(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】電解水生成装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20241113BHJP
A61M 1/16 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
C02F1/461 A
A61M1/16 161
(21)【出願番号】P 2023098190
(22)【出願日】2023-06-15
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】小泉 義信
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139475(JP,A)
【文献】特開2022-158297(JP,A)
【文献】特開2021-094539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/461
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水生成装置であって、
電解水を生成するための電解ユニットと、
前記電解ユニットで生成された前記電解水を貯蔵するためのタンクと、
前記タンクと前記電解ユニットとの間で前記電解水を循環させるための循環水路と、
前記循環水路に設けられたポンプと、
前記電解ユニット及び前記ポンプを制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、制御モードとして、
前記電解ユニットで電気分解を行なわず、かつ、前記タンク内に前記電解水を留めて待機する待機モードと、
前記ポンプを駆動して前記タンク内の電解水を循環させながら、前記電解ユニットで前記電解水を電気分解して前記タンクの前記電解水の溶存水素濃度を高めるための回復モードとを含み、
前記制御部は、前記待機モードで経過した非電解時間を計測する計測部と、少なくとも前記非電解時間を用いて、前記回復モードでの前記電解ユニットの
電解強度である出力を決定する決定部と、前記決定された出力で前記電解ユニットを運転する駆動部とを含む、
電解水生成装置。
【請求項2】
前記計測部は、前記回復モードで経過した電解時間を計測可能であり、
前記決定部は、予め定められた時間内において、前記非電解時間と、前記電解時間とに基づいて、前記回復モードでの前記電解ユニットの前記出力を決定する、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記決定部は、予め定められた時間内において、前記非電解時間の累積と、前記電解時間の累積との差に基づいて、前記回復モードでの前記電解ユニットの前記出力を決定する、請求項2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記差に比例して電解ユニットの前記出力を決定する、請求項3に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記決定部は、予め定められた時間内において、前記非電解時間の累積と、前記電解時間の累積との比に基づいて、前記回復モードでの前記電解ユニットの前記出力を決定する、請求項2に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記比に比例して前記電解ユニットの前記出力を決定する、請求項5に記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記電解ユニットと前記タンクとの間には、前記電解ユニットで生成された前記電解水を逆浸透処理するための逆浸透装置が設けられている、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項8】
前記タンクは、前記電解水に透析原剤を混合して透析液を調製するための透析液調製装置に前記電解水を供給可能に接続されている、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項9】
前記透析液調製装置は、前記制御部に対して前記回復モードの実行を要求する要求信号を送信する送信部を含み、
前記制御部は、前記要求信号を受け取って前記回復モードを実行する受信部とを含む、請求項8に記載の電解水生成装置。
【請求項10】
電解水生成装置の制御方法であって、
前記電解水生成装置は、
電解水を生成するための電解ユニットと、
前記電解ユニットで生成された前記電解水を貯蔵するためのタンクと、
