IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】トナー用ポリエステル樹脂及びトナー
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/199 20060101AFI20241113BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C08G63/199
G03G9/087 331
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023076610
(22)【出願日】2023-05-08
(65)【公開番号】P2024020130
(43)【公開日】2024-02-14
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2022122448
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松井 洋輔
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-172720(JP,A)
【文献】特開2013-068829(JP,A)
【文献】特開平11-171835(JP,A)
【文献】特開2003-261658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 - 64/42
G03G 9/00- 9/113
G03G 9/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-テルピニル構造を有することを特徴とするトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項2】
ポリエステル樹脂が、原料モノマーとして少なくともα-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はα-テルピニル構造を有するアルコールを含むアルコール成分を用い、カルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られる、請求項1記載のトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項3】
α-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物とα-テルピニル構造を有するアルコールとの合計量が、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、10~100モル%である、請求項2記載のトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項4】
ガラス転移温度が、40~120℃である、請求項1記載のトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項5】
α-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物が、2-α-テルピノキシ-コハク酸である、請求項2記載のトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項6】
α-テルピニル構造を有するアルコールが、3-α-テルピノキシ-1,2-プロパンジオールである、請求項2記載のトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載のトナー用ポリエステル樹脂を含むトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナー用ポリエステル樹脂及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンターやコピー機の高速化及び省エネ化に伴い、低温定着性に優れたトナーがますます必要となってきている。しかし、通常トナーのバインダー樹脂を低温で溶融させるために低分子量化を行うと、樹脂のガラス転移点が低下し、耐熱保存性が低下する。
この課題を解決するために、低分子量でも高ガラス転移点のトナー用バインダー樹脂として、テレフタル酸やイソフタル酸等の芳香環を有するカルボン酸やビスフェノールA構造を有するアルコールを原料モノマーとして用いて得られたポリエステルが汎用されている(特許文献1)。
一方で、芳香環は脂肪族構造と比較して極性が高いため、バインダー樹脂の吸湿性が高くなり、結果としてトナーの耐湿熱保存性が悪化するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-251248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂を用いることで、耐湿熱保存性及び低温定着性に優れたトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、α-テルピニル構造を有することを特徴とするトナー用ポリエステル樹脂である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂を用いることで、耐湿熱保存性及び低温定着性に優れたトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、α-テルピニル構造を有することを特徴とするポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂がα-テルピニル構造を有することによって、耐湿熱保存性及び低温定着性に優れるトナーを得ることができる。この理由は、ポリエステル樹脂の原料モノマーとしてα-テルピニル構造を有する化合物を用いることにより、ガラス転移点が高くとも、溶融粘度の低い樹脂が得られ、トナーの耐熱保存性と低温定着性に優れることと、α-テルピニル構造の疎水性から、樹脂の吸湿性が低くなり結果的に耐湿保存性も優れるためと考えられる。
【0008】
本発明において、トナー用ポリエステル樹脂は、原料モノマーとして少なくともα-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はα-テルピニル構造を有するアルコールを含むアルコール成分を用い、カルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させることで得られる樹脂が好ましい。なお、α-テルピニル構造とは一般式(1)で表される構造のことである。
【0009】
【化1】
一般式(1)中、Rはα-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物又はα-テルピニル構造を有するアルコールの残基を表す。
【0010】
α-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物およびアルコールは、例えばα-ピネン及び/又はβ-ピネンと水酸基を有する化合物を反応した後、必要に応じて加水分解処理等の後処理や単離精製することで得ることができる。
【0011】
前記水酸基を有する化合物は、α-ピネン及び/又はβ-ピネンとの反応後に水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物を生成するものであれば特に限定されないが、ポリエステル樹脂のモノマーとしての使用しやすさの観点からヒドロキシカルボン酸化合物及び/又は3官能以上の多価アルコール化合物であることが好ましい。
ヒドロキシカルボン酸化合物としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられ、例えば、サリチル酸、リンゴ酸、シトラマル酸、酒石酸、キシロン酸、グルカル酸、及びグルコン酸等が挙げられる。これらのうち、モノマーとしての使用しやすさの観点から、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、ジカルボン酸化合物であるリンゴ酸、シトラマル酸、酒石酸、及びグルカル酸がより好ましく、リンゴ酸がさらに好ましい。
また、3官能以上の多価アルコール化合物としては、炭素数3~36の3価以上の多価脂肪族アルコール、多価脂肪族アルコールのAO付加物(付加モル数2~120)、トリスフェノール(トリスフェノールPAなど)のAO付加物(付加モル数2~30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど)のAO付加物(付加モル数2~30)、アクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物など]等が挙げられる。
炭素数3~36の3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物並びに糖類(ショ糖等)及びそのメチルグルコシド等が挙げられる。
アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物の具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン及びポリグリセリン等が挙げられる。
上記3官能以上の多価アルコール化合物のうち、後述するアセタール化の観点から、炭素数3~36の3価以上の多価脂肪族アルコールが好ましく、アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物がより好ましく、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールがさらに好ましく、グリセリンが特に好ましい。
