(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】共振子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H03H9/25 C
(21)【出願番号】P 2023516025
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2021039760
(87)【国際公開番号】W WO2022224470
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2021071400
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊雄
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-191330(JP,A)
【文献】特開2005-065160(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121976(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/138812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面及び第2面を有する圧電層と、
前記圧電層の前記第1面の側に設けられたIDT電極と、
前記圧電層の前記第2面の側に設けられた高音速基板と、
を備え、
前記圧電層は、結晶Y軸に直交する面を結晶X軸回りに回転させたカット角の水晶からなり、
前記圧電層の結晶X軸に対して90°±10°となる伝搬方向において、前記高音速基板の音速は前記圧電層の音速よりも速く、
前記IDT電極は、前記伝搬方向に並ぶ複数の電極指を有する櫛形電極を有
し、
前記高音速基板は、結晶Y軸に直交する面を、結晶X軸の正方向側から視て反時計回りに0°以上60°以下の範囲で回転させたカット角の水晶からなり、
前記圧電層と前記高音速基板とは、互いの結晶X軸が平行となるように設けられる、
共振子。
【請求項2】
互いに対向する第1面及び第2面を有する圧電層と、
前記圧電層の前記第1面の側に設けられたIDT電極と、
前記圧電層の前記第2面の側に設けられた高音速基板と、
を備え、
前記圧電層は、結晶Y軸に直交する面を結晶X軸回りに回転させたカット角の水晶からなり、
前記圧電層の結晶X軸に対して90°±10°となる伝搬方向において、前記高音速基板の音速は前記圧電層の音速よりも速く、
前記IDT電極は、前記伝搬方向に並ぶ複数の電極指を有する櫛形電極を有し、
前記高音速基板は、結晶Y軸に直交する面を、結晶X軸の正方向側から視て反時計回りに-30°以上90°以下の範囲で回転させたカット角の水晶からなり、
前記圧電層と前記高音速基板とは、互いの結晶X軸が平行となるように設けられる、
共振子。
【請求項3】
前記圧電層は、結晶Y軸に直交する面を、結晶X軸の正方向側から視て反時計回りに-59°±10°の範囲で回転させたカット角の水晶からなる、
請求項1
又は2に記載の共振子。
【請求項4】
前記圧電層は、結晶Y軸に直交する面を、結晶X軸の正方向側から視て反時計回りに35°±10°の範囲で回転させたカット角の水晶からなる、
請求項1
又は2に記載の共振子。
【請求項5】
前記圧電層と前記高音速基板とは、直接積層されている、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の共振子。
【請求項6】
前記圧電層と前記高音速基板との間に設けられた低音速層をさらに有し、
前記伝搬方向において、前記低音速層の音速は前記圧電層の音速以下である、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の共振子。
【請求項7】
前記IDT電極の電極周期で定まる弾性波の波長をλとしたとき、
前記低音速層の厚みは、0.1λ以上0.5λ以下の範囲に設定される、
請求項
6に記載の共振子。
【請求項8】
前記低音速層の厚みは、前記高音速基板の厚みの100分の1以下である、
請求項
6又は7に記載の共振子。
【請求項9】
前記IDT電極の電極周期で定まる弾性波の波長をλとしたとき、
前記圧電層の厚みは、0.05λ以上0.5λ以下の範囲に設定される、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の共振子。
【請求項10】
前記圧電層の厚みは、前記高音速基板の厚みの100分の1以下である、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の共振子。
【請求項11】
前記伝搬方向において、前記高音速基板の音速は、前記圧電層の音速に比べて20%以上速い、
請求項1から
10のいずれか1項に記載の共振子。
【請求項12】
前記伝搬方向において、前記高音速基板の音速は、前記圧電層の音速に比べて40%以上速い、
請求項
11に記載の共振子。
【請求項13】
前記高音速基板は、シリコン、シリコン化合物及びアルミニウム化合物のいずれかからなる、
請求項1から
12のいずれか1項に記載の共振子。
【請求項14】
前記高音速基板は、シリコンの単結晶からなる、
