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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】廃棄物焼却設備
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/44 20060101AFI20241114BHJP
   F23C 9/00 20060101ALI20241114BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20241114BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F23G5/44 B
F23C9/00
F23G5/00 B
F23J15/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023567761
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2022045527
(87)【国際公開番号】W WO2023112863
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2021202827
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】古林 通孝
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕
(72)【発明者】
【氏名】永森 稔朗
(72)【発明者】
【氏名】冨山 茂男
(72)【発明者】
【氏名】植田 全紀
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】高岡 昌輝
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-026428(JP,A)
【文献】特開平09-194863(JP,A)
【文献】特開2005-164205(JP,A)
【文献】特開2004-309079(JP,A)
【文献】国際公開第2004/074409(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/44
F23C 9/00
F23G 5/00
F23J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却設備であって、
廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉への投入前の廃棄物を貯留する廃棄物ピットと、
前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、
前記排ガス流路に設けられる集じん器と、
前記排ガス流路において前記集じん器よりも下流側に設けられ、前記排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、
前記二酸化炭素回収装置を通過した前記排ガスの少なくとも一部を処理済みガスとして前記廃棄物ピットへと供給する処理済みガスラインと、
前記廃棄物ピット内のガスを抜き出しガスとして抜き出して前記焼却炉内に供給する抜き出しガスラインと、
を備える廃棄物焼却設備
【請求項2】
請求項1に記載の廃棄物焼却設備であって
前記抜き出しガスラインを流れる前記抜き出しガスに対して、空気よりも酸素濃度が高いガスを混合する酸素混合部と、
をさらに備える廃棄物焼却設備
【請求項3】
棄物焼却設備であって、
廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉への投入前の廃棄物を貯留する廃棄物ピットと、
前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、
前記排ガス流路に設けられる集じん器と、
前記排ガス流路において前記集じん器よりも下流側に設けられ、前記排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、
前記二酸化炭素回収装置を通過した前記排ガスの少なくとも一部を処理済みガスとして前記廃棄物ピットへと供給する処理済みガスラインと、
を備え、
前記処理済みガスラインから前記廃棄物ピットの下部に前記処理済みガスが供給され、前記廃棄物ピット内の廃棄物の堆積層を通過した前記処理済みガスが前記焼却炉内に供給される廃棄物焼却設備
【請求項4】
請求項1に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記廃棄物ピットに接続するプラットホームにおいて、二重扉構造が設けられる廃棄物焼却設備
