(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用非水系電解液及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20241113BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20241113BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20241113BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241113BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241113BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
H01M4/525
(21)【出願番号】P 2023551785
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 KR2022017463
(87)【国際公開番号】W WO2023085733
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0155291
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0144893
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヘウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンウ・オ
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-049153(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0070802(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第109273764(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112531210(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103887563(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05 - 10/0587
H01M 10/36 - 10/39
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、有機溶媒及び下記化学式1で表されるリン酸系添加剤を含むリチウム二次電池用非水系電解液:
【化1】
前記化学式1において、
前記R
は、H、C、N、O、F、P、S及びSiの何れか一つ以上の元素を含む鎖型または環形構造の官能基である。
【請求項2】
前記Rが、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立に水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、置換または非置換されたアミノ、置換または非置換されたメルカプト、置換または非置換されたカルバモイル、置換または非置換されたC
1‐7アルキル、置換または非置換されたC
1‐7ハロゲン化アルキル、置換または非置換されたC
2‐7アルケニル、置換または非置換されたC
2‐7アルキニル、置換または非置換されたC
1‐7アルコキシ、置換または非置換されたC
1‐4アルコキシ‐C
1‐4アルコキシ、置換または非置換されたC
6‐10アリール‐C
1‐4アルコキシ、置換または非置換されたC
2‐7アルケニルオキシ、置換または非置換されたC
2‐7アルキニルオキシ、置換または非置換されたC
3‐7シクロアルキル、置換または非置換されたC
3‐7シクロアルケニル、置換または非置換された3‐7員ヘテロシクロアルキル、置換または非置換されたC
3‐7シクロアルキルオキシ、置換または非置換されたC
3‐7シクロアルケニルオキシ、置換または非置換された3‐7員ヘテロシクロアルキルオキシ、置換または非置換されたC
6‐10アリール、置換または非置換された5‐10員ヘテロアリール、置換または非置換されたC
6‐10アリールオキシ、置換または非置換された5‐10員ヘテロアリールオキシ、置換または非置換されたモノ‐またはジ‐C
1‐4アルキルアミノ、置換または非置換されたモノ‐またはジ‐C
6‐10アリールアミノ、置換または非置換されたC
1‐4アルキルカルボニルアミノ、置換または非置換されたC
1‐4アルキルカルボニル、置換または非置換されたC
1‐4アルコキシカルボニル、置換または非置換されたC
2‐4アルケニルオキシカルボニル、及び置換または非置換されたC
2‐4アルキニルオキシカルボニルからなる群から選択されたことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項3】
前記Rが互いに同一であるか異なり、それぞれ独立に水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、置換または非置換されたアミノ、置換または非置換されたC
1‐4アルキル、置換または非置換されたC
1‐4ハロゲン化アルキル、置換または非置換されたC
2‐4アルケニル、置換または非置換されたC
2‐4アルキニル、置換または非置換されたC
1‐4アルコキシ、置換または非置換されたモノ‐またはジ‐C
1‐4アルキルアミノ、置換または非置換されたC
1‐4アルキルカルボニル、及び置換または非置換されたC
1‐4アルコキシカルボニルからなる群から選択されたことを特徴とする、請求項2に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項4】
前記Rが互いに同一であるか異なり、それぞれ独立に水素、ハロゲン、置換または非置換されたC
1‐4アルキル、置換または非置換されたC
1‐4ハロゲン化アルキル、及び置換または非置換されたC
2‐4アルケニルからなる群から選択されたことを特徴とする、請求項3に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項5】
前記リン酸系添加剤が電解液全体重量に対して0.01重量%~10重量%含まれることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項6】
前記リチウム塩がLiCl、LiBr、LiI、LiBF
4、LiClO
4、LiB
10Cl
10、LiAlCl
4、LiAlO
4、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiCH
3CO
2、LiCF
3CO
2、LiAsF
6、LiSbF
6、LiCH
3SO
3、LiSO
3F、LiN(SO
2F)
2、LiN(SO
2CF
2CF
3)
2及びLiN(SO
2CF
3)
2からなる群から選択されたことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項7】
