(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置
(51)【国際特許分類】
F21V 33/00 20060101AFI20241114BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20241114BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20241114BHJP
H05B 47/155 20200101ALI20241114BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20241114BHJP
H05B 47/165 20200101ALI20241114BHJP
【FI】
F21V33/00 400
A61L2/10
F21V23/00 140
H05B47/155
H05B47/16
H05B47/165
(21)【出願番号】P 2021099279
(22)【出願日】2021-06-15
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2020147042
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】柳生 英昭
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 龍志
(72)【発明者】
【氏名】大橋 広行
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-072476(JP,A)
【文献】特表2018-517488(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0036107(KR,A)
【文献】特開2019-115525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00 - 19/00
F21V 33/00 - 99/00
A61L 2/10
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有し、250nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止された紫外光を発する第一光源と、
照明用の白色光を発するLED素子で構成された第二光源とを備え、
前記第一光源は、前記第二光源によって照明される領域に対して前記紫外光を照射することを特徴とする、菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【請求項2】
前記第二光源は、人によって操作される対象物に対して、前記白色光を照射することで照明し、
前記第一光源は、前記対象物に対して前記紫外光を照射して前記対象物に付着した菌又はウイルスを不活化することを特徴とする、請求項
1に記載の菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【請求項3】
前記第一光源から発せられる前記紫外光は、240nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止されていることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【請求項4】
200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有し、250nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止された紫外光を発する第一光源と、
照明用の白色光を発するLED素子で構成された第二光源と、
前記第一光源及び前記第二光源を点灯制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第二光源の消灯期間内において、前記第一光源の点灯と消灯を繰り返す制御を行うことを特徴とする
、菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一光源の点灯期間を60秒以下とし、前記第一光源の消灯期間を点灯期間より長い時間に設定した状態で、前記第一光源の点灯と消灯を繰り返す制御を行うことを特徴とする、請求項
4に記載の菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一光源の点灯期間を、前記第一光源の消灯期間の50%以下に設定した状態で、前記第一光源の点灯と消灯を繰り返す制御を行うことを特徴とする、請求項
5に記載の菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【請求項7】
200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有し、250nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止された紫外光を発する第一光源と、
照明用の白色光を発するLED素子で構成された第二光源と、
前記第一光源及び前記第二光源を点灯制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第二光源の点灯期間内において、前記第一光源に対する消灯期間を設けるように前記第一光源の制御を行うことを特徴とする
、菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第一光源の点灯と消灯を繰り返す制御を行うことを特徴とする、請求項
7に記載の菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【請求項9】
前記第一光源は、Kr及びClを発光ガスとして含むエキシマランプで構成されていることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【請求項10】
前記第一光源は、Kr及びBrを発光ガスとして含むエキシマランプで構成されていることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【請求項11】
200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有し、250nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止された紫外光を発する第一光源と、
照明用の白色光を発するLED素子で構成された第二光源とを備え、
前記白色光は、300nm以上400nm未満の波長域の光強度が抑止されていることを特徴とする
、菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調理場等の、日常的に食品が扱われる場所の利用に供することを目的として、従来、波長254nmの紫外光を発する殺菌ランプと、照明用の光を発する蛍光ランプとが箱体形状の器具本体に埋め込まれてなる、殺菌灯組込型照明器具が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭63-187221号公報
【文献】特開2004-275070号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】田澤信二、「害虫行動を制御する黄色ランプ」、照明学会誌、第85巻第3号、2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている、波長254nmの紫外光を発する殺菌ランプは、従来、殺菌の目的に一般的に利用されているものである。しかし、この殺菌ランプから発せられる紫外光は、虫を引きつける作用(「誘虫性」とも称される。)を示す。このため、特に夜間において、特許文献1に記載されたような殺菌灯組込型照明器具を点灯させると、殺菌ランプから発せられる紫外光に感応して、虫が器具側に誘引されやすい。虫の誘引は衛生的な問題を生じさせる可能性があるところ、特に食品などを扱う場所では回避したい課題である。
