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7587788非対称分岐型分解性ポリエチレングリコール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】非対称分岐型分解性ポリエチレングリコール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/333 20060101AFI20241114BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20241114BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20241114BHJP
   A61K 47/34 20170101ALN20241114BHJP
【FI】
C08G65/333
C08G81/00
C08L101/16
A61K47/34
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020160392
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2021055080
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2019176251
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業、「高分子ナノテクノロジーを基盤とした革新的核酸医薬シーズ送達システムの創出」産業技術力強化法第17条の適用を受ける出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】羽村 健
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】大坂間 順規
(72)【発明者】
【氏名】西山 伸宏
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-527581(JP,A)
【文献】国際公開第2005/108463(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/088248(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189853(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106421806(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00-67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内にて分解するオリゴペプチドを分子内に有する下式(1)で示される分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化1】
(式中、kおよびkはそれぞれ独立して1~12であり、j及びjはそれぞれ独立して45~950であり、Rは水素原子、置換もしくは置換されていない炭素数1~12のアルキル基、置換アリール基、アラルキル基またはヘテロアルキル基であり、Zは細胞内の酵素で分解するオリゴペプチドであり、Xは生体関連物質と反応可能な官能基であり、L及びLはそれぞれ独立して単結合もしくは2価のスペーサーである。)
【請求項2】
Zのオリゴペプチドが、システインを除く中性アミノ酸からなる2~8残基の分解性オリゴペプチドである請求項1記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項3】
Zのオリゴペプチドが、C末端のアミノ酸にグリシンを有するペプチドである請求項1~2のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項4】
Zのオリゴペプチドが、ハイドロパシー指標が2.5以上である疎水性のアミノ酸を少なくとも1つ有するオリゴペプチドである請求項1~3のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項5】
及びLがそれぞれ独立して、単結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、2級アミノ基、ウレア結合、またはこれら結合および/または基を含んだアルキレン基である請求項1~4のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項6】
Xが活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホニル基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項7】
下式(2)で示される分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化2】
(式中、kおよびkはそれぞれ独立して1~12であり、j及びjはそれぞれ独立して45~950であり、Rは水素原子、置換もしくは置換されていない炭素数1~4のアルキル基、置換アリール基、アラルキル基またはヘテロアルキル基であり、Wはグルタミン酸またはリジンを中心とした対称構造の5~47残基のオリゴペプチドであり、aは2~8であり、Xは生体関連物質と反応可能な官能基であり、L及びLはそれぞれ独立して単結合もしくは2価のスペーサーである。)
【請求項8】
Wのグルタミン酸またはリジンを中心とした対称構造のオリゴペプチドが、以下のw1またはw2の構造を有するオリゴペプチドである請求項7記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化3】
【化4】
(式中、Qはグルタミン酸またはリジンの残基であり、Zはシステインを除く中性アミノ酸からなる2~5残基の分解性オリゴペプチドである。)
【請求項9】
Zの分解性オリゴペプチドが、C末端のアミノ酸としてグリシンを有するオリゴペプチドである請求項8の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項10】
Zの分解性オリゴペプチドが、ハイドロパシー指標が2.5以上である疎水性の中性アミノ酸を少なくとも1つ有するオリゴペプチドである請求項8~9のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項11】
及びLがそれぞれ独立して、単結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、2級アミノ基、ウレア結合、またはこれらの結合および/または基を含んでいてもよいアルキレン基である請求項7~10のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項12】
Xが活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホニル基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される、請求項7~11のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質を修飾する用途に使用される細胞内で分解する分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ホルモンやサイトカイン、抗体、酵素などの生体関連物質を用いた医薬品は、通常生体内へ投与されると腎臓における糸球体濾過や肝臓や脾臓などにおけるマクロファージによる取り込みによって、生体内から速やかに排出されてしまう。そのため血中半減期が短く、十分な薬理効果を得ることが困難であることが多い。この問題を解決するため、生体関連物質を糖鎖やポリエチレングリコールなどの親水性高分子やアルブミンなどによって化学修飾する試みが行われている。その結果、分子量の増大や水和層の形成などにより生体関連物質の血中半減期を延長することが可能となる。また、ポリエチレングリコールで修飾することで、生体関連物質の毒性や抗原性の低下、難水溶性薬剤の溶解性向上などの効果が得られることも良く知られている。
【0003】
ポリエチレングリコールで修飾された生体関連物質は、ポリエチレングリコールのエーテル結合と水分子との水素結合で形成される水和層で覆われ、分子サイズが大きくなることから、腎臓における糸球体濾過を回避することができる。さらにオプソニンや各組織を構成する細胞表面との相互作用が低下し、各組織への移行が減少することが知られている。ポリエチレングリコールは生体関連物質の血中半減期を延長させる優れた素材であり、その性能は分子量が大きいほど効果が高いことが分っている。これまで、分子量4万以上の高分子量のポリエチレングリコールで修飾した生体関連物質の研究が多数行なわれており、有意にその血中半減期を延長できる結果が得られている。
【0004】
ポリエチレングリコールは生体関連物質の性能改善に用いられる修飾剤の中で至適基準とされており、現在ではポリエチレングリコール修飾製剤が複数上市され、医療現場で使用されている。一方で、2012年に欧州医薬品庁(EMA)から、分子量4万以上の高分子量のポリエチレングリコールで修飾した生体関連物質を一定の投与量以上で長期間動物に投与すると、一部の組織の細胞内に空胞が発生するとの現象が報告された(非特許文献1)。現時点において、空胞の発生自体が人体に悪影響を与えるとの報告はなく、また、先のEMAの報告において用いられた投与量は、医療現場において一般的に適用される投与量と比べて極めて高用量であること等を考慮すれば、現在製造販売されている分子量が4万以上のポリエチレングリコールで修飾された治療製剤の安全性は問題ないといえる。しかしながら、非常に特殊な疾患(例えば、小人症など)の治療においては、ポリエチレングリコール修飾製剤を高用量、且つ、長期間に患者へ投与する治療プロトコルが採用されることも想定され得る。従って、かかる特殊な状況においても適用可能な、細胞に空胞を発生させないポリエチレングリコール修飾製剤の開発には潜在的な需要があると予想される。
【0005】
非特許文献2においては、通常のポリエチレングリコール修飾製剤の投与量に比べ、大過剰量のポリエチレングリコールを単独で動物に長期間投与したところ、分子量2万では空胞は見られず、分子量4万において空胞の発生が確認されている。空胞を抑制する手段の一つとして、ポリエチレングリコールの分子量を小さくすることが考えられるが、分子量を小さくすると生体関連物質の血中半減期を十分に改善することができないという問題が生じる。
【0006】
高分子量のポリエチレングリコールを体内で低分子量のポリエチレングリコールに分解し、腎臓からの排出を促進する技術については報告例がある。特許文献1には、生体内で切断されるスルフィド結合やペプチド結合部位を有したポリエチレングリコール誘導体に関する記載がなされている。当該ポリエチレングリコール誘導体は、生体内で腎臓からの排出に適した分子量まで分解されるとの記載がある。しかし、具体的な分解に関するデータは全く示されておらず、腎臓からの排出が促進されたというデータもない。さらに細胞の空胞に関する記載はない。
【0007】
特許文献2には、生体内の低pH環境下において加水分解可能なアセタール部位を有したポリエチレングリコール誘導体に関する記載がなされている。当該ポリエチレングリコール誘導体は、生体内で腎臓からの排出に適した分子量まで分解されるとの記載がある。しかし、具体的に腎臓からの排出が促進されたというデータは無く、さらに細胞の空胞に関する記載もない。また、これら加水分解が可能なアセタール部位は血中でも徐々に分解することが知られており、修飾した生体関連物質の血中半減期を十分に改善することができないと予想される。
【0008】
一方で、薬物を効果的にリリースするために分解性のオリゴペプチドを導入したポリエチレングリコール誘導体や体内で分解するハイドロゲルなどの報告例はある。
【0009】
非特許文献3には、酵素によって分解するオリゴペプチド部位を有したポリエチレングリコール誘導体に関する記載がなされている。ここではオリゴペプチドは抗癌剤とポリエチレングリコールの間のリンカーとして導入されており、腫瘍周辺に特異的に発現している酵素によってオリゴペプチドが分解し、効率よく抗癌剤をリリースすることが報告されている。目的は抗癌剤のリリースであり、細胞の空胞を抑制する目的でポリエチレングリコールに分解性を付与するものではない。
【0010】
非特許文献4には、酵素によって分解するオリゴペプチド部位を有した架橋分子と多分岐型のポリエチレングリコール誘導体を用いたハイドロゲルに関する記載がなされている。ここではオリゴペプチドは多分岐型のポリエチレングリコール誘導体を繋ぎ合わせる架橋分子として用いられ、さらに酵素による分解性をハイドロゲルに付与することができる。目的は分解性のハイドロゲルの調製であり、細胞の空胞を抑制する目的でポリエチレングリコールに分解性を付与するものではない。
【0011】
特許文献3には、オリゴペプチドを骨格とした分岐型のポリエチレングリコール誘導体に関する記載がなされている。ここではオリゴペプチドはポリエチレングリコール誘導体の基本骨格として用いられており、酵素による分解性を付与するものではない。また、オリゴペプチドにリジンやアスパラギン酸など、側鎖にアミノ基やカルボキシル基を有したアミノ酸を含むことが特徴であり、それらを反応に利用した分岐型のポリエチレングリコール誘導体を合成することが目的である。細胞の空胞を抑制する目的のポリエチレングリコール誘導体ではない。
【0012】