前記リチウム塩の濃度が0.1M~3Mであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項8】
前記有機溶媒がエーテル、エステル、アミド、線形カーボネート、及び環形カーボネートからなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項9】
正極、負極、前記正極と前記負極の間に介在される分離膜、及び請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水系電解液を含む、リチウム二次電池。
【請求項10】
前記正極が正極活物質に基づく層状構造を持ち、
前記正極活物質が遷移金属全体の中でニッケルの含有量が60atm%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物を含むことを特徴とする、請求項9に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池の高温保存特性及び寿命特性を向上させることができる二次電池用非水系電解液及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は2021年11月12日付韓国特許出願第10‐2021‐0155291号及び2022年11月3日付韓国特許出願第10‐2022‐0144893号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として組み込む。
【背景技術】
【0003】
最近、リチウム二次電池の応用領域が電気、電子、通信、コンピューターのような電子機器の電力供給のみならず、自動車や電力保存装置のような大面積機器の電力保存供給まで急速に拡大されることによって、高容量、高出力でありながら高安定性の二次電池に対する要求が増えている。
【0004】
リチウム二次電池は一般にリチウム含有遷移金属酸化物などからなる正極活物質またはリチウムイオンを吸蔵及び放出することができる炭素材或いはケイ素材負極活物質と、選択的にバインダー及び導電材とを混合した物質をそれぞれ正極集電体及び負極集電体に塗布して正極と負極を製造し、これをセパレーターの両側に積層して所定の形状の電極集電体を形成した後、この電極集電体と非水電解液を電池ケースに挿入して製造される。ここで電池の性能を確保するために、ほぼ必須にフォーメーション(formation、化成)及びエージング(aging)工程を経るようになる。
【0005】
前記フォーメーション工程は電池の組み立て後、充電と放電を繰り返して二次電池を活性化する段階で、前記充電の際に正極で使われるリチウム含有遷移金属酸化物から出たリチウムイオンが負極で使われる炭素材負極活物質に移動して挿入される。この時、反応性が強いリチウムイオンは電解質と反応してLi2CO3、Li2O、LiOH、LiFなどの化合物を生成し、この化合物は電極の表面に固体電解質界面(Solid Electrolyte Interface:SEI)層を形成する。前記SEI層は寿命及び容量維持に密接に影響を与えるので、SEI層形成は重要な因子である。
【0006】
最近、特に自動車用リチウム二次電池では、高容量、高出力、長期寿命特性が重要になっている。高容量化のために正極の側面ではエネルギー密度が高くても安定性が低い正極活物質を使用するので、これによって、正極活物質の表面を保護して正極活物質を安定化させることができる活物質‐電解質界面の形成が必要であり、負極の側面では負極の表面種が電解液に分解されて副反応を起こす問題点などが報告されている。
【0007】
具体的に、リチウムイオン電池は現在エネルギー密度を確保するために、高電圧及び高含量のニッケル正極を使用する場合が多く、電池の電圧が増加するほど正極の表面で電気化学的副反応が増加し、ニッケル‐コバルト‐マンガン(NCM)正極の場合、ニッケルの含量が増加するほど構造の不安定性が増加して電解液の分解が促進されることがある。この時、溶媒が分解されてガスが発生したり、抵抗が増加して塩分解によってHFが生成されて金属酸化物である正極活物質の遷移金属溶出を加速化させ得る。また、活物質の表面上に形成されるSEI層を破壊して電池抵抗の増加、寿命劣化などの問題を発生させることがあり、高温で保存する際、電解液内で発生したHF、PF5などによって正極構造とSEI層が徐々に崩壊して追加的な電極での副反応を発生させ得る。
【0008】
したがって、上述した問題を解決するために、当該技術分野では高温保存の際に副反応を抑制することができる堅固なSEI層を形成するための研究が続いており、その一環として電解液内の添加剤に対する研究も持続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10‐2011‐0116019号公報
【文献】韓国公開特許第10‐2015‐0089712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は従来の問題点を解決するためのものであって、リチウム二次電池用非水系電解液に添加剤としてリチウム二次電池で必然的に発生する正極及び負極表面での副反応を効果的に抑制することができる被膜を形成することが可能な伝導性に優れる特定構造のリン酸系添加剤を含むことで、これを含むリチウム二次電池の高温保存特性及び寿命特性を向上させることができるリチウム二次電池用電解液を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は前記リチウム二次電池用非水系電解液を含むことで、正極及び負極の表面に被膜形成が可能であり、電池の耐久性、すなわち、高温保存特性及び寿命特性が著しく向上されたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、リチウム塩、有機溶媒及び下記化学式1で表されるリン酸系添加剤を含むリチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0013】
【化1】
前記化学式1において、
前記Rは被膜形成に役立つ官能基で、H、C、N、O、F、P、S及びSiの何れか一つ以上の元素を含む鎖型または環形構造の官能基である。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、前記化学式1のうち、前記Rが、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立に水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、置換または非置換されたアミノ、置換または非置換されたメルカプト、置換または非置換されたカルバモイル、置換または非置換されたC1‐7アルキル、置換または非置換されたC1‐7ハロゲン化アルキル、置換または非置換されたC2‐7アルケニル、置換または非置換されたC2‐7アルキニル、置換または非置換されたC1‐7アルコキシ、置換または非置換されたC1‐4アルコキシ‐C1‐4アルコキシ、置換または非置換されたC6‐10アリール‐C1‐4アルコキシ、置換または非置換されたC2‐7アルケニルオキシ、置換または非置換されたC2‐7アルキニルオキシ、置換または非置換されたC3‐7シクロアルキル、置換または非置換されたC3‐7シクロアルケニル、置換または非置換された3‐7員ヘテロシクロアルキル、置換または非置換されたC3‐7シクロアルキルオキシ、置換または非置換されたC3‐7シクロアルケニルオキシ、置換または非置換された3‐7員ヘテロシクロアルキルオキシ、置換または非置換されたC6‐10アリール、置換または非置換された5‐10員ヘテロアリール、置換または非置換されたC6‐10アリールオキシ、置換または非置換された5‐10員ヘテロアリールオキシ、置換または非置換されたモノ‐またはジ‐C1‐4アルキルアミノ、置換または非置換されたモノ‐またはジ‐C6‐10アリールアミノ、置換または非置換されたC1‐4アルキルカルボニルアミノ、置換または非置換されたC1‐4アルキルカルボニル、置換または非置換されたC1‐4アルコキシカルボニル、置換または非置換されたC2‐4アルケニルオキシカルボニル、及び置換または非置換されたC2‐4アルキニルオキシカルボニルからなる群から選択されたものである、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0015】
