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特許7587775高純度の1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンと、その製造方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】高純度の1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンと、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 19/08 20060101AFI20241114BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20241114BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07C19/08
C11D7/50
H01L21/304 647A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022125139
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2019565565の分割
【原出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2022166103
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】1755162
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ウェンドリンガー,ローレン
(72)【発明者】
【氏名】デュル-ベール,ドミニク
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-501579(JP,A)
【文献】特表2013-531091(JP,A)
【文献】特開2012-056866(JP,A)
【文献】特表2009-513714(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101628851(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103449959(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 19/08
C11D 7/50
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも99.9重量%の1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)を含む組成物であって、この組成物中には水が存在し、その量は最大で190ppmであり、この組成物中にはHFが存在し、その量は最大で1ppmであり、さらに、この組成物中には1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンが存在し、その量は最大で10ppmであることを特徴とする組成物。
【請求項2】
HFの存在量が最大で0.1ppmである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも99.9重量%の1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)と、ヘキサフルオロプロペン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)および3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)から成る群の中から選択される少なくとも1種の化合物とを含み、この少なくとも1種の化合物は上記組成物中に最大で10ppmの量で存在する組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高純度の1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンと、その製造方法と、この1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンを主成分とする組成物の半導体業界での洗浄剤としての使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)は1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペンを製造するための原料として、または1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンおよび/または1,1,1,2-テトラフルオロペンの製造中間体として知られているハイドロフルオロカーボンである。これについては[特許文献1](米国特許第5679875号明細書)、[特許文献2](米国特許第539600号明細書)、[特許文献3](米国特許第8359964明細書)、[特許文献4](米国特許第8389779明細書)を参照されたい。
【0003】
特に、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンはヘキサフルオロプロペンの接触水素化で製造できる。
【0004】
また、クロロジフルオロメタン(CHClF2)を1,1,1,2-テトラフルオロエタンの存在下で高温で熱分解して製造することができる。これに関しては[特許文献5](国際公開第WO1996029296号公報)を参照されたい。
【0005】
さらに、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンは金属酸化物から成る触媒の存在下で1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン(HCFC-225ca)および/または1、1、2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン(HCFC-225cb)を水素で脱塩素フッ素化することで少なくとも一種のテトラフルオロクロロプロペンを作り、次いで、得られた生成物((1,1,1、2-テトラフルオロ-3-クロロ-2-プロペン(HCFO-1224yd)、1、1、2,3-テトラフルオロ-1-クロロ-2-プロペン(HCFO-1224ye)および1,1,2,3-テトラフルオロ-3-クロロ-1-プロペン(HCFO-1224yc))を触媒の存在下でフッ素化してHFC-236eaを生成させるプロセスでも製造できる。これに関しては[特許文献6](米国特許第5532418号明細書)を参照されたい。
【0006】
[特許文献7](米国特許第5563304号明細書)では、フッ化アルミニウム、フッ素化酸化アルミニウム、フッ素化アルミニウム担持金属、フッ素化アルミナ担持金属および三価クロム含有触媒からなる群から選択される触媒上で1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)をフッ化水素と高温で反応させて1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5679875号明細書
