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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】換気装置および冷却具
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/14 20060101AFI20241113BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20241113BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
E04H15/14
F24F7/06 Z
F24F5/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023173994
(22)【出願日】2023-10-06
【審査請求日】2023-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380955
【氏名又は名称】日野 智晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(74)【代理人】
【識別番号】100220423
【弁理士】
【氏名又は名称】榊間 城作
(72)【発明者】
【氏名】日野 智晴
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-178007(JP,A)
【文献】特開2011-242075(JP,A)
【文献】実開昭63-156373(JP,U)
【文献】特開昭62-019629(JP,A)
【文献】特開2018-035648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/10-15/16
F24F 7/00-7/10
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テントを換気するための換気装置であって、
対向する第1面および第2面を有するケーシングと、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、
前記第2面に設けられた通気口と連通するように設置され、前記テントの内部と前記テントの外部との間に通気路を形成する通気部材を備え、
前記ファン設置部材には、
前記テント外の空気が前記通気部材を経て前記テント内に取り込まれるようファン設置することが可能であり、かつ、
前記テント内の空気が前記通気部材を経て前記テント外に排出されるようファンを設置することも可能であり、
前記第2面は、上部ほど前記通気部材とは離れる方向に傾斜している、換気装置。
【請求項2】
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、前記ファンの電源を設置するための場所を画定する電源設置部材を備え、
前記ファン設置部材には、
前記テント外の空気が前記通気部材を経て、前記電源設置部材に当たって前記テント内に取り込まれるようファン設置することが可能であり、かつ、
前記テント内の空気が前記電源設置部材に当たって、前記通気部材を経て前記テント外に排出されるようファンを設置することも可能である、請求項1に記載の換気装置。
【請求項3】
空気が前記電源設置部材に当たることにより、前記電源設置部材に設置された電源が冷却される、請求項2に記載の換気装置。
【請求項4】
前記通気路は、空気は通過できるが蚊が通過できないフィルタを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の換気装置。
【請求項5】
前記通気部材は、空気を冷却するための冷却機構を有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の換気装置。
【請求項6】
前記通気部材は、前記テントと前記テントの外部とを区切る天幕が位置合わせされるくびれ部が設けられ、
前記くびれ部において、前記通気部材の鉛直方向断面の下端における接線と、前記通気部材側の地面とのなす角が90度以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載の換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気装置および冷却具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、換気機能付きのテントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-99410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、換気機能が付いたテントであって、既存の機能に換気機能を付加することはできない。
