(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 88/04 20090101AFI20241113BHJP
H04W 4/24 20240101ALI20241113BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20241113BHJP
H04W 4/46 20180101ALI20241113BHJP
【FI】
H04W88/04
H04W4/24
H04W4/44
H04W4/46
(21)【出願番号】P 2023501736
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2021006978
(87)【国際公開番号】W WO2022180710
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 優
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056386(WO,A1)
【文献】特表2014-534681(JP,A)
【文献】特表2018-528684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00ー99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の他の装置と第2の他の装置との間の通信を中継する通信装置であって、
前記第2の他の装置のユーザデータの通信におけるサービス品質に関する第1の識別情報を、前記通信装置の前記第1の他の装置との間のユーザデータの通信においてサービス品質の識別情報として使用されることのない値に設定して、前記第1の他の装置と前記第2の他の装置との間の通信を、前記第1の識別情報に基づいて中継する中継手段を有する、通信装置。
【請求項2】
前記第2の他の装置から、前記第1の他の装置を含んだ無線通信システムにおいて前記第2の他の装置を識別可能な第2の識別情報を取得する取得手段をさらに有し、
前記中継手段は、前記第1の識別情報と前記第2の識別情報とを用いて、前記第1の他の装置と前記第2の他の装置との間の通信を中継する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記無線通信システムはセルラ通信システムであり、前記第2の識別情報は、TMSI(Temporary Mobile Subscriber Identity)又はGUTI(Globally Unique Temporary Identifier)である、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記中継手段は、前記第2の他の装置の前記第1の識別情報を有するユーザデータを、前記通信装置の前記第1の識別情報と異なるサービス品質の識別情報を有するユーザデータが送信される無線ベアラにおいて送信する、請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1の他の装置との間の通信を第1の通信方式で実行し、前記第2の他の装置との間の通信を前記第1の通信方式と異なる第2の通信方式で実行する、請求項1から4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1の他の装置はセルラ通信システムの基地局であり、前記第1の通信方式はセルラ通信方式であり、前記第1の識別情報は、QCI(QoS (Quality of Service) Class Identifier)又は5QI(5G QoS Identifier)の値によって表される、請求項
5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記中継手段が前記第2の他の装置の通信を中継する際に設定すべき前記第1の識別情報の値を、当該第2の他の装置から取得する取得手段をさらに有する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記中継手段が前記第2の他の装置の通信を中継する際に設定すべき前記第1の識別情報の値を、前記第1の他の装置から取得する取得手段をさらに有する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
第1の他の装置と第2の他の装置との間の通信を中継する通信装置によって実行される通信方法であって、
前記第2の他の装置のユーザデータの通信におけるサービス品質に関する第1の識別情報を、前記通信装置の前記第1の他の装置との間のユーザデータの通信においてサービス品質の識別情報として使用されることのない値に設定して、前記第1の他の装置と前記第2の他の装置との間の通信を、前記第1の識別情報に基づいて中継することを含む、通信方法。