上記3官能以上の多価アルコール化合物は、α-ピネン及び/又はβ-ピネンとの反応に際して、アルコールの一部を事前にアルデヒド化合物やケトン化合物でアセタール化して用いてもよく、その場合、α-ピネン及び/又はβ-ピネンとの反応後にアセタール部位を加水分解処理することで、α-テルピニル構造を有するアルコールを得ることが出来る。
3官能以上の多価アルコール化合物をアセタール化した場合の例としては、グリセリンをアセトンでアセタール化して得られる、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール等が挙げられる。
【0012】
α-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物としては、α-テルピニル構造を有する脂肪族カルボン酸(2-α-テルピノキシ-コハク酸、2-α-テルピノキシ-アジピン酸、2-α-テルピノキシ-セバシン酸、2-α-テルピノキシ-アゼライン酸)、及びα-テルピニル構造を有する芳香族カルボン酸(α-テルピノキシ-フタル酸)等が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、α-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物は、カルボン酸無水物や低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)を用いてもよい。
α-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物のうち得られるポリエステルのガラス転移温度の制御の観点から、α-テルピニル構造を有する脂肪族カルボン酸が好ましく、2-α-テルピノキシ-コハク酸がより好ましい。
【0013】
α-テルピニル構造を有するアルコールとしては、3-α-テルピノキシ-1,2-プロパンジオール、4-α-テルピノキシ-3,3-ジヒドロキシメチル-ブタン等が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
α-テルピニル構造を有するアルコールのなかでは、得られるポリエステルのガラス転移温度の制御の観点から、3-α-テルピノキシ-1,2-プロパンジオールが好ましい。
【0014】
α-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物とα-テルピニル構造を有するアルコールとの合計量は、トナーの耐湿熱保存性及び低温定着性の観点から、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、好ましくは10~100モル%であり、より好ましくは20~98モル%である。
【0015】
さらに、α-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性と耐湿熱保存性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10~100モル%であり、より好ましくは20~98モル%である。
【0016】
α-テルピニル構造を有するアルコールの含有量は、トナーの低温定着性と耐湿熱保存性の観点から、アルコール成分中、好ましくは10~100モル%であり、より好ましくは20~98モル%である。
【0017】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、原料モノマーとして少なくともα-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物及び/又はα-テルピニル構造を有するアルコールを用いる他に、従来から公知のアルコール成分及び/又はカルボン酸成分を併用してもよい。
アルコール成分としてはジオール(g)及び3価以上のポリオール(h)が挙げられる。
【0018】
ジオール(g)としては、炭素数2~36のアルキレングリコール、炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール、炭素数4~36の脂環式ジオール、アルキレングリコール又は脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物、ポリラクトンジオール及びポリブタジエンジオール等が挙げられる。
炭素数2~36のアルキレングリコールの具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール及び2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコールの具体的な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
炭素数4~36の脂環式ジオールの具体的な例としては、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
アルキレングリコール又は脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物において、アルキレングリコール又は脂環式ジオールとしては上記が挙げられ、アルキレンオキサイド(以下AOと略記する)付加物としては、エチレンオキサイド(以下EOと略記する)付加物、プロピレンオキサイド(以下POと略記する)付加物及びブチレンオキサイド(以下BOと略記する)付加物等が挙げられる。
ビスフェノールのAO付加物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのAO(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)等が挙げられる。
ポリラクトンジオールとしては、ポリε-カプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0019】
ジオール(g)としては、上記のヒドロキシル基以外の官能基を有しないジオール以外に、他の官能基を有するジオール(g1)を用いてもよい。
(g1)としては、カルボキシル基を有するジオール、スルホン酸基もしくはスルファミン酸基を有するジオール及びこれらの塩等が挙げられる。
カルボキシル基を有するジオールとしては、ジアルキロールアルカン酸が挙げられる。ジアルキロールアルカン酸としては、炭素数が6~24のものが挙げられ、具体的には2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロールヘプタン酸及び2,2-ジメチロールオクタン酸等が挙げられる。
スルホン酸基もしくはスルファミン酸基を有するジオールとしては、3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)-1-プロパンスルホン酸、スルホイソフタル酸ジ(エチレングリコール)エステル、スルファミン酸ジオール及びビス(2-ヒドロキシエチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0020】
ジオール(g)として好ましいものは、炭素数2~12のアルキレングリコール、カルボキシル基を有するジオール、ビスフェノールのAO付加物及びこれらの併用である。
【0021】
3価以上のポリオール(h)としては、炭素数3~36の3価以上の多価脂肪族アルコール、多価脂肪族アルコールのAO付加物(付加モル数2~120)、トリスフェノール(トリスフェノールPAなど)のAO付加物(付加モル数2~30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど)のAO付加物(付加モル数2~30)、アクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物など]等が挙げられる。
炭素数3~36の3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物並びに糖類(ショ糖等)及びそのメチルグルコシド等が挙げられる。
アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物の具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン及びポリグリセリン等が挙げられる。
【0022】
3価以上のポリオール(h)として好ましいものは、3価以上の多価脂肪族アルコール及びノボラック樹脂のAO付加物であり、更に好ましいものはノボラック樹脂のAO付加物である。
【0023】
カルボン酸成分としては、ジカルボン酸(i)、3価以上のポリカルボン酸(j)及びこれらの酸無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0024】
ジカルボン酸(i)としては、炭素数4~36のアルカンジカルボン酸、アルケニルコハク酸、炭素数6~40の脂環式ジカルボン酸、炭素数4~36のアルケンジカルボン酸及び炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
炭素数4~36のアルカンジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸及びデシルコハク酸等が挙げられる。
アルケニルコハク酸としては、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等が挙げられる。
炭素数6~40の脂環式ジカルボン酸としては、ダイマー酸(2量化リノール酸)等が挙げられる。
炭素数4~36のアルケンジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸及びシトラコン酸等が挙げられる。
炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
これらのジカルボン酸(i)のうち好ましいものは、炭素数4~36のアルカンジカルボン酸及び炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸であり、より好ましくは炭素数4~20のアルカンジカルボン酸及び炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸である。
【0025】
3価以上のポリカルボン酸(j)としては、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)及び炭素数6~36の脂肪族(脂環式を含む)トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸及びデカントリカルボン酸等)等が挙げられる。
【0026】
これらの3価以上のポリカルボン酸(j)のうち好ましいものは、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸であり、より好ましくはトリメリット酸、ピロメリット酸である。
【0027】
なお、ジカルボン酸(i)又は3価以上のポリカルボン酸(j)としては、上述のものの酸無水物又は炭素数1~4の低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)を用いてもよい。
【0028】
アルコール成分とカルボン酸成分の反応比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]のモル比[OH]/[COOH]として、好ましくは1/5~2/1、更に好ましくは1/4~1.5/1、特に好ましくは1/3~1/1.3である。
ポリエステル樹脂の酸価を後述の好ましい範囲内とするために、水酸基が過剰なポリエステルをポリカルボン酸で処理してもよい。
【0029】
ポリエステル樹脂の製造方法は、公知の製造方法にて製造することが出来る。
例えば、原料モノマーとして少なくともα-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はα-テルピニル構造を有するアルコールを含むアルコール成分を用い、カルボン酸成分とアルコール成分とを不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150~280℃、反応時間が好ましくは30分以上で重縮合反応させる方法が挙げられる。
【0030】
また、この反応の際に、カルボン酸成分にテレフタル酸を使用する場合は、PET(ポリエチレンテレフタレート)由来のテレフタル酸成分をテレフタル酸に代えて、又はテレフタル酸と共に混合してもよい。同様に、アルコール成分にエチレングリコールを使用する場合は、PET(ポリエチレンテレフタレート)由来のエチレングリコール成分をエチレングリコールに代えて、又はエチレングリコールと共に混合してもよい。
【0031】
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。
エステル化触媒としては、スズ含有触媒、三酸化アンチモン、チタン含有触媒、ジルコニウム含有触媒及び酢酸亜鉛等が挙げられる。
具体的には、スズ含有触媒としては、ジブチルスズオキシド等が挙げられる。
チタン含有触媒としては、チタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006-243715号公報に記載の触媒(チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、及びそれらの分子内重縮合物等)及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート、及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)などが挙げられる。
ジルコニウム含有触媒としては、酢酸ジルコニルが挙げられる。
【0032】
エステル化触媒の中で好ましくは、ポリエステル樹脂の帯電特性の観点から、チタン含有触媒であり、更に好ましくは特開2006-243715号公報に記載の触媒及び特開2007-11307号公報に記載の触媒である。
【0033】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、カルボン酸金属塩の構成単位を含有することが帯電特性の観点から好ましい。ポリエステル樹脂がカルボン酸金属塩の構成単位を含有する場合、この樹脂は例えば、COOH基を有するポリエステル(酸価が好ましくは1~100mgKOH/g、更に好ましくは5~50mgKOH/g)を合成し、その少なくとも一部のCOOH基を、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Zn、Ba及びZrから選ばれる少なくとも1種の金属の塩とすることにより得られる。
金属塩とする方法としては、例えば、COOH基を有するポリエステルと該当する金属の水酸化物とを反応することにより得られる。
【0034】
本発明における数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定することができる。
装置 :「HLC-8120」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK GEL GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別したもの)
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0035】
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、低温定着性及び耐湿熱保存性の観点から、好ましくは1000~10000であり、より好ましくは1500~8000である。
【0036】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、低温定着性及び耐湿熱保存性の観点から、好ましくは2000~50000であり、より好ましくは3000~30000である。
【0037】
ポリエステル樹脂の酸価は、耐湿熱保存性の観点から、好ましくは0~40mgKOH/gである。なお、酸価は、JIS K0070に規定の方法で測定することができる。
【0038】
ポリエステル樹脂の水酸基価は、耐湿熱保存性の観点から、好ましくは20~80mgKOH/gである。なお、水酸基価は、JIS K0070に規定の方法で測定することができる。
【0039】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは40~120℃であり、より好ましくは50~80℃である。
本発明におけるTgは、「DSC20、SSC/580」[セイコー電子工業(株)製]を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC)で測定することができる。
【0040】
本発明のトナーは、上記トナー用ポリエステル樹脂を含むトナーである。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂を含む結着樹脂を用いることにより、トナーの低温定着性と耐湿熱保存性に優れたトナーが得られる。
【0041】
また、本発明のトナーは、上記ポリエステル樹脂に加えて、その他の樹脂を併用することができる。その他の樹脂は、公知の樹脂であればいかなる樹脂であっても使用でき、その具体例については、上記ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂及びポリカーボネート樹脂等が使用できる。
その他の樹脂として好ましいものは、上記ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びそれらの併用であり、更に好ましくは上記ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、ビニル樹脂の併用である。
【0042】
その他の樹脂が本発明のポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂は結晶性のポリエステル樹脂でも非晶性のポリエステル樹脂でもよく、原料としては本発明のポリエステル樹脂で例示した従来から公知のアルコール成分及び/又はカルボン酸成分と同様のものを用いることができ、アルコール成分及びカルボン酸成分として好ましいものは上記本発明のポリエステル樹脂と同様であり、α-テルピニル構造を有するアルコール及びカルボン酸化合物を用いない以外は同様に製造することができる。
なお、本発明において「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC測定ともいう。)により得られる示差走査熱量曲線の昇温過程において、DSC曲線に極大があり、吸熱ピークを有することをいう。一方、「非晶性」とは、上記DSC曲線において、吸熱ピークを有しないことをいう。
【0043】
その他の樹脂がビニル樹脂である場合、ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーである。ビニルモノマーとしては、下記(1)~(10)が挙げられる。
(1)ビニル炭化水素
ビニル炭化水素としては、(1-1)脂肪族ビニル炭化水素、(1-2)脂環式ビニル炭化水素及び(1-3)芳香族ビニル炭化水素等が挙げられる。
(1-1)脂肪族ビニル炭化水素
脂肪族ビニル炭化水素としては、アルケン及びアルカジエン等が挙げられる。
アルケンの具体的な例としてはエチレン、プロピレン及びα-オレフィン等が挙げられる。