請求項1から
13のいずれか1項に記載の共振子。
【請求項15】
前記IDT電極は、アルミニウムを主成分とする金属からなる、
請求項1から
14のいずれか1項に記載の共振子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共振器や帯域フィルタなどに利用される弾性波装置として、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:以下、SAW)共振子が知られている。携帯電話などの移動体通信システムの進化によって、SAW共振子のQ値や周波数温度特性などの各種特性の向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、圧電基板と、圧電基板上に設けられたIDTとを備え、励振波をSH波とした弾性表面波デバイスであって、IDTの電極指間スペースに溝が形成されることで、Q値の向上を図った弾性表面波デバイスが開示されている。
【0004】
特許文献2には、高音速支持基板と、圧電膜と、IDT電極とを備える弾性波装置であって、IDT電極の電極周期で定まる弾性波の波長をλとしたときに、0.1λ~0.5λの範囲とされる膜厚の低音速膜が高音速支持基板と圧電膜との間に設けられることで、Q値の向上を図った弾性波装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、水晶層、アモルファス酸化シリコン層、圧電層、櫛形電極を順に積層した弾性表面波デバイスであって、アモルファス酸化シリコン層の厚さ、圧電層の厚さを適切な値とすることで、周波数温度特性やその他の各特性について良好なものとすることを図った弾性表面波デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-203408号公報
【文献】特許第5910763号公報
【文献】特開2019-149724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の弾性表面波デバイスでは、電極指間スペースの溝の深さの制御が難しく、Q値が充分に向上しない場合がある。
【0008】
特許文献2に記載の弾性波装置及び特許文献3に記載の弾性表面波デバイスでは、1次周波数温度係数が改善されているが、さらなる周波数温度特性の改善の余地を残している。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、周波数温度特性又は共振特性に優れる共振子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面に係る共振子は、
互いに対向する第1面及び第2面を有する圧電層と、
圧電層の第1面の側に設けられたIDT電極と、
圧電層の第2面の側に設けられた高音速基板と、
を備え、
圧電層は、結晶Y軸に直交する面を結晶X軸回りに回転させたカット角の水晶からなり、
圧電層の結晶X軸に対して90°±10°となる伝搬方向において、高音速基板の音速は圧電層の音速よりも速く、
IDT電極は、伝搬方向に並ぶ複数の電極指を有する櫛形電極を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周波数温度特性又は共振特性に優れる共振子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態における共振子の構成を概略的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示した共振子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図1に示した圧電層の結晶軸方向を説明する図である。
【
図4】一変形例における共振子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図5】一変形例における共振子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図6】第1実施例の圧電層の回転角度と音速の関係を示すグラフである。
【
図7】第1実施例の圧電層の回転角度と電気機械結合係数の関係を示すグラフである。
【
図8】第1実施例の圧電層の回転角度とQ値の関係を示すグラフである。
【
図9】第1実施例の圧電層の回転角度と1次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
【
図10】第1実施例の圧電層の回転角度と2次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
【
図11】第1実施例の圧電層の回転角度と3次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
【
図12】第1実施例の周波数温度特性を示すグラフである。
【
図13】第1実施例の高音速基板の音速がQ値に及ぼす影響を説明するグラフである。
【
図14】第2実施例の圧電層の回転角度と音速の関係を示すグラフである。
【
図15】第2実施例の圧電層の回転角度と電気機械結合係数の関係を示すグラフである。
【
図16】第2実施例の圧電層の回転角度とQ値の関係を示すグラフである。
