(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20241113BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20241113BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G06F1/16 312E
H05K7/20 H
H05K7/20 G
(21)【出願番号】P 2024082694
(22)【出願日】2024-05-21
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴身 侑大
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 諒太
(72)【発明者】
【氏名】星野 鷹典
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡伸
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-93174(JP,A)
【文献】特開2024-10909(JP,A)
【文献】特開2015-49591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
G06F 1/16
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
上面を形成するプレート状部材と、側面を形成する立壁部材とを有する筐体と、
前記筐体内に設けられ、吐出口を有するファンと、
前記筐体内で前記吐出口と前記立壁部材との間に配置されたヒートシンクと、
を備え、
前記立壁部材は、
前記プレート状部材の下面に当接した上端面と、
前記ヒートシンクに面して設けられた通気口と、
前記上端面を凹状に切り欠いたように形成され、前記プレート状部材の下面と前記通気口との間に位置すると共に、前記通気口との間が仕切り壁で仕切られた上部通気口と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記立壁部材は、前記立壁部材の起立方向に沿って延び、前記上部通気口を前記立壁部材の長手方向に沿って複数区画に分割する第1支柱を有し、
前記第1支柱の上端は、前記プレート状部材の下面に当接している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記立壁部材は、前記立壁部材の起立方向に沿って延び、前記通気口を前記立壁部材の長手方向に沿って複数区画に分割する第2支柱を有し、
前記第1支柱と前記第2支柱が前記起立方向に沿って上下に並んでいる
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記筐体は、底面から突出するように設けられ、前記立壁部材の長手方向に沿って延びた突出部を有し、
前記突出部は、
前記ヒートシンクの下に位置し、当該突出部の長手方向に沿って延びた側壁と、
前記側壁に形成され、前記通気口よりも下方に位置する下部通気口と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記ヒートシンクの下部は、前記突出部の内側空間に挿入され、前記下部通気口に面して配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器であって、
前記ヒートシンクの上部は、前記突出部の内側空間よりも上方に位置しており、
さらに、前記ヒートシンクの上部に接続されたヒートパイプを備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記筐体の前後方向で前記立壁部材の後方に設置されたヒンジ軸を用いて前記筐体に対して相対的に回動可能に連結された蓋体と、
前記筐体の上面に臨むキーボード装置と、
を備え、
前記上部通気口は、前記筐体の上面における前記キーボード装置の後部ベゼルの直下にある
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に通気口を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器はCPU等の発熱体を搭載している。このような電子機器はファンやヒートシンクを搭載し、発熱体が発生する熱を外部に放熱することができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成のように、ノート型PCのような電子機器は、ファンから吐出され、ヒートシンクを通過した高温の排気がユーザの手等に直接当たることを避けるため、通気口を筐体後面に設けることが多い。ところが、筐体の後面にはディスプレイを搭載した蓋体及びヒンジが配置されている。このため、これらが障害物となって通気口からの排気効率が低下するという問題がある。