【0005】
本発明の課題は、既存のテント等に付加してテント等の換気を行えるようにする換気装置を提供すること、また、そのような換気装置に適用可能な冷却具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示として、以下の解決手段が提供される。
【0007】
[1]
テントを換気するための換気装置であって、
対向する第1面および第2面を有するケーシングと、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、前記ファンの電源を設置するための場所を画定する電源設置部材と、
前記第2面に設けられた通気口と連通するよう設置され、前記テントの内部と前記テントの外部との間に通気路を形成する通気部材と、を備え、
前記ファン設置部材は、設置されるファンの回転中心を含む水平面が、前記通気口の上端を含む水平面より高い位置となるように設けられ、
前記ファン設置部材には、
前記テント外の空気が前記通気部材を経て、前記電源設置部材に当たって前記テント内に取り込まれるようファン設置することが可能であり、かつ、
前記テント内の空気が前記電源設置部材に当たって、前記通気部材を経て前記テント外に排出されるようファンを設置することも可能であり、
前記第2面は、上部ほど前記通気部材とは離れる方向に傾斜しており、
前記通気部材は、前記テントと前記テントの外部とを区切る天幕が位置合わせされるくびれ部が設けられ、
前記くびれ部において、前記通気部材の鉛直方向断面の下端における接線と、前記通気部材側の地面とのなす角が90度以下であり、
前記通気路は、空気は通過できるが蚊が通過できないフィルタを含み、
前記通気部材は、冷却機構として、
ポリウレタン製あるいはポリエステル製のスポンジ素材である冷却具本体と、
綿、PVAまたはセルロースであり、少なくとも一部が前記冷却具本体に埋め込まれる吸水性部材と、
前記冷却具本体に水を供給する供給部材と、を有する、換気装置。
【0008】
[2]
換気対象空間を換気するための換気装置であって、
対向する第1面および第2面を有するケーシングと、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、
前記第2面に設けられた通気口と連通するように設置され、前記換気対象空間の内部と前記換気対象空間の外部との間に通気路を形成する通気部材と、を備え、
前記ファン設置部材は、設置されるファンの回転中心を含む水平面が、前記通気口の上端を含む水平面より高い位置となるように設けられる、換気装置。
【0009】
[3]
前記ファン設置部材は、設置されるファンの下端を含む水平面が、前記通気口の上端を含む水平面より高い位置となるように設けられる、[2]に記載の換気装置。
【0010】
[4]
換気対象空間を換気するための換気装置であって、
対向する第1面および第2面を有するケーシングと、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、
前記第2面に設けられた通気口と連通するように設置され、前記換気対象空間の内部と前記換気対象空間の外部との間に通気路を形成する通気部材と、を備え、
前記第2面は、上部ほど前記通気部材とは離れる方向に傾斜している、換気装置。
【0011】
[5]
換気対象空間を換気するための換気装置であって、
対向する第1面および第2面を有するケーシングと、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、前記ファンの電源を設置するための場所を画定する電源設置部材と、
前記第2面に設けられた通気口と連通するように設置され、前記換気対象空間の内部と前記換気対象空間の外部との間に通気路を形成する通気部材と、を備え、
前記換気対象空間外の空気は、前記通気部材を経て、前記電源設置部材に当たって前記換気対象空間内に取り込まれる、および/または、前記換気対象空間内の空気は、前記電源設置部材に当たって、前記通気部材を経て前記換気対象空間外へ排出されるよう構成される、換気装置。
【0012】
[6]
空気が前記電源設置部材に当たることにより、前記電源設置部材に設置された電源が冷却される、[5]に記載の換気装置。
【0013】
[7]
換気対象空間を換気するための換気装置であって、
対向する第1面および第2面を有するケーシングと、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、
前記第2面に設けられた通気口と連通するように設置され、前記換気対象空間の内部と前記換気対象空間の外部との間に通気路を形成する通気部材と、を備え、
