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特許7587567ベローズの交換時期予測装置、濾過機、及びベローズの交換時期予測方法
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  • 特許-ベローズの交換時期予測装置、濾過機、及びベローズの交換時期予測方法 図1
  • 特許-ベローズの交換時期予測装置、濾過機、及びベローズの交換時期予測方法 図2
  • 特許-ベローズの交換時期予測装置、濾過機、及びベローズの交換時期予測方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ベローズの交換時期予測装置、濾過機、及びベローズの交換時期予測方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 3/04 20060101AFI20241113BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20241113BHJP
   B01D 24/00 20060101ALI20241113BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20241113BHJP
   G01M 13/00 20190101ALI20241113BHJP
【FI】
F16J3/04 Z
F16J15/52 Z
B01D29/00 B
G01M13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022204153
(22)【出願日】2022-12-21
(65)【公開番号】P2024089044
(43)【公開日】2024-07-03
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】久谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】竹井 一剛
(72)【発明者】
【氏名】田村 晴海
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-032717(JP,A)
【文献】特開平10-292887(JP,A)
【文献】特開平05-208343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/04
F16J 15/52
B01D 24/00
G01M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベローズの総伸縮距離を計測する計測部を備え、
前記計測部により計測される前記総伸縮距離と、前記ベローズの計算寿命に基づく使用限度距離及び過去に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離の少なくとも何れか一方との比較に基づいて、前記ベローズの交換時期を予測するように構成されている、ベローズの交換時期予測装置。
【請求項2】
前記総伸縮距離が予め設定された閾値を超えた場合に前記ベローズの交換時期を通知するように構成され、
前記閾値が、前記使用限度距離及び前記過去に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離の少なくとも何れか一方に基づいて設定されている、請求項1に記載のベローズの交換時期予測装置。
【請求項3】
前記過去に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離が、交換の直前に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離である、請求項2に記載のベローズの交換時期予測装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のベローズの交換時期予測装置を備える濾過機であって、
回転軸と該回転軸に接続された回転翼とを有する軸部材であって軸方向に移動可能な軸部材と、前記軸部材を被覆する前記ベローズと、を備え、
前記計測部が、前記軸部材の軸方向における総移動距離を前記ベローズの総伸縮距離として計測するように構成されている、濾過機。
【請求項5】
ベローズの総伸縮距離を計測し、
