較し、無線信号による電気的フローが、金属層表面においてさらに集中される現象が生じる。また、ラミネート方式の銅箔積層フィルムは、アンテナ素子の曲折された領域において、銅箔に物理的応力が生じ、その表面にクラックが生じる。その結果、伝送損失が生じうる。そのような問題を解決するために、基材表面において誘電特性を向上させる物質を塗布する方法が採られている。しかしながら、そのような方法は、基材表面の塗布性、及び基材と銅箔との接着力が低下してしまう問題がある。
【0028】
そのような点に着眼し、本発明の発明者らは、以下のような銅箔積層フィルムを提案するものである。
【0029】
一具現例による銅箔積層フィルムは、含フッ素基材と、前記含フッ素基材上に配されたタイ(tie)層と、前記タイ層上に配された銅層と、を含み、前記タイ層は、金属・酸素(M-O)結合解離エネルギー(M-O bond dissociation energy)が400kJ/mol以上である金属を含む金属層または金属合金層であり、前記タイ層の厚みは、10nmないし100nmでもある。
【0030】
本明細書において、「含フッ素基材」は、フッ素を含む基材を意味し、具体的には、フッ素原子を含む樹脂を含む基材を意味する。このとき、該含フッ素基材は、基材自体がフッ素原子を含む樹脂でもあるか、基材内に他の樹脂と共に、フッ素原子を含む樹脂が含有されてもいるか、あるいは基材表面にフッ素原子を含む樹脂が、表面処理またはコーティングされて形成されるものでもある。基材内に、他の樹脂と共に、フッ素原子を含む樹脂が含有されている場合の例としては、ポリイミド樹脂と共に、フッ素原子を含む樹脂が混合されて基材を形成することができるか、基材内に含まれた有無機粒子表面に、フッ素原子を含む樹脂がコーティングされているか、あるいは有無機粒子自体内に、フッ素原子を含む樹脂が混合されて含まれる場合をいずれも含む。基材表面にフッ素原子を含む樹脂が、表面処理またはコーティングされて形成される場合の例としては、基材の一面または両面に、フッ素原子を含む樹脂が一部または全部に、表面処理またはコーティングされて形成される場合をいずれも含む。前記銅層は、銅シード層及び銅メッキ層の順に配された層によっても構成される。
【0031】
前記銅箔積層フィルムは、高周波数において、向上された誘電特性と共に、基材表面の塗布性を向上させながら、含フッ素基材と、銅シード層及び銅メッキ層との間に、優秀な常温接着力及び高温接着力を有しうる。
【0032】
図1は、一具現例による銅箔積層フィルム10の断面模式図である。図2は、一具現例による両面銅箔積層フィルム20の断面模式図である。
【0033】
図1を参照すれば、一具現例による銅箔積層フィルム10は、含フッ素基材として、フッ素層5が配されたポリイミド系基材1、フッ素層5が配されたポリイミド系基材1上面に、タイ層2、銅シード層3及び銅メッキ層4が順に配されている。図2を参照すれば、他の一具現例による銅箔積層フィルム20は、含フッ素基材として、フッ素層15が配されたポリイミド系基材11、フッ素層15が配されたポリイミド系基材11上面に、タイ層12、銅シード層13及び銅メッキ層14が順に配された第1面21と、含フッ素基材として、フッ素層15’が配されたポリイミド系基材11下面に、タイ層12’、銅シード層13’及び銅メッキ層14’が順に配された第2面22と、によって構成されている。
【0034】
以下、銅箔積層フィルム10,20を構成する含フッ素基材として、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11、タイ層2,12,12’、銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’について記述する。
【0035】
<含フッ素基材として、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11>
【0036】
一具現例による銅箔積層フィルム10の含フッ素基材は、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11でもある。
【0037】
ポリイミド系基材1,11は、変性ポリイミド(m-PI:modified PI)基材でもある。前記変性ポリイミド基材は、極性が大きい置換基を減少させた樹脂基材である。無線信号を回路に流すとき、回路周辺の電界に変化が起こる。そのような電界変化は、樹脂基材内部分極の緩和時間に近接することになれば、電気変位に遅延が生じる。このとき、樹脂基材内部に分子摩擦が起こって熱が生じ、生じた熱は、誘電特性に影響を与える。従って、前記基材として、極性が大きい置換基を減少させた変性ポリイミド基材を使用する。
【0038】
ポリイミド系基材1,11の一面または両面に、フッ素層5,15,15’が配されうる。フッ素層5,15,15’は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン(TFE/CTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)のうちから選択された1種以上のフッ素樹脂を含むものでもある。例えば、フッ素層5,15,15’は、パーフルオロアルコキシ(PFA)でもある。
【0039】
フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11の厚みは、25μmないし100μmでもある。例えば、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11の厚みは、25μmないし90μmでもあるか、25μmないし80μmでもあるか、25μmないし70μmでもあるか、25μmないし60μmでもあるか、あるいは25μmないし50μmでもある。フッ素層5,15,15’の厚みは、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11の厚み100%を基準にし、50%以下でもある。フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11の厚みが25μm未満であるならば、銅箔積層フィルム10,20の製造時、生産性が低下してしまい、100μmを超えれば、薄膜化がなされないのである。
【0040】
フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11に係わる水接触角は、120°以下でもある。例えば、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11に係わる水接触角は、107°ないし120°でもある。
【0041】
フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11に係わるジヨードメタン接触角は、90°以下でもある。例えば、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11に係わるジヨードメタン接触角は、77°ないし90°でもある。
【0042】
フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11の表面エネルギーは、11dyne/cmないし25dyne/cmでもある。
【0043】
フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11に係わる水接触角、ジヨードメタン接触角及び表面エネルギーの範囲を満足する場合、適切な塗布性を確保することにより、ポリイミド系基材1,11の両面に配されたフッ素層5,15,15’の厚み偏差を±10%以下にし、カール発生が抑制されうる。その結果、ポリイミド系基材1,11表面上に、安定した銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’を形成することができる。
【0044】
フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11表面のフッ素含量は、60原子%ないし75原子%でもある。前記フッ素含量範囲内において、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11は、低い誘電率、低い誘電損失、及び低い伝送損失を有しうる。フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11は、周波数20GHzにおいて、2.8以下の誘電率(D)、及び0.003以下の誘電損失(D)を有しうる。例えば、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11は、周波数20GHzにおいて、0.01ないし2.8の誘電率(D)、及び0.00001ないし0.003の誘電損失(D)を有しうる。
【0045】
フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11の熱膨脹係数(CTE)は、25ppm/℃以下でもある。例えば、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11の熱膨脹係数(CTE)は、0.01ppm/℃ないし25ppm/℃でもある。そのような熱膨脹係数(CTE)を有するフッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11は、銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’を含む銅箔と共に、銅箔積層フィルム10,20を製造するとき、銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’によって構成された銅層の熱膨脹係数(CTE)(16~20ppm)と、基材の熱膨脹係数(CTE)との差が大きくなく、残留応力の発生量が少なく、反り発生がなく、収縮による捻れ・反りの問題が生じない。
【0046】
必要により、後述するタイ層2,12,12’を配する前、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11上に、反応ガス自体をイオン化させたイオンビームを照射し、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11に対する表面処理を行うことができる。その結果、フッ素層5,15,15’表面に、-OH、-CHO、-COOHのような官能基を生成し、常温及び高温において、ポリイミド系基材1,11と、後述する銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’との接着力にすぐれる銅箔積層フィルム10,20を提供することができる。