本発明の一実施形態は、前記化学式1のうち、前記Rが互いに同一であるか異なり、それぞれ独立に水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、置換または非置換されたアミノ、置換または非置換されたC1‐4アルキル、置換または非置換されたC1‐4ハロゲン化アルキル、置換または非置換されたC2‐4アルケニル、置換または非置換されたC2‐4アルキニル、置換または非置換されたC1‐4アルコキシ、置換または非置換されたモノ‐またはジ‐C1‐4アルキルアミノ、置換または非置換されたC1‐4アルキルカルボニル、及び置換または非置換されたC1‐4アルコキシカルボニルからなる群から選択されたものである、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態は、前記化学式1のうち、前記Rが互いに同一であるか異なり、それぞれ独立に水素、ハロゲン、置換または非置換されたC1‐4アルキル、置換または非置換されたC1‐4ハロゲン化アルキル、及び置換または非置換されたC2‐4アルケニルからなる群から選択されたものである、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0017】
本発明の一実施形態は、前記リン酸系添加剤が電解液全体重量に対して0.01重量%~10重量%で含まれる、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0018】
本発明の実施形態は、前記リチウム塩がLiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiAlO4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCH3CO2、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiCH3SO3、LiSO3F、LiFSI(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiN(SO2F)2)、LiBETI(lithium bisperfluoroethanesulfonimide、LiN(SO2CF2CF3)2及びLiTFSI(lithium(bis)trifluoromethanesulfonimide、LiN(SO2CF3)2)からなる群から選択されたものである、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0019】
本発明の一実施形態は、前記リチウム塩の濃度が0.1M~3Mである、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0020】
本発明の一実施形態は、前記有機溶媒がエーテル、エステル、アミド、線形カーボネート、環形カーボネートからなる群から選択された1種以上を含むものである、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態は、正極、負極、前記正極と前記負極の間に介在される分離膜及び前記リチウム二次電池用非水系電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【0022】
本発明の一実施形態は、前記正極が正極活物質に基づく層状構造を持ち、遷移金属全体のうち、ニッケルの含有量が60atm%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物を含むものである、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるリチウム二次電池用非水系電解液は特定構造のリン酸系添加剤を含むものであり、非水電解液自体の分解反応を抑制するだけでなく、正極及び負極の表面に被膜を形成して、リチウム二次電池で必然的に発生する正極及び負極表面での副反応を効果的に抑制する効果を示す。
【0024】
これによって、前記リチウム二次電池用非水系電解液を含むリチウム二次電池の耐久性、すなわち、高温保存特性及び寿命特性を向上させる効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明によって提供される具体例は下記説明によっていずれも達成されることができる。下記の説明は本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解されるべきであり、本発明が必ずしもこれに限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0026】
本明細書で使われた用語「Cn1‐n2」は官能基で炭素数がn1~n2個であることを意味する。
【0027】
本明細書で使われた用語「アルキル」は一つのラジカルを含む直鎖または分岐鎖飽和炭化水素を意味し、一つのラジカルは官能基として結合位置を決め、結合位置は特に制限されない。前記用語「アルキル」の例は、メチル、エチル、n‐プロピル、i‐プロピル、n‐ブチル、i‐ブチル、t‐ブチル、n‐ペンチル、i‐ペンチル及びヘキシルなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0028】
本明細書で使われた用語「アルキレン」は2つのラジカルを含む直鎖または分岐鎖飽和炭化水素を意味し、2つのラジカルそれぞれは官能基として結合位置を決定し、結合位置は特に制限されない。前記用語「アルキレン」の例はメチレン及びエチレンなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0029】
本明細書で使われた用語「アルケニル」は一つのラジカルを含み、一つ以上の炭素‐炭素二重結合を持つ直鎖または分岐鎖炭化水素を意味し、一つのラジカルは官能基として結合位置を決定し、結合位置は特に制限されない。前記用語「アルケニル」の例はエテニル及びプロペニルなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0030】
本明細書で使われた用語「アルキニル」は一つのラジカルを含み、一つ以上の炭素‐炭素三重結合を持つ直鎖または分岐鎖炭化水素を意味し、一つのラジカルは官能基として結合位置を決定し、結合位置は特に制限されない。前記用語「アルキニル」の例はアセチレニル及び1‐プロピニルなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0031】
