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特許7587583新たな免疫賦活剤及び免疫療法におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】新たな免疫賦活剤及び免疫療法におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7032 20060101AFI20241113BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20241113BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20241113BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20241113BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241113BHJP
   C07H 15/04 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
A61K31/7032
A61K45/00
A61K47/54
A61K47/55
A61K47/60
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P33/00
A61P35/00
A61P37/06
A61P43/00 111
C07H15/04 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022542249
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2021050276
(87)【国際公開番号】W WO2021140203
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】20305019.0
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507421289
【氏名又は名称】ナント・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】NANTES UNIVERSITE
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】507241492
【氏名又は名称】アンスティトゥート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシャルシュ・メディカル・(インセルム)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ・デュブルイユ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・パティネク
(72)【発明者】
【氏名】ミュリエル・ピプリエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・ル・ペンデュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・ルブルトン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジニー・ブロ
(72)【発明者】
【氏名】アーナウ・テシエ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0275483(US,A1)
【文献】国際公開第2014/001204(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/162016(WO,A1)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2012年,Vol.22,p.4348-4352
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry,2012年,Vol.20,p.7149-7154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(II)の化合物:
【化1】
[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、
Rは、-CO-R1、-CONHR1、-COOR1、-CSR1、-CSNHR1又は-CSOR1を表し、
R1は、アルキル基、アリール基、複素環基、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-R2(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-R2(qは1~24の整数である)を表し、
R2は、担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基を表す、又はL-Dを表(ここでLはリンカーであり、Dは担体である)、前記担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基は、N-マレイミド、N3、アルキン、アルケン、アクリロイル、ノルボルネン、シクロオクタジエン、TCO、テトラジン、イソシアネート、チオール又はアルデヒドである)]
からなる、iNKT活性化剤。
【請求項2】
- 以下の式(V)の化合物:
【化2】
- 以下の式(VI)の化合物:
【化3】
- 以下の式(VII)の化合物:
【化4】
及び
- 以下の式(VIII)の化合物:
【化5】
からなる群から選択される、請求項1に記載のiNKT活性化剤。
【請求項3】
少なくとも1つの担体にカップリングされた少なくとも1つのiNKT活性化剤を含むコンジュゲートであって、
前記コンジュゲートが、
(i)式(II)の化合物
【化6】
[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、Rは、-CO-R1、-CONHR1、-COOR1、-CSR1、-CSNHR1又は-CSOR1を表し、R1は、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-L-D(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-L-D(qは1~24の整数である)を表す(ここでLはリンカーであり、Dは担体である)]を含む、又は
(ii)上の式(II)の少なくとも1つのiNKT活性化剤[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、Rは、-CO-R1、-CONHR1、-COOR1、-CSR1、-CSNHR1又は-CSOR1を表し、R1は、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-R2(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-R2(qは1~24の整数である)を表し、R2は、前記担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基であり、前記担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基は、N-マレイミド、N3、アルキン、アルケン、アクリロイル、ノルボルネン、シクロオクタジエン、TCO、テトラジン、イソシアネート、チオール又はアルデヒドである]を1つの担体Dにカップリングすることによって得られる、
コンジュゲート。
【請求項4】
前記担体Dが治療剤及び/又は標的化剤である、請求項1に記載のiNKT活性化剤又は請求項3に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記担体Dが抗体、抗体断片、糖、レクチン、アフィチン、増殖因子、抗原、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、アプタマー、ウイルス及び/又は炭水化物である、請求項1若しくは4に記載のiNKT活性化剤又は請求項3若しくは4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
請求項1、2、4若しくは5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのiNKT活性化剤、及び/又は請求項3から5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコンジュゲートを含むベクター。
【請求項7】
ナノ粒子である、請求項6に記載のベクター。
【請求項8】
(i)請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのiNKT活性化剤、請求項3から5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコンジュゲート、及び/又は請求項6若しくは7に記載の少なくとも1つのベクターと
(ii)少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルと
を含む医薬組成物。
【請求項9】
医薬の製造における、請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載のiNKT活性化剤、請求項3から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項6若しくは7に記載のベクター、又は請求項8に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、ウイルス感染症、細菌感染症及び/又は寄生虫疾患の予防及び/又は治療のための、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
iNKT細胞を活性化するための、請求項1、2、4若しくは5のいずれか一項に記載のiNKT活性化剤、請求項3から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート、又は請求項6若しくは7に記載のベクターのin vitro使用。
【請求項12】
免疫応答の刺激を必要とする疾患を治療するための、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項13】
免疫応答の刺激を必要とする前記疾患が、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、ウイルス感染症、細菌感染症及び/又は寄生虫疾患である、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活剤及び免疫療法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
iNKT(インバリアントナチュラルキラー((Invariant Natural Killer) T)細胞は、糖脂質抗原を特異的に認識することができるリンパ球のユニークな集団である。これらの抗原は、例えば抗原提示細胞によって、非古典的MHC-I(主要組織適合遺伝子複合体クラスI)分子、CD1dを通じて提示される必要がある。
【0003】
KRN7000(α-GalCer又はアルファ-ガラクトシルセラミドとも呼ばれる)は、iNKT細胞の標準的リガンドである。KRN7000は実際には海洋性海綿動物アゲラス・マウリチアヌス(Agelas mauritianus)によって産生されるアゲラスフィン9bに由来する合成糖脂質である。KRN7000のiNKT細胞への結合に応答して、これらの細胞は免疫応答を開始又は増幅することができる大量のサイトカインを急速に放出する。KRN7000は、様々なin vivoモデルにおいてLPS誘導ショックに対して保護し、強力な抗腫瘍活性を示すことが示された。KNR7000パルスDC(樹状細胞)又はCD1d受容体に負荷されたKNR7000は故に、慢性B型及びC型肝炎感染の治療、並びにがん療法(特に非小細胞がん、肺がん、転移性癌、肝臓がん、乳がん、頚部皮膚がん、前立腺がん及び頭部がん、メラノーマ及び固形腫瘍(骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫)等のために臨床試験で研究された。
【0004】
KRN7000は、以下の式(I):
【0005】
【化1】
【0006】
を有する。
わずかな6"-O修飾GalCer誘導体を含むいくつかのKNR7000のアナログが開示されているが、アナログの最近のシリーズは、参照KRN7000と比べると同じiNKT活性化、又はiNKT活性化のわずかな改善(30~40%)を示し、Th1バイアスがより良好な場合もあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company、Easton、USA、1985)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