【0006】
更に、食品などを扱う場所以外であっても、屋外において近くを人が通行したり立ち止まる可能性がある場所では、衛生的な理由以外に外観的な理由からも、虫の誘引を回避したいという事情がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、虫の誘引作用を抑制しながらも、菌又はウイルスを不活化できる、菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置は、
200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有し、250nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止された紫外光を発する第一光源と、
照明用の白色光を発するLED素子で構成された第二光源とを備えたことを特徴とする。
【0009】
まず、本明細書において用いられている各用語について定義する。
〈1〉「不活化」とは菌やウイルスを死滅させる又は感染力や毒性を失わせることを包括する概念を指す。
〈2〉「菌」とは細菌や真菌(カビ)等の微生物を指す。
〈3〉「光強度が抑止された」とは、光放射面における光強度が1mW/cm2以下であって、且つピーク波長における光強度に対して、光強度が5%未満であることを意味し、より好ましくは3%未満である。
〈4〉「白色光」とは、青色光、緑色光、赤色光といった単色光ではなく、青色光の波長領域(430nm以上500nm未満)に属する波長成分と、緑色光の波長領域(500nm以上600nm未満)に属する波長成分と、赤色光(600nm以上800nm未満)に属する波長成分とを包含するスペクトルを示す光を指す。なお、白色光に含まれるこれらの波長成分は、それぞれの波長成分の境界が明瞭であっても不明瞭であっても構わない。
【0010】
以下において、「菌又はウイルス」を「菌等」と総称することがある。
【0011】
特許文献1に記載されている紫外線ランプを初め、一般的に殺菌用途として用いられる波長254nmの紫外光を発する紫外線ランプとしては、低圧水銀ランプが利用される。
図1は、低圧水銀ランプの発光スペクトルを示す図面である。
【0012】
図1に示すように、低圧水銀ランプからは、虫の視感度範囲に含まれる波長254nmの紫外光が強く出射されると共に、波長254nmの紫外光の他に300nm以上400nm未満の波長域の紫外光も出射される。虫の中には、この300nm以上400nm未満の波長域の紫外光に対する視感度の高いものが多く存在する。
図2は、このような虫の代表としての、ショウジョウバエの視感度を示すグラフである(非特許文献1参照)。
図2によれば、ショウジョウバエは300nm以上400nm未満の波長域に高い視感度を示すことが確認される。
【0013】
また、特許文献2においても、昆虫の多くが波長340nm~380nmの紫外光に強く誘引される性質を有する旨の記載がされている。
【0014】
このことからも、「発明が解決しようとする課題」の項で上述したように、特許文献1に記載されている殺菌灯組込型照明器具を用いると、当該照明器具に搭載されている殺菌ランプから発せられる250nm以上400nm未満の波長域に属する紫外光によって虫を誘引し、更には300nm以上400nm未満の波長域に属する紫外光によって虫を強く誘引してしまうことが分かる。
【0015】
これに対し、本発明に係る菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置(以下、単に「不活化機能付き照明装置」と略記することがある。)は、200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有し、250nm以上400nm以下の帯域の光強度が抑止された、不活化用の紫外光を発する第一光源を備えている。すなわち、第一光源から発せられた紫外光は、虫を誘引する性質(誘虫性)を示す250nm以上400nm未満の波長域の光強度が抑止されている。具体的には、第一光源から発生される紫外光が放射される光放射面において、その光強度が1mW/cm2以下であって、且つ200nm以上240nm未満の波長域内にあるピーク波長に対して、その光強度が5%未満とされている。これによって、誘虫性が効果的に低減されている。
【0016】
図3は、第一光源の一例であるKrClエキシマランプと、
図1に示す低圧水銀ランプの両者に対して、同一の電力を供給したときの光放射面における照度のスペクトルを重ね合わせた図面である。
図3によれば、低圧水銀ランプから出射される紫外光のスペクトルには、300nm以上400nm未満の波長域において、1mW/cm
2を遥かに超えるレベルの光強度ピークが存在することが分かる。
【0017】
これに対し、KrClエキシマランプの場合、250nm以上400nm未満の波長域の光強度は、ピーク波長における光強度の5%未満であって、且つ1mW/cm
2未満に抑制されていることが分かる。なお、
図3において、KrClエキシマランプのピーク波長における光強度が、低圧水銀ランプのピーク波長における光強度よりも低いのは、現状では低圧水銀ランプの方がKrClエキシマランプよりも高い光変換効率を示すことに基づく。
【0018】
図3では、説明の便宜のため、KrClエキシマランプの例を挙げたが、第一光源としては、このKrClエキシマランプと同様に、200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有すると共に、250nm以上400nm未満の波長域の光強度がピーク波長における光強度の5%未満であって且つ1mW/cm
2未満に抑制されている光源が適用できる。
【0019】
また、波長240nm以上300nm未満の波長域の紫外光は、人間に照射されると、人体に影響を及ぼすリスクがあることが知られている。皮膚は、表面に近い部分から表皮、真皮、その深部の皮下組織の3つの部分に分けられ、表皮は、更に表面に近い部分から順に、角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分けられる。殺菌線としての波長254nmなど、240nm以上300nm未満の波長域の紫外光が人体に照射されると、角質層を透過して、顆粒層や有棘層、場合によっては基底層に達し、これらの層内に存在する細胞のDNAに吸収される。この結果、皮膚がんのリスクが発生する。
【0020】
一方、波長200nm以上240nm未満の波長域の紫外光(より好ましくは波長200nm以上235nm未満の波長域の紫外光)は、人体に照射されても、皮膚の角質層で吸収され、それよりも内側(基底層側)には進行しない。角質層に含まれる角質細胞は細胞核を有しない細胞であるため、例えば有棘細胞のようにDNAが存在しない。このため、240nm以上300nm未満の波長域の紫外光が照射される場合のように、細胞に吸収されてDNAが破壊されるというリスクが低い。更に、波長235nm以上240nm未満の帯域の光強度も抑止されることによって、紫外光が細胞に吸収されてDNAが破壊されるというリスクが確実に低減できる。つまり、第一光源から発せられる不活化用の紫外光は、200nm以上235nm未満の波長域内にピーク波長を有し、且つ240nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止されているのがより好ましい。
【0021】
