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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】生産設備
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/00 20060101AFI20241113BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B23Q7/00 E
B23Q17/24 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023173006
(22)【出願日】2023-10-04
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】笠原 忠
(72)【発明者】
【氏名】平嶋 純也
(72)【発明者】
【氏名】古田 恵
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/109980(WO,A1)
【文献】特開2022-079224(JP,A)
【文献】特開平11-019737(JP,A)
【文献】特開2008-114957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00
B23Q 17/24
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被加工物サイズ制限以下の大きさの被加工物を加工することができる工作機械と、
前記被加工物を載置するパレットを格納する置台と、
前記置台が複数配置され、前記被加工物が載置された前記パレットを前記工作機械へ搬入、又は、前記工作機械から搬出するパレット供給装置と、
前記第1の被加工物サイズ制限以下の、少なくとも1つの第2の被加工物サイズ制限を予め定め、複数の各前記パレットについて、前記パレットに載置された前記被加工物が前記第2の被加工物サイズ制限を超える大きさか否かを記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記第2の被加工物サイズ制限を超える大きさについての情報に基づいて、隣り合う前記置台において前記パレットに載置された前記被加工物が互いに干渉することを回避するように前記パレットを前記置台に格納する、前記パレット供給装置を制御する制御装置と、
を備えた生産設備。
【請求項2】
前記第1の被加工物サイズ制限は前記工作機械の最大加工サイズであり、前記第2の被加工物サイズ制限は前記パレットに載置された前記被加工物のパレット上被加工物最大サイズであり、前記パレット上被加工物最大サイズは、前記最大加工サイズ以下である、請求項1に記載の生産設備。
【請求項3】
前記パレット供給装置の所定の位置、又は、前記パレット供給装置に隣接して設けられたワーク段取り装置に、前記パレットに載置された前記被加工物を撮像するための撮像装置が配置されている、請求項2に記載の生産設備。
【請求項4】
前記撮像装置から得られた前記被加工物のサイズが、前記パレット上被加工物最大サイズ、又は、前記最大加工サイズを超える大きさか否かに応じて、警告を発出し、前記被加工物及び前記生産設備内の他の構成要素との干渉のリスクをオペレータに通知するように構成されている、請求項3に記載の生産設備。
【請求項5】
前記被加工物の大きさが、前記パレット上被加工物最大サイズを超える場合は、オペレータの判断によって、前記パレット上被加工物最大サイズを超える前記被加工物の載置を許可できるように構成されている、請求項4に記載の生産設備。
【請求項6】
前記撮像装置から得られた画像を前記工作機械及び前記パレット供給装置の操作画面に表示するように構成されている、請求項5に記載の生産設備。
【請求項7】
1つの前記記憶装置には前記パレット上被加工物最大サイズが複数記憶されており、各前記パレットは、記憶された複数の前記パレット上被加工物最大サイズのうちの何れかが設定されている、請求項6に記載の生産設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産設備に関する。
【背景技術】
【0002】
生産設備では、大量の被加工物を効率的に取り扱うために、工作機械の近くに加工する予定の被加工物を予め待機させておくことが一般的であり、このため、被加工物を固定したパレットを格納するためのパレット供給装置を工作機械に隣接して配置する場合がある。パレット供給装置に格納されるパレットには、生産計画に応じて様々な大きさの被加工物が固定される。このため、パレットに固定された様々な大きさの被加工物を安全かつ効率的に加工するためには、ワークセッティングステーション及び加工室とパレット供給装置との間でパレットの受け渡しをする際に、隣り合うパレット上の被加工物が互いに干渉しないように注意を払う必要がある、すなわち、監視及び確認をする必要がある。