前記ファン設置部材には、
前記換気対象空間外の空気が前記通気部材を経て前記換気対象空間内に取り込まれるようファン設置することが可能であり、かつ、
前記換気対象空間内の空気が前記通気部材を経て前記換気対象空間外に排出されるようファンを設置することも可能である、換気装置。
【0014】
[8]
換気対象空間を換気するための換気装置であって、
対向する第1面および第2面を有するケーシングと、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、
前記第2面に設けられた通気口と連通するように設置され、前記換気対象空間の内部と前記換気対象空間の外部との間に通気路を形成する通気部材と、を備え、
前記通気部材は、前記換気対象空間とその外部とを区切る天幕が位置合わせされるくびれ部が設けられる、換気装置。
【0015】
[9]
換気対象空間を換気するための換気装置であって、
対向する第1面および第2面を有するケーシングと、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、
前記第2面に設けられた通気口と連通するように設置され、前記換気対象空間の内部と前記換気対象空間の外部との間に通気路を形成する通気部材と、を備え、
前記通気部材の所定位置に、前記換気対象空間と外部とを区切る天幕が位置合わせされ、
前記所定位置において、前記通気部材の鉛直方向断面の下端における接線と、前記通気部材側の地面とのなす角が90度以下である、換気装置。
【0016】
[10]
換気対象空間を換気するための換気装置であって、
対向する第1面および第2面を有するケーシングと、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、
前記第2面に設けられた通気口と連通するように設置され、前記換気対象空間の内部と前記換気対象空間の外部との間に通気路を形成する通気部材と、を備え、
前記通気路は、空気は通過できるが蚊が通過できないフィルタを含む、換気装置。
【0017】
[11]
換気対象空間を換気するための換気装置であって、
対向する第1面および第2面を有するケーシングと、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、
前記第2面に設けられた通気口と連通するように設置され、前記換気対象空間の内部と前記換気対象空間の外部との間に通気路を形成する通気部材と、を備え、
前記ファン設置部材には、前記換気対象空間外の空気が前記通気部材を経て前記換気対象空間内に取り込まれるようファン設置することが可能であり、
前記通気部材は、空気を冷却するための冷却機構を有する、換気装置。
【0018】
[12]
前記冷却機構は、冷却媒体を含有可能な冷却具を含む、[11]に記載の換気装置。
【0019】
[13]
前記冷却機構は、前記冷却具に前記冷却媒体を供給する供給部材を含む、[12]に記載の換気装置。
【0020】
[14]
前記冷却具は、前記通気路を通る空気が前記冷却媒体に触れるよう、前記通気路に設けられる、[12]または[13]に記載の換気装置。
【0021】
[15]
前記冷却媒体は、水を含み、
前記冷却具は、冷却具本体と、吸水性部材とを有する、[12]乃至[14]のいずれかに記載の換気装置。
【0022】
[16]
前記冷却具本体は、ポリウレタン製あるいはポリエステル製のスポンジ素材である、[15]に記載の換気装置。
【0023】
[17]
前記吸水性部材は、綿、PVAまたはセルロースであり、
前記吸水性部材の少なくとも一部が、前記冷却具本体に埋め込まれる、[15]または[16]に記載の換気装置。
【0024】
[18]
ポリウレタン製あるいはポリエステル製のスポンジ素材である冷却具本体と、
綿、PAVまたはセルロースである吸水性部材と、を備え、
前記吸水性部材の一部が、前記冷却具本体に埋め込まれる、冷却具。
【0025】
[19]
[12]乃至[17]のいずれかに記載の換気装置に用いられる、[18]に記載の冷却具。
【発明の効果】
【0026】
既存のテント等に付加してテント等の換気を行える。また、そのような換気装置に適用可能な冷却具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】換気装置100の側面図。
図1B】換気装置100の正面図。
図1C】換気装置100の使用状態を示す側面図。
図2A】本体1の透視側面図。
図2B】本体1の透視正面図。
図2C】本体1の透視背面図。
図3A】蓋2の側面図。
図3B】蓋2の正面図。
図3C】蓋2の背面図。
図4A】通気部材3の側面図。
図4B】通気部材3の正面図。
図5】換気装置100を排気装置として用いる場合の透視側面図。
