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特許7587719非水電解液、その製造方法、及びそれを含む二次電池及び電力消費装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】非水電解液、その製造方法、及びそれを含む二次電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20241113BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241113BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20241113BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241113BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241113BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241113BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/052
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023559050
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 CN2022097306
(87)【国際公開番号】W WO2023236029
(87)【国際公開日】2023-12-14
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲則▼利
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 慧玲
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】姜 彬
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲倩▼
(72)【発明者】
【氏名】何 建福
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ ▲ジン▼▲軒▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 磊
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2024-526406(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047019(WO,A1)
【文献】特開平10-255837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 4/13- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒及びそれに溶解するリチウムイオン、第一のカチオンと第一のアニオンを含有する非水電解液であって、前記第一のカチオンは、リチウムイオン以外の金属カチオンMen+であり、nは、金属カチオンの原子価を表し、前記第一のアニオンは、テトラフルオロホウ酸アニオンBF であり、前記非水電解液における第一のカチオンの質量濃度は、D1 ppmであり、前記非水電解液における第一のアニオンの質量濃度は、D2 ppmであり、いずれも前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、且つ前記非水電解液は、D1が0.1~1250であり、D1/D2が0.02~2であることを満たす、非水電解液。
【請求項2】
Men+標準還元電位とLi標準還元電位との差は、1.0V以上であり、選択的に、Men+は、Ni2+、Co2+、Mn2+、Al3+とFe2+のうちの少なくとも一つを表す、請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
D1は、100~1250であり、選択的に200~1250であり、及び/又は、
D1/D2は、0.35~2であり、選択的に0.5~1.5であり、及び/又は、
D2は、1~2000であり、選択的に100~2000である、請求項1記載の非水電解液。
【請求項4】
前記非水電解液は、第二のアニオンをさらに含有し、前記第二のアニオンは、過塩素酸アニオンClO 、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンN(SOCF 、NO とSO 2-のうちの少なくとも一つを含み、選択的にNO とSO 2-のうちの少なくとも一つを含み、
前記非水電解液における第二のアニオンの質量濃度は、D3 ppmであり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、
選択的に、D3は、1~3000であり、さらに選択的に1~2000であり、及び/又は、
選択的に、D2/D3は、0.25~20であり、さらに選択的に0.5~5である、請求項1記載の非水電解液。
【請求項5】
前記非水電解液は、第三のアニオンをさらに含有し、前記第三のアニオンは、ヘキサフルオロリン酸アニオンPF 、ビスフルオロスルホニルイミドアニオンN(SOF) 又はその組み合わせを含み、
選択的に、前記非水電解液における第三のアニオンの質量百分率含有量は、8%から20%であり、さらに選択的に9%から15%であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、
選択的に、前記第三のアニオンは、ヘキサフルオロリン酸アニオンPF とビスフルオロスルホニルイミドアニオンN(SOF) を同時に含み、さらに選択的に、ヘキサフルオロリン酸アニオンPF とビスフルオロスルホニルイミドアニオンN(SOF) との質量比αは、0.2~3であり、さらに選択的に0.5~1.5である、請求項1記載の非水電解液。
【請求項6】
前記非水電解液は、第四のアニオンをさらに含有し、前記第四のアニオンは、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸アニオンDFOB、ビス(オキサラト)ホウ酸アニオンBOB、ヘキサフルオロヒ酸アニオンAsF 、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンCFSO 、ジフルオロリン酸アニオンPO 、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸アニオンDODFPとテトラフルオロ(オキサラト)リン酸アニオンOTFPのうちの少なくとも一つを含み、
選択的に、前記非水電解液における第四のアニオンの質量百分率含有量は、2%以下であり、さらに選択的に0.5%以下であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算される、請求項5に記載の非水電解液。
【請求項7】
前記第四のアニオンは、ジフルオロリン酸アニオンPO を含み、
選択的に、ジフルオロリン酸アニオンPO と第三のアニオンとの質量比βは、0.01~0.15であり、さらに選択的に0.01~0.1である、請求項6に記載の非水電解液。
【請求項8】
前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物とを含み、前記非水電解液における環状カーボネート化合物の質量百分率含有量は、E1であり、鎖状カーボネート化合物の質量百分率含有量は、E2であり、いずれも前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、
E1は、5%から40%であり、選択的に10%から30%であり、
E2は、40%から85%であり、選択的に60%から80%である、請求項1記載の非水電解液。
【請求項9】
前記非水溶媒は、エーテル系化合物をさらに含み、前記エーテル系化合物は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシメタンとジエチレングリコールジメチルエーテルのうちの少なくとも一つを含み、
前記非水電解液におけるエーテル系化合物の質量百分率含有量は、E3であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、選択的に、E3は、0.1%から40%であり、さらに選択的に0.5%から20%である、請求項8に記載の非水電解液。
【請求項10】
前記非水電解液は、第一の添加剤をさらに含有し、前記第一の添加剤は、フルオロエチレンカーボネートであり、
前記非水電解液における第一の添加剤の質量濃度は、D4 ppmであり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、
選択的に、D4は、1~30000であり、さらに選択的に100~20000であり、及び/又は、
選択的に、D4/D2は、5~500であり、さらに選択的に5~100である、請求項1記載の非水電解液。
【請求項11】
前記非水電解液は、第二の添加剤をさらに含有し、前記第二の添加剤は、炭酸ビニレン、シュウ酸リチウム、硫酸ビニル、1,3-プロパンスルトンのうちの少なくとも一つを含み、
選択的に、前記非水電解液における第二の添加剤の質量百分率含有量は、5%以下であり、さらに選択的に2.5%以下であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算される、請求項1記載の非水電解液。
【請求項12】
非水電解液の製造方法であって、
非水溶媒、リチウム塩、可溶性Me塩、可溶性テトラフルオロホウ酸塩及び選択的な添加剤を均一に混合し、非水電解液を得るステップを含み、Meは、リチウム元素以外の金属元素を表し、
ここで、前記非水電解液は、非水溶媒及びそれに溶解するリチウムイオン、第一のカチオンと第一のアニオンを含有し、前記第一のカチオンは、リチウムイオン以外の金属カチオンMen+であり、nは、金属カチオンの原子価を表し、前記第一のアニオンは、テトラフルオロホウ酸アニオンBF であり、前記非水電解液における第一のカチオンの質量濃度は、D1 ppmであり、前記非水電解液における第一のアニオンの質量濃度は、D2 ppmであり、いずれも前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、且つ前記非水電解液は、D1が0.1~1250であり、D1/D2が0.02~2であることを満たす、非水電解液の製造方法。
【請求項13】
Men+標準還元電位とLi標準還元電位との差は、1.0V以上であり、選択的に、Men+は、Ni2+、Co2+、Mn2+、Al3+とFe2+のうちの少なくとも一つを表す、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記可溶性Me塩は、Me(BF、Me(ClO、Me[N(SOCF、Me(NO、Me(SOn/2、Me(PF、Me[N(SOF)、Me(DFOB)、Me(BOB)、Me(AsF、Me(CFSO、Me(PO、Me(DODFP)とMe(OTFP)のうちの少なくとも一つを含み、及び/又は、
前記可溶性テトラフルオロホウ酸塩は、Me(BF、LiBFのうちの少なくとも一つを含み、及び/又は、
前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物とを含み、選択的に、前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物とエーテル系化合物を同時に含み、及び/又は、
前記リチウム塩は、第一のリチウム塩を含み、前記第一のリチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又はその組み合わせを含み、選択的に、前記リチウム塩は、第二のリチウム塩をさらに含み、前記第二のリチウム塩は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムとテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムのうちの少なくとも一つを含み、及び/又は、
前記添加剤は、第一の添加剤と第二の添加剤のうちの少なくとも一つを含み、前記第一の添加剤は、フルオロエチレンカーボネートであり、前記第二の添加剤は、炭酸ビニレン、シュウ酸リチウム、硫酸ビニル、1,3-プロパンスルトンのうちの少なくとも一つを含む、請求項12または13記載の製造方法。
【請求項15】
正極極板と、負極極板と、非水電解液とを含む二次電池であって、前記非水電解液は、請求項1から11のいずれか1項に記載の非水電解液ある、二次電池。
【請求項16】
前記正極極板は、分子式がLiNiCoMnAlである層状材料を含み、Mは、遷移金属サイトドーピングカチオンを表し、Aは、酸素サイトドーピングアニオンを表し、0.8≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f≦0.2、0≦g≦2、0≦h≦2、b+c+d+e+f=1、g+h=2であり、
選択的に、LiNiCoMnAlは、
(1)MがSi、Ti、Mo、V、Ge、Se、Zr、Nb、Ru、Pd、Sb、Ce、Te及びWから選択された少なくとも一つであることと、
(2)AがF、N、P及びSから選択された少なくとも一つであり、選択的に、AがFから選択されたことと、
(3)0<b<0.98であり、選択的に、0.50≦b<0.98であることと、
(4)c=0であることと、