さらに生体関連物質を修飾する用途に用いられるポリエチレングリコール誘導体においては、一般的に直鎖型と分岐型があり、非特許文献5には、直鎖型よりも分岐型のほうが有意に生体関連物質の血中半減期を延長させるとの記載がある。近年、上市されたポリエチレングリコール修飾製剤のほとんどは分岐型が採用されている。しかし、これまで当該分野において、細胞の空胞を抑制する分岐型のポリエチレングリコール誘導体に関する報告はない。
【0013】
以上のように、血中では安定で、修飾した生体関連物質の血中半減期を改善し、細胞に取り込まれた際に細胞内で特異的に分解して、細胞の空胞の発生を抑制することができる分岐型の高分子量のポリエチレングリコール誘導体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特表2009-527581号公報
【文献】WO2005/108463
【文献】WO2006/088248
【非特許文献】
【0015】
【文献】EMA/CHMP/SWP/647258/2012
【文献】Daniel G. Rudmann, et al., Toxicol. Pathol., 41, 970-983(2013)
【文献】Francesco M Veronese, et al., Bioconjugate Chem., 16, 775-784(2005)
【文献】Jiyuan Yang, et al., Marcomol. Biosci., 10(4), 445-454(2010)
【文献】Yulia Vugmeysterang, et al., Bioconjugate Chem., 23, 1452-1462(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、細胞の空胞を引き起こさない高分子量の分岐型ポリエチレングリコール誘導体を提供することにある。より具体的には、生体関連物質を修飾する用途に効果的に用いることができ、生体内の血中で安定であり、且つ細胞内で分解される分岐型分解性ポリエチレングリコール誘導体を、工業的に生産可能な製法にて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、細胞内にて分解するオリゴペプチドを有した分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体を発明した。
【0018】
即ち、本発明は、下式(1)で示される分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体を提供する。
[1]細胞内にて分解するオリゴペプチドを分子内に有する下式(1)で示される分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、kおよびkはそれぞれ独立して1~12であり、j及びjはそれぞれ独立して45~950であり、Rは水素原子、置換もしくは置換されていない炭素数1~12のアルキル基、置換アリール基、アラルキル基またはヘテロアルキル基であり、Zは細胞内の酵素で分解するオリゴペプチドであり、Xは生体関連物質と反応可能な官能基であり、L及びLはそれぞれ独立して単結合もしくは2価のスペーサーである。)
【0021】
[2]Zの分解性オリゴペプチドが、C末端のアミノ酸としてグリシンを有するオリゴペプチドである[1]記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0022】
[3]Zの分解性オリゴペプチドが、ハイドロパシー指標が2.5以上である疎水性の中性アミノ酸を少なくとも1つ有するオリゴペプチドである[1]~[2]のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0023】
[4]総分子量が20,000以上である[1]~[3]のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0024】
[5]L及びLがそれぞれ独立して、単結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、2級アミノ基、ウレア結合、またはこれらの結合および/または基を含んでいてもよいアルキレン基である[1]~[4]のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0025】
[6]Xが活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホニル基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される、[1]~[5]のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0026】
本発明はまた、他の態様として、下式(2)で示される分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体を提供する。
[6]下式(2)で示される分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0027】
【化2】
【0028】
(式中、kおよびkはそれぞれ独立して1~12であり、j及びjはそれぞれ独立して45~950であり、Rは水素原子、置換もしくは置換されていない炭素数1~4のアルキル基、置換アリール基、アラルキル基またはヘテロアルキル基であり、Wはグルタミン酸またはリジンを中心とした対称構造の5~47残基のオリゴペプチドであり、aは2~8であり、Xは生体関連物質と反応可能な官能基であり、L及びLはそれぞれ独立して単結合もしくは2価のスペーサーである。)
【0029】
[7]Wのグルタミン酸またはリジンを中心とした対称構造のオリゴペプチドが、以下のw1またはw2の構造を有するオリゴペプチドである[6]記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0030】
【化3】
【0031】
【化4】
【0032】
(式中、Qはグルタミン酸またはリジンの残基であり、およびZはシステインを除く中性アミノ酸からなる2~5残基の分解性オリゴペプチドである。)
【0033】
[8]Zの分解性オリゴペプチドが、C末端のアミノ酸としてグリシンを有するオリゴペプチドである[7]記載の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0034】
[9]Zの分解性オリゴペプチドが、ハイドロパシー指標が2.5以上である疎水性の中性アミノ酸を少なくとも1つ有するオリゴペプチドである[7]または[8]のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0035】
[10]総分子量が20,000以上である[6]~[9]のいずれかに記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0036】
[11]LおよびLがそれぞれ独立して、単結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、2級アミノ基、ウレア結合、またはこれらの結合および/または基を含んでいてもよいアルキレン基である[6]~[10]のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0037】
[12]Xが活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、置換マレイミド基、ビニルスルホニル基、アクリル基、置換スルホネート基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、ピリジルジチオ基、α-ハロアセチル基、アルキルカルボニル基、ヨードアセトアミド基、アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基からなる群より選択される、[6]~[11]のいずれか1項記載の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【発明の効果】
【0038】
本発明の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、生体内の血中では安定であり、細胞内の酵素によって分解するオリゴペプチドを構造内に有している。そのため、当該分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、血中では安定であり、従来の分解性を有さないポリエチレングリコール誘導体と同等の血中半減期を生体関連物質に付与することができる。さらに、当該分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、細胞内に取り込まれた場合、オリゴペプチド部位が速やかに分解されるため、これまで課題とされていた細胞の空胞の発生を抑制することができる。また、ポリエチレングリコールに導入するオリゴペプチドを、C末端のアミノ酸としてグリシンを有するオリゴペプチドなどに限定することで、製造工程中で発生する不純物を低減させ、工業的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、下式(1)で示される。
【0040】
【化5】
【0041】
式(1)中、kおよびkはそれぞれ独立して1~12であり、j及びjはそれぞれ独立して45~950であり、Rは水素原子、置換もしくは置換されていない炭素数1~12のアルキル基、置換アリール基、アラルキル基またはヘテロアルキル基であり、Zは細胞内の酵素で分解するオリゴペプチドであり、Xは生体関連物質と反応可能な官能基であり、L及びLはそれぞれ独立して単結合もしくは2価のスペーサーである。
【0042】
本発明の式(1)のポリエチレングリコール誘導体の総分子量は、通常は4,000~160,000であり、好ましくは10,000~120,000であり、更に好ましくは20,000~80,000である。本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明の式(1)のポリエチレングリコール誘導体の総分子量は20,000以上である。ここでいう分子量とは数平均分子量(Mn)である。
【0043】
式(1)中のkおよびkは、通常はそれぞれ独立して1~12であり、好ましくはそれぞれ独立して1~6であり、更に好ましくはそれぞれ独立して1~2である。
【0044】
式(1)中のjおよびjは、それぞれポリエチレングリコールの繰り返しユニット数であり、通常それぞれ独立して45~950であり、好ましくはそれぞれ独立して110~690であり、更に好ましくはそれぞれ独立して220~480である。
【0045】
式(1)中のRは、水素原子、置換もしくは置換されていない炭素数1~12のアルキル基、置換アリール基、アラルキル基またはヘテロアルキル基である。「ヘテロアルキル基」とは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1~5個のヘテロ原子を含むアルキル基である。Rは、好ましくは水素原子もしくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基であり、更に好ましくは水素原子である。
【0046】
式(1)中のL及びLは、それぞれ独立して、単結合もしくは2価のスペーサーであるが、これらのスペーサーは共有結合を形成し得る基であれば特に制限は無いが、好ましくは、フェニレン基、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、2級アミノ基、カルボニル基、ウレア結合、またはこれらの結合および/または基を含んでいてもよいアルキレン基であり、より好ましくは、アルキレン基、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、2級アミノ基、またはカルボニル基とアルキレン基とが結合して形成される基であり、特に好ましい態様は、下記の群(I)に示されるものである。また、群(I)のスペーサーを2つから5つ組み合わせても良い。2価のスペーサーとしてエステル結合とカーボネート結合は生体内の血中で徐々に分解するため適さない。
【0047】
群(I):
【0048】
【化6】
【0049】
(z1)~(z11)において、式中のsは0~10の整数を示し、好ましくは0~6の整数を示し、更に好ましくは0~3の整数を示す。また、(z2)~(z11)において、式中のsは同一でも、異なっていてもよい。
【0050】
式(1)中のLは、単結合もしくは群(I)の(z2)、(z3)、(z4)、(z6)、(z7)、(z8)、(z9)、(z10)、(z2)と(z6)の組み合わせが好ましく、単結合、(z3)、(z6)、(z9)、(z10)、(z2)と(z6)の組み合わせがより好ましい。
式(1)中のLは、群(I)の(z1)、(z2)、(z3)、(z4)、(z5)、(z6)、(z7)、(z8)、(z11)が好ましく、(z3)、(z5)、(z11)がより好ましい。
【0051】
式(1)中のZは、生体内の血中で安定であり、かつ細胞内の酵素で分解するオリゴペプチドであれば特に制限はないが、システインを除く中性アミノ酸からなる2~8残基のオリゴペプチドが好ましく、システインを除く中性アミノ酸からなる2~6残基のオリゴペプチドがより好ましく、システインを除く中性アミノ酸からなる2~4残基のオリゴペプチドが更に好ましい。
【0052】
また、式(1)中のZは、側鎖にアミノ基やカルボキシル基を持つアミノ酸、具体的には、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸を含まない中性アミノ酸で構成されるオリゴペプチドであることが好ましい。ここで使用されるアミノ酸は、α-アミノ酸であり、また基本的にはL型である。
