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7587796光ファイバ振動センシング装置及び光ファイバ振動センシング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】光ファイバ振動センシング装置及び光ファイバ振動センシング方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20241114BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01D5/353 A
G01H9/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021173818
(22)【出願日】2021-10-25
(65)【公開番号】P2023063800
(43)【公開日】2023-05-10
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 佳史
(72)【発明者】
【氏名】飯田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】本田 奈月
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-48269(JP,A)
【文献】特開2008-203239(JP,A)
【文献】特開2015-152399(JP,A)
【文献】特開2007-255966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/353
G01H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光伝送路を有する光伝送媒体と、
前記光伝送媒体の一端で、基本モードの光を高次モードに変換して、光伝送路に入力し、前記光伝送媒体の他端で、前記光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、受信する順方向測定系と、
前記光伝送媒体の他端で、基本モードの光を高次モードに変換して、他の光伝送路に入力し、前記光伝送媒体の一端で、前記他の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、受信する逆方向測定系と、
を備える光ファイバ振動センシング装置。
【請求項2】
前記光伝送媒体は、第1の光伝送路及び第2の光伝送路を備え、
前記順方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
光を送出する順方向計測用光源と、
前記順方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第1の光伝送路に入力する第1の光モードカプラと、を備え、
前記光伝送媒体の他端に、
前記第1の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換する第2の光モードカプラと、
前記第2の光モードカプラからの光を受光する順方向計測用受光器と、を備え、
前記逆方向測定系は、
前記光伝送媒体の他端に、
光を送出する逆方向計測用光源と、
前記逆方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第2の光伝送路に入力する第3の光モードカプラと、を備え、
前記光伝送媒体の一端に、
前記第2の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換する第4の光モードカプラと、
前記第4の光モードカプラからの光を受光する逆方向計測用受光器と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ振動センシング装置。
【請求項3】
前記光伝送媒体は、第1の光伝送路、第2の光伝送路、第3の光伝送路及び第4の光伝送路を備え、
前記順方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
光を送出する順方向計測用光源と、
前記順方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第1の光伝送路に入力する第1の光モードカプラと、
前記第3の光伝送路からの光を受光する順方向計測用受光器と、を備え、
前記光伝送媒体の他端に、
前記第1の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、前記第3の光伝送路に出力する第2の光モードカプラを備え、
前記逆方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
前記第4の光伝送路に光を送出する逆方向計測用光源と、
前記第2の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換する第4の光モードカプラと、
前記第4の光モードカプラからの光を受光する逆方向計測用受光器と、を備え、
前記光伝送媒体の他端に、
前記第4の光伝送路からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第2の光伝送路に入力する第3の光モードカプラを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ振動センシング装置。
【請求項4】
前記光伝送媒体は、光伝送路を備え、
前記順方向測定系及び前記逆方向測定系は、光を合分岐する第5の光モードカプラを前記光伝送媒体の一端に共用して備え、光を合分岐する第6の光モードカプラを前記光伝送媒体の他端に共用して備え、
前記順方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
光を送出する順方向計測用光源を備え、
前記第5の光モードカプラで前記順方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記光伝送路に入力し、
前記光伝送媒体の他端に、
光を受光する順方向計測用受光器を備え、
前記第6の光モードカプラで前記光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、前記順方向計測用受光器に出力し、
前記逆方向測定系は、
前記光伝送媒体の他端に、
前記順方向計測用光源と異なる波長の光を送出する逆方向計測用光源を備え、
前記第6の光モードカプラで前記逆方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記光伝送路に入力し、
前記光伝送媒体の一端に、
前記第5の光モードカプラからの光を受光する逆方向計測用受光器を備え、
前記第5の光モードカプラで前記光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、前記逆方向計測用受光器に出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ振動センシング装置。
【請求項5】
前記光伝送媒体は、第1の光伝送路、第3の光伝送路及び第4の光伝送路を備え、
