IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 華南理工大学の特許一覧

特許7587778n型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用
<>
  • 特許-n型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用 図1
  • 特許-n型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用 図2
  • 特許-n型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用 図3
  • 特許-n型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用 図4
  • 特許-n型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用 図5
  • 特許-n型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用 図6
  • 特許-n型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用 図7
  • 特許-n型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】n型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20241114BHJP
   H10K 10/26 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 10/46 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 30/20 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 30/85 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 50/18 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20241114BHJP
【FI】
C08G61/12
H10K10/26
H10K10/46
H10K30/20
H10K30/50
H10K30/85
H10K50/16
H10K50/17
H10K50/18
H10K59/10
H10K85/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023526377
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2021124545
(87)【国際公開番号】W WO2023056662
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】202111177652.9
(32)【優先日】2021-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100194526
【弁理士】
【氏名又は名称】叶野 徹
(72)【発明者】
【氏名】黄飛
(72)【発明者】
【氏名】唐浩然
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-508556(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110862517(CN,A)
【文献】特表2016-505516(JP,A)
【文献】国際公開第2012/109747(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/12
H10K 10/26
H10K 10/46
H10K 30/20
H10K 30/50
H10K 30/85
H10K 50/16
H10K 50/17
H10K 50/18
H10K 59/10
H10K 85/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対イオンを含むn型共役ポリマー、及び、n型共役ポリマー、を含むことを特徴とする、n型共役ポリマーブレンド。
(前記対イオンを含むn型共役ポリマーは、1種または複数種の重合単位1を含み、
前記重合単位1は、以下の構造式(I):
【化1】
で表される構造を有し、
前記n型共役ポリマーは、1種または複数種の重合単位2を含み、
前記重合単位2は、以下の構造式(II):
【化2】
で表される構造を有し、
各前記重合単位1または重合単位2において、
Xは独立にO、S、Se、またはTeから選ばれ、
m、n、kは正の整数であり、
前記Mは、前記対イオンを含むn型共役ポリマーまたはn型共役ポリマーの構造中の共役部分であり、前記Mの構造は、芳香環、芳香族複素環、縮合芳香環、縮合芳香族複素環から選ばれる1種であり、
前記Yは、前記対イオンを含むn型共役ポリマーまたはn型共役ポリマーの構造中の対イオンであり、前記対イオンは、有機カチオンまたは無機カチオンから選ばれる1種であり、
前記対イオンを含むn型共役ポリマーの構造における対イオン部分Yの構造は、下記化7で表される構造から選ばれるものであり、
【化7】
前記n型共役ポリマーブレンドにおいて、前記重合単位1及び前記重合単位2は、それぞれ原料(III)に由来する繰り返し単位であり、前記原料(III)は、下記化3:
【化3】
で表される構造、及び/またはそのエノール互変異性体を含み、
前記エノール互変異性体は、下記化4:
【化4】
で表される構造、及び/または、下記化5:
【化5】
で表される構造である。)
【請求項2】
前記対イオンを含むn型共役ポリマーまたはn型共役ポリマーの構造中の共役部分Mの構造は、独立に下記化6で表される構造から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のn型共役ポリマーブレンド。

【化6】
(前記X-Xは、独立にO、S、Se、TeまたはN-Rから選ばれ、
