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特許7587617細胞免疫療法の安定した遺伝子改変のための、ホーミング受容体又はサイトカインとキメラ抗原受容体とを含むクアドリシストロニックシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】細胞免疫療法の安定した遺伝子改変のための、ホーミング受容体又はサイトカインとキメラ抗原受容体とを含むクアドリシストロニックシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241113BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20241113BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241113BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20241113BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241113BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241113BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241113BHJP
   C12N 15/26 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61P35/00
A61P37/04
C12N5/0783
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/26
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023033995
(22)【出願日】2023-03-06
(62)【分割の表示】P 2021505238の分割
【原出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2023078209
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】62/713,264
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/713,278
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/713,310
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/713,323
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520393015
【氏名又は名称】イミュニティーバイオ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ImmunityBio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ハンス、ジー.クリンゲマン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン、エイチ.ボイセル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、エイチ.リー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン、ティー.シューマー
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-532771(JP,A)
【文献】国際公開第2017/025656(WO,A2)
【文献】特表2015-529457(JP,A)
【文献】特表2018-509459(JP,A)
【文献】特表2018-510881(JP,A)
【文献】特表2018-518974(JP,A)
【文献】Oncotarget,2017年,Vol.8, No.43,pp.75217-75231
【文献】OncoImmunology,2018年02月14日,Vol.7, No.5, e1426519
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/10
A61K 35/17
A61P 35/00
A61P 37/04
C12N 5/0783
C12N 15/62
C12N 15/12
C12N 15/13
C12N 15/26
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸で安定的にトランスフェクトされた組換え型改変ナチュラルキラー(NK)-92細胞であり
前記核酸は、トランスフォーミング成長因子(TGF)-ベータトラップ、抗プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)キメラ抗原受容体(CAR)、Fc受容体、及びサイトカインをコードし;
前記TGF-ベータトラップは、配列番号66のアミノ酸配列を有し、前記抗PD-L1 CARは、配列番号69のアミノ酸配列を有し;
前記組換え細胞は、前記組換え細胞の細胞表面上に前記抗PD-L1 CAR及び前記Fc受容体を発現する、
組換え型改変NK-92細胞。
【請求項2】
前記Fc受容体が、配列番号12のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項3】
配列番号12の前記アミノ酸配列が、F158V変異を有する、請求項2に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項4】
前記サイトカインが、erIL-2であり、配列番号15のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項5】
前記サイトカインが、erIL-2であり、配列番号15のアミノ酸配列を有する、請求項2に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項6】
前記サイトカインが、erIL-2であり、配列番号15のアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項7】
前記サイトカインが、erIL-15であり、配列番号67の核酸配列を有する、請求項1に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項8】
前記Fc受容体をコードする前記核酸が、配列番号13の核酸配列を有する、請求項1に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項9】
配列番号13の前記核酸配列が、F158V変異を有する、請求項に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項10】
前記サイトカインをコードする前記核酸が、配列番号14の核酸配列を有する、請求項1に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項11】
前記サイトカインをコードする前記核酸が、配列番号14の核酸配列を有する、請求項に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項12】
前記サイトカインをコードする前記核酸が、配列番号14の核酸配列を有する、請求項に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項13】
前記サイトカインをコードする前記核酸が、配列番号15のアミノ酸配列をコードする核酸配列である、請求項1に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項14】
前記TGF-ベータトラップが、分泌型TGF-ベータトラップである、請求項1に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項15】
組換え核酸で安定的にトランスフェクトされ、配列番号69のアミノ酸配列を有する抗プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)キメラ抗原受容体(CAR)を前記組換え核酸から発現し、配列番号66のアミノ酸配列を有するトランスフォーミング成長因子(TGF)-ベータトラップ、並びに任意でFc受容体及びサイトカインの少なくとも1つを前記組換え核酸からさらに発現する組換えNK-92細胞である、組換え型改変NK-92細胞。
【請求項16】
前記組換え細胞が、前記Fc受容体又は前記サイトカインを発現し、前記Fc受容体が、F158V変異を有してもよい、配列番号12のアミノ酸配列を有し、前記サイトカインが、erIL-2であり、配列番号15のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載の組換えNK-92細胞。
【請求項17】
対象の癌の治療に使用するための、請求項1に記載の複数の組換え単離NK-92細胞を含む組成物であって、前記癌がPD-L1を発現する癌細胞を有する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年8月1日に提出された米国仮特許出願第62/713,264号;2018年8月1日に提出された米国仮特許出願第62/713,278号、2018年8月1日に提出された米国仮特許出願第62/713,310号;及び2018年8月1日に提出された米国仮特許出願第62/713,323号の優先権を主張する。これらの出願はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
サイズが97KBの104077_0007PCT_Seq_listing_rev004_ST25という名前の配列表のASCIIテキストファイルの内容は、2019年8月1日に作成され、本出願と共にEFS-Webを介して電子的に提出され、参照によりその全体が組み込まれる。
【0003】
本発明の分野は、癌及び腫瘍に対する免疫療法を改善するための基礎として細胞傷害性活性化ナチュラルキラー細胞株(NK-92)を使用する遺伝子操作された細胞である。
【背景技術】
【0004】
背景の説明は、本発明を理解するのに役立ち得る情報を含む。これは、本明細書で提供される情報のいずれかが先行技術であるか、又は本特許請求の範囲に関連していること、又は具体的若しくは黙示的に参照されている刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0005】
本明細書における全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願がそれぞれ参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されている場合と同程度に、参照により組み込まれる。組み込まれた参照における用語の定義又は使用が、本明細書に提供されるその用語の定義と矛盾する、又は反対である場合、本明細書に提供されるその用語の定義が適用され、参照におけるその用語の定義は適用されない。
【0006】
養子移入された腫瘍特異的細胞傷害性リンパ球に基づく癌免疫療法は、悪性腫瘍を有する患者の処置に有望である。特定の癌におけるこの初期の成功にもかかわらず、主に腫瘍微小環境の免疫抑制性のために、腫瘍の処置は依然として課題である。Swarts et al.”Tumor Microenvironment Complexity:Emerging Roles in Cancer Therapy,”Cancer Res,vol.,72,pages 2473-2480,2012を参照されたい。改変T細胞に加えて、NK細胞に基づく免疫療法が検討されている。ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫系の主要構成要素を成す細胞傷害性リンパ球である。ナチュラルキラー(NK)細胞は一般に、循環リンパ球の約10~15%を占め、抗原に関して非特異的に且つ事前の免疫感作なしに、ウイルス感染細胞及び多くの悪性細胞を含む標的細胞に結合し且つそれらを死滅させる。Herberman et al.,Science 214:24(1981)。NK-92は、非ホジキンリンパ腫に罹患している対象の血液中で発見され、その後、エクスビボで不死化された、細胞溶解性癌細胞株である。NK-92(登録商標)細胞はNK細胞に由来するが、正常なNK細胞によって示される主な阻害性受容体を欠き、活性化受容体の大部分を保持する。しかしながら、NK-92(登録商標)細胞は正常な細胞を攻撃せず、また、ヒトにおいて容認できない免疫拒絶反応を誘発することもない。
【0007】
リンパ節転移の一般的なドライバーは、ナイーブT細胞及び樹状細胞に主に見られるケモカイン受容体であるCCR7の、低酸素による上方制御である。血液NK細胞上のCCR7受容体の上方制御は、NK細胞のリンパ節へのホーミングを改善し、転移性拡散の一般的な経路であるリンパ節コンパートメントへの同じ経路をたどることを可能にすることが以前に実証されているが、臨床的に関連のある細胞株ではまだ実証されていない。
【0008】
したがって、特に腫瘍微小環境へのNK細胞のホーミング及び調節において、NK細胞及びNK細胞ベースの治療を改善(imprive)する必要が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
複数の機能要素をコードする核酸を含む改変NK-92(登録商標)細胞が本明細書で提供される。機能要素は、典型的には、免疫療法のための細胞株としての細胞の有効性を改善する特定の機能を提供するタンパク質又はポリペプチドである。一態様において、NK-92(登録商標)細胞は、4つの機能的要素をコードする核酸構築物を含む。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、プロモーターに作動可能に連結された4つの機能的要素をコードする配列(「クアドリシストロニック(Quadricistronic)構築物」と呼ばれる)を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、核酸構築物によってコードされる第1の要素は、IL-2又はIL-15などのサイトカインを発現するNK-92(登録商標)細胞の選択を提供するサイトカインである。したがって、いくつかの実施形態において、核酸は、IL-2又はIL-15などのサイトカインをコードする。一実施形態において、IL-2は、IL-2を小胞体IL-2(「erIL-2」)に指向させるシグナル配列と共に発現される。別の実施形態において、IL-15は、IL-15を小胞体IL-15(「erIL-15」)に指向させるシグナル配列と共に発現される。
【0011】
いくつかの実施形態において、核酸構築物によってコードされる第2の要素は、Fc受容体である。いくつかの実施形態において、Fc受容体はFcガンマ受容体(FCγR)である。いくつかの実施形態において、Fcガンマ受容体はFCγRIII-A(CD16とも呼ばれる)であり、これは、IgG抗体に結合してADCCを活性化する低親和性Fc受容体である。いくつかの実施形態において、CD16受容体は、成熟形態のポリペプチド(配列番号12)のアミノ酸158位(F158V)におけるフェニルアラニン(F)からバリン(V)への置換を含む(シグナル配列を含むポリペプチドの全長形態の176位に対応する)。一実施形態において、Fc受容体は、配列番号13の核酸配列又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の要素は、核酸構築物中に存在する。したがって、いくつかの実施形態において、核酸構築物は、Fc受容体(CD16など)及びerIL-2をコードする。
【0013】
いくつかの実施形態において、核酸構築物によってコードされる第3の要素は、ホーミング受容体である。いくつかの実施形態において、ホーミング受容体は、サイトカイン受容体、Gタンパク質共役受容体、ケモカイン受容体、細胞接着分子、セレクチン、又はインテグリンである。いくつかの実施形態において、ホーミング受容体は、核酸の転写を可能にするプロモーターに作動可能に連結されている。改変NK-92(登録商標)細胞は、受容体のリガンドであるケモカインの供給源に向かって移動することができる。通常の血液由来のNK細胞とは異なり、改変されたNK-92(登録商標)細胞は、ヒト臨床試験に関連する細胞株に開発することができ、免疫療法に明確な利点をもたらす。ホーミング受容体の例には、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7、CX3CR1、XCR1、CCXCKR、D6、DARC、又はCXCL14の受容体を含むがこれらに限定されないケモカイン受容体;サイトカイン受容体;L-セレクチン(CD62L)を含むセレクチンなどの細胞接着分子;α4β7インテグリン、LPAM-1、及びLFA-1などのインテグリンなどの、Gタンパク質共役受容体が含まれる。いくつかの実施形態において、ホーミング受容体は、LFA-1などの細胞接着分子である。いくつかの実施形態において、ホーミング受容体は、L-セレクチン(CD62L)などのセレクチンである。いくつかの実施形態において、ホーミング受容体は、α4β7インテグリン、LPAM-1、又はVLA-4などのインテグリンである。いくつかの実施形態において、ホーミング受容体は、C-C又はC-X-Cケモカイン受容体である。したがって、いくつかの実施形態において、核酸によってコードされる第3の要素は、本明細書に記載のホーミング受容体である。
【0014】
いくつかの実施形態において、核酸構築物によってコードされる第3の要素は、分泌型サイトカインであり、それにより、サイトカインは、免疫療法剤としてのNK-92(登録商標)細胞の機能を増加又は改善する。サイトカインはまた、腫瘍微小環境を調節し得る。いくつかの実施形態において、腫瘍微小環境を調節する分泌型サイトカインは、IL-12又はIFN-アルファである。したがって、いくつかの実施形態において、核酸構築物によってコードされる第3の要素は、IL-12又はIFNアルファなどのサイトカインである。
【0015】
したがって、いくつかの実施形態において、核酸構築物によってコードされる第3の要素は、XCL1、CCL5、CCL21又はCCL16などのケモカインである。いくつかの実施形態において、核酸構築物によってコードされる第3の要素は、Toll様受容体(TLR)アゴニストである。
【0016】
一態様において、核酸構築物によってコードされる第3の要素はIL-12である。
【0017】
腫瘍内でのTGF-βの発現は、腫瘍微小環境における白血球の抗腫瘍活性を抑制することが知られている。したがって、いくつかの実施形態において、核酸構築物によってコードされる第3の要素は、TGFベータ阻害剤、例えば、TGF-βを阻害するペプチドである。いくつかの実施形態において、核酸構築物によってコードされる第3の要素は、TGFベータトラップである。いくつかの実施形態において、TGFベータトラップは、TGFβRII分子の細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態において、TGFベータトラップは、TGFβRII分子の細胞外ドメインの一本鎖二量体を含み、最も好ましくは、TGF-β受容体II外部ドメインの一本鎖二量体を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のNK細胞は、TGF-βを遮断し、免疫抑制を除去するのを助けるために、TGF-β阻害剤と共に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のNK細胞は、腫瘍を減少させる、又は排除するのを助けるために、他の免疫療法剤と共に投与される。例えば、TGF-βは、ポリ(I:C)及びα-CD40抗体の腫瘍内注射と組み合わせた阻害ペプチドの腫瘍内注射によって阻害することができる。いくつかの実施形態において、TGF-β阻害剤は、IL-2と組み合わされる。
【0019】
いくつかの実施形態において、核酸構築物によってコードされる第4の要素は、抗原結合タンパク質(「ABP」)である。いくつかの実施形態において、抗原結合タンパク質は、腫瘍関連抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、ABPは、scFvなどの抗体の断片を含む。いくつかの実施形態において、抗原結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)を含むか、又はその一部である。いくつかの実施形態において、核酸は、CD19、CD20、NKG2Dリガンド、CS1、GD2、CD138、EpCAM、HER-2、EBNA3C、GPA7、CD244、CA-125、MUC-1、ETA、MAGE、CEA、CD52、CD30、MUC5AC、c-Met、EGFR、FAP、WT-1、PSMA、NY-ESO1、CSPG-4、IGF1-R、Flt-3、CD276、CD123、PD-L1、BCMA、CD33、B7-H4、又は41BBと特異的に結合するABP又はCARをコードする。
【0020】
別の態様において、改変NK-92(登録商標)細胞は、IL-12をコードする核酸を含む。別の態様において、改変NK-92(登録商標)細胞は、TGFベータトラップをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、TGFベータトラップは、TGFβRII分子の細胞外ドメインの一本鎖二量体を含む。
【0021】
別の態様において、改変NK-92(登録商標)細胞は、サイトカインを発現するNK-92(登録商標)細胞の選択を提供するか又は生存を可能にするサイトカインをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、核酸は、IL-2又はIL-15などのサイトカインをコードする。一実施形態において、IL-2は、IL-2を小胞体IL-2(「erIL-2」)に指向させるシグナル配列と共に発現される。一実施形態において、IL-15は、IL-15を小胞体IL-2(「erIL-15」)に指向させるシグナル配列と共に発現される。
【0022】
いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、Fc受容体をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、Fc受容体はFcガンマ受容体(FCγR)である。いくつかの実施形態において、Fcガンマ受容体はFCγRIII-A(CD16とも呼ばれる)であり、これは、IgG抗体に結合してADCCを活性化する低親和性Fc受容体である。いくつかの実施形態において、CD16受容体は、成熟形態のポリペプチド(配列番号12)のアミノ酸158位(F158V)におけるフェニルアラニン(F)からバリン(V)への置換を含む(シグナル配列を含むポリペプチドの全長形態の176位に対応する)。一実施形態において、Fc受容体は、配列番号13の核酸配列又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、抗原結合タンパク質(「ABP」)をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、抗原結合タンパク質は、腫瘍関連抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、ABPは、scFvなどの抗体の断片を含む。いくつかの実施形態において、抗原結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)を含むか、又はその一部である。いくつかの実施形態において、核酸は、CD19、CD20、NKG2Dリガンド、CS1、GD2、CD138、EpCAM、HER-2、EBNA3C、GPA7、CD244、CA-125、MUC-1、ETA、MAGE、CEA、CD52、CD30、MUC5AC、c-Met、EGFR、FAP、WT-1、PSMA、NY-ESO1、CSPG-4、IGF1-R、Flt-3、CD276、CD123、PD-L1、BCMA、CD33、B7-H4、又は41BBと特異的に結合するABP又はCARをコードする。
【0024】
別の態様において、改変NK-92(登録商標)細胞は、腫瘍微小環境を調節する分泌型サイトカインをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、腫瘍微小環境を調節するサイトカインは、XCL1、CCL5、CCL21又はCCL16などのケモカインである。 いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、Toll様受容体(TLR)アゴニストをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、IL-12又はIFN-アルファをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、TGFベータ阻害剤、例えば、TGF-βを阻害するペプチド、をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、TGFベータトラップをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、TGFベータトラップは、TGFβRII分子の細胞外ドメイン、又はTGFβRII分子の細胞外ドメインの一本鎖(single chan)二量体を含む。