【
図17】第3実施例の高音速基板の回転角度と音速の関係を示すグラフである。
【
図18】第3実施例の高音速基板の回転角度と電気機械結合係数の関係を示すグラフである。
【
図19】第3実施例の高音速基板の回転角度とQ値の関係を示すグラフである。
【
図20】第3実施例の高音速基板の回転角度と1次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
【
図21】第3実施例の高音速基板の回転角度と2次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
【
図22】第3実施例の高音速基板の回転角度と3次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0014】
まず、
図1~
図3を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る共振子10の概略構成について説明する。
図1は、一実施形態における共振子の構成を概略的に示す平面図である。
図2は、
図1に示した共振子の構成を概略的に示す断面図である。
図3は、
図1に示した圧電層の結晶軸方向を説明する図である。
【0015】
共振子10は、SAW共振子の一種であり、SSBW(Surface Skimming Bulk Wave)を導波するSTW(Surface Transverse Wave:横波型弾性表面波)素子である。
図1及び2に示すように、共振子10は、高音速基板1と、低音速層3と、圧電層5と、IDT(Inter Digital Transducer)電極7と、一対の反射器9とを備えている。
【0016】
高音速基板1は、圧電層5の振動エネルギーがバルク波として漏れてQ値を低下させることを抑制できる基板である。具体的には、高音速基板1は、例えば
図2に示したように、伝搬方向PDにおける音速(弾性波の伝搬速度)が圧電層5の伝搬方向PDにおける音速よりも速い単層基板である。以下、「伝搬方向PDにおける音速」を、単に「音速」ともいう。高音速基板1の音速は、圧電層5の音速に比べて10%以上速いことが望ましく、20%以上速いことがさらに望ましく、40%以上速いことがさらに望ましい。
【0017】
高音速基板1は、例えばシリコン単結晶からなるが、これに限定されるものではない。高音速基板1は、例えば、単体シリコン(アモルファスシリコン、シリコン多結晶など)、シリコン化合物(酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコンなど)及びアルミニウム化合物(窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)のうちのいずれかによって形成されてもよい。後述のとおり圧電層5は水晶によって形成されるが、伝搬方向PDにおいて高音速基板1と圧電層5との間に充分な音速差が確保できるように結晶軸方向を設定可能であれば、高音速基板1も水晶によって形成されてもよい。この場合、高音速基板1及び圧電層5は、互いにカット角の異なる水晶によって形成されてもよい。具体例を挙げると、圧電層5の水晶が後述するBTカットであり、伝搬方向PDに対して結晶X軸が90°±10°となるように設けられ、高音速基板1の水晶が後述するATカットであり、伝搬方向PDに対して結晶X軸が90°±10°となるように設けられてもよい。すなわち、高音速基板1の水晶のカット角は、オイラー角によって(λ、μ、θ)=(0°、125°±10°、90°±10°)と表され、圧電層5の水晶のカット角は、オイラー角によって(λ、μ、θ)=(0°、31°±10°、90°±10°)と表されてもよい。これによれば、高音速基板1と圧電層5との音速差を大きくすることができる。なお、高音速基板1を構成する水晶のカット角は、伝搬方向PDにおいて高音速基板1の音速が圧電層5の音速よりも充分に速ければ上記に限定されるものではない。高音速基板1は、結晶Y軸に直交する面を、結晶X軸の正方向側から視て反時計回りに0°以上60°以下の範囲で回転させたカット角の水晶によって形成されてもよい。
【0018】
高音速基板は
図2に示した単層構造に限定されるものではなく、多層構造であってもよい。高音速基板が多層構造である場合、この多層構造のうち最も圧電層5に近い層の音速が圧電層5の音速よりも速ければ、この多層構造の他の層の音速が圧電層5の音速以下であってもよい。多層構造からなる高音速基板のうち最も圧電層5に近い層は、その音速が上記した高音速基板1と同様の音速であることが望ましく、上記した高音速基板1と同様の材料によって形成されることが望ましい。
【0019】
高音速基板1の厚みT1が大きいほど、圧電層5からの振動エネルギーの漏れが抑制できる。また、高音速基板1は、低音速層3、圧電層5、IDT電極7及び反射器9を有する積層構造を支持可能な機械的強度を有することが望ましい。したがって、弾性波の波長をλとしたとき、高音速基板1の厚みT1は50λ以上であることが望ましく、100λ以上であることがさらに望ましく、500λ以上であることがさらに望ましい。
【0020】