【0005】
またヒートシンクは発熱体から輸送された熱を放熱する。このためヒートシンクの周囲は他より高温になる。例えば特許文献1の構成は、筐体の前後方向でキーボード装置の後寄りにヒートシンクが配置されている。このため、この構成はキーボード装置の後側にある筐体上面が局所的に高温になり、ユーザの使用感を低下させるばかりか、機器全体での熱設計のボトルネックにもなり得る。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、排気効率を向上させると共に、筐体の表面温度を抑えることができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電子機器は、電子機器であって、上面を形成するプレート状部材と、側面を形成する立壁部材とを有する筐体と、前記筐体内に設けられ、吐出口を有するファンと、前記筐体内で前記吐出口と前記立壁部材との間に配置されたヒートシンクと、を備え、前記立壁部材は、前記プレート状部材の下面に当接した上端面と、前記ヒートシンクに面して設けられた通気口と、前記上端面を凹状に切り欠いたように形成され、前記プレート状部材の下面と前記通気口との間に位置すると共に、前記通気口との間が仕切り壁で仕切られた上部通気口と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、排気効率を向上させると共に、筐体の表面温度を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、筐体の後縁部を底面側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、筐体の後縁部及びその周辺部での模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、本実施形態の電子機器10は、クラムシェル型のノート型PCである。電子機器10は、蓋体11と筐体12をヒンジ14で相対的に回動可能に連結した構成である。本実施形態ではノート型PCの電子機器10を例示しているが、電子機器はノート型PC以外、例えばタブレット型PC、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
蓋体11は、薄い扁平な箱状の筐体である。蓋体11はディスプレイ16を搭載している。ディスプレイ16は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイである。
【0013】
筐体12は、薄い扁平な箱体である。筐体12の上面12aにはキーボード装置18及びタッチパッド19が臨んでいる。以下、筐体12及びこれに搭載された各構成要素について、オペレータがキーボード装置18を操作する姿勢を基準とし、筐体12の幅方向(左右)をそれぞれX1,X2方向、筐体12の奥行方向(前後)をそれぞれY1,Y2方向、筐体12の厚み方向(上下)をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。これら各方向は、説明の便宜上定めた方向であり、電子機器10の使用状態又は設置姿勢等によって変化する場合も当然にあり得る。
【0014】
筐体12は、上面12aを形成するプレート状部材20と、底面12bを形成するカバー部材21と、四周の側面12cを形成する立壁部材22とで構成することができる。プレート状部材20は、キーボード装置18が配置される矩形状の大きな開口部20aを有する。開口部20aの周囲はキーボード装置18を囲むベゼル20bを形成する。カバー部材21はプレート状に形成されている(
図3参照)。後述するように、本実施形態の筐体12はカバー部材21のY2縁部付近に突出部48が設けられている。立壁部材22は、プレート状部材20の四周縁部とカバー部材21の四周縁部との間で起立しており、全体として枠状を成している。
【0015】
ヒンジ14は、筐体12の後縁部に形成された凹状のヒンジ配置溝12dに設置され、筐体12と蓋体11とを連結する。ヒンジ14は、例えば回転軸となるヒンジシャフト14aをヒンジ筐体14bの長手方向の両端部にそれぞれ支持した構造である(
図5参照)。本実施形態のヒンジ14は、ヒンジ筐体14bがヒンジ配置溝12dの長手方向に沿って延在した、いわゆるワンバー形状に構成されている。ヒンジ14は、ヒンジ筐体14bが蓋体11と一体となって回転しつつ斜め後方へと下降する(
図5参照)。ヒンジ14は、このようにして蓋体11の回動角度を稼ぐ構造、いわゆるドロップダウン構造である。ヒンジ14の構造は上記以外でもよい。
【0016】
図2は、筐体12の内部構造を模式的に示す平面図である。
図2は、プレート状部材20を取り外して筐体12の内部を上から見た図である。