【請求項5】
請求項1に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記処理済みガスラインにおいて前記処理済みガスから水を除去する分離膜をさらに備える廃棄物焼却設備
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の廃棄物焼却設備であって、
前記処理済みガスラインが、前記二酸化炭素回収装置を通過した前記排ガスの全部を前記処理済みガスとして前記廃棄物ピットへと供給する廃棄物焼却設備
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却設備に関する。
[関連出願の参照]
本願は、2021年12月14日に出願された日本国特許出願JP2021-202827からの優先権の利益を主張し、当該出願の全ての開示は、本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物焼却設備では、排ガス流路を流れる排ガスの一部を再循環排ガスとして取り出して焼却炉内に供給することが行われている。再循環排ガスの利用により、廃棄物焼却設備からの排ガス量を低減することが可能となる。例えば、特開平10-9538号公報(文献1)では、第一燃焼炉に投入された都市ごみを酸素の供給により燃焼するとともに、ボイラーを経た排ガスの一部を第一燃焼炉内に循環させる焼却施設が開示されている。また、文献1では、排ガスから二酸化炭素および水を回収し、煙突を不要とすることも記載されている。
【0003】
なお、特開2015-209992号公報(文献2)では、焼却前の廃棄物を排ガスによって乾燥する廃棄物焼却処理装置が開示されている。具体的には、廃棄物ピットと廃棄物焼却炉との間の位置に、廃棄物を一時係留する中間係留部が設けられる。除塵装置を通過した排ガスが、中間係留部内の廃棄物と熱交換することにより、廃棄物が乾燥する。当該排ガスは、中間係留部から煙突へと導かれ、大気へ放出される。
【0004】
近年、廃棄物焼却設備からの排ガス量の更なる低減が求められている。しかしながら、廃棄物の燃焼に必要な酸素量を確保するため、再循環排ガスが利用可能な量には制限がある。したがって、排ガス量を低減する新規な手法が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、廃棄物焼却設備に向けられており、廃棄物焼却設備において外部に排出する排ガス量を低減することを目的としている。
【0006】
本発明の態様1は、廃棄物焼却設備であって、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉への投入前の廃棄物を貯留する廃棄物ピットと、前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、前記排ガス流路に設けられる集じん器と、前記排ガス流路において前記集じん器よりも下流側に設けられ、前記排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、前記二酸化炭素回収装置を通過した前記排ガスの少なくとも一部を処理済みガスとして前記廃棄物ピットまたは/および前記焼却炉へと供給する処理済みガスラインとを備える。
【0007】
本発明によれば、廃棄物焼却設備において外部に排出する排ガス量を低減することができる。
【0008】
本発明の態様2は、態様1の廃棄物焼却設備であって、前記処理済みガスが前記廃棄物ピットに供給されており、前記廃棄物ピット内のガスを抜き出しガスとして抜き出して前記焼却炉内に供給する抜き出しガスラインと、前記抜き出しガスラインを流れる前記抜き出しガスに対して、空気よりも酸素濃度が高いガスを混合する酸素混合部とをさらに備える。
【0009】
本発明の態様3は、態様1(態様1または2であってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記処理済みガスラインから前記廃棄物ピットの下部に前記処理済みガスが供給され、前記廃棄物ピット内の廃棄物の堆積層を通過した前記処理済みガスが前記焼却炉内に供給される。
【0010】
本発明の態様4は、態様1(態様1ないし3のいずれか1つであってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記排ガス流路において前記集じん器よりも下流側、かつ、前記二酸化炭素回収装置よりも上流側の取出位置に接続され、前記排ガス流路を流れる前記排ガスの一部を再循環排ガスとして取り出して前記焼却炉内に供給する再循環排ガスラインをさらに備え、前記処理済みガスラインが、前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに前記処理済みガスを混合し、前記再循環排ガスラインを介して前記処理済みガスを前記焼却炉へと供給する。