前記順方向測定系及び前記逆方向測定系は、光を合分岐する第5の光モードカプラを前記光伝送媒体の一端に共用して備え、光を合分岐する第6の光モードカプラを前記光伝送媒体の他端に共用して備え、
前記順方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
光を送出する順方向計測用光源と、
前記第3の光伝送路からの光を受光する順方向計測用受光器と、を備え、
前記第5の光モードカプラで前記順方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第1の光伝送路に入力し、
前記光伝送媒体の他端で、
前記第6の光モードカプラで前記第1の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、前記第3の光伝送路に出力し、
前記逆方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
前記順方向計測用光源と異なる波長の光を前記第4の光伝送路に送出する逆方向計測用光源と、
前記第5の光モードカプラからの光を受光する逆方向計測用受光器と、を備え、
前記第5の光モードカプラで前記第1の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、前記逆方向計測用受光器に出力し、
前記光伝送媒体の他端で、
前記第6の光モードカプラで前記第4の光伝送路からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第1の光伝送路に入力する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ振動センシング装置。
【請求項6】
前記順方向測定系からの電気信号をAD変換する第1のAD変換器と、
前記逆方向測定系からの電気信号をAD変換する第2のAD変換器と、
前記第1のAD変換器からの信号及び前記第2のAD変換器からの信号を用いて、振動の発生場所を特定する解析装置と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ振動センシング装置。
【請求項7】
前記順方向計測用受光器からの電気信号をAD変換する第1のAD変換器と、
前記逆方向計測用受光器からの電気信号をAD変換する第2のAD変換器と、
前記第1のAD変換器からの信号及び前記第2のAD変換器からの信号を用いて、振動の発生場所を特定する解析装置と、
をさらに備えることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の光ファイバ振動センシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高次モードの光を用いた光ファイバ振動センシング技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ振動センシング技術としては、複数の光ファイバリング干渉計を構成し、光ファイバリング干渉系単位で振動を検知することにより侵入等の異常を検知する方法が提案され製品化されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
光ファイバ干渉系によって振動発生位置を特定する方法としては、光ファイバリング干渉計にサブループを付加した手法が提案されている。サブループを複数回通過することで見かけ上複数の光路が同一光ファイバリング内に構成され、それぞれの経路を通過した光による干渉光出力を比較することにより位置を同定することができる(例えば、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】株式会社フジクラエンジニアリング、“光ファイバ侵入検知システム”、https://www.fen.fujikura.jp/products/pro01/tel-co-pdf02.pdf (Accessed 2021.1.7)
【文献】大森達也、荻原弘晃、 橋本研也、 山口正恆、“光ファイバリング干渉計型振動センサにおける振動位置同定法”、電子情報通信学会論文誌B、Vol.J89-B、No.4、pp.594-601、2006
【文献】Nobutomo Hanzawa、Kuimasa Saitoh、Taiji Sakamoto、Takashi Matsui、Kyozo Tsujikawa、Masanori Koshiba、and Fumihiko Yamamoto、“Two-mode PLC-based mode multi/demultiplexer for mode and wavelength division multiplexed transmission”、21 Oct 2013(C) 2013 OSA 4 November 2013 | Vol. 21, No. 22 | DOI:10.1364/OE.21.025752 | OPTICS EXPRESS 25752
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1で実用化されている装置では検出区間ごとに、分岐結合器と呼ばれる折り返し装置を取り付ける必要がある。分布的に振動検出するためには、分岐結合器を必要数取り付ける必要があるので、施工面での大きな課題となる。
【0006】
また、非特許文献2では、振動位置を同定することが可能ではある。しかしながら、光ファイバリング干渉計の1カ所への振動付与を前提としているため、光ファイバリング干渉計全体をリング形態でない一つの光ファイバケーブル内へ実装すると、2カ所に振動が発生することから、適用が難しいという課題がある。
【0007】
本開示は、上記事情に着目してなされたもので、簡易な構成で、振動が付加された位置を特定することが可能な光ファイバ振動センシングを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
光伝送路の双方向から高次モードの透過光強度を測定し、振動が発生した位置に応じた到着時間差を検出することによって、振動が付加された位置を特定することした。
【0009】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、
複数の光伝送路を有する光伝送媒体と、
複数の光伝送路を有する光伝送媒体と、
前記光伝送媒体の一端で、基本モードの光を高次モードに変換して、光伝送路に入力し、前記光伝送媒体の他端で、前記光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、受信する順方向測定系と、
前記光伝送媒体の他端で、基本モードの光を高次モードに変換して、他の光伝送路に入力し、前記光伝送媒体の一端で、前記他の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、受信する逆方向測定系と、
を備える。
【0010】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、
前記光伝送媒体は、第1の光伝送路及び第2の光伝送路を備え、
前記順方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
