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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】抗HLA-DQ2.5抗体
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20241113BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
C12Q1/02
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023074343
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2020508640の分割
【原出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2023099122
(43)【公開日】2023-07-11
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2017193341
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】大倉 有生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徳行
(72)【発明者】
【氏名】津嶋 崇
(72)【発明者】
【氏名】ハルフディン ズルカナイン
(72)【発明者】
【氏名】溝呂木 暁彦
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0184049(US,A1)
【文献】国際公開第2017/046652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗HLA-DQ2.5抗体をスクリーニングする方法であって、
(a) 抗体がグルテンペプチドの存在下でHLA-DQ2.5に対して結合活性を有するかどうかを試験し、グルテンペプチドの存在下でHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する抗体を選択する工程;
(b) 抗体がHLA-DQ8に対して特異的結合活性を有するかどうかを試験し、HLA-DQ8に対して特異的結合活性を有しない抗体を選択する工程;および
(c) 抗体がインバリアント鎖とHLA-DQ2.5との複合体に対して特異的結合活性を有するかどうかを試験し、インバリアント鎖とHLA-DQ2.5との複合体に対して特異的結合活性を有しない抗体を選択する工程
を含む方法。
【請求項2】
抗体がHLA-DQ5.1に対して特異的結合活性を有するかどうかを試験し、HLA-DQ5.1に対して特異的結合活性を有しない抗体を選択する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗HLA-DQ2.5抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
セリアック病(celiac diseaseまたはcoeliac disease)は、遺伝的感受性患者においてグルテンの摂取が小腸への損傷を引き起こす自己免疫障害である(非特許文献1~5)。欧米の人口の約1%、すなわち米国および欧州連合では800万人がセリアック病に罹患していると考えられる;しかしながら、1940年代にこの疾患が認識されて以降、著しい治療上の進歩は達成されていない。
主要組織適合性複合体(MHC)クラスIIに属するヒト白血球抗原(HLA)は、HLA-DR、HLA-DPおよびHLA-DQ分子、例えばHLA-DQ2.5アイソフォーム(本明細書において、以降「HLA-DQ2.5」と呼ぶ)を含み、これらは細胞表面上でα鎖とβ鎖から構成されるヘテロ二量体を形成している。セリアック病患者の大多数(>90%)はHLA-DQ2.5ハプロタイプの対立遺伝子を有している(非特許文献6)。このアイソフォームは、グルテンペプチドに対してより強い親和性を有すると考えられる。他のアイソフォームと同様に、HLA-DQ2.5は、外因性源に由来するプロセシングされた抗原を、T細胞上のT細胞受容体(TCR)に提示する。セリアック病患者では、パンなどの高グルテン食品の消化の結果として、免疫原性のグルテンペプチド、例えばグリアジンペプチドが形成される(非特許文献2)。該ペプチドは小腸上皮を通って粘膜固有層に輸送され、トランスグルタミナーゼ2(TG2)のような組織トランスグルタミナーゼによって脱アミド化される。脱アミド化されたグリアジンペプチドは抗原提示細胞(APC)によってプロセシングされ、APCがそれらをHLA-DQ2.5にロードする。ロードされたペプチドはHLA-DQ2.5拘束性T細胞に提示され、自然免疫反応と適応免疫反応を活性化する。これは、小腸粘膜の炎症性損傷ならびに様々なタイプの胃腸障害、栄養欠乏症、および全身症状を含む症状を引き起こす。抗HLA DQ中和抗体はセリアック病患者に由来するT細胞の活性化を阻害することが報告されている(非特許文献7)。
現在実施可能なセリアック病治療法は、生涯にわたるグルテンフリー食(GFD)の順守である。しかし、現実的には、GFDを用いたとしてもグルテン曝露を完全に排除することは困難である。これらの患者に対する許容グルテン量はわずか約10~50mg/日である(非特許文献11)。GFD製造では二次汚染が広範囲に生じる可能性があり、GFDを十分に順守している患者においてさえも、微量のグルテンがセリアック病の症状を引き起こすことがある。このような意図しないグルテン曝露のリスクの存在下で、GFDに対する補助療法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】N Engl J Med 2007; 357:1731-1743
【文献】J Biomed Sci. 2012; 19(1): 88
【文献】N Engl J Med 2003; 348:2517-2524
【文献】Gut 2003; 52:960-965
【文献】Dig Dis Sci 2004; 49:1479-1484
【文献】Gastroenterology 2011; 141:610-620
【文献】Gut 2005; 54:1217-1223
【文献】Gastroenterology 2014; 146:1649-58
【文献】Nutrients 2013 Oct 5(10): 3975-3992
【文献】J Clin Invest. 2007; 117(1):41-49
【文献】Am J Clin Nutr 2007; 85: 160-6
【発明の概要】
【0004】
技術的課題
補助療法を必要とする上記の状況下において、本発明は抗HLA-DQ2.5抗体を提供する。
【0005】
課題の解決
特定の態様では、本発明の抗HLA-DQ2.5抗体(本明細書において、以降「本発明の抗体」とも呼ぶ)は、HLA-DQ2.5に対して結合活性を有し、HLA-DQ8に対して結合活性を実質的に有しない。
特定の態様では、本発明の抗体は、グルテンペプチドとの複合体(HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する。
特定の態様では、前記グルテンペプチドは、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、セカリン1ペプチドおよびセカリン2ペプチドからなる群のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7つまたは全てである。
特定の態様では、前記グルテンペプチドは、33merグリアジンペプチドである。
特定の態様では、本発明の抗体は、HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする。
特定の態様では、本発明の抗体は、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、またはHLA-DQ7.3に対して結合活性を実質的に有しない。
特定の態様では、本発明の抗体は、HLA-DRまたはHLA-DPに対して結合活性を実質的に有しない。
特定の態様では、本発明の抗体は、インバリアント鎖との複合体(HLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有しない。
特定の態様では、本発明の抗体は、HLA-DQ2.2に対して結合活性を有し、HLA-DQ7.5に対して結合活性を実質的に有しない。
特定の態様では、本発明の抗体は、HLA-DQ7.5に対して結合活性を有し、HLA-DQ2.2に対して結合活性を実質的に有しない。
特定の態様では、本発明の抗体は、HLA-DQ2.2またはHLA-DQ7.5に対して結合活性を実質的に有しない。
特定の態様では、本発明の抗体は、グルテンペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して増強された結合活性を有する。
特定の態様では、本発明の抗体は、CLIPペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis:ウシ型結核菌)ペプチド、B型肝炎ウイルスペプチドおよびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つまたは全てとの複合体(HLA-DQ2.5/CLIPペプチド複合体、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド複合体、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド複合体、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチド複合体およびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞)の形態のHLA-DQ2.5に対してよりも、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、セカリン1ペプチドおよびセカリン2ペプチドからなる群のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7つまたは全てとの複合体(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド複合体およびHLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対して、強い結合活性を有する。
特定の態様では、本発明の抗体は、CLIPペプチドとの複合体(HLA-DQ2.5/CLIPペプチド複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対してよりも、33merグリアジンペプチドとの複合体(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対して、強い結合活性を有する。
特定の態様では、本発明の抗体は、グリアジン結合型HLA-DQ2.5とD2 TCRまたはS2 TCRとの間の結合に対して中和活性を有する。
特定の態様では、本発明の抗体は、インバリアント鎖による細胞内在化(すなわち、インバリアント鎖が介在する急速な細胞内在化)を受けない。
特定の態様では、本発明の抗体は、ヒト化抗体である。
特定の態様では、本発明の抗体は、特定の重鎖相補性決定領域(HCDR)を有する。
特定の態様では、本発明の抗体は、特定の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を有する。
特定の態様では、本発明は、特定のHCDRおよびLCDRを有する抗体が結合するのと同じHLA-DQ2.5エピトープに結合する抗体を提供する。
特定の態様では、本発明は、HLA-DQ2.5への結合について、特定のHCDRおよびLCDRを有する抗体と競合する抗体を提供する。
特定の態様では、本発明は、HLA-DQ2.5のβ鎖に対して結合活性を有し、かつHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、抗HLA-DQ2.5抗体を提供する。
特定の態様では、本発明は、HLA-DQ2.5のα鎖に対して結合活性を有し、かつHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、抗HLA-DQ2.5抗体を提供する。
特定の態様では、本発明は、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、セカリン1ペプチドおよびセカリン2ペプチドからなる群のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7つまたは全てとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有し、かつCLIPペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビスペプチド、B型肝炎ウイルスペプチドおよびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つまたは全てとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有せず、かつHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、抗体を提供する。
特定の態様では、本発明は、33merグリアジンペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有し、かつCLIPペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有せず、かつHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、抗体を提供する。
特定の態様では、本発明は、抗HLA-DQ2.5抗体をスクリーニングする方法を提供し、該方法は、抗体が目的の抗原に対して結合活性を有するかどうかを試験し、該目的の抗原に対して結合活性を有する抗体を選択する工程;該抗体が目的でない抗原に対して特異的結合活性を有するかどうかを試験し、該目的でない抗原に対して特異的結合活性を有しない抗体を選択する工程を含む。
特定の態様では、上記方法は、該抗体がHLA-DQ2.5とTCRとの間の結合に対して中和活性を有するかどうかを試験し、中和活性を有する抗体を選択する工程をさらに含む。
特定の態様では、上記方法は、該抗体がグリアジンなどのグルテンペプチドの存在下でHLA-DQ2.5に結合するかどうかを試験し、グルテンペプチドの存在下でHLA-DQ2.5に結合する抗体を選択する工程をさらに含む。
【0006】
より具体的には、本発明は以下を提供する。
[1] HLA-DQ2.5に対して結合活性を有し、HLA-DQ8に対して結合活性を実質的に有しない、抗HLA-DQ2.5抗体。
[2] グルテンペプチドとの複合体(HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する、[1]の抗体。
[3] 前記グルテンペプチドが、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、セカリン1ペプチドおよびセカリン2ペプチドからなる群のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7つまたは全てである、[2]の抗体。
[4] HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、[2]の抗体。
[5] HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、またはHLA-DQ7.3に対して結合活性を実質的に有しない、[1]~[4]のいずれかの抗体。
[6] HLA-DRまたはHLA-DPに対して結合活性を実質的に有しない、[1]~[5]のいずれかの抗体。
[7] インバリアント鎖との複合体(HLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有しない、[1]~[6]のいずれかの抗体。
[8] HLA-DQ2.2に対して結合活性を有し、HLA-DQ7.5に対して結合活性を実質的に有しない、[1]~[7]のいずれかの抗体。
[9] HLA-DQ7.5に対して結合活性を有し、HLA-DQ2.2に対して結合活性を実質的に有しない、[1]~[7]のいずれかの抗体。
[10] HLA-DQ2.2またはHLA-DQ7.5に対して結合活性を実質的に有しない、[1]~[7]のいずれかの抗体。
[11] グルテンペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して増強された結合活性を有する、[10]の抗体。
[12] CLIPペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)ペプチド、B型肝炎ウイルスペプチドおよびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つまたは全てとの複合体(HLA-DQ2.5/CLIPペプチド複合体、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド複合体、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド複合体、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチド複合体、HLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞)の形態のHLA-DQ2.5に対してよりも、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、セカリン1ペプチドおよびセカリン2ペプチドからなる群のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7つまたは全てとの複合体(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド複合体およびHLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対して強い結合活性を有する、[11]の抗体。
[13] 下記(1)~(14)のいずれか1つである、[1]~[7]のいずれかの抗体:
(1)SEQ ID NO: 13のHCDR1配列、SEQ ID NO: 25のHCDR2配列、SEQ ID NO: 37のHCDR3配列、SEQ ID NO: 61のLCDR1配列、SEQ ID NO: 73のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 85のLCDR3配列を含む抗体;
(2)SEQ ID NO: 14のHCDR1配列、SEQ ID NO: 26のHCDR2配列、SEQ ID NO: 38のHCDR3配列、SEQ ID NO: 62のLCDR1配列、SEQ ID NO: 74のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 86のLCDR3配列を含む抗体;
(3)SEQ ID NO: 15のHCDR1配列、SEQ ID NO: 27のHCDR2配列、SEQ ID NO: 39のHCDR3配列、SEQ ID NO: 63のLCDR1配列、SEQ ID NO: 75のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 87のLCDR3配列を含む抗体;
(4)SEQ ID NO: 16のHCDR1配列、SEQ ID NO: 28のHCDR2配列、SEQ ID NO: 40のHCDR3配列、SEQ ID NO: 64のLCDR1配列、SEQ ID NO: 76のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 88のLCDR3配列を含む抗体;
(5)SEQ ID NO: 17のHCDR1配列、SEQ ID NO: 29のHCDR2配列、SEQ ID NO: 41のHCDR3配列、SEQ ID NO: 65のLCDR1配列、SEQ ID NO: 77のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 89のLCDR3配列を含む抗体;
(6)SEQ ID NO: 18のHCDR1配列、SEQ ID NO: 30のHCDR2配列、SEQ ID NO: 42のHCDR3配列、SEQ ID NO: 66のLCDR1配列、SEQ ID NO: 78のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 90のLCDR3配列を含む抗体;
(7)SEQ ID NO: 19のHCDR1配列、SEQ ID NO: 31のHCDR2配列、SEQ ID NO: 43のHCDR3配列、SEQ ID NO: 67のLCDR1配列、SEQ ID NO: 79のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 91のLCDR3配列を含む抗体;
(8)SEQ ID NO: 20のHCDR1配列、SEQ ID NO: 32のHCDR2配列、SEQ ID NO: 44のHCDR3配列、SEQ ID NO: 68のLCDR1配列、SEQ ID NO: 80のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 92のLCDR3配列を含む抗体;
(9)SEQ ID NO: 146のHCDR1配列、SEQ ID NO: 150のHCDR2配列、SEQ ID NO: 154のHCDR3配列、SEQ ID NO: 162のLCDR1配列、SEQ ID NO: 166のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 170のLCDR3配列を含む抗体;
(10)SEQ ID NO: 147のHCDR1配列、SEQ ID NO: 151のHCDR2配列、SEQ ID NO: 155のHCDR3配列、SEQ ID NO: 163のLCDR1配列、SEQ ID NO: 167のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 17192のLCDR3配列を含む抗体;
(11)SEQ ID NO: 148のHCDR1配列、SEQ ID NO: 152のHCDR2配列、SEQ ID NO: 156のHCDR3配列、SEQ ID NO: 164のLCDR1配列、SEQ ID NO: 168のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 172のLCDR3配列を含む抗体;
(12)SEQ ID NO: 149のHCDR1配列、SEQ ID NO: 153のHCDR2配列、SEQ ID NO: 157のHCDR3配列、SEQ ID NO: 165のLCDR1配列、SEQ ID NO: 169のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 173のLCDR3配列を含む抗体;
(13)(1)~(12)のいずれか1つの抗体が結合するのと同じHLA-DQ2.5エピトープに結合する抗体;
(14)HLA-DQ2.5またはグルテンペプチドとHLA-DQ2.5との複合体への結合について(1)~(12)のいずれか1つの抗体と競合する抗体。
[14] HLA-DQ2.5のβ鎖に対して結合活性を有し、かつHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、抗HLA-DQ2.5抗体。
[15] HLA-DQ2.5のα鎖に対して結合活性を有し、かつHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、抗HLA-DQ2.5抗体。
[16] 33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、セカリン1ペプチドおよびセカリン2ペプチドからなる群のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7つまたは全てとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有し、かつCLIPペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビスペプチド、B型肝炎ウイルスペプチドおよびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つまたは全てとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有せず、かつHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、抗体。
[17] HLA-DQ2.5に対して結合活性を有し、HLA-DQ8に対して結合活性を実質的に有しない、抗HLA-DQ2.5抗体。
[18] グルテンペプチドとの複合体(HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する、[17]の抗体。
[19] 前記グルテンペプチドが、33merグリアジンペプチドである、[18]の抗体。
[20] HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、[18]の抗体。
[21] HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、またはHLA-DQ7.3に対して結合活性を実質的に有しない、[17]~[20]のいずれかの抗体。
[22] HLA-DRまたはHLA-DPに対して結合活性を実質的に有しない、[17]~[21]のいずれかの抗体。
[23] インバリアント鎖との複合体(HLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有しない、[17]~[22]のいずれかの抗体。
[24] HLA-DQ2.2に対して結合活性を有し、HLA-DQ7.5に対して結合活性を実質的に有しない、[17]~[23]のいずれかの抗体。
[25] HLA-DQ7.5に対して結合活性を有し、HLA-DQ2.2に対して結合活性を実質的に有しない、[17]~[23]のいずれかの抗体。
[26] HLA-DQ2.2またはHLA-DQ7.5に対して結合活性を実質的に有しない、[17]~[23]のいずれかの抗体。
[27] グルテンペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して増強された結合活性を有する、[26]の抗体。
[28] CLIPペプチドとの複合体(HLA-DQ2.5/CLIPペプチド複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対してよりも、33merグリアジンペプチドとの複合体(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体)の形態のHLA-DQ2.5に対して強い結合活性を有する、[27]の抗体。
[29] 下記(1)~(10)のいずれか1つである、[17]~[23]の抗体:
(1)SEQ ID NO: 13のHCDR1配列、SEQ ID NO: 25のHCDR2配列、SEQ ID NO: 37のHCDR3配列、SEQ ID NO: 61のLCDR1配列、SEQ ID NO: 73のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 85のLCDR3配列を含む抗体;