低音速層3は、本質的に低音速な媒質に集中する特性を有する振動エネルギーを閉じ込め、圧電層5から高音速基板1への振動エネルギーの漏れを抑制するための層である。具体的には、低音速層3は、伝搬方向PDにおける音速が圧電層5の伝搬方向PDにおける音速以下の層である。低音速層3は、高音速基板1の上に直接積層されている。これは、高音速基板1と低音速層3との間に接着剤等の機能部材が存在せず、高音速基板1と低音速層3とが接触していることを意味する。直接積層は、例えば、拡散接合や常温接合などによる直接接合や、PVDやCVDなどによる直接成膜によって実現される。直接積層における部材間の境界において、組成比は急激に変化してもよく、徐々に変化してもよい。他の層や基板における直接積層についても同様とする。
【0021】
低音速層3は、例えば酸化シリコンからなり、これによれば温度補償効果により周波数温度特性を改善できる。但し、低音速層3の材質は酸化シリコンに限定されるものではなく、例えば、酸窒化シリコン、酸化タンタル、又はこれらにフッ素や炭素やホウ素を加えた化合物によって形成されてもよい。
【0022】
低音速層3の厚みT3は、0.01λ以上2.0λ以下の範囲で設定されることが望ましく、0.1λ以上0.5λ以下の範囲で設定されることがさらに望ましい。厚みT3を2.0λ以下の範囲で設定することにより、電気機械結合係数を容易に調整することができる。また、厚みT3を0.01λ以上の範囲で設定することにより、圧電層5からの振動エネルギーの漏れを充分に抑制することができる。また、低音速層3の応力による共振子10のそり低減の観点から、低音速層3の厚みT3は、高音速基板1の厚みT1の100分の1以下であることが望ましい。なお、低音速層3は省略されてもよい。すなわち、圧電層5と高音速基板1とは、直接積層されていてもよい。
【0023】
圧電層5は、電気的な振動エネルギーと機械的な振動エネルギーとを相互に変換し、機械的な振動エネルギーをSSBWとして伝搬させる層である。圧電層5は、低音速層3の上に直接積層されている。
図3に示すように、圧電層5は、結晶Y軸に直交する面を結晶X軸回りに回転角θ1で回転させたカット角の水晶(回転Yカット水晶基板)からなる。また、圧電層5は、結晶X軸に対して90°±10°の方向が伝搬方向PDとなるように設けられる。すなわち、伝搬方向PDは、結晶Z軸を結晶X軸回りに回転角θ1で回転させたZ’軸に沿った方向である。ここで、回転角θ1は、結晶X軸の正方向側から(
図3の紙面の手前側から奥を)視て反時計回りを正(+)、時計回りを負(-)とし、0を含む。当該水晶のカット角をオイラー角で表示する場合は(0°、θ1+90°、90°±10°)となる。
【0024】
一例として、圧電層5の水晶はBTカットであり、θ1=-59°±10°である。当該水晶のカット角をオイラー角で表示する場合は(λ、μ、θ)=(0°、θ1+90°、90°±10°)=(0°、31°±10°、90°±10°)となる。また、別の一例として、圧電層5の水晶はATカットであり、θ1=35°±10°である。当該水晶のカット角をオイラー角で表示する場合は(λ、μ、θ)=(0°、θ1+90°、90°±10°)=(0°、125°±10°、90°±10°)となる。
【0025】
圧電層5の厚みT5は、0.02λ以上1.0λ以下の範囲に設定されることが望ましく、0.05λ以上0.5λ以下の範囲に設定されることがさらに望ましく、0.1λ以上0.5λ以下の範囲に設定されることがさらに望ましい。これによれば、広い範囲で電気機械結合係数を容易に調整できる。また、圧電層5からの振動エネルギーの漏れを抑制する観点から、圧電層5の厚みT5は、高音速基板1の厚みT1の100分の1以下であることが望ましい。
【0026】
IDT電極7は櫛形電極である。
図1に示す例では、IDT電極7は、一対のバスバー7aと、複数の電極指7bとを有する。一対のバスバー7aは、伝搬方向PDに沿って各々延出するとともに伝搬方向PDに対して直交する方向に互いに離間するように配置されている。複数の電極指7bは、一対のバスバー7aの各々から伝搬方向PDに直交する方向に延出し、伝搬方向PDに沿って配列されている。一方のバスバー7aから延出した複数の電極指7bと、他方のバスバー7aから延出した複数の電極指7bとは、伝搬方向PDに沿って交互に配置されている。圧電層5の結晶軸方向を基準にすると、
図3に示すように、複数の電極指7bは、結晶X軸方向に延在し、結晶Z軸を結晶X軸回りに回転角θ1で回転させたZ’軸方向に沿って並んでいる。電極指7bの電極周期は、弾性波の波長λを定める。言い換えると、電気的に互いに接続した隣接する2つの電極指7bのそれぞれの-Z’軸方向の側の縁は、Z’軸方向に間隔λで離れている。
【0027】
一対の反射器9は、SAWを反射しQ値を向上させるためのグレーティング反射器である。一対の反射器9は、伝搬方向PDにおいて、IDT電極7を挟むように配置されている。一対の反射器9のそれぞれは、伝搬方向PDに沿って各々伸びると共に伝搬方向PDに対して互いに直交する方向に離間するように配置された一対の反射器バスバー9aと、一対の反射器バスバー9aを接続し伝搬方向PDに並ぶ複数の反射器電極指9bとを有している。
【0028】