【0011】
本発明の態様5は、態様1(態様1ないし4のいずれか1つであってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記廃棄物ピットに接続するプラットホームにおいて、二重扉構造が設けられる。
【0012】
本発明の態様6は、態様1(態様1ないし5のいずれか1つであってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記処理済みガスラインにおいて前記処理済みガスから水を除去する分離膜をさらに備える。
【0013】
本発明の態様7は、態様1ないし6のいずれか1つの廃棄物焼却設備であって、前記処理済みガスラインが、前記二酸化炭素回収装置を通過した前記排ガスの全部を前記処理済みガスとして前記廃棄物ピットまたは/および前記焼却炉へと供給する。
【0014】
上述の目的および他の目的、特徴、態様および利点は、添付した図面を参照して以下に行うこの発明の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るごみ焼却設備の構成を示すブロック図である。
図2】ごみピットおよび焼却炉の構成を示す図である。
図3】第2実施形態に係るごみ焼却設備の一部を示す図である。
図4】第3実施形態に係るごみ焼却設備を示すブロック図である。
図5】第4実施形態に係るごみ焼却設備を示すブロック図である。
図6】第5実施形態に係るごみ焼却設備を示すブロック図である。
図7】第6実施形態に係るごみ焼却設備を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るごみ焼却設備1の構成を示すブロック図である。ごみ焼却設備1は、廃棄物焼却設備であり、ごみピット2と、焼却炉3と、排ガス流路4と、制御部(図示省略)とを備える。制御部は、例えば、CPU等を備えるコンピュータであり、ごみ焼却設備1の全体制御を担う。ごみピット2は、廃棄物ピットであり、廃棄物であるごみを貯留する。焼却炉3は、ごみピット2から投入されるごみを焼却する。排ガス流路4は、焼却炉3から排出される排ガスが流れる煙道である。図1の例では、排ガス流路4は、焼却炉3から後述の二酸化炭素回収装置44に至る流路である。図1では、焼却炉3と後述のボイラ管群41との間の矢印のみに符号4を付している。ごみピット2および焼却炉3の詳細については後述する。
【0017】
ごみ焼却設備1は、ボイラ管群41と、ろ過式集じん器42(以下、単に「集じん器42」という。)と、湿式洗煙塔43と、二酸化炭素回収装置44とをさらに備える。ボイラ管群41、集じん器42、湿式洗煙塔43および二酸化炭素回収装置44は、排ガス流路4に設けられ、排ガスの流れ方向における上流側から下流側に向かって(すなわち、焼却炉3から離れる方向に向かって)順に配置される。
【0018】
ボイラ管群41は、焼却炉3から排出される排ガスを熱源として蒸気を生成する。集じん器42は、いわゆるバグフィルタであり、排ガスに含まれる飛灰をろ布により捕集する。集じん器42の上流側において、粉末状の排ガス処理薬剤が排ガスに供給され、集じん器42において飛灰と共に当該排ガス処理薬剤が捕集されてもよい。排ガス処理薬剤は、硫黄酸化物、塩化水素、ダイオキシン類、水銀化合物等の除去に利用される。集じん器42の出口における排ガスの温度は、例えば150℃~200℃である。集じん器42を通過した排ガスは湿式洗煙塔43に流入する。
【0019】
湿式洗煙塔43は、例えば、苛性ソーダ等のアルカリ薬剤および水を含む液体を排ガス中に噴霧する。これにより、排ガスの温度を、例えば30℃~70℃に低下させるとともに、排ガスに含まれる硫黄酸化物、塩化水素等を除去する。また、排ガスの温度低下にともない、排ガス中に含まれる水分量も減る。湿式洗煙塔43は、排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫部であり、排ガス中の塩化水素を除去する脱塩部でもある。二酸化炭素回収装置44は、湿式洗煙塔43を通過した排ガスから二酸化炭素を回収する。二酸化炭素回収装置44の一例は、化学吸収法により二酸化炭素を回収するものであり、吸収塔と、再生塔とを備える。吸収塔では、例えば、アミンおよび水を含む液体が排ガス中に噴霧され、二酸化炭素が当該液体に吸収される。すなわち、排ガスから二酸化炭素が除去される。二酸化炭素を吸収した液体は、再生塔に送られて加熱され、二酸化炭素が取り出されて回収される。回収された二酸化炭素は、メタネーションによるメタンの生成等に利用されたり、地中等に貯留される(CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage))。後述の再循環排ガスライン6が設けられるごみ焼却設備1では、排ガス中の二酸化炭素濃度が高くなっているため、CCUSを容易に行うことができる。二酸化炭素回収装置44は、化学吸収法以外の方式により二酸化炭素を回収するものであってもよい。