(2)SEQ ID NO: 14のHCDR1配列、SEQ ID NO: 26のHCDR2配列、SEQ ID NO: 38のHCDR3配列、SEQ ID NO: 62のLCDR1配列、SEQ ID NO: 74のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 86のLCDR3配列を含む抗体;
(3)SEQ ID NO: 15のHCDR1配列、SEQ ID NO: 27のHCDR2配列、SEQ ID NO: 39のHCDR3配列、SEQ ID NO: 63のLCDR1配列、SEQ ID NO: 75のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 87のLCDR3配列を含む抗体;
(4)SEQ ID NO: 16のHCDR1配列、SEQ ID NO: 28のHCDR2配列、SEQ ID NO: 40のHCDR3配列、SEQ ID NO: 64のLCDR1配列、SEQ ID NO: 76のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 88のLCDR3配列を含む抗体;
(5)SEQ ID NO: 17のHCDR1配列、SEQ ID NO: 29のHCDR2配列、SEQ ID NO: 41のHCDR3配列、SEQ ID NO: 65のLCDR1配列、SEQ ID NO: 77のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 89のLCDR3配列を含む抗体;
(6)SEQ ID NO: 18のHCDR1配列、SEQ ID NO: 30のHCDR2配列、SEQ ID NO: 42のHCDR3配列、SEQ ID NO: 66のLCDR1配列、SEQ ID NO: 78のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 90のLCDR3配列を含む抗体;
(7)SEQ ID NO: 19のHCDR1配列、SEQ ID NO: 31のHCDR2配列、SEQ ID NO: 43のHCDR3配列、SEQ ID NO: 67のLCDR1配列、SEQ ID NO: 79のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 91のLCDR3配列を含む抗体;
(8)SEQ ID NO: 20のHCDR1配列、SEQ ID NO: 32のHCDR2配列、SEQ ID NO: 44のHCDR3配列、SEQ ID NO: 68のLCDR1配列、SEQ ID NO: 80のLCDR2配列、およびSEQ ID NO: 92のLCDR3配列を含む抗体;
(9)(1)~(8)のいずれか1つの抗体が結合するのと同じHLA-DQ2.5エピトープに結合する抗体;
(10)HLA-DQ2.5またはグルテンペプチドとHLA-DQ2.5との複合体への結合について(1)~(8)のいずれか1つの抗体と競合する抗体。
[30] HLA-DQ2.5のβ鎖に対して結合活性を有し、かつHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、抗HLA-DQ2.5抗体。
[31] HLA-DQ2.5のα鎖に対して結合活性を有し、かつHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、抗HLA-DQ2.5抗体。
[32] 33merグリアジンペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有し、かつCLIPペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有せず、かつHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、抗体。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.1)。
図2図2は、HLA-DQ2.5/CLIPペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.1)。
図3図3は、HLA-DQ2.5への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.1)。
図4図4は、HLA-DQ2.2への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.1)。
図5図5は、HLA-DQ7.5への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.1)。
図6図6は、HLA-DPへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.2)。
図7図7は、HLA-DRへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.2)。
図8図8は、HLA-DQ8への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.2)。
図9図9は、HLA-DQ5.1への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.2)。
図10図10は、HLA-DQ6.3への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.2)。
図11図11は、HLA-DQ7.3への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例4.2)。
図12図12は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とD2 TCRとの間の結合に対する抗体のAlphaLISAベースの中和活性を示す(実施例4.4)。
図13図13は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とS2 TCRとの間の結合に対する抗体のビーズベースの中和活性を示す(実施例4.4)。
図14図14は、HLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体への抗体の結合を示す(実施例4.5)。
図15図15は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とD2 TCRとの間の結合に対する抗体の細胞ベースの中和活性を示す(実施例4.6)。
図16図16は、HLA-DQ2.5への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図17図17は、HLA-DQ2.5/CLIPペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図18図18は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図19図19は、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図20図20は、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図21図21は、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図22図22は、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図23図23は、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図24図24は、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図25図25は、HLA-DQ2.5/セカリン2ペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図26図26は、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図27図27は、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図28図28は、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例7)。
図29図29は、HLA-DQ2.5+ PBMC B細胞への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例8)。
図30図30は、HLA-DQ2.5/数種のペプチドへの抗体の結合のFACS結果の要約を示す(実施例8)。
図31図31は、HLA-DQ2.2への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例9)。
図32図32は、HLA-DQ7.5への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例9)。
図33図33は、HLA-DQ8への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例10)。
図34図34は、HLA-DQ5.1への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例10)。
図35図35は、HLA-DQ6.3への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例10)。
図36図36は、HLA-DQ7.3への抗体の結合のFACS結果を示す(実施例10)。
図37図37は、HLA-DRへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例10)。
図38図38は、HLA-DPへの抗体の結合のFACS結果を示す(実施例10)。
図39図39は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とD2 TCRとの間の結合に対する抗体の細胞ベースの中和活性を示す(実施例11)。
図40図40は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とD2 TCRとの間の結合に対する抗体のAlphaLISAベースの中和活性を示す(実施例12)。
図41図41は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とS2 TCRとの間の結合に対する抗体のビーズベースの中和活性を示す(実施例13)。
図42図42は、HLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体への抗体の結合を示す(実施例15)。
図43図43は、一次スクリーニングのELISA結果を示す。同定された単一のヒット(陽性)B細胞クローンは、IgG1デルタGKおよびIgG4デルタGKに特異的に結合できたが、IgG1デルタKおよびIgG4デルタKには結合できなかった。抗キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)ウサギモノクローナル抗体をアイソタイプ対照として使用した。
図44図44は、二次スクリーニングのELISA結果を示す。同定された単一のヒット(陽性)B細胞クローンは、IgG1デルタGKおよびIgG4デルタGKに特異的に結合できたが、IgG1デルタGKアミドおよびIgG4デルタGKアミドには結合できなかった。抗KLHウサギモノクローナル抗体をアイソタイプ対照として使用した。
図45図45は、精製したモノクローナル抗体のELISA結果を示す。YG55は、IgG1デルタGKおよびIgG4デルタGKに特異的に結合できたが、IgG1デルタGKアミドおよびIgG4デルタGKアミドには結合できなかった。抗KLHウサギモノクローナル抗体をアイソタイプ対照として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
態様の説明
本明細書に記載または言及される技術および手順は、一般的によく理解されており、例えば以下に記載の広く利用される方法論などの従来の方法論を用いて当業者により常用されている:Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., (2003));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press;Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press;Animal Cell Culture (R.I. Freshney), ed., 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)。
【0009】
I.定義
本明細書の趣旨での「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義するヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン (VL) フレームワークまたは重鎖可変ドメイン (VH) フレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでもよいし、またはアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸の変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
【0010】
「アフィニティ」は、分子(例えば、抗体)の結合部位1個と、分子の結合パートナー(例えば、抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。別段示さない限り、本明細書で用いられる「結合アフィニティ」は、ある結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する、固有の結合アフィニティのことをいう。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離定数 (Kd) により表すことができる。アフィニティは、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において知られた通常の方法によって測定され得る。結合アフィニティを測定するための具体的な実例となるおよび例示的な態様については、下で述べる。
【0011】
「アフィニティ成熟」抗体は、改変を備えていない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域 (hypervariable region: HVR) 中に抗体の抗原に対するアフィニティの改善をもたらす1つまたは複数の改変を伴う、抗体のことをいう。
【0012】
用語「抗HLA-DQ2.5抗体」および「HLA-DQ2.5に対して結合活性を有する抗体」は、充分なアフィニティでHLA-DQ2.5(本明細書において「HLA-DQ2.5」と称する)と結合することのできる抗体であって、その結果その抗体がHLA-DQ2.5を標的化したときに診断剤および/または治療剤として有用であるような、抗体のことをいう。一態様において、無関係な非HLA-DQ2.5タンパク質への抗HLA-DQ2.5抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法 (radioimmunoassay: RIA) により測定したとき、抗体のHLA-DQ2.5への結合の約10%未満である。特定の態様において、HLA-DQ2.5に対して結合活性を有する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。特定の態様において、抗HLA-DQ2.5抗体は、異なる種からのHLA-DQ2.5間で保存されているHLA-DQ2.5のエピトープに結合する。
【0013】
本明細書で用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限りは、これらに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含む、種々の抗体構造を包含する。
【0014】
「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab’-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0015】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてその参照抗体が自身の抗原へする結合を50%以上ブロックする抗体のことをいい、また逆にいえば、参照抗体は、競合アッセイにおいて前述の抗体が自身の抗原へする結合を50%以上ブロックする。例示的な競合アッセイが、本明細書で提供される。
【0016】
「自己免疫疾患」は、その個体自身の組織から生じかつその個体自身の組織に対して向けられる非悪性疾患または障害のことをいう。本明細書で、自己免疫疾患は、悪性またはがん性の疾患または状態を明確に除外するものであり、特にB細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病 (acute lymphoblastic leukemia: ALL)、慢性リンパ球性白血病 (chronic lymphocytic leukemia: CLL)、ヘアリー細胞白血病、および慢性骨髄芽球性白血病を除外する。自己免疫疾患または障害の例は、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:セリアック病、乾癬および皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患などの炎症性反応;全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患に関連する反応(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎);呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;adult respiratory distress syndrome: ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;例えば湿疹および喘息ならびにT細胞の浸潤および慢性炎症反応を伴う他の状態などのアレルギー性状態;アテローム硬化;白血球接着不全症;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus: SLE) (ループス腎炎、皮膚ループスを含むがこれらに限定されない);糖尿病(例えば、I型糖尿病またはインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;橋本甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;ならびに典型的に結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症、および血管炎において見られるサイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連する免疫反応;悪性貧血(アジソン病);白血球の漏出を伴う疾患;中枢神経系 (central nervous system: CNS) 炎症性障害;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症またはクームス陽性貧血を含むがこれらに限定されない);重症筋無力症;抗原‐抗体複合体介在性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート‐イートン筋無力症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター病;スティフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞性動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性ニューロパシー;免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura: ITP)または自己免疫性血小板減少症。
【0017】
用語「セリアック病」は、食品に含まれるグルテンを摂取した時に小腸での損傷によって引き起こされる遺伝性の自己免疫疾患のことをいう。セリアック病の症状には、腹痛、下痢、胃食道逆流などの胃腸障害、ビタミン欠乏、ミネラル欠乏、疲労感および不安うつ病などの中枢神経系(CNS)の症状、骨軟化症および骨粗しょう症などの骨の症状、皮膚炎などの皮膚の症状、貧血およびリンパ球減少症などの血液の症状、ならびに、不妊症、性腺機能低下症、および子供の成長障害と低身長などの他の症状が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なった供給源または種に由来する抗体のことをいう。
【0019】
抗体の「クラス」は、抗体の重鎖に備わる定常ドメインまたは定常領域のタイプのことをいう。抗体には5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。そして、このうちいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられてもよい。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。
【0020】
ある剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効である、必要な用量におけるおよび必要な期間にわたっての、量のことをいう。
【0021】
本明細書で用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列のFc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン (Lys447) またはグリシン‐リジン(残基Gly446-Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。
【0022】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、HVRおよびFRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0023】
用語「全長抗体」、「完全抗体」、および「全部抗体」は、本明細書では相互に交換可能に用いられ、天然型抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体のことをいう。
【0024】
本明細書では、用語「グルテン」は、小麦および他の関連穀物において見出される、プロラミンと呼ばれる貯蔵タンパク質の複合物のことを集合的に指す。腸管内腔において、グルテンはいわゆるグルテンペプチドへと分解される。グルテンペプチドには、コムギ由来のグリアジン、オオムギ由来のホルデイン、およびライムギ由来のセカリン、およびカラスムギ由来のアベニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用する語句「結合活性を実質的に有しない」は、非特異的結合またはバックグラウンド結合を含むが特異的結合を含まない結合レベルで、目的でない抗原に結合する抗体の活性のことをいう。言い換えれば、そのような抗体は、目的でない抗原に対して「特異的/有意な結合活性を有しない」。特異性は、本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の任意の方法によって測定することができる。上記の非特異的結合またはバックグラウンド結合のレベルは、ゼロであってもよく、ゼロではないがゼロに近くてもよく、または当業者が技術的に無視するに足るほど非常に低くてもよい。例えば、当業者が、適切な結合アッセイにおいて抗体と目的でない抗原との間の結合についていかなる有意な(または比較的強い)シグナルも検出または観察できない場合、該抗体は、目的でない抗原に対して「結合活性を実質的に有しない」、または「特異的/有意な結合活性を有しない」と言える。あるいは、「結合活性を実質的に有しない」または「特異的/有意な結合活性を有しない」は、(目的でない抗原に)「特異的に/有意に/実質的に結合しない」と言い換えることができる。時には、「結合活性を有しない」という語句は、当技術分野では「結合活性を実質的に有しない」または「特異的/有意な結合活性を有しない」という語句と実質的に同じ意味を有する。
【0026】
本明細書において、「HLA-DR/DP」は、「HLA-DRおよびHLA-DP」または「HLA-DRまたはHLA-DP」を意味する。これらのHLAは、ヒトにおけるMHCクラスII遺伝子座上の対応するハプロタイプの対立遺伝子によってコードされるMHCクラスII分子である。「HLA-DQ」は、HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2、HLA-DQ7.5、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、HLA-DQ7.3、およびHLA-DQ8を含むHLA-DQアイソフォームのことを集合的に指す。本発明において、「HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2、またはHLA-DQ7.5以外のHLA-DQ分子」は、これらに限定されるものではないが、HLA-DQ2.3、HLA-DQ4.3、HLA-DQ4.4、HLA-DQ5.1、HLA-DQ5.2、HLA-DQ5.3、HLA-DQ5.4、HLA-DQ6.1、HLA-DQ6.2、HLA-DQ6.3、HLA-DQ6.4、HLA-DQ6.9、HLA-DQ7.2、HLA-DQ7.3、HLA-DQ7.4、HLA-DQ7.5、HLA-DQ7.6、HLA-DQ8、HLA-DQ9.2、およびHLA-DQ9.3などの、公知のサブタイプ(アイソフォーム)のHLA-DQ分子を含む。同様に、「HLA-DR(DP)」はHLA-DR(DP)アイソフォームのことをいう。
【0027】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。
【0028】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を備える抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を、明確に除外するものである。
【0029】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択群において最も共通して生じるアミノ酸残基を示すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。通常、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一態様において、VLについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループκIである。一態様において、VHについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループIIIである。
【0030】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体のことをいう。ある態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、当該可変領域においては、すべてのもしくは実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、かつ、すべてのもしくは実質的にすべてのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化された形態」は、ヒト化を経た抗体のことをいう。
