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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/04 20060101AFI20241114BHJP
   B23B 31/117 20060101ALI20241114BHJP
   B23Q 3/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B23B29/04 A
B23B31/117 601B
B23Q3/12 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021050807
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148928
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591033755
【氏名又は名称】エヌティーツール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 均
(72)【発明者】
【氏名】守屋 雄介
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-131724(JP,A)
【文献】特開昭62-282808(JP,A)
【文献】特開平6-23610(JP,A)
【文献】国際公開第2018/220771(WO,A1)
【文献】特開2020-172000(JP,A)
【文献】実開昭59-66550(JP,U)
【文献】米国特許第486153(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/04
B23B 31/117
B23B 31/20
B23Q 3/06
B23Q 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンク部を有し、前記シャンク部に凹部が形成されている被クランプ部材をクランプするクランプ装置であって、
本体部と、クランプ機構と、駆動機構とを備え、
前記本体部は、第1本体部内側空間と、第2本体部内側空間と、連通路とを有し、
前記クランプ機構は、前記第1本体部内側空間に配置されており、前記第1本体部内側空間の延在方向に沿って移動可能な第1可動部材と、前記第1可動部材の移動によって容積が変化する第1室と、前記第1可動部材を、前記本体部に対して前記第1室の方向に移動させる弾性力を発生する第1弾性部材と、前記被クランプ部材の前記凹部に係合可能な第1突部を有するコレットとを有し、
前記駆動機構は、前記第2本体部内側空間に配置されており、回転部材と、前記回転部材の回転に連動して、前記第2本体部内側空間の延在方向に沿って移動可能な第2可動部材と、前記第2可動部材の移動によって容積が変化する第2室とを有し、
前記連通路は、前記第1室と前記第2室を連通し、
前記第1室、前記第2室および前記連通路には、動力伝達媒体が充填され、
前記第1室の断面積は、前記第2室の断面積より大きく設定され、
前記回転部材を一方方向に回転させると、前記第2可動部材が、前記第2室と反対側に移動するとともに、前記第1可動部材が、前記第1室側に移動することで、前記コレットの前記第1突部と前記被クランプ部材の前記凹部との係合が可能なクランプモードに設定され、前記回転部材を他方方向に回転させると、前記第2可動部材が、前記第2室側に移動するとともに、前記第1可動部材が、前記第1室と反対側に移動することで、前記コレットの前記第1突部と前記被クランプ部材の前記凹部との係合が不能なアンクランプモードに設定されるように構成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプ装置であって、
前記被クランプ部材の前記シャンク部は、一端側が開口しているシャンク部内側空間を形成するシャンク部内周面を有し、前記凹部は、前記シャンク部内周面に形成されており、
前記第1可動部材は、前記第1室を形成する第1ピストン部と、前記第1ピストン部より前記第1室と反対側に設けられ、前記第1本体部内側空間の延在方向に沿って延在する第1軸部とを有し、
前記コレットは、前記第1軸部の外周側に、周方向に沿って並んで配置されている複数のコレット部材を有し、
前記各コレット部材は、コレット部材内周面とコレット部材外周面を有しているとともに、前記第1突部が、前記第1室と反対側の端部から外周側に飛び出ており、
前記コレット部材内周面は、前記第1軸部の延在方向に沿った断面で見て、第1コレット部材内周面部分と、前記第1コレット部材内周面部分より前記第1室と反対側に形成され、前記第1コレット部材内周面部分の延在方向に対して傾斜角度θで延在している第2コレット部材内周面部分を有し、前記傾斜角度θは、前記第1コレット部材内周面部分の延在線と前記第2コレット部材内周面部分との間の間隔が、前記第1室側から前記第1室と反対側に向かって大きくなるように設定されており、
前記クランプモードでは、前記各コレット部材の前記第1コレット部材内周面部分が前記第1軸部に近づき、前記アンクランプモードでは、前記各コレット部材の前記第2コレット部材内周面部分が前記第1軸部に近づくように構成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のクランプ装置であって、
前記クランプ機構は、第2弾性部材を有し、
前記第2弾性部材は、前記各コレット部材の前記第1コレット部材内周面部分を前記第1軸部に近づける弾性力を発生し、
前記アンクランプモードでは、前記第2弾性部材の弾性力に抗して、前記各コレット部材の前記第2コレット部材内周面部分が前記第1軸部に近づくように構成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のクランプ装置であって、
前記各コレット部材は、前記第1室側の端部に、外周側に飛び出ている第2突部を有し、
前記第1可動部材は、前記各コレット部材の前記第2突部に当接可能な当接部を有し、
前記アンクランプモードでは、前記第1可動部材の前記当接部が、前記各コレット部材の前記第2突部に当接して前記第2突部を押圧することで、前記第2弾性部材の弾性力に抗して、前記各コレット部材の前記第2コレット部材内周面部分が前記第1軸部に近づくように構成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項5】
請求項2~4のうちのいずれか一項に記載のクランプ装置であって、
前記第1軸部は、前記第1室と反対側の端部に、外周側に飛び出ている突部を有し、
前記クランプモードでは、前記第1軸部の前記突部が前記各コレット部材の前記第2コレット部材内周面部分の一部に当接し、前記アンクランプモードでは、前記第1軸部の前記突部と前記各コレット部材の前記第2コレット部材内周面部分の一部との当接が解除されるように構成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項6】
請求項2~5のうちのいずれか一項に記載のクランプ装置であって、