本明細書で使われた用語「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)を意味する。
【0032】
本明細書で使われた用語「ハロゲン化アルキル」はアルキルで一つ以上の水素がハロゲンに置換されたことを意味する。
【0033】
本明細書で使われた用語「シクロアルキル」は一つのラジカルを含み、一つ以上の環を持つ飽和炭化水素を意味し、一つのラジカルは官能基として結合位置を決定し、結合位置は特に制限されない。前記用語「シクロアルキル」の例はシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0034】
本明細書で使われた用語「シクロアルケニル」は一つのラジカルを含み、一つ以上の環を持ち、環内で一つ以上の炭素‐炭素二重結合を持つ炭化水素を意味し、一つのラジカルは官能基として結合位置を決定し、結合位置は特に制限されない。前記用語「シクロアルケニル」の例はシクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロヘプテニルなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0035】
本明細書で使われた用語「n1‐n2員」は炭素数とヘテロ元素数の和の数がn1~n2個であることを意味する。ヘテロ元素は広くは炭素ではない他の元素を意味するが、本明細書において、用語「n1‐n2員」は環形官能基の前に使われて環を構成する元素数を意味する。
【0036】
本明細書で使われた用語「ヘテロシクロアルキル」は一つのラジカルを含み、一つ以上の環を持ち、環内で一つ以上のヘテロ元素を持つ飽和炭化水素を意味し、一つのラジカルは官能基として結合位置を決定し、結合位置は特に制限されない。前記ヘテロ元素は環を形成することができるもので、例示的に、O、N、S、Pなどがある。前記用語「ヘテロシクロアルキル」の例はピペリジニル及びテトラヒドロピラニルを含むが、必ずこれに制限されない。
【0037】
本明細書で使われた用語「アリール」は一つのラジカルを含み、一つ以上の環を持つ芳香族環系炭化水素を意味し、一つのラジカルは官能基として結合位置を決定し、結合位置は特に制限されない。前記用語「アリール」の例はフェニル及びナフチルなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0038】
本明細書で使われた用語「アリーレン」は2つのラジカルを含み、一つ以上の環を持つ芳香族環系炭化水素を意味し、2つのラジカルそれぞれは官能基として結合位置を決定し、結合位置は特に制限されない。前記用語「アリーレン」の例はフェニレン及びナフチレンなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。上述した「アルキレン」及び「アリーレン」は組み合わせて、例えば、メチレン‐フェニレンなどのような形態で使用することができる。
【0039】
本明細書で使われた用語「ヘテロアリール」は一つのラジカルを含み、一つ以上の環を持ち、環内で一つ以上のヘテロ元素を持つ芳香族環系炭化水素を意味し、一つのラジカルは官能基として結合位置を決定し、結合位置は特に制限されない。前記ヘテロ元素は環を形成することができるもので、例示的に、O、N、Sなどがある。前記用語「ヘテロアリール」の例はピロリル及びフラニルなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0040】
本明細書で使われた用語「アルコキシ」はRaが上述したアルキルである‐ORa形態の官能基を意味する。前記用語「アルコキシ」の例はメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n‐プロポキシ、イソプロポキシ、n‐ブトキシ及びt‐ブトキシなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0041】
本明細書で使われた用語「アルコキシ‐アルコキシ」はRaがアルキレンで、Rbが上述したアルキルである‐ORa‐ORb形態の官能基を意味する。前記用語「アルコキシ‐アルコキシ」の例はメトキシ‐メトキシ、メトキシ‐エトキシ及びエトキシ‐エトキシなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0042】
本明細書で使われた用語「アリール‐アルコキシ」はRaがアルキレンで、Rbが上述したアリールである‐ORa‐Rb形態の官能基を意味する。前記用語「アリール‐アルコキシ」の例はフェニル‐メトキシ及びフェニル‐エトキシなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0043】
本明細書で使われた用語「アルケニルオキシ」はRaが上述したアルケニルである‐ORa形態の官能基を意味する。前記用語「アルケニルオキシ」の例はエテニルオキシ及びプロペニルオキシなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0044】
本明細書で使われた用語「アルキニルオキシ」はRaが上述したアルキニルである‐ORa形態の官能基を意味する。前記用語「アルキニルオキシ」の例はエチニルオキシ及びプロピニルオキシなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0045】
本明細書で使われた用語「シクロアルキルオキシ」はRaが上述したシクロアルキルである‐ORa形態の官能基を意味する。前記用語「シクロアルキルオキシ」の例はシクロペンチルオキシ及びシクロヘキシルオキシなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0046】
本明細書で使われた用語「シクロアルケニルオキシ」はRaが上述したシクロアルケニルである‐ORa形態の官能基を意味する。前記用語「シクロアルケニルオキシ」の例はシクロペンテニルオキシ及びシクロヘキセニルオキシなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0047】
本明細書で使われた用語「ヘテロシクロアルキルオキシ」はRaが上述したヘテロシクロアルキルである‐ORa形態の官能基を意味する。前記用語「ヘテロシクロアルキルオキシ」の例はピペリジニルオキシ及びテトラヒドロピラニルオキシなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0048】
本明細書で使われた用語「アリールオキシ」はRaが上述したアリールである‐ORa形態の官能基を意味する。前記用語「アリールオキシ」の例はフェニルオキシ及びナフチルオキシなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0049】
本明細書で使われた用語「ヘテロアリールオキシ」はRaが上述したヘテロアリールである‐ORa形態の官能基を意味する。前記用語「ヘテロアリールオキシ」の例はピロリルオキシ及びフラニルオキシなどを含むが、必ずしもこれに制限されない。
【0050】
本明細書で使われた用語「メルカプト」は‐SH形態の官能基を意味する。
【0051】
本明細書で使われた用語「ヒドロキシ」は‐OH形態の官能基を意味する。