アルカジエンの具体的な例としてはブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等が挙げられる。
(1-2)脂環式ビニル炭化水素
脂環式ビニル炭化水素としては、モノ-もしくはジ-シクロアルケン及びアルカジエン等が挙げられ、具体的な例としては(ジ)シクロペンタジエン、テルペン等が挙げられる。
(1-3)芳香族ビニル炭化水素
芳香族ビニル炭化水素としては、スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体等が挙げられ、具体的にはα-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン及びビニルナフタレン等が挙げられる。
【0044】
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩
カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩としては、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)、不飽和ジカルボン酸(塩)ならびにその無水物(塩)及びそのモノアルキル(炭素数1~24)エステル又はその塩等が挙げられる。
具体的には、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー及びこれらの金属塩等が挙げられる。
【0045】
本発明において「(塩)」とは、化合物の塩を意味する。
例えば不飽和モノカルボン酸(塩)とは、不飽和モノカルボン酸あるいはその塩を意味する。
【0046】
本発明において「(メタ)アクリル」とは、メタクリルあるいはアクリルを意味する。
本発明において「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイルあるいはアクリロイルを意味する。
本発明において「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートあるいはアクリレートを意味する。
【0047】
(3)スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩
スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩としては、炭素数2~14のアルケンスルホン酸(塩)、炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリルアミド(塩)及びアルキルアリルスルホコハク酸(塩)等が挙げられる。
具体的には、炭素数2~14のアルケンスルホン酸としてはビニルスルホン酸(塩)等が挙げられ、炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)としてはα-メチルスチレンスルホン酸(塩)等が挙げられ、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)もしくは(メタ)アクリルアミド(塩)としてはスルホプロピル(メタ)アクリレート(塩)、硫酸エステル(塩)もしくはスルホン酸基含有ビニルモノマー(塩)等が挙げられる。
【0048】
(4)燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩:
燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩としては、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)燐酸モノエステル(塩)及び(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)等が挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)燐酸モノエステル(塩)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート(塩)及びフェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート(塩)等が挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)の具体例としては、2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸(塩)等が挙げられる。
【0049】
上記(2)~(4)の塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩及び4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0050】
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー
ヒドロキシル基含有ビニルモノマーとしては、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール、2-ブテン-1,4-ジオール、プロパルギルアルコール、2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及び蔗糖アリルエーテル等が挙げられる。
【0051】
(6)含窒素ビニルモノマー
含窒素ビニルモノマーとしては、(6-1)アミノ基含有ビニルモノマー、(6-2)アミド基含有ビニルモノマー、(6-3)ニトリル基含有ビニルモノマー、(6-4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー及び(6-5)ニトロ基含有ビニルモノマー等が挙げられる。
(6-1)アミノ基含有ビニルモノマーとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(6-2)アミド基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド及びN-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
(6-3)ニトリル基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアクリレート等が挙げられる。
(6-4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びジアリルアミン等の3級アミン基含有ビニルモノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等が挙げられる。
(6-5)ニトロ基含有ビニルモノマーとしてはニトロスチレン等が挙げられる。
【0052】
(7)エポキシ基含有ビニルモノマー
エポキシ基含有ビニルモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びp-ビニルフェニルプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0053】
(8)ハロゲン元素含有ビニルモノマー
ハロゲン元素含有ビニルモノマーとしては、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロロスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、テトラフルオロスチレン及びクロロプレン等が挙げられる。
【0054】
(9)(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン
(9-1)(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、例えば炭素数1~50のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、及びベヘニル(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
(9-2)ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
(9-2)ビニル(チオ)エーテルとしては、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル-2-エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル-2-ブトキシエチルエーテル、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、ビニル-2-エチルメルカプトエチルエーテル、アセトキシスチレン、及びフェノキシスチレン等が挙げられる。
(9-3)ビニルケトンとしては、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、及びビニルフェニルケトン等が挙げられる。
【0055】
(10)その他のビニルモノマー
その他のビニルモノマーとしては、テトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート及びm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0056】
ビニル樹脂の合成には、上記(1)~(10)のビニルモノマーの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ビニル樹脂としては、粒度分布及び帯電性の観点から好ましくはスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、更に好ましくはスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。