【0003】
しかしながら、例えば、特許文献1に開示されているような、回転テーブルの回転軸線に平行な方向からパレットに固定されたワークを撮像する撮像装置を備えた工作機械システムでは、1つのパレット及びこれに固定されたワークと主軸工具との位置関係を確認するためだけに用いられているため、隣り合うパレットに固定された被加工物同士の干渉は確認できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6563037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、最大サイズの異なる被加工物を格納可能なパレット供給装置において、被加工物の干渉によって生産設備の稼働が滞ることを防止又は抑制することのできる生産設備の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様によれば、第1の被加工物サイズ制限以下の大きさの被加工物を加工することができる工作機械と、被加工物を載置するパレットを複数格納し、被加工物が載置されたパレットを工作機械へ搬入、又は、工作機械から搬出するパレット供給装置と、第1の被加工物サイズ制限以下の、少なくとも1つの第2の被加工物サイズ制限を予め定め、複数の各パレットについて、パレットに載置された被加工物が第2の被加工物サイズ制限を超える大きさか否かを記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶された第2の被加工物サイズ制限を超える大きさの情報に基づいて、隣り合うパレットに載置された被加工物が互いに干渉することを回避するようにパレット供給装置を制御する制御装置と、を備えた生産設備が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一の態様に係る生産設備によると、工作機械が加工することができる第1の被加工物サイズ制限以下の被加工物を載置するパレットを複数格納し、被加工物が載置されたパレットを工作機械へ搬入、又は、工作機械から搬出するパレット供給装置を備える。また、第1の被加工物サイズ制限以下の、少なくとも1つの第2の被加工物サイズ制限を予め定め、複数の各パレットについて、パレットに載置された被加工物が第2の被加工物サイズ制限を超える大きさか否かを記憶する記憶装置と、制御装置とを備える。制御装置は、記憶装置に記憶された第2の被加工物サイズ制限を超える大きさについての情報に基づいて、隣り合うパレットに載置された被加工物が互いに干渉することを回避するようにパレット供給装置を制御することができる。このため、被加工物の干渉によって生産設備の稼働が滞ることを防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る生産設備の平面図を示す。
図2図2は、第2の被加工物サイズ制限を小さくすることによってパレット供給装置に格納するパレットの数を増やした生産設備の平面図を示す。
図3図3は、第2の被加工物サイズ制限の異なるワークがパレット供給装置に混在する生産設備の平面図を示す。
図4図4は、第2の被加工物サイズ制限を超えるワークがパレットに載置される場合の生産設備の平面図を示す。
図5図5は、パレット上のワークを撮像する撮像装置の側面図を示す。
図6図6は、撮像装置によって撮像され、操作画面に表示される画像の表示例を示す。
図7図7は、パレット供給装置の制御方法のフローチャートを示す。
図8図8は、ワークローディングステーションを備える、第1の変形例に係る生産設備の平面図を示す。
図9図9は、パレットマガジンが固定されている、第2の変形例に係る生産設備の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る生産設備を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。
【0010】
図1に、様々な大きさの多種の被加工物を生産加工するための生産設備10の概略的な平面図を示す。また、生産設備10は、被加工物としてのワークW(図4及び図6参照)を加工するための工作機械12を備えた加工室14と、加工室14に隣接して配置され、ワークWを載置し、固定するパレットPを格納するためのパレットマガジン18を備えたパレット供給装置16とを備える。加工室14とパレット供給装置16とは、境界部に開閉可能に形成された加工室扉20を通じてアクセス可能に構成されている。
