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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】水晶共振子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20241114BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20241114BHJP
   H10N 30/06 20230101ALI20241114BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20241114BHJP
   H10N 30/05 20230101ALI20241114BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/19 F
H10N30/06
H10N30/87
H10N30/05
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023575048
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 JP2022030743
(87)【国際公開番号】W WO2023139819
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2022006230
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊雄
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/241435(WO,A1)
【文献】特表2021-527344(JP,A)
【文献】特開2013-051485(JP,A)
【文献】特開昭53-038284(JP,A)
【文献】特開平04-360309(JP,A)
【文献】特開2006-191330(JP,A)
【文献】国際公開第2010/047114(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0096825(US,A1)
【文献】特表2021-536721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145
H03H 9/19
H10N 30/06
H10N 30/87
H10N 30/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面に対向する第2主面を有する水晶基板と、
前記水晶基板の前記第1主面に設けられた第1櫛歯電極と、
前記水晶基板の前記第1主面に設けられた第2櫛歯電極と
を備え、
前記第1櫛歯電極及び前記第2櫛歯電極の各々は、互いに離間しつつ交互に配置された複数の電極指を有し、
前記第1櫛歯電極の前記複数の電極指は、第1電極指を有し、
前記第2櫛歯電極の前記複数の電極指は、前記第1電極指と隣接する第2電極指を有し、
前記第1電極指と前記第2電極指との電位差に応じて、前記第1電極指と前記第2電極指との間隙に重なる部分で厚みすべり振動が励振され、
前記第1電極指及び前記第2電極指が並ぶ方向において、前記第1電極指の幅をL1、前記第2電極指の幅をL2、前記第1電極指と前記第2電極指との間隔をP1としたとき、前記第1主面側のデューティ比(L1+L2)/(2×P1)は、0.15以上0.33以下、又は0.62以上0.82以下である、
水晶共振子。
【請求項2】
前記第1電極指の幅L1と前記第2電極指の幅L2とは等しい、
請求項1に記載の水晶共振子。
【請求項3】
前記第1主面及び前記第2主面は、前記厚みすべり振動により前記第1電極指及び前記第2電極指と平行な方向に変位し、
前記第1主面及び前記第2主面のうち少なくとも前記第2主面の側での変位は、前記第1電極指及び前記第2電極指が並ぶ方向における、前記間隙と重なる部分の中間領域で極大又は極小となる、
請求項に記載の水晶共振子。
【請求項4】
第1主面及び前記第1主面に対向する第2主面を有する水晶基板と、
前記水晶基板の前記第1主面に設けられた第1櫛歯電極と、
前記水晶基板の前記第1主面に設けられた第2櫛歯電極と
を備え、
前記第1櫛歯電極及び前記第2櫛歯電極の各々は、互いに離間しつつ交互に配置された複数の電極指を有し、
前記第1櫛歯電極の前記複数の電極指は、第1電極指を有し、
前記第2櫛歯電極の前記複数の電極指は、前記第1電極指と隣接する第2電極指を有し、
前記第1電極指と前記第2電極指との電位差に応じて、前記第1電極指と前記第2電極指との間隙に重なる部分で厚みすべり振動が励振され、
前記第1主面及び前記第2主面は、前記厚みすべり振動により前記第1電極指及び前記第2電極指と平行な方向に変位し、
前記第1主面及び前記第2主面のうち少なくとも前記第2主面の側での変位は、前記第1電極指及び前記第2電極指が並ぶ方向における、前記間隙と重なる部分の中間領域で極大又は極小となる、
水晶共振子。
【請求項5】
前記第1主面の側での変位は、前記第1電極指及び前記第2電極指が並ぶ方向における、前記間隙と重なる部分の前記中間領域で極大又は極小となる、
請求項3又は4に記載の水晶共振子。
【請求項6】
前記第1電極指及び前記第2電極指が並ぶ方向において、前記第1電極指の幅をL1、前記第2電極指の幅をL2、前記第1電極指と前記第2電極指との間隔をP1としたとき、前記第1主面側のデューティ比(L1+L2)/(2×P1)は、0.15以上0.3以下である、
請求項1又は4に記載の水晶共振子。
【請求項7】
前記第1主面側のデューティ比(L1+L2)/(2×P1)は、0.25±10%の範囲内である、
請求項6に記載の水晶共振子。
【請求項8】
前記水晶基板は、結晶軸のX軸を回転軸として結晶軸のX軸の正方向側から視て反時計回りの回転角を正としたとき、Yカット水晶板を35°±10°の回転角で回転させたカット角の水晶板である、
請求項1又は4に記載の水晶共振子。
【請求項9】
前記水晶基板は、結晶軸のX軸を回転軸として結晶軸のX軸の正方向側から視て反時計回りの回転角を正としたとき、Yカット水晶板を-59°±10°の回転角で回転させたカット角の水晶板である、
請求項1又は4に記載の水晶共振子。
【請求項10】
前記水晶基板の前記第2主面に設けられた第3櫛歯電極と、
前記水晶基板の前記第2主面に設けられた第4櫛歯電極と
をさらに備え、
前記第3櫛歯電極及び前記第4櫛歯電極の各々は、前記第1電極指及び前記第2電極指が並ぶ方向において、互いに離間しつつ交互に配置された複数の電極指を有し、
前記第3櫛歯電極の前記複数の電極指は、第3電極指を有し、
前記第4櫛歯電極の前記複数の電極指は、前記第3電極指と隣接する第4電極指を有し、
前記第2主面を平面視したとき、前記第3電極指は、前記第1電極指と前記第1主面において隣接する2本の電極指の間に設けられ、
前記第2主面を平面視したとき、前記第4電極指は、前記第2電極指と前記第1主面において隣接する2本の電極指の間に設けられ、
前記第3電極指と前記第1電極指との電位差は、前記第3電極指と前記第2電極指との電位差よりも小さく、
前記第4電極指と前記第2電極指との電位差は、前記第4電極指と前記第1電極指との電位差よりも小さい、
請求項1又は4に記載の水晶共振子。
【請求項11】
前記第2主面を平面視したとき、前記第3電極指及び前記第4電極指が並ぶ方向において、前記第3電極指の中心軸と前記第1電極指の中心軸との距離は、0よりも大きく、前記第3電極指の中心軸と前記第2電極指の中心軸との距離よりも小さい、
