(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法、発光素子
(51)【国際特許分類】
G03F 7/26 20060101AFI20241113BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20241113BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20241113BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20241113BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20241113BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20241113BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
G03F7/26 513
G03F7/32
G03F7/40 501
G03F7/40 521
G03F7/40
H05B33/14 Z
H05B33/10
H10K50/115
H05B33/22 A
H05B33/22 C
(21)【出願番号】P 2022566564
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2020044948
(87)【国際公開番号】W WO2022118415
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】安達 考洋
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 惇
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/26
G03F 7/32
G03F 7/40
H05B 33/14
H05B 33/10
H10K 50/115
H05B 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1量子ドットを含む第1量子ドット溶液を塗布して第1発光層を形成する第1発光層形成工程と、
前記第1発光層上に、第1感光性樹脂組成物を塗布して第1レジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、
前記第1レジスト層を所定のパターンで露光する露光工程と、
前記第1レジスト層を現像液で現像してパターン化された第1レジスト層を形成し、前記パターン化された第1レジスト層をマスクとして前記第1発光層を処理液で処理してパターン化された第1発光層を形成するパターン形成工程と、
を含む、発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記処理液は、前記現像液である、請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記現像液は、界面活性剤を含む、請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物であり、
前記パターン化された第1レジスト層上に少なくとも一の第1機能層を形成する工程を含み、
前記パターン形成工程にて、前記第1レジスト層をパターン化する際に、前記少なくとも一の第1機能層をリフトオフしてパターン化された少なくとも一の第1機能層を形成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1感光性樹脂組成物は、
第2量子ドットおよび電荷輸送性ナノ粒子の少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記パターン化された第1レジスト層をベークして硬化させるハードベーク工程を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記ベークした第1レジスト層上に、前記第1量子ドットとは発光色の異なる第2の第1量子ドットを含む第2の第1発光層を形成した後、さらに、前記第1レジスト層形成工程、前記露光工程、および前記パターン形成工程を行う、
請求項6に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記第1レジスト層を形成する前に、前記第1発光層上に少なくとも一の第2機能層を形成する工程を含み、