免疫療法で使用するために、特にがんの予防及び/又は治療のために、好ましくはより効率の良い及び/又は好ましくはターゲティング療法選択性がより優れた新たな免疫賦活剤を提供する必要が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ヒトiNKT細胞の活性化剤の新たなファミリーを合成した。活性化剤は、驚くべきことに、これまでに知られている最も強力なiNKT活性化剤であり、そのうちのいくつかは参照糖脂質KRN7000よりはるかに高いことが見出された。
【0010】
この新たなファミリーのiNKT活性化剤は、以下の式(II)の化合物:
【0011】
【化2】
【0012】
[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m-(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、
Rは、H、-CO-R1、-CONR1、-COOR1、-CSR1、-CSNR1、又は-CSOR1を表し、
R1は、アルキル基、アリール基、複素環基、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-R2(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-R2(qは1~24の整数である)を表し、
R2は、担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基を表す、又はL-Dを表す(ここでLはリンカーであり、Dは担体である)]を含む又はそれからなる。
【0013】
例えば、以下の式(IV)の化合物6-PEG3-NH2-GalCer 2a:
【0014】
【化3】
【0015】
は、iNKTからのサイトカイン放出に関して親KRN7000よりほぼ103倍高い効力を示すが、以下の式(V)の6-PEG3-NHAc-GalCer 2b対応物:
【0016】
【化4】
【0017】
は、104~5倍高い効力を示す。
【0018】
その強力な生物活性のため、本明細書に開示されたこれらのiNKT活性化剤は、特にがん及び他の疾患、例えば細菌感染症、ウイルス感染症、寄生虫疾患又は自己免疫疾患(例えば、I型糖尿病又は多発性硬化症)に対する免疫療法の文脈において極めて有用である。
【0019】
更に、本明細書に開示されたiNKT活性化剤の別の利点は、これまで「非CD1d細胞」と考えられてきた腫瘍細胞をそれ自体提示細胞として使用して、標準的APC(抗原提示細胞)、例えばDC(樹状細胞)、マクロファージ等の動員を必要とすることなくiNKTを活性化させるその予想外の能力である。
【0020】
本明細書に開示されたiNKT活性化剤には、6-Mal-PEG6GalCer 3a(式(IV)の6-PEG3-NHR-GalCer 2aに由来する)があり、以下の式(VII):
【0021】
【化5】
【0022】
を有する。
【0023】
式(VII)のiNKT活性化剤は、親KRN7000のものよりほぼ10倍高いINKT活性化効力を示し、有利にはタンパク質若しくは抗体等の生物担体に連結されてもよく、又は例えば、ウルス様粒子若しくはリポソーム等のナノ粒子にベクター化されてもよい。このカップリングは、有利には標的細胞へのiNKT活性化剤の送達を可能にし、それによって治療効果に達するのに必要とされる治療用量を低減、及び/又は副作用の可能性を低減しうる。
【0024】
例えば、セツキシマブは、EGFR(上皮増殖因子受容体)を標的にするヒト化モノクローナル抗体であり、本明細書に開示のiNKT活性化剤へのセツキシマブ抗体のカップリングは、iNKT細胞の活性化と同時に前記抗体の公知の免疫学的効果(ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害))を誘導し、それによってサイトカインの放出を可能にする。従って、iNKT活性化剤にカップリングされたセツキシマブ抗体を含むバイオコンジュゲートは、腫瘍環境に近接した免疫系を再活性させることによって腫瘍標的に対する生物学的複合効果をもたらす。
【0025】
iNKT活性化剤にカップリングされた抗体を含むバイオコンジュゲートは、身体の他の場所では有効であることなく(又は軽度)、腫瘍環境にiNKT刺激を誘導する際に大きな選択性をもたらすように好ましくは非酵素的に切断可能な結合糖コンジュゲート(non-enzymatic cleavable linked glycoconjugate)である。その結果、上に記載されたiNKT活性化剤にカップリングされた抗体を含むバイオコンジュゲートは、免疫賦活剤単独によるiNKTの非局在化活性化によって誘導されるいくつかの副作用を低減又は抑制し、選択的腫瘍標的化を達成できるようにする。
【0026】
本発明の第1の目的は故にiNKT活性化剤であり、前記iNKT活性化剤は、以下の式(II)の化合物:
【0027】
【化6】
【0028】
[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、
Rは、-CO-R1、-CONR1、-COOR1、-CSR1、-CSNR1又は-CSOR1を表し、
R1は、アルキル基、アリール基、複素環基、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-R2(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-R2(qは1~24の整数である)を表し、
R2は、担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基を表す、又はL-Dを表す(ここでLはリンカーであり、Dは担体である)]を含む。
【0029】
上に定義されているiNKT活性化剤は、好ましくは:
- 以下の式(V)の化合物:
【0030】
【化7】
【0031】
- 以下の式(VI)の化合物:
【0032】
【化8】
【0033】
- 以下の式(VII)の化合物:
【0034】
【化9】
【0035】
及び
- 以下の式(VIII)の化合物:
【0036】
【化10】
【0037】
からなる群から選択される。
【0038】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの担体にカップリングされた少なくとも1つのiNKT活性化剤を含むコンジュゲートであって:
(i)上に定義されている式(II)の化合物
[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、Rは、-CO-R1、-CONR1、-COOR1、-CSR1、-CSNR1又は-CSOR1を表し、R1は、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-L-D(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-L-D(qは1~24の整数である)を表す(ここでLはリンカーであり、Dは担体である)]を含む、又は
(ii)上に定義されている式(II)のiNKT活性化剤[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、Rは、-CO-R1、-CONR1、-COOR1、-CSR1、-CSNR1又は-CSOR1を表し、R1は、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-R2(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-R2(qは1~24の整数である)を表し、R2は、前記担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基を表す]を担体Dにカップリングすることによって得られる、コンジュゲートである。
【0039】
上に定義されているiNKT活性化剤では又は上に定義されているコンジュゲートでは、担体Dは、好ましくは治療剤及び/又は標的化剤である。
【0040】
上に定義されている担体Dは、抗体、抗体断片、糖、レクチン、アフィチン、増殖因子、抗原、化学分子、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、アプタマー、負荷細胞、ウイルス及び/又は炭水化物であってもよい。
【0041】
本発明の別の目的は、上に定義されている少なくとも1つのiNKT活性化剤、上に定義されている少なくとも1つのコンジュゲート、及び/又は以下の式(IV)の化合物:
【0042】
【化11】
【0043】
を含む少なくとも1つのiNKT活性化剤を含むベクター、例えばナノ粒子である。
【0044】
本発明の別の目的は:
(i)上に定義されている少なくとも1つのiNKT活性化剤、上に定義されている少なくとも1つのコンジュゲート、上に定義されている少なくとも1つのベクター、及び/又は上に定義されている以下の式(IV)の化合物を含む少なくとも1つのiNKT活性化剤と、
(ii)少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルと
を含む医薬組成物である。
【0045】
本発明の別の目的は、好ましくはがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、ウイルス感染症、細菌感染症及び/又は寄生虫疾患の予防及び/又は治療における、医薬としての使用のための上に定義されているiNKT活性化剤、上に定義されているコンジュゲート、上に定義されているベクター、上に定義されている医薬組成物、又は上に定義されている式(IV)の化合物を含むiNKT活性化剤に関する。
【0046】
本発明の別の目的は、iNKT細胞を活性化するための、上に定義されているiNKT活性化剤の、上に定義されているコンジュゲートの
、上に定義されているベクターの、又は上に定義されている以下の式(IV)の化合物を含むiNKT活性化剤のin vitro使用に関する。
【0047】
本発明は、以下の図面及び例によって更に例示される。しかし、これらの例及び図面は、本発明の範囲を限定していると決して解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】HeLa細胞におけるCD1dの、そのそれぞれのCD1dトランスフェクタントと比較した発現を示すグラフである。
図2】KRN7000を負荷されたHEK293(A)又はHeLa(B)細胞及びそれらのそれぞれのCD1dトランスフェクションモデルによる活性化後のIKNT細胞によるIFN-γ、IL-2及びIL-13分泌を示すグラフである。
図3】6-PEG3-NH2-GalCer(2a)を負荷されたHEK293(A)又はHeLa(B)細胞及びそれらのそれぞれのCD1dトランスフェクションモデルによる活性化後のIKNT細胞によるIFN-γ、IL-2及びIL-13分泌を示すグラフである。
図4】6-PEG3-NH2-GalCer(2a)を負荷されたPBMC又は非CD1d-HEK293細胞のどちらかによるiNKT細胞の活性化後のIFN-γ分泌を示すグラフである。
図5】抗原提示細胞としてHEK293 CD1dトランスフェクト細胞(左のパネルA)及び対照HEK293細胞(右のパネルB)の両方を使用して観察されたiNKT細胞活性化のCD1d依存性を示すグラフである。抗CD1d抗体の存在下又は非存在下で6-PEG3-NH2-GalCer(2a)によって誘導されたIL-2分泌。
図6】抗原提示細胞(SW620、非トランスフェクトHEK293及びCD1dを発現するようにトランスフェクトされたHEK293)として使用された細胞株におけるCD1d発現のRT-PCR分析を示す画像である。
図7】6-PEG3-NH2-GalCer(2a)又はKRN7000による活性化後のHeLa-CD1d細胞でiNKTによって誘導された細胞傷害性(死細胞のパーセンテージとして表された)を示すグラフである。
図8】iNKT表現型決定を示すグラフである。CD8+/CD4+比として表された、KRN7000又は6-PEG3-NH2-GalCer(2a)の存在下のPBMCにおけるiNKT細胞の拡大。
図9】6-PEG3-NH2-GalCer(2a)又はKRN7000による活性化後のHeLa-CD1d スフェロイドモデルでiNKTによって誘導された細胞傷害性を示す図である。実験プロトコール(A)、及びフローサイトメトリーによる細胞死分析(B)。
図10A】6-PEG3-NHAc-GalCer(2b)、6-PEG3-NH2-GalCer(2a)、6-PEG3-NHBz-GalCer(2c)及びKRN7000による活性化後のiNKTによるIFN-γ及びIL-13分泌を示すグラフである。HeLa-CD1d細胞(A)によるIFN-γ分泌を示す。
図10B】6-PEG3-NHAc-GalCer(2b)、6-PEG3-NH2-GalCer(2a)、6-PEG3-NHBz-GalCer(2c)及びKRN7000による活性化後のiNKTによるIFN-γ及びIL-13分泌を示すグラフである。HeLa-CD1d細胞(B)による活性化後のiNKTによるIL-13分泌を示す。