【請求項10】
第1の他の装置と第2の他の装置との間の通信を中継する通信装置に備えられたコンピュータに、
前記第2の他の装置のユーザデータの通信におけるサービス品質に関する第1の識別情報を、前記通信装置の前記第1の他の装置との間のユーザデータの通信においてサービス品質の識別情報として使用されることのない値に設定して、前記第1の他の装置と前記第2の他の装置との間の通信を、前記第1の識別情報に基づいて中継させる、ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信方法、およびプログラムに関し、特に、中継伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が別の車両や物と無線通信を行うV2X(Vehicle-to-Everything)通信により、車両が様々な情報を取得し又は他者に情報を提供することができる。車両がインターネットやサービスプロバイダが構築したネットワーク上のサーバ等の装置へデータを送信する場合、その車両がそのようなネットワークに接続可能な、例えば基地局やアクセスポイント等の所定の通信装置と接続する必要がある。しかしながら、車両は、常にそのような所定の通信装置と接続可能な環境にあるわけではない。このため、車両は、例えばそのような所定の通信装置と接続可能な別の車両を介して、所定の通信装置との通信を実行することが想定される。特許文献1には、車両間を接続して、所定のノードまでデータを転送する構成が記載されている。特許文献1では、車両間の通信により所定のノードに近い車両が判別され、その所定のノードに近い車両へデータが転送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が、例えば、有料の通信サービスを用いて、別の車両の通信を中継する場合、車両がその別の車両の通信の中継のために行った通信によって、車両が通信コストを負担することになりうる。このため、車両が中継する通信が、その車両に関する通信であるか、別の車両の中継通信であるかを判別する技術が必要となる。
【0005】
本発明は、通信装置によって送受信されるデータが中継通信のデータであるか否かを容易に判別可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による通信装置は、第1の他の装置と第2の他の装置との間の通信を中継する通信装置であって、前記第2の他の装置のユーザデータの通信におけるサービス品質に関する第1の識別情報を、情報前記通信装置の前記第1の他の装置との間のユーザデータの通信においてサービス品質の識別情報として使用されることのない値に設定して、前記第1の他の装置と前記第2の他の装置との間の通信を、前記第1の識別情報に基づいて中継する中継手段を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通信装置によって送受信されるデータが中継通信のデータであるか否かを容易に判別することができるようになる。
【0008】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図2】通信装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(システム構成)
図1に、本実施形態のシステムの構成例を示す。本システムは、無線通信を実行可能な車両111~車両114が、例えばインターネット等の所定のネットワークに接続して通信する、無線通信システムである。本実施形態に係る車両111~車両114は、例えば、セルラ通信システムの基地局101と接続して、所定の通信装置との間での通信を実行する。また、車両111~車両114は、例えば、基地局101とのセルラ通信方式と異なる通信方式で相互に接続して通信することができるように構成される。ここで、セルラ通信方式と異なる通信方式は、例えば、セルラV2X(Vehicle-to-Everything)、無線LAN、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、Bluetooth(登録商標)のいずれかの通信の方式である。なお、セルラV2Xはセルラ通信方式の一態様であるが、基地局と端末(すなわち車両111~車両114)との間の通信ではなく、基地局以外の装置と端末(車両111~車両114)との間の通信であることから、本実施形態及び特許請求の範囲を通じて、これらの通信方式が異なる通信方式であるものとして扱う。なお、セルラ通信方式とそれ以外の通信方式の組み合わせは一例であり、車両111~車両114は、第1の通信方式で基地局101などの第1の装置と接続し、第1の通信方式と異なる第2の通信方式で、相互に接続可能に構成される。なお、
図1では、1つの基地局101と4つの車両111~車両114のみが図解されているが、これらの装置は当然に多数存在しうる。