請求項10に記載の水晶共振子。
【請求項12】
前記水晶基板は、結晶軸のX軸を回転軸としてYカット水晶板を回転させた回転Yカット水晶板であり
前記第2主面が前記第1主面に対して結晶軸のY軸の負方向側に位置するとき、前記第3電極指の中心軸は、前記第1電極指の中心軸に対して、前記第2主面に投影した結晶軸のY軸の正方向側に位置する、
請求項11に記載の水晶共振子。
【請求項13】
前記第1電極指、前記第2電極指、前記第3電極指及び前記第4電極指は、前記水晶基板の歪が最大歪の10%以下となる領域に設けられる、
請求項11に記載の水晶共振子。
【請求項14】
前記第1電極指及び前記第2電極指が並ぶ方向において、前記第1電極指の幅をL1、前記第2電極指の幅をL2、前記第1電極指と前記第2電極指との間隔をP1とし、
前記第3電極指及び前記第4電極指が並ぶ方向において、前記第3電極指の幅をL3、前記第4電極指の幅をL4、前記第3電極指と前記第4電極指との間隔をP2としたとき、
前記第2主面側のデューティ比(L3+L4)/(2×P2)は、前記第1主面側のデューティ比(L1+L2)/(2×P1)の±10%の範囲内である、
請求項10に記載の水晶共振子。
【請求項15】
前記水晶基板の厚さをTq、前記第1電極指の厚さをTe1、前記第2電極指の厚さをTe2としたとき、
前記第1電極指の膜厚比Te1/Tqは0.05以上であり、
前記第2電極指の膜厚比Te2/Tqは0.05以上である、
請求項1又は4に記載の水晶共振子。
【請求項16】
前記第1電極指の厚さ比Te1/Tqは0.2以上であり、
前記第2電極指の厚さ比Te2/Tqは0.2以上である、
請求項15に記載の水晶共振子。
【請求項17】
前記第1電極指の厚さ比Te1/Tqは0.5以下であり、
前記第2電極指の厚さ比Te2/Tqは0.5以下である、
請求項15に記載の水晶共振子。
【請求項18】
前記第1櫛歯電極及び前記第2櫛歯電極は、アルミニウムを90%以上含む、
請求項1又は4に記載の水晶共振子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶共振子に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信端末、通信基地局、家電などの各種電子機器において、タイミングデバイス、センサ又は発振器等の用途に、共振子を備えた共振装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧電基板と、複数の電極指を有する第1の櫛歯電極と、複数の電極指を有する第2の櫛歯電極とを備える弾性波デバイスが開示されている。特許文献1に記載の弾性波デバイスにおいて、第1及び第2の櫛歯電極は圧電基板の一面側に設けられ、第1及び第2の櫛歯電極のそれぞれの電極指は、圧電基板の電極に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって互いに誘起電荷の極性が異なる位置に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-51485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の弾性波デバイスにおいては、圧電基板の変位が極大又は極小となる位置に電極指が設けられるため、電極指の物性や寸法が品質係数(Q)や電気機械結合係数(k)等の各特性へ与える影響が大きい。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、特性の向上を図ることができる水晶共振子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る水晶共振子は、第1主面及び第1主面に対向する第2主面を有する水晶基板と、水晶基板の第1主面に設けられた第1櫛歯電極と、水晶基板の第1主面に設けられた第2櫛歯電極とを備え、第1櫛歯電極及び第2櫛歯電極の各々は、互いに離間しつつ交互に配置された複数の電極指を有し、第1櫛歯電極の複数の電極指は、第1電極指を有し、第2櫛歯電極の複数の電極指は、第1電極指と隣接する第2電極指を有し、第1電極指と第2電極指との電位差に応じて、第1電極指と第2電極指との間隙に重なる部分で厚みすべり振動が励振され、第1電極指及び第2電極指が並ぶ方向において、第1電極指の幅をL1、第2電極指の幅をL2、第1電極指と第2電極指との間隔をP1としたとき、第1主面側のデューティ比(L1+L2)/(2×P1)は、0.15以上0.33以下、又は0.62以上0.82以下である。
【0008】
本発明の他の一態様に係る水晶共振子は、第1主面及び第1主面に対向する第2主面を有する水晶基板と、水晶基板の第1主面に設けられた第1櫛歯電極と、水晶基板の第1主面に設けられた第2櫛歯電極とを備え、第1櫛歯電極及び第2櫛歯電極の各々は、互いに離間しつつ交互に配置された複数の電極指を有し、第1櫛歯電極の複数の電極指は、第1電極指を有し、第2櫛歯電極の複数の電極指は、第1電極指と隣接する第2電極指を有し、第1電極指と第2電極指との電位差に応じて、第1電極指と第2電極指との間隙に重なる部分で厚みすべり振動が励振され、第1主面及び第2主面は、厚みすべり振動により第1電極指及び第2電極指と平行な方向に変位し、第1主面及び第2主面のうち少なくとも第2主面の側での変位は、第1電極指及び第2電極指が並ぶ方向における、間隙と重なる部分の中間領域で極大又は極小となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特性の向上を図ることができる水晶共振子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る水晶共振子の構成を概略的に示す平面図である。
図2】第1実施形態に係る水晶共振子の構成を概略的に示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る水晶基板の結晶軸方向を説明する図である。
図4】第1実施形態に係る振動モードを示す斜視図である。
図5】第1実施形態に係る変位及び歪エネルギー密度を示す断面図である。
図6】第2実施形態に係る水晶共振子の構成を概略的に示す平面図である。
図7】第2実施形態に係る水晶共振子の構成を概略的に示す断面図である。
図8】第2実施形態に係る変位及び歪エネルギー密度を示す断面図である。
図9】第3実施形態に係る水晶共振子の構成を概略的に示す平面図である。
図10】比較の水晶共振子の構成を概略的に示す平面図である。
図11A】カット角、デューティ比及び特性の関係を示す図である。
図11B】オフセット比と歪エネルギー密度の関係を示す図である。
図12】デューティ比、電極の膜厚比及び特性の関係を示す図である。
図13】電極配置、電極の膜厚比及び特性の関係を示す図である。
図14】周波数温度特性を示す図である。
図15A】カット角、オフセット比及び電気機械結合係数の関係を示す図である。
図15B】α=+35°の第2実施形態における、オフセット比F/P=-0.1、0、+0.1のそれぞれの場合の歪エネルギー密度示す断面図である。
図16】圧電基板の材質、電極の膜厚比及び特性の関係を示す図である。
図17A】圧電基板の材質、デューティ比及び特性の関係を示す図である。
図17B】圧電基板の材質、デューティ比及び特性の関係を示す図である。
図18A】振動モード、デューティ比及び特性の関係を示す図である。
