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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】早期のノズル遮断を回避する充填機ヘッド
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20241113BHJP
   B60K 15/04 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
F01N3/08 B
B60K15/04 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022543556
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021052082
(87)【国際公開番号】W WO2021152075
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】20154915.1
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515269659
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・アドヴァンスド・イノベーション・アンド・リサーチ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶太
(72)【発明者】
【氏名】都竹 泰成
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/149750(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0036533(US,A1)
【文献】特開2019-162907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B60K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵システム(1)のための充填機ヘッド(13)であって、重力方向(G)に関して所定の角度(α)に従って傾斜して(この方向を充填方向(F)という)装着される本体(15)を備え、前記本体(15)は、分離デバイス(21)が受容されるキャビティ(20)を形成するようにカバー部(19)によって閉鎖される主要部分(17)を含み、前記充填機ヘッド(13)は、前記充填方向(F)の周囲に延びる前記分離デバイス(21)の円筒壁(23)内に、前記充填機ヘッド(13)の過剰充填を防ぐために自動停止センサ(39a、39b)を備えた流体の分配ノズルを受容するように構成され、前記充填機ヘッド(13)は、流体タンク(3)の充填ライン(9)および排出ライン(11)に接続されるように構成され、前記分離デバイス(21)は、前記排出ライン(11)から入ってくる流れ(V)と前記充填ライン(9)に向かう流れ(F)との分割を改善するように配置される、充填機ヘッド(13)において、
前記充填機ヘッド(13)は、前記排出ライン(11)から入ってくる流れ(V)の速度を低減するように前記本体(15)の後方部分(B)内に前記主要部分(17)と一体のバッファボリューム(12)をさらに含み、
前記円筒壁(23)は、前記円筒壁(23)を貫通し、且つ前記本体(15)の前記後方部分(B)内の前記バッファボリューム(12)の開口部に面する少なくとも1つの第1の穴(31)を含み、前記円筒壁(23)は、前記充填方向(F)に関して前記後方部分(B)とは反対の方向に位置する前記本体(15)の前方部分(P)に沿って、前記ノズルから出てくる任意の流体をガイドすることにより、
- 前記ノズルから出て前記本体(15)の前記前方部分(P)内の前記充填ライン(9)に向かう前記流体の層流(F)、および、
- 前記充填機ヘッド(13)の外側へ、周囲空気の中へ放出されるために前記排出ライン(11)から入ってきて前記本体(15)の前記後方部分(B)において前記円筒壁(23)の前記第1の穴(31)を通る流体の直接排出(V)
を確実にし、これにより、補充段階中の任意の流体分配遮断を制限できるようにする、充填機ヘッド(13)。
【請求項2】