【0052】
本明細書で使われた用語「アミノ」は‐NH2形態の官能基を意味する。前記アミノは一つ以上の水素が上述したアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールなどに置換されることができる。例えば、前記アミノで一つの水素がアルキルに置換されれば、モノ‐アルキルアミノと命名され、前記アミノで2つの水素がアルキルに置換されれば、ジ‐アルキルアミノと命名される。
【0053】
本明細書で使われた用語「カルボニルアミノ」はRaが上述したアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールなどである‐NHC(O)Ra形態の官能基を意味する。ここで、水素もアルキルなどに置換されることができる。
【0054】
本明細書で使われた用語「シアノ」は‐CN形態の官能基を意味する。
【0055】
本明細書で使われた用語「カルバモイル」は‐C(O)NH2形態の官能基を意味する。ここで、一つ以上の水素もアルキルなどに置換されることができる。
【0056】
本明細書で使われた用語「ニトロ」は‐NO2形態の官能基を意味する。
【0057】
本明細書で使われた用語「カルボニル」は、Raが上述したアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシなどである‐C(O)Ra形態の官能基を意味する。例えば、Raがアルキルの場合、「アルキルカルボニル」とも命名され、Raがアルコキシの場合、「アルコキシカルボニル」とも命名される。また、Raがアルケニルオキシの場合、「アルケニルオキシカルボニル」とも命名され、Raがアルキニルオキシの場合、「アルキニルオキシカルボニル」とも命名される。
【0058】
本明細書で使われた用語「置換または非置換」とは、当該官能基が置換されるか非置換された状態で存在することを意味し、置換は化合物の炭素原子に結合された水素原子が他の置換基に代わることを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置、すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一であるか、または異なっていてもよい。
【0059】
前記置換基は当該技術分野で一般に使われる置換基であれば、特に制限せずに使われることができる。前記置換基は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C1‐4アルキル、C1‐4ハロゲン化アルキル、C1‐4アルコキシ、C1‐4アルコキシ‐C1‐4アルコキシ、C3‐7シクロアルキル、C3‐7シクロアルケニル、C3‐7シクロアルキルオキシ、3‐7員ヘテロシクロアルキル、C6‐10アリール、5‐10員ヘテロアリール、モノ‐またはジ‐C1‐4アルキルアミノ、モノ‐またはジ‐C6‐10アリールアミノ、カルボニルアミノ、C1‐4アルキルカルボニル、C1‐4アルコキシカルボニル、C2‐4アルケニルオキシカルボニル、及びC2‐4アルキニルオキシカルボニルなどを含むことができる。
【0060】
本発明において、「化学式または化合物構造に置換基が表示されない場合」は炭素原子に水素原子が結合されたことを意味する。ただし、重水素(2H、Deuterium)は水素の同位元素なので、一部の水素原子は重水素であってもよい。
【0061】
本発明は、リチウム塩、有機溶媒及び下記化学式1で表されるリン酸系添加剤を含むリチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0062】
【化2】
前記化学式1において、
前記Rは被膜形成に役立つ官能基であり、H、C、N、O、F、P、S及びSiの何れか一つ以上の元素を含む鎖型または環形構造の官能基である。
【0063】
本発明の一実施形態において、前記化学式1のうち、前記Rは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立に水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、置換または非置換されたアミノ、置換または非置換されたメルカプト、置換または非置換されたカルバモイル、置換または非置換されたC1‐7アルキル、置換または非置換されたC1‐7ハロゲン化アルキル、置換または非置換されたC2‐7アルケニル、置換または非置換されたC2‐7アルキニル、置換または非置換されたC1‐7アルコキシ、置換または非置換されたC1‐4アルコキシ‐C1‐4アルコキシ、置換または非置換されたC6‐10アリール‐C1‐4アルコキシ、置換または非置換されたC2‐7アルケニルオキシ、置換または非置換されたC2‐7アルキニルオキシ、置換または非置換されたC3‐7シクロアルキル、置換または非置換されたC3‐7シクロアルケニル、置換または非置換された3‐7員ヘテロシクロアルキル、置換または非置換されたC3‐7シクロアルキルオキシ、置換または非置換されたC3‐7シクロアルケニルオキシ、置換または非置換された3‐7員ヘテロシクロアルキルオキシ、置換または非置換されたC6‐10アリール、置換または非置換された5‐10員ヘテロアリール、置換または非置換されたC6‐10アリールオキシ、置換または非置換された5‐10員ヘテロアリールオキシ、置換または非置換されたモノ‐またはジ‐C1‐4アルキルアミノ、置換または非置換されたモノ‐またはジ‐C6‐10アリールアミノ、置換または非置換されたC1‐4アルキルカルボニルアミノ、置換または非置換されたC1‐4アルキルカルボニル、置換または非置換されたC1‐4アルコキシカルボニル、置換または非置換されたC2‐4アルケニルオキシカルボニル、及び置換または非置換されたC2‐4アルキニルオキシカルボニルからなる群から選択されたものであってもよい。
【0064】
本発明の他の実施形態において、前記化学式1のうち、前記Rが互いに同一であるか異なり、それぞれ独立に水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、置換または非置換されたアミノ、置換または非置換されたC1‐4アルキル、置換または非置換されたC1‐4ハロゲン化アルキル、置換または非置換されたC2‐4アルケニル、置換または非置換されたC2‐4アルキニル、置換または非置換されたC1‐4アルコキシ、置換または非置換されたモノ‐またはジ‐C1‐4アルキルアミノ、置換または非置換されたC1‐4アルキルカルボニル、及び置換または非置換されたC1‐4アルコキシカルボニルからなる群から選択されたものであってもよい。
【0065】
本発明のまた他の実施形態において、前記化学式1のうち、前記Rが互いに同一であるか異なり、それぞれ独立に水素、ハロゲン、置換または非置換されたC1‐4アルキル、置換または非置換されたC1‐4ハロゲン化アルキル、及び置換または非置換されたC2‐4アルケニルからなる群から選択されたものであってもよい。
【0066】