前記タンクと前記電解ユニットとの間で前記電解水を循環させるための循環水路と、
前記循環水路に設けられたポンプと、
前記電解ユニット及び前記ポンプを制御するための制御部とを備え、
前記制御方法は、
前記電解ユニットで電気分解を行なわず、かつ、前記タンク内に前記電解水を留めて待機する待機モードと、
前記ポンプを駆動して前記タンク内の電解水を循環させながら、前記電解ユニットで前記電解水を電気分解して前記タンクの前記電解水の溶存水素濃度を高めるための回復モードとを含み、
前記回復モードは、
前記待機モードで経過した非電解時間を計測する第1工程と、
少なくとも前記非電解時間を用いて、前記回復モードでの前記電解ユニットの
電解強度である出力を決定する第2工程と、
前記決定された出力で前記電解ユニットを運転する第3工程とを含む、
電解水生成装置の制御方法。
【請求項11】
前記第1工程は、前記回復モードで経過した電解時間を計測し、
前記第2工程は、予め定められた時間内において、前記非電解時間の累積と、前記電解時間の累積との差に比例して電解ユニットの前記出力を決定する、請求項10に記載の電解水生成装置の制御方法。
【請求項12】
前記第1工程は、前記回復モードで経過した電解時間を計測し、
前記第2工程は、予め定められた時間内において、前記非電解時間の累積と、前記電解時間の累積との比に比例して前記電解ユニットの前記出力を決定する、請求項10に記載の電解水生成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電解水生成装置によって生成された電解水を用いた透析治療が注目されている。例えば、水を電気分解することによって生成された水素ガスが溶け込んだ電解水素水が、患者の酸化ストレスの低減に寄与することが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大規模な病院等においては、多数の患者に対して同時に透析治療が行なわれる。このため、電解水生成装置には、大量の電解水を蓄えるためのタンクが備えられている。
【0005】
一方、透析治療は、通常、常時行なわれることはなく、タンク内の電解水が消費されない時間帯も存在する。このような時間帯では、電解水の溶存水素濃度の過度な上昇を抑制するため、タンク-電解ユニット間での電解水の循環及び電解ユニットでの電気分解は停止され、タンク内の電解水は、タンク内に留められ電気分解が行なわれることなく待機している。
【0006】
しかしながら、待機状態の電解水から溶け込んだ水素ガスが抜けることにより、溶存水素濃度が徐々に低下する。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、待機状態の電解水の溶存水素濃度を速やかに回復できる電解水生成装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電解水生成装置であって、
電解水を生成するための電解ユニットと、
前記電解ユニットで生成された前記電解水を貯蔵するためのタンクと、
前記タンクと前記電解ユニットとの間で前記電解水を循環させるための循環水路と、
前記循環水路に設けられたポンプと、
前記電解ユニット及び前記ポンプを制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、制御モードとして、
前記電解ユニットで電気分解を行なわず、かつ、前記タンク内に前記電解水を留めて待機する待機モードと、
前記ポンプを駆動して前記タンク内の電解水を循環させながら、前記電解ユニットで前記電解水を電気分解して前記タンクの前記電解水の溶存水素濃度を高めるための回復モードとを含み、
前記制御部は、前記待機モードで経過した非電解時間を計測する計測部と、少なくとも前記非電解時間を用いて、前記回復モードでの前記電解ユニットの出力を決定する決定部と、前記決定された出力で前記電解ユニットを運転する駆動部とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の前記電解水生成装置は、前記制御部が前記待機モードで経過した前記非電解時間に基づいて前記回復モードでの前記電解ユニットの出力を決定する。これにより、待機状態の電解水の溶存水素濃度を速やかに回復可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の電解水生成装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の電解水生成方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図2の回復モードの手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の電解水生成装置の変形例のブロック図である。