図10C】6-PEG3-NHAc-GalCer(2b)、6-PEG3-NH2-GalCer(2a)、6-PEG3-NHBz-GalCer(2c)及びKRN7000による活性化後のiNKTによるIFN-γ及びIL-13分泌を示すグラフである。非CD1d HeLa細胞(C)によるIFN-γ分泌を示す。
図10D】6-PEG3-NHAc-GalCer(2b)、6-PEG3-NH2-GalCer(2a)、6-PEG3-NHBz-GalCer(2c)及びKRN7000による活性化後のiNKTによるIFN-γ及びIL-13分泌を示すグラフである。非CD1d HeLa細胞(D)による活性化後のiNKTによるIL-13分泌を示す。
図11E】6-PEG3-NHAc-GalCer(2b)、6-PEG3-NH2-GalCer(2a)、6-PEG3-NHBz-GalCer(2c)及びKRN7000による活性化後のiNKTによるIFN-γ及びIL-13分泌を示すグラフである。HEK293-CD1d細胞(E)によるIFN-γ分泌を示す。
図11F】6-PEG3-NHAc-GalCer(2b)、6-PEG3-NH2-GalCer(2a)、6-PEG3-NHBz-GalCer(2c)及びKRN7000による活性化後のiNKTによるIFN-γ及びIL-13分泌を示すグラフである。HEK293-CD1d細胞(F)による活性化後のiNKTによるIL-13分泌を示す。
図11G】6-PEG3-NHAc-GalCer(2b)、6-PEG3-NH2-GalCer(2a)、6-PEG3-NHBz-GalCer(2c)及びKRN7000による活性化後のiNKTによるIFN-γ及びIL-13分泌を示すグラフである。非CD1d HEK293細胞(G)によるIFN-γ分泌を示す。
図11H】6-PEG3-NHAc-GalCer(2b)、6-PEG3-NH2-GalCer(2a)、6-PEG3-NHBz-GalCer(2c)及びKRN7000による活性化後のiNKTによるIFN-γ及びIL-13分泌を示すグラフである。非CD1d HEK293細胞(H)による活性化後のiNKTによるIL-13分泌を示す。
図12】6-PEG3-NHAc-GalCer(2b)、6-PEG3-NH2-GalCer(2a)、6-PEG3-NHBz-GalCer(2c)、6-Mal-PEG-GalCer(3b)、6-Mal-PEG6-GalCer(3a)、及びKRN7000を負荷されたHeLa細胞による活性化後のiNKTによるIFN-γ分泌を示すグラフである。
図13】カップリング(「カップリングしたセツキシマブ」)又は「モック」カップリング(「セツキシマブ単独」)反応後に精製されたセツキシマブによるEGFR認識を示すグラフである。
図14】セツキシマブ+ 6-PEG3-NH2-GalCer(2a)(左のパネル)又は6-PEG3-NH2-GalCer(2a)単独(右のパネル)を負荷されたHeLa-CD1d細胞(A)又は非トランスフェクトHeLa細胞(B)による活性化後のiNKTによるIFN-γ分泌を示すグラフである。下記の[表1]及び[表2]を参照。
図15】TRAUT活性化によって形成された複合体セツキシマブ6-Mal-PEG6-GalCer(3a)(左のパネル)、又は6-Mal-PEG6-GalCer(3a)単独(右のパネル)を負荷された、HeLa-CD1d細胞(C)又は非トランスフェクトHeLa細胞(D)による活性化後のiNKTによるIFN-γ分泌を示すグラフである。下記の[表3]及び[表4]を参照。
図16】非CD1d HeLa細胞に負荷後の6-Mal-PEG6-GalCer 3aと比較したiNKT細胞における画分A及びBの活性を示すグラフである。
【0049】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【発明を実施するための形態】
【0050】
iNKT活性化剤
従って、本発明は、iNKT活性化剤の新たなファミリーを提供する。
【0051】
「iNKT活性化因子」とも呼ばれる表現「iNKT活性化剤」とは、本明細書では、iNKT細胞の免疫賦活剤、すなわちiNKT細胞を活性化することができる化合物を意味する。
【0052】
表現「iNKT細胞を活性化することができる化合物」とは、本明細書では、前記化合物及びCD1d発現細胞の存在下でiNKT細胞は、前記化合物の非存在下と比べると、少なくとも1つのサイトカインを発現する又は少なくとも1つのサイトカインの発現を増加させることを意味する。
【0053】
iNKT活性化剤の存在下で発現が誘導又は増加される少なくとも1つのサイトカインは、例えば、インターフェロンガンマ(INF-γ)、TNF-α及びインターロイキン(IL-13、IL-2、IL-10、IL12又はIL4等)からなる群から選択されるサイトカイン等のTh1又はTh2サイトカイン(がん療法には好ましくはTh1サイトカイン)である。
【0054】
CD1dは、非多型性主要組織適合遺伝子複合体クラスI様抗原提示分子である。
【0055】
「CD1d細胞」とも呼ばれるCD1d発現細胞は、CD1dを天然に発現する細胞、又はCD1dを発現するようにトランスフェクトされた細胞であってもよい。
【0056】
CD1d発現細胞は、CD1dを低レベル又は高レベルで発現する細胞であってもよい。
【0057】
「CD1dを低レベルで発現する細胞」とは、本明細書では、この細胞によって発現されるCD1dがフローサイトメトリーによっては検出されないが、RT-PCRによって検出されうることを意味する。CD1dを低レベルで発現する細胞は、これまでは「非CD1d細胞」とみなされた。
【0058】
「CD1dを高レベルで発現する細胞」とは、本明細書では、この細胞によって発現されるCD1dがRT-PCR及びフローサイトメトリーによって検出されうることを意味する。
【0059】
CD1dを低レベルで発現する細胞は、例えば、HeLa細胞(すなわち非トランスフェクトHeLa細胞)、HEK293細胞(すなわち非トランスフェクトHEK293細胞)、Meso13細胞、Meso34細胞、Meso225細胞(呼吸器がん(breath cancer)由来)、SW116細胞又はHTC116細胞(結腸直腸がん由来)等の腫瘍細胞である。
【0060】
CD1dを高レベルで発現する細胞の非限定的な例は、単球、マクロファージ、樹状細胞、Bリンパ球、上皮細胞(特に結腸又は腸由来)、及びCD1dを発現するようにトランスフェクトされた任意の細胞等のAPC(抗原提示細胞)である。
【0061】
CD1dを高レベルで発現する細胞は、PBMC(末梢血単核細胞)の形態で提供されてもよい。PBMCは、フィコールを使用した密度勾配遠心法による全血からの抽出等の当業者に周知の任意の方法によって得ることができる。
【0062】
iNKT細胞(インバリアントナチュラルキラーT細胞)は、CD1dを認識するリンパ球の集団である。INKT細胞(インバリアントナチュラルキラーT細胞)は、NK細胞(CD16及びCD56等)及びT細胞(CD3、CD4及びCD8等)由来のマーカーを発現する。その主な特殊性は、CD1d分子に拘束されるインバリアントTCRの発現である。このTCRは脂質及び糖脂質抗原のみを認識し、ペプチド様古典的TCRを認識しない。
【0063】
iNKT細胞の最もよく知られている天然抗原は、KRN7000である。
【0064】
化合物がiNKT活性化剤であるかどうかを評価するために、当業者に周知の任意の方法が使用されうる。
【0065】
古典的に、CD1d発現細胞は、評価される化合物の存在下又は非存在下で一晩インキュベートされ、CD1d分子への負荷を可能にする。次いで、CD1d細胞はiNKTと共インキュベートされる。6時間の共培養は、上清中のほとんどのサイトカイン放出(IFN-γ、IL-13及び/又はIL-2等)を検出できるようになるのに十分である。いくつかの後期サイトカイン(IL-10等)の動態に応じて、48時間までの様々なインキュベーション時間が行われうる。少なくとも1つのサイトカインの量又は濃度は故に、6時間~48時間のインキュベーション時間後の上清で測定される。評価される化合物の存在下の、その非存在下と比べた少なくとも1つのサイトカインの量又は濃度の増加は、前記化合物がiKNT活性化剤であることを意味する。
【0066】
CD1dを低レベルで発現する細胞が上記のアッセイで使用される場合、前記化合物の存在下の、その非存在下と比べた少なくとも1つのサイトカインの量又は濃度の増加は、この化合物が強力なiKNT活性化剤であることを意味する。
【0067】
6-PEGm-NHR-GalCer化合物
iNKT活性化剤は、本明細書では化合物6-PEGm-NHR-GalCerとも呼ばれる、以下の式(II)のKRN7000アナログ:
【0068】
【化12】
【0069】
[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m-(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、
Rは、H、-CO-R1、-CONR1、-COOR1、-CSR1、-CSNR1、又は-CSOR1を表し、
R1は、アルキル基、アリール基、複素環基、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-R2(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-R2(qは1~24の整数である)を表し、
R2は、担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基を表す、又はL-Dを表す(ここでLはリンカーであり、Dは担体である)]を好ましくは含む又はそれからなる。
【0070】
R2が担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基を表す場合、R2は、例えばN-マレイミド、N3、アルキン、アルケン、アクリロイル、ノルボルネン、シクロオクタジエン、TCO、テトラジン、イソシアネート、チオール又はアルデヒドである。
【0071】
官能性反応基は、リジンの媒介、酸化炭水化物への還元カップリング、システイン残基の媒介、並びに/又はヒドラゾンの媒介、ジスルフィド及び/若しくはペプチドベースの結合等の様々なやり方によって担体へのカップリングを可能にしうる。
【0072】
リガンドと薬物コンジュゲートとの間の様々なヘテロ二官能性結合試薬が文献に記載されており、官能性反応基を介してiNKT活性化剤を担体にカップリングするのに使用されうる。
【0073】
担体Dは、例えば、下の「担体」セクションに定義されている通りである。
【0074】
リンカーは、好ましくは共有結合リンカーである。
【0075】
リンカー、特に共有結合リンカーは、好ましくは非酵素的に切断可能なリンカーである。
【0076】
リンカーは、例えば、上に定義されている式(II)の化合物[式中R1は、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-R2(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-R2(qは1~24の整数である)を表し、R2は、担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基を表す]を担体にカップリングする方法に由来する。
【0077】
リンカーは、例えば、以下の式(XI):
【0078】
【化13】
【0079】
又は以下の式(XIII)の化合物:
【0080】
【化14】
【0081】
を含む又はそれからなる。
【0082】
1つの実施形態では、上に定義されているiNKT活性化剤は、Rが以下の式(III):
【0083】
【化15】
【0084】
又は以下の式(XIV):
【0085】
【化16】
【0086】
を有することを特徴とする。
【0087】
Rが式(III)のRである、上に定義されているiNKT活性化剤は、特にRがSM(PEG)nクロスリンカーを有するHを表す、式(II)のiNKT活性化剤の反応から生じうる。
【0088】
「SM(PEG)nリンカー」とは、本明細書では、スクシンイミド-PEGn-マレイミドリンカーを意味する。
【0089】
PEG断片-[CH2-CH2-O]mにおいて、mは1~24、好ましくは1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~12の整数である。例えば、mは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は12、好ましくは1、3、6又は12であってもよい。
【0090】
PEG断片-[CH2-CH2-O]p-R2において、pは1~24、好ましくは1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10の整数である。例えば、pは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12、好ましくは1、3、6又は12であってもよい。
【0091】