前記本体部は、所定箇所に、前記各コレット部材が、前記第1本体部内側空間の延在方向に沿って前記第1室と反対側に移動するのを規制する移動規制部を有し、
前記クランプ機構は、第3弾性部材を有し、
前記第3弾性部材は、前記第1可動部材と前記各コレット部材を離間させる弾性力を発生するように構成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項7】
請求項1~6のうちのいずれか一項に記載のクランプ装置であって、
前記第2可動部材は、前記第2室を形成する第2ピストン部と、前記第2ピストン部より前記第2室と反対側に設けられ、前記回転部材の回転に連動して、前記第2本体部内側空間の延在方向に沿って移動可能な第2軸部を有していることを特徴とするクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被クランプ部材をクランプするクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工具を用いてワークを加工する工作機械では、工具あるいは工具を保持する工具ホルダ等の被クランプ部材をクランプするクランプ装置が用いられる。例えば、特許文献1に開示されているクランプ装置が用いられている。特許文献1には、モータの回転を利用して被クランプ部材をクランプあるいはアンクランプするクランプ装置が開示されている。具体的には、モータの回転力を、減速機構部、回転運動を直線運動に変換する運動変換機構部を介してクランプ機構部に伝達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-144853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているクランプ装置は、歯車により構成される減速機構部および運動変換機構部を用いているため、構成が複雑であり、高価である。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、モータの回転を利用しながら、安価で、簡単に構成することができるクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のクランプ装置を用いてクランプされる被クランプ部材は、シャンク部を有し、シャンク部に凹部が形成されている。
本発明は、本体部と、クランプ機構と、クランプ機構を駆動する駆動機構を備えている。
本体部は、第1本体部内側空間と、第2本体部内側空間と、連通路とを有している。本体部は、複数の部材をボルト等によって結合して構成することもできるし、単一の部材で構成することもできる。第1本体部内側空間の延在方向および第2本体部内側空間の延在方向は、適宜設定可能である。例えば、交差(直交を含む)する方向あるいは同じ方向(平行)に設定することができる。
クランプ機構は、第1本体部内側空間に配置される。クランプ機構は、第1可動部材、第1室、第1弾性部材、コレットを有している。第1可動部材は、第1本体部内側空間の延在方向に沿って移動可能である。第1室は、第1可動部材の移動によって容積が変化する。第1弾性部材は、第1可動部材を、本体部に対して、第1室側(容積が減少する方向)に移動させる弾性力を発生する。コレットは、被クランプ部材の凹部に係合可能な第1突部を有している。コレットとしては、種々の構成のコレットを用いることができる。好適には、一端側が開口している第1本体部内側空間が設けられ、第1本体部内側空間の一端側(開口部側)に、被クランプ部材のシャンク部が挿入されるシャンク部挿入空間が形成され、他端側(開口部と反対側)に第1室が形成される。
駆動機構は、第2本体部内側空間に配置される。駆動機構は、回転部材、第2可動部材、第2室を有している。第2可動部材は、回転部材の回転に連動して、第2本体部内側空間の延在方向に沿って移動可能である。第2室は、第2可動部材の移動によって容積が変化する。回転部材は、好適には、モータにより駆動される。好適には、一端側が開口している第2本体部内側空間が設けられ、第2本体部内側空間の一端側(開口部側)に回転部材が配置され、他端側(開口部と反対側)に第2室が形成される。
連通路は、第1室と第2室を連通するように形成される。第1室、第2室および連通路には、動力伝達媒体が充填される。動力伝達媒体としては、好適には、油が用いられる。
第1室の断面積は、第2室の断面積より大きく設定されている。これにより、第1可動部材を第1室と反対側に移動させる押圧力を増大することができ、小型のモータで回転部材を駆動する場合でも十分な押圧力を得ることができる。
本発明では、回転部材を一方方向に回転させると、第2可動部材が、第2室と反対側に移動するとともに、第1可動部材が、第1弾性部材の弾性力によって第1室側に移動することで、コレットの第1突部と被クランプ部材の凹部との係合が可能なクランプモードに設定され、回転部材を他方方向に回転させると、第2可動部材が、第2室側に移動するとともに、第1可動部材が、第1弾性部材の弾性力に抗して第1室と反対側に移動することで、コレットの第1突部と被クランプ部材の凹部との係合が不能なアンクランプモードに設定されるように構成されている。第1可動部材の移動に連動してコレットをクランプモードあるいはアンクランプモードに設定する構成としては、種々の構成を用いることができる。
本発明では、安価に、簡単に構成することができるクランプ装置を得ることができる。
本発明の異なる形態は、一端側が開口しているシャンク部内側空間を形成するシャンク部内周面を有するシャンク部を有し、シャンク部内周面に凹部が形成されている被クランプ部材をクランプする。
第1可動部材は、第1室を形成する第1ピストン部と、第1ピストン部より第1室と反対側に設けられ、第1本体部内側空間の延在方向に沿って延在する第1軸部とを有している。第1可動部材は、別体に形成された第1ピストン部と第1軸部をボルト等により結合して構成することもできるし、第1ピストン部と第1軸部を有する単一の部材で構成することもできる。
また、コレットは、第1軸部の外周側に、周方向に沿って並んで配置されている複数のコレット部材を有している。好適には、各コレット部材は、所定箇所より第1室と反対側への移動が規制された状態で配置される。例えば、本体部の所定箇所に、各コレット部材の、第1室と反対側への移動を規制する移動規制部が設けられる。
各コレット部材は、周方向および軸方向に沿って延在している。各コレット部材は、コレット部材内周面とコレット部材外周面を有しているとともに、第1突部が、第1室と反対側の端部から外周側に飛び出ている。コレット部材内周面は、第1軸部の延在方向に沿った断面で見て、第1コレット部材内周面部分と、第1コレット部材内周面部分より第1室と反対側に形成され、第1コレット部材内周面部分の延在方向に対して傾斜角度θで延在している第2コレット部材内周面部分を有している。傾斜角度θは、第1コレット部材内周面部分の延在線と第2コレット部材内周面部分との間の間隔が、第1室側から第1室と反対側に向かって大きくなるように設定されている。好適には、傾斜角度θは、第1コレット部材内周面部分が第1軸部の外周面に近づいた状態(当接した状態を含む)では、第1突部が被クランプ部材の凹部に係合可能であり、第2コレット部材内周面部分が、第1軸部の外周面に近づいた状態(当接した状態を含む)では、第1突部が被クランプ部材の凹部に係合不能となるように設定される。
