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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】検査方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 51/00 20060101AFI20241113BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
F04B51/00
G01N30/86 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023546807
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2022027160
(87)【国際公開番号】W WO2023037751
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2021148620
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】金井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】秋枝 大介
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/055866(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/008617(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109282953(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 51/00
G01N 30/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シリンダと、
前記第1シリンダ内を往復運動する第1プランジャと、
前記第1シリンダの上流側に接続され、送液対象である流体を貯留する流体タンクと、
前記第1シリンダの上流側に接続され、前記第1シリンダから前記流体タンクへの送液対象の逆流を抑制する第1逆止弁と、
前記第1シリンダの下流側に接続され、下流側の流路から前記第1シリンダへの送液対象の逆流を抑制する第2逆止弁と、
前記第2逆止弁の下流側に接続された圧力センサと
を備えた送液装置の耐圧検査方法であって、
前記第1プランジャを吸引方向に駆動することによって前記流体タンクから前記第1シリンダ内に流体を吸引する吸引工程と、
前記吸引工程の後に、前記第1プランジャを吐出方向に駆動する第1工程と、
前記第1プランジャを予め定めた第1時間の間停止する第2工程と、
前記第1プランジャを前記吐出方向に駆動する第3工程と、
前記第2工程の開始時から前記第3工程の終了時までに前記圧力センサで検出した圧力の検出値に基づいて、前記第2逆止弁より上流側の流路におけるリーク量を推定する第4工程とを有することを特徴とする送液装置の耐圧検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の送液装置の耐圧検査方法において、
前記第1工程では、前記圧力センサの検出値が第1目標圧力値に到達するように前記第1プランジャを吐出方向に駆動し、
前記第3工程では、前記圧力センサの検出値が第2目標圧力値に到達するように前記第1プランジャを吐出方向に駆動することを特徴とする耐圧検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の送液装置の耐圧検査方法において、
前記送液装置は、前記第1シリンダの下流側であって前記圧力センサとの間に設けられた第2シリンダと、前記第2シリンダ内を往復運動する第2プランジャとを備え、
前記第1工程の完了時点において、前記第1シリンダ内の圧力と前記第2シリンダ内の圧力とが同じになるように前記第1プランジャと第2プランジャとを駆動し、
前記第2工程において、前記第1プランジャと前記第2プランジャとを前記第1時間の間停止し、
前記第3工程において、前記第2プランジャを固定し、前記第1プランジャのみを前記吐出方向に駆動することを特徴とする送液装置の耐圧検査方法。
【請求項4】
請求項3に記載の送液装置の耐圧検査方法において、
前記第1工程の完了時点において、前記第2プランジャが予め定めた位置に移動するように前記第2プランジャを駆動することを特徴とする送液装置の耐圧検査方法。
【請求項5】
請求項1に記載の送液装置の耐圧検査方法において、
前記第4工程において推定した前記リーク量が予め定めた閾値を超えた場合に警告を発報する第5工程を有することを特徴とする送液装置の耐圧検査方法。
【請求項6】