前記パターン形成工程において、前記パターン化された第1レジスト層をマスクとして前記少なくとも一の第2機能層を処理液で処理してパターン化する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光素子の製造方法、発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、量子ドット層をパターニングする方法が開示されている。より具体的には、基板上に形成した量子ドット層上に、フォトレジスト層を形成した後、露光・現像してフォトレジスト層をパターニングし、このパターニングされたフォトレジスト層をマスクとして、量子ドット層をエッチング等によりパターニングしている。そして、上記パターニングされたフォトレジスト層は、最終的に剥離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0254934号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の量子ドット層をパターニングする場合では、フォトレジスト層を剥離する工程等、工程数が多くなるとともに、先に形成した層にダメージが生じる可能性があり得る。本開示の主な目的は、例えば、より簡便に量子ドットを含む量子ドット層を形成することができる、発光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における一形態の発光素子の製造方法は、第1量子ドットを含む第1量子ドット溶液を塗布して第1発光層を形成する第1発光層形成工程と、前記第1発光層上に、第1感光性樹脂組成物を塗布して第1レジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、前記第1レジスト層を所定のパターンで露光する露光工程と、前記第1レジスト層を現像液で現像してパターン化された第1レジスト層を形成し、前記パターン化された第1レジスト層をマスクとして前記第1発光層を処理液で処理してパターン化された第1発光層を形成するパターン形成工程と、を含む。
【0006】
本開示における別の形態の発光素子の製造方法は、ポジ型感光性樹脂組成物を塗布してリフトオフ用レジスト層を形成するリフトオフ用レジスト層形成工程と、前記リフトオフ用レジスト層を所定のパターンで露光するリフトオフ用露光工程と、前記リフトオフ用レジスト層を現像してパターン化されたリフトオフ用レジスト層を形成するリフトオフ用パターン形成工程と、前記パターン化されたリフトオフ用レジスト層上に、第1量子ドットを含む第1量子ドット溶液を塗布して第1発光層を形成する第1発光層形成工程と、前記第1発光層上に、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布して第1レジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、全面を露光する全面露光した後、前記パターン化されたリフトオフ用レジスト層を現像液で処理することにより、前記パターン化されたリフトオフ用レジスト層上に形成された前記第1発光層および前記第1レジスト層をリフトオフし、前記第1発光層および前記第1レジスト層をパターン化する、パターン形成工程と、を含む。
【0007】
本開示における一形態の発光素子は、第1量子ドットを含むパターン化された第1発光層と、機能性材料を含む感光性樹脂組成物の硬化物から形成され、前記パターン化された第1発光層のそれぞれに積層されたレジスト層と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る発光素子の積層構造の一例を模式的に示す図である。
【
図2A】実施形態1に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図2B】実施形態1に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図2C】実施形態1に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図2D】実施形態1に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図2E】実施形態1に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図2F】実施形態1に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図2G】実施形態1に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図2H】実施形態1に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図2I】実施形態1に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図2J】実施形態1に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図3】実施形態1に係る発光素子の製造方法の変形例を説明するための図である。
【