図6】換気装置100を吸気装置として用いる場合の透視側面図。
図7】通気部材3の側面図。
図8】換気装置100を気化熱式冷風装置として用いる場合の透視側面図。
図9】換気装置100とテントとの位置関係の一例を模式的に示す上面図。
図10】換気装置100とテントとの位置関係の別の例を模式的に示す上面図。
図11】換気装置100とテントとの位置関係のまた別の例を模式的に示す上面図。
図12】換気装置100とテントとの位置関係のまた別の例を模式的に示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0029】
本実施形態は、換気対象空間を換気するためのものである。換気とは、換気対象空間の排気でもよいし、換気対象空間への吸気でもよいが、排気および吸気の両方が可能であるのが望ましい。以下、換気対象空間として、主にテント(シェルターを含む)を例示する。
【0030】
(第1実施形態)
図1Aおよび図1Bは、それぞれ、換気装置100の側面図および正面図である。また、図1Cは、換気装置100の使用状態を示す側面図である。換気装置100は、本体1と、蓋2と、通気部材3とを備えている。これらは一体であってもよいが、持ち運びやすくするため、また、保管性を良くするため、別パーツとして分離可能であるのが望ましい。
【0031】
図1Cに示すように、換気対象空間200は、例えばテントにおけるフライシートやスカートといった天幕201によって、外部202と区切られている。そして、換気装置100の使用状態においては、天幕201と地面との間に通気部材3が挟み込まれる。それにより、本体1、蓋2および通気部材3の一部が換気対象空間200の内側に配置され、通気部材3の他の一部(先端側)は換気対象空間200の外側に配置される。
【0032】
本体1
図2A図2Cは、順に、本体1の透視側面図、透視正面図および透視背面図である。本体1は、ケーシング11と、ファン設置部材12と、電源設置部材13とを有する。
【0033】
ケーシング11は、互いに対向する前面111および背面112と、これらを接続する2つの側面113とを有する。ケーシング11は底面を有していてもよい。ケーシング11の上部は開口しており、蓋2を着脱可能となっている。ケーシング11の素材は、例えばプラスチックであり、特に、強度、硬度および耐衝撃性などの物性面が優れたポリエチレンが好適である。
【0034】
前面111は、使用時、換気対象空間200と外部202とを区切る天幕201によって覆われる(図1C参照)。前面111の下部には通気口111aが形成される。そして、前面111から換気対象空間200に向かう側(背面112とは反対側)に突出するよう通気部材接続部114が設けられ、通気口111aに連通している。通気部材接続部114には嵌合突起114aが形成されており、通気部材3をケーシング11に着脱可能となっている。
【0035】
背面112の上部には通気口112aが形成される。そして、後述するファン4によって形成される空気の流れ通気口112aを通るようになっている。背面112の通気口112aに対応する位置にフィルタ112bが設けられ、蚊などの虫が換気対象空間200に入らないようにするのが望ましい。
【0036】
側面113はケーシング11を支持する脚115を取り付け可能な構造となっている。脚115は、例えばペグによって地面に固定される。あるいは、脚115の下部を地面に埋め込んで固定してもよい(ただし、前面111の通気口111aが地上に出ている必要がある)。
【0037】
ここで、前面111および背面112は直立していてもよいが、図示のように傾斜しているのが望ましい。詳細には、少なくとも前面111は、鉛直面に対して、上部ほど通気部材接続部114とは離れる方向に傾斜している。言い換えると、前面111と背面112と間の地面と、前面111とがなす角αは90度未満であり、例えば45~85度程度である。この角度を調整可能であってもよい。多くの場合、フライシートやスカートといった天幕201は下方が外側に拡がったドーム型であるが、前面111が傾斜していることでドーム型の天幕201との干渉を抑えられるためである。
【0038】
ケーシング11の任意の位置に照明を付加し、換気対象空間200の間接照明としてもよい。
【0039】
ファン設置部材12は前面111と背面112との間に設けられ、ファン4を設置するための場所を画定する。詳細には、背面112に形成された通気口112aと対向する位置にファン4が固定されるよう、ファン設置部材12が設けられる。具体例として、ファン設置部材12は2つの側面113に取り付けられた1組の凸状レール121を有する。ケーシング11の上部の開口を介して凸状レール121にファン4を挿入することで、凸状レール121の下部と背面112によってファン4が支持され、固定される。
【0040】