(5)0<c≦0.20であり、選択的に、0<c≦0.10であることと、
(6)d=0且つ0<e<0.50であり、選択的に、d=0且つ0<e≦0.10であることと、
(7)e=0且つ0<d<0.50であり、選択的に、e=0且つ0<d≦0.10であることと、
(8)0<d<0.50且つ0<e<0.50であり、選択的に、0<d≦0.30且つ0<e≦0.10であることとのうちの少なくとも一つを満たす、請求項15に記載の二次電池。
【請求項17】
電力消費装置であって、請求項15記載の二次電池を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池技術分野に属し、具体的には非水電解液、その製造方法、及びそれを含む二次電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は、水力、火力、風力と太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に幅広く用いられる。二次電池の応用及び普及につれて、その総合的な性能は、ますます多くの関心を集め、例えば二次電池は、サイクル寿命が長く、安全性能が高く、レート性能がよいなどを同時に満たす必要がある。そのため、どのように総合的な性能が良好な二次電池を提供するかは、現在早急な解決が待たれる技術問題である。
【発明の概要】
【0003】
本出願の目的は、二次電池に良好なサイクル性能、安全性能と動力学性能を同時に備えることができる非水電解液、その製造方法、及びそれを含む二次電池及び電力消費装置を提供することである。
【0004】
本出願の第一の態様は、非水電解液を提供し、この非水電解液は、非水溶媒及びそれに溶解するリチウムイオン、第一のカチオンと第一のアニオンを含有し、ここで、前記第一のカチオンは、リチウムイオン以外の金属カチオンMen+であり、nは、金属カチオンの原子価を表し、前記第一のアニオンは、テトラフルオロホウ酸アニオンBF であり、前記非水電解液における第一のカチオンの質量濃度は、D1 ppmであり、前記非水電解液における第一のアニオンの質量濃度は、D2 ppmであり、いずれも前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、且つ前記非水電解液は、D1が0.1~1250であり、D1/D2が0.02~2であることを満たす。
【0005】
本出願の発明者は、研究中において以下のように意外に発見した。非水電解液における第一のカチオンの質量濃度D1 ppmと第一のアニオンの質量濃度D2 ppmがD1が0.1~1250であり、D1/D2が0.02~2であることを満たす時に、第一のカチオンは、二次電池の電気化学性能を悪化させないだけでなく、第一のカチオンと第一のアニオンとの相乗作用で、本出願の非水電解液は、さらに二次電池に良好なサイクル性能、安全性能と動力学性能を同時に備えることができる。
【0006】
本出願のいずれか実施の形態では、Men+標準還元電位とLi標準還元電位との差は、1.0V以上であり、選択的に、Men+は、Ni2+、Co2+、Mn2+、Al3+とFe2+のうちの少なくとも一つを表す。この時にMen+がリチウムイオンの前に還元されることをより良く保証することができ、それによってSEI膜形成中における活性リチウムイオンに対する不可逆的な消費を減少させる作用をより良く果たし、且つ二次電池の容量維持率を向上させる。
【0007】
本出願のいずれか実施の形態では、D1は、100~1250であり、選択的に200~1250である。それによって二次電池は、比較的高い容量維持率、比較的低い体積膨張率と良好な動力学性能を同時に備えることができる。
【0008】
本出願のいずれか実施の形態では、D1/D2は、0.35~2であり、選択的に0.5~1.5である。この時に第一のカチオンと第一のアニオンとの間の相乗作用効果を十分に発揮することに有利であり、非水電解液の電気化学的ウィンドウを広げることができるだけでなく、さらに負極活物質表面に安定的で低インピーダンスのSEI膜を形成することができ、それによって二次電池は、良好なサイクル性能、安全性能と動力学性能を同時に備えることができる。
【0009】
本出願のいずれか実施の形態では、D2は、1~2000であり、選択的に100~2000である。それによって二次電池は、比較的高い容量維持率、比較的低い体積膨張率と良好な動力学性能を同時に備えることができる。
【0010】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水電解液は、第二のアニオンをさらに含有し、前記第二のアニオンは、過塩素酸アニオンClO 、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンN(SOCF 、NO とSO 2-のうちの少なくとも一つを含み、選択的にNO とSO 2-のうちの少なくとも一つを含む。第二のアニオンは、非水電解液に比較的高い熱安定性を有させることに寄与し、それによって二次電池の高温安定性を向上させることができ、第二のアニオンは、さらにBF が自由イオンになり、アニオンとカチオンとの会合を減少させることに寄与し、それによってBF の二次電池容量維持率と動力学性能に対する改善作用を十分に発揮することができる。
【0011】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水電解液における第二のアニオンの質量濃度は、D3 ppmであり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、選択的に、D3は、1~3000であり、さらに選択的に1~2000である。
【0012】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水電解液における第二のアニオンの質量濃度は、D3 ppmであり、選択的に、D2/D3は、0.25~20であり、さらに選択的に0.5~5である。この時に第一のアニオンと第二のアニオンとの間の相乗作用効果を十分に発揮することに寄与し、それによって非水電解液の熱安定性を向上させることができるだけでなく、さらに負極活物質表面に安定的で低インピーダンスのSEI膜を形成することができる。
【0013】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水電解液は、第三のアニオンをさらに含有し、前記第三のアニオンは、ヘキサフルオロリン酸アニオンPF 、ビスフルオロスルホニルイミドアニオンN(SOF) 又はその組み合わせを含む。
【0014】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、前記非水電解液における第三のアニオンの質量百分率含有量は、8%から20%であり、さらに選択的に9%から15%であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算される。
【0015】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、前記第三のアニオンは、ヘキサフルオロリン酸アニオンPF とビスフルオロスルホニルイミドアニオンN(SOF) を同時に含み、さらに選択的に、ヘキサフルオロリン酸アニオンPF とビスフルオロスルホニルイミドアニオンN(SOF) との質量比αは、0.2~3であり、さらに選択的に0.5~1.5である。それによって前記非水電解液は、加水分解しにくいとともに、さらにより高い熱安定性を備えることができるとともに、インピーダンスがより低い界面膜の形成に寄与する。
【0016】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水電解液は、第四のアニオンをさらに含有し、前記第四のアニオンは、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸アニオンDFOB、ビス(オキサラト)ホウ酸アニオンBOB、ヘキサフルオロヒ酸アニオンAsF 、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンCFSO 、ジフルオロリン酸アニオンPO 、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸アニオンDODFPとテトラフルオロ(オキサラト)リン酸アニオンOTFPのうちの少なくとも一つを含む。それによってさらに正極及び/又は負極の界面性能を改善し、又は非水電解液のイオン導電率又は熱安定性を改善する作用を果たすことができる。
【0017】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、前記非水電解液における第四のアニオンの質量百分率含有量は、2%以下であり、さらに選択的に0.5%以下であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算される。
【0018】
本出願のいずれか実施の形態では、前記第四のアニオンは、ジフルオロリン酸アニオンPO を含む。選択的に、ジフルオロリン酸アニオンPO と第三のアニオンとの質量比βは、0.01~0.15であり、さらに選択的に0.01~0.1である。それによって非水電解液のイオン導電率を向上させ、正極界面膜及び/又は負極界面膜の性質を改善することができ、且つ安定的で低インピーダンスの正極界面膜及び/又は負極界面膜を構築することに寄与し、それによって非水電解液の分解を効果的に減少させ、さらに二次電池の動力学性能と安全性能を改善する。
【0019】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物とを含み、前記非水電解液における環状カーボネート化合物の質量百分率含有量は、E1であり、鎖状カーボネート化合物の質量百分率含有量は、E2であり、いずれも前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、E1は、5%から40%であり、選択的に10%から30%であり、E2は、40%から85%であり、選択的に60%から80%である。この時に非水電解液が適切な粘度とイオン導電率を有することに寄与し、さらにリチウムイオンの伝送に有利である。
【0020】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水溶媒は、エーテル系化合物をさらに含み、前記エーテル系化合物は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシメタンとジエチレングリコールジメチルエーテルのうちの少なくとも一つを含む。この時に非水電解液が適切な粘度及び/又はイオン導電率を有することに寄与し、さらにリチウムイオンの伝送に有利である。
【0021】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水電解液におけるエーテル系化合物の質量百分率含有量は、E3であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、選択的に、E3は、0.1%から40%であり、さらに選択的に0.5%から20%である。
【0022】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水電解液は、第一の添加剤をさらに含有し、前記第一の添加剤は、フルオロエチレンカーボネートである。それによって二次電池のサイクル性能を効果的に高めることができる。
【0023】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水電解液における第一の添加剤の質量濃度は、D4 ppmであり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、選択的に、D4は、1~30000であり、さらに選択的に100~20000である。
【0024】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水電解液における第一の添加剤の質量濃度は、D4 ppmであり、選択的に、D4/D2は、5~500であり、さらに選択的に5~100である。それによってFECとBF との間の相乗作用効果を十分に発揮することができ、この時に二次電池の空気発生量を明らかに増加させないだけでなく、またさらに二次電池のサイクル性能を改善する。
【0025】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水電解液は、第二の添加剤をさらに含有し、前記第二の添加剤は、炭酸ビニレン、シュウ酸リチウム、硫酸ビニル、1,3-プロパンスルトンのうちの少なくとも一つを含む。第二の添加剤は、さらに正極及び/又は負極の界面性能を改善することに寄与し、それによってさらに二次電池のサイクル性能、安全性能と動力学性能のうちの少なくとも一つを向上させる。
【0026】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、前記非水電解液における第二の添加剤の質量百分率含有量は、5%以下であり、さらに選択的に2.5%以下であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算される。
【0027】