【0011】
工作機械12は、ここでは、横形のマシニングセンタとされており、設置場所(工場等)の床面に固定されたベッド22と、ベッド22の上面側に配置されたコラム24とを備える。また、工作機械12は、ベッド22の上面におけるコラム24の前方側(図中のパレット供給装置16側)に、前後方向、すなわちZ軸方向に沿って延在する一対のZ軸ガイドレール26と、Z軸ガイドレール26に沿って往復動可能に構成されたZ軸スライダ28とを備える。なお、Z軸スライダは、この上に載置したパレットPを回動可能に構成された回転テーブルを備えてもよい。
【0012】
さらに、工作機械12は、ベッド22の上面に左右方向、すなわちX軸方向に沿って延在する一対のX軸ガイドレール30を備え、コラム24は、X軸ガイドレール30に沿って往復動可能となるようにX軸ガイドレール30上に配置されている。また、工作機械12は、コラム24の前面には、上下方向、すなわちY軸方向に沿って延在する一対のY軸ガイドレール(図示省略)と、Y軸ガイドレールに沿って往復動可能に構成されたY軸スライダ32とを備える。さらに、工作機械12は、コラム24をX軸ガイドレール30に沿って駆動させるためのX軸送り装置、Y軸スライダ32をY軸ガイドレールに沿って駆動させるためのY軸送り装置、及び、Z軸スライダ28をZ軸ガイドレール26に沿って駆動させるためのZ軸送り装置(いずれも図示省略)を備える。
【0013】
Y軸スライダ32の前方側には、水平方向に沿った中心軸周りに回転可能に構成された主軸36を支持する主軸頭34が配置されている。主軸36の前方側には、ワークWを加工するための工具TLが脱着可能に取り付けられている。工作機械12は、主軸頭34と電気的に接続され、加工を制御するためのNC装置38を備えており、工具TLを用いたワークWの加工を制御可能に構成されている。工作機械12は、第1の被加工物サイズ制限としての最大加工サイズMPまでの大きさのワークWを加工可能に構成されている
【0014】
生産設備10は、工作機械12における加工に必要な複数の工具TLを収納するための工具マガジン40と、NC装置38と電気的に接続され、NC装置38からの指令に基づいて工具マガジン40に収納された工具TLの1つと工作機械12の主軸36の先端に装着された工具TLとを交換するための工具交換装置42とを備える。
【0015】
加工室14の前方側には、パレットPを格納するためのパレットマガジン18を備えたパレット供給装置16が隣接して配置されている。パレット供給装置16の外壁16aには、開閉可能な外部扉44が形成されており、外部扉44を通じてパレット供給装置16の外側からアクセスすることができる。これによって、オペレータは、外部扉44を開いて、パレットPをパレットマガジン18に補充し、ワークWをパレットPに治具(図示省略)で固定することができる。
【0016】
パレットマガジン18は、平面視で円環形状のマガジン本体46と、マガジン本体46上に複数配置され、パレットPを載置するための置台48とを備える。置台48は、図示しない駆動装置によってマガジン本体46上を周回(図中、矢印)可能に構成されており、加工室扉20側及び外部扉44側へ置台48を移動させることができる。このため、加工室14及びパレット供給装置16の外側と置台48に載置された、又は、載置するパレットPの受け渡しをすることができる。
【0017】
パレット供給装置16は、マガジン本体46上に複数配置された置台48ごとに、第2の被加工物サイズ制限としてのパレット上被加工物最大サイズMS、すなわち、置台48の上に載置されるパレットPに固定されるワークWの最大の大きさ(サイズ)を設定することができる。ここでは、パレット上被加工物最大サイズMSは、最大加工サイズMPよりも小さくなるように設定される。
【0018】
パレット供給装置16は、置台48ごとに、パレット上被加工物最大サイズMSを設定することができるため、図2に示すように、各置台48のパレット上被加工物最大サイズMSを小さく設定することで、隣り合うワークW同士を干渉させることなくマガジン本体46上の置台48に載置するパレットP及びワークWの数を増やすことができる(図2の場合、8個)。また、置台48ごとに異なるパレット上被加工物最大サイズMSを設定することによって、図3に示すように、隣り合うワークW同士を干渉させることなくマガジン本体46の置台48上に大小異なるサイズのワークWを載置することができる。さらに、図4に示すように、パレット供給装置16は、後述する制御装置62を用いることによって、パレット上被加工物最大サイズMSを超えるサイズであっても、最大加工サイズMPを下回るサイズのワークWを、隣り合うパレットP上のワークWとの干渉を回避した上でパレットPに固定し、工作機械12へ供給することができる。