「アルキル」とは、本明細書では、1~24個の炭素原子、好ましくは1~12個の炭素原子を含む直鎖状炭化水素基、又は1~12個の炭素原子を含む分岐若しくは環状炭化水素基を意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、及びシクロヘキシル基、好ましくはメチル又はエチルが挙げられる。
【0092】
アルキル鎖-(CH2)n-において、nは好ましくは1~24、例えば1~20、1~15、1~12、1~10の整数である。例えば、nは1、2、3、4、5、7、8、9、10、11又は12、好ましくは1、3、6又は12であってもよい。
【0093】
アルキル鎖-(CH2)q-R2において、qは好ましくは1~24、例えば1~20、1~15、1~10の整数である。例えば、qは1、2、3、4、5、7、8、9、10、11又は12、好ましくは1、3、6又は12であってもよい。
【0094】
「分岐炭化水素基」とは、本明細書では、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個又は12個の炭素原子を有する分岐炭化水素鎖を意味し、その鎖は直鎖状若しくは分枝型、飽和型であってもよいか、又は1つ若しくは複数の二重又は三重結合を含んでもよく、その鎖は1つ若しくは複数のヘテロ原子によって中断されてもよいか、又は1つ若しくは複数のヘテロ原子、若しくはヘテロ原子を含む1つ若しくは複数の置換基によって置換されてもよい。これに関して、「ヘテロ原子」とは、本明細書では炭素又は水素以外の任意の原子を意味し、この原子は典型的には窒素、酸素又は硫黄原子である。
【0095】
「アリール」とは、本明細書では、酸性基、アミド基、アミド基、尿素基、アミン基、チオール基、アルコール基、エーテル基、エステル基によって場合により置換されうる単環式又は多環式芳香族炭化水素基を意味する。アリールは、好ましくはフェニル、ベンジル、ナフチル、アントラセニルである。アリールは、少なくとも1つのアルキル基によって置換されうる。アリールの好ましい例はフェニル基である。
【0096】
「複素環基」とは、本明細書では、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1~4個の環ヘテロ原子の構成元素を含有する非置換又は置換基を意味する。複素環基は、単環式又は多環式であってもよい。
【0097】
複素環基の例には、3員環、4員環、5員環、6員環、7員環、8員環及び9員環が挙げられる。
【0098】
5員環の例には、ピロリジン、ピロール、テトラヒドロフラン、フラン、テトラヒドロチオフェン、チオフェン、イミダゾリン、イミダゾール、ピラゾリジン、ピラゾール、オキサゾリジン、オキサゾール、イソオキサゾリジン、イソオキサゾール、ジオキソラン、ジチオランが挙げられる。
【0099】
6員環の例には、ピペリジン、ピリジン、テトラヒドロピラン、ピラン、チアン、チオピラン、ピペラジン、ジアジン、モルホリン、オキサジン、チオモルホリン、チアジン、ジオキサン、ダイオキシン、ジチアン、ジチイン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、トリアジン、トリオキサン、トリチアン、テトラジン、ペンタジン、トリアゾール、フラザン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ジオキサゾール、ジチアゾール、テトラゾール、オキサテトラゾール、チアテトラゾール又はペンタゾールが挙げられる。
【0100】
上に定義されている式(II)のiNKT活性化剤は、有利には可溶性水性メタノール及び/又はDMSO溶媒である。
【0101】
好ましいiNKT活性化剤は、例えば、以下の式(IV):
【0102】
【化17】
【0103】
を有する。
【0104】
式(IV)のiNKT活性化剤は、高いCD8+応答を誘導し、高い細胞傷害性応答をもたらす。
【0105】
別の好ましいiNKT活性化剤は、例えば、以下の式(V):
【0106】
【化18】
【0107】
を有する。
【0108】
別の好ましいiNKT活性化剤は、例えば、以下の式(VI):
【0109】
【化19】
【0110】
を有する。
【0111】
別の好ましいiNKT活性化剤は、例えば、以下の式(VII):
【0112】
【化20】
【0113】
を有する。
【0114】
別の好ましいiNKT活性化剤は、例えば、以下の式(VIII):
【0115】
【化21】
【0116】
を有する。
【0117】
従って、iNKT活性化剤は、上に定義されている式(IV)の化合物、式(V)の化合物、式(VI)の化合物、式(VII)の化合物、及び式(VIII)の化合物からなる群から好ましくは選択される。
【0118】
上に定義されているiNKT活性化剤は、例えばR1がPEG断片-[CH2-CH2-O]p-L-D(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-L-D(qは1~24の整数である)を表す場合、担体Dを含んでもよく、又は例えばR2が官能性反応基を表す場合、担体Dに更にカップリングされてもよい。
【0119】
iNKT活性化剤は、特に下に定義されている前記iNKT活性化剤を含むベクターの形態で提供されてもよい。
【0120】
iNKT活性化剤は、特に下に定義されている医薬組成物の形態で提供されてもよい。
【0121】
iNKT活性化剤は、例えば、下に定義されている方法によって得られる。
【0122】
化合物6-PEGm-NHR-GalCerを生成する方法
本発明はまた、上に定義されている式(II)のiNKT活性化剤を生成する方法であって、
- 場合により、ガラクトース及びフィトスフィンゴシンを反応させて以下の式(IX):
【0123】
【化22】
【0124】
を有する化合物を得る工程
(前記反応は、好ましくは:
・ガラクトースのオルソゴナル保護及びアノマー活性化によってグリコシル供与体を調製する工程と、
・フィトスフィンゴシンのオルソゴナル保護と、それに続くN-アシル化及び脱保護工程によってグリコシル受容体を調整する工程と、
・第1級水酸基のグリコシル化工程及び脱保護を実施する工程と
を含む)と、
- 式(IX)の化合物をN3-CH2-CH2-PEG3-N=C=Oと反応させて、水素化後に以下の式(X):
【0125】
【化23】
【0126】
を有する化合物を得る工程と、
- 場合により、式(X)の化合物を
○式(IV)の化合物を生成するためのナトリウムメトキシド、
○式(V)の化合物を生成するための無水酢酸とそれに続くナトリウムメトキシド、又は
○式(VI)の化合物を生成するためのフェニルアセチルクロリドとそれに続くナトリウムメトキシド
と反応させる工程と、
- 場合により、式(IV)の化合物を、式(VII)の化合物を生成するためのSM(PEG)6クロスリンカー、又は式(VIII)の化合物を生成するためのSM(PEG)2クロスリンカーと反応させる工程と
を含む、方法にも関する。
【0127】
式(IV)、(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のiNKT活性化剤を生成する方法の例は、実施例1で更に詳述される。
【0128】
担体
本発明はまた、少なくとも1つの担体を含む又は少なくとも1つの担体にカップリングされた、上に定義されているiNKT活性化剤にも関する。
【0129】
担体は、明細書では「担体D」又は「D」とも呼ばれる。
【0130】
iNKT活性化剤が1つの又は少なくとも1つの担体Dを含む又はこれにカップリングされる場合、iNKT活性化剤は複合体、コンジュゲート、バイオコンジュゲート又は糖コンジュゲートとも呼ばれる。
【0131】
担体は、iNKT活性化剤の効率及び/若しくは安定性及び/若しくは半減期を改善することができる、iNKT活性化剤を局在化させることができる(例えば標識剤)、iNKT活性化剤を特異的に送達することができる(例えば標的化剤)、並びに/又は治療活性を有する(例えば治療剤)任意の化合物であってもよい。
【0132】
担体は、好ましくは標的化剤及び/又は治療剤である。
【0133】
標的化剤は、上に定義されているiNKT活性化剤を標的細胞に及び/又は標的細胞の周囲若しくは近くの領域へ送達することを可能にする任意の化合物である。標的剤は、例えば、CD1d細胞によって発現される受容体に結合する化合物である。
【0134】
例えば、がんの予防及び/又は治療の枠組みでは、標的化剤は、腫瘍細胞受容体、特にCD1d細胞で発現されるもの、又は腫瘍環境に存在する細胞に特異的に結合しうる。
【0135】
治療剤は、治療効果、特に予防的及び/又は根治的治療効果を有する任意の化合物である。治療剤は好ましくは同じ疾患に対して、ただし、好ましくはiNKTとは異なる作用機序によって治療効果を有する。
【0136】
標的化剤及び/又は治療剤は、例えばタンパク質、ペプチド、糖タンパク質、アプタマー、ウイルス、化学分子、好ましくは小化学分子、又は炭水化物であってもよい。
【0137】
標的化剤の非限定的な例は、抗体、抗体断片(Fab、scFv、ナノボディ等)、糖、レクチン、アフィチン、増殖因子、又は標的に特異的に結合する化学分子である。
【0138】
治療剤の非限定的な例は、抗原、例えば細菌抗原若しくはウイルス抗原、抗体、抗体断片、又は化学分子(例えば合成生物活性分子)である。
【0139】
表現「小化学分子」とは、本明細書では、500kDa以下の分子量を有する化学分子を意味する。
【0140】
上に定義されている抗原は、炭水化物抗原又はペプチド抗原であってもよい。
【0141】
従って、所与の担体は、例えば抗体の場合等では治療剤及び標的化剤の両方であってもよい。
【0142】
担体は、内在化担体又は非内在化担体であってもよい。
【0143】
「内在化担体」とは、本明細書では、標的細胞に結合すると、前記標的細胞に内在化される担体を意味する。
【0144】
上に定義されている内在化担体は、好ましくは治療剤及び標的化剤の両方である。
【0145】
上に定義されている内在化担体は、好ましくは抗体である。
【0146】
少なくとも1つの内在化担体にカップリングされた少なくとも1つのiNKT活性化剤を含むコンジュゲートの場合、内在化担体は好ましくは前記コンジュゲートを内在化することができる。
【0147】
少なくとも1つの内在化担体にカップリングされた少なくとも1つのiNKT活性化剤を含むコンジュゲートが標的細胞に内在化されると、好ましくはiNKT活性化剤が次いでコンジュゲートから放出され、それによってCD1d分子への負荷、標的細胞の表面への提示、及びiNKT刺激を可能にする。
【0148】
担体が抗体である場合、抗体は好ましくはモノクローナル抗体である。
【0149】
モノクローナル抗体は、好ましくはヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体である。
【0150】
上に定義されている抗体は、単一特異性抗体又は多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体であってもよい。
【0151】
上に定義されている抗体は、腫瘍細胞で発現される少なくとも1つの受容体に特異的に結合することができる。
【0152】
担体として使用されうる抗体の非限定的な例は、抗EGFR抗体(セツキシマブ又はパニツムマブ等)、抗HER2抗体(トラスツズマブ等)である。
【0153】
セツキシマブ又はパニツムマブ等の抗EGFR抗体は、内在化担体の一例である。
【0154】
従って、本発明は、好ましくはiNKT活性化剤と担体との間のリンカーを介して、上に定義されている少なくとも1つの担体にカップリングされた上に定義されている少なくとも1つのiNKT活性化剤を含むコンジュゲートにも関する。
【0155】
該コンジュゲートの担体は、好ましくは治療剤及び/又は標的化剤である。
【0156】
iNKT活性化剤と担体との間のカップリングは、共有結合性であってもよい。
【0157】
本発明は特に、少なくとも1つのiNKT活性化剤が、好ましくは非酵素的に切断可能な様式で少なくとも1つの担体に共有結合されている、上に定義されているコンジュゲートに関する。
【0158】
1つ、2つ、3つ又は少なくとも4つのiNKT活性化剤が、1つ、2つ、3つ又は少なくとも4つの担体にカップリングされて1つのコンジュゲートを形成してもよい。
【0159】
上に定義されているコンジュゲートが少なくとも2つのiNKT活性化剤を含む場合、iNKT活性化剤は同一であっても又は異なってもよい。
【0160】
上に定義されているコンジュゲートが少なくとも2つの担体を含む場合、担体は同一であっても又は異なってもよい。
【0161】
好ましいコンジュゲートは、少なくとも1つのiNKT活性化剤と1つの担体(すなわち1つの分子の担体)とを含み、iNKT活性化剤が好ましくは場合によりリンカーを介して担体に連結される、上に定義されているコンジュゲートである。
【0162】
コンジュゲート中に存在するリンカーは、例えば、iNKT活性化剤を担体にカップリングする方法に由来しうる。
【0163】
本発明は、例えば、少なくとも1つの(好ましくは1つの)担体にカップリングされた少なくとも1つの(好ましくは1つ又は2つの)iNKT活性化剤を含むコンジュゲートであって、
(i)式(II)の化合物
【0164】
【化24】
【0165】