【文献】米国特許第539600号明細書
【文献】米国特許第8359964号明細書
【文献】米国特許第8389779号明細書
【文献】国際公開第WO1996029296号公報
【文献】米国特許第5532418号明細書
【文献】米国特許第5563304号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高純度の1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明方法は、最大で99重量%の1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンを含む流れを用意し、次いで、この流れを処理して、少なくとも99.4重量%のHFC-236eaと最大で0.6重量%のヘキサフルオロプロペン、シス/トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z/E))、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、シス/トランス-1,3,3,3-テトラフルオロロプロペン(HFO-1234ze(Z/E))、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、1,1,1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-254eb)、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(HFC-254fb)、1,1,1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、ヘキサフルオロシクロプロパン(シクロC36)、オクタフルオロシクロブタン(シクロC48)、シス/トランス-1、1、1、4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-356mff(Z/E))、水、水素、窒素、酸素、CO2、COおよびHFの中から選択される少なくとも1種の化合物とを含む組成物とすることを含む。上記処理は少なくとも一つの分離および/または精製ステップを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記の最大で99重量%の1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンを含む流れは、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンを製造することができる任意の方法で得ることができるが゛これはヘキサフルオロプロペンの接触水素化プロセスで得るのが好ましい。
【0011】
上記の分離ステップとしては凝縮、蒸発、デカンテーション、吸収、洗浄、液体-液体抽出を挙げることができる。
【0012】
上記の精製ステップは光塩素(photochloration)、蒸留、例えば、抽出蒸留、共沸蒸留、固体上の吸着、特にモレキュラーシーブ、アルミナ、活性炭上での吸着および膜分離などにすることができる。
【0013】
本発明のより具体的な対象は、下記の(i)と(ii)とを含む1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンの製造プロセスにある:
(i)ヘキサフルオロプロペン(HFP)を水素化して1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンを含み、場合によっては未反応ヘキサフルオロプロペン、未反応の水素、シス/トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)(Z/E)))、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、シス/トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z/E))、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、1,1,1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb)、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(HFC-254fb)、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(HFC-254fb)、1,1,1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、ヘキサフルオロシクロプロパン(シクロC36)、オクタフルオロシクロブタン(シクロC48)、シス/トランス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-356mff(Z/E)、水およびTHFをさらに含む流れを作り、
(ii)上記流れに対して少なくとも1つの分離および/または精製ステップを行って少なくとも99.4重量%のHFC-236eaと、最大で0.6重量%のヘキサフルオロプロペン、シス/トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z/E))、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、シス/トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z/E))、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、1,1,1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb)、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(HFC-254fb)、1,1,1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、ヘキサフルオロシクロプロパン(シクロC36)、オクタフルオロシクロブタン(シクロC48)、シス/トランス)-l,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-356mff(Z/E))、水、水素、窒素、酸素、CO2、COおよびHFの中から選ばれる少なくとも1種の化合物と含む組成物とする。
【0014】
上記の分離および/または精製ステップは下記の中から選択できる:
-吸着、例えば活性アルミナおよび/またはモレキュラーシーブ上での吸着、
-蒸留、
-膜分離、
-水による洗浄、
-光塩素化。
【0015】