本出願の第二の態様は、非水電解液の製造方法を提供し、この方法は、非水溶媒、リチウム塩、可溶性Me塩、可溶性テトラフルオロホウ酸塩及び選択的な添加剤を均一に混合し、非水電解液を得るステップを含み、Meは、リチウム元素以外の金属元素を表し、ここで、前記非水電解液は、非水溶媒及びそれに溶解するリチウムイオン、第一のカチオンと第一のアニオンを含有し、前記第一のカチオンは、リチウムイオン以外の金属カチオンMen+であり、nは、金属カチオンの原子価を表し、前記第一のアニオンは、テトラフルオロホウ酸アニオンBF であり、前記非水電解液における第一のカチオンの質量濃度は、D1 ppmであり、前記非水電解液における第一のアニオンの質量濃度は、D2 ppmであり、いずれも前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、且つ前記非水電解液は、D1が0.1~1250であり、D1/D2が0.02~2であることを満たす。
【0028】
本出願のいずれか実施の形態では、Men+標準還元電位とLi標準還元電位との差は、1.0V以上であり、選択的に、Men+は、Ni2+、Co2+、Mn2+、Al3+とFe2+のうちの少なくとも一つを表す。
【0029】
本出願のいずれか実施の形態では、前記可溶性Me塩は、Me(BF、Me(ClO、Me[N(SOCF、Me(NO、Me(SOn/2、Me(PF、Me[N(SOF)、Me(DFOB)、Me(BOB)、Me(AsF、Me(CFSO、Me(PO、Me(DODFP)とMe(OTFP)のうちの少なくとも一つを含む。それによって前記非水電解液における金属カチオンと異なるアニオンの質量濃度を所要範囲内にあるように調節することに寄与する。
【0030】
本出願のいずれか実施の形態では、前記可溶性テトラフルオロホウ酸塩は、Me(BF、LiBFのうちの少なくとも一つを含む。それによって前記非水電解液における金属カチオンと第一のアニオンの質量濃度を所要範囲内にあるように調節することに寄与する。
【0031】
本出願のいずれか実施の形態では、前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物とを含み、選択的に、前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物とエーテル系化合物を同時に含む。それによって前記非水電解液における金属カチオンと異なるアニオンの質量濃度を所要範囲内にあるように調節することに寄与する。
【0032】
本出願のいずれか実施の形態では、前記リチウム塩は、第一のリチウム塩を含み、前記第一のリチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又はその組み合わせを含み、選択的に、前記リチウム塩は、第二のリチウム塩をさらに含み、前記第二のリチウム塩は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムとテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムのうちの少なくとも一つを含む。それによって前記非水電解液における金属カチオンと異なるアニオンの質量濃度を所要範囲内にあるように調節することに寄与する。
【0033】
本出願のいずれか実施の形態では、前記添加剤は、第一の添加剤と第二の添加剤のうちの少なくとも一つを含み、前記第一の添加剤は、フルオロエチレンカーボネートであり、前記第二の添加剤は、炭酸ビニレン、シュウ酸リチウム、硫酸ビニル、1,3-プロパンスルトンのうちの少なくとも一つを含む。
【0034】
本出願の第三の態様は、二次電池を提供し、この二次電池は、正極極板と、負極極板と、非水電解液とを含み、ここで、前記非水電解液は、本出願の第一の態様の非水電解液又は本出願の第二の態様の製造方法を採用して得られた非水電解液である。
【0035】
本出願のいずれか実施の形態では、前記正極極板は、分子式がLiNiCoMnAlである層状材料を含み、Mは、遷移金属サイトドーピングカチオンを表し、Aは、酸素サイトドーピングアニオンを表し、0.8≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f≦0.2、0≦g≦2、0≦h≦2、b+c+d+e+f=1、g+h=2である。
【0036】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、Mは、Si、Ti、Mo、V、Ge、Se、Zr、Nb、Ru、Pd、Sb、Ce、Te及びWから選択された少なくとも一つである。
【0037】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、Aは、F、N、P及びSから選択された少なくとも一つであり、さらに選択的に、Aは、Fから選択された。
【0038】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、0<b<0.98であり、さらに選択的に、0.50≦b<0.98である。
【0039】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、c=0である。
【0040】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、0<c≦0.20であり、さらに選択的に、0<c≦0.10である。
【0041】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、d=0且つ0<e<0.50であり、さらに選択的に、d=0且つ0<e≦0.10である。
【0042】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、e=0且つ0<d<0.50であり、さらに選択的に、e=0且つ0<d≦0.10である。
【0043】
本出願のいずれか実施の形態では、選択的に、0<d<0.50且つ0<e<0.50であり、さらに選択的に、0<d≦0.30且つ0<e≦0.10である。
【0044】
本出願の第四の態様は、電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、本出願の第三の態様の二次電池を含む。
【0045】
本出願の二次電池は、良好なサイクル性能、安全性能と動力学性能を同時に備えることができ、本出願の電力消費装置は、本出願による二次電池を含み、したがって少なくとも前記二次電池と同じ優位性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本出願の実施例の技術案をより明瞭に説明するために、以下は、本出願の実施例に使用される必要のある図面を簡単に紹介する。自明なことに、以下に記述された図面は、ただ本出願のいくつかの実施の形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
図1】本出願の二次電池の一実施の形態の概略図である。
図2図1の二次電池の実施の形態の分解概略図である。
図3】本出願の電池モジュールの一実施の形態の概略図である。
図4】本出願の電池パックの一実施の形態の概略図である。
図5図4に示す電池パックの実施の形態の分解概略図である。
図6】本出願の二次電池を電源とする電力消費装置を含む一実施の形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を適当に参照しながら、本出願の非水電解液、その製造方法、及びそれを含む二次電池及び電力消費装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されたテーマを限定するものではない。
【0048】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は、特定の範囲の境界を限定した。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60-120と80-110の範囲がリストアップされている場合、60-110と80-120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1と2がリストアップされており、最大範囲値として3、4及び5がリストアップされている場合1-3、1-4、1-5、2-3、2-4と2-5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a-b」という数値範囲は、a~bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0-5」は、本明細書においてすでに「0-5」の間のすべての実数をリストアップしたことを表し、「0-5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0049】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施の形態及び選択的な実施の形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができるとともに、このような技術案は、本出願の開示内容に含まれると考えられるべきである。
【0050】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができるとともに、このような技術案は、本出願の開示内容に含まれると考えられるべきである。
【0051】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0052】
特に説明しない場合、本出願に言及された「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含むか又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含むか又は包含してもよいことを表してもよい。
【0053】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「又は」は包括的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0054】
本出願では、用語である「複数の」、「複数種類の」は、二つ以上を指す。
【0055】
二次電池の応用及び普及につれて、その総合的な性能は、ますます多くの関心を集める。非水電解液は、二次電池の性能に影響を与える重要な要素の一つであり、現在商業に最も幅広く用いられる非水電解液系統は、ヘキサフルオロリン酸リチウムの混合カーボネート溶液であるが、ヘキサフルオロリン酸リチウムは、高温環境で熱安定性が比較的悪く、それは、比較的高い温度で分解してLiFとPFを生成する。LiFは、界面インピーダンスを増加させ、PFは、比較的強いルイス酸性を有し、溶媒分子における酸素原子上の孤立電子対と作用して溶媒を分解させ、なお、PFは、非水電解液における微量の水分に対して比較的高い敏感性を有し、水と接触してHFを発生させ、それによって非水電解液の酸度を増加させ、さらに正極活物質と正極集電体が腐食しやすく、正極活物質における遷移金属イオンが溶出し、正極活物質構造の安定性が悪くなることをもたらし、それによって二次電池の耐用年数に影響を与える。
【0056】
また、現在研究者は、一般的には、リチウムイオン以外、非水電解液における他の金属カチオンがいずれも異物又は不純物であり、それが二次電池の電気化学性能に深刻な影響を与えると考えている。しかしながら本出願の発明者は、大量の研究を行った後に以下のように意外に発見した。非水電解液には適当な含有量の以下に記載の金属カチオンMen+とテトラフルオロホウ酸アニオンBF が同時に含まれる時に、金属カチオンMen+は、二次電池の電気化学性能を悪化させないだけでなく、本出願の前記非水電解液を採用する二次電池に良好なサイクル性能、安全性能と動力学性能を同時に備えることができる。
【0057】
非水電解液
具体的には、本出願の第一の態様は、非水電解液を提供する。
【0058】
前記非水電解液は、非水溶媒及びそれに溶解するリチウムイオン、第一のカチオンと第一のアニオンを含有し、前記第一のカチオンは、リチウムイオン以外の金属カチオンMen+であり、nは、金属カチオンの原子価を表し、前記第一のアニオンは、テトラフルオロホウ酸アニオンBF であり、前記非水電解液における第一のカチオンの質量濃度は、D1 ppmであり、前記非水電解液における第一のアニオンの質量濃度は、D2 ppmであり、いずれも前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、且つ前記非水電解液は、D1が0.1~1250であり、D1/D2が0.02~2であることを満たす。
【0059】
説明すべきこととして、本出願の非水電解液における金属カチオンMen+は、非水電解液内にMe元素を含有する可溶性塩を加え且つ解離させることによって得られ、非水電解液の各製造原料からの不純物相ではない。同時に、二次電池性能の改善は、主に非水電解液製造プロセスにおいて加えられたMe元素を含有する可溶性塩及びそれによって解離されたMen+によるものであり、二次電池の使用中において正極活物質の非水電解液内に溶出した金属カチオンによるものではない。
【0060】
本出願の発明者は、研究中において以下のことを意外に発見した。非水電解液における第一のカチオンの質量濃度D1 ppmと第一のアニオンの質量濃度D2 ppmがD1が0.1~1250であり、D1/D2が0.02~2であることを満たす時に、第一のカチオンは、二次電池の電気化学性能を悪化させないだけでなく、第一のカチオンと第一のアニオンとの相乗作用で、本出願の非水電解液は、さらに二次電池に良好なサイクル性能、安全性能と動力学性能を同時に備えることができる。メカニズムがまだ明確でなくても、本出願の発明者は、可能な原因が少なくとも以下のようないくつかを含むことを推測した。
【0061】
第一に、金属カチオンMen+は、電気化学活性上でリチウムイオンより活発であるため、リチウムイオンより優先的に還元され、それによってSEI膜形成中における活性リチウムイオンに対する不可逆的な消費を減少させ、二次電池の容量維持率を向上させることができる。