図4A】実施形態2に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図4B】実施形態2に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図4C】実施形態2に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図4D】実施形態2に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図4E】実施形態2に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図4F】実施形態2に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図4G】実施形態2に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図4H】実施形態2に係る発光素子の製造方法の一例における工程を説明するための図である。
【
図4I】実施形態2に係る発光素子の積層構造の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0010】
〔実施形態1〕
図1は、本実施形態に係る発光素子100Aの積層構造の一例を模式的に示す図である。
【0011】
発光素子100Aは、光を出射する装置である。発光素子100Aは、例えば、白色光等の光を出射する照明装置(例えば、バックライト等)であってもよいし、光を出射することにより画像(例えば、文字情報等を含む。)を表示する表示装置であってもよい。本実施形態では、発光素子100Aが、表示装置における1つの画素である例について説明する。例えば、複数の画素をマトリクス状に配列することにより表示装置を構成することができる。
【0012】
図1に示すように、発光素子100Aは、例えば、赤色に発光する第1発光素子10R、緑色に発光する第2発光素子10G、青色に発光する第3発光素子10Bを含む。第1発光素子10Rは、発光中心波長が第1波長であり、例えば約630nmで発光する。第2発光素子10Gは、発光中心波長が第1波長よりも短波長である第2波長であり、例えば約530nmで発光する。第3発光素子10Bは、発光中心波長が第2波長よりも短波長である第3波長であり、例えば、約440nmで発光する。
【0013】
第1発光素子10Rは、基板1上に、第1電極2R、第1電荷輸送層4、第1発光層5R、第1レジスト層6R、第2電荷輸送層7、第2電極8がこの順番で積層された構造を有する。
【0014】
基板1は、例えばガラス等からなり、上記各層を支持する支持体として機能する。基板1は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)等が形成されたアレイ基板であってよい。
【0015】
第1電極2Rは、基板1上に配される。第1電極は、例えば、第1発光層5Rに第1電荷を供給する。
【0016】
第1電荷輸送層4は、第1電極2R上に配される。第1電荷輸送層4は、第1電極2Rから注入される第1電荷を第1発光層5Rに輸送する。なお、第1電荷輸送層4は、1層からなっていてもよいし、多層からなっていてもよい。
【0017】
第1発光層5Rは、第1電荷輸送層4上に配される。第1発光層5Rは、発光中心波長が第1波長であり、例えば約630nmで発光する。第1発光層5Rは、例えば、発光中心波長が第1波長であり、例えば約630nmで発光する第1発光材料を含む。
【0018】
第1レジスト層6Rは、第1発光層5R上に配される。第1レジスト層6Rの厚さは、例えば、1nm以上、50nm以下であることが好ましい。また、第1レジスト層6Rの厚さの上限は、駆動電圧上昇を抑えるために、40nm以下がより好ましく、30nm以下がさらにより好ましく、20nm以下がさらにより一層好ましい。第1レジスト層6Rが永久膜として残る場合、上記厚さにすることによって、発光素子の駆動電圧の上昇等の性能低下を抑制したり、キャリアバランス調整を行ったりすることができる。第1レジスト層6Rには、感光性樹脂組成物の硬化物を含み、例えば、第1発光材料または第2電荷を輸送する第2電荷輸送性材料等の機能性材料を含んでいてもよい。第1レジスト層6Rは、例えば、第1発光材料を含む場合、第1発光層5Rの一部として機能する。また、第1レジスト層6Rは、例えば、第2電荷輸送性材料を含む場合、第2電荷輸送層7の一部として機能する。第1レジスト層6Rは、第1発光材料または第2電荷輸送性材料を含まない場合、第2電極8から第2電荷輸送層7を介して第2電荷を第1発光層5Rに輸送する上で、厚さが、5nm以上、30nm以下であることが好ましい。なお、第1レジスト層6Rは、後の現像による膜べり等を考慮して、その厚さは設定される。
【0019】
第2電荷輸送層7は、第1レジスト層6R上に配される。第2電荷輸送層7は、第2電極8から注入される第2電荷を第1発光層5Rに輸送する。第2電荷は、第1電荷と逆の極性を有する。なお、第2電荷輸送層7は、1層からなっていてもよいし、多層からなっていてもよい。
【0020】
第2電極8は、第2電荷輸送層7上に配される。第2電極8は、例えば、第1発光層5Rに第2電荷を供給する。
【0021】
第1電極2Rおよび第2電極8は、例えば、金属や透明導電性酸化物等の導電材料により構成される。上記金属としては、例えば、Al、Cu、Au、Ag等が挙げられる。上記透明導電性酸化物としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウム亜鉛酸化物(ZnO:Al(AZO))、ホウ素亜鉛酸化物(ZnO:B(BZO))等が挙げられる。なお、第1電極2Rおよび第2電極8は、例えば、少なくとも1層の金属層および/または少なくとも1層の透明導電性酸化物層を含む積層体であってもよい。