請求項1に記載の送液装置の耐圧検査方法において、
前記第1工程から前記第4工程を前記送液装置の起動時に実施することを特徴とする送液装置の耐圧検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速液体クロマトグラフ質量分析装置(HPLC/MS)は、高速液体クロマトグラフ(HPLC)による測定対象物質の化学的構造および物性による分離と、質量分析装置(MS)による測定対象物質の質量による分離を組み合わせることで、試料中の各成分を定性・定量することができる装置である。この特長により、たとえば生体試料中の医薬品のように体内で代謝され多数の類似物質が混在しているような場合においても測定対象物質の定性・定量が可能であり、臨床検査分野への応用が期待されている。
【0003】
液体クロマトグラフ(LC)は、移動相を送液する送液ポンプ、試料を導入するオートサンプラ、試料を分離する分離カラム、試料中の目的成分を検出する検出器、それらを繋ぐ配管、装置動作を制御する制御装置などから構成されている。液体クロマトグラフの送液性能は、液体クロマトグラフ質量分析装置の分析精度に影響を与える場合があり、例えば、流路配管の緩みや流路部品からのリークにより送液性能が低下することがある。そこで、液体クロマトグラフでは、送液性能を担保するために、例えば、流路からのリーク量を測定するための耐圧検査を実施する。
【0004】
液体クロマトグラフの耐圧検査に係る技術としては、例えば、以下のものが知られている。
【0005】
特許文献1には、第2圧力センサからの圧力検出値と第4圧力センサからの圧力検出値とを互いに比較し、第2圧力センサの圧力検出値が第4圧力センサの圧力検出値以上の場合は、第2チェック弁は開状態となり終了し、第2圧力センサの圧力検出値が第4圧力センサの圧力検出値未満の場合はリーク判別が行われ、リークが起きていないと判別した場合は溶媒の判別を行い、メモリに予め格納された溶媒毎に決められた第1プランジャの圧縮距離を追加し駆動する高圧力定流量ポンプが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、試験モードにおいて、制御手段は、第1及び第2のポンピング・チャンバのうちの1つを圧力下に置き、且つそのような送出装置をポンピング・チャンバと圧力下で反対側の逆止弁を介した流体の連通状態に置いて、反対側のポンピング・チャンバの出口逆止弁の試験を可能にするポンピング・モードに2つのモータのうちの1つに行くよう指図し、更に、一方のモータをポンピング・モードに置き、次いで他方のモータをポンピング・モードに置いて、2つの出口逆止弁の試験を可能にする送出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-215125号公報
【文献】特開2008-111856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、液体クロマトグラフの耐圧検査に際しては、逆止弁のように上流側と下流側とで圧力が異なる可能性のある部材を考慮して流路に複数の圧力センサを配置することが考えられる。しかしながら、部品点数の増加は、部品コストの増加やメンテナンスの煩雑化、流路容量の増加によるスループットの低下、流路の接続箇所の増加によるリーク源の増加などにつながることが考えられる。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、部品点数の増加、スループットの低下、及びリーク源の増加を抑制することができる送液装置の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、第1シリンダと、前記第1シリンダ内を往復運動する第1プランジャと、前記第1シリンダの上流側に接続され、送液対象である流体を貯留する流体タンクと、前記第1シリンダの上流側に接続され、前記第1シリンダから前記流体タンクへの送液対象の逆流を抑制する第1逆止弁と、前記第1シリンダの下流側に接続され、下流側の流路から前記第1シリンダへの送液対象の逆流を抑制する第2逆止弁と、前記第2逆止弁の下流側に接続された圧力センサと、備えた送液装置の耐圧検査方法であって、前記第1プランジャを吸引方向に駆動することによって前記流体タンクから前記第1シリンダ内に流体を吸引する吸引工程と、前記吸引工程の後に、前記第1プランジャを吐出方向に駆動する第1工程と、前記第1プランジャを予め定めた第1時間の間停止する第2工程と、前記第1プランジャを前記吐出方向に駆動する第3工程と、前記第2工程の開始時から前記第3工程の終了時までに前記圧力センサで検出した圧力の検出値に基づいて、前記第2逆止弁より上流側の流路におけるリーク量を推定する第4工程とを有するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部品点数の増加、スループットの低下、及びリーク源の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態に係る送液装置を含む液体クロマトグラフの全体構成を概略的に示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る耐圧検査の処理内容を示すフローチャートである。