【0053】
さらに、中性アミノ酸であるシステインはチオール基を有しており、他のチオール基とジスルフィド結合を形成するため、式(1)中のZは、システインを含まない中性アミノ酸からなるオリゴペプチドであることが望ましい。
【0054】
加えて、式(1)中のZは、C末端のアミノ酸としてグリシンを有するオリゴペプチドであることが好ましい。C末端のカルボキシル基とポリエチレングリコール誘導体を反応させる際は、基本的にC末端のカルボキシル基を縮合剤などで活性化する必要がある。この活性化の工程にて、グリシン以外のアミノ酸ではエピメリ化が起こりやすく、立体異性体が副生することが知られている。オリゴペプチドのC末端のアミノ酸をアキラルなグリシンとすることで、立体異性体の副生の無い、高純度な目的物を得ることができる。
【0055】
さらに、式(1)中のZは、ハイドロパシー指標が2.5以上である疎水性の中性アミノ酸、具体的には、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンを少なくとも1つ有するオリゴペプチドであることが好ましく、フェニルアラニンを有するオリゴペプチドであることが更に好ましい。Kyte と Doolittleにより作成された、アミノ酸の疎水性を定量的に示すハイドロパシー指標(hydropathy index)は、値が大きいほど疎水的なアミノ酸であることを示す(Kyte J & Doolittle RF, 1982, J Mol Biol, 157:105-132.)。
【0056】
式(1)中のZは、生体内の血中で安定であり、かつ細胞内の酵素で分解する性能を有し、システインを除く中性アミノ酸からなる2~8残基のオリゴペプチドであれば特に制限は無いが、具体的な例としては、グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-ロイシン-グリシン、バリン-シトルリン-グリシン、バリン-アラニン-グリシン、グリシン-グリシン-グリシン、フェニルアラニン-グリシンなどであり、好ましくはグリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-グリシン-グリシン、バリン-シトルリン-グリシン、バリン-アラニン-グリシン、フェニルアラニン-グリシンであり、より好ましくはグリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、グリシン-フェニルアラニン-グリシン、バリン-シトルリン-グリシン、バリン-アラニン-グリシンであり、さらにより好ましくはグリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、バリン-シトルリン-グリシンである。
【0057】
式(1)中のXは、化学修飾の対象となる生理活性タンパク質、ペプチド、抗体、核酸などの生体関連物質に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基であれば特に制限されない。例えば、「Harris, J. M. Poly(Ethylene Glycol) Chemistry; Plenum Press: New York, 1992」、「Hermanson, G. T. Bioconjugate Techniques, 2nd ed.; Academic Press: San Diego, CA, 2008」および「PEGylated Protein Drugs: Basic Science and Clinical Applications; Veronese, F. M., Ed.; Birkhauser: Basel, Switzerland,2009」などに記載されている官能基が挙げられる。
【0058】
式(1)中のXで示される「生体関連物質と反応可能な官能基」は、生体関連物質が有するアミノ基、メルカプト基、アルデヒド基、カルボキシ基、不飽和結合またはアジド基などの官能基と化学結合可能な官能基であれば特に制限されない。
具体的には、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、マレイミド基、置換マレイミド基、ヒドラジド基、ジチオピリジル基、置換スルホネート基、ビニルスルホニル基、アミノ基、オキシアミノ基(HN-O-基)、ヨードアセトアミド基、アルキルカルボニル基、アルケニル基(例えば、アリル基、ビニル基)、アルキニル基、置換アルキニル基(例えば、後記の炭素数1~5の炭化水素基で置換されたアルキニル基)、アジド基、アクリル基、スルホニルオキシ基(例えば、アルキルスルホニルオキシ基)、α-ハロアセチル基などが挙げられ、好ましくは、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、置換マレイミド基、ビニルスルホニル基、アクリル基、スルホニルオキシ基(例えば、炭素数1~5のアルキル-スルホニルオキシ基)、置換スルホネート基、カルボキシ基、メルカプト基、ピリジルジチオ基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、置換アルキニル基(例えば、後記の炭素数1~5の炭化水素基で置換された炭素数2~5のアルキニル基)、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基であり、より好ましくは活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、マレイミド基、オキシアミノ基およびアミノ基であり、特に好ましくは活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、マレイミド基およびオキシアミノ基である。
【0059】
別の好適な実施形態において、かかる官能基Xは、下記の群(II)、群(III)、群(IV)、群(V)、群(VI)および群(VII)に分類することができる。
【0060】
群(II):生体関連物質が有するアミノ基と反応可能な官能基
下記の (a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(j)、または(k)で示される基が挙げられる。
【0061】
群(III):生体関連物質が有するメルカプト基と反応可能な官能基
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、または(l)で示される基が挙げられる。
【0062】
群(IV):生体関連物質が有するアルデヒド基と反応可能な官能基
下記の(h)、(m)、(n)、または(p)で示される基が挙げられる。
【0063】
群(V):生体関連物質が有するカルボキシル基と反応可能な官能基
下記の(h)、(m)、(n)、または(p)で示される基が挙げられる。
【0064】
群(VI):生体関連物質が有する不飽和結合と反応可能な官能基
下記の(h)、(m)、または(o)で示される基が挙げられる。
【0065】
群(VII):生体関連物質が有するアジド基と反応可能な官能基
下記の(l)で示される基が挙げられる。
【0066】
【化7】
【0067】
官能基(j)において、式中のWは塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)またはヨウ素原子(I)などのハロゲン原子を示し、好ましくはBr、またはI、より好ましくはIである。
【0068】
また、官能基(e)および官能基(l)において、式中のY、Yは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~5の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1~5の炭化水素基である。炭素数1~5の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、またはエチル基である。
【0069】
また、官能基(k)において、式中のYはフッ素原子を含んでいてもよい炭素数が1~10の炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、4-メチルフェニル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、ビニル基、4-メチルフェニル基、または2,2,2-トリフルオロエチル基である。
【0070】
活性エステル基とは、脱離能の高いアルコキシ基を有したエステル基である。脱離能の高いアルコキシ基としては、ニトロフェノール、N-ヒドロキシスクシンイミド、ペンタフルオロフェノールなどから誘導されるアルコキシ基が挙げられる。活性エステル基は、好ましくはN-ヒドロキシスクシンイミドから誘導されるアルコキシ基を有したエステル基である。
【0071】
活性カーボネート基とは、脱離能の高いアルコキシ基を有したカーボネート基である。脱離能の高いアルコキシ基としては、ニトロフェノール、N-ヒドロキシスクシンイミド、ペンタフルオロフェノールなどから誘導されるアルコキシ基が挙げられる。活性カーボネート基は、好ましくはニトロフェノールまたはN-ヒドロキシスクシンイミドから誘導されるアルコキシ基を有したカーボネート基である。
【0072】
置換マレイミド基とは、マレイミド基の二重結合の片方の炭素原子に炭化水素基が結合しているマレイミド基である。炭化水素基は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、またはエチル基である。
【0073】
置換スルホネート基とは、スルホネート基の硫黄原子にフッ素原子を含んでいてもよい炭化水素基が結合しているスルホネート基である。フッ素原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、4-メチルフェニル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、ビニル基、4-メチルフェニル基、または2,2,2-トリフルオロエチル基である。
【0074】
本発明の式(1)の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体の好適な例としては、以下の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。
[分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体(1-1)]
およびkが、それぞれ独立して1~2であり;
およびjが、それぞれ独立して220~480であり;
Rが、水素原子であり;
Zが、システインを除く中性アミノ酸からなる2~8残基のオリゴペプチド(例、フェニルアラニン-グリシン)であり;
Xが、活性エステル基(例、N-スクシンイミジルオキシカルボニル基)、アルデヒド基(例、N-(ホルミルエチル)カルバモイル基)、カルボキシル基、マレイミド基(例、N-(N-マレイミジルエチルカルボニルアミノエチル)カルバモイル基)およびアミノ基(例、N-(アミノエチル)カルバモイル基)よりなる群から選択され;
およびLが、それぞれ独立して、2級アミノ基および/またはカルボニル基を含んでいてもよいアルキレン基(例、プロピレン基)である;
式(1)の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0075】
式(1)で示される分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、例えば、次のような工程で製造することができる。
【0076】
反応1
【0077】
【化8】
【0078】
反応1中のAは脱離基であり、R、j、k、kは前記と同義である。
【0079】
式(3)におけるAは、脱離基であり、カップリング反応において反応性を有する脱離基であれば特に制限はないが、例えば、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メシラート基、トシラート基、クロロメタンスルホナート基などが挙げられる。
【0080】
反応1は、式(3)で表されるポリエチレングリコール誘導体と式(4)で表される化合物を無水溶媒中、強塩基触媒存在下でカップリング反応させ、式(5)で表されるポリエチレングリコール誘導体を得る工程である。
【0081】
前記カップリング反応における強塩基触媒としては、反応が進行する強塩基触媒であれば特に制限は無いが、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどが挙げられる。
前記カップリング反応における無水溶媒としては、式(3)および式(4)で表される化合物と反応しない溶媒であれば特に制限は無いが、例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、DMF、ジクロロメタン、クロロホルム等の非プロトン性極性溶媒、及びこれらの混合物が挙げられる。
反応で副生した不純物、また反応で消費されずに残存した化合物、強塩基触媒の精製除去を行うのが好ましい。精製は特に制限されないが、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出などで精製することができる。
【0082】
反応2
【0083】
【化9】
【0084】
反応2中のProは保護基であり、Peptideはオリゴペプチドであり、Lは前記LおよびLと同義の単結合もしくは2価のスペーサーであり、およびjは前記と同義である。
【0085】