前記R-Rは、独立に、水素原子、水酸基、ニトロ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルキル基誘導体、アルキレン基、アルキレン基誘導体から選ばれる1種または複数種であり、
前記アルキル誘導体またはアルキレン誘導体上の一つまたは複数の炭素は、酸素原子、アミノ基、スルホン基、カルボニル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、エステル基、シアノ基、ニトロ基の一つまたは複数で置換され、
及び/または、
前記アルキル誘導体またはアルキレン誘導体上の一つまたは複数の水素は、ハロゲン、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基の一つまたは複数で置換される。)
【請求項3】
(1)前記対イオンを含むn型共役ポリマーがホモポリマーである場合、前記対イオンを含むn型共役ポリマーの構造は、下記化8で表される構造から選ばれる1種であり、
または、
(2)前記対イオンを含むn型共役ポリマーがコポリマーである場合、前記対イオンを含むn型共役ポリマーの各重合単位1の構造は、独立に下記化9で表される構造から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のn型共役ポリマーブレンド。
【化8】
【化9】
(m、n、kは正の整数であり、
前記Mは、前記対イオンを含むn型共役ポリマーの構造中の共役部分であり、前記Mの構造は、芳香環、芳香族複素環、縮合芳香環、縮合芳香族複素環から選ばれる1種であり、
前記Yは、前記対イオンを含むn型共役ポリマーの対イオン部分であり、前記対イオンは、有機カチオンまたは無機カチオンから選ばれる1種である。)
【請求項4】
(1)前記n型共役ポリマーがホモポリマーである場合、前記n型共役ポリマーの構造は、下記化10で表される構造から選ばれる1種であり、
(2)前記n型共役ポリマーがコポリマーである場合、前記n型共役ポリマーの各重合単位2の構造は、独立に下記化11で表される構造から選ばれ、
前記n1~n4は独立に正の整数であることを特徴とする、請求項1に記載のn型共役ポリマーブレンド。
【化10】
【化11】
【請求項5】
前記対イオンを含むn型共役ポリマーとn型共役ポリマーとの間に、動的な相互変換が存在することを特徴とする、請求項1に記載のn型共役ポリマーブレンド。
【請求項6】
前記対イオンを含むn型共役ポリマーとn型共役ポリマーとのモル比が0.1~10であることを特徴とする、請求項5に記載のn型共役ポリマーブレンド。
【請求項7】
n型共役ポリマーブレンドの製造方法であって、
前記n型共役ポリマーブレンドは、対イオンを含むn型共役ポリマー、及び、n型共役ポリマー、を含み、
前記対イオンを含むn型共役ポリマーは、1種または複数種の重合単位1を含み、
前記重合単位1は、以下の構造式(I):
【化1】
で表される構造を有し、
前記n型共役ポリマーは、1種または複数種の重合単位2を含み、
前記重合単位2は、以下の構造式(II):
【化2】
で表される構造を有し、
各前記重合単位1または重合単位2において、
Xは独立にO、S、Se、またはTeから選ばれ、
m、n、kは正の整数であり、
前記Mは、前記対イオンを含むn型共役ポリマーまたはn型共役ポリマーの構造中の共役部分であり、前記Mの構造は、芳香環、芳香族複素環、縮合芳香環、縮合芳香族複素環から選ばれる1種であり、
前記Yは、前記対イオンを含むn型共役ポリマーまたはn型共役ポリマーの構造中の対イオンであり、前記対イオンは、有機カチオンまたは無機カチオンから選ばれる1種であり、
前記対イオンを含むn型共役ポリマーの構造における対イオン部分Yの構造は、下記化7で表される構造から選ばれるものであり、
【化7】
前記n型共役ポリマーブレンドは、原料(III)から製造され、前記原料(III)は、下記化3:
【化3】
で表される構造、及び/またはそのエノール互変異性体を含み、
前記エノール互変異性体は、下記化4:
【化4】
で表される構造、及び/または、下記化5:
【化5】
で表される構造であり、
(1)前記対イオンを含むn型共役ポリマー及び/またはn型共役ポリマーがホモポリマーである場合、前記n型共役ポリマーブレンドの製造方法は、
前記原料(III)と、酸化剤及び/またはイオン交換助剤とを溶媒に混合して、加熱して反応させて、前記ホモポリマーを得る工程を含み、
または、
(2)前記対イオンを含むn型共役ポリマー及び/またはn型共役ポリマーがコポリマーである場合、前記n型共役ポリマーブレンドの製造方法は、
二種以上の前記原料(III)と、酸化剤及び/またはイオン交換助剤とを溶媒に混合して、加熱して反応させて、前記コポリマーを得る工程を含む
ことを特徴とする、n型共役ポリマーブレンドの製造方法。
【請求項8】
前記酸化剤は、有機系酸化剤、無機系酸化剤から選ばれる1種または複数種であることを特徴とする、請求項7に記載のn型共役ポリマーブレンドの製造方法。
【請求項9】
前記酸化剤は、酸素ガス、過酸化物、金属ハロゲン化物、過硫酸塩、過ホウ酸塩、次亜ハロゲン酸塩、亜ハロゲン酸塩、キノン系化合物、過安息香酸系化合物から選ばれる1種または複数種であることを特徴とする、請求項7に記載のn型共役ポリマーブレンドの製造方法。
【請求項10】
前記イオン交換助剤は、カチオンを含む無機塩、カチオンを含む有機塩から選ばれる1種または複数種であることを特徴とする、請求項7に記載のn型共役ポリマーブレンドの製造方法。
【請求項11】
前記溶媒は、溶媒1、または溶媒2、または溶媒1と溶媒2との混合物から選ばれ、
前記溶媒1は、水、ニトリル系溶媒、芳香族系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、スルホン系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒の1種または複数種から選ばれ、
前記溶媒2は、前記溶媒1の重水素化溶媒である
ことを特徴とする、請求項7に記載のn型共役ポリマーブレンドの製造方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載のn型共役ポリマーブレンドの有機光起電力素子における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機半導体材料の技術分野に関し、特にn型共役ポリマーブレンド及びその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