【0047】
イオンビームを利用した表面処理は、窒素(N)、酸素(O)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)及びヘリウム(He)のうちから選択された1種以上を含む反応ガスを使用することができる。例えば、前記反応ガスは、酸素(O)であってもよく、あるいはアルゴン・酸素(Ar-O)またはアルゴン・窒素(Ar-N)の混合ガスでもあり、その場合、常温及び高温において、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11と、後述する銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’との接着力が大きく向上されうる。
【0048】
また、反応ガスとして、アルゴン(Ar)を混合して使用する場合、全体反応ガス総体積基準で、アルゴン(Ar)が、0.1体積%ないし50体積%で含まれるか、0.1体積%ないし30体積%で含まれるか、0.1体積%ないし25体積%で含まれもする。アルゴン(Ar)を、前記体積範囲内で混合して使用するならば、常温及び高温において、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11と、後述する銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’との接着力が大きく向上されうる。
【0049】
前記反応ガスの注入量は、例えば、1sccmないし100sccm(standard cubic centimeter per minute)でもあるか、50sccmないし100sccmでもあるか、あるいは60sccmないし80sccmでもある。この範囲内において、安定して、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11表面に、イオンビームを照射することができるという効果がある。
【0050】
前記イオンビームの照射量は、限定されるものではないが、例えば、1×10イオン/cmないし1×1017イオン/cmでもあり、この範囲において、ポリイミド層表面において、イオンビームの照射効果を極大化させることができる。
【0051】
また、イオンビームの照射時間は、限定されるものではなく、目的により、適切に調節することができる。
【0052】
イオンビームを照射する方法としては、ロール・ツー・ロール(roll-to-roll)工程を介しても遂行される。例えば、前記ロール・ツー・ロール工程は、2ないし10mpm(meters per minute)で、連続して供給されるフッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11表面に、イオンビームをMD(machine direction)方向に、1ないし50秒範囲で照射されうる。この範囲内において、銅箔積層フィルム10,20のポリイミド系基材1,11と、後述する銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’との常温接着力及び高温接着力にすぐれ、すぐれた効率性を有しうる。
【0053】
前記イオンビームを印加するための電力(power)は、0.1kWないし5kWでもあるか、0.1kWないし3kWでもあるか、あるいは0.5kWないし2kWでもある。この範囲内において、常温及び高温において、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11と、後述する銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’との接着力が大きく向上されうる。
【0054】
<タイ層2,12,12’>
フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11上に、タイ層2,12,12’が配される。タイ層2,12,12’は、周期律表の4族、6族、13族及び14族の金属元素のうちから選択された1種以上を含むものでもある。タイ層2,12,12’は、周期律表の4族、6族、13族及び14族の金属元素のうちから選択された1種以上の金属または合金を含むものでもある。
【0055】
タイ層2,12,12’は、金属・酸素(M-O)結合解離エネルギーが、400kJ/mol以上である金属を含む金属層または金属合金層でもある。前記金属・酸素(M-O)結合解離エネルギーを有する金属元素は、酸素との結合が比較的安定している。その結果、タイ層2,12,12’とフッ素層5,15,15’との界面に、安定した金属酸化物または合金酸化物を確保し、接着力が向上され、電気伝導度が高いタイ層2,12,12’を適用することにより、伝送損失を最小化させることができる。
【0056】
タイ層2,12,12’は、W、Ti、Sn、Cr、Al及びMoのうちから選択された1種以上の金属または金属合金を含むものでもある。前述の金属または金属合金は、酸素との結合が比較的安定しており、強磁性体特性を帯びるNi単独金属タイ層と比較し、低い伝送損失を有しうるために、タイ層2,12,12’表面の電気伝導度が向上されうる。
【0057】