ファン4が生じさせる空気の流れには、ファン4の回転方向に応じた方向性がある。そのため、ある向きにファン4をファン設置部材12に設置すると、換気対象空間200から吸気することができる(すなわち、換気装置100を吸気装置として使用できる)。反対の向きにファン4をファン設置部材12に設置すると、換気対象空間200を排気することができる(すなわち、換気装置100を排気装置として使用できる)。ファン設置部材12を凸状レール121で構成することで、ファン4の挿入や向きの変更を、換気装置100を地面に設置した(ペグ等で固定した)状態でも簡単に行える。なお、ファン4は機械的に空気の流れを切り替え可能であってもよい。
【0041】
ファン4は換気装置100が備えるものであってもよいし、別部材であってもよい。ファン4として、例えば、静かで気体流動効率が高く、入手が容易であり、安価で品質が安定している12cmあるいは14cmのPC用大径DCモータファンが好適である。設置するファン4の数も任意であり、例えば小径(7cm)のファン4を4つ程度設置してもよい。一般に、ファン4が小径であるほど消費電力や騒音を下げることができる。一方、ファン4が大径であるほど風力を強くすることができる。これらの要素を検討して、最適なファン4を設置すればよい。また、ファン4にリモートコントロール回路ユニットを組み込み、電源のオン・オフ、回転数の制御等をリモコンで行えるようにしてもよい。さらに、ファン4を駆動するモータは、DCモータでもよいし、ACモータであってもよい。
【0042】
ここで、雨などによって地面に水たまりが発生した場合でもファン4が濡れて故障することがないよう、ある程度高い位置にファン設置部材12が設けられるのが望ましい。具体的には、ファン4の回転中心を含む水平面が通気部材3の上端(あるいは通気口111aの上端)を含む水平面より高い位置となるよう、ファン設置部材12が設けられるのが望ましい。また、ファン4の下端を含む水平面が通気部材3の上端(あるいは通気口111aの上端)を含む水平面より高い位置となるよう、ファン設置部材12が設けられるのがさらに望ましい。例えば、ファン4の下端はケースシング11の底面から100mm以上である。
【0043】
電源設置部材13は、前面111と背面112との間に設けられ、ファン4の電源を設置するための場所を画定する。具体例として、電源設置部材13は、2つの側面113に取り付けられた1組の凸状レール131と、仕切り板132で構成される。ケーシング11の上部の開口を介して凸状レール131に仕切り板132を挿入することで、電源を置くスペースができる。
【0044】
仕切り板132と、ケーシング11の前面111、背面112および側面113と、蓋2とによって全方位が囲まれた空間に電源が設置されることとなり、電源を外部衝撃から守ることができる。電源をプラスチック袋に入れて電源設置スペースに格納することで、さらに耐水性や耐衝撃性が向上する。
【0045】
電源は換気装置100が備えるものであってもよいし、別部材であってもよい。電源は電源設置部材13によって画定される場所に収まるサイズであれば特に制限はないが、例えば充電可能なUSB電池であり、USBケーブルを介してファン4に電力を供給する。ファン4と電源との間にファンスピードコントローラあるいはオン・オフコントローラを設けてもよい。
【0046】
ここで、排気あるいは吸気を行う際に、空気が電源設置部材13(の仕切り板132)に当たるように構成するのが望ましい。これにより、電源設置部材13に設置された電源を冷却できる。
【0047】
蓋2
図3A図3Cは、順に、蓋2の側面図、正面図および背面図である。
【0048】
蓋2は、互いに対向する前面21および背面22と、これらを接続する2つの側面23と、上面24とを有するが、下部は開口している。ケーシング11の前面111および背面112が傾斜している場合、これに合わせて蓋2の前面21および背面22も傾斜しているのが望ましい。蓋2の下部の開口をケーシング11の上部に被せるように用いられる。詳細には、ケーシング11の前面111、背面112および側面113の上部の外側に、蓋2の前面21、背面22および側面23がそれぞれ位置するよう、蓋2がケーシング11に被せられる。これにより、ケーシング11の上部の開口からケーシング11内に雨が侵入して、ケーシング11内に配置されるファン4や電源が濡れるのを抑制できる。
【0049】
また、蓋2は軒構造25を有する。軒構造25はコの字型(C字型)であり、背面22に取り付けられる水平部分251と、側面23に取り付けられる傾斜部分252を有する。傾斜部分252は背面22から前面21に向かうほど下方に傾斜している。そして、軒構造25は前面21には設けられない。このような軒構造25を設けることで、ケーシング11の背面112に形成された通気口112aからケーシング11内に雨が侵入して、ファン4が故障するのを抑制できる。