[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、Rは、-CO-R1、-CONR1、-COOR1、-CSR1、-CSNR1又は-CSOR1を表し、R1は、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-L-D(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-L-D(qは1~24の整数である)を表す(ここでLはリンカーであり、Dは担体である)]を含む、又は
(ii)上の式(II)のiNKT活性化剤[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、Rは、-CO-R1、-CONR1、-COOR1、-CSR1、-CSNR1又は-CSOR1を表し、R1は、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-R2(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-R2(qは1~24の整数である)を表し、R2は、担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基を表す]を担体Dにカップリングすることによって得られる、コンジュゲートに関する。
【0166】
非限定的な例として、抗体、タンパク質、ペプチド、又は糖タンパク質である担体のカップリングは、トラウト試薬を前記担体と反応させてトラウト-チオール活性化担体を得、次いでトラウト活性化担体をiNKT活性化剤、特に式(II)のiNKT活性化剤[式中Rは、上に定義されている式(III)の基である]にカップリングして、担体にカップリングされたiNKT活性化剤を含むコンジュゲートを得ることによって得ることができる。
【0167】
トラウト試薬は、2-イミノチオランである。
【0168】
更に好ましいコンジュゲートは、1つのiNKT活性化剤(すなわち1つの分子のiNKT活性化剤)と1つの担体(すなわち1つの分子の担体)とを含み、iNKT活性化剤が、好ましくはリンカーを介して担体に連結される、上に定義されているコンジュゲートである。
【0169】
別の好ましいコンジュゲートは、2つのiNKT活性化剤(すなわち2つの分子のiNKT活性化剤)と1つの担体(すなわち1つの分子の担体)とを含み、各iNKT活性化剤が好ましくはリンカーを介して担体に連結される、上に定義されているコンジュゲートである。
【0170】
従って、少なくとも1つ(好ましくは1つ)の担体にカップリングされた少なくとも1つ(好ましくは1つ、2つ又は少なくとも2つ)のiNKT活性化剤を含む上に定義されているコンジュゲートは、式(II)の化合物
【0171】
【化25】
【0172】
[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、Rは、-CO-R1、-CONR1、-COOR1、-CSR1、-CSNR1又は-CSOR1を表し、R1は、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-L-D(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-L-D(qは1~24の整数である)を表す(ここでLはリンカーであり、Dは担体である)]を好ましくは含む。従って、上に定義されている式(II)の化合物は、リンカーLを介して担体DにカップリングされたiNKT活性化剤の化合物である。上に定義されている式(II)の化合物は、担体Dを介して少なくとも別の化合物にカップリングされてもよい。担体Dにカップリングされた前記他の化合物は、好ましくはiNKT活性化剤である。担体Dにカップリングされた前記他の化合物は、上に定義されている式(II)のリンカーLを介して担体DにカップリングされたiNKT活性化剤と好ましくは同一である。
【0173】
従って、上に定義されているコンジュゲートは、以下の構造を有しうる:(iNKT活性化剤1)-(リンカーL1)-(担体D)-(リンカーL2)-(iNKT活性化剤2)(ここでL1及びL2は好ましくは同一であり、並びに/又はiNKT活性化剤1及び2は好ましくは同一である)。
【0174】
従って、少なくとも1つ(好ましくは1つ)の担体にカップリングされた少なくとも1つ(好ましくは1つ、2つ又は少なくとも2つ)のiNKT活性化剤を含む上に定義されているコンジュゲートは、式(II)の少なくとも1つ(例えば1つ、2つ又は少なくとも2つ)のiNKT活性化剤:
【0175】
【化26】
【0176】
[式中Xは、PEG断片-[CH2-CH2-O]m(mは1~24の整数である)、アルキル鎖-(CH2)n-(nは1~24の整数である)、又は分岐炭化水素基を表し、Rは、-CO-R1、-CONR1、-COOR1、-CSR1、-CSNR1又は-CSOR1を表し、R1は、PEG断片-[CH2-CH2-O]p-R2(pは1~24の整数である)、又はアルキル鎖-(CH2)q-R2(qは1~24の整数である)を表し、R2は、担体Dへのカップリングを可能にする官能性反応基を表す]を1つの担体Dにカップリングすることによって得ることができる。
【0177】
ベクター
上に定義されているiNKT活性化剤又は上に定義されているコンジュゲートは、前記iNKT活性化剤又はコンジュゲートを含むベクターの形態で提供されてもよい。
【0178】
ベクターは、化合物をカプセル化することができる任意の送達ビヒクルであってもよい。
【0179】
ベクターは、例えばナノ粒子、例えばリポソーム(例えば、ポリマーリポソーム又は脂質リポソーム)、ウイルス様粒子(VLP)、デンドリマー、ミセル、ナノエマルジョン及びナノ懸濁液であってもよい。
【0180】
従って、本発明は、上に定義されている少なくとも1つのiNKT活性化剤、又は上に定義されている少なくとも1つのコンジュゲートを含むベクターにも関する。
【0181】
iNKT活性化剤又はコンジュゲートは、特にリポソーム、デンドリマー、ミセル、ナノエマルジョン又はナノ懸濁液の場合、ベクターの内側に存在してもよい。
【0182】
或いは、iNKT活性化剤又はコンジュゲートは、細胞によって発現されるCD1dに直接結合できるようにベクター表面にあってもよい。
【0183】
ベクターは、上に定義されている少なくとも1つの標的化剤及び/又は上に定義されている少なくとも1つの治療剤を更に含んでもよい。
【0184】
医薬組成物
上に定義されているiNKT活性化剤、上に定義されているコンジュゲート及び/又は上に定義されているベクターは、医薬組成物に配合されてもよい。
【0185】
従って、本発明は、(i)上に定義されているiNKT活性化剤、又は上に定義されているコンジュゲート、又は上に定義されているベクター、及び(ii)場合により、薬学的に許容されるビヒクルを含む医薬組成物にも関する。
【0186】
表現「薬学的に許容されるビヒクル」は、有効成分の生物活性の有効性を妨げず、投与される宿主に対して好ましくは毒性でない任意のビヒクルを包含することを意味する。
【0187】
薬学的に許容されるビヒクルは、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。
【0188】
適切な薬学的に許容されるビヒクルは、活性化合物の薬学的に使用することができる調製物への加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含んでもよい。適切な薬学的に許容されるビヒクルは、例えば、この分野で定評のある参照テキストであるRemington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、Easton、USA、1985)に記載されている。薬学的に許容されるビヒクルは、iNKT活性化剤の投与様式、可溶性及び安定性に従って日常的に選択することができる。例えば、静脈内投与用の製剤は、緩衝剤、希釈剤及び/又は他の適切な添加物も含有しうる滅菌水溶液を含んでもよい。ドラッグデリバリーのための生体材料及び/又は他のポリマーの使用は、特定の投与様式を検証するための異なる手法及びモデルと同様に文献に開示されている。
【0189】
医薬組成物は、溶液又は懸濁液等の液体であってもよい。
【0190】
上に定義されているiNKT活性化剤は、好ましくは、意図された目的を達成するのに有効な量で医薬組成物中に存在する。この量は、例えば、投与を意図された哺乳動物の状態(例えば、体重、年齢、性別、健康、現在の治療(もしあれば)、及び治療の頻度)、投与様式、及び製剤のタイプに依存しうる。
【0191】
例えば、医薬組成物は、5μg~50mgのiNKT活性化剤、好ましくは10μg~40mgのiNKT活性化剤、好ましくは50μg~20mgのiNKT活性化剤、好ましくは75μg~10mg、好ましくは100μg~5mg、より好ましくは100μg~1mgのiNKT活性化剤を含んでもよい。
【0192】
医薬組成物は、少なくとも1つの追加の有効成分を含んでもよい。
【0193】
この追加の有効成分は、例えば、上に定義されている治療剤、薬物又はプロドラッグであってもよい。
【0194】
医薬組成物は、ワクチンであってもよい。
【0195】
上に定義されている医薬組成物がワクチンである場合、前記組成物は、少なくとも1つのiNKT活性化剤及び少なくとも1つの抗原、例えばウイルス抗原又は細菌抗原を含んでもよい。
【0196】
一実施形態では、医薬組成物は、正確な投薬を容易にするために単位剤形で提示される。用語「単位剤形」は、ヒト対象又は他の哺乳動物用の単位剤形として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な薬学的ビヒクルと関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性物質を含有する。典型的な単位剤形には、液体医薬組成物のプレフィルド、前測定アンプル又はシリンジが挙げられる。そのような組成物において、iNKT活性化剤は通常、微量成分である。
【0197】
本発明は更に、上に定義されている医薬組成物と投与様式に関する説明書とを含むキットを提供する。これらの説明書は、例えば、医学的適応、投与経路、投与量及び/又は治療される患者群を指示しうる。
【0198】
医薬としての使用のためのiNKT活性化剤、コンジュゲート又はベクター
本発明は、特に免疫療法における医薬としての使用のための、例えば、特にそれを必要とする対象における、免疫応答の刺激を必要とする任意の疾患の予防及び/又は治療のための、上に定義されているiNKT活性化剤、上に定義されているコンジュゲート、又は上に定義されているベクターに特に関する。
【0199】
本発明はまた、それを必要とする対象における、免疫応答の刺激を必要とする疾患の予防及び/又は治療の方法であって、上に定義されているiNKT活性化剤、上に定義されているコンジュゲート、又は上に定義されているベクターを前記対象に投与する工程を含む、方法にも関する。
【0200】
「免疫応答の刺激を必要とする疾患」とは、本明細書では、疾患の予防及び/又は治療が免疫応答の増幅若しくは開始を必要とする、又は免疫応答の増幅若しくは開始によって改善される疾患を意味する。
【0201】
対象は、例えばヒト又は非ヒト哺乳動物である。
【0202】
ヒトは、「個体」又は「患者」とも呼ばれる。
【0203】
前記ヒトは、任意の年齢、例えば乳幼児、小児、青年、成人、高齢者、及び任意の性別であってもよい。
【0204】
非ヒト哺乳動物は、好ましくはネコ、イヌ、ウサギ、霊長類、マウス又はラットである。
【0205】
治療される対象は、免疫応答の刺激を必要とする疾患に罹患し得、又は免疫応答の刺激を必要とする疾患にかかる可能性がありうる。
【0206】
免疫応答の刺激を必要とする疾患の予防には、ワクチン接種が挙げられる。
【0207】
免疫応答の刺激を必要とする疾患は、例えばがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、ウイルス感染症、細菌感染症、寄生虫疾患及び/又は任意の免疫不全病態からなる群から選択されうる。
【0208】
本発明により予防及び/又は治療されうるがんは、肺がん、転移性癌、頚部皮膚がん、頭部がん、乳がん、胃がん、結腸がん、腺癌及び/又は炎症性腫瘍(cold tumor)等の、細胞がCD1dを発現する任意のがんであってもよい。
【0209】
本発明により予防及び/又は治療されうる自己免疫疾患は、例えばセリアック病、1型糖尿病、グレーブス病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ又は全身性エリテマトーデスであってもよい。
【0210】
本発明により予防及び/又は治療されうる炎症性疾患は、例えば慢性消化性潰瘍、結核、関節リウマチ、歯周炎、潰瘍性大腸炎又はクローン病であってもよい。
【0211】
ウイルス感染症は、例えば、C型肝炎感染症又はB型肝炎感染症等のウイルスに起因する任意の感染症であってもよい。
【0212】
細菌感染症は、例えば細菌に起因する任意の感染症であってもよい。
【0213】
寄生虫疾患は、例えば寄生虫に起因する任意の感染症であってもよい。