【0031】
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」(complementarity determining region))、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)である。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
一態様において、HVR残基は本明細書において示されたものを含む。
別段示さない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
【0032】
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の異種の分子にコンジュゲートされた抗体である。
【0033】
「個体」または「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の態様では、個体または被験体は、ヒトである。
【0034】
本明細書において、「インバリアント鎖」とは、ヒトCD74の遺伝子(GenBankアクセッション番号NM_001025159)によってコードされるタンパク質のことをいう。したがって、「インバリアント鎖」は「CD74」または「CD74/インバリアント鎖」とも呼ばれる。インバリアント鎖は、HLA-DQ2.5などのMHCクラスII分子と複合体を形成し、この複合体が、小胞体もしくはエンドソームの膜上、またはMHCクラスII発現細胞の原形質膜上に位置し得る。用語「インバリアント鎖(76-295)」は、GenBankアクセッション番号NM_001025159によるインバリアント鎖の76位から295位までのアミノ酸残基からなる部分ペプチドのことをいう。CLIP(クラスII結合インバリアント鎖ペプチド)は、インバリアント鎖(CD74)の一部分である。本発明において、HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2、およびHLA-DQ7.5などのHLA-DQ分子に対する抗HLA-DQ2.5抗体の結合を評価するときに、HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2、およびHLA-DQ7.5などの適切なHLA-DQ分子と一緒に、CLIPペプチド(例えば、配列番号:103)を用いてもよい。一方、HLA-DQ5.1に関しては、この目的のためにDBYペプチド(例えば、配列番号:107)を用いてもよい。このペプチドは、HLA-DQ5拘束性の組織適合性抗原であるDBYタンパク質の一部分である。
【0035】
「単離された」抗体は、そのもともとの環境の成分から分離されたものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点分離法 (isoelectric focusing: IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で測定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の総説として、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007) を参照のこと。
【0036】
「単離された」核酸は、そのもともとの環境の成分から分離された核酸分子のことをいう。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
【0037】
「抗HLA-DQ2.5抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。
【0038】
本明細書でいう用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいう。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、生じ得る変異抗体(例えば、自然に生じる変異を含む変異抗体、またはモノクローナル抗体調製物の製造中に発生する変異抗体。そのような変異体は通常若干量存在している。)を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるものである、という抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を求めるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含んだトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な手法によって作成されてよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0039】
「裸抗体」は、異種の部分または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体のことをいう。裸抗体は、薬学的製剤中に存在していてもよい。
【0040】
「天然型抗体」は、天然に生じる様々な構造を伴う免疫グロブリン分子のことをいう。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VH) を有し、それに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VL) を有し、それに定常軽鎖 (CL) ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κおよびλと呼ばれる、2つのタイプの1つに帰属させられてよい。
【0041】
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign (DNASTAR) ソフトウェア、またはGENETYX(登録商標)(株式会社ゼネティックス)などの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。
【0042】
ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (U.S. Copyright Office, Wasington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:
分率X/Yの100倍。
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
【0043】
用語「薬学的製剤」は、その中に含まれた有効成分の生物学的活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤が投与される被験体に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない、調製物のことをいう。
【0044】
「薬学的に許容される担体」は、被験体に対して無毒な、薬学的製剤中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
【0045】
本明細書でいう用語「HLA-DQ2.5」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型HLA-DQ2.5のことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないHLA-DQ2.5も、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態のHLA-DQ2.5も包含する。この用語はまた、自然に生じるHLA-DQ2.5の変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。例示的なHLA-DQ2.5のアミノ酸配列は、Research Collaboratory for Structural Bioinformatics(RCSB)Protein Data Bank(PDB)アクセッションコード4OZGにおいて公に入手可能である
【0046】
本明細書において、「TCR」は「T細胞受容体」を意味し、これは、T細胞(例えば、HLA-DQ2.5拘束性CD4+ T細胞)の表面に位置する膜タンパク質であり、かつHLA-DQ2.5を含むMHC分子上に提示された抗原断片(例えば、グルテンペプチド)を認識する。
【0047】
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
【0048】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原へと結合させることに関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインのことをいう。天然型抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、通常、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007) 参照。)1つのVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を与えるに充分であろう。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体は、当該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれVLまたはVHドメインの相補的ライブラリをスクリーニングして、単離されてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991) 参照。
【0049】
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されたもう1つの核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
【0050】
II.組成物
一局面において、本発明は、T細胞にグルテンペプチドを提示するHLA-DQ2.5への抗HLA-DQ2.5抗体の結合に一部基づくものである。特定の態様において、HLA-DQ2.5に結合する抗体が提供される。
【0051】
A.例示的抗HLA-DQ2.5抗体
一局面において、本発明はHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する、単離された抗体を提供する。特定の態様において、抗HLA-DQ2.5抗体(「本抗体」)は、以下の機能/特徴を有する。
【0052】
前記抗体はHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する。言い換えれば、該抗体はHLA-DQ2.5に結合する。より好ましくは、該抗体はHLA-DQ2.5に対する特異的結合活性を有する。すなわち、該抗体はHLA-DQ2.5に特異的に結合する。HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2およびHLA-DQ7.5の間の類似性のため、抗HLA-DQ2.5抗体はまた、HLA-DQ2.2および/またはHLA-DQ7.5に特異的に結合する(つまり、HLA-DQ2.2および/またはHLA-DQ7.5に対して特異的結合活性を有する)可能性がある。
【0053】
前記抗体はHLA-DR/DPに対して結合活性を実質的に有しない、すなわち、該抗体はHLA-DR/DPに実質的に結合しない。言い換えれば、該抗体はHLA-DR/DPに対する特異的結合活性を有しないか、またはHLA-DR/DPに対する有意な結合活性を有しない。すなわち、該抗体はHLA-DR/DPに特異的に結合しないか、またはHLA-DR/DPに有意に結合しない。同様に、該抗体は、HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2またはHLA-DQ7.5以外のHLA-DQ分子、例えばHLA-DQ8、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3およびHLA-DQ7.3に対して結合活性を実質的に有しない、すなわち、該抗体は、HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2またはHLA-DQ7.5以外のHLA-DQ分子、例えばHLA-DQ8、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3およびHLA-DQ7.3に実質的に結合しない。言い換えれば、該抗体は、HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2またはHLA-DQ7.5以外のHLA-DQ分子、例えばHLA-DQ8、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3およびHLA-DQ7.3に対する特異的/有意な結合活性を有しない。すなわち、該抗体は、HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2またはHLA-DQ7.5以外のHLA-DQ分子、例えばHLA-DQ8、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3およびHLA-DQ7.3に特異的/有意に結合しない。これらの非標的MHCクラスII分子へのいかなる実質的な阻害効果も防止するため、かつHLA-DQ2.5ヘテロ接合型患者であるセリアック病患者の抗体PKを改善するために、これらの特徴は好ましい。
*「結合活性を実質的に有しない」という特性は、例えば、図2~11および16~38のFACS結果で説明されるように定義することができる。特定の抗原に対する「結合活性を実質的に有しない」抗体は、実施例4.1、4.2および7~10の測定条件下で、陰性対照のMFI(平均蛍光強度)値の300%以下、好ましくは200%以下、より好ましくは150%以下であるMFI値を有する。
別の局面では、特定の抗原に対する「結合活性を実質的に有しない」抗体は、実施例4.1および4.2の測定条件下で、IC17のMFI値を0%と見なしかつDQN00139bbのMFI値を100%と見なした場合に、5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下のMFI値を有する。
【0054】
前記抗体は、グルテンペプチドとの複合体の形態であるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する。本明細書では、HLA-DQ2.5分子とグルテンペプチドとの間に形成された複合体は、「HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体」または「HLA-DQ2.5/グルテンペプチド」と呼ばれる。それはまた、例えば、「グルテンペプチドがロードされたHLA-DQ2.5」、「グルテンペプチドをロードしたHLA-DQ2.5」、「グルテンペプチドが結合したHLA-DQ2.5」、「グルテンペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5」、および「HLA-DQ2.5とグルテンペプチドの複合体」と言い換えることもできる。同じことが、以下に述べる「HLA-DQ2.5/グリアジンペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体」、「HLA-DQ2.5/CLIPペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド複合体」、「HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド複合体」、および「HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチド複合体」にも当てはまる。
グルテンペプチドは、好ましくはグリアジンペプチドである。グリアジンペプチドは、好ましくは33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチドまたはω2グリアジンペプチドである。より好ましくは、グリアジンペプチドは33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチドまたはω2グリアジンペプチドである。一局面では、グルテンペプチドは、好ましくはセカリンペプチドである。セカリンペプチドは、好ましくはセカリン1ペプチドまたはセカリン2ペプチドである。これらの非標的MHCクラスII分子および無関係なペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5へのいかなる実質的な阻害効果も防止するため、かつセリアック病患者の抗体PKを改善するために、これらの特徴は好ましい。
*本発明の抗HLA-DQ2.5抗体は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド複合体およびHLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド複合体からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7つまたは全てへの結合に対して5×10-7M以下、好ましくは5×10-8M以下、より好ましくは1×10-8M以下、さらにより好ましくは7×10-9M以下の解離定数(Kd)を有する。
別の局面では、本発明の抗HLA-DQ2.5抗体は、好ましくはHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体への結合に対して5×10-7M以下、好ましくは5×10-8M以下、より好ましくは1×10-8M以下、さらにより好ましくは7×10-9M以下の解離定数(Kd)を有する。
【0055】
前記抗体は、HLA-DQ2.5とTCRとの間の結合に対して中和活性を有する。言い換えれば、該抗体はHLA-DQ2.5とTCRとの間の結合をブロックする。より好ましくは、そのような結合は、グルテンペプチドの存在下で、すなわち、HLA-DQ2.5がグルテンペプチドに結合しているとき、またはグルテンペプチドと複合体を形成しているときに起こる。グルテンペプチドは、好ましくはグリアジンペプチドであり、より好ましくは33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチドまたはω2グリアジンペプチドであり、さらにより好ましくは33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチドまたはω2グリアジンペプチドである。一局面では、グルテンペプチドは、好ましくはセカリンペプチド、より好ましくはセカリン1ペプチドまたはセカリン2ペプチドである。該抗体は、HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする。好ましくは、該抗体は、HLA-DQ2.5/グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、および/またはHLA-DQ2.5/セカリンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/セカリンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックし、より好ましくは、HLA-DQ2.5/グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする。
より好ましくは、該抗体は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド複合体とHLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、およびHLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド複合体とHLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7つまたは全てをブロックする。
さらにより好ましくは、該抗体は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、およびHLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つまたは全てをブロックする。
さらにより好ましくは、該抗体は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、およびHLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする。
前記相互作用のブロッキングは、HLA-DQ2.5とTCRとの間の上記結合をブロックすることによって達成することができる。
*「中和活性」という特性は、例えば、図12および13に記載されるように定義することができる。「中和活性」を有する抗体は、実施例4.4に記載される測定条件下で、1μg/mLの抗体濃度によって、HLA-DQ2.5とTCRとの間の結合を95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上中和することができる。
【0056】
本抗体は、インバリアント鎖(CD74)に対して結合活性を実質的に有しない(実質的に結合しない)。言い換えれば、該抗体は、インバリアント鎖に対して特異的/有意な結合活性を有しない(特異的/有意に結合しない)。HLA-DQ分子は、インバリアント鎖の有無にかかわらず細胞表面に局在している。HLA-DQがインバリアント鎖と複合体を形成すると、細胞表面上の該複合体はエンドソーム内へと急速に内在化される(「急速内在化」と呼ばれる速やかな細胞内在化)。エンドソームにおいて、インバリアント鎖はプロテアーゼにより分解され、遊離のHLA-DQにはグルテンペプチドなどのペプチドがロードされる。HLA-DQ/ペプチド複合体は細胞表面に移行し、その後T細胞上のTCRによって認識される。これが、セリアック病を引き起こす可能性がある。インバリアント鎖を含まない複合体はエンドソームにゆっくりと内在化される(「緩徐な内在化」と呼ばれる遅い細胞内在化)。インバリアント鎖への結合が存在しないことは、抗体をインバリアント鎖と共にエンドソームへと速やかに移行させて分解させることがある急速内在化を抗体が受けにくいので、より好ましい。
【0057】
本抗体は、HLA-DQ2.5/インバリアント鎖に対して結合活性を実質的に有しない(実質的に結合しない)。言い換えれば、該抗体はHLA-DQ2.5/インバリアント鎖に対して特異的/有意な結合活性を有しない(特異的/有意に結合しない)。すなわち、該抗体はインバリアント鎖が介在する抗体内在化(「急速内在化」)を受けない。これらの特徴は、上述した、インバリアント鎖への結合が存在しないことによって達成され得る。
【0058】
「結合活性を実質的に有しない」という特性は、例えば、図14に記載されるように、定義することができる。特定の抗原(すなわち、HLA-DQ2.5-インバリアント鎖)に対して「結合活性を実質的に有しない」抗HLA-DQ2.5抗体は、実施例4.5に記載される測定条件下で、0.4以下の結合/捕捉値、すなわちHLA-DQ2.5-インバリアント鎖に対する抗HLA-DQ2.5抗体の結合レベル/捕捉されている抗HLA-DQ2.5抗体のレベル、を有する。
【0059】
さらに、本発明の抗体のいくつかは、HLA-DQ2.2に対して結合活性を有し、HLA-DQ7.5に対して結合活性を実質的に有しない。以下の表6のアラインメント情報に基づいて、これらの抗体はHLA-DQ2.5のβ鎖に対して結合活性を有すると予想される。
【0060】
本発明の他の抗体は、HLA-DQ7.5に対して結合活性を有し、HLA-DQ2.2に対して結合活性を実質的に有しない。アラインメント情報に基づいて、これらの抗体はHLA-DQ2.5のα鎖に対して結合活性を有すると予想される。
【0061】
本発明の他の抗体は、HLA-DQ2.2またはHLA-DQ7.5に対して結合活性を実質的に有しない。好ましくは、これらの抗体は、グルテンペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して増強された結合活性を有する。言い換えると、これらの抗体は、グルテンペプチド以外のペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対してよりも、またはいかなるペプチドとの複合体の形態にもないHLA-DQ2.5に対してよりも、グルテンペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して、強い結合活性を有する。
より好ましくは、これらの抗体は、HLA-DQ2.5/CLIPペプチド、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドおよびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つまたは全てに対してよりも、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチドおよびHLA-DQ2.5/セカリン2ペプチドからなる群のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7つまたは全てに対して、強い結合活性を有する。
さらにより好ましくは、これらの抗体は、HLA-DQ2.5/CLIPペプチド、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドおよびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つに対してよりも、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチドおよびHLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチドからなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つまたは全てに対して、強い結合活性を有する。
さらにより好ましくは、これらの抗体は、HLA-DQ2.5/CLIPペプチド、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドおよびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞に対してよりも、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチドおよびHLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチドに対して、強い結合活性を有する。
さらに、これらの抗体は、グルテンペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有し、かつグルテンペプチド以外のペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有しないか、またはいかなるペプチドとの複合体の形態にもないHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有しない。
より好ましくは、これらの抗体は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチドおよびHLA-DQ2.5/セカリン2ペプチドからなる群のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7つまたは全てに対して結合活性を有し、かつHLA-DQ2.5/CLIPペプチド、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドおよびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つまたは全てに対して結合活性を実質的に有しない。