【0050】
通気部材3
図1Cに示すように、通気部材3は、ケーシング11の前面111から換気対象空間200を向くよう設置され、ケーシング11内に設置されたファン4と換気対象空間200との間に通気路を形成する。
【0051】
図4Aおよび図4Bは、それぞれ、通気部材3の側面図および正面図である。一例として、通気部材3は、内側通気路31と、フィルタ部32と、外側通気路33とを有する。内側通気路31の内側端部はケーシング11の前面111と接続され、外側端部はフィルタ部32の内側端部と接続される。フィルタ部32の外側端部は外側通気路33の内側端部と接続される。外側通気路33の外側端部は外側に向かって開放されている。
【0052】
内側通気路31は中空(例えば円筒状)であり、その一部にL字型の嵌合凹部31aが形成されている。ケーシング11における通気部材接続部114の嵌合突起114aと、通気部材3における内側通気路31の嵌合凹部31aと、が嵌合することで、通気部材3がケーシング11に接続される。接続されると、通気部材接続部114を介して、ケーシング11の前面111に形成された通気口111aに通気部材3の内側通気路31が連通する。
【0053】
フィルタ部32は、空気が通過可能であるが小さな虫(例えば蚊)が通過できないのが望ましく、例えばスポンジ素材である。これにより、換気装置100が稼働していない状態であっても、外部202から換気対象空間200に虫が侵入するのを抑制できる。また、フィルタ部32は取り外して洗浄可能であるのが望ましい。
【0054】
フィルタ部32は円筒状でもよいが、くびれ部32a(溝状あるいは凹状のものを含む)を有するのが望ましい。図1Cに示すように、フライシートやスカートといった天幕201をくびれ部32aに位置合わせして被せ、ゴムバンドや紐などで天幕201とフィルタ部32とを固定しやすいためである。通常、フライシートやスカートは地面に固定されていないフリーな状態であるが、換気装置100のフィルタ部32と固定することで、風に対する補強効果も生じる。
【0055】
また、フィルタ部32に天幕201を被せた際に、両者の間に隙間が生じないのが望ましい。隙間があると、外部202から換気対象空間200に虫が侵入してしまうためである。そのためには、例えばフィルタ部32のくびれ部32a近傍の鉛直断面において、その下端(地面と接する部分)における接線と、フィルタ部32側の地面とのなす角βが90度以下であり、例えば蒲鉾型あるいは半円型であるのが望ましい。
【0056】
外側通気路33は外側に向かって開放された開口33aを有する。この開口33aは雨や虫が侵入しづらいよう、下向きに傾斜しているのが望ましい。また、外側通気路33の鉛直断面は、例えば頂点が上方に位置する三角形である(図4B参照)。外側通気路33の付近に照明を付加し、夜間の安全性や防犯性を高めてもよい。
【0057】
なお、通気部材3の構成は上述したものに限られない。任意の数、形状および大きさの通気路から構成し、流れる空気の量や向きを適宜調整すればよい。例えば、内側通気路31と本体1との間に蛇腹ホースを組み込み、フレキシブルな設置を可能としてもよい。そして、通気部材3には、天幕201が位置合わせされるくびれ部32aが設けられるのが望ましい。また、通気部材3における天幕201が位置合わせされる位置では、通気部材3の外郭の鉛直断面において、その下端における接線と、通気部材3側の地面とのなす角βが90度以下であるのが望ましい。
【0058】
排気装置としての使用
図5は、換気装置100を排気装置として用いる場合の透視側面図であり、空気の流れを合わせて描いている。換気対象空間200内の空気が背面112の通気口112aを介してケーシング11内に取り込まれるよう、ファン4が所定の向きに設置される。ケーシング11内に取り込まれたファン4からの空気は電源設置部材13(の仕切り板132)に当たる。これにより、電源設置部材13に設置された電源が冷却される。電源設置部材13に当たった空気は整流されて、前面111の通気口111aへ導かれる。この空気は通気部材3を介して外部202に排出される。
【0059】
吸気装置としての使用
図6は、換気装置100を吸気装置として用いる場合の透視側面図であり、空気の流れを合わせて描いている。外部202の空気が通気部材3を介して前面111の通気口111aを介してケーシング11内に取り込まれるよう、ファン4が所定の向きに設置される。この向きは図5の場合の逆となる。ケーシング11内に取り込まれた外部202からの空気は電源設置部材13(の仕切り板132)に当たる。これにより、電源設置部材13に設置された電源が冷却される。電源設置部材13に当たった空気は整流されて、背面112の通気口112aを経て、換気対象空間200内に取り込まれる。