反応2中のProは、保護基であり、ここで保護基とは、ある反応条件下で分子中の特定の化学反応可能な官能基の反応を防止または阻止する成分である。保護基は、保護される化学反応可能な官能基の種類、使用される条件および分子中の他の官能基もしくは保護基の存在により変化する。保護基の具体的な例は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば「Wuts, P. G. M.; Greene, T. W. Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed.; Wiley-Interscience: New York, 2007」に記載されている。また、保護基で保護された官能基は、それぞれの保護基に適した反応条件を用いて脱保護、すなわち化学反応させることで、元の官能基を再生させることができる。保護基の代表的な脱保護条件は前述の文献に記載されている。
【0086】
反応2は、式(6)で表されるN末端のアミノ基が保護基で保護されたオリゴペプチドのカルボキシル基と、式(7)で表される片末端がメトキシ基であるポリエチレングリコール誘導体のアミノ基を縮合反応にて結合させ、式(8)で表されるポリエチレングリコール誘導体を得る工程である。
【0087】
オリゴペプチドのN末端のアミノ基の保護基は、特に制限は無いが、例えばアシル系保護基およびカーバメート系保護基が挙げられ、具体的にはトリフルオロアセチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0088】
縮合反応としては、特に制限は無いが、縮合剤を用いる反応が望ましい。縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)などのカルボジイミド系の縮合剤を単独で使用しても良く、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)などの試薬と併用しても良い。また、より反応性の高いHATUやHBTU、TATU、TBTU、COMU、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドn水和物(DMT-MM)などの縮合剤を使用しても良い。また反応を促進するため、トリエチルアミンやジメチルアミノピリジンなどの塩基を用いても良い。
【0089】
反応で副生した不純物、または反応で消費されず残存したオリゴペプチドや縮合剤などは、精製除去を行うのが好ましい。精製は、特に制限されないが、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出などで精製することができる。
【0090】
脱保護3
【0091】
【化10】
【0092】
Peptide、Lおよびjは前記と同義である。
【0093】
脱保護3は、反応2で得られた式(8)で表されるポリエチレングリコール誘導体の保護基を脱保護して、式(9)で表されるポリエチレングリコール誘導体を得る工程である。脱保護反応としては、従来公知の方法を用いることができるが、オリゴペプチドやLの2価のスペーサーが分解しない条件を用いる必要がある。また、本工程は、反応2の工程の一環として実施することも可能である。
【0094】
脱保護反応で副生した不純物などは、精製除去を行うのが好ましい。精製は、特に制限されないが、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出などで精製することができる。
【0095】
反応4
【0096】
【化11】
【0097】
反応4中のkは1~6の整数であり、Peptide、j、およびLは前記と同義である。
【0098】
式(8)中のkは1~6の整数であり、好ましくは2~4の整数である。
【0099】
反応4は脱保護3で得られた式(9)で表されるポリエチレングリコール誘導体の末端のアミノ基を塩基触媒存在下で式(10)で表される化合物と反応させカルボキシル基に変換する工程である。
【0100】
反応4で副生した不純物などは、精製除去を行うのが好ましい。精製は、特に制限されないが、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出などで精製することができる。
【0101】
反応5
【0102】
【化12】
【0103】
反応5中のPeptide、L、k、およびjは前記と同義である。
【0104】
反応5は反応4で得られた式(11)で表されるポリエチレングリコール誘導体に式(12)で表される化合物を塩基触媒存在下で反応させ、活性エステル基を導入した式(13)で表されるポリエチレングリコール誘導体を得る工程であり、本工程は反応4の工程の一環として実施することも可能である。
【0105】
反応6
【0106】
【化13】
【0107】
反応6中のPeptide、R、L、j、j、k、k、およびkは前記と同義である。
【0108】
反応6は反応1で得られた式(5)で表されるポリエチレングリコール誘導体のアミノ基と反応5で得られた式(13)で表されるポリエチレングリコール誘導体の活性エステル基を反応で結合させ、式(14)で表される分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体を得る工程である。
【0109】
反応で副生した不純物、または反応で消費されず残存したポリエチレングリコール誘導体などは、精製除去を行うのが好ましい。精製は特に制限されないが、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出などで精製することができる。
【0110】
式(14)で表されるポリエチレングリコール誘導体の末端カルボキシル基を他の官能基に変換する工程について、典型的な例を以下に説明するが、変換方法はこれに限定されるものではない。
【0111】
例えば、式(15)で表されるポリエチレングリコール誘導体の末端カルボキシル基をマレイミド基に変換したい場合は、N-(2-アミノエチル)マレイミドと塩基触媒存在下で縮合反応させることで、目的物を得ることができる。
【0112】
例えば、式(14)で表されるポリエチレングリコール誘導体の末端カルボキシル基をアミノ基に変換したい場合は、N-(9-H-フロオレン-9-イルメトキシカルボニル)-1、2-エタンジアミンと塩基触媒存在下で縮合反応させた後、脱保護反応させることで得ることができる。
【0113】
これらの反応試薬は、低分子量の試薬であり、高分子量ポリマーであるポリエチレングリコール誘導体とは大きく溶解性が異なるため、抽出や晶析などの一般的な精製方法にて容易に除去可能である。
【0114】
本発明のさらに他の態様として、下式(2)で示される分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体を提供する。
【0115】
【化14】
【0116】
式(2)中、kおよびkはそれぞれ独立して1~12であり、j及びjはそれぞれ独立して45~950であり、Rは水素原子、置換もしくは置換されていない炭素数1~4のアルキル基、置換アリール基、アラルキル基またはヘテロアルキル基であり、Wはグルタミン酸またはリジンを中心とした対称構造の5~47残基のオリゴペプチドであり、aは2~8であり、Xは生体関連物質と反応可能な官能基であり、L及びLはそれぞれ独立して単結合もしくは2価のスペーサーである。
【0117】
本発明の式(2)のポリエチレングリコール誘導体の総分子量は、通常は4,000~160,000であり、好ましくは10,000~120,000であり、更に好ましくは20,000~80,000である。本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明の式(2)のポリエチレングリコール誘導体の総分子量は20,000以上である。ここでいう分子量とは数平均分子量(Mn)である。
【0118】
式(2)中のkおよびkは、通常はそれぞれ独立して1~12であり、好ましくはそれぞれ独立して1~6であり、更に好ましくはそれぞれ独立して1~2である。
【0119】
式(2)中のjおよびjは、それぞれポリエチレングリコールの繰り返しユニット数であり、通常それぞれ独立して45~950であり、好ましくはそれぞれ独立して110~690であり、更に好ましくはそれぞれ独立して220~480である。
【0120】
式(2)中のWは、グルタミン酸またはリジンを中心とした対称構造の5~47残基、好ましくは5~27残基、より好ましくは5~19残基のオリゴペプチドであり、生体内の血中で安定であり、かつ細胞内の酵素で分解するオリゴペプチドであれば特に制限はないが、オリゴペプチドを構成するアミノ酸としては、中心部分を構成するグルタミン酸またはリジン以外は、システインを除く中性アミノ酸からなることが好ましい。ここでいうグルタミン酸またはリジンを中心とした対称構造のオリゴペプチドとは、グルタミン酸のα位のカルボキシル基とγ位のカルボキシル基またはリジンのα位のアミノ基とε位のアミノ基に同一のペプチドが結合した化合物を意味し、グルタミン酸またはリジンを中心に対となるペプチドが対称構造をとるオリゴペプチドである。当該オリゴペプチド中の中性アミノ酸とグルタミン酸またはリジンの数の構成比(中性アミノ酸の数/グルタミン酸の数)としては、通常は2~10であり、好ましくは2~8であり、更に好ましくは2~6である。Wを構成するアミノ酸は基本的にはL型である。
【0121】
Wの特に好ましい態様は、下記の群(VIII)に示されるものである。
群(VIII):
【0122】
【化15】
【0123】
【化16】
【0124】
(式中、Qはグルタミン酸またはリジンの残基であり、Zはシステインを除く中性アミノ酸からなる2~5残基の分解性オリゴペプチドである。)
【0125】
式(2)中のaは、Wで示されるオリゴペプチドと結合しているポリエチレングリコール鎖の本数であり、通常は2~8であり、好ましくは2または4または8であり、更に好ましくは2または4である。
【0126】
なお、R、X、L、L及び(w1)~(w2)中のZの好ましい態様は、前記の式(1)について説明した通りである。
【0127】
式(2)の好ましい態様の1つは、Wがw1であり、a=2の下式(15)で示される3分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体である。
【0128】
【化17】
【0129】
(式中、Q、Z、R、k、k、j、j、X、L及びLは、前記と同義である。)
【0130】
式(2)の好ましい態様の1つは、Wがw2であり、a=4の下式(16)で示される5分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体である。
【0131】
【化18】
【0132】
(式中、Q、R、Z、k、k、j、j、X、L及びLは、前記と同義である。)
【0133】
本発明の式(2)の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体の好適な例としては、以下の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。
[分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体(2-1)]
およびkが、それぞれ独立して1~2であり;
およびjが、それぞれ独立して220~480であり;
Rが、水素原子であり;
Wが、グルタミン酸またはリジンを中心とした対称構造の5~9残基のオリゴペプチド(例、グリシン-フェニルアラニン-グルタミン酸-フェニルアラニン-グリシン)であり;
aが、2または4であり;
Xが、カルボキシル基であり;
およびLが、それぞれ独立して、エーテル結合、2級アミノ基および/またはカルボニル基を含んでいてもよいアルキレン基(例、プロピレン基、ペンチレン基)である;
式(2)の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0134】
本発明の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、Qがグルタミン酸の残基の場合に、例えば、次のような工程で製造することができる。
【0135】
反応7
【0136】
【化19】
【0137】
反応7中のPro、Peptide、Lおよびjは前記と同義である。
【0138】
反応7は、脱保護3で得られた式(9)で表されるポリエチレングリコール誘導体のアミノ基と、式(17)で表されるアミノ基が保護基で保護されたグルタミン酸誘導体の二つのカルボキシル基を縮合反応で結合させ、2本の分解性ポリエチレングリコール鎖がグルタミン酸残基で繋がれた構造である式(18)で表される分岐型のポリエチレングリコール誘導体を得る工程である。
前記反応2と同様に、縮合剤を用いた反応が望ましく、反応を促進するため、トリエチルアミンやジメチルアミノピリジン等の塩基を用いても良い。
グルタミン酸のアミノ基の保護基は、特に制限は無いが、例えばアシル系保護基およびカーバメート系保護基が挙げられ、具体的にはトリフルオロアセチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびt-ブチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
反応で副生した不純物、または反応で消費されず残存したポリエチレングリコール誘導体などは、精製除去を行うのが好ましい。精製は、特に制限されないが、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等で精製することができる。
【0139】
脱保護8
【0140】
【化20】
【0141】
脱保護8中のPeptide、Lおよびjは前記と同義である。
【0142】