【
図7】
図6の電解水生成装置の変形例のブロック図である。
【
図8】
図7の制御部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の電解水生成装置1の概略構成を示している。電解水生成装置1は、電解水を生成するための装置であり、透析液を調製するための透析液調製装置100に接続される。電解水生成装置1は、生成した電解水を透析液調製装置100に供給する。
【0012】
電解水生成装置1は、電解水を生成するための電解ユニット3と、電解水を貯蔵するためのタンク5と、電解水を循環させるための循環水路6と、循環水路に設けられたポンプ7と、電解ユニット3等を制御するための制御部8とを備える。
【0013】
図2は、電解ユニット3を示している。電解ユニット3は電解槽4を含んでいる。透析液調製装置100によって調製された透析液が多人数の患者の透析に用いられる場合、
図2に示されるように、電解ユニット3は、複数の電解槽4を含むように構成されるのが望ましい。複数の電解槽4は、流路として互いに並列に接続されている。このような複数の電解槽4を同時に運転することにより、迅速に大量の電解水が生成される。
【0014】
電解槽4は、電解室40と、陽極給電体41と、陰極給電体42と、隔膜43とを含んでいる。電解室40は、隔膜43によって、陽極給電体41が配された陽極室40aと陰極給電体42が配された陰極室40bとに区分される。前処理水は、例えば、二股に分岐する流路(図示せず)を介して、陽極室40a及び陰極室40bに供給される。
【0015】
原水には、一般的には水道水が利用されるが、その他、例えば、井戸水、地下水等を用いることができる。陽極室40a及び陰極室40bには、電気分解される原水が供給される。原水は軟水化等の前処理が施されたうえで、陽極室40a及び陰極室40bに供給される。
【0016】
陽極給電体41と陰極給電体42との間に印加される電圧は、制御部8によって制御される。制御部8は、陽極給電体41及び陰極給電体42に供給される電解電流が予め設定された所望の値となるように、陽極給電体41及び陰極給電体42に印加する電解電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、制御部8は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、制御部8は、上記電圧を増加させる。これにより、電解電流が適切に制御される。
【0017】
電解槽4で電気分解された電解水のうち、陰極室40bで生成された電解水は陰極水としてタンク5に送られる。一方、陽極室40aで生成された電解水は陽極水として、電解水生成装置1の外部に排出される。
【0018】
電解槽4内で水が電気分解されることにより、陽極室40aで酸素ガスが発生し、陰極室40bで水素ガスが発生する。
【0019】
陽極室40aで発生した酸素ガスは、陽極室40a内の電解水に溶け込んで、陽極水として陽極室40aから取り出され、電解水生成装置1の外部に排出される。
【0020】
陰極室40bで発生した水素ガスは、陰極室40b内の電解水に溶け込んで、陰極水として陰極室40bから取り出され、タンク5に送られる。すなわち、陰極室40bからタンク5に送られる陰極水は、陰極室40bで電気分解され、水素ガスが溶け込んだ電解水素水である。
【0021】
図1において、タンク5は、電解ユニット3から供給された電解水を貯蔵する。これにより、一度に大量の電解水を透析液調製装置100に供給することが可能となる。電解水が透析治療に用いられる場合、陰極室40bで生成された電解水がタンク5に供給される。電解水が透析治療以外の用途に用いられる場合、陽極室40aで生成された電解水がタンク5に供給されてもよい。
【0022】
循環水路6は、タンク5と電解ユニット3との間で電解水を循環させる。循環水路6には、ポンプ7が設けられている。ポンプ7は、制御部8によって制御され、循環水路6内の電解水を駆動する。これにより、電解ユニット3からタンク5に供給された電解水が、タンク5から電解ユニット3へと駆動され、循環水路6内を循環する。
【0023】
電解水が循環水路6内を循環する際に、制御部8は、電解ユニット3を駆動し、電気分解を実行する。これにより、電解水の溶存水素濃度が高められる。例えば、透析治療の準備をする際、透析液調製装置100の運転を開始する前に、タンク5に蓄えられた電解水を循環させながら追加的に電気分解を実行することにより、電解水の溶存水素濃度を十分に高めることができる。