そして、クランプモードでは、各コレット部材の第1コレット部材内周面部分が第1軸部に近づくように、すなわち、第2コレット部材内周面部分および第1突部が外周側に移動するように構成される。また、アンクランプモードでは、各コレット部材の第2コレット部材内周面部分が第1軸部に近づくように、すなわち、第2コレット部材内周面部分および第1突部が第1軸部に近づき、第1コレット部材内周面部分が外周側に移動するように構成される。第1可動部材の移動に連動して第1コレット部材内周面部分を第1軸部に近づけるクランプモードあるいは第2コレット部材内周面部分を第1軸部に近づけるアンクランプモードに設定する構成としては、種々の構成を用いることができる。
本形態では、容易にクランプモードあるいはアンクランプモードに設定することができる。
本発明の異なる形態では、クランプ機構は、第2弾性部材を有している。第2弾性部材は、各コレット部材の第1コレット部材内周面部分を第1軸部に近づける弾性力を発生する。
そして、アンクランプモードでは、第2弾性部材の弾性力に抗して、各コレット部材の第2コレット部材内周面部分が第1軸部に近づくように構成される。
本形態では、容易にクランプモードあるいはアンクランプモードに設定することができる。
本発明の異なる形態では、各コレット部材は、第1室側の端部に、外周側に飛び出ている第2突部を有している。また、第1可動部材は、各コレット部材の第2突部に当接可能な当接部を有している。
そして、本形態では、アンクランプモードでは、第1可動部材の当接部が、各コレット部材の第2突部に当接して第2突部を押圧することで、第2弾性部材の弾性力に抗して、各コレット部材の第2コレット部材内周面部分が第1軸部に近づくように構成されている。
本形態では、容易にクランプモードあるいはアンクランプモードに設定することができる。
本発明の異なる形態では、第1軸部は、第1室と反対側の端部に、外周側に飛び出ている突部を有している。
そして、クランプモードでは、第1軸部の突部が各コレット部材の第2コレット部材内周面部分の一部に当接し、アンクランプモードでは、第1軸部の突部と各コレット部材の第2コレット部材内周面部分の一部との当接が解除されるように構成される。これにより、クランプ力を高めることができ、第1突部と被クランプ部材の凹部との係合を強固に保持することができる。
本形態では、クランプ力を高めることができる。
本発明の異なる形態では、本体部は、所定箇所に、各コレット部材が、第1本体部内側空間の延在方向に沿って第1室と反対側に移動するのを規制する移動規制部を有している。
また、クランプ機構は、第3弾性部材を有する。第3弾性部材は、第1可動部材と各コレット部材を離間させる弾性力を発生するように構成される。
各コレット部材は、移動規制部および第3弾性部材の弾性力により、第1弾性部材の移動に関係なく、移動規制部によって移動が規制される位置に配置される。
本形態では、容易にクランプモードあるいはアンクランプモードに設定することができる。
本発明の異なる形態では、第2可動部材は、第1室を形成する第2ピストン部と、第2ピストン部より第2室と反対側に設けられ、回転部材の回転に連動して、第2本体部内側空間の延在方向に沿って移動可能な第2軸部を有している。第2可動部材は、別体に形成された第2ピストン部と第2軸部をボルト等により結合して構成することもできるし、第2ピストン部と第2軸部を有する単一の部材で構成することもできる。第2軸部は、例えば、回り止めされた状態で、外周面と第2本体部内側空間を形成する第2本体部内周面とがネジ結合される。
本形態では、簡単な構成で、回転部材の回転を第2本体部内側空間の延在方向に沿った移動に変換することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、安価で、簡単に構成することができるクランプ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態のクランプ装置の断面図である。
図2】第1実施形態のクランプ装置を構成するクランプ機構の断面図である。
図3】第1実施形態のクランプ装置を構成する駆動機構の断面図である。
図4】第1実施形態のクランプ装置を構成するクランプ機構で用いられるコレット装置の一実施形態の側面図である。
図5図4を矢印V方向から見た図である。
図6図5のVI-VI線矢視図である。
図7】第1実施形態のクランプ装置によってクランプされる被クランプ部材の一例の断面図である。
図8】被クランプ部材のシャンク部がシャンク部挿入空間内に挿入されていない状態で、第1実施形態のクランプ装置がクランプモードに設定された場合(図1)における、コレット装置の状態を示す図である。
図9】被クランプ部材のシャンク部がシャンク部挿入空間内に挿入されてない状態で、第1実施形態のクランプ装置がアンクランプモードに設定された状態を示す図である。
図10図9に示されている状態における、コレット装置の状態を示す図である。
図11】第1実施形態のクランプ装置がアンクランプモードに設定されている状態で、工具ホルダのシャンク部がシャンク部挿入空間内に挿入された状態を示す図である。
図12】工具ホルダのシャンク部がシャンク部挿入空間内に挿入されている状態で、第1実施形態のクランプ装置がクランプモードに設定された状態を示す図である。
図13図12に示されている状態における、コレット装置の状態を示す図である。
図14】第2実施形態のクランプ装置の断面図である。
図15】コレット装置の異なる実施形態の側面図である。
図16】アンクランプモードに設定されている場合における、異なる実施形態のコレット装置の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
本発明のクランプ装置の第1実施形態を、図1図3を参照して説明する。なお、図1は、第1実施形態のクランプ装置100の断面図であり、図2は、クランプ機構200の断面図であり、図3は、駆動機構400の断面図である。
【0009】
本実施形態のクランプ装置100は、工具ホルダをクランプする工具ホルダクランプ装置として構成されている。
本実施形態のクランプ装置100によってクランプされる工具ホルダの一例を、図7を参照して説明する。
なお、以下では、工具ホルダ510に関して、工具ホルダ510の中心線Tに沿って、本体部110のシャンク部挿入空間122(後述する)に挿入される側(図7では上側)を「後端側」といい、シャンク部挿入空間122に挿入される側と反対側(図7では下側)を「先端側」という。
図7に示されている工具ホルダ510は、工具550を保持する。
工具ホルダ510は、工具ホルダ後端面510B、工具ホルダ内周面511、工具ホルダ外周面512を有している。
工具ホルダ内周面511は、工具ホルダ内周面部分511a~511fを有し、一端側(後端側)が開口している工具ホルダ内側空間510aを形成する。また、工具ホルダ外周面512は、工具ホルダ外周面部分512a~512cを有している。