【0022】
第1電極2Rおよび第2電極8の何れか一方は、光透過性材料からなる。なお、第1電極2Rおよび第2電極8の何れか一方は、光反射性材料で形成してもよい。発光素子100Aをトップエミッション型の発光素子とする場合、例えば、上層である第2電極8を光透過性材料で形成し、下層である第1電極2Rを光反射性材料で形成する。また、発光素子100Aをボトムエミッション型の発光素子とする場合、例えば、上層である第2電極8を光反射性材料で形成し、下層である第1電極2Rを光透過性材料で形成する。さらに、第1電極2Rおよび第2電極8の何れか一方を、光透過性材料と光反射性材料との積層体とすることで、光反射性を有する電極としてもよい。
【0023】
光透過性材料としては、例えば、透明な導電性材料を用いることができる。光透過性材料としては、具体的には、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、SnO2(酸化スズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)等を用いることができる。これらの材料は可視光の透過率が高いため、発光素子100Aの発光効率が向上する。
【0024】
光反射性材料としては、例えば、金属材料を用いることができる。光反射性材料としては、具体的には、例えば、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)等を用いることができる。これらの材料は、可視光の反射率が高いため、発光効率が向上する。
【0025】
第1発光材料としては、例えば、量子ドット等が挙げられる。量子ドットは、例えば、100nm以下の粒子サイズを有する半導体微粒子であり、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe等のII-VI族半導体化合物、及び/又は、GaAs、GaP、InN、InAs、InP、InSb等のIII-V族半導体化合物の結晶、及び/又は、Si、Ge等のIV族半導体化合物の結晶を有することができる。また、量子ドットは、例えば、上記の半導体結晶をコアとして、当該コアをバンドギャップの高いシェル材料でオーバーコートしたコア/シェル構造を有していてもよい。
【0026】
第1電荷輸送層4、第2電荷輸送層7は、それぞれ、正孔輸送層または電子輸送層となり得る。例えば、第1電極2Rが陽極、第2電極8が陰極の場合、第1電荷が正孔であり、第2電荷が電子であり、第1電荷輸送層4が正孔輸送層であり、第2電荷輸送層7が電子輸送層となる。また、例えば、第1電極2Rが陰極、第2電極8が陽極の場合、第1電荷が電子であり、第2電荷が正孔であり、第1電荷輸送層4が電子輸送層であり、第2電荷輸送層7が正孔輸送層となる。例えば、正孔輸送層および電子輸送層は、1層でも多層でもよい。正孔輸送層が多層である場合、例えば、最も陽極側に、正孔注入能を有する層を有する積層構造が挙げられる。また、電子輸送層が多層である場合、例えば、最も陰極側に、電子注入能を有する層を有する積層構造が挙げられる。
【0027】
正孔輸送層を形成する材料としては、例えば、Zn、Cr、Ni、Ti、Nb、Al、Si、Mg、Ta、Hf、Zr、Y、La、Srのうちのいずれか1つ以上を含む酸化物、窒化物、または炭化物からなる群から選択される一種以上を含む材料や、4,4´,4´´-トリス(9-カルバゾイル)トリフェニルアミン(TCTA)、4,4´-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル-アミノ]-ビフェニル(NPB)、亜鉛フタロシアニン(ZnPC)、ジ[4-(N,N-ジトリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、4,4´-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(CBP)、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(HATCN)、MoO3などの材料や、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリ(2,7-(9,9-ジ-n-オクチルフルオレン)-(1,4-フェニレン-((4-第2ブチルフェニル)イミノ)-1,4-フェニレン(TFB)、ポリ(トリフェニルアミン)誘導体(Poly-TPD)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)などの正孔輸送性有機材料等が挙げられる。これら正孔輸送性材料は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】
電子輸送層を形成する材料としては、例えば、酸化亜鉛(例えばZnO)、酸化チタン(例えばTiO2)、酸化ストロンチウムチタン(例えばSrTiO3)等の電子輸送性材料が用いられる。これら電子輸送性材料は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