【0025】
一態様において、改変NK-92(登録商標)細胞は、ホーミング受容体、ABP若しくはCAR、Fc受容体、及び/又はサイトカインを発現するNK-92(登録商標)細胞の選択を提供するか又は生存を可能にするサイトカイン、をコードする、1つ以上又は複数の核酸分子を含む。したがって、いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、ケモカイン受容体、CAR、CD16、及びerIL-2をコードする核酸分子を含む。いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、CCR7又はCXCR2、CAR、CD16、及びerIL-2をコードする核酸分子を含む。いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、IL-12又はTGFベータトラップ、CAR、CD16、及びerIL-2をコードする核酸分子を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、CARは、Fcイプシロン受容体ガンマ(FcεRIγ)からの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、CARは、NK-92(登録商標)細胞によって一過性に発現される。一実施形態において、CARは、NK-92(登録商標)細胞によって安定して発現される。
【0027】
現在まで、FcεRIγ含有CARは、NK-92(登録商標)細胞、他のNK細胞株、又は内因性NK細胞では利用されていなかった。これは、他のシグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)が、特に追加のシグナル伝達ドメインと組み合わせた場合(第2世代及び第3世代のCAR)に、より効率的であると判断されたためである。FcεRIγからの細胞内ドメインを含む「第1世代」CARを発現するNK-92(登録商標)細胞は、CD3ζシグナル伝達ドメインを単独で、又は他のシグナル伝達ドメインと組み合わせてCARを発現する(すなわち、第2世代又は第3世代のCAR)NK-92(登録商標)細胞と比較して、CARによって認識される抗原を発現する癌細胞に対して同等以上の細胞傷害活性を有する、という予想外の驚くべき知見が本明細書に記載されている。一実施形態において、本明細書で企図されるCD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号40に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。
【0028】
一態様において、NK-92(登録商標)細胞、又はNK-92(登録商標)細胞の表面にキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞株が記載され、ここで、前記CARは、FcεRIγの細胞質ドメインを含む。一実施形態において、FcεRIγの細胞質ドメインは、配列番号31に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、FcεRIγの細胞質ドメインは、配列番号32に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸によってコードされる。
【0030】
いくつかの実施形態において、CARは、CD8からのヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態において、CARは、CD28からの膜貫通ドメインを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、NK-92(登録商標)細胞又は細胞株は、配列番号31(FcεRIγ細胞内細胞質ドメイン)、配列番号32(FcεRIγ細胞内シグナル伝達ドメインマイナス膜貫通ドメイン)、配列番号33(CD8ヒンジ領域)、配列番号34(CD8ヒンジ領域DNA)、配列番号35(CD28膜貫通ドメイン)及び/又は配列番号36(CD28膜貫通ドメイン、マイナスITAM又は細胞内配列)を含む核酸構築物で遺伝子改変される。一実施形態において、CD8ヒンジ領域、CD28膜貫通、及びFceRIガンマシグナル伝達ドメインアミノ酸配列は、配列番号37又は配列番号38に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、核酸配列の転写を促進するプロモーターをさらに含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは誘導性プロモーターである。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、1つ以上の内部リボソーム進入部位(IRES)を含むマルチシストロニックベクターであり、核酸配列から転写されたmRNAの内部領域からの翻訳の開始を可能にする。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、同じmRNAによってコードされる等モルレベルのポリペプチドを生成するために、T2A、P2A、E2A、又はF2Aペプチドなどの2Aペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、抗原結合タンパク質(ABP)をコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、ABPは、scFv又はコドン最適化されたscFvである。いくつかの実施形態において、ABPは、腫瘍細胞によって発現される抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、ABPは、キメラ抗原受容体(CAR)の一部である。いくつかの実施形態において、構築物は、サイトカインをコードする核酸を含み、これは、IL-2などのサイトカインを発現するNK-92(登録商標)細胞の選択を提供するか又は生存を可能にする。一実施形態において、サイトカインは小胞体を標的とする。一実施形態において、CAR scFvは、配列番号39に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、構築物は、図10に示されるベクターを含む。いくつかの実施形態において、NK-92(登録商標)細胞又は細胞株は、細胞表面上にCD16を発現するように遺伝子改変されている。一実施形態において、NK-92(登録商標)細胞又は細胞株は、細胞表面上に高親和性CD16(F158V)を発現するように遺伝子改変されている。
【0033】
一実施形態において、ABP又はCARは、腫瘍関連抗原を標的とするか、又はそれに特異的に結合する。一実施形態において、腫瘍関連抗原は、CD19、CD20、NKG2Dリガンド、CS1、GD2、CD138、EpCAM、HER-2、EBNA3C、GPA7、CD244、CA-125、MUC-1、ETA、MAGE、CEA、CD52、CD30、MUC5AC、c-Met、EGFR、FAP、WT-1、PSMA、NY-ESO1、CSPG-4、IGF1-R、Flt-3、CD276、CD123、PD-L1、BCMA、CD33、B7-H4、及び41BBからなる群から選択される。一実施形態において、腫瘍関連抗原は、CD19である。別の実施形態において、腫瘍関連抗原は、CD33である。
【0034】
一態様において、本開示は、FcεRIγの細胞質ドメインを有するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸によって形質転換されるNK-92(登録商標)細胞株に関し、ここで、CARは、NK-92(登録商標)細胞の表面に発現される。一実施形態において、核酸はRNAである。一実施形態において、核酸はDNAである。
【0035】
いくつかの実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、サイトカインを発現するNK-92(登録商標)細胞の選択を提供するか、又はその生存を可能にする、少なくとも1つのサイトカイン又はそのバリアントを発現するようにさらに改変される。一実施形態において、少なくとも1つのサイトカインは、NK-92(登録商標)細胞によって一過性に発現される。一実施形態において、少なくとも1つのサイトカインは、NK-92(登録商標)細胞によって安定して発現される。
【0036】
いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、本明細書に記載の1つ以上又は複数の核酸分子を含む発現ベクターを含む。いくつかの実施形態において、核酸分子は、核酸分子の転写を開始することができるプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、複数の核酸分子の各核酸分子は、別々の、別個の、及び/又は異なるプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、1つ以上の核酸分子は、同じプロモーターに作動可能に連結されている。一実施形態において、ホーミング受容体、CAR、Fc受容体、及びサイトカインをコードする核酸分子は、同じプロモーター又は単一のプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、プロモーターは誘導性プロモーターである。一実施形態において、サイトカインをコードする核酸分子は、ホーミング受容体、CAR、及びFc受容体(例えば、CD16又は高親和性CD16)をコードする核酸分子の下流又は3’に位置する。
【0037】
いくつかの実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、細胞表面上に本明細書に記載の核酸分子によってコードされるタンパク質を発現する。例えば、いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、細胞表面上にホーミング受容体、ABP又はCAR、及びFc受容体(例えば、CD16又は高親和性CD16)を発現する。
【0038】
改変NK-92(登録商標)細胞を含む組成物及びキットも提供される。改変された細胞を作製する方法及び細胞を使用して癌を処置する方法が提供される。
【0039】
別の態様において、癌を処置するか、又は腫瘍のサイズを縮小するための方法が記載されている。いくつかの実施形態において、癌を処置するか、又は腫瘍のサイズを縮小する方法は、本明細書に記載の治療有効量の改変NK-92(登録商標)細胞を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、投与は、癌を処置するか、又は対象の腫瘍のサイズを縮小する。いくつかの実施形態において、方法は、ホーミング受容体、標的抗原に特異的に結合するABP又はCAR、CD16又はCD16-158VなどのFc受容体、及び/又はerIL-2又はerIL-15などのサイトカイン、をコードする核酸を含む、治療有効量の改変NK-92(登録商標)細胞を、対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、分泌型サイトカイン、標的抗原に特異的に結合するABP又はCAR、CD16又はCD16-158VなどのFc受容体、及び/又はerIL-2又はerIL-15などのサイトカイン、をコードする核酸を含む、治療有効量の改変NK-92(登録商標)細胞を、対象に投与することを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のNK細胞は、TGF-βを遮断し、免疫抑制を除去するのを助けるために、TGF-β阻害剤と共に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のNK細胞は、腫瘍を減少させる、又は排除するのを助けるために、他の免疫療法剤と共に投与される。例えば、TGF-βは、ポリ(I:C)及びα-CD40抗体の腫瘍内注射と組み合わせた阻害ペプチドの腫瘍内注射によって阻害することができる。いくつかの実施形態において、TGF-β阻害剤は、IL-2と組み合わされる。
【0041】
別の態様において、疾患を処置するための本明細書に記載の組成物の使用が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の改変NK-92(登録商標)細胞は、疾患を処置するための薬剤としての使用のために提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の改変NK-92(登録商標)細胞は、疾患の処置における使用のために提供される。いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、ホーミング受容体、標的抗原に特異的に結合するABP又はCAR、CD16又はCD16-158VなどのFc受容体、及び/又はerIL-2又はerIL-15などのサイトカインをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、分泌型サイトカイン、標的抗原に特異的に結合するABP又はCAR、CD16又はCD16-158VなどのFc受容体、及び/又はerIL-2又はerIL-15などのサイトカインをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、疾患は癌である。
【0042】
1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載される。他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】NK-92(登録商標)細胞のAAVS1遺伝子座に挿入するためのCCR7受容体を含むプラスミドpNKAT-CCR7-LP3を示す概略図である。
図2】NFAT応答性CCL21遺伝子を含有するプラスミドpCRENFAT-CCL21を示す概略図である。
図3】野生型NK-92(登録商標)細胞及びCCR7を発現する改変NK-92(登録商標)細胞におけるNK-92(登録商標)細胞に関連する表現型マーカーの発現を示すグラフである。(レーン1:aNK(野生型);レーン2:改変NK-92(登録商標)細胞(MA3);レーン3:改変NK-92(登録商標)細胞(MB4);レーン4:改変NK-92(登録商標)細胞(MB6);レーン5:改変NK-92(登録商標)細胞(ME6);レーン6:改変NK-92(登録商標)細胞(MH3);A:アイソタイプ(APC);B:CD54(ICAM-1);C:NKp30;D:NKG2D
図4】K562細胞に対するCCR7を発現する改変NK-92(登録商標)細胞の細胞傷害活性を示すグラフである。
図5】HL-60細胞に対するCCR7を発現する改変NK-92(登録商標)細胞の細胞傷害活性を示すグラフである。
図6A】K562及びSUP-B15細胞への結合において示されたNK-92細胞におけるNFAT-ルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性化を示すグラフである(NK-92細胞にCD19-CARのmRNAをエレクトロポレーションした場合)。
図6B】K562及びSUP-B15細胞への結合において示されたNK-92細胞におけるNFAT-ルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性化を示すグラフである(NK-92細胞にCD19-CARのmRNAをエレクトロポレーションした場合)。
図7】ケモカインCCL19及びCCL21に向かって遊走したCCR7(Mi-aNK)を発現する改変NK-92(登録商標)細胞を示すグラフである。
図8】本明細書に記載の改変NK-92(登録商標)細胞のインビトロ試験のための例示的な方法を表す図を示す。活性化されたNK-92(登録商標)細胞(aNK)は、ケモカイン受容体(例えば、CCR7)を発現するように改変され、標的細胞は、受容体(例えば、CCL19又はCCL21)に結合するケモカインを発現するように改変された。改変されたNK-92(登録商標)細胞は、示される改変ボイデンチャンバートランスウェルアッセイで試験された。
図9】本明細書に記載の改変NK-92(登録商標)細胞を使用した代表的な細胞傷害性アッセイを示す。改変NK-92(登録商標)細胞は、一方又は両方のケモカインリガンドを発現及び分泌するK562標的細胞に対する細胞傷害性について試験された。ML4クローンは、標的細胞の溶解の割合が最も高く、K562標的細胞がCCL19及びCCL21の両方を発現した場合にパーセンテージが増加した。
図10】単一の挿入位置で細胞を安定的にトランスフェクトするために使用することができる、「クアドリシストロニックベクター」と呼ばれるプラスミドpNKAT-CCR7-CD19CAR-CD16-ERIL2を示す概略図である。
図11図10からの線形化されたプラスミドを示す概略図である。
図12】NK-92(登録商標)細胞によるCCR7、CD16、及びCD19 CARの細胞表面発現を示す。「aNK」は、野生型NK-92(登録商標)細胞株である。「ML4」は、プロモーター(すなわち、Mi-aNK)に作動可能に連結されたCCR7をコードする核酸構築物でトランスフェクトされたaNK細胞株である。「P2」は、CCR7、CD16、ER-IL2及びCD19 CAR(すなわち、Mi-T-hanK)をコードする核酸構築物でトランスフェクトされたaNK細胞株である。
図13】NK細胞投与後の示された時間での親又はCCL19発現腫瘍への非CR対Mi-T-haNK細胞のホーミング。データは平均±SEMである。-及び+の記号は、CCR7受容体(最初の記号)及びCCL19リガンド(二番目の記号)の発現状態を示す。*、一元配置分散分析とそれに続くテューキーの検定による多重比較によるP<0.05。最後のパネルは、時間経過曲線を示す。
図14】投与後24時間での単一動物における親又はCCL19発現腫瘍への非CR及びMi-T-haNK細胞浸潤の直接比較。Mi-T-haNK細胞を投与された4匹中3匹の動物は、CCL19+腫瘍に対してより高い浸潤を示したが、非CR CD19 t-haNK細胞を投与された4匹中3匹は、K562及びK-19腫瘍の両方に対して同様のレベルの浸潤を示した。各群の1匹の「外れ値」の動物は破線で示される。
図15】IV Raji-19.5担癌動物の生存曲線を示す。ビヒクル、CD19 t-haNK細胞、又はR7-19.1細胞で処置されたRaji-19.5IV担癌NSGマウスの生存曲線。統計分析は、ログランク(Mantel-Cox)検定によって行われた。***、P=0.0002;****、P<0.0001。
図16】IV Raji-19.5腫瘍モデルにおける体重変化を示す。ビヒクル、CD19 t-haNK細胞、又はR7-19.1細胞で処置されたIV Raji-19.5担癌動物の体重変化曲線(0日目の体重に対する変化率)。データは平均±SEMである。赤い矢印は投与日を示す。投与日に行われた体重測定は、投与前に実施された。20日目より前の全ての時点で、NK細胞処置群の曲線は、2元配置分散分析とそれに続くテューキー検定による多重比較により、ビヒクル対照群と比較して統計的に有意な差(P<0.05)に達した。
図17】無作為化時のSC Raji-19.5腫瘍のサイズを示す。無作為化時の個々の腫瘍サイズが示される。黒の四角はサイズが200mmを超える大腫瘍を囲み、青の四角は200mm未満の小腫瘍を囲んだ。群平均±SEMも示される。
図18】SC Raji-19.5担癌マウスの大腫瘍亜集団の腫瘍増殖を示す。(A)群分析。データは平均±SEMである。統計分析は、2方向混合効果分析と、それに続くテューキー検定による多重比較によって行われた。統計的有意性は達成されなかった。(B)個別曲線。赤い矢印は投与日を示す。Tx:処置。
図19】SC Raji-19.5担癌マウスの小腫瘍亜集団の腫瘍増殖を示す。(A)群分析。データは平均±SEMである。統計分析は、2方向混合効果分析と、それに続くテューキー検定による多重比較によって行われた。どの時点でも、2群間で統計的有意性は検出されなかった。(B)個別曲線。赤い矢印は投与日を示す。Tx:処置。
図20】SC Raji-19.5腫瘍モデルにおける体重変化を示す。ビヒクル、CD19 t-haNK細胞、又はR7-19.1細胞で処置されたSC Raji-19.5担癌動物の体重変化曲線(1日目の体重に対する変化率)。データは平均±SEMである。赤い矢印は投与日を示す。投与日に行われた体重測定は、投与前に実施された。16日目より前の全ての時点で、NK細胞処置群の曲線は、2元配置混合効果分析とそれに続くテューキー検定による多重比較により、ビヒクル対照群と比較して統計的に有意な差に達した。
図21】クアドリシストロニックTGFβトラップ装甲(armored)PD-L1 CAR構築物の一実施形態を示す。
図22】PD-L1(TGFβトラップ)t-haNKクローンにおけるPD-L1CAR及びCD16の発現解析を示す。
図23】TGFβトラップがTGFβトラップ/PD-L1 t-haNKクローンの培養上清に分泌されることを示す。
図24】K562標的細胞に対するクアドリシストロニックTGFβトラップ構築物(contruct)の細胞傷害性を示す。
図25】PD-L1を発現するSUP-B15標的細胞に対するクアドリシストロニックTGFβトラップ構築物(contruct)のCAR死滅を示す。
図26】MDA-MB231標的細胞に対するクアドリシストロニックTGFβトラップ構築物(contruct)のCAR死滅を示す。
図27】SUP-B15CD19-CD20+に対するクアドリシストロニックTGFβトラップ構築物(contruct)のADCCを示す。
図28】TGFβ/SMADルシフェラーゼレポーターHEK293細胞がTGFβによって誘導されることを示す。
図29】HEK293Tレポーターアッセイにおいて、分泌型TGFβトラップがTGFβを隔離し、ルシフェラーゼ発現を阻害したことを示す。
図30】IL-12ウイルスで形質導入されたNK-92(登録商標)細胞株からのIL-12分泌を示す。
図31】クアドリシストロニックIL-12/PD-L1 t-hanK構築物の一実施形態を示す。
図32】CCR7 CD19 t-haNK細胞の細胞傷害性データを示す。
図33】IL-12/PD-L1 t-haNK(商標)細胞株からのIL-12分泌を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
定義
特に他で定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、免疫学及び免疫療法の分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0045】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義されるものとするいくつかの用語について言及がなされる。
【0046】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことが意図される。
【0047】
範囲を含み、バリエーションを含む、全ての数値指定、例えば、pH、温度、時間、濃度、量、及び分子量は、通常、当業者が遭遇するものである。したがって、数値には、関連する有効数字に応じて、必要に応じて、0.1又は1.0の(+)又は(-)増分のバリエーションを含めることができる。必ずしも明記されないが、全ての数値表記は「約」という用語を前に付すことができることを理解すべきである。本明細書で使用される「約」という用語はまた、値が±1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%変動できることを意味し得る。
【0048】
必ずしも明記されないが、本明細書に記載される試薬は単なる例示であり、そのような試薬の同等物が当技術分野で公知であることも理解すべきである。
【0049】
「任意選択による」又は「任意選択により」は、その後に記載される事象又は状況が発生してもしなくてもよいこと、及びその記載が、その事象又は状況が起こる場合とそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0050】
「含んでいる」という用語は、組成物及び方法が記載された要素を含むが、他の要素を排除しないことを意味することが意図される。組成物及び方法を定義するために用いられる場合の「から本質的になる」は、その組み合わせにとって何らかの本質的に重要な他の要素を排除することを意味するものとする。例えば、本明細書に定義されるような要素から本質的になる組成物は、特許請求の範囲の基本的且つ新規の特徴に実質的に影響を与えない他の要素を排除しない。「からなる」は、微量を上回る量の他の成分及び記載される実質的な方法のステップを排除することを意味するものとする。これらの移行語の各々によって定義される実施形態は本開示の範囲内である。
【0051】