【0057】
本発明のトナーは、必要により公知の、着色剤、離型剤、荷電制御剤、流動化剤などの種々の添加剤等を含んでもよい。
【0058】
着色剤としては黒色着色剤、青色着色剤、赤色着色剤及び黄色着色剤からなる群より選ばれる1種類以上を含有することが好ましい。着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。
具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ソルベントイエロー(21、77及び114等)、ピグメントイエロー(12、14、17及び83等)、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトアニリンレッド、トルイジンレッド、ソルベントレッド(17、49、128、5、13、22及び48・2等)、ディスパースレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ソルベントブルー(25、94、60及び15・3等)、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト及びニッケル等の強磁性金属の粉末、マグネタイト、ヘマタイト並びにフェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂とその他の樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは1~40重量部、より好ましくは2~15重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、磁性粉の含有量は、本発明のポリエステル樹脂とその他の樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは20~150重量部、より好ましくは30~120重量部である。
【0059】
離型剤としては、天然ワックス(蜜ろう、カルナバワックス及びモンタンワックス等)、石油ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びペトロラタム等)、合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び酸化ポリプロピレンワックス等)、及び合成エステルワックス(炭素数10~30の脂肪酸と炭素数10~30のアルコールから合成される脂肪酸エステル等)等が挙げられ、これらの離型剤からなる群より選ばれる1種類以上を含有することが好ましい。離型剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂とその他の樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは0~30重量部、より好ましくは0.5~20重量部、さらに好ましくは1~10重量部である。
【0060】
上記離型剤を使用する際必要により、変性ワックスを併用してもよい。変性ワックスは、離型剤にビニルポリマー鎖がグラフトしたものである。変性ワックスに用いられる離型剤としては上記離型剤と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。変性ワックスのビニルポリマー鎖を構成するビニルモノマーとしては、スチレン、メタクリル酸エステル等が挙げられる。ビニルポリマー鎖はビニルモノマーの単独重合体でもよいし、共重合体でもよい。前記変性ワックスの含有量は、本発明のポリエステル樹脂とその他の樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは0~15重量部、より好ましくは0.5~10重量部、さらに好ましくは1~5重量部である。
【0061】
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよく、例えば、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニ
ウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。荷電制御剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂とその他の樹脂の合計100重量部に対して、0~20重量部であってよく、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.5~7.5重量部である。
【0062】
流動化剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。トナーの帯電性の観点からシリカが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。流動化剤の含有量は、本発明のトナーの合計100重量部に対して、0~10重量部であってよく、好ましくは0~5重量部、より好ましくは0.1~4重量部である。
【0063】
また、着色剤、離型剤、荷電制御剤、流動化剤などの添加剤の合計重量はトナーの重量に基づき、3~70重量%であってよく、好ましくは4~58重量%、より好ましくは5~50重量%である。
【0064】
トナーの製造方法については特に制限はなく、公知の混練粉砕法、特公昭36-10231号公報、特開昭59-53856号公報、特開昭59-61842号公報に記載されている懸濁重合法、単量体には可溶で水溶性重合開始剤の存在下で直接重合させてトナーを生成するソープフリー重合法に代表される乳化重合法、マイクロカプセル製法のような界面重合法、insite重合法、コアセルベーション法、特開昭62-106473号公報や特開昭63-186253号公報に開示されている様な少なくとも1種以上の微粒子を凝集させ所望の粒径のものを得る乳化凝集法、単分散を特徴とする分散重合法、非水溶性有機溶媒に必要な樹脂類を溶解させた後水性媒体中で樹脂粒子化する溶解懸濁法やエステル伸長重合法により得られたものであってもよいし、超臨界状態の二酸化炭素中で分散する方法により製造してもよい。
【0065】
本発明における水性媒体としては、水を必須構成成分とする液体であれば制限なく使用でき、後述する、水、有機溶剤の水溶液、界面活性剤(s)の水溶液、水溶性ポリマー(t)の水溶液及びこれらの混合物等が用いることができる。
水性媒体中で本発明のポリエステル樹脂を含む分散体を安定して形成させる方法としては、水性媒体中に上記ポリエステル樹脂を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
その他の樹脂を用いる場合、あらかじめ上記ポリエステル樹脂等とその他の樹脂とを混合し、水性媒体中に分散することができる。
その他の樹脂を微粒子として用いる場合は、樹脂の微粒子は、水性媒体中で微粒子を形成することができ、また本発明のポリエステル樹脂に吸着するものであれば特に限定されない。
【0066】
樹脂の微粒子を製造する方法は、特に限定されないが、以下の[1]~[2]が挙げられる。
[1]ビニル樹脂の場合において、モノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法等の重合反応により、直接、樹脂の微粒子分散液を製造する方法。
[2]ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びエポキシ樹脂等の重付加又は縮合樹脂の場合において、前駆体(モノマー及びオリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤存在下で媒体中に分散させ、その後に加熱したり、硬化剤を加えて硬化させ樹脂の微粒子分散体を製造する方法。
【0067】
上記[1]又は[2]の方法において、併用する乳化剤又は分散剤としては、後述に記載の公知の界面活性剤(s)、水溶性ポリマー(t)等を用いることができる。また、乳化又は分散の助剤として後述に記載の有機溶剤等を併用することができる。
【0068】
本発明においては、着色剤、離型剤、変性ワックス及び荷電制御剤等の他の原料は、必ずしも、水性媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0069】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2~20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、一般的に1000~30000rpm、好ましくは5000~20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、一般的に0.1~5分である。
分散装置は、例えばホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー[特殊機化工業(株)製]等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー[(株)荏原製作所製]、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー[特殊機化工業(株)製]、コロイドミル[神鋼パンテック(株)製]、ウルトラビスコミル(アイメックス製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機[三井三池化工機(株)製]、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル[太平洋機工(株)製]等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー[みずほ工業(株)製]、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機[冷化工業(株)製]等の膜乳化機、バイブロミキサー[冷化工業(株)製]等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。これらのうち粒径の均一性の観点から好ましいのは、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス及びTKパイプラインホモミキサーである。