IDT電極7及び反射器9は、圧電層5の上に設けられている。IDT電極7及び反射器9は、例えばアルミニウムを主成分とする金属からなるが、これに限定されるものではない。IDT電極7及び反射器9は、例えば、銅、プラチナ、金、銀、チタン、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン又はこれらの金属のいずれかを主成分とする合金によって形成されてもよい。IDT電極7及び反射器9の厚みT7は、0.01λ以上0.2λ以下の範囲で設定されることが望ましく、0.02λ以上0.15λ以下の範囲で設定されることがさらに望ましく、0.04λ以上1.0λ以下の範囲で設定されることがさらに望ましい。
【0029】
次に、
図4及び
図5を参照しつつ、本実施形態の一変形例について説明する。
図4及び
図5は、一変形例における共振子の構成を概略的に示す断面図である。
【0030】
図4に示すように、共振子20の高音速基板1と圧電層5とは、互いに直接積層されていてもよい。この場合、低音速層が省略されているため、圧電層5から高音速基板1への振動エネルギーの漏れを抑制するためには、高音速基板1の音速が圧電層5の音速に比べて20%以上速いことが望ましい。
【0031】
図5に示すように、共振子30の高音速基板31は、支持基板31aと支持基板31aの上に積層された高音速層31bとを有してもよい。高音速層31bは例えば支持基板31aの上に直接積層されているが、これに限定されるものではなく、接着剤等の接合部材を介して積層されてもよい。
【0032】
支持基板31aは、高音速層31b、低音速層3、圧電層5、IDT電極7及び反射器9を有する積層構造を支持可能であれば、その材質を限定されるものではない。例えば、支持基板31aは、サファイア、リチウムタンタレート、リチウムニオベイト、水晶等の圧電体、アルミナ、マグネシア、窒化シリコン、窒化アルミニウム、炭化シリコン、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト等の各種セラミック、ガラス等の誘電体、又はシリコン、窒化ガリウム等の半導体及び樹脂基板などによって形成できる。
【0033】
高音速層31bは、支持基板31aと低音速層3との間に設けられる。高音速層31bは、伝搬方向PDにおける音速が圧電層5の伝搬方向PDにおける音速よりも速い。高音速層31bは、高音速基板1と同様の材料によって形成可能である。高音速層31bの厚みが大きいほど、圧電層5からの振動エネルギーの漏れが抑制できる。したがって、高音速層31bの厚みは0.5λ以上であることが望ましく、1.5λ以上であることがさらに望ましい。但し、製造性の観点から、高音速層31bの厚みは10λ以下であることが望ましい。
【0034】
次に
図6~
図8を参照しつつ、本実施形態の一実施例における共振特性について説明する。
図6は、第1実施例の圧電層の回転角度と音速の関係を示すグラフである。
図7は、第1実施例の圧電層の回転角度と電気機械結合係数の関係を示すグラフである。
図8は、第1実施例の圧電層の回転角度とQ値の関係を示すグラフである。
【0035】
第1実施例にかかる共振子10は、高音速基板1と、高音速基板1の上に積層された低音速層3と、低音速層3の上に積層された圧電層5と、圧電層5の上に形成されたIDT電極7及び反射器9と、を備えている。
弾性波:波長λ=4μm、周波数f=1GHz
高音速基板1:シリコン(単結晶)、T1=300μm
低音速層3:シリコン酸化物(アモルファス)、T3=0.8μm
圧電層5:水晶、オイラー角(0°、θ1+90°、90°)、T5=2μm
IDT電極7:アルミニウム、T7=0.2μm
【0036】
比較例にかかる共振子は、第1実施例の構成から高音速基板1及び低音速層3を省略し、単層の圧電層5からなる共振子である。第1実施例及び比較例における各種共振特性のシミュレーションを行った。
【0037】
図6のグラフの横軸は圧電層の回転角(Rotation angle of piezoelectric)θ1を示し、縦軸はSAW音速(Phase velocity)(単位:m/s)を示している。-90°≦θ1≦0°及び60°≦θ1≦90°の範囲で、第1実施例のSAW音速は比較例のSAW音速よりも上昇している。すなわち、この範囲において、第1実施例は比較例よりも高周波化に有利である。特にθ1=-59°±10°の範囲ではSAW音速の上昇が大きい。例えば、θ1=-59°において、比較例のSAW音速が3300m/s以下であったのに対し、第1実施例のSAW音速は3500m/s以上まで上昇した。
【0038】
図7のグラフの横軸は圧電層の回転角(Rotation angle of piezoelectric)θ1を示し、縦軸は電気機械結合係数(Coupling coefficient)(単位:%)を示している。-90°≦θ1≦0°及び70°≦θ1≦90°の範囲で、第1実施例の電気機械結合係数は比較例の電気機械結合係数よりも上昇している。すなわち、この範囲において、第1実施例は比較例よりも、発振器としての発振特性に優れ、フィルタとしての広帯域化が可能である。
【0039】
図8のグラフの横軸は圧電層の回転角(Rotation angle of piezoelectric)θ1を示し、縦軸はQ値(Q)を示している。θ1の全範囲において、第1実施例のQ値は比較例のQ値よりも上昇している。すなわち、θ1の全範囲において、第1実施例は比較例よりも、発振器しての発振特性に優れ且つ位相ノイズを低減可能であり、フィルタとして挿入損失を低減可能である。特にθ1=-59°±10°の範囲ではQ値の上昇が大きい。例えば、θ1=-59°において、比較例のQ値が1000以下であったのに対し、第1実施例のQ値は8000以上まで上昇した。