本発明の一実施形態において、前記リン酸系添加剤は電解液全体重量に対して0.01重量%ないし10重量%で含まれることができる。具体的に、前記リン酸系添加剤は電解液全体重量に対して0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上で、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下であり、0.01重量%~10重量%、0.1重量%~5重量%、0.5重量%~3重量%、1重量%~3重量%であってもよい。前記リン酸系添加剤の含有量が前記範囲未満である場合、高温保存や長時間電池駆動の際に電池が脹れる現象(swelling)を抑制したり、容量維持率の改善がわずかであるなど添加効果が表れず、リチウム二次電池の抵抗増加率が改善されるなどの向上効果が微々たるものであり、前記リン酸系添加剤の含有量が前記範囲を超える場合には過度に抵抗が増加して急激な寿命劣化が発生するなど、反ってリチウム二次電池の特性が低下される問題点が存在する。したがって、前記リン酸系添加剤の含有量が前記範囲を満たすことが好ましい。
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用非水系電解液は、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、リチウムビスオキサラトボラート(LiB(C2O4)2、LiBOB)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOP)、リチウム テトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート(LiTFOP)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルスルホン(divinyl sulfone)、エチレンスルファイト(ethylene sulfite)、エチレンスルフェート(ethylene sulfate)、プロピレンスルファイト(propylene sulfite)、ジアリルスルホネート(diallyl sulfonate)、エタンスルトン、プロパンスルトン(propane sulton、PS)、ブタンスルトン(butane sulton)、エテンスルトン、ブテンスルトン及びプロペンスルトン(propene sultone、PRS)からなる群から選択された添加剤をさらに含むことができる。
【0067】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用非水系電解液はリチウム塩を含むことができ、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiAlO4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCH3CO2、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiCH3SO3、LiSO3F、LiFSI(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiN(SO2F)2)、LiBETI(lithium bisperfluoroethanesulfonimide、LiN(SO2CF2CF3)2及びLiTFSI(lithium(bis)trifluoromethanesulfonimide、LiN(SO2CF3)2)からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0068】
本発明の一実施形態において、前記リチウム塩の濃度は0.1M~3.0Mであってもよく、好ましくは0.5M~2.5Mであってもよく、より好ましくは0.8M~2.0Mであってもよい。具体的に、前記リチウム塩の濃度は0.1M以上、0.2M以上、0.3M以上、0.4M以上、0.5M以上、0.6M以上、0.7M以上、0.8M以上、0.9M以上、1.0M以上、3.0M以下、2.5M以下、2.0M以下、1.5M以下であってもよい。前記リチウム塩の濃度が0.1M未満であれば電解液の伝導度が低くなって電解液性能が落ち、3.0Mを超える場合には電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少する問題点がある。よって、リチウム塩の濃度は前記範囲を満たすことが好ましい。前記リチウム塩は電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動ができるようにする。
【0069】
前記LiPF6ではない他の種類のリチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiAlO4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCH3CO2、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiCH3SO3、LiSO3F、LiFSI(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiN(SO2F)2)、LiBETI(lithium bisperfluoroethanesulfonimide、LiN(SO2CF2CF3)2及びLiTFSI(lithium(bis)trifluoromethanesulfonimide、LiN(SO2CF3)2)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0070】
また、前記LiPF6とLiPF6ではない他の種類のリチウム塩のモル比は1:1~10:1であってもよく、好ましくは4:1~10:1であってもよく、より好ましくは6:1~10:1であってもよい。前記LiPF6とLiPF6ではない他の種類のリチウム塩は前記モル比を満たすことで、電解液副反応を抑制させながらも、集電体の腐食現象を抑制することができる被膜を安定的に形成することができる。
【0071】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用非水系電解液は有機溶媒を含むことができ、前記有機溶媒はリチウム二次電池に通常的に使われる溶媒として、例えば、エーテル化合物、エステル(アセテート(Acetate)類、プロピオネート(Propionate)類)化合物、アミド化合物、線形カーボネートまたは環形カーボネート化合物などをそれぞれ単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0072】
前記列記した化合物の中でも、好ましくは有機溶媒として、線形カーボネート及び環形カーボネートを混合して使用することができる。有機溶媒として、線形カーボネート及び環形カーボネートを混合して使用する場合、リチウム塩の解離及び移動がスムーズにできる。この時、前記環形カーボネート系化合物及び線形カーボネート系化合物は1:9~6:4体積比、好ましくは1:9~4:6体積比、より好ましくは2:8~4:6体積比で混合されたものであってもよい。
【0073】
一方、前記線形カーボネート化合物はその具体的な例として、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びエチルプロピルカーボネート(EPC)からなる群から選択される1種の化合物または少なくとも2種以上の混合物などを挙げることができ、これに限定されるものではない。
【0074】