図3】第1プランジャの第1シリンダ内における位置と第1シリンダ内の圧力の関係を示す図である。
図4】圧力センサの検出値の時間変化の一例を示す図である。
図5】第2の実施の形態に係る送液装置を含む液体クロマトグラフの全体構成を概略的に示す図である。
図6】シリンダポンプの送液動作と第1及び第2プランジャの第1及び第2シリンダに対する位置との関係を示す図である。
図7】第2の実施の形態に係る耐圧検査の処理内容を示すフローチャートである。
図8】圧力センサの検出値の時間変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本実施の形態においては、液体クロマトグラフ(LC:Liquid Chromatograph)を例示して説明するが、これに限られず、高速液体クロマトグラフ(HPLC:High Performance Liquid Chromatograph)、超高速液体クロマトグラフ(UHPLC:Ultra-High Performance Liquid Chromatograph)などの他のクロマトグラフにも本発明を適用することができる。
【0015】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を図1図4を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る送液装置を含む液体クロマトグラフの全体構成を概略的に示す図である。
【0017】
図1において、液体クロマトグラフには、液体(溶媒)を送液先130に送液する送液装置が構成されている。液体クロマトグラフにおける液体(溶媒)の送液先130としては、例えば、分離カラム、質量分析装置(MS)やダイオードアレイ検出器(DAD)などの測定部やインジェクションユニット、洗浄対象の配管など、液体(溶媒)の送液を必要とする箇所である。
【0018】
送液装置は、送液対象の液体(溶媒)が収容された溶媒瓶110から溶媒を吸引して送液するシリンダポンプ100と、シリンダポンプ100と同様の構成を有し、送液対象の液体(溶媒)が収容された溶媒瓶210,310からそれぞれ溶媒を吸引して送液するシリンダポンプ200,300と、シリンダポンプ100,200,300から送液される液体の送液経路を、送液先130、廃液瓶121,122,123の間で切り換えるバルブ120と、送液装置を含む液体クロマトグラフの全体の動作を制御する制御装置140とから概略構成されている。
【0019】
シリンダポンプ100(より正しくは、後述する第1シリンダ101)の上流側には、送液対象である流体を貯留する溶媒瓶(流体タンク)110が接続されている。シリンダポンプ100は、1つのシリンダで構成されたいわゆる1シリンダポンプであり、第1シリンダ101と、第1シリンダ101内を往復運動する第1プランジャ102と、第1シリンダ101の上流側に接続され、第1シリンダ101から溶媒瓶110への送液対象の逆流を抑制する第1逆止弁103と、第1シリンダ101の下流側に接続され、下流側の流路から第1シリンダ101への送液対象の逆流を抑制する第2逆止弁104と、第2逆止弁104の下流側に接続された圧力センサ105とから構成されている。シリンダポンプ200,300についても同様の構成を有している。
【0020】
シリンダポンプ100では、第1プランジャ102を第1シリンダ101から引き抜く方向に移動させる(図1の右側に移動させる)ことで、第1シリンダ101の容積が増大して第1シリンダ101の内圧が下がる。このとき、第2逆止弁104は上流側と下流側の圧力差により閉じ、第1逆止弁103は上流側と下流側の圧力差により開いて、溶媒瓶110から第1シリンダ101内に溶媒が吸引される。
【0021】
また、第1プランジャ102を第1シリンダ101内に押し込む方向に移動させる(図1の左側に移動させる)ことで、第1シリンダ101の容積が減少して第1シリンダ101の内圧が上がる。このとき、第1逆止弁103は上流側と下流側の圧力差により閉じ、第2逆止弁104は上流側と下流側の圧力差により開くことで、第1シリンダ101内の溶媒が下流側に送液される。
【0022】
このように、第1プランジャ102が第1シリンダ101内を前後に摺動して第1シリンダ101の容積を増減させることができる。溶媒瓶110の溶媒が第1逆止弁103を介して第1シリンダ101に吸引され、第2逆止弁を介して下流側に送液される。
【0023】