【0062】
第二に、金属カチオンMen+が負極で還元されて形成した金属単体が比較的良い電子導電性を有するため、電子の移動を促進し且つより厚いSEI膜の負極活物質表面での形成を促進することができ、さらに負極活物質と非水電解液との間の界面副反応を減少させ、二次電池の容量維持率を向上させ、二次電池の体積膨張率を低減させることができる。
【0063】
第三に、テトラフルオロホウ酸アニオンBF は、負極活物質表面SEI膜の形成に関与し、SEI膜を修飾し、SEI膜組成を改善する作用を果たし、それによって低インピーダンスのSEI膜の形成に有利であり、二次電池のインピーダンスを低減させる。
【0064】
第四に、テトラフルオロホウ酸アニオンBF は、比較的高い熱安定性を有し、それによって二次電池の高温安定性を向上させることができ、BF は、比較的低い電荷移動抵抗Rctをさらに有し、それによって二次電池の低温性能を向上させることができる。
【0065】
第五に、一般的には研究者は、比較的厚いSEI膜が二次電池のインピーダンスを増加させ、二次電池の動力学性能を悪化させると考えているが、本出願の発明者は、不思議に以下のように発見した。非水電解液における第一のカチオンの質量濃度D1 ppmと第一のアニオンの質量濃度D2 ppmに、0.1~1250であり、D1/D2が0.02~2であることを満たさせる時に、負極活物質表面に比較的厚いSEI膜を形成したが、二次電池のインピーダンスが逆に低減し、さらに二次電池は、良好な動力学性能と比較的長い寿命を有する。
【0066】
非水電解液における第一のカチオンの質量濃度は、D1 ppmであり、D1は、0.1~1250である。D1が適切な範囲内にある時に、二次電池は、比較的高い容量維持率、比較的低い体積膨張率と良好な動力学性能を同時に備えることができる。第一のカチオンの質量濃度が低すぎる時に、ほとんど改善作用を果たさず、負極で還元されて金属単体を形成し且つ電子導電性を増加させ、活性リチウムイオンの不可逆的な消費を低減させる作用を果たすことができず、さらに二次電池の容量維持率を効果的に向上させることができず、二次電池の体積膨張率を低減させることができない。第一のカチオンの質量濃度が高すぎる時に、負極活物質表面のSEI膜が厚すぎ、二次電池の動力学性能が比較的悪いとともに、第一のカチオンの質量濃度が高すぎる時に、そのSEI膜に対するマイナス作用は、そのSEI膜に対する改善作用よりも大きく、この時に、多すぎる金属単体は、SEI膜分解に対して触媒作用を果たし、このプロセスにおいて一方で比較的多くの気体を発生させ、二次電池を膨張させ、二次電池の安全性能に影響を与え、他の一方で、分解して発生した副産物がSEI膜表面に堆積してリチウムイオン伝送を阻害し、二次電池のインピーダンスを増加させ、また一方で、損失したSEI膜を補うために、非水電解液と電池内部の活性リチウムイオンは、連続的に消費され、それによってさらに二次電池容量維持率に不可逆的な影響をもたらす。選択的に、D1は、1~1250、1~1200、1~1000、1~800、1~700、1~600、1~500、10~1250、10~1200、10~1000、10~800、10~700、10~600、10~500、50~1250、50~1200、50~1000、50~800、50~700、50~600、50~500、100~1250、100~1200、100~1000、100~800、100~700、100~600、100~500、200~1250、200~1200、200~1000、200~800、200~700、200~600、200~500、300~1250、300~1200、300~1000、300~800、300~700、300~600又は300~500であってもよい。
【0067】
非水電解液における第一のカチオンの質量濃度D1 ppm、第一のアニオンの質量濃度D2 ppmは、さらにD1/D2が0.02~2であることを満たし、この時に第一のカチオンと第一のアニオンとの間の相乗作用効果を十分に発揮することに有利であり、非水電解液の電気化学的ウィンドウを広げることができるだけでなく、さらに負極活物質表面に安定的で低インピーダンスのSEI膜を形成することができ、それによって二次電池は、良好なサイクル性能、安全性能と動力学性能を同時に備えることができる。D1/D2が小さすぎる時に、SEI膜は、主に第一のアニオンにより修飾されてなり、第一のカチオンは、ほとんど改善作用を果たさず、二次電池の容量維持率を効果的に向上させることができず、二次電池の体積膨張率を低減させることができない。D1/D2が大きすぎる時に、SEI膜が厚すぎ、二次電池の動力学性能が比較的悪いとともに、D1/D2が大きすぎる時に、第一のアニオンのSEI膜に対する修飾作用及び負極界面インピーダンスを低減させる作用は、第一のカチオンのSEI膜に対するマイナス作用よりも小さく、この時に、多すぎる金属単体は、SEI膜分解に対して触媒作用を果たし、このプロセスにおいて一方で比較的多くの気体を発生させ、二次電池を膨張させ、二次電池の安全性能に影響を与え、他の一方で、分解して発生した副産物がSEI膜表面に堆積してリチウムイオン伝送を阻害し、二次電池のインピーダンスを増加させ、また一方で、損失したSEI膜を補うために、非水電解液と電池内部の活性リチウムイオンは、連続的に消費され、それによってさらに二次電池容量維持率に不可逆的な影響をもたらす。選択的に、D1/D2は、0.1~2、0.1~1.8、0.1~1.6、0.1~1.4、0.1~1.2、0.1~1、0.1~0.9、0.1~0.8、0.1~0.7、0.1~0.6、0.2~2、0.2~1.8、0.2~1.6、0.2~1.4、0.2~1.2、0.2~1、0.2~0.9、0.2~0.8、0.2~0.7、0.2~0.6、0.35~2、0.35~1.8、0.35~1.6、0.35~1.4、0.35~1.2、0.35~1、0.35~0.9、0.35~0.8、0.35~0.7、0.35~0.6、0.5~2、0.5~1.8、0.5~1.6、0.5~1.5、0.5~1.4、0.5~1.2、0.5~1、0.5~0.9又は0.5~0.8である。
【0068】
いくつかの実施例では、選択的に、非水電解液における第一のアニオンの質量濃度は、D2 ppmであり、D2は、1~2000である。D2が適切な範囲内にある時に、二次電池は、比較的高い容量維持率、比較的低い体積膨張率と良好な動力学性能を同時に備えることができる。そして以下のような場合を回避することができる。第一のアニオンの質量濃度が低すぎる時に、SEI膜を修飾し、SEI膜組成を改善する作用を果たすことができず、それによって二次電池のインピーダンスが比較的高く、動力学性能が比較的悪く、第一のアニオンの質量濃度が高すぎる時に、SEI膜は、主に第一のアニオンにより修飾されてなり、第一のカチオンが負極で還元されて金属単体を形成した後に果たした電子導電性を増加させることができず、活性リチウムイオンの不可逆的な消費を低減させる作用を発揮することができず、二次電池の容量維持率を向上させることに不利であり、なお、第一のアニオンのイオン導電率が比較的低いため、その質量濃度が高すぎる時に、さらに負極活物質表面に安定的なSEI膜を形成することに不利である。選択的に、D2は、10~2000、10~1800、10~1600、10~1400、10~1200、10~1000、100~2000、100~1800、100~1600、100~1400、100~1200、100~1000、200~2000、200~1800、200~1600、200~1400、200~1200、200~1000、500~2000、500~1800、500~1600、500~1400、500~1200又は500~1000である。
【0069】
本出願では、金属カチオンMen+は、リチウムイオン以外の金属カチオンを表し、nは、金属カチオンの原子価を表す。例えば、選択的に、Me元素は、遷移金属元素、第五から第七族の金属元素のうちの少なくとも一つを表し、nは、1、2、3、4、5又は6を表す。選択的に、Men+標準還元電位(vs.標準水素電極電位)とLi標準還元電位(vs.標準水素電極電位、即ち-3.04V)との差は、1.0V以上である。Men+標準還元電位とLi標準還元電位との差は、1.0V以上であり、Men+がリチウムイオンの前に還元されることをより良く保証することができ、それによってSEI膜形成中における活性リチウムイオンに対する不可逆的な消費を減少させる作用をより良く果たし、且つ二次電池の容量維持率を向上させる。
【0070】
選択的に、Meは、Ni、Co、Mn、AlとFeのうちの少なくとも一つを表す。さらに選択的に、Men+は、Ni2+、Co2+、Mn2+、Al3+とFe2+のうちの少なくとも一つを表す。
【0071】
いくつかの実施例では、選択的に、前記非水電解液は、第二のアニオンをさらに含有してもよく、前記第二のアニオンは、過塩素酸アニオンClO 、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンN(SOCF (TFSIと略する)、NO とSO 2-のうちの少なくとも一つを含み、さらに選択的にNO とSO 2-のうちの少なくとも一つを含む。前記非水電解液における第二のアニオンの質量濃度は、D3 ppmであり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、選択的に、D3は、1~3000である。第二のアニオンは、非水電解液に比較的高い熱安定性を有させることに寄与し、それによって二次電池の高温安定性を向上させることができ、第二のアニオンは、さらにBF が自由イオンになり、アニオンとカチオンとの会合を減少させることに寄与し、それによってBF の二次電池容量維持率と動力学性能に対する改善作用を十分に発揮することができる。さらに選択的に、D3は、1~2500、1~2000、1~1500、1~1000、1~500、50~3000、50~2500、50~2000、50~1500、50~1000、50~500、100~3000、100~2500、100~2000、100~1500、100~1000、100~500、200~3000、200~2500、200~2000、200~1500、200~1000又は200~500である。
【0072】
いくつかの実施例では、選択的に、第一のアニオンの質量濃度D2 ppmと第二のアニオンの質量濃度D3 ppmは、さらにD2/D3が0.25~20であることを満たす。発明者は、さらに研究し、D2/D3が適切な範囲内にある時に、第一のアニオンと第二のアニオンとの間の相乗作用効果を十分に発揮することに寄与し、それによって非水電解液の熱安定性を向上させることができるだけでなく、さらに負極活物質表面に安定的で低インピーダンスのSEI膜を形成することができることを発見した。さらに選択的に、D2/D3は、0.5~20、0.5~15、0.5~10、0.5~8、0.5~6、0.5~5、0.5~4、0.5~3、0.5~2、0.8~15、0.8~10、0.8~8、0.8~6、0.8~5、0.8~4、0.8~3又は0.8~2であってもよい。
【0073】
いくつかの実施例では、選択的に、前記非水電解液は、第三のアニオンをさらに含有してもよく、前記第三のアニオンは、ヘキサフルオロリン酸アニオンPF 、ビスフルオロスルホニルイミドアニオンN(SOF) (FSI)と略する又はその組み合わせを含む。選択的に、前記非水電解液における第三のアニオンの質量百分率含有量は、8%から20%であり、さらに選択的に9%から18%であり、さらに選択的に9%から15%であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算される。
【0074】
本出願の非水電解液は、第三のアニオンとリチウムイオンにより形成された化合物を主なリチウム塩とし、即ち本出願は、ヘキサフルオロリン酸リチウム及び/又はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを主なリチウム塩としてもよい。ヘキサフルオロリン酸リチウムは、イオン導電率が高く且つ正極集電体を腐食しにくい特性を有し、主なリチウム塩として非水電解液全体のイオン導電率と熱安定性を向上させることができる。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの化学式は、FNO.Liであり、ここで、N原子は、二つの吸引性電子のスルホニル基と繋がり、それによってN原子上の電荷が十分に非局在化されるようにし、さらにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドは、比較的低い格子エネルギーを有し、解離しやすく、それによって非水電解液のイオン導電率を向上させ、非水電解液の粘度を低減させることができ、なお、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドは、さらに耐高温性が良好であり、加水分解しにくい特性を有し、負極活物質表面により薄く、インピーダンスがより低く且つ熱安定性がより高い界面膜を形成することができ、それによって負極活物質と非水電解液との間の副反応を減少させる。
【0075】
いくつかの実施例では、前記第三のアニオンは、ヘキサフルオロリン酸アニオンPF を含み、即ち本出願は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を主なリチウム塩としてもよい。
【0076】
いくつかの実施例では、前記第三のアニオンは、ビスフルオロスルホニルイミドアニオンN(SOF) を含み、即ち本出願は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を主なリチウム塩としてもよい。
【0077】