さらにより好ましくは、これらの抗体は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチドおよびHLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチドからなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つまたは全てに対して結合活性を有し、かつHLA-DQ2.5/CLIPペプチド、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドおよびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞からなる群のうちの少なくとも1、2、3、4つまたは全てに対して結合活性を実質的に有しない。
さらにより好ましくは、これらの抗体は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチドおよびHLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチドに対して結合活性を有し、かつHLA-DQ2.5/CLIPペプチド、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドおよびHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞に対して結合活性を実質的に有しない。
【0062】
一局面において、本発明は、(a)配列番号:13~23および146~149のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1(HCDR1);(b)配列番号:25~35および150~153のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2(HCDR2);(c)配列番号:37~47および154~157のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3(HCDR3);(d)配列番号:61~71および162~165のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1(LCDR1);(e)配列番号:73~83および166~169のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2(LCDR2);ならびに、(f)配列番号:85~95および170~173のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3(LCDR3)より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVR(CDR)を含む、抗HLA-DQ2.5抗体を提供する。
【0063】
一局面において、本発明は、(a)配列番号:13~23および146~149のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1(HCDR1);(b)配列番号:25~35および150~153のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2(HCDR2);ならびに、(c)配列番号:37~47および154~157のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3(HCDR3)より選択されるVH HVR(HCDR)配列のうちの、少なくとも1つもしくは2つ、または3つすべてを含む、抗体を提供する。
【0064】
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:61~71および162~165のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1(LCDR1);(b)配列番号:73~83および166~169のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2(LCDR2);ならびに(c)配列番号:85~95および170~173のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3(LCDR3)より選択されるVL HVR(LCDR)配列のうちの、少なくとも1つもしくは2つ、または3つすべてを含む、抗体を提供する。
【0065】
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:13~23および146~149のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1(HCDR1)、(ii) 配列番号:25~35および150~153のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2(HCDR2)、ならびに(iii)配列番号:37~47および154~157のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3(HCDR3)より選択されるVH HVR(HCDR)配列のうちの、少なくとも1つもしくは2つ、または3つすべてを含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:61~71および162~165のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1(LCDR1)、(ii)配列番号:73~83および166~169のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2(LCDR2)、ならびに(c)配列番号:85~95および170~173のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3(LCDR3)より選択されるVL HVR(LCDR)配列のうちの、少なくとも1つもしくは2つ、または3つすべてを含む、VLドメインとを含む。
【0066】
別の局面において、本発明は(a)配列番号:13~23および146~149のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1(HCDR1)と;(b)配列番号:25~35および150~153のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2(HCDR2)と;(c)配列番号:37~47および154~157のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3(HCDR3)と;(d)配列番号:61~71および162~165のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1(LCDR1)と;(e)配列番号:73~83および166~169のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2(LCDR2)と;(f)配列番号:85~95および170~173のいずれか1つより選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3(LCDR3)とを含む、抗体を提供する。
【0067】
別の局面において、本発明の抗体についてのVH、VL、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列の配列番号(SEQ ID NO:)は、次のとおりである。
【0068】
【表1】
【0069】
特定の態様において、任意のHVRポジションにおいて、上述の抗HLA-DQ2.5抗体の任意の1つまたは複数のアミノ酸が置換されている。
【0070】
特定の態様において、本明細書で提供される置換は、保存的置換である。
【0071】
上述の態様の任意のものにおいて、抗HLA-DQ2.5抗体は、ヒト化されている。一態様において、抗HLA-DQ2.5抗体は、上述の態様の任意のものにおけるHVRを含み、かつさらに、アクセプターヒトフレームワーク(例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク)を含む。別の態様において、抗HLA-DQ2.5抗体は上述の態様の任意のものにおけるHVRを含み、かつさらに、下記の表2および3に示されるFR1、FR2、FR3、またはFR4配列を含む。
【0072】
別の局面において、抗HLA-DQ2.5抗体は、配列番号:1~11および142~145のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン (VH) 配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗HLA-DQ2.5抗体は、HLA-DQ2.5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:1~11および142~145のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗HLA-DQ2.5抗体は、配列番号:1~11および142~145のいずれか1つのVH配列、またはその翻訳後修飾を含む配列を含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:13~23および146~149のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号:25~35および150~153のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、ならびに(c)配列番号:37~47および154~157のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0073】
別の局面において、配列番号:49~59および158~161のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン (VL) を含む、抗HLA-DQ2.5抗体が提供される。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗HLA-DQ2.5抗体は、HLA-DQ2.5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:49~59および158~161のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗HLA-DQ2.5抗体は、配列番号:49~59および158~161のいずれか1つにおけるVL配列、またはその翻訳後修飾を含む配列を含む。ある特定の態様では、VLは、(a)配列番号:61~71および162~165のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:73~83および166~169のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、ならびに(c)配列番号:85~95および170~173のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0074】
別の局面において、上述の態様の任意のものにおけるVH、および上述の態様の任意のものにおけるVLを含む、抗HLA-DQ2.5抗体が提供される。一態様において、抗体は、配列番号:1~10および142~145のいずれか1つのVH配列またはその翻訳後修飾を含む配列、ならびに、配列番号:49~59および158~161のいずれか1つのVL配列またはその翻訳後修飾を含む配列を含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖のN末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0075】
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗HLA-DQ2.5抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。例えば、特定の態様において、上述の抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗体が提供される。特定の態様において、約8~17アミノ酸からなるHLA-DQ2.5の断片中のエピトープに結合する抗体が提供される。
【0076】
本発明のさらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗HLA-DQ2.5抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一態様において、抗HLA-DQ2.5抗体は、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片などの、抗体断片である。別の態様において、抗体は、例えば、完全IgG1抗体や、本明細書で定義された他の抗体クラスまたはアイソタイプの、全長抗体である。
【0077】
さらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗HLA-DQ2.5抗体は、単独または組み合わせのいずれでも、以下の項目1~7に記載の任意の特性を取り込んでもよい。
【0078】
1.抗体のアフィニティ
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。
【0079】
一態様において、Kdは、放射性標識抗原結合測定法 (radiolabeled antigen binding assay: RIA) によって測定される。一態様において、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液中結合アフィニティは、非標識抗原の漸増量系列の存在下で最小濃度の (125I) 標識抗原によりFabを平衡化させ、次いで結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングされたプレートにより捕捉することによって測定される。(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999) を参照のこと)。測定条件を構築するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート (Thermo Scientific) を50mM炭酸ナトリウム (pH9.6) 中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体 (Cappel Labs) で一晩コーティングし、その後に室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中2% (w/v) ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート (Nunc #269620) において、100 pMまたは26 pMの [125I]-抗原を、(例えば、Presta et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997) における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と同じように)目的のFabの段階希釈物と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が確実に達成されるよう、より長時間(例えば、約65時間)継続され得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター (Packard) においてプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
【0080】
別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000 (BIAcore, Inc., Piscataway, NJ) を用いる測定法が、およそ10反応単位 (response unit: RU) の抗原が固定化されたCM5チップを用いて25℃で実施される。一態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ (CM5、BIACORE, Inc.) は、供給元の指示にしたがいN-エチル-N’- (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド (EDC) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位 (RU) のタンパク質の結合を達成するよう、5μl/分の流速で注入される前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンが注入される。キネティクスの測定のために、25℃、およそ25μl/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤含有PBS (PBST) 中のFabの2倍段階希釈物 (0.78nM~500nM) が注入される。結合速度 (kon) および解離速度 (koff) は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、結合および解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数 (Kd) は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999) を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、分光計(例えばストップフロー式分光光度計 (Aviv Instruments) または撹拌キュベットを用いる8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計 (ThermoSpectronic))において測定される、漸増濃度の抗原の存在下でのPBS、pH7.2中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって決定され得る。
【0081】
2.抗体断片
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片は、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、および scFv断片、ならびに、後述する他の断片を含む。特定の抗体断片についての総説として、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003) を参照のこと。scFv断片の総説として、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp.269-315 (1994);加えて、WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みインビボ (in vivo) における半減期の長くなったFabおよびF(ab')2断片についての論説として、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
【0082】
ダイアボディは、二価または二重特異的であってよい、抗原結合部位を2つ伴う抗体断片である。例えば、EP404,097号; WO1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993) 参照。トリアボディ (triabody) やテトラボディ (tetrabody) も、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) に記載されている。
【0083】
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1参照)。
【0084】
抗体断片は、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、完全抗体のタンパク質分解的消化、組換え宿主細胞(例えば、大腸菌 (E. coli) またはファージ)による産生を含む、種々の手法により作ることができる。
【0085】
3.キメラおよびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;および、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984) に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、親抗体のものからクラスまたはサブクラスが変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片も含む。
【0086】
特定の態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティを維持したままでヒトへの免疫原性を減少させるために、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は1つまたは複数の可変ドメインを含み、当該可変ドメイン中、HVR(例えばCDR(またはその部分))は非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置換されている。
【0087】
ヒト化抗体およびその作製方法は、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において総説されており、また、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域 (specificity determining region: SDR) グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (「リサーフェイシング」を記載); Dall’Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (「FRシャッフリング」を記載);ならびに、Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングのための「ガイドセレクション」アプローチを記載) において、さらに記載されている。
【0088】
ヒト化に使われ得るヒトフレームワーク領域は、これらに限定されるものではないが:「ベストフィット」法(Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993) 参照)を用いて選択されたフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992) および Presta et al. J. Immunol., 151:2623 (1993) 参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008) 参照);および、FRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) および Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996) 参照)を含む。
【0089】
4.ヒト抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られる種々の手法によって製造され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) および Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008) に、概説されている。
【0090】
ヒト抗体は、抗原チャレンジ(負荷)に応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより、調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または、染色体外にもしくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載した米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7,041,870号;ならびに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を、併せて参照のこと。このような動物によって生成された完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
【0091】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法でも作ることができる。ヒトモノクローナル抗体の製造のための、ヒトミエローマおよびマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は、既に記述されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991) 参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006) に述べられている。追加的な方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、および、Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) およびVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
【0092】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する手法を、以下に述べる。
【0093】
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の1つまたは複数の活性を伴う抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリの生成や、所望の結合特徴を備える抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための、様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) において総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004) に記載されている。
【0094】