前記総伸縮距離と、前記ベローズの計算寿命に基づく使用限度距離及び過去に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離の少なくとも何れか一方との比較に基づいて、前記ベローズの交換時期を予測する、ベローズの交換時期予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベローズの交換時期予測装置、ベローズの交換時期予測装置を備える濾過機、及びベローズの交換時期予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種装置において、軸部材を保護するためにベローズが使用されている。ベローズは、軸部材の軸方向における移動に伴って伸縮変形する筒状であり且つ蛇腹状の伸縮部材である。かかるベローズは、ベローズと軸部材との間の空間に外部から流体が侵入しないよう遮断することでその機能を発揮するものである。
【0003】
ところで、ベローズは、度重なる伸縮変形によって破損するおそれがある。そこで、ベローズの残存寿命を演算するための装置が提案されている。例えば、特許文献1では、予め算出された使用限度伸縮回数と、使用による伸縮回数との比較に基づいて、ベローズの残存寿命を演算する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-292887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、ベローズの1回の伸縮における距離が考慮されずに伸縮回数を積算するように構成されている。例えば、特許文献1の装置では、装置上の最大距離でベローズが伸縮した場合と、最大距離の半分の距離でベローズが伸縮した場合との両方を同じ伸縮動作と判断して伸縮回数に積算することとなる。このため、ベローズの用いられ方によっては、交換すべきと判断する時期が早すぎる可能性がある。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、ベローズの用いられ方によらず、適切にベローズの交換時期を知らせることができるベローズの交換時期予測装置及びベローズの交換時期予測方法を提供することを課題とする。また、本発明は、かかるベローズの交換時期予測装置を備える濾過機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るベローズの交換時期予測装置は、
ベローズの総伸縮距離を計測する計測部を備え、
前記計測部により計測される前記総伸縮距離と、前記ベローズの計算寿命に基づく使用限度距離及び過去に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離の少なくとも何れか一方との比較に基づいて、前記ベローズの交換時期を予測するように構成されている。
【0008】
かかる構成によれば、総伸縮距離とベローズの計算寿命に基づく使用限度距離及び過去に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離の少なくとも何れか一方との比較に基づいてベローズの交換時期を予測するため、ベローズの用いられ方によらず、適切にベローズの交換時期を知らせることができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係るベローズの交換時期予測装置は、
前記総伸縮距離が予め設定された閾値を超えた場合に前記ベローズの交換時期を通知するように構成され、
前記閾値が、前記使用限度距離及び前記過去に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離の少なくとも何れか一方に基づいて設定されている。
【0010】
かかる構成によれば、より適切にベローズの交換時期を知らせることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係るベローズの交換時期予測装置は、
前記過去に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離が、交換の直前に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離である。
【0012】
かかる構成によれば、さらに適切にベローズの交換時期を知らせることができる。
【0013】
本発明の一態様に係る濾過機は、上記いずれかのベローズの交換時期予測装置を備え、
回転軸と該回転軸に接続された回転翼とを有する軸部材であって軸方向に移動可能な軸部材と、前記軸部材を被覆する前記ベローズと、を備え、
前記計測部が、前記軸部材の軸方向における総移動距離を前記ベローズの総伸縮距離として計測するように構成されている。
【0014】
かかる構成によれば、ベローズ自体の伸縮距離を計測することなく、より簡易な装置によって、濾過機におけるベローズの交換時期を知らせることができる。
【0015】
本発明の一態様に係るベローズの交換時期予測方法は、
ベローズの総伸縮距離を計測し、