【0070】
本発明のポリエステル樹脂等を水性媒体に分散させる際、前記ポリエステル樹脂等は液体であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂等が常温で固体である場合には、融点以上の高温下で液体の状態で分散させたり、前記ポリエステル樹脂等の有機溶剤溶液を用いてもよい。有機溶剤を用いた方が粒度分布がシャープになる点で好ましい。
【0071】
有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素溶剤、脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤、ハロゲン溶剤、エステル又はエステルエーテル溶剤、エーテル溶剤、ケトン溶剤、アルコール溶剤、アミド溶剤、スルホキシド溶剤、複素環式化合物溶剤及びこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
有機溶剤の具体例としては、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等);脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤(n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等);塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等のハロゲン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等のエステル又はエステルエーテル溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール及びベンジルアルコール等のアルコール溶剤;ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等のアミド溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤、N-メチルピロリドン等の複素環式化合物溶剤、並びにこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。上記の有機溶剤の中でも沸点が100℃未満の揮発性のあるものが好ましい。好ましい有機溶剤としては、酢酸エチル、アセトン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
【0072】
本発明のポリエステル樹脂等を水性媒体に分散させる際、併用する乳化剤又は分散剤としては、公知の界面活性剤(s)を用いることができる。界面活性剤(s)を用いた方がトナーの体積平均粒径が小さくなり易い点で好ましい。
【0073】
界面活性剤(s)としては、特に限定されず、アニオン界面活性剤(s-1)、カチオン界面活性剤(s-2)、両性界面活性剤(s-3)及び非イオン界面活性剤(s-4)等が挙げられる。界面活性剤(s)は2種以上の界面活性剤を併用したものであってもよい。
【0074】
アニオン界面活性剤(s-1)としては、カルボン酸又はその塩、硫酸エステル塩、カルボキシメチル化物の塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤(s-2)としては、4級アンモニウム塩型界面活性剤及びアミン塩型界面活性剤等が挙げられる。
両性界面活性剤(s-3)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤等が挙げられる。
非イオン界面活性剤(s-4)としては、AO付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコ-ル型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
これらの界面活性剤(s)の具体例としては、特開2002-284881号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0075】
水性媒体としての水100重量部に対する界面活性剤(s)の使用量は、好ましくは0~300重量部、更に好ましくは0.001~10重量部、特に好ましくは0.01~5重量部である。
【0076】
本発明のポリエステル樹脂等を水性媒体に分散させる際、併用する乳化剤又は分散剤としては、公知の水溶性ポリマー(t)を用いることができる。水溶性ポリマー(t)を用いた方がトナーの体積平均粒径が小さくなり、粒度分布(体積平均粒子径/個数平均粒子径)小さくなり易い点で好ましい。
【0077】
水溶性ポリマー(t)としては、セルロース化合物(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びそれらのケン化物等)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、アクリル酸(塩)含有ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸の水酸化ナトリウム部分中和物及びアクリル酸ナトリウム-アクリル酸エステル共重合体等)、スチレン-無水マレイン酸共重合体の水酸化ナトリウム(部分)中和物、水溶性ポリウレタン(ポリエチレングリコール、及びポリカプロラクトンジオール等とポリイソシアネートの反応生成物等)等が挙げられる。
【0078】
水性媒体としての水100重量部に対する水溶性ポリマー(t)の使用量は、好ましくは0~5重量部である。
【0079】
本発明のポリエステル樹脂は、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされるトナー用原料である。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる。
【0080】
本発明のトナーは電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像又は磁気潜像の現像用に用いられる。更に詳しくは、特にフルカラー用に好適な静電荷像又は磁気潜像の現像に用いられるトナーに関する。
【実施例
【0081】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り「部」は重量部を示す。
【0082】
ポリエステル樹脂及びトナー等の各物性値については次の方法により測定した。
【0083】
[測定方法]
<酸価及び水酸基価>
JIS K0070に規定の方法で測定した。ただし、酸価の測定溶媒はアセトン、メタノール及びトルエンの混合溶媒(アセトン:メタノール:トルエン=12.5:12.5:75)、水酸基価の測定溶媒はTHFとした。
【0084】
<数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)>
樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、それを試料溶液として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
装置:HLC-8120〔東ソー(株)製〕
カラム:TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のTHF溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別したもの)
溶液注入量:100μL
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
【0085】
<分散液の固形分濃度及び揮発分>
トナー又は樹脂微粒子等の沈澱が起こらないよう注意しながら、乾燥前の試料2.00gをはかりとり、120℃で1時間の条件で乾燥し、乾燥後の試料を取り出し重量を小数点第2位まで測定し、(乾燥後の試料の重量/乾燥前の試料の重量)×100から固形分濃度(重量%)を算出し、{(乾燥前の試料の重量-乾燥後の試料の重量)/乾燥前の試料の重量}×100から揮発分(重量%)を算出した。
【0086】
<樹脂微粒子分散液の体積基準のメジアン径>
樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は、動的光散乱式粒子径分布測定装置「SZ-100」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
樹脂微粒子分散液をイオン交換水で100倍希釈して25℃に温調後、ディズポーサブルセル(四面透明)に充填した。次に、測定モードを粒子径測定モードにし、体積基準のメジアン径を測定した。
【0087】
<結晶性ポリエステル分散液及び着色剤分散液の体積基準のメジアン径>
結晶性ポリエステル分散液及び着色剤分散液の体積基準のメジアン径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置「LA-920」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