前記重力方向(G)を考慮した場合の下半分の円筒壁(23)は、前記円筒壁(23)内に受容された前記ノズルから前記充填ライン(9)に向かう前記流体の層流(F)を確実にするように、前記本体(15)の前記前方部分(P)に面する外表面上において、前記充填方向(F)を考慮した場合の前記ノズルの下流に貫通凹部を有していない、請求項1に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項3】
前記分離デバイス(21)は、少なくとも1つのフランジ(25)をさらに含み、前記少なくとも1つのフランジ(25)は、前記ノズルから出る流体が前記排出ライン(11)から入ってくる流体と混合されることを制限して、前記センサ(39a、39b)の働きを改善するように、前記円筒壁(23)の外表面から横方向に突出するとともに、前記充填方向(F)を考慮した場合の前記バッファボリューム(12)の前記開口部に面する第1の穴(31)の上流において前記キャビティ(20)内に装着される、請求項1または2に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項4】
前記分離デバイス(21)は、フランジ(25)をさらに含み、前記フランジ(25)は、前記円筒壁(23)の外表面から横方向に突出するとともに、前記充填方向(F)を考慮した場合の前記バッファボリューム(12)の前記開口部に面する第1の穴(31)の上流において前記キャビティ(20)内に装着され、および前記充填機ヘッド(13)内に存在する流体のすべての上表面より実質的に上にシールドを形成するように前記本体(15)の後方部分(B)と前方部分(P)との間に装着される、請求項1または2に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項5】
前記分離デバイス(21)は、1つの他のフランジ(29)をさらに含み、前記他のフランジ(29)は、前記円筒壁(23)の外表面から横方向に突出するとともに、前記充填方向(F)を考慮した場合の前記バッファボリューム(12)の前記開口部に面する第1の穴(31)の下流において前記キャビティ(20)内に装着され、および前記本体15の後方部分(B)と前方部分(P)との間に装着される、請求項3または4に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項6】
前記バッファボリューム(12)と前記円筒壁(23)との間の流れ(V)の任意のずれを防ぐために、他のフランジ(29)は、前記バッファボリューム(12)の開口部に面する少なくとも1つの第2の穴(30a)を含む、請求項5に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項7】
前記分離デバイス(21)は、前記本体(15)の前記前方部分(P)と前記後方部分(B)との間を良好に分割できるようにするために、前記バッファボリューム(12)の前記開口部に面する第1の穴(31)の上流における前記フランジ(25)と、前記バッファボリューム(12)の開口部に面する第1の穴(31)の下流における前記他のフランジ(29)との間にそれぞれが装着される、横断プレート(33a、33b)をさらに含む、請求項5または6に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項8】
前記カバー部(19)は、前記分離デバイス(21)まで前記分配ノズルをガイドするために突出ガイド要素(18)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項9】
前記突出ガイド要素(18)は、ノズルが前記分離デバイス(21)内に受容されていないときに、キャップによって密封閉鎖される、請求項8に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項10】
前記分離デバイス(21)は、取り換え可能となるように取り外し可能である、請求項1から9のいずれか一項に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項11】
前記カバー部(19)は、溶接によって前記主要部分(17)に密封固定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項12】
前記カバー部(19)は、シールリングを前記カバー部(19)と前記主要部分(17)との間にスナップ嵌めすることによって、前記主要部分(17)に密封固定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の充填機ヘッド(13)。