特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングされ、無作為にファージライブラリ中で再結合され、当該ファージライブラリは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994) に述べられているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv (scFv) 断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築することを要さずに、免疫源に対する高アフィニティ抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993) に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化することなしに、広範な非自己および自己抗原への抗体の単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変CDR3領域をコードしかつインビトロ (in vitro) で再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリを記載した特許文献は、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに、米国特許出願公開第2005/0079574号、2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
【0095】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なす。
【0096】
a)グリコシル化変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加させるまたは減少させるように改変されている。抗体へのグリコシル化部位の追加または削除は、1つまたは複数のグリコシル化部位を作り出すまたは取り除くようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成可能である。
【0097】
抗体がFc領域を含む場合、そこに付加される炭水化物が改変されてもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然型抗体は、典型的には、枝分かれした二分岐のオリゴ糖を含み、当該オリゴ糖は通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-リンケージによって付加されている。例えば、Wright et al. TIBTECH 15:26-32 (1997) 参照。オリゴ糖は、例えば、マンノース、N‐アセチルグルコサミン (GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸などの種々の炭水化物、また、二分岐のオリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに付加されたフコースを含む。いくつかの態様において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を伴う抗体変異体を作り出すために行われてもよい。
【0098】
一態様において、Fc領域に(直接的または間接的に)付加されたフコースを欠く炭水化物構造体を有する抗体変異体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるようにMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に付加されたすべての糖構造体(例えば、複合、ハイブリッド、および高マンノース構造体)の和に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域の297位のあたりに位置するアスパラギン残基を表す(Fc領域残基のEUナンバリング)。しかし、複数の抗体間のわずかな配列の多様性に起因して、Asn297は、297位の±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位~300位の間のあたりに位置することもあり得る。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号 (Presta, L.) ;第2004/0093621号 (Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd) を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例は、US2003/0157108; WO2000/61739; WO2001/29246; US2003/0115614; US2002/0164328; US2004/0093621; US2004/0132140; US2004/0110704; US2004/0110282; US2004/0109865; WO2003/085119; WO2003/084570; WO2005/035586; WO2005/035778; WO2005/053742; WO2002/031140; Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004) を含む。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例は、タンパク質のフコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第US2003/0157108号A1、Presta, L;およびWO2004/056312A1、Adams et al.、特に実施例11)およびノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);およびWO2003/085107を参照のこと)を含む。
【0099】
例えば抗体のFc領域に付加された二分枝型オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体がさらに提供される。そのような抗体変異体は、減少したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878 (Jean-Mairet et al.) ;米国特許第6,602,684号 (Umana et al.);およびUS2005/0123546 (Umana et al.) に記載されている。Fc領域に付加されたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体変異体は、例えば、WO1997/30087 (Patel et al.);WO1998/58964 (Raju, S.); およびWO1999/22764 (Raju, S.) に記載されている。
【0100】
b)Fc領域変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入して、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸ポジションのところでアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
【0101】
増加した半減期、および新生児型Fc受容体(FcRn:母体のIgG類を胎児に移行させる役割を負う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)))に対する増加した結合性を伴う抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号A1(Hinton et al.) に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合性を増加する1つまたは複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数のところでの置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うものを含む。
【0102】
Fc領域変異体の他の例については、Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351も参照のこと。
【0103】
c)システイン改変抗体変異体
特定の態様において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された、システイン改変抗体(例えば、「thioMAbs」)を作り出すことが望ましいだろう。特定の態様において、置換を受ける残基は、抗体の、アクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置され、当該反応性のチオール基は、当該抗体を他の部分(薬剤部分またはリンカー‐薬剤部分など)にコンジュゲートして本明細書でさらに詳述するようにイムノコンジュゲートを作り出すのに使用されてもよい。特定の態様において、以下の残基の任意の1つまたは複数が、システインに置換されてよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるようにして生成されてもよい。
【0104】
d)抗体誘導体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野において知られておりかつ容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これに限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール (PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれでも)、および、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、および、これらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性のために、製造において有利であるだろう。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、枝分かれしていてもしていなくてもよい。抗体に付加されるポリマーの数には幅があってよく、2つ以上のポリマーが付加されるならそれらは同じ分子であってもよいし、異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、これらに限定されるものではないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下での療法に使用されるか否か、などへの考慮に基づいて、決定することができる。
【0105】
別の態様において、抗体と、放射線に曝露することにより選択的に熱せられ得る非タンパク質部分との、コンジュゲートが提供される。一態様において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線はいかなる波長でもよく、またこれらに限定されるものではないが、通常の細胞には害を与えないが抗体‐非タンパク質部分に近接した細胞を死滅させる温度まで非タンパク質部分を熱するような波長を含む。
【0106】
B.組換えの方法および構成
例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるとおり、抗体は組換えの方法や構成を用いて製造することができる。一態様において、本明細書に記載の抗HLA-DQ2.5抗体をコードする、単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしてもよい。さらなる態様において、このような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。このような態様の1つでは、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または、(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクターと抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクターを含む(例えば、形質転換されている)。一態様において、宿主細胞は、真核性である(例えば、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞)またはリンパ系の細胞(例えば、Y0、NS0、Sp2/0細胞))。一態様において、抗HLA-DQ2.5抗体の発現に好適な条件下で、上述のとおり当該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、および任意で、当該抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することを含む、抗HLA-DQ2.5抗体を作製する方法が提供される。
【0107】
抗HLA-DQ2.5抗体の組換え製造のために、(例えば、上述したものなどの)抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のために、1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて容易に単離および配列決定されるだろう(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることで)。
【0108】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合は、細菌で製造してもよい。細菌での抗体断片およびポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照のこと。(加えて、大腸菌における抗体断片の発現について記載したCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性フラクション中に単離されてもよく、またさらに精製することができる。
【0109】
原核生物に加え、部分的なまたは完全なヒトのグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類および酵母の株を含む、糸状菌または酵母などの真核性の微生物は、抗体コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)および Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) を参照のこと。
【0110】
多細胞生物(無脊椎生物および脊椎生物)に由来するものもまた、グリコシル化された抗体の発現のために好適な宿主細胞である。無脊椎生物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。昆虫細胞との接合、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質転換に用いられる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
【0111】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照のこと。
【0112】
脊椎動物細胞もまた宿主として使用できる。例えば、浮遊状態で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は、有用であろう。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎CV1株 (COS-7);ヒト胎児性腎株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977) などに記載の293または293細胞);仔ハムスター腎細胞 (BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980) などに記載のTM4細胞);サル腎細胞 (CV1);アフリカミドリザル腎細胞 (VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞 (HELA);イヌ腎細胞 (MDCK);Buffalo系ラット肝細胞 (BRL 3A);ヒト肺細胞 (W138);ヒト肝細胞 (Hep G2);マウス乳癌 (MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982) に記載);MRC5細胞;および、FS4細胞などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR- CHO細胞 (Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)) を含むチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞;およびY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説として、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003) を参照のこと。
【0113】
C.測定法(アッセイ)
本明細書で提供される抗HLA-DQ2.5抗体は、当該技術分野において知られている種々の測定法によって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について特徴決定されてもよい。
【0114】
1.結合測定法およびその他の測定法
一局面において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット等の公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。
【0115】
別の局面において、HLA-DQ2.5への結合に関して、例えば、上述の抗体のいずれかと競合する抗体を同定するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、そのような競合抗体は、上述の抗体によって結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
【0116】
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたHLA-DQ2.5は、HLA-DQ2.5に結合する第1の標識された抗体およびHLA-DQ2.5への結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたHLA-DQ2.5が、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のHLA-DQ2.5に対する結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたHLA-DQ2.5に結合した標識の量が測定される。固定化されたHLA-DQ2.5に結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がHLA-DQ2.5への結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) を参照のこと。
【0117】
2. 活性アッセイ/スクリーニング方法
一局面では、結合/生物学的活性を有する抗HLA-DQ2.5抗体を同定するためのアッセイが提供される。そのようなアッセイは、本発明のスクリーニング方法において使用することができる。
【0118】
いくつかの態様では、本発明は、抗HLA-DQ2.5抗体をスクリーニングする方法を提供し、該方法は、(a)抗体がHLA-DQ2.5に対して結合活性を有するかどうかを試験し、HLA-DQ2.5に対して結合活性を有する抗体を選択する工程;(b)抗体がHLA-DRまたはDPに対して特異的結合活性を有するかどうかを試験し、HLA-DRまたはDPに対して特異的結合活性を有しない抗体を選択する工程;(c)抗体がインバリアント鎖とHLA-DQ2.5との複合体に対して特異的結合活性を有するかどうかを試験し、インバリアント鎖とHLA-DQ2.5との複合体に対して特異的結合活性を有しない抗体を選択する工程を含む。上記の工程(a)で選択された抗体はまた、HLA-DQ2.2および/またはHLA-DQ7.5のHLA-DQ2.5との類似性に起因して、HLA-DQ2.2および/またはHLA-DQ7.5に対して結合活性を有してもよい。この結合活性は、特異的結合活性であってもよい。
【0119】
特定の態様では、本発明の方法は、抗体がグルテンペプチドの存在下でHLA-DQ2.5に結合する(またはHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する)かどうかを試験し、グルテンペプチドの存在下でHLA-DQ2.5に結合する(またはHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する)抗体を選択する工程をさらに含む。好ましくは、グルテンペプチドはグリアジンである。
【0120】
特定の態様では、本発明の方法は、抗体がHLA-DQ2.5とTCRとの間の結合に対して中和活性を有するかどうかを試験し、該中和活性を有する抗体を選択する工程をさらに含む。
【0121】
以下の工程を実施する前に、候補抗HLA-DQ2.5抗体が、例えば実施例3で述べられるとおり、任意の方法で調製され得る。
【0122】
動物、例えば、ウサギ、マウス、ラット、および免疫化に適したその他の動物は、抗原(例えば、任意でグリアジンペプチドが結合したHLA-DQ2.5)により免疫化される。該抗原は、例えば実施例1および2で述べられるとおり、任意の方法を用いて組換えタンパク質として調製することができる。免疫化した動物から血液および脾臓などの抗体含有サンプルを採取する。B細胞の選別のために、例えば、ビオチン化抗原を調製し、該ビオチン化抗原に抗原結合性B細胞を結合させ、そして選別のために該細胞をセルソーティングおよび培養に供する。該細胞の該抗原への特異的結合は、ELISA法などの任意の適切な方法によって評価することができる。この方法はまた、目的でない抗原に対する交差反応性の欠如を評価するためにも使用することができる。選択された抗体を単離するためまたはその配列を決定するために、例えば、細胞からRNAを精製して、抗体の領域をコードするDNAをRNAの逆転写およびPCR増幅によって調製する。さらに、さらなる分析のために、クローニングされた抗体遺伝子を適切な細胞において発現させ、該抗体を培養上清から精製することができる。
【0123】
抗HLA-DQ2.5抗体が目的の抗原(例えば、HLA-DQ2.5、および、グリアジンなどのグルテンペプチドに結合したHLA-DQ2.5)または目的でない抗原(例えば、HLA-DR、HLA-DP、インバリアント鎖、およびインバリアント鎖とHLA-DQ2.5との複合体)に結合するかどうかを試験するために、結合を評価するための任意の方法を使用することができる。例えば、FACSに基づくセルソーティング方法を使用する場合には、抗原(例えば、HLA-DQ2.5、HLA-DR、またはHLA-DP)を発現する細胞を試験抗体とインキュベートし、次に試験抗体(すなわち、一次抗体)に対する適切な二次抗体を添加してインキュベートする。抗原と試験抗体との間の結合は、例えば二次抗体に付着させた発色/蛍光標識を使用して、FACS分析によって検出される(例えば、実施例4.1で述べられるとおり)。あるいは、本明細書中の「1. 抗体親和性」で述べられた測定方法のいずれかを利用することができる。例えば、BIACORE表面プラズモン共鳴アッセイによるKdの測定は、グルテンペプチド(例えばグリアジン)またはインバリアント鎖の存在下で試験抗体とHLA-DQとの間の結合を評価するために使用することができる(例えば、実施例4.3および4.5で述べられるとおり)。
【0124】
特定の態様では、本発明の方法は、抗体がHLA-DQ2.5とTCRとの間の結合(またはHLA-DQ2.5とHLA-DQ2.5拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用)に対して中和活性を有するかどうかを試験する工程;および該中和活性を有する抗体を選択する工程をさらに含む。これらの工程は、グリアジンペプチドなどのグルテンペプチドの存在下で、すなわち該ペプチドに結合したHLA-DQ2.5を使用して、実施することができる。中和活性は、例えば実施例4.4で述べられるとおり、評価することができる。簡単に説明すると、プレート上への固定化のため、ビーズ、例えばストレプトアビジンでコーティングされた黄色粒子を適切に調製し、グリアジンペプチドに結合した可溶性HLA-DQを該ビーズに添加する。該プレートを洗浄してブロックし、それに抗体を添加してインキュベートする。HLA-DQ2.5とTCRとの間の結合を評価する場合には、例えば、D2 TCR四量体-PEを添加してインキュベートすることができる。この2つの間の結合は、HLA-DQ2.5に結合されたTCRの発色/蛍光標識に基づいて評価され得る。
【0125】
特定の態様では、本発明の方法は、抗体がインバリアント鎖により細胞内に内在化されるかどうかを試験する工程;およびインバリアント鎖により細胞内に(実質的に)内在化されない抗体を選択する工程をさらに含む。細胞内在化(上述の「急速内在化」)は、FACS分析によって評価することができる。簡単に説明すると、発色/蛍光標識(例えば、AlexaFluor 555)を試験抗体に付着させ、これを、クラスII/インバリアント鎖複合体のリソソームへの送達をブロックするサイトカラシンDの存在下または非存在下で適切な細胞と共にインキュベートする。次いで、試験抗体(すなわち、一次抗体)に対する適切な二次抗体、例えばFITCを伴う抗ヒトIgG Fc抗体を添加してインキュベートする。これをFACS測定に供し、そして抗体のインバリアント鎖依存性細胞内在化の比率をサイトカラシンDの非存在下および存在下で得られた値から算出する。これらの値が互いに等しいかまたは同等である場合、抗体はインバリアント鎖により内在化されていないと言える。
【実施例
【0126】
以下は、本発明の組成物の例である。上に提供した一般的な説明を考慮すれば、他の様々な態様を実施し得ることが理解される。
【0127】
実施例1
組換えタンパク質の発現および精製
1.1. 組換えHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体、HLA-DQ8/グリアジンペプチド複合体、HLA-DQ5.1/DBYペプチド複合体、HLA-DQ2.2/CLIPペプチド複合体、およびHLA-DQ7.5/CLIPペプチド複合体の発現および精製
【0128】
組換えHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体の発現および精製
発現および精製に使用した配列は、HLA-DQA1*0501(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)およびHLA-DQB1*0201(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)であり、これらは両方ともCAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:99)を有する。HLA-DQA1*0501は、C47S変異、GGGGリンカー(配列番号:100)およびc-fosロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、ならびにFlagタグをHLA-DQA1*0501のC末端に有する。HLA-DQB1*0201は、33merグリアジンペプチド配列: LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF(配列番号:101)、およびX因子切断リンカー(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)をHLA-DQB1*0201のN末端に、GGGGGリンカー(配列番号:102)およびc-junロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、GGGGGリンカー(配列番号:102)、ならびにBAP配列(BMC Biotechnol. 2008; 8: 41)、8×HisタグをHLA-DQB1*0201のC末端に有する。FreeStyle293-F細胞株(Thermo Fisher)を用いて、組換えHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を一過性に発現させた。HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を発現している馴化培地を、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)樹脂と共にインキュベートし、続いてイミダゾールで溶出した。HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を含む画分を回収した後、1×PBSで平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラム(GE healthcare)に供した。その後、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を含む画分をプールして、-80℃で保存した。精製したHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体は、BirA(Avidity)を用いてビオチン化した。