「ホーミング受容体」という用語は、細胞が標的細胞又は組織に向かって移動することを直接的又は間接的にもたらす細胞経路を活性化する受容体を指す。例えば、白血球によって発現されるホーミング受容体は、白血球及びリンパ球によって使用され、高内皮細静脈を介して二次リンパ組織に進入する。ホーミング受容体はまた、ケモカイン勾配などの化学勾配の発生源に向かって遊走するために細胞によって使用され得る。ホーミング受容体の例には、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7、CX3CR1、XCR1、CCXCKR、D6、及びDARCを含むがこれらに限定されないケモカイン受容体;サイトカイン受容体;L-セレクチン(CD62L)を含むセレクチンなどの細胞接着分子;α4β7インテグリン、LPAM-1、及びLFA-1などのインテグリンなどの、Gタンパク質共役受容体が含まれる。ホーミング受容体は一般に、標的組織又は細胞上の認識リガンドに結合する。いくつかの実施形態において、ホーミング受容体は、粘膜血管アドレシン細胞接着分子1(MAdCAM-1)などの、細静脈の内皮上のアドレシンに結合する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「免疫療法」は、単独であろうと組み合わせであろうと、改変型又は非改変型のNK-92(登録商標)細胞、天然に生じる若しくは改変されたNK細胞又はT細胞の使用を指し、それらは標的細胞に接触すると細胞傷害性を誘導することができる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ナチュラルキラー(NK)細胞」は、特異的抗原刺激の非存在下で、且つ主要組織適合複合体(MHC)クラスによる制限なしに、標的細胞を死滅させる免疫系の細胞である。 NK細胞は、CD56表面マーカーの存在及びCD3表面マーカーの非存在を特徴とする。
【0054】
「内因性NK細胞」という用語は、NK-92(登録商標)細胞株とは区別される、ドナー(又は患者)に由来するNK細胞を指すために用いられる。内因性NK細胞は、一般的に、その中でNK細胞が富化されている細胞の不均一な集団である。内因性NK細胞は、患者の自家処置用又は同種異系処置用のものであり得る。
【0055】
「NK-92」という用語は、Gong et al.(1994)に記載され、その権利をNantKwest(登録商標)が所有する、非常に強力な独自の細胞株に由来するナチュラルキラー細胞を指す(以下、「NK-92(登録商標)細胞」)。不死NK細胞株は、元々、非ホジキンリンパ腫を有する患者から得られた。特に明記しない限り、「NK-92(登録商標)」という用語は、元のNK-92(登録商標)細胞株並びに(例えば、外因性遺伝子の導入により)改変されているNK-92(登録商標)細胞株を指すことを意図する。NK-92(登録商標)細胞並びにその例示的且つ非限定的な改変は、米国特許第7,618,817号明細書;第8,034,332号明細書;第8,313,943号明細書;第9,181,322号明細書;第9,150,636号明細書に記載され、米国特許出願第10/008,955号明細書として公開されており、これらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、野生型NK-92(登録商標)、NK-92(登録商標)-CD16、NK-92(登録商標)-CD16-γ、NK-92(登録商標)-CD16-ζ、NK-92(登録商標)-CD16(F176V)、NK-92(登録商標)MI、及びNK-92(登録商標)CIを含む。NK-92(登録商標)細胞は当業者に公知であり、そのような細胞は、NantKwest,Inc.から容易に入手可能である。
【0056】
「aNK」という用語は、Gong et al.(1994)に記載され、その権利をNantKwestが所有する、非常に強力な独自の細胞株に由来する未改変のナチュラルキラー細胞を指す(以下、「aNK(登録商標)細胞」)。「haNK」という用語は、Gong et al.(1994)に記載され、その権利をNantKwestが所有する、細胞表面上にCD16を発現するように改変された、非常に強力な独自の細胞株に由来するナチュラルキラー細胞を指す(以下、「CD16+NK-92(登録商標)細胞」又は「haNK(登録商標)細胞」)。いくつかの実施形態において、CD16+NK-92(登録商標)細胞は、細胞表面上に高親和性CD16受容体を含む。「taNK」という用語は、Gong et al.(1994)に記載され、その権利をNantKwestが所有する、キメラ抗原受容体を発現するように改変された、非常に強力な独自の細胞株に由来するナチュラルキラー細胞を指す(以下、「CAR改変NK-92(登録商標)細胞」又は「taNK(登録商標)細胞」)。「t-haNK」という用語は、Gong et al.(1994)に記載され、その権利をNantkWestが所有する、細胞表面にCD16を発現し、キメラ抗原受容体を発現するように改変された、非常に強力な独自の細胞株に由来するナチュラルキラー細胞を指す(以下、「CAR改変CD16+NK-92(登録商標)細胞」又は「t-haNK細胞」)。いくつかの実施形態において、t-haNK細胞は、細胞表面上に高親和性CD16受容体を発現する。
【0057】
「ケモカイン標的化t-haNK」及び「Mi-T-haNK」という用語は、細胞表面にケモカイン受容体を発現するように改変されたt-haNK細胞を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「細胞傷害性」及び「細胞溶解性」という用語は、NK-92(登録商標)細胞などのエフェクター細胞の活性を記述するために用いられる場合、同義であることが意図される。一般に、細胞傷害活性は、様々な生物学的、生化学的、又は生物物理学的機序のいずれかによって標的細胞を死滅させることに関係する。細胞溶解は、より具体的には、エフェクターが標的細胞の原形質膜を溶解し、それによってその物理的完全性を破壊するという活性を指す。これは結果的に標的細胞の死滅をもたらす。理論に拘束されることを望むものではないが、NK-92(登録商標)細胞の細胞傷害作用は細胞溶解によるものであると考えられる。
【0059】
細胞/細胞集団に関して「死滅する」という用語は、その細胞/細胞集団の死につながる任意のタイプの操作を含むように指向されている。
【0060】
「Fc受容体」という用語は、Fc領域として知られる抗体の一部に結合することによって免疫細胞の防御機能に寄与する、ある特定の細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞)の表面上に見出されるタンパク質を指す。細胞のFc受容体(FcR)への抗体のFc領域の結合は、抗体媒介性食作用又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して細胞の食作用又は細胞傷害活性を刺激する。FcRは、それらが認識する抗体のタイプに基づいて分類される。例えば、Fc-γ受容体(FCγR)はIgGクラスの抗体に結合する。FCγRIII-A(CD16とも呼ばれる)は、IgG抗体に結合してADCCを活性化する低親和性Fc受容体である。FCγRIII-Aは典型的にはNK細胞上に見出される。NK-92(登録商標)細胞はFCγRIII-Aを発現しない。Fcイプシロン受容体(FcεR)はIgE抗体のFc領域に結合する。
【0061】
「キメラ抗原受容体」(CAR)いう用語は、本明細書で使用される場合、細胞内シグナル伝達ドメインと融合する細胞外抗原結合ドメインを指す。CARはT細胞又はNK細胞で発現し、細胞傷害性を増大させることができる。概して、細胞外抗原結合ドメインは、関心対象の細胞上に見出される抗原に特異的なscFvである。CAR発現NK-92(登録商標)細胞は、scFvドメインの特異性に基づき、ある特定の抗原を細胞表面上に発現する細胞を標的とする。scFvドメインは、腫瘍特異的抗原を含む、任意の抗原を認識するように遺伝子操作することができる。例えば、CD19CARは、一部の癌によって発現される細胞表面マーカーである、CD19を認識する。
【0062】
「腫瘍特異的抗原」という用語は、本明細書で用いられる場合、癌又は新生物性細胞上に存在するが、癌細胞と同じ組織又は系列に由来する正常な細胞上では検出できない抗原を指す。腫瘍特異的抗原は、本明細書で使用される場合、腫瘍関連抗原、すなわち、癌細胞と同じ組織又は系列に由来する正常な細胞と比較して癌細胞上でより高いレベルで発現する抗原も指す。
【0063】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は互換的に用いられ、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド又はその類似体のいずれかのヌクレオチドの任意の長さのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、どのような三次元構造をとってもよく、既知又は未知の任意の機能を果たしうる。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、EST又はSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体などの改変ヌクレオチドを含むことができる。存在する場合には、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリヌクレオチドのアセンブリの前又は後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分で中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、重合の後に、例えば標識成分とのコンジュゲーションにより、さらに改変することができる。この用語はまた、二本鎖分子と一本鎖分子との両方を指す。特に他に指定又は要求がない限り、ポリヌクレオチドである本発明の任意の実施形態は、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが知られる又は予測される2本の相補的一本鎖形態の各々との両方を包含する。
【0064】
ポリヌクレオチドは、以下の4種のヌクレオチド塩基の特定の配列で構成される:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);及びポリヌクレオチドがRNAである場合はチミンに代えてウラシル(U)。したがって、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。
【0065】
「相同性」又は「同一性」又は「類似性」とは、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性を指す。配列類似性は、比較を目的としてアライメントされ得る各配列における位置を比較することによって決定することができる。比較した配列中のある位置が同じ塩基又はアミノ酸で占められる場合、分子はその位置で相同である。配列間の配列類似性のパーセントは、所与の比較ウィンドウにわたって配列によって共有される一致又は相同位置の数の関数である。配列は、本明細書に記載の配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であり得る。
【0066】
同一又はパーセント同一性という用語は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈において、同一であるか、又は以下に記載するデフォルトのパラメーターを使用してBLAST又はBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して、又は手動アラインメント及び目視検査によって測定された、同一(すなわち、比較ウィンドウ又は指定領域で最大の一致を得るために比較及びアラインされた場合、特定の領域で少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれを超える同一性)の特定のパーセンテージのアミノ酸残基又はヌクレオチドを有する2つ以上の配列又は部分配列を指す(例えば、NCBIウェブサイト等を参照)。その場合、そのような配列は実質的に同一であると言われる。この定義はまた、試験配列の相補体(compliment)を参照するか、又はそれに適用され得る。定義には、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有する配列も含まれる。以下に説明するように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを説明することができる。いくつかの実施形態において、同一性は、長さが少なくとも約25アミノ酸又はヌクレオチドである領域、又は長さが50~100アミノ酸又はヌクレオチドである領域にわたって存在する。
【0067】
配列比較について、典型的には、1つの配列が参照配列として機能し、試験配列がこれと比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列がコンピューターに入力され;必要に応じて、サブ配列座標が指定され;配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。好ましくは、デフォルトのプログラムパラメータを使用することができ、又は代替パラメーターを指定することができる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0068】
本明細書で使用される比較ウィンドウは、20~600、通常は約50~約200、より通常は約100~約150からなる群から選択される数の隣接する位置のいずれか1つのセグメントへの参照を含み、2つの配列が最適にアラインされた後、配列は、同じ数の隣接した位置の参照配列と比較され得る。比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって;Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって;Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性の検索によって;これらのアルゴリズムのコンピューター化された実施によって(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA);又は手動アラインメント及び目視検査によって(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.1995 supplement)を参照)行うことができる。
【0069】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの好ましい例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Altschul et al.,Nuc.Acids Res.25:3389-3402(1977)、及びAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載される。BLAST及びBLAST2.0は、本明細書に記載のパラメーターと共に、核酸又はタンパク質のパーセント配列同一性を決定するために使用される。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、当技術分野で公知であるように、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公に利用可能である。このアルゴリズムは、最初に、クエリ配列で選択された長さ(W)の短いワードを特定することにより、高スコアの配列ペア(HSP)を特定することを含み、これは、データベース配列内の同じ長さのワードとアラインしたときに、正の値の閾値スコアTの一部と一致するか、又はそれを満たす。Tは、近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.、上掲)。これらの最初の近隣ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして機能する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアを増やすことができる限り、各配列に沿って両方向に拡張される。累積スコアは、パラメーターM(一致する残基のペアの報酬スコア;常に0より大)及びN(不一致の残基のペナルティスコア;常に0未満)を使用してヌクレオチド配列に対して計算される。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。各方向へのワードヒットの拡張は、次の場合に停止される:累積アライメントスコアが最大達成値から数量Xだけ減少した場合;1つ以上の負のスコアの残基アラインメントの累積により、累積スコアがゼロ以下になる場合;又はいずれかの配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。期待値(E)は、データベース検索で偶然に発生すると予想されるものと同等以上のスコアを有する、異なるアラインメントの数を表す。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムはデフォルトとしてワード長3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照)、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4を使用する。
【0070】
本明細書で使用される形質転換という用語は、外因性又は異種の核酸分子(例えば、ベクター又は組換え核酸分子)がレシピエント細胞に導入されるプロセスを指す。外因性又は異種の核酸分子は、宿主細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み込まれて(すなわち、共有結合されて)いてもよく、組み込まれていなくてもよい。例えば、外因性又は異種ポリヌクレオチドは、プラスミドなどのエピソーム要素上に維持され得る。或いは、又はさらに、外因性又は異種ポリヌクレオチドは、染色体複製を介して娘細胞に受け継がれるように、染色体に組み込まれ得る。形質転換の方法には、限定されるものではないが、リン酸カルシウム沈殿;レシピエント細胞と組換え核酸を含む細菌プロトプラストとの融合;組換え核酸を含むリポソームによるレシピエント細胞の処理;DEAEデキストラン;ポリエチレングリコール(PEG)を使用した融合;エレクトロポレーション;マグネトポレーション;遺伝子銃送達;レトロウイルス感染;リポフェクション;細胞への直接のDNAのマイクロインジェクションが含まれる。
【0071】
細胞に関して使用される場合、形質転換という用語は、細胞が外因性又は異種の遺伝物質(例えば、組換え核酸)を運搬するように、本明細書に記載されるように形質転換を受けた細胞を指す。形質転換という用語はまた、又は代替的に、外因性又は異種の遺伝物質を含む細胞、細胞のタイプ、組織、生物などを指すために使用することができる。
【0072】
導入という用語は、細胞又は生物への核酸の導入、例えば、形質転換法(例えば、塩化カルシウム媒介性形質転換、エレクトロポレーション、粒子衝撃)による導入、また、形質導入、コンジュゲーション、接合を含む他の方法による導入に関して本明細書で使用される場合、その最も広い意味を有し、導入を包含することを意図している。任意選択により、構築物を利用して、核酸を細胞又は生物に導入する。
【0073】
細胞、核酸、ポリペプチド、ベクターなどに関して使用される場合、改変及び組換えという用語は、細胞、核酸、ポリペプチド、ベクターなどが実験室的方法によって改変されているか、又はその結果であり、自然に発生するものではない。したがって、例えば、改変された細胞は、実験室的方法、例えば、核酸を細胞に導入するための形質転換法によって産生又は改変された細胞を含む。改変された細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内に見出されない核酸配列を含み得るか、又は改変された、例えば非天然プロモーターに連結された核酸配列を含み得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、外因性という用語は、細胞又は生物に人工的に導入され、及び/又はそれが存在する細胞では自然に発生しない、核酸(例えば、制御配列及び/又は遺伝子を含む核酸)又はポリペプチドなどの物質を指す。換言すれば、核酸又はポリペプチドなどの物質は、それが導入される細胞又は生物の外部に由来する。外因性核酸は、細胞内に天然に存在する核酸のヌクレオチド配列と同一のヌクレオチド配列を有し得る。例えば、NK-92(登録商標)細胞は、NK-92(登録商標)配列を有する核酸、例えば、ヘパラナーゼを含むように遺伝子操作することができる。任意選択により、内因性NK-92(登録商標)ヘパラナーゼ配列は、自然条件下において制御配列が関与していない遺伝子に作動可能に連結されている。NK-92(登録商標)ヘパラナーゼ配列は宿主細胞において自然に発生し得るが、導入された核酸は、本開示によれば外因性である。外因性核酸は、細胞内に天然に存在する任意の核酸のヌクレオチド配列とは異なるヌクレオチド配列を有し得る。例えば、外因性核酸は、異種核酸、すなわち、異なる種又は生物からの核酸であり得る。したがって、外因性核酸は、供給源生物に天然に見出される核酸と同一であるが、外因性核酸が導入される細胞とは異なる核酸配列を有し得る。本明細書で使用される場合、内因性という用語は、細胞に固有の核酸配列を指す。本明細書で使用される場合、異種という用語は、細胞に固有ではない、すなわち、細胞とは異なる生物に由来する核酸配列を指す。外因性及び内因性又は異種という用語は、相互に排他的ではない。したがって、核酸配列は、外因性及び内因性であり得る。これは、核酸配列が細胞に導入され得るが、細胞に天然に存在する核酸の配列と同一又は類似の配列を有することを意味する。同様に、核酸配列は、外因性及び異種であり得る。これは、核酸配列が細胞に導入され得るが、細胞に固有ではない配列、例えば、異なる生物からの配列を有することを意味する。
【0075】
本明細書に記載されるように、対照又は標準対照は、試験サンプル、測定値、又は値と比較するための参照、通常は既知の参照として機能するサンプル、測定値、又は値を指す。例えば、試験細胞、例えば、Fc受容体の遺伝子をコードする核酸配列で形質転換された細胞は、既知の正常(野生型)細胞(例えば、標準対照細胞)と比較することができる。標準対照はまた、Fc受容体を発現しないか、又はFc受容体活性を有しないか、若しくは最小レベルで有する、細胞の集団(例えば、標準対照細胞)から収集された平均測定値又は値を表し得る。当業者は、標準対照が、任意の数のパラメーター(例えば、RNAレベル、ポリペプチドレベル、特定の細胞型など)の評価のために設計され得ることを認識するであろう。
【0076】
「発現する」という用語は、遺伝子産物(例えば、タンパク質)の産生を指す。発現に言及する場合、「一過性」という用語は、ポリヌクレオチドが細胞のゲノムに組み込まれていないことを意味する。発現に言及する場合、「安定」という用語は、ポリヌクレオチドが細胞のゲノムに組み込まれていること、又は陽性選択マーカー(すなわち、特定の成長条件下で利益を与える細胞によって発現される外因性遺伝子)が導入遺伝子の発現を維持するために利用されることを意味する。
【0077】
「サイトカイン」という用語は、免疫系の細胞に影響する生物学的分子の一般的クラスを指す。例示的なサイトカインには、限定されるものではないが、インターフェロン及びインターロイキン(IL)、特にIL-2、IL-12、IL-15、IL-18及びIL-21が含まれる。好ましい実施形態において、サイトカインはIL-2である。
【0078】
「腫瘍微小環境を調節するサイトカイン」という用語は、NK-92(登録商標)細胞によって発現され、抗腫瘍反応を高めるように機能する分子を指す。特定のサイトカインは、腫瘍に対する内因性免疫系の反応を阻害する可能性があるため、癌の処置における免疫療法の有効性を低下させる。したがって、この用語はまた、ペプチド阻害剤及び/又は腫瘍増殖を促進するサイトカインに結合するリガンド又は受容体、例えばリガンドトラップなどの、腫瘍増殖を促進するサイトカインの阻害剤を含む。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、例えば形質転換のプロセスによって、ベクターが許容細胞内に配置された場合に複製することができるような、インタクトなレプリコンを含む非染色体性の核酸を指す。ベクターは、細菌などの1つの細胞タイプにおいて複製することができるが、哺乳動物細胞などの別の細胞では複製する能力が限られているか、その能力がない。ベクターはウイルス性であっても、非ウイルス性であってもよい。核酸を送達するための例示的な非ウイルスベクターには、以下が含まれる:裸のDNA;単独で又はカチオン性ポリマーとの組み合わせで、カチオン性脂質と複合体を形成したDNA;アニオン性及びカチオン性リポソーム;一部の場合にはリポソーム内に含まれる、異種ポリリシン、一定の長さのオリゴペプチド、及びポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーで縮合したDNAを含むDNA-タンパク質複合体及び粒子;並びにウイルスとポリリシン-DNAを含む三元複合体の使用。一実施形態において、ベクターはウイルスベクター、例えば、アデノウイルスである。ウイルスベクターは当技術分野で周知である。