【0024】
制御部8は、電解水生成装置1の各部の制御を司る。制御部8は、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUの動作を司るプログラム及び各種の情報を記憶するメモリ等とを有している。制御部8の各種の機能は、CPU、メモリ及びプログラムによって実現される。
【0025】
本実施形態の制御部8は、電解水生成装置1の制御モードとして、待機モードと回復モードとを含んでいる。
【0026】
待機モードとは、電解ユニット3で電気分解を行なわず、かつ、タンク5内に電解水を留めて待機するモードである。患者や病院の都合上、通常、透析治療には多少の待ち時間が生ずる。待ち時間においては、電解水生成装置1は待機モードに移行して、待機している。長時間にわたって待機モードが継続すると、タンク5内の電解水の溶存水素濃度が徐々に低下する。このため、必要に応じて回復モードが実行される。
【0027】
回復モードとは、上記待機モードで低下した溶存水素濃度を回復させるためのモードである。回復モードでは、ポンプ7を駆動してタンク5内の電解水を循環させながら、電解ユニット3で電解水を電気分解する。これにより、タンク5内の電解水の溶存水素濃度を所望のレベルまで回復させることができる。
【0028】
透析液調製装置100は、電解水生成装置1から供給された電解水に透析原剤を混合して透析液を調製するための装置である。電解水に混合される透析原剤は、液状の他、粉末状のものが適用される。電解水生成装置1を構成するタンク5は、透析液調製装置100に電解水を供給可能に接続されている。本実施形態では、タンク5と透析液調製装置100とを接続する水路9が、電解水生成装置1から延出されている。
【0029】
透析液調製装置100によって調製された透析液は、透析装置(図示せず)に送られる。透析装置は、透析液供給装置とダイアライザーとを含んでいる。透析液供給装置は、透析液調製装置100から供給された透析液をダイアライザーに送出する。ダイアライザーは、例えば、中空糸膜等の多孔質膜によって構成された透析膜を含む人工腎臓であり、透析膜を介して透析液調製装置100から供給された透析液を透析治療の患者の血液に作用させ、血液から老廃物及び水分を除去する。
【0030】
透析液は、透析治療の直前に調製される。一方、透析液の調製に用いられる電解水は、例えば、病院の開院時に予め生成され、透析治療が開始されるまでタンク5に貯蔵される。この間、制御部8は、電解水生成装置1を上述した待機モードで待機させる。その後、制御部8は、必要に応じて、待機モードで低下した溶存水素濃度を回復モードで回復させる。例えば、待機モードで経過した時間が短い場合、溶存水素濃度の低下は生じないため、回復モードに移行する必要はない。しかしながら、待機モードで経過した時間が長くなると、溶存水素濃度の低下が生ずるため、回復モードに移行する。
【0031】
図3は、制御部8の構成を示している。制御部8は、待機モードで経過した非電解時間を計測する計測部81と、回復モードでの電解ユニット3の出力を決定する決定部82と、決定された出力で電解ユニット3を運転する駆動部83とを含んでいる。計測部81、決定部82及び駆動部83は、上述したCPU、メモリ等のハードウェアとプログラム(ソフトウェア)との協同によって実現されるが、ハードウェア回路によって実現されていてもよい。
【0032】
計測部81は、時間を計数する機能を備え、待機モードで経過した非電解時間を計測する。決定部82は、計測部81によって計測された非電解時間を用いて、回復モードでの電解ユニット3の出力を決定する。そして、駆動部83は、決定部82によって決定された出力で電解ユニット3を運転する。
【0033】
例えば、計測部81によって計測された非電解時間が長い場合、タンク5内の溶存水素濃度の低下傾向が強いと考えられる。この場合、決定部82は、回復モードでの電解ユニット3の出力を高くして、駆動部83を介して電解ユニット3の出力を高める。これにより、待機状態の電解水の溶存水素濃度を速やかに回復可能となる。
【0034】
電解ユニット3の出力とは、電解ユニット3による電解強度であり、陽極給電体41及び陰極給電体42に供給される電解電流である。電解電流は、陽極給電体41と陰極給電体42との間に印加する電解電圧を高めることにより増加する。電解ユニット3が複数の電解槽4を含む場合は、各陽極給電体41及び陰極給電体42に供給される電解電流の総和となる。
【0035】