【0129】
組換えHLA-DQ8/グリアジンペプチド複合体の発現および精製
発現および精製に使用した配列は、HLA-DQA1*0301(Protein Data Bankアクセッションコード4GG6)およびHLA-DQB1*0302(Protein Data Bankアクセッションコード4GG6)であり、これらは両方ともCAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:99)を有する。HLA-DQA1*0301は、SSADLVPRGGGGリンカー(配列番号:104)およびc-fosロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、ならびにFlagタグをHLA-DQA1*0301のC末端に有する。HLA-DQB1*0302は、グリアジンペプチド配列: QQYPSGEGSFQPSQENPQ(配列番号:105)、およびX因子切断リンカー(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)をHLA-DQB1*0302のN末端に、SSADLVPRGGGGGリンカー(配列番号:106)およびc-junロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、GGGGGリンカー(配列番号:102)、ならびにBAP配列(BMC Biotechnol. 2008; 8: 41)、8×HisタグをHLA-DQB1*0302のC末端に有する。FreeStyle293-F細胞株を用いて、組換えHLA-DQ8/グリアジンペプチドを一過性に発現させた。HLA-DQ8/グリアジンペプチド複合体を発現している馴化培地を、IMAC樹脂と共にインキュベートし、続いてイミダゾールで溶出した。HLA-DQ8/グリアジンペプチド複合体を含む画分を回収した後、1×PBSで平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラムに供した。その後、HLA-DQ8/グリアジンペプチド複合体を含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0130】
組換えHLA-DQ5.1/DBYペプチド複合体の発現および精製
発現および精製に使用した配列は、HLA-DQA1*0101(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00601)およびHLA-DQB1*0501(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00638)であり、これらは両方ともCAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:99)を有する。HLA-DQA1*0101は、C30Y変異を有する。HLA-DQA1*0101は、SSADLVPRGGGG リンカー(配列番号:104)およびc-fosロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、ならびにFlagタグをHLA-DQA1*0101のC末端に有する。HLA-DQB1*0501は、DBYペプチド配列: ATGSNCPPHIENFSDIDMGE(配列番号:107)、およびX因子切断リンカー(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)をHLA-DQB1*0501のN末端に、SSADLVPRGGGGGリンカー(配列番号:104)およびc-junロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、GGGGGリンカー(配列番号:102)、ならびにBAP配列(BMC Biotechnol. 2008; 8: 41)、8×HisタグをHLA-DQB1*0501のC末端に有する。FreeStyle293-F細胞株を用いて、組換えHLA-DQ5.1/DBYペプチド複合体を一過性に発現させた。HLA-DQ5.1/DBYペプチド複合体を発現している馴化培地を、IMAC樹脂と共にインキュベートし、続いてイミダゾールで溶出した。HLA-DQ5.1/DBYペプチド複合体を含む画分を回収した後、1×PBSで平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラムに供した。その後、HLA-DQ5.1/DBYペプチド複合体を含む画分をプールして、-80℃で保存した。精製したHLA-DQ5.1/DBYペプチドは、BirAを用いてビオチン化した。
【0131】
組換えHLA-DQ2.2/CLIPペプチド複合体の発現および精製
発現および精製に使用した配列は、HLA-DQA1*0201(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00607)およびHLA-DQB1*0202(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00623)であり、これらは両方ともCAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:99)を有する。HLA-DQA1*0201は、SSADLVPRGGGGリンカー(配列番号:104)およびc-fosロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、ならびにFlagタグをHLA-DQA1*0201のC末端に有する。HLA-DQB1*0202は、CLIPペプチド配列: KLPKPPKPVSKMRMATPLLMQALPMGALP(配列番号:103)、およびX因子切断リンカー(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)をHLA-DQB1*0202のN末端に、SSADLVPRGGGGGリンカー(配列番号:104)およびc-junロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、GGGGGリンカー(配列番号:102)、ならびにBAP配列(BMC Biotechnol. 2008; 8: 41)、8×HisタグをHLA-DQB1*0202のC末端に有する。FreeStyle293-F細胞株を用いて、組換えHLA-DQ2.2/CLIPペプチド複合体を一過性に発現させた。HLA-DQ2.2/CLIPペプチド複合体を発現している馴化培地を、IMAC樹脂と共にインキュベートし、続いてイミダゾールで溶出した。HLA-DQ2.2/CLIPペプチド複合体を含む画分を回収した後、1×PBSで平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラムに供した。その後、HLA-DQ2.2/CLIPペプチド複合体を含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0132】
組換えHLA-DQ7.5/CLIPペプチド複合体の発現および精製
発現および精製に使用した配列は、HLA-DQA1*0505(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00619)およびHLA-DQB1*0301(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00625)であり、これらは両方ともCAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:99)を有する。HLA-DQA1*0505は、C66S変異を有する。HLA-DQA1*0505は、SSADLVPRGGGGリンカー(配列番号:104)およびc-fosロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、ならびにFlagタグをHLA-DQA1*0505のC末端に有する。HLA-DQB1*0301は、CLIPペプチド配列: KLPKPPKPVSKMRMATPLLMQALPMGALP(配列番号:103)、およびX因子切断リンカー(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)をHLA-DQB1*0301のN末端に、SSADLVPRGGGGGリンカー(配列番号:104)およびc-junロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、GGGGGリンカー(配列番号:102)、ならびにBAP配列(BMC Biotechnol. 2008; 8: 41)、8×HisタグをHLA-DQB1*0301のC末端に有する。FreeStyle293-F細胞株を用いて、組換えHLA-DQ7.5/CLIPペプチド複合体を一過性に発現させた。HLA-DQ7.5/CLIPペプチド複合体を発現している馴化培地を、IMAC樹脂と共にインキュベートし、続いてイミダゾールで溶出した。HLA-DQ7.5/CLIPペプチド複合体を含む画分を回収した後、1×PBSで平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラムに供した。その後、HLA-DQ7.5/CLIPペプチド複合体を含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0133】
1.2. 組換えHLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体の発現および精製
発現および精製に使用した配列は、HLA-DQA1*0501(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)、HLA-DQB1*0201(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)、インバリアント鎖(76-295)(GenBankアクセッション番号NM_001025159)であり、これらは全てがCAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:99)を有する。HLA-DQA1*0501は、C47S変異、GGGGリンカー(配列番号:100)およびc-fosロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)をHLA-DQA1*0501のC末端に有する。HLA-DQB1*0201は、GGGGGリンカー(配列番号:102)およびc-junロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、ならびに8×HisタグをHLA-DQB1*0201のC末端に有する。インバリアント鎖(76-295)は、Flagタグ、GCN4変異アミノ酸配列(Science. 1993 Nov 26;262(5138):1401-7)、およびGGGGSリンカー(配列番号:102)をインバリアント鎖(76-295)のN末端に有する。FreeStyle293-F細胞株を用いて、組換えHLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体を一過性に発現させた。組換えHLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体を発現している馴化培地をIMAC樹脂と共にインキュベートし、続いてイミダゾールで溶出した。組換えHLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体を含む画分を回収した後、1×PBSで平衡化したSuperose 6ゲル濾過カラム(GE healthcare)に供した。その後、組換えHLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体を含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0134】
1.3. 組換えTCRの発現および精製
発現および精製に使用した配列は、S2 TCRアルファ鎖(Protein Data Bankアクセッションコード4OZI)、S2 TCRベータ鎖(Protein Data Bankアクセッションコード4OZI)、D2 TCRアルファ鎖(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)、D2 TCRベータ鎖(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)である。S2 TCRアルファ鎖は、CAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:99)、およびBAP配列(BMC Biotechnol. 2008; 8: 41)、8×HisタグをS2 TCRアルファ鎖のC末端に有する。S2 TCRベータ鎖は、CAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVH(配列番号:108)、およびFlagタグをS2 TCRベータ鎖のC末端に有する。D2 TCRアルファ鎖は、ラット血清アルブミン由来のシグナル配列:MKWVTFLLLLFISGSAFS(配列番号:109)、およびBAP配列(BMC Biotechnol. 2008; 8: 41)、8×HisタグをD2 TCRアルファ鎖のC末端に有する。D2 TCRベータ鎖は、ラット血清アルブミン由来のシグナル配列:MKWVTFLLLLFISGSAFS(配列番号:109)、およびFlagタグをD2 TCRベータ鎖のC末端に有する。
【0135】
FreeStyle293-F細胞株を用いて、組換え可溶性TCRタンパク質を一過性に発現させた。TCRタンパク質を発現している馴化培地を、抗Flag M2アフィニティー樹脂(Sigma)を充填したカラムにアプライし、Flagペプチド(Sigma)で溶出した。TCRタンパク質を含む画分を回収し、続いてIMAC樹脂を充填したカラムにアプライした後、イミダゾールで溶出した。TCRタンパク質を含む画分を回収し、続いて1×PBSで平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラムに供した。その後、TCRタンパク質を含む画分をプールして、-80℃で保存した。
精製したTCRタンパク質は、BirAを用いてビオチン化し、次いでPE標識ストレプトアビジン(BioLegend)と混合し四量体TCRタンパク質を形成させた。
【0136】
実施例2
2.1 D2 TCRを発現するJ.RT3-T3.5細胞株の樹立
D2 TCRα鎖cDNA(SEQ ID NO: 110)を発現ベクターpCXND3(WO2008/156083)に挿入した。D2 TCRβ鎖cDNA(SEQ ID NO: 111)を発現ベクターpCXZD1(US2009/0324589)に挿入した。線状化したD2 TCRα鎖-pCXND3およびD2 TCRβ鎖-pCXZD1(それぞれ1500ng)をエレクトロポレーション(LONZA、4D-Nucleofector X)によってJ.RT-T3.5細胞株に同時に導入した。次に、トランスフェクトされた細胞をジェネティシンとゼオシンを含む培地で培養し、その後、AriaIII(Becton Dickinson)を用いてソーティングを行い、高度発現細胞集団を得た。次に、シングルセルクローニングを実施して、目的のD2 TCR分子を高度に発現する細胞を取得した。
【0137】
2.2 HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.5/グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/CLIPペプチド、HLA-DQ2.2、HLA-DQ7.5、HLA-DQ8、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、HLA-DQ7.3、HLA-DR、およびHLA-DPを発現するBa/F3細胞株の樹立
HLA-DQA1*0501 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00613)、HLA-DQA1*0201 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00607)、HLA-DQA1*0505 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00619)、HLA-DQA1*0301 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00608)、HLA-DQA1*0101 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00601)、HLA-DQA1*0103 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00604)、HLA-DQA1*0303 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00611)、HLA-DRA1*0101 cDNA (GenBankアクセッション番号NM_019111.4)、またはHLA-DPA1*0103 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00499)を発現ベクターpCXND3(WO2008/156083)に挿入した。
【0138】
HLA-DQB1*0201 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00622)、HLA-DQB1*0202 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00623)、HLA-DQB1*0301 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00625)、HLA-DQB1*0302 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00627)、HLA-DQB1*0501 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00638)、HLA-DQB1*0603 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00647)、HLA-DRB1*0301 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00671)、またはHLA-DPB1*0401 cDNA (IMGT/HLAアクセッション番号HLA00521)を発現ベクターpCXZD1(US2009/0324589)に挿入した。HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、33merグリアジンペプチド配列:LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF (SEQ ID NO: 101)と、HLA-DQB1*0201のN末端にある第X因子切断リンカー:(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025.)を有する。HLA-DQ2.5/CLIPペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、CLIPペプチド配列:KLPKPPKPVSKMRMATPLLMQALPMGALP (SEQ ID NO: 103)と、HLA-DQB1*0201のN末端にある第X因子切断リンカー:(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025.)を有する。
【0139】
各1000ngの線状化したHLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQB1*0201-pCXZD1、および各500ngの線状化したHLA-DQA1*0201-pCXND3とHLA-DQB1*0202-pCXZD1、HLA-DQA1*0505-pCXND3とHLA-DQB1*0301-pCXZD1、HLA-DQA1*0301-pCXND3とHLA-DQB1*0302-pCXZD1、HLA-DQA1*0101-pCXND3とHLA-DQB1*0501-pCXZD1、HLA-DQA1*0103-pCXND3とHLA-DQB1*0603-pCXZD1、HLA-DQA1*0303-pCXND3とHLA-DQB1*0301-pCXZD1、HLA-DRA1*0101-pCXND3とHLA-DRB1*0301-pCXZD1、HLA-DPA1*0103-pCXND3とHLA-DPB1*0401-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/CLIPペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1をエレクトロポレーション(LONZA、4D-Nucleofector X)によってマウスIL-3依存性プロB細胞由来細胞株Ba/F3に同時に導入した。次に、トランスフェクトされた細胞をジェネティシンとゼオシンを含む培地で培養し、その後、AriaIII(Becton Dickinson)を用いてソーティングを行い、高度発現細胞集団を得た。次に、シングルセルクローニングを実施して、目的のHLA分子を高度に発現する細胞を取得した。樹立された各細胞株は、Ba/F3-HLA-DQ2.5 (HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.2 (HLA-DQA1*0201、HLA-DQB1*0202)、HLA-DQ7.5 (HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0301)、Ba/F3-HLA-DQ8 (HLA-DQA1*0301、HLA-DQB1*0302)、HLA-DQ5.1 (HLA-DQA1*0101、HLA-DQB1*0501)、HLA-DQ6.3 (HLA-DQA1*0103、HLA-DQB1*0603)、HLA-DQ7.3 (HLA-DQA1*0303、HLA-DQB1*0301)、Ba/F3-HLA-DR (HLA-DRA1*0101、HLA-DRB1*0301)、Ba/F3-HLA-DP (HLA-DPA1*0103、HLA-DPB1*0401)、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/CLIPペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/CLIPペプチドのHLA-DQB1*0201)と命名した。
【0140】
実施例3
抗DQ2.5抗体の作製
抗DQ2.5抗体を次のように調製し、選択し、アッセイした:
NZWウサギをHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体で皮内免疫した。2ヶ月間にわたり4回の反復投与を行った後、血液と脾臓を採取した。B細胞の選択のために、ビオチン化HLA-DQ5.1/DBYペプチド複合体、ビオチン化HLA-DQ8/グリアジンペプチド複合体、およびAlexa Fluor 488標識HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を調製した。HLA-DQ2.5に結合できるがHLA-DQ5.1またはHLA-DQ8には結合しないB細胞を、上記の標識タンパク質で染色し、セルソーターを用いて選別し、その後WO2016098356A1に記載の手順に従ってプレーティングし、培養した。培養後、さらなる解析のためにB細胞培養上清を回収し、B細胞ペレットを凍結保存した。
【0141】
B細胞培養上清を用いたELISAにより、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体への特異的結合を評価し、HLA-DQ5.1/DBYペプチド複合体およびHLA-DQ8/グリアジンペプチド複合体への非交差反応性を確認した。これらの結果から、880種のB細胞株がHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体への特異的結合を示すことが明らかになった。
【0142】
HLA-DQ2.2/CLIPペプチド複合体およびHLA-DQ7.5/CLIPペプチド複合体への交差反応性を評価するために、上記の選択された880種のB細胞の上清を用いてELISAを実施した。さらに、選択された880種のB細胞の上清を用いた中和アッセイにより中和活性をチェックした。
【0143】
中和アッセイの手順は、以下に説明するAlphaLISA中和アッセイ(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド-D2 TCR)に従った。高い中和活性をもつB細胞が好ましく、クローニングのために選択された。
【0144】
所望の結合特異性を有する188種のB細胞株のRNAを、ZR-96 Quick-RNAキット(ZYMO RESEARCH、カタログ番号R1053)を用いて、凍結保存した細胞ペレットから精製した。これらをDQN0189-0376と名付けた。選択された細胞株において抗体重鎖可変領域をコードするDNAを逆転写PCRにより増幅し、F1332m重鎖定常領域をコードするDNA(SEQ ID NO: 97)と組換えた。抗体軽鎖可変領域をコードするDNAも逆転写PCRにより増幅し、hk0MC軽鎖定常領域をコードするDNA(SEQ ID NO: 98)と組換えた。クローニングされた抗体をFreestyle(商標)293-F細胞(Invitrogen)において発現させ、培養上清から精製した。以下に説明するさらなる評価により、12個のクローン(DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0282ff、DQN0356bb、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hhおよびDQN0370hh)を結合能力、特異性および機能性に基づいて選択した。2個のクローン(DQN0089ffおよびDQN0139bb)をアッセイ対照として使用した。これらの抗体のVHおよびVL配列を表2および表3に示す。これらの抗体のVH、VL、HCDRおよびLCDRのSEQ ID NOを表4に示す。これらのCDRの配列を表2および表3に示す。