工具ホルダ510の後端側には、本体部110のクランプ機構200のシャンク部挿入空間122(後述する)に挿入されるシャンク部520が設けられている。シャンク部520は、工具ホルダ後端面510B、工具ホルダ内周面部分511b~511fを含むシャンク部内周面、工具ホルダ外周面部分512cを含むシャンク部外周面により形成されている。シャンク部内周面およびシャンク部外周面は、円形形状の断面を有している。シャンク部内周面により、一端側(後端側)が開口しているシャンク部内側空間520aが形成される。なお、シャンク部内周面を形成するシャンク部内周面部分(工具ホルダ内周面部分)511eにより、コレット300を構成する各コレット部材310の突部313A(後述する)と係合可能な凹部523が形成されている。好適には、凹部523は、周方向に沿って延在する溝として形成される。
【0010】
本実施形態のクランプ装置100は、本体部110、クランプ機構200、駆動機構400により構成されている。
【0011】
本体部110は、一端が開口している本体部内側空間120と130を有している。本実施形態では、本体部内側空間120と130は、本体部内側空間120(中心線H1)の延在方向と本体部内側空間130(中心線H2)の延在方向が直交するように形成されている。勿論、本体部内側空間120の延在方向と本体部内側空間130の延在方向は、適宜選択することができる。
なお、本体部110は、本体部内側空間120の開口部と反対側に形成される密閉空間121(後述する)と本体部内側空間130の開口部と反対側に形成される密閉空間131(後述する)とを連通する連通路140を有している。
本体部内側空間120が、本発明の「第1本体部内側空間」に対応し、本体部内側空間130が、本発明の「第2本体部内側空間」に対応する。また、密閉空間121が、本発明の「第1室」に対応し、密閉空間131が、本発明の「第2室」に対応し、連通路140が、本発明の「連通路」に対応する。
【0012】
本体部内側空間120を形成する本体部内周面は、図2に示されているように、本体部内周面部分120a~120lを有している。
本体部内周面部分120b~120dによって、中心線H1側(径方向内側)に飛び出ている突部が形成されている。コレット300を構成する各コレット部材310(後述する)は、軸部230(後述する)の外周側に、この突部を跨ぐように、中心線H1の延在方向に沿って配置される。各コレット部材310は、この突部を形成する本体部内周面部分120dに当接すると、軸方向に沿った密閉空間121と反対側への移動が規制される。
本体部内周面部分120dが、本発明の「本体部の所定箇所に設けられ、コレット(各コレット部材)が、第1本体部内側空間の延在方向に沿って第1室と反対側に移動するのを規制する移動規制部」に対応する。
本体部内周面部分120hは、中心線H1の延在方向と交差する方向に延在し、本体部内周面部分120gと120iを接続する段差面に形成されている。
本体部内周面部分120jは、中心線H1の延在方向と交差する方向に延在し、本体部内周面部分120iと120kを接続する段差面に形成されている。本体部内周面部分120jは、可動部材210が、中心線H1に沿って密閉空間121と反対側に移動するのを規制する移動規制部として作用する。
本体部内周面部分120lは、本体部内側空間120の底面を形成する。
本体部内周面部分120aと120bによって、本体部内側空間120の開口部側に、工具ホルダ510のシャンク部520が挿入されるシャンク部挿入空間122が形成される。
【0013】
本体部内側空間130を形成する本体部内周面は、図3に示されているように、本体部内周面部分130a~130iを有している。
本体部内周面部分130fは、中心線H2の延在方向と交差する方向に延在し、本体部内周面部分130eと130gを接続する段差面に形成されている。本体部内周面部分130gは、可動部材430(後述する)が、中心線H2に沿って密閉空間131側に移動するのを規制する移動規制部として作用する。
本体部内周面部分120aは、本体部内側空間130の底面を形成する。
【0014】
クランプ機構200は、本体部内側空間120に配置される。本実施形態では、クランプ機構200は、クランプ機構200の中心線Pが本体部内側空間120の中心線H1と一致(「略一致」を含む)するように配置される。
なお、以下では、クランプ機構200に関して、本体部内側空間120(中心線H1)の延在方向およびクランプ機構200(中心線P)の延在方向に沿って、開口部側(図1および図2では下側)を「先端側」といい、開口部と反対側(図1および図2では上側)を「後端側」という。
【0015】
クランプ機構200は、可動部材210、皿バネ260、環状バネ270、バネ280、コレット300を有している。
可動部材210は、本体部内側区間120の延在方向(以下、「中心線H1の延在方向」という)に沿って移動可能である。可動部材210は、ピストン部220、軸部230、作動部240、押圧部250を有している。本実施形態では、可動部材210は、別体に形成されたピストン部220、軸部230、作動部240、押圧部250をボルト等によって結合して構成されている。勿論、可動部材210は、一つの部材によって構成することもできる。
可動部材210が、本発明の「第1可動部材」に対応する。
【0016】
ピストン部220は、ピストン部先端面220A、ピストン部後端面212B、ピストン部外周面222を有している。ピストン部外周面222は、円形形状の断面を有している。
ピストン部外周面222と本体部内周面部分120kとの間には、Oリング223が配置されている。これにより、本体部内周面部分120k、120lとピストン部220(ピストン部後端面220B)により密閉空間121が形成される。すなわち、ピストン部220は、密閉空間121を形成する。
ピストン部220が、本発明の「第1可動部材の第1ピストン部」に対応する。
【0017】
軸部230は、ピストン部220の先端側(密閉空間121と反対側)に、中心線H1の延在方向に沿って延在している。本実施形態では、軸部230は、円形形状の断面を有している。
軸部230は、軸部先端面230A、軸部後端面230B、軸部外周面232を有している。
軸部外周面232は、軸部外周面部分232a~232dを有している。軸部先端面230Aと軸部外周面部分232a~232cによって、軸部230の先端側に、外周側に飛び出ている突部233が形成される。本実施形態では、軸部外周面部分232bは、中心線H1からの距離が、後端側から先端側に向かって長くなるように傾斜しているテーパー面に形成されている。
軸部230が、本発明の「第1可動部材の第1軸部」に対応し、突部233が、本発明の「第1軸部の突部」に対応する。
【0018】
作動部240は、ピストン部220の先端側で、軸部230の外周側に設けられ、中心線H1に沿って延在している。
作動部240は、筒状に形成され、作動部先端面240A、作動部後端面240B、作動部内周面241、作動部外周面242を有している。作動部内周面241および作動部外周面242は、円形形状の断面を有している。