上述したように、第一光源から発せられた紫外光は、波長300nm以上400nm未満の波長域に加えて、波長250nm以上300nm未満の波長域においても光強度が抑止されている。これによって、誘虫性が効果的に低減されると共に、照明装置の近くに人間が存在する時間帯に第一光源が点灯したとしても、人体に対する影響を低減できる。
【0022】
前記紫外光は、240nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止されることによって、人体に対する影響を更に効果的に低減できる。更に、前記紫外光は、235nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止されることによって、誘虫性を効果的に低減しつつ、人体に対する影響をより確実に低減できる。
【0023】
そして、第一光源から発せられる、200nm以上240nm未満の波長域内の紫外光が照射されることで、当該照射領域内に存在する菌等を不活化できる。より好ましくは、200nm以上235nm未満の波長域内の紫外光が照射されることで、人体への影響を確実に低減しながら、当該照射領域内に存在する菌等を不活化できる。このような波長帯域の抑止は、例えば、適応できる光源を選択するか、当該帯域を抑止可能な光学フィルタを用いることによって実現できる。
【0024】
ところで、照明用の光を発する蛍光ランプには、可視域の光に加えて紫外域の光が含まれることが知られている。
図4は、一般的な蛍光灯の発光スペクトルを示す図面である。
図4の例では、発光色としては蛍光灯として一般的に広く用いられている、昼白色のものが採用されている。
【0025】
図4のスペクトルによれば、蛍光灯から発せられる光には、波長300nm以上400nm未満の波長域の紫外光も含まれることが確認される。このため、蛍光灯から発せられる光に含まれる当該紫外光が、虫を引き寄せるおそれがある。
【0026】
これに対し、本願発明に係る不活化機能付き照明装置は、照明用の白色光を発するLED素子で構成された第二光源を備えている。LED素子は、蛍光ランプと比べて原理的に波長300nm以上400nm未満の波長域の紫外光の強度を低下させることができる。
【0027】
つまり、本願発明に係る不活化機能付き照明装置によれば、第一光源から発せられる不活化用の紫外光が、誘虫性が低く且つ菌等の不活化作用を奏する波長域の光であり、更に、第二光源から発せられる照明用の光が、誘虫性の低いLED素子からの白色光である。これにより、従来の殺菌灯組込型照明器具と比較して、誘虫性を大幅に低下させた、菌等の不活化機能付き照明装置が実現できる。
【0028】
このような菌等の不活化機能付き照明装置は、人間が近くに存在しており高い衛生管理が要求される場所(食品工場や食堂など)や、外気が当たりやすく且つ不特定の人間が接近する可能性のある場所での利用が想定される。後者の一例としては、駅、屋外広場、屋外スタジアム、屋外テーマパーク、乗物(タクシー、電車、バス)、施設の玄関や受付、自動販売機等が挙げられる。
【0029】
本願発明に係る不活化機能付き照明装置は、人や動物の皮膚や目に紅斑や角膜炎を起こすことはなく、紫外光本来の殺菌、ウイルスの不活化能力を提供することができる。特に、従来の紫外光源とは異なり、有人環境で使用できるという特徴を生かし、屋内外の有人環境に設置することで、環境全体を照射することができ、空気と環境内設置部材表面のウイルスの不活化・殺菌を提供することができる。
【0030】
このことは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢の全ての人々が健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に対応し、また、ターゲット3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶すると共に、肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する」に大きく貢献するものである。
【0031】
前記第一光源は、前記第二光源によって照明される領域に対して前記紫外光を照射するものとしても構わない。
【0032】
これにより、第二光源からの白色光を受けて人間が作業する空間内において、当該空間の照明と菌等の不活化の両方を実施できる。上述したように、第一光源からの紫外光は、人体への影響が極力抑制されている。これにより、第一光源及び第二光源の双方が点灯されている時間帯に、白色光の照明を利用する人間が近くに存在していても、当該人間の人体に対する悪影響を抑制しながら菌等の不活化が行える。また、虫の誘引作用が抑えられているため、このような人間に対して、多くの虫を視認させることによる嫌悪感が起きにくい。
【0033】
前記第二光源は、人によって操作される対象物に対して、前記白色光を照射することで照明し、前記第一光源は、前記対象物に対して前記紫外光を照射して前記対象物に付着した菌又はウイルスを不活化するものとしても構わない。
【0034】
前記対象物の例としては、入場券、乗車券、食券等の券売機、自動販売機等の操作ボタンやタッチパネル(以下、「操作部」と総称することがある。)が挙げられる。例えば、このような、人間の手指による操作が予定されている対象物は、人の手指に存在する表皮ブドウ球菌やミクロコッカスを初めとする常在菌やその他の菌等が付着しやすい。上記不活化機能付き照明装置によれば、この対象物に対して第一光源からの不活化用の紫外光が照射されるため、対象物に菌等が付着している場合にこれらの不活化が行える。
【0035】
また、操作ボタンやタッチパネル等の操作部は人間によって操作される必要があるため、照明光が照射されるのが通常である。上記不活化機能付き照明装置によれば、操作ボタンやタッチパネル等の操作部に対して第二光源からの照明用の白色光が照射されるため、この光を操作する際の照明として利用できる。
【0036】
そして、上述したように、第一光源からの不活化用の紫外光と、第二光源からの照明用の白色光は、共に誘虫性が抑制された光であるため、菌等の不活化中や照明中に対象物に対して虫を誘引する副作用が抑制される。
【0037】
なお、「人によって操作される対象物」としては、人が所定の箇所に足を載せることで機能する体重計や、所定の箇所に顎を載せて覗き込むことで機能する視力測定計等も含まれる。つまり、前記対象物としては、手指以外の箇所が触れる場合も含まれる。
【0038】
前記菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置は、前記第一光源及び前記第二光源を点灯制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第二光源の消灯期間内において、前記第一光源の点灯と消灯を繰り返す制御を行うものとしても構わない。
【0039】
照明用の白色光を発する第二光源を消灯している時間帯においても、菌等の不活化処理を持続させたい場合があり得る。例えば、無人環境下でも、カビや細菌等の微生物が増殖する可能性や、外気が出入りする環境であれば外界の微生物やウイルスが侵入する可能性は考えられる。また、別の例として、上述した券売機の場合、当該券売機の稼働時間外(すなわち営業時間外)ではもはや券売機を照明する必要はないものの、券売機に付着した菌等の不活化処理は継続させたい場合が想定される。
【0040】
第二光源の消灯中は、第二光源の点灯中と比べて、本発明に係る菌等の不活化機能付き照明装置が設置されている箇所の照度が相対的に低下する。空間の照度が相対的に低い状態(例えば空間照度が50[lx]以下)で第一光源が点灯された場合を検討する。この場合、空間の照度が相対的に高い状態で第一光源が点灯された状態と比べて、誘虫性が抑制された第一光源からの紫外光を用いた場合であっても、虫を誘引する作用が生じ得る。この理由は以下のように推察される。
【0041】