決定部82が回復モードでの電解ユニット3の出力を決定する際に用いられるパラメーター(変数)は、非電解時間に限られない。決定部82は、待機モードで経過した非電解時間に加え、回復モードで経過した過去の電解時間をも考慮して、回復モードでの電解ユニット3の出力を決定してもよい。回復モードで経過した電解時間は、例えば、計測部81によって計測される。すなわち、決定部82は、予め定められた時間内において、非電解時間と、電解時間とに基づいて、回復モードでの電解ユニット3の出力を決定するように構成されていてもよい。
【0036】
より具体的には、決定部82は、予め定められた時間内における、非電解時間の累積T1と、電解時間の累積T2との差T1-T2に基づいて、回復モードでの電解ユニット3の出力を決定する、ように構成されていてもよい。上記予め定められた時間は、現在(回復モードに移行する時点)から遡った時間である。
【0037】
例えば、上記差T1-T2が大きい場合、電解水の溶存水素濃度の低下傾向が強いと考えられる。この場合、決定部82は、回復モードでの電解ユニット3の出力を高く設定することにより、電解水の溶存水素濃度を速やかに回復可能となる。例えば、決定部82は、電解ユニットの出力を差T1-T2に比例するように決定することにより、電解水の溶存水素濃度の低下傾向に応じて適切な電解ユニット3の出力を決定できる。
【0038】
より具体的には、上記差T1-T2=T1(すなわち、T2=0)のとき、決定部82は、電解ユニットの出力を最大値となるように決定する。一方、上記差T1-T2=-T2(すなわち、T1=0)のとき、決定部82は、電解ユニットの出力を最小値となるように決定する。上記差T1-T2が-T2からT1の間の値であるときは、電解ユニットの出力は、最小値から最大値の間の値に決定される。
【0039】
また、決定部82は、予め定められた時間内における、非電解時間の累積T1と、電解時間の累積T2との比T1/T2に基づいて、回復モードでの電解ユニット3の出力を決定する、ように構成されていてもよい。
【0040】
例えば、上記比T1/T2が大きい場合、電解水の溶存水素濃度の低下傾向が強いと考えられる。この場合、決定部82は、回復モードでの電解ユニット3の出力を高く設定することにより、電解水の溶存水素濃度を速やかに回復可能となる。例えば、決定部82は、電解ユニット3の出力を比T1/T2に比例するように決定することにより、電解水の溶存水素濃度の低下傾向に応じて適切な電解ユニット3の出力を決定できる。
【0041】
より具体的には、上記比T1/T2=∞(すなわち、T2=0)のとき、決定部82は、電解ユニットの出力を最大値となるように決定する。一方、上記比T1/T2=0(すなわち、T1=0)のとき、決定部82は、電解ユニットの出力を最小値となるように決定する。上記比T1/T2が0から∞の間の値であるときは、電解ユニットの出力は、最小値から最大値の間の値に決定される。
【0042】
また、決定部82は、上記差T1-T2及び上記比T1/T2の組み合わせに基づいて、回復モードでの電解ユニット3の出力を決定する、ように構成されていてもよい。
【0043】
また、電解時間の累積T1及び電解時間の累積T2と電解ユニット3の出力とを関係付けるマップを予め制御部8のメモリに記憶させておき、決定部82が当該マップを参照して電解ユニット3の出力を決定してもよい。当該マップは、書き換え可能であることが望ましい。
【0044】
図4は、電解水生成装置1を用いた電解水生成方法である電解水生成装置1の制御方法200の手順を示している。
【0045】
制御方法200は、制御部8の制御モードとして、待機モードM1と回復モードM2とを含んでいる。待機モードM1と回復モードM2とは交互に実行される。
【0046】
電解水生成装置1は、待機モードM1で待機中に、電解水生成装置1の外部から発信された回復モードの実行を要求する要求信号を受信すると(S1においてYES)、回復モードM2に移行する。
【0047】
【0048】
回復モードM2は、待機モードで経過した非電解時間を計測する第1工程S10と、回復モードでの電解ユニットの出力を決定する第2工程S20と、決定された出力で電解ユニットを運転する第3工程S30とを含んでいる。
【0049】
第1工程S10は、計測部81が待機モードM1で経過した非電解時間を計測することにより実現される。第2工程S20は、決定部82が少なくとも非電解時間を用いて、回復モードでの電解ユニットの出力を決定することにより実現される。第3工程S30は、駆動部83が、電解ユニット3を決定部82によって決定された出力で運転することにより実現される。
【0050】