図18B】振動モード、デューティ比及び特性の関係を示す図である。
図19A】電極の材質、電極の膜厚比及び特性の関係を示す図である。
図19B】電極の材質、電極の膜厚比及び特性の関係を示す図である。
図20A】電極の材質、電極の膜厚比及び特性の関係を示す図である。
図20B】電極の材質、電極の膜厚比及び特性の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0012】
<第1実施形態>
まず、図1図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る水晶共振子1の概略構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る水晶共振子の構成を概略的に示す平面図である。図2は、第1実施形態に係る水晶共振子の構成を概略的に示す断面図である。図3は、第1実施形態に係る水晶基板の結晶軸方向を説明する図である。
【0013】
水晶共振子1は、圧電効果により電気エネルギーと機械エネルギーとを変換可能な電気機械エネルギー変換素子である。水晶共振子1は、水晶基板10と、一対の励振電極を構成する第1櫛歯電極(Inter Digital Transducer)IDT1及び第2櫛歯電極IDT2と、一対の引出電極を構成する第1引出電極11C及び第2引出電極12Cと、一対の接続電極を構成する第1接続電極11D及び第2接続電極12Dとを備えている。
【0014】
水晶基板10は、X軸(電気軸)、Y軸(機械軸)及びZ軸(光軸)からなる結晶軸によってカット角が特定される水晶結晶によって設けられている。図3に示すように、水晶基板10は、Y軸に直交する面をX軸回りに回転角αで回転させたカット角の水晶結晶、いわゆる回転Yカット水晶板である。ここで、回転角αは、X軸の正方向側から(図3の紙面の手前側から奥を)視て反時計回りを正(+)、時計回りを負(-)とする。一例として、水晶基板10はATカットであり、α=+35°±10°である。また、別の一例として、水晶基板10はBTカットであり、α=-40°±10°である。
【0015】
図2に示すように、水晶基板10は、X軸と、Z軸をX軸回りに回転角αで回転させたZ’軸とによって特定される第1主面10A及び第2主面10Bを有している。第1主面10Aは、第2主面10Bに対して、Y軸をX軸回りに回転角αで回転させたY’軸の正方向側に位置する。第1主面10A及び第2主面10Bは、水晶基板10の互いに対向する一対の主面に相当する。また、水晶基板10は、Y’軸方向の厚さを有する。水晶基板10は例えば平板状であり、後述する第1電極指11とY’軸方向で重なる部分の厚さTq1と、後述する第2電極指12とY’軸方向で重なる部分の厚さTq2とが略等しい(Tq1=Tq2=Tq)。一例として、厚さTq1は後述する第1電極指11の中心軸とY’軸方向で重なる位置における水晶基板10のY’軸方向の寸法であり、厚さTq2は後述する第2電極指12の中心軸とY’軸方向で重なる位置における水晶基板10のY’軸方向の寸法である。なお、厚さTq1及び厚さTq2の大小関係は上記に限定されるものではなく、厚さTq1及び厚さTq2は互いに異なってもよい。例えば、厚さTq1と厚さTq2の差は、厚さTq1及び厚さTq2のうち大きい方の0.1%程度であっても良い。
【0016】
水晶基板10の第1主面10Aを平面視したとき、水晶基板10は、中央部17と、中央部17の周辺に設けられた周辺部18とを有している。中央部17は矩形状に設けられている。周辺部18は、中央部17を囲む枠状に設けられている。周辺部18は、中央部17に対して、Z’軸の正方向側に設けられた枠体18Aと、Z’軸の負方向側に設けられた枠体18Bと、X軸の正方向側に設けられた枠体18Cと、X軸の負方向側に設けられた枠体18Dとを有している。枠体18Aは、枠体18CのZ’軸の正方向側の端部と、枠体18DのZ’軸の正方向側の端部とを接続している。枠体18Bは、枠体18CのZ’軸の負方向側の端部と、枠体18DのZ’軸の負方向側の端部とを接続している。
【0017】
中央部17と枠体18Aとの間には貫通孔19Aが形成され、中央部17と枠体18Bとの間には貫通孔19Bが形成され、中央部17と枠体18Cとの間には貫通孔19Cが形成され、中央部17と枠体18Dとの間には貫通孔19Dが形成されている。貫通孔19A~19Dは、水晶基板10をY’軸方向に貫通する貫通孔である。貫通孔19A,19BはX軸方向に延在するスリット状に形成され、貫通孔19C及び貫通孔19DはZ’軸方向に延在するスリット状に形成されている。貫通孔19Aは、貫通孔19C及び貫通孔19DのZ’軸の正方向側の端部を接続し、貫通孔19A、貫通孔19C及び貫通孔19DはU字状を成している。貫通孔19Bは、貫通孔19C及び貫通孔19Dから離間している。
【0018】
第1櫛歯電極IDT1及び第2櫛歯電極IDT2は、中央部17に設けられている。第1櫛歯電極IDT1は、複数の電極指11Aと、バスバー11Bとを有している。複数の電極指11Aは、それぞれがX軸方向に延在し、Z’軸方向に等間隔で並んでいる。複数の電極指11Aは互いに略等しい形状及び寸法である。バスバー11Bは、複数の電極指11AのそれぞれのX軸の正方向側の端部に接続し、複数の電極指11Aを電気的に接続している。第2櫛歯電極IDT2は、複数の電極指12Aと、バスバー12Bとを有している。複数の電極指12Aは、それぞれがX軸方向に延在し、Z’軸方向に等間隔で並んでいる。複数の電極指12Aは互いに略等しい形状及び寸法である。バスバー12Bは、複数の電極指12AのそれぞれのX軸の負方向側の端部に接続し、複数の電極指12Aを電気的に接続している。
【0019】
複数の電極指11Aと複数の電極指12Aとは、Z’軸方向において互いに離間しつつ交互に配置されている。複数の電極指11Aは、第1電極指11を有する。複数の電極指12Aは、第1電極指11と隣接する第2電極指12を有する。第2電極指12は、第1電極指11に対してZ’軸の負方向側に位置している。第1電極指11の形状及び寸法は、例えば第2電極指12の形状及び寸法と略等しい。但し、第1電極指11と第2電極指12とは互いに異なる形状又は寸法であってもよい。
【0020】
図2に示すように、第1電極指11と第2電極指12との間隔をピッチP1とする。ピッチP1は、第1電極指11及び第2電極指12のそれぞれのY’Z’断面における中心を通りX軸方向に延在する中心軸(以下、単に「中心軸」とする。)間のZ’軸方向における距離である。
【0021】
第1電極指11のZ’軸方向における寸法を幅L1とし、第2電極指12のZ’軸方向における寸法を幅L2とする。幅L1は、例えば第1電極指11の中心軸を通るZ’軸方向の寸法であるが、それ以外の位置での寸法でもよい。例えば、第1電極指11の水晶基板10と対向する底面におけるZ’軸方向の寸法、又は当該底面とは反対側の天面におけるZ’軸方向の寸法であってもよい。第1電極指11がX軸方向に一様な幅で設けられていない場合、第1電極指11の幅L1は、例えばZ’軸方向の寸法の平均値としてもよく、Z’軸方向の寸法の最大値としてもよい。幅L2も同様である。図2に示した例では、幅L1と幅L2とは略等しい(L1=L2=L)。ピッチP1=Pとしたとき、第1主面10A側の電極指のデューティ比Dyty1は、Dyty1=(L1+L2)/(2×P1)=L/Pと表される。なお、幅L1及び幅L2の大小関係は上記に限定されるものではなく、幅L1及び幅L2は互いに異なってもよい。例えば、幅L1と幅L2との差は、幅L1と幅L2のうち大きい方の20%程度であっても良い。