光を送出する順方向計測用光源と、
前記順方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第1の光伝送路に入力する第1の光モードカプラと、を備え、
前記光伝送媒体の他端に、
前記第1の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換する第2の光モードカプラと、
前記第2の光モードカプラからの光を受光する順方向計測用受光器と、を備え、
前記逆方向測定系は、
前記光伝送媒体の他端に、
光を送出する逆方向計測用光源と、
前記逆方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第2の光伝送路に入力する第3の光モードカプラと、を備え、
前記光伝送媒体の一端に、
前記第2の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換する第4の光モードカプラと、
前記第4の光モードカプラからの光を受光する逆方向計測用受光器と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、
前記光伝送媒体は、第1の光伝送路、第2の光伝送路、第3の光伝送路及び第4の光伝送路を備え、
前記順方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
光を送出する順方向計測用光源と、
前記順方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第1の光伝送路に入力する第1の光モードカプラと、
前記第3の光伝送路からの光を受光する順方向計測用受光器と、を備え、
前記光伝送媒体の他端に、
前記第1の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、前記第3の光伝送路に出力する第2の光モードカプラを備え、
前記逆方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
前記第4の光伝送路に光を送出する逆方向計測用光源と、
前記第2の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換する第4の光モードカプラと、
前記第4の光モードカプラからの光を受光する逆方向計測用受光器と、を備え、
前記光伝送媒体の他端に、
前記第4の光伝送路からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第2の光伝送路に入力する第3の光モードカプラを備える
ことを特徴とする。
【0012】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、
前記光伝送媒体は、光伝送路を備え、
前記順方向測定系及び前記逆方向測定系は、光を合分岐する第5の光モードカプラを前記光伝送媒体の一端に共用して備え、光を合分岐する第6の光モードカプラを前記光伝送媒体の他端に共用して備え、
前記順方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
光を送出する順方向計測用光源を備え、
前記第5の光モードカプラで前記順方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記光伝送路に入力し、
前記光伝送媒体の他端に、
光を受光する順方向計測用受光器を備え、
前記第6の光モードカプラで前記光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、前記順方向計測用受光器に出力し、
前記逆方向測定系は、
前記光伝送媒体の他端に、
前記順方向計測用光源と異なる波長の光を送出する逆方向計測用光源を備え、
前記第6の光モードカプラで前記逆方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記光伝送路に入力し、
前記光伝送媒体の一端に、
前記第5の光モードカプラからの光を受光する逆方向計測用受光器を備え、
前記第5の光モードカプラで前記光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、前記逆方向計測用受光器に出力する
ことを特徴とする。
【0013】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、
前記光伝送媒体は、第1の光伝送路、第3の光伝送路及び第4の光伝送路を備え、
前記順方向測定系及び前記逆方向測定系は、光を合分岐する第5の光モードカプラを前記光伝送媒体の一端に共用して備え、光を合分岐する第6の光モードカプラを前記光伝送媒体の他端に共用して備え、
前記順方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
光を送出する順方向計測用光源と、
前記第3の光伝送路からの光を受光する順方向計測用受光器と、を備え、
前記第5の光モードカプラで前記順方向計測用光源からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第1の光伝送路に入力し、
前記光伝送媒体の他端で、
前記第6の光モードカプラで前記第1の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、前記第3の光伝送路に出力し、
前記逆方向測定系は、
前記光伝送媒体の一端に、
前記順方向計測用光源と異なる波長の光を前記第4の光伝送路に送出する逆方向計測用光源と、
前記第5の光モードカプラからの光を受光する逆方向計測用受光器と、を備え、
前記第5の光モードカプラで前記第1の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、前記逆方向計測用光源に出力し、
前記光伝送媒体の他端で、
前記第6の光モードカプラで前記第4の光伝送路からの基本モードの光を高次モードに変換して、前記第1の光伝送路に入力する
ことを特徴とする。
【0014】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、
前記順方向測定系からの電気信号をAD変換する第1のAD変換器と、
前記逆方向測定系からの電気信号をAD変換する第2のAD変換器と、
前記第1のAD変換器からの信号及び前記第2のAD変換器からの信号を用いて、振動の発生場所を特定する解析装置と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、
前記順方向計測用受光器からの電気信号をAD変換する第1のAD変換器と、
前記逆方向計測用受光器からの電気信号をAD変換する第2のAD変換器と、
前記第1のAD変換器からの信号及び前記第2のAD変換器からの信号を用いて、振動の発生場所を特定する解析装置と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング方法は、
順方向測定系及び光の進行方向を順方向測定系と逆にした逆方向測定系から、それぞれ干渉波信号w1(t)、w2(t)を取得する一定時間データ取得工程と、