第1工程S10では、計測部81が回復モードM2で経過した電解時間を計測してもよい。これにより、第2工程S20において、決定部82は、待機モードM1で経過した非電解時間に加え、回復モードで経過した過去の電解時間をも考慮して、回復モードM2での電解ユニット3の出力を決定できる。
【0051】
例えば、第2工程S20では、決定部82は、予め定められた時間内において、非電解時間の累積T1と、電解時間の累積T2との差に比例して電解ユニット3の出力を決定することができる。
【0052】
また、第2工程S20では、決定部82は、予め定められた時間内において、非電解時間の累積T1と、電解時間の累積T2との比に比例して電解ユニット3の出力を決定することができる。
【0053】
また、第2工程S20では、決定部82は、上記差T1-T2及び上記比T1/T2の組み合わせに基づいて、回復モードでの電解ユニット3の出力を決定する、ように構成されていてもよい。
【0054】
図6は、
図1の電解水生成装置1の変形例である電解水生成装置1Aのブロック図である。電解水生成装置1Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1の構成が採用されうる。
【0055】
電解水生成装置1Aは、逆浸透装置10を含む点で電解水生成装置1とは異なっている。逆浸透装置10は、電解ユニット3とタンク5との間に配設されている。逆浸透装置10は、例えば、逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュールを備え、電解ユニット3で生成された電解水を逆浸透処理することにより、浄化する。このような電解水生成装置1Aは、逆浸透電解装置とも称される。
【0056】
逆浸透装置10は、電解ユニット3の上流側に配されていてもよい。本実施形態では、電解ユニット3とタンク5との間に逆浸透装置10が配設されていることにより、タンク5に貯蔵される直前の電解水が、逆浸透膜を透過する際に浄化される。
【0057】
図7は、
図6の電解水生成装置1Aの変形例である電解水生成装置1Bのブロック図である。電解水生成装置1Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1Aの構成が採用されうる。
【0058】
電解水生成装置1Bは、電解水生成装置1Bと透析液調製装置100Bとが通信可能である点で電解水生成装置1Aとは異なっている。通信の形態は、有線であってもよく、無線であってもよい。透析液調製装置100Bは、送信部101を含み、電解水生成装置1Bは受信部84を含む。
【0059】
送信部101は、電解水生成装置1Bの制御部8Bに対して回復モードの実行を要求する要求信号を送信する。例えば、透析液調製装置100Bは、電解水生成装置1Bのタンク5から供給される電解水の溶存水素濃度が低下している場合、電解水生成装置1Bの制御部8に対して要求信号を定期的に送信する。
【0060】
図8は、電解水生成装置1Bの制御部8Bを示している。制御部8Bは、透析液調製装置100Bの送信部101から送信された要求信号を受信する受信部84を含んでいる。受信部84は、要求信号を受け取って回復モードを実行する。より具体的には、受信部84は、受け取った要求信号を計測部81に転送する。
【0061】
制御部8Bにおいて、計測部81は、要求信号を計数し、その信号数に基づいて非電解時間の累積T1、電解時間の累積T2を計測できる。
【0062】
以上、本発明の電解水生成装置1等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【0063】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0064】
[本発明1]
電解水生成装置であって、
電解水を生成するための電解ユニットと、
前記電解ユニットで生成された前記電解水を貯蔵するためのタンクと、
前記タンクと前記電解ユニットとの間で前記電解水を循環させるための循環水路と、
前記循環水路に設けられたポンプと、
前記電解ユニット及び前記ポンプを制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、制御モードとして、
前記電解ユニットで電気分解を行なわず、かつ、前記タンク内に前記電解水を留めて待機する待機モードと、
前記ポンプを駆動して前記タンク内の電解水を循環させながら、前記電解ユニットで前記電解水を電気分解して前記タンクの前記電解水の溶存水素濃度を高めるための回復モードとを含み、
前記制御部は、前記待機モードで経過した非電解時間を計測する計測部と、少なくとも前記非電解時間を用いて、前記回復モードでの前記電解ユニットの出力を決定する決定部と、前記決定された出力で前記電解ユニットを運転する駆動部とを含む。