これらの正孔輸送層および電子輸送層を形成する材料は、発光素子100Aの構成や特性に応じて、適宜選択される。
【0030】
続いて、第2発光素子10Gについて説明する。
【0031】
第2発光素子10Gは、第1発光素子10Rと同様の構成である。ただし、第1発光層5Rを、第1発光層5Gに変更した点で異なる。
【0032】
第1発光層5Gは、発光中心波長が第2波長であり、例えば約530nmで発光する。第1発光層5Gは、例えば、発光中心波長が第2波長であり、例えば約530nmで発光する第2発光材料を含む。
【0033】
第2発光材料としては、例えば、量子ドットが挙げられる。この量子ドットは、上記第1発光材料と同様であるが、発光中心波長が第2波長である。
【0034】
続いて、第3発光素子10Bについて説明する。
【0035】
第3発光素子10Bは、第1発光素子10Rと同様の構成である。ただし、第1発光層5Rを、第1発光層5Bに変更した点で異なる。
【0036】
第1発光層5Bは、発光中心波長が第3波長であり、例えば約440nmで発光する。第1発光層5Bは、例えば、発光中心波長が第3波長であり、例えば約440nmで発光する第3発光材料を含む。
【0037】
第3発光材料としては、例えば、量子ドットが挙げられる。この量子ドットは、上記第1発光材料と同様であるが、発光中心波長が第3波長である。
【0038】
さらに、上記発光素子100Aにおいては、各色の発光素子を隔離するように、バンク3が設けられている。バンク3は、例えば、ポリイミドやアクリル樹脂などの絶縁性の樹脂から形成される。
【0039】
なお、上記発光素子100Aにおいては、第1電荷輸送層4、第2電荷輸送層7、第2電極8を共通の層としている。しかしながら、これらに限らず、例えば、第1電荷輸送層4、第2電荷輸送層7、第2電極8を各色の発光素子毎に別々に分離した構成であってもよい。
【0040】
また、上記発光素子100Aにおいては、上記バンク3上で、第1発光層5Rおよび第1レジスト層6Rと第1発光層5Gおよび第1レジスト層6Gとが、第1発光層5Gおよび第1レジスト層6Gと第1発光層5B第1レジスト層6Bとが、第1発光層5Bおよび第1レジスト層6Bと第1発光層5Rおよび第1レジスト層6Rとが重なっている。このように、各層が重なることにより、バンク3上に形成された第2電極8と第1電極2R・2G・2Bとの間の絶縁性が増すため、リーク電流を抑制することができる。なお、バンク3上に設けられた各層は、形成しなくてもよい。なお、第1発光層5R・5G・5Bおよび第1レジスト層6R・6G・6Bは、それぞれパターン化されている。
【0041】
以下に、本実施形態に係る発光素子100Aの製造方法の一例について、
図1、
図2A~
図2Iを参照して説明する。
【0042】
まず、
図2Aに示すように、基板1上に、第1電極2R・2G・2Bを形成する(S1)。第1電極2R・2G・2Bは、例えば、スパッタ法、真空蒸着法等、従来公知の各種方法により形成することができる。
【0043】
次いで、
図2Bに示すように、第1電極2R・2G・2Bの各々を分離するように、バンク3を形成する(S2)。バンク3は、例えば、液状の樹脂を全面に塗布した後、パターニングすることにより形成することができる。
【0044】
次いで、
図2Cに示すように、第1電極2R・2G・2B上に、第1電荷輸送層4を形成する(S3)。第1電荷輸送層4は、例えば、真空蒸着やスパッタ、あるいは塗布法等、従来公知の各種方法により形成することができる。本実施形態において、第1電荷輸送層4は、バンク3上にも第1電荷輸送層4が形成されているが、バンク3上に形成せず、各第1電極2R・2G・2Bに対応するように、パターニングしてもよい。
【0045】
次いで、
図2Dに示すように、第1電荷輸送層4上に第1発光層5を形成する(S4:第1発光層形成工程)。第1発光層5は、例えば、赤色に発光する量子ドット(第1量子ドット)のコロイド溶液(第1量子ドット溶液)を全面に塗布し、焼成することにより形成することができる。
【0046】
次いで、
図2Eに示すように、第1発光層5上に第1レジスト層6を形成する(S5:第1レジスト層形成工程)。第1レジスト層6は、例えば、感光性樹脂組成物の溶液を全面に塗布し、焼成することにより形成することができる。本実施形態において上記感光性樹脂組成物は、ポジ型の感光性樹脂組成物を用いた例としているが、感光性樹脂組成物はネガ型であってもよい。このような感光性樹脂組成物としては、例えば、アクリル系樹脂、ノボラック樹脂等のフェノール系樹脂、ゴム系、スチレン系、エポキシ系の樹脂等の樹脂成分、感光剤、溶剤を含むものが挙げられる。さらに、上記感光性樹脂組成物は、第1発光材料または電荷輸送性材料等の機能性材料を含んでいてもよい。この機能性材料としては、粒子である機能性粒子が好ましく、この機能性粒子はナノ粒子であることが好ましい。このようなナノ粒子としては、例えば、量子ドット、電荷輸送性ナノ粒子等が挙げられる。なお、感光性樹脂組成物に含まれる量子ドットを、第2量子ドットと称する。この第2量子ドットは、第1量子ドットと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、電荷輸送性ナノ粒子としては、例えば、正孔輸送性ナノ粒子としてNiO、CuI、Cu2O、CoO、Cr