共役ポリマーの構造には、非局在π電子からなる共役系が含まれているため、独特の半導体や導体の性質が示されている。導電性ポリアセチレンの出現により、プラスチックの絶縁性と導電性との境界が破られ、有機共役ポリマーは電子素子において幅広い応用可能性を示した。現在、共役ポリマーは、有機太陽電池(OPV)、有機発光ダイオード(OLED)、有機電界効果トランジスタ(OFET)及び有機熱電(OTE)などの分野で一連の注目される成果をあげている。
【0003】
高い導電率は、有機導電性ポリマーの性能の重要な指標の一つとして、科学者の広範な研究対象となっている。高導電性有機材料を得るための探索では、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなど様々な構造が開発されている。その中で最も代表的な材料であるポリ3、4-エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)は、現在商業化されて応用されている材料の一つであり、高い導電率と印刷加工可能な特徴を有しているため、電子素子において大きな成功を収め、年間生産額が100億元を突破した。
【0004】
共役ポリマーの中で非常に大きな進展を遂げたにもかかわらず、現在、高性能の導電材料はすべてp型輸送の性質を示しているが、n型導電材料の性能は依然として大きく遅れており、特に高導電性を備えた有機n型共役ポリマーでは、対応する合成戦略が欠けている。n型有機半導体材料の電子移動度が低く、空気安定性が悪いこと、溶液加工を実現するために長い絶縁性アルキル鎖が必要であることなどの要素に制限され、導電率が高く、合成が簡単で、コストが低く、溶液加工が可能なn型有機半導体材料を開発させることが現在の研究の焦点である。
【0005】
文献(Toward High Performance n-Type Thermoelectric Materials by Rational Modification of BDPPV Backbones. J. Am. Chem. Soc.2015,137,6979)には、ベンゾジフランジオンに基づくポリマーBDPPVは、ドーパントの最適化により、最高14S/cmの導電率を実現できることが報告されている。文献(High Conductivity and Electron-Transfer Validation in an n-Type Fluoride-Anion-Doped Polymer for Thermoelectrics in Air. Adv. Mater.2017,29,1606928)には、フッ化テトラブチルアンモニウムを用いてベンゾジフランジオンに基づくポリマーをドープし、空気安定性に優れたn型熱電材料を得ることが報告されている。また、文献(Rigid Coplanar Polymers for Stable n-Type Polymer Thermoelectrics. Angew. Chem. Int. Ed.2019,58,11390)には、酸触媒によるヒドロキシアルデヒド縮合反応を利用して重合し、貴金属触媒の使用を避けながら、空気安定性と高い導電率を備えたポリマーLPPVを得ることが報告されている。文献(A thermally activated and highly miscible dopant for n-type organic thermoelectrics. Nat. Commun.2020,11,3292.)には、新しいドーパントを構築することでドーパントとポリマー主鎖との適合性を高め、n型共役ポリマーの導電率を高めるが、最高値が50S/cmを超えていないことが報告されている。文献(Persistent conjugated backbone and disordered lamellar packing impart polymers with efficient n-doping and high conductivities. Adv. Mater.2021,33,2005946.)には、ポリマーの平面性とドーパントの適合性を相乗的に調整することにより、導電率が100S/cmに近いn型共役ポリマーを得ることが報告されている。現在、ポリマーとドーパントの調整によりn型共役ポリマーの導電率はさらに向上しているが、p型共役ポリマーの1000S/cmを超える性能に比べてまだ大きな差がある。また、現在、多くのn型導電共役ポリマーの製造は、高い導電率を得るために、まずポリマー主鎖を構築し、その後、添加されたドーパント(例えば、N-DMBIなど)を用いてポストドーピングを行う必要があり、全体の工程が長く、安定性が悪く、コストが高い。
【0006】
以上のことから、どのように構造が簡単で、合成が簡単で、コストが低く、溶液加工が可能なn型高導電性共役ポリマーを開発し、商業化に適している製造方法を経て直接合成し、さらに有機光電分野に応用して理想的な光電効果を実現するかは、早急に解決すべき課題である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、従来技術の欠点と不足を克服するために、異なる対イオンで修飾された対イオンを含むn型共役ポリマー及びその製造方法を提供することを目的とする。本発明の方法は、用いられる原料が、活性メチレン基を有する芳香族ジケトン系物質であり、酸化剤及び/またはイオン交換助剤の存在下、重合反応によって直接対イオンを含むn型共役ポリマーを得る方法である。前記反応は、貴金属触媒を必要とせず、かつ反応雰囲気に敏感ではなく、プロセスが簡単で、コストが低く、商業化の応用に適している。本発明の方法で得られた対イオンを含むn型共役ポリマーは、一般的な有機溶媒に対して良好な溶解性を有し、溶液加工が可能である。また、この対イオンを含むn型共役ポリマーを有機光起電力素子に適用することで、優れた光電効果を実現することができる。
【0008】
本発明でいう「芳香環」とは、共役平面環系を有し、原子間結合が非局在π電子雲で覆われる環状構造を指す。例えば、ベンゼン環及びその誘導体が挙げられる。
【0009】
本発明でいう「芳香族複素環」とは、共役平面環系を有し、原子間結合が非局在π電子雲で覆われ、環を構成する原子が、炭素原子のほか、少なくとも一つのヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を含む環状構造を指す。例えば、チオフェン、フラン、ピロールなどが挙げられる。