式(8)におけるτを変化させ、相関値(w1*w2)(τ)が最大になる時のτをΔTとして求める相互相関計算工程と、
(w1*w2)(τ) = Σ w1(t)×w2(τ-t) (8)
光伝送路の他端から振動が付加される地点までの距離Lvを式(4)で求める振動発生位置計算工程と、
Lv = (L-c2×ΔT)c1/(c1+c2) (4)
ただし、Lは複数の光伝送路を有する光伝送媒体の全長
c1は順方向測定系の光伝送路中の光速
c2は逆方向測定系の光伝送路中の光速
を備える。
【発明の効果】
【0017】
本開示の光ファイバ振動センシング装置及び光ファイバ振動センシング方法は、簡易な構成で、振動が付加された位置を特定することが可能な光ファイバ振動センシングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の光ファイバ振動センシング装置の構成の一例を示す図である。
図2】本開示の光ファイバ振動センシング装置の構成の一例を示す図である。
図3】本開示の光ファイバ振動センシング装置の構成の一例を示す図である。
図4】本開示の光ファイバ振動センシング装置の構成の一例を示す図である。
図5】本開示の光ファイバ振動センシング装置の構成の一例を示す図である。
図6】本開示の光ファイバ振動センシング方法の処理の一例を示す図である。
図7】本開示の光モードカプラの構成の一例を示す図である。
図8】本開示の光モードカプラの構成の一例を示す図である。
図9】本開示の光モードカプラの構成の一例を示す図である。
図10】本開示の光モードカプラの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
(基本構成の実施形態)
本実施形態の光ファイバ振動センシング装置の構成を図1に示す。図1において、1は複数の光伝送路を有する光伝送媒体、10は順方向測定系、11は逆方向測定系である。
【0021】
複数の光伝送路として複数の光ファイバで、光伝送媒体として複数の光ファイバを有する多芯光ファイバケーブル又はリボン型光ファイバケーブルや、複数の光伝送路として複数のコアを有するマルチコア光ファイバのコアで、光伝送媒体としてマルチコア光ファイバ又はマルチコア光ファイバケーブルが例示できる。
【0022】
順方向測定系10では、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端で、基本モードの光を高次モードに変換して、光伝送路に入力し、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端で、光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光のみを基本モードに変換して、受信する。逆方向測定系11では、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端で、基本モードの光を高次モードに変換して、他の光伝送路に入力し、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端で、他の光伝送路を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光のみを基本モードに変換して、受信する。順方向測定系10と逆方向測定系11では光の進行方向を逆に設定する。
【0023】
上記各光伝送路は、順方向測定系10と逆方向測定系11の利用する光の波長において、高次モードの光が伝搬可能であることとする。
【0024】
図1において、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1に振動が付加されると、これに応じた振動が順方向測定系10を構成する光伝送路及び逆方向測定系11を構成する光伝送路にも付加される。振動によって、高次モードの光の電界分布は変化する。電界分布が変化すると、光伝送路を伝搬してきた光のうち高次モードの光を基本モードに変換する際の変換効率が変化する。
【0025】
このことから、順方向測定系では、振動が付加される地点Pvに応じたタイミングで光強度の変動を観測することができる。同様に、逆方向測定系でも、振動が付加される地点Pvに応じた光強度を観測することができる。
【0026】
本実施形態の光ファイバ振動センシング装置は、順方向測定系からの電気信号をAD変換する第1のAD変換器と、逆方向測定系からの電気信号をAD変換する第2のAD変換器と、第1のAD変換器からの信号及び第2のAD変換器からの信号を用いて、振動の発生場所を特定する解析装置と、をさらに備えてもよい。順方向測定系及び逆方向測定系で観測された光強度はそれぞれ第1のAD変換器、第2のAD変換器を経て解析装置に取り込まれ、解析装置は振動の発生場所を特定する。
【0027】
(応用実施形態1)
本実施形態の光ファイバ振動センシング装置の構成を図2に示す。図2において、1は複数の光伝送路を有する光伝送媒体、20は第1の光伝送路、21は第2の光伝送路、100は順方向計測用光源、101は逆方向計測用光源、200は順方向計測用受光器、201は逆方向計測用受光器、300は第1の光モードカプラ、310は第2の光モードカプラ、301は第3の光モードカプラ、311は第4の光モードカプラ、400は第1のAD変換器、401は第2のAD変換器、500は解析装置である。
【0028】
光ファイバ振動センシング装置は、それぞれの光の進行方向を逆に設定した順方向測定系と逆方向測定系を備える。
【0029】
順方向測定系として、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に、光を送出する順方向計測用光源100と、順方向計測用光源100からの基本モードの光を高次モードに変換して、第1の光伝送路20に入力する第1の光モードカプラ300と、を備える。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端に、第1の光伝送路20を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光のみを基本モードに変換する第2の光モードカプラ310と、第2の光モードカプラ310からの光を受光する順方向計測用受光器200と、を備える。
【0030】
順方向測定系では、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある順方向計測用光源100が光を送出し、第1の光モードカプラ300が順方向計測用光源100からの基本モードの光を高次モードに変換して、第1の光伝送路20に入力する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端にある第2の光モードカプラ310が第1の光伝送路20を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光のみを基本モードに変換し、順方向計測用受光器200が第2の光モードカプラ310からの光を受光する。
【0031】