【0080】
本明細書で使用される場合、「標的化」という用語は、タンパク質の発現に言及する場合、限定されるものではないが、細胞内又は細胞の外側の適切な目的地にタンパク質又はポリペプチドを方向付けることを含むことを意図する。ターゲティングは、典型的には、ポリペプチド鎖中の一続きのアミノ酸残基であるシグナルペプチド又はターゲティングペプチドを介して達成される。こうしたシグナルペプチドは、ポリペプチド配列内のどこにでも位置することができるが、多くの場合はN末端に位置する。ポリペプチドは、C末端にシグナルペプチドを有するように操作することもできる。シグナルペプチドは、細胞外の区域、原形質膜への配置、ゴルジ、エンドソーム、小胞体、その他の細胞内区画へポリペプチドを方向付けることができる。例えば、そのC末端に特定のアミノ酸配列(例えば、KDEL)を有するポリペプチドは、ER内腔に保留されるか、又はER内腔に送り返される。
【0081】
本明細書で使用される「標的」という用語は、腫瘍の標的化を指す場合、腫瘍細胞(すなわち、標的細胞)を認識して死滅させるNK-92(登録商標)細胞の能力を指す。この文脈における「標的化された」という用語は、例えば、NK-92(登録商標)細胞によって発現されたCARが、腫瘍によって発現された細胞表面抗原を認識して結合する能力を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクト」という用語は、細胞への核酸の挿入を指す。トランスフェクションは、核酸が細胞に進入するのを可能にする任意の手段を使用して実施され得る。DNA及び/又はmRNAが細胞にトランスフェクトされ得る。好ましくは、トランスフェクトされた細胞は、核酸によってコードされる遺伝子産物(すなわち、タンパク質)を発現する。
【0083】
表題又は副題が、読者の便宜のために本明細書において用いられる可能性があり、それらは本発明の範囲に影響を与えることを意図しない。加えて、本明細書で用いられる一部の用語は下記でより具体的に定義される。
【0084】
癌及び腫瘍に対する免疫療法を改善するため、及び/又は目的の標的へのホーミング(遊走)を増加させるための基礎として細胞傷害性活性化ナチュラルキラー細胞株(NK-92)を使用する遺伝子操作された細胞が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、発現したときにリンパ球をリンパ節に指向させることが知られている、ホーミング受容体を発現するように遺伝子操作される。いくつかの実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、腫瘍微小環境を調節する分泌型サイトカイン、又は腫瘍微小環境を調節するサイトカインを遮断する阻害剤、を発現するように遺伝子操作される。
【0085】
本開示は、クアドラシストロニックベクターを使用して、単一の高活性プロモーターによって駆動される複数の遺伝子を挿入して、臨床免疫療法で使用するための安定な免疫療法細胞株を産生するという利点を提供する。クアドラシストロニックベクターは、P2AペプチドとIRES要素を含む1つ以上のアプローチを使用して、単一のプロモーターの制御下で4つの遺伝子をつなぎ合わせ、最終要素(この場合、細胞の生存及び/又は増殖のための発現を必要とする選択的薬剤)の発現に結び付ける。
【0086】
概念実証の実施形態において、治療用細胞株において改変された遺伝子発現プロファイルを生成するために使用される4つの遺伝子は、CCR7、CD19キメラ抗原受容体、CD16の高親和性バリアント、及び小胞体結合IL-2である。ERに結合したIL-2は、それが組み込まれているNK-92(登録商標)ベースの細胞株の細胞傷害性能力を刺激する役割に加え、選択剤として機能する。IL-2産生遺伝子は、プロモーターから最も遠いクアドラシストロニックベクターの最後に配置されているため、遺伝子が断片を構築した場合に失われる可能性が最も高い要素である(細胞は継続的な生存のためにIL-2を要するため、陰性選択及びプールからの自己切除につながる)。しかし、全ての要素がゲノムに正常に組み込まれた場合、IL-2の独自の供給源を組み込んだ細胞のみが生き残るため、培地からIL-2を除去することで細胞が選択される。IL-2要素はプロモーターから最も遠いため、これは4つの要素のカセット全体の完全な組み込みに有利である。これは他の成分のフローサイトメトリー染色分析によってさらに検証できる(実施例を参照)。
【0087】
本明細書に記載の構築物は、新しい治療用細胞株を生成する際の開発時間を短縮し、複数ラウンドのゲノム操作及びその後の選択による細胞へのストレス及び悪影響を低減するという利点を提供する。さらに、選択剤(この場合、ER-IL-2)を構築物の最後に置くことにより、RNAの転写及びプロセシングの性質上、細胞がIL-2飢餓を引き起こすことなく構築物の任意の所与の成分をサイレンシングすることは困難であることが予想される。したがって、この方法で構築された安定した細胞株は、それらが独自のIL-2を産生し続ける限り、ベクターに含まれている全ての成分の発現を保持するはずである。
【0088】
概念実証を示すために、このクアドラシストロニック構築物の一部である4成分により、4つの特定の目標が取り上げられた。IL-2は選択剤として機能し、NK-92(登録商標)細胞の細胞傷害性効果の既知のアゴニストであり、効果的な癌治療剤となる。CCR7要素(C-Cケモカイン受容体タイプ7)は、それを発現する免疫細胞を、リンパ節で一般的に発現するリガンドCCL19及びCCL21のケモカイン勾配の方向に遊走させる役割を果たすケモカイン受容体である。一実施形態において、本明細書で企図されるCCR7要素は、配列番号1(CCR7配列)に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。一実施形態において、本明細書で企図されるCCL21は、配列番号2(CCL21配列)に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。一実施形態において、本明細書で企図されるCCL19は、配列番号16(CCL19配列)に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0089】
CD19 CAR(キメラ抗原受容体)は、遭遇した細胞の表面でCD19分化クラスターに遭遇したときに、細胞の細胞傷害性を高めるために使用される構築物である。これは、正常及び悪性の両方のB細胞で一般的に発現する分化のクラスターであり、B細胞リンパ腫に対する直接免疫療法試験で有効性を示している。高親和性CD16受容体により、改変NK-92(登録商標)細胞は、リツクスマブ(Rituxumab)及びハーセプチンなどの癌処置レジメンでモノクローナル抗体として使用されるものなどの、IgG抗体によって認識された細胞を認識して応答することができる。CD16受容体で武装した免疫細胞がこれらの抗体の1つでコーティングされた細胞に遭遇すると、ADCC(抗体依存性細胞傷害)を引き起こし、細胞を破壊しようとする。実際には、これにより、そのように武装した細胞を、癌新生抗原などに対するモノクローナル抗体との併用療法レジメンで使用することが可能になる。これらの成分のそれぞれはそれ自体で有用性を有する一方、この特定の組み合わせを組み合わせることで、腫瘍増殖の一般的な部位(リンパ節)に遊走することができる、B細胞リンパ腫の強力な療法を作成することが提案されており、これは、B細胞抗原CD19を認識し、CAR媒介性細胞傷害性を開始するか、リツクスマブ(Rituxumab)などのモノクローナル抗体と作用して抗原エスケープの可能性を回避する。この概念実証の例は非限定的であり、NK-92(登録商標)細胞は、効果的な免疫療法細胞株を産生するために、他の目的の抗原を標的とする他のホーミング受容体及び/又はCARを発現するように本明細書に記載の方法を使用して改変できることが理解されよう。
【0090】
本明細書に記載されているように、改変NK-92(登録商標)細胞は、選択可能なマーカーを含む除去可能な選択カセットと共にCCR7発現カセットを含む線形化された遺伝子構築物を用いたエレクトロポレーション後、伸長因子1a(EF1a)プロモーターによって駆動されるCCR7リンパ節ホーミング受容体の安定した長期発現を伴って生成されている。ピューロマイシン選択から1週間後、段階希釈クローニングの後に、高レベルのCCR7発現を保持するモノクローナル細胞株を樹立した。これらのCCR7過剰発現NK細胞は、遊走/浸潤アッセイにおいてリンパ節関連ケモカインCCL21及びCCL19に対して機能的応答を示す。一実施形態において、本明細書で企図されるEF1aプロモーターは、配列番号3(EF1aプロモーター配列)に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0091】
いくつかの例示的な実施形態において、本明細書で企図されるケモカイン及びホーミング受容体は、配列番号44(CCR7 a.a.酸配列)、又は配列番号45(CCL19 a.a.酸配列)、又は配列番号46(CCL21 a.a.配列)、又は配列番号47(CXCR2 n.t.配列)、又は配列番号:48(CXCR2 a.a.配列)、又は配列番号49(CXCL14 n.t.配列)、又は配列番号50(CXCL14 a.a.配列)、又は配列番号51(CD62L n.t.配列)、又は配列番号:52(CD62L a.a.配列)、又は配列番号53(IL-8 n.t.配列)、又は配列番号54(IL-8 a.a.配列)、又は配列番号55(CXCL1 n.t.配列)、又は配列番号:56(CXCL1 a.a.配列)に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0092】
感受性細胞株の標的関与は、NFAT転写因子の活性化とその核転座によってNK-92(登録商標)細胞で認識されることが示されている。FceRIg又はCD3zeta経路(ADCC又はCARを介した標的認識を含む)が関与する標的結合は、NK-92(登録商標)細胞でNFAT活性化を誘導するのに十分である。これは、NFAT結合ドメインに隣接する3つの停止領域とホタルルシフェラーゼを駆動する最小プロモーターとを含む、レポーターカセットを挿入することによって実証された。このレポーター細胞株へのCD19 CAR mRNAのエレクトロポレーションを介したCD3zeta経路によるNFAT活性化、続いてSUP-B15(CD19+、ただし非特異的細胞傷害性に耐性)との共培養により、ルシフェラーゼが発現した。
【0093】
一実施形態において、本明細書で企図されるNFAT応答要素配列(活性化NFATの結合部位)は、配列番号4に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0094】
一実施形態において、本明細書で企図される最小プロモーター(3つのNFAT応答要素の下流)は、配列番号5に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0095】
一実施形態において、本明細書で企図される完全NFAT応答カセット(ポリA+休止部位、続いて3つのNFAT応答要素、続いて最小プロモーター)は、配列番号6に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0096】
一実施形態において、本明細書で企図される最初の挿入の完全配列(EF1aプロモーター、ポリAを有するCCR7遺伝子、及びユビキチンプロモーターによって駆動されるLoxP隣接ピューロマイシン耐性遺伝子は全て、AAVS1遺伝子座を標的とする相同性アームに包まれている)は、配列番号7に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0097】
一実施形態において、本明細書で企図される第2の挿入の完全配列(CCL21+Poly-Aを駆動するNFAT応答カセット、及びCMVによって駆動されるFRTが埋め込まれたブラストサイジン耐性遺伝子を含む)は、配列番号8に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。配列番号8の配列は、最初の挿入からのLoxP隣接ピューロマイシン耐性カセット、この配列中のブラストサイジン遺伝子を取り囲むFRT配列を置換して、同様のFlp-FRT組換えを使用してそのカセットを後で除去又は置換することを可能にし得る。
【0098】
NK-92(登録商標)細胞株は、非ホジキンリンパ腫と診断された50歳の男性の末梢血単核細胞(PBMC)から樹立されたヒトIL-2依存性NK細胞株である(Gong,et al.,Leukemia.8:652-8(1994))。NK-92(登録商標)細胞は、CD3、CD8、及びCD16の非存在下におけるCD56bright及びCD2の発現を特徴とする。CD56bright/CD16neg/low表現型は、サイトカイン産生細胞として免疫調節機能を有する末梢血中のNK細胞のマイナーサブセットに典型的である。通常のNK細胞とは異なり、NK-92(登録商標)はほとんどのキラー細胞阻害剤受容体(KIR)の発現を欠いている(Maki,et al.,J Hematother Stem Cell Res.10:369-83(2001))。NK-92の表面には、全てのNK細胞で発現する活性化機能及び抑制能を有するKIR受容体であるKIR2DL4のみが検出された。KIR2DL4は、HLA対立遺伝子Gへの結合を介して阻害効果を媒介すると考えられている(Suck,Cancer Immunol.Immunother.65(4):485-92(2015))。NK-92(登録商標)細胞の細胞傷害性による死滅の主な経路は、パーフォリン/エステラーゼ経路であり;NK-92(登録商標)は高レベルのパーフォリン及びグランザイムBを発現する(Maki,et al.,J Hematother Stem Cell Res.10:369-83(2001))。
【0099】
NK-92(登録商標)細胞は非常に広い細胞傷害性範囲を有し、血液悪性腫瘍及び固形腫瘍に由来する細胞株に対して活性である(Klingemann,Blood,87(11):4913-4(1996);Swift,Haematologica.97(7):1020-8(2012);Yan,et al.,Clin Cancer Res.4:2859-68(1998))。重症複合免疫不全症(SCID)マウスの安全性評価では、急性毒性及び長期発癌性などのNK-92(登録商標)処置関連の影響は見られなかった(Tam,et al.,J Hematother.8:281-90(1999),Yan,et al.,Clin Cancer Res.4:2859-68(1998))。ヒト白血病細胞又はヒト黒色腫のマウスモデルでチャレンジされたマウスへのNK-92(登録商標)細胞の投与は、いくつかのマウス腫瘍における完全寛解を含む、生存率の改善及び腫瘍増殖の抑制をもたらした(Tam,et al.,J Hematother.8:281-90(1999),Yan,et al.,Clin Cancer Res.4:2859-68(1998))。第I相臨床試験ではその安全性プロファイルが確認されている。NK-92(登録商標)細胞株の特性は、国際公開第1998/49268号パンフレット及び米国特許出願公開第2002-0068044号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞はまた、Fc受容体CD16を発現し得る。本明細書で使用される場合、「Fc受容体」という用語は、Fc領域として知られる抗体の一部に結合することによって免疫細胞の防御機能に寄与する、ある特定の細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞)の表面上に見出されるタンパク質を指す。細胞のFc受容体(FcR)への抗体のFc領域の結合は、抗体媒介性食作用又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して細胞の食作用又は細胞傷害活性を刺激する。FcRは、それらが認識する抗体のタイプによって分類される。例えば、Fc-γ受容体(FCγR)はIgGクラスの抗体に結合する。FCγRIII-A(CD16とも呼ばれる)は、IgG抗体に結合してADCCを活性化する低親和性Fc受容体である。FCγRIII-Aは典型的にはNK細胞上に見出される。CD16をコードする代表的なアミノ酸配列を、配列番号12に示す。CD16をコードする代表的なポリヌクレオチド配列を、配列番号13に示す。CD16の完全な配列は、SwissProtデータベースのエントリP08637にある。
【0101】
いくつかの実施形態において、CD16受容体は、成熟CD16受容体のIgG結合ドメインのアミノ酸158位(F158V)におけるフェニルアラニン(F)からバリン(V)への置換を含み(全長タンパク質の176位のValに対応する)、これは、NK細胞の抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能に影響を及ぼす。CD16 158Vバリアントは、ヒトIgG1及びIgG3に158Fバリアントよりも高い親和性で結合する。
【0102】
任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、配列番号13に対して70%、80%、90%、又は95%の同一性を有する核酸配列を含む。任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、配列番号13に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含む。任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、配列番号12に対して70%、80%、90%、又は95%の同一性を有するポリペプチドを含む(全長ポリペプチドの176位にバリンを有する)。任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、配列番号12に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリペプチドを含む。
【0103】
NK-92(登録商標)細胞の細胞傷害性は、サイトカイン(例えば、インターロイキン-2(IL-2))の存在に依存する。したがって、任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、少なくとも1つのサイトカインを発現するようにさらに改変される。任意選択により、少なくとも1種のサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21又はそのバリアントである。任意選択により、少なくとも1種のサイトカインは、IL-2、IL-15又はその組み合わせである。任意選択により、IL-2及び/又はIL-15は、サイトカインを小胞体に指向させるシグナル配列と共に発現される。IL-2を小胞体に指向させることによって、自己分泌活性化に十分なレベルで、細胞外に相当量のIL-2を放出することなく、IL-2の発現が可能になる。Konstantinidis et al “Targeting IL-2 to the endoplasmic reticulum confines autocrine growth stimulation to NK-92(登録商標) cells”Exp Hematol.2005 Feb;33(2):159-64を参照されたい。IL-2をコードする代表的な核酸は配列番号14に示され、IL-2の代表的なポリペプチドは配列番号15に示される。
【0104】
任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、配列番号14に対して70%、80%、90%、又は95%の同一性を有するIL-2をコードする核酸配列を含む。任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、配列番号14に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含む。任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、配列番号15に対して70%、80%、90%、又は95%の同一性を有するIL-2ポリペプチドを含む。任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、配列番号15に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するIL-2ポリペプチドを含む。提供される改変NK-92(登録商標)細胞は、有利には、臨床的有害作用を引き起こす量のIL-2を分泌することなく、IL-2の非存在下で維持することができる。
【0105】
一態様において、本発明の対象物は、腫瘍微小環境を調節することができる改変NK-92(登録商標)細胞を含む。改変NK-92(登録商標)細胞は、好ましくは、i)IL-12又はTGFベータトラップ、ii)標的抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質(ABP)又はキメラ抗原受容体(CAR)、iii)CD16又はCD16-158VなどのFc受容体、及び/又は、iv)erIL-2又はerIL-15などのサイトカインをコードする1つ以上の核酸を含むクアドラシストロニックベクターを含み、ここで、核酸配列はプロモーターに作動可能に連結されている。一実施形態において、本明細書で企図されるクアドラシストロニックベクターは、それぞれ図21、30、及び31に示される。本明細書で企図されるIL-12は、配列番号57(p35 n.t.配列)又は配列番号59(p40 n.t.配列)に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。本明細書で企図されるIL-12はまた、配列番号58(p35 a.a.配列、アイソフォーム1前駆体)又は配列番号60(p40 a.a.配列、前駆体)に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0106】
例示的な一実施形態において、IL-2/PD-L1クアドリシストロニックベクター中のIL-12一本鎖p40_p35配列は、配列番号61に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリペプチド配列を含み得るか、又は配列番号62に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0107】
本明細書で企図されるTGFベータトラップは、配列番号63(TGFBRII細胞外ドメイン)又は配列番号65(TGFbトラップ配列)に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。本明細書で企図されるTGFベータトラップはまた、配列番号64(TGFBRII細胞外ドメイン)又は配列番号66(TGFbトラップ配列)に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。他の適切なTGFベータトラップには、Mol.Canc.THer.2012,Vol 11(7),1477-1487に記載されているものが含まれる。
【0108】
さらに、本発明の対象物の核酸構築物はまた、同じmRNAによってコードされる等モルレベルのポリペプチドを生成するために、T2A、P2A、E2A、又はF2Aペプチドなどの2Aペプチドをコードする配列を含み得る。本明細書で企図されるE2Aペプチドは、配列番号17に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。本明細書で企図されるT2Aペプチドは、配列番号18に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0109】
1つの例示的且つ非限定的な例において、本明細書に開示されるプラスミドは、配列番号19(AAVS1の5’相同性アーム)、配列番号20(EF1aプロモーター)、配列番号21(T7プロモーター)、配列番号22(CCR7 cDNA)、配列番号23(P2A要素)、配列番号24(IgHCリーダー)、配列番号25(CD19 CARマイナスシグナルペプチド)、配列番号26(高親和性CD16)、配列番号27(IRES)、配列番号28(SC40ポリA)、配列番号29(AAVS1の3’相同性アーム)、及び/又は配列番号30(AAVS1の相同性アーム)に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0110】
キメラ抗原受容体