【0010】
本発明でいう「縮合芳香環」とは、共役平面環系を有し、原子間結合が非局在π電子雲で覆われる二つ以上の芳香環が縮合した構造(すなわち、環辺を共有している)を指す。例えば、ナフタレン、アントラセン及びその誘導体が挙げられる。
【0011】
本発明でいう「縮合芳香族複素環」とは、共役平面環系を有し、原子間結合が非局在π電子雲で覆われる二つ以上の芳香環が縮合した構造であり、少なくとも一つの環の構成原子が、炭素原子のほか、少なくとも一つのヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を含む構造を指す。例えば、キノリン、インドール及びその誘導体が挙げられる。
【0012】
本発明の目的は以下の技術的手段によって達成される。
対イオンを含むn型共役ポリマー、及び/または、n型共役ポリマー、を含むn型共役ポリマーブレンド。
(前記対イオンを含むn型共役ポリマーは、1種または複数種の重合単位1を含み、
前記重合単位1は、以下の構造式(I):
【化1】
で表される構造を有し、
前記n型共役ポリマーは、1種または複数種の重合単位2を含み、
前記重合単位2は、以下の構造式(II):
【化2】
で表される構造を有し、
各前記重合単位1または重合単位2において、
Xは独立にO、S、Se、TeまたはN-Rから選ばれ、
前記Rは、水素原子、アルキル基、アルキレン基、アルキル誘導体、アルキレン誘導体から選ばれる1種または複数種であり、
前記アルキル誘導体またはアルキレン誘導体上の一つまたは複数の炭素は、酸素原子、アミノ基、スルホン基、カルボニル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、エステル基、シアノ基、ニトロ基の一つまたは複数で置換され、
及び/または、
前記アルキル誘導体またはアルキレン誘導体上の一つまたは複数の水素は、ハロゲン、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基の一つまたは複数で置換され、
m、n、kは正の整数であり、
前記Mは、前記対イオンを含むn型共役ポリマーまたはn型共役ポリマーの構造中の共役部分であり、前記Mの構造は、芳香環、芳香族複素環、縮合芳香環、縮合芳香族複素環から選ばれる1種であり、
前記Yは、前記対イオンを含むn型共役ポリマーまたはn型共役ポリマーの構造中の対イオンであり、前記対イオンは、有機カチオンまたは無機カチオンから選ばれる1種であり、
前記n型共役ポリマーブレンドは、原料(III)から製造され、前記原料(III)は、下記化3:
【化3】
で表される構造、及び/またはそのエノール互変異性体を含み、
前記エノール互変異性体は、下記化4:
【化4】
で表される構造、及び/または、下記化5:
【化5】
で表される構造である。)
【0013】
前記エノール互変異性体は、原料(III)と他の物質(例えば、極性溶媒、酸または塩基)との相互作用の結果である。
【0014】
本発明の態様では、原料(III)から製造された生成物は、イオン状態のn型共役ポリマー(構造式(I)で表される構造を有する)、及び中性のn型共役ポリマー(構造式(II)で表される構造を有する)を同時に含んでいるブレンドであり、対イオンを含むn型共役ポリマーとn型共役ポリマーとの間には、動的な相互変換が存在する。これは、主に、系内に遊離の水素カチオンが存在する場合、前記n型共役ポリマーブレンドには、下記化6で表される共鳴転移が存在するためである。
【0015】
【化6】
【0016】
さらに、Yを水素カチオンとした場合について説明すると、前記系内のイオン状態を有するn型共役ポリマーは、下記化7で表される共鳴構造式のブレンドに変換することができ、すなわち、前記対イオンを含むn型共役ポリマーとn型共役ポリマーとの間に、動的な相互変換が存在し、前記対イオンを含むn型共役ポリマーとn型共役ポリマーとのモル比が0.1~10である。
【0017】
【化7】
【0018】
さらに、前記対イオンを含むn型共役ポリマーとn型共役ポリマーとの間には、相互作用によって、さらに自己組織化されて、下記化8で表される超分子を形成することができる。当該超分子構造によれば、分子内/分子間電荷移動を促進し、超高導電性を有するn型共役ポリマーブレンドを形成することができる。
【0019】
【化8】
【0020】
さらに、前記対イオンを含むn型共役ポリマーは、様々な共鳴形態を有する。Mがベンゼン環構造であり、主鎖中の負電荷数が1(m=1)である場合を例に挙げると、下記化9で表される共鳴形態が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
【化9】
【0022】
便宜上、本発明の内容はすべて一番目の共鳴形態として記載する。
【0023】
さらに、前記対イオンを含むn型共役ポリマーの構造中の共役部分Mの構造は、下記化10で表される構造から選ばれる。

【化10】
前記X-Xは、独立にO、S、Se、TeまたはN-Rから選ばれ、
前記R-Rは、独立に、水素原子、水酸基、ニトロ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルキル基誘導体、アルキレン基、アルキレン基誘導体から選ばれる1種または複数種であり、
前記アルキル誘導体またはアルキレン誘導体上の一つまたは複数の炭素は、酸素原子、アミノ基、スルホン基、カルボニル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、エステル基、シアノ基、ニトロ基の一つまたは複数で置換され、
及び/または、
前記アルキル誘導体またはアルキレン誘導体上の一つまたは複数の水素は、ハロゲン、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基の一つまたは複数で置換される。
【0024】
上記Mの構造の選択肢のうち、芳香環中の破線「---」は、ここで隣接する五員環または四員環との縮合、すなわち環辺を共有することを意味する。例えば、Mの構造が下記化11:
【化11】
で表されると、示される対イオンを含むn型共役ポリマーの重合単位の実際の構造は、下記化12:
【化12】
で表される構造である。
【0025】
さらに、前記対イオンを含むn型共役ポリマーの構造における対イオン部分Yの構造は、下記化13で表される構造から選ばれるものであり、