圧力センサ105は、第2逆止弁104の下流側の流路の圧力を検出し、検出結果(圧力値)を制御装置140に送信する。
【0024】
バルブ120は、時計回りあるいは反時計回りに回転することで、各ポートに接続されている流路の接続関係を選択的に切り換える。例えば、図1に示す例では、シリンダポンプ100から送液された溶媒が送液先130に送液される。また、バルブ120の流路を、例えば、図1の状態から反時計回りに120°回転することで、シリンダポンプ100から送液される溶媒を廃液瓶121に送液されるように、かつ、他のシリンダポンプ300から送液先130に溶媒が送液されるように切り換えることができる。
【0025】
制御装置140は、キーボードやマウスなどの入力装置141やモニタなどの表示装置やプリンタなどの出力装置142を有している。なお、制御装置140に設ける入力装置141や出力装置142としては、タッチパネルのように入力機能と表示機能の両方の機能を有するものを用いても良い。制御装置140は、送液装置の動作を制御しつつ、圧力センサ105からの検出結果(圧力値)を取得し、取得した圧力値を用いることで耐圧検査を行う。
【0026】
図2は、耐圧検査の処理内容を示すフローチャートである。また、図3は、第1プランジャの第1シリンダ内における位置と第1シリンダ内の圧力の関係を示す図である。
【0027】
制御装置140は、送液装置を含む液体クロマトグラフの起動時や測定前に耐圧検査を行う。
【0028】
耐圧検査では、制御装置140は、まず、検査対象とする流路の密栓を行う(ステップS100)。これは、例えば、バルブ120を図1の状態から反時計回りに30°回転することで、検査対象とする流路(ここでは、シリンダポンプ100に繋がる流路)の接続先を無くすという方法をとる。
【0029】
続いて、シリンダポンプ100からの送液を開始し(ステップS110)、予め定めた目標の圧力P1まで圧力(圧力センサ105の検出値)を上昇させる(Phase_A)。
【0030】
続いて、予め定めた時間内に圧力P1まで圧力が上昇したか否かを判定し(ステップS120)、判定結果がNOの場合には、耐圧検査の結果を不合格として処理を終了する。また、ステップS120での判定結果がYESの場合には、シリンダポンプ100からの送液を停止する(ステップS130)。なお、ステップS120の処理においては、シリンダポンプ100から密栓個所(バルブ120)までの流路領域で許容されるリーク量を勘案して送液時間(∝第1プランジャ102の移動量)に制限を設けてもよい。
【0031】
ステップS130の処理が終了すると、続いて、シリンダポンプ100を動作させずに、既定の時間だけ待機し(Phase_B)、待機中の圧力降下量から第2逆止弁104より下流側の流路のリーク量を計算する(ステップS140)。
【0032】
続いて、計算した第2逆止弁104より下流側の流路のリーク量が予め定めた許容範囲内であるか否かを判定し(ステップS150)、判定結果がNOの場合には、耐圧検査の結果を不合格として処理を終了する。また、ステップS150での判定結果がYESの場合には、シリンダポンプ100からの送液を再開して追加送液を行い(ステップS160)、任意の圧力(例えば、圧力P1)までの昇圧を試み(Phase_C)、第2逆止弁104より上流側の流路のリーク量を計算する(ステップS170)。
【0033】
続いて、計算した第2逆止弁104より上流側の流路のリーク量が予め定めた許容範囲内であるか否かを判定し(ステップS180)、判定結果がYESであれば耐圧検査の結果を合格として処理を終了する。また、ステップS180での判定結果がNOの場合には、耐圧検査の結果を不合格として処理を終了する。
【0034】
ここで、第2逆止弁104より上流側の流路のリーク量の計算方法を、図4を参照しつつ説明する。
【0035】
以下の説明において、第2逆止弁104より上流側の流路での単位時間あたりのリーク量をV’L1、下流側の流路での単位時間あたりのリーク量をV’L2とする。図4においては、リーク量V’L1>リーク量V’L2のときであり、かつ、追加送液(図2のステップS160)で圧力値の上昇がみられたときの様子を示している。
【0036】
また、図4においては、圧力センサ105の検出値を実線で示し、Phase_B開始からPhase_Cで圧力上昇が見られるまでの圧力降下の傾きをP’12とする。また、第2逆止弁104より上流側の流路の推定圧力値を点線で示し、Phase_B開始から追加送液(図2のステップS160)の開始までの圧力降下の推定傾きをP’13、追加送液(図2のステップS160)の開始から圧力上昇が見られるまでの圧力上昇の推定傾きをP’23とする。
【0037】
また、Phase_Aでの到達目標圧力値をP1、追加送液(図2のステップS160)により圧力が上昇に転じたときの圧力値をP2、Phase_C開始時の第2逆止弁104より上流側の流路の推定圧力をP3とする。