任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、細胞表面上にキメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにさらに遺伝子操作される。任意選択により、CARは腫瘍特異的抗原に特異的である。腫瘍特異的抗原は、それらのそれぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0189268号明細書;国際公開第1999024566 A1号パンフレット;米国特許第7098008号明細書;及び国際公開第2000020460 A1号パンフレットに、非限定的な例として、記載される。腫瘍特異的抗原には、限定されるものではないが、NKG2D、CS1、GD2、CD138、EpCAM、EBNA3C、GPA7、CD244、CA-125、ETA、MAGE、CAGE、BAGE、HAGE、LAGE、PAGE、NY-SEO-1、GAGE、CEA、CD52、CD30、MUC5AC、c-Met、EGFR、FAP、WT-1、PSMA、NY-ESO1、AFP、CEA、CTAG1B、CD19、CD33、B7-H4、CD20及び41BBが含まれる。CARは、例えば、それらのそれぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2014039523号パンフレット;米国特許出願公開第20140242701号明細書;米国特許出願公開第20140274909号明細書;米国特許出願公開第20130280285号明細書;及び国際公開第2014099671号パンフレット等に記載のように遺伝子操作することができる。任意選択により、CARはCD19 CAR、CD33 CAR又はCSPG-4 CARである。1つの例示的且つ非限定的な例において、CD19CAR_CD3aは、配列番号41に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0111】
ホーミング受容体
ホーミング受容体をコードする核酸を含む改変NK-92(登録商標)細胞が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、ホーミング受容体は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、ホーミング受容体は、Gタンパク質共役受容体である。いくつかの実施形態において、ホーミング受容体は、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7、CX3CR1、XCR1、CCXCKR、D6、DARC、又はCXCL14の受容体から選択されるケモカイン受容体である。いくつかの実施形態において、CCR7をコードする核酸は、配列番号1に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。任意選択により、ホーミング受容体は、改変NK-92(登録商標)細胞の細胞表面に発現する。任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞はさらにCARを含む。任意選択により、CARはCD19である。任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、Fc受容体をさらに含む。任意選択により、Fc受容体はCD16である。任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、IL-2などのサイトカインをさらに含む。いくつかの実施形態において、IL-2ポリペプチドは、配列番号42に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を有し得る。いくつかの実施形態において、IL-2ポリペプチドは、配列番号43に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を有し得る。
【0112】
発現ベクター
プロモーターに作動可能に連結された核酸を含む発現ベクターが本明細書で提供される。ベクターの異なる要素をコードする核酸はそれぞれ、同じ又は異なるプロモーターに作動可能に連結することができる。例示的なプロモーターには、限定されるものではないが、CMVプロモーター、ユビキチンプロモーター、PGKプロモーター、及びEF1もプロモーターが含まれる。任意選択により、配列番号1を有する核酸、又は配列番号1に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸を含む発現ベクターが本明細書に提供される。任意選択により、核酸は、プロモーターに作動可能に連結される。任意選択により、プロモーターは、配列番号3、9、10若しくは11、又は配列番号3、9、10若しくは11に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するプロモーターからなる群から選択される。任意選択により、核酸は、プロモーターに作動可能に連結される。任意選択により、プロモーターは、配列番号4及び/又は配列番号5を含む。任意選択により、プロモーターは、配列番号6、又は配列番号6に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、提供される発現ベクターは、配列番号1又は配列番号1に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸;配列番号25(CD19 CAR)又は配列番号13(CD16 158V)に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸、又は配列番号14(erIL-2 n.t.配列)に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸若しくはポリペプチド配列;及び/又は配列番号15(erIL-2 a.a.配列)、又は配列番号14に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸を含む。いくつかの実施形態において、提供される発現ベクターは、配列番号47(CXCR2)又は配列番号47に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸;配列番号25(CD19 CAR)又は配列番号12に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸;及び配列番号13(CD16 158V)、及び/又は配列番号14に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸;及び/又は配列番号15(erIL-2)、又は配列番号14に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸を含む。適切な発現ベクターは当技術分野で公知であり、使用することができる。さらなる態様において、組換え核酸は、erIL-15をコードするセグメントを含み、erIL-15をコードする核酸は、配列番号67に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。任意選択により、発現ベクターはプラスミドである。
【0114】
PD-L1(TGFβトラップ)t-haNK細胞におけるPD-L1 CAR及びCD-16の発現解析を図22に示す。さらに、図23に示すように、TGFβトラップはTGFβトラップ/PD-L1 t-haNK細胞の培養上清に分泌される。同様に、IL-12をウイルス的に形質導入したNK-92(登録商標)細胞株からのIL-12分泌を図30の右の列に示す。
【0115】
改変NK-92(登録商標)細胞の作製方法
本明細書に記載の核酸分子を含む改変NK-92(登録商標)細胞を作製する方法が本明細書に提供される。方法は、プロモーターに作動可能に連結された本明細書に記載の核酸を含む発現ベクターでNK-92(登録商標)細胞を形質転換することを含む。
【0116】
本明細書で使用される場合、プロモーター、プロモーター要素、及び制御配列という用語は、プロモーターに作動可能に連結された、選択されたポリヌクレオチド配列の発現を調節し、細胞における選択されたポリヌクレオチド配列の発現に影響を与えるポリヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態において、プロモーター要素は、コード配列の5’位における非翻訳領域(UTR)であるか、又はそれを含む。5’UTRはmRNA転写物の一部を形成するため、真核生物におけるタンパク質発現の不可欠な部分である。転写後、5’UTRは転写レベルと翻訳レベルの両方でタンパク質発現を制御できる。哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写を制御するプロモーターは、様々な供給源、例えば、ポリオーマ、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びサイトメガロウイルス(例えば、配列番号11)などのウイルスのゲノムから、又は異種哺乳類プロモーター、例えばベータアクチンプロモーター、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EF1α)プロモーター(例えば、配列番号3)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター(例えば、配列番号10)及びユビキチンプロモーター(例えば、配列番号9)から得られ得る。配列番号3、9、10又は11に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するプロモーターが本明細書で提供される。
【0117】
本明細書で使用される「選択可能なマーカー」という表現は、選択を可能にする産物(ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列、例えば遺伝子、又は遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)自体のいずれかを指す。選択可能なマーカーという用語は、当技術分野で一般的に理解されているように本明細書で使用され、その細胞又は生物内の存在が、特定の定義された培養条件下(選択的条件下)で細胞又は生物に有意な増殖又は生存の利点又は欠点を与えるマーカーを指す。本明細書で使用される選択剤という表現は、選択可能なマーカーを有する細胞又は細胞集団に有利な、又はそれに反する、細胞又は細胞集団に選択圧を導入する薬剤を指す。例えば、選択剤は抗生物質であり、選択可能なマーカーは抗生物質耐性遺伝子である。哺乳動物細胞に適した選択可能なマーカーの例は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似体G418、ハイグロマイシン、及びピューロマイシンである。
【0118】
本明細書で使用される核酸は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド並びにポリマー及びそれらの相補体を指す。この用語は、一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを含む。この用語は、既知のヌクレオチド類似体又は改変された骨格残基又は連結を含有する核酸を包含し、これらは、合成、天然に存在する、及び天然に存在せず、参照核酸と同様の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと同様の方法で代謝される。そのような類似体の例には、これらに限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が含まれる。特に明記しない限り、本明細書に記載の特定の核酸配列の代わりに、保存的に改変された核酸配列のバリアント(例えば、縮重コドン置換)及び相補的配列を使用することができる。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドと互換的に使用される。
【0119】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合、作動可能に連結される。例えば、プレ配列又は分泌型リーダーをコードするDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結されているか;プロモーター又はエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結されているか;又はリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結されているとは、連結されているDNA配列が互いに近接しており、分泌型リーダーの場合は隣接しており、読み取り段階にあることを意味する。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。例えば、第2の核酸配列に作動可能に連結されている核酸配列は、そのような第2の配列に直接的又は間接的に共有結合しているが、任意の効果的な三次元会合が許容される。単一の核酸配列は、他の複数の配列に作動可能に連結することができる。例えば、単一のプロモーターは、複数のRNA種の転写を導くことができる。連結は、好都合な制限部位でのライゲーションによって実現できる。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが従来の慣行に従って使用される。
【0120】
処置方法
対象の癌又は腫瘍を処置する方法が本明細書に記載される。本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、白血病、癌腫及び肉腫を含む、哺乳動物で見出される癌、新生物、又は悪性腫瘍の全てのタイプを指す。例示的な癌としては、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、肝臓、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮及び髄芽腫の癌が挙げられる。さらなる例としては、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、癌、悪性膵性インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽腫、食道癌、泌尿生殖器癌、悪性高カルシウム血症、子宮内膜癌、副腎皮質癌、膵内分泌部及び膵外分泌部の新生物、並びに前立腺癌が挙げられる。
【0121】
本明細書で使用される場合、「転移」、「転移性」、及び「転移性癌」という用語は互換的に使用され得、増殖性疾患又は障害、例えば、ある器官又は別の隣接しない器官若しくは体の部分からの癌の広がりを指す。癌は、発生部位、例えば、乳房で起こり、この部位は、原発性腫瘍、例えば、原発性乳癌と呼ばれる。原発腫瘍又は発生部位の一部の癌細胞は、局所領域の周囲の正常組織に貫通及び浸潤する能力、及び/又はリンパ系又は血管系の壁を貫通し、系を循環して体内の他の部位及び組織に到達する能力を獲得する。原発腫瘍の癌細胞から形成された第2の臨床的に検出可能な腫瘍は、転移性又は二次腫瘍と呼ばれる。癌細胞が転移する場合、転移性腫瘍とその細胞は元の腫瘍のものと類似していると推定される。したがって、肺癌が乳房に転移した場合、乳房部位の二次腫瘍は異常な乳房細胞ではなく異常な肺細胞で構成される。乳房の二次腫瘍は転移性肺癌と呼ばれる。したがって、転移性癌という表現は、対象が原発腫瘍を有するか、又は過去に有しており、1つ以上の二次腫瘍を有する疾患を指す。非転移性癌、又は転移性ではない癌を有する対象という表現は、対象が原発腫瘍を有するが、1つ以上の二次腫瘍を有しない疾患を指す。例えば、転移性肺癌は、原発性肺腫瘍を有するか又はその病歴を有し、第2の位置又は複数の位置、例えば乳房内に、1つ以上の二次腫瘍を有する対象における疾患を指す。
【0122】
本明細書で使用される場合、状態、疾患若しくは障害、又は状態、疾患若しくは障害に関連する症状を「処置すること」又はその「処置」は、臨床結果を含む有益な、又は望ましい結果を得るためのアプローチを指す。有益な又は望ましい臨床結果には、限定されるものではないが、1つ以上の症状又は状態の緩和又は改善、状態、障害又は疾患の程度の減少、状態、障害又は疾患の状況の安定化、状態、障害又は疾患の発症の予防、状態、障害又は疾患の拡散の予防、状態、障害又は疾患の進行の遅延又は減速、状態、障害又は疾患の発症の遅延又は減速、状態、障害又は疾患の改善又は緩和、及び部分的又は全体的な寛解が含まれ得る。「処置すること」はまた、処置がない場合に予想されるよりも対象の生存を延長することを意味し得る。「処置」はまた、状態、障害又は疾患の進行を一時的に阻害し、状態、障害又は疾患の進行を一時的に遅らせることを意味し得るが、場合によっては、状態、障害又は疾患の進行を永久に停止することを伴う。本明細書で使用される場合、処置、処置する、又は処置すること、という用語は、プロテアーゼの発現を特徴とする疾患又は状態の1つ以上の症状又はプロテアーゼの発現を特徴とする疾患又は状態の症状の影響を低減する方法を指す。したがって、開示された方法において、処置は、確立された疾患、状態、又は疾患若しくは状態の症状の重症度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の減少を指し得る。例えば、疾患を処置するための方法は、対照と比較して、対象における疾患の1つ以上の症状が10%減少した場合の処置であると見なされる。したがって、減少は、天然又は対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、又は10%~100%の間の任意のパーセントの減少であり得る。処置は、必ずしも疾患、状態、又は疾患若しくは状態の症状の治癒又は完全な消失を指すとは限らないことが理解される。さらに、本明細書で使用される場合、減少、低減、又は阻害への言及は、対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれを超える変化を含み、このような用語は、完全な排除を含み得るが、必ずしも含む必要はない。
【0123】
対象、患者、個人などの用語は、限定することを意図したものではなく、一般的に交換することができる。つまり、患者として記載される個人は、必ずしも特定の疾患を有するわけではなく、単に医学的アドバイスを求めているだけであり得る。全体を通して使用されるように、対象は、脊椎動物、より具体的には哺乳動物(例えば、ヒト、馬、猫、犬、牛、豚、羊、山羊、マウス、ウサギ、ラット、及びモルモット)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、その他の任意の動物であり得る。用語は、特定の年齢又は性別を示すものではない。したがって、成人及び新生児の対象は、男性であるか女性であるかにかかわらず対象となることが意図されている。本明細書で使用される場合、患者、個人、及び対象は互換的に使用され得、これらの用語は限定することを意図するものではない。つまり、患者として記載される個人は、必ずしも特定の疾患を有するわけではなく、単に医学的アドバイスを求めているだけであり得る。患者又は対象という用語には、ヒト及び動物の対象が含まれる。
【0124】
本明細書で使用される「投与」又は「投与すること」は、所望の効果を達成するための任意の適切な経路による1つ以上の化合物の提供、接触、及び/又は送達を指す。投与には、限定されるものではないが、経口、舌下、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病変内又は頭蓋内注射)、経皮、局所、頬側、経直腸、経膣、経鼻、経眼、吸入、及びインプラントが含まれ得る。任意選択により、NK-92(登録商標)細胞は非経口投与される。任意選択により、NK-92(登録商標)細胞は静脈内投与される。任意選択により、NK-92(登録商標)細胞は腫瘍周囲に投与される。
【0125】
したがって、本明細書に記載の治療有効量の改変NK-92(登録商標)細胞を対象に投与することを含む、対象の癌転移を低減し、それにより対象の癌転移を低減する方法が本明細書において提供される。癌を有する対象を選択するステップ、及び本明細書に記載の治療有効量の改変NK-92(登録商標)細胞を対象に投与するステップを含む、対象の癌を治療する方法も提供され、ここで、投与は対象の癌を処置する。任意選択により、方法は、対象に追加の治療剤を投与することをさらに含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に記載の治療有効量の改変NK-92(登録商標)細胞を対象に投与することをさらに含み、ここで、投与は、癌を処置するか、又は対象の腫瘍のサイズを縮小する。いくつかの実施形態において、方法は、i)IL-12又はTGFbトラップ、ii)標的抗原に特異的に結合するABP又はCAR、iii)CD16又はCD16-158VなどのFc受容体、及び/又はiv)erIL-2又はerIL-15などのサイトカイン、をコードする核酸を含む改変NK-92(登録商標)細胞を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、i)ホーミング受容体、ii)標的抗原に特異的に結合するABP又はCAR、iii)CD16又はCD16-158VなどのFc受容体、及び/又はiv)erIL-2又はerIL-15などのサイトカイン、をコードする核酸を含む改変NK-92(登録商標)細胞を対象に投与することを含む。
【0127】
K562標的細胞に対するTGFβトラップ/PD-L1の細胞傷害性を図24に示す。さらに、SUP-B15PD-L1+標的細胞に対するCAR死滅を図25に示し、MDA-MB231標的細胞に対するCAR死滅を図26に示す。SUP-B15CD19-CD20+に対するTGFβトラップ/PD-L1のADCCを図27に示す。図28は、TGFβ/SMADルシフェラーゼレポーターHEK293細胞がTGFβによって誘導されることを示す。図29に示すように、HEK293Tレポーターアッセイにおいて、分泌型TGFβトラップはTGFβを隔離し、ルシフェラーゼ発現を阻害した。レポーター細胞を1ng/mLのTGFβ1で19時間処理した。他の選択肢の中で、好ましいCAR分子は、PD-L1に特異的に結合し、配列番号69と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(配列番号68と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である核酸配列によってコードされ得る)アミノ酸配列を有し得る。
【0128】
NK-92(登録商標)細胞は、様々な経路で対象に投与され得る。例えば、NK-92(登録商標)細胞は、一定期間にわたる注入(例えば、静脈内注入)によって対象に投与することができる。典型的には、NK-92(登録商標)細胞の単回投与の場合、期間は5~130分である。任意選択により、期間は90~120分である。任意選択により、期間は15~30分である。
【0129】
NK-92(登録商標)細胞、及び任意選択により他の抗癌剤は、癌を有する患者に1回投与することができ、複数回、例えば、治療期間を通して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22若しくは23時間ごとに1回、又は1、2、3、4、5、6若しくは7日ごとに1回、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週若しくはそれを超える週ごとに1回、又はいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲ごとに1回、投与することができる。したがって、例えば、NK-92(登録商標)細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日又はそれを超える日数にわたり、1日1回対象に投与することができる。任意選択により、NK-92(登録商標)細胞は1日1回のサイクルで2日間投与される。次いで、このサイクルの後に、NK-92(登録商標)細胞による処置のない、1時間以上、1日以上、又は1週間以上が続く。本明細書で使用される場合、「サイクル」という用語は、休息期間(例えば、処置なし、又は他の薬剤による処置)を間に挟んで定期的なスケジュールで繰り返される処置を指す。例えば、1週間の処置とそれに続く2週間の休息は、1回の処置サイクルである。このような処置サイクルは、1回以上繰り返すことができる。したがって、NK-92(登録商標)細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超えるサイクルで投与することができる。
【0130】
NK-92(登録商標)細胞は、対象に細胞の絶対数で投与することができ、例えば、前記対象は、約1000個の細胞/注入から最大で約100億個の細胞/注入まで、例えば1回の注入につき約、少なくとも約、又は多くとも約1×1010、1×10、1×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10個(など)のNK-92(登録商標)細胞、又はいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲を投与され得る。任意選択により、1×10~1×1010個の細胞が対象に投与される。任意選択により、細胞は、1週間又はそれを超える週にわたって週に1回以上投与される。任意選択により、細胞は、週に1回又は2回、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間又はそれを超える週にわたって投与される。