逆方向測定系として、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端に、光を送出する逆方向計測用光源101と、逆方向計測用光源101からの基本モードの光を高次モードに変換して、第2の光伝送路21に入力する第3の光モードカプラ301と、を備える。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に、第2の光伝送路21を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光のみを基本モードに変換する第4の光モードカプラ311と、第4の光モードカプラ311からの光を受光する逆方向計測用受光器201と、を備える。
【0032】
逆方向測定系では、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端にある逆方向計測用光源101が光を送出し、第3の光モードカプラ301が逆方向計測用光源101からの基本モードの光を高次モードに変換して、第2の光伝送路21に入力する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある第4の光モードカプラ311が第2の光伝送路21を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光のみを基本モードに変換して、逆方向計測用受光器201が第4の光モードカプラ311からの光を受光する。
【0033】
第1の光モードカプラ300の構成の一例を図7に示す。図7において、第1の光モードカプラ300は、入力された基本モードの光を高次モードの光に変換し、出力する。光モードカプラとしては、非特許文献3に詳しい。第3の光モードカプラ301についても同様の構成が例示できる。以下の応用実施形態でも同様である。
【0034】
第2の光モードカプラ310の構成の一例を図8に示す。図8において、第2の光モードカプラ310は、第1の光モードカプラ300の入出力関係を逆にしたものである。即ち、第2の光モードカプラ310は、直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して他の出力端子に出力する。光モードカプラとしては、非特許文献3に詳しい。第4の光モードカプラ311についても同様の構成が例示できる。以下の応用実施形態でも同様である。
【0035】
第1の光伝送路20は、順方向計測用光源100の送出する光の波長において、高次モードの光が伝搬可能であることとする。第2の光伝送路21は、逆方向計測用光源101の送出する光の波長において、高次モードの光が伝搬可能であることとする。
【0036】
本開示の光ファイバ振動センシング装置は、簡易な構成で、振動が付加された位置を特定することが可能な光ファイバ振動センシングを実現することができる。
【0037】
(応用実施形態2)
本実施形態の光ファイバ振動センシング装置の構成を図3に示す。図3において、1は複数の光伝送路を有する光伝送媒体、20は第1の光伝送路、21は第2の光伝送路、40は第3の光伝送路、41は第4の光伝送路、100は順方向計測用光源、101は逆方向計測用光源、200は順方向計測用受光器、201は逆方向計測用受光器、300は第1の光モードカプラ、310は第2の光モードカプラ、301は第3の光モードカプラ、311は第4の光モードカプラ、400は第1のAD変換器、401は第2のAD変換器、500は解析装置である。
【0038】
光ファイバ振動センシング装置は、それぞれの光の進行方向を逆に設定した順方向測定系と逆方向測定系を備える。基本的な動作原理は、応用実施形態1と同様であるが、順方向測定系の順方向計測用受光器200及び逆方向測定系の逆方向計測用光源101を複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に配置している点が応用実施形態1と異なる。
【0039】
順方向測定系として、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に、光を送出する順方向計測用光源100と、順方向計測用光源100からの基本モードの光を高次モードに変換して、第1の光伝送路20に入力する第1の光モードカプラ300と、第3の光伝送路40からの光を受光する順方向計測用受光器200と、を備える。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端に、第1の光伝送路20を伝搬してきた光のうち、直交する2つの高次モードの内一方の光を基本モードに変換して、第3の光伝送路40に出力する第2の光モードカプラ310と、を備える。
【0040】
順方向測定系では、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある順方向計測用光源100が光を送出し、第1の光モードカプラ300が順方向計測用光源100からの基本モードの光を高次モードに変換して、第1の光伝送路20に入力する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端にある第2の光モードカプラ310が第1の光伝送路20を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、第3の光伝送路40に出力する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある順方向計測用受光器200が第3の光伝送路40からの光を受光する。
【0041】
逆方向測定系として、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に、第4の光伝送路41に光を送出する逆方向計測用光源101と、第2の光伝送路21を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換する第4の光モードカプラ311と、第4の光モードカプラ311からの光を受光する逆方向計測用受光器201と、を備える。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端に、第4の光伝送路41からの基本モードの光を高次モードに変換して、第2の光伝送路21に入力する第3の光モードカプラ301を備える。
【0042】
逆方向測定系では、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある逆方向計測用光源101が第4の光伝送路41に光を送出する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端にある第3の光モードカプラ301が第4の光伝送路41を伝搬してきた基本モードの光を高次モードに変換して、第2の光伝送路21に入力する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある第4の光モードカプラ311が第2の光伝送路21を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、逆方向計測用受光器201が第4の光モードカプラ311からの光を受光する。
【0043】