【0017】
図2に示すように、筐体12の内部には、冷却モジュール24と、マザーボード25と、バッテリ装置26とが収容されている。筐体12の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0018】
マザーボード(基板)25は、電子機器10のメインボードとなる回路基板である。マザーボード25は、筐体12のY2側寄りに配置され、X方向に延在している。バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード25のY1側寄りに配置され、X方向に延在している。
【0019】
本実施形態のマザーボード25は、CPU(Central Processing Unit)25aを実装している。マザーボード25は、CPU25a以外にも、各種の電子部品、例えばGPU(Graphics Processing Unit)、メモリ、通信モジュール等を実装することができる。
【0020】
マザーボード25は、例えば上面(第1面25A)がCPU25a等の実装面となり、下面(第2面25B)が筐体12に対する取付面となる。
【0021】
次に、冷却モジュール24の構成例を説明する。
【0022】
CPU25aは、筐体12内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。冷却モジュール24は、CPU25aが発生する熱を吸熱及び拡散し、筐体12外へと排出することができる。冷却モジュール24は、CPU25a以外の発熱体、例えばGPU等を冷却するように構成してもよい。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の冷却モジュール24は、金属プレート27と、ヒートパイプ28と、一対のヒートシンク29,29と、一対のファン30,30とを備える。
【0024】
金属プレート27は、銅又はアルミニウム等の熱伝導率が高い金属で形成された薄いプレートである。本実施形態の金属プレート27は銅プレートである。金属プレート27は、左右のファン30,30の間でX方向に延在している。これにより金属プレート27は、左右のファン30,30の間に配置されたマザーボード25の一部(部分25C)と、部分25Cに実装されたCPU25aを第1面25A側(Z1側)から覆っている。金属プレート27はCPU25a等の熱を吸熱して拡散する熱拡散部材として機能する。金属プレート27はCPU25aの表面に接続される。金属プレート27とCPU25aとの間には、例えば熱伝導グリース及びCPU25aの外形と略同一サイズの銅ブロック等が介在する。金属プレート27のX方向に沿う各縁部には板ばね32が取り付けられている。板ばね32は金属プレート27をCPU25aに対して押し付ける部品である。
【0025】
ヒートパイプ28は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ28は、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成し、内側の密閉空間に作動流体を封入した構成である。作動流体としては、水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。ヒートパイプ28は、長手方向の中央部が金属プレート27のCPU25aに対する接続面の裏面に固定されている。ヒートパイプ28の両端部は、それぞれ左右のヒートシンク29のZ1側表面(上部29a)に固定されている(
図5参照)。各ヒートパイプ28は、長手方向の中央部がCPU25aとZ方向にオーバーラップしている。これによりヒートパイプ28は、金属プレート27に伝達されたCPU25aの熱を効率よく受け取り、両端のヒートシンク29へと高い効率で輸送することができる。
【0026】
ヒートシンク29は、薄い金属プレートで形成された複数枚のフィンをX方向に等間隔に並べた構造である。各フィンは所定のベースプレート上でZ方向に起立し、Y方向に延在している。ヒートシンク29の隣接するフィンの間には、ファン30から送られた空気が通過する隙間が形成されている。ヒートシンク29はアルミニウム又は銅のような高い熱伝導率を有する金属で形成されている。ヒートシンク29は、ファン30のY2側の側面30a(吐出口34a)に対向配置される。
【0027】
一対のファン30,30は、相互間にマザーボード25の部分25C及び金属プレート27を跨ぐようにX方向に並んで配置され、互いに向かい合っている。各ファン30は、Y2側の側面30aに吐出口34aを有する。吐出口34aはその後方のヒートシンク29に近接し、対向している。各ファン30は、互いの対向方向を向いた側面30bに吐出口34bを有することもできる。左右のファン30の吐出口34b,34bは、相互間に部分25Cを挟んで対向している。各ファン30は、Z方向を向いた上下の面30c,30dのうち、Z2側の下面30dに吸込口35を有することができる。本実施形態の場合、ファン30のZ1側の上面30cはキーボード装置18の下面18aに当接している(