脱保護8は、反応7で得られた式(18)で表されるポリエチレングリコール誘導体の保護基を脱保護して、式(19)で表されるポリエチレングリコール誘導体を得る工程である。前記脱保護3と同条件で反応と精製が可能である。
式(19)で表されるポリエチレングリコール誘導体の中から、分子量や官能基の異なるポリエチレングリコール不純物を除去する手法としては、特開2014-208786、特開2011-79934に記載の精製技術を用いることができる。
【0143】
反応9
【0144】
【化21】
【0145】
反応9中のPro、Peptide、Lおよびjは前記と同義である。
【0146】
反応9は、脱保護8で得られた式(19)で表されるポリエチレングリコール誘導体のアミノ基と、式(17)で表されるアミノ基が保護基で保護されたグルタミン酸誘導体の二つのカルボキシル基を縮合反応で結合させ、4本の分解性ポリエチレングリコール鎖がグルタミン酸残基で繋がれた構造である式(20)で表される分岐型のポリエチレングリコール誘導体を得る工程である。前記反応2と同条件で反応と精製が可能である。
【0147】
脱保護10
【0148】
【化22】
【0149】
脱保護10中のPeptide、Lおよびjは前記と同義である。
【0150】
脱保護10は、反応9で得られた式(20)で表されるポリエチレングリコール誘導体の保護基を脱保護して、式(21)で表されるポリエチレングリコール誘導体を得る工程である。前記脱保護8と同条件で反応と精製が可能である。また、本工程は、反応9の一連の工程にて実施することも可能である。
【0151】
反応11
【0152】
【化23】
【0153】
反応11中のPeptide、L、jおよびkは前記と同義である。
【0154】
反応11は脱保護8で得られた式(19)で表される2分岐型のポリエチレングリコール誘導体の末端のアミノ基を塩基触媒存在下で式(22)で表される化合物と反応させ水酸基に変換し、式(23)で表される2分岐型のポリエチレングリコール誘導体を得る工程である。前記反応4と同条件で反応と精製が可能である。
【0155】
さらに、反応11中の式(19)で表される2分岐型のポリエチレングリコール誘導体の代わりに脱保護10で得られた式(21)で表される4分岐型のポリエチレングリコール誘導体を原料とすることで、下式(24)で表される4分岐型のポリエチレングリコール誘導体を得ることができる。
【0156】
【化24】
【0157】
式(24)のPeptide、L、jおよびkは前記と同義である。
【0158】
反応12
【0159】
【化25】
【0160】
反応12中のPeptide、L、jおよびkは前記と同義である。
【0161】
反応12は反応11で得られた式(23)で表される2分岐型のポリエチレングリコール誘導体の水酸基と式(25)で表される化合物を反応させ、活性カーボネート基を導入した式(26)で表される2分岐型のポリエチレングリコール誘導体を得る工程であり、本工程は反応11の肯定の一環として実施することも可能であり、前記反応5と同条件で反応と精製が可能である。
【0162】
さらに、反応12中の式(23)で表される2分岐型のポリエチレングリコール誘導体の代わりに式(24)で表される4分岐型のポリエチレングリコール誘導体を原料とすることで、下式(27)で表される4分岐型のポリエチレングリコール誘導体を得ることができる。
【0163】
【化26】
【0164】
式(27)のPeptide、L、jおよびkは前記と同義である。
【0165】
反応13
【0166】
【化27】
【0167】
反応13中のPeptide、R、L、j、j、k、kおよびkは前記と同義である。
【0168】
反応13は反応1で得られた式(5)で表されるポリエチレングリコール誘導体のアミノ基と反応12で得られた式(26)で表されるポリエチレングリコール誘導体の活性エステル基を反応で結合させ、式(28)で表される3分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体を得る工程であり、前記反応6と同条件で反応と精製が可能である。
【0169】
さらに、反応13中の式(26)で表される2分岐型のポリエチレングリコール誘導体の代わりに式(27)で表される4分岐型のポリエチレングリコール誘導体を原料とすることで、下式(29)で表される5分岐型のポリエチレングリコール誘導体を得ることができる。
【0170】
【化28】
【0171】
式(29)のPeptide、R、L、j、j、k、kおよびkは前記と同義である。
【0172】
式(28)または式(29)で表される分岐型のポリエチレングリコール誘導体の末端カルボキシル基を他の官能基に変換する工程について、典型的な例を以下に説明するが、変換方法はこれに限定されるものではない。
【0173】
例えば、式(28)または式(29)で表される分岐型のポリエチレングリコール誘導体の末端カルボキシル基をマレイミド基に変換したい場合は、N-(2-アミノエチル)マレイミドと塩基触媒存在下で縮合反応させることで、目的物を得ることができる。
【0174】
例えば、式(28)または式(29)で表されるポリエチレングリコール誘導体の末端カルボキシル基をアミノ基に変換したい場合は、N-(9-H-フロオレン-9-イルメトキシカルボニル)-1、2-エタンジアミンと塩基触媒存在下で縮合反応させた後、脱保護反応させることで得ることができる。
【0175】
これら反応試薬は、低分子量の試薬であり、高分子量のポリマーであるポリエチレングリコール誘導体とは大きく溶解性が異なるため、抽出や晶析等の一般的な精製方法にて容易に除去が可能である。
【0176】
以上のような工程を経て、得られた分岐型の分解性ポリエチレングリコールは、血中で安定であり、細胞内でのみ分解する性能を有することが求められる。その性能を適切に評価するため、例えば、以下に示すような試験を実施し、分岐型の分解性ポリエチレングリコールの血中での安定性、そして細胞内での分解性を評価することができる。
なお、これらの評価においてポリエチレングリコール誘導体が有する官能基の種類による影響を考慮し、評価試料はすべて、アミノ基を1つ有したポリエチレングリコール誘導体に統一して試験を実施した。
【0177】
分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体の血中での安定性を評価するための試験方法については、特に制限は無いが、例えば、マウス、ラット、ヒトなどの血清を用いた試験等が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール誘導体を1~10mg/mLの濃度になるように血清に溶解し、37℃で96時間インキュベート後、血清中に含まれるポリエチレングリコール誘導体を回収し、GPCを測定することで分解率を評価することができる。分解率は、安定性試験前のポリエチレングリコール誘導体のGPCメインフラクションのピーク面積%と、安定性試験後のポリエチレングリコール誘導体のGPCメインフラクションのピーク面積%から算出する。具体的には以下の式を用いる。
分解率 = (試験前のピーク面積% - 試験後のピーク面積%) ÷ 試験前のピーク面積% × 100
例えば、安定性試験前の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体のGPCメインフラクションのピーク面積%が95%であり、試験後のGPCメインフラクションのピーク面積%が90%だったとすると、分解率は以下のように算出される。
分解率 = (95-90)÷95×100 = 5.26(%)
分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、血中で分解してしまうと、目的とする血中半減期を得ることができないため、安定性試験において、96時間後の分解率は、10%以下が好ましく、5%以下がさらに好ましい。
【0178】
分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体の細胞内での分解性を評価するための試験方法については、特に制限は無いが、例えば、分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体を含有した培地を用いて、細胞を培養させる試験等が挙げられる。ここで使用する細胞や培地については、特に制限は無いが、具体的には、ポリエチレングリコール誘導体を1~20mg/mLの濃度になるように培地であるRPMI-1640に溶解し、この培地を用いて、マクロファージ細胞RAW264.7を37℃で96時間培養後、細胞中のポリエチレングリコール誘導体を回収し、GPCを測定することで分解率を評価することができる。分解率は、安定性試験と同様に、試験前後のポリエチレングリコール誘導体のGPCメインフラクションのピーク面積%を用いて算出する。
例えば、細胞を用いた分解性試験前の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体のGPCメインフラクションのピーク面積%が95%であり、試験後のGPCメインフラクションのピーク面積%が5%だったとすると、分解率は以下のように算出される。
分解率 = (95-5)÷95×100 = 94.7(%)
分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、細胞内で効率よく分解されないと、目的とする細胞の空胞を抑制できないため、分解性試験において、96時間後の分解率は、90%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましい。
【0179】
非特許文献2では、高分子量のポリエチレングリコールによる細胞の空胞化は、ポリエチレングリコールの組織への蓄積と関係があるとの記載がある。分解性ポリエチレングリコール誘導体の細胞への蓄積性を評価するための試験方法については、特に制限は無いが、上記の細胞内での分解性により評価することができる。
【実施例
【0180】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
【0181】
下記実施例で得られたH-NMRは、日本電子データム(株)製JNM-ECP400またはJNM-ECA600から得た。測定にはφ5mmチューブを用い、重水素化溶媒には、DOまたは内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を含有するCDClおよびd-DMSOを用いた。得られたポリエチレングリコール誘導体の分子量および末端官能基純度は、液体クロマトグラフィー(GPCおよびHPLC)を用いて算出した。液体クロマトグラフィーのシステムは、GPCには東ソー(株)製「HLC-8320GPC EcoSEC」を用い、HPLCにはWATERS社製「ALLIANCE」を用いた。
【0182】
[実施例1]
【0183】
【化29】
【0184】
[実施例1-1]
【0185】
【化30】
【0186】
平均分子量=20,000、日油株式会社製「SUNBRIGHT MEH-20T」)(10g)をトルエン(40g)に溶解し、110℃で1時間還流脱水した後、40℃まで冷却してトリエチルアミン(80mg)、塩化メタンスルホニル(84mg)を添加し、40℃で3時間反応させた。反応終了後、トルエン(100g)で希釈した後、ヘキサン(100g)を加えて、室温にて30分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、酢酸エチル(200g)に溶解し、ヘキサン(100g)を加えて室温にて15分攪拌して生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、ヘキサン(100g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して化合物(p1)を得た。収量8.9g。
H-NMR(CDCl):3.08ppm(s、3H、-O-SOCH )3.38ppm(s、3H、-O-CH-CH-(O-CH-CH-O-CH )、3.64ppm(m、約1,900H、-O-CH-CH-(O-CH -CH -O-CH
【0187】
[実施例1-2]
【0188】
【化31】
【0189】
塩酸グリシン(5g)を、イオン交換水(50g)に溶解した。NaOH(3.0g)を、前記グリシン水溶液に加え、pHを10.8に調整した。その後、実施例1-1で得られた化合物(p1)(8g)を前記水溶液に添加し、その溶液を40℃で72時間反応させた。反応後、塩酸溶液で反応液のpHを約7に中和した。中和後、クロロホルム(50g)を添加し、室温で15分攪拌した後、有機層を回収した。有機層を濃縮し、酢酸エチル(100g)に再溶解してヘキサン(50g)を添加し、室温で15分攪拌して生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、ヘキサン(50g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して化合物(p2)を得た。収量6.8g。
H-NMR(d-DMSO):2.72ppm(t、2H、-NH-CH -CH-(O-CH-CH-O-CH)3.24ppm(s、3H、-NH-CH-CH-(O-CH-CH-O-CH )、3.48ppm(m、約1,900H、-CH -NH-CHCH -(O-CH -CH -O-CH)、5.52ppm(broad、1H、-NH-CH-COOH)
【0190】
[実施例1-3]
【0191】
【化32】
【0192】