【0012】
車両111~車両114は、基地局101とのセルラ通信を実行することによって、例えば、各車両のセンサによって取得した情報を、所定の情報処理サーバなどの装置に送信することができる。情報処理サーバは、この情報によって、自動運転の制御など、各種処理を実行することができる。また、車両111~車両114は、基地局101とのセルラ通信を実行することによって、例えば所定の情報を保持するサーバから、運転制御情報や車両の位置に応じたサービス情報などの様々な情報を取得することができる。一方で、例えば車両111がセル端に存在する場合、この車両111が基地局101との間の伝搬損失が大きいことにより大容量の通信を行うことができず、場合によっては、車両111は基地局101との通信を全く行うことができないこともありうる。このため、例えば、車両112~車両114のいずれかが、車両111の通信を中継することにより、車両111が基地局101との通信を実行可能とすることができる。なお、以下では、車両112が、車両111と基地局101との間の通信を中継するものとする。
【0013】
セルラ通信システムでは、従量制の料金システムが適用されることがある。このときに、車両112が車両111の通信を中継する場合、基地局101を含んだセルラ通信システム側において、その車両111の通信を車両112の通信として扱い、その通信のコスト(料金)を車両112側に課してしまいうる。このため、車両112と基地局101との間での通信(ユーザデータ)が、車両112自身のものであるか、車両111のものであるかを判別可能とする仕組みが必要となる。一方、車両111と車両112との間の通信は、車両112と基地局101との間の通信と異なる通信方式で行われうるため、基地局101側で車両111を特定することができない場合がありうる。
【0014】
このため、本実施形態では、車両112が、車両111のユーザデータの通信におけるサービス品質に関する識別情報を、車両111が基地局101との間のユーザデータの通信においてサービス品質の識別情報として使用されることのない値に設定する。そして、車両112は、このサービス品質に関する識別情報の設定値とユーザデータとを関連付けて、車両111と基地局101との間の通信を実行する。例えば、車両112は、車両111から受信したユーザデータについて、そのユーザデータとサービス品質の識別情報とを関連付けた信号を生成して、基地局101へ送信する。また、基地局101から受信したユーザデータについて、そのサービス品質の識別情報を確認し、車両111に関連付けられたサービス品質の識別情報を有するユーザデータを、車両111へ転送する。
【0015】
ここで、サービス品質の識別情報は、例えば、ロングタームエボリューション(LTE)におけるQCI(QoS (Quality of Service) Class Identifier)や、第5世代(5G)の通信システムにおける5QI(5G QoS Identifier)でありうる。すなわち、本実施形態では、従来の基地局と端末との間のユーザデータの通信に使用されうるQCI又は5QIの値の範囲に含まれない値、すなわち、従来の通信におけるQCIや5QIの値においてその意義や優先度が定義されていない値を、中継伝送用の値として使用する。例えば、基地局と端末との直接通信のためにQCIの値として1~9が使用されている場合、10~15が中継通信用に使用されうる。車両112は、例えば、車両111のユーザデータに対して、QCI=11を関連付け、自装置の通信に対しては、その通信で要求されるサービスの内容に応じたQCIの値を関連付ける。なお、中継通信用に使用可能な範囲の各値と、その中継通信におけるサービス品質の情報とが関連付けられてもよい。すなわち、QCI等のサービス品質の識別情報によって、関連付けられたユーザデータが車両112のユーザデータであるか、車両111の中継通信のユーザデータであるかを特定するのみならず、車両111の中継通信についてのサービス品質の情報を示してもよい。
【0016】
なお、車両112は、車両111のユーザデータの通信に使用するサービス品質の識別情報の値を、例えば基地局101からの通知によって取得してもよい。一例において、基地局101は、中継通信に使用可能なQCIの値の範囲を、ブロードキャストにより、又は、個別シグナリングにより、車両112に通知しうる。また、基地局101は、例えば、車両112との接続時に、車両112を介した車両111の通信についても設定を行い、車両111のための中継通信に使用されるべきサービス品質の識別情報の値を車両112へ通知してもよい。基地局101は、車両111のための中継通信であることを特定してから設定を行う場合、車両111のユーザデータで要求されるサービス品質に対応する値を特定して車両112へ通知することができる。