【0131】
任意選択により、対象は、約1000個の細胞/注入/mから最大で約100億個の細胞/注入/mまで、例えば1回の注入につき約、少なくとも約、又は多くとも約1×1010/m、1×10/m、1×10/m、1×10/m、5×10/m、1×10/m、5×10/m、1×10/m、5×10/m、1×10/m、5×10/m、1×10/m、5×10/m(など)のNK-92(登録商標)細胞、又はいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲を投与され得る。任意選択により、1mあたり1×10~1×1010個のNK-92(登録商標)細胞が対象に投与される。任意選択により、1mあたり2×10個のNK-92(登録商標)細胞が対象に投与される。
【0132】
任意選択により、NK-92(登録商標)細胞はそのような個体に細胞の相対数で投与することができ、例えば、前記個体は、個体1キログラムあたり約1000個の細胞から最大で約100億個の細胞まで、例えば個体1キログラムあたり約、少なくとも約、又は多くとも約1×1010、1×10、1×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10個(など)のNK-92(登録商標)細胞、又はいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲を投与され得る。
【0133】
任意選択により、総用量は、体表面積のmによって算出することができ、1mあたり約1×1011、1×1010、1×10、1×10、1×10、又はいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲を含む。任意選択により、約10億個~約30億個のNK-92(登録商標)細胞が患者に投与される。任意選択により、1用量につき注入されるNK-92(登録商標)細胞の量は体表面積のmによって算出することができ、1mあたり1×1011、1×1010、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10を含む。
【0134】
任意選択により、NK-92(登録商標)細胞は、NK-92(登録商標)細胞及び培地、例えばヒト血清又はその同等物を含む組成物で投与される。任意選択により、培地はヒト血清アルブミンを含む。任意選択により、培地はヒト血漿を含む。任意選択により、培地は約1%~約15%のヒト血清又はヒト血清同等物を含む。任意選択により、培地は約1%~約10%のヒト血清又はヒト血清同等物を含む。任意選択により、培地は約1%~約5%のヒト血清又はヒト血清同等物を含む。任意選択により、培地は約2.5%のヒト血清又はヒト血清同等物を含む。任意選択により、血清はヒトAB血清である。任意選択により、ヒト治療での使用に許容される血清代替物がヒト血清の代わりに用いられる。そのような血清代替物は、当技術分野において公知である。任意選択により、NK-92(登録商標)細胞は、NK-92(登録商標)細胞と細胞生存性を支持する等張液とを含む組成物で投与される。任意選択により、NK-92(登録商標)細胞は、凍結保存したサンプルから再構成させた組成物で投与される。
【0135】
本明細書で提供される方法によれば、対象は、本明細書で提供される1つ以上の薬剤の有効量を投与される。有効量と有効投与量という用語は互換的に用いられる。有効量という用語は、所望の生理学的反応(例えば、炎症の軽減)を生じるために必要な任意の量として定義される。薬剤を投与するための有効量及びスケジュールは、当業者によって経験的に決定され得る。投与に関し、投与量の範囲は、疾患又は障害の1つ以上の症状が影響を受ける(例えば、減少又は遅延する)所望の効果を生じるのに十分な大きさである。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの実質的な有害な副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般に、投与量は、年齢、状態、性別、疾患のタイプ、疾患又は障害の程度、投与経路、又は他の薬剤がレジメンに含まれるかどうかによって異なり、当業者が決定することができる。いかなる禁忌が発生した場合も、個々の医師が投与量を調整できる。投与量は変動することができ、1日又は数日間にわたり、毎日1回以上の投与で投与することができる。所与のクラスの医薬品の適切な投与量に関するガイダンスは、文献に見出される。例えば、所与のパラメーターに関して、有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、又は少なくとも100%の増大又は減少を示す。有効性はまた、「~倍」の増大又は減少として表すこともできる。例えば、治療有効量は、対照に対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、又はそれを上回る効果を有し得る。正確な用量及び製剤は処置の目的によって左右され、公知の技術を用いて当業者によって確かめられる(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Editor(2012)、及びPickar,Dosage Calculations(1999)を参照)。
【0136】
薬学的に許容される組成物には、様々な担体及び賦形剤が含まれ得る。様々な水性担体、例えば、緩衝生理食塩水などが用いられうる。これらの溶液は無菌状態であり、且つ一般に望ましくない物体を含まない。適した担体及びその配合は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Loyd V.Allen et al.,editors,Pharmaceutical Press(2012)に記載されている。薬学的に許容される担体は、生物学的に又はその他で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、材料は、望ましくない生物学的作用を引き起こす、又はそれが含まれる薬学的組成物のその他の成分と有害な形で相互作用することなく、対象に投与される。対象に投与される場合、担体は、任意選択により、活性成分の分解を最小化する及び対象における有害な副作用を最小化するように選択される。本明細書で使用される場合、薬学的に許容されるという用語は、生理学的に許容される及び薬理学的に許容されると同義的に用いられる。薬学的組成物は概して、緩衝及び保管時の保存性のための作用物質を含み、且つ投与の経路に応じた適切な送達のための緩衝液及び担体を含み得る。
【0137】
組成物は、適切な生理学的状態に必要とされる許容可能な補助物質、例えば、pH調整剤及びバッファー、並びに毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩酸ナトリウム、塩酸カリウム、塩酸カルシウム、及び乳酸ナトリウムなどを含有し得る。これらの製剤中の細胞及び/又は他の作用物質の濃度は異なる可能性があり、選択された特定の投与形態及び対象のニーズに従って液体量、粘性、及び体重など基づき主に選択される。
【0138】
併用療法
任意選択により、NK-92(登録商標)細胞は、処置される癌に対する1つ又は複数の他の処置と併用して、対象に投与される。理論に拘束されるものではないが、NK-92(登録商標)細胞及び癌に対する別の療法による対象の同時処置によって、NK-92(登録商標)細胞及び代替的療法が、これまで内因性作用を抑えていた癌を排除するチャンスをそのような内因性免疫系に与えることを可能にすると考えられる。任意選択により、処置される癌に対する2つ又はそれ以上の他の処置には、例えば、抗体、二重特異性エンゲージャー、放射線、化学療法、幹細胞移植、又はホルモン療法などが含まれる。
【0139】
任意選択により、抗体は、NK-92(登録商標)細胞と併用して患者に投与される。任意選択により、NK-92(登録商標)細胞及び抗体は対象に一緒に、例えば、同じ製剤中で;別々に、例えば、別々の製剤で、同時に投与され、又は別々に、例えば、異なる投薬スケジュールで又は一日の異なる時間に投与されうる。別々に投与される場合、抗体は、静脈内又は経口投与などの任意の適した経路で投与されうる。
【0140】
任意選択により、抗体は、癌性細胞又は癌関連マーカーを発現する細胞を標的とするように用いられうる。いくつかの抗体は、単独で、癌の処置に承認されている。
【0141】
提供される方法は、放射線療法、外科手術、ホルモン療法及び/又は免疫療法などの他の腫瘍療法とさらに組み合わせることができる。したがって、提供される方法は、1つ以上の追加の治療剤を対象に投与することをさらに含むことができる。適切な追加の治療剤には、限定されるものではないが、鎮痛剤、麻酔剤、蘇生剤、コルチコステロイド、抗コリン作用剤、抗コリンエステラーゼ、抗けいれん剤、抗腫瘍剤、アロステリック阻害剤、タンパク質同化ステロイド、抗リウマチ剤、精神治療剤、神経遮断剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗生物質、抗凝固剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア剤、抗原虫剤、抗ウイルス剤、ドーパミン作動剤、血液作用剤、免疫剤、ムスカリン剤、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、成長因子、及びホルモンが含まれる。薬剤及び投与量の選択は、処置されている所与の疾患に基づいて当業者が容易に決定できる。任意選択により、追加の治療剤は、酢酸オクトレオチド、インターフェロン、ペンブロリズマブ、グルコピラノシルリピドA、カルボプラチン、エトポシド、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0142】
任意選択により、追加の治療剤は化学療法剤である。化学療法処置レジメンは、1つの化学療法剤又は化学療法剤の組み合わせの対象への投与を含み得る。化学療法剤には、限定されるものではないが、アルキル化剤、アントラサイクリン、タキサン、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、キナーゼ阻害剤、モノクローナル抗体、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体、ペプチド抗生物質、プラチナベースの化合物、レチノイド、及びビンカアルカロイド及び誘導体が含まれる。任意選択により、化学療法剤はカルボプラチンである。
【0143】
薬剤又は組成物の組み合わせは、併用して(例えば、混合物として)、別々に、しかし同時に(例えば、別々の静脈内ラインを介して)又は連続して(例えば、1つの薬剤が最初に投与され、続いて第2の薬剤が投与される)のいずれかで投与され得る。したがって、組み合わせという用語は、2つ以上の薬剤又は組成物の併用、同時、又は連続投与を指すために使用される。処置の過程は、対象の特定の特徴及び選択された処置のタイプに応じて、個別に決定するのが最善である。本明細書に開示されるものなどの処置は、毎日、1日2回、隔週、毎月、又は治療上有効である任意の適用可能な基準で対象に投与することができる。処置は、単独で、又は本明細書に開示されるか若しくは当技術分野で公知他の処置と組み合わせて、投与することができる。追加の処置は、第1の処置と同時に、異なる時間に、又は完全に異なる治療スケジュール(例えば、第1の処置は毎日、追加の処置は毎週)で投与することができる。
【0144】
キット
本明細書に記載の改変NK-92(登録商標)細胞を含むキットが本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、キットは、プロモーターに作動可能に連結された、i)ホーミング受容体、ii)標的抗原に特異的に結合するABP又はCAR、iii)CD16又はCD16-158VなどのFc受容体、及び/又はiv)erIL-2などのサイトカイン、をコードする1つ以上の核酸配列を含む改変NK-92(登録商標)細胞を含む。任意選択により、核酸配列によってコードされる1つ以上のタンパク質が、改変NK-92(登録商標)細胞の細胞表面に発現する。いくつかの実施形態において、キットは、C-Cケモカイン受容体タイプ7(CCR7)、CXCR2、又はプロモーターに作動可能に連結されたCXCL14の受容体をコードする核酸を含む改変NK-92(登録商標)細胞を含む。任意選択により、CCR7をコードする核酸は、配列番号1に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。任意選択により、ホーミング受容体は、改変NK-92(登録商標)細胞の細胞表面に発現する。任意選択により、プロモーターは、1つ又は複数のNFAT結合要素及び最小のプロモーターを含む。任意選択により、プロモーターは、配列番号6に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。任意選択により、核酸配列によってコードされる1つ以上のタンパク質が、改変NK-92(登録商標)細胞の細胞表面に発現する。
【0145】
任意選択により、改変NK-92(登録商標)細胞は、薬学的に許容される賦形剤を含む組成物で提供される。任意選択により、キットは、改変NK-92(登録商標)細胞の投与の前に、それと同時に又はその後に投与されるべき、治療的活性化合物又は薬物などの追加の化合物を含み得る。任意選択により、キットの使用説明書には、癌の処置におけるキット構成成分を使用するための指示が含まれる。説明書は、抗体及びNK-92(登録商標)細胞を調製する(凍結乾燥したタンパク質の場合、希釈及び再構成する)方法に関する情報(例えば、解凍する及び/又は培養する)をさらに含有し得る。説明書は、投薬量及び投与の頻度に関するガイダンスをさらに含み得る。
【0146】
本開示の方法及び組成物で使用することができる、それと併用して使用することができる、それらの調製で使用することができる、又はそれらの産物である、材料、組成物、及び構成成分が開示される。これら及び他の材料が本明細書において開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが記載される場合、これらの化合物の各種個別の及び集合的な組み合わせ及び順列の具体的な記載が明確に記載されていない可能性があるが、各々が本明細書において具体的に企図され記載されることが理解される。例えば、方法が開示及び議論され、方法を含むいくつかの分子に対して行うことができるいくつかの改変が議論される場合、方法の各々の及び全ての組み合わせ及び順列、並びに可能性のある改変は、それとは反対の具体的な指示がない限り、具体的に企図される。同様に、これらの任意のサブセット又は組み合わせもまた、具体的に企図され開示される。この概念は、限定されるものではないが、開示の組成物を用いる方法におけるステップを含む本開示の全ての態様に適用される。したがって、実施することができる様々な追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップはそれぞれ、任意の特定の方法ステップ又は開示される方法の方法ステップの組み合わせによって実施できること、及びそのような組み合わせ又は組み合わせのサブセットの各々が具体的に企図され且つ開示されていると見なされるべきことが理解される。
【0147】
本明細書で引用されている刊行物及びそれらが引用されている資料は、参照によりその全体が具体的に本明細書に組み込まれる。
[1]プロモーターに作動可能に連結されたホーミング受容体をコードする核酸を含む、改変NK-92細胞。
[2]前記ホーミング受容体が、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、ケモカイン受容体、サイトカイン受容体、細胞接着分子、セレクチン、又はインテグリンである、前記[1]に記載の改変NK-92細胞。
[3]前記ケモカイン受容体が、CCR7、CXCR2、又はCXCL14の受容体から選択され、前記細胞接着分子が、L-セレクチン(CD62L)、α4β7インテグリン、LPAM-1、及びLFA-1から選択される、前記[2]に記載の改変NK-92細胞。
[4]CCR7をコードする前記核酸が、配列番号1に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する、前記[3]に記載の改変NK-92細胞。
[5]前記改変NK-92(登録商標)細胞が、プロモーターに作動可能に連結された抗原結合タンパク質をコードする核酸をさらに含む、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞。
[6]前記抗原結合タンパク質が、腫瘍関連抗原に特異的に結合する、前記[5]に記載の改変NK-92細胞。
[7]前記腫瘍関連抗原が、CD19、CD20、GD2、HER-2、CD30、EGFR、FAP、CD33、CD123、PD-L1、IGF1R、CSPG4、又はB7-H4から選択される、前記[6]に記載の改変NK-92細胞。
[8]前記抗原結合タンパク質が、キメラ抗原受容体(CAR)を含む、前記[5]に記載の改変NK-92細胞。
[9]前記CARが、CD19に特異的に結合するか、又は配列番号25に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を有する、前記[8]に記載の改変NK-92細胞。
[10]前記改変NK-92細胞が、プロモーターに作動可能に連結されたサイトカインをコードする核酸をさらに含む、前記[1]~[9]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞。
[11]前記サイトカインが、IL-2、erIL-2、IL-15、erIL-15又はそれらの組み合わせである、前記[10]に記載の改変NK-92細胞。
[12]前記サイトカインが、erIL-2であり、erIL-2をコードする前記核酸が、配列番号14に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する、前記[10]に記載の改変NK-92細胞。
[13]前記サイトカインが、erIL-15であり、erIL-15をコードする前記核酸が、配列番号67に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する、前記[10]に記載の改変NK-92細胞。
[14]前記改変NK-92(登録商標)細胞が、プロモーターに作動可能に連結されたFC受容体をコードする核酸をさらに含む、前記[1]~[13]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞。
[15]前記Fc受容体が、CD16若しくは高親和性CD16(配列番号12)、又は配列番号13に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸である、前記[14]に記載の改変NK-92細胞。
[16]前記ホーミング受容体、抗原結合タンパク質、CAR、及び/又はFc受容体が、前記改変NK-92(登録商標)細胞の前記細胞表面に発現する、前記[1]~[15]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞。
[17]i)ホーミング受容体、ii)標的抗原に特異的に結合するABP又はCAR、iii)Fc受容体、及び/又はiv)IL2、IL-15、erIL-2、erIL-15、又はそれらの組み合わせから選択されるサイトカイン、をコードする1つ以上の核酸を含む、改変NK-92細胞であって、前記核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、細胞。
[18]前記ホーミング受容体が、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、ケモカイン受容体、サイトカイン受容体、細胞接着分子、セレクチン、又はインテグリンである、前記[17]に記載の改変NK-92細胞。
[19]前記Fc受容体が、CD16若しくは高親和性CD16(配列番号12)、又は配列番号13に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸である、前記[17]に記載の改変NK-92細胞。
[20]前記ホーミング受容体、抗原結合タンパク質、CAR、及び/又はFc受容体が、前記改変NK-92(登録商標)細胞の前記細胞表面に発現する、前記[1]~[15]のいずれか一項に記載の改変NK-92(登録商標)細胞。
[21]前記[1]~[20]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞及び薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物。
[22]前記[1]~[21]のいずれか一項に記載のNK-92細胞及び使用説明書を含む、キット。
[23]方法が、治療有効量の、前記[1]~[20]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞又は前記[21]に記載の組成物を対象に投与することを含み、投与が、前記対象の癌を処置するか、腫瘍のサイズを縮小する、対象の癌又は腫瘍を処置する方法。
[24]治療有効量の、前記[1]~[20]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞又は前記[21]に記載の組成物を対象に投与することを含み、それにより、前記対象の癌転移を低減する、対象の癌転移を低減する方法。
[25]1mあたり1×10~1×1010個の前記NK-92細胞が前記対象に投与される、前記[23]又は[24]に記載の方法。
[26]前記NK-92細胞が、非経口、静脈内、腫瘍周囲、又は注入によって投与される、前記[23]~[25]のいずれか一項に記載の方法。
[27]前記対象に追加の治療剤を投与することをさらに含む、前記[23]~[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28]NFAT転写因子応答要素を含む、NK細胞による選択的且つ標的化された分泌のための誘導性プロモーター。
[29]前記NFAT転写因子応答遺伝子が、CCL21である、前記[28]に記載の誘導性プロモーター。
[30]NFATが、CD19 CARの活性化を介して、FcεRIγ経路によって活性化される、前記[28]に記載の誘導性プロモーター。
[31]配列番号13に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する、前記[28]に記載の誘導性プロモーター。
[32]特定の遺伝子座での標的相同組換えを含む、改変NK92細胞株を生成する方法。
[33]前記遺伝子座がAAVS1である、前記[32]に記載の方法。
[34]前記AAVS1遺伝子座が配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する、前記[33]に記載の方法。
[35]プロモーターに作動可能に連結された腫瘍微小環境を調節する分泌型サイトカインをコードする核酸を含む、改変NK-92細胞。
[36]前記分泌型サイトカインが、IL-12及び/又はTGFベータトラップである、前記[35]に記載の改変NK-92細胞。
[37]前記改変NK-92(登録商標)細胞が、プロモーターに作動可能に連結された抗原結合タンパク質をコードする核酸をさらに含む、前記[35]~[36]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞。
[38]前記抗原結合タンパク質が、腫瘍関連抗原に特異的に結合する、前記[35]~[37]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞。
[39]前記腫瘍関連抗原が、CD19、CD20、GD2、HER-2、CD30、EGFR、FAP、CD33、CD123、PD-L1、IGF1R、CSPG4、又はB7-H4から選択される、前記[38]に記載の改変NK-92細胞。
[40]前記抗原結合タンパク質が、キメラ抗原受容体(CAR)を含む、前記[38]に記載の改変NK-92細胞。
[41]前記CARが、PD-L1に特異的に結合するか、又は配列番号69に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を有する、前記[40]に記載の改変NK-92細胞。
[42]前記改変NK-92細胞が、プロモーターに作動可能に連結された第2のサイトカインをコードする核酸をさらに含む、前記[35]~[41]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞。
[43]前記第2のサイトカインが、IL-2、erIL-2、IL-15、erIL-15又はそれらの組み合わせである、前記[42]に記載の改変NK-92細胞。
[44]前記第2のサイトカインが、erIL-2であるか、又はerIL-2をコードする前記核酸が、配列番号14に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する、前記[42]に記載の改変NK-92細胞。