作動部先端面240Aは、作動部先端面部分240A1~240A3を有している。作動部先端面部分240A2は、中心線H1(P)からの距離が、先端側から後端側に向かって長くなるように傾斜しているテーパー面に形成されている。作動部先端面部分240A2は、コレット300を構成するコレット部材310の突部313B(詳しくは、コレット部材内周面部分311e)(後述する)と当接可能である。
作動部内周面241は、作動部内周面部分241a~241eを有している。作動部内周面部分241cと241dによって、バネ280(後述する)の一方側の端部が挿入可能な空間が形成される。
作動部外周面242は、作動部外周面部分242a~242eを有している。
作動部外周面部分242bは、中心線H1の延在方向と交差する方向に延在し、作動部外周面部分242aと242cを接続する段差面に形成されている。
作動部外周面部分242dは、中心線H1の延在方向と交差する方向に延在し、作動部外周面部分242cと242eを接続する段差面に形成されている。
作動部240が、本発明の「第1可動部材の作動部」に対応し、作動部先端面部分240A2が、本発明の「各コレット部材の第2突部に当接可能な、第1可動部材の当接部」に対応する。
【0019】
押圧部250は、ピストン部220の先端側で、作動部240の外周側に設けられている。
押圧部250は、筒状に形成され、押圧部先端面250A、押圧部後端面250B、押圧部内周面251、押圧部外周面252を有している。
押圧部外周面252は、押圧部外周面部分252a~252cを有している。押圧部外周面部分252bは、中心線H1の延在方向と交差する方向に延在し、押圧部外周面部分252aと252cを接続する段差面に形成されている。
押圧部外周面部分252bが本体部内周面部分120jと当接することにより、可動部材210が、中心線H1に沿って先端側に移動するのが規制される。すなわち、押圧部外周面部分252bと本体部内周面部分120jにより、可動部材210の、中心線H1に沿った先端側への移動を規制する移動規制機構が構成されている。
押圧部250が、本発明の「第1可動部材の押圧部」に対応する。
【0020】
皿バネ260は、本体部内周面部分120hと押圧部先端面250Aとの間に、圧縮された状態で配置されている。すなわち、皿バネ260は、可動部材210を、本体部110に対して、中心線H1に沿って後端側に移動させる弾性力を発生する。
皿バネ260が本発明の「第1可動部材を、本体部に対して第1室の方向に移動させる弾性力を発生する第1弾性部材」に対応する。
【0021】
次に、一実施形態のコレット300を、図4図6を参照して説明する。なお、図4は、コレット300の側面図であり、図5は、図4を矢印V方向から見た図であり、図6は、図5のVI-VI線矢視図である。
【0022】
コレット300は、複数のコレット部材310を有している。
コレット部材310は、軸部230の外周側で、作動部240より先端側に、周方向に沿って並んで配置されている。
コレット部材310は、軸部230の外周側に、周方向および中心線P(H1)に沿って延在し、コレット部材先端面310A、コレット部材後端面310B、内周側に形成されているコレット部材内周面311、外周側に形成されているコレット部材外周面312、周方向に沿って一方側および他方側に形成されているコレット部材側面315を有している。なお、図5に示されているように、中心線Pに直角な方向から見た場合、コレット部材310は、軸部外周面231に沿って円弧状に延在している。
【0023】
コレット部材内周面311は、コレット部材内周面部分311a~311eを有している。コレット部材内周面部分311eは、中心線Pからの距離が、後端側から先端側に向かって大きくなるように傾斜しているテーパー面に形成されている。
中心線P(H1)に沿った断面で見て(図6参照)、コレット部材内周面部分311aは、コレット部材内周面部分311bの延在方向に対して傾斜角度θで延在している。傾斜角度θは、コレット部材内周面部分311bの延在線とコレット部材内周面部分311aとの間の距離が、後端側から先端側に向かって大きくなるように設定される。
コレット部材内周面部分311cに、バネ280の他方側の端部が当接する。
コレット部材外周面312は、コレット部材外周面部分312a~312hを有している。コレット部材外周面部分312gは、中心線P(H1)からの距離が、後端側から先端側に向かって小さくなるように傾斜しているテーパー面に形成されている。
コレット部材先端面310Aとコレット部材外周面部分312aによって、コレット部材310の先端側に、外周側に飛び出ている突部313Aが形成される。突部313Aは、工具ホルダ510の凹部523に係合可能に形成される。
また、コレット部材後端面310B、コレット部材外周面部分312g、312h、コレット部材内周面部分311b~311eによって、コレット部材310の後端側に、外周側に飛び出ている突部313Bが形成されている。突部313Bは、作動部240の当接部が当接可能に構成されている。具体的には、突部313Bを形成するコレット部材内周面部分311eが、作動部240の作動部先端面部分240A2に当接可能に構成されている。
コレット部材内周面部分311aの延在方向に対するコレット部材内周面部分311bの延在方向の傾斜角度θは、コレット部材内周面部分311bが軸部230の軸部外周面232(軸部外周面部分232d)に近づいた状態(当接した状態を含む)において、突部313Aが、シャンク部挿入空間122に挿入されている、工具ホルダ510の凹部523に係合可能であり、コレット部材内周面部分311aが軸部230の軸部外周面232(軸部外周面部分232d)に近づいた状態(当接した状態を含む)において、突部313Aが、シャンク部挿入空間122に挿入されている、工具ホルダ510の凹部523に係合不能であるように設定される。
コレット部材内周面部分311bが、本発明の「第1コレット部材内周面部分」に対応し、コレット部材内周面部分311aが、本発明の「第2コレット部材内周面部分」に対応し、突部313Aが、本発明の「コレット部材の、先端側(第1室と反対側)の端部から外周側に飛び出ている第1突部」に対応し、突部313Bが、本発明の「コレット部材の、後端側(第1室側)の端部から外周側に飛び出ている第2突部」に対応する。
【0024】
また、図4図6に示されているように、各コレット部材310のコレット部材内周面部分311bが、軸部外周面部分232dと当接している状態(コレット部材内周面部分311bの延在方向が軸部230の延在方向と平行)において、周方向に隣接する2つのコレット部材310の間に、中心線Pに沿って延在する隙間316が形成される。隙間316は、隙間316Bと、隙間316Bより先端側に形成され、隙間316Bの間隔より広い間隔を有する隙間316Aを含んでいる。具体的には、各コレット部材310のコレット部材側面315は、中心線Pに沿って延在するコレット部材側面部分315aおよび315cと、コレット部材側面部分315aと315cを段差状に連結するコレット部材側面部分315bを含むように構成されている(図4)。