第1の光伝送路20は、順方向計測用光源100の送出する光の波長において、高次モードの光が伝搬可能であることとする。第3の光伝送路40は、順方向計測用光源100の送出する光の波長において、基本モードの光だけ又は高次モードの光も伝搬可能であることとする。第2の光伝送路21は、逆方向計測用光源101の送出する光の波長において、高次モードの光が伝搬可能であることとする。第4の光伝送路41は、逆方向計測用光源101の送出する光の波長において、基本モードの光だけ又は高次モードの光も伝搬可能であることとする。
【0044】
本開示の光ファイバ振動センシング装置は、簡易な構成で、振動が付加された位置を特定することが可能な光ファイバ振動センシングを実現することができる。また、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、能動装置である順方向計測用光源100、逆方向計測用光源101、順方向計測用受光器200及び逆方向計測用受光器201を同じ側(複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端)に配置することができる。
【0045】
(応用実施形態3)
本実施形態の光ファイバ振動センシング装置の構成を図4に示す。図4において、1は複数の光伝送路を有する光伝送媒体、20は第1の光伝送路、21は第2の光伝送路、100は順方向計測用光源、101は逆方向計測用光源、200は順方向計測用受光器、201は逆方向計測用受光器、320は第5の光モードカプラ、330は第6の光モードカプラ、400は第1のAD変換器、401は第2のAD変換器、500は解析装置である。本応用実施形態では、1本の光ファイバに対して、波長分割多重技術により、順方向測定系と逆方向測定系では異なる光伝送路を確保している。
【0046】
光ファイバ振動センシング装置は、それぞれの光の進行方向を逆に設定した順方向測定系と逆方向測定系を備える。基本的な動作原理は、応用実施形態1と同様であるが、順方向測定系の順方向計測用光源100と逆方向測定系の逆方向計測用光源101に異なる波長を用いることで、順方向測定系と逆方向測定系とで同一の光ファイバを共用する点が応用実施形態1と異なる。
【0047】
順方向測定系及び逆方向測定系は、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に、第1の光伝送路20及び第2の光伝送路21に接続され、光を合分岐する第5の光モードカプラ320を共用して備え、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端に、第1の光伝送路20及び第2の光伝送路21に接続され、光を合分岐する第6の光モードカプラ330を共用して備える。
【0048】
順方向測定系として、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に、光を送出する順方向計測用光源100と、順方向計測用光源100からの基本モードの光を高次モードに変換して、第1の光伝送路20に入力する第5の光モードカプラ320と、を備える。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端に、第1の光伝送路20を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、順方向計測用受光器200に出力する第6の光モードカプラ330と、第6の光モードカプラ330からの光を受光する順方向計測用受光器200と、を備える。
【0049】
順方向測定系では、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある順方向計測用光源100が光を送出し、第5の光モードカプラ320が順方向計測用光源100からの基本モードの光を高次モードに変換して、第1の光伝送路20に入力する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端にある第6の光モードカプラ330が第1の光伝送路20を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、順方向計測用受光器200に出力する。順方向計測用受光器200が第6の光モードカプラ330からの光を受光する。
【0050】
逆方向測定系として、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端に、順方向計測用光源100と異なる波長の光を送出する逆方向計測用光源101と、逆方向計測用光源101からの基本モードの光を高次モードに変換して、第2の光伝送路21に入力する第6の光モードカプラ330と、を備える。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に、第2の光伝送路21を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、逆方向計測用受光器201に出力する第5の光モードカプラ320と、第5の光モードカプラ320からの光を受光する逆方向計測用受光器201と、を備える。
【0051】
逆方向測定系では、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端にある逆方向計測用光源101が光を送出し、第6の光モードカプラ330が逆方向計測用光源101からの基本モードの光を高次モードに変換して、第2の光伝送路21に入力する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある第5の光モードカプラ320が第2の光伝送路21を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、逆方向計測用受光器201に出力する。逆方向計測用受光器201が第5の光モードカプラ320からの光を受光する。
【0052】
第5の光モードカプラ320の構成の一例を図9に示す。図9において、第5の光モードカプラ320は、光サーキュレータ320-1及び光モード変換カプラ320-2で構成される。光サーキュレータ320-1は、図面で左側の端子に入力された基本モードの光を図面で右側の端子に出力する。図面で右側から入力された光に対しては、図面で下の端子に出力する。光モード変換カプラ300-2は、図面で左側の入力端子に入力された基本モードの光を高次モードの光に変換し、図面で右側の出力端子に出力する。図面で右側からの光に対しては逆の動作をする。光モード変換カプラ300-2は、図面で右側の入力端子に入力された直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードの光に変換し、図面で左側の他の出力端子に出力する。光モード変換カプラとしては、非特許文献3に詳しい。以下の応用実施形態でも同様である。
【0053】
第6の光モードカプラ330の構成の一例を図10に示す。図10に示す第6の光モードカプラは第5の光モードカプラ320と同様の動作をする。図面上、左右反対の構成となっているだけである。光モード変換カプラとしては、非特許文献3に詳しい。以下の応用実施形態でも同様である。
【0054】
第1の光伝送路20は、順方向計測用光源100の送出する光の波長において、高次モードの光が伝搬可能であることとする。第2の光伝送路21は、逆方向計測用光源101の送出する光の波長において、高次モードの光が伝搬可能であることとする。
【0055】