図5参照)。
【0028】
ファン30はハウジングの内部に収容したインペラ30eをモータによって回転させる遠心ファンである(
図5参照)。これによりファン30は、吸込口35から吸い込んだ空気を吐出口34a,34bから吐出することができる。
【0029】
次に、ファン30によって筐体12内に空気を導入し、ファン30から吐出された空気を筐体12外に排出する吸排気構造について説明する。
【0030】
図3は、筐体12の後縁部を底面12b側から見た斜視図である。
図4は、筐体12の一部拡大背面図である。
図5は、筐体12の後縁部及びその周辺部での模式的な側面断面図である。
【0031】
先ず、吸排気構造を説明するのに先立ち、吸排気構造が設けられる筐体12の各部の構成例を説明する。
【0032】
図2~
図5に示すように、筐体12のY2側縁部(後縁部)には、Y1側に凹んだヒンジ配置溝12dが設けられている。ヒンジ配置溝12dは、プレート状部材20に形成された切欠部20cと、Y2側の立壁部材22の一部に形成した後壁22Aとで構成することができる。
【0033】
切欠部20cは、プレート状部材20の後縁部をY1側に切り欠くように形成した凹部である。切欠部20cは、キーボード装置18のY2側(後側)のベゼル20bの長手方向(X方向)で大部分に形成されている。以下、キーボード装置18の後側のベゼル20bを「後部ベゼル20b」と呼ぶこともある。
【0034】
後壁22Aは、Y2側の立壁部材22の長手方向(X方向)で大部分をY1側に凹ませた部分である。後壁22Aは、Z方向に沿って起立したプレート状部材で構成することができる。後壁22Aの上端面22aは、プレート状部材20の下面20dに突き当たるように当接している(
図4及び
図5参照)。ヒートシンク29は、筐体12内で後壁22Aと吐出口34aとの間に配置されている。
【0035】
後壁22Aはカバー部材21と一体に形成することもできる。つまり四周の立壁部材22はカバー部材21と一体に形成することもできる。後壁22Aは、他の3辺(Y1側、X1側、及びX2側)の立壁部材22と別体に形成することもできる。本実施形態の筐体12では、後壁22Aは筐体12内に設置された構造部材(フレーム部材36)に形成しており(
図5参照)、他の3辺の立壁部材22と別体である。
【0036】
図3~
図5に示すように、電子機器10の排気構造は、Z方向で3階建てに配置された上部通気口40と、通気口41と、下部通気口42とを有することができる。
【0037】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の電子機器10では、各通気口40~42をX方向で3つの領域A1~A3に区分けすることができる。左右両端の領域A1,A2に属する通気口40~42は、ファン30の吐出口34aから吐出され、左右のヒートシンク29を通過した空気を筐体12外に排出する。中央の領域A3に属する通気口40~42は、ファン30の吐出口34bから吐出され、中央の金属プレート27の表面やマザーボード25の部分25Cの表面を通過した空気を筐体12外に排出する。ファン30が吐出口34bを持たない構成の場合、領域A3に属する通気口40~42は省略されてもよい。
【0038】
上段の上部通気口40は、後壁22Aの上端面22aを凹状に切り欠いたように形成されている。上記したように後壁22Aの上端面22aはプレート状部材20の下面20dに突き当てられている。このため、上部通気口40はその周縁部のうち、上縁部がプレート状部材20で形成され、他の縁部が後壁22Aで形成されている。上部通気口40の高さは、例えば0.5mm程度とすることができる。
【0039】
上部通気口40は、例えば後壁22Aの長手方向(X方向)に沿って並んだ複数の支柱(第1支柱)44aによってX方向で複数の区画40aに分割されている。支柱44aは後壁22Aの起立方向(Z方向)に沿って延びる棒体である。例えば領域A1,A2に属する上部通気口40は5つの区画40aに分割され、領域A3に属する上部通気口40は例えば4つの区画40aに分割されている(
図3参照)。上部通気口40の区画40aの数はこれに限定されないことは言うまでもない。領域A1,A2に属する上部通気口40はヒートシンク29の直後に配置されている。領域A3に属する上部通気口40はマザーボード25の部分25CのY2側縁部の斜め上方に配置されている。上部通気口40の高さは、例えば4mm程度とすることができる。
【0040】