2O
3、CuAlS
2等が挙げられ、電子輸送性のナノ粒子としてZnO、ZnS、ZrO、MgZnO、AlZnO、TiO
2等が挙げられる。これらのナノ粒子は、1種または複数種の混合物、あるいは複数種の混晶体であってもよい。なお、上記溶剤としては、第1発光層5を溶解しにくいものが選択されることが好ましく、例えば、上記第1量子ドット溶液における溶媒と異なることが好ましい。さらにまた、上記量子ドットは、例えば、カルボキシレート基、ホスフェート基、チオレート基、アミノ基、チオール基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基からなる官能基を有するリガンドにより修飾されていてもよい。
【0047】
次いで、
図2Fに示すように、例えば、所定のパターンのマスク20を用い、第1レジスト層6を露光する(S6:露光工程)。上記マスク20は、後の現像により、第1レジスト層6の第1発光素子に対応する領域が残るパターンとなっている。本実施形態においては、第1レジスト層6をポジ型の感光性樹脂組成物で形成しているため、第1発光素子に対応する領域以外が、露光されるようなパターンとなっている。なお、第1レジスト層6をネガ型の感光性樹脂組成物で形成した場合には、上記マスク20は、ポジ型とは逆に第1発光素子に対応する領域が露光されるパターンであればよい。
【0048】
次いで、
図2Gに示すように、現像液で第1レジスト層6を現像することにより、第1レジスト層6を、第1レジスト層6Rにパターン化する(S7)。
【0049】
次いで、
図2Hに示すように、パターン化された第1レジスト層6Rをマスクとして、処理液で処理することにより、第1発光層5を、第1発光層5Rにパターン化する(S8:パターン形成工程)。ここで、上記処理液として、上記第1レジスト層6を現像する現像液を用い第1発光層5及び第1レジスト層6を同一工程で現像することにより、S7とS8の工程を共通化した場合には、全体の工程を簡略化することができる。この場合、現像液は、界面活性剤を含むものが好ましい。現像液が、界面活性剤を含む場合、第1発光層5をより容易に第1発光層5Rにパターン化することができる。また、第1レジスト層6Rをマスクとして第1発光層5をパターン化することにより、第1発光層5Rの発光領域が処理液に直接さらされることが防がれている。これにより、第1発光層5Rの発光領域が処理液による処理によりダメージを生じる可能性が低減される。第1発光層5Rにパターン化した後、さらに、例えば、水洗し、風乾した後、ハードベークを行う。
【0050】
次いで、
図2Iに示すように、S4~S8の工程を繰り返すことにより、第2発光素子10Gに対応する第1発光層(第2の第1発光層)5Gおよび第1レジスト層6G、第3発光素子10Bに対応する第1発光層(第3の第1発光層)5Bおよび第1レジスト層6Bを形成する(S9)。なお、第1発光層5Gを形成する際には、S5において、第1発光層5に変えて、緑色に発光する量子ドット(第2の第1量子ドット)のコロイド溶液を用いて第1発光層を形成すればよい。また、第1発光層5Bを形成する際には、S5において、第1発光層5に変えて、青色に発光する量子ドット(第3の第1量子ドット)のコロイド溶液を用いて第1発光層を形成すればよい。さらに、上記第1レジスト層6G、第1レジスト層6Bは、感光性樹脂組成物から形成されるものであればよく、第1レジスト層6Rと同じであっても異なっていてもよい。
【0051】
次いで、
図2Jに示すように、第1レジスト層6R、第1レジスト層6G、第1レジスト層6B上に、第2電荷輸送層7を形成する(S10)。第2電荷輸送層7は、例えば、真空蒸着やスパッタ、あるいは塗布法等、従来公知の各種方法により形成することができる。この第2電荷輸送層7は、各色の発光素子に対応するようにパターニングしてもよい。なお、この第2電荷輸送層7、第1機能層に相当する。
【0052】
次いで、第2電荷輸送層7上に、第2電極8を形成する(S11)。第2電極8は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法等、従来公知の各種方法により形成することができる。
【0053】
以上により、
図1に示す発光素子100Aを製造することができる。
【0054】
上記では、第1発光素子10R、第2発光素子10G、第3発光素子10Bを、同様の工程で製造しているが、これに限らず、例えば、第1発光素子10R、第2発光素子10G、第3発光素子10Bのうちの1または2つにおける、発光層、電荷輸送層等をインクジェット方式で形成してもよい。
【0055】
本実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1レジスト層を永久膜とするため、剥離する工程を省くことができる。
【0056】
また、変形例として、例えば、