[45]前記改変NK-92細胞が、プロモーターに作動可能に連結されたFC受容体をコードする核酸をさらに含む、前記[35]~[44]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞。
[46]前記Fc受容体が、CD16若しくは高親和性CD16(配列番号12)、又は配列番号13に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する核酸である、前記[45]に記載の改変NK-92細胞。
[47]前記IL-12及び/又はTGFベータトラップが分泌型であり、前記抗原結合タンパク質、CAR、及び/又はFc受容体が、前記改変NK-92細胞の前記細胞表面に発現する、前記[35]~[46]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞。
[48]i)IL-12及び/又はTGFベータトラップ、ii)標的抗原に特異的に結合するABP又はCAR、iii)Fc受容体、及び/又はiv)erIL-2、erIL-15、IL-2、IL-15、又はそれらの組み合わせから選択される第2のサイトカイン、をコードする1つ以上の核酸を含む、改変NK-92細胞であって、前記核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、細胞。
[49]前記[35]~[48]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞及び薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物。
[50]前記[35]~[49]のいずれか一項に記載のNK-92細胞及び使用説明書を含む、キット。
[51]治療有効量の、前記[35]~[48]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞又は前記[49]に記載の組成物を対象に投与することを含み、投与が、前記対象の癌を処置するか、腫瘍のサイズを縮小する、対象の癌又は腫瘍を処置する方法。
[52]治療有効量の、前記[35]~[48]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞又は前記[49]に記載の組成物を対象に投与することを含み、それにより、前記対象の癌転移を低減する、対象の癌転移を低減する方法。
[53]1mあたり1×10~1×1010個の前記NK-92細胞が前記対象に投与される、前記[51]又は[52]に記載の方法。
[54]前記NK-92細胞が、非経口、静脈内、腫瘍周囲、又は注入によって投与される、前記[51]~[53]のいずれか一項に記載の方法。
[55]前記対象に追加の治療剤を投与することをさらに含む、前記[51]~[54]のいずれか一項に記載の方法。
[56]前記[35]~[48]のいずれか一項に記載の改変NK-92細胞の第1の組成物、及び初代NK細胞を含む第2の組成物を投与することを含む、NK細胞を個体に投与する方法。
[57]前記第1の組成物が、IL-12をコードする核酸及び/又はプロモーターに作動可能に連結されたTGF-ベータトラップを含む、改変NK-92細胞を含む、前記[56]に記載の方法。
【0148】
以下の実施例は、本明細書に記載の方法及び組成物の特定の態様をさらに説明することを意図するものであり、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0149】
実施例1.腫瘍微小環境を調節するサイトカインであるCCR7を発現する改変NK細胞株。
改変NK-92(登録商標)細胞は、NK-92(登録商標)細胞上でNEONトランスフェクションシステム(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して、線形化されたpNKAT-CCR7-LP3プラスミド(図1)を用いたエレクトロポレーションによって作製された。ピューロマイシン選択の1週間後、得られたポリクローナル集団のCCR7発現を試験し、5%ヒト血清及びIL-2を添加した増殖培地で段階希釈してモノクローナル細胞株を誘導した。改変NK-92(登録商標)細胞は、全てAAVS1遺伝子座(配列番号7)を標的とする相同性アームに包まれた、EF1αプロモーター、ポリAテールを有するCCR7遺伝子、及びユビキチンプロモーターによって駆動されるLoxP隣接ピューロマイシン耐性遺伝子を含有していた。
【0150】
CCR7の発現がNK-92(登録商標)細胞に影響を与えないことを確認するために、NK-92(登録商標)細胞のマーカーの発現を測定した。結果を図3に示す。図3の全てのデータは、Intellicyt iQueスクリーナープラスを使用して生成された。細胞は、記載される表現型マーカーに対するAPC結合抗体、又は陰性対照としての適切なアイソタイプのいずれかと共に4℃で30分間インキュベートされた。次いで、細胞をPBS+1%BSAですすぎ、ペレット化し、30uLのPBS+1%BSAに再懸濁した。次いで、左上の象限に示すように読み取り値をゲートして、読み取り値から細胞デブリを除去し、次いで、右上の象限に示すように蛍光閾値を超える細胞のパーセンテージが、2つの別々のヒートマップとして表示され、左下と右下の象限にそれぞれ「陽性」の閾値及び「非常に陽性」の閾値を超えるパーセンテージを示す。図3は、CCR7の発現の駆動が、細胞株に関連する主要な表現型マーカーに有意な影響を与えないことを示す。具体的には、CCR7の発現はCD54、NKp30又はNKG2Dの発現に影響を与えないようである。
【0151】
改変NK-92(登録商標)細胞の細胞傷害性を測定するために、エフェクター細胞(NK-92(登録商標)細胞及び改変NK-92(登録商標)細胞クローン)を96ウェルV底プレート中で段階希釈し、最高濃度のウェルに100kのエフェクターを残し、プレートの8列にわたって7回のさらなる2倍希釈を行った。次いで、染色された標的細胞(K562(図4)、HL-60(図5))を、バックグラウンド死を測定するために標的のみの対照ウェルと共に、エフェクターを含む全てのウェルに10k/ウェルで播種した。次いで、プレートを短時間スピンダウンし、37℃、5%COで4時間インキュベートした。次いで、プレートをスピンダウンし、上清を吸引除去し、細胞死を測定するためにヨウ化プロピジウムを含むPBSに細胞を再懸濁した。次いで、細胞をIntellicyt iQueスクリーナープラスに通し、PI染色にも陽性である標的細胞(その染色によってエフェクターと区別される)の割合を測定した。次いで、死細胞のパーセンテージを、対照ウェル内の自然に死んでいる細胞の数と比較し、エフェクターによって特異的に死滅された細胞のパーセンテージを計算した。結果を図4及び5に示す。図4は、親細胞株対K562細胞と比較した、CCR7上方制御クローンにおける同等の細胞傷害性を示し、図5は、親細胞株対HL-60細胞と比較した、CCR7上方制御クローンの同等の細胞傷害性を示す。
【0152】
インビトロ試験は、ボイデンチャンバーアッセイ及びマトリゲル層を使用して遊走を遮断することからなるものであった。CCR7を発現する改変細胞は、これらのアッセイでCCL21及びCCL19(代替CCR7リガンド)への遊走を示した。細胞を上部ウェルに配置し、8uMの細孔にコーティングされたマトリゲル(ECM様の基質)の薄層によって下部チャンバーから分離した。還元血清培地(1%ヒト血清及び500U/mL IL-2を添加)中、細胞(25k/ウェル)を上部チャンバーに入れ、同じ還元血清培地を下部チャンバーで、それ自体で、又は目的のケモカインを含ませて、使用した。この場合において、CCL21は15ng/mLで使用され、CCL19は15ng/mLで使用され、SDF-1aは20ng/mLで使用された。各試験は、NK-92(登録商標)細胞又はCCR7を発現する改変NK-92(登録商標)細胞のいずれかに対して3回行った。次いで、18時間の浸潤アッセイのためにプレートをインキュベーターに一晩入れ、その後上部チャンバーを取り外し、全体を混合した後、(総量750μLのうち)150μLを下部ウェルからサンプリングし、MacsQuant FACS分析機で読み取った。下部チャンバー内の生細胞をカウントし、細胞数を、ケモカインを含まないウェルと比較し、浸潤性指数を生成した。これらの数値は平均化され、統計的関連性は両側t検定を使用して計算された。下部ウェルは下部膜から細胞が剥離することなくサンプリングされたため、ECMの下部にまだ付着している細胞はこれらの数値で表されず、これにより、CCL19とCCL21との間に違いが生じる可能性がある。結果を図7に示す。具体的には、図7は、CCR7ケモカインであるCCL19に対するCCR7を発現する改変NK-92(登録商標)細胞の浸潤性の統計的に有意な増加を示す。CCL21に対する統計的に有意な応答の欠如は、実行されたアッセイの性質による可能性がある。アッセイは、ECMへの侵入とその後の脱離の両方を測定し、これはCCL19勾配遊走と一致する挙動である。CCL21は、遊走を誘発するが、マトリックスからの剥離を誘発しないため、統計的に有意な浸潤の可能性を示すために追加のステップを要する。
【0153】
実施例2.CCL21の制御された発現のためのNFAT応答性構築物の生成。
NFAT応答要素を同定するために、NFATベースのルシフェラーゼ発現カセット(NR2.2)を安定して発現する細胞株を、停止領域、続いて、3つのNFAT応答要素(配列番号4)、及び最小プロモーター(配列番号5)(これは、活性化されたNFATの存在下で、ホタルルシフェラーゼの産生を促進する)を含むNK-92(登録商標)細胞に線形化した構築物をエレクトロポレーションした。次いで、これらの細胞のサブセットに、抗CD19 CAR(Sup-B15細胞に存在する抗原、それ以外の場合はNK-92(登録商標)細胞による死滅に耐性の抗原)を含有するmRNAをエレクトロポレーションした。これらの細胞は、左のグラフにENR2.2として表される。次に、細胞を標的細胞の非存在下又は存在下で三重にプレーティングし、2.5時間~24時間の範囲の期間にわたってインキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、Promega DualGloシステムのステップ1試薬をウェルに添加して、ルシフェラーゼを活性化させた(基質であるルシフェリンを提供することによる)。次いで、結果をSpectraMax i3xプレートリーダーで読み取り、Microsoft Excelで計算された標準偏差の平均として表示した。結果を図6A及び6Bに示す。NFATの活性化は、時間依存的にK562に結合する標的、及びCD19-CARにつきmRNAでエレクトロポレーションした場合のみSup-B15に結合する標的において実証された。
【0154】
実施例3.CCR7及びCCL21を発現する改変NK細胞株。
pCRENFAT-CCL21プラスミドは、リコンビナーゼを介したカセット交換でpNKAT-CCR7-LP3構築物に埋め込まれたLoxP部位を使用して、CCR7を含むNK-92(登録商標)細胞に組み込まれる。環状プラスミド(pCRENFAT-CCL21)のエレクトロポレーションに続いて、Creリコンビナーゼが一過性に発現し、これは新しいLoxP隣接カセットの古い選択カセットへの交換を媒介する。ブラストサイジンでの選択は、新しいカセットの組み込みを促進するために使用され、モノクローナル細胞株は、CCR7及びCCL21を発現する改変NK-92(登録商標)細胞を得るために、実施例1で前述したのと同じ方法で得られた集団からサブクローニングされる。
【0155】
CCR7及びCCL21を発現する改変NK-92(登録商標)細胞を評価するために、未染色の改変NK-92(登録商標)細胞を、ボイデンチャンバーの下部ウェルで、NFAT活性化を引き起こすことが知られている細胞(K562又は他の細胞株)と共培養し、染色された改変NK-92(登録商標)細胞は上部チャンバーに配置される。感受性細胞株との共培養によって遊走が誘導されることが実証された場合、このシステムは機能している。
【0156】
実施例4.CCR7を発現する改変NK細胞ラインを使用したインビトロ細胞傷害性アッセイ
図9は、CCR7を発現するように改変されたNK-92(登録商標)細胞が、実施例1に記載されるように改変ボイデンチャンバートランスウェルアッセイにおける遊走後、標的細胞に対する細胞傷害性を維持することを示す。
【0157】
実施例5.核酸構築物でトランスフェクトされたNK-92(登録商標)細胞におけるCCR7、CD16、及びCD19 CARの細胞表面発現
図12は、CCR7、CD16、及びCD19 CARをコードする核酸構築物でトランスフェクトされた改変NK-92(登録商標)細胞が、細胞表面にそれぞれのタンパク質を高レベルで発現することを示す。
【0158】
実施例6.CCL19陽性皮下K562腫瘍を有するNSGマウスにおけるCCR7発現ケモカイン応答性NK細胞の生体内分布
この研究は、静脈内投与後にケモカインを発現する標的組織にホーミングするケモカイン応答性aNK細胞を示す。マウス及びヒトのケモカインは交差反応しないため、本発明者らは、代理モデルとして、局在化したリガンド発現腫瘍モデルを開発した。
【0159】
実験方法(表1):
a.動物:
i.動物タイプ:NSGマウス(JAX)、雌、7~8週齢
ii.動物数:30匹(NK細胞注射を受けた28匹の動物[24匹+4匹の余分];2匹の追加のマウスはNK処置を受けず、フローサイトメトリーの陰性対照として使用された)
b.腫瘍モデル:
i.細胞株:K562、親及びCCL19を発現する亜系統、K-19
ii.接種経路:皮下;左脇腹に親K562、右脇腹にK-19
iii.接種物:100μL無血清培地/マトリゲル(v/v 1:1)中の1E6細胞
iv.処置開始時の腫瘍負荷:K-19で平均107mm;親K562で平均135mm
v.無作為化:動物は第一にK-19腫瘍の体積に基づいて無作為化された。
c.被験物質:
i.NK細胞:
1.CD19 t-haNK(非CR)(NantKwest Torrey Pines)
2.Quandracistronic Mi-aNK R7-19.1(NantKwest Woburn)
ii.蛍光標識:
1.両方のタイプのNK細胞は、インビボ投与の直前に、製造元のマニュアルに従ってCFSEで標識された。
2.各時点で、培養CFSE標識細胞を回収して、フローサイトメトリーの陽性対照として使用した。
iii.投与方法:静脈内
iv.投与量:
1.1E7細胞/マウス
v.投与頻度:単回投与
d.腫瘍採取:
i.時点:投与後3、24及び48時間(±2時間)
ii.N=4匹マウス/群/時点
iii.腫瘍処理:採取された腫瘍は、社内プロトコル(添付)に従って単一細胞懸濁液に分離され、CFSE陽性NK細胞のフローサイトメトリー計数に供された。
e.式及び統計分析:
i.腫瘍の体積=長さ×幅/2(長さと幅はそれぞれ腫瘍の最長と最短の直径である)
ii.統計分析は、一元配置分散分析と、それに続くGraphPad Prismバージョン7.0を使用したテューキー検定による多重比較によって実施された。P<0.05は統計的に有意であると見なされる。
【0160】
【表1】
【0161】
結果:
a.安全性:
iii.両方のタイプのNK細胞を投与された動物は、細胞注入直後に軽度から中等度の急性反応を示した(G1~G2、軽度~著しいうつ状態、無気力、緩慢、又は無反応)。
iv.R7-19.1群の2匹(14匹中)の動物が注射後24時間以内に死亡しているのが発見された一方、CD19 t-haNK群では死亡はなかった。
v.24時間後、CD19 t-haNK群の動物は回復することができたが、R7-19.1群の動物は引き続き軽度にうつ状態であり、刺激に対する反応が鈍いように見えた(G1)。それらは48時間(G0)でより応答性となったが、依然として被毛粗剛及び頻呼吸を有しているようであった。
b.NK細胞ホーミング:
vi.各時点での腫瘍浸潤NK細胞の数を表2に示し、図13にグラフで示す。
1.4つのCCR7受容体-CCL19リガンドの組み合わせは次のとおりである。
a.CD19 t-haNK(登録商標)、K562腫瘍:受容体なし-リガンドなし[--];
b.CD19 t-haNK(登録商標)、K-19腫瘍:受容体なし-リガンドあり[-+];
c.R7-19.1細胞、K562腫瘍:受容体あり-リガンドなし[+-];及び
d.R7-19.1細胞、K-19腫瘍:受容体あり-リガンドあり[++]
vii.3時間後、R7-19.1細胞のK-19腫瘍へのホーミング[++]は、非CR CD19 t-haNK細胞のCCL19-又はCCL19+腫瘍へのホーミングよりも有意に大きかった(それぞれ[--]及び[-+];P<0.05)。しかし、B群の4つのK562腫瘍のうち2つから多くの細胞を回収できなかったため、同じ動物のCCL19陰性腫瘍と陽性腫瘍に対するR7-19.1細胞のホーミングを直接比較することはできなかった。
viii.24時間後、4つのCCR7受容体-CCL19リガンドの組み合わせのいずれの間でも、NK細胞のホーミングに統計的に有意な差はなかった。しかし、各NK細胞株のホーミングを同じ動物内のCCL19+及び-腫瘍と比較すると、R7-19.1細胞を投与された4匹の動物のうち3匹は、CCL19+腫瘍への浸潤の改善を示したが、CD19 t-haNK(登録商標)を投与された動物の大部分は、CCL19の発現にかかわらず、両方の腫瘍に対して同様のレベルのNK浸潤を示した(図14)。
ix.48時間後、腫瘍浸潤NK細胞の総数は全ての組み合わせで減少し、いずれの群の間でも差はなかった。
【0162】
【表2】
【0163】
この実施例は、投与後3時間で、CCR7受容体とCCL19リガンドの共存がより効率的なNK細胞浸潤をもたらしたことを示す。投与後24時間で、非CR aNK細胞を投与された動物では、4匹中3匹の動物で、CCL19の発現状態にかかわらず、NK細胞は同様のレベルの腫瘍ホーミングを示した。対照的に、R7-19.1細胞を投与された動物では、4匹中3匹の動物で、親の非リガンド発現対照と比較して、NK細胞はCCL19陽性腫瘍に対しより効率的にホーミングすることができた。腫瘍浸潤NK細胞の数は、受容体又はリガンドの発現にかかわらず、48時間で減少した。特に早い時間(投与後48時間未満)にR7-19.1細胞がCCL19腫瘍にホーミングする傾向が見られ、細胞を治療環境で使用した場合、より高い曝露と潜在的により強い細胞傷害性が示唆される。
【0164】
実施例7.静脈内CCL19陽性RAJI腫瘍を有するNSGマウスにおけるCCR7発現R7-19.1細胞の比較有効性評価
CCR7は、ケモカインCCL19及びCCL21の勾配に向かって細胞の遊走を誘導するケモカイン受容体であり、典型的には、B細胞リンパ腫の主な疾患出現部位であるリンパ節及びその他のリンパ器官で発現する。t-haNKプラットフォームに基づいて、CD19-CAR、CCR7、CD16.158V、及びERIL-2を発現するケモカイン応答性NK-92(登録商標)細胞(すなわち、R7-19.1細胞)を作製した。これらの細胞は、CCR7発現に加えて、CD19癌抗原、CD16バリアント、及びER-IL-2に対する癌標的化キメラ抗原受容体(CAR)を保有している。以前の分布研究は、親の対応物と比較して、CCL19発現皮下(SC)腫瘍へのR7-19.1細胞の優先的なホーミングを示した。
【0165】
本研究では、R7-19.1細胞の反復静脈内(IV)投与の抗腫瘍効果を、NSGマウスでCCL19を発現するように遺伝子操作されたRajiヒトバーキットリンパ腫細胞であるRaji-19.5のIV異種移植モデルで評価した。非CCR7発現CD19 t-haNK細胞(NK-92(登録商標)[抗CD19-CAR、CD16.158V、ERIL-2])を対照NK細胞株として使用した。ビヒクル対照群も含まれていた。
【0166】
両方のNK細胞株は、ビヒクル対照と比較した場合、IV Raji-19.5担癌動物の生存を延長することにおいて有意な処置効果を示した一方、R7-19.1細胞による処置は、CD19 t-haNK細胞よりも有意に大きな生存利益をもたらした。明らかな処置関連反応が両方のNK細胞株で観察されたが、これらの反応は、比較的高用量のヒト由来細胞の投与に関連するマウス特有の問題であると推測されている。
【0167】
研究の原理及び目的:インビボ分布データは、IV投与されたR7-19.1細胞がCCL19発現SC腫瘍に対して増加したホーミングを示すことを示した。本研究では、R7-19.1細胞の反復IV投与の抗腫瘍効果を、NSGマウスにおけるRaji-19.5(RajiのCCL19発現亜系統)のIV異種移植モデルで評価した。元の研究プロトコルには、本報告に含まれていない追加の動物群(群A~C)が含まれていたことに注意されたい。これらは、この腫瘍モデルにおけるR7-19.1細胞の有効性の決定には関係しない(簡略化された実験デザインについて表3を参照)。
【0168】
研究材料:
被験物質。被験物質は、R7-19.1細胞及びCD19 t-haNK細胞(非CCR7発現対照NK細胞;クローン6)であった。R7-19.1細胞は、5%の熱不活化ヒトAB血清及び0.05%のプルロニックF68を添加した増殖培地で培養した。CD19 t-haNK細胞(非CCR7発現対照NK細胞;クローン6)に関し、CD19 t-haNK細胞は、5%の熱不活化ヒトAB血清及び0.05%のプルロニックF68を添加した増殖培地で培養した。無血清増殖培地をビヒクル対照として使用した。
【0169】
試験システム:試験動物:研究開始時(検疫及び順化後)に10~11週齢、無作為化時に体重20~27グラムのNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)雌マウスを使用した。研究で使用された動物の数は30匹であり、供給元はThe Jackson Laboratory(610 Main Street Bar Harbor,ME 04609 US)であった。動物は、耳タグ、ケージ番号、及びテールマーク番号で識別された。
【0170】
Raji-19.5腫瘍モデル(癌細胞株)
細胞培養培地:Raji-19.5癌細胞は、10%ウシ胎児血清を添加したATCC配合RPMI-1640改変培地で増殖した。
【0171】
細胞回収:対数期のRaji-19.5細胞(16代)は、NantKwest’s SOP_Suspension Cancer Cell Collection for In Vivo Studiesに従う遠心分離によって採取された。次いで、細胞を洗浄し、5×10細胞/mLの濃度で無血清培地に再懸濁し、動物に接種する前に氷上で保存した。インビボ研究で使用された細胞は、97%の生存率を有していた。
【0172】
接種:30匹のマウスに0.2mLの容量で1×10個の細胞を外側尾静脈から接種した。これは0日目として定義された。
【0173】
実験手順
体重:動物は、登録前(検疫/順化後)、無作為化前、各投与日(ただし投与前)、各投与後の日、及び安楽死前に、体重を測定した。ベースライン(0日目)の体重と比較して20%を超える体重減少を示した動物は、施設のIACUCポリシーに従って安楽死させ、その後、研究責任者の裁量で剖検した。
【0174】
臨床観察:動物の死亡率/罹患率を毎日観察した(G0~G4;付録1の研究プロトコルの表2を参照)。瀕死の動物及び麻痺した動物は安楽死させ、その後、研究責任者の裁量で剖検された。
【0175】
ランダム化:3日目(腫瘍細胞接種の3日後)に、30匹の担癌マウスを、動物の体重に基づいて10匹の3つの研究群に疑似無作為化した。
【0176】
被験物質投与:連続した4週間にわたり、週に2回、(3、6、10、13、17、20、24、及び27日目)、対数期に増殖したR7-19.1及び対照CD19 t-haNK細胞を遠心分離により回収し、無血清増殖培地中、5×10細胞/mLの濃度で、200μLの注射量で、マウスあたり1×10細胞の用量でIV投与するために製剤化した。全ての細胞処理及び配合手順は、室温で実施された。細胞生存率は、全ての用量の調製物につき80%超であった。表3に示すように、群Dは、ビヒクル対照を投与され、群E及びFはそれぞれCD19 t-haNK細胞とR7-19.1細胞を投与された。
【0177】
エンドポイント:動物は、麻痺、瀕死、又は施設のIACUCによって定義された他のエンドポイント基準を満たしたときに安楽死させた。最後に生存していた動物が疾患で死亡した30日目に実験を終了した。安楽死は、CO吸入とそれに続く頸椎脱臼によって実施された。研究責任者の裁量の範囲内で、安楽死させた動物の一部を剖検して、内臓の目に見える腫瘍結節を特定した。死亡率及び死亡事象の完全な記録、並びに剖検所見は付録5に見られる。
【0178】
【表3】
【0179】
データ解析:
体重曲線:体重曲線は、二元配置分散分析(又は、欠測値がある場合は混合効果分析;付録1の補正2を参照)によって分析され、続いてテューキー検定による多重比較が行われた。
【0180】
生存曲線:生存曲線は、ログランク(Mantel-Cox)検定によって分析された。
【0181】
統計分析:全ての統計分析は、GraphPad Prismバージョン8を使用して実施された。P<0.05は統計的に有意であると見なされる。
【0182】
結果