【0019】
円環形状のマガジン本体46の内側には、アーム50が配置されている。アーム50は、パレット供給装置16の中心部において上下方向に沿って延在し、上下方向に沿った軸線周りに回転可能な支持軸52と、支持軸52に上下動可能に取り付けられ、水平方向に沿って伸縮可能に構成されたアーム本体54とを備える。また、アーム本体54の先端には、パレットPを把持するための把持部56が取り付けられている。このため、把持すべきパレットPへ向けて把持部56を回動させる共に、アーム本体54を伸縮することによって、把持部56の前後、左右及び上下位置を調整し、パレットPを安定して把持することができる。
【0020】
アーム50は、加工室扉20側のパレットPを把持した状態でZ軸スライダ28上までアーム本体54を伸縮できるように構成されている。これによって、パレット供給装置16と工作機械12との間で加工前後のワークWが固定されたパレットPを受け渡しすることができる。
【0021】
図1に示すように、パレット供給装置16の所定の位置に、パレットPに載置されたワークWを撮像するための撮像装置としてのカメラ58が配置されている。ここでいう、所定の位置とは、パレットPを上方側から撮像し、パレットPに固定されたワークW又はワークWを固定するための治具(図示省略)のサイズ又は位置が、パレット上被加工物最大サイズMS、又は、最大加工サイズMPを超えるか否かを判別することができる全ての位置を含む。なお、カメラ58は、パレット供給装置16内の外部扉44側に1台配置されているとして説明するが、これに限らず、カメラは、例えば、加工室扉側を含む複数の箇所に配置されてもよい。また、カメラ58はパレットPの上方側からワークWを撮像するものとして説明するが、これに限らず、例えば、カメラをパレットの上方側ではなく側方に配置し、ワークを側面から撮像してもよい。
【0022】
図5には、パレットP上のワークW(図示省略)を撮像するカメラ58の側面図を示す。カメラ58としては、ToF(Time of Flight)カメラやステレオカメラ等が用いられてよい。これによって、ワークWの形状を立体的に把握することができ、ワークWのサイズがパレット上被加工物最大サイズMSを超えるか否かを判定することができる。また、カメラに替えて3次元レーザ変位計を用いて、ワークWの3次元形状を3次元の点群データとして取得してもよい。点群データ内の点がパレット上被加工物最大サイズMSを超える位置に一定数以上存在するか否かで、ワークWのサイズがパレット上被加工物最大サイズMSを超えるか否かを判定することができる。
【0023】
図1に示すように、生産設備10のパレット供給装置16は、マガジン本体46上の隣り合うワークWの干渉を回避するための記憶装置60及び制御装置62を備える。記憶装置60は、置台48及びこの上に載置するパレットPごとにワークWのパレット上被加工物最大サイズMSを予め設定し、記憶しておくことができる。また、記憶装置60は、このようなパレット上被加工物最大サイズMSを複数個設定し、記憶しておくことができる。これによって、パレット供給装置16内にサイズの異なる大小のワークWを混在して載置する際に、パレットPごとにサイズの異なるパレット上被加工物最大サイズMSを設定し、隣り合うワークW同士を干渉させることなくマガジン本体46上の置台48に大小異なるサイズのワークWを載置することができる。さらに、記憶装置60は、カメラ58によって取得したパレットP上のワークWのサイズデータとパレットPごとのパレット上被加工物最大サイズMSを比較して、大小関係、すなわち、ワークWのサイズがパレット上被加工物最大サイズMSを超えるか否かを判定し、この大小関係を記憶するように構成されている。
【0024】
制御装置62は、記憶装置60に記憶されたパレットP上のワークWのサイズとパレットPごとのパレット上被加工物最大サイズMSとの大小関係に基づいて、隣り合うパレットPに載置されたワークWが互いに干渉することを回避できるようにパレット供給装置16を制御するように構成されている。具体的には、制御装置62は、カメラ58から得られたワークWのサイズが、パレット上被加工物最大サイズMS、又は、最大加工サイズMPを超えるサイズか否かに応じて、警告を発出し、ワークW及び工作機械12を構成する各要素との干渉のリスクをオペレータに通知するように構成されている。また、パレット供給装置16は、通知を受けたオペレータが、ワークWのサイズがパレット上被加工物最大サイズMSを超える場合であっても、このような大きいサイズのワークWをパレットP上に留めておくことを許可できるように構成されている。オペレータがこのような許可をした場合には、制御装置62は、隣接するパレットP上のワークWの大きさを制限し、制限したサイズを超えるワークWをパレットに載置することを禁止し、警告を発するように構成されている。