虫の多くは走光性を有しており、相対的に明るいと視感される光源に対して引き寄せられる傾向がある。例えば、光源が250nm~400nmの波長帯の紫外線や、400nm~550nmの波長帯の可視光域において、僅かでも発光強度を有する場合、暗環境下であるほど当該光源の光が相対的に明るいと虫に視感されるため、微弱な光であっても際立つことがある。
【0042】
第一光源からの紫外光は、虫を誘引する作用を示す250nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止されるものであるが、完全にゼロではなく微弱な光強度を有する場合がある。また第一光源が放電灯である場合は、放電現象によって微弱に可視光が生じ、この可視光が暗黒下では相対的に際立つことから、その微弱な光に虫が誘引される場合があるものと考えられる。
【0043】
これに対し、上記構成によれば、第二光源の消灯期間内に第一光源に対して点灯と消灯を繰り返す制御が行われる。この結果、周囲の照度が相対的に低下したことで、第一光源が点灯中に虫を誘引する作用が生じたとしても、第一光源が消灯することで虫は紫外光の発生源(目標)を見失い、照明装置側に引き寄せられにくくなる。
【0044】
なお、菌等を不活化できる程度は、不活化の対象となる領域に対する紫外光のドーズ量(積算照射量)に依存する。このため、第一光源に対して点灯と消灯を繰り返す制御が行われたとしても、点灯が繰り返される限りにおいて菌等の不活化は行われる。
【0045】
前記制御部は、前記第一光源の点灯期間を60秒以下とし、前記第一光源の消灯期間を点灯期間より長い時間に設定した状態で、前記第一光源の点灯と消灯を繰り返す制御を行うものとしても構わない。
【0046】
上記の構成とすることで、虫に対して紫外光の発生源を見失わせる効果が更に高められる。
【0047】
前記制御部は、前記第一光源の点灯期間を、前記第一光源の消灯期間の50%以下に設定した状態で、前記第一光源の点灯と消灯を繰り返す制御を行うものとしても構わない。
【0048】
上記の構成とすることで、虫に対して紫外光の発生源を見失わせる効果が更に高められる。なお、第一光源の点灯期間が、第一光源の消灯期間の25%以下に設定されるのがより好ましい。
【0049】
前記菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置は、前記第一光源及び前記第二光源を点灯制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第二光源の点灯期間内において、前記第一光源に対する消灯期間を設けるように前記第一光源の制御を行うものとしても構わない。
【0050】
上記第一光源は、200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有する不活化用の紫外光を発する光源である。よって、第二光源からの照明用の白色光が照射されている環境下(照明環境下)において、この紫外光が光回復機能を有する菌に対して照射された場合であっても、光回復機能を阻害することができる。従って、第一光源を連続的に点灯しなくても、不活化の効果を継続することができる。この点は、「発明を実施するための形態」の項で後述される。
【0051】
この場合に、前記制御部は、前記第一光源の点灯と消灯を繰り返す制御を行うものとしても構わない。
【0052】
前記第一光源は、Kr及びClを発光ガスとして含むエキシマランプで構成されているものとしても構わない。これにより、第一光源からは、ピーク波長が222nm近傍で、半値幅が15nm程度のスペクトルを示す紫外光が発せられる。
【0053】
前記第一光源は、Kr及びBrを発光ガスとして含むエキシマランプで構成されているものとしても構わない。これにより、第一光源からは、ピーク波長が207nm近傍で、半値幅が15nm程度のスペクトルを示す紫外光が発せられる。
【0054】
なお、第一光源で生成される紫外光が、250nm以上400nm未満の波長域の光強度を一定程度含む場合には、第一光源が、当該波長域に属する波長域の光の進行を遮断するフィルタを備えるものとしても構わない。
【発明の効果】
【0055】
本発明の菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置によれば、虫を誘引する作用を従来より抑制しながらも、可視光の照明と菌等の不活化の両者を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】低圧水銀ランプの発光スペクトルを示す図面である。
【
図2】ショウジョウバエの視感度を示すグラフである。
【
図3】第一光源としての一例であるKrClエキシマランプと、低圧水銀ランプに対して同一電力を供給したときの放射面における照度スペクトルを対比したグラフである。
【
図4】一般的な蛍光灯の発光スペクトルを示す図面である。
【
図5】本発明に係る菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置の一利用態様を模式的に示す図面である。
【
図6】前記不活化機能付き照明装置の一実施形態における外観斜視図である。
【
図7】前記不活化機能付き照明装置の内部構成を模式的に示す機能ブロック図である。
【
図8】第一光源の外観の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図8に示す第一光源の模式的な分解斜視図である。
【
図10】
図8に示す第一光源において、エキシマランプと電極ブロックとの位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図11】第一光源から出射される紫外光のスペクトルの一例を示す図面である。
【
図12A】第一光源から出射される紫外光が、菌を不活化する作用を奏することを説明するための検証結果である。
【
図12B】第一光源から出射される紫外光が、ウイルスを不活化する作用を奏することを説明するための検証結果である。
【
図13】第二光源から出射される白色光のスペクトルの一例を示す図面である。
【
図14】本発明に係る菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置の別の利用態様を模式的に示す図面である。
【
図15】第一光源を間欠点灯させた場合に、菌を不活化する作用を奏することを説明するための検証結果である。
【
図16】FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)とリボフラビンの吸収スペクトルを示す図面である。
【
図17A】低圧水銀ランプからの紫外光が照射された菌の、可視光の光による光回復の程度を評価したグラフである。
【
図17B】KrClエキシマランプからの紫外光が照射された菌の、可視光の光による光回復の程度を評価したグラフである。
【
図18A】KrBrエキシマランプからの紫外光が照射された菌の、可視光の光による光回復の程度を評価したグラフである。
【
図18B】KrBrエキシマランプの発光スペクトルである。
【
図19】紫外光の波長領域における、タンパク質の平均吸光係数の特性を示すグラフである。
【
図20】大腸菌(E.Coli)の吸光スペクトルを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明に係る菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置の実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致していない。また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0058】
図5は、本発明に係る菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置の一利用態様を模式的に示す図面である。