【0060】
以上述べた換気装置100によれば、既存のテントに追加して使用でき、換気対象空間200を換気できる。そのため、テントを改造する必要はなく、経済的である。
【0061】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る換気装置100は排気装置としても吸気装置としても使用できるものであったが、次に述べる第2実施形態は、さらに気化熱式冷風装置としても使用できるようにするものである。以下、第1実施形態との共通点は説明を省略ないし簡略化し、相違点である通気部材3について中心に述べる。
【0062】
図7は、通気部材3の側面図である。この通気部材3は通気部材3を通過する空気を冷却する冷却機構35を有する。一例として、冷却機構35は、冷却媒体を含有可能な冷却具351と、これに冷却媒体を供給する冷却媒体供給部材352とを有する。冷却媒体は、例えば水などの液体である。
【0063】
冷却具351は第1実施形態の通気部材3(特に図4Aおよび図4Bに示される)におけるフィルタ部32で構成することができる。この場合の冷却具351(フィルタ部32)は、ポリウレタン製あるいはポリエステル製のスポンジ素材(特にオープンセルタイプのポリウレタンフォームが好適)であり、通気部材3を通る空気と触れる表面積が大きいのが望ましい。冷却具351は、通気部材3を通る空気が冷却媒体に触れるよう、通気部材3における通気路に配置される。冷却具351により蚊などの虫の侵入を抑えることもできる。
【0064】
冷却媒体供給部材352は、冷却具351の下方に設けられたトレイであってよく、これに冷却媒体が入れられる。この冷却媒体に冷却具351の一部が浸かっており、冷却媒体供給部材352から供給される冷却媒体が冷却具351に含有される。
【0065】
また、冷却媒体が水を含む場合、冷却具351は、冷却具本体と、吸水性部材とを有していてもよい。冷却具本体は、上述したようにポリウレタン製あるいはポリエステル製のスポンジ素材であり、空気と触れる表面積が大きくなる材料とするのが望ましい。一方、このような材料は必ずしも吸水性がよいわけではない。そこで、綿、PVA、セルロース等の吸水性・保水性がよい吸水性部材を冷却具本体と組み合わせて冷却具351を構成する。一例として、吸水性部材の少なくとも一部が冷却具本体に埋め込まれる。吸水性部材の他の一部が冷却媒体供給部材352に入れられた水に触れるよう配置される。これにより、吸水性部材が水を効率よく吸い上げ、冷却具本体が水を含有できる。
【0066】
図8は、換気装置100を気化熱式冷風装置として用いる場合の透視側面図である。空気の流れを合わせて描いているが、図6に示す吸気装置として用いる場合とほぼ同様である。換気装置100を気化熱式冷風装置として用いる場合、また、冷却媒体供給部材352に水(必要に応じて、さらに氷)などの冷却媒体を入れておく。冷却具351自体も水を含ませておくのが望ましい。
【0067】
外部202の空気が通気部材3を通る際に、空気が冷却機構35によって冷却される。詳細には、通気部材3の通気路を通る空気が冷却媒体に触れ、冷却媒体を気化させる際に、空気の熱が奪われ、空気が冷える。冷えた空気がケーシング11における前面111の通気口111aを介して換気対象空間200内に取り込まれる。
【0068】
以上述べたように、第2実施形態に係る換気装置100により、換気対象空間200に冷却空気を取り込むことができる。
【0069】
以上述べた換気装置100の使用例をいくつか挙げる。
【0070】
図9は、換気装置100とテントとの位置関係の一例を模式的に示す上面図である。このテントは一般的な2~4名用のものであり、1個の換気装置100を使用することを想定している。フライシートの下に換気装置100の通気部材3を通し、フライシートを通気部材3のくびれ部32aに固定して用いる。
【0071】
インナーテント内の温度はフライシート内側の温度に影響される。そして、フライシートには日光が直接当たる。そこで、フライシートの内側の換気を良くし、インナーテント内の温度上昇を抑制すべく、本換気装置100を排気装置として使用するのが好適である。あるいは、テント内が風通しが良い状態であり、冷却媒体としての水を用意できるのであれば、風上側から換気装置100を気化熱式冷風装置として使用するのも有効である。
【0072】
図10は、換気装置100とテントとの位置関係の別の例を模式的に示す上面図である。このテントは一般的な2~4名用のものであり、2個の換気装置100A,100Bを対角線上に配置して使用することを想定している。
【0073】
周囲の環境に応じて、以下の使用例が考えられる。
(1)換気装置100A:排気装置、換気装置100B:吸気装置
(2)換気装置100A:排気装置、換気装置100B:排気装置