本開示の光ファイバ振動センシング装置は、簡易な構成で、振動が付加された位置を特定することが可能な光ファイバ振動センシングを実現することができる。また、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、順方向測定系と逆方向測定系に異なる波長を用いることで、同一の光ファイバを共用することができる。
【0056】
(応用実施形態4)
本実施形態の光ファイバ振動センシング装置の構成を図5に示す。図5において、1は複数の光伝送路を有する光伝送媒体、20は第1の光伝送路、21は第2の光伝送路、40は第3の光伝送路、41は第4の光伝送路、100は順方向計測用光源、101は逆方向計測用光源、200は順方向計測用受光器、201は逆方向計測用受光器、320は第5の光モードカプラ、330は第6の光モードカプラ、400は第1のAD変換器、401は第2のAD変換器、500は解析装置である。本応用実施形態では、1本の光ファイバに対して、波長分割多重技術により、順方向測定系と逆方向測定系で異なる光伝送路を確保している。
【0057】
光ファイバ振動センシング装置は、それぞれの光の進行方向を逆に設定した順方向測定系と逆方向測定系を備える。基本的な動作原理は、応用実施形態1と同様であるが、順方向測定系の順方向計測用受光器200及び逆方向測定系の逆方向計測用光源101を複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に配置している点が応用実施形態1と異なる。また、順方向測定系の順方向計測用光源100と逆方向測定系の逆方向計測用光源101に異なる波長を用いることで、順方向測定系と逆方向測定系とで同一の光ファイバを共用する点が応用実施形態1と異なる。
【0058】
順方向測定系及び逆方向測定系は、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に、第1の光伝送路20及び第2の光伝送路21に接続され、光を合分岐する第5の光モードカプラ320を共用して備え、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端に、第1の光伝送路20及び第2の光伝送路21に接続され、光を合分岐する第6の光モードカプラ330を共用して備える。
【0059】
順方向測定系として、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に、光を送出する順方向計測用光源100と、順方向計測用光源100からの基本モードの光を高次モードに変換して、第1の光伝送路20に入力する第5の光モードカプラ320と、第3の光伝送路40からの光を受光する順方向計測用受光器200と、を備える。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端に、第1の光伝送路20を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、第3の光伝送路40に出力する第6の光モードカプラ330と、を備える。
【0060】
順方向測定系では、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある順方向計測用光源100が光を送出し、第5の光モードカプラ320が順方向計測用光源100からの基本モードの光を高次モードに変換して、第1の光伝送路20に入力する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端にある第6の光モードカプラ330が第1の光伝送路20を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、第3の光伝送路40に出力する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある順方向計測用受光器200が第3の光伝送路40からの光を受光する。
【0061】
逆方向測定系として、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端に、順方向計測用光源100と異なる波長の光を第4の光伝送路41に送出する逆方向計測用光源101と、第2の光伝送路21を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、逆方向計測用受光器201に出力する第5の光モードカプラ320と、第5の光モードカプラ320からの光を受光する逆方向計測用受光器201と、を備える。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端に、第4の光伝送路41からの基本モードの光を高次モードに変換して、第2の光伝送路21に入力する第6の光モードカプラ330を備える。
【0062】
逆方向測定系では、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある逆方向計測用光源101が第4の光伝送路41に光を送出する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の他端にある第6の光モードカプラ330が第4の光伝送路41を伝搬してきた基本モードの光を高次モードに変換して、第2の光伝送路21に入力する。複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端にある第5の光モードカプラ320が第2の光伝送路21を伝搬してきた直交する2つの高次モードの光のうち一方の光を基本モードに変換して、逆方向計測用受光器201に出力する。逆方向計測用受光器201が第5の光モードカプラ320からの光を受光する。
【0063】
第1の光伝送路20は、順方向計測用光源100の送出する光の波長において、高次モードの光が伝搬可能な伝搬定数を有する。第3の光伝送路40は、順方向計測用光源100の送出する光の波長において、基本モードの光だけ又は高次モードの光も伝搬可能な伝搬定数を有する。第2の光伝送路21は、逆方向計測用光源101の送出する光の波長において、高次モードの光が伝搬可能な伝搬定数を有する。第4の光伝送路41は、逆方向計測用光源101の送出する光の波長において、基本モードの光だけ又は高次モードの光も伝搬可能な伝搬定数を有する。
【0064】
本開示の光ファイバ振動センシング装置は、簡易な構成で、振動が付加された位置を特定することが可能な光ファイバ振動センシングを実現することができる。また、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、能動装置である順方向計測用光源100、逆方向計測用光源101、順方向計測用受光器200及び逆方向計測用受光器201を同じ側(複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の一端)に配置することができる。さらに、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、順方向測定系と逆方向測定系に異なる波長を用いることで、同一の光ファイバを共用することができる。
【0065】
(応用実施形態5)