例えば、表2の「DQN0223Hh」および表3の「DQN0223Lh」は、それぞれDQN0223hh抗体のH鎖およびL鎖領域の配列を示す。同じことが他の抗体、例えば、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0282ff、DQN0356bb、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hh、DQN0370hh、DQN0089ff、DQN0177aaおよびDQN0139bbにも当てはまる。これらの抗体のH鎖配列を表2に示す。これらの抗体のL鎖配列を表3に示す。これらの抗体の前記領域のSEQ ID NOを表4に示す。
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
【表4】
【0148】
実施例4
抗HLA-DQ2.5抗体の特徴決定
4.1. HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2およびHLA-DQ7.5に対する抗体の結合解析
図1~5は、FACSによって測定された、多様なMHCクラスII発現Ba/F3細胞株のパネルへの抗HLA-DQ抗体の結合を示す。抗HLA-DQ抗体の、Ba/F3-HLA-DQ2.5(HLA-DQ2.5を発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/CLIPペプチド(HLA-DQ2.5/CLIPペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.2(HLA-DQ2.2を発現)、およびBa/F3-HLA-DQ7.5(HLA-DQ7.5を発現)への結合を試験した。10μg/mLの抗HLA-DQ抗体を各細胞株と共に室温で30分間インキュベートし、FACSバッファー(PBS中2%FBS、2mM EDTA)で洗浄した。次に、ヤギF(ab')2抗ヒトIgG, マウスads-PE(Southern Biotech、カタログ番号2043-09)を加えて4℃で20分間インキュベートし、これをFACSバッファーで洗浄した。データ収集をLSRFortessa X-20(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)とGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。
【0149】
図1は、実施例3で作製された抗HLA-DQ2.5抗体の全て、すなわち、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0282ff、DQN0356bb、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0089ffおよびDQN0139bbが、HLA-DQ2.5/グリアジンペプチド複合体に対して結合活性を有することを示す。IC17は、この実験で抗HLA-DQ2.5抗体が添加されなかった陰性対照(バックグラウンド)のレベルを示す。同じことが他の図にも当てはまる。
【0150】
図2は、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0282ff、DQN0356bb、DQN0089ffおよびDQN0139bbがHLA-DQ2.5/CLIPペプチド複合体に対して結合活性を有するが、DQN0344xxとDQN0334bbはそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。図3は、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0356bb、DQN0089ffおよびDQN0139bbが、グリアジンペプチドまたはCLIPペプチドとの複合体の形態ではないHLA-DQ2.5に対して結合活性を有するが、DQN0282ff、DQN0344xxおよびDQN0334bbはそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。図4は、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0089ffおよびDQN0139bbがHLA-DQ2.2に対して結合活性を有するが、DQN0333hh、DQN0282ff、DQN0356bb、DQN0344xxおよびDQN0334bbはそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。図5は、DQN0333hh、DQN0356bbおよびDQN0139bbがHLA-DQ7.5に対して結合活性を有するが、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0282ff、DQN0344xx、DQN0334bbおよびDQN0089ffはそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。
【0151】
4.2. HLA-DQ8/5.1/6.3/7.3およびHLA-DR/DPに対する抗体の結合解析
HLA-DQ5.1/6.1/6.3/6.4/7.3/8は、ヨーロッパ系アメリカ人の間で主要なHLA-DQ対立遺伝子であることが知られている(Tissue Antigens. 2003 Oct;62(4):296-307)。HLA-DQ6.1/6.3/6.4の間の高い配列類似性を考慮して、HLA-DQ6.3対立遺伝子を代表として選択した。
【0152】
図6~11は、FACSによって測定された、多様なMHCクラスII発現Ba/F3細胞株への抗HLA-DQ抗体の結合を示す。Ba/F3-HLA-DQ8、BaF3-HLA-DQ5.1、BaF3-HLA-DQ6.3、Ba/F3-HLA-DQ7.3、Ba/F3-HLA-DRおよびBa/F3-HLA-DPへの抗HLA-DQ抗体の結合を試験した。20μg/mLの抗HLA-DQ抗体を各細胞株と共に室温で30分間インキュベートし、FACSバッファー(PBS中2%FBS、2mM EDTA)で洗浄した。次に、ヤギF(ab')2抗ヒトIgG, マウスads-PE(Southern Biotech、カタログ番号2043-09)を加えて4℃で20分間インキュベートし、FACSバッファーで洗浄した。データ収集をLSRFortessa X-20(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)とGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。
【0153】
図6および7は、DQN0089ffがHLA-DP/DRに対して結合活性を有するが、他の抗体はそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。図8は、DQN0089ffおよびDQN0139bbがHLA-DQ8に対して結合活性を有するが、他の抗体はそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。図9および10は、DQN0089ffがHLA-DQ5.1/6.3に対して結合活性を有するが、他の抗体はそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。図11は、DQN0139bbがHLA-DQ7.3に対して結合活性を有するが、他の抗体はそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。
【0154】
4.3. HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体に対する抗体の結合解析
pH7.4でのHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体に対する抗HLA-DQ抗体の親和性は、Biacore 8K機器(GE Healthcare)を用いて37℃で測定した。アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いて、CM4センサーチップの全てのフローセルに抗ヒトFc(GE Healthcare)を固定化した。全ての抗体および分析物を、20mM ACES、150mM NaCl、0.05%Tween 20および0.005%NaN3を含有するACES pH7.4中で調製した。各抗体を抗ヒトFcによってセンサー表面上に捕捉した。抗体捕捉レベルは200共鳴単位(RU)を目指した。2倍連続希釈により50~800nMに希釈した組換えHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を注入し、続いて解離させた。各サイクル後に、センサー表面を3M MgCl2で再生させた。Biacore 8K評価ソフトウェア(GE Healthcare)を用いてデータを処理して1:1結合モデルにフィッティングすることにより、結合親和性を決定した。
【0155】
HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体への結合に対する抗HLA-DQ2.5抗体の親和性を表5に示す。
【0156】
これらの結果から、本発明の抗HLA-DQ2.5抗体は、33merグリアジンペプチドの存在下でHLA-DQ2.5に結合すること、すなわち、33merグリアジンペプチドが結合したHLA-DQに結合することが、実証される。
【0157】
【表5】
【0158】
4.4. 抗体の中和アッセイ
AlphaLISA中和アッセイ(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド-D2 TCR)
HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とD2 TCRの結合に対する抗HLA-DQ抗体の中和活性は、AlphaLISAビーズアッセイプラットフォームを使用して評価した。40μg/mLのストレプトアビジン-AlphaLISAアクセプタービーズ(Perkin Elmer、AL125M)に、pH7.4のalphascreenバッファー(40mM HEPES/NaOH (pH7.4)、100mM NaCl、1mM CaCl2、0.1%BSA、0.05%Tween-20)中の10nMのビオチン化HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドを室温で60分間固定化した。同時に、80μg/mLのストレプトアビジン-Alphascreenドナービーズ(Perkin Elmer、6760002)に、alphascreenバッファー中の2.5nMのビオチン化D2 TCRを室温で60分間固定化した。次に、384ウェルプレートを使用して、10μLの連続希釈した抗HLA-DQ抗体を、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドをコーティングしたアクセプタービーズ5μLおよびD2 TCRをコーティングしたドナービーズ5μLと共に、室温で60分間インキュベートした。Alphascreenシグナル(カウント/秒、CPS)をSpectraMax Paradigm(Molecular Devices)で測定し、続いてGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。
【0159】
図12に示すように、前記抗体はグリアジン結合型HLA-DQ2.5とD2 TCRとの間の結合に対して中和活性を有する。
【0160】
ビーズ中和アッセイ(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド-S2 TCR)
HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とS2 TCRの結合に対する抗HLA-DQ抗体の中和活性は、ビーズアッセイプラットフォームを使用して評価した。ストレプトアビジンをコーティングした黄色粒子(Spherotech、SVFB-2552-6K)をブロッキングバッファー(PBS中2%BSA)中で振盪しながら室温で30分間インキュベートした。遠心分離して上清を吸引した後、可溶性HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を溶液1μLあたり1.2×104ビーズで添加し、96ウェルプレート(Sigma Aldrich、カタログ番号M2686)上で振盪しながら室温で60分間固定化させた。HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体の最終濃度は0.375μg/mLであった。このプレートをブロッキングバッファーで洗浄し、連続希釈した抗HLA-DQ抗体を加えて、振盪しながら室温で60分間インキュベートした。次に、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドをコーティングしたビーズにS2 TCR四量体-PEを加え、振盪しながら4℃で60分間インキュベートし、ブロッキングバッファーで洗浄した。S2 TCR四量体-PEの最終濃度は2.0μg/mLであった。データ収集をLSR Fortessa(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)とGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。
【0161】
図13に示すように、前記抗体はグリアジン結合型HLA-DQ2.5とS2 TCRとの間の結合に対して中和活性を有する。したがって、本発明の抗体はHLA-DQ2.5とHLA-DQ2.5拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックできることが示された。
【0162】
4.5. HLA-DQ2.5/インバリアント鎖に対する抗体の結合解析
pH7.4でのHLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体への抗HLA-DQ抗体の結合応答は、Biacore 8K機器(GE Healthcare)を用いて25℃で測定した。アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いて、CM4センサーチップの全てのフローセルに抗ヒトFc(GE Healthcare)を固定化した。全ての抗体および分析物を、20mM ACES、150mM NaCl、0.05%Tween 20、および0.005%NaN3を含むACES、pH7.4中で調製した。各抗体を抗ヒトFcによってセンサー表面上に捕捉した。抗体捕捉レベルは200共鳴単位(RU)を目指した。組換えHLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体を100nMで注入し、続いて解離させた。各サイクル後にセンサー表面を3M MgCl2で再生させた。
【0163】
HLA-DQ2.5/インバリアント鎖への抗HLA-DQ2.5抗体の結合レベルは、結合応答からモニターした。対応する抗HLA-DQ2.5抗体の捕捉レベルに対して結合レベルを正規化した。
【0164】
チップ上に捕捉された抗体の量は様々であったので、結合活性の評価のために結合レベル対捕捉レベルの比を使用した。図14に示すように、抗HLA-DQ2.5抗体について、HLA-DQ2.5/インバリアント鎖への有意な結合は観察されなかった。したがって、本発明の抗体は、インバリアント鎖とHLA-DQとの複合体には特異的に結合しないと考えられる。
【0165】
上述したように、HLA-DQがインバリアント鎖と複合体を形成すると、細胞表面上の該複合体はエンドソーム内へと急速に内在化される(「急速内在化」、ここでT1/2は約3.2分である)。エンドソーム内でのインバリアント鎖の分解後、HLA-DQ/ペプチド複合体は細胞表面に移行し、その後T細胞上のTCRによって認識される。インバリアント鎖を含まない該複合体はエンドソーム内へとゆっくりと内在化される(「緩徐な内在化」、ここでT1/2は789~1500分である)。
【0166】
本発明の抗体がインバリアント鎖の存在下でHLA-DQに有意に結合しないという事実は、該抗体をエンドソームに速やかに移行させ分解させ得る急速内在化を該抗体が受けにくいことを示している。本発明の抗体の急速な細胞内在化(すなわち、急速なエンドソーム分解)がないことは有用であると考えられる。
【0167】
4.6. 細胞ベースの中和アッセイ
細胞ベースの中和活性が確認された。HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を発現するBa/F3細胞(Ba/F3-HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド)を96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。連続希釈した抗HLA-DQ抗体およびD2 TCRを発現するJ.RT-T3.5細胞を加えて、37℃、5%CO2で一晩培養した。Ba/F3-HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドの最終濃度は3.0×104細胞/ウェルであり、D2 TCR発現J.RT-T3.5細胞は1.0×105細胞/ウェルであり、最終アッセイ容量は100μL/ウェルであった。一晩培養した後、細胞を回収し、FACSバッファー(PBS中2%FBS、2mM EDTA)で洗浄した。その後、30倍希釈したAPC抗マウスCD45抗体(Biolegend、103112)、および40倍希釈したBrilliant Violet 421(商標)抗ヒトCD69抗体(Biolegend、410930)を加えて4℃で30分間インキュベートし、FACSバッファーを用いて洗浄し、再懸濁させた。データ収集をLSR Fortessa(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)とGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析して、J.RT-T3.5細胞の活性化に対する抗HLA-DQ抗体の中和活性を決定した。J.RT-T3.5細胞上のCD69発現を活性化マーカーに使用した。図15に示すように、これらの抗体は、DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を発現するBa/F3細胞によって誘導されるD2 TCR発現T細胞の活性化を阻害する。
【0168】
実施例5
抗HLA-DQ2.5抗体の特徴
表6は、主要なHLA-DQアイソフォームのα鎖およびβ鎖のアラインメントを示す。α1ドメインとβ1ドメインが表に示され、これらは一緒になってペプチド(例えば、グルテンペプチド)のローディング部位を形成する。α1ドメインはα鎖の位置24-109にあり、β1ドメインはβ鎖の位置33-127にある(Mucosal Immunol. 2011 Jan; 4(1): 112-120からの情報)。TCR結合部位は、上記の位置と重複するか、その周囲にあると考えられる。これらの位置はまた、HLA-DQ2.5とTCRとの間の結合をブロックする抗HLA-DQ2.5抗体のエピトープの少なくとも一部を含むと予想される。
【0169】
表6に示すHLA-DQ鎖配列のSEQ ID NOは次のとおりである。HLA-DQ2.5、2.2、5.1、6.1、6.3、6.4、7.3、7.5および8のα(表6では「A」)鎖の配列は、それぞれSEQ ID NO: 112~120に示される。HLA-DQ2.5、2.2、5.1、6.1、6.3、6.4、7.3、7.5および8のβ(表6では「B」)鎖の配列は、それぞれSEQ ID NO: 121~129に示される。
【0170】
【表6】
【0171】
実施例4の結果は、DQN0223hh、DQN0235eeおよびDQN0303hhがHLA-DQ2.5とHLA-DQ2.2の両方に対して結合活性を有し、他のHLA-DQアイソフォームに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。HLA-DQ2.5とHLA-DQ2.2の間のβ鎖の類似性は、これらの抗体がHLA-DQ2.5のβ鎖に対して結合活性を有することを示唆する。これらの抗体のエピトープはβ鎖のアミノ酸58~109の少なくとも一部を含む可能性がある。
【0172】
DQN0333hhおよびDQN0356bbは、HLA-DQ2.5とHLA-DQ7.5の両方に対して結合活性を有し、他のHLA-DQアイソフォームに対して結合活性を実質的に有しない。HLA-DQ2.5とHLA-DQ7.5の間のα鎖の類似性は、これらの抗体がHLA-DQ2.5のα鎖に対して結合活性を有することを示唆する。これらの抗体のエピトープはα鎖のアミノ酸63~78および/または97~98の少なくとも一部を含む可能性がある。
【0173】
DQN0344およびDQN0334bbは、HLA-DQ2.5のみに対して結合活性を有し、他のHLA-DQアイソフォームに対して結合活性を実質的に有しない。これらの抗体は、HLA-DQ2.5のα鎖とβ鎖の両方に対して結合活性を有すると予想される。これらの抗体のエピトープは、β鎖のアミノ酸58~109とα鎖のアミノ酸63~78および/または97~98との両方の少なくとも一部を含む可能性がある。
【0174】
前述の発明は、理解を明確にする目的で、例示および実施例によって多少詳しく説明されているが、そうした説明および実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書で引用した全ての特許および科学文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0175】
実施例6
HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド、HLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドを発現するBa/F3細胞株の樹立。
【0176】
HLA-DQA1*0501 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00613)を発現ベクターpCXND3(WO2008/156083)に挿入した。
【0177】
HLA-DQB1*0201 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00622)を発現ベクターpCXZD1(US/20090324589)に挿入した。HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、α1グリアジンペプチド配列:QPFPQPELPYPGS(SEQ ID NO: 130)と、HLA-DQB1*0201のN末端にある第X因子切断リンカー:(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)を有する。HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、α1bグリアジンペプチド配列:QLPYPQPELPYPGS(SEQ ID NO: 131)と、HLA-DQB1*0201のN末端にある第X因子切断リンカー:(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)を有する。HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、α2グリアジンペプチド配列:APQPELPYPQPGS(SEQ ID NO: 132)と、HLA-DQB1*0201のN末端にある第X因子切断リンカー:(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)を有する。HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、ω1グリアジンペプチド配列:QQPFPQPEQPFPGS(SEQ ID NO: 133)と、HLA-DQB1*0201のN末端にある第X因子切断リンカー:(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)を有する。HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、ω2グリアジンペプチド配列:QFPQPEQPFPWQGS(SEQ ID NO: 134)と、HLA-DQB1*0201のN末端にある第X因子切断リンカー:(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)を有する。HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、セカリン1ペプチド配列:QPEQPFPQPEQPFPQGS(SEQ ID NO: 135)と、HLA-DQB1*0201のN末端にある第X因子切断リンカー:(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)を有する。HLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、セカリン2ペプチド配列:QQPFPQPEQPFPQSQGS(SEQ ID NO: 136)と、HLA-DQB1*0201のN末端にある第X因子切断リンカー:(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)を有する。HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、サルモネラペプチド配列:MMAWRMMRY(SEQ ID NO: 137)と、HLA-DQB1*0201のN末端にあるGSGGGSリンカーを有する。HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、マイコバクテリウム・ボビスペプチド配列:KPLLIIAEDVEGEY(SEQ ID NO: 138)と、HLA-DQB1*0201のN末端にあるGSGGGSリンカーを有する。HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、B型肝炎ウイルスペプチド配列:PDRVHFASPLHVAWR(SEQ ID NO: 139)と、HLA-DQB1*0201のN末端にあるGSGGGSリンカーを有する。
【0178】
線状化したHLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/セカリン1ペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/セカリン2ペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/サルモネラペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1、HLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドのHLA-DQB1*0201-pCXZD1のそれぞれをエレクトロポレーション(LONZA、4D-Nucleofector X)によってマウスIL-3依存性プロB細胞由来細胞株Ba/F3に同時に導入した。次に、トランスフェクトされた細胞をジェネティシンとゼオシンを含む培地で培養した。その後、培養して増殖させた細胞により、HLA-DQ2.5分子の発現がチェックされ、HLA-DQ2.5の高発現が確認された。樹立された各細胞株は、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/セカリン2ペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチドのHLA-DQB1*0201)、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチド(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドのHLA-DQB1*0201)と命名した。
【0179】
実施例7
HLA-DQ2.5に対する抗体の結合解析