【0214】
iNKT活性化剤は上に定義されている。
【0215】
特に、iNKT活性化剤は、上に定義されている方法によって得ることができる。
【0216】
iNKT活性化剤、コンジュゲート又はベクターは、上に定義されている医薬組成物の形態で提供されてもよい。
【0217】
iNKT活性化剤は、上に定義されている担体を含んでもよく、又は上に定義されている担体にカップリングされてもよい。
【0218】
担体として標的化剤を使用することは、標的化剤のリガンド及びCD1dの両方を発現する標的細胞へのiNKT活性化剤の送達を有利には可能にし、それによって、可能性のある副作用及び/又は治療効果に達するのに必要とされる用量の低減を可能にする。
【0219】
例えば、がんの予防及び/又は治療のために、iNKT活性化剤は、腫瘍環境に存在する特異的受容体、例えば腫瘍細胞自体の特異的受容体、好ましくは、CD1dを発現する腫瘍細胞の特異的受容体、又は腫瘍周囲で特異的に見出される細胞の特異的受容体を標的にする薬剤に有利にはカップリングされる。
【0220】
担体は、好ましくは、上に定義されている抗体又は抗体断片である。
【0221】
例えば、EGFR抗体にカップリングされた上に定義されている少なくとも1つのiNKT活性化剤を含むコンジュゲートが、がん、好ましくは結腸直腸がん及び/又は呼吸器がんの予防及び/又は治療のために使用又は投与されうる。
【0222】
例えば、EGFR抗体にカップリングされた上に定義されている少なくとも1つのiNKT活性化剤を含むコンジュゲートが、がん、好ましくは結腸直腸がん、呼吸器がん及び/又は腺癌の予防及び/又は治療ために使用又は投与されうる。
【0223】
例えば、HER2抗体にカップリングされた上に定義されている少なくとも1つのiNKT活性化剤を含むコンジュゲートが、がん、好ましくは乳がん、胃がん、結腸がん及び/又は腺癌の予防及び/又は治療のために使用又は投与されうる。
【0224】
抗EGFR抗体を含む上に定義されているコンジュゲートは、この対象が少なくとも1つのKras及び/又はN-Ras変異を有しているかどうかにかかわらず、それを必要とする対象におけるがんの予防及び/又は治療のために有利には使用又は投与されうる。対照的に、セツキシマブ単独又はパニツムマブ単独は、Kras及び/又はN-Ras変異を有する患者の治療には効率が悪く、野生型Kras及びN-Ras遺伝子を有する対象の治療にのみ使用される。本発明の枠組みにおいて、抗EGFRは実際、標的化剤として主に使用される。
【0225】
従って、抗EGFR抗体を含む上に定義されているコンジュゲートは、それを必要とする任意の対象、特に抗EGFR抗体単独を使用する治療に抵抗性の対象におけるがんの予防及び/又は治療のために、有利には使用又は投与することができる。従って、その上、抗EGFR抗体を含む上に定義されているコンジュゲートは、Kras又はN-Ras変異の存在を前もって探す必要なしに、有利には使用又は投与されうる。
【0226】
アフィチン又は化学分子、好ましくは小化学分子にカップリングされた、上に定義されている少なくとも1つのiNKT活性化剤を含み、前記アフィチン又は化学分子が細菌又はウイルス化合物(細菌又はウイルス抗原等)を認識することができるコンジュゲートは、細菌又はウイルス感染症の予防及び/又は治療のために使用又は投与されうる。
【0227】
iNKT活性化剤は、治療有効量で好ましくは使用又は投与されうる
【0228】
「治療有効量」とは、本明細書では、免疫応答の開始又は増幅を達成するのに十分な量を意味する。そのような有効量は、当業者によって日常的に決定されうる。実際に投与されるiNKT活性化剤の量は、予防又は治療される状態、選択された投与経路、投与される実際の薬剤、個々の対象の年齢、性別、体重及び応答、対象の症状の重症度等を含む関連する状況に照らして、医師によって典型的には決定されるであろう。投与量は、投与された薬剤の安定性に依存しうることも当業者によって理解されるであろう。
【0229】
有効量は、上に定義されているiNKT活性化剤が同時投与されうる治療剤、薬物及び/又はプロドラッグによっても異なりうる。
【0230】
治療有効量は、治療的に有益な効果が、iNKT活性化剤の任意の毒性効果又は有害な影響を上回る量を包含する。
【0231】
iNKT活性化剤、コンジュゲート、ベクター又は医薬組成物は、任意の適切な経路、例えば動脈経路、静脈経路、組織内経路、腹腔内経路、鼻腔内経路、脳内経路、眼内経路及び/又は経口経路によって使用又は投与されうる。
【0232】
iNKT活性化剤、コンジュゲート、ベクター又はそれらを含む医薬組成物の投与は、単回投与又は複数回投与で達成されてもよく、前記複数回投与は、同時に、別々に又は逐次注射されてもよい。
【0233】
iNKT活性化剤、コンジュゲート、ベクター又は医薬組成物は、iNKT活性化剤10g~4800μg/m2体表面、例えばiNKT活性化剤20μg~2000μg/m2体表面、例えばiNKT活性化剤20μg~500μg/m2体表面、又はiNKT活性化剤50μg~500μg/m2体表面の治療用量で例えば使用又は投与されうる。
【0234】
iNKT活性化剤のin vitro使用
本発明はまた、iNKT細胞を活性化するための、特に、上に定義されている少なくとも1つのサイトカインの発現を誘導又は増加させるための、上に定義されているiNKT活性化剤、上に定義されているコンジュゲート、又は上に定義されているベクターのin vitro使用にも関する。
【0235】
本発明は、免疫CD1d依存性iNKT応答の刺激及び/又は増幅を誘導するための、上に定義されているiNKT活性化剤、上に定義されているコンジュゲート、又は上に定義されているベクターのin vitro使用に特に関する。
【0236】
上に定義されているiNKT活性化剤、上に定義されているコンジュゲート、又は上に定義されているベクターは故に、免疫CD1d依存性iNKT応答のin vitroでの刺激及び/又は増幅が必要とされる任意のアッセイで使用することができる。
【実施例
【0237】
(実施例1)
6-PEG-NHR-GalCer 2及び6-Mal-PEGn-GalCer 3の合成
式IV(2a)、V(2b)、VI(2c)(それぞれ、R=H、Ac及びPhCH2CO)の化合物6-PEG3-NHR-GalCer並びに6-Mal-PEGn-GalCer VII(3a)及びVIII(3b)の合成は、文献に記載された従来の化学経路に基づく。
【0238】
6-PEG3-NHR-GalCer 2及び3を生成するための重要な保護された6" OH-Galcer中間体の合成は、わずかに変更した確立された化学的手順によってガラクトース及びフィトスフィンゴシン前駆体から達成した(以下のスキーム1を参照のこと)。
【0239】
【化27】
【0240】
a) PhSH、BF3.Et2O、DCM、MS4Å; c) MeONa/MeOH; d) TBDPSCl、Et3N、Pyr. ; e) NaH、BnBr、DMF/THF ; f) NBS、DAST、DCM、-15℃。
【0241】
【化28】
【0242】
a) Boc2O、Et3N、DMF b) TBDPSCl、イミダゾール、DMAP、DMF c) Ac2O、Pyr、DMAP ; d) TFA、DCM、0℃ e)セロチン酸、PyBOP、Et3N、DCM、f) HF.ピリジン、THF g) SnCl2、AgClO4、THF/Et2O、MS 4Å h) TBAF.3H2O、THF i) NIS、TfOH、DCM/Et2O/THF、0℃次いで室温。
【0243】
スキーム1
保護された6"-OH-Galcerから、全ての6-PEG3-NHR-GalCer 2及び6-Mal-PEGn-GalCer 3が到達可能である(以下のスキーム2及び3を参照のこと)。
【0244】
【化29】
【0245】
a) ClCO2Et、Et3N、THF、0℃~室温、30分、次いでNaN3、H2O/THF、0℃~室温、1時間定量 b)トルエン、90℃、15分 c) DABCO、トルエン、還流、4時間、86%
【0246】
【化30】
【0247】
a) H2、Pd/C HCl、(ジオキサン中4M)、DCM b) MeONa、MeOH、室温 c) Ac2O、DMAP、ピリジン、室温 d) PhCH2COCl、NEt3、DCM、室温
【0248】
スキーム2
【0249】
【化31】
【0250】
スキーム3
【0251】
(実施例2)
6-PEG3-NHR-GalCer 2及び6-Mal-PEGn-GalCer 3によるiNKTの活性化
iNKTを活性化する6-PEG3-NHR-GalCer 2及び6-Mal-PEGn-GalCer 3の能力を分析するために、CD1d分子をその膜上で発現するようにトランスフェクトされたHEK293又はHeLa細胞等のいくつかのタイプの提示細胞を使用した。iNKT細胞への糖脂質の提示はCD1dに依存することが知られているため、非トランスフェクト細胞も「一見したところ」陰性対照として使用した。
【0252】
HEK293及びHeLa+/- CD1dにおけるCD1d発現をフローサイトメトリーによって分析した(図1)。細胞を抗CD1d-FITC又は関連するアイソタイプ対照で20分間標識し、洗浄してAccuri C6フローサイトメーターで読み取った。図1に示すように、どちらの場合も非トランスフェクト細胞は、特にそのCD1dトランスフェクト対応物と比較した場合、陰性であるように見えた。
【0253】
これらの細胞を次いで抗原提示細胞(APC)として使用して、標準的α-GalCer(KRN7000)リガンドのiNKT細胞活性化効力を、アミノPEG連結アーム6-PEG3-NH2-GalCer 2aを有するアナログ6"修飾リガンドの該効力と比較した。様々な濃度で一晩、共インキュベーション後、APCに糖脂質を負荷した。翌日、細胞を洗浄し、iNKTと共培養した(1 iNKTに対して2 APC)。6時間後、上清を回収し、サイトカイン分泌(Th1パネルについてはIFN-γ及びIL-2、並びにTh2パネルについてはIL-13)を、ELISAによって測定した(図2及び図3)。
【0254】
はじめに、標準的リガンド、KRN7000を、HEK293(図2A)又はHeLa(図2B)細胞及び関連するCD1dトランスフェクトモデルによりiNKT細胞に提示した。どちらの場合も、KRN7000は、CD1dトランスフェクト細胞におけるCD1dの高発現の存在下でIFN-γ、IL2及びIL13放出を誘導し(LogIC50がtable 1(表1)に要約されている)、iNKT細胞による糖脂質認識のCD1d依存性を浮き彫りにした。6-PEG3-NH22-GalCer 2aを使用した場合(図3A及び図3B)、本発明者らは、KRN7000よりほぼ100倍高い、はるかに強いIFN-γ、IL13及びIL-2分泌を観察した(table 1(表1)の比較を参照のこと)。
【0255】
しかし、より驚くべきことに、CD1dの非存在下(非CD1d Hela及びHEK293細胞で実施したテスト)でサイトカインの依然として有意な用量応答分泌が検出されたが、KRN7000は極めて不十分な活性のままか、又は効果がないままであった。SW620細胞を対照として使用すると、これらの予想外の結果は観察されなかった(CD1dの非存在、データ未掲載)。
【0256】
同様のサイトカイン放出プロファイルが、非CD1d- HEK293細胞と比べてより近いヒト生活環境(human medium)を表すPBMC細胞から放出されたIFN-γで確認された(図4を参照のこと)。
【0257】
この結果は、6-PEG3-NH2-GalCer 2aが、これまでに知られているh-iNKTの最も強力な活性化因子の一つであるらしいことを示している。6-PEG3-NH2-GalCer 2aのこれらの生物学的成果は、KRN7000による臨床試験の開発に関するがんに対する免疫療法の文脈でこの新規の候補を極めて興味深いものにしている。
【0258】
【表5】
【0259】
(実施例3)
「非CD1d」腫瘍細胞:誤ったパラダイム
「非CD1d」腫瘍細胞におけるINKT活性化の興味深い観察に照らして、外見的にCD1d陰性細胞に見える場合、6-PEG3-NH2-GalCer 2aがiNKT細胞をどれぐらい活性化することができるかを調査した。従って、非トランスフェクトHeLa及びHEK293細胞を、自己抗原提示細胞として使用した。たとえ極めて低くても、非常に強力な6-PEG3-NH2-GalCer a2糖脂質によって認識され、iNKTの活性化を可能にするには十分な、非CD1d腫瘍細胞の表面のCD1dプールの存在について仮説が立てられた。一方、KRN7000はこの目標を達成しない。
【0260】
次いで、フローサイトメトリーによって検出することができない適切な非CD1d腫瘍細胞でのCD1dの極めて低い発現によって、iNKT細胞活性化がもたらされうるかどうかをチェックした。この目的のために、同じ活性化実験を、ただし抗CD1d抗体の存在下で行った。HEK293細胞及びHEK293-CD1dに、以前に記載されている6-PEG3-NH2-GalCer a2を負荷した。iNKT細胞との共培養前に、負荷された提示細胞を抗CD1d抗体と1時間共インキュベートし、iNKTを懸濁液に直接添加し、上清(ELISA)でのサイトカイン分析の前に6時間共培養した。活性化シグナルが、CD1dを通じた修飾糖脂質の提示によってもたらされたならば、抗CD1d抗体でシグナルをブロックした後にサイトカイン分泌の妨害、又は少なくとも減少を観察すると予想された。