【請求項13】
流体タンク(3)を備える貯蔵システム(1)であって、
前記流体タンク(3)は、充填機ヘッド(13)から前記流体タンク(3)まで流体の重力流をガイドするように構成された充填ライン(9)と、前記流体タンク(3)内の圧力変動を補償するように構成された排出ライン(11)とに接続され、
前記貯蔵システム(1)は、請求項1から12のいずれか一項に記載の充填機ヘッド(13)をさらに含むことを特徴とする、貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のタンクなどの流体タンクを補充する間、自動ノズルの早期遮断を回避する、すなわち、タンクが補充段階中にいっぱいになるまで流れを止めることのない、充填機ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
車両および貨物自動車の排気ガスに関する法律では、とりわけ、大気中への窒素酸化物NOの放出の減少を規定している。この目的を達成するための1つの既知の方法は、「SCR」(用語「選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction)」の短縮)プロセスを使用することであり、アンモニアなどの還元剤を排気ラインに注入することによって、窒素酸化物の還元を可能にする。一般に、SCRシステムは、尿素溶液などの水性添加物の貯蔵用のタンクと、水性添加物をフィードラインに運搬するためのポンプと、所望の量の水性添加物を計量し、これを排気ラインに注入するためのデバイスとを含む。よって、水性添加物は、正確に計量され、排気ガス流中に注入され、排気ガス流中で、窒素酸化物(NO)を窒素(N)と水(HO)に変換する前に加水分解される。
【0003】
AdBlue(登録商標)と呼ばれることもある尿素溶液の分配は、貨物自動車に関して長年にわたり知られている。タンク容積は貨物自動車の航続距離において重要なので、40L・min-1の充填速度と大きな入口直径のタンクを有する、燃料供給とは別の分配システムが開発されてきた。
【0004】
乗用車に関して、初期の市場需要は、ねじ式のボトルでの手動充填に適合した充填機ヘッドを設計することであった。充填は、重力により行われ、通常、およそ3L・min-1と遅かった。しかしながら、汚染除去レベルが厳密になったことで尿素溶液の消費が増加したため、尿素溶液タンクを定期的に充填することが、さらに一般的になっている。しかしながら、消費者は、貨物自動車用のディスペンサーが既に供給されており、よって、想定されたのとは異なり固有の供給速度を課していることに気付いている。
【0005】
その結果、自動車製造業者は現在、重荷重用途のために当初設計された自動充填テクノロジーと、また手動充填と適合した、SCRシステムを設計するよう要求している。既知の充填機ヘッドは、文書WO2019/149750および米国特許出願公開第2017/036533号に開示されている。
【0006】
さらに、現在のところ、3種類の自動充填テクノロジーが、ノズルに含まれるセンサ(ZVAノズルセンサ、Hornノズルセンサ、またはPIUSIノズルセンサ)に応じて主に使用されている。各センサは、ノズルの先端部に装着されておらず(ZVAノズル)、先端部から最大16mm、ノズルの上流方向において(HornおよびPIUSIノズルセンサ)装着される場合もある。
【0007】
その結果、ノズルに使用されるセンサの種類に関わらず、最大40L・min-1の高い充填速度の、既存のねじ式のボトルの小さな直径など、多くの矛盾する仕様が満たされねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2019/149750
【文献】米国特許出願公開第2017/036533号
【発明の概要】
【0009】
本発明は、タンクが有効にいっぱいになるまで補充段階中に流体分配遮断/故障なしで、これらの矛盾する仕様を満たす充填機ヘッドを提供することを目的とする。
【0010】
したがって、本発明は、貯蔵システムのための充填機ヘッドであって、充填機ヘッドは、重力方向に関して所定の角度に従って傾斜して(この方向を充填方向という)装着される本体を備え、本体は、分離デバイスが受容されるキャビティを形成するようにカバー部によって閉鎖される主要部分を含み、充填機ヘッドは、充填方向の周囲に延びる分離デバイスの円筒壁内に、流体の分配ノズルを受容するように構成され、充填機ヘッドは、流体タンクの充填ラインおよび排出ラインに接続されるように構成され、分離デバイスは、排出ラインから入ってくる流れと充填ラインに向かう流れとの分割を改善するように配置される、充填機ヘッドにおいて、