N末端を9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)で保護したL-フェニルアラニル-グリシン(Fmoc-Phe-Gly)(0.44g)と平均分子量=20,000、日油株式会社製「SUNBRIGHT MEPA-20T」(10g)にアセトニトリル(40g)を添加して溶解した。その後、ジイソプロピルエチルアミン(1.56g)と4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドn水和物(DMT-MM)(0.22g)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で1時間反応させた。反応終了後、40℃にて濃縮し、濃縮物にトルエン(100g)を添加して均一になるように攪拌した後、5Aろ紙を用いて吸引ろ過した。得られたろ液にヘキサン(100g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度トルエン(100g)に溶解し、ヘキサン(100g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、ヘキサン(50g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p3)を得た。収量8.6g。
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、2.80ppm(m、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.04ppm(m、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.10ppm(m、2H、-CO-NH-CH -CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、3.24ppm(s、3H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH )、3.48ppm(m、約1,900H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)j-CH)、4.20ppm(m、4H)、7.33ppm(m、9H)、7.66ppm(m、4H、Ar)、7.88ppm(d、2H、Ar)、8.27ppm(t、1H)
【0193】
[実施例1-4]
【0194】
【化33】
【0195】
化合物(p3)(8.0g)をアセトニトリル(40g)に溶解した。その後、ピペリジン(0.86g)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で2時間反応させた。反応終了後、20%食塩水(80g)を添加し、室温にて15分攪拌して洗浄を行った。有機層と水層を分離後、再度、有機層に20%食塩水(80g)を添加し、室温にて15分攪拌して洗浄を行い、有機層を回収した。得られた有機層を40℃にて濃縮し、濃縮物にトルエン(200g)、硫酸マグネシウム(10g)を添加し、室温にて30分攪拌して脱水した後、5Aろ紙を用いて吸引ろ過した。得られたろ液にヘキサン(100g)を添加して室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、ヘキサン(100g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p4)を得た。収量7.2g。
HPLC:アミン純度92%。
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、1.64ppm(broad、1H)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.10ppm(q、2H、-CO-NH-CH -CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、3.24ppm(s、3H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH )、3.48ppm(m、約1,900H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)j-CH)、7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、8.12ppm(broad、1H)
【0196】
[実施例1-5]
【0197】
【化34】
【0198】
実施例1-4で得られた化合物(p4)(6.0g)、酢酸ナトリウム(49mg)、無水グルタル酸(51mg)をトルエン(25g)に溶解し、窒素雰囲気下で40℃にて7時間反応させた。反応終了後、トルエン(20g)で希釈し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、得られたろ液にヘキサン(30g)を添加して室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した。得られた析出物を酢酸エチル(100g)に溶解し、ヘキサン(50g)を添加して室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収し、ヘキサン(50g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p5)を得た。収量4.8g。
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、1.64ppm(broad、1H)、2.05ppm(dd、2H、-NH-CO-CHCH -CH-COOH)2.30ppm(m、4H、-NH-CO-CH -CHCH -COOH)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.10ppm(q、2H、-CO-NH-CH -CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、3.24ppm(s、3H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH )、3.48ppm(m、約1,900H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)j-CH)、7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、8.12ppm(broad、1H)
【0199】
[実施例1-6]
【0200】
【化35】
【0201】
実施例1-5で得られた化合物(p5)(4.5g)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(103mg)をトルエン(25g)に溶解した。その後、ジシクロヘキシルカルボジイミド(139mg)を添加し、40℃にて窒素雰囲気下で3時間反応させた。反応終了後、トルエン(50g)を添加して希釈し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、得られたろ液にヘキサン(50g)を添加し、室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、酢酸エチル(100g)に溶解し、ヘキサン(50g)を添加して室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、ヘキサン(50g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p6)を得た。収量3.5g。
活性エステル純度は98%(H-NMR)。
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、1.64ppm(broad、1H)、2.05ppm(dd、2H、-NH-CO-CHCH -CH-CO-)、2.30ppm(m、4H、-NH-CO-CH -CHCH -COO-)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.72ppm(s、4H、-CO-CH -CH -CO-)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.10ppm(q、2H、-CO-NH-CH -CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、3.24ppm(s、3H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH )、3.48ppm(m、約1,900H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)j-CH)、7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、8.12ppm(broad、1H)
【0202】
[実施例1-7]
【0203】
【化36】
【0204】
実施例1-2で得られた化合物(p2)(3.0g)と実施例1-6で得られた化合物(p6)(3.0g)をジクロロメタン(60g)に溶解した後、トリエチルアミン(95mg)を添加して室温にて8時間反応させた。反応後、20%食塩水(50g)を添加し、室温にて15分攪拌し、反応液を洗浄した後、有機層を回収した。有機層に硫酸マグネシウム(10g)を添加し、室温で15分攪拌した後、5Aろ紙を用いて吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮後、濃縮物を酢酸エチル(100g)に溶解し、ヘキサン(50g)を添加し、室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度、酢酸エチル(100g)に溶解し、ヘキサン(50g)を添加して室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾ-ル(BHT)(10mg)を含有したヘキサン(50g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p7)を得た。収量4.2g。
HPLC:カルボン酸純度は95%。
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、1.64ppm(broad、1H)、2.05ppm(dd、2H、-NH-CO-CHCH -CH-CO-)、2.30ppm(m、4H、-NH-CO-CH -CHCH -CO-)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.24ppm(s、3H、-NH-CH-CH-(O-CH-CH)j-O-CH )、3.48ppm(m、約3,800H、-CH-NH-CH-CH-(O-CH -CH )j-O-CH)、4.61ppm(-CH -COOH)、7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、8.12ppm(broad、1H))
【0205】
[実施例2]
【0206】
【化37】
【0207】
実施例1-7で得られた化合物(p7)(2.0g)とN-Fmoc-エチレンジアミン(32mg)をアセトニトリル(5.0g)に溶解した。その後、ジイソプロピルエチルアミン(16mg)とDMT-MM(415mg)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で2時間反応させた。その後、ピペリジン(107mg)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で2時間反応させた。反応終了後、濃縮し、濃縮物をクロロホルム(50g)に再溶解し、20%食塩水(25g)を添加し、室温にて15分攪拌して洗浄を行い、有機層を回収した。得られた有機層に硫酸マグネシウム(10g)を添加し、室温にて30分攪拌して脱水した後、5Aろ紙を用いて吸引ろ過した。得られたろ液を40℃にて濃縮し、濃縮物にトルエン(100g)を添加して溶解し、ヘキサン(50g)を添加して室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHTを6mg含有したヘキサン(30g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p8)を得た。収量1.3g。
HPLC:アミン純度は93%。
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、1.64ppm(broad、1H)、2.05ppm(dd、2H、-NH-CO-CHCH -CH-CO-)、2.30ppm(m、4H、-NH-CO-CH -CHCH -CO-)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.76ppm(m、2H、-NH-CHCH -NH)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.24ppm(s、3H、-NH-CH-CH-(O-CH-CH)j-O-CH )、3.48ppm(m、約3,800H、-CH-NH-CH-CH-(O-CH -CH )j-O-CH)、7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、7.80ppm(broad、1H)、8.12ppm(broad、1H)
【0208】
[実施例3]
【0209】
【化38】
【0210】