【0261】
CD1d-HEK293陽性細胞を使用した場合、抗体の存在下では不完全な阻害のみが観察された(図5Aを参照のこと)。これは、トランスフェクト細胞における高レベルのCD1d発現と組み合わされた6-PEG3-NH2-GalCer 2aの極めて高い効力に起因している可能性がある。しかし、「非CD1d」細胞を使用した場合、サイトカインシグナルはほぼ完全に排除された(図5Bを参照のこと)。この実験は、非トランスフェクトHEK293細胞における、これまでは知られていない低レベルのCD1d分子の存在を明らかに示唆している。
【0262】
この仮説を確かめるために、CD1dの低シグナルを検出する最も感度の高い方法は、PCRを使用してCD1dのARN発現を決定することである。3種類の細胞株、陽性対照としてのCD1dを有するHEK293、6-PEG3-NH2-GalCer 2aによりiNKT細胞を活性化しない陰性対照としてのSW620、及び非トランスフェクトHEK293細胞(図6を参照のこと)を分析した。
【0263】
図6に示すように、HEK293-CD1d陽性細胞が強いCD1dシグナルを示したのに対し、SW620細胞はCD1d陰性であることが判明し、6-PEG3-NH2-GalCer化合物2aの抗原提示細胞として機能することができないことと一致した。興味深いことに、非CD1d-HEK293細胞に関して、有意なシグナルが検出された。これは、パラダイムとは逆に、これらの細胞が、KRN7000を使用してiNKT活性化を誘導するには十分でないが、6-PEG3-NH2-GalCer 2aにより活性化するには十分な、100~1000倍強力な低レベルのCD1dを発現することを裏付けた。
【0264】
これらの結果は、6-PEG3-NH2-GalCer 2aが、同様にCD1d提示に依存しているものの、KRN7000よりはるかに強力であるという予想外の結果となることを明らかに示している。
【0265】
別の興味深い点は、腫瘍細胞でのCD1d発現が極めて低レベルでも高効率であり続ける6-PEG3-NH2-GalCer 2aの能力である。これは、抗がん治療における非CD1d細胞の概念を再定義するものである。その理由は、これらの結果が、以前にはCD1d陰性と考えられた腫瘍細胞が、極めて強力な6-PEG3-NHR-GalCer糖脂質を負荷された場合、iNKT細胞活性化を誘導するのに十分な微量レベルのCD1dを恒常的に発現することを示したためである。
【0266】
これは、腫瘍環境において免疫応答を開始するために、がん細胞が提示細胞として使用されて、これらの強力な糖脂質の存在下でiNKT細胞を活性化し、古典的CD1d抗原提示細胞(単球、マクロファージ又は樹状細胞及びBリンパ球等)の必要性を回避する可能性があることを示唆している。この発見を確かめるために、様々な他の結腸、肺、胚性腎、子宮頸がん細胞株をRT-PCRによってスクリーニングして低いレベルのCD1dを発現する細胞株を明らかにし、新たな強力なiNKTアゴニストを自己提示するそれらの能力を確かめた(Table 6(表6)を参照のこと)。
【0267】
【表6】
【0268】
更に、6-PEG3-NH2-GalCer 2aは、サイトカイン分泌について知られているiNKT細胞の最強の活性化因子の一つであるだけでなく、KRN7000より優れたiNKT細胞傷害作用を誘導することもできる。iNKTを、様々な濃度の糖脂質の存在下でHeLa CD1dトランスフェクト細胞と24時間共培養し、次いで、標的HeLa-CD1d細胞の死亡率をフローサイトメトリーによって分析した。図7に示すように、6-PEG3-NH2-GalCer 2aは、細胞傷害性を誘導するのにKRN7000より少なくとも10倍効率が良いようである。
【0269】
免疫応答のCD4又はCD8どちらかの配向性が6-PEG3-NH2-GalCer 2aと対比してKRN7000を使用して誘導されうることを確証するために、比較試験を行った(図8を参照のこと)。PBMCを高用量のKRN又は6-PEG3-NH2-GalCer 2aの存在下で培養し、10日後、iNKTの表現型をフローサイトメトリーによって分析した。極めて興味深いことに、6-PEG3-NH2-GalCer 2aは、CD4+細胞刺激とCD8+細胞刺激を区別していないように思われるKRN7000より高い細胞傷害性CD8+応答をPBMC細胞から誘導するようである。この結果は、iNKT刺激を介した6-PEG3-NH2-GalCer 2aの免疫細胞傷害効率を既に確証した。この能力を、他のより複雑でより耐性のあるモデルであるHeLa-CD1d 3Dスフェロイドモデル(図9A)において、他の細胞傷害性アッセイによって確かめた(72時間)。またしても、6-PEG3-NH2-GalCer 2aは、細胞死を誘導するのにKRN7000より効率が良いようである(予備データ、図9Bを参照のこと)。
【0270】
(実施例4)
6-PEG3-NH2-GalCer 2aの6-PEG3-NHR-GalCer 2b及び2cアナログの評価
6-PEG3-NH2-GalCer 2aの驚くべきiNKT刺激能及び6"-O-PEG置換KRN7000アナログの末端アミノ官能基の影響をより理解するために、NH2基をアセテート2b及びベンゾカルボニル(benzocarbonyl)2c基によってブロックすることを構想した。三元CD1d-腫瘍細胞/6-PEG3-NH2-GalCer/TCR-iNKT複合体の推測される安定化が、スペーサー14原子鎖の末端の遊離アミンの存在によって説明されるかどうか、又はPEG配列が末端基におけるいくつかの変異を性能を失うことなく可能にするかどうかを確証することが期待された。
【0271】
従って、6-PEG3-NH2-GalCer 2aの2つの新たな保護されたNHRアナログを調製した(ここでRは、アセテート6-PEG3-NHAc-GalCer 2b又はベンゾイル基6-PEG3-NHCOBn-GalCer 2cである)。生物担体との連結に従事させる目的で、同じ末端に2つの活性化誘導体6-Mal-PEGn-GalCer 3a及び3b(それぞれ、n=6又は1)も調製した。
【0272】
末端NHR保護基は両方とも、遊離NH2末端基の存在下でCD1d-腫瘍細胞及びTCR受容体と生じうる相互作用を回避及び変化させると考えられた。
【0273】
6-PEG3-NH2-GalCer 2aの6-PEG3-NHR-GalCerアナログを、トランスフェクトCD1d及び非CD1d Hela及びHEK293細胞でINF-γの分泌及びIL13刺激について評価した(図10及び図11を参照のこと)。
【0274】
モデルによっては、6-PEG3-NHAc-GalCer 2bは、CD1dトランスフェクト腫瘍細胞でiNKTを活性化するのにPEG3-NH2-GalCer 2a(LogIC50=-10.89)自体よりほぼ10~100倍強力であり(HeLa CD1dトランスフェクト細胞でのIFN-γに関して、LogIC50>-12)、KRN7000(LogIC50=-8.8)よりほぼ104高いようであるが、その一方、6-PEG3-NHCOBn-GalCer 2cはKRN7000より近いサイトカイン分泌効力を有する。
【0275】
これらのデータは、PEG3-NH2-GalCer 2a及び6-PEG3-NHAc-GalCer 2bが、iNKTを活性化するのにKRN7000より依然としてほぼ強力であるが(2及び3logの差(図11G及びH))、6-PEG3-NHCOBn-GalCer 2cはやはりKRN7000と同じプロファイル作用を有することが非CD1d-腫瘍細胞で裏付けられている。
【0276】
これらのデータは、PEG3-NHR-GalCer誘導体の活性がNHR末端基の性質に対して感受性であり、Rがアセテートである場合、トランスフェクト腫瘍細胞ではほぼpM範囲で、より興味深いことに非CD1d-腫瘍細胞ではサブnM範囲でiNKT刺激能を示すことを示している。
【0277】
6-PEG3-NH2-GalCer 2aの末端位置でのPEGn-マレイミド(n=1及び6)断片の導入によって誘導された変異を評価するために、比較試験も行った(図12を参照のこと)。
【0278】
データは、マレイミド活性化官能基を提示する6-Mal-PEG6-GalCer 3aは、iNKT細胞の活性化をわずかに減少させるが、KRN7000よりほぼ10倍高いことを示している)。
【0279】
それにもかかわらず、これらのデータは既に、新規の6-Mal-PEG6-GalCer 3aを、累積的な生物学的抗がんサイトカイン放出及び腫瘍環境に近い担体の細胞傷害性作用を誘導するための治療抗体又は他の生物担体との会合候補にしている。
【0280】
(実施例5)
非酵素的に切断可能なGalCer/セツキシマブ複合体の詳細
6-PEG3-NH2-GalCer 2aからの6-Mal-PEG6-GalCer 3aの合成を最適化した。中間体2aは、トラウト活性化セツキシマブ抗体とin situで反応させて2つのパートナー間の共有結合を達成することを狙った適切な反応性マレイミド末端基(点線の囲み)を特徴とする長いベイトを示す(スキーム4)。
【0281】
マレイミド 6-Mal-PEG6-Galcer中間体3aを精製することなく6-PEG3-NH2-GalCer 2aからGalCer/セツキシマブ複合体C1を入手するためのワンポットプロセスも成功裏に実験された。この目的のために、6-PEG3-NH2-GalCer 2aを、10% DMSOを含むリン酸緩衝液(PB)に20℃で溶解し、次いでマレイミド-PEG6-スクシンイミドリンカー(本発明者らの以前の結果に従って、6つのPEG単位の長さを選択した)と直接反応させて、6-Mal-PEG6-Galcer 3aを得、活性化トラウトセツキシマブパートナーと直接インキュベートし、GalCer/セツキシマブ複合体C1に至った。
【0282】
【化32】
【0283】
(i)セツキシマブへの糖脂質のカップリング及び精製
a)カップリング条件
セツキシマブへのカップリングに関して、以下の条件を保持した。
【0284】
まず、抗体1に対してTRAUT分子100の比でTRAUT官能基を付加してセツキシマブを修飾した。これにより、前もって調べたEllman反応によって決定した、セツキシマブへの少なくとも4つのTRAUT官能基を付加することができた(データ未記載)。混合物を洗浄し、次いで1/1当量の6-Mal-PEG6-GalCer 3a及び活性化セツキシマブをインキュベートして連結を開始した。
【0285】
【表7】
【0286】
これらの実験で導かれた主な問題は、抗体とのカップリング反応後の媒体中の未反応糖脂質の排除を確実にすることである。様々な方法を試した:プロテインA、排除クロマトグラフィー、電気泳動、濾過。得られた画分を、VivaSpin15カラム(MWCO:50Kda)での濾過により3回洗浄したとき成功に導かれた。
【0287】
2つの異なる実験条件を使用して精製プロセスを検証した(Table 7(表7)を参照のこと)。
- 画分B:セツキシマブはTRAUT活性化によって修飾せず、セツキシマブに結合する化学的能力を持たない6-PEG3-NH2-GalCer 2aを添加した。この条件を、洗浄条件下で非結合糖脂質の排除を追跡するための対照として使用した。iNKT刺激時の6-PEG3-NH2-GalCer 2aの高い反応性を考えると、微量であっても残存している誘導体の存在は、有意なサイトカイン放出によって検出されるであろう;
- 画分A:糖脂質と抗体との共有結合及び標的化GalCer/セツキシマブ複合体C1を得るための6-Mal-PEG6-GalCer 3a及びTRAUT 活性化セツキシマブの使用。
【0288】
b)精製及びGalCer/セツキシマブ複合体によるiNKTの活性化
トランスフェクトCD1d Hela細胞及び非CD1d-Hela細胞の2つのシリーズで実験を行い、画分A及びBの3つの希釈試料(10μg/ml、1μg/ml及び0.1μg/ml)を評価した。Hela細胞の各シリーズでは、糖脂質単独の刺激活性を、IFN-γ分泌後の基準としてあらかじめ評価した。
【0289】
開始濃度=
洗浄プロセスが非効率的である場合、カップリング反応後希釈画分中に残存しうる遊離糖脂質(非結合)の最大理論濃度。
【0290】
観察濃度=
観察されたサイトカイン分泌のレベルを誘導するために、洗浄プロセス後の希釈画分中に残存されなければならない糖脂質の推定理論濃度(遊離糖脂質を含む反応対照に基づく)。
【0291】
実験は、洗浄プロセスが糖脂質の排除をもたらす(最大99.9%)ことを示す。
【0292】
対照実験として使用された画分Bによる結果:
- 図14A、左のパネルに示すように、精製後、結び付くことができないセツキシマブ+ 6-PEG3-NH2-GalCer 2aの混合物から得られた画分は、1/10希釈後、サイトカイン放出の減少につながる。高感受性CD1d-Hela細胞を使用するこの実験では、希釈画分試料中に残存している6-PEG3-NH2-GalCer 2aの濃度(観察濃度)は、混合物に添加された開始濃度(開始濃度)より少なくとも3log低いようである。0.1μg/mlの希釈物では、その活性はごくわずかになり、iNKT刺激の欠如に至る。