【0022】
第1電極指11のY’軸方向における寸法を厚さTe1とし、第2電極指12のY’軸方向における寸法を厚さTe2とする。厚さTe1は、例えば第1電極指11の中心軸を通るY’軸方向の寸法である。第1電極指11がX軸方向に一様な厚さで設けられていない場合、第1電極指11の厚さTe1は、例えばY’軸方向の寸法の平均値としてもよく、Y’軸方向の寸法の最大値としてもよい。厚さTe2も同様である。図2に示した例では、厚さTe1と厚さTe2とは略等しい(Te1=Te2=Te)。なお、厚さTe1及び厚さTe2の大小関係は上記に限定されるものではなく、厚さTe1及び厚さTe2は互いに異なってもよい。例えば、厚さTe1と厚さTe2との差は、厚さTe1及び厚さTe2のうち大きい方の10%程度であっても良い。
【0023】
第1引出電極11C及び第2引出電極12Cは、中央部17から周辺部18に亘って設けられている。第1引出電極11C及び第2引出電極12Cは、水晶基板10の第1主面10Aに設けられている。第1引出電極11Cは貫通孔19Bと貫通孔19Cとの間を通り、第2引出電極12Cは貫通孔19Bと貫通孔19Dとの間を通っている。第1引出電極11Cは、中央部において第1櫛歯電極IDT1に接続され、周辺部18において第1接続電極11Dに接続されている。第2引出電極12Cは、中央部において第2櫛歯電極IDT2に接続され、周辺部18において第2接続電極12Dに接続されている。
【0024】
第1接続電極11D及び第2接続電極12Dは、周辺部18の枠体18Bに設けられている。第1接続電極11D及び第2接続電極12Dは、水晶基板10の第1主面10Aに設けられている。第1接続電極11Dは、第2接続電極12Dに対してX軸の正方向側に位置している。第1接続電極11Dは、第1引出電極11Cを介して第1櫛歯電極IDT1に電気的に接続されている。第2接続電極12Dは、第2引出電極12Cを介して第2櫛歯電極IDT2に電気的に接続されている。
【0025】
第1櫛歯電極IDT1の複数の電極指11A及びバスバー11B、並びに第1引出電極11C及び第1接続電極11Dは、連続しており一体的に形成されている。第2櫛歯電極IDT2の複数の電極指12A及びバスバー12B、並びに第2引出電極12C及び第2接続電極12Dも同様である。これら水晶共振子1の電極は、例えばアルミニウム(Al)又はこれを主成分とする合金によって設けられる。このとき、水晶共振子1の電極には、アルミニウムが90%以上含まれることが望ましい。なお、水晶共振子1の電極の材質は上記に限定されるものではない。水晶共振子1の電極は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、プラチナ(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、タングステン(W)又はこれらの金属のいずれかを主成分とする合金によって設けられてもよい。水晶共振子1の電極は、例えば単層膜であるが、多層膜であってもよい。
【0026】
次に、図4及び図5を参照しつつ、第1実施形態に係る水晶共振子1における振動モードについて説明する。図4は、第1実施形態に係る振動モードを示す斜視図である。図5は、第1実施形態に係る変位及び歪エネルギー密度を示す断面図である。図4は第1主面10AにおけるX軸方向への変位を示している。図5の上段に示す断面図は、Y’Z’面におけるX軸方向への変位の大きさを示している。図5の下段に示す断面図は、Y’Z’面における歪エネルギー密度の大きさを示している。
【0027】
水晶共振子1の主要振動は、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)である。第1電極指11と第2電極指12との電位差に応じて、第1電極指11と第2電極指12との間隙とY’軸方向で重なる部分で厚みすべり振動が励振される。当該厚みすべり振動によって、水晶基板10の第1主面10A及び第2主面10Bは、第1電極指11及び第2電極指12が延在する方向であるX軸方向において、互いに逆方向に変位する。
【0028】
第1主面10A及び第2主面10Bのうち少なくとも第2主面10Bの側での変位は、第1電極指11及び第2電極指12が並ぶ方向であるZ’軸方向における、第1電極指11と第2電極指12との間隙とY’軸方向で重なる部分の中間領域で極大又は極小となる。例えば図5に示すように、第1主面10A側での変位が第1電極指11と第2電極指12との間隙とY’軸方向で重なる部分の中間領域において極小となるとき、第2主面10B側での変位は当該中間領域において極大となる。ここで、本明細書において基板の変位が極大となるとはX軸に沿った或る方向への変位の絶対値が局所的に見たとき最大となることを意味し、基板の変位が極小となるとはX軸に沿った逆方向への変位の絶対値が局所的に見たとき最大となることを意味する。例えば、X軸正方向側への振幅が局所的に最大となることを極大といい、X軸負方向側への振幅が局所的に最大となることを極小という。
【0029】
歪エネルギー密度は、第1電極指11と第2電極指12との間隙とY’軸方向で重なる部分の中間領域であって、Y’軸方向の中間領域で最大となっている。歪エネルギー密度は、第1電極指11及び第2電極指12とY’軸方向で重なる部分では略0となっている。歪エネルギー密度の高い領域は、第1主面10Aから第2主面10Bに向かうにつれて、Z’軸の負方向側に偏っている。
【0030】
以下に、本発明の他の実施形態に係る水晶共振子の構成について説明する。なお、下記の実施形態では、上記の第1実施形態と共通の事柄については記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については逐次言及しない。
【0031】
<第2実施形態>
次に、図6及び図7を参照しつつ、第2実施形態に係る水晶共振子2の構成について説明する。図6は、第2実施形態に係る水晶共振子の構成を概略的に示す平面図である。図7は、第2実施形態に係る水晶共振子の構成を概略的に示す断面図である。
【0032】
水晶共振子2は、一対の励振電極を構成する第3櫛歯電極IDT3及び第4櫛歯電極IDT4と、一対の引出電極を構成する第3引出電極13C及び第4引出電極14Cと、一対の接続電極を構成する第3接続電極13D及び第4接続電極14Dとをさらに備えている。第3櫛歯電極IDT3及び第4櫛歯電極IDT4、第3引出電極13C及び第4引出電極14C、並びに第3接続電極13D及び第4接続電極14Dは、水晶基板10の第2主面10Bに設けられている。
【0033】
第3櫛歯電極IDT3は、複数の電極指13Aと、複数の電極指13Aを接続するバスバー13Bとを有している。複数の電極指13Aは、第1櫛歯電極IDT1の複数の電極指11Aに沿って設けられている。第4櫛歯電極IDT4は、複数の電極指14Aと、複数の電極指14Aを接続するバスバー14Bとを有している。複数の電極指14Aは、第2櫛歯電極IDT2の複数の電極指12Aに沿って設けられている。第1主面10Aを平面視したとき、第3櫛歯電極IDT3のバスバー13Bは第1櫛歯電極IDT1のバスバー11Bに重なり、第3引出電極13Cは第1引出電極11Cと重なり、第3接続電極13Dは第1接続電極11Dと重なっている。第3接続電極13Dは第1接続電極11Dとは、貫通電極CH1を介して電気的に接続されている。同様に、第4櫛歯電極IDT4のバスバー14Bは第2櫛歯電極IDT2のバスバー12Bに重なり、第4引出電極14Cは第2引出電極12Cと重なり、第4接続電極14Dは第2接続電極12Dと重なっている。第4接続電極14Dは第2接続電極12Dとは、貫通電極CH2を介して電気的に接続されている。