中段の通気口41は、後壁22Aを板厚方向(Y方向)に貫通している。通気口41は上部通気口40の下に並んでいる。通気口41は上部通気口40との間がX方向に延びた横桟状の仕切り壁45で仕切られている。つまり上部通気口40はプレート状部材20の下面20dと通気口41との間に位置し、通気口41との間が仕切り壁45で仕切られている。
【0041】
通気口41は、例えば後壁22Aの長手方向(X方向)に沿って並んだ複数の支柱(第2支柱)44bによってX方向で複数の区画41aに分割されている。支柱44bは後壁22Aの起立方向(Z方向)に沿って延びる棒体である。支柱44bは、上部通気口40を分割する支柱44aと上下に連続する位置にあることができる。例えば領域A1,A2に属する通気口41は5つの区画41aに分割され、領域A3に属する上部通気口40は例えば4つの区画41aに分割されている(
図3参照)。通気口41の区画41aの数はこれに限定されないことは言うまでもない。領域A1,A2に属する通気口41はヒートシンク29の直後に配置され、ヒートシンク29に面している。領域A3に属する通気口41はマザーボード25の部分25CのY2側縁部の直後に配置されている。
【0042】
下段の下部通気口42は、筐体12の底面12bから突出した突出部48の側壁48bに貫通形成されている。
【0043】
突出部48はX方向に長尺でZ方向に扁平な角筒状を成している。突出部48のX方向長さは、筐体12のX方向幅の略全長に亘っている。突出部48は底面12bの前後方向(Y方向)でY2側に寄った位置に設けられている。突出部48は、その長手方向(X方向)に沿って延在する一対の側壁48a,48bを有する。Y2側の側壁48bは後壁22Aの直前にある。ヒートシンク29の下部29bは、突出部48の内側空間48cに挿入されている(
図5参照)。なお、ヒートシンク29の後部は、下部29cの後端よりも上方に位置し、後壁22Aの内壁面及び後壁22Aを貫通する通気口41に面している。
【0044】
下部通気口42は、側壁48bを貫通している。筐体12の上下方向を基準として、下部通気口42は通気口40,41よりも下方に位置している。筐体12の前後方向を基準として、下部通気口42は通気口40,41よりも前方に位置している。下部通気口42は通気口40,41と略同一方向(Y2方向)を臨むように開口している。下部通気口42と通気口41との間は、例えばカバー部材21又はフレーム部材36で仕切られている。下部通気口42の高さは、例えば0.7mm程度とすることができる。
【0045】
下部通気口42は、例えば側壁48bの長手方向に沿って並んだ複数の支柱50によってX方向で複数の区画42aに分割されている。例えば領域A1,A2に属する下部通気口42は5つの区画42aに分割され、領域A3に属する上部通気口40は例えば8つの区画42aに分割されている(
図3参照)。下部通気口42の区画42aの数はこれに限定されないことは言うまでもない。領域A1,A2に属する下部通気口42はヒートシンク29の下部29bの直後に配置され、ヒートシンク29の下部29bに面している。領域A3に属する下部通気口42はマザーボード25の部分25Cの下方に配置されている。
【0046】
各通気口40~42は領域A1~A3に区分けされていなくてもよい。この場合、各通気口40~42の各区画40a,41a,42aがX方向に連続的に等間隔で並んだ構成等とすることもできる。突出部48は省略されてもよい。この場合、下部通気口42は省略されてもよい。
【0047】
図3及び
図5に示すように、電子機器10の吸気構造は、筐体12の底面12bに開口する底面通気口52を有することができる。
【0048】
底面通気口52は、筐体12外の空気をファン30の吸込口35へと導入するための開口である。
図2に示す筐体12の平面視で、左右のファン30は側壁48aをY方向に跨ぐように配置されている。
図5に示すように、底面通気口52は突出部48の側壁48aに近接する位置でカバー部材21に開口形成されている。底面通気口52は例えばY方向に延在し、X方向に幅狭なスリット状の開口をX方向に複数並べた構成とすることができる。
図5に示すように、底面通気口52のY2側端部は側壁48aの一部まで延びていることができる。つまり底面通気口52は筐体12の底面12bから側壁48aに亘って開口していてもよい。
【0049】
突出部48は、長手方向の端部(左右の端面)のそれぞれに入出力ポート54を備えることができる。入出力ポート54は、HDMI(登録商標)規格に準拠したコネクタ、USB3.0通信規格に準拠したコネクタ等を例示できる。これにより電子機器10は、筐体12の厚みを最小限に抑えつつ、ある程度の高さを必要とする入出力ポート54の設置を可能としている。突出部48は、机面等の載置面に載置された筐体12の後部を前部よりも持ち上げる後脚部としても機能する。これにより電子機器10は、使用時にキーボード装置18が前下がりの傾斜姿勢となり、操作性が向上する。