前記総伸縮距離と、前記ベローズの計算寿命に基づく使用限度距離及び過去に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離の少なくとも何れか一方との比較に基づいて、前記ベローズの交換時期を通知する。
【0016】
かかる構成によれば、総伸縮距離とベローズの計算寿命に基づく使用限度距離及び過去に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離の少なくとも何れか一方との比較に基づいてベローズの交換時期を予測するため、ベローズの用いられ方によらず、適切にベローズの交換時期を知ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上より、本発明によれば、ベローズの用いられ方によらず、適切にベローズの交換時期を知らせることができるベローズの交換時期予測装置、濾過機、及びベローズの交換時期予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態のベローズの交換時期予測装置を備える濾過乾燥機の概略側面図である。
図2図1の濾過乾燥機において、容器の外部に配された第2のベローズ(外部ベローズ)を拡大して示す図である。
図3図1の濾過乾燥機において、第3のベローズを備える開閉装置を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るベローズの交換時期予測装置について、濾過乾燥機を例示しながら説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る濾過乾燥機1は、被処理物を収容する容器10と、容器10に収容された被処理物を撹拌するための撹拌装置20と、被処理物を乾燥させた乾燥物の取出口を開閉するための開閉装置30とを備えている。
【0021】
本実施形態の容器10は、上下方向に延びる円筒状の側壁部11と、側壁部11の上端部を塞ぐ天井部12と、側壁部11の下端部を塞ぐ下蓋部13とを有する。容器10は、側壁部11、天井部12、及び下蓋部13で囲われた収容空間V1を有する。収容空間V1に収容される被処理物としては、例えば、溶媒などの液状物と、該液状物に懸濁した固形物とを含むスラリー液が挙げられる。
【0022】
容器10は、収容空間V1に前記スラリー液などの流体を導入するための導入部14を有する。導入部14は、天井部12に形成された導入開口に接続された導入配管141と、導入配管141の流路の開閉を切り替え可能にする第1バルブ142とを備えている。
【0023】
下蓋部13は、収容空間V1に導入された前記スラリー液を濾過するための濾過部を有している。具体的には、下蓋部13は、側壁部11の下端部を閉塞する蓋本体131と、蓋本体131よりも上方に設けられて前記スラリー液に含まれる固形物を捕集しつつ液状物を通過させる濾板132とを有する。
【0024】
容器10は、濾板132を通過した液状物を外部に排出するための排出部15を有する。排出部15は、蓋本体131に形成された排出開口に接続された排出配管151と、排出配管151の流路の開閉を切り替え可能にする第2バルブ152とを備えている。また、容器10は、収容空間V1を減圧状態とするための減圧部16を有する。減圧部16は、減圧ポンプに接続された減圧配管161と、減圧配管161の流路の開閉を切り替え可能にする第3バルブ162とを備えている。
【0025】
図1図3に示すように、側壁部11は、濾板132に捕集された固形物の容器10の側方からの回収を可能にするための取出開口部111を有する。取出開口部111は、濾板132上で乾燥された固形物と水平方向において隣接し得る位置に形成されている。取出開口部111は、開閉装置30によって開閉の切り替えが可能となっている。
【0026】
本実施形態の容器10は、上記構成によって密閉された状態となるように構成されており、そのため、収容空間V1を減圧状態又は加圧状態とすることが可能である。例えば、導入配管141及び排出配管151が閉状態とされて、前記減圧ポンプが駆動した状態で第3バルブ162が開状態とされることによって、容器10の収容空間V1は減圧状態となり得る。また、開状態の導入配管141を介して容器10内に空気、又は窒素などの不活性ガスが導入されることによって、容器10の収容空間V1は加圧状態となり得る。
【0027】
本実施形態の撹拌装置20は、容器10の天井部12を貫通するように設けられた軸部材たる回転軸21と、回転軸21の下端部(容器10の内部に配された端部)に接続されて収容空間V1に収容されたスラリー液などを撹拌する複数の回転翼22と、回転軸21を軸周りに回転させるモータ23a及び減速機23bと、回転軸21を軸方向に移動させる油圧装置24とを有する。
【0028】