【0020】
以上のように、湿式洗煙塔43および二酸化炭素回収装置44は、集じん器42を通過した排ガスに対して水を含む液体を供給して、排ガスから所定成分を除去する排ガス処理部45である。以下の説明では、湿式洗煙塔43および二酸化炭素回収装置44(排ガス処理部45)を通過した排ガスを、「処理済みガス」という。ごみ焼却設備1における処理済みガスは、水、酸素および窒素を多く含むガスである。
【0021】
ごみ焼却設備1は、処理済みガスライン5と、排ガス再加熱器51と、誘引通風機52とをさらに備える。処理済みガスライン5は、二酸化炭素回収装置44から排出される処理済みガスが流れる流路である。処理済みガスライン5は2つに分岐しており、一方がごみピット2に接続され、他方が煙突59に接続される。排ガス再加熱器51および誘引通風機52は、処理済みガスライン5に設けられ、処理済みガスの流れにおける上流側から下流側に向かって(すなわち、二酸化炭素回収装置44から離れる方向に向かって)順に配置される。図1の例では、処理済みガスライン5の上記分岐点が、誘引通風機52の下流側に設けられる。図1では、二酸化炭素回収装置44と排ガス再加熱器51との間の矢印のみに符号5を付している。
【0022】
排ガス再加熱器51は、例えば、ボイラ(ボイラ管群41)からの蒸気を熱媒体として用いて処理済みガスを加熱する。これにより、処理済みガスライン5において水分が凝縮することが抑制される。その結果、処理済みガス中の硫黄酸化物、塩化水素等の酸性ガスが、凝縮した水に溶け込むことによる処理済みガスライン5の管壁の腐食が抑制される。誘引通風機52は、排ガス流路4および処理済みガスライン5において上流側から下流側へと向かうガスの流れ(すなわち、焼却炉3から集じん器42、二酸化炭素回収装置44等を介してごみピット2および煙突59へと向かうガスの流れ)を形成する。二酸化炭素回収装置44、排ガス再加熱器51および誘引通風機52を通過した処理済みガスの一部は、ごみピット2に供給され、残りの処理済みガスは、煙突59から外部に排出される。処理済みガスライン5の分岐点は、誘引通風機52の上流側に設けられてもよい。この場合、処理済みガスライン5において当該分岐点とごみピット2との間にファンが設けられる。ごみ焼却設備1では、例えば、アンモニア水等の還元剤を焼却炉3内に噴出する還元剤供給部が設けられ、無触媒脱硝(SNCR)が行われてもよい。二酸化炭素回収装置44を通過した排ガスは、通常、空気よりも酸素濃度が高いため、ごみ焼却設備1が設けられる施設の屋上や、土壌中に排出されてもよい。また、処理済みガスを焼却炉3内に戻すことで、二酸化炭素回収装置44を通過した処理済みガスに含まれる余剰酸素を再度燃焼に利用することができる。
【0023】
ごみ焼却設備1は、再循環排ガスライン6と、ファン66と、予熱器67と、酸素混合部68とをさらに備える。再循環排ガスライン6は、後述の再循環排ガスが流れる流路であり、再循環排ガスライン6の一端は、排ガス流路4において集じん器42よりも下流側の取出位置P1に接続される。図1の例では、取出位置P1は、湿式洗煙塔43と二酸化炭素回収装置44との間の位置である。再循環排ガスライン6により、排ガス流路4を流れる排ガスの一部が再循環排ガスとして取り出される。既述の二酸化炭素回収装置44は、排ガス流路4において取出位置P1よりも下流側に設けられるため、取出位置P1から取り出された再循環排ガスは、高い二酸化炭素濃度、および、低い酸素濃度を有する。再循環排ガスライン6の他端は、焼却炉3に接続され、当該再循環排ガスが焼却炉3内に供給される。図1では、取出位置P1に接続する矢印のみに符号6を付している。
【0024】
ファン66および予熱器67は、再循環排ガスライン6に設けられる。ごみ焼却設備1の一例では、再循環排ガスの流れにおける上流側から下流側に向かって(すなわち、取出位置P1から離れる方向に向かって)、予熱器67およびファン66が順に配置される。2つの予熱器(第1および第2予熱器)が用いられ、上流側から下流側に向かって第1予熱器、ファン66および第2予熱器が順に配置されてもよい。再循環排ガスライン6におけるファン66および予熱器67の順序は任意に決定されてよい。
【0025】
ファン66は、再循環排ガスライン6の上流側から下流側へと向かう再循環排ガスの流れを形成する。予熱器67は、例えば、ボイラ(ボイラ管群41)からの蒸気を熱媒体として用いて再循環排ガスを加熱可能である。予熱器67は、必要に応じて再循環排ガスを加熱するのみであってよい。
【0026】
