(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】TBR空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 1/00 20060101AFI20241113BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20241113BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241113BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20241113BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20241113BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B60C1/00 A
C08L7/00
C08K3/013
B60C9/18 G
B60C9/00 J
B60C9/22 F
(21)【出願番号】P 2023526454
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2021079969
(87)【国際公開番号】W WO2022090387
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】102020000025834
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ フォルテ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ スピリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリア リッチオ
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダ セシリア バリオス ぺレス
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-016337(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010349(WO,A1)
【文献】特開2015-124371(JP,A)
【文献】国際公開第2020/012294(WO,A1)
【文献】特開2011-084665(JP,A)
【文献】特開2016-222842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-99/00
C08L 7/00
C08K 3/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスと、
トレッドと、
0.03°~0.1°の起倒角度θを有する単一コードから形成されており、軸線方向延在長さCWを含む、少なくとも1つの「高伸張ベルト」であって、前記トレッドの前記軸線方向延在長さに対するその比率(TW/CW)が1.1~1.4である、「高伸張ベルト」と、
を備えた、TBR空気入りタイヤであって、
前記トレッドが、
少なくとも50重量%の天然ゴム(NR)を含む架橋不飽和鎖ポリマー基と、
シリカおよびカーボンブラックを含む充填剤の混合物と、
加硫システムと、
を含むゴムパウンドで製造されており、
前記充填剤の混合物が、(a)表面積が
120~1
50m
2/gであり、120
~170cc/100g
の構造を有するカーボンブラックと、(b)表面積が
70~100m
2/gの第1のシリカと、(c)表面積が190m
2/gを超える第2のシリカと、を含
み、
前記充填剤の混合物が、(a)25~35重量%の前記カーボンブラック、(b)15~25重量%の前記第1のシリカ、および(c)50~60重量%の前記第2のシリカを含む、ことを特徴とする、TBR空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2のシリカが190~250m
2/gの表面積を有することを特徴とする、請求項1に記載のTBR空気入りタイヤ。
【請求項3】
4つのベルト(4)を備え、前記4つのベルトのうち、前記カーカス(2)から始まる第2のベルト(5)が「高伸張ベルト」であることを特徴とする、請求項1
または2に記載のTBR空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記「高伸張ベルト」(5)が、0.042の起倒角度θと、前記TW/CW比が1.25となるような延在長さと、を有することを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のTBR空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記高伸張ベルト(5)が、RT(Regular Tensile,通常張力)鋼またはHT(High Tensile,高張力)鋼またはSHT(Super High Tensile,超高張力)鋼またはUHT(Ultra High Tensile,超高張力)鋼から製造されることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載のTBR空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TBR空気入りタイヤに関する。略語「TBR」は、英語の「Truck& Bus Radial Tyre(トラックおよびバス用ラジアルタイヤ)」の頭字語である。