樹脂微粒子分散液を酢酸エチルで回折光強度が測定レンジとなるように希釈して、25℃で、体積基準のメジアン径を測定した。
【0088】
<トナーの体積平均粒径(D50)(μm)、個数平均粒径(μm)、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)>
コールターカウンター[商品名:マルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)]を用いて測定した。
まず、電解水溶液であるISOTON-II(ベックマン・コールター社製)100~150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1~5mL加えた。さらに測定試料を2~20mg加え、試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして50μmアパーチャーを用いて、トナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出した。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(D50)(μm)、個数平均粒径(μm)、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)を求めた。
【0089】
<製造例1>[2-α-テルピノキシ-コハク酸の合成]
撹拌装置を備えた2Lの反応容器に、アセトン1000部、リンゴ酸268部、無水塩化鉄(III)10部およびα-ピネン408部を仕込み、撹拌しながら60℃で24時間反応した。反応後、水500部を加えて、エバポレーターでアセトンを留去し、トルエン1000部を加え分液操作で上層を回収、硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後のろ液を乾固することで、α-テルピニル構造を有するカルボン酸化合物である、2-α-テルピノキシ-コハク酸480部を得た。
【0090】
<製造例2>[3-α-テルピノキシ-1,2-プロパンジオールの合成]
撹拌装置を備えた1Lの反応容器に、アセトン290部、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール132部、無水塩化鉄(III)3部およびテレビン油(α-ピネン80%、β-ピネン20%の混合物)136部を仕込み、撹拌しながら25℃で24時間反応した。反応後、水300部を加え、60℃で6時間反応させた後、60℃のまま減圧下でアセトンを留去し、トルエン1000部を加え分液操作で上層を回収、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、トルエンを留去することで、α-テルピニル構造を有するアルコール化合物である、3-α-テルピノキシ-1,2-プロパンジオール205部を得た。
【0091】
<実施例1>[非晶性ポリエステル(L-1)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、プロピレングリコール295部、製造例1で得た2-α-テルピノキシ-コハク酸860部、コハク酸71部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、200℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で無水トリメリット酸38部を入れ、さらに、常圧下180℃で反応させ、酸価が18mgKOH/gになった時点で取り出し、非晶性ポリエステル(L-1)を得た。
【0092】
<実施例2>[非晶性ポリエステル(L-2)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、製造例2で得た3-α-テルピノキシ-1,2-プロパンジオール521部、テレフタル酸367部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、220℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で無水トリメリット酸27部を入れ、さらに、常圧下180℃で反応させ、酸価が18mgKOH/gになった時点で取り出し、非晶性ポリエステル(L-2)を得た。
【0093】
<実施例3>[非晶性ポリエステル(L-3)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、回収PET(ポリエチレンテレフタレート)399部、3-α-テルピノキシ-1,2-プロパンジオール247部、ネオペンチルグリコール113部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧下220℃で3時間解重合し、その後0.5~2.5kPaの減圧下220℃でエチレングリコールを留去しながら反応させ、水酸基価が45mgKOH/g未満になった時点で無水トリメリット酸22部を入れ、さらに、常圧下180℃で反応させ、酸価が18mgKOH/gになった時点で取り出し、非晶性ポリエステル(L-3)を得た。
【0094】
<実施例4>[非晶性ポリエステル(L-4)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、3-α-テルピノキシ-1,2-プロパンジオール495部、2-α-テルピノキシ-コハク酸563部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、220℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で無水トリメリット酸33部を入れ、さらに、常圧下180℃で反応させ、酸価が18mgKOH/gになった時点で取り出し、非晶性ポリエステル(L-4)を得た。
【0095】
<実施例5>[非晶性ポリエステル(L-5)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、プロピレングリコール292部、製造例1で得た2-α-テルピノキシ-コハク酸848部、テレフタル酸98部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、200℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で無水トリメリット酸37部を入れ、さらに、常圧下180℃で反応させ、酸価が18mgKOH/gになった時点で取り出し、非晶性ポリエステル(L-5)を得た。
【0096】
<実施例6>[非晶性ポリエステル(L-6)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、プロピレングリコール397部、製造例1で得た2-α-テルピノキシ-コハク酸288部、コハク酸63部、テレフタル酸575部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、200℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で無水トリメリット酸37部を入れ、さらに、常圧下180℃で反応させ、酸価が18mgKOH/gになった時点で取り出し、非晶性ポリエステル(L-6)を得た。
【0097】
<比較例1>[比較用非晶性ポリエステル(LR-1)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、プロピレングリコール381部、テレフタル酸534部、コハク酸61部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、230℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で無水トリメリット酸25部を入れ、さらに、常圧下180℃で反応させ、酸価が18mgKOH/gになった時点で取り出し、非晶性ポリエステル(LR-1)を得た。
【0098】
<比較例2>[比較用非晶性ポリエステル(LR-2)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物677部、テレフタル酸294部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、230℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で無水トリメリット酸29部を入れ、さらに、常圧下180℃で反応させ、酸価が18mgKOH/gになった時点で取り出し、非晶性ポリエステル(LR-2)を得た。
【0099】
実施例1~6で得られた非晶性ポリエステル(L-1)~(L-6)及び比較例1~2で得られた比較用非晶性ポリエステル(LR-1)~(LR-2)の組成及び物性を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
<製造例3>[結晶性ポリエステル(C-1)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に1,6-ヘキサンジオール434部、セバシン酸686部、及び縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート1.5部を入れ、220℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら8時間反応させた。その後、0.001~0.026MPaの減圧下、水を除去しながら反応させ、結晶性ポリエステル(C-1)を得た。該樹脂のMnは4500、Mwは15000、融点(Tm)は68℃、酸価は1mgKOH/g、水酸基価は21mgKOH/gであった。