なお、基地局101は、中継通信のサービス品質と使用されるべき値との対応関係を示す情報を車両112へ事前に通知し、車両112は、その通知された情報に基づいて、中継通信のユーザデータに関連付けるサービス品質の識別情報の値を選択してもよい。また、中継通信のユーザデータについては、サービス品質によらず、一定の値の範囲から任意に選択された1つの値が関連付けられるようにしてもよい。この場合、サービス品質の識別情報によって、中継通信のユーザデータであるか否かのみが特定される。この場合、例えば、中継される通信装置ごとに、同じサービス品質の通信であっても、異なるサービス品質の識別情報の値が使用されうる。なお、車両112は、車両111のユーザデータの通信に使用するサービス品質の識別情報の値を、例えば車両111からの通知により取得してもよい。一例において、車両111が、自装置の要求するサービス品質に対応する識別情報の値を、車両112へ通知してもよい。また、車両111は、中継通信に対応するサービス品質に関する識別情報の値の範囲の中から、ランダムに1つの値を選択して車両112へ通知してもよい。また、車両112は、中継通信に対応するサービス品質に関する識別情報の値の範囲の中からランダムに1つの値を選択して、車両111の中継通信用の値として設定してもよい。
【0017】
なお、車両112は、車両111のセルラ通信システムにおける端末識別情報を、中継通信されるユーザデータに関連付けて信号を生成してもよい。この端末識別情報は、例えば、TMSI(Temporary Mobile Subscriber Identity)又はGUTI(Globally Unique Temporary Identifier)である。一方で、車両112は、車両111との間の通信を、セルラ通信方式と異なる通信方式で実行するため、車両111についての端末識別情報を知らないことが想定される。このため、本実施形態では、車両112は、車両111の端末識別情報を車両111から取得しうる。これによれば、セルラ通信方式以外の通信方式で接続している車両111の、セルラ通信方式での端末識別情報を用いて中継通信を行うことができ、その結果、基地局101等のネットワーク側に、車両111を通信の相手装置と認識させることができる。これにより、セルラ通信システムにおいて、車両111に対して通信のコストを負担させることができるようになる。
【0018】
なお、車両112は、自装置のユーザデータと車両111のユーザデータとに対して、それぞれ異なるデータ無線ベアラを確立してそのデータ無線ベアラを用いて送受信しうる。例えば、車両111のユーザデータに対して、サービス品質を特定可能な形式でサービス品質に関する識別情報が関連付けられている場合、車両112は、そのサービス品質に対応するデータ無線ベアラを確立して、そのユーザデータの中継通信を実行しうる。一方、車両112は、例えば、車両111のユーザデータに対するサービス品質が特定されない場合、自装置が送信するユーザデータのために確立したデータ無線ベアラを用いて、その中継通信のユーザデータを送受信するようにしてもよい。なお、車両112は、車両111のユーザデータのサービス品質が特定されている場合であっても、自装置のユーザデータの送受信のためのデータ無線ベアラを用いて、その車両111のユーザデータの送受信を行ってもよい。
【0019】
以下では、このような処理を実行する車両112の構成及び動作について説明する。なお、本実施形態では、車両112が実行すべき処理について説明しているが、他の車両(車両111、車両113~車両114)も同様の処理を実行可能である。また、「車両」は通信装置の一態様に過ぎず、任意の態様の無線通信装置に本実施形態に係る議論を適用することができる。
【0020】
(装置構成)
図2に、本実施形態の車両112に実装される通信装置のハードウェア構成例を示す。通信装置は、一例において汎用のコンピュータを含んで構成され、そのコンピュータは、例えば、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信回路204、入出力回路205を有する。なお、
図2は、本実施形態に係るハードウェアの構成例を示しており、他の構成については図示を省略している。CPU201は、例えば、メモリ202に記憶されたプログラムを実行することにより、後述する処理や、装置全体の制御を実行するCPU(Central Processing Unit)である。なお、CPU201は、MPU(Micro Processing Unit)やASIC(Application-Specific Integrated Circuit)等の任意の1つ以上のプロセッサによって代替されうる。メモリ202は、通信装置に各種処理を実行させるためのプログラムを保持し、また、プログラム実行時のワークメモリとして機能する。メモリ202は、一例において、RAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)である。