【背景技術】
【0002】
長らく、TBR空気入りタイヤの分野でも、転がり抵抗の観点からの性能改善を目的とした研究が部分的に行われてきた。最近では、このような要件は、燃料消費量の大幅な削減およびその結果としての環境へのCO2排出量の大幅な削減を課す多くの国際規制によっても規定されている。
【0003】
当業者に知られているように、空気入りタイヤのトレッドの転がり抵抗を改善するための対策は、関与するゴムコンパウンド内におけるシリカ含有量の増加に関連している。
【0004】
転がり抵抗の観点からの改善は得られるが、コンパウンド内におけるシリカ含有量の増加は、必然的に耐摩耗性の低下に繋がる。
【0005】
言うまでもなく、TBR空気入りタイヤの場合、耐摩耗性は、その効率に対する主要な要件の1つである。TBR空気入りタイヤの場合、転がり抵抗の改善の代償として耐摩耗性が低下することは、受け入れられない。
【0006】
TBR空気入りタイヤにおいて摩耗現象が最も多く存在するトレッド部分は、ショルダーである。
【0007】
このタイプの摩耗は、トレッドのセンターとショルダーとの間の異なる剛性と、転動中に空気入りタイヤが受ける横方向の力との両方に起因する。空気入りタイヤ業界では、この横方向の力は、英語で「ply steer(プライステア)」と呼ばれ、空気入りタイヤのカーカス内に存在する非対称性によって発生する。
【0008】
ショルダーの摩耗は、騒音問題を引き起こすことに加えて、トレッドの中央部分がまだ実質的に無傷であるにも関わらず、空気入りタイヤを交換する結果に繋がり得る。
【0009】
従って、トレッドの摩耗という観点において劣化をもたらすことなく、改善された転がり抵抗を示すTBR空気入りタイヤの製造を実施可能な解決策をもたらすことが必要とされている。
【0010】
本発明の発明者らは、ベルトパックとトレッドの組成との両方に介入することによって、上記の要件を満たすことができる解決策を実現した。
【0011】
「波状ベルト」という用語で示される従来のベルトの代わりに、「高伸張ベルト」という用語で示されるベルトを使用可能であることは、長い間知られている。
【0012】
「高伸張ベルト」という表現は、変形の関数として変化する剛性率によって特徴付けられるベルトを指す。特に、剛性率は、最小の力に対しては低く、より大きな力に対しては高くなる。これにより、加硫プロセス中にコードが拡張し、動作中に剛性率を確実に高めることが可能となる。
【0013】
より明確にするために、「高伸張ベルト」は、約3,000MPa(低モジュラス、0~約2%の変形または伸張)~125,000MPa(高モジュラス、約2%超の変形)まで変化する剛性率を有するコードを組み込んだベルトである。
【0014】
現在、複数の既知のタイプの「高伸張ベルト」が利用可能である。
【0015】
「高伸張ベルト」を適用することにより、従来の(「波状ベルト」)構造と比較して重要な利点が提供される。
【0016】
この点に関して、「波状ベルト」と定義されるベルトは、複数のカレンダー加工されたコード(好適には、9本のコード)のストリップとして適用されることを思い出すべきである。
【0017】
このストリップの適用により、必然的に、コードと縦中心面Lとの間の角度である有意な「起倒角度」または「トレッドベルト角度」θが予想される。更に、知られているように、そのようなストリップの端縁は、追加のベルトストリップを重ねることによって保護する必要がある。当業者に知られているように、角度θが大きくなればなるほど、かつ追加の保護ベルトストリップが大きくなればなるほど、空気入りタイヤの非対称性がより大きくなり、従って、空気入りタイヤが受ける「プライステア」がより大きくなる。
【0018】
対照的に、「高伸張ベルト」が1本のコードとして適用される限り、高伸張ベルトを極めて小さな角度θで配置することが可能であり、更に、ストリップの自由端縁を保護するためにコーティングを追加する必要はない。これら全てがベルトパックの非対称性を低減し、従って、「プライステア」を低減することになる。
【0019】
「波状ベルト」と比較して「高伸張ベルト」を使用する別の利点は、ほとんどトレッドショルダーまで軸線方向に延在する可能性にある。逆に、もし「波状ベルト」がトレッドショルダーまで延在した場合、その効果が損なわれ得る疲労荷重を受けることになる。
【0020】
要約すると、起倒角度θがゼロに近く、トレッドショルダーまで延在する「高伸張ベルト」を使用することにより、空気入りタイヤに改善された耐摩耗性がもたらされる。
【0021】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、特定のトレッド組成と組み合わせて「高伸張ベルト」を使用することにより、耐摩耗性という観点において予想される改善を保証することに加えて、転がり抵抗という観点においても著しい改善が見られることを見出した。
【0022】