充填機ヘッドは、排出ラインから入ってくる流れの速度を低減するように本体の後方部分内に主要部分と一体のバッファボリュームをさらに含み、
円筒壁は、本体の後方部分内のバッファボリュームの開口部に面する少なくとも1つの凹部を含み、円筒壁は、充填方向に関して後方部分とは反対の方向に位置する、本体の前方部分に沿って、ノズルから出てくる任意の流体をガイドすることにより、
- ノズルから出て本体の前方部分において充填ラインに向かう流体の層流、および、
- 排出ラインから入ってきて本体の後方部分において円筒壁を通る流体の直接排出
を確実にし、これにより、補充段階中の任意の流体分配遮断/故障を制限できるようにする、充填機ヘッドに関する。
【0011】
よって、本発明によると、バッファボリュームは、タンクからできるだけ離すことができる。有利には、本発明は、タンクの容積および/または充填速度にかかわらず、排出ラインから入ってくる流れの速度をより良く低減させ、かつバッファボリュームの壁に沿って気泡をより良く破裂させることを可能にする。さらに、分離デバイスを活用して、流れが、本体内のキャビティの前方部分内のノズルから出る流体の流れと、本体内のキャビティの後方部分内の排出ラインから入ってくる流体の流れとが、キャビティ内でより良く分割されて、タンクが有効にいっぱいになるまで分配ノズルの停止機能の起動が回避され、有利である。
【0012】
本発明はまた、単独の、または組み合わせられた、以下のオプションの特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0013】
重力方向を考慮した場合の下半分の円筒壁は、円筒壁内に受容されたノズルから充填ラインに向かう流体の層流を確実にするように、本体の前方部分に面する外表面上において、充填方向を考慮した場合のノズルの下流に貫通凹部を有していない。言い換えれば、重力により、また、本体の重力方向に関する所定の角度により、ノズルから出る流体は、何らかの隆起または凹部など一切のでこぼこに遭遇せずに、円筒壁の内径に沿って充填ラインまで流れ、充填ラインへの流体のより良いガイドを可能にする。
【0014】
分離デバイスは、少なくとも1つのフランジをさらに含み得、少なくとも1つのフランジは、ノズルから出る流体が排出ラインから入ってくる流体と混合されることを制限して、センサの働きを改善するように、円筒壁の外側表面から横方向に突出するとともに、充填方向を考慮した場合のバッファボリュームの開口部に面する凹部の上流においてキャビティ内に装着される。よって、フランジは、フランジとカバー部の上方部分との間にデッドボリュームを形成して、追加のボリュームを形成し、フランジとの接触により遅くなった、ノズルから出る流体を場合に応じて貯蔵し、この流れを、排出ラインから入ってくる流れから偏向させる。したがって、ノズルの働きは、タンクが有効にいっぱいになるまで補充段階中に流体分配遮断/故障なしで、センサが充填機ヘッド内の流体圧力をより速く感知することができるので、特に改善される。
【0015】
カバー部は、円筒壁のより良い機械的保護を可能にするように分離デバイスまで分配ノズルをガイドするために突出ガイド要素を含み得る。好ましくは、突出ガイド要素は、ノズルが分離デバイス内に受容されていないときに、キャップによって密封閉鎖される。
【0016】
分離デバイスは、好ましくは、取り換え可能となるように取り外し可能である。よって、分離デバイスは、別の種類もしくは寸法のノズルおよび/またはタンクに適合するように異なる外形に取り換えられ得る。
【0017】
円筒壁は、好ましくは少なくとも1つの穴をさらに含み、少なくとも1つの穴は、排出ラインから入ってくる空気の流れが、円筒壁を通過して、充填機ヘッドの外側に放出されることを可能にする。これによって、充填機ヘッドの外側にタンクの空気を排出して、ノズルから出る流体が充填ラインを介してタンクへとより自由に流れることを可能にすることにより、より信頼性の高い補充を可能にする。
【0018】
第1の実施例によると、カバー部は、溶接によって主要部分に密封固定され得る。よって、固有の溶接が製造プロセス中に使用されて、サイクルタイムおよび関連するコストの改善を可能にする。
