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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/48 20060101AFI20241114BHJP
   D21H 19/56 20060101ALI20241114BHJP
   C08F 265/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
D21H19/48
D21H19/56
C08F265/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020198017
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086156
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河口 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】葉柴 博行
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-195973(JP,A)
【文献】特開2011-195972(JP,A)
【文献】特開2011-174211(JP,A)
【文献】特開2012-214694(JP,A)
【文献】特開2013-067922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 19/48
D21H 19/56
C08F 265/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、シアン化ビニル系単量体、及び必要に応じて共重合可能な他の単量体を乳化重合する紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法であり、乳化重合は少なくとも3段の重合工程を有し、シアン化ビニル系単量体の使用量が20~3質量%(単量体合計100質量%)、全シアン化ビニル系単量体に対する3段目以降に使用するシアン化ビニル系単量体の質量割合が20~45%、ゲル含有量が85~100質量%、光子相関法による平均粒子径が70~110nmである、紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗工紙は、その印刷効果が高い等の理由から、非常に数多くの印刷物に利用されている。季刊、月刊紙等の定期刊行物の中にも、全ての頁に塗工紙が使用される場合もかなり増えている。特に、メールオーダービジネスにおけるダイレクトメールや商品カタログ等においては、そのほとんどが全ての頁に塗工紙を使用している。
【0003】
一般に紙塗工用組成物は、クレーや炭酸カルシウムなどの白色顔料を水に分散した顔料分散液、顔料同士および顔料を原紙に接着固定するためのバインダー、およびその他の添加剤によって構成される水性塗料である。バインダーとしてはスチレン-ブタジエン系共重合体ラテックスに代表されるような合成エマルションバインダーやデンプン、カゼインに代表されるような天然バインダーが使用される。その中でもスチレン-ブタジエン系共重合体ラテックスは、品質設計の自由度が大きく、今日では紙塗工用組成物に最も適したバインダーとして広く使用されており、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックスの性能が紙塗工用組成物の性能あるいは最終的な塗工紙製品の品質に大きく影響することが知られている。
【0004】
種々の印刷方法の中で、オフセット印刷は、版胴の刷版の非画線部を親水性、画線部を親油性とし、印刷時に非画線部上に湿し水をつけ、その後、画線部のみにインクがつけられ、このインクがブランケットを介して、紙に転写される方法である。一般に、オフセット印刷では、比較的タックの強いインクが使用されており、また近年の印刷速度の向上も相まって、パイリング(ブランケット上にインクや紙粉が堆積する現象)というトラブルが問題となっている。パイリングが悪化すると、印刷機を停止し、ブランケットの洗浄を行う必要があるため、印刷作業性が著しく低下する。
【0005】
特許文献1では、特定組成の単量体を3段階以上に分割して乳化重合し、それぞれの工程における単量体の組成から得られる共重合体の溶解性パラメータおよびガラス転移温度に特定の関係を持たせることで、ピック強度、耐ブリスター性、耐ベタツキ性を改善できることが開示されている。
【0006】
特許文献2では、1段目と2段目以降に特定組成の単量体を乳化重合して得られる紙塗工用共重合体ラテックスを使用することで、ピック強度、再分散性の改善、塗工紙のインクセット性を速くできることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-194006号公報
【文献】特開2010-065326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、共重合体ラテックス面からのパイリングの抑制についてはこれまでほとんど検討されておらず、また紙塗工用共重合体ラテックスに要求されるその他性能についても未だ十分に満足するレベルには至っていなかった。
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、ラテックスフィルム自体のインクセット性を遅くすることによりパイリングが抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の目的は、ラテックスフィルムのインクセット性、共重合体ラテックスの粘度、塗工紙のドライピック強度のバランスに優れた紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、シアン化ビニル系単量体、及び必要に応じて共重合可能な他の単量体を乳化重合する紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法であり、乳化重合は少なくとも3段の重合工程を有し、シアン化ビニル系単量体の使用量が20~35質量%(単量体合計100質量%)、全シアン化ビニル系単量体に対する3段目以降に使用するシアン化ビニル系単量体の質量割合が20~45%である、紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ラテックスフィルムのインクセット性、共重合体ラテックスの粘度、塗工紙のドライピック強度のバランスに優れた紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る共重合体ラテックスの製造方法は、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、シアン化ビニル系単量体、及び必要に応じて共重合可能な他の単量体を乳化重合する紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法であり、乳化重合は少なくとも3段の重合工程を有し、シアン化ビニル系単量体の使用量が20~35質量%(単量体合計100質量%)、全シアン化ビニル系単量体に対する3段目以降に使用するシアン化ビニル系単量体の質量割合が20~45%である。
【0014】
本実施形態に係る共重合体ラテックスは、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、シアン化ビニル系単量体、及び必要に応じてその他共重合可能な他の単量体を乳化重合して得られる。
【0015】
脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、並びに、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などの単量体が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、1,3-ブタジエンを用いることが好ましい。