【0038】
また、第1逆止弁103から第2逆止弁104までの体積をV1、第2逆止弁104から密栓個所(ここでは、バルブ120)までの体積をV2とする。また、追加送液(図2のステップS160)での単位時間あたりの送液流量をFとする。
【0039】
このとき、閉じた流路での単位時間あたりの圧力変化量P’は、体積弾性係数kと流路の体積V、単位時間あたりのリーク体積V’Lを用いて、下記の(式1)により表される。
【0040】
P’=(k/V)×V’L ・・・(式1)
したがって、下記の(式2)~(式4)の関係が導かれる。
【0041】
P’12=(k/V2)×V’L2 ・・・(式2)
P’13=(k/V1)×V’L1 ・・・(式3)
P’23=(k/V1)×(F+V’L1) ・・・(式4)
上記(式2)~(式4)を整理すると、第2逆止弁104より上流側の流路での単位時間あたりのリーク量V’L1について、設計値や物性値、観測可能な測定値のみを用いた下記の(式5)が成り立つ。
【0042】
V’L1=(V1P’12)/k-(t2F)/(t1+t2)=(V1V’L2)/ V2-(t2F)/(t1+t2) ・・・(式5)
V’L1≦V’L2のときは、リーク量の計算(図2のステップS140)において、第2逆止弁104より上流側の流路のリーク量も含めて評価できている。また、追加送液(図2のステップS160)で圧力値の上昇がみられないときは、リーク量の最低値を見積もることができる。
【0043】
以上のような本実施の形態においては、第1シリンダ101と、第1シリンダ101内を往復運動する第1プランジャ102と、第1シリンダ101の上流側に接続され、送液対象である流体を貯留する溶媒瓶110(流体タンク)と、第1シリンダ101の上流側に接続され、第1シリンダ101から溶媒瓶110への送液対象の逆流を抑制する第1逆止弁103と、第1シリンダ101の下流側に接続され、下流側の流路から第1シリンダ101への送液対象の逆流を抑制する第2逆止弁104と、第2逆止弁104の下流側に接続された圧力センサ105とを備えた送液装置の耐圧検査方法において、第1プランジャ102を吸引方向に駆動することによって溶媒瓶110から第1シリンダ101内に流体を吸引する吸引工程と、吸引工程の後に、第1プランジャ102を吐出方向に駆動する第1工程と、第1プランジャ102を予め定めた第1時間の間停止する第2工程と、第1プランジャ102を吐出方向に駆動する第3工程と、第2工程の開始時から第3工程の終了時までに圧力センサ105で検出した圧力の検出値に基づいて、第2逆止弁104より上流側の流路におけるリーク量を推定する第4工程とを有するように構成した。
【0044】
すなわち、第2逆止弁104の上流側にのみ圧力センサ105を配置し、圧力センサ105の検出値を用いて第2逆止弁104の上流側および下流側の耐圧検査を行うので、部品点数(圧力センサの数)の不要な増加を抑制することができ、部品コストの増加やメンテナンスの煩雑化を抑制することができる。
【0045】
また、圧力センサの増加を抑制することができるので、流路容量の増加を抑制することができ、スループットの低下を抑制することができる。
【0046】
また、流路における接続箇所、すなわちリーク源となりうる箇所の増加を抑制することができる。
【0047】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図5図8を参照しつつ詳細に説明する。
【0048】
本実施の形態は、2つのシリンダで構成されたいわゆる2シリンダポンプに本願発明を適用した場合を示すものである。
【0049】
図5は、本実施の形態に係る送液装置を含む液体クロマトグラフの全体構成を概略的に示す図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図5において、液体クロマトグラフには、液体(溶媒)を送液先130に送液する送液装置が構成されている。液体クロマトグラフにおける液体(溶媒)の送液先130としては、例えば、分離カラム、質量分析装置(MS)やダイオードアレイ検出器(DAD)などの測定部やインジェクションユニット、洗浄対象の配管など、液体(溶媒)の送液を必要とする箇所である。
【0051】
送液装置は、送液対象の液体(溶媒)が収容された溶媒瓶110から溶媒を吸引して送液するシリンダポンプ100Aと、送液対象の液体(溶媒)が収容された溶媒瓶410から溶媒を吸引して送液するシリンダポンプ400と、シリンダポンプ100A,400から送液される液体の送液経路を、送液先130、廃液瓶124の間で切り換えるバルブ120と、シリンダポンプ100A,400からバルブ120を介して供給される溶媒を混合して送液先130に送液する混合装置(混合器)150と、送液装置を含む液体クロマトグラフの全体の動作を制御する制御装置140とから概略構成されている。なお、シリンダポンプ400は、シリンダポンプ100Aと同様の構成を有する。