図16~28は、FACSによって測定された、数種のペプチドを発現するBa/F3細胞株との複合体の形態のHLA-DQのパネルへの抗HLA-DQ抗体の結合を示す。抗HLA-DQ抗体の、Ba/F3-HLA-DQ2.5(HLA-DQ2.5を発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/CLIPペプチド(HLA-DQ2.5/CLIPペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド(HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド(HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド(HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド(HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド(HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド(HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド(HLA-DQ2.5/セカリン2ペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド(HLA-DQ2.5/サルモネラペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド(HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチドを発現)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチド(HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドを発現)への結合を試験した。10μg/mLの抗HLA-DQ抗体を各細胞株と共に室温で30分間インキュベートし、FACSバッファー(PBS中2%FBS、2mM EDTA)で洗浄した。次に、ヤギF(ab')2抗ヒトIgG, マウスads-PE(Southern Biotech、カタログ番号2043-09)を加えて4℃で20分間インキュベートし、これをFACSバッファーで洗浄した。データ収集をLSRFortessa X-20(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)とGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。
【0180】
図16は、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0356bb、DQN0089ffおよびDQN0139bbが、グリアジンペプチド、セカリンペプチド、CLIPペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビスペプチドまたはB型肝炎ウイルスペプチドとの複合体の形態ではないHLA-DQ2.5に対して結合活性を有するが、DQN0282ff、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hhおよびDQN0370hhはそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。
【0181】
図17は、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0282ff、DQN0356bb、DQN0089ffおよびDQN0139bbがHLA-DQ2.5/CLIPペプチド複合体に対して結合活性を有するが、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hhおよびDQN0370hhはそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。IC17は、この実験で抗HLA-DQ2.5抗体が添加されなかった陰性対照(バックグラウンド)のレベルを示す。同じことが他の図にも当てはまる。
【0182】
図18~25は、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0282ff、DQN0356bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hh、DQN0370hh、DQN0089ffおよびDQN0139bbが33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、セカリン1ペプチドおよびセカリン2ペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有することを示す。DQN0344xxは、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、セカリン1ペプチドおよびセカリン2ペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する。DQN0334bbは、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチドおよびセカリン1ペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する。
【0183】
図26~28は、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0356bb、DQN0089ffおよびDQN0139bbが、グルテン由来のペプチドではないサルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビスペプチドおよびB型肝炎ウイルスペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有するが、DQN0282ff、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hhおよびDQN0370hhはそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。
【0184】
実施例8
HLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞に対する抗体の結合解析
図29は、FACSによって測定された、HLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞への抗HLA-DQ抗体の結合を示す。10μg/mLの抗HLA-DQ抗体をPBMCと共にヒトFcRブロッキング試薬(Miltenyi Biotech、カタログ番号130-059-901)の存在下で室温にて30分間インキュベートし、FACSバッファー(PBS中2%FBS、2mM EDTA)で洗浄した。次に、Pacific Blue(商標)抗ヒトCD19抗体マウスIgG1k(Biolegend、カタログ番号2043-09)およびAlexa Fluor 555標識抗ヒトIgG Fc抗体(参考例1~3)を加えて4℃で30分間インキュベートし、これをFACSバッファーで洗浄した。データ収集をLSRFortessa X-20(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)とGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。
【0185】
図29は、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0356bb、DQN0089ff、およびDQN0139bbがHLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞に対して結合活性を有するが、DQN0282ff、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hh、およびDQN0370hhはそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。
図30図16~29の要約である。DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0333hh、DQN0356bb、DQN0089ff、およびDQN0139bbは、任意のペプチドとの複合体の形態またはペプチドなしの形態のHLA-DQ2.5に対して結合活性を有するが、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hh、およびDQN0370hhは、若干の例外はあるものの、グルテン由来のペプチド、特にグルテン33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、セカリン1ペプチドおよびセカリン2ペプチドとの複合体である場合にのみ、HLA-DQ2.5に対して結合活性を有する。一方、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hh、およびDQN0370hhは、ペプチドなしのHLA-DQ2.5、およびグルテン由来のペプチドとは無関係のペプチドとの複合体の形態のHLA-DQ2.5への結合活性を実質的に有しない。図30の数値データを表7に示す。
【0186】
【表7】
【0187】
実施例9
HLA-DQ2.2およびHLA-DQ7.に対する抗体の結合の解析
図31および32は、FACSによって測定された、多様なMHCクラスII発現Ba/F3細胞株のパネルへの抗HLA-DQ抗体の結合を示す。Ba/F3-HLA-DQ2.2(HLA-DQ2.2を発現)およびBa/F3-HLA-DQ7.5(HLA-DQ7.5を発現)への抗HLA-DQ抗体の結合を試験した。10μg/mLの抗HLA-DQ抗体を各細胞株と共に室温で30分間インキュベートし、FACSバッファー(PBS中2%FBS、2mM EDTA)で洗浄した。次に、ヤギF(ab')2抗ヒトIgG, マウスads-PE(Southern Biotech、カタログ番号2043-09)を加えて4℃で20分間インキュベートし、これをFACSバッファーで洗浄した。データ収集をLSRFortessa X-20(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)とGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。
【0188】
図31は、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0089ff、およびDQN0139bbがHLA-DQ2.2に対して結合活性を有するが、DQN0333hh、DQN0282ff、DQN0356bb、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hh、およびDQN0370hhはそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。
【0189】
図32は、DQN0333hh、DQN0356bb、およびDQN0139bbがHLA-DQ7.5に対して結合活性を有するが、DQN0223hh、DQN0235ee、DQN0303hh、DQN0282ff、DQN0344xx、DQN0334bb、DQN0225dd、DQN0271hh、DQN0324hh、DQN0370hh、およびDQN0089ffはそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。
【0190】
実施例10
HLA-DQ8/5.1/6.3/7.3およびHLA-DR/DPに対する抗体の結合解析
図33~38は、FACSによって測定された、多様なMHCクラスII発現Ba/F3細胞株への抗HLA-DQ抗体の結合を示す。Ba/F3-HLA-DQ8、BaF3-HLA-DQ5.1、BaF3-HLA-DQ6.3、Ba/F3-HLA-DQ7.3、Ba/F3-HLA-DR、およびBa/F3-HLA-DPへの抗HLA-DQ抗体の結合を試験した。20μg/mLの抗HLA-DQ抗体を各細胞株と共に室温で30分間インキュベートし、FACSバッファー(PBS中2%FBS、2mM EDTA)で洗浄した。次に、ヤギF(ab')2抗ヒトIgG, マウスads-PE(Southern Biotech、カタログ番号2043-09)を加えて4℃で20分間インキュベートし、FACSバッファーで洗浄した。データ収集をLSRFortessa X-20(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)とGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。
【0191】
図37および38は、DQN0089ffがHLA-DP/DRに対して結合活性を有するが、他の抗体はそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。図33は、DQN0089ffおよびDQN0139bbがHLA-DQ8に対して結合活性を有するが、他の抗体はそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。図34および35は、DQN0089ffがHLA-DQ5.1/6.3に対して結合活性を有するが、他の抗体はそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。図36は、DQN0139bbがHLA-DQ7.3に対して結合活性を有するが、他の抗体はそれに対して結合活性を実質的に有しないことを示す。
【0192】
実施例11
細胞ベースの中和アッセイ
細胞ベースの中和活性が確認された。HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を発現するBa/F3細胞(Ba/F3-HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド)を96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次に、連続希釈した抗HLA-DQ抗体およびD2 TCRを発現するJ.RT-T3.5細胞を加えて、37℃、5%CO2で一晩培養した。Ba/F3-HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドの最終濃度は3.0×104細胞/ウェルであり、D2 TCR発現J.RT-T3.5細胞は1.0×105細胞/ウェルであり、最終アッセイ容量は100μL/ウェルであった。一晩培養した後、細胞を回収し、FACSバッファー(PBS中2%FBS、2mM EDTA)で洗浄した。その後、30倍希釈したAPC抗マウスCD45抗体(Biolegend、103112)、および40倍希釈したBrilliant Violet 421(商標)抗ヒトCD69抗体(Biolegend、410930)を加えて4℃で30分間インキュベートし、FACSバッファーを用いて洗浄し、再懸濁した。データ収集をLSR Fortessa(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)とGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析して、J.RT-T3.5細胞の活性化に対する抗HLA-DQ抗体の中和活性を決定した。J.RT-T3.5細胞上のCD69発現を活性化マーカーに使用した。図39に示すように、これらの抗体は、DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を発現するBa/F3細胞によって誘導されるD2 TCR発現T細胞の活性化を阻害する。
【0193】
実施例12
AlphaLISA中和アッセイ(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド-D2 TCR)
HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とD2 TCRの結合に対する抗HLA-DQ抗体の中和活性は、AlphaLISAビーズアッセイプラットフォームを使用して評価した。40μg/mLのストレプトアビジン-AlphaLISAアクセプタービーズ(Perkin Elmer、AL125M)に、pH7.4のalphascreenバッファー(40mM HEPES/NaOH (pH7.4)、100mM NaCl、1mM CaCl2、0.1%BSA、0.05%Tween-20)中の10nMのビオチン化HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドを室温で60分間固定化した。同時に、80μg/mLのストレプトアビジン-Alphascreenドナービーズ(Perkin Elmer、6760002)に、alphascreenバッファー中の2.5nMのビオチン化D2 TCRを室温で60分間固定化した。次に、384ウェルプレートを使用して、10μLの連続希釈した抗HLA-DQ抗体を、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドをコーティングしたアクセプタービーズ5μLおよびD2 TCRをコーティングしたドナービーズ5μLと共に、室温で60分間インキュベートした。Alphascreenシグナル(カウント/秒、CPS)をSpectraMax Paradigm(Molecular Devices)で測定し、続いてGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。
図40に示すように、これらの抗体はグリアジン結合型HLA-DQ2.5とD2 TCRとの間の結合に対して中和活性を有する。
【0194】
実施例13
ビーズ中和アッセイ(HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド-S2 TCR)
HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体とS2 TCRの結合に対する抗HLA-DQ抗体の中和活性は、ビーズアッセイプラットフォームを使用して評価した。ストレプトアビジンをコーティングした黄色粒子(Spherotech、SVFB-2552-6K)をブロッキングバッファー(PBS中2%BSA)中で振盪しながら室温で30分間インキュベートした。遠心分離して上清を吸引した後、可溶性HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を溶液1μLあたり1.2×104ビーズで添加し、96ウェルプレート(Sigma Aldrich、カタログ番号M2686)上で振盪しながら室温で60分間固定化させた。HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体の最終濃度は0.375μg/mLであった。このプレートをブロッキングバッファーで洗浄し、連続希釈した抗HLA-DQ抗体を加えて、室温で振盪しながら60分間インキュベートした。次に、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドをコーティングしたビーズにS2 TCR四量体-PEを加え、4℃で振盪しながら60分間インキュベートし、ブロッキングバッファーで洗浄した。S2 TCR四量体-PEの最終濃度は2.0μg/mLであった。データ収集をLSR Fortessa(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)とGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。
【0195】
図41に示すように、これらの抗体はグリアジン結合型HLA-DQ2.5とS2 TCRとの間の結合に対して中和活性を有する。したがって、本発明の抗体は、HLA-DQ2.5とHLA-DQ2.5拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックできることが示された。
【0196】
実施例14
抗HLA-DQ2.5抗体の結合親和性を評価するためのBiacore解析
pH7.4でヒトHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体に結合する抗HLA-DQ2.5抗体の親和性は、Biacore 8K機器(GE Healthcare)を使用して37℃で測定した。アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いて、CM4センサーチップの全てのフローセルに抗ヒトFc(GE Healthcare)を固定化した。全ての抗体および分析物を、20mM ACES、150mM NaCl、0.05%Tween 20、0.005%NaN3を含有するACES pH7.4中で調製した。各抗体を抗ヒトFcによってセンサー表面上に捕捉した。抗体捕捉レベルは200共鳴単位(RU)を目指した。組換えヒトHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を、2倍連続希釈により調製した50~800nMで注入し、続いて解離させた。各サイクルごとにセンサー表面を3M MgCl2で再生させた。Biacore 8K評価ソフトウェア(GE Healthcare)を用いてデータを処理して1:1結合モデルにフィッティングすることにより、結合親和性を決定した。
HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体に結合する抗HLA-DQ2.5抗体の親和性を表8に示す。
【0197】
【表8】
【0198】
実施例15
抗HLA-DQ2.5抗体のHLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体への結合の評価
pH7.4でのヒトHLA-DQ2.5/インバリアント鎖複合体への抗HLA-DQ2.5抗体の結合応答は、Biacore 8K機器(GE Healthcare)を使用して25℃で測定した。アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いて、CM4センサーチップの全てのフローセルに抗ヒトFc(GE Healthcare)を固定化した。全ての抗体および分析物を、20mM ACES、150mM NaCl、0.05%Tween 20、0.005%NaN3を含有するACES pH7.4中で調製した。各抗体を抗ヒトFcによってセンサー表面上に捕捉した。抗体捕捉レベルは200共鳴単位(RU)を目指した。組換えヒトHLA-DQ/インバリアント鎖複合体を100nMで注入し、続いて解離させた。各サイクルごとにセンサー表面を3M MgCl2で再生させた。
【0199】
ヒトHLA-DQ2.5/インバリアント鎖に対する抗HLA-DQ2.5抗体の結合レベルは、結合応答からモニターした。対応する抗HLA-DQ2.5抗体の捕捉レベルに対して結合レベルを正規化した。
チップ上に捕捉された抗体の量は様々であったので、結合活性の評価のために結合レベル対捕捉レベルの比を使用した。図42に示すように、抗HLA-DQ2.5抗体について、HLA-DQ2.5/インバリアント鎖に対する有意な結合は観察されなかった。したがって、本発明の抗体は、インバリアント鎖とHLA-DQの複合体には特異的に結合しないと考えられる。
【0200】
参考例1
デルタGK Fcの調製
ヒトIgG4由来デルタGK Fc断片は、FreeStyle(商標)293発現システム(Invitrogen)を用いて発現させた。発現させたFc断片を、回収した細胞培養培地からアフィニティクロマトグラフィー(MabSelect SuRe, GE)により精製した。最後の工程では、バッファーをD-PBS(-)に交換した。
【0201】
参考例2
抗デルタGK抗体の作製
抗デルタGK抗体は、下記のように調製し、選択し、アッセイした。
NZWウサギを、参考例1で発現させたヒトIgG4由来デルタGK Fc断片(100~200μg/用量/頭部)で皮内免疫した。この用量を3ヶ月間にわたり6回反復投与し、その後、血液と脾臓を採取した。B細胞の選択のために、IgG4デルタGK抗体(IgG4 C末端GKを遺伝子欠失させたIgG4抗体)および野生型IgG4抗体を調製した。デルタGK特異的B細胞をセルソーターを用いて選別し、その後WO2016098356A1に記載の手順に従ってプレーティングし、培養した。培養後、さらなる解析のためにB細胞培養上清を回収し、対応するB細胞ペレットを凍結保存した。
【0202】
IgGデルタGKへの特異的結合は、B細胞培養上清を用いてELISAにより評価した。この一次スクリーニングでは、デルタGK C末端配列に対する結合特異性を評価するために、4種類の抗体を抗原として使用した: IgG1 C末端Kを遺伝子欠失させたIgG1抗体(IgG1デルタK)、IgG1 C末端GKを遺伝子欠失させたIgG1抗体(IgG1デルタGK)、IgG4 C末端Kを遺伝子欠失させたIgG4抗体(IgG4デルタK)、およびIgG4 C末端GKを遺伝子欠失させたIgG4抗体(IgG4デルタGK)。結果は、単一のB細胞クローンからの1つの培養上清サンプルのみがIgG1デルタGKとIgG4デルタGKの両方に特異的に結合することを示した(図43)。
【0203】
デルタGK Fcは、デルタK FcよりもデルタGKアミドFcに構造的に類似している。本発明者らはまた、陽性B細胞クローンからの前述の選択された培養上清を使用して、デルタGK FcおよびデルタGKアミドFcへの特異的結合を特徴決定した。IgG1デルタGKアミドおよびIgG4デルタGKアミドは、上記のIgG1デルタKまたはIgG4デルタKを用いたPAM処理により調製して、従来の方法により精製した。この二次スクリーニングでは、デルタGK C末端配列に対する結合特異性を評価するために、ELISAアッセイでの抗原として4種類の抗体を使用した:IgG1デルタGK、IgG1デルタGKアミド、IgG4デルタGK、およびIgG4デルタGKアミド。驚くべきことに、試験した単一B細胞の培養上清は、デルタGK分子に対して極めて高い特異性を示した(図44)。
【0204】
これらのスクリーニング結果に基づき、ZR-96 Quick-RNAキット(ZYMO RESEARCH、カタログ番号R1053)を使用して、選択されたクローンのRNAをその凍結保存細胞ペレットから抽出した。選択されたクローンにより産生された抗体の抗体重鎖可変領域をコードするDNAを取得し、逆転写PCRで増幅し、その後ウサギIgG重鎖定常領域をコードするDNA(SEQ ID NO: 140)と組換えた。抗体軽鎖可変領域をコードするDNAも取得し、逆転写PCRで増幅してから、ウサギIgk軽鎖定常領域をコードするDNA(SEQ ID NO: 141)と組換えた。「YG55」と命名した、2本の重鎖と2本の軽鎖を有する抗デルタGK抗体をこれらの組換え体から産生させた。重鎖および軽鎖のVH、VL、およびHVR配列を表9に示す。YG55は、FreeStyle(商標)293発現システムを用いて発現させ、培養上清から精製した。
【0205】
参考例3
抗デルタGKモノクローナル抗体YG55の特徴決定
遺伝子クローニングと抗体発現の後、二次スクリーニングで上記のELISAアッセイによりYG55の特異性を評価した。抗体遺伝子のクローニングは成功し、それによりヒット(陽性)B細胞クローンにより示されたのと同じ特異性を保持するYG55が得られた(図45)。この高度に特異的な結合は表面プラズモン共鳴アッセイでも確認された。特異的結合モチーフとそのエピトープを結晶構造解析により同定した。
【0206】
【表9】
図1
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図42
図43
図44
図45
【配列表】
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