【0019】
第2の実施例によると、カバー部は、シールリングをカバー部と主要部分との間にスナップ嵌めすることによって、主要部分に密封固定され得る。よって、製造プロセスにおいて、溶接ステップの使用を回避し、より容易なプロセスを可能にすることができる。
【0020】
本発明は、充填機ヘッドから流体タンクまで流体の重力流をガイドするように構成された充填ラインと、流体タンク内の圧力変動を補償するように構成された排出ラインとに接続された流体タンクを含む、貯蔵システムにおいて、貯蔵システムが、先行する実施形態のいずれか1つによる充填機ヘッドをさらに含むことを特徴とする、貯蔵システムに関する。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な説明として提供された、添付図面を参照して行われる以下の詳細な説明を読めば、さらに明らかに見えてくるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明が適用され得る車両の上面概略図である。
図2】本発明による充填機ヘッドの斜視図である。
図3図2の平面III-IIIに沿った断面図である。
図4】本発明による分離デバイスの斜視図である。
図5】本発明による分離デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
さまざまな図面において、同じかまたは同様の要素は、同じ参照符号を有し、オプションとして添え字が加えられている。したがって、それらの構造およびそれらの機能の説明は、体系的に再び述べられてはいない。
【0024】
以下のすべてにおいて、向きは、自動車の通常の向きである。具体的には、図の方向に関して上および下、前方および後方に置かれる、用語「上方」、「下方」、「左」、「右」である。
【0025】
このように使用される用語は、適切な状況下では入れ替え可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書で説明または例示された以外の向きで動作することが可能であることが理解される。
【0026】
特許請求の範囲で使用される用語「含む」は、その後に列挙される手段に限定されるように解釈されるべきではなく、他の要素またはステップを排除しないことに留意されたい。よって、言及されるような、述べられた特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を特定するものとして解釈されるはずであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。よって、「手段AおよびBを含むデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに制限すべきではない。これは、本発明に関し、デバイスの関連構成要素がAおよびBのみであることを意味する。
【0027】
用語「タンク」は、汎用的なさまざまな環境および使用条件下で流体を貯蔵することができる、不透過性のタンクを意味すると理解される。例としては、燃料(ガソリン、ディーゼル燃料、水素など)を自動車に提供するための燃料タンクである。用語「タンク」は、尿素タンクまたは水タンクにも当てはまり得る。
【0028】
「SCRシステム」という表現は、例えば液体添加物として尿素水溶液を使用して、内燃機関の、好ましくは車両の排気ガスからのNOを触媒還元するためのシステムを意味すると理解される。本発明は、有利には、ディーゼルエンジン、特に乗用車または重量物運搬車のディーゼルエンジンに適用される。
【0029】
さらに、尿素分配ノズルが、燃料充填機ヘッドに導入され得る。よって、磁場によって作動される分配ノズルのためのバルブが開発されている。したがって、尿素タンクに適用する場合、充填機ヘッドは、バルブを作動し、尿素の送達を可能にするための、磁気要素を有していなければならない。
【0030】
本明細書中で提供される説明では、多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実行され得ることが理解される。他の場合には、この説明の理解を曖昧にしないように、周知の方法、構造、および技術は、詳細には示されていない。
【0031】
図1に示すように、本発明は、汚染除去システム45に接続されたパワートレイン43を備えた車両41に関する。さらに正確には、汚染除去システム45は、排気デバイス47と、例えば尿素溶液としての、排気デバイス47内の添加物注入デバイス49とを含む。