酸素混合部68は、空気よりも酸素濃度(体積濃度)が高いガス(以下、単に「高濃度酸素ガス」という。)を空気から生成する装置であり、例えば、PSA式の酸素ガス発生装置である。酸素混合部68で生成された高濃度酸素ガスは、再循環排ガスライン6において再循環排ガスに混合される。第1予熱器、ファン66および第2予熱器が設けられる例では、ファン66と第2予熱器との間に高濃度酸素ガスが混合される。高濃度酸素ガスの混合により、取出位置P1における排ガスよりも酸素濃度が高い再循環排ガスが得られ、焼却炉3に供給される。高濃度酸素ガスは、空気よりも十分に酸素濃度が高く、当該酸素濃度は、例えば、50vol%以上であり、好ましくは、65vol%以上であり、より好ましくは、80vol%以上であり、さらに好ましくは、100%である。高濃度酸素ガスは、空気以外から生成されてもよい。例えば、水の電気分解により、高濃度酸素ガスを生成してもよい。
【0027】
図2は、ごみピット2および焼却炉3の構成を示す図である。既述のように、ごみピット2では、ごみが貯留されており、ごみの堆積層91(以下、「ごみ堆積層91」という。)が形成される。既述の処理済みガスライン5は、ごみピット2の下部に接続される。ごみピット2の下部は、プラットホーム22よりも下方の側部、および、底部を含む。ごみピット2の一例では、処理済みガスの噴出口が、側部に設けられる。底面に向かって開口する噴出口が設けられてもよい。処理済みガスライン5からごみピット2内に供給された処理済みガスは、ごみピット2内のごみ堆積層91を通過して、上方に広がる。すなわち、ごみ堆積層91のごみ間の無数の隙間に分散して、処理済みガスがごみ堆積層91の上方へと到達する。したがって、ごみ堆積層91の上方の空間では、ガスの流れが緩やかとなる。また、処理済みガスに含まれる酸性ガス等が、ごみが含有する水分に溶解し、処理済みガスから除去される。
【0028】
ごみピット2の上部には、ガス流路である抜き出しガスライン21の一端が接続される。ごみピット2の上部は、焼却炉3における後述の投入ホッパ31の投入口よりも上方の側部、および、天井部を含む。抜き出しガスライン21には、図示省略のファンが設けられる。これにより、ごみピット2内のガスが抜き出しガスライン21から抜き出しガスとして抜き出される。ごみピット2内のガスは、ごみ堆積層91を通過した処理済みガス、および、プラットホーム22の投入扉からごみピット2内に流入する空気を含む。ごみピット2では、内部の圧力が大気圧よりも小さい負圧とされ、ごみピット2内の臭気の外部への漏出が抑制される。
【0029】
既述のように、処理済みガスに含まれる酸性ガス等がごみ堆積層91にて除去されることにより、抜き出しガスライン21において抜き出しガス中の水分が凝縮する場合でも、抜き出しガスライン21の管壁が腐食することが抑制される。後述するように、図2の例では、抜き出しガスライン21の他端は、再循環排ガスライン6に接続される。抜き出しガスライン21に、予熱器が設けられてもよい。
【0030】
好ましいごみ焼却設備1では、ごみピット2に接続するプラットホーム22において、二重扉構造が設けられる。具体的には、ごみ収集車が停車するプラットホーム22では、ごみピット2との間に、外側扉221と、内側扉222とが設けられる。ごみ収集車がごみピット2にごみを投入する際には、内側扉222を閉じた状態で、外側扉221が開けられ、ごみ収集車からごみが投入される。当該ごみは、内側扉222と外側扉221との間にて一時的に保持される。ごみ収集車がごみを投入完了した際には、外側扉221が閉じられ、続いて、内側扉222が開けられる。これにより、ごみピット2にごみが投入される。ごみピット2にごみを投入完了後、内側扉222が閉じられる。上記二重扉構造では、ごみピット2内に流入する空気の量を低減することが可能となる。
【0031】
焼却炉3は、投入ホッパ31と、ごみ供給部32と、一次燃焼室33と、二次燃焼室34とを備える。投入ホッパ31には、ごみクレーン23によりごみピット2からごみが投入される。ごみ供給部32は、プッシャまたはスクリューフィーダ等を有し、投入ホッパ31の底部から一次燃焼室33内にごみを供給する。
【0032】
一次燃焼室33の底部には、ごみ供給部32から離れる方向に向かって順に、乾燥火格子部331、燃焼火格子部332、後燃焼火格子部333および排出口334が配列される。乾燥火格子部331、燃焼火格子部332および後燃焼火格子部333では、周知の搬送動作により、ごみ供給部32側から排出口334に向かってごみが搬送される。乾燥火格子部331、燃焼火格子部332および後燃焼火格子部333のそれぞれでは、後述の一次燃焼用ガスが一次燃焼室33内に向けて噴出され、搬送途上のごみが燃焼する。燃焼後のごみ(主として灰)は排出口334を介して一次燃焼室33外に排出される。
【0033】