油圧装置24は、回転軸21を軸方向に移動させる昇降装置である。本実施形態の油圧装置24は、回転軸21の水平方向における両側に回転軸21と平行するように設けられた一対のピストン部241と、ピストン部241と回転軸21とを接続する支持部242とを有する。ピストン部241は、上下方向に往復移動可能に構成されている。支持部242は、回転軸21の上端部とピストン部241の上端部とを接続するように設けられている。すなわち、支持部242は、油圧装置24における回転軸21との接続部をなしている。
【0029】
図1図2に示すように、回転軸21は、天井部12を貫通するように設けられていることによって、容器10の内部に配された部分と、容器10の外部に配された部分とを有する。回転軸21の容器10の外部に配された部分には、減速機23bが取付けられ、減速機23bを介してモータ23aの回転が伝達されるように構成されている。そして、回転軸21は、容器10の内部において第1のベローズ40aに被覆され、且つ、容器10の外部において減速機23bより上方は第2のベローズ40bに被覆されている。すなわち、本実施形態の濾過乾燥機1は、ベローズ40として、容器10の内部において回転軸21を被覆する内部ベローズ40aと、容器10の外部において回転軸21を被覆する外部ベローズ40bとを備えている。
【0030】
回転軸21は、油圧装置24によって軸方向に移動し得る構成となっており、減速機23bは回転軸21が軸方向に移動してもモータ23aの回転を回転軸21へ伝達しうる構成となっている。
【0031】
図3に示すように、本実施形態の開閉装置30は、側壁部11に形成された取出開口部111の前記取出口を閉塞する閉塞体31と、閉塞体31から容器10の外方に向かって延びる軸部材32と、軸部材32を軸方向に移動させる油圧装置33と、取出開口部111の外側で密閉空間を構成する筐体34とを有する。これによって、開閉装置30は、閉塞体31を取出開口部111に当接させて取出開口部111を閉状態とすることが可能であり、且つ、閉塞体31を取出開口部111から離反させて取出開口部111を開状態とすることが可能である。
【0032】
本実施形態の油圧装置33は、水平方向に往復移動可能なピストン部331を有する。ピストン部331は、軸部材32の一端部であって筐体34の外側に配された端部に接続されている。すなわち、ピストン部331は、油圧装置33における軸部材32との接続部をなしている。これによって、開閉装置30は、閉塞体31を取出開口部111に当接させて取出開口部111を閉状態とすることが可能であり、且つ、閉塞体31を取出開口部111から離反させて取出開口部111を開状態とすることが可能である。
【0033】
また、本実施形態の開閉装置30は、取出開口部111に対する閉塞体31のシール性能を確認可能とするために、筐体34内部の密閉空間V2を加圧可能に構成されている。具体的には、閉塞体31によって取出開口部111を閉塞した状態で筐体34内に空気又は窒素等の不活性ガスが供給されて加圧され、その圧力を監視することで、閉塞体31のシール性が確認され得る。
【0034】
本実施形態の開閉装置30は、軸部材32を被覆する第3のベローズ40cを有する。
【0035】
本実施形態のベローズ40は、金属製である。金属としては例えばSUS316、SUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼や、ニッケルを40質量%以上含むニッケル合金を用いることができる。なお、前記ベローズは、金属製に限定されず、例えば、樹脂製であってもよく、該樹脂としてはPTFEなどのフッ素樹脂が好ましい。
【0036】
各ベローズ40は、濾過乾燥機1に組み込まれたときに、最も伸びた状態である最長状態と、最も縮んだ状態である最短状態とを取り得るものとなる。そして、各ベローズ40は、前記最長状態と前記最短状態との間で両端の間隔が変化することとなる。言い換えれば、濾過乾燥機1に組み込まれた各ベローズ40は、一方の端部が伸縮変形によっては移動しない固定端41をなし、他方の端部が伸縮変形によって移動する移動端42をなしている。そして、各ベローズ40は、前記最長状態と前記最短状態との間の変化によって固定端41と移動端42との間隔が変化することとなる。以下では、この間隔を最大変位距離(mm)と称する。
【0037】
また、各ベローズ40は、使用限度の指標となる定格伸縮回数が設定されている。前記定格伸縮回数は、メーカーが提示する伸縮回数に関する仕様(性能)である。一般的に、前記定格伸縮回数は、ベローズの材質や厚みなどのパラメータが考慮されてベローズメーカーによって設定されている。
【0038】
そして、本実施形態では、各ベローズ40の伸縮距離に関する使用限度距離(mm)、すなわち計算寿命は、下記式(1)によって算出されるものとする。