【0025】
制御装置62は、また、カメラ58から得られたワークWのサイズデータからワークWの重量を算出し、ワークWを固定したパレットPが載置された置台48がマガジン本体46上を周回する速度をワークWの重量に合わせて最適化することができる。これによって、パレットP上のワークWが周回する際の振動やガタツキを防止又は抑制し、隣り合うワークWの干渉を回避することができる。
【0026】
生産設備10のパレット供給装置16は、オペレータの確認及び判断を容易にするために、カメラ58から得られたパレットP及びワークWの画像を工作機械12及びパレット供給装置16の操作画面DPに表示するための表示装置64を備える。図6には、操作画面に表示した画像の一例を示す。操作画面DPには、ワークW及びパレットPの画像、パレット番号、撮像日時、サイズの判定結果を含む情報を表示することができる。サイズの判定結果は、オペレータが理解しやすいように短い言葉と簡潔な図形で表示されており、ワークWのサイズがパレット上被加工物最大サイズMS以下の場合は、例えば、「範囲内」と表示し、その下に円筒図形を破線で表示すると共に、円筒図形に重ねてレ点(チェックマーク)を表示する。また、ワークWのサイズがパレット上被加工物最大サイズMSを超える場合は、サイズを超えた部位に応じて、図6中の「範囲内」に代えて、例えば、「超過(高さ)」、「超過(幅)」及び「超過(高さと幅)」と表示すると共に、円筒図形で超過した部位を強調表示する。具体的には、例えば、高さが超過すれば円筒図形の上面を黄色で塗りつぶし、幅が超過すれば円筒図形の側面を黄色で塗りつぶし、又は、高さと幅が超過すれば円筒図形の上面と側面の両方を黄色で塗りつぶすといった強調表示を行う。さらに、ワークWの撮像に失敗した場合には、「計測失敗」と表示すると共に、破線で描いた円筒図形に重ねて!(感嘆符)を表示することができる。また、撮像が行われていない場合には、「計測未完了」と表示すると共に、破線で描いた円筒図形に重ねて?(疑問符)を表示することができる。オペレータは、これらの画像及び情報から、ワークWのサイズがどのような状態にあるかということを直ちに確認及び判断することができる。
【0027】
図7に示す、パレット供給装置16の制御装置62による制御のフローチャートの説明を通じて、本実施形態に係る生産設備10の作用効果を以下に説明する。
【0028】
制御装置62は、カメラ58によるワークWの撮像結果から、ワークWのサイズを判定できる程度にワークWの3次元データ(図中、ワーク3Dデータ)の取得に成功した場合は、ステップS10へ移行する。ステップS10へ移行すると、制御装置62は、記憶装置60を作動し、取得したワークWのサイズが、パレット上被加工物最大サイズMS又は最大加工サイズMPを超えるか否かを判定し、この大小関係を記憶装置60に記憶させる。取得したワークWのサイズが、最大加工サイズMPを超えていると、制御装置62は、ステップS20及びステップS30へ移行して、パレットPの加工室14内への搬出及び加工室14内からのパレットPの搬入を禁止し、警告表示を出す。
【0029】
取得したワークWのサイズが、最大加工サイズMPを下回っているものの、パレット上被加工物最大サイズMSを超えている場合には、制御装置62は、ステップS40へ移行し、オペレータに向けて警告を発出する。ここで、オペレータが、操作画面DPを通じて、被加工物最大サイズMSを超えているワークWをパレットPに固定したままにしておくことを許可した場合には、制御装置62は、ステップS50へ移行し、記憶装置60に記憶されたデータに基づいて、当該ワークW及びこれを固定する治具と他のワークW及び治具とが干渉する可能性の有無を予測する。
【0030】
他のワークW及び治具との干渉が予測される場合には、ステップS60及びステップS70へ移行し、機械加工を完了した後の当該ワークW及び治具が載置されたパレットPが、干渉が予測される他のワークW及び治具が載置されたパレットPの近隣の置台48へ返却されることを禁止して、オペレータへ向けて干渉が予測されることについての警告表示を発出する。一方、他のワークW及び治具との干渉が全く予測されない場合には、ステップS80及びステップS90へ移行し、機械加工を完了した後の当該ワークW及び治具が載置されたパレットPが、他のワークW及び治具が載置されたパレットPの近隣の置台48へ返却されることを禁止しない。
【0031】