二次燃焼室34は、側壁部に囲まれた空間であり、一次燃焼室33から直接的に連続して一次燃焼室33から排出される排ガスの流路を形成する。図2の例では、二次燃焼室34は、一次燃焼室33の床面積に比べて十分に小さい流路面積となって上方に向かう空間である。二次燃焼室34の側壁部には複数のノズル341が設けられ、後述の二次燃焼用ガスが複数のノズル341から噴出される。これにより、一次燃焼室33内で発生した未燃ガスが燃焼する。二次燃焼室34は焼却炉3の一部であり、二次燃焼室34の出口から下流側の流路が、既述の排ガス流路4である。図2では、ボイラ管群41が設けられる領域に符号41を付している。
【0034】
図2の例では、再循環排ガスライン6は、酸素混合部68による高濃度酸素ガスの混合位置よりも下流側(焼却炉3側)の分岐点P2にて、一次燃焼用ガスライン61と、二次燃焼用ガスライン62とに分岐する。一次燃焼用ガスライン61は、複数のラインに分岐して、乾燥火格子部331、燃焼火格子部332および後燃焼火格子部333の風箱にそれぞれ接続する。二次燃焼用ガスライン62は、複数のラインに分岐して、複数のノズル341にそれぞれ接続する。
【0035】
再循環排ガスライン6において分岐点P2よりも上流側の位置には、抜き出しガスライン21が接続される。これにより、高濃度酸素ガスが混合された再循環排ガスに、ごみピット2からの抜き出しガスがさらに混合される。再循環排ガス、高濃度酸素ガスおよび抜き出しガスの混合ガスは、一次燃焼用ガスライン61および二次燃焼用ガスライン62に流入する。以下の説明では、一次燃焼用ガスライン61を流れるガスを「一次燃焼用ガス」といい、二次燃焼用ガスライン62を流れるガスを「二次燃焼用ガス」という。一次燃焼用ガスは、乾燥火格子部331、燃焼火格子部332および後燃焼火格子部333から一次燃焼室33内に供給される。二次燃焼用ガスは、複数のノズル341から二次燃焼室34内に供給される。
【0036】
一次燃焼用ガスおよび二次燃焼用ガスの酸素濃度は、例えば、30vol%以下であり、典型例では、25vol%以下である。当該酸素濃度は、例えば0vol%よりも大きく、好ましくは3vol%以上である。図2の例における一次燃焼用ガスおよび二次燃焼用ガスの酸素濃度は、再循環排ガス、高濃度酸素ガスおよび抜き出しガスの混合比の変更や、高濃度酸素ガスの酸素濃度の変更等により調整可能である。また、一次燃焼用ガスおよび二次燃焼用ガスのそれぞれの酸素濃度が、個別に調整可能であってもよい。この場合、例えば、一次燃焼用ガスライン61および二次燃焼用ガスライン62のそれぞれにおいて、再循環排ガス、高濃度酸素ガスおよび抜き出しガスの混合比が個別に変更可能なように、配管設計が変更されるとともに、ダンパおよび流量計等が設けられる。さらに、乾燥火格子部331、燃焼火格子部332および後燃焼火格子部333のそれぞれにおける一次燃焼用ガスの酸素濃度が、個別に調整可能であってもよい。同様に、複数のノズル341のそれぞれにおける二次燃焼用ガスの酸素濃度が、個別に調整可能であってもよい。ごみ焼却設備1では、複数の混合部が設けられ、再循環排ガス、高濃度酸素ガスおよび抜き出しガスの混合比が互いに独立して可変とされ、焼却炉3内に供給されてもよい。
【0037】
以上に説明したように、好ましいごみ焼却設備1は、排ガス流路4を流れる排ガスの一部を再循環排ガスとして取り出して焼却炉3内に供給する再循環排ガスライン6と、再循環排ガスライン6を流れる再循環排ガスに対して、空気よりも酸素濃度が高いガス(上述の高濃度酸素ガス)を混合する酸素混合部68とを備える。ごみ焼却設備1では、再循環排ガスに高濃度酸素ガスを混合して、焼却炉3における燃焼用ガスとして利用することにより、再循環排ガスに空気を混合する場合に比べて、排ガス流路4から取り出す再循環排ガスの量を多くすることができる。その結果、排ガス流路4において再循環排ガスライン6の接続位置(すなわち、取出位置P1)よりも下流側に流れる排ガス量を容易に低減することができる。また、系外から焼却炉3内に供給される空気(特に、窒素)の量を極力少なくして運転を続けることで、排ガスに含まれる窒素の量が徐々に減少し、二酸化炭素回収装置44を通過する排ガスの主な成分を二酸化炭素、水および余剰酸素にすることができる。このような運転をする場合、排ガスに含まれる二酸化炭素濃度が高くなるため、二酸化炭素回収装置44にて効率よく二酸化炭素を分離することができる。また、このような運転をする場合、湿式洗煙塔43において、排ガスの温度低下にともない、排ガス中に含まれる水分量も減るため、再循環排ガスに含まれる水分を除去することもできる。
【0038】