【0102】
<製造例4>[結晶性ポリエステル分散液(CDO-1)の製造]
冷却管、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計の付いた反応容器中に、結晶性ポリエステル(C-1)10部及び酢酸エチル90部を投入し、78℃に昇温して同温度で3時間間撹拌した後、1時間かけて30℃まで冷却して結晶性ポリエステル(C-1)を微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミル((株)アイメックス製)で湿式粉砕し、結晶性ポリエステル分散液(CDO-1)を得た。結晶性ポリエステル分散液(CDO-1)の「LA-920」で測定した体積基準のメジアン径は0.25μmであった。
【0103】
<製造例5>[樹脂微粒子の水性分散液(OW-1)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計をセットした反応容器に、水790部、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業(株)製、エレミノールJS-20)5部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。これを加熱して、系内温度75℃まで昇温させた後、10重量%過硫酸アンモニウム水溶液5部を加えてから、スチレン89.6部、ブチルアクリレート49.0部、及びメタクリル酸61.4部からなるモノマー混合液を2時間かけて滴下した。滴下後、75℃で10時間熟成させることで樹脂微粒子を含む微粒子分散液(OW-1)1000部を得た。微粒子分散液に含まれる微粒子の体積基準のメジアン径は0.047μmであった。また微粒子分散液の一部を乾燥して樹脂を単離した。該樹脂分のMnは30900、Mwは321000、Tgは60℃、酸価は200mgKOH/gであった。
【0104】
<製造例6>[変性ワックス(WD-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、キシレン454部、低分子量ポリエチレン「サンワックスLEL-400」[軟化点:128℃、三洋化成工業(株)製]150部を投入し、窒素置換後撹拌下170℃に昇温し、同温度でスチレン595部、メタクリル酸メチル255部、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート34部及びキシレン119部の混合溶液を3時間かけて滴下し、更に同温度で30分間保持した。次いで0.039MPaの減圧下でキシレンを留去し、変性ワックスを得た。変性ワックスのMnは1,900、Mwは5,200、Tgは56.9℃であった。
【0105】
<製造例7>[離型剤分散液(WO-1)の製造]
冷却管、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計の付いた反応容器中に、パラフィンワックス「HNP-9」[融点:73℃、日本精蝋(株)製]10部、製造例6で得た変性ワックス(WD-1)5部及び酢酸エチル85部を投入し、78℃に昇温して同温度で3時間間撹拌した後、1時間かけて30℃まで冷却して離型剤を微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミル((株)アイメックス製)で湿式粉砕し、離型剤分散液(WO-1)を得た。離型剤分散液(WO-1)の「LA-920」で測定した体積基準のメジアン径は0.25μmであった。
【0106】
<製造例8>[着色剤分散液(PO-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管および温度計を備えた反応容器に、カーボンブラック「MA100」[三菱化学(株)製]20部と着色剤分散剤「ソルスパーズ28000」[アビシア(株)製]4部、及び酢酸エチル56部を投入し、撹拌して均一分散させた後、ビーズミルによって顔料を微分散して、着色剤分散液(PO-1)を得た。着色剤分散液(PO-1)の「LA-920」で測定した体積基準のメジアン径は0.2μmであった。
【0107】
<実施例7>[トナー(T-1)の作製]
製造例5で得た水性分散液(OW-1)、実施例1で得た非晶性ポリエステル(L-1)、製造例8で得た着色剤分散液(PO-1)、製造例7で得た離型剤分散液(WO-1)及び製造例4で得た結晶性ポリエステル分散液(CDO-1)を用い、以下の方法(溶解懸濁法)によりトナーを得た。
ビーカーにイオン交換水330部、樹脂微粒子の水性分散液(OW-1)30部、カルボキシメチルセルロースナトリウム2部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム「エレミノールMon-7」[三洋化成工業(株)製]52部及び酢酸エチル28部を投入し、均一に混合させた水溶液を得た。次いで別のビーカーに非晶性ポリエステル(L-1)90部、着色剤分散液(PO-1)32部、離型剤分散液(WO-1)40部及び結晶性ポリエステル分散液(CDO-1)100部を混合し、非晶性ポリエステルが溶解した樹脂分散液を作製した。この分散液を先ほど作成した水溶液に全量加えてTKオートホモミキサーで2分間撹拌下して混合液を得た。次いでこの混合液を攪拌機および温度計を備えた反応器に移し、50℃で濃度が0.5重量%以下となるまで酢酸エチルを留去して複合化工程を行い樹脂粒子の水性樹脂分散体を得た。次いで樹脂粒子を濾過と水による洗浄を3回繰り返したあと、濾別し、40℃の送風循環式乾燥機で18時間乾燥を行い、揮発分を0.5重量%以下とした本発明のトナー用ポリエステル樹脂(L-1)を含む樹脂粒子を得た。ついで、樹脂粒子100部と疎水性シリカ「アエロジルR-972」[日本アエロジル(株)製]1部とをサンプルミルにて混合して、本発明のトナー(T-1)を得た。
【0108】
<実施例8> [トナー(T-2)の製造]
非晶性ポリエステルを実施例2で得た非晶性ポリエステル(L-2)に変更する以外は実施例7と同様に製造し、本発明のトナー用ポリエステル樹脂(L-2)を含むトナー(T-2)を得た。
【0109】
<実施例9> [トナー(T-3)の製造]
非晶性ポリエステルを実施例3で得た非晶性ポリエステル(L-3)に変更する以外は実施例7と同様に製造し、本発明のトナー用ポリエステル樹脂(L-3)を含むトナー(T-3)を得た。
【0110】
<実施例10> [トナー(T-4)の製造]
非晶性ポリエステルを実施例4で得た非晶性ポリエステル(L-4)に変更する以外は実施例7と同様に製造し、本発明のトナー用ポリエステル樹脂(L-4)を含むトナー(T-4)を得た。
【0111】
<実施例11> [トナー(T-5)の製造]
非晶性ポリエステルを実施例5で得た非晶性ポリエステル(L-5)に変更する以外は実施例7と同様に製造し、本発明のトナー用ポリエステル樹脂(L-5)を含むトナー(T-5)を得た。
【0112】
<実施例12> [トナー(T-6)の製造]
非晶性ポリエステルを実施例6で得た非晶性ポリエステル(L-6)に変更する以外は実施例7と同様に製造し、本発明のトナー用ポリエステル樹脂(L-6)を含むトナー(T-6)を得た。
【0113】
<比較例3> [トナー(TR-1)の製造]
非晶性ポリエステルを比較例1で得た非晶性ポリエステル(LR-1)に変更する以外は実施例7と同様に製造し、トナー用ポリエステル樹脂(LR-1)を含むトナー(TR-1)を得た。
【0114】
<比較例4> [トナー(TR-2)の製造]
非晶性ポリエステルを比較例2で得た非晶性ポリエステル(LR-2)に変更する以外は実施例7と同様に製造し、トナー用ポリエステル樹脂(LR-2)を含むトナー(TR-2)を得た。
【0115】
実施例及び比較例のトナー(T-1)~(T-6)及び(TR-1)~(TR-2)の低温定着性、耐熱保存性を以下の方法で評価した。それぞれのトナーの配合量、物性及び評価結果を表2に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
<低温定着性>
トナーを紙面上に0.8mg/cmとなるように均一に載せる。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いる。上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい。
この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cmの条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
低温定着性のこの評価条件では125℃以下が好ましいとされる。
◎:105℃以下
○:106~115℃
△:116~125℃
×:126℃以上
【0118】
<耐湿熱保存性>
トナー(T-1)~(T-6)、(TR-1)~(TR-2)を、40℃、相対湿度80%の雰囲気で20時間静置し、ブロッキングの程度により下記の基準で耐湿熱保存安定性を評価した。
[評価基準]
◎:ブロッキングが発生しない。
○:ブロッキングが発生するが、力を加えると容易に分散する。
×:ブロッキングが発生し、力を加えても分散しない。
【0119】
本発明のポリエステル樹脂(L-1)~(L-6)を含む実施例のトナー(T-1)~(T-6)は低温定着性、耐熱湿保存性のいずれも優れた性能を示した。
一方で、ポリエステル樹脂(LR-1)および(LR-2)を使用したトナー(TR-1)および(TR-2)は、低温定着性、耐湿熱保存性が不良となった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、低温定着性と耐湿熱保存性とを高い水準で両立させることができ、電子写真、静電記録、静電印刷等に用いる静電荷像現像用トナーに用いる樹脂として極めて有用である。