取得したワークWのサイズが、最大加工サイズMPを下回っているものの、パレット上被加工物最大サイズMSを超えている場合において、オペレータが、被加工物最大サイズMSを超えているワークWをパレットPに固定したままにしておくことを許可せず、操作画面DPを通じて制御装置62にその旨を伝達した場合には、制御装置62は、ステップS100及びステップS110へ移行し、カメラ58が、外部扉44及び図8を用いて後述するワークセッティングステーション(WSS)とは別の場所に設置されている場合には、当該ワークW及び治具が配置されたパレットPを外部扉44の前のワークWの段取り位置へ戻す、又は、ワークセッティングステーション(WSS)を具備している場合であれば、ワークセッティングステーションWSSへ戻す。
【0032】
取得したワークWのサイズが、パレット上被加工物最大サイズMSを超えない場合には、制御装置62は、ステップS120へ移行し、記憶装置60に記憶されたデータに基づいて、当該ワークW及びこれを固定する治具と他のワークW及び治具とが干渉する可能性の有無を予測する。
【0033】
他のワークW及び治具との干渉が予測される場合には、ステップS130及びステップS140へ移行し、機械加工を完了した後の当該ワークW及び治具が載置されたパレットPが、干渉が予測される他のワークW及び治具が載置されたパレットPの近隣の置台48へ返却されることを禁止して、オペレータへ向けて干渉が予測されることについての警告表示を発出する。一方、他のワークW及び治具との干渉が全く予測されない場合には、ステップS150及びステップS160へ移行し、当該ワークW及び治具が載置されたパレットPの全ての移動を許可し、何らの警告も発出しない。
【0034】
また、制御装置62は、カメラ58によるワークWの撮像結果から、ワークWのサイズを判定できる程度にワークWの3次元データ(図中、ワーク3Dデータ)の取得に失敗したと判断した場合は、ステップS200及びステップS210へ移行し、オペレータへ向けてワークWの3次元データの取得が失敗していることを通知する。ここで、オペレータが、この通知を無視した場合は、制御装置62は、ステップS220及びステップS230へ移行し、当該ワークW及び治具が載置されたパレットPの全ての移動を許可して何らの制約を設けない。一方、オペレータが、この通知を受けた結果、操作画面DPを通じて制御装置62に再度の撮像を指示、すなわち伝達した場合には、ステップS240及びステップS250へ移行し、制御装置62は、カメラ58を作動し、ワークWを再度撮像し、ワークWの3次元データの再取得を試みる。
【0035】
本実施形態に係る生産設備10によれば、工作機械12が加工することができる最大加工サイズMP以下のワークWを載置するパレットPを複数格納し、ワークWが載置されたパレットPを工作機械12へ搬入、搬出するパレット供給装置16を備える。また、最大加工サイズMP以下の、少なくとも1つのパレット上被加工物最大サイズMSを予め定め、複数の各パレットPについて、パレットPに載置されたワークWがパレット上被加工物最大サイズMSを超える大きさか否かを記憶する記憶装置60と、制御装置62とを備える。制御装置62は、記憶装置60に記憶されたパレット上被加工物最大サイズMSを超える大きさについての情報に基づいて、隣り合うパレットPに載置されたワークWが互いに干渉することを回避するようにパレット供給装置16を制御することができる。このため、ワークWの干渉によって生産設備10の稼働が滞ることを防止又は抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る生産設備10によれば、パレット供給装置16の所定の位置には、パレットPに載置されたワークWを撮像するためのカメラ58が配置されている。これによって、ワークWのサイズがパレット上被加工物最大サイズMSを超えるか否かを簡便に判定することができる。また、制御装置62は、カメラ58から得られたワークWのサイズデータからワークWの重量を算出し、ワークWを固定したパレットPが載置された置台48がマガジン本体46上を周回する速度をワークWの重量に合わせて最適化することができる。これによって、パレットP上のワークWが周回する際の振動やガタツキを防止又は抑制し、隣り合うワークWの干渉を回避することができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係る生産設備10によれば、生産設備10のパレット供給装置16は、オペレータによる確認及び判断を容易にするために、カメラ58から得られたパレットP及びワークWの画像を工作機械12及びパレット供給装置16の操作画面DPに表示するための表示装置64を備える。