好ましくは、再循環排ガスライン6が、焼却炉3の一次燃焼室33および二次燃焼室34に接続され、高濃度酸素ガスが混合された再循環排ガスが、一次燃焼用ガスおよび二次燃焼用ガスとして利用される。これにより、再循環排ガスの使用量をより確実に多くして、排ガス流路4において取出位置P1よりも下流側に流れる排ガス量をさらに低減することができる。ごみ焼却設備1では、再循環排ガスライン6が、一次燃焼室33のみに接続されてもよく、二次燃焼室34のみに接続されてもよい。この場合も、再循環排ガスのある程度の使用量を確保して、排ガス量を低減することができる。以上のように、ごみ焼却設備1では、再循環排ガスライン6が、焼却炉の一次燃焼室33または/および二次燃焼室34に接続され、高濃度酸素ガスが混合された再循環排ガスが、一次燃焼用ガスまたは/および二次燃焼用ガスとして利用されることが好ましい。ごみ焼却設備1では、系外から焼却炉3内に供給される空気の量を極力少なくすることが好ましい。すなわち、運転稼働中は、プラットホーム22の投入扉等からごみピット2内に流入する空気、機器のパージ空気、機器の冷却空気、ごみにより持ち込まれる空気等の焼却炉3内に入り込む空気等以外は、系外から焼却炉3内に供給される空気を無くすことが好ましい。なお、初期運転時においては、系外から焼却炉3内に空気が供給されてもよい。
【0039】
好ましくは、ごみ焼却設備1は、再循環排ガスライン6に設けられ、再循環排ガスを加熱する予熱器67を備える。これにより、燃焼用ガスとしての利用に適した温度に再循環排ガスを加熱することができる。
【0040】
好ましくは、ごみ焼却設備1は、焼却炉3への投入前のごみを貯留するごみピット2と、排ガス流路4において集じん器42よりも下流側に設けられ、排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置44と、二酸化炭素回収装置44を通過した排ガスを処理済みガスとしてごみピット2へと供給する処理済みガスライン5とを備える。これにより、ごみ焼却設備1では、煙突59から外部に排出する排ガスを少なくすることができる。
【0041】
好ましくは、処理済みガスライン5からごみピット2の下部に処理済みガスが供給され、ごみピット2内のごみ堆積層91を通過した処理済みガスが焼却炉3内に供給される。ここで、仮に、ごみピット2においてごみ堆積層91よりも上方の位置から処理済みガスを噴出する場合、ごみピット2内においてガスの激しい流れが発生し、ごみピット2内を一定の負圧とする圧力の制御が難しくなる。これに対し、ごみピット2の下部から処理済みガスを噴出するごみ焼却設備1では、ごみピット2内における処理済みガスの流れを緩和することができ、ごみピット2内を負圧とする圧力の制御が容易になる。また、処理済みガスに含まれる酸性ガス等をごみ堆積層91により除去することができ、ごみピット2内のガスを抜き出すライン(すなわち、抜き出しガスライン21)において腐食の発生を抑制することができる。
【0042】
好ましくは、ごみ焼却設備1は、ごみピット2の上部に接続され、ごみピット2内のガスを抜き出しガスとして抜き出す抜き出しガスライン21を備え、再循環排ガスライン6を流れる再循環排ガスに抜き出しガスが混合される。これにより、ごみピット2内に充填される処理済みガスを、焼却炉3における燃焼用ガスとして適切に利用することができる。
【0043】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係るごみ焼却設備1の一部を示す図であり、図2に対応する。図3のごみ焼却設備1では、再循環排ガスライン6および抜き出しガスライン21の構成が図1と相違し、再循環排ガスと抜き出しガスとが個別に焼却炉3内に供給される。他の構成は図1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0044】
再循環排ガスライン6は、一次燃焼用ガスラインとして乾燥火格子部331、燃焼火格子部332および後燃焼火格子部333の風箱に接続される。酸素混合部68により高濃度酸素ガスが混合された再循環排ガスが、一次燃焼用ガスとして一次燃焼室33内に供給される。また、抜き出しガスライン21は、二次燃焼用ガスラインとして複数のノズル341に接続される。ごみ焼却設備1では、酸素混合部68と同様の酸素混合部211が設けられており(図1では、破線のブロックにて示す。)、酸素混合部211で生成された、空気よりも酸素濃度が高いガス(すなわち、高濃度酸素ガス)が、抜き出しガスライン21を流れる抜き出しガスに混合される。これにより、ごみピット2に供給される処理済みガスよりも酸素濃度が高い抜き出しガスが、二次燃焼用ガスとして二次燃焼室34内に供給される。図3のごみ焼却設備1では、一次燃焼用ガスの酸素濃度と二次燃焼用ガスの酸素濃度とを個別に(例えば、異なる値に)設定することが容易に可能となる。
【0045】
図3は一例に過ぎず、乾燥火格子部331、燃焼火格子部332および後燃焼火格子部333の全部または一部が、抜き出しガスライン21に接続されてもよい。同様に、複数のノズル341の全部または一部が、再循環排ガスライン6に接続されてもよい。
【0046】