上記の分離および/または精製工程は少なくとも一つの吸着工程、好ましくは活性アルミナおよび/またはモレキュラーシーブによる吸着工程と、少なくとも一つの蒸留工程とを含むことができる。
【0016】
上記の分離および/または精製工程は(a)活性アルミナ上での吸着または膜分離による少なくとも一回のHFの除去工程と、および/または(b)孔径が3Åおよび5Åであるモレキュラーシーブ上での吸着による少なくとも一回の水の除去工程、および/または(c)少なくとも1回の蒸留工程を含むのが好ましい。
【0017】
上記の分離および/または精製工程は(a)少なくとも一回のHFの除去工程と、(b)少なくとも1回の水除去工程と、(c)少なくとも1回の蒸留工程とを含むのが有利である。
【0018】
上記蒸留工程(c)は蒸留塔によって実施することができ、この蒸留塔ではカラムヘッドから精製HFC-236eaを取得し、塔底部から重質化合物を回収するか、蒸留塔の塔頂で軽質化合物を回収し、カラムのサイドから精製したHFC-236eaを抜き出し、底部から重質化合物を回収することができる。
【0019】
蒸留工程の終了後にHFC-236eaを細孔サイズが4Å以上のモレキュラーシーブを用いた最終精製(d)で精製する。
【0020】
上記蒸留工程(c)は1~15絶対バールの圧力、好ましくは3~10絶対バールの圧力で実施することができまる。
【0021】
上記蒸留工程(c)は2つの蒸留塔を使用して実施することができる。最初の蒸留塔を用いて軽質化合物、例えばHFP、HFO-1234yf、HFO-1243zf、HFO-1225ye(Z/E)、HFO-1234ze(Z/E)、HFO-1225zc、HFC-227ea、HFC-236fa、HFC-254eb、シクロ-HFPを除去し、第二の蒸留塔を用いて重質化合物、例えばHFC-245fa、HFC-245eb、HFO-356mff(Z/E)、HFC-254fbを除去することができ。精製されたHFC-236eaは第二の蒸留塔の頂部で得られる。資本およびエネルギーの両方を節約するために、これらの2つの蒸留塔または側流を有する蒸留塔を単一の分割壁蒸留塔(seule colonne de distillation 濬och paroiに有利に置換することができる。
【0022】
別の好ましい実施形態では、HFの除去工程(a)を水での洗浄で行うことがで、必要な場合にはさらに水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム溶液で洗浄して痕跡量の残留酸を中和することができる。
【0023】
別の好ましい実施形態では、HFの除去工程(a)を、HFC-236ea中に存在するオレフィンを光塩素化(photochloratio)のステップ(a0)で実施することができる。この場合には、HFの除去工程(a)でHFのみを除去するだけではなく、光塩素化ステップによって形成するHClと残留Cl2を吸収することができる水性溶液で洗浄するのが好ましい。
【0024】
上記のステップ(a0)はランプと透明窓とを備えた光塩素化反応器内で液相または気相で行うことができる。塩素と不飽和フッ素化生成物を含むHFC-236eaを含む流れの混合物を光塩素化反応器に導入する。この反応は気相で行うのが好ましい。得られるHFC-236eaとクロロフッ素化飽和生成物は含む流れは次の精製工程に直接送られる。
【0025】
上記の水素化工程は触媒の存在下で行うのが好ましい。
【0026】
触媒の例としてはPd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、Au、Ge、Te等の金属を挙げることができ、これらは担持されていてもよい。担体としては炭素、アルミナ、フッ素化アルミナ、AlF3、酸化物、びCr、Ti、Zr、Mg、Znのオキシフッ化物およびフッ化物、シリカおよび炭化ケイ素を挙げることができる。
【0027】
担持物の場合、触媒中に存在する金属の量は0.001~10重量%、好ましくは0,001~0.2重量%にすることができる。
【0028】
上記の水素化工程はアルミナ上に担持されたPd、好ましくは多形体アルファ形(la forme polymorphique alpha)Pdの存在下で行うのが有利である。
【0029】
上記の水素化工程は気相でも液相でも行うことができるが、気相が好ましい。
【0030】
上記水素化工程は水素の存在下で、好ましくは水素/ヘキサフルオロプロペンのモル比を1~50、特に好ましくは2~15にして行うのが好ましい。
【0031】
上記水素化工程は50~200℃、好ましくは80~120℃の間の温度で行うのが好ましい
【0032】
水素化工程の反応器入口の温度は30~100℃、好ましくは40~80℃
の間にするのが好ましい。
【0033】
標準状態での総体積流量に対する触媒床の体積比として定義される水素化工程の接触時間は0.1秒~20秒の間、有利には0.5~5秒の間であるのが好ましい。
【0034】
上記水素化工程は0.5~20絶対バール、有利には1~5絶対バールの絶対圧力したで行うのが好ましい。
【0035】
水素化工程は希釈剤の存在下で行うのが好ましく、この希釈剤は反応媒体中の反応体と一緒に供給することができる。希釈剤は水素化工程の条件下で反応しない不活性なガスである。希釈剤としては窒素、ヘリウムまたはアルゴンを挙げることができる。
【0036】
水素化工程の反応器入口での希釈剤/反応物のモル比は100:1~1:1の間にすることができ、好ましくは10:1~1:1の間、有利には5:1~1:1の間にするのが好ましい。
【0037】
上記希釈剤はHFC-236eaの水素添加物であってもよい。この場合、反応器から出てくるガス流の一部がHFC-236eaと未反応の水素を含み、場合によってはさらに未反応ヘキサフルオロプロペン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)および1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-254eb)を含むので、これを再循環し、反応器からの他の部分のガス流出物は分離および/または精製工程に送る。
【0038】
再循環ループを含むガス流および反応物は反応器に導入する前に予熱することができる。
【0039】
本発明方法では断熱反応器を用いるのが好ましい。
【0040】
反応器に再循環される上記のガス流の一部は、反応器出口での全流出物の体積の少なくとも90体積%、好ましくは少なくとも93体積%であるのが有利である。より好ましくは、反応器へ再循環する上記の流出液の一部は反応器出口での全流出物の体積の94~98体積%にする。
【0041】
水素化工程終了時の流れは凝縮工程に送ることができる。この場合には、未反応の水素が凝縮されず、ステップ(i)で形成されたHFC-236eaの一部が凝縮されるような条件で凝縮される。凝縮工程は0~50℃の温度、0.5~20絶対バール、好ましくは1~5絶対バールの間の圧力で行うのが好ましい
【0042】
上記凝縮工程は反応器を出るHFC-236eaの1~30重量%、有利には2~10%が凝縮されるような条件下で行うのが好ましい。
【0043】
非凝縮フラクションは必要に応じて加熱した後に水素化工程(i)へ再循環される。