【0040】
次に
図9~
図12を参照しつつ、本実施形態の一実施例にける温度特性について説明する。第1実施例及び比較例における温度特性のシミュレーションを行った。
図9は、第1実施例の圧電層の回転角度と1次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
図10は、第1実施例の圧電層の回転角度と2次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
図11は、第1実施例の圧電層の回転角度と3次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
図12は、第1実施例の周波数温度特性を示すグラフである。
【0041】
図9のグラフの横軸は圧電層の回転角(Rotation angle of piezoelectric)θ1を示し、縦軸は1次周波数温度係数(1st TCF:Temperature Coefficients of Frequency)を示している。縦軸の単位はppm/Kである。
図10のグラフの横軸は圧電層の回転角(Rotation angle of piezoelectric)θ1を示し、縦軸は2次周波数温度係数(2nd TCF)を示している。縦軸の単位はppb/K
2である。
図11のグラフの横軸は圧電層の回転角(Rotation angle of piezoelectric)θ1を示し、縦軸は3次周波数温度係数(3rd TCF)を示している。縦軸の単位はppt/K
3である。θ1の全範囲において、第1実施例の1次周波数温度係数の絶対値は比較例の1次周波数温度係数の絶対値よりも小さくなっている。2次周波数温度係数及び3次周波数温度係数についても同様である。特に、θ1=-59°±10°の範囲での3次周波数温度係数の絶対値の低減は大きい。例えば、θ1=-59°において、比較例の3次周波数温度係数が80ppt/K
3以上であったのに対し、第1実施例の3次周波数温度係数の絶対値は40ppt/K
3以下にまで低減された。
【0042】
図12のグラフの横軸は温度(Temperature)(単位:℃)を示し、縦軸は25℃における周波数を基準とした周波数変化量(dF)(単位:ppm)を示している。グラフ中のプロットは、それぞれ、θ1=-59°のときの第1実施例及び比較例の周波数温度特性、θ1=35°のときの第1実施例及び比較例の周波数温度特性を示している。θ1=-59°、35°どちらの場合も、第1実施例の周波数温度特性は、比較例の周波数温度特性よりも優れている。特に、θ1=-59°の場合の第1実施例は周波数温度特性に優れ、40℃以上100℃以下の高温域における周波数変化量の絶対値が10ppm以下であった。
【0043】
次に、
図13を参照しつつ、音速差のQ値への影響について説明する。
図13は、第1実施例の高音速基板の音速がQ値に及ぼす影響を説明するグラフである。第1実施例の構成において、高音速基板1の音速を変化させたシミュレーションで得られたQ値の変化を示している。
【0044】
図13のグラフの横軸は高音速基板1の音速(Phase velocity of substrate)(単位:m/s)を示し、縦軸はQ値を示している。グラフ中のプロットは、それぞれ、θ1=-59°のときの第1実施例のQ値、及びθ1=35°のときの第1実施例のQ値を示している。高音速基板1の音速が圧電層5の音速に比べて10%以上速いときQ値は上昇しており、20%以上速いときQ値は8000以上となり、40%以上速いときQ値の上昇しきっている。
【0045】
次に
図14~
図16を参照しつつ、本実施形態の一実施例の共振特性について説明する。
図14は、第2実施例の圧電層の回転角度と音速の関係を示すグラフである。
図15は、第2実施例の圧電層の回転角度と電気機械結合係数の関係を示すグラフである。
図16は、第2実施例の圧電層の回転角度とQ値の関係を示すグラフである。
【0046】
第2実施例は、低音速層3が省略され、高音速基板1に圧電層5が直接接合されている点で、第1実施例と相違している。それ以外は第1実施例と同様の構成である。
【0047】
図14のグラフの横軸は圧電層の回転角(Rotation angle of piezoelectric)θ1を示し、縦軸はSAW音速(Phase velocity)(単位:m/s)を示している。θ1の全範囲において、第2実施例のSAW音速は比較例のSAW音速よりも上昇している。特にθ1=-59°±10°の範囲ではSAW音速の上昇が大きい。例えば、θ1=-59°において、比較例のSAW音速が3300m/s以下であったのに対し、第2実施例のSAW音速は4200m/s以上まで上昇した。なお、θ1の全範囲において、第2実施例のSAW音速は第1実施例のSAW音速よりも大きい。
【0048】