【化13】
または、アミン塩型カチオン界面活性剤、4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、複素環型カチオン界面活性剤、スルホニウム塩、ヨード及びその他の塩化合物から選ばれる1種である。
【0026】
さらに、
(1)前記対イオンを含むn型共役ポリマーがホモポリマーである場合、前記対イオンを含むn型共役ポリマーの構造は、下記化14で表される構造から選ばれる1種であり、
または、
(2)前記対イオンを含むn型共役ポリマーがコポリマーである場合、前記対イオンを含むn型共役ポリマーの各重合単位1の構造は、独立に下記化15で表される構造から選ばれる。

【化14】
【化15】
前記Rは、水素原子、アルキル基、アルキレン基、アルキル誘導体、アルキレン誘導体から選ばれる1種または複数種であり、
前記アルキル誘導体またはアルキレン誘導体上の一つまたは複数の炭素は、酸素原子、アミノ基、スルホン基、カルボニル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、エステル基、シアノ基、ニトロ基の一つまたは複数で置換され、
及び/または、
前記アルキル誘導体またはアルキレン誘導体上の一つまたは複数の水素は、ハロゲン、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基の一つまたは複数で置換され、
m、n、kは正の整数であり、
前記Mは、前記対イオンを含むn型共役ポリマーの構造中の共役部分であり、前記Mの構造は、芳香環、芳香族複素環、縮合芳香環、縮合芳香族複素環から選ばれる1種であり、
前記Yは、前記対イオンを含むn型共役ポリマーの対イオン部分であり、前記対イオンは、有機カチオンまたは無機カチオンから選ばれる1種である。
【0027】
さらに、
(1)前記n型共役ポリマーがホモポリマーである場合、前記n型共役ポリマーの構造は、下記化16で表される構造から選ばれる1種であり、
(2)前記n型共役ポリマーがコポリマーである場合、前記n型共役ポリマーの各重合単位2の構造は、独立に下記化17で表される構造から選ばれ、
前記n1~n5は独立に正の整数である。
【化16】
【化17】
【0028】
本発明の他の目的は、上記の対イオンを含むn型共役ポリマーの製造方法を提供することにあり、その製造方法は以下の通りである。
(1)前記対イオンを含むn型共役ポリマー及び/またはn型共役ポリマーがホモポリマーである場合、前記n型共役ポリマーブレンドの製造方法は、
前記原料(III)と、酸化剤及び/またはイオン交換助剤とを溶媒に混合して、加熱して反応させて、前記ホモポリマーを得る工程を含み、
または、
(2)前記対イオンを含むn型共役ポリマー及び/またはn型共役ポリマーがコポリマーである場合、前記n型共役ポリマーブレンドの製造方法は、
二種以上の前記原料(III)と、酸化剤及び/またはイオン交換助剤とを溶媒に混合して、加熱して反応させて、前記コポリマーを得る工程を含む。
【0029】
前記対イオンを含むn型共役ポリマー及び/またはn型共役ポリマーの製造方法は、上記のように、反応においてイオン交換助剤を直接加えることによって実現できるし、一種の対イオンを含むn型共役ポリマー及び/またはn型共役ポリマーを製造してから、後でイオン交換の形で他の対イオンを含むn型共役ポリマー及び/またはn型共役ポリマーを得ることもできる。
【0030】
さらに、前記酸化剤は、有機系酸化剤、無機系酸化剤から選ばれる1種または複数種である。
【0031】
さらに、前記酸化剤は、酸素ガス、過酸化物、金属ハロゲン化物、過硫酸塩、過ホウ酸塩、次亜ハロゲン酸塩、亜ハロゲン酸塩、キノン系化合物、過安息香酸系化合物から選ばれる1種または複数種である。
【0032】
具体的には、酸化剤としては、酸素ガス、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化カルシウム、過酸化亜鉛、過酸化銅、硝酸鉄、硝酸亜鉛、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウム、硝酸アンモニウム、フッ化鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過臭素酸ナトリウム、過臭素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過塩素酸マグネシウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸マグネシウム、過硫酸亜鉛、過硫酸鉄、過硫酸銅、過硫酸カルシウム、過ホウ酸カリウム、過ホウ酸亜鉛、過ホウ酸マグネシウム、過ホウ酸カルシウム、次亜弗酸ナトリウム、次亜弗酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸鉄、次亜塩素酸銅、次亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸カリウム、次亜ヨウ素酸ナトリウム、次ヨウ素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸鉄、亜臭素酸ナトリウム、亜臭素酸カリウム、亜ヨウ素酸ナトリウム、亜ヨウ素酸カリウム、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、フェナンスレンキノン及びその誘導体、過安息香酸及びその誘導体から選ばれる1種、及び上記の任意の物質の2種以上を任意の割合で混合した混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
さらに、前記溶媒は、溶媒1、または溶媒2、または溶媒1と溶媒2との混合物から選ばれ、
前記溶媒1は、水、ニトリル系溶媒、芳香族系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、スルホン系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒の1種または複数種の混合物から選ばれ、
前記溶媒2は、前記溶媒1の重水素化溶媒である。
【0034】