使用限度距離(mm)=定格伸縮回数×最大変位距離(mm)×2…(1)
【0039】
本実施形態の濾過乾燥機1は、ベローズ40の総伸縮距離と、ベローズ40の前記使用限度距離との比較に基づいて、ベローズ40の交換時期を予測する予測装置50をさらに備えている。より具体的には、本実施形態の濾過乾燥機1は、内部ベローズ40aの交換時期を予測する第1の予測装置50aと、第3のベローズ40cの交換時期を予測する第2の予測装置50bとを備えている。
【0040】
本実施形態の予測装置50は、ベローズ40の総伸縮距離を計測する計測部51と、計測部51が計測した総伸縮距離及び前記使用限度距離の比較に基づいてベローズ40の交換時期を予測する制御部(図示せず)とを備えている。ここで、ベローズの総伸縮距離とは、ベローズを使用開始してから該ベローズが伸縮した距離を積算したものである。
【0041】
本実施形態の計測部51は、ベローズ40の移動端42と連動して軸方向に移動する油圧装置24の任意の計測位置が軸方向において移動した距離をベローズ40の総伸縮距離(積算距離)として計測するように構成されている。すなわち、本実施形態の計測部51は、油圧装置24において設定された計測位置によって、回転軸21(軸部材)の軸方向における総移動距離(すなわち、ベローズ40の移動端42の移動距離の積算値)を間接的に計測するように構成されている。かかる計測位置としては、例えば、油圧装置24の支持部242が好ましい。支持部242は、上記のように容器10の外側に配されているため、計測部51を設ける際の装置の複雑化を抑制することができる。この他、前記計測位置は、回転軸21における任意の位置に設定されてもよい。
【0042】
一方、開閉装置30の第3のベローズ40cに関し、計測部51の計測位置は、ベローズ40の移動端42と連動して軸方向に移動する油圧装置33のピストン部331に設定される。
【0043】
本実施形態の計測部51は、前記計測位置の軸方向における位置を非接触方式で検出する検出器を有する。より詳しくは、図1及び図3に示すように、本実施形態の計測部51は、油圧装置24の支持部242や油圧装置33のピストン部331にレーザー光Lを照射して計測位置を検出するレーザー式検出器を有する。
【0044】
前記検出器としては、例えば、レーダー式検出器や超音波式検出器などであってもよい。また、複数の検出器が組み合わされて用いてもよい。さらに、光源の異なる複数のレーザー式検出器が併用されてもよい。レーザー式検出器が位置情報を得るために発射するレーザー光は、例えば、ルビーレーザーやYAGレーザーなどの固体レーザー;色素レーザーなどの液体レーザー;ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、炭酸ガスレーザー、窒素レーザー、エキシマレーザーなどのガスレーザー;半導体レーザー;自由電子レーザー;化学レーザーなどが挙げられる。前記レーザー式検出器は、位置検出に半導体レーザーを用いるタイプのものが好ましい。また、前記検出器としては、磁歪式変位センサであってもよい。さらに、前記検出器としては、非接触式の検出器に限定されず、ピストン部241や回転軸21の移動量を直接検出する接触式の変位センサを用いてもよい。接触式変位センサとしては、例えば、鉄心を有し測定対象に接続される接触子と、該接触子が内部を移動するコイルとを備え、前記接触子の移動にともなう前記コイルのインピーダンスの変化を測定対象の移動量に変換するように構成された差動トランス方式のものが挙げられる。また、接触式変位センサとしては、測定対象に接続されるスケールであって該測定対象の移動方向に並ぶ複数のスリットが形成されたスケールと、前記スケールの一方側に配置された光源であって前記スリットに光を照射する光源と、前記スケールの他方側に配置された受光素子であって前記光源の対向位置においてスリットを通過した光を検知する受光素子とを備え、前記スケールの移動に伴って前記受光素子によって測定される明暗の繰り返し回数をスケール、即ち測定対象の移動量に変換するように構成されたスケール方式のものが挙げられる。
【0045】
計測部51は、ベローズ40の総伸縮距離を前記制御部に送信するように構成されている。
【0046】
本実施形態の制御部は、濾過乾燥機1の使用者などにベローズ40の交換時期を通知するための通知部を有している。そして、本実施形態の制御部は、計測部51により測定された前記総伸縮距離が予め設定された閾値を超えた場合に、前記通知部によってベローズ40の交換時期を通知するように構成されている。本実施形態では、閾値として、前記使用限度距離に安全係数を乗じた値が設定されている。この安全係数は、例えば0.85~1.0の範囲で設定してもよく0.90~0.95の範囲で設定してもよい。本実施形態の濾過乾燥機1のように、減圧状態又は加圧状態とされる空間内に配されるベローズ40は、大気圧で使用されるものと比較して大きな負荷がかかることとなる。このようなベローズにおいて、閾値が前記使用限度距離よりも小さい値であることによって、適切に交換時期を知ることができる。