タイ層2,12,12’は、Niをさらに含み、前記Niの含量は、50重量%以下でもある。タイ層2,12,12’は、前述のW、Ti、Sn、Cr、Al及びMoのうちから選択された金属とNiとでもって合金を形成し、前記合金内のNiの含量は、50重量%以下でもある。前記Niの含量が50重量%超過であるならば、高い伝送損失が生じてしまい、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11と、銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’との間に、常温接着力及び高温接着力が低下してしまう。
【0058】
タイ層2,12,12’の厚みは、10nmないし100nmでもある。例えば、タイ層2,12,12’の厚みは、12nmないし50nmでもあるか、あるいは12nmないし40nmでもある。タイ層2,12,12’の厚みが10nm未満であるならば、厚みが薄く、基材との界面において、十分な金属酸化物または合金酸化物を形成することができないために、常温及び高温の接着力確保が困難になりうる。タイ層2,12,12’の厚みが100nm超過であるならば、回路を形成するためのエッチング工程において、タイ層2,12,12’のエッチングが良好になされずに残留することになり、回路不良を誘発し、常温接着力も低下してしまう。
【0059】
<銅シード層3,13,13’及び銅メッキ層4,14,14’>
タイ層2,12,12’上に、銅シード層3,13,13’が配される。銅シード層3,13,13’は、スパッタ層でもある。該銅スパッタシード層は、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11自体の表面粗度を維持しながら、低い伝送損失を有するようにすることができる。スパッタリング方法としては、物理気相蒸着(PVD)、化学気相蒸着(CVD)、低圧化学気相蒸着(LPCVD)、真空蒸着のような方法を利用することができるが、それらに制限されるものではなく、当該スパッタリング方法として使用されうる全てのスパッタリング方法を利用することができる。例えば、該スパッタリング方法として、物理気相蒸着(PVD)方法を利用することができる。
【0060】
銅シード層3,13,13’の厚みは、800Åないし4,000Åでもある。例えば、銅シード層3,13,13’の厚みは、850Åないし3,500Åでもあるか、900Åないし3,000Åでもあるか、950Åないし2,500Åでもあるか、1,000Åないし2,000Åでもあるか、あるいは1,000Åないし1,500Åでもある。銅シード層3,13,13’が、前述の厚み範囲を有するならば、成膜時、導電性を確保することができ、低い表面粗さ(R)を有しながら、低い伝送損失を有する銅箔積層フィルム10,20を提供することができる。
【0061】
銅シード層3,13,13’上に、銅メッキ層4,14,14’が位置する。銅メッキ層4,14,14’を形成する方法としては、無電解メッキ法または電解メッキ法を利用することができる。例えば、銅メッキ層4,14,14’は、電解メッキ法を利用することができる。
【0062】
前記銅電解メッキ層の形成方法は、当該技術分野で使用可能な全ての方法を使用することができる。例えば、硫酸銅及び硫酸を基本物質にする電解メッキ液で電解メッキを施し、銅シード層3,13,13’の一面に、銅電解メッキ層を形成することができる。追加して、前記電解メッキ液に、生産性及び表面均一性のために、光沢剤、レベラ、補正剤または緩和剤のような添加剤が添加されうる。
【0063】
銅メッキ層4,14,14’の厚みは、12μm以下でもある。例えば、銅メッキ層4,14,14’の厚みは、0.1μmないし12.0μmでもあるか、1.0μmないし12.0μmでもあるか、2.0μmないし12.0μmでもあるか、4.0μmないし12.0μmでもあるか、あるいは6.0μmないし12.0μmでもある。
【0064】
<銅箔積層フィルム10,20>
一具現例による銅箔積層フィルム10,20は、含フッ素基材として、フッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11、及びフッ素層5,15,15’が配されたポリイミド系基材1,11上に、金属・酸素(M-O)結合解離エネルギーが400kJ/mol以上である金属を含む金属層または金属合金層であるタイ層2,12,12’を含み、タイ層2,12,12’の厚みが10nmないし100nmでもある。銅箔積層フィルム10,20は、高周波数において、向上された誘電特性と共に、基材表面の塗布性、及び基材と銅箔とのすぐれた常温接着力及び高温接着力を有しうる。
【0065】
一具現例による銅箔積層フィルム10,20は、常温(25℃)で3日間放置した後で測定した前記フッ素層が配されたポリイミド系基材に対する銅シード層及び銅メッキ層の剥離強度が、0.65kgf/cm以上でもある。
【0066】
一具現例による銅箔積層フィルム10,20は、150℃以上の温度で2回以上熱処理し、1日放置した後で測定した前記フッ素層が配されたポリイミド系基材に対する銅シード層及び銅メッキ層の剥離強度が、0.35kgf/cm以上でもある。例えば、銅箔積層フィルム10,20は、150℃において2時間、第一次熱処理した後、常温で30分間放置し、150℃において2時間、第二次熱処理し、かつ240℃において10分間、第三次熱処理した後、常温(25℃)で1日放置した後で測定した前記フッ素層が配されたポリイミド系基材に対する銅シード層及び銅メッキ層の剥離強度が、0.35kgf/cm以上でもある。