【0016】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸などのモノカルボン酸単量体、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などのジカルボン酸単量体並びにこれらの無水物が挙げられる。これらの単量体は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリルなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを用いることが好ましい。
【0018】
共重合可能な他の単量体としては、アルケニル芳香族単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体などの単量体が挙げられる。
【0019】
アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチル-α-メチルスチレン、ビニルトルエン及びジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、スチレンを用いることが好ましい。
【0020】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート及び2-エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、メチルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0021】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β-ヒドロキシエチルアクリレート、β-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ-(エチレングリコール)マレエート、ジ-(エチレングリコール)イタコネート、2-ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2-ヒドロキシエチル)マレエート及び2-ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド及びN,N-ジメチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
さらに、上記単量体の他に、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等、通常の乳化重合において使用される単量体を使用することができる。
【0024】
脂肪族共役ジエン系単量体の使用量は、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、33~57質量%であることが好ましく、36~53質量%であることがより好ましく、40~48質量%であることが更に好ましい。使用量を上記範囲とすることにより、共重合体ラテックスの接着強度および操業性を向上させることができる。
【0025】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用量は、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、2~15質量%であることが好ましく、2.5~12質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。使用量を上記範囲とすることにより、共重合体ラテックスの接着強度および操業性を向上させることができる。
【0026】
シアン化ビニル系単量体の使用量は、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、20~35質量%であり、22~33質量%であることが好ましく、25~31質量%であることがより好ましい。使用量を上記範囲とすることにより、ラテックスフィルムのインクセット性、共重合体ラテックスの粘度、塗工紙のドライピック強度のバランスに優れた共重合体ラテックスを得ることができる。
【0027】
本実施形態においては、全シアン化ビニル系単量体に対する3段目以降に使用するシアン化ビニル系単量体の質量割合が20~45%であり、23~40%であることが好ましく、26~32%であることがより好ましい。質量割合を上記範囲とすることにより、ラテックスフィルムのインクセット性、共重合体ラテックスの粘度、塗工紙のドライピック強度のバランスに優れた共重合体ラテックスを得ることができる。
【0028】
その他共重合可能な単量体の使用量は、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、0~46質量%であることが好ましく、2~44質量%であることがより好ましく、5~40質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
本実施形態に係る乳化重合の反応系には、上記共重合体を構成する単量体成分以外に、乳化剤(界面活性剤)、重合開始剤、更に必要に応じて、連鎖移動剤、還元剤などを配合することができる。
【0030】
乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、デヒドロアビエチン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、及びアルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。乳化剤の配合量は、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整することができる。
【0031】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t-ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、及び1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、クメンハイドロパーオキサイド、又はt-ブチルハイドロパーオキサイドを用いることが好ましい。重合開始剤の配合量は、単量体組成、重合反応系のpH、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整される。
【0032】
連鎖移動剤としては、例えば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル;トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノレン、α-メチルスチレンダイマーなどの連鎖移動剤が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤の配合量は、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整することができる。
【0033】
還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩;L-アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類およびその塩;デキストロース、サッカロースなどの還元糖類;ジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸が好ましい。還元剤の配合量は、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る反応系には、共重合体の分子量及び架橋構造を制御する目的で、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素;ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4-メチルシクロヘキセン、1-メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を配合することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、シクロヘキセン、トルエンを用いることが好ましい。
【0035】