実施例1-7で得られた化合物(p7)(300mg)をアセトニトリル(2g)に溶解した。その後、N-ヒドロキシスクシンイミド(6mg)とジシクロヘキシルカルボジイミド(6mg)を添加し、40℃にて窒素雰囲気下で3時間反応させた。その後、トリエチルアミン(3mg)とN-(2-アミノエチル)マレイミド塩酸塩(5mg)を添加し、40℃にて窒素雰囲気下で3時間反応させた。反応終了後、濃縮し、濃縮物を酢酸エチル(50g)に溶解し、ヘキサン(30g)を添加して室温にて15分攪拌して生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度酢酸エチル(50g)に溶解し、ヘキサン(30g)を添加して室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過紙、析出物を回収した後、BHT(6mg)を含有したヘキサン(30g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p9)を得た。収量264mg。マレイミド純度は92%(H-NMR)。
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、1.64ppm(broad、1H)、2.05ppm(dd、2H、-NH-CO-CHCH -CH-CO-)、2.30ppm(m、4H、-NH-CO-CH -CHCH -CO-)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.66ppm(t、2H、-NH-CO-CH -CH-Maleimide)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.24ppm(s、3H、-NH-CH-CH-(O-CH-CH)j-O-CH )、3.48ppm(m、約3,800H、-CH-NH-CH-CH-(O-CH -CH )j-O-CH)、4.76ppm(t、2H、-NH-CO-CHCH -Maleimide)、6.98ppm(s、2H、-CO-CH-CH-CO-)、7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、7.80ppm(broad、1H)、8.01ppm(broad,1H)、8.12ppm(broad、1H)
【0211】
[実施例4]
【0212】
【化39】
【0213】
実施例1-7で得られた化合物(p7)(1.2g)にトルエン(6g)を添加し、40℃で加温溶解した。その後、N-ヒドロキシスクシンイミド(24mg)とジシクロヘキシルカルボジイミド(24mg)を添加し、40℃にて窒素雰囲気下で3時間反応させた。反応終了後、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、得られたろ液を酢酸エチル(100g)で希釈し、ヘキサン(50g)を添加して室温にて30分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(10mg)を含有したヘキサン(50g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p10)を得た。収量1.0g。活性エステル純度は91%(H-NMR)。
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、1.64ppm(broad、1H)、2.05ppm(dd、2H、-NH-CO-CHCH -CH-CO-)、2.30ppm(m、4H、-NH-CO-CH -CHCH -CO-)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.72ppm(s、4H、-CO-CH -CH -CO-)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.24ppm(s、3H、-NH-CH-CH-(O-CH-CH)j-O-CH )、3.48ppm(m、約3,800H、-CH-NH-CH-CH-(O-CH -CH )j-O-CH)、4.61ppm(-CH -OCO-Succinimide)、7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、8.12ppm(broad、1H)
【0214】
[実施例5]
【0215】
【化40】
【0216】
[実施例5-1]
【0217】
【化41】
【0218】
実施例1-7で得られた化合物(p7)(800mg)をトルエン(7g)に40℃にて加温溶解した後、3-アミノプロピオンアルデヒドジエチルアセタール(9mg)を添加し、50℃にて窒素雰囲気下で2時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル(100g)を添加し、均一になるまで攪拌し、ヘキサン(50g)を添加し、室温にて15分攪拌して生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(10mg)を含有したヘキサン(50g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p11)を得た。収量684mg。
H-NMR(d-DMSO):1.20ppm(t、6H(CH -CH-O)-CH-)1.62ppm(m、2H、CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、1.64ppm(broad、1H)、1.85ppm(dd、2H、-NH-CHCH -CH-(O-CH-CH)、2.05ppm(dd、2H、-NH-CO-CHCH -CH-CO-)、2.30ppm(m、4H、-NH-CO-CH -CHCH -CO-)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.24ppm(s、3H、-NH-CH-CH-(O-CH-CH)j-O-CH )、3.48ppm(m、約3,800H、-CH-NH-CH-CH-(O-CH -CH )j-O-CH)、3.91ppm(-CH -CO-NH-CH-CH-CH-(O-CH-CH)、4.55ppm(t、1H、-CH-(O-CH-CH)7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、8.12ppm(broad、1H)
【0219】
[実施例5-2]
【0220】
【化42】
【0221】
実施例5-1で得られた化合物(p11)(600mg)をpH1.90に調整したりん酸緩衝液(6.0g)に溶解し、室温にて窒素雰囲気下で3時間反応させた。反応後、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pH6.5に調整した後、塩化ナトリウム(1.5g)を添加し溶解した。得られた溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを7.10に調整した後、BHT(2mg)含有のクロロホルム(10g)を添加して室温にて20分攪拌し、有機層に生成物を抽出した。有機層と水層を分離し、有機層を回収した後、水層に再度BHT(4mg)含有のクロロホルム(20g)を添加して、室温で20分攪拌し、有機層に生成物を抽出した。抽出1回目と2回目で得られた有機層を合わせて40℃で濃縮し、得られた濃縮物を酢酸エチル(50g)に溶解し、ヘキサン(30g)を加えて室温にて15分攪拌して生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(6mg)を含有したヘキサン(30g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p12)を得た。収量457mg。アルデヒド純度は90%(H-NMR)。
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、1.64ppm(broad、1H)、2.05ppm(dd、2H、-NH-CO-CHCH -CH-CO-)、2.30ppm(m、4H、-NH-CO-CH -CHCH -CO-)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.66ppm(dd、2H、-CO-NH-CHCH -CHO)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.24ppm(s、3H、-NH-CH-CH-(O-CH-CH)j-O-CH )、3.48ppm(m、約3,800H、-CH-NH-CH-CH-(O-CH -CH )j-O-CH)、3.91ppm(s、2H、-CH -CO-NH-CH-CH-CHO)7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、8.12ppm(broad、1H)、9.72ppm(s、1H、-CO-NH-CH-CHCHO
【0222】
[実施例6]
【0223】
【化43】
【0224】
[実施例6-1]
【0225】
【化44】
【0226】
N末端を9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)で保護したL-グルタミン酸(Fmoc-Glu-OH)(16.0mg)と実施例1-4で得られた化合物(p4)(2.0g)にアセトニトリル(10g)を添加し、30℃で加温溶解した。その後、ジイソプロピルエチルアミン(15mg)とDMT-MM(39.0mg)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で1時間反応させた。その後、ピペリジン(111mg)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で2時間反応させた。反応終了後、反応液をトルエン(80g)で希釈した後、ヘキサン(40g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度トルエン(100g)に溶解し、ヘキサン(50g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(10mg)を含有したヘキサン(50g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p13)を得た。収量1.6g。
HPLC:アミン純度92%。
H-NMR(d-DMSO):1.54ppm(m、2H、-NH-CO-CH(NH)-CH -CH-)、1.62ppm(m、4H、-CO-NH-CHCH -CH-)、1.97ppm(m、2H、-NH-CO-CH(NH)-CHCH -)、2.74ppm(dd、1H、-CO-NH-CH-CH -C)、2.81ppm(dd、1H、-CO-NH-CH-CH -C)、3.11ppm(m、11H)、3.24ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)j-CH)、4.49ppm(m、1H、-CO-NH-CH-CH-C)、4.57ppm(m、1H、-CO-NH-CH-CH-C)、7.25ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.74ppm(m、2H)、8.44ppm(m、2H)、8.61ppm(m、2H)
【0227】
[実施例6-2]
【0228】
【化45】
【0229】
ε-カプロラクトン(114mg)を1N NaOH(0.8mL)に溶解し2時間反応させ、6-ヒドロキシカプロン酸水溶液(0.88M)を調製した。また、実施例6-1で得られた化合物(p13)(1.5g)をアセトニトリル(6g)に溶解した。その後、上記6-ヒドロキシカプロン酸水溶液(80μL)とジイソプロピルエチルアミン(15mg)とDMT-MM(16mg)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で1時間反応させた。反応終了後、反応液を40℃にて濃縮し、得られた濃縮物にクロロホルム(30g)を添加して溶解した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15g)を添加し、室温にて15分攪拌して洗浄を行った。水層と有機層を分離後、再度、有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15g)を添加し、室温にて15分攪拌して洗浄を行い、有機層を回収した。得られたクロロホルム溶液に硫酸マグネシウム(5g)を添加し、30分攪拌して脱水した後、5Aろ紙を用いて吸引ろ過を行った。得られたろ液を40℃にて濃縮し、濃縮物に酢酸エチル(50g)を添加して均一になるように攪拌した後、ヘキサン(25g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度酢酸エチル(50g)に溶解し、ヘキサン(25g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(10mg)含有のヘキサン(50g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p14)を得た。収量1.2g。
H-NMR(CDCl):1.37ppm(m、2H、HO-CH-CHCH -CH-CH-CO-NH-)、1.55ppm(m、4H、HO-CHCH -CHCH -CH-CO-NH-)、1.77ppm(m、4H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)j-CH)、1.85ppm(m、1H)、2.01ppm(m、2H、HO-CH-CH-CH-CHCH -CO-NH-)、3.01ppm(m、1H)、3.24ppm(m、8H)、3.38ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)j-CH)、4.03ppm(m、4H)、4.14ppm(m、1H)、4.48ppm(m、2H、-CO-NH-CH-CH-C)、6.95ppm(broad、1H)、7.00ppm(broad、1H)、7.26ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.66ppm(broad、1H)、8.29ppm(broad、1H)