このため、操作画面DPにワークW及びパレットPの画像、サイズの判定結果等を含む情報を表示することができ、オペレータは、これらの画像及び情報からワークWのサイズがどのような状態にあるかということを直ちに確認及び判断することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る生産設備10によれば、制御装置62は、カメラ58から得られたワークWのサイズが、パレット上被加工物最大サイズMS、又は、最大加工サイズMPを超える大きさか否かに応じて、警告を発出することができる。このため、ワークW同士の干渉やとワークWと工作機械12を収容する加工室14との干渉のリスクをオペレータに通知することができる。これによって、パレット供給装置16において、ワークWが他の構成要素と干渉することで工作機械12の稼働が滞ることを防止又は抑制することができる。
【0039】
さらに、本実施形態に係る生産設備10によれば、パレット供給装置16は、置台48ごとに、パレット上被加工物最大サイズMSを設定することができるため、各置台48のパレット上被加工物最大サイズMSを小さく設定することで、隣り合うワークW同士を干渉させることなくマガジン本体46上の置台48に載置するパレットP及びワークWの数を増やすことができる。また、置台48ごとに異なるパレット上被加工物最大サイズMSを設定することによって、隣り合うワークW同士を干渉させることなくマガジン本体46の置台48上に大小異なるサイズのワークWを載置することができる。これによって、生産計画に応じて、大小異なるサイズのワークWを干渉させることなくパレット供給装置16内に格納することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る生産設備10によれば、ワークWのサイズが、最大加工サイズMPを下回っているものの、パレット上被加工物最大サイズMSを超えている場合であっても、オペレータが確認し、他のワークW及び治具と干渉する可能性の有無を予測した上で、被加工物最大サイズMSを超えているワークWを取り扱うことができる。これによって、生産計画に応じて、大小異なるサイズのワークWを干渉させることなくパレット供給装置16内に格納することができる。
【0041】
以上の説明のとおり、本実施形態に係る生産設備10は、最大サイズの異なるワークWを格納可能なパレット供給装置16において、ワークWの干渉によって生産設備10の稼働が滞ることを防止又は抑制することができる。
【0042】
(第1変形例)
以下に、生産設備10の第1変形例について説明する。本実施形態と同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
図8に示すように、第1変形例に係る生産設備10のパレット供給装置80は、平面視で角丸長方形形状のマガジン本体82を備える。また、アーム84は、パレット供給装置80内の加工室扉20と対向する位置に配置されている。さらに、パレット供給装置80に隣接して、オペレータがパレット供給装置80と受渡しするパレットP及びワークWを段取り、すなわち載置するためのワーク段取り装置としてのワークセッティングステーション86が設置されている。ワークセッティングステーション86は、マガジン本体82へパレットPを移載できるように構成されている。このため、オペレータは、ワークセッティングステーション86のステーション扉88を開放し、パレットPに加工前のワークWを載置する、又は、パレットPから加工後のワークWと取り外すことによって、パレット供給装置80との間でワークWを受渡しすることができる。
【0044】
ワークセッティングステーション86内部の所定の位置には、ワークセッティングステーション86内のパレットPに載置されたワークWを撮像するための撮像装置としてのカメラ90が配置されている。このため、パレットPに載置されたワークWのサイズがパレット上被加工物最大サイズMSを超えるか否かを簡便に判定することができる。これによって、ワークセッティングステーション86へ移載されたワークWのサイズが、最大加工サイズMPを下回っているものの、パレット上被加工物最大サイズMSを超えている場合であっても、オペレータが確認し、他のワークW及び治具と干渉する可能性の有無を予測した上で、被加工物最大サイズMSを超えているワークWを取り扱うことができる。
【0045】
以上の説明のとおり、第1変形例に係る生産設備10は、最大サイズの異なるワークWを格納可能なパレット供給装置80において、ワークWの干渉によって生産設備10の稼働が滞ることを防止又は抑制することができる。
【0046】
(第2変形例)
以下に、生産設備10の第2変形例について説明する。本実施形態と同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