以下に説明するように、「高伸張ベルト」の存在と特定のトレッド組成との間に予想外の相乗効果が確認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、カーカスと、トレッドと、0.03°~0.1°の起倒角度θを有する単一のコードから形成されており、軸線方向延在長さCWを含む、少なくとも1つの「高伸張ベルト」であって、前記トレッドの軸線方向延在長さに対するその比率(TW/CW)が1.1~1.4である、「高伸張ベルト」と、を含むTBR空気入りタイヤであって、前記トレッドが、少なくとも50重量%の天然ゴム(NR)を含む架橋不飽和鎖ポリマー基と、シリカおよびカーボンブラックを含む充填剤の混合物と、加硫システムとを含むゴムコンパウンドで製造されており、前記空気入りタイヤは、前記充填剤の混合物が、(a)表面積が99~170m2/gであり、120cc/100gを超える構造を有するカーボンブラックと、(b)表面積が100m2/g未満の第1のシリカと、(c)表面積が190m2/gを超える第2のシリカと、を含むことを特徴とする。
【0025】
本明細書において、「架橋不飽和鎖ポリマー基」という用語は、架橋剤、例えば硫黄による架橋(加硫)時に、エラストマについて通常想定される化学物理的特性および機械的特性の全てを実現することができる任意の天然または合成の非架橋ポリマーを指す。
【0026】
本明細書において、「加硫システム」という用語は、少なくとも1つの架橋剤、例えば硫黄と、促進性化合物とを含む成分の複合体を指し、コンパウンド調製の最終混合工程において添加され、ポリマー基の加硫を促進する目的を有する。
【0027】
好適には、充填剤の混合物は、(a)15~40重量%の前記カーボンブラック、(b)10~35重量%の前記第1のシリカ、および(c)40~80重量%の190m2/gを超える表面積を有する第2のシリカを含む。
【0028】
好適には、充填剤の混合物は、(a)25~35重量%の前記カーボンブラック、(b)15~25重量%の前記第1のシリカ、および(c)50~60重量%の前記第2のシリカを含む。
【0029】
好適には、前記カーボンブラックは、120~150m2/gの表面積を有し、120~170cc/100gの構造を有し、(b)前記第1のシリカは、70~100m2/gの表面積を有し、(c)前記第2のシリカは、190~250m2/gの表面積を有する。
【0030】
好適には、「高伸張ベルト」(5)は、RT(Regular Tensile,通常張力)鋼またはHT(High Tensile,高張力)鋼またはSHT(Super High Tensile,超高張力)鋼またはUHT(Ultra High Tensile,超高張力)鋼から製造される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による空気入りタイヤの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に示す、単に例示的で非限定的な実施形態について記載する。添付図面は、本発明による空気入りタイヤの一部の断面図である。
【0033】
(実施例)
本発明による空気入りタイヤは、図面においてその全体が1で示されている。空気入りタイヤ1は、カーカス2、トレッド3、および複数のベルト4を備える。
【0034】
トレッドは、中央部分3aおよび一対のショルダー3bを含む。
【0035】
ベルト4は、上で定義した「高伸張ベルト」タイプの少なくとも1つのベルト5を含む。図面に示されるように、ベルト5は、特許請求の範囲で定義された要件を満たす軸線方向延在長さを有する。
【0036】
特に、空気入りタイヤ1は、4つのベルトを備え、そのうちのカーカス2から始まる第2のベルトが「高伸張ベルト」5である。
【0037】
3つのトレッドコンパウンド(A~C)を作製して、転がり抵抗、耐摩耗性および偏摩耗に関する特性を研究する試験用空気入りタイヤの製造に使用した。
【0038】
コンパウンドAは、本発明の組成を満たさない充填剤の混合物を含む一方、コンパウンドBおよびCは、本発明の組成を満たす充填剤の混合物を含む。
【0039】
以下に、実施例に記載したコンパウンドの調製手順を示す。この手順は、本発明を限定するものではない。
【0040】
「インターメッシュミキサー」という用語は、特許文献1に記載され特許請求されているような、ゴムを混合するための機械を指す。
【0041】
「非生産的混合工程」という用語は、加硫システムを除くコンパウンドの成分が添加され、架橋不飽和鎖ポリマー基と混合される混合工程を指す一方、「生産的混合工程」という用語は、加硫システムが添加され、調製中の混合物と混合される混合工程を指す。
【0042】
-コンパウンドの調製-
(第1の非生産的混合工程)
混合前に、5リットルの「インターメッシュミキサー」の第1の混合チャンバに、硫黄、ステアリン酸および促進剤を除く、表1および表2に列挙した成分を充填率60~70%で装填した。
【0043】
この第1の混合工程は、140℃の温度を60秒間維持しながら実施した。
【0044】
(第2の非生産的混合工程)
第1の工程の混合物を「インターメッシュ」ミキサーの第2の5リットルチャンバに排出し、35~41%の充填率に達した。
【0045】
この第2の混合工程は、155℃の温度を210秒間維持しながら実施した。
【0046】
(生産的混合工程)
第2の非生産的混合工程から得られた混合物を2リットルの接線ローターミキサーに排出し、これに硫黄、ステアリン酸および促進剤を添加して、70%に等しい充填率に達した。
【0047】
ミキサーを20~40rpmの速度で操作し、得られた混合物を100~110℃の温度に達した時点で取り出した。
【0048】
表1は、実施例のコンパウンドのphrでの組成を示す。
【0049】
【表1】
NRは、天然由来の1,4-cis-ポリイソプレンゴムである。