【0230】
[実施例6-3]
【0231】
【化46】
【0232】
実施例6-2で得られた化合物(p14)(500mg)をジクロロメタン(3.5g)に溶解した。その後、炭酸ジ(N-スクシンイミジル)(51mg)とピリジン(20mg)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で8時間反応させた。反応終了後、5%食塩水(5g)で反応液を洗浄し硫酸マグネシウム(0.1g)を加えて、25℃で30分撹拌した後、5Aろ紙を用いて吸引ろ過を行った。得られたろ液を濃縮後、濃縮物に酢酸エチル(100g)を添加して溶解した後、ヘキサン(50g)を加えて室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(5mg)含有のヘキサン(25g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p15)を得た。収量286mg。活性カーボネート純度は91%(H-NMR)
H-NMR(CDCl):1.38ppm(m、2H、Succinimide-OCO-CH-CHCH -CH-CH-CO-NH-)、1.59ppm(m、2H、Succinimide-OCO-CH-CH-CHCH -CH-CO-NH-)、1.75ppm(m、6H)、1.85ppm(m、1H)、2.13ppm(m、2H、Succinimide-OCO-CH-CH-CH-CHCH -CO-NH-)、2.83ppm(s、4H、-CO-CH -CH -CO-)、3.01ppm(m、1H)、3.19ppm(m、6H)、3.38ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)j-CH)、4.03ppm(m、3H)、4.18ppm(m、1H)、4.31ppm(t、2H、Succinimide-OCO-CH -CH-CH-CH-CH-CO-NH-)、4.50ppm(m、2H、-CO-NH-CH-CH-C)、6.98ppm(broad、1H)、7.15ppm(broad、1H)、7.26ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.81ppm(broad、1H)、8.37ppm(broad、1H)
【0233】
[実施例6-4]
【0234】
【化47】
【0235】
実施例1-2で得られた化合物(p2)(125mg)と実施例6-3で得られた化合物(p15)(250mg)をジクロロメタン(50g)に溶解した後、トリエチルアミン(0.5g)を添加して室温にて8時間反応させた。反応後、20%食塩水(20g)を添加し、室温にて15分攪拌し、反応液を洗浄した後、有機層を回収した。有機層に硫酸マグネシウム(5g)を添加し、室温で15分攪拌した後、5Aろ紙を用いて吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮後、濃縮物を酢酸エチル(100g)に溶解し、ヘキサン(50g)を添加し、室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(4mg)を含有したヘキサン(20g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p16)を得た。収量242mg。
HPLC:カルボン酸純度は90%
H-NMR(d-DMSO):1.29ppm(m、2H、-NH-CO-CH-CHCH -CH-CH-OCO-)、1.58ppm(m、4H、-NH-CO-CHCH -CHCH -CH-OCO-)、1.75ppm(m、6H)、1.85ppm(m、1H)、2.13ppm(m、2H、-NH-CO-CH -CH-CH-CH-CH-OCO-)、3.01ppm(m、1H)、3.19ppm(m、6H)、3.38ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)j-CH )、3.64ppm(m、約5,700H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)j-CH)、3.90ppm(t、2H、-NH-CO-CH-CH-CH-CHCH -OCO-)4.03ppm(m、3H)、4.18ppm(m、1H)、4.37ppm(s、2H、-CH -COOH)4.50ppm(m、2H、-CO-NH-CH-CH-C)、6.98ppm(broad、1H)、7.15ppm(broad、1H)、7.26ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.81ppm(broad、1H)、8.37ppm(broad、1H)
【0236】
[比較例1]
【0237】
【化48】
【0238】
[比較例1-1]
【0239】
【化49】
【0240】
実施例1-2で得られた化合物(1g)と平均分子量が20,000である日油株式会社製「SUNBRIGHT ME-200GS3」(1g)をジクロロメタン(20g)に溶解した後、トリエチルアミン(0.2g)を添加して室温にて8時間反応させた。反応後、20%食塩水(10g)を添加し、室温にて15分攪拌し、反応液を洗浄した後、有機層を回収した。有機層に硫酸マグネシウム(3g)を添加し、室温で15分攪拌した後、5Aろ紙を用いて吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮後、濃縮物を酢酸エチル(100g)に溶解し、ヘキサン(50g)を添加し、室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(6mg)を含有したヘキサン(30g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p17)を得た。収量1.2g。
HPLC:カルボン酸純度は93%。
H-NMR(d-DMSO):1.73ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-(O-CH-CH)j-)、2.03ppm(m、2H、-NH-CO-CHCH -CH-CO-N-)、2.34ppm(t、4H、-NH-CO-CH -CHCH -CO-N-)、3.40ppm(s、6H、-(O-CH-CH)j-O-CH )、3.55ppm(m、約3,800H、-CH-(O-CH -CH )j-O-CH)、4.61ppm(s、2H、-CH -COOH)、7.70ppm(broad、1H、-CHNH-CO-CH-CH-CH-CO-)
【0241】
[比較例1-2]
【0242】
【化50】
【0243】
比較例1-1で得られた化合物(p17)(1.0g)とN-Fmoc-エチレンジアミン(16mg)をアセトニトリル(2.5g)に溶解した。その後、ジイソプロピルエチルアミン(8mg)とDMT-MM(208mg)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で2時間反応させた。その後、ピペリジン(107mg)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で2時間反応させた。反応終了後、濃縮し、濃縮物をクロロホルム(50g)に再溶解し、20%食塩水(25g)を添加し、室温にて15分攪拌して洗浄を行い、有機層を回収した。得られた有機層に硫酸マグネシウム(10g)を添加し、室温にて30分攪拌して脱水した後、5Aろ紙を用いて吸引ろ過した。得られたろ液を40℃にて濃縮し、濃縮物にトルエン(100g)を添加して溶解し、ヘキサン(50g)を添加して室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHTを6mg含有したヘキサン(30g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p8)を得た。収量581mg。
HPLC:アミン純度は90%。
H-NMR(d-DMSO):1.73ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-(O-CH-CH)j-)、2.03ppm(m、2H、-NH-CO-CHCH -CH-CO-N-)、2.34ppm(t、4H、-NH-CO-CH -CHCH -CO-N-)、2.76ppm(m、2H、-CH-CO-NH-CHCH -NH)、3.40ppm(s、6H、-(O-CH-CH)j-O-CH )、3.55ppm(m、約3,800H、-CH-(O-CH -CH )j-O-CH)、3.66ppm(m、2H、-CH-CO-NH-CH -CH-NH)、3.91ppm(s、2H、-N-CH -CO-NH-)、7.70ppm(broad、1H、-CHNH-CO-CH-CH-CH-CO-)、7.83ppm(broad、1H、-CH-CO-NH-CH-CH-NH
【0244】
[実施例8]
血清中での安定性試験
1.5mLのエッペンドルフチューブに、マウスまたはヒト血清1mLを加え、実施例2で得られた分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体である化合物(p8)、比較例1-2で得られた非分解性ポリエチレングリコール誘導体である化合物(p18)、およびメトキシPEGアミン40kDaをそれぞれ5.0mg/mLの濃度になるように添加した。37℃で96時間インキュベ-ション後、200μLをサンプリングし、そこにアセトニトリルを添加し、ボルテックスにて1分間撹拌し、血清中のたんぱく質を析出させ、遠心分離後、上清を回収した。次に脂肪酸等の疎水性物質を除去するため、回収液にヘキサンを添加し、ボルテックスにて1分間撹拌し、遠心分離後、下層を回収した。この溶液を真空条件にて濃縮し、血清中からポリエチレングリコール誘導体の回収を行った。その後、GPC分析を行い、分解性ポリエチレングリコール誘導体の分解率を算出した。
分解率は以下の式にて算出した。
分解率 = (試験前の40kDaのピーク面積% - 試験後の40kDaのピーク面積%) ÷ (試験前の40kDaのピーク面積%) × 100
結果を表1に示す。
【0245】
【表1】
【0246】
表1によれば、分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体である化合物(p8)は、非分解性のポリエチレングリコール誘導体である化合物(p18)、メトキシPEGアミン40kDaと同様に、血清中において分解はみられなかった。つまり、当該分解性ポリエチレングリコール誘導体が血中では安定であることが示された。
【0247】
[実施例9]
細胞を用いた分解性試験
培地RPMI-1640(10%FBS Pn/St)10mLを用いて、100mmディッシュにRAW264.7を10×106cell播種し、37℃で24時間培養後、実施例2で得られた分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体である化合物(p8)、比較例1-2で得られた非分解性のポリエチレングリコール誘導体である化合物(p18)およびメトキシPEGアミン40kDaを10mg/mLの濃度になるよう溶解した培地にそれぞれ交換し、37℃で96時間培養した。培養後、細胞を1%SDS溶液にて溶解し、PBSにて希釈し、そこにアセトニトリルを添加し、ボルテックスにて1分間撹拌し、細胞溶解液中のたんぱく質を析出させ、遠心分離後、上清を回収した。次に脂肪酸等の疎水性物質を除去するため、回収液にヘキサンを添加し、ボルテックスにて1分間撹拌し、遠心分離後、下層を回収した。この溶液を真空条件にて濃縮し、細胞内からポリエチレングリコール誘導体の回収を行った。
また、細胞培養に使用した培地中での分解を確認するため、各種ポリエチレングリコール誘導体を10mg/mLの濃度になるよう溶解した培地のみで37℃で96時間培養し、上記と同操作にてポリエチレングリコール誘導体の回収を行った。
その後、回収した各種ポリエチレングリコール誘導体のGPC分析を行い、実施例8と同じ計算式にて分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体の分解率を算出した。
結果を表2に示す。
【0248】
【表2】
【0249】
表2によれば、分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体である化合物(p8)は、細胞内にて効果的に分解し(分解率99%)、分子量4万から2万に分解することが確認できた。分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、細胞培養で用いた培地では分解しないことから、細胞内で特異的に分解されたことが確認できた。一方で、非分解性のポリエチレングリコール誘導体である化合物(p18)およびメトキシPEGアミン40kDaにおいては、いずれも細胞内での分解はみられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0250】
本発明の分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、細胞の空胞を引き起こさない高分子量のポリエチレングリコール誘導体であり、生体関連物質を修飾する用途に効果的に用いることができ、生体内の血中で安定であり、且つ細胞内で分解される。