具体的には、前記溶媒1は、本分野で一般的な極性溶媒であることが好ましい。例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、イソブタノール、プロピレングリコール、アセトニトリル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン、メチルブタノン、メチルエーテル、ジエチルエーテル、プロピルエーテル、ピリジン、フェノール、N-メチルピロリドン、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリオクチルアミン、アニリン、ヘキサメチルリン酸トリアミドの1種、及び上記の任意の物質の2種以上を任意の割合で混合した混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
具体的には、前記溶媒2は、上記溶媒1に対応する重水素化溶媒である。例えば、溶媒2は、重水素化クロロホルム、重水素化クロロベンゼン、重水素化エタノールなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0036】
好まくは、前記溶媒は、溶媒1から選ばれる。
【0037】
便宜上、本発明の内容はすべて、イオン状態を有するn型共役ポリマー(構造式(I)で表される構造を有する)、及び中性のn型共役ポリマー(構造式(II)で表される構造を有する)のブレンドとして記載する。
【0038】
本発明のもう一つの目的は、上記の対イオンを含むn型共役ポリマーブレンドの有機光起電力素子における使用を提供することである。
【発明の効果】
【0039】
本発明の効果は、以下の通りである。
1.本発明で得られたn型共役ポリマーブレンドは、原料が、活性メチレン基を有する芳香族ジケトン系物質であり、酸化剤の存在下、重合反応によって直接得られる。前記反応は、貴金属触媒を必要とせず、かつ反応雰囲気に敏感ではなく、プロセスが簡単で、コストが低く、大規模な商業化の応用に適している。得られる生成物は溶解性に優れ、溶液加工型の有機光起電力素子に適している。
2.本発明で得られたn型共役ポリマーブレンドは、in-situ反応及び共鳴変換により自己組織化し、最大2000S/cmを超える導電率で強い凝集を有するn型導電材料を形成することができる。
3.本発明で得られたn型共役ポリマーブレンドは、熱電材料として、追加のドーパントを使用することなく、空気環境下で100μW m-1-2に近い力率を得ることができる。
4.本発明で得られたn型共役ポリマーブレンドは、異なる対イオンの調整により、n型共役ポリマーの熱電パワーの体系的な調整が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】実施例1における生成物の薄膜状態での吸収スペクトルを示す。
図2】実施例1における生成物のゲル浸透クロマトグラムである。
図3】実施例1における生成物のX線光電子分光スペクトルであり、(a)は酸素元素のXPSスペクトル(酸素1sピーク)であり、(b)はトータルスペクトルである。
図4】試験例1における生成物の四探針法による導電率測定の模式図である。
図5】試験例1において、実施例1の生成物の四探針法による導電率測定における電圧と電流のデータを示すグラフであり、(a)は四探針法による電流測定グラフであり、(b)は四探針法による電圧測定グラフである。
図6】実施例1における生成物のSeebeck係数測定図である。
図7】有機電気化学トランジスタ素子の模式図である。
図8】実施例1における生成物の有機電気化学トランジスタ素子でのトランスコンダクタンス測定図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の技術案をより明確に説明するために、以下の実施例を挙げる。実施例に現れた原料、反応と後処理手段は、特に明記しない限り、市場でよく見られる原料であり、当業者によく知られている技術的手段である。
【0042】
本発明の実施例における原料の一つである3,7-ジヒドロベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジフラン-2,6-ジケトンは、文献(A BDOPV-Based Donor-Acceptor Polymer for High-Performance n-Type and Oxygen-Doped Ambipolar Field-Effect Transistors. Adv. Mater.2013,25(45),6589)に従って調製した。実施例における酸化剤は、ジュロキノン、またはコエンザイムQ10、または塩化第二鉄を用いて、上海畢得医薬科技株式会社から購入した。
【0043】
実施例1:n型共役ポリマーブレンドの製造方法
【化18】
3,7-ジヒドロベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジフラン-2,6-ジケトン(1 mmol)と酸化剤のジュロキノン(1.5mmol)を2mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、真空脱気した後、保護のために窒素ガスを充填した。窒素雰囲気下、100℃で4時間攪拌して反応させた。その後、得られた粗生成物をDMSOで約10mg/mlに希釈した後、0.45μm孔径のポリテトラフルオロエチレンフィルターで濾過し、得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、透過性バッグ(カットオフ分子量=10kDa)でDMSO溶液中で7日間透析し、生成物のn型共役ポリマーブレンドを得た。ここで、式Iと式IIは、上記で説明するように共鳴により互いに変換することができ、m/(n1+n2)は約0.86である。比例の測定方法はX線光電子分光スペクトルを用いてフィッティングして得られた(以下同じ)。DMSOを移動相とするゲル浸透クロマトグラフィーで測定したところ、分子量Mn=428.2kDa、PDI=1.22であった。
図1は、実施例1の生成物の薄膜状態での吸収スペクトルである。吸収端が2400nmを超えたことから、ポリマー中の分極子の存在を示しており、共役主鎖に自由に移動できる負電荷が混合系中に存在することを証明していた。図2は、実施例1の生成物のゲル浸透クロマトグラムであり、ポリマー及び超分子化合物の生成を示している。