【0067】
<電子素子>
他の一具現例による電子素子は、銅箔積層フィルム10,20を含むものでもある。
【0068】
前記電子素子は、アンテナ素子またはアンテナケーブルを含むものでもある。例えば、前記アンテナ素子は、携帯電話用またはディスプレイ用のアンテナ素子でもある。また、前記電気素子は、ネットワークサーバ、5G用IOT(事物インターネット)家電製品、レーダ(radar)、USBのような回路基板を含むものでもある。
【0069】
以下、実施例と比較例とを介し、本発明の構成、及びそれによる効果について、さらに詳細に説明する。しかしながら、本実施例は、本発明についてさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではないということは、自明な事実であろう。
【実施例
【0070】
実施例1:銅箔積層フィルム
図2に示されているような銅箔積層フィルム20を、次のように製造した。
基材として、両面に、それぞれ約12.5μm厚のフッ素コーティング層15,15’が配されたポリイミドフィルム11(PI先端素材製)(総厚:50μm、周波数20GHzにおける、誘電率(D):2.8,誘電損失(D):0.003,CTE:≦25ppm/℃)を準備した。フッ素コーティング層15が配されたポリイミドフィルム11の第1面21に、ロール・ツー・ロールタイプのスパッタリング装置内において、イオンビームソースを利用し、イオンビーム処理を行った。該イオンビーム処理は、10-6Torr圧力条件において、不活性ガスArを30sccmで注入し、印加電力1.0kV条件下で行った。その後、イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、純度99.995%のモリブデン(Mo)(Mo-O結合解離エネルギー:400kJ/mol)を利用し、約20nm厚にタイ層12を形成した。その後、タイ層12の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、純度99.995%の銅を利用し、約100nm厚に銅シード層13を形成した。その後、フッ素コーティング層15’が配されたポリイミドフィルム11の第2面22に、前述のところと同一の方法でもって、イオンビーム処理を行い、タイ層12’及び銅シード層13’を形成した。その後、それぞれの銅シード層13,13’上に、電解銅メッキ法でもって、約12μm厚の銅メッキ層をそれぞれ形成した。電解銅メッキに使用された電解銅メッキ液は、Cu2+濃度28g/L及び硫酸195g/Lの溶液であり、追加して、光沢剤として、3-N,N-ジメチルアミノジチオカルバモイル-1-プロパンスルホン酸0.01g/Lと補正剤(Atotech社製)を含むものを利用した。電解銅メッキは、34℃、電流密度1.0A/dmから始め、徐々に上昇させ、2.86A/dmまで電流段階別に印加した。
【0071】
実施例2:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、純度99.995%のモリブデン(Mo)(Mo-O結合解離エネルギー:400kJ/mol)を利用し、約12nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルムを製造した。
【0072】
実施例3:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、純度99.995%のモリブデン(Mo)(Mo-O結合解離エネルギー:400kJ/mol)を利用し、約25nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルムを製造した。
【0073】
実施例4:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、純度99.995%のモリブデン(Mo)(Mo-O結合解離エネルギー:400kJ/mol)を利用し、約40nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルムを製造した。
【0074】
実施例5:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、モリブデン(Mo)(Mo-O結合解離エネルギー:400kJ/mol)とニッケル(Ni)(Ni-O結合解離エネルギー:360kJ/mol)との重量比を、70:30(純度:99.9%以上)にし、約20nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0075】
実施例6:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、タングステン(W)(W-O結合解離エネルギー:710kJ/mol)とチタン(Ti)(Ti-O結合解離エネルギー:670kJ/mol)との重量比を、90:10(純度:99.9%以上)にし、約20nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0076】