記憶装置203は、例えば、着脱可能な外部記憶装置や内蔵型のハードディスクドライブ等であり、各種情報を保持する。通信回路204は、通信に関する信号処理を実行し、通信ネットワークを通じて、外部の装置から各種情報を取得し、外部の装置に各種情報を送信する。なお、通信回路204によって取得された情報は、例えばメモリ202や記憶装置203に格納されうる。なお、通信装置は、複数の通信回路204を有しうる。入出力回路205は、例えば、不図示の表示装置に表示させる画面情報やスピーカから出力させる音声情報の出力や、キーボードやポインティングデバイス等を介したユーザ入力の受付の制御を行う。なお、入出力回路205は、タッチパネル等の入出力を一体として行うデバイスの制御を行ってもよい。なお、
図2の構成は一例であり、例えば、通信装置は、上述の処理を実行するような専用のハードウェアを有してもよい。
【0021】
図3に、車両112に備えられた通信装置の機能構成例を示す。通信装置は、その機能として、例えば、品質識別情報設定部301、端末識別情報設定部302、中継通信部303、及び、情報取得部304を含んで構成される。なお、これらの機能部は、例えば、CPU201が、メモリ202や記憶装置203に記憶されたプログラムを実行することによって具現化されてもよいし、専用のハードウェアによって具現化されてもよい。なお、各機能部の詳細な動作については上述の通りであるため、ここでは機能を概説するにとどめ、その詳細な説明については省略する。
【0022】
品質識別情報設定部301は、通信装置自身の基地局との通信について、従来通りにサービス品質に関する識別情報を設定する。また、品質識別情報設定部301は、他の通信装置の基地局との通信を中継する際に、その中継通信のサービス品質に関する識別情報として、自装置の通信で使用されることのない値を設定する。品質識別情報設定部301は、例えば、各設定値を対応するユーザデータと関連付けた信号が生成されるように制御を行う。端末識別情報設定部302は、他の通信装置のための中継通信を実行する際に、その他の通信装置の端末識別情報を、中継通信されるユーザデータに対して設定する。端末識別情報設定部302は、例えば、各設定値を対応するユーザデータと関連付けた信号が生成されるように制御を行う。中継通信部303は、中継通信を含んだ基地局との通信を実行する。中継通信部303は、例えば、他の通信装置のユーザデータの送受信のために、新たにデータ無線ベアラを確立し、又は、自装置のユーザデータの送受信のための無線ベアラを流用し、そのユーザデータの送受信を実行する。また、中継通信部303は、基地局との通信のための通信方式と異なる通信方式で、他の通信装置との通信を実行する。情報取得部304は、中継通信に必要な各種情報を取得する。例えば、品質識別情報設定部301において中継通信に使用可能なサービス品質に関する識別情報の値の範囲の情報や、他の通信装置の端末識別情報を、基地局や他の通信装置から取得する。また、情報取得部304は、必要に応じて、自装置内の記憶装置から情報を読み出すことによって取得してもよい。
【0023】
(処理の流れ)
続いて、上述の通信システムによって実行される処理の流れの例について説明する。ここでは、車両112が、車両111の通信を中継する場合の例について説明する。なお、以下の処理例では、車両111から、車両112に対して、使用すべきQCI(サービス品質に関する識別情報)と、車両111のTMSI(端末識別情報)とを通知する場合の例を示す。ただし、これは一例であり、これらの情報が基地局101から通知されてもよいし、例えば使用すべきQCIを車両112が決定してもよい。また、QCIに代えて5QIや他の識別情報が用いられてもよく、また、TMSIに代えてGUTIやその他の識別情報が用いられてもよい。なお、後述の各処理の詳細は上述の通りであるため、ここでの説明では、処理の流れを概説するにとどめ、詳細の説明については繰り返さない。本処理は、例えばCPU201が、メモリ202や記憶装置203に記憶されたプログラムを実行することによって具現化される。
【0024】
まず、車両112が車両111の通信を中継するのに先立って、車両111が、車両112に対して、中継通信で使用すべきQCIとTMSIとを通知する(S501)。この通知は、例えば、車両111が、セルラ通信方式と異なる別の通信方式で車両112と無線接続を確立し、その無線接続を用いて、中継通信のための設定情報の送受信の際に行われうる。ただし、これは一例であり、例えば接続の確立時の設定のための通信において、この通知が行われてもよい。また、上述のように、QCIの値などについて、基地局101から車両112に通知されてもよいし、車両112が事前に保持していてもよい。また、例えば車両111が送信するデータを車両112が加工せずに中継する場合は、TMSIやQCIの値を設定したセルラ通信用のデータを車両111が生成して送信するようにしうる。この場合、車両112は、QCIやTMSIの値をこの時点で取得しなくてもよい。