【0044】
次いで、凝縮フラクションは蒸発された後に上記の分離および/または精製工程へ送られる。
【0045】
水素化反応中に炭素-フッ素の切断が起って少量のHFが形成されるのを観察できる。このHFは半導体業界でHFC-236eaを使用する際に有害となる。
【0046】
ステップ(i)後の分離後の流れは主としてHFC-236eaを含む流れであり、この流れを少なくとも1回の洗浄工程に送ってHFの含有量を減少させる。しかし、残留水が存在すると半導体産業での使用には適さなくなる。
【0047】
本発明はさらに、少なくとも99.4重量%のHFC-236eaと、最大で0.6重量%のヘキサフルオロプロペン、シス/トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z/E))、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、シス/トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234zeを(Z/E))、3,3,3-トリフルオロ(HFO-1243zf)、1,1,1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb)、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(HFC-254fb)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-263fb)、1,1,2-トリフルオロプロパン(HFC-143)、ヘキサフルオロシクロプロパン(シクロC36)、オクタフルオロシクロブタン(シクロC48)、シス/トランス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-356mff(Z/E))、水素、窒素、酸素、C0へ2、COおよびHFの中から選択される少なくとも1種の化合物とを含む組成物にも関するものである。
【0048】
好ましくは、HFC-236eaは組成物中に99.9重量%以上、有利には99.99重量%以上、好ましくは99.995重量%以上の量で存在する。
【0049】
本発明の一つの実施形態では、上記組成物は少なくとも99.9重量%、有利には少なくとも99.99重量%、さらには少なくとも99.995重量%のHFC-236eaと、最大で0.1重量%、好ましくは最大で1ppm、有利には最大で0.1ppmのHFとを含む。
【0050】
本発明の一つの実施形態では、上記組成物は少なくとも99.4重量%、好ましくは99.9重量%、有利には99.99重量%、さらには99.995重量%のHFC-236eaと、最大で190ppm、好ましくは最大で10ppm、有利には最大で1ppmの水とを含む。
【0051】
本発明の一つの実施形態では、上記組成物は少なくとも99.4重量%、好ましくは99.9重量%、好ましくは99.99重量%、またはさらには99.995重量%のHFC-236eaと、最大で5ppm、好ましくは最大で1ppm、好ましくは最大で0.3ppm、有利には最大で0.1ppmの水素とを含む。
【0052】
本発明の一つの実施形態では、上記組成物は少なくとも99.4重量%、好ましくは99.99重量%、より好ましくは99.995重量%のHFC-236eaと、最大で3500ppm、好ましくは最大で150ppm、より好ましくは最大で70ppm、有利には最大で5ppmの窒素とを含む。
【0053】
本発明の一つの実施形態では、上記組成物は少なくとも99.4重量%、好ましくは99.99重量%、より好ましくは99.995重量%のHFC-236eaと、最大で1000ppm、好ましくは最大で20ppm、より好ましくは最大で10ppm、有利には最大で2ppmの酸素とを含む。
【0054】
本発明の一つの実施形態では、上記組成物は少なくとも99.4重量%、好ましくは99.99重量%、より好ましくは99.995重量%のHFC-236eaと、最大で125ppm、好ましくは最大で20ppm、より好ましくは最大で5ppm、有利には最大で2ppmのCO2とを含む。
【0055】
本発明の一つの実施形態では、上記組成物は少なくとも99.4重量%、好ましくは99.99重量%、より好ましくは99.995重量%のHFC-236eaと、最大で90ppm、好ましくは最大で15ppm、より好ましくは最大で3ppm、有利には最大で1.5ppmのCOとを含む。
【0056】
本発明の一つの好ましい実施形態では、上記組成物は少なくとも99.4重量%、好ましくは99.99重量%、より好ましくは99.995重量%のHFC-236eaと、最大で190ppmの水と、最大で0.1重量%のHFとを含み、好ましくは最大で10ppmの水と、最大で1重量%のHFとを含み、有利には最大で1ppmの水と、最大で0.1重量%のHFとを含む。
【0057】
いずれの実施形態でも、本発明の組成物は、ヘキサフルオロプロペン、シス/トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yeの(Z/E))、1、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)および3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)から選択される少なくとも1種の化合物を最大で1000ppm、好ましくは最大で100ppm、有利には最大で10ppm含み且つヘキサフルオロシクロプロパン(シクロC36)およびオクタフルオロシクロブタン(シクロC48)から選択される少なくとも一つの化合物を最大で5000ppm、好ましくは最大で500ppm、有利には最大で50ppm含む。
【0058】
いずれの実施形態でも、本発明の組成物は全有機不純物を最大で6000ppm、好ましくは最大で3000ppm、有利には最大で100ppm含む。
【実施例
【0059】
実験部分
テスト1
325gの約97.8重量%のHFC-236ea(予め洗浄済み)を還流冷却器を装着した理論段が約10である「オールダーショー」付きのジャケットで覆ったガラス蒸留装置(-20℃に冷却)に入れた。この混合物は下記の組成を有する:
【0060】
【表1】
【0061】
蒸留は大気圧下で行った。10℃のヘッド温度で全部で12の画分を回収した。
【0062】
【表2】
【0063】
純度>99.7%の画分をプールし、4Åのモレキュラーシーブを通過させて乾燥して最終バッチを形成した。
【0064】
この最終ロットの分析結果から、HFC-236eaの純度は>99.7重量%で、水の含有量は11ppmであった。酸は痕跡量も検出されなかった。
するために、。
【0065】
テスト2
99.8重量%のHFC-236eaと、217ppmのHFと、27ppmの水とを含むガス流をBASFのHF-200のアルミナ球(1/8"球)のベッド(長さ/直径比=10)と、シリポライト(siliporite)のモレキュラーシーブ(細孔径=3Å)のベッドとを室温で8時間で通過させた。出力で得られる流れにHFおよび水はほとんど含まれない(HF<1ppm、水10ppm)。