図3に示すように、S4で形成した、第1発光層5上に、少なくとも一の第2機能層30を形成したのち、S5~S7の工程を行うことにより、少なくとも一の第2機能層30をパターニングされた少なくとも一の第2機能層30Rを形成してもよい。この場合、少なくとも一の第2機能層30は、上記処理液で処理した際に、パターン化可能な材料で形成される。このような材料としては、例えば、ZnO、AlZnO、LiZnO、MgZnOなどの両性金属を主組成とする酸化物が挙げられる。この第2機能層30は、上記第2電荷輸送層7に相当する。
【0057】
また、上記S8において、第1発光層5をパターン化しているが、さらに、パターン化された第1レジスト層6Rをマスクとして、上記処理液で第1電荷輸送層4を処理し、第1電荷輸送層4をパターン化してもよい。なお、この第1電荷輸送層4は、上記処理液で処理することによりパターン化可能な材料で形成される。このような材料としては、例えば、ZnO、AlZnO、LiZnO、MgZnOなどの両性金属を主組成とする酸化物が挙げられる。第1電荷輸送層4は、機能層に相当する。この機能層は、1層でも複数層でもよく、すべてパターン化可能な材料で形成される。
【0058】
〔実施形態2〕
図4A~
図4Iを参照して、本実施形態に係る発光素子100Bおよびその製造方法の一例について説明する。なお、実施形態1と同様の工程、符号については、説明を省略する。
【0059】
S1~S3は、実施形態1と同様である。
【0060】
次いで、
図4Aに示すように、第1電荷輸送層4上にリフトオフ用レジスト層101を形成する(S21)。リフトオフ用レジスト層101は、例えば、ポジ型感光性樹脂組成物を全面に塗布し、焼成することにより形成することができる。
【0061】
次いで、
図4Bに示すように、例えば、所定のパターンのマスク120を用いて、リフトオフ用レジスト層101を露光する(S22)。上記マスク120は、後の現像により、リフトオフ用レジスト層101における第1発光素子に対応する領域以外が残るパターンとなっている。
【0062】
次いで、
図4Cに示すように、例えば、現像液でリフトオフ用レジスト層101を現像することにより、リフトオフ用レジスト層101を、リフトオフ用パターン101Rにパターン化する(S23)。
【0063】
次いで、
図4Dに示すように、例えば、上記S4と同様にして、リフトオフ用パターン101Rが形成された第1電荷輸送層4上に、第1発光層5を形成する(S24)。
【0064】
次いで、
図4Eに示すように、例えば、上記S5と同様にして、第1発光層5上に、第1レジスト層6を形成する(S25)。なお、本工程においては、第1レジスト層6を形成する感光性樹脂組成物として、ネガ型の感光性樹脂組成物を使用する。
【0065】
次いで、
図4Fに示すように、例えば、全面露光する(S26)。この全面露光により、第1レジスト層6は、ネガ型の感光性樹脂組成物から形成されるため硬化し、現像液に不溶となる。一方、リフトオフ用パターン101Rは、ポジ型の感光性樹脂組成物から形成されるため、現像液に可溶となる。
【0066】
次いで、
図4Gに示すように、例えば、現像液で処理することにより、上記リフトオフ用パターン101Rとともに、当該リフトオフ用パターン101R上に形成された領域の第1発光層5および第1レジスト層6をリフトオフする(S27)。これにより、第1発光素子に対応する領域に、パターン化された第1発光層5Rおよび第1レジスト層6Rを形成することができる。なお、この工程においては、第1発光素子に対応する領域の第1発光層5Rは、硬化された第1レジスト層6Rにより保護されるため、上記現像液の処理によりダメージを受けにくくなる。
【0067】
次いで、
図4Hに示すように、例えば、S24~S27を繰り返すことにより、第2発光素子10Gに対応する第1発光層5Gおよび第1レジスト層6G、ならびに第3発光素子10Bに対応する第1発光層5Bおよび第1レジスト層6Bを形成する(S28)。
【0068】
次いで、
図4Iに示すように、例えば、上記S10と同様にして、第2電荷輸送層7を形成し、さらに、上記
S11と同様にして、第2電極8を形成する(S29)。以上により、発光素子100Bを製造することができる。
【0069】
本実施形態における発光素子の製造方法によれば、第1発光層5R・5G・5Bが第1レジスト層6R・6G・6Bにより保護される。そのため、現像時等における発光層5R・5G・5Bの剥がれや膜べりを抑制することができる。
【0070】
なお、本実施形態においては、S28において第2電荷輸送層7を形成したが、例えば、S27において現像液で処理する前にリフトオフ用パターン101R上に、例えば全面に第2電荷輸送層7を形成し、現像液での処理時にリフトオフ用パターン101Rを除去する際に部分的にリフトオフすることにより、第1発光素子に対応する領域のみが残るように第2電荷輸送層7をパターニングしてもよい。これにより、画素毎に電荷輸送層が分離されるため、電流リークが抑えられ、発光効率向上、クロストーク防止等、発光素子の特性を向上させることができる。さらに、このパターニングされた第2電荷輸送層7と同様に、他の層を形成し、この他の層をパターニングしてもよい。
【0071】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。