【0052】
シリンダポンプ100A(より正しくは、後述する第1シリンダ101)の上流側には、送液対象である流体を貯留する溶媒瓶110が接続されている。シリンダポンプ100Aは、2つのシリンダで構成されたいわゆる2シリンダポンプであり、第1シリンダ101と、第1シリンダ101内を往復運動する第1プランジャ102と、第1シリンダ101の上流側に接続され、第1シリンダ101から溶媒瓶110への送液対象の逆流を抑制する第1逆止弁103と、第1シリンダ101の下流側に接続され、下流側の流路から第1シリンダ101への送液対象の逆流を抑制する第2逆止弁104と、第2逆止弁104の下流側に接続された第2シリンダ106と、第2シリンダ106内を往復運動する第2プランジャ107と、第2シリンダ106の下流側の流路に接続された圧力センサ105とから構成されている。
【0053】
ここで、シリンダポンプ100Aにおける送液動作について説明する。図6は、シリンダポンプの送液動作と第1及び第2プランジャの第1及び第2シリンダに対する位置との関係を示す図である。
【0054】
図6においては、第1プランジャ102の位置を実線で示し、第2プランジャ107の位置を点線で示している。なお、図6において、縦軸はプランジャのシリンダに対する位置を、横軸は時間を示しており、縦軸に沿って上方がシリンダに対する挿入方向(図5における左側)、すなわち送液する方向である。
【0055】
図6に示すように、第1プランジャ102を初期位置(第1シリンダ101の容量が最小となる位置)から吸引方向(第1シリンダ101内から引き抜く方向)に摺動することにより、溶媒瓶110から第1シリンダ101へ溶媒を吸引している間(吸引中)に、第2プランジャ107を初期位置(第2シリンダ106の容量が最大となる位置)から送液方向(第2シリンダ106内に第2プランジャ107を押し込む方向)に摺動することにより、第2シリンダ106からの下流側への溶媒の送液を行う。このとき、第1逆止弁103は上流側と下流側の圧力差により閉じ、第2逆止弁104は上流側と下流側の圧力差により閉じている。すなわち、第1シリンダ101内は溶媒瓶110から供給される溶媒で満たされ、第2シリンダ106内の溶媒は下流側へ送液される。
【0056】
第1シリンダ101の吸引による溶媒充填が終了すると、続いて、継続される第2シリンダ106から下流側への送液と平行して、第1プランジャ102を送液方向に摺動することで第1シリンダ101内の溶媒を圧縮し、第1シリンダ101内の圧力を第2シリンダ106内の圧力と同等まで昇圧させる。このとき、第1逆止弁103と第2逆止弁104は、それぞれ、上流側と下流側の圧力差により閉じている。
【0057】
圧縮が完了したら、続いて、第2プランジャ107を吸引方向に摺動することで第1シリンダ101から送液される溶媒吸引する。このとき、第1シリンダ101から下流側への送液量(第1プランジャ102の送液方向への移動量)を第2シリンダ106の吸引量(第2プランジャ107の吸引方向への移動量)よりも大きくすることにより、第2シリンダ106の溶媒の吸引と、第2シリンダ106から下流側への溶媒の送液とを第1シリンダ101による下流側への送液でまかなう。この動作を交差と称する。このとき、第1逆止弁103は上流側と下流側の圧力差により閉じており、また、第2逆止弁104は上流側と下流側の圧力差により開いている。

【0058】
第1シリンダ101から第2シリンダ106への溶媒充填(交差)が終了して、第2プランジャ107が初期位置に到達したら、続いて、第2プランジャ107を停止して待機するとともに、第1プランジャ102は下流側への送液のみを担うため、交差のときよりも遅いスピードで送液を行い、初期位置へ戻る。このとき、第1逆止弁103は上流側と下流側の圧力差により閉じており、また、第2逆止弁104は上流側と下流側の圧力差により開いている。
【0059】
以上の動作、すなわち、第1プランジャ102の吸引、圧縮、交差、吐出、及び、第2プランジャ107の吐出、吸引、待機の動作を繰り返すことにより、2シリンダポンプであるシリンダポンプ100Aは、下流側の流路への送液を切れ目なく行う。
【0060】
圧力センサ105は、第2逆止弁104の下流側の流路の圧力を検出し、検出結果(圧力値)を制御装置140に送信する。
【0061】
バルブ120は、時計回りあるいは反時計回りに回転することで、各ポートに接続されている流路の接続関係を選択的に切り換える。例えば、図5に示す例では、シリンダポンプ100A,400から送液された溶媒が混合器150を介して送液先130に送液される。また、バルブ120の流路を図5の状態から反時計回りに60°回転させることで、シリンダポンプ100A,400から送液される溶媒を廃液瓶124に送液されるように切り換えることができる。