図9に示すように、第2変形例に係る生産設備10のパレット供給装置100の内部には、パレットP及びワークWを載置するための置台(図示省略)が上下方向に複数段にわたって形成された固定棚101が複数個配置されている。また、パレット供給装置100に隣接して、オペレータがパレット供給装置100と受渡しするパレットP及びワークWを載置するためのワーク段取り装置としてのワークセッティングステーション102が設置されている。このため、オペレータは、ワークセッティングステーション102のステーション扉104を開放し、固定棚101のパレットPに加工前のワークWを載置する、又は、固定棚101のパレットPから加工後のワークWと取り外すことによって、パレット供給装置100との間でワークWを受渡しすることができる。
【0048】
ワークセッティングステーション102から搬入されたパレットPは、アーム50によって、パレット供給装置80内の固定棚101へと移動される。また、固定棚101上のパレットP及びワークWは、アーム50の把持部56と加工室14に配置されたパレットチェンジャ108のチェンジャアーム112との間で受渡しされる。パレットチェンジャ108は、チェンジャ回転軸110周りに回動可能とされており、チェンジャアーム112で把持したワークWをパレット供給装置80内のアーム50とZ軸スライダ28との間で回動させることができる。
【0049】
ワークセッティングステーション102内部の所定の位置には、ワークセッティングステーション102内の固定棚101に載置されているパレットP上のワークWを撮像するための撮像装置としてのカメラ106が配置されている。このため、パレットPに載置されたワークWのサイズがパレット上被加工物最大サイズMSを超えるか否かを簡便に判定することができる。これによって、ワークセッティングステーション102へ移載されたワークWのサイズが、最大加工サイズMPを下回っているものの、パレット上被加工物最大サイズMSを超えている場合であっても、オペレータが確認し、他のワークW及び治具と干渉する可能性の有無を予測した上で、被加工物最大サイズMSを超えているワークWを取り扱うことができる。
【0050】
以上の説明のとおり、第2変形例に係る生産設備10は、最大サイズの異なるワークWを格納可能なパレット供給装置100において、ワークWの干渉によって生産設備10の稼働が滞ることを防止又は抑制することができる。
【0051】
なお、ここでは、第1の被加工物サイズ制限とは最大加工サイズMP、第2の被加工物サイズ制限とはパレット上被加工物最大サイズMSであるとして説明したが、これに限らず、第1の被加工物サイズ制限及び第2の被加工物サイズ制限として、機械加工できる最大のサイズよりも小さいサイズ及びパレット上に載置できる最大のサイズよりも小さいサイズが設定されてもよい。
【0052】
以上、生産設備10の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。上記のほか、当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解できると考えられる。
【符号の説明】
【0053】
10 生産設備
12 工作機械
16 パレット供給装置
58 カメラ(撮像装置)
60 記憶装置
62 制御装置
80 パレット供給装置
86 ワークセッティングステーション(ワーク段取り装置)
90 カメラ(撮像装置)
100 パレット供給装置
102 ワークセッティングステーション(ワーク段取り装置)
106 カメラ(撮像装置)
DP 操作画面
MP 最大加工サイズ(第1の被加工物サイズ制限)
MS パレット上被加工物最大サイズ(第2の被加工物サイズ制限)
P パレット
W ワーク(被加工品)
【要約】
【課題】最大サイズの異なる被加工物を格納可能なパレット供給装置において、被加工物の干渉によって生産設備の稼働が滞ることを防止又は抑制することのできる生産設備を提供する。
【解決手段】生産設備10は、第1の被加工物サイズ制限以下のワークWを加工できる工作機械12と、ワークWを載置するパレットPを複数格納し、パレットPを搬入出するパレット供給装置16と、第1の被加工物サイズ制限以下の、第2の被加工物サイズ制限を予め定め、複数の各パレットPについて、ワークWが第2の被加工物サイズ制限を超える大きさか否かを記憶する記憶装置60と、記憶装置60に記憶された第2の被加工物サイズ制限を超える大きさについての情報に基づいて、隣り合うパレットPに載置されたワークWが互いに干渉することを回避するようにパレット供給装置16を制御する制御装置62と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9