S-SBRは、それぞれ、平均分子量が800~1500×10
3および500~900×10
3の範囲、スチレン含有量が10~45%の範囲、ビニル含有量が20~70%の範囲の溶液重合プロセスによって得られるポリマー基である。
カーボンブラックの表面積は、138m
2/gである。
第1のシリカ(VLSA)の表面積は、80m
2/gである。
第2のシリカ(HSA)の表面積は、200m
2/gである。
利用される加硫促進剤は、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジル-スルフェンアミド(TBBS)である。
【0050】
表1に報告したコンパウンドを5つの空気入りタイヤ(I~V)の構築に使用した。特に、空気入りタイヤI~IVは、比較例である一方、空気入りタイヤVは、本発明による空気入りタイヤを表している。
【0051】
特に、空気入りタイヤIは、「高伸張ベルト」を含まず、充填剤の混合物がカーボンブラックおよび高表面積を有するシリカのみを含むコンパウンド(コンパウンドA)を使用して製造されたトレッドを含み;空気入りタイヤIIは、「高伸張ベルト」を含まず、充填剤の混合物がカーボンブラック、本発明による高表面積シリカおよび低表面積シリカを、本発明による比率とは異なる比率で含むコンパウンド(コンパウンドB)を使用して製造されたトレッドを含み;空気入りタイヤIIIは、「高伸張ベルト」を含まず、充填剤の混合物がカーボンブラック、高表面積シリカおよび低表面積シリカを本発明による比率で含むコンパウンド(コンパウンドC)を使用して製造されたトレッドを含み;空気入りタイヤIVは、本発明の特徴による「高伸張ベルト」を含み、充填剤の混合物がカーボンブラックおよび高表面積シリカのみを含むコンパウンド(コンパウンドA)を使用して製造されたトレッドを含み;空気入りタイヤVは、本発明の特徴による「高伸張ベルト」を含み、充填剤の混合物がカーボンブラック、高表面積シリカおよび低表面積シリカを、本発明による比率で含むコンパウンド(コンパウンドC)を使用して製造されたトレッドを含む。
【0052】
空気入りタイヤIVおよびVについては、コードを0.042の起倒角度θで適用して「高伸張ベルト」を作製した。
【0053】
空気入りタイヤIVおよびVについては、TW/CW比は、1.25である。
【0054】
空気入りタイヤI~IIIについては、TW/CW比(これらの場合のCWは、最も幅広いベルトの延在長さである)は、1.5である。
【0055】
転がり抵抗、耐摩耗性、および偏摩耗に関するこれらの特性を評価するために、空気入りタイヤI~Vに対して一連の試験を実施した。
【0056】
転がり抵抗は、R117規格に従って測定した。
【0057】
耐摩耗性は、以下に記載の手順を使用して評価した:
空気入りタイヤを同等のトラクターおよびトレーラーに取り付けて、同じ動作条件(例えば、走行した道路の種類、走行距離および負荷)にさらした。
【0058】
手順中、空気入りタイヤのトレッドの主溝の深さを記録し、トレッドがカッピング、リブの窪み、ウイングの交互摩耗またはショルダーの摩耗等の偏摩耗の兆候を示したか否かを記録した。
【0059】
耐摩耗性について記録したデータは、以下の通りである:
WTD=OTD-RTD
KPM=(KM covered)/WTD
OTD=元のトレッド深さ
RTD=残りのトレッド深さ
【0060】
KPMは、摩耗を仕様間で分類するためのパラメータである。
【0061】
表IIでは、転がり抵抗および耐摩耗性に関する結果が、空気入りタイヤIに関して得られた結果に基づいて、指数化された形式で表されている。報告された数値が大きいほど、転がり抵抗および耐摩耗性がより良好である。
【0062】
偏摩耗は、新しいトレッドの形状に従って成形された剛性プロファイルを用いて評価した。空気入りタイヤを使用した後、剛性プロファイルをトレッドに当接させて、トレッドが剛性プロファイルに依然として接着しているか否かについて評価した。空気入りタイヤを使用した後、トレッドが均一に摩耗していた場合、トレッドのショルダーに関連する部分は、依然として剛性プロファイルに接着するだろう。逆に、トレッドが不規則に磨耗していた場合、トレッドショルダーに関連する部分は、剛性プロファイルにもはや接着しないだろう。
【0063】
表IIにおいて、不規則な摩耗値は、基準として使用した空気入りタイヤIにおける剛性プロファイルに接着するゴムの欠損体積に対する剛性プロファイルに接着するゴムの欠損体積の%にて表されている。
【0064】
【0065】
表2に報告されたデータから明白であるように、本発明に従って得られた空気入りタイヤは、特定の充填剤の混合物と「高伸張ベルト」とを組み合わせて使用することによって、転がり抵抗、耐摩耗性および偏摩耗について大幅な改善を保証する。
【0066】
この観点において、転がり抵抗に関して予想外の相乗効果があることに留意すべきである。実際、本発明の空気入りタイヤ(空気入りタイヤV)は、両方とも同じコンパウンド(コンパウンドC)を使用しているにも関わらず、空気入りタイヤIIIよりも優れた転がり抵抗の結果をもたらしている。
【0067】
換言すれば、「高伸張ベルト」を使用することにより、耐摩耗性および偏摩耗の観点において改善が保証され、驚くべきことに、転がり抵抗の観点において、トレッドコンパウンド充填剤の特定の組み合わせとの相乗効果が生み出される。
【0068】
このように、耐摩耗性を悪化させる結果となることなく、転がり抵抗が改善された空気入りタイヤの製造が可能となる。