図3は、実施例1における生成物のX線光電子分光スペクトルであり、(a)は酸素元素のXPSスペクトル(酸素1sピーク)であり、(b)はトータルスペクトルである。 したがって、図3(a)、(b)中の酸素元素の異なるピーク間の半定量比率を用いて、mとn1、n2との関係を計算し、この方法により、式Iと式IIの相対含有量を確定することができる。
【0044】
実施例2:n型共役ポリマーブレンドの製造方法
【化19】
3,7-ジヒドロベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジフラン-2,6-ジケトン(1 mmol)と酸化剤の塩化第二鉄(2mmol)を2mlのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、真空脱気した後、保護のために窒素ガスを充填した。窒素雰囲気下、100℃で2時間攪拌して反応させた。得られた生成物のn型共役ポリマーブレンドが反応系から徐々に析出し、室温まで冷却した後、エタノール50mLを加えた。十分に攪拌した後、濾過し、脱イオン水、エタノール、テトラヒドロフランで洗浄し、得られた生成物のn型共役ポリマーブレンドは式(I)、式(II)、式(III)と式(IV)の混合物であった。得られた生成物は鉄イオン結合のため、有機溶媒に溶解しなかった。固体を特徴づけた。
ここで、2(k1+k3)+3(k2+k5)+(k4+k6)=m1+m2+m3+m4+m5+m6。
かつ、(k4+k6):(k1+k3):(k2+k5)は約8:1:0.2であり、
(m1+m2+m3+m4+m5+m6):(n1+n2+n3+n4+n5+n6+n7)は約0.9である。
【0045】
実施例3:n型共役ポリマーブレンドの製造方法
【化20】
【化21】
(1)ベンゾジチオフェン(23mmol)を無水テトラヒドロフラン(300ml)に溶解した後、-78℃まで降温し、90minでn-ブチルリチウム(2.5Mのノルマルヘキサン溶液、25.8ml、64.4mmol)を徐々に加え、-78℃で3時間撹拌した後、0℃まで昇温し、ホウ酸トリブチル(60mmol)を加え、1時間攪拌した後、室温25℃まで徐々に昇温し、8時間攪拌を続けた。ロータリーエバポレーターで溶液を200mlまで濃縮し、0.5M塩酸200mlを加え、濾過して粗生成物を得た。粗生成物をテトラヒドロフラン/ノルマルヘキサンで沈殿させ、氷冷したトルエンで洗浄し、固体(収率=61%)を乾燥し、次の反応に用いた。
(2)前工程の固体(7.5mmol)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、0℃で2.5mlの過酸化水素水溶液(30wt%)を加え、室温で6時間攪拌した。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(200~300メッシュ)を利用して、酢酸エチル:石油エーテル=4:1を溶離剤として生成物を精制し、得られた固体をn-ヘキサンとメタノールで洗浄し、3,7-ジヒドロベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジケトン(収率=53%)を得た。H NMR(CDCl,500MHz)δppm:7.31(s,2H),3.98(s,4H)。
(3)3,7-ジヒドロベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジケトン(1mmol)とジュロキノン(2mmol)を2mlのDMSOに溶解し、真空脱気した後、保護のために窒素ガスを充填した。窒素雰囲気下、120℃で10時間攪拌し、溶液を約10mg/mlに希釈した後、0.45μm孔径のポリテトラフルオロエチレンフィルターで濾過した。溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、透過性バッグ(カットオフ分子量=10kDa)でDMSO溶液中で3日間透析し、生成物のn型共役ポリマーブレンドを得た。得られた生成物のn型共役ポリマーブレンドは、式(I)と式(II)の混合物であった。ここで、式Iと式IIは、上記で説明するように共鳴により互いに変換することができ、m/(n1+n2)は約0.42である。DMSOを移動相とするゲル浸透クロマトグラフィーで測定したところ、分子量Mn=12kDa、PDI=1.31であった。
【0046】
実施例4:n型共役ポリマーブレンドの製造方法

【化22】
実施例1で得られた生成物のDMSO溶液20mL(濃度15mg/mL)を取り、20mLのDMSOで希釈した後、これにテトラブチルアンモニウムブロマイド2gを加え、室温で14日間攪拌した。そのイオン交換生成物の一部は反応中に徐々に析出した。反応系にエタノール50mLを加え、よく攪拌した後濾過した。得られた粉末はエタノール、テトラヒドロフランで洗浄した。
ここで、k1+k2+k3+k4=m1+m2+m3+m4=m、
n3+n4+n5+n6+n7+n8+n9=n1+n2。
(k2+k4)/(k1+k3)は約0.2である。
【0047】
実施例5:n型共役ポリマーブレンドの製造方法
【化23】
実施例1で得られた生成物のDMSO溶液40μL(濃度15mg/mL)を10mm×10mmのガラス基板上に滴下し、乾燥して薄膜を得た。薄膜を飽和NaClの水溶液に12時間浸漬した後脱イオン水で洗浄し、そして乾燥させた後、イオン交換生成物のn型共役ポリマーブレンドの薄膜を得て、直接後続の特徴づけを進めた。
ここで、k1+k2+k3+k4=m1+m2+m3+m4=m、
n3+n4+n5+n6+n7+n8+n9=n1+n2。
(k2+k4)/(k1+k3)は約0.04である。
【0048】
実施例6:n型共役ポリマーブレンドの製造方法
【化24】
窒素保護下、3,7-ジヒドロベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジフラン-2,6-ジケトン(1mmol)をトリクロロメタン5mLに溶解し、トリエチルアミン2mmolを加えて、室温で攪拌し、溶液が黒緑色になった後、酸化剤のジュロキノン(1.5mmolを加えた。窒素雰囲気下、100℃で24時間攪拌して反応させ、濾過して粗生成物を得た。次いで、得られた粗生成物をテトラヒドロフランで洗浄した後、20mLのDMSOに溶解し、0.45μm孔径のポリテトラフルオロエチレンフィルターで濾過し、得られた濾液を透過性バッグ(カットオフ分子量=10kDa)でDMSO溶液中で7日間透析し、生成物のn型共役ポリマーブレンドを得た。ここで、式Iと式IIは、上記で説明するように共鳴により互いに変換することができ、m/(n1+n2)は約0.62である。DMSOを移動相とするゲル浸透クロマトグラフィーで測定したところ、分子量Mn=11kDa、PDI=1.72であった。