【0025】
その後、車両111において、ユーザデータが生成されたものとする(S502)。車両111は、このユーザデータを車両112へ送信する(S503)。車両112は、事前に取得している中継通信用のQCIと車両111のTMSIとを用いて、ユーザデータを基地局101へ転送する。なお、
図4には示していないが、車両112は、自装置のユーザデータを送信する場合は、そのユーザデータと同じデータ無線ベアラで又は別途データ無線ベアラを確立して、中継対象のユーザデータを送信しうる。なお、車両111は、例えば、セルラ通信方式のフレーム形式でユーザデータを含んだフレームを形成し、そのフレームをペイロードとして含み、車両111と車両112との間の通信方式のヘッダを付しただけのパケットを生成して車両112へ送信してもよい。この場合、車両112は、そのヘッダを除去して、セルラ通信用のフレームを取得し、そのままそのフレームを基地局101へ転送しうる。
【0026】
また、車両112は、基地局101からユーザデータを受信しうる(S505)。例えば、車両112は、どのデータ無線ベアラでユーザデータを受信したかによって、対応するQCIの値を特定し、そのユーザデータが自装置宛てか車両111宛てかを特定することができる。また、車両112は、ユーザデータに関連付けられたTMSIの値により、そのユーザデータが自装置宛てか車両111宛てかを特定することもできる。そして、車両112は、ユーザデータが車両111宛ての場合、そのユーザデータを車両111へ転送する。
【0027】
このように、本実施形態では、少なくともサービス品質に関する識別情報に基づいて、中継通信を実行可能な通信装置が送信したデータが、中継通信に関するものであるか否かを特定可能とする。これによれば、ネットワーク側において、そのデータが通信装置に起因するものか他の通信装置に起因するものかを特定することができ、例えば適切にコスト負担させることができるようになる。
【0028】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態に係る通信装置は、
第1の他の装置と第2の他の装置との間の通信を中継する通信装置であって、
前記第2の他の装置のユーザデータの通信におけるサービス品質に関する第1の識別情報を、前記通信装置の前記第1の他の装置との間のユーザデータの通信においてサービス品質の識別情報として使用されることのない値に設定して、前記第1の他の装置と前記第2の他の装置との間の通信を、前記第1の識別情報に基づいて中継する中継手段を有する。
【0029】
この実施形態によれば、通信装置によって送受信されるユーザデータのそれぞれについて、通信装置の通信に関するか第2の他の装置の通信に関するかを、サービス品質に関する識別情報によって特定可能となる。この結果、例えば第1の他の装置が属するシステムにおいて、通信装置による通信のうち、通信装置に対する通信コストと、第2の他の装置に対する通信コストとを明確に区別して管理することが可能となる。
【0030】
2.上記1の実施形態に係る通信装置は、
前記第2の他の装置から、前記第1の他の装置を含んだ無線通信システムにおいて前記第2の他の装置を識別可能な第2の識別情報を取得する取得手段をさらに有し、
前記中継手段は、前記第1の識別情報と前記第2の識別情報とを用いて、前記第1の他の装置と前記第2の他の装置との間の通信を中継する。
【0031】
この実施形態によれば、第1の他の装置と第2の他の装置との間の通信を中継する際に、第1の他の装置が第2の他の装置を特定することを可能とする識別情報を用いて通信を行うことより、第1の他の装置が、ユーザデータの送信元や送信先を容易に特定することができる。また、このような識別情報を用いることにより、複数の第2の他の装置の通信の中継がされる場合に、ユーザデータがいずれの装置に関するかを容易に特定することが可能となる。
【0032】
3.上記2の実施形態では、
前記無線通信システムはセルラ通信システムであり、前記第2の識別情報は、TMSI(Temporary Mobile Subscriber Identity)又はGUTI(Globally Unique Temporary Identifier)である。
【0033】
この実施形態によれば、既存の識別情報を使用して上述の中継システムを構築することができる。
【0034】
4.上記1から3のいずれかの実施形態では、
前記中継手段は、前記第2の他の装置の前記第1の識別情報を有するユーザデータを、前記通信装置の前記第1の識別情報と異なるサービス品質の識別情報を有するユーザデータが送信される無線ベアラにおいて送信する。
【0035】
この実施形態によれば、上述のようにサービス品質の識別情報によって通信装置のユーザデータと第2の他の装置のユーザデータとを分離することができるため、別途無線ベアラを確立することなく、通信装置自身のデータと中継データとを併せて送信することができる。