図3及び
図4の参照符号55は、電子機器10を載置面に載置する際の脚部となるゴム脚である。Y2側のゴム脚55は、突出部48の底面に設けられている。
図5ではゴム脚55の図示は省略している。
【0050】
次に、冷却モジュール24による冷却動作について説明する。
図2及び
図5中に示す1点鎖線の矢印は空気の流れを模式的に示したものである。
【0051】
電子機器10は、CPU25a等の発熱体が発生する熱が金属プレート27に伝達されて拡散すると共に、ヒートパイプ28で左右のヒートシンク29に効率よく輸送される。左右のファン30は、底面通気口52から外気(冷風)を吸込口35に吸い込み、吐出口34a,34bから吐出する。
【0052】
左右のファン30の吐出口34aから吐出された空気は、ヒートシンク29を通過して冷却する。冷却後の空気(温風)は、領域A1,A2に属する各通気口40~42を通して筐体12外へと排出される。
【0053】
左右のファン30の吐出口34bから吐出された空気は、金属プレート27の表面に沿って流れて金属プレート27及びヒートパイプ28を冷却し、同時に部分25C及びここに実装されたCPU25aの電子部品を直接的に冷却する。冷却後の空気(温風)は、領域A3に属する各通気口40~42を通して筐体12外へと排出される。
図2中の参照符号58は、吐出口34bから吐出された空気を領域A3に属する各通気口40~42へと円滑に流通させるためのダクト空間を筐体12内に形成する気密壁である。気密壁58は、例えばスポンジやゴムを帯板状に形成した部材である。気密壁58は、空気の通過を完全に遮断できる必要はないが、ある程度の通気抵抗を有して空気の流れる方向を規制できる必要がある。
【0054】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、上面12aを形成するプレート状部材20と、側面12cを形成する立壁部材22とを有する筐体12とを備える。筐体12内には、ファン30と、筐体12内でファン30の吐出口34aと立壁部材22(後壁22A)との間に配置されたヒートシンク29とが搭載されている。立壁部材22を構成する後壁22Aは、プレート状部材20の下面20dに当接した上端面22aと、ヒートシンク29に面して設けられ、後壁22Aを板厚方向に貫通した通気口41と、通気口41との間が仕切り壁45で仕切られた上部通気口40とを有する。上部通気口40は、後壁22Aの上端面22aを凹状に切り欠いたように形成され、下面20dと通気口41との間に位置している。
【0055】
このように、上部通気口40は後壁22Aの上端面22aに凹状に形成されている。このため上部通気口40は、ヒートシンク29を通過した温風をプレート状部材20の下面20dに沿って円滑に筐体12外に排出することができる。これにより筐体12内は、後壁22Aの上部とプレート状部材20の下面20dとの間に側面視略三角形状のデッドスペースが形成されることが回避され、このスペースにヒートシンク29からの熱気が滞留することが回避される。その結果、電子機器10は、ヒートシンク29の直上にある後部ベゼル20bが局所的に高温になることが抑えられる。このため電子機器10は筐体12の表面温度が低減されてユーザの使用感を向上できると共に、後部ベゼル20bが熱設計のボトルネックになることを抑制できる。また後壁22Aでの排気口の開口面積が上部通気口40によって拡大する。このため電子機器10はファン30の排気効率の向上によって風量が増大し、冷却性能の向上も可能となる。
【0056】
後壁22Aはヒートシンク29を通過した温風で温度上昇し易く、高温になり易い。このため後壁22Aと連結されるプレート状部材20は、後壁22Aからの熱が伝達され、特に後部ベゼル20bでの温度上昇が問題となる。この点、本実施形態の後壁22Aは、後壁22Aの上端面22aとプレート状部材20の下面20dとの接触面積が上部通気口40によって削減されている。つまり電子機器10は、高温になり得る後壁22Aからプレート状部材20への熱伝達面積が削減され、後部ベゼル20bの温度上昇が一層抑制される。しかも上部通気口40は後部ベゼル20bの直下にあるため、後部ベゼル20bの温度抑制効果は一層高い。
【0057】
特に電子機器10は、筐体12の後部に蓋体11をヒンジ14で連結した構成であり、通気口40~42の直後にヒンジ14及び蓋体11が配置される構成となっている。従来の電子機器は、通気口41と同様な通気口のみを有していた。このため従来の電子機器は通気口を通過した排気がヒンジ14等で邪魔されて通過抵抗が上昇し、ファンの風量低下を招いていた。この点、本実施形態の電子機器10は、通気口41に加えて上部通気口40を備える。このため電子機器10は、筐体12の後部に蓋体11及びヒンジ14を備えながらも、上部通気口40による風量増大と熱伝達面積削減の効果によって冷却性能を向上させることができる。