いくつかの実施例では、前記第三のアニオンは、ヘキサフルオロリン酸アニオンPF とビスフルオロスルホニルイミドアニオンN(SOF) を同時に含み、即ち本出願は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を共に主なリチウム塩としてもよい。選択的に、ヘキサフルオロリン酸アニオンPF とビスフルオロスルホニルイミドアニオンN(SOF) との質量比αは、0.2~3であり、さらに選択的に0.3~2、0.4~1.8又は0.5~1.5である。それによって前記非水電解液は、加水分解しにくいとともに、さらにより高い熱安定性を備えることができるとともに、インピーダンスがより低い界面膜の形成に寄与する。
【0078】
いくつかの実施例では、選択的に、前記非水電解液は、第四のアニオンをさらに含有してもよく、前記第四のアニオンは、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸アニオンDFOB、ビス(オキサラト)ホウ酸アニオンBOB、ヘキサフルオロヒ酸アニオンAsF 、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンCFSO 、ジフルオロリン酸アニオンPO 、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸アニオンDODFPとテトラフルオロ(オキサラト)リン酸アニオンOTFPのうちの少なくとも一つを含む。それによってさらに正極及び/又は負極の界面性能を改善し、又は非水電解液のイオン導電率又は熱安定性を改善する作用を果たすことができる。選択的に、前記非水電解液における第四のアニオンの質量百分率含有量は、2%以下であり、さらに選択的に0.5%以下であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算される。
【0079】
選択的に、いくつかの実施例では、前記第四のアニオンは、ジフルオロリン酸アニオンPO を含み、それによって非水電解液のイオン導電率を向上させ、正極界面膜及び/又は負極界面膜の性質を改善することができ、且つ安定的で低インピーダンスの正極界面膜及び/又は負極界面膜を構築することに寄与し、それによって非水電解液の分解を効果的に減少させ、さらに二次電池の動力学性能と安全性能を改善する。選択的に、ジフルオロリン酸アニオンPO と第三のアニオンとの質量比βは、0.01~0.15であり、さらに選択的に0.01~0.1である。
【0080】
[添加剤]
いくつかの実施例では、選択的に、前記非水電解液は、第一の添加剤をさらに含有してもよく、前記第一の添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)である。前記非水電解液における第一の添加剤の質量濃度は、D4 ppmであり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、選択的に、D4は、1~30000である。
【0081】
二次電池について、FECは、比較的高い電位で還元分解反応を発生させ、且つ負極活物質表面に一定可撓性を有するSEI膜を形成することができるとともに、さらに比較的低い電位の有機溶媒の還元分解を抑制し及び有機溶媒が負極活物質に嵌め込むことを抑制することができる。そのため、非水電解液がFECを有する時に、二次電池のサイクル性能を効果的に高めることができる。なお、FECは、耐高圧酸化であり、高電圧正極活物質にマッチングすることに有利であり、それによって二次電池のエネルギー密度を高めることに有利である。
【0082】
非水電解液がFECをさらに含有する時に、FECの二次電池サイクル性能とエネルギー密度に対する改善作用を十分に発揮することに有利である。なお、FECが比較的高い誘電率を有するため、非水電解液にはFECが含有される時に、非水電解液におけるBF が自由イオンになり、アニオンとカチオンとの会合を減少させることに寄与し、それによってBF の二次電池容量維持率と動力学性能に対する改善作用を十分に発揮することができる。しかしながら、FECは、分解する時にHFを形成し、HFは、正極活物質の構造安定性を破壊し、二次電池の空気発生量を増加させ、二次電池の貯蔵性能を悪化させる。そのため、その含有量が高すぎるのは、良くない。
【0083】
さらに選択的に、D4は、1~25000、1~20000、1~15000、1~10000、1~8000、1~5000、1~2000、100~25000、100~20000、100~15000、100~10000、100~8000、100~5000又は100~2000である。
【0084】
いくつかの実施例では、選択的に、第一のアニオンの質量濃度D2 ppmと第一の添加剤の質量濃度D4 ppmは、D4/D2が5~500であることを満たす。発明者は、さらに研究し、D4/D2が適切な範囲内にある時に、FECとBF との間の相乗作用効果を十分に発揮することができ、この時に二次電池の空気発生量を明らかに増加させないだけでなく、またさらに二次電池のサイクル性能を改善することを発見した。さらに選択的に、D4/D2は、5~500であり、5~400、5~300、5~200、5~150、5~100、5~75、5~50又は5~40である。
【0085】
いくつかの実施例では、選択的に、前記非水電解液は、第二の添加剤をさらに含有してもよく、前記第二の添加剤は、炭酸ビニレン(VC)、シュウ酸リチウム、硫酸ビニル(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)のうちの少なくとも一つを含む。第二の添加剤は、さらに正極及び/又は負極の界面性能を改善することに寄与し、それによってさらに二次電池のサイクル性能、安全性能と動力学性能のうちの少なくとも一つを向上させる。選択的に、前記非水電解液における第二の添加剤の質量百分率含有量は、5%以下であり、さらに選択的に2.5%以下であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算される。
【0086】
いくつかの実施例では、選択的に、前記非水電解液は、上記第一の添加剤と第二の添加剤をさらに同時に含有してもよく、それによっては、さらに正極及び/又は負極の界面性能を改善することに寄与し、それによってさらに二次電池のサイクル性能、安全性能と動力学性能を向上させる。
【0087】
[非水溶媒]
本出願では、非水溶媒は、主にリチウム塩を溶解してリチウム塩を導電可能なイオンに形成するとともに、非水電解液におけるカチオン(例えば、リチウムイオン、金属カチオンMen+など)とアニオン(例えば、第一のアニオン、第二のアニオン、第三のアニオン、第四のアニオンなど)との会合を減少させるために用いられる。
【0088】
いくつかの実施例では、前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物とを含む。環状カーボネート化合物は、比較的高い誘電率を有するため、非水電解液のイオン導電率を増加させることができ、鎖状カーボネート化合物は、比較的小さい粘度を有するため、非水電解液の粘度を低減させることができる。そのため、非水溶媒が環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物とを含む時に、非水電解液が適切な粘度とイオン導電率を有することに寄与し、さらにリチウムイオンの伝送に有利である。例として、環状カーボネート化合物は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。例として、鎖状カーボネート化合物は、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0089】
いくつかの実施例では、前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物以外の他の溶媒をさらに含んでもよく、例えば、カルボン酸エステル化合物、スルホン系化合物、エーテル系化合物のうちの少なくとも一つをさらに含んでもよい。例として、カルボン酸エステル化合物は、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)と1,4-ブチロラクトン(GBL)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。例として、スルホン系化合物は、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)とジエチルスルホン(ESE)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。例として、エーテル系化合物は、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン(DOL)、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシメタン(DMM)とジエチレングリコールジメチルエーテル(DG)のうちの少なくとも一つを含む。これらの溶媒は、非水電解液が適切な粘度及び/又はイオン導電率を有することに寄与し、さらにリチウムイオンの伝送に有利である。なお、これらの溶媒は、さらに非水電解液におけるBF が自由イオンになり、アニオンとカチオンとの会合を減少させることに寄与し、それによってBF の二次電池容量維持率と動力学性能に対する改善作用を十分に発揮することができる。
【0090】
選択的に、いくつかの実施例では、前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物とエーテル系化合物を同時に含む。
【0091】
前記非水電解液における環状カーボネート化合物の質量百分率含有量は、E1であり、鎖状カーボネート化合物の質量百分率含有量は、E2であり、エーテル系化合物の質量百分率含有量は、E3であり、いずれも前記非水電解液の総質量に基づいて計算される。いくつかの実施例では、E1は、5%から40%である。選択的に、E1は、10%から30%であり、E2は、40%から85%である。選択的に、E2は、60%から80%であり、E3は、0.1%から40%であり、選択的に、E3は、0.5%から20%である。
【0092】
本出願では、非水電解液における各成分(例えば、第一のカチオン、第一のアニオン、第二のアニオン、第三のアニオン、第四のアニオン、第一の添加剤、第二の添加剤など)及びその含有量は、当分野において既知の方法に従って測定することができる。例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー法(IC)、液体クロマトグラフィー法(LC)、核磁気共鳴分光法(NMR)、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)によって測定することができる。
【0093】
説明すべきこととして、本出願の非水電解液をテストする時に、新鮮に製造された非水電解液を直接に取ってもよく、また二次電池から非水電解液を取得してもよい。二次電池から非水電解液を取得する一つの例示的な方法は、二次電池を放電カットオフ電圧に放電した(安全のため、一般的には電池を満放電状態にする)後に遠心処理を行い、その後に適量の遠心処理によって得られた液体を取って即ち非水電解液であるステップを含む。二次電池の注液口から非水電解液を直接に取得してもよい。
【0094】
製造方法
本出願の第二の態様は、非水電解液の製造方法を提供し、本出願の第二の態様の非水電解液の製造方法によって本出願の第一の態様の非水電解液を得ることができる。
【0095】
具体的には、非水電解液の製造方法は、非水溶媒、リチウム塩、可溶性Me塩、可溶性テトラフルオロホウ酸塩及び選択的な添加剤を均一に混合し、非水電解液を得るステップを含み、Meは、リチウム元素以外の金属元素を表す。前記非水電解液は、非水溶媒及びそれに溶解するリチウムイオン、第一のカチオンと第一のアニオンを含有し、前記第一のカチオンは、リチウムイオン以外の金属カチオンMen+であり、nは、金属カチオンの原子価を表し、前記第一のアニオンは、テトラフルオロホウ酸アニオンBF であり、前記非水電解液における第一のカチオンの質量濃度は、D1 ppmであり、前記非水電解液における第一のアニオンの質量濃度は、D2 ppmであり、いずれも前記非水電解液の総質量に基づいて計算され、且つ前記非水電解液は、D1が0.1~1250であり、D1/D2が0.02~2であることを満たす。
【0096】
選択的に、Me元素は、遷移金属元素、第五から第七族の金属元素のうちの少なくとも一つを表す。選択的に、Men+標準還元電位(vs.標準水素電極電位)とLi標準還元電位(vs.標準水素電極電位、即ち-3.04V)との差は、1.0V以上である。さらに選択的に、Meは、Ni、Co、Mn、AlとFeのうちの少なくとも一つを表す。選択的に、Men+は、Ni2+、Co2+、Mn2+、Al3+とFe2+のうちの少なくとも一つを表す。
【0097】
各材料の添加順序に対して特に限定せず、例えば同時に加えてもよく、また数回に分けて加えてもよい。
【0098】
前記可溶性Me塩は、Men+を含有し且つ前記非水電解液に溶解可能な化合物を使用することができる。いくつかの実施例では、選択的に、前記可溶性Me塩は、Me(BF、Me(ClO、Me[N(SOCF、Me(NO、Me(SOn/2、Me(PF、Me[N(SOF)、Me(DFOB)、Me(BOB)、Me(AsF、Me(CFSO、Me(PO、Me(DODFP)とMe(OTFP)のうちの少なくとも一つを含む。さらに選択的に、前記可溶性Me塩は、Me(BF、Me(DFOB)、Me(NO、Me(SOn/2のうちの少なくとも一つを含む。それによって前記非水電解液における金属カチオンと異なるアニオンの質量濃度を所要範囲内にあるように調節することに寄与する。