【0036】
5.上記1から4のいずれかの実施形態では、
前記第1の他の装置との間の通信を第1の通信方式で実行し、前記第2の他の装置との間の通信を前記第1の通信方式と異なる第2の通信方式で実行する。
【0037】
この実施形態によれば、相異なる通信方式が用いられることによって、1つの通信方式における通信の集中を防ぐことができ、周波数利用効率を向上させることができる。この結果、中継通信における通信容量を十分に確保することが可能となり、中継通信における利便性を向上させることができる。
【0038】
6.上記1から6のいずれかの実施形態では、
前記第1の他の装置はセルラ通信システムの基地局であり、前記第1の通信方式はセルラ通信方式であり、前記第1の識別情報は、QCI(QoS (Quality of Service) Class Identifier)又は5QI(5G QoS Identifier)の値によって表される。
【0039】
この実施形態によれば、既存の識別情報を使用して上述の中継システムを構築することができる。
【0040】
7.上記1の実施形態に係る通信装置は、
前記中継手段が前記第2の他の装置の通信を中継する際に設定すべき前記第1の識別情報の値を、当該第2の他の装置から取得する取得手段をさらに有する。
【0041】
これによれば、例えば第2の他の装置によって所定の範囲から選択された値を第1の識別情報の値として設定することにより、その値が関連付けられたユーザデータが、第2の他の装置のユーザデータであるということを特定することができるようになる。また、複数の候補値の中から値を選択可能とすることにより、中継される装置ごとに異なる第1の識別情報の値を使用することができ、第1の識別情報によって、その値が関連付けられたユーザデータがどの装置のユーザデータであるかを第1の他の装置が容易に特定することができるようになる。
【0042】
8.上記1の実施形態に係る通信装置は、
前記中継手段が前記第2の他の装置の通信を中継する際に設定すべき前記第1の識別情報の値を、前記第1の他の装置から取得する取得手段をさらに有する。
【0043】
これによれば、例えば第1の他の装置によって所定の範囲から選択された値を第1の識別情報の値として設定することにより、その値が関連付けられたユーザデータが、第2の他の装置のユーザデータであるということを特定することができるようになる。また、複数の候補値の中から値を選択可能とすることにより、中継される装置ごとに異なる第1の識別情報の値を使用することができ、第1の識別情報によって、その値が関連付けられたユーザデータがどの装置のユーザデータであるかを第1の他の装置が容易に特定することができるようになる。
【0044】
9.上記実施形態に係る通信方法は、
第1の他の装置と第2の他の装置との間の通信を中継する通信装置によって実行される通信方法であって、
前記第2の他の装置のユーザデータの通信におけるサービス品質に関する第1の識別情報を、前記通信装置の前記第1の他の装置との間のユーザデータの通信においてサービス品質の識別情報として使用されることのない値に設定して、前記第1の他の装置と前記第2の他の装置との間の通信を、前記第1の識別情報に基づいて中継することを含む。
【0045】
この実施形態によれば、通信装置によって送受信されるユーザデータのそれぞれについて、通信装置の通信に関するか第2の他の装置の通信に関するかを、サービス品質に関する識別情報によって特定可能となる。この結果、例えば第1の他の装置が属するシステムにおいて、通信装置による通信のうち、通信装置に対する通信コストと、第2の他の装置に対する通信コストとを明確に区別して管理することが可能となる。
【0046】
10.上記実施形態に係るプログラムは、
第1の他の装置と第2の他の装置との間の通信を中継する通信装置に備えられたコンピュータに、
前記第2の他の装置のユーザデータの通信におけるサービス品質に関する第1の識別情報を、前記通信装置の前記第1の他の装置との間のユーザデータの通信においてサービス品質の識別情報として使用されることのない値に設定して、前記第1の他の装置と前記第2の他の装置との間の通信を、前記第1の識別情報に基づいて中継させる。
【0047】
この実施形態によれば、通信装置によって送受信されるユーザデータのそれぞれについて、通信装置の通信に関するか第2の他の装置の通信に関するかを、サービス品質に関する識別情報によって特定可能となる。この結果、例えば第1の他の装置が属するシステムにおいて、通信装置による通信のうち、通信装置に対する通信コストと、第2の他の装置に対する通信コストとを明確に区別して管理することが可能となる。
【0048】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。