【0062】
制御装置140は、キーボードやマウスなどの入力装置141やモニタなどの表示装置やプリンタなどの出力装置142を有している。なお、制御装置140に設ける入力装置141や出力装置142としては、タッチパネルのように入力機能と表示機能の両方の機能を有するものを用いても良い。制御装置140は、送液装置の動作を制御しつつ、圧力センサ105からの検出結果(圧力値)を取得し、取得した圧力値を用いることで耐圧検査を行う。
【0063】
図7は、本実施の形態に係る耐圧検査の処理内容を示すフローチャートである。また、図8は、圧力センサの検出値の時間変化の一例を示す図である。
【0064】
制御装置140は、送液装置を含む液体クロマトグラフの起動時や測定前に耐圧検査を行う。
【0065】
耐圧検査では、制御装置140は、まず、検査対象とする流路の密栓を行う(ステップS200)。
【0066】
続いて、シリンダポンプ100Aからの送液を開始し(ステップS210)、予め定めた目標の圧力P1まで圧力(圧力センサ105の検出値)を上昇させる(Phase_A)。
【0067】
続いて、予め定めた時間内に圧力P1まで圧力が上昇したか否かを判定し(ステップS220)、判定結果がNOの場合には、耐圧検査の結果を不合格として処理を終了する。また、ステップS220での判定結果がYESの場合には、第1プランジャ102及び第2プランジャ107を停止してシリンダポンプ100Aからの送液を停止する(ステップS230)。なお、ステップS220の処理においては、シリンダポンプ100Aから密栓個所(バルブ120)までの流路領域で許容されるリーク量を勘案して送液時間(∝第2シリンダ106の圧縮効率)に制限を設けてもよい。
【0068】
続いて、後に第1プランジャ102による追加送液(後のステップS310)を実施する際に、第1プランジャ102の移動量に余裕を持たせるため、第1プランジャ102をHP戻しするとともに、第2プランジャ107を停止し(ステップS240)、第1プランジャ102による圧縮、及び、第2プランジャ107の停止を行う(ステップS250)。
【0069】
続いて、第2シリンダ106の容量を正確にする目的で、第1プランジャ102で交差動作をしながら、第2プランジャ107のHP戻しを行い(ステップS260)、次いで、第1プランジャ102のHP戻し、及び、第2プランジャ107の停止を行ってから(ステップS270)、第1プランジャ102による圧縮、及び、第2プランジャ107の停止を行う(ステップS280)。
【0070】
ステップS280の処理がすると、続いて、シリンダポンプ100Aを動作させずに、既定の時間だけ待機し(Phase_B)、待機中の圧力降下量から第2逆止弁104より下流側の流路のリーク量を計算する(ステップS290)。
【0071】
続いて、計算した第2逆止弁104より下流側の流路のリーク量が予め定めた許容範囲内であるか否かを判定し(ステップS300)、判定結果がNOの場合には、耐圧検査の結果を不合格として処理を終了する。
【0072】
また、ステップS300での判定結果がYESの場合には、第1プランジャ102の駆動による追加送液、及び、第2プランジャ107の停止を行い(ステップS310)、任意の圧力(例えば、圧力P1)までの昇圧を試み(Phase_C)、第2逆止弁104より上流側の流路のリーク量を計算する(ステップS320)。なお、第2逆止弁104より上流側の流路のリーク量の計算方法は、第1の実施の形態(図4参照)と同様である。
【0073】
続いて、計算した第2逆止弁104より上流側の流路のリーク量が予め定めた許容範囲内であるか否かを判定し(ステップS330)、判定結果がYESであれば耐圧検査の結果を合格として処理を終了する。また、ステップS330での判定結果がNOの場合には、耐圧検査の結果を不合格として処理を終了する。
【0074】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0075】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の構成を得ることができる。
【0076】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0077】
100,100A,200,300,400…シリンダポンプ、101…第1シリンダ、102…第1プランジャ、103…第1逆止弁、104…第2逆止弁、105…圧力センサ、106…第2シリンダ、107…第2プランジャ、110,210,310,410…溶媒瓶、120…バルブ、121,122,123,124…廃液瓶、130…送液先、140…制御装置、141…入力装置、142…出力装置、150…混合器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8