【0058】
立壁部材22を構成する後壁22Aは、その起立方向(Y方向)に沿って延び、その長手方向(X方向)に沿って上部通気口40を複数区画40aに分割する支柱44aを有することができる。支柱44aの上端はプレート状部材20の下面20dに当接している。仮に上部通気口40がX方向に沿って相当に幅広に構成されている場合は、プレート状部材20の支持強度が低下する可能性がある。そうすると、例えば後部ベゼル20bを指先等で押圧した際、後部ベゼル20bが上下に浮き沈みするように変形し、製品品質を低下させる。そこで、上部通気口40はX方向にある程度大きな開口幅を確保する際は、支柱44aで複数区画40aに分割することが好ましい。そうすると、電子機器10は後壁22Aとプレート状部材20との熱伝達面積を最小限に抑えつつ、プレート状部材20の支持強度を確保することができる。
【0059】
後壁22Aは、その起立方向に沿って延び、その長手方向(X方向)に沿って通気口41を複数区画41aに分割する支柱44bを有することができる。支柱44a,44bは後壁22Aの起立方向に沿って上下に並んでいることができる。そうすると、電子機器10は通気口40,41が全体として規則正しいメッシュ状に配置され、筐体12の外観品質が向上する。さらに電子機器10は通気口40によって後壁22Aの強度が低下することも抑制できる。
【0060】
本実施形態の電子機器10において、筐体12は、底面12bから突出するように設けられ、立壁部材である後壁22Aの長手方向に沿って延びた突出部48を有することができる。突出部48は、ヒートシンク29の下に位置し、突出部48の長手方向に沿って延びた側壁48bと、側壁48bに形成され、通気口41よりも下方に位置する下部通気口42とを有することができる。そうすると筐体12はその排気口(通気口40~42)の開口面積が一層拡大される。このため電子機器10はファン30の風量が一層増加し、排気効率が一層向上し、筐体12の表面温度も一層抑制できる。
【0061】
ヒートシンク29の下部29bは突出部48の内側空間48cに挿入され、下部通気口42に面して配置されていることができる。そうすると電子機器10はファン30の吐出口34aから下部通気口42に向かう空気流路の途中にヒートシンク29が介在する。これにより電子機器10はヒートシンク29での放熱効率が一層向上し、冷却性能が一層向上する。
【0062】
ヒートシンク29の上部29aは、突出部48の内側空間48cよりも上方に位置している。電子機器10はこの上部29aに接続されたヒートパイプ28を備えることができる。そうすると電子機器10はファン30の吐出口34aから上部通気口40に向かう空気流路の途中にヒートパイプ28が介在する。これにより電子機器10はヒートパイプ28自体も空気冷却することもでき、放熱効率が一層向上し、冷却性能が一層向上する。
【0063】
ここで、中段の通気口41のみを有し、上下段の通気口40,42を持たない従来構成と同様な比較例に係る電子機器と、通気口40~42を有する実施例に係る電子機器10の冷却性能を比較したシミュレーション実験の結果を説明する。実験の結果、実施例の電子機器10は、比較例の電子機器と比べて、ファン30の風量が7.1%増加し、後部ベゼル20bの温度が2.9℃低下し、筐体12の上面12aの各所の温度が0.4~1.2℃低下した。従って、実験によっても通気口41と共に、上部通気口40を有し、さらに下部通気口42を有することの有効性が証明された。
【0064】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
10 電子機器
11 蓋体
12 筐体
14 ヒンジ
16 ディスプレイ
18 キーボード装置
20 プレート状部材
20b 後部ベゼル
22 立壁部材
22A 後壁
24 冷却モジュール
28 ヒートパイプ
29 ヒートシンク
30 ファン
34a,34b 吐出口
40 上部通気口
41 通気口
42 下部通気口
44a,44b,50 支柱
48 突出部
48a,48b 側壁
【要約】 (修正有)
【課題】排気効率を向上させると共に、筐体の表面温度を抑えることができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器10は、上面を形成するプレート状部材20及び側面を形成する立壁部材22を有する筐体12と、筐体内に設けられ、吐出口34aを有するファン30と、筐体内で吐出口と立壁部材との間に配置されたヒートシンク29と、を備え、立壁部材は、プレート状部材の下面に当接した上端面と、ヒートシンクに面して設けられた通気口41と、上端面を凹状に切り欠いたように形成され、プレート状部材の下面と通気口との間に位置すると共に、通気口との間が仕切り壁で仕切られた上部通気口40と、を有する。
【選択図】
図5