【0047】
ベローズの寿命までの総伸縮距離は、ベローズの使用条件によって変化し得る。より具体的には、濾過乾燥機1におけるベローズの寿命までの総伸縮距離は、収容空間における圧力の最小値及び最大値、温度の最小値及び最大値、収容空間に導入され得る溶剤やガス(特に腐食性のもの)の種類、などの使用条件によって変化し得る。かかる観点から、前記閾値は、濾過乾燥機1の同じ場所に設置されていた過去のベローズの寿命までの総伸縮距離たる過去データに基づいて設定されてもよい。前記過去データを用いる場合、前記閾値は、交換の直前に使用されていたベローズのデータが反映され易くなるように、該データに重みを付けて設定されてもよく、また、交換の直前に使用されていたベローズのデータのみを過去データとして用いてもよい。なお、前記過去データを用いる場合、濾過乾燥機1に新たに設置されるベローズの仕様は、前記過去のベローズの仕様と同じであることが好ましく、少なくとも直前に使用されていたベローズの仕様と同じであることが好ましい。
【0048】
より具体的には、前記閾値は、下記式(2)によって算出することができる。

閾値(mm)=(t×a+t×a+・・・t×a)×b…(2)

:交換の1個前(即ち、直前)に使用されていたベローズの寿命までの総伸縮距離(mm)
:交換の2個前のベローズの寿命までの総伸縮距離(mm)
:nは正の整数であり、交換のn個前のベローズの寿命までの総伸縮距離(mm)
,a・・・a:合計が1となる重み付け係数
b:0.85~1の範囲で定められる安全係数
【0049】
ここで、前記過去のベローズの寿命までの総伸縮距離とは、破損によって交換がなされた破損ベローズについては使用開始から破損までの総伸縮距離、破損せずに前記使用限度距離又は前記閾値まで到達したことによって交換がなされた未破損ベローズについては使用開始から交換までの総伸縮距離をいう。また、未破損ベローズの交換が、前記使用限度距離又は前記閾値まで到達する前に行われた場合には、使用開始から交換までの実際の総伸縮距離に、1を超える延長係数(例えば1.0を超え1.5以下)を乗じた値を総伸縮距離として使用してもよい。
【0050】
前記式(2)においては、前記破損ベローズに関する重み付け係数を同じ値とすることにより、過去のベローズの寿命までの総伸縮距離の平均値に基づいて前記閾値を算出することができる。なお、平均値を算出する際に、nは特に限定されず、例えば2以上であってもよく過去の交換結果を全て含むようにしてもよい。nは10以下であってもよく5以下であってもよい。
【0051】
また、前記式(2)においては、前記破損ベローズに関する重み付け係数を前記未破損ベローズに関する重み付け係数よりも大きくしてもよい。これによって、破損ベローズの総伸縮距離をより重視した値として前記閾値が算出されるため、装置上の安全性を向上させつつベローズの過度の交換を抑制し得る。
【0052】
また、前記式(2)においては、比較的近い過去のベローズに関する重み付け係数を、遠い過去のベローズに関する重み付け係数よりも大きくしてもよい。これにより、近い過去の使用条件による負荷をより重視した値として前記閾値が算出されるため、直近の使用条件に応じたベローズの交換時期をより的確に予測することが可能となる。このような重み付け係数の変更はnの値を基準に変更するようにしてもよい。
【0053】
例えば、上記式(2)において、交換の直前に使用されていたベローズのデータのみ反映されるように、aを1に設定し、a~aを0に設定してもよい。また、交換の直前に使用されていたベローズのデータを重視するべく、aをa~aより大きく設定してもよい。
【0054】
さらに、前記破損ベローズのうち最も早く破損したベローズのみが考慮されてもよく、この場合には、当該ベローズに関するaを1に設定し、これ以外のベローズに関するaは0に設定されることとなる。
【0055】
前記過去データを用いる場合、前記濾過乾燥機は、該過去データを記憶する記憶部を備えることが好ましい。さらに、前記濾過乾燥機は、前記使用限度距離及び前記過去データを用いて前記閾値を算出する演算部を備えることが好ましい。
【0056】
前記制御部は、さらに、前記濾過乾燥機に設置されているベローズの伸縮の実測値に基づいて前記閾値に到達する時期を予測するように構成されてもよい。例えば、該制御部は、現時点から過去の任意の時点までの所定時間(例えば、1週間や1月)に測定されたベローズの伸縮距離に基づいて単位時間あたりのベローズの平均伸縮距離を求め、前記閾値に到達するまでの残り時間を割り出し、該残り時間に基づいてベローズの交換時期を予測するようにしてもよい。