有効性:有効性の主な測定値は動物の生存率であった。罹患、麻痺、又は20%を超える体重減少のために動物を安楽死させた場合、死亡事象がカウントされた。死んだ動物は見られなかった。図15及び表4に示すように、R7-19.1による処置及び対照CD19 t-haNK細胞による処置の両方は、ビヒクル対照と比較した場合、Raji-19.5 IV担癌動物の生存を有意に延長することができ(R7-19.1につきP<0.0001;CD19 t-haNKにつきP=0.0002、ログランク検定による)、生存期間中央値は、それぞれ6.5日と2.5日増加した。これは、ビヒクル対照に対し、それぞれ30%と12%の増加に相当する。さらに重要なことに、R7-19.1細胞でのCCR7ケモカイン応答性受容体の発現は、CD19 t-haNK細胞と比較して生存期間中央値がさらに4日増加した(17%の改善)(P<0.0001)。
【0183】
【表4】
【0184】
安全性
図16に示すように、NK細胞で処置した動物は、各処置投与後に一貫して5~10%の体重減少を示した。ほとんどの場合において、動物は細胞注射から回復することができ、体重の回復を示し、その結果、用量間で体重変化曲線が変動した。しかし、初回投与は最も重篤な反応を引き起こしたようであり、臨床症状と体重変化の両方で最長の回復時間と関連していた。このような反応は、NK静脈内注入を受けた動物では珍しくなく、当然R7-19.1細胞に特異的でない。体重の回復は、体重減少が一時的且つ可逆的であったことを示唆している。
【0185】
注目すべきことに、研究の終了に向かって、動物は、おそらく病気の進行のために、体重の急激な減少を示した(図16)。剖検により、検査したほとんど全ての動物で、肝臓、卵巣、場合によっては脾臓に腫瘍結節が認められた。一つの例外は、CD19 t-haNK細胞群で安楽死させた最初のマウスであり、6回目の投与の翌日に20%を超える体重減少に達した。この動物の剖検中に目に見える腫瘍結節は確認されなかった。したがって、安楽死を正当化する体重減少の正確な原因を特定することはできなかった。
【0186】
結論
新たに調製したR7-19.1細胞を1×10細胞/用量の投与レベルで、4週間にわたって週に2回IV投与すると、IV Raji-19.5異種移植モデルで顕著且つ統計的に有意な抗腫瘍効果が示された。この処置は、ビヒクル対照群と比較して生存期間中央値の6.5日(30%)の増加、及びCD19 t-haNK処置群と比較して4日(17%)の増加をもたらした。
【0187】
明らかな処置関連の反応が観察されたが、これらの反応は一過性であり、生き残った動物は回復の兆候を示した。これらの反応は、比較的高用量のヒト由来NK細胞の投与に関連するマウス特有の問題であると推測されており、したがって、ヒトに翻訳される可能性は低い。
【0188】
全体として、CCR7を発現するR7-19.1細胞は、Raji-19.5のこのIVモデルにおいて、ビヒクル及びそれらの非ケモカイン応答性の対応物と比較して、有意な治療効果を示した。
【0189】
実施例8.皮下CCL19陽性RAJI腫瘍を有するNSGマウスにおけるCCR7発現R7-19.1細胞の比較有効性評価
CCR7は、ケモカインCCL19及びCCL21の勾配に向かって細胞の遊走を誘導するケモカイン受容体であり、典型的には、B細胞リンパ腫の主な疾患出現部位であるリンパ節及びその他のリンパ器官で発現する。t-haNKプラットフォームに基づいて、aCD19-CAR、CCR7、CD16.158V、及びERIL-2を発現するケモカイン応答性NK-92(登録商標)細胞(すなわち、R7-19.1細胞)を作製した。これらの細胞は、CCR7発現に加えて、CD19癌抗原、CD16バリアント、及びER-IL-2に対する癌標的化キメラ抗原受容体(CAR)を保有している。以前の分布研究は、親の対応物と比較して、CCL19発現皮下(SC)腫瘍へのR7-19.1細胞の優先的なホーミングを示した。
【0190】
本研究では、R7-19.1細胞の反復静脈内(IV)投与の抗腫瘍効果を、NSGマウスでCCL19を発現するように遺伝子操作されたRajiヒトバーキットリンパ腫細胞であるRaji-19.5のSC異種移植モデルで評価した。非CCR7発現CD19 t-haNK細胞(NK-92(登録商標)[抗CD19-CAR、CD16.158V、ERIL-2])を対照NK細胞株として使用した。ビヒクル対照群も含まれていた。
【0191】
担癌動物の亜集団では、両方のNK細胞処置が腫瘍増殖の抑制に明らかな効果を示すことができ、R7-19.1処置は対照CD19 t-haNK細胞よりも強い阻害を示した。明らかな処置関連反応が両方のNK細胞株で観察されたが、これらの反応は、比較的高用量のヒト由来細胞の投与に関連するマウス特有の問題であると推測されている。
【0192】
研究の原理及び目的:インビボ分布データは、IV投与されたR7-19.1細胞がCCL19発現SC腫瘍に対して増加したホーミングを示すことを示した。本研究では、R7-19.1細胞の反復IV投与の抗腫瘍効果を、NSGマウスにおけるRaji-19.5(RajiのCCL19発現亜系統)のIV及びSC異種移植モデルで評価した。
【0193】
研究材料
被験物質:R7-19.1細胞(クローン:及びCD19 t-haNK細胞(非CCR7発現対照NK細胞;クローン6)を被験物質として使用し、増殖培地をビヒクル対照として使用した。
【0194】
R7-19.1細胞は、5%の熱不活化ヒトAB血清及び0.05%のプルロニックF68を添加した増殖培地で培養した。
【0195】
CD19 t-haNK細胞は、5%の熱不活化ヒトAB血清及び0.05%のプルロニックF68を添加した増殖培地で培養した。
【0196】
試験システム:研究開始時(検疫及び順化後)に10~11週齢、腫瘍移植日に体重19~28グラムのNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)雌マウス30匹を研究で使用した。供給元はThe Jackson Laboratory(610 Main Street Bar Harbor、ME 04609 US)であった。動物は、耳タグ、ケージ番号、及びテールマーク番号を用いて識別された。
【0197】
Raji-19.5腫瘍モデル(癌細胞株)
細胞培養培地:Raji-19.5癌細胞は、10%ウシ胎児血清を添加したATCC配合RPMI-1640改変培地で培養した。
【0198】
細胞回収:対数期のRaji-19.5細胞(16代)は、NantKwest’s SOP_Suspension Cancer Cell Collection for In Vivo Studiesに従う遠心分離によって採取された。次いで、細胞を洗浄し、無血清培地に再懸濁した後、等量のマトリゲルと混合して、2.5×10細胞/mLの最終濃度に到達させた。動物に接種する前に、細胞を氷上に保存した。インビボ研究で使用された細胞は、97%の生存率を有していた。
【0199】
接種:30匹の動物に、100μLの容量で2.5×10個の癌細胞を右脇腹に片側接種した。注射前に皮膚を剪毛した。
【0200】
実験手順
腫瘍体積測定:SC腫瘍移植後、動物は、腫瘍定着について少なくとも週に2回検査された。腫瘍が測定可能になったとき、腫瘍体積(TV)をデジタル式ノギスで週に2回測定し、次の式を使用して計算した。TV=長さ×幅/2[長さは腫瘍の最大直径であり、幅は腫瘍の最小直径である]。2000mmを超える腫瘍体積を有する動物、又は潰瘍性腫瘍を有する動物は、施設のIACUCポリシーに従って安楽死させ、その後剖検した。腫瘍増殖阻害(TGI)は次のように計算された。TGI=(T-T)/ΔT×100%(式中、T及びTは、それぞれ特定の時点での対照群と処置群の平均腫瘍体積;ΔTは対照群の平均腫瘍体積の変化)。
【0201】
体重:動物は、登録前(検疫/順化後)、無作為化前、各投与日(ただし投与前)、各投与後の日、及び安楽死前に、体重を測定した。ベースライン(1日目)の体重と比較して20%を超える体重減少を示した動物は、施設のIACUCポリシーに従って安楽死させ、その後、剖検した。
【0202】
臨床観察:動物の死亡率/罹患率を毎日観察した(G0~G4;表5を参照)。瀕死の、又は麻痺した動物を安楽死させ、その後剖検した。
【0203】
ランダム化:平均腫瘍体積が190mmに達したとき、30匹のマウスを、1群あたり10匹のマウスを有する3つの研究群に疑似無作為化して、群間で同様の腫瘍体積を達成した。これは1日目として定義された。注目すべきことに、無作為化による腫瘍サイズのばらつきのために、各群には2つの亜集団が含まれていた:4~5匹の動物は大(>200mm)腫瘍、5~6匹は小(<200mm)腫瘍を有していた(図17を参照)。
【0204】
被験物質投与:連続した4週間にわたり、週に2回、(1、4、9、12、及び15日目)、対数期に増殖したR7-19.1及び対照CD19 t-haNK細胞を遠心分離により回収し、無血清増殖培地中、5×10細胞/mLの濃度で、200μLの注射量で、マウスあたり1×10細胞の用量でIV投与するために製剤化した。全ての細胞処理及び配合手順は、室温で実施された。細胞生存率は、全ての用量の調製物につき80%超であった。表5に示すように、群Aは、ビヒクル対照を投与され、群B及びCはそれぞれCD19 t-haNK細胞及びR7-19.1細胞を投与された。
【0205】
エンドポイント:動物は、施設のIACUCによって定義された上記のエンドポイントのいずれかに達したときに安楽死させた。安楽死は、CO吸入とそれに続く頸椎脱臼によって実施された。研究責任者の判断に基づき、安楽死させた動物の一部を剖検して、内臓の目に見える腫瘍結節を特定した。
【0206】
【表5】
【0207】
データ解析
腫瘍体積の計算:腫瘍の体積=長さ×幅/2(長さと幅はそれぞれ腫瘍の最長と最短の直径である)。
【0208】
腫瘍増殖阻害(TGI)の計算:TGI=(T-T)/ΔT×100%(式中、T及びTは、それぞれ特定の時点での対照群と処置群の平均腫瘍体積、Tは対照群の平均腫瘍体積の変化)。
【0209】
腫瘍増殖及び体重曲線の統計分析:腫瘍増殖及び体重曲線は、二元配置分散分析(又は、欠測値がある場合は混合効果分析;付録1の補正2を参照)によって分析され、続いてテューキー検定による多重比較が行われた。全ての統計分析は、GraphPad Prismバージョン8を使用して実施された。P<0.05は統計的に有意であると見なされる。
【0210】
結果
有効性:この研究の第一の測定値は、腫瘍増殖阻害である。初期腫瘍体積が異なるSC腫瘍では、血管系及びCCL19勾配が異なって発達している可能性があり、これが被験物質の腫瘍への分布に影響を与える可能性がある。さらに、小腫瘍及び大腫瘍は、異なる様式でNK細胞処置に応答し得る。これらの理由から、2つの亜集団(すなわち、大腫瘍及び小腫瘍)は別々に分析される。
【0211】
図18に示すように、大きな初期腫瘍を保有する動物の亜集団では、NK細胞株による処置は両方、ビヒクル対照(腫瘍体積が2000mmを超えているか、潰瘍性腫瘍が存在するため、4匹中3匹の動物を9日目に安楽死させる必要があった)と比較した場合、明らかな腫瘍増殖阻害を示した。対照的に、NK細胞処置群では、大多数の動物が12日目又は15日目まで生存した。さらに重要なことに、15日目には、CCR7を発現していない対応物と比較した場合、R7-19.1群で腫瘍増殖阻害の表面的な増強が見られ、35%のTGIを達成した。おそらくコホートのサイズが小さいため(CD19 t-haNK群とR7-19.1群でそれぞれ2と4のN)、この差は統計的有意性に達しなかった。
【0212】
しかし、処置開始時に小腫瘍を保有していた動物について、ビヒクル対照と比較した場合、又は互いに比較した場合、どちらのNK細胞療法も腫瘍増殖の抑制に効果的ではなかった(図19)。これは、次の3つの要因に起因すると考えられる。1)小腫瘍の血管系が未発達であったため、被験物質への曝露/到達性が低く、両方のNK細胞療法が失敗した可能性がある。2)CCR7を介した走化性には、ケモカインの単なる存在に反応するのではなく、ケモカインの勾配が必要である。CCL19のこのような勾配は、小腫瘍では確率が不十分であり、それによりR7-19.1細胞とCD19 t-haNK対照の区別可能性を欠いていた可能性がある。及び、3)これらのすでに小さなコホートでは腫瘍増殖にいくつかの「外れ値」があり、統計分析をさらに妨げた。
【0213】
図20に示すように、NK細胞で処置した動物は、典型的には、各処置投与後に5~10%の体重減少を示した。ほとんどの場合において、動物は細胞注射から回復することができ、体重の回復を示し、その結果、用量間で体重変化曲線が変動した。しかし、初回投与は最も急性且つ重篤な反応を引き起こしたようであり、臨床症状と体重変化の両方で最長の回復時間と関連していた。このような反応は、NK静脈内注入を受けた動物では珍しくなく、当然R7-19.1細胞に特異的でない。体重の回復は、体重減少が一時的且つ可逆的であったことを示唆している。
【0214】
結論
新たに調製したケモカイン応答性R7-19.1細胞を1×10細胞/用量の投与レベルで、4週間にわたって週に2回IV投与すると、大きなSCRaji-19.5腫瘍を保有する動物では、明らかな腫瘍増殖阻害を生じたが、おそらくコホートのサイズが小さいため、そのような効果は統計的有意性に達しなかった。この処置レジメンは、開始腫瘍体積が小さい動物では治療効果を示さなかった。これは、小腫瘍における腫瘍血管系の未発達及び/又はケモカイン勾配の確立が不十分であることに起因し得る。明らかな処置関連反応が観察された。しかし、これらの反応は一過性であり、動物は回復の兆候を示した。これらの反応は、比較的高用量のヒト由来NK細胞の投与に関連するマウス特有の問題であると推測されており、したがって、ヒトに翻訳される可能性は低い。
【0215】
実施例9.aTGFβ/PD-L1 CAR改変NK-92(登録商標)細胞の産生
TGFβRIIの細胞外ドメインの一本鎖二量体で構成されるTGFβトラップを、PD-L1 CAR、CD16、及びerIL-2導入遺伝子も含有するクアドリシストロニックプラスミドベクターにクローニングした(図21)。クアドリシストロニックプラスミドをaNK細胞にエレクトロポレーションして、改変NK-92細胞を作製した。改変されたNK-92(登録商標)細胞は、IL-2依存性である非形質転換aNK細胞がIL-2枯渇培地で生存できなかったため、IL-2枯渇培地によって選択された。図22は、aTGFβ/PD-L1 CAR改変NK-92(登録商標)細胞が高レベルのPD-L1 CAR及びCD16を共発現することを示す。
【0216】
限界希釈クローニング
ポリクローナルaTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)プール培養物のアリコートを、IL-2を添加せずに増殖培地で3細胞/mlの密度に希釈した。この細胞懸濁液を96ウェルプレートにウェルあたり200μlの容量で分注した。これはウェルあたり平均0.6細胞に相当する。プレートを37℃で10日間インキュベートし、次いで細胞増殖を視覚的にチェックした。クローンを採取し、拡大培養及び特性評価のためにより大きな容器に移した。
【0217】
生物分析法
細胞培養:
ポリクローナル及びクローンaTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)細胞を、IL-2を含まない5%熱不活化ヒトAB血清を添加した増殖培地で培養した。
【0218】
aNK細胞は、5%の熱不活化ヒトAB血清及び500 IU/mlの組換えヒトIL-2を添加した増殖培地で培養した。
【0219】
haNK細胞は、IL-2を含まない5%の熱不活化ヒトAB血清を添加した増殖培地で培養した。
【0220】
K562及びMDA-MB-231細胞は、10%熱不活化ウシ胎児血清及び抗生物質/抗真菌剤のカクテルを添加したRPMI-1640で培養した。K562細胞は、2~5日ごと、又は培養物が黄色に見えるたびに継代された。
【0221】
SUP-B15PD-L1+及びSUP-B15CD19KO/CD20+細胞は、20%熱不活化ウシ胎児血清、55uMのベータメルカプトエタノール、及び抗生物質/抗真菌剤のカクテルを添加したRPMI-1640で培養した。それ以外の場合、細胞は上記のK562細胞として継代された。
【0222】
フローサイトメトリー分析のための抗体染色:
遠心分離により細胞を回収し、FACSバッファー(1XD-PBS中の5%FBS)で2回洗浄し、1mlのFACSバッファーに再懸濁した。表面タンパク質の直接フルオロフォア結合抗体染色のために、細胞を適切なコンジュゲート抗体(又はアイソタイプ対照)と共に暗所で20分間、4℃でインキュベートし、次いで、FACSバッファーで2回洗浄した。CARタンパク質を検出するために、細胞をビオチン化抗F(ab’)断片抗体とインキュベートした後、ストレプトアビジン-APC抗体とインキュベートした。サンプルはMACSQuantフローサイトメーターで分析された。
【0223】
細胞傷害性:
懸濁液増殖細胞株は、細胞培養物のピペッティングによって再懸濁された。細胞生存率は、自動カウント(トリパンブルー排除法)によって決定された。標的細胞をCFSE色素で標識し、10%熱不活化FBS及び抗生物質/抗真菌剤を添加したRPMI-1640で、標的細胞及びエフェクター細胞を必要な細胞濃度に希釈した。エフェクター及び標的細胞は、96ウェルプレート中、異なるエフェクター対標的(20:1、10:1、5:1、2.5:1、1.25:1、0.62:1、0.31:1、0.15:1のE:T)の比率で混合され、5%CO2雰囲気下、37℃のインキュベーターで4時間共培養された。次に、死細胞の蛍光標識のためにPIを添加し、MACSquantフローサイトメトリー装置でアッセイを分析した。
【0224】
ADCC:
懸濁液増殖細胞株は、細胞培養物のピペッティングによって再懸濁された。細胞生存率は、自動カウント(トリパンブルー排除法)によって決定された。標的細胞をPKH67-GL色素で標識し、10%熱不活化FBS及び抗生物質/抗真菌剤を添加したRPMI-1640で、標的細胞及びエフェクター細胞を必要な細胞濃度に希釈した。標的細胞は、モノクローナル抗体トラスツズマブ、リツキシマブ、又は抗体なしで、室温で30分間プレインキュベートされた。次いで、抗体標識標的細胞(及び無抗体対照)は、96ウェルプレート中、異なるエフェクター対標的比(20:1、10:1、5:1、2.5:1、1.25:1、0.62:1、0.31:1、0.15:1のE:T)でエフェクター細胞と混合され、5%CO雰囲気下、37℃のインキュベーターで4時間共培養された。次に、死細胞の蛍光標識のためにPIを添加し、MACSquantフローサイトメトリー装置でアッセイを分析した。
【0225】
aTGFβ/PD-L1 t-haNK細胞から分泌されるTGFβトラップの定量化
分析用のサンプル上清は、細胞を除去するために500×gで5分間の第1の遠心分離ステップで、続いて細胞デブリを除去するために2000×gで5分間の第2の遠心分離で、調製された。サンプルの上清は分析まで-80℃で凍結した。500×g遠心分離ステップからの細胞ペレットを再懸濁し、三重物をプールし、細胞密度を記録した。サンプル上清中のTGFβトラップの濃度は、製造元の指示に従って、ヒトTGFβRII ELISA検出キットを使用して測定し、提供された標準と比較した。TGFβトラップ濃度は細胞数に対して正規化され、pg/ml/10細胞として表された。図23は、全てのaTGFβ PD-L1 t-haNKクローンが大量のTGFβトラップ(約6~約13ng/ml/10細胞)を分泌したことを示す。
【0226】
標的細胞株に対するaTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)細胞の細胞傷害性
aTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)細胞の細胞傷害性は、標的細胞であるK562細胞、SUP-B15PD-L1+細胞、及びMDA-MB-231細胞とインキュベートすることによって分析された。図24は、aTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)細胞が、K562細胞(標的細胞)を死滅する際に親aNK細胞と同等の細胞傷害性を維持したことを示す。
【0227】
図25は、aTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)細胞がaNK(商標)耐性、PD-L1陽性SUP-B15細胞株の特異的死滅の増強を示したことを示す。わずか約10%の細胞がエフェクター対標的比8でaNK細胞によって死滅したのと比較して、細胞の約70%がaTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)細胞によって死滅した。
【0228】
図26は、aTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)細胞がMDA-MB-231細胞株の特異的死滅の増強を示したことを示す。わずか約40%の細胞がエフェクター対標的比8でaNK細胞によって死滅したのと比較して、細胞の約90%がaTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)細胞によって死滅した。
【0229】
図27は、抗CD20リツキシマブモノクローナル抗体と、又は抗Her2-neuトラスツズマブモノクローナル抗体と組み合わせたSUP-B15CD19KO/CD20+細胞(CD19-、CD20+、Her2-neu-、NK耐性)に対するaTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)細胞のADCC活性を示す。4時間の細胞傷害性アッセイでは、aTGFβ/PD-L1 t-haNK細胞は、抗CD20抗体リツキシマブと組み合わせた場合に耐性SUP-B15CD19KO/CD20+を効果的に標的化して死滅することができた。haNK(登録商標)もaTGFβ/PD-L1 t-haNK(商標)クローンも、抗Her2/neu対照抗体トラスツズマブと組み合わせた場合、標的SUP-B15CD19KO/CD20+細胞を死滅することができなかった。
【0230】
実施例10.改変NK-92(登録商標)細胞から分泌されるTGFβトラップはTGFβ活性を阻害する
ルシフェラーゼレポーター遺伝子を直接発現するTGFβ応答要素(SMAD結合プロモーター)で遺伝子操作されたHEK293細胞は、TGFβで処理した場合にルシフェラーゼ活性の用量依存的な増加を示す(図28)。
【0231】
図29は、HEK293レポーター細胞におけるルシフェラーゼ活性のTGFβ誘導は、aTGFβ/PD-L1 t-haNK細胞の培養物上清との共培養によって阻害できるのに対し、haNK対照細胞からの培養上清はルシフェラーゼ活性に限定的な影響を有することを示す。
【0232】
実施例11.改変NK-92(登録商標)細胞によるIL-12の産生
NK-92細胞は、p35-p40配向又はp40-p35配向のいずれかで、機能的なIL-12 p70二量体を一本鎖ポリペプチドとしてコードするレンチウイルス構築物(contruct)で形質導入された(図30)。ネオマイシン選択後、形質導入されたNK-92細胞は検出可能なレベルのp70 IL-12を分泌することができた。IL-12二量体のC末端に2Aペプチドを付加しても、タンパク質の分泌には影響しなかった。
【0233】
IL-12/PD-L1 CAR改変NK-92(登録商標)細胞の産生
IL-12の一本鎖二量体(scIL-12 p70)は、PD-L1 CAR、CD16、及びerIL-2導入遺伝子も含有するクアドリシストロニックプラスミドベクターにクローニングされた。クアドリシストロニックプラスミド(図31)をaNK細胞にエレクトロポレーションして、改変NK-92細胞を作製した。改変されたNK-92(登録商標)細胞は、IL-2依存性である非形質転換aNK細胞がIL-2枯渇培地で生存できないため、IL-2枯渇培地によって選択された。図33は、IL-12/PD-L1 CAR改変NK-92(登録商標)細胞が有意な量のscIL-12p70サイトカインを分泌できたことを示す。
【0234】
本明細書に記載された実施例及び実施形態は例示のみを目的としたものであり、それらの観点で様々な修正又は変更が当業者には示唆され、本出願の精神及び範囲内に且つ添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解されよう。本明細書に引用された全ての刊行物、配列アクセッション番号、特許及び特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0235】
本明細書における本発明の概念から逸脱することなく、すでに説明したもの以外のさらに多くの改変が可能であることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の対象物は、添付の特許請求の範囲を除いて制限されるべきではない。さらに、明細書及び特許請求の範囲の両方を解釈する際には、全ての用語は、文脈と一致する可能な限り広い方法で解釈されるべきである。特に、「含む」及び「含んでいる」という用語は、非排他的な方法で要素、成分、又はステップを指すものとして解釈されるべきであり、参照される要素、成分、又はステップが存在するか、利用されるか、又は明示的に参照されていない他の要素、成分、又はステップと組み合わされ得ることを示す。明細書の請求が、A、B、C…及びNからなる群から選択されるものの少なくとも1つに言及している場合、文は、AとN、又はBとNなどではなく、群から1つの要素のみを必要とするものとして解釈されるべきである。
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