【0034】
複数の電極指13A及び複数の電極指14Aの各々は、Z’軸方向において互いに離間しつつ交互に配置されている。複数の電極指13Aは、第3電極指13を有する。複数の電極指14Aは、第3電極指13と隣接する第4電極指14を有する。第4電極指14は、第3電極指13に対してZ’軸の負方向側に位置している。第3電極指13の形状及び寸法は、例えば第4電極指14の形状及び寸法と略等しい。但し、第3電極指13と第4電極指14とは互いに異なる形状又は寸法であってもよい。
【0035】
第2主面10Bを平面視したとき、第3電極指13は、第1電極指11と第1主面10Aにおいて隣接する2本の電極指12Aの間に設けられる。第3電極指13と第1電極指11との電位差は、第3電極指13と第2電極指12との電位差よりも小さい。第4電極指14は、第2電極指12と第1主面10Aにおいて隣接する2本の電極指11Aの間に設けられる。第4電極指14と第2電極指12との電位差は、第4電極指14と第1電極指11との電位差よりも小さい。なお、図6に示した例において複数の電極指13Aと複数の電極指11Aとが電気的に接続されていることから分かるように、上記の「第3電極指13と第1電極指11との電位差」は0を含むものである。同様に、上記の「第4電極指14と第2電極指12との電位差」は0を含むものである。
【0036】
図7に示すように、ピッチP1と同様、第3電極指13と第4電極指14との間隔をピッチP2とする。ピッチP2とピッチP1とは略等しい(P2=P1=P)。なお、ピッチP1及びピッチP2の大小関係は上記に限定されるものではなく、ピッチP1及びピッチP2は互いに異なってもよい。
【0037】
図7に示すように、幅L1,L2と同様、第3電極指13のZ’軸方向における寸法を幅L3とし、第4電極指14のZ’軸方向における寸法を幅L4とする。図7に示した例では、幅L3と幅L1とは略等しく(L3=L1)、幅L4は幅L2と略等しい(L4=L2)。幅L1、幅L2、幅L3及び幅L4は互いに略等しい(L1=L2=L3=L4=L)。なお、幅L1、幅L2、幅L3及び幅L4の大小関係は上記に限定されるものではなく、幅L3及び幅L1は互いに異なってもよく、幅L4及び幅L2は互いに異なってもよい。
【0038】
第1主面10A側のデューティ比はDuty1=(L1+L2)/(2×P1)と表され、第2主面10B側のデューティ比はDuty2=(L3+L4)/(2×P2)と表される。P1=P2=P且つL1=L2=L3=L4=Lの場合、第1主面10A側も第2主面10B側も同じデューティ比となり、Duty=Duty1=Dyty2=L/Pと表される。デューティ比Duty1とデューティ比Duty2とが異なる場合、変位や歪のバランス悪化を抑制する観点から、デューティ比Duty2はデューティ比Duty1の±10%の範囲内であることが望ましい。
【0039】
図7に示すように、厚さTe1及び厚さTe2と同様、第3電極指13のY’軸方向における寸法を厚さTe3とし、第4電極指14のY’軸方向における寸法を厚さTe4とする。図7に示した例では、厚さTe3と厚さTe1とは略等しく(Te3=Te1)、厚さTe4と厚さTe2とは略等しく(Te4=Te2)。厚さTe1、厚さTe2、厚さTe3及び厚さTe4は互いに略等しい(Te1=Te2=Te3=Te4=Te)。なお、厚さTe1、厚さTe2、厚さTe3及び厚さTe4の大小関係は上記に限定されるものではなく、厚さTe3及び厚さTe1は互いに異なってもよく、厚さTe4及び厚さTe2は互いに異なってもよい。
【0040】
図7に示すように、第1電極指11に対する第3電極指13のZ’軸方向における位置差をオフセットF1とする。オフセットF1は、第1電極指11及び第3電極指13のそれぞれの中心軸間のZ’軸方向における距離である。オフセットF1は、Z’軸の負方向側を正とする。同様に、第2電極指12に対する第4電極指14のZ’軸方向における位置差をオフセットF2とする。例えば、オフセットF1とオフセットF2とは略等しい(F1=F2=F)。なお、オフセットF1及びオフセットF2の大小関係は上記に限定されるものではなく、オフセットF1及びオフセットF2は互いに異なってもよい。
【0041】
図6及び図7に示した例において、第2主面10Bを平面視したとき、第3電極指13及び第4電極指14が並ぶZ’軸方向において、第3電極指13の中心軸と第1電極指11の中心軸との距離は、0よりも大きく、第3電極指13の中心軸と第2電極指12の中心軸との距離よりも小さい。すなわち、オフセットF1の絶対値が0よりも大きく、ピッチP1とオフセットF1の絶対値との差分よりも小さい。不等式で表すと0<|F1|<P1-|F1|となり、|F1|<(P1)/2という関係が成り立つ。なお、第1電極指11及び第3電極指13の位置関係は上記に限定されるものではなく、オフセットF1が0でもよい。すなわち、第2主面10Bを平面視したときに第3電極指13の中心軸が第1電極指11の中心軸に重なってもよい。
【0042】
次に、図8を参照しつつ、第2実施形態に係る水晶共振子2における振動モードについて説明する。図8の上段に示す断面図は、Y’Z’面におけるX軸方向への変位の大きさを示している。図5の下段に示す断面図は、Y’Z’面における歪エネルギー密度の大きさを示している。
【0043】
第3電極指13と第4電極指14との電位差に応じて、第3電極指13と第4電極指14との間隙とY’軸方向で重なる部分で厚みすべり振動が励振される。第1主面10A側での変位は第1電極指11と第2電極指12との間隙とY’軸方向で重なる部分の中間領域において極大又は極小となり、第2主面10B側での変位は第3電極指13と第4電極指14との間隙とY’軸方向で重なる部分の中間領域で極小又は極大となる。例えば図8に示すように、第1主面10A側での変位が第1電極指11と第2電極指12との間隙とY’軸方向で重なる部分の中間領域において極小となるとき、第2主面10B側での変位が第3電極指13と第4電極指14との間隙とY’軸方向で重なる部分の中間領域において極大となる。第2主面10Bを平面視したとき、第2主面10Bにおいて変位極大又は極小となる位置は、第1主面10Aにおいて変位極小又は極大となる位置から、オフセットF1の分ずれている。
【0044】
第1電極指11と第2電極指12との間隙(第1主面10A側の間隙)と、第3電極指13と第4電極指14との間隙(第2主面10B側の間隙)とを繋ぐ部分であって、Z’軸方向の中間領域且つY’軸方向の中間領域で、歪エネルギー密度は最大となっている。第2電極指12と第4電極指14とを繋ぐ部分では、歪エネルギー密度が略0となっている。
【0045】
<第3実施形態>
次に、図9を参照しつつ、第3実施形態に係る水晶共振子3の構成について説明する。図9は、第3実施形態に係る水晶共振子の構成を概略的に示す平面図である。
【0046】
水晶基板30には、貫通孔39A,39B,39C1,39C2,39D1及び39D2が形成されている。貫通孔39C1及び貫通孔39C2は、中央部17と枠体38Cとの間においてZ’軸方向に延在するスリット状に設けられ、Z’軸方向に間隔を空けて並んでいる。貫通孔39C1は、貫通孔39C2に対してZ’軸正方向側に位置し、貫通孔39AのX軸正方向側の端部に接続している。貫通孔39C2は貫通孔39BのX軸正方向側の端部に接続している。貫通孔39D1及び貫通孔39D2は、中央部17と枠体38Dとの間においてZ’軸方向に延在するスリット状に設けられ、Z’軸方向に間隔を空けて並んでいる。貫通孔39D1は、貫通孔39D2に対してZ’軸正方向側に位置し、貫通孔39BのX軸負方向側の端部に接続している。貫通孔39D2は貫通孔39BのX軸負方向側の端部に接続している。貫通孔39A、貫通孔39C1及び貫通孔39D1はU字状を成しており、貫通孔39B、貫通孔39C2及び貫通孔39D2はU字状を成している。