また、前記環形カーボネート化合物はその具体的な例としてエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2‐ブチレンカーボネート、2,3‐ブチレンカーボネート、1,2‐ペンチレンカーボネート、2,3‐ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、及びこれらのハロゲン化物からなる群から選択される1種の化合物または少なくとも2種以上の混合物を挙げることができる。
【0075】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用非水系電解液を含むリチウム二次電池は4.0V以上の作動電圧を持つことができ、好ましくは4.1V以上の作動電圧を持つことができ、より好ましくは4.2V以上の作動電圧を持つことができる。リチウム二次電池の作動電圧が4.0V未満の場合には本発明の前記リン酸系添加剤の添加による差が大きくないが、4.0V以上の作動電圧を持つリチウム二次電池では前記添加剤の添加によって高温保存安全性及び容量特性が急激に上昇する効果を示す。
【0076】
リチウム二次電池
以下では、本発明によるリチウム二次電池について説明する。
【0077】
本発明のリチウム二次電池は、正極、負極、分離膜及びリチウム二次電池用非水系電解液を含む。より具体的に、少なくとも一つ以上の正極、少なくとも一つ以上の負極及び前記正極と負極の間に選択的に介在されることができる分離膜及び前記リチウム二次電池用非水系電解液を含む。この時、前記リチウム二次電池用非水系電解液については上述した内容と同一であるため、具体的な説明は省略する。
【0078】
(1)正極
前記正極は正極集電体上に正極活物質、電極用バインダー、電極導電材及び溶媒などを含む正極活物質スラリーをコーティングして製造することができる。また、前記正極は正極活物質に基づく層状構造を持つことができる。
【0079】
前記正極集電体は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を持つものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使われることができる。この時、正極集電体は表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使われることができる。
【0080】
前記正極活物質はリチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物として、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケルまたはアルミニウムのような1種以上の金属とリチウムを含むリチウム複合金属酸化物を含むことができる。より具体的に、前記リチウム複合金属酸化物は、リチウム‐マンガン系酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4など)、リチウム‐コバルト系酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウム‐ニッケル系酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウム‐ニッケル‐マンガン系酸化物(例えば、LiNi1‐Y1MnY1O2(ここで、0<Y1<1)、LiMn2‐z1Niz1O4(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム‐ニッケル‐コバルト系酸化物(例えば、LiNi1‐Y2CoY2O2(ここで、0<Y2<1)など)、リチウム‐マンガン‐コバルト系酸化物(例えば、LiCo1‐Y3MnY3O2(ここで、0<Y3<1)、LiMn2‐z2Coz2O4(ここで、0<Z2<2)など)、リチウム‐ニッケル‐マンガン‐コバルト系酸化物(例えば、Li(Nip1Coq1Mnr1)O2(ここで、0<p1<1、0<q1<1、0<r1<1、p1+q1+r1=1)またはLi(Nip2Coq2Mnr2)O4(ここで、0<p2<2、0<q2<2、0<r2<2、p2+q2+r2=2)など)、またはリチウム‐ニッケル‐コバルト‐遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip3Coq3Mnr3MS1)O2(ここで、MはAl、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg及びMoからなる群から選択され、p3、q3、r3及びs1はそれぞれ独立な元素の原子分率として、0<p3<1、0<q3<1、0<r3<1、0<s1<1、p3+q3+r3+s1=1である)など)などを挙げることができ、これらの中で何れか一つまたは2つ以上の化合物が含まれることができる。
【0081】
この中でも電池の容量特性及び安定性を高めることができるという点で前記リチウム複合金属酸化物は、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(例えば、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、またはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2など)、またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2など)などであってもよく、リチウム複合金属酸化物を形成する構成元素の種類及び含量比制御による改善効果の著しさを考慮する時、前記リチウム複合金属酸化物はLi(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O2、Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2またはLi(Ni0.85Mn0.08Co0.05Al0.02)O2などであってもよく、これらの中で何れか一つまたは2つ以上の混合物が使われることができる。
【0082】
また、前記正極活物質は遷移金属全体の中でニッケルの含有量が60atm%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物を含むことができる。例えば、60atm%以上、65atm%以上、70atm%以上、75atm%以上、80atm%以上、85atm%以上、90atm%以上であってもよい。
【0083】
前記電極用バインダーは正極活物質と電極導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分である。具体的に、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン‐ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
前記電極導電材は正極活物質の導電性をさらに向上させるための成分である。前記電極導電材は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を持つものであれば特に制限されるものではなく、例えば、グラファイト;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使われることができる。市販されている導電材の具体的な例では、アセチレンブラック系(シェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)やデンカブラック(Denka Singapore Private Limited)、ガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製品など)、ケッチェンブラック(Ketjenblack)、EC系(アルマックカンパニー(Armak Company)製品)、バルカン(Vulcan)XC‐72(キャボットカンパニー(Cabot Company)製品)及びスーパー(Super)P(Timcal社製品)などがある。