【0099】
いくつかの実施例では、選択的に、前記可溶性テトラフルオロホウ酸塩は、Me(BF、LiBFのうちの少なくとも一つを含む。それによって前記非水電解液における金属カチオンと第一のアニオンの質量濃度を所要範囲内にあるように調節することに寄与する。
【0100】
いくつかの実施例では、選択的に、前記可溶性Me塩と前記可溶性テトラフルオロホウ酸塩のうちの少なくとも一つは、Me(BFを含む。それによって二次電池に良好なサイクル性能、安全性能と動力学性能をより良く備えることに寄与する。
【0101】
いくつかの実施例では、前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物とを含む。選択的に、前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物以外の他の溶媒をさらに含んでもよく、例えば、カルボン酸エステル化合物、スルホン系化合物、エーテル系化合物のうちの少なくとも一つをさらに含んでもよい。さらに選択的に、前記非水溶媒は、環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物とエーテル系化合物を同時に含む。エーテル系化合物は、可溶性Me塩と可溶性テトラフルオロホウ酸塩の前記非水電解液における解離度の増加に寄与し、それによって前記非水電解液における金属カチオンと異なるアニオンの質量濃度を所要範囲内にあるように調節することに寄与する。
【0102】
いくつかの実施例では、前記リチウム塩は、第一のリチウム塩を含み、前記第一のリチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)又はその組み合わせを含む。第一のリチウム塩は、主なリチウム塩とし、その前記非水電解液における質量百分率含有量は、8%から20%であってもよく、選択的に9%から18%であり、さらに選択的に9%から15%であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算される。
【0103】
本出願の非水電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム及び/又はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを主なリチウム塩とする。ヘキサフルオロリン酸リチウムは、イオン導電率が高く且つ正極集電体を腐食しにくい特性を有し、主なリチウム塩として非水電解液全体のイオン導電率と熱安定性を向上させることができる。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの化学式は、FNO.Liであり、ここで、N原子は、二つの吸引性電子のスルホニル基と繋がり、それによってN原子上の電荷が十分に非局在化されるようにし、さらにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドは、比較的低い格子エネルギーを有し、解離しやすく、それによって非水電解液のイオン導電率を向上させ、非水電解液の粘度を低減させることができ、なお、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドは、さらに耐高温性が良好であり、加水分解しにくい特性を有し、負極活物質表面により薄く、インピーダンスがより低く且つ熱安定性がより高い界面膜を形成することができ、それによって負極活物質と非水電解液との間の副反応を減少させる。
【0104】
いくつかの実施例では、前記第一のリチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を含む。
【0105】
いくつかの実施例では、前記第一のリチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含む。
【0106】
いくつかの実施例では、前記第一のリチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を同時に含み、選択的に、ヘキサフルオロリン酸リチウムとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの質量比は、0.2~3であり、さらに選択的に0.3~2、0.4~1.8又は0.5~1.5である。それによって前記非水電解液は、加水分解しにくいとともに、さらにより高い熱安定性を備えることができるとともに、インピーダンスがより低い界面膜の形成に寄与する。
【0107】
いくつかの実施例では、選択的に、前記リチウム塩は、第二のリチウム塩をさらに含んでもよく、前記第二のリチウム塩は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDODFP)とテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(LiOTFP)のうちの少なくとも一つを含む。第二のリチウム塩は、補助リチウム塩としてさらに正極及び/又は負極の界面性能を改善し、又は非水電解液のイオン導電率又は熱安定性を改善する作用を果たすことができる。選択的に、第二のリチウム塩の前記非水電解液における質量百分率含有量は、2%以下であり、さらに選択的に0.5%以下であり、前記非水電解液の総質量に基づいて計算される。
【0108】
いくつかの実施例では、選択的に、前記第二のリチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(LiOTFP)又はその組み合わせを含み、さらに選択的に、前記第二のリチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)を含む。ジフルオロリン酸リチウムは、比較的高い電気化学安定性を有し、非水電解液のイオン導電率を向上させ、正極界面膜及び/又は負極界面膜の性質を改善することができ、且つ安定的で低インピーダンスの正極界面膜及び/又は負極界面膜を構築することに寄与し、それによって非水電解液の分解を効果的に減少させ、さらに二次電池の動力学性能と安全性能を改善する。選択的に、ジフルオロリン酸リチウムと第一のリチウム塩との質量比は、0.01~0.15であり、さらに選択的に0.01~0.1である。
【0109】
いくつかの実施例では、前記添加剤は、第一の添加剤と第二の添加剤のうちの少なくとも一つを含み、前記第一の添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)であり、前記第二の添加剤は、炭酸ビニレン(VC)、シュウ酸リチウム、硫酸ビニル(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)のうちの少なくとも一つを含む。
【0110】
非水電解液における各原料の種類及びその添加量などを調節することによって、非水電解液におけるリチウム塩、可溶性Me塩、可溶性テトラフルオロホウ酸塩の解離度の調節に寄与し、且つ所要金属カチオンとアニオン(例えば、第一のアニオン、第二のアニオン、第三のアニオン、第四のアニオンなど)質量濃度を満たす非水電解液を得ることに寄与する。それによって得られた非水電解液における各成分の種類と具体的な含有量は、本出願の実施の形態の第一の態様に記載の非水電解液と同様である。
【0111】
二次電池
本出願の第三の態様は、二次電池を提供し、二次電池は、電極アセンブリと非水電解液とを含み、ここで、前記非水電解液は、本出願の第一の態様の非水電解液又は本出願の第二の態様の方法を採用して得られた非水電解液であり、それによって二次電池は、良好なサイクル性能、安全性能と動力学性能を同時に備えることができる。本出願の二次電池は、リチウム二次電池であってもよく、特にリチウムイオン二次電池であってもよい。
【0112】
電極アセンブリは、正極極板と、負極極板と、セパレータとを含み、セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、主に正極と負極短絡を防止する作用を果たすとともに、リチウムイオンを通過させることができる。
【0113】
[正極極板]
いくつかの実施例では、前記正極極板は、正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ正極活物質を含む正極膜層を含む。例えば、前記正極集電体は、自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、前記正極膜層は、前記正極集電体の二つの対向する表面のうちのいずれか一方又は両方上に設置される。
【0114】
前記正極膜層は、正極活物質を含み、前記正極活物質は、当分野において公知の二次電池用の正極活物質を採用することができる。例えば、前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つを含んでもよい。リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つを含んでもよい。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つを含んでもよい。これらの正極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0115】
いくつかの実施例では、選択的に、前記正極活物質は、分子式がLiNiCoMnAlである層状材料を含み、Mは、遷移金属サイトドーピングカチオンを表し、Aは、酸素サイトドーピングアニオンを表し、0.8≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f≦0.2、0≦g≦2、0≦h≦2、b+c+d+e+f=1、g+h=2である。
【0116】
分子式がLiNiCoMnAlである層状材料は、選択的にMカチオンによりドーピングされて改質され、Aアニオンがドーピングして改質し又はMカチオンとAアニオンにより同時にドーピングされて改質され、ドーピングした後に得られた層状材料結晶構造は、さらに安定的であり、さらに二次電池の電気化学性能、例えばサイクル性能、動力学性能などを高めることができる。
【0117】
いくつかの実施例では、Mは、Si、Ti、Mo、V、Ge、Se、Zr、Nb、Ru、Pd、Sb、Ce、Te及びWから選択された少なくとも一つである。
【0118】
いくつかの実施例では、Aは、F、N、P及びSから選択された少なくとも一つである。選択的に、Aは、Fから選択された。Fドーピング改質を経てた後に、LiNiCoMnAlの結晶構造は、さらに安定的であり、それによって二次電池により良いサイクル性能と動力学性能を有させることができる。
【0119】
a、b、c、d、e、f、g、hの値は、LiNiCoMnAlに電気的中性を維持させるという条件を満たす。
【0120】
いくつかの実施例では、0<b<0.98である。選択的に、0.50≦b<0.98、0.55≦b<0.98、0.60≦b<0.98、0.65≦b<0.98、0.70≦b<0.98、0.75≦b<0.98又は0.80≦b<0.98である。
【0121】
いくつかの実施例では、c=0である。
【0122】
いくつかの実施例では、0<c≦0.20である。選択的に、0<c≦0.15、0<c≦0.10、0<c≦0.09、0<c≦0.08、0<c≦0.07、0<c≦0.06、0<c≦0.05、0<c≦0.04、0<c≦0.03、0<c≦0.02又は0<c≦0.01である。
【0123】
いくつかの実施例では、d=0且つ0<e<0.50である。選択的に、d=0且つ0<e≦0.45、d=0且つ0<e≦0.40、d=0且つ0<e≦0.35、d=0且つ0<e≦0.30、d=0且つ0<e≦0.25、d=0且つ0<e≦0.20、d=0且つ0<e≦0.15又はd=0且つ0<e≦0.10である。
【0124】
いくつかの実施例では、e=0且つ0<d<0.50である。選択的に、e=0且つ0<d≦0.45、e=0且つ0<d≦0.40、e=0且つ0<d≦0.35、e=0且つ0<d≦0.30、e=0且つ0<d≦0.25、e=0且つ0<d≦0.20、e=0且つ0<d≦0.15又はe=0且つ0<d≦0.10である。
【0125】
いくつかの実施例では、0<d<0.50且つ0<e<0.50である。選択的に、0<d≦0.30且つ0<e≦0.10である。
【0126】
いくつかの実施例では、g=2、h=0である。
【0127】
いくつかの実施例では、g=0、h=2である。
【0128】
いくつかの実施例では、0<g<2、0<h<2、且つg+h=2である。
【0129】
例として、分子式がLiNiCoMnAlである層状材料は、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Co0.05Mn0.15、LiNi0.7Mn0.3、LiNi0.69Co0.01Mn0.3、LiNi0.68Co0.02Mn0.3、LiNi0.65Co0.05Mn0.3、LiNi0.63Co0.07Mn0.3、LiNi0.61Co0.09Mn0.3のうちの少なくとも一つを含むが、それらに限らない。
【0130】
LiNiCoMnAlは、当分野の通常の方法に従って製造されてもよい。例示的な製造方法は、リチウム源、ニッケル源、コバルト源、マンガン源、アルミニウム源、M元素前駆体、A元素前駆体を混合した後に焼結して得られることである。焼結雰囲気は、酸素含有雰囲気、例えば、空気雰囲気又は酸素気雰囲気であってもよい。焼結雰囲気のO濃度は、例えば70%から100%である。焼結温度と焼結時間は、実際の状況に応じて調節することができる。
【0131】