【0032】
注入デバイス49は、水性添加物を貯蔵するためのタンク3を含む貯蔵システム1を含む。注入デバイス49は、容量効果型、超音波型、または機械型のものであってよい、レベルセンサ、温度センサおよび/または品質センサなど、水性添加物中の複数の浸漬センサを含んでも含まなくてもよい。
【0033】
注入デバイス49はまた、注入要素7と関連付けられたポンプ5を含み、これらは、車両41の中央コンピュータに接続された処理ユニットによって管理される。処理ユニットは、コード化された命令が記憶されたメモリを収容する。コード化された命令が処理ユニットによって実行されると、例えばSCRプロセスのステップが実行される。
【0034】
タンク3は、尿素溶液またはアンモニア溶液などの水性添加物を定期的に補充されなければならない。よって、貯蔵システム1は、充填ライン9、排出ライン11(戻しラインとも呼ぶ)、および充填機ヘッド13を含む。充填ライン9は、流体の重力流を充填機ヘッド13からタンク3にガイドするように構成される。排出ライン11は、タンク3内で充填ライン9から来る流体の到来により加圧された、タンク3に収容された流体(主として、空気と、場合に応じてタンク3に収容された液体の蒸気を含む、ガス)を、充填機ヘッド13から排出することによって、補充中にタンク3内の圧力変動を補償するように構成される。
【0035】
最後に、充填機ヘッド13は、流体分配システムのノズル(不図示)を受容し、好ましくは密封式に、充填ライン9および排出ライン11に接続されるように構成される。よって、充填機ヘッド13は、補充期間中に、ノズルから出る流体が充填ライン9を介してタンク3内に流れることを可能にし、同時に、タンク3内の液体より上に存在する流体が排出ライン11を介してタンク3から排出され、車両41の周辺の周囲空気(外気)中へと逃げることを可能にする。
【0036】
本発明は、タンクが有効にいっぱいになるまで補充段階中に流体分配遮断/故障なしで、ノズルに使用されるセンサの種類に関わらず、最大40L・min-1の高い充填速度の、既存のねじ式のボトルの小さな直径などの、前述した矛盾する仕様を満たす、充填機ヘッドを提供することを目的とする。
【0037】
したがって、本発明による充填機ヘッド13は、以下では充填方向F(図3を参照)と呼ぶ、重力方向Gに関する所定の角度α(アルファ)に従って傾斜して装着される本体15を含む。本発明によると、所定の角度α(アルファ)は、重力方向Gを考慮した場合に0°~60°で構成され得る。この角度範囲により、充填機ヘッド13内への分配ノズル(不図示)の容易な導入と共に重力を用いた良好な流れを可能にする。
【0038】
充填機ヘッド13は、キャビティ20を形成するようにカバー部19によって閉鎖される主要部分17を含む。第1の実施例によると、カバー部19は、溶接により主要部分17に密封固定され得る。よって、固有の溶接が製造プロセス中に使用され、サイクルタイムおよび関連するコストの改善を可能にする。
【0039】
第2の実施例によると、カバー部19は、シールリング(不図示)をカバー部19と主要部分17との間にスナップ嵌めすることによって、主要部分17に密封固定され得る。よって、製造プロセスは、溶接ステップの使用を回避し、より容易なプロセスを可能にすることができる。
【0040】
カバー部19は、円筒壁23のより良い機械的保護を可能にするために、分配ノズルを(以下で説明するような)分離デバイス21までガイドするための、突出ガイド要素18を含み得る。好ましくは、突出ガイド要素18は、ノズルが分離デバイス21内に受容されていないときに、キャップ(不図示)をねじ込むことによって密封閉鎖される。
【0041】
図3に示すように、カバー部19は、タンク3が尿素の送達を可能にする尿素型のものである場合にノズルのバルブを磁場によって作動するように、突出ガイド要素18の周方向に磁石16を含み得る。
【0042】
主要部分17は、複数のリブ14を含んで、各リブ14の上端部に接して分離デバイス21を受容することができる。よって、分離デバイス21は、取り換え可能となるようにキャビティ20から容易に取り外し可能とすることができる。よって、分離デバイス21は、別の種類または寸法のノズルおよび/またはタンク3に適合するように異なる外形と取り換えられ得る。
【0043】