【0047】
第1引出電極31Cは、貫通孔39C1と貫通孔39C2との間を通り、枠体38C上を延在して第1櫛歯電極IDT1と第1接続電極11Dとを電気的にしている。第2引出電極32Cは、貫通孔39D1と貫通孔39D2との間を通り、枠体38D上を延在して第2櫛歯電極IDT2と第2接続電極12Dとを電気的にしている。
【0048】
<比較構成>
次に、図10を参照しつつ、比較の水晶共振子9の構成について説明する。図10は、比較の水晶共振子の構成を概略的に示す平面図である。
【0049】
水晶共振子9は、一対の励振電極として、第1励振電極91A及び第2励振電極92Aを備えている。第1励振電極91Aは水晶基板10の第1主面10Aに設けられ、第2励振電極92Aは第2主面10Bに設けられている。第1励振電極91A及び第2励振電極92Aは中央部17に設けられ、Y’軸方向において互いに対向している。第1引出電極91Cは、第2主面10Bに設けられ、貫通電極CH1を介して第1接続電極11Dに電気的に接続されている。
【0050】
<評価>
次に、図11図20を参照しつつ、本発明の一実施形態による特性向上について説明する。
【0051】
図11A及び図11Bは、水晶基板がATカット(α=+35°)の場合と、BTカット(α=-40°)の場合とで、デューティ比と各特性との関係を示すグラフを並べて表示している。図11Aは上から順に評価条件及び電気機械結合係数kを示し、図11Bは上から順に品質係数Q及び音速Vを示している。図11A及び図11Bにおける、カット角以外の評価条件は、下記の通りである。
電極配置:第1実施形態
水晶基板の厚さTq=1μm
電極の厚さTe=0.2μm
ピッチP=4μm
デューティ比Duty=変数(グラフ横軸)
電極指の材質:Al
【0052】
ATカットの水晶基板の場合、デューティ比Dutyが0.15以上0.33以下、又は0.62以上0.82以下であれば、電気機械結合係数kは3.8%以上となる。デューティ比Dutyが0.10以上0.30以下であれば、品質係数Qは8000以上となり、音速Vは3500m/s以上となる。したがって、デューティ比Dutyが0.15以上0.30以下であれば、電気機械結合係数k、品質係数Q及び音速Vのいずれも高い水晶共振子を提供することができる。水晶共振子の製造工程における公差を考慮すると、デューティ比Dutyが0.25±10%の範囲内であることが望ましい。これによれば、より確実に電気機械結合係数k、品質係数Q及び音速Vのいずれも高い水晶共振子を提供することができる。
【0053】
BTカットの水晶基板の場合、デューティ比Dutyが0.10以上0.33以下であれば、電気機械結合係数kは3.6%以上となり、品質係数Qは6100以上となり、音速は4900m/s以上となる。したがって、デューティ比Dutyが0.10以上0.33以下であれば、電気機械結合係数k、品質係数Q及び音速Vのいずれも高い水晶共振子を提供することができる。水晶共振子の製造工程における公差を考慮すると、デューティ比Dutyが0.25±10%の範囲内であることが望ましい。これによれば、より確実に電気機械結合係数k、品質係数Q及び音速Vのいずれも高い水晶共振子を提供することができる。
【0054】
図12は、デューティ比Duty=0.2の場合と、デューティ比Duty=0.8の場合とで、水晶基板の厚さに対する電極指の厚さの比率(以下、「電極膜厚比」とする。)Te/Tqと音速Vとの関係、及び電極膜厚比Te/Tqと品質係数Qとの関係を示すグラフを並べて表示している。上から順に、音速V及び品質係数Qを示している。図12における、デューティ比以外の評価条件は、下記の通りである。
電極配置:第1実施形態
カット角:ATカット(α=+35°)
水晶基板の厚さTq=1μm
電極の厚さTe=変数
ピッチP=4μm
電極指の材質:Al
【0055】
Duty=0.2の場合、電極膜厚比Te/Tqが大きくなっても、音速V及び品質係数Qは殆ど低下しなかった。一方、デューティ比Duty=0.8の場合、電極膜厚比Te/Tqが大きくなると、デューティ比Duty=0.2の場合に比べて音速V及び品質係数Qが大きく低下した。したがって、水晶基板の厚さを小さくしたときに音速V及び品質係数Qの低下を抑制することができる点から、デューティ比Dutyは、0.62以上0.82以下であるよりも、0.15以上0.33であることのほうが望ましい。水晶基板の厚さは周波数に反比例するので、デューティ比Dutyが0.15以上0.33以下である水晶共振子は、高周波化に向いている。
【0056】
図13は、電極配置が第1実施形態の場合と、電極配置が第2実施形態の場合と、電極配置が比較構成の場合とで、電極膜厚比Te/Tqと音速Vとの関係、及び電極膜厚比Te/Tqと品質係数Qとの関係を示すグラフを並べて表示している。上から順に、音速V及び品質係数Qを示している。図13における、電極配置以外の評価条件は、下記の通りである。
カット角:ATカット(α=+35°)
水晶基板の厚さTq=1μm
電極の厚さTe=変数
ピッチP=4μm(第1実施形態及び第2実施形態の電極配置)
デューティ比Duty=0.2(第1実施形態及び第2実施形態の電極配置)
電極指の材質:Al
【0057】
比較構成の電極配置の場合、電極膜厚比Te/Tqが0.05以上0.5以下の範囲で大きくなると、音速V及び品質係数Qは大きく低下した。一方で、第1実施形態の電極配置の場合、電極膜厚比Te/Tqが0.05以上0.5以下の範囲で大きくなっても、音速V及び品質係数Qは殆ど低下しなかった。第2実施形態の電極配置の場合、電極膜厚比Te/Tqが0.05以上0.5以下の範囲で大きくなっても、品質係数Qは殆ど低下しなかった。電極膜厚比Te/Tqが0.05以上0.5以下の範囲において、第2実施形態の電極配置の場合の音速Vは、比較構成の電極配置の場合の音速Vよりも大きい。電極膜厚比Te/Tqが0.2以上0.5以下の範囲において、第1実施形態及び第2実施形態の電極配置の場合の品質係数Qは、比較構成の電極配置の場合の品質係数Qよりも大きい。
【0058】
図14は、電極配置が比較構成の場合と、電極配置が第1実施形態の場合とで、周波数温度特性のグラフ及び周波数温度係数の表を並べて表示している。図14における、電極配置以外の評価条件は、以下の通りである。
カット角:ATカット(α=+35°)
水晶基板の厚さTq=1μm
電極の厚さTe=0.04μm~0.06μm
ピッチP=4μm(第1実施形態の電極配置)
デューティ比Duty=0.2(第1実施形態の電極配置)
電極指の材質:Al
【0059】
比較構成では、電極や水晶基板の電極と接触する部分における歪が大きいため、周波数温度特性が電極の影響を受けて大きく変動している。一方で、第1実施形態では、電極や水晶基板の電極と接触する部分における歪が小さいため、電極の影響による周波数温度特性の変動が小さい。特に高周波化を目的に電極膜厚比Te/Tqを大きくした場合、電極の影響を受けたときに大きくなる傾向にある2次係数及び3次係数は、比較構成に比べて第1実施形態で小さくなっている。Te=0.04μm~0.06μmの範囲において、比較構成における2次係数が7.3~6.1であるのに対して、第1実施形態における2次係数は1.3となっている。同様に、比較構成における3次係数が107.9~106.8であるのに対して、第1実施形態における3次係数は75.8となっている。以上のことから、第1実施形態では、比較構成に比べて、電極膜厚の偏差による周波数温度特性の変化が小さい。