【0084】
前記溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン(N‐methyl‐2‐pyrrolidone))などの有機溶媒を含むことができ、前記正極活物質、及び選択的に正極用バインダー及び正極導電材などを含む時好ましい粘度になる量で使われることができる。
【0085】
(2)負極
また、前記負極は、負極集電体上に負極活物質、電極用バインダー、電極導電材及び溶媒などを含む負極活物質スラリーをコーティングして製造することができる。一方、前記負極は金属負極集電体自体を電極で使用することができる。
【0086】
前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を持つものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使われることができる。また、正極集電体と同様、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使われることができる。
【0087】
前記負極活物質では天然黒鉛、人造黒鉛、炭素質材料;リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、Si、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、NiまたはFeである金属類(Me);前記金属類(Me)で構成された合金類;前記金属類(Me)の酸化物(MeOx);及び前記金属類(Me)と炭素との複合体からなる群から選択された1種以上の負極活物質を挙げることができる。
【0088】
前記電極用バインダー、電極導電材及び溶媒に対する内容は上述した内容と同一であるため、具体的な説明は省略する。
【0089】
(3)分離膜
前記分離膜としては従来分離膜で使われた通常的な多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して使用することができ、または通常的な多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0090】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
【0091】
実施例
実施例1
正極活物質としてLi(Ni0.85Mn0.08Co0.05Al0.02)O2、導電材としてカーボンブラック、バインダーとしてPVDFを97.6:1.2:1.2(正極活物質:導電材:バインダー)の重量比で準備した後、N‐メチルピロリドン溶媒の中で混合して正極活物質スラリーを製造した。製造された正極活物質スラリーをアルミニウム集電体(15μm)の一面に塗布した後(ローディング量:0.40~0.55 mg/25cm2)、130℃で20分以上乾燥後、孔隙率24%になるように1~2回圧延して正極を製造した。
負極は天然黒鉛と人造黒鉛が2:8で混合された電極を使用し、正極と負極との間に多孔性ポリエチレンの分離膜を介在して電極組立体を製造した。前記電極組立体を電池ケース内部に位置させた後、ケース内部に電解質を注入してリチウム二次電池を製造した。この時、電解液はエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/EMCの混合体積比=3/7)からなる有機溶媒に1M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を溶解させ、0.5重量%のビニレンカーボネート(VC)、0.5重量%のプロパンスルトン(PS)及び1重量%のエチレンスルフェート(ESa)を添加し、さらに化学式1でRが全てFであるリン酸系添加剤を0.5重量%添加して製造した。
【0092】
実施例2
電解液でリン酸系添加剤を1重量%添加したことを除いては実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0093】
実施例3
電解液でリン酸系添加剤を3重量%添加したことを除いては実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0094】
実施例4
電解液において化学式1でRが全てCF3であるリン酸系添加剤を使用したことを除いては実施例2と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0095】
実施例5
電解液でリン酸系添加剤を5重量%添加したことを除いては実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0096】
比較例1
電解液でリン酸系添加剤を添加していないことを除いては実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0097】
実験例
実験例:高温性能測定
実施例1~5と比較例1で製造されたリチウム二次電池を4.2Vの電圧条件下で、SOC 100%(2000mAh)まで充電を実施した。以後、60℃恒温チャンバに8週間高温保存した後、容量維持率(%)、抵抗増加率(%)及び体積増加率(%)を測定して、下記表1に示す。
【0098】
【0099】
* 容量維持率(%):PNEsolution社、PEBC0506を使用して、CC/CVで充電(0.33C CC/4.2V 0.05C Current‐cut CV)30分静置の後、CCで放電(0.33)を3回繰り返した後3回目放電容量を容量として反映した。
容量維持率(%)=(N週目容量)/(初期容量)×100
【0100】
* 抵抗増加率(%):PNEsolution社、PEBC0506を使用して、放電容量基準SOC 50にセッティングした後、2.5Cの電流でCCパルス(pulse)放電の際の抵抗を測定した。
抵抗=(放電パルス前後の電圧差)/(放電時の電流)
抵抗増加率(%)=(N週目抵抗‐初期抵抗)/(初期抵抗)×100
【0101】
* 体積増加率(%):TWD‐PLS社、TWD‐150DMを使用して、高温保存の前にSOC 100にセッティングした後、初期体積を測定して、高温保存直後常温で冷やした後体積を測定した。
体積増加率(%)=(N週目体積‐初期体積)/(初期体積)×100
【0102】
前記表1によると、本発明によるリン酸系添加剤を電解液に添加したリチウム二次電池(実施例1~5)は高温保存後も容量維持率が高いだけでなく、抵抗増加率及び体積増加率が低くてリン酸系添加剤を電解液に添加していないリチウム二次電池(比較例1)に比べて高温安定性が著しく改善されたことを確認することができる。
【0103】
本発明の単純な変形ないし変更は全て本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求範囲によって明確になる。