【0057】
前記通知部は、例えば、ディスプレイやランプなどの表示部に、前記ベローズを交換すべきあることを表わす警告や、交換までの残り時間を表示するように構成されてもよく、スピーカーなどの音発生部によって警報音を発するように構成されてもよい。
【0058】
以上のように、本実施形態の濾過乾燥機1では、計測部51が計測した総伸縮距離とベローズ40の使用限度距離との比較に基づいてベローズ40の交換時期を通知するため、適切にベローズの交換時期を知ることができる。
【0059】
次に、本発明の一実施形態に係るベローズの交換時期予測方法について、上記の濾過乾燥機1を使用する場合を例示して説明する。
【0060】
本実施形態のベローズの交換時期予測方法は、計測部51によってベローズの総伸縮距離を計測する。そして、前記制御部によって、前記総伸縮距離とベローズ40の前記使用限度距離との比較に基づいてベローズ40の交換時期を予測する。
【0061】
尚、本発明に係るベローズの交換時期予測装置、濾過機、及びベローズの交換時期予測方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、本発明のベローズの交換時期予測装置が濾過乾燥機に備えられる場合を例示したが、これに限定されず、遠心分離機などのベローズが備えられ得る他の装置に採用されてもよい。
【0063】
また、前記計測部が計測する計測位置は、前記ベローズの移動端と同期して移動する任意の部材に設定されてもよく、前記ベローズが装置の外側に露出して設置される場合、前記ベローズの移動端自体に設定されてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では濾過乾燥機を用いて説明したが、本発明の濾過機はこれに限定されず、ベローズを用いたものであれば乾燥機能を有しない濾過機であってもよい。また、本発明は、ベローズを用いるその他の機器に適用することができる。具体的には、ベローズの交換時期予測装置は、1つ若しくは複数の化学物質及び/又は1つ若しくは複数の化合物を含む被処理物の化学反応を伴った処理に用いられるベローズを備えた装置に用いられ得る。本実施形態のベローズの交換時期予測装置は、被処理物に含まれる化学物質や化合物を何らかの形で変化させる化学プロセスに用いられるベローズを備えた機器に用いられ得る。化学物質や化合物を変化させるために装置に供給するのは、変化させる化学物質や化合物と反応可能な別の化学物質や化合物だけでなく、例えば、熱エネルギー、光エネルギー、電気的エネルギー、磁気エネルギー、及び、運動エネルギーの内の少なくとも1つであってもよい。装置には、別の化学物質や化合物の供給とこれらのエネルギーの供給とが併用されてもよい。本実施形態のベローズ交換時期予測装置を備えた化学プロセスに用いられる機器は被収容物として、化学物質や化合物のみを含むものであってもよく、化学物質や化合物を溶解可能な溶媒や分散媒を含んでいてもよい。被収容物は、変化させる化学物質や化合物を一つの成分として含む飲食品などであってもよく、化学物質や化合物を一成分として含む有機組成物(プラスチック組成物、ゴム組成物、薬剤など)や無機組成物(ガラス組成物、金属組成物、セラミック組成物など)などであってもよい。本実施形態のベローズ交換時期予測装置は、例えば、医薬品製造、食品製造、半導体製造分野などでの機器に用いられる。ベローズ交換時期予測装置は、被処理物に化学的な反応が施される反応装置だけでなく、化学反応以外の処理を行う装置に用いられてもよい。ベローズ交換時期予測装置は、ベローズが用いられる混合、攪拌、ろ過、乾燥といった物理的な処理が施される処理装置(混合装置、攪拌装置、ろ過装置、乾燥装置など)であってもよい。これらの装置は、化学的な反応と物理的処理との両方が行われるものであっても物理的処理のみが行われるものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…濾過乾燥機、10:容器、11:側壁部、111:取出開口部、12:天井部、13:下蓋部、131:蓋本体、132:濾板、14:導入部、141:導入配管、142:第1バルブ、15:排出部、151:排出配管、152:第2バルブ、20:撹拌装置、21:回転軸、22:回転翼、23:減速機、24:油圧装置、241:ピストン部、242:支持部、30:開閉装置、31:閉塞体、32:軸部材、33:油圧装置、331:ピストン部、34:筐体、40:ベローズ、40a:第1のベローズ(内部ベローズ)、40b:第2のベローズ(外部ベローズ)、40c:第3のベローズ、41:固定端、42:移動端、50:予測装置、51:計測部、V1:容器の収容空間、V2:筐体の収容空間
図1
図2
図3