図15のグラフの横軸は圧電層の回転角(Rotation angle of piezoelectric)θ1を示し、縦軸は電気機械結合係数(Coupling coefficient)(単位:%)を示している。-70°≦θ1≦30°の範囲で、第2実施例の電気機械結合係数は比較例の電気機械結合係数よりも上昇している。特に、θ1=0°±10°の範囲では電気機械結合係数の上昇が大きい。例えば、θ1=0°において、比較例の電気機械結合係数が2.5%以下であったのに対し、第2実施例の電気機械結合係数は3.8%以上まで上昇した。なお、-40°≦θ1≦40°の範囲では、第2実施例の電気機械結合係数は第1実施例の電気機械結合係数よりも大きい。
【0049】
図16のグラフの横軸は圧電層の回転角(Rotation angle of piezoelectric)θ1を示し、縦軸はQ値(Q)を示している。-90°≦θ1≦10°及び50°≦θ1≦90°の範囲において、第2実施例のQ値は比較例のQ値よりも上昇している。特にθ1=-59°±10°の範囲ではQ値の上昇が大きい。例えば、θ1=-59°において、比較例のQ値が1000以下であったのに対し、第2実施例のQ値は8000以上まで上昇した。なお、θ1の全範囲において、第1実施例のQ値は第2実施例のQ値よりも大きい。
【0050】
次に
図17~
図22を参照しつつ、本実施形態の一実施例の温度特性について説明する。第3実施例における共振特性及び温度特性のシミュレーションを行った。
図17は、第3実施例の高音速基板の回転角度と音速の関係を示すグラフである。
図18は、第3実施例の高音速基板の回転角度と電気機械結合係数の関係を示すグラフである。
図19は、第3実施例の高音速基板の回転角度とQ値の関係を示すグラフである。
図20は、第3実施例の高音速基板の回転角度と1次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
図21は、第3実施例の高音速基板の回転角度と2次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
図22は、第3実施例の高音速基板の回転角度と3次周波数温度係数の関係を示すグラフである。
【0051】
第3実施例は、高音速基板1が水晶によって形成されている点で第2実施例と相違している。それ以外は第2実施例と同様の構成である。高音速基板1は、結晶Y軸に直交する面を結晶X軸回りに回転角θ2で回転させた水晶であり、圧電層5と高音速基板1とは、互いの結晶X軸が平行となるように積層されている。高音速基板1の水晶のカット角をオイラー角で表示した場合、(0°、θ2±90°、90°)と表される。第3実施例において圧電層5の水晶の回転角θ1が-59°又は35°のとき、高音速基板1の水晶の回転角θ2を変化させたときの、共振特性又は温度特性の変化をシミュレーションした。比較例は、オイラー角(0°、θ2±90°、90°)で示される単層の水晶からなる高音速基板を圧電層として用いた共振子である。したがって、比較例における回転角θ2は、第3実施例における回転角θ1に相当する。比較例において、回転角θ2を変化させたときの、共振特性又は温度特性の変化をシミュレーションした。
【0052】
図17のグラフの横軸は高音速基板の回転角(Rotation angle of substrate)θ2を示し、縦軸はSAW音速(Phase velocity)(単位:m/s)を示している。θ2=-59°のときの比較例のSAW音速は3300m/s以下であるのに対して、第3実施例(θ1=-59°)のSAW音速は、-30°≦θ2≦90°の範囲で3400m/s以上に上昇した。
【0053】
図18のグラフの横軸は高音速基板の回転角(Rotation angle of substrate)θ2を示し、縦軸は電気機械結合係数(Coupling coefficient)(単位:%)を示している。θ2=-59°のときの比較例の電気機械結合係数は4.0%程度であるのに対して、第3実施例(θ1=-59°)の電気機械結合係数は、-30°≦θ2≦90°の範囲で4.5%以上に上昇し、特に-20°≦θ2≦80°の範囲では5.0%以上に上昇した。
【0054】
図19のグラフの横軸は高音速基板の回転角(Rotation angle of substrate)θ2を示し、縦軸はQ値(Q)を示している。θ2=-59°のときの比較例のQ値は1000以下であるのに対して、第3実施例(θ1=-59°)のQ値は、-30°≦θ2≦90°の範囲で2000以上に上昇した。特に、0°≦θ2≦60°の範囲ではQ値の上昇が大きく、第3実施例(θ1=-59°)のQ値は8500以上に上昇した。
【0055】
θ2=35°のときの比較例のQ値は8000以下であるのに対して、第3実施例(θ1=35°)のQ値は、20°≦θ2≦40°の範囲で8500程度に上昇した。すなわち、θ2=35°の場合であっても、少なくともQ値は向上する。
【0056】
図20のグラフの横軸は高音速基板の回転角(Rotation angle of substrate)θ2を示し、縦軸は1次周波数温度係数(1st TCF)を示している。
図21のグラフの横軸は高音速基板の回転角(Rotation angle of substrate)θ2を示し、縦軸は2次周波数温度係数(2nd TCF)を示している。
図22のグラフの横軸は高音速基板の回転角(Rotation angle of substrate)θ2を示し、縦軸は3次周波数温度係数(3rd TCF)を示している。
【0057】