実施例7:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、モリブデン(Mo)(Mo-O結合解離エネルギー:400kJ/mol)とチタン(Ti)(Ti-O結合解離エネルギー:670kJ/mol)との重量比を、50:50(純度:99.9%以上)にし、約20nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0077】
実施例8:銅箔積層フィルム
フッ素コーティング層15が配されたポリイミドフィルム11の第1面21に、ロール・ツー・ロールタイプのスパッタリング装置を利用し、イオンビーム処理を行うとき、イオンビーム処理は、10-6Torr圧力条件で、反応ガスであるArとOとを、30:9流量(sccm)比で注入し、印加電力1.0kV条件下において行ったことを除いては、実施例5と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0078】
実施例9:銅箔積層フィルム
フッ素コーティング層15が配されたポリイミドフィルム11の第1面21に、ロール・ツー・ロールタイプのスパッタリング装置を利用し、イオンビーム処理を行うとき、イオンビーム処理は、10-6Torr圧力条件で、反応ガスであるArとNを、30:9流量(sccm)比で注入し、印加電力1.0kV条件下において行ったことを除いては、実施例5と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0079】
実施例10:銅箔積層フィルム
フッ素コーティング層15が配されたポリイミドフィルム11の第1面21に、ロール・ツー・ロールタイプのスパッタリング装置を利用し、イオンビーム処理を行うとき、イオンビーム処理は、10-6Torr圧力条件で、反応ガスOを9sccmで注入し、印加電力1.0kV条件下において行ったことを除いては、実施例3と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0080】
実施例11:銅箔積層フィルム
フッ素コーティング層15が配されたポリイミドフィルム11の第1面21に、ロール・ツー・ロールタイプのスパッタリング装置を利用し、イオンビーム処理を行うとき、イオンビーム処理は、10-6Torr圧力条件で、反応ガスNを9sccmで注入し、印加電力1.0kV条件下において行ったことを除いては、実施例3と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0081】
比較例1:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、純度99.995%のニッケル(Ni)(Ni-O結合解離エネルギー:360kJ/mol)を利用し、約20nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0082】
比較例2:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、ニッケル(Ni)(Ni-O結合解離エネルギー:360kJ/mol)とクロム(Cr)(Cr-O結合解離エネルギー:480kJ/mol)との重量比を、80:20(純度:99.9%以上)にし、約20nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0083】
比較例3:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、ニッケル(Ni)(Ni-O結合解離エネルギー:360kJ/mol)と銅(Cu)(Cu-O結合解離エネルギー:280kJ/mol)との重量比を、65:35(純度:99.9%以上)にし、約20nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0084】
比較例4:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、モリブデン(Mo)(Mo-O結合解離エネルギー:400kJ/mol)とニッケル(Ni)(Ni-O結合解離エネルギー:360kJ/mol)との重量比を、30:70(純度:99.9%以上)にし、約20nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルム20を製造した。
【0085】
比較例5:銅箔積層フィルム
イオンビーム処理されたフッ素コーティング層15の上面に、物理気相蒸着法(PVD)でもって、純度99.995%のモリブデン(Mo)(Mo-O結合解離エネルギー:400kJ/mol)を利用し、約8nm厚にタイ層12を形成したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、銅箔積層フィルムを製造した。
【0086】
比較例6:銅箔積層フィルム
フッ素コーティング層15が配されたポリイミドフィルム11の第1面21及び第2面22に、イオンビーム処理を行わないことを除いては、実施例3と同一方法でもって、銅箔積層フィルムを製造した。
【0087】
評価例1:物性評価
実施例1~11及び比較例1~6によって製造された銅箔積層フィルムに対する物性を、以下のような測定方法を利用して評価した。その結果を下記表1に示した。
【0088】
(1)基材表面の水接触角(deg)、ジヨードメタン接触角(deg)、表面エネルギー(dyne/cm)