例として、リチウム源は、酸化リチウム(LiO)、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸二水素リチウム(LiHPO)、酢酸リチウム(CHCOOLi)、水素酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)と硝酸リチウム(LiNO)のうちの少なくとも一つを含むが、それらに限らない。例として、ニッケル源は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、シュウ酸ニッケルと酢酸ニッケルのうちの少なくとも一つを含むが、それらに限らない。例として、コバルト源は、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、シュウ酸コバルトと酢酸コバルトのうちの少なくとも一つを含むが、それらに限らない。例として、マンガン源は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガンと酢酸マンガンのうちの少なくとも一つを含むが、それらに限らない。例として、アルミニウム源は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、シュウ酸アルミニウムと酢酸アルミニウムのうちの少なくとも一つを含むが、それらに限らない。例として、M元素前駆体は、M元素の酸化物、硝酸化合物、炭酸化合物、水素酸化合物と酢酸化合物のうちの少なくとも一つを含むが、それらに限らない。例として、A元素の前駆体は、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化水素、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化水素、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、硫化水素、硫黄化リチウム、硫化アンモニウムと単体硫黄のうちの少なくとも一つを含むが、それらに限らない。
【0132】
いくつかの実施例では、正極膜層の総質量に基づいて計算し、分子式がLiNiCoMnAlである層状材料の質量百分率含有量は、80%から99%である。例えば、分子式がLiNiCoMnAlである層状材料の質量百分率含有量は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は以上の任意の数値からなっている範囲であってもよい。選択的に、分子式がLiNiCoMnAlである層状材料の質量百分率含有量は、85%から99%、90%から99%、95%から99%、80%から98%、85%から98%、90%から98%、95%から98%、80%から97%、85%から97%、90%から97%又は95%から97%である。
【0133】
いくつかの実施例では、前記正極膜層は、さらに選択的に正極導電剤を含む。本出願は、前記正極導電剤の種類に対して特に限定せず、例として、前記正極導電剤は、超伝導カーボン、導電黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施例では、前記正極膜層の総質量に基づいて計算し、前記正極導電剤の質量百分率含有量は、5%以下である。
【0134】
いくつかの実施例では、前記正極膜層は、さらに選択的に正極接着剤を含む。本出願は、前記正極接着剤の種類に対して特に限定せず、例として、前記正極接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素含有アクリレート系樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。いくつかの実施例では、前記正極膜層の総質量に基づいて計算し、前記正極接着剤の質量百分率含有量は、5%以下である。
【0135】
いくつかの実施例では、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用することができる。金属箔シートの例として、アルミニウム箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料ベース層及び高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面上に形成される金属材料層を含んでもよい。例として、金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金のうちの少なくとも一つを含んでもよい。例として、高分子材料ベース層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などを含んでもよい。
【0136】
前記正極膜層は、一般的には正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て得られたものである。前記正極スラリーは、一般的には正極活物質、選択的な導電剤、選択的な接着剤及び任意の他の成分を溶媒に分散させて均一に攪拌して形成されたものである。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これらに限らない。
【0137】
[負極極板]
いくつかの実施例では、前記負極極板は、負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ負極活物質を含む負極膜層を含む。例えば、前記負極集電体は、自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、前記負極膜層は、前記負極集電体の二つの対向する表面のうちのいずれか一方又は両方上に設置される。
【0138】
前記負極活物質は、当分野において公知の二次電池用の負極活物質を採用することができる。例として、前記負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコーン系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの少なくとも一つを含むが、それらに限らない。前記シリコーン系材料は、シリコーン単体、シリコーン酸化物、シリコーン炭素複合体、シリコーン窒素複合体、シリコーン合金材料のうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物、スズ合金材料のうちの少なくとも一つを含んでもよい。本出願は、これらの材料に限らず、さらに他の二次電池負極活物質として用いることができる従来公知の材料を使用することができる。これらの負極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0139】
いくつかの実施例では、前記負極膜層は、さらに選択的に負極導電剤を含む。本出願は、前記負極導電剤の種類に対して特に限定せず、例として、前記負極導電剤は、超伝導カーボン、導電黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。いくつかの実施例では、前記負極膜層の総質量に基づいて計算し、前記負極導電剤の質量百分率含有量は、5%以下である。
【0140】
いくつかの実施例では、前記負極膜層は、さらに選択的に負極接着剤を含む。本出願は、前記負極接着剤の種類に対して特に限定せず、例として、前記負極接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル酸系樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。いくつかの実施例では、前記負極膜層の総質量に基づいて計算し、前記負極接着剤の質量百分率含有量は、5%以下である。
【0141】
いくつかの実施例では、前記負極膜層は、さらに選択的に他の助剤を含む。例として、他の助剤は、増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料などを含んでもよい。いくつかの実施例では、前記負極膜層の総質量に基づいて計算し、前記他の助剤の質量百分率含有量は、2%以下である。
【0142】
いくつかの実施例では、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用することができる。金属箔シートの例として、銅箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料ベース層及び高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面上に形成される金属材料層を含んでもよい。例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金から選択された少なくとも一つであってもよい。例として、高分子材料ベース層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択されてもよい。
【0143】
前記負極膜層は、一般的には負極スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て得られたものである。前記負極スラリーは、一般的には負極活物質、選択的な導電剤、選択的な接着剤、他の選択的な助剤を溶媒に分散させて均一に攪拌して形成されたものである。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、これらに限らない。
【0144】
[セパレータ]
前記セパレータは、前記正極極板と前記負極極板との間に設置され、主に正極と負極短絡を防止する作用を果たすとともに、リチウムイオンを通過させることができる。本出願は、前記セパレータの種類に対して特に限定せず、任意の公知の良好な化学安定性と機械安定性を有する多孔質構造セパレータを選ぶことができる。
【0145】
いくつかの実施例では、前記セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記セパレータは、単層フィルムであってもよく、また多層複合フィルムであってもよい。前記セパレータが多層複合フィルムである時に、各層の材料は、同じであり又は異なる。
【0146】
いくつかの実施例では、前記正極極板、前記セパレータと前記負極極板は、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリに製造されることができる。
【0147】
いくつかの実施例では、前記二次電池は、外装体を含んでもよい。この外装体は、上記電極アセンブリ及び非水電解液をパッケージングするために用いることができる。
【0148】
いくつかの実施例では、前記二次電池の外装体は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。前記二次電池の外装体は、またパウチ、例えば袋状パウチであってもよい。前記パウチの材質は、プラスチック、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの少なくとも一つであってもよい。
【0149】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは、円筒型、四角形又は他の任意の形状であってもよい。図1は、一例とする四角形構造の二次電池5である。
【0150】
いくつかの実施例では、図2に示すように、外装体は、ケース51とカバープレート53を含んでもよい。ケース51は、底板と底板上に接続された側板を含んでもよく、底板と側板は、囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口を覆って、前記収容キャビティを密閉するために用いられる。正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティにパッケージングされる。非水電解液は、電極アセンブリ52内に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0151】
本出願の二次電池の製造方法は、公知のものである。いくつかの実施例では、正極極板、セパレータ、負極極板と非水電解液を組み立てて二次電池を形成することができる。例として、正極極板、セパレータ、負極極板を捲回プロセス又は積層プロセスを経て電極アセンブリに形成することができ、電極アセンブリを外装体内に置き、乾燥した後に非水電解液を注入し、真空パッケージング、静置、化成、整形などの工程を経、二次電池を得る。
【0152】
本出願のいくつかの実施例では、本出願による二次電池は、電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの応用と容量に基づいて調節することができる。
【0153】
図3は、一例とする電池モジュール4の概略図である。図3に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べられて設置されてもよい。無論、他の任意の方式で配列されてもよい。さらに締結具を介してこれらの複数の二次電池5を固定することができる。
【0154】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0155】
いくつかの実施例では、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの応用と容量に応じて調節することができる。
【0156】
図4図5は、一例とする電池パック1の概略図である。図4図5に示すように、電池パック1には電池ボックスと電池ボックス内に設置された複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3を覆設し、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成するために用いられる。複数の電池モジュール4は、任意の方式に従って電池ボックス内に配列することができる。