更に、本実施形態に係る反応系には、必要に応じて、電解質、酸素補足剤、キレート剤、分散剤、消泡剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、種類及び使用量ともに適宜適量使用することができる。
【0036】
共重合体ラテックスのゲル含有量は、80~100質量%であることが好ましく、85~99質量%であることがより好ましく、90~98質量%であることがさらに好ましい。共重合体ラテックスのゲル含有量を上記範囲とすることにより、ラテックスフィルムのインクセット性、塗工紙のドライピック強度を向上させることができる。共重合体ラテックスのゲル含有量は、例えば、連鎖移動剤の量を変えることで調整することができる。共重合体ラテックスのゲル含有量は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0037】
共重合体ラテックスの平均粒子径は、50~120nmであることが好ましく、60~110nmであることがより好ましく、70~100nmであることがさらに好ましい。共重合体ラテックスの平均粒子径を上記範囲とすることにより、塗工紙のドライピック強度を向上させることができる。共重合体ラテックスの平均粒子径は、例えば、共重合体ラテックスを作製する際の水や乳化剤の量を変えることで調整することができる。共重合体ラテックスの平均粒子径は、JIS Z8826に準拠し、光子相関法による平均粒子径を動的光散乱法により測定することができる。
【0038】
共重合体ラテックスには、必要に応じて、防腐剤、老化防止剤、印刷適性向上剤、界面活性剤などの機能性添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、種類及び使用量ともに適宜適量使用することができる。
【0039】
本実施形態に係る共重合体ラテックスを含有する紙塗工用組成物には、必要に応じて、顔料、他のバインダー、助剤等を含有することが好ましい。
【0040】
顔料としては、カオリンクレー、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、サチンホワイトなどの無機顔料、ポリスチレンラテックスなどの有機顔料を用いることができる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
他のバインダーとしては、澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉等の変性澱粉、大豆蛋白、カゼインなどの天然バインダー、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性合成バインダー、ポリ酢酸ビニルラテックス、アクリル系ラテックスなどの合成ラテックスなどが挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
助剤としては、消泡剤(ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーンオイルなど)、レベリング剤(ロート油、ジシアンジアミド、尿素など)、防腐剤、蛍光染料、カラー保水性向上剤(アルギン酸ナトリウムなど)などが挙げられる。
【0043】
紙塗工用組成物における共重合体ラテックスの含有量は、顔料100質量部に対して固形分の含有量が1~20質量部であることが好ましく、2~15質量部であることがより好ましい。
【実施例
【0044】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特段の断りが無い限り、%や部は質量を基準とする。
【0045】
<共重合体ラテックスの光子相関法による平均粒子径の測定>
共重合体ラテックスを200メッシュ金網でろ過した後、FPAR-1000(大塚電子製)にて測定した。
【0046】
<共重合体ラテックスのゲル含有量の測定>
室温雰囲気にてラテックスフィルムを作製する。その後ラテックスフィルムを約1g秤量しXgとする。これを400mlのトルエンに入れ48時間膨潤溶解させる。その後、これを秤量済みの300メッシュの金網で濾過し、その後トルエンを蒸発乾燥させ、その乾燥後質量からメッシュ質量を減じて、試料の乾燥後質量を秤量しYgとする。下記式よりゲル含有量を計算した。
ゲル含有量(質量%)=Y/X×100
【0047】
<共重合体ラテックス(A、B、C、E、F、G、H、I、J)の合成>
耐圧製の重合反応器に、重合水150部、過硫酸カリウム1部を仕込み、十分攪拌した後、表1および表2の1段目に示す各単量体および他の化合物を加えて70℃に昇温して重合を開始した。2段目の重合については、1段目の重合転化率が50%を越えた時点で2段目の各単量体および他の化合物を加えて重合し、3段目の重合については、2段目までの重合転化率が80%を越えた時点で3段目の各単量体および他の化合物を加えて重合し、最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した。次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調製し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスA、B、C、E、F、G、H、I、Jを得た。
【0048】
<共重合体ラテックス(D)の合成>
耐圧製の重合反応器に、重合水150部、過硫酸カリウム1部を仕込み、十分攪拌した後、表1の1段目に示す各単量体および他の化合物を加えて70℃に昇温して重合を開始し、2段目の重合については、1段目の重合転化率が50%を越えた時点で2段目の各単量体および他の化合物を加えて重合し、3段目の重合については、2段目までの重合転化率が80%を越えた時点で3段目の各単量体および他の化合物を加えて重合し、4段目の重合については、3段目までの重合転化率が85%を越えた時点で4段目の各単量体および他の化合物を加えて重合し、最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した。次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調製し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスDを得た。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
<共重合体ラテックスの粘度の評価方法>
共重合体ラテックスの固形分を48%に調整した際の粘度を、JIS K6838の測定方法に準じて測定した。得られた粘度について、下記の通り判定した。
○:500mPa・s以下
△:501~1000mPa・s
×:1001mPa・s以上
【0052】
<ラテックスフィルムのインクセット性の評価方法>
ポリエステルフィルムに共重合体ラテックスを塗布量12g/mで塗工し、120℃オーブン中で1分間乾燥後、1cm幅の短冊状に切る。台紙上に合成した全ての共重合体ラテックスの短冊を並べて貼り付ける。その後、RI印刷機にて上記ラテックスクリアフィルム試料に印刷し、その後白紙を重ね合わせてロールで圧着する際、試料の端から順次累計時間でそれぞれ0.5分、10分、20分、30分の間隔を空けてこの白紙に転写させ、その濃度を下記の通り目視にて評価した。
(転写濃度が濃い) ◎ > ○ > △ > × (転写濃度が薄い)
【0053】
<紙塗工用組成物の作製>
下記に示した配合処方に従って、上記合成にて得られた共重合体ラテックスA~Jを用い、水酸化ナトリウムでpH9.5に調整し、紙塗工用組成物を作製した。
(紙塗工用組成物の配合処方)
配合処方
カオリン 40部
重質炭酸カルシウム 60部
変性デンプン 2部
共重合体ラテックス 7部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 67%
【0054】
<塗工紙の作製>
塗工原紙(坪量55g/m)に、上記の紙塗工用組成物を片面あたりの塗布量が10g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧60kg/cm、温度50℃の条件でカレンダー処理を行って塗工紙を得た。
【0055】
<塗工紙のドライピック強度の評価方法>
RI印刷機で各塗工紙試料を同時に印刷した際のピッキングの程度を5級(優)から1級(劣)まで相対的に目視評価した。