充填機ヘッド13は、排出ライン11から入ってくる流れVの速度を低減するように本体15の後方部分に主要部分17と一体のバッファボリューム12をさらに含み得る。この構成により、充填機ヘッドからの噴出を回避する目的に関してさらなる改善を可能にする。センサ種類に応じて、バッファボリューム12は、80mL~140mL、好ましくは90mL~130mL、さらに好ましくは94mL~129mLで構成される。さらに厳密には、ノズルのセンサが充填方向Fを考慮した場合に上流になるほど、バッファボリューム12が大きくなる。
【0044】
本発明によると、好ましくは本体15のキャビティ20内に吊られた、分離デバイス21は、充填方向Fの周囲に延びる円筒壁23内に分配ノズルを受容するように構成される。分離デバイス21は、排出ライン11から入ってくる流れVと、充填ライン9に向かう流れFとの分割を改善するように配置される。よって、図3に示すように、ノズルの先端部(ZVAノズルセンサの場合の平面I)に装着されたセンサ39aは、先端部から最大で16mmのところまで導入され得る、充填方向Fを考慮した場合のノズルの上流方向(HornおよびPIUSIノズルセンサの場合の平面II)に装着されたセンサ39bよりも、充填機ヘッド13内で低い。
【0045】
本発明の第1の態様によると、分離デバイス21は、少なくとも1つのフランジ25をさらに含み、少なくとも1つのフランジ25は、円筒壁23の外側表面から横方向に突出しており、円筒壁23内に受容され、充填方向Fを考慮した場合のノズルのセンサ39aまたは39bの上流においてキャビティ20に装着される。フランジ25のこの構成により、充填機ヘッド13内に存在するノズルから出る流体が、センサ39aまたは39bの動作に影響を与えることなく、充填機ヘッド13から噴き戻される可能性が限られることが確実となる。
【0046】
本発明の第1の態様によると、フランジ25は、カバー部19の上部に到達する前に場合に応じて通過する流体を受容するように、フランジ25とカバー部19の上方部分との間のキャビティ20内にデッドボリュームを形成する。言い換えれば、デッドボリュームは、ノズルの遮断前および遮断中に充填機ヘッド13からの噴出を回避するために、フランジ25との接触により遅くなった流体を、場合に応じて貯蔵するように追加のボリュームを形成する。したがって、噴出することなく、センサが充填機ヘッド13内の流体圧力をより速く感知できるので、ノズルの遮断が、特に改善される。
【0047】
分離デバイス21のフランジ25は、本体15の後方部分Bと、充填方向Fを考慮した場合に後方部分Bとは反対の方向に位置する、本体15の前方部分Pとの間に装着され得る。この構成は、充填機ヘッド13内に存在する流体のすべての上表面より実質的に上にシールドを形成することを可能にする。言い換えれば、これは、流体がフランジ25より上のデッドボリュームに達することの難しさを高める。
【0048】
本発明の第2の態様では、排出ライン11は、本体15の後方部分B内で充填機ヘッド13と接続される。さらに正確には、円筒壁23は、本体15の後方部分B内のバッファボリューム12の開口部に面する少なくとも1つの凹部31を含み、円筒壁23は、本体15の前方部分Pに沿って、ノズルから出る任意の流体をガイドして、ノズルから本体15の前方部分Pにおいて充填ライン9に向かって出ていく流体の層流Fと、排出ライン11から入ってきて本体の後方部分Bにおいて円筒壁23を通る流体の直接排出Vとを確実にする。よって、この構成により、補充段階中の流体分配遮断/故障を制限することが可能となる。
【0049】
本発明の第2の態様によると、バッファボリューム12は、タンク3からできるだけ離すことができる。有利には、タンク3の容積および/または再充填速度に関わらず、排出ライン11から入ってくる流れVの速度をより良く低減させ、かつバッファボリューム12の壁に沿って気泡をより良く破裂させることを可能にする。さらに、分離デバイス21を活用して、流れF、Vが、本体15内のキャビティ20の前方部分P内のノズルから出る流体の流れFと、本体15内のキャビティ20の後方部分B内の排出ライン11から入ってくる流体の流れVとがキャビティ20内でより良く分割されて、タンクが有効にいっぱいになるまで分配ノズルの停止機能の起動が回避され、有利である。
【0050】
分離デバイス21は、好ましくは、フランジ25の側面に面してそれぞれ装着された上方フランジ27および下方フランジ29と、フランジ25および29と円筒壁23の外面との間にそれぞれ装着された横断プレート33a、33bとをさらに含む。横断プレート33a、33bにより本体15の前方部分Pと後方部分Bとがより良好に分割される。