図5に示すように、不活化機能付き照明装置1は、第一光源10と第二光源20を備える。後述するように、第一光源10は不活化用の紫外光L10を発し、第二光源20は照明用の白色光L20を発する。
図5に示す例では、不活化機能付き照明装置1から、紫外光L10及び白色光L20の双方が照射対象領域40に対して照射される様子が模式的に図示されている。
【0059】
図6は、不活化機能付き照明装置1の一実施形態における外観斜視図である。
図6に示す例では、不活化機能付き照明装置1は、第一光源10と第二光源20を収容するケーシング2を備えている。そして、ケーシング2の一部の面が、第一光源10からの紫外光L10の光取り出し面10aと、第二光源20からの白色光L20の光取り出し面20aとを形成している。
【0060】
図7は、不活化機能付き照明装置1の内部構成を模式的に示す機能ブロック図である。
図7に示すように、不活化機能付き照明装置1は、第一光源10及び第二光源20の点灯制御を行う制御部3と、第一光源10及び第二光源20に対する点灯用の電力を供給するための電源部4を備える。電源部4は、不図示の電力源から供給される電圧を、点灯に必要な電圧に変換するための電源回路を含む。制御部3は、電源部4で生成された電圧を、第一光源10や第二光源20に対して供給する/しないの制御を行う。
【0061】
なお、
図7では、電源部4と制御部3とが一本のラインで接続されているが、これはあくまで模式的に示されている。実際には、電源部4は、第一光源10の点灯に必要な電圧信号と、第二光源20の点灯に必要な電圧信号をそれぞれ生成し、それぞれの電圧信号が独立して、制御部3を通して各光源(10,20)に供給されるものとして構わない。
【0062】
制御部3は、第一光源10に対する点灯制御と、第二光源20に対する点灯制御をそれぞれ独立して実行する。制御部3によって行われる制御内容の一例については後述される。
【0063】
図8は、第一光源10の外観の一例を模式的に示す斜視図である。
図9は、
図8から、第一光源10のランプハウス12の本体ケーシング部12aと蓋部12bとを分解した斜視図である。
【0064】
以下の
図8~
図10では、紫外光L10の取り出し方向をX方向とし、X方向に直交する平面をYZ平面とした、X-Y-Z座標系を参照して説明される。より詳細には、
図9及び
図10を参照して後述されるように、エキシマランプ13の管軸方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0065】
図8及び
図9に示すように、第一光源10は、一方の面に光取り出し面10aが形成されたランプハウス12を備える。ランプハウス12は、本体ケーシング部12aと蓋部12bとを備え、本体ケーシング部12a内には、エキシマランプ13と、電極ブロック(15,16)とが収容されている。
図9では、一例として、ランプハウス12内に4本のエキシマランプ13が収容されている場合が図示されている。電極ブロック(15,16)は、給電線18と電気的に接続されており、各エキシマランプ13に対して給電するための電極を構成する。この給電線18は電源部4(
図7参照)と接続されている。
【0066】
図10は、エキシマランプ13と、電極ブロック(15,16)との位置関係を模式的に示す平面図である。
【0067】
図8~
図10に示すように、この実施形態における第一光源10は、それぞれのエキシマランプ13の発光管の外表面に接触するように、2つの電極ブロック(15,16)が配置されている。電極ブロック(15,16)は、Y方向に離間した位置に配置されている。電極ブロック(15,16)は、導電性の材料からなり、好ましくはエキシマランプ13から出射される紫外光L10に対する反射性を示す材料からなる。一例として、電極ブロック(15,16)は、共に、Al、Al合金、ステンレスなどで構成される。この実施形態では、電極ブロック(15,16)は、いずれも各エキシマランプ13の発光管の外表面に接触しつつ、Z方向に関して各エキシマランプ13に跨るように配置されている。
【0068】
エキシマランプ13はY方向を管軸方向とした発光管を有し、Y方向に離間した位置において、エキシマランプ13の発光管の外表面が各電極ブロック(15,16)に対して接触している。エキシマランプ13の発光管には、発光ガスG13が封入されている。制御部3(
図7参照)からの制御に基づいて、各電極ブロック(15,16)の間に電源部4から給電線18(
図8参照)を通じて例えば数kHz~5MHz程度の高周波の交流電圧が印加されると、エキシマランプ13の発光管を介して発光ガスG13に対して前記電圧が印加される。このとき、発光ガスG13が封入されている放電空間内で放電プラズマが生じ、発光ガスG13の原子が励起されてエキシマ状態となり、この原子が基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる。
【0069】
発光ガスG13は、エキシマ発光時に、200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有し、250nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止された、紫外光L10を出射する材料からなる。一例として、発光ガスG13としては、KrCl、KrBrが含まれる。
【0070】
例えば、発光ガスG13にKrClが含まれる場合には、エキシマランプ13からピーク波長が222nm近傍の紫外光L10が出射される。発光ガスG13にKrBrが含まれる場合には、エキシマランプ13からは、ピーク波長が207nm近傍の紫外光L10が出射される。発光ガスG13をこれらのガス種とした場合、紫外光L10は250nm以上400nm未満の帯域に実質的な光強度を含まない。なお、ここで「222nm近傍」と記載したのはエキシマランプ13の製品上の個体差を含む意図であり、222.0nmは勿論のこと、222nmを基準として±3nm以内での範囲内における波長のずれを許容する意図である。
【0071】
図11は、第一光源10がKrClを含む発光ガスG13が発光管に封入されたエキシマランプ13を備える場合において、この第一光源10から出射される紫外光L10のスペクトルを示す図面である。
図11に示すように、KrClを含む発光ガスG13が発光管に封入されたエキシマランプ13の場合、250nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑制されている。つまり、第一光源10から出射される紫外光L10に含まれる、250nm以上400nm未満の帯域の光強度は、
図3を参照して上述したように、1mW/cm
2以下であって、且つピーク波長(ここでは222nm近傍)の光強度に対して5%未満である。
【0072】
なお、波長240nm以上300nm未満の光は、人間に照射されると、人体に影響を及ぼすリスクがあるため、より適切に光強度を抑止することがより望ましい。このため、第一光源10は、例えば、240nm以上300nm未満の帯域の紫外光を遮光しつつ、200nm以上240nm未満の帯域の紫外光(より望ましくは、200nm以上235nm以下の帯域の紫外光)を透過する光学フィルタを設けていても良い。光学フィルタとしては、例えば、HfO2層およびSiO2層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いることができる。第一光源10に搭載されるエキシマランプ13が、KrCl以外の発光ガスG13(KrBr等)が封入された発光管を有する場合も、同様である。
【0073】
第一光源10から出射される紫外光L10は、250nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止されており、200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有することで、菌やウイルスを不活化する作用が確認される。この点について検証結果を参照して説明する。