【0060】
図15Aは、水晶基板がAT近傍の回転角α=+30°~50°の場合と、BTカット近傍の回転角α=-30°~-50°の場合とで、ピッチPに対するオフセットFの比率(以下、「オフセット比」とする。)F/Pと電気機械結合係数kとの関係を示すグラフを並べて表示している。図15Bは、α=+35°の第2実施形態における、オフセット比F/P=-0.1、0、+0.1のそれぞれの場合の歪エネルギー密度を示す断面図である。図15A及び図15Bにおける、回転角α以外の評価条件は、以下の通りである。
水晶基板の厚さTq=1μm
電極の厚さTe=0.2μm
ピッチP=4μm
デューティ比Duty=0.2
電極指の材質:Al
【0061】
回転角α=+30°~50°の場合、オフセット比F/Pが0のときの電気機械結合係数kに比べて、オフセット比F/Pが0よりも小さくなると電気機械結合係数kが低下し、オフセット比F/Pが0よりも大きくなると電気機械結合係数kが上昇する。電気機械結合係数kの低下は、電極が歪の大きい領域に配置されることで生じている。逆に回転角α=-30°~-50°の場合、オフセット比F/Pが0のときの電気機械結合係数kに比べて、オフセット比F/Pが0よりも小さくなると電気機械結合係数kが上昇し、オフセット比F/Pが0よりも大きくなると電気機械結合係数kが低下する。以上のことから、第2主面10Bが第1主面10Aに対してY軸の負方向側に位置し、第3電極指13の中心軸が第1電極指11の中心軸に対して、第2主面10Bに投影したY軸の正方向側に位置しているとき、電気機械結合係数kを上昇させることができる。ここで、「第2主面10Bに投影したY軸方向」とは、Y軸をZ’軸方向成分とY’軸方向成分とに分解した場合における、Z’軸方向成分である。具体的には、「第2主面10Bに投影したY軸の正方向側」は、回転角αが正の場合においてはZ’軸の負方向側、回転角αが負の場合においてはZ’軸の正方向側である。また、第1電極指11、第2電極指12、第3電極指13及び第4電極指14が、水晶基板10の歪が最大歪の10%以下となる領域に設けられることで、電気機械結合係数kを上昇させることができる。
【0062】
図16は、第1実施形態において水晶基板がATカット(α=+35°)の場合と、第1実施形態において水晶基板の代わりにZカットのニオブ酸リチウム(LiNbO)基板を用いた場合との特性比較を示している。図16は、電極膜厚比Te/Tqと音速Vとの関係、及び電極膜厚比Te/Tqと品質係数Qとの関係を示すグラフを並べて表示している。図16における、上記以外の評価条件は、以下の通りである。
水晶基板又はニオブ酸リチウム基板の厚さTq=1μm
電極の厚さTe=変数
水晶基板の場合のピッチP=4μm
ニオブ酸リチウム基板の場合のピッチP=16μm
デューティ比Duty=0.2
電極指の材質:Al
【0063】
ニオブ酸リチウム基板を用いた構成の場合、水晶基板を用いた構成に比べて、電極膜厚比Te/Tqが大きくなったときの音速V及び品質係数Qの低下が大きい。このことから、水晶基板以外の圧電体を用いた構成では本発明の効果は得難く、水晶基板を用いた構成で本発明の効果が得られる。
【0064】
図17A及び図17Bは、電極指の間隙とY’軸方向で重なる部分で変位が最大となる厚みすべり振動モードの場合と、電極指とY’軸方向で重なる部分で変位が最大となる厚みすべり振動モードの場合との特性比較を示している。図中では、前者を「電極間TSモード」、後者を「電極部TSモード」と記載する。図18A及び図18Bは、電極指の間隙とY’軸方向で重なる部分で変位が最大となる厚みすべり振動モードの場合と、屈曲振動モードの場合との特性比較を示している。図中では、前者を「電極間TSモード」、後者を「屈曲モード」と記載する。図17A及び図18Aは上から順に評価条件及び電気機械結合係数kを示し、図17B及び図18Bは上から順に品質係数Q及び音速Vを示している。図17A図17B図18A及び図18Bにおける振動モード以外の評価条件は、以下の通りである。
カット角:ATカット(α=+35°)
水晶基板の厚さTq=1μm
電極の厚さTe=0.05μm~0.30μm
ピッチP=4μm
デューティ比Duty=変数
電極指の材質:Al
【0065】
電極指とY’軸方向で重なる部分で変位が最大となる厚みすべり振動モードの場合、電極の厚さTeの増大とともに、デューティ比Dutyが0.15以上0.30以下である場合の各特性が低下する。屈曲振動モードの場合も同様に、電極の厚さTeの増大とともに、デューティ比Dutyが0.15以上0.30以下である場合の各特性が低下する。一方で、電極指の間隙とY’軸方向で重なる部分で変位が最大となる厚みすべり振動モードの場合、電極の厚さTeが増大したとしても、デューティ比Dutyが0.15以上0.30以下である場合の各特性は殆ど低下しない。デューティ比Dutyが0.15以上0.25であれば各特性の低下はさらに抑制される。したがって、電極の厚みが大きい場合でも、本発明に係る一実施形態によれば電気機械結合係数k、品質係数Q及び音速Vを大きくすることができる。
【0066】
図19A及び図19Bは、電極指の材質がAl又はTiである場合における特性比較を示している。図20A及び図20Bは、電極指の材質がNi又はMoである場合における特性比較を示している。図19A及び図20Aは上から順に評価条件及び電気機械結合係数kを示し、図19B及び図20Bは上から順に品質係数Q及び音速Vを示している。図19A図19B図20A及び図20Bにおける電極指の材質以外の評価条件は、以下の通りである。
電極配置:第1実施形態
カット角:ATカット(α=+35°)
水晶基板の厚さTq=1μm
電極の厚さTe=0.05μm~0.30μm
ピッチP=4μm
デューティ比Duty=変数
【0067】
電極指の材質はAl,Ti,Ni及びMoのいずれであっても、各特性は同様の傾向を示した。したがって、本発明に係る一実施形態においては、電極の材質によらず本発明の効果が得られる。
【0068】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0069】
本発明の一態様に係る水晶共振子は、第1主面及び第1主面に対向する第2主面を有する水晶基板と、水晶基板の第1主面に設けられた第1櫛歯電極と、水晶基板の第1主面に設けられた第2櫛歯電極とを備え、第1櫛歯電極及び第2櫛歯電極の各々は、互いに離間しつつ交互に配置された複数の電極指を有し、第1櫛歯電極の複数の電極指は、第1電極指を有し、第2櫛歯電極の複数の電極指は、第1電極指と隣接する第2電極指を有し、第1電極指と第2電極指との電位差に応じて、第1電極指と第2電極指との間隙に重なる部分で厚みすべり振動が励振され、第1電極指及び第2電極指が並ぶ方向において、第1電極指の幅をL1、第2電極指の幅をL2、第1電極指と第2電極指との間隔をP1としたとき、第1主面側のデューティ比(L1+L2)/(2×P1)は、0.15以上0.33以下、又は0.62以上0.82以下である。
【0070】
これによれば、良好な電気機械結合係数を得ることができる。
【0071】
一態様として、第1電極指の幅L1と第2電極指の幅L2とは等しくてもよい。
【0072】