【0051】
好ましくは、重力方向Gを考慮した場合の円筒壁23の下半分、すなわち、充填方向Fに平行で、横断プレート33a、33b間で充填方向Fに関して垂直な角度にわたって延び、本体15の前方部分Pに面する、円筒壁23の弓状表面は、フランジ25の下流に貫通凹部がない。さらに具体的には、円筒壁23の下半分は、充填方向Fを考慮した場合にノズルが円筒壁23内に完全に受容されたとき、すなわち、ノズルの先端部が円筒壁23の内面から突出する(平面I近くの)リブ24の上方部分に当接したとき、平面IおよびII内に凹部を有していない。この構成は、円筒壁23内に受容されたノズルから充填ライン9に向かう流体の層流Fを確実にする。言い換えれば、重力により、また本体15の重力方向Gに関する所定の角度により、ノズルから出る流体は、何らかの隆起または凹部などの一切のでこぼこに遭遇せずに、円筒壁23の内径に沿って充填ラインまで流れ、充填ラインへの流体のより良好なガイドを可能にする。
【0052】
分離デバイス21のフランジ25は、フランジ25より上、すなわちデッドボリューム内に存在する任意の流体が、本体15の前方部分Pと円筒壁23との間を重力により流れることができるように、本体15の前方部分Pと円筒壁23の外面との間に少なくとも1つの貫通穴26を含み得る。同様に、分離デバイス21の下方フランジ29も、貫通穴26から重力により流れる任意の流体が、本体15の前方部分Pと円筒壁23の下方端部との間をさらに流れることができるように、本体15の前方部分Pと円筒壁23の外面との間に少なくとも1つの貫通穴30bを含むことができる。言い換えれば、重力により、また、本体15の重力方向Gに関する所定の角度により、デッドボリューム内に存在する任意の流体は、センサ39aまたは39bの妨害を回避するように、円筒壁23と本体15の前方部分Pとの間の前記貫通孔26、30b内を流れることができる。
【0053】
排出ライン11から入ってくる流れVと、充填ライン9に向かう流れFとの分割をさらに改善するために、円筒壁23は、上方フランジ27とフランジ25との間に少なくとも1つの貫通凹部28をさらに含み得る。
【0054】
最後に、下方フランジ29は、少なくとも1つの穴30aをさらに含み得、これは、充填方向Fを考慮した場合に穴30bとは反対の方向に位置し、本体15の後方部分B内のバッファボリューム12の開口部に面して、排出ライン11から入ってきて本体の後方部分Bにおいて円筒壁23を通る流体の直接排出Vを改善する、すなわち、バッファボリューム12と円筒壁23との間の流れVの任意のずれを防ぐ。
【0055】
当然、本発明は、提示された実施形態および変形例に限定されず、当業者には明らかであろうさまざまな他の実施形態および/または変形例の対象となることができる。よって、当業者に理解されるように、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、いくつかの特徴を含み、他の実施形態に含まれる他の特徴は含まないが、異なる実施形態の特徴の組み合わせが、本発明の範囲内であることが意図され、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲では、特許請求される実施形態のいずれかは、任意の組み合わせで使用され得る。
【0056】
特にタンク3の種類に応じて、特定の用途に従って形状および/または寸法を変更することが特に可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 貯蔵システム
3 タンク
5 ポンプ
7 注入要素
9 充填ライン
11 排出ライン
12 バッファボリューム
13 充填機ヘッド
14 リブ
15 本体
16 磁石
17 主要部分
18 突出ガイド要素
19 カバー部
20 キャビティ
21 分離デバイス
23 円筒壁
24 リブ
25 フランジ
26 貫通穴
27 上方フランジ
28 貫通凹部
29 下方フランジ
30a 穴
30b 貫通穴
31 凹部
33a 横断プレート
33b 横断プレート
39a センサ
39b センサ
41 車両
43 パワートレイン
45 汚染除去システム
47 排気デバイス
49 添加物注入デバイス
B 後方部分
F 充填方向
F 流れ
F 層流
G 重力方向
I 平面
II 平面
P 前方部分
V 流れ
V 直接排出
α 所定の角度
図1
図2
図3
図4
図5