実施例5、実施例8ないし実施例11、及び比較例6によって製造された銅箔積層フィルムのフッ素コーティング層が配されたポリイミドフィルム基材表面に、25℃及び50RH%雰囲気下で、脱イオン化水及びジヨードメタンをそれぞれ10回ずつ滴下させた後、接触角計(Drop Master 300(協和界面科学(株)製))を使用し、水接触角及びジヨードメタン接触角の平均値を求めた。その後、OWRK(Owens-Wendt-Rabel-Kaelble)法により、前記接触角の数値を代入し、表面エネルギーを求めた。
【0089】
(2)基材表面のフッ素含量:XPS分析
実施例5、実施例10、実施例11及び比較例6によって製造された銅箔積層フィルムのイオンビームによって表面処理されたフッ素コーティング層が配されたポリイミドフィルム、またはイオンビームによって表面処理されていないフッ素コーティング層が配されたポリイミドフィルム表面に対し、X線光電子分光法(XPS:X-ray photoelectron spectroscopy)分析を行った。該XPS分析は、K-Alpha(ThermoFisher社製)を使用した。
【0090】
(3)常温接着力(kgf/cm)
実施例1ないし実施例7、及び比較例1ないし比較例5によって製造された銅箔積層フィルムを、所定サイズに切ってサンプルを準備した。該サンプル表面に、幅3mm回路パターンを形成した後、前記回路パターンが形成された面の反対面を全面エッチングした。その後、前記サンプルを、常温(25℃)で3日間放置した後、剥離強度試験機器(AG-50NIS((株)島津製作所))を利用し、50mm/分引っ張り速度及び180°角度でもって剥離し、フッ素コーティング層が配されたポリイミドフィルムに対する銅シード層及び銅メッキ層の剥離強度を測定した。
【0091】
(4)高温接着力(kgf/cm)
実施例1ないし実施例7、及び比較例1ないし比較例5によって製造された銅箔積層フィルムを、所定サイズに切ってサンプルを準備した。該サンプル表面に、幅3mm回路パターンを形成した後、前記回路パターンが形成された面の反対面を全面エッチングした。その後、前記サンプルを、150℃において2時間、第一次熱処理を行った後、常温で30分間放置した。その後、前記サンプルを、150℃において2時間、第二次熱処理を行った後、240℃において10分間、第三次熱処理を行った。最後に、前記サンプルを常温(25℃)で1日放置した後、剥離強度試験機器(AG-50NIS((株)島津製作所))を利用し、50mm/min引っ張り速度及び180°角度でもって剥離し、フッ素コーティング層が配されたポリイミドフィルムに対する銅シード層及び銅メッキ層の剥離強度を測定した。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示されているように、実施例5、実施例8ないし実施例11によって製造された銅箔積層フィルムの基材表面に係わる水接触角、ジヨードメタン接触角は、107.3°~110.8°、及び77.7°~84.5°であり、比較例6によって製造された銅箔積層フィルムの基材表面と比較して低かった。実施例5、実施例8ないし実施例11によって製造された銅箔積層フィルムの基材表面に対する表面エネルギーは、14.4dyne/cmないし18.8dyne/cmであり、比較例6によって製造された銅箔積層フィルムの基材表面と比較して高かった。実施例1ないし実施例7によって製造された銅箔積層フィルムは、基材表面のフッ素含量が64.92原子%ないし73.82原子%であった。
【0094】
それにより、実施例5、実施例8ないし実施例11によって製造された銅箔積層フィルムの基材表面に対し、適切な塗布性を確保し、前記基材上に安定したタイ層、銅シード層及び銅メッキ層が形成されたことを確認することができる。
【0095】
実施例1ないし実施例7によって製造された銅箔積層フィルムの常温接着力は、0.68kgf/cm以上であり、比較例1ないし比較例5によって製造された銅箔積層フィルムと比較して高かった。実施例1、実施例5ないし実施例7によって製造された銅箔積層フィルムの高温接着力は、0.35kgf/cm以上であり、比較例5によって製造された銅箔積層フィルムと比較して高かった。
【0096】
実施例1ないし7によって製造された銅箔積層フィルムは、金属・酸素(M-O)結合解離エネルギーが、400kJ/mol以上である金属を含む金属層または金属合金層によって構成されたタイ層を含み、該タイ層の厚みが、10nm以上50nm以下である銅箔積層フィルムである。それにより、前述のタイ層と、フッ素コーティング層が配されたポリイミド基材フィルム表面の官能基とが反応し、常温接着力が向上されたことを確認することができる。また、実施例1、実施例5ないし実施例7によって製造された銅箔積層フィルムも、同一の理由により、高温接着力が向上されたことを確認することができる。それにより、実施例1ないし7によって製造された銅箔積層フィルムは、小型化された5G移動通信機器のような電子素子内部及び/または外部に適用することができるということが分かる。
【符号の説明】
【0097】
1,11 ポリイミド系(フィルム)基材
2,12,12’ タイ層
3,13,13’ 銅シード層
4,14,14’ 銅メッキ層
5,15,15’ フッ素(コーティング)層
10,20 銅箔積層フィルム
21 第1面
22 第2面
図1
図2