一態様として、第1主面及び第2主面は、厚みすべり振動により第1電極指及び第2電極指と平行な方向に変位し、第1主面及び第2主面のうち少なくとも第2主面の側での変位は、第1電極指及び第2電極指が並ぶ方向における、間隙と重なる部分の中間領域で極大又は極小となってもよい。
【0073】
これによれば、振動特性が電極の影響を受け難くなるため、良好な周波数温度特性を得ることができる。特に、周波数温度係数の2次係数及び3次係数を小さくすることができる。
【0074】
本発明の一態様に係る水晶共振子は、第1主面及び第1主面に対向する第2主面を有する水晶基板と、水晶基板の第1主面に設けられた第1櫛歯電極と、水晶基板の第1主面に設けられた第2櫛歯電極とを備え、第1櫛歯電極及び第2櫛歯電極の各々は、互いに離間しつつ交互に配置された複数の電極指を有し、第1櫛歯電極の複数の電極指は、第1電極指を有し、第2櫛歯電極の複数の電極指は、第1電極指と隣接する第2電極指を有し、第1電極指と第2電極指との電位差に応じて、第1電極指と第2電極指との間隙に重なる部分で厚みすべり振動が励振され、第1主面及び第2主面は、厚みすべり振動により第1電極指及び第2電極指と平行な方向に変位し、第1主面及び第2主面のうち少なくとも第2主面の側での変位は、第1電極指及び第2電極指が並ぶ方向における、間隙と重なる部分の中間領域で極大又は極小となる。
【0075】
これによれば、振動特性が電極の影響を受け難くなるため、良好な周波数温度特性を得ることができる。特に、周波数温度係数の2次係数及び3次係数を小さくすることができる。
【0076】
一態様として、第1主面の側での変位は、第1電極指及び第2電極指が並ぶ方向における、間隙と重なる部分の中間領域で極大又は極小となってもよい。
【0077】
これによれば、より良好な周波数温度特性を得ることができる。
【0078】
一態様として、第1電極指及び第2電極指が並ぶ方向において、第1電極指の幅をL1、第2電極指の幅をL2、第1電極指と第2電極指との間隔をP1としたとき、第1主面側のデューティ比(L1+L2)/(2×P1)は、0.15以上0.3以下であってもよい。
【0079】
これによれば、良好な品質係数及び音速を得ることができる。
【0080】
一態様として、第1主面側のデューティ比(L1+L2)/(2×P1)は、0.25±10%の範囲内であってもよい。
【0081】
これによれば、良好な電気機械結合係数、品質係数及び音速をより確実に得ることができる。
【0082】
一態様として、水晶基板は、結晶軸のX軸を回転軸として結晶軸のX軸の正方向側から視て反時計回りの回転角を正としたとき、Yカット水晶板を35°±10°の回転角で回転させたカット角の水晶板であってもよい。
【0083】
一態様として、水晶基板は、結晶軸のX軸を回転軸として結晶軸のX軸の正方向側から視て反時計回りの回転角を正としたとき、Yカット水晶板を-59°±10°の回転角で回転させたカット角の水晶板であってもよい。
【0084】
一態様として、水晶基板の第2主面に設けられた第3櫛歯電極と、水晶基板の第2主面に設けられた第4櫛歯電極とをさらに備え、第3櫛歯電極及び第4櫛歯電極の各々は、第1電極指及び第2電極指が並ぶ方向において、互いに離間しつつ交互に配置された複数の電極指を有し、第3櫛歯電極の複数の電極指は、第3電極指を有し、第4櫛歯電極の複数の電極指は、第3電極指と隣接する第4電極指を有し、第2主面を平面視したとき、第3電極指は、第1電極指と第1主面において隣接する2本の電極指の間に設けられ、第2主面を平面視したとき、第4電極指は、第2電極指と第1主面において隣接する2本の電極指の間に設けられ、第3電極指と第1電極指との電位差は、第3電極指と第2電極指との電位差よりも小さく、第4電極指と第2電極指との電位差は、第4電極指と第1電極指との電位差よりも小さくてもよい。
【0085】
これによれば、静電容量をより大きくすることができる。
【0086】
一態様として、第2主面を平面視したとき、第3電極指及び第4電極指が並ぶ方向において、第3電極指の中心軸と第1電極指の中心軸との距離は、0よりも大きく、第3電極指の中心軸と第2電極指の中心軸との距離よりも小さくてもよい。
【0087】
一態様として、水晶基板は、結晶軸のX軸を回転軸としてYカット水晶板を回転させた回転Yカット水晶板であり、第2主面が第1主面に対して結晶軸のY軸の負方向側に位置するとき、第3電極指の中心軸は、第1電極指の中心軸に対して、第2主面に投影した結晶軸のY軸の正方向側に位置してもよい。
【0088】
これによれば、振動特性への電極の影響を低減することができる。したがって、良好な電気機械結合係数を得ることができる。
【0089】
一態様として、第1電極指、第2電極指、第3電極指及び第4電極指は、水晶基板の歪が最大歪の10%以下となる領域に設けられてもよい。
【0090】
これによれば、振動特性への電極の影響を低減することができる。したがって、良好な電気機械結合係数を得ることができる。
【0091】
一態様として、第1電極指及び第2電極指が並ぶ方向において、第1電極指の幅をL1、第2電極指の幅をL2、第1電極指と第2電極指との間隔をP1とし、第3電極指及び第4電極指が並ぶ方向において、第3電極指の幅をL3、第4電極指の幅をL4、第3電極指と第4電極指との間隔をP2としたとき、第2主面側のデューティ比(L3+L4)/(2×P2)は、第1主面側のデューティ比(L1+L2)/(2×P1)の±10%の範囲内であってもよい。
【0092】
一態様として、水晶基板の厚さをTq、第1電極指の厚さをTe1、第2電極指の厚さをTe2としたとき、第1電極指の膜厚比Te1/Tqは0.05以上であり、第2電極指の膜厚比Te2/Tqは0.05以上であってもよい。
【0093】
一態様として、第1電極指の厚さ比Te1/Tqは0.2以上であり、第2電極指の厚さ比Te2/Tqは0.2以上であってもよい。
【0094】
一態様として、第1電極指の厚さ比Te1/Tqは0.5以下であり、第2電極指の厚さ比Te2/Tqは0.5以下であってもよい。
【0095】
一態様として、第1櫛歯電極及び第2櫛歯電極は、アルミニウムを90%以上含んでもよい。
【0096】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、特性の向上を図ることができる水晶共振子を提供することができる。
【0097】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。すなわち、実施形態及び/又は変形例に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、実施形態及び/又は変形例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、実施形態及び変形例は例示であり、異なる実施形態及び/又は変形例で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0098】
1…水晶共振子
10…水晶基板
10A…第1主面
10B…第2主面
IDT1…第1櫛歯電極
IDT2…第2櫛歯電極
11A,12A…電極指
11B,12B…バスバー
11…第1電極指
12…第2電極指
11C…第1引出電極
12C…第2引出電極
11D…第1接続電極
12D…第2接続電極
17…中央部
18…周辺部
18A~18D…枠体
19A~19D…貫通孔
L1…第1電極指の幅
L2…第2電極指の幅
P1…第1電極指と前記第2電極指との間隔(ピッチ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B