【0074】
φ35mmのシャーレに、濃度10
6/mL程度の黄色ブドウ球菌を1mL入れ、シャーレの上方から、
図11に示すスペクトルを有する紫外光L10を、異なる照度条件下で照射した。その後、紫外光L10の照射後のシャーレ内の溶液を、生理食塩水で所定の倍率に希釈し、希釈後の溶液0.1mLを標準寒天培地に播種した。そして、温度37℃、湿度70%の培養環境下で24時間培養し、コロニー数をカウントした。
【0075】
図12Aは、上記実験結果をグラフ化したものであり、横軸が紫外光L10の照射量、縦軸が黄色ブドウ球菌の生存率に対応する。なお、縦軸は、紫外光L10の照射前の時点における黄色ブドウ球菌のコロニー数を基準としたときの、照射後の黄色ブドウ球菌のコロニー数の比率のLog値に対応する。
【0076】
図12Aによれば、紫外光L10の照度が0.001mW/cm
2と極めて低い場合であっても、黄色ブドウ球菌の不活化が実現できていることが確認される。なお、紫外光L10によって、セレウス菌や枯草菌等、他の菌に対しても不活化の作用があることが確認されている。
【0077】
なお、別の検証として、インフルエンザウイルスに対して同様の検証を行った結果を
図12Bに示す。
図12Bによれば、紫外光L10によってインフルエンザウイルスの不活化が行えることも確認される。なお、例えば、紫外光L10の照射量を3mJ/cm
2とするには、照度0.001mW/cm
2の場合には50分間の照射によって実現され、照度0.01mW/cm
2の場合には5分間の照射によって実現される。なお、紫外光L10によって、ネココロナウイルス等の他のウイルスに対しても不活化の作用があることが確認されている。つまり、紫外光L10によれば、菌のみならずウイルスに対しても不活化の効果が得られることが分かる。
【0078】
なお、このような菌やウイルスの不活化効果の大小は、照射される紫外光L10の積算照射量(ドーズ量)に依存する。
【0079】
第二光源20は、照明用の白色光L20を発するLED素子を含む。
図13は、このようなLED素子から出射される白色光L20のスペクトルの一例を模式的に示す図面である。この例では、第二光源20は、波長450nm近傍をピーク波長とする青色LED素子と、この青色LED素子から出射される青色光によって励起されて黄色帯域を含む長波長の蛍光を発する蛍光体とを含む構成である。
図13に示す例では、白色光L20には波長300nm以上400nm未満の波長域の光強度が抑止されている。
【0080】
つまり、不活化機能付き照明装置1によれば、照射対象領域40に対して不活化用の紫外光L10を照射することで、照射対象領域40内に存在する菌やウイルスの不活化が行える。そして、この紫外光L10は、虫の視感度が比較的高いとされている300nm以上400nm未満の波長域の光強度が抑止されている。この結果、不活化処理のために第一光源10を点灯した場合であっても、この第一光源10から出射される紫外光L10が虫を誘引する作用が抑制されている。
【0081】
更に、この紫外光L10は、波長240nm以上300nm未満の波長域の光強度が抑止されている。よって、照射対象領域40の近傍に人間が存在する時間帯においても、不活化機能付き照明装置1によって不活化処理が行える。
【0082】
更に、この不活化機能付き照明装置1は、第二光源20を構成するLED素子から出射される白色光L20によって、照射対象領域40を照明する。
図13に例示したように、この白色光L20は、
図4を参照して上述した蛍光灯からの白色光と比べて、300nm以上400nm未満の波長域に属する光が抑制されている。この結果、照明用として第二光源20を点灯した場合であっても、第二光源20から出射される白色光L20による虫の誘引作用が抑制される。
【0083】
つまり、不活化機能付き照明装置1によれば、特に、照明する対象となる領域と不活化する対象となる領域に重なりが存在するような場合、言い換えれば、
図5を参照して上述したように、照射対象領域40に対して紫外光L10と白色光L20の双方を照射する場合において、虫を誘引する作用を抑制しつつ、菌やウイルスの不活化を行うことができる。
【0084】
例えば、
図6に示される形状の不活化機能付き照明装置1は、屋内の天井や壁に設置されることで、室内の空間や、机や椅子等の設置物に対して菌やウイルスの不活化を行いつつ、照明灯として利用できる。
【0085】
別の例として、
図14に示すように、不活化機能付き照明装置1を人の手指によって操作される対象物に対する照射用途に利用できる。
図14では、対象物の例としての券売機30に対して、不活化機能付き照明装置1が搭載されている状態が模式的に図示されている。
【0086】
不活化機能付き照明装置1が備える第二光源20からの白色光L20が、光取り出し面20aからタッチパネル31に対して照明されることで、操作者32がタッチパネル31を操作する際の照明光に利用される。また、タッチパネル31は複数の操作者32によって操作されるため、菌やウイルスが付着しやすい。これに対し、不活化機能付き照明装置1が備える第一光源10からの紫外光L10が、光取り出し面10aからタッチパネル31に対して照明されることで、このタッチパネル31に付着した菌やウイルスの不活化を行うことができる。
【0087】
上述したように紫外光L10は、波長240nm以上300nm未満の波長域に実質的な光強度を示さないため、タッチパネル31の近くに操作者32が存在する時間帯に紫外光L10が照射されたとしても、操作者32の人体への影響が抑制される。
【0088】
また、夜間等の周囲が暗い状況下で不活化機能付き照明装置1を稼働して、タッチパネル31に対して不活化用の紫外光L10と照明用の白色光L20を照射させても、タッチパネル31を含む券売機30の近くに虫を誘引させにくい。
【0089】
なお、虫を誘引させない効果を更に高める観点からは、第一光源10を間欠的に点灯するのが好適である。具体的には、制御部3によって、第一光源10が点灯と消灯を繰り返すように制御されるものとして構わない。周囲が暗い場合において、第一光源10から出射される紫外光L10に、250nm以上400nm未満の波長域に属する光が微弱に含まれる場合、相対的にこの微弱な光が際立つことで走光性が極めて高い虫の場合にはこの光に反応して引き寄せられる可能性が考えられる。しかし、第一光源10が一時的に消灯することで、不活化機能付き照明装置1側にいったん引き寄せられていた虫は、その発光源の場所(目標)を見失い、他の場所に向かって進行する傾向を示す。この結果、虫を誘引する作用を更に低下できる。
【0090】
虫に目標を見失わせる効果を高める観点からは、第一光源10の点灯期間を60秒以下とした上で、消灯期間を点灯期間よりも長く設定するのが好ましい。このような制御内容は、制御部3において予め記憶されているものとして構わない。
【0091】
第一光源10に対する間欠的な点灯制御は、第二光源20が消灯しており、特に照明用の白色光L20が照射されていない状況下で行われる場合に効果的である。第二光源20が点灯している場合は、周囲が明るい環境となるため、相対的に微弱な光は際立ちにくくなるためである。すなわち、制御部3は、第二光源20が消灯していることを検知すると、第一光源10に対する間欠点灯制御を行うものとしても構わない。
【0092】
そして、上述したように、菌やウイルスの不活化効果の大小は、照射される紫外光L10の積算照射量(ドーズ量)に依存する。このため、第一光源10を間欠的に点灯したとしても、照射対象領域40に対して照射される第一光源10からの紫外光L10の積算照射量が確保できていれば、照射対象領域40内に存在する菌やウイルスを不活化する効果が得られる。言い換えれば、第一光源10を間欠的に点灯したからといって、菌やウイルスを不活化する効果が得られないわけではない。