[本発明2]
前記計測部は、前記回復モードで経過した電解時間を計測可能であり、
前記決定部は、予め定められた時間内において、前記非電解時間と、前記電解時間とに基づいて、前記回復モードでの前記電解ユニットの前記出力を決定する、本発明1に記載の電解水生成装置。
[本発明3]
前記決定部は、予め定められた時間内において、前記非電解時間の累積と、前記電解時間の累積との差に基づいて、前記回復モードでの前記電解ユニットの前記出力を決定する、本発明2に記載の電解水生成装置。
[本発明4]
前記決定部は、前記差に比例して電解ユニットの前記出力を決定する、本発明3に記載の電解水生成装置。
[本発明5]
前記決定部は、予め定められた時間内において、前記非電解時間の累積と、前記電解時間の累積との比に基づいて、前記回復モードでの前記電解ユニットの前記出力を決定する、本発明2に記載の電解水生成装置。
[本発明6]
前記決定部は、前記比に比例して前記電解ユニットの前記出力を決定する、本発明5に記載の電解水生成装置。
[本発明7]
前記電解ユニットと前記タンクとの間には、前記電解ユニットで生成された前記電解水を逆浸透処理するための逆浸透装置が設けられている、本発明1に記載の電解水生成装置。
[本発明8]
前記タンクは、前記電解水に透析原剤を混合して透析液を調製するための透析液調製装置に前記電解水を供給可能に接続されている、本発明1に記載の電解水生成装置。
[本発明9]
前記透析液調製装置は、前記制御部に対して前記回復モードの実行を要求する要求信号を送信する送信部を含み、
前記制御部は、前記要求信号を受け取って前記回復モードを実行する受信部とを含む、本発明8に記載の電解水生成装置。
[本発明10]
電解水生成装置の制御方法であって、
前記電解水生成装置は、
電解水を生成するための電解ユニットと、
前記電解ユニットで生成された前記電解水を貯蔵するためのタンクと、
前記タンクと前記電解ユニットとの間で前記電解水を循環させるための循環水路と、
前記循環水路に設けられたポンプと、
前記電解ユニット及び前記ポンプを制御するための制御部とを備え、
前記制御方法は、
前記電解ユニットで電気分解を行なわず、かつ、前記タンク内に前記電解水を留めて待機する待機モードと、
前記ポンプを駆動して前記タンク内の電解水を循環させながら、前記電解ユニットで前記電解水を電気分解して前記タンクの前記電解水の溶存水素濃度を高めるための回復モードとを含み、
前記回復モードは、
前記待機モードで経過した非電解時間を計測する第1工程と、
少なくとも前記非電解時間を用いて、前記回復モードでの前記電解ユニットの出力を決定する第2工程と、
前記決定された出力で前記電解ユニットを運転する第3工程とを含む、
電解水生成装置の制御方法。
[本発明11]
前記第1工程は、前記回復モードで経過した電解時間を計測し、
前記第2工程は、予め定められた時間内において、前記非電解時間の累積と、前記電解時間の累積との差に比例して電解ユニットの前記出力を決定する、本発明10に記載の電解水生成装置の制御方法。
[本発明12]
前記第1工程は、前記回復モードで経過した電解時間を計測し、
前記第2工程は、予め定められた時間内において、前記非電解時間の累積と、前記電解時間の累積との比に比例して前記電解ユニットの前記出力を決定する、本発明10に記載の電解水生成装置の制御方法。
【符号の説明】
【0065】
1 :電解水生成装置
1A :電解水生成装置
1B :電解水生成装置
3 :電解ユニット
5 :タンク
6 :循環水路
7 :ポンプ
8 :制御部
8B :制御部
9 :水路
10 :逆浸透装置
81 :計測部
82 :決定部
83 :駆動部
84 :受信部
100 :透析液調製装置
100B :透析液調製装置
101 :送信部
M1 :待機モード
M2 :回復モード
S10 :第1工程
S20 :第2工程
S30 :第3工程
【要約】
【課題】待機状態の電解水の溶存水素濃度を速やかに回復できる電解水生成装置を提供する。
【解決手段】電解水生成装置1は、電解ユニット3と、タンク5と、循環水路6と、ポンプ7と、電解ユニット3及びポンプ7を制御するための制御部8とを備える。制御部8は、制御モードとして、電解ユニット3で電気分解を行なわず、タンク5内に電解水を留めて待機する待機モードと、ポンプ7を駆動して電解水を循環させながら、電解ユニット3で電解水を電気分解してタンク5の電解水の溶存水素濃度を高めるための回復モードとを含む。制御部8は、待機モードでの非電解時間を計測する計測部81と、回復モードでの電解ユニット3の出力を決定する決定部82と、電解ユニット3を運転する駆動部83とを含む。
【選択図】
図1