基本構成の実施形態及び応用実施形態1から4において、光ファイバ振動センシング装置は、さらに、順方向測定系(応用実施形態1から4においては、順方向計測用受光器200)からの電気信号をAD変換する第1のAD変換器400と、逆方向測定系(応用実施形態1から4においては、逆方向計測用受光器201)からの電気信号をAD変換する第2のAD変換器401と、第1のAD変換器400からの信号及び第2のAD変換器401からの信号を用いて、振動の発生場所を特定する解析装置500と、を備えてもよい。
【0066】
図1において、複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の全長をL、光伝送路の他端から振動が付加される地点Pvまでの距離をLvとすると、地点Pvにおいて付加された振動に起因する光強度変動が順方向測定系の光伝送路の他端に到達するまでの時間T1は、
T1 = Lv/c1 (1)
となる。ただし、c1は順方向測定系の光伝送路中の光速である。
【0067】
また、地点Pvにおいて付加された振動に起因する光強度変動が逆方向測定系の光伝送路の一端に到達するまでの時間T2は、
T2 = (L-Lv)/c2 (2)
となる。ただし,c2は逆方向測定系の光伝送路中の光速である。
【0068】
この結果、地点Pvにおいて付加された振動に起因する光強度変動が順方向測定系の光伝送路の他端に到達してから逆方向測定系の光伝送路の一端に到達するまでの時間差ΔTは、
ΔT = T2-T1
= (L-Lv)/c2-Lv/c1 (3)
で得られる。これより、光伝送路の他端から振動が付加される地点Pvまでの距離Lvは、式(4)で求まる。
Lv = (L-c2×ΔT)c1/(c1+c2) (4)
【0069】
ここで、順方向測定系と逆方向測定系の光伝送路中の光速が共にcであるとすると、式(4)は
Lv = (L-c×ΔT)/2 (5)
となる。例えば、振動を付加する地点Pvが複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の中間地点にある場合は、
ΔT = 0 (6)
である。式(5)は、
Lv = L/2 (7)
となる。(7)式より、振動を付加する地点Pvが複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の半分の位置であることから、式(4)の妥当性が示される。
【0070】
このように、地点Pvで付加された振動による光強度変動が順方向測定系の光伝送路の他端に到達してから逆方向測定系の光伝送路の一端に到達するまでの時間差ΔTを計測することで、順方向測定系の光伝送路の他端から振動が付加される地点Pvまでの距離Lvを得ることができる。なお、光モードカプラにて直交する2つの高次モードの光のうち一方を基本モードに変換したときに初めて光強度変動が発生するが、ここでは、便宜上、振動を付加した地点から光強度変動が伝搬するように説明している。
【0071】
同時刻に順方向計測用受光器200と逆方向計測用受光器201で観測される2つの干渉波信号をw1(t)、w2(t)とする。ΔTはこれらw1(t)とw2(t)の相互相関値が最大値をとる時のシフト量と等しい。すなわち、次式におけるτを変化させ、相関値(w1*w2)(τ)が最大になる時のτをΔTとすることで求めることができる。
(w1*w2)(τ) = Σ w1(t)×w2(τ-t) (8)
【0072】
第1のAD変換器400及び第2のAD変換器401を通じて、解析装置500が干渉波信号を取り込み、一定時間ごとに相互相関を計算し、ΔTを求めることで、振動発生位置Pvまでの距離Lvを特定することが可能となる。よって、振動が付加された地点を逐次得ることができる。
【0073】
なお、解析装置500は、光伝送路の他端から順方向計測用受光器200までの光信号の遅延時間、及び順方向計測用受光器200から第1のAD変換器400を経由して解析装置500に至るまでの電気信号の遅延時間、と光伝送路の一端から逆方向計測用受光器201までの光信号の遅延時間、逆方向計測用受光器201から第2のAD変換器401を経由して解析装置500に至るまでの電気信号の遅延時間を考慮して、振動の発生場所を特定する。
【0074】
解析装置500の実行する光ファイバ位置センシング方法のフローチャートを図6に示す。一定時間データ取得工程600では、順方向測定系(応用実施形態1から4では順方向計測用受光器200)及び光の進行方向を順方向測定系と逆にした逆方向測定系(応用実施形態1から4では逆方向計測用受光器201)からそれぞれ干渉波信号w1(t)、w2(t)を取得する。
【0075】
相互相関計算工程601では、式(8)におけるτを変化させ、相関値(w1*w2)(τ)が最大になる時のτをΔTとして求める。
(w1*w2)(τ) = Σ w1(t)×w2(τ-t) (8)
【0076】
振動発生位置計算工程603では、光伝送路の他端から振動が付加される地点までの距離Lvを式(4)で求める。
Lv = (L-c2×ΔT)c1/(c1+c2) (4)
ただし、Lは複数の光伝送路を有する光伝送媒体の全長、c1は準方向測定系の光伝送路中の光速、c2は逆方向測定系の光伝送路中の光速である。
【0077】
なお、相互相関計算工程601と振動発生位置計算工程603との間に、有効時間差計算工程602を備えてもよい。順方向計測用受光器200および逆方向計測用受光器201で受信する干渉信号は、干渉状態によっては信号雑音比(SNR)が悪く有効な時間差ΔTでない場合が考えられる。そこで,有効時間差計算工程602では,複数の光伝送路を有する光伝送媒体1の最長距離Lから想定される最大時間差ΔTmaxとΔTの絶対値を比較し、
|ΔT| ≦ ΔTmax (9)
でなければ、再度、一定時間データ取得工程600に戻り、データの取得からやり直す。ここで、ΔTmaxは,次式で得られる。
ΔTmax = max{L/c1,L/c2} (10)
式(9)を満たす場合は、振動発生位置計算工程603に進む。
【0078】
以上説明したように、本開示の光ファイバ振動センシング装置及び光ファイバ振動センシング方法は、簡易な構成で、振動が付加された位置を特定することが可能な光ファイバ振動センシングを実現することができる。
【0079】
本発明の解析装置はコンピュータとプログラムによっても実現できる。そのプログラムを記録媒体に記録することも、通信ネットワークを通して提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1:複数の光伝送路を有する光伝送媒体
10:順方向測定系
11:逆方向測定系
20:第1の光伝送路
21:第2の光伝送路
40:第3の光伝送路
41:第4の光伝送路
100:順方向計測用光源
101:逆方向計測用光源
200:順方向計測用受光器
201:逆方向計測用受光器
300:第1の光モードカプラ
300-2:光モード変換カプラ
310:第2の光モードカプラ
301:第3の光モードカプラ
311:第4の光モードカプラ
320:第5の光モードカプラ
320-1:光サーキュレータ
320-2:光モード変換カプラ
330:第6の光モードカプラ
400:第1のAD変換器
401:第2のAD変換器
500:解析装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10