- 非CD1d Hela細胞を使用した同じ実験(図14B、左のパネル)は、10μg/mlでもサイトカイン放出の欠如に至る。これは、生理学的モデルでは、洗浄プロセスによって非結合6-PEG3-NH2-GalCer 2aが画分Bから完全に除去されたとみなされうるか、又は少なくとも微量(非トランスフェクトHeLa細胞における<10-10M検出限界)とみなされうることを示すものである。
【0293】
画分A=連結されたセツキシマブ-GalCer複合体C1による結果:
示されているように、6-Mal-PEG6-GalCer 3aの存在下で抗体のTRAUT活性化後に形成された複合体GalCer/セツキシマブC1は、全ての希釈画分(10μg/ml、1μg/ml及び0.1μg/ml)からiNKT細胞によるIFN-γサイトカイン放出を誘導する。これらの驚くべき結果は、高感受性トランスフェクトCD1d細胞からも、また非CD1d細胞からも観察された(それぞれ、図15C、左のパネル及び15D、左のパネル)。
興味深い考えの主なものは、画分の希釈にもかかわらず、どちらの場合もiNKT活性化が維持されるという点である。これらの結果は、セツキシマブ-GalCer複合体C1の存在下で過剰発現されうるCD1dプールの活性化を示しているように思われる。
【0294】
開始濃度は実験で推定された最大理論濃度であり、洗浄に失敗し、糖脂質残基の排除がない場合に算出されることを留意するべきである。しかし、糖脂質過剰(非結合)のほぼ99.9%が最初の洗浄工程後に排除されることが、以前の経験からわかっていた。従って、3回の洗浄工程後に基準として推定された理論濃度は、結果として大部分が過大評価されており、カップリングされたセツキシマブ-GalCer複合体の「真の」効果は、それによって実際ははるかに効率が良い。
【0295】
非CD1d腫瘍細胞から実施されたこの後者の実験は、カップリングされたセツキシマブ-GalCer複合体C1が、上位濃度の遊離形態で使用される6-Mal-PEG3-GalCer 3aによって誘導される分泌に相当する最大放出より上のレベルでサイトカイン分泌を誘導できることを示している。
【0296】
これらの観察は、非CD1d HEK293細胞及びPBMC細胞(末梢血単核細胞)から裏付けられた(データ未掲載)。
【0297】
c)GalCer/セツキシマブC1の質量分析
6-Mal-PEG6-GalCer 3aアナログの少なくとも1つの又は2つの分子がセツキシマブに連結されたことを示すために、GalCer/セツキシマブC1を質量分析(ESI)によって分析した(以下のTable 8(表8)を参照のこと)。
【0298】
【表8】
【0299】
完全抗体スペクトルは、153191 Da及び155884 Daでいくつかの主なピークを示し、LCの3.85及び3.89分におけるピークのデコンボリューションスペクトルは、GalCer断片に連結したセツキシマブの重鎖に相当する(データ未掲載)。分析に使用した手法は抗体にとって破壊的であり(重鎖での結合に関してのみ明確なデータを、分解される軽鎖では不明確なデータをもたらす)、抗体全体における連結GalCer残基の正確な最大数を完全に確立することはまだできない。
【0300】
(ii)セツキシマブへの糖脂質のカップリング及び精製(TRAUTの非存在下のカップリングと比較した)
a)カップリング条件
セツキシマブへのカップリングに関して、以下の条件を保持した。
【0301】
まず、抗体1に対してTRAUT分子100の比でTRAUT官能基を付加してセツキシマブを修飾した。これにより、前もって調べたEllman反応によって決定した、セツキシマブへの少なくとも4つのTRAUT官能基を付加することができた(データ未記載)。混合物を洗浄し、次いで1/2当量の6-Mal-PEG6-GalCer 3a及び活性化セツキシマブをインキュベートして連結を開始した。
【0302】
【表9】
【0303】
これらの実験で導かれた主な問題は、抗体とのカップリング反応後の媒体中の未反応糖脂質の排除を確実にすることである。様々な方法を試した:プロテインA、排除クロマトグラフィー、電気泳動、濾過。得られた画分を、VivaSpin15カラム(MWCO:50Kda)での濾過により3回洗浄し、その後、サイズ排除クロマトグラフィー用のSuperdex 200 10/300 GLカラムで精製したとき成功に導かれた。
【0304】
2つの異なる実験条件を使用して精製プロセスを検証した(Table9(表9)を参照のこと)。
- 画分B:セツキシマブは、TRAUT活性化及び6-Mal-PEG6-GalCer 3aによって修飾しない。この条件を、洗浄条件下で非結合糖脂質の排除を追跡するための対照として使用した。iNKT刺激時の6-Mal-PEG6-GalCer 3aの高い反応性を考えると、微量であっても残存している誘導体の存在は、有意なサイトカイン放出によって検出されるであろう;
- 画分A:糖脂質と抗体との共有結合及び標的化GalCer/セツキシマブ複合体C1を得るための6-Mal-PEG6-GalCer 3a及びTRAUT活性化セツキシマブの使用。
【0305】
b) GalCer/セツキシマブC1の質量分析
6-Mal-PEG6-GalCer 3aアナログの2つの分子がセツキシマブに連結されたことを示すために、GalCer/セツキシマブC1を質量分析(ESI)によって分析した(以下のTable 10(表10)を参照のこと)。
【0306】
【表10】
【0307】
Full 抗体スペクトルは、単独では152 583Da及びカップリングした場合156 056Daでいくつかの主なピークを示した。この結果は、平均して6-Mal-PEG6-GalCer 3a(MW:1 562Da)の2つの分子が抗体に連結されたことを示すものである。重鎖及び軽鎖のより詳細な試験は、カップリングが主に重鎖で起こることを示している。
【0308】
c) GalCer/セツキシマブ複合体によるiNKTの活性化
非CD1d-Hela細胞で実験を行い、画分A及びBの3つの希釈試料(10μg/ml、1μg/ml及び0.1μg/ml)を評価した。質量分析は、1抗体あたり6-Mal-PEG6-GalCer 3aの2つの分子が連結されたことを示し、そのため画分Aの10μg/mlを使用した場合、これは6-Mal-PEG6-GalCer 3aの10-7M当量の濃度にほぼ相当する。Hela細胞の各シリーズでは、糖脂質単独の刺激活性を、IFN-γ分泌後の基準としてあらかじめ評価した。
【0309】
対照実験として使用した画分Bによる結果:
図16に示すように、精製後、セツキシマブ+ 6-Mal-PEG6-GalCer 3aの混合物から得られた、質量分析によって連結が観察されなかった画分では、サイトカイン分泌が観察されなかった。これは、洗浄プロセスが非結合糖脂質の排除をもたらしたことを示している。
【0310】
画分A=連結したセツキシマブ-GalCer複合体C1による結果:
示されているように、6-Mal-PEG6-GalCer 3aの存在下で抗体のTRAUT活性化後に形成された複合体GalCer/セツキシマブC1は、全ての希釈画分(10μg/ml、1μg/ml及び0.1μg/ml)からiNKT細胞によるIFN-γサイトカイン放出を誘導する。これらの驚くべき結果は、非CD1d細胞で観察された。
【0311】
これらの結果は、セツキシマブ-GalCer複合体C1がベクター化することができ、6-Mal-PEG6-GalCer 3aを腫瘍細胞に放出し、HeLa細胞で観察された弱いCD1d発現でのその提示を可能にし、iNKT細胞の活性化をもたらすことを示しているように思われる。
【0312】
(iv) GalCer/セツキシマブ複合体中のセツキシマブは、依然としてEGFRを認識することができる
次いで、6-Mal-PEG6-Galcer 3aとのカップリング後にセツキシマブが変化せず、依然としてEGFRを認識できるかどうかを評価した。図13に示すように、EGFRを発現する細胞に結合しているセツキシマブは、未変性セツキシマブ(ボトルから直接の)とカップリング反応についてテストした3つの条件との間に違いがなかったことから、カップリング後に変化しなかった。同様にEGFRを発現する3つの異なる細胞株で結果を確かめた(未掲載)。
【0313】
(v) GalCer/セツキシマブ複合体中のセツキシマブ及び内在化
EGFR認識後、セツキシマブは内在化され、臨床状況ではセツキシマブはEGFRの表面発現を減少させ、無秩序に増殖する腫瘍細胞の能力を低減する。GalCer/セツキシマブ複合体C1の内在化をライブ顕微鏡によって21時間追跡した。複合体C1が酸性エンドソーム/リソソームに内在化されると赤く光るのみのマーカーで複合体C1を標識した。HeLa細胞のほとんどが、共インキュベーションの11時間から内在化された複合体C1を有することが示された(データ未掲載)。内在化及びリソソームでの支持後、C1複合体は酸性条件下で6-Mal-PEG6-GalCer 3aを放出し、CD1d分子への負荷及び腫瘍細胞の表面への提示を可能にし、上のパートiii)で観察されたiNKT細胞活性化をもたらすという仮説を立てた。
【0314】
(vi) GalCer/セツキシマブ複合体のADCC挙動
セツキシマブ別の重要な機能は、ADCCを誘導するその能力である。GalCer/セツキシマブ複合体C1からその挙動の保存をチェックすることが重要であった。ADCCアッセイを、Hela細胞株及びHCT116細胞株で行った(それぞれ、図14A及び図B)。その理由は、本発明者らが予備実験でテストしたいくつかの細胞株のうち後者は最も応答性の細胞株であることが判明し、HCT116がKras変異を提示するためである。標的細胞(HCT116及びHeLa細胞)をセツキシマブ単独(左のパネル、青色)又はセツキシマブ-GalCer複合体C1(右のパネル、赤)と1時間共インキュベートした。次いで、NK92-CD16+細胞(常法によりADCCアッセイに使用される細胞株)の添加によりADCCを開始し、その後24時間インキュベートした。標的細胞の死亡率をフローサイトメトリーによって分析した。
【0315】
セツキシマブのADCC効力は両方のモデルの全ての条件で保存され、糖脂質断片の結合がEGFR認識に関して抗体の挙動を変化させないことを示す。
【0316】
(vii) 結論
共有結合を有するGalCer/セツキシマブ複合体C1は、CD1d-腫瘍細胞を抗原提示パートナーとして使用し、hiNKT細胞を活性化してサイトカインを放出することができる。重要な情報は、以前にはCD1d陰性と考えられた癌細胞が、以前は未検出の極めて低いCD1dプールを通じて自己提示細胞として作用することができ、この挙動がセツキシマブ-GalCer複合体C1の並外れた効力に関連していることである。更に、比較的短いPEGスペーサーによる抗体との連結にもかかわらず、GalCer誘導体は依然として活性である。
【0317】
本発明者らのデータに考慮されうる1つの仮説は、セツキシマブが、セツキシマブ-GalCer複合体C1のベクター化、及びおそらくは内在化プロセスを通じてEGFR-腫瘍細胞への糖脂質の集中を達成するということである。複合体からの糖脂質のその後の放出が、次いでおそらく酸性細胞内条件又は抗体分解下で起こり得て、結果的に腫瘍細胞膜の表面で発現されうるCD1dの未知の内部プールへの負荷を可能にする。このCD1dターンオーバーがiNKT細胞を動員し、サイトカイン刺激を誘導し、腫瘍環境の近くの免疫応答を回復させることができるようである。
【0318】
その意味において、セツキシマブ-GalCer複合体C1は、セツキシマブのADCC特性又は少なくともその細胞傷害性作用、及びiNKTからの強い免疫刺激活性を兼ねそなえた細胞傷害性作用の増強をもたらす、免疫療法の強力な薬物候補とみなすことができる。
【0319】
結論
本出願は、親KRN7000のものよりほぼ1000倍高いhiNKT刺激能を発現する新たな強力な免疫賦活剤6-PEG3-NH2-GalCer 2aを開示する。
【0320】
より興味深いことに、対応するGalCer/セツキシマブ複合体C1(図15を参照のこと)は、iNKT細胞を活性化してサイトカイン放出を誘導する能力を保持する。
【0321】
以前にはCD1d陰性と考えられた一部の腫瘍細胞(HeLa及びHEK293)が、ほぼ検出不可能であるにもかかわらず、iNKT細胞を有効に活性化するのに十分なレベルでCD1dを恒常的に発現することから、これらのデータは、CD1d陰性細胞の概念を再定義することにつながるであろう。実験の生理学的レベルではそれ自体低レベルのiNKTは、6-PEG3-NH2-GalCer糖脂質2aを負荷するとサイトカイン放出を誘導するが、GalCer/セツキシマブ複合体C1を負荷した場合も同様にサイトカイン放出を誘導する。これは、抗体が、iNKT刺激を開始するために腫瘍環境内でGalCer免疫賦活剤を運ぶ優れたビヒクルとして既にみなされうることを示唆している。このプロセスは、古典的CD1d提示細胞(単球、マクロファージ又は樹状細胞等)の必要性を回避することができ、がん細胞は糖脂質アゴニストが抗体に連結された場合でさえ自己提示することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15
図16