【0157】
電力消費装置
本出願の第四の態様は、電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は、本出願の二次電池、電池モジュール又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックを前記電力消費装置の電源とすることができ、また前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとすることもできる。前記電力消費装置は、移動体機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、それらに限らない。
【0158】
前記電力消費装置は、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0159】
図6は、一例とする電力消費装置の概略図である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の高出力と高エネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0160】
別の例の電力消費装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この電力消費装置は、一般的には薄型化を要求し、二次電池を電源として採用することができる。
【0161】
実施例
下記実施例は、本出願に開示された内容をより具体的に記述し、これらの実施例は、ただ論述して説明するためのものに過ぎず、本出願に開示された内容の範囲内において様々な修正と変化を行うのは、当業者にとって明らかなことであるからである。特に声明しない限り、以下の実施例に言及したすべての占有率、百分率、比は、いずれも質量に基づいて計算され、そして実施例に使用されるすべての試薬は、いずれも市販されており又は通常の方法に従って合成して取得することができるとともに、直接に使用できてさらなる処理を必要とせず、及び実施例に使用される計器は、いずれも市販されている。
【0162】
実施例1~30と比較例1~3の二次電池は、いずれも下記方法に従って製造される。
【0163】
正極極板の製造
正極活物質であるLiNi0.6Co0.2Mn0.2、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比97.5:1.4:1.1に従って適量の溶媒NMP内で十分に攪拌して混合し、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体アルミニウム箔の表面上に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスを経てた後に、正極極板を得た。
【0164】
負極極板の製造
負極活物質である黒鉛、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、導電剤であるカーボンブラック(Super P)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8に従って適量の溶媒脱イオン水内で十分に攪拌して混合し、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体銅箔の表面上に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスを経てた後に、負極極板を得た。
【0165】
セパレータ
多孔質ポリエチレン(PE)膜をセパレータとして採用した。
【0166】
非水電解液の製造
表1と表2に示す組成に従って環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物を均一に混合して有機溶媒を得、その後に表1と表2に示す組成に従ってリチウム塩、添加剤、可溶性Me塩、可溶性テトラフルオロホウ酸塩を有機溶媒内に加えて均一に混合し、非水電解液を得た。表1と表2において、各成分の添加量は、いずれも非水電解液の総質量に基づいて計算された。
【0167】
二次電池の製造
正極極板、セパレータ、負極極板を順番に積層し且つ捲回し、電極アセンブリを得、電極アセンブリを外装体内に置き、上記非水電解液を加え、パッケージング、静置、化成、エージングなどの工程を経てた後に、二次電池を得た。
【0168】
試験部分
(1)非水電解液組成及び含有量試験
金属カチオンの試験:上記製造された二次電池を完全に放電した後に、注液口から10ml遊離電解液を取り出し、Thermo Fisher Scientific会社の型番がICAP-7400の誘導結合プラズマ発光分析法を採用してテストし、試験結果に基づいて計算して非水電解液における第一のカチオンの質量濃度D1 ppmを得た。
【0169】
アニオンの試験:上記製造された二次電池を完全に放電した後に、注液口から約1.5ml遊離電解液を取り出して必要に備えた。核磁気共鳴分光法によって第一のアニオンの質量濃度D2 ppm、第二のアニオンの質量濃度D3 ppmをテストした。
【0170】
具体的な試験ステップは、以下のとおりである:窒素ガスで満たされたグローブボックスにおいて500 μl重水素化試薬を核磁気チューブ内に加え、100 μl非水電解液サンプルを取って核磁気チューブ内に加え、核磁気チューブを揺らして非水電解液を重水素化試薬に溶解させ、オックスフォード計器会社の据え置き型核磁気共鳴スペクトル機器X-Pulseを採用してテストした。非水電解液が水分に非常に敏感であるため、核磁気試験を行う時及びサンプルを用意する時にいずれも窒素ガス雰囲気において行う(HO含有量は、0.1 ppmよりも小さく、O含有量は、0.1 ppmよりも小さい)とともに、試験に関連する計器は、予め純水で洗濯し且つ60°Cの真空環境で48小時以上乾燥する必要がある。
【0171】
重水素化試薬は、以下のようなステップに従って製造される:重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、重水素化アセトニトリルとトリフルオロメチルベンゼンを4A分子篩で25°C以上の温度で3日間以上乾燥し、すべての試薬の水含有量がいずれも3 ppmよりも小さいことを確保し、水分試験計器は、スイスメトローム有限公司の831 KF型クーロン水分試験機器を採用することができる。その後に窒素ガスで満たされたグローブボックスにおいて10 mlの乾燥後のDMSO-d6と300 μlの乾燥後の内部標準トリフルオロメチルベンゼンを取って均一に混合して第一の溶液を得、10 mlの乾燥後の重水素化アセトニトリルと300 μlの乾燥後の内部標準トリフルオロメチルベンゼンを取って均一に混合して第二の溶液を得、第一の溶液と第二の溶液を均一に混合して重水素化試薬を得た。
【0172】
(2)二次電池常温サイクル性能試験
25℃で、二次電池を1Cで4.3Vに定電流充電し、続いて電流を0.05Cに定電圧充電し、この時に二次電池は、満充電状態であり、この時の充電用量を記録し、即ち1サイクル目の充電容量であり、二次電池を5min静置した後に、1Cで2.8Vに定電流放電し、これは、一つのサイクル充放電プロセスであり、この時の放電容量を記録し、即ち1サイクル目の放電容量である。二次電池に対して上記方法に従ってサイクル充放電試験を行い、各サイクルをした後の放電容量を記録した。二次電池の25℃で600サイクルをした容量維持率(%)=600サイクルをした後の放電容量/1サイクル目の放電容量×100%である。
【0173】
(3)二次電池高温サイクル性能試験
45℃で、二次電池を1Cで4.3Vに定電流充電し、続いて電流を0.05Cに定電圧充電し、この時に二次電池は、満充電状態であり、この時の充電用量を記録し、即ち1サイクル目の充電容量であり、二次電池を5min静置した後に、1Cで2.8Vに定電流放電し、これは、一つのサイクル充放電プロセスであり、この時の放電容量を記録し、即ち1サイクル目の放電容量である。二次電池に対して上記方法に従ってサイクル充放電試験を行い、各サイクルをした後の放電容量を記録した。二次電池の45℃で600サイクルをした容量維持率(%)=600サイクルをした後の放電容量/1サイクル目の放電容量×100%である。
【0174】
(4)二次電池初期直流内部抵抗試験
25℃で、二次電池を1Cで4.3Vに定電流充電し、続いて電流を0.05Cに定電圧充電し、この時に二次電池は、満充電状態であり、二次電池を0.5Cで定電流放電し且つ二次電池を50%SOCに調整し、この時に二次電池の電圧をUと記し、二次電池を4Cの電流I定電流で30秒間放電し、0.1秒間でサンプリングし、放電末期電圧をUと記す。二次電池50%SOC時の放電直流内部抵抗を用いて二次電池の初期直流内部抵抗を表し、二次電池の初期直流内部抵抗(mΩ)=(U-U)/Iである。
【0175】
(5)二次電池高温貯蔵性能試験
60℃で、二次電池を1Cで4.3Vに定電流充電し、続いて電流を0.05Cに定電圧充電し、この時に排水法を用いて二次電池の体積をテストし且つVと記し、二次電池を60℃の恒温槽に置き、30日間貯蔵した後に取り出し、この時に排水法を用いて二次電池の体積をテストし且つVと記す。二次電池の60℃で30日間貯蔵した後の体積膨張率(%)=[(V1-V0)/V0]×100%である。
【0176】
表3と表4は、実施例1~30と比較例1~3の試験結果を示す。
【0177】
発明者は、さらに第一のカチオン種類の二次電池性能に対する影響を研究した。実施例31~36の二次電池は、実施例5と類似している方法に従って製造され、区別は、可溶性Me塩と可溶性テトラフルオロホウ酸塩の種類が異なることであり、具体的に表5に詳しく示す。表6は、実施例31~36の試験結果を示す。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
【表3】
【0181】
【表4】
【0182】
【表5】
【0183】
【表6】
【0184】
実施例1~30の試験結果を総合して分かるように、非水電解液に本出願の第一のカチオンと第一のアニオンが含有されるとともに、第一のカチオンの質量濃度D1 ppmと第一のアニオンの質量濃度D2 ppmがD1が0.1~1250であり、D1/D2が0.02~2であることを満たす時に、第一のカチオンは、二次電池の電気化学性能を悪化させないだけでなく、第一のカチオンと第一のアニオンとの相乗作用で、本出願の非水電解液は、さらに二次電池に比較的高いサイクル容量維持率、比較的低い内部抵抗と比較的低い体積膨張率を同時に有させることができる。
【0185】
比較例1~3の試験結果を総合して分かるように、非水電解液に第一のアニオンのみが含有されて第一のカチオンが含有されず又は多すぎる第一のカチオンが含有される時に、いずれも二次電池のサイクル性能、動力学性能と貯蔵性能を同時に改善することができない。
【0186】
実施例5、22~24の試験結果を総合してさらに分かるように、非水電解液におけるリチウム塩の種類は、異なり、二次電池電気化学性能に対する改善効果がやや異なる。特に、リチウム塩がヘキサフルオロリン酸リチウムとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを同時に含み、さらに特に、リチウム塩がジフルオロリン酸リチウムをさらに含む時に、二次電池の総合性能を高めることに寄与する。
【0187】
実施例5、25~30の試験結果を総合してさらに分かるように、非水電解液に本出願の第一の添加剤及び/又は第二の添加剤がさらに含有される時に、さらに二次電池サイクル性能、動力学性能及び貯蔵性能のうちの少なくとも一つを改善することに寄与する。
【0188】
実施例5、31~36の試験結果を総合してさらに分かるように、Men+がMen+標準還元電位(vs.標準水素電極電位)とLi標準還元電位(vs.標準水素電極電位、即ち-3.04V)との差が1.0V以上であり、特にNi2+、Co2+、Mn2+、Al3+とFe2+のうちの少なくとも一つであることを満たす時に、二次電池の総合性能をより良く改善することに寄与する。実施例35と実施例36は、それぞれNaとKを第一のカチオンとして採用し、その標準還元電位がLi標準還元電位に接近するため、それによってその電子導電性を増加させ、活性リチウムイオンの不可逆的な消費を低減させる作用が比較的悪く、さらに二次電池総合性能に対する改善効果が比較的悪いことを引き起こす。
【0189】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施の形態に限らない。上記実施の形態は、例示であり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施の形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨を逸脱しない範囲内で、実施の形態に対して当業者が想到できる様々な変形を加え、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構成された他の方式も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0190】
図面において、図面は、必ずしも実際の縮尺通りには描かれていない。符号の説明は、以下のとおりである。1電池パック、2上部筐体、3下部筐体、4電池モジュール、5二次電池、51ケース、52電極アセンブリ、53カバープレート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6