【0093】
図15は、紫外光L10を間欠点灯させた点を除けば、
図12Aと同様の方法で黄色ブドウ球菌に対する不活化の検証を行った結果を示すグラフである。照射条件としては、点灯時の照度を0.01mW/cm
2として、デューティ比50%(8.3分間点灯/8.3分間消灯)で間欠点灯を行う方法が採用された。
【0094】
図15の結果によれば、紫外光L10が間欠的に照射された場合であっても菌等の不活化作用が得られることが分かる。
【0095】
更に、誘虫性が効果的に低減される200nm以上240nm未満の波長域において、特に200nm以上235nm以下、より好ましくは200nm以上230nm以下の波長域の紫外光は、人体に照射されても、皮膚の角質層で吸収され、それよりも内側(基底層側)には進行せず、人体に対する影響がほとんど生じない。このため、人が往来する空間や物体表面に対する、菌又はウイルスの不活化に効果的である。
【0096】
菌等の細胞内には、遺伝情報をつかさどる核酸(DNA,RNA)が存在する。菌等に対して紫外光が照射されると、当該菌等に含まれる核酸がその紫外光を吸収し、DNAやRNAの結合に対して損傷が生じる。これにより、遺伝子からの転写制御が滞り、新陳代謝に支障を来たして死に至ると想定される。つまり、菌等に紫外光が照射されることで、当該紫外光により菌等に含まれるDNAやRNAが損傷を受け、代謝能力や増殖能力が無くなった状態となり、菌等が死滅する。
【0097】
しかしながら、菌等の中には、例えば波長254nmの紫外光が照射されることで不活化された後、300nm以上500nm以下の波長域の光が照射されると、DNAの損傷を修復させる作用を起こすものがある。これは、菌が保有する光回復酵素(例えば、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド))の働きによるものであり、この現象を以下では「菌の光回復」と呼ぶ。300nm以上500nm以下の波長範囲には、太陽光や白色照明の可視光も含まれており、明るい環境において菌の光回復が進むことが知られている。このような事情の存在により、照明環境下で紫外光を照射することで菌等の不活化を行った場合には、この不活化された状態を維持することが困難となりやすい。
【0098】
ところが、200nm以上235nm以下の波長域の紫外光(特にピーク波長が222nm近傍の紫外光)を照射することで菌等を不活化した場合、紫外光の照射後に上記可視光が照射されても「菌の光回復」が行われないこと、言い換えれば、「菌の光回復」が阻害されることが確認された。
【0099】
光回復酵素であるFADは、光回復に作用するリボフラビンと、ADP(アデニンヌクレオチド)とに分かれる。ADPは更にアデノシンとリン酸とに分類される。
図16は、FADとリボフラビンの吸収スペクトルを示す図面である。
図16によれば、FADの吸光度について見ると、波長222nmの紫外光に対する吸光度と、波長254nmの紫外光に対する吸光度がほぼ同等である。一方、光回復に作用するリボフラビンの吸光度について見ると、波長215nm~230nmの紫外光に対する吸光度の方が、波長254nmの紫外光に対する吸光度よりも高い。
【0100】
つまり、215nm~230nmの波長域の紫外光が菌等に照射されると、この紫外光が菌等が保有するFADに含まれるリボフラビンに対して効果的に作用した結果、光回復の機能を阻害させる効果を奏したものと推察される。更に、
図16によれば、リボフラビンの吸光度のピーク値が222nm付近に存在しているため、ピーク波長が222nm近傍の紫外光が照射されることで「菌の光回復」を大きく阻害できたものと推察される。
【0101】
なお、アデノシンについて検討すると、波長254nmの紫外光に対する吸光度が、218nm~245nmの波長範囲の紫外光に対する吸光度よりも高い。つまり、波長254nmの紫外光は、アデノシンに対しても吸収されやすく、この結果、アデノシンが防護壁となってリボフラビンに効果的に作用され難いと推察される。逆に、波長218nm~245nmの範囲の紫外光は、リボフラビンに効果的に作用しやすいと推察される。以上の点から、波長222nm近傍の紫外光は、上記のいずれの有効範囲をも満たす光であり、有効に菌等の光回復効果を阻害できると考えられる。
【0102】
以下において、照射する紫外光の波長の相違が菌等の光回復の作用に影響を及ぼすことにつき、実験結果を参照して説明する。
【0103】
(実験方法)
不活化対象としての黄色ブドウ球菌に対し、波長300nm~500nmの波長域の成分を含む可視光が照射される環境下(照明環境下)において、不活化用の紫外光を一定時間だけ(ここでは30分とした)照射した後、紫外光の照射を停止した。その後、後述する時間だけ可視光の照射を継続した後に黄色ブドウ球菌の培養を行い、菌の生存率の変化を確認した。不活化用の紫外光としては、
図1に示すような、ピーク波長が254nm近傍の低圧水銀ランプからの紫外光(比較例1)と、
図11に示すような、ピーク波長が222nm近傍のKrClエキシマランプからの紫外光(実施例1)とが用いられた。
【0104】
(結果分析)
図17Aは、比較例1の場合の菌の生存率の変化を示すグラフであり、
図17Bは、実施例1の場合の菌の生存率の変化を示すグラフである。なお、いずれの場合においても、紫外光の照度を、5mJ/cm
2、10mJ/cm
2、15mJ/cm
2とした場合の菌の生存率の変化を示している。つまり、比較例1と実施例1の双方について、異なる3種類の照度で同一時間にわたって紫外光を照射した後、照射を停止させてからの経過時間(可視光の照射時間)を異ならせた状態で実験が行われた。なお、
図17A及び
図17Bにおいて、縦軸は、紫外光の照射前の時点における黄色ブドウ球菌のコロニー数(C0)を基準としたときの、照射後の黄色ブドウ球菌のコロニー数(Ct)の比率のLog値に対応する。
【0105】
図17Aの結果によれば、菌の不活化のために低圧水銀ランプから紫外光を照射した場合、照射を停止してからの時間の経過と共に菌の生存率が上昇傾向を示していることが分かる。この結果は、可視光が照射される環境下において、ピーク波長254nm近傍の紫外光の照射を行った後、紫外光の照射が停止している間に菌の光回復が行われていることを示唆するものである。具体的には、紫外線の照射が停止された後、可視光の照射によって菌の生存数が上昇しており、紫外線の照射が停止してから1~2時間程度の経過で菌の生存数が劇的に回復していることが分かる。
【0106】
一方、
図17Bの結果によれば、菌の不活化のためにKrClエキシマランプから紫外光を照射した場合、照射を停止してから時間が経過しても菌の生存率がほとんど変化しないことが分かる。この結果は、可視光が照射される環境下であっても、ピーク波長222nm近傍の紫外光が照射されることで、菌の光回復が阻害されたことを示唆するものである。
【0107】
光回復が阻害された菌は、DNAの損傷が残ったままとなるため、DNAが修復されることなく死滅(不活化)される。そのため、波長222nm近傍の紫外光が照射されることで、菌の回復及び増殖が有効に低減できる。従って、波長222nm近傍の紫外光を不活化用の紫外光として使用する装置やシステムは、特に、菌の光回復がしやすい環境、具体的には波長300nm~500nmの光を含む可視光が照射される環境で利用される場合に、効果的であるといえる。
【0108】
波長254nmの紫外光を照射することで菌等の不活化を行う装置やシステムによれば、光回復しない菌又はウイルス(例えば、枯草菌(いわゆる納豆菌)、インフルエンザ等)については効果的に不活化できるが、光回復する菌(例えば、大腸菌やサルモネラ菌等)については、可視光が照射される環境下では継続的な不活化が難しい。よって、このような装置やシステムを用いて菌等の不活化を行った場合、光回復酵素を有する特定の菌のみが生存しやすい環境を作り出しやすく、当該菌による感染リスクを高める懸念も考えられる。