(3)換気装置100A:吸気装置、換気装置100B:吸気装置
上記(1)の場合、吸気装置として使用する換気装置100Bを気化熱式冷風装置として使用することで、テント内の温度をより効果的に下げることができる。
【0074】
図11は、換気装置100とテントとの位置関係のまた別の例を模式的に示す上面図である。このテントは一般的な6人用ツールームテントであり、6個の換気装置100A~100Fを使用することを想定している。換気装置100A~100Fのそれぞれ周囲の環境に応じて柔軟に使用することができる。
【0075】
図12は、換気装置100とテントとの位置関係のまた別の例を模式的に示す上面図である。このテントは一般的な2~4人用のシェルターであり、4個の換気装置100A~100Dを使用することを想定している。シェルターのインナーテントには床面がなく、全面が地面である。そのため、冬場のキャンプ等で用いられることが多い。シェルター内部で暖房器具を使ったり調理をしたりする場合には、一酸化炭素中毒や酸欠のリスクがある。そこで、換気装置100A~100Dを吸気装置として使用することで、新鮮な外気を内部に連続的に取り込み続けることで、リスクヘッジの強化を図れる。
【0076】
なお、本換気装置100は、床面がないシングルウォールテントの他、床面があるダブルウォールテント(前室のみがダブルウォールとなっているものを含む)や、地面まで達するフライシートを有するテントであって、前室に設置スペースがあるテントに特に適合的である。
【0077】
本明細書で説明した各発明は、上述した個々の実施形態には限定されるものではなく、適宜、種々の追加、変更、組み合わせおよび部分的削除が可能である。
例えば、本明細書において1台の装置(あるいは1つの部材、以下同じ)として説明されるもの(図面において1台の装置のように描かれているものを含む)を複数の装置によって実現してもよい。逆に、本明細書において複数の装置として説明されるもの(図面において複数の装置のように描かれているものを含む)を1台の装置によって実現してもよい。あるいは、ある装置に含まれるとした手段や機能の一部または全部が、他の装置に含まれるようにしてもよい。
【0078】
また、矛盾が生じない範囲で、ある実施形態の一部を他の実施形態に組み込んでもよい。さらに、本明細書に記載された事項の全てが必須の要件というわけではない。特に、本明細書に記載され、特許請求の範囲に記載されていない事項は任意の付加的事項である。
【0079】
なお、本出願人は本明細書の「先行技術文献」欄の文献に記載された文献公知発明を知っているというにすぎず、本明細書に記載された各発明は必ずしも同文献公知発明における課題を解決することを目的とするものではない。特許請求の範囲に記載された発明が解決しようとする課題は本明細書全体を考慮して認定されるべきものである。例えば、本明細書において、特定の構成によって所定の効果を奏する場合(明示の記載がある場合に加え、構成から読み取れる場合も含む)、当該所定の効果の裏返しとなる課題が解決されるということもできる。ただし、必ずしもそのような特定の構成を必須の要件とする趣旨ではない。
【符号の説明】
【0080】
200 換気対象空間
201 天幕
202 外部
100,100A~100F 換気装置
1 本体
11 ケーシング
111 前面
111a 通気口
112 背面
112a 通気口
112b
113 側面
114 通気部材接続部
114a 嵌合突起
115 脚
12 ファン設置部材
121 凸状レール
13 電源設置部材
131 凸状レール
132 仕切り板
2 蓋
21 前面
22 背面
23 側面
24 上面
25 軒構造
251 水平部分
252 傾斜部分
3 通気部材
31 内側通気路
31a 嵌合凹部
32 フィルタ部
32a くびれ部
33 外側通気路
33a 開口
35 冷却機構
351 冷却具
352 冷却媒体供給部材
4 ファン
【要約】
【課題】既存のテント等に付加してテント等の換気を行えるようにする換気装置を提供すること、また、そのような換気装置に適用可能な冷却具を提供する。
【解決手段】換気対象空間を換気するための換気装置であって、対向する第1面および第2面を有するケーシングと、前記第1面と前記第2面との間に設けられ、ファンを設置するための場所を画定するファン設置部材と、前記第2面に設けられた通気口と連通するように設置され、前記換気対象空間の内部と前記換気対象空間の外部との間に通気路を形成する通気部材と、を備え、前記ファン設置部材は、設置されるファンの回転中心を含む水平面が、前記通気口の上端を含む水平面より高い位置となるように設けられる、換気装置が提供される。
【選択図】図1C
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12