本実施形態では、隙間316Bは、間隔Nで中心線Pに沿って延在し、隙間316Aは、隙間316Bの間隔Nより広い間隔M(M>N)で中心線Pに沿って延在している。
隙間316Bが、本発明の「コレット部材間の、後端側に形成される第1隙間」に対応し、隙間316Aが、本発明の「コレット部材間の、先端側に形成される第2隙間」に対応する。
【0025】
コレット部材内周面部分311bが軸部外周面部分232dに近づき、コレット部材内周面部分311aが軸部外周面部分232dから離れている状態(クランプモード)から、コレット部材内周面部分311bが軸部外周面部分232dから離れ、コレット部材内周面部分311aが軸部外周面部分232dに近づく状態(アンクランプモード)に移行する場合、周方向に隣接するコレット部材310同士が接触しないように、周方向に隣接するコレット部材310を広い間隔をあけて配置する必要がある。一方、周方向に隣接するコレット部材310を広い隙間をあけて配置すると、コレット部材内周面部分311bが軸部外周面部分232dに近づいた状態(クランプモード)において、周方向に隣接するコレット部材310間の間隔がばらつくおそれがある。コレット部材310間の間隔がばらつくと、各コレット部材310による工具ホルダ510のクランプ力がばらつき、工具ホルダ510の保持特性が低下するおそれがある。
本実施形態では、周方向に隣接する2つのコレット部材310の間に、間隔の異なる隙間を形成するとともに、先端側に形成される隙間316Aの間隔Mを、後端側に形成される隙間316Bの間隔Nより広くしている。先端側の隙間316Aの間隔Mを広くすることにより、アンクランプモードに設定する際に、周方向に隣接するコレット部材310同士が接触するのを防止することができる。また、後端側の隙間316Bの間隔Nを狭くすることにより、クランプモード設定時に、コレット部材310間の間隔がばらつくのを防止することができる。これにより、各コレット部材310による工具ホルダ510のクランプ力を略等しくすることができ、工具ホルダ510を安定して保持することができる。
【0026】
環状バネ270は、周方向に沿って並んで配置されている各コレット部材310を径方向内側に移動させる弾性力を発生する。本実施形態では、環状バネ270として、C字形状を有する環状バネが用いられている。環状バネ270としては、Oリングを用いることもできる。
コレット部材外周面部分312d~312fによって、コレット部材外周面312の、突部313Bより先端側で、コレット部材内周面部分311bに対応する箇所に、周方向に沿って延在する溝312Aが形成される(図6)。
環状バネ270は、周方向に沿って並んで配置されている各コレット部材310の溝312Aに、伸張状態で挿入される。これにより、環状バネ270の弾性力は、コレット部材310のコレット部材内周面部分311bを軸部外周面部分232dに近づける力として作用する。
環状バネ270が、本発明の「第2弾性部材」に対応する。
【0027】
バネ280は、各コレット部材310と作動部240(可動部材210)との間に、圧縮された状態で配置されている。バネ280の弾性力は、各コレット部材310と作動部240(可動部材210)を離間させる力として作用する。各コレット部材310は、本体部内周面部分120dによって、本体部110に対して、中心線H1に沿った先端側(密閉空間121と反対側)への移動が規制されている。このため、バネ280の弾性力は、各コレット部材310を作動部240(可動部材210)に対して後端側に移動させる力として作用する。すなわち、各コレット部材310は、可動部材210の移動に関係なく、本体部内周面部分120dに当接した状態に保持される。
バネ280が、本発明の「第3弾性部材」に対応する。
【0028】
駆動機構400は、本体部内側空間130に配置される。本実施形態では、駆動機構400は、駆動機構400の中心線Qが本体部内側空間130の中心線H2と一致(「略一致」を含む)するように配置される。
なお、以下では、駆動機構400に関して、本体部内側空間130(中心線H2)の延在方向および駆動機構400(中心線Q)の延在方向に沿って、開口部側(図1および図3では右側)を「後端側」といい、開口部と反対側(図1および図3では左側)を「先端側」という。
駆動機構400は、回転部材410、回転部材410より先端側(密閉空間131側)に配置されている可動部材430により構成されている。
【0029】
回転部材410は、本体部内周面部分130f~130iにより形成される本体部内側空間部分に配置される。回転部材410は、筒状に形成され、回転部材先端面410A、先端側が開口している回転部材内側空間410aを形成する回転部材内周面411、回転部材外周面412を有している。回転部材内周面411および回転部材外周面412は、円形形状の断面を有している。
回転部材内周面411は、回転部材内周面部分411a~411dを有している。回転部材内周面部分411bは、中心線H2の延在方向と交差する方向に延在し、回転部材内周面部分411aと411cを接続する段差面に形成されている。回転部材内周面部分411dは、回転部材内側空間410aの底面を形成する。回転部材内周面部分411cには、雌ネジが形成されている。
回転部材外周面412と本体部内周面部分130gとの間には、軸受け部材420が配置されている。これにより、回転部材410は、中心線H2を中心に回転可能である。
本実施形態では、回転部材は、モータによって駆動される。
【0030】
可動部材430は、軸部440、軸部440より先端側(密閉空間131側)に配置されているピストン部450を有している。本実施形態では、可動部材430は、別体に形成された軸部440、ピストン部450をボルト等によって結合して構成されている。勿論、可動部材430は、一つの部材によって構成することもできる。
可動部材430が、本発明の「第2可動部材」に対応する。
【0031】
軸部440は、軸部先端面440A、軸部後端面440B、軸部外周面442を有している。軸部外周面442は、円形形状の断面を有している。
軸部外周面442は、軸部外周面部分442a~442fを有している。
軸部外周面部分442fには、回転部材内周面部分411cに形成されている雌ネジとネジ結合可能な雄ネジが形成されている。また、軸部440は、回り止め部材460によって回転が規制されている。これにより、回転部材410が回転すると、軸部440は、中心線H2に沿って移動する。すなわち、軸部440は、回転部材410の回転運動を中心線H2に沿った直線運動に変換する運動変換部として作用する。
軸部440が、本発明の「第2可動部材の第2軸部」に対応する。
【0032】
ピストン部450は、ピストン部先端面450A、ピストン部後端面450B、ピストン部外周面452を有している。ピストン部外周面452は、円形形状の断面を有している。
ピストン部外周面452と本体部内周面部分130bとの間には、Oリング453が配置されている。これにより、本体部内周面部分130a、130bとピストン部450(ピストン部先端面450A)により密閉空間131が形成される。すなわち、ピストン部450は、密閉空間131を形成する。