【0049】
試験例1
実施例1で得られたn型共役ポリマーブレンドのDMSO溶液をスピンコート法でガラス基板上に薄膜を作製し、真空乾燥後、四探針法により薄膜の導電率を測定した。図4は、実施例1の生成物の四探針法による導電率測定の模式図を示す。具体的な手順は以下の通りである。
順次にアセトン、ミクロンオーダーの半導体専用洗剤、脱イオン水、イソプロピルアルコールを洗浄溶媒として超音波洗浄器で石英ガラス片を洗浄し、洗浄後、窒素ガスで表面を乾かし、そして赤外線ランプで乾燥させた後、恒温オーブンに入れて予備にした。使用前に、ガラス片をプラズマエッチャー中でプラズマで10min衝撃させた。
ガラス片の準備が終わったら、それを加熱台に置き、110℃で加熱した後、回転ホモジナイザー(KW-4A)に移し、上記で製造した実施例1の生成物を用いて高速スピンコート(共役ポリマー溶液の質量濃度15mg/ml)し、同時に段差メーターで薄膜の厚さを実測して追跡した。成膜が完了した後、四探針の導電率測定器でその電圧と電流のグラフを測定し、測定原理図を図4に示し、電圧Vと電流Iを図5(a)、(b)に示し、膜厚d及び補正係数を用いて導電率σを計算し、計算式は以下の通りである。
σ=I/(C×V×d)
ここで、Cは機器に内蔵されたプローブキャリブレーションパラメータと試料サイズで決まる。
実施例2と実施例4で得られた生成物の粉末を打錠法により直径15mm、厚さ1mmの薄片を作製し、四探針法により薄膜の導電率を測定した。
実施例5のイオン交換後に得られた生成物の薄膜を直接四探針法により薄膜の導電率を測定した結果は、以下の通りである。
【表1】
表1から明らかなように、本発明で製造したn型共役ポリマーブレンドは高い導電率を有し、異なるイオンの調整により導電率の制御が可能である。
ここで、実施例1のn型共役ポリマーブレンドについて説明すると、本発明で製造したn型共役ポリマーブレンドは、プロトンと主鎖上の負電荷を共鳴させることができるとともに、固体状態では、超分子作用の形成によりプロトンが分子間に拘束され、負電荷の束縛が緩和され、負電荷が共役主鎖上を自由に移動し、高いn型導電率を実現することができる。
【0050】
試験例2
実施例で得られたn型共役ポリマーブレンドについて熱電試験を行った。
材料の熱電性能は性能指数(ZT)で表され、具体的な式は以下の通りである。
ZT=SσT/κ
ここで、SはSeebeck係数、σは導電率、κは熱伝導率、Tは素子動作時の温度を表す。有機材料は、熱伝導率が無機材料に比べて遥かに低いため、その熱電性能が一般的に力率(PF)で表現され、ここで、PF=Sσである。
この試験例では、上記のようにして製造したn型共役ポリマーブレンドを例に挙げて、試験例1と同様の手順でサンプルを作制し、そのSeebeck係数を測定し、その熱電性能を特徴づけた。
素子の両端を温度勾配場に置き、図は実施例の生成物の熱電圧差の変化傾向図、及び実施例の生成物の温度に対する熱電圧差の変化傾向のフィッティング図を示す。素子の両端の温度差の変化から対応する熱起電力を測定し、さらにSeebeck係数を測定した。図5(a)、(b)から明らかなように、本発明の実施例に係るポリマーは、わずかな温度差で、生成物のSeebeck効果を示し、30μV/Kを超える熱起電力を発生させた。
図6は、実施例1の生成物の導電率-Seebeck係数-力率特性図を示し、ここで、力率はPF=Sσから得られる。上記試験により、室温における力率は100μWm-1-2に近く、従来のn型共役ポリマーでは高いレベルにあることがわかった。
関連データを表2に示す。
【表2】


【0051】
試験例3
実施例1で得られたn型共役ポリマーブレンドについて、有機電気化学トランジスタ素子試験を行った。有機電気化学トランジスタ素子を図7に示す。
上記の有機電気化学トランジスタの製造プロセスは、以下の通りである。まず、アセトンとイソプロピルアルコールでガラス基板を順次洗浄し、その後、窒素ガスで表面を乾かした。ガラス基板上にクロム/金(10nm/100nm)基板をスパッタ法で堆積して、ソースとドレインを形成した後、基板表面を不動態化し、有機電気化学トランジスタの活性層材料として実施例1のn型共役ポリマーDMSO溶液をスピンコートし、そして100℃で窒素ガス下で10min焼成した。膜厚は約70nm、チャネル面積は1mm×1mmであった。空気中でゲートとしてAg/AgCl電極を用い、電解液として0.1M塩化ナトリウム溶液を用い、Keithley 4200によって有機電気化学トランジスタの性能を特徴づけるように、ソースとゲート間の電圧Vgs及びドレインとゲート間の電流Idsを記録した。
上記の有機電気化学トランジスタ素子の測定性能は図8に示す。n型共役ポリマーブレンドに基づく有機電気化学トランジスタ素子は、11mSに近いトランスコンダクタンスを有し、良好な電気化学応答を有し、有機バイオセンシング分野で重要な応用可能性を有している。
【0052】
以上の試験例は、本発明におけるn型共役ポリマーブレンドが有機光起電力素子において高導電性材料として幅広い応用可能性を有していることを示している。
【0053】
本発明は、上述の例示的な実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明の精神または基本的な特徴を逸脱することなく、他の具体的な形で実現できることは、当業者にとって明らかである。したがって、どのような点から見ても、実施例は例示的であり、かつ非限定的である。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付の特許請求の範囲によって規定されるので、特許請求の範囲の均等の意味及び範囲内でのすべての変更を本発明に含めることを意図している。
【0054】
なお、本明細書は実施形態に沿って記述するが、各実施形態が一つの独立した技術的手段のみを含んでいるわけではない。本明細書のこのような記述の仕方は単なる明確化のためであり、当業者は、明細書を一体として捉えるべきであり、各実施形態における技術的手段も適宜組み合わせて、当業者の理解できる他の実施形態を形成してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8