【0109】
しかしながら、上述したように、200nm~230nmの波長範囲に属する紫外光、特に、波長222nm近傍の紫外光を照射することで、光回復酵素を有する有害な菌についても、光回復機能を阻害できるため、当該菌による感染リスクを低減できる。
【0110】
また、菌の光回復を阻害できれば、当該菌を媒介としたウイルスの増殖も抑制できる。例えば、細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)は、細菌を媒介として増殖することが知られている。このバクテリオファージは、細菌に感染するウイルスの総称であるが、ヒトに対して有害となる場合もあり得る。例えば、溶原性ファージは、稀に、自らのゲノム中に毒性又は薬剤耐性遺伝子を有し、これらの遺伝子がバクテリアを介して間接的にヒトに害をもたらす可能性が指摘されている。例として、コレラ及びジフテリアの毒素がある。菌の光回復を阻害することは、ファージ等のウイルスの増殖を未然に防ぐことにもつながる。
【0111】
以上のように、200nm以上240nm未満の波長域内において、特に、200nm以上230nm以下の波長帯域の紫外光L10を発する第一光源10を備えた不活化機能付き照明装置1は、第二光源20から照明用の白色光L20を照射する場合においても、空間中や対象物表面に存在する有害な菌やウイルスを不活化すると共に、紫外光照射後の菌の光回復を効果的に抑えることができる。これは、照明装置に付加された不活化機能として、極めて優位性の高い効果である。
【0112】
また波長200nm~230nmの紫外光、特に、波長222nm近傍の紫外光の照射により菌の光回復を阻害できるので、第二光源20から照明用の白色光L20が照射されている場合に、第一光源10からの紫外光L10が照射されない時間(休止時間)を設けた場合も、不活化の効果が維持されやすい。
【0113】
更に、本発明者らの鋭意研究の結果、ピーク波長が207nmの紫外光が照射された場合であっても、波長254nmの紫外光が照射された場合とは異なり、光回復機能を阻害できることが確認された。
図18Aは、不活化用の紫外光としてピーク波長が207nm近傍のKrBrエキシマランプからの紫外光(実施例2)が用いられた場合における菌の生存率の変化を示すグラフである。なお、データの測定方法及びグラフの表示方法は、実施例1や比較例1と共通である。なお、
図18Bは、実施例2で用いられたKrBrエキシマランプの発光スペクトルである。
【0114】
図18Aの結果によれば、ピーク波長が207nmの紫外光が照射された場合であっても、
図17Bに示すピーク波長222nmの紫外線が照射された場合と同様に、菌の光回復を抑制する効果が得られていることが分かる。この結果から、波長240nm未満の紫外線によれば、菌やウイルスを構成する細胞組織に対してより効果的に作用しているものと考えられる。
【0115】
図19は、紫外光の波長領域における、タンパク質の平均吸光係数の特性を示すグラフである。
図19に示すように、タンパク質は、波長250nm以上の紫外光は吸収されにくいが、波長が240nm未満の帯域で急激に吸収されやすくなることがわかる。そのため、KrClエキシマランプやKrBrエキシマランプからの紫外光のような、波長240nm未満の紫外光が照射されると、細菌やウイルスが持つ細胞膜や酵素の成分であるタンパク質に効果的に吸収される。この帯域の紫外光は、人の皮膚表面(例えば角質層)で吸収され、皮膚内部まで浸透し難く、皮膚に対して安全性が高い。一方で、細菌やウイルスはヒト細胞よりも物理的にはるかに小さいため、240nmよりも短い波長帯域であっても紫外光が内部まで到達しやすい。そのため、波長240nm未満の紫外光は、菌やウイルスを構成する細胞、特に、タンパク質成分を含む細胞膜や酵素等に対して効果的に作用し、菌の光回復等の機能を抑制する効果が高められると考えられる。
【0116】
更に、215nm~230nmの波長域の紫外光の場合には、菌等が保有するFADに含まれるリボフラビンに対して効果的に作用する効果も得られることから、複合的な理由によって、菌の光回復が抑制できているものと推察される。
【0117】
ここで、タンパク質に対する吸光特性を確認するために、調整した大腸菌原液の吸光度を測定した。吸光度の測定方法と大腸菌原液の調整方法は次の通りである。
【0118】
大腸菌(NBRC.106373 凍結乾燥品)をLB培地に懸濁して37℃で24時間の振とう培養を行った。さらに、上記懸濁液をLB培地で1/105~1/107に希釈し、標準寒天培地に0.1mL塗抹し、37℃で24時間培養した。さらに、30~300CFU/Plateとなった標準寒天培地からコロニーを1個白金耳で釣菌し、5mLのLB培地に懸濁し、37℃で4時間振とう培養を行った。上記懸濁液を滅菌生理食塩水で遠心洗浄したものを大腸菌原液とした。上記作業で得られた原液濃度は109CFU/mLである。吸光度の測定は、原液を1/100に希釈した、濃度が107CFU/mLの試液を用いて、サーモフィッシャーサイエンスのナノドロップにて行った。
【0119】
図20は、大腸菌(E.Coli)の吸光スペクトルを示したグラフである。
図20に示すとおり、タンパク質に対する平均吸光係数の傾向と同様に、240nmより短い波長帯域の光に対して大腸菌(E.Coli)の吸光度が上昇することが分かる。これは、240nmより短い波長帯域の光が、細菌やウイルス等を構成する細胞組織に効果的に作用することを示している。
【0120】
このため、従来の紫外光を用いた不活化装置と比較して、240nm未満の波長帯域に属する紫外光は、菌の光回復を抑制することで、断続的な紫外光の照射であっても良好な不活化効果を発揮する。つまり、紫外光の照射位置を変動させて不活化を行う場合であっても、効率的に不活化処理を進めることができる。なお、菌の光回復をより効果的に抑制する観点から、光源部から出射される紫外光のピーク波長は、200nm~235nmであるのがより好ましい。
【0121】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0122】
〈1〉不活化機能付き照明装置1は、第一光源10と第二光源20の双方について、単なるオンオフ制御のみを行う構成であっても構わない。
【0123】
〈2〉
図8~
図10を参照して上述した、第一光源10の構造はあくまで一例である。本発明は、不活化機能付き照明装置1が備える第一光源10の形状やエキシマランプ13の本数には限定されない。
【0124】
〈3〉上記実施形態では、第一光源10がエキシマランプ13を備える場合について説明した。しかし、第一光源10は、得られる紫外光L10が、200nm以上240nm未満の波長域内にピーク波長を有し、250nm以上400nm未満の帯域の光強度が抑止されている限りにおいて、その構成には限定されない。ただし、第一光源10から発せられる紫外光L10としては、狭帯域のスペクトルを示す光源であることが好ましく、エキシマランプ、LED素子、LD素子等を好適に利用できる。また、第一光源10として、裾野が広い発光スペクトル形状を示す紫外光L10を発する光源を利用する場合には、抑止したい波長域の光を遮光するためのフィルタ等を設けることで実現が可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 :菌又はウイルスの不活化機能付き照明装置
2 :ケーシング
3 :制御部
4 :電源部
10 :第一光源
10a :第一光源の光取り出し面
12 :ランプハウス
12a :本体ケーシング部
12b :蓋部
13 :エキシマランプ
18 :給電線
20 :第二光源
20a :第二光源の光取り出し面
30 :券売機
31 :タッチパネル
32 :操作者
40 :照射対象領域
G13 :発光ガス
L10 :紫外光
L20 :白色光