なお、密閉空間121、131および連通路140には、動力伝達媒体が充填される。本実施形態では、動力伝達媒体として油が用いられている。
ピストン部450が、本発明の「第2可動部材の第2ピストン部」に対応する。
【0033】
第1実施形態のクランプ装置100の動作を、図8図13を参照して説明する。
シャンク部挿入空間122に、工具ホルダ510のシャンク部520が挿入されていない状態で、クランプモードに設定されている時の状態が、図1図8に示されている。
クランプモードに設定する場合には、駆動機構400の回転部材410を一方方向、例えば反時計回り方向に回転させ、可動部材430(軸部440、ピストン部450)を、中心線H2に沿って密閉空間131と反対側(密閉空間131の容積が増加する方向)に移動させる。これにより、クランプ機構200の可動部材210(ピストン部220、軸部230、作動部240、押圧部250)が、皿バネ260の弾性力によって、中心線H1に沿って密閉空間121側(密閉空間121の容積が減少する方向)に移動する。
この時、コレット300を構成する各コレット部材310は、バネ280の弾性力によって、本体部内周面部分120dに当接した状態に保持される。そして、可動部材210の、密閉空間121側への移動によって、作動部240と各コレット部材310の突部313Bとの当接(具体的には、作動部先端面部分240A2とコレット部材内周面部分311eとの当接)が解除される。これにより、環状バネ270の弾性力によって、各コレット部材310のコレット部材内周面部分311bが、軸部230の軸部外周面232(軸部外周面部分232d)に近づくとともに、コレット部材内周面部分331aおよび突部313Aが外周側に移動する。
また、可動部材210が密閉空間121側に移動することによって、軸部230の突部233(具体的には、突部233を形成する軸部外周面部分232b)が各コレット部材310のコレット部材内周面部分311aの一部に当接する。軸部230の突部233が各コレット部材310のコレット部材内周面部分311aに当接することによって、環状バネ270の弾性力によるクランプ力に、突部233とコレット部材内周面部分311aとの当接によるクランプ力が加えられる。すなわち、クランプ力が高められる。
【0034】
次に、シャンク部挿入空間122内に、工具ホルダ510のシャンク部520を挿入する動作を、図9図11を参照して説明する。
シャンク部挿入空間122内に、工具ホルダ510のシャンク部520を挿入するには、アンクランプモードに設定する必要がある。
アンクランプモードに設定する場合には、駆動機構400の回転部材410を他方方向、例えば時計回り方向に回転させ、可動部材430を、中心線H2に沿って密閉空間131側(密閉空間131の容積が減少する方向)に移動させる。これにより、クランプ機構200の密閉空間121内の圧力が増加し、可動部材210が、皿バネ260の弾性力に抗して、中心線H1に沿って密閉空間121と反対側(密閉空間121の容積が増加する方向)に移動する。
可動部材210が密閉空間121と反対側に移動することによって、軸部230の突部233と各コレット部材310のコレット部材内周面部分311aとの当接が解除される。
この時、可動部材210が密閉空間121と反対側に移動することによって、バネ280は圧縮される。なお、コレット300を構成する各コレット部材310は、バネ280の弾性力によって、本体部内周面部分120dに当接した状態に保持される。
また、可動部材210の、密閉空間121と反対側への移動によって、作動部240と各コレット部材310の突部313Bとが当接(具体的には、作動部先端面部分240A2とコレット部材内周面部分311eとが当接)し、作動部240(作動部先端面部分240A2)から各コレット部材310の突部313B(コレット部材内周面部分311e)に、突部313Bを外周側に移動させる力が作用する。これにより、環状バネ270の弾性力に抗して、各コレット部材310のコレット部材内周面部分331bが外周側に移動するとともに、コレット部材内周面部分331aおよび突部313Aが軸部230の軸部外周面232(軸部外周面部分232d)に近づく。
【0035】
そして、アンクランプモードに設定されている状態で、シャンク部挿入空間122内に、工具ホルダ510のシャンク部520を挿入するとともに、シャンク部内側空間520a内に、各コレット部材310の突部313Aを挿入する(図11)。この時、各コレット部材310の突部313Aは、工具ホルダ510のシャンク部内周面に設けられている凹部523と対向する位置に配置される。
なお、アンクランプモードに設定された状態における各コレット部材310の突部313Aの最大外径H(図10)は、シャンク部内側空間520aの内径D(図7)より小さくなるように(H<D)設定されている。
【0036】
次に、工具ホルダ510をクランプする動作を、図12図13を参照して説明する。
シャンク部挿入空間122内に、工具ホルダ510のシャンク部520が挿入されている状態で、クランプモードに設定する。
前述したように、クランプモードに設定する場合には、駆動機構400の回転部材410を一方方向に回転させ、可動部材430を、中心線H2に沿って密閉空間131と反対側に移動させる。これにより、クランプ機構200の可動部材210が、皿バネ260の弾性力によって、中心線H1に沿って密閉空間121側に移動する。
クランプ機構200の可動部材210が密閉空間121側に移動することによって、軸部240と各コレット部材310の突部313Bとの当接が解除される。そして、環状バネ270の弾性力によって、各コレット部材310のコレット部材内周面部分311bが軸部外周面232に近づくとともに、コレット部材内周面部分311aおよび突部313Aが外周側に移動する。突部313Aが外周側に移動することで、突部313Aが、工具ホルダ510の凹部523と係合する。さらに、軸部230の突部233がコレット部材内周面部分311aの一部と当接することで、クランプ力が高められる。
なお、突部313Aの外周側への移動は、突部313Aが、工具ホルダ510の凹部523と係合することによって規制される。
【0037】
第1実施形態のクランプ装置100では、クランプ機構100が配置される本体部内側空間120(中心線H1)の延在方向と駆動機構400が配置される本体部内側空間130(中心線H2)の延在方向が直交するように構成したが、本体部内側空間120の延在方向と本体部内側空間130の延在方向は、適宜設定することができる。
第2実施形態のクランプ装置が、図14に示されている。第2実施形態のクランプ装置100は、本体部内側空間120(中心線H1)の延在方向と本体部内側空間130(H2)の延在方向が平行となるように構成されている点、連通路140の形状が異なる点以外は、第1実施形態のクランプ装置100と同じ構成である。
【0038】
本発明では、駆動機構とクランプ機構との間の動力伝達機構として、動力伝達媒体が充填される密閉空間を用いているため、安価で、容易に構成することができる。特に、駆動機構が配置される本体部内側空間の延在方向およびクランプ機構が配置される本体部内側空間の延在方向を変更する場合には、本体部に形成される本体部内側空間と連通路を変更するだけでよいため、設計変更が容易である。