θ2=-59°のときの比較例の3次周波数温度係数は80ppt/K3程度であるのに対して、第3実施例(θ1=-59°)の3次周波数温度係数の絶対値は、回転角θ2の全範囲において低減され、特に-40°≦θ2≦80°の範囲で40ppt/K3以下にまで低減された。θ2=35°のときの比較例の2次周波数温度係数は-50ppb/K2程度であるのに対して、第3実施例(θ1=35°)の2次周波数温度係数の絶対値は、20°≦θ2≦60°の範囲で40ppb/K2以下にまで低減され、特にθ2=60°で10ppb/K2程度にまで低減された。θ2=35°のときの比較例の3次周波数温度係数は-130ppt/K3程度であるのに対して、第3実施例(θ1=35°)の3次周波数温度係数の絶対値は、20°≦θ2≦60°の範囲で120ppt/K3以下にまで低減され、特にθ2=60°で100ppt/K3程度にまで低減された。
【0058】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。本発明の一態様によれば、共振子は、互いに対向する第1面及び第2面を有する圧電層と、圧電層の第1面の側に設けられたIDT電極と、圧電層の第2面の側に設けられた高音速基板と、を備え、圧電層は、結晶Y軸に直交する面を結晶X軸回りに回転させたカット角の水晶からなり、圧電層の結晶X軸に対して90°±10°となる伝搬方向において、高音速基板の音速は圧電層の音速よりも速く、IDT電極は、伝搬方向に並ぶ複数の電極指を有する櫛形電極を有する。
【0059】
これによれば、単層の圧電層からなる共振子に比べて、少なくとも3次周波数温度係数及びQ値に優れる共振子が提供される。さらに、圧電層の水晶の結晶Y軸に直交する面を結晶X軸回りに回転させる回転角を適宜選択することで、電気機械結合係数、SAW音速、1次周波数温度係数及び2次周波数温度係数のいずれかを改善することができる。
【0060】
本発明の一態様によれば、圧電層は、結晶Y軸に直交する面を、結晶X軸の正方向側から視て反時計回りに-59°±10°の範囲で回転させたカット角の水晶からなってもよい。
【0061】
これによれば、単層の圧電層からなる共振子に比べて、さらにSAW音速及び電気機械結合係数に優れる共振子が提供される。
【0062】
本発明の一態様によれば、圧電層は、結晶Y軸に直交する面を、結晶X軸の正方向側から視て反時計回りに35°±10°の範囲で回転させたカット角の水晶からなってもよい。
【0063】
本発明の一態様によれば、圧電層と高音速基板とは、直接積層されてもよい。
【0064】
本発明の一態様によれば、圧電層と高音速基板との間に設けられた低音速層をさらに有し、伝搬方向において、低音速層の音速は圧電層の音速以下であってもよい。
【0065】
本発明の一態様によれば、IDT電極の電極周期で定まる弾性波の波長をλとしたとき、低音速層の厚みは、0.1λ以上0.5λ以下の範囲に設定されてもよい。
【0066】
本発明の一態様によれば、低音速層の厚みは、高音速基板の厚みの100分の1以下であってもよい。
【0067】
本発明の一態様によれば、IDT電極の電極周期で定まる弾性波の波長をλとしたとき、圧電層の厚みは、0.05λ以上0.5λ以下の範囲に設定されてもよい。
【0068】
本発明の一態様によれば、圧電層の厚みは、高音速基板の厚みの100分の1以下であってもよい。
【0069】
本発明の一態様によれば、伝搬方向において、高音速基板の音速は、圧電層の音速に比べて20%以上速くてもよい。
【0070】
本発明の一態様によれば、伝搬方向において、高音速基板の音速は、圧電層の音速に比べて40%以上速くてもよい。
【0071】
本発明の一態様によれば、高音速基板は、シリコン、シリコン化合物及びアルミニウム化合物のいずれかからなってもよい。
【0072】
本発明の一態様によれば、高音速基板は、シリコンの単結晶からなってもよい。
【0073】
本発明の一態様によれば、高音速基板は、結晶Y軸に直交する面を、結晶X軸の正方向側から視て反時計回りに0°以上60°以下の範囲で回転させたカット角の水晶からなり、圧電層と高音速基板とは、互いの結晶X軸が平行となるように設けられてもよい。
【0074】
本発明の一態様によれば、IDT電極は、アルミニウムを主成分とする金属からなってもよい。
【0075】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、周波数温度特性又は共振特性に優れる共振子を提供することができる。
【0076】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。すなわち、実施形態及び/又は変形例に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、実施形態及び/又は変形例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、実施形態及び変形例は例示であり、異なる実施形態及び/又は変形例で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0077】
1…高音速基板、
3…低音速層、
5…圧電層、
7…IDT電極、
7b…電極指、
9…反射器、
10…共振子、
PD…伝搬方向、