【0039】
周方向に隣接する2つのコレット部材の間に形成する隙間の形状を変更した、他の実施形態のコレット600が、図15図16に示されている。
コレット600は、コレット300と同様に、複数のコレット部材610により構成されている。
コレット部材610は、可動部材210の軸部230の軸部外周面部分232dの外周側に周方向に沿って並べて配置されている。また、コレット300と同様に、環状バネ270の弾性力は、各コレット部材610のコレット部材内周面部分611bを軸部外周面部分232dに近づけ、コレット部材内周面部分611aおよび突部613Aを外周側に移動させる力として作用するように構成されている。
また、軸部230(中心線P)の延在方向に沿った断面で見て、各コレット部材610のコレット部材内周面部分611bの延在方向が、軸部外周面部分232dの延在方向と平行である状態において、周方向に隣接する2つのコレット部材610の間に形成される隙間616は、隙間616Bと、隙間616Bより先端側に形成される隙間616Aを含んでいる。
隙間616Bは、間隔Wで中心線Pに沿って延在し、隙間616Aは、間隔が、後端側から先端側に向かって間隔Wから間隔Wより広い間隔V(V>W)となるように中心線Pに沿って延在している。
具体的には、各コレット部材610のコレット部材側面615は、中心線Pに沿って延在するコレット部材側面部分615bと、延在方向が、コレット部材側面部分615bの延在方向に対して傾斜しているコレット部材側面部分615aを含むように構成される(図15)。
本実施形態のコレット600も、コレット300と同様の効果を有する。
隙間616Bが、本発明の「コレット部材間の、後端側に形成される第1隙間」に対応し、隙間616Aが、本発明の「コレット部材間の、先端側に形成される第2隙間」に対応する。
【0040】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
実施形態では、シャンク部を有し、工具を保持している工具ホルダをクランプするクランプ装置について説明したが、本発明は、シャンク部を有する工具等の種々の被クランプ部材をクランプするクランプ装置として構成することができる。すなわち、「被クランプ部材」には、シャンク部を有し、工具を保持している工具ホルダやシャンク部を有する工具等が含まれる。
クランプ機構が配置される本体部内側空間(第1本体部内側空間)や駆動機構が配置される本体部内側空間(第2本体部内側空間)の形状は、実施形態で説明した形状に限定されない。
クランプ機構を構成する可動部材(ピストン部、軸部、作動部、押圧部)、皿バネ、環状バネ、バネおよびコレット等の形状や構成は、実施形態で説明した形状や構成に限定されない。
実施形態では、クランプ機構を可動部材(ピストン部、軸部、作動部、押圧部)、皿バネ、環状バネ、バネおよびコレットにより構成したが、クランプ機構を構成する部材は、これに限定されない。
実施形態では、クランプ機構の可動部材(第1可動部材)を、ピストン部、軸部、作動部および押圧部により構成したが、可動部材(第1可動部材)の構成はこれに限定されない。また、可動部材(第1可動部材)は、1つの部材で構成することもできるし、複数の部材を結合して構成することもできる。
駆動機構を構成する回転部材、可動部材(軸部およびピストン部)等の形状や構成は、実施形態で説明した形状や構成に限定されない。
実施形態では、駆動機構を、回転部材および可動部材(軸部およびピストン部)により構成したが、駆動機構を構成する部材はこれに限定されない。
実施形態では、駆動機構の可動部材(第2可動部材)を、ピストン部と軸部により構成したが、可動部材(第2可動部材)の構成はこれに限定されない。また、可動部材(第2可動部材)は、1つの部材で構成することもできるし、複数の部材を結合して構成することもできる。
弾性部材としては、公知の種々の弾性部材を用いることができる。
コレット部材の突部(第1突部、第2突部)、軸部の突部、皿バネ、環状バネ、バネ等は、必要に応じて適宜取捨選択することができる。
実施形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0041】
100 クランプ装置
110 本体部
120 本体部内側空間(第1本体部内側空間)
120a~120l 本体部内周面部分
121 密閉区間(第1室)
122 シャンク部挿入空間
130 本体部内側空間(第2本体部内側空間)
130a~130i 本体部内周面部分
131 密閉空間(第2室)
140 連通路
200 クランプ機構
210 可動部材(第1可動部材)
220 ピストン部(第1ピストン部)
220A ピストン部先端面
220B ピストン部後端面
222 ピストン部外周面
223 Oリング(シール部材)
230 軸部(第1軸部)
230A 軸部先端面
230B 軸部後端面
232 軸部外周面
232a~232d 軸部外周面部分
233 突部
240 作動部
240A 作動部先端面
240A1~240A3 作動部先端面部分
240B 作動部後端面
241 作動部内周面
241a~241e 作動部内周面部分
242 作動部外周面
242a~242e 作動部外周面部分
250 押圧部
250A 押圧部先端面
250B 押圧部後端面
252 押圧部外周面
252a~252c 押圧部外周面部分
260 皿バネ(第1弾性部材)
270 環状バネ(縮径バネ)(第2弾性部材)
280 バネ(第3弾性部材)
300 コレット
310 コレット部材
310A コレット部材先端面
310B コレット部材後端面
310a コレット部材内側空間
311 コレット部材内周面
311a~311e コレット部材内周面部分
312 コレット部材外周面
312a~312h コレット部材外周面部分
313A 突部(第1突部)
313B 突部(第2突部)
315 コレット部材側面
315a~315c コレット部材側面部分
316A、316B 隙間
400 駆動機構
410 回転部材
410A 回転部材先端面
411 回転部材内周面
411a~411d 回転部材内周面部分
412 回転部材外周面
420 軸受け部材
430 可動部材(第2可動部材)
440 軸部(第2軸部)
440A 軸部先端面
440B 軸部後端面
442 軸部外周面
442a~442f 軸部外周面部分
450 ピストン部(第2ピストン部)
450A ピストン部先端面
450B ピストン部後端面
452 ピストン部外周面
453 Oリング(シール部材)
460 回り止め部材
510 工具ホルダ(被クランプ部材)
510a 工具ホルダ内側空間
510B 工具ホルダ後端面
511 工具ホルダ内周面
511a~511f 工具ホルダ内周面部分
512 工具ホルダ外周面
512a~512c 工具ホルダ外周面部分
520 シャンク部
520a シャンク部内側空間
523 凹部
550 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図15
図16