以上のように、図3のごみ焼却設備1は、ごみピット2の上部に接続され、ごみピット2内のガスを抜き出しガスとして抜き出して焼却炉3内に供給する抜き出しガスライン21と、抜き出しガスライン21を流れる抜き出しガスに対して、空気よりも酸素濃度が高いガスを混合する酸素混合部211とを備える。これにより、ごみピット2内に充填される処理済みガスを焼却炉3における燃焼用ガスとして適切に利用することができる。
【0047】
上記のごみ焼却設備1では、二酸化炭素回収装置44により二酸化炭素が除去された排ガスが処理済みガスとしてごみピット2に供給されるが、図1中に破線にて示すように、処理済みガスライン5aが焼却炉3に接続され、処理済みガスが焼却炉3に直接供給されてもよい。この場合、当該処理済みガスは、一次燃焼用ガスまたは/および二次燃焼用ガスとして利用されることが好ましい。また、当該処理済みガスが、再循環排ガスと混合されてもよく、処理済みガスライン5aにおいて、焼却炉3に供給される処理済みガスに対して高濃度酸素ガスを混合する酸素混合部211が設けられてもよい。当該処理済みガスは、ごみピット2および焼却炉3に分配されてもよい。以上のように、ごみ焼却設備1では、二酸化炭素回収装置44を通過した排ガスを処理済みガスとしてごみピット2または/および焼却炉3へと供給する処理済みガスライン5が設けられることが好ましい。これにより、煙突59から外部に排出する排ガスを少なくすることができる。
【0048】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係るごみ焼却設備1を示すブロック図である。図4のごみ焼却設備1では、酸素混合部68に抜き出しガスライン21が接続される。他の構成は、図1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。図4のごみ焼却設備1では、ごみピット2から抜き出された抜き出しガスが、抜き出しガスライン21を介して酸素混合部68に供給される。酸素混合部68では、供給される抜き出しガスの全部または一部から高濃度酸素ガスが生成される。高濃度酸素ガスは、再循環排ガスライン6を流れる再循環排ガスに混合され、焼却炉3に供給される。以上のように、図4の酸素混合部68では、抜き出しガスの少なくとも一部から高濃度酸素ガスが生成される。そして、当該高濃度酸素ガスを再循環排ガスに混合して、焼却炉3における燃焼用ガスとして利用することにより、煙突59から排出する排ガス量を大幅に低減することができる。
【0049】
酸素混合部68では、抜き出しガスの一部から高濃度酸素ガスが生成され、当該高濃度酸素ガスが、抜き出しガスライン21を流れる残りの抜き出しガスに混合されて焼却炉3に供給されてもよい(図3参照)。なお、PSA式の酸素ガス発生装置である酸素混合部68では、高濃度酸素ガスの生成時に吸着剤に吸着するガス(すなわち、酸素以外のガスであり、窒素ガス等)は、活性炭層等が設けられた脱臭装置において脱臭された後、大気に放出される。
【0050】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係るごみ焼却設備1を示すブロック図である。図5のごみ焼却設備1では、処理済みガスライン5が再循環排ガスライン6に接続される。他の構成は、図1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。図5のごみ焼却設備1では、二酸化炭素回収装置44から排出される処理済みガスが、処理済みガスライン5を介して再循環排ガスライン6に供給される。すなわち、処理済みガスが、再循環排ガスライン6を流れる再循環排ガスに混合され、再循環排ガスライン6を介して焼却炉3に供給される。図5の例においても同様に、煙突59から外部に排出する排ガスを少なくすることができる。既述のように、処理済みガスライン5の分岐点が、誘引通風機52の上流側に設けられてもよい。また、再循環排ガスライン6において、処理済みガスライン5が接続される位置は任意に決定されてよい。なお、図5の酸素混合部68では、ごみピット2内に流入する空気から高濃度酸素ガスが生成される。
【0051】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態に係るごみ焼却設備1を示すブロック図である。図6のごみ焼却設備1では、処理済みガスライン5において排ガス再加熱器51に代えて分離膜51aが設けられるとともに、再循環排ガスライン6に分離膜65が設けられる。他の構成は、図1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0052】
分離膜51aは、脱水膜であり、例えば、アモルファスシリカ膜である。分離膜51aは、他の種類の脱水膜であってもよい。分離膜51aは、処理済みガスライン5において排ガス処理部45の直後の位置に配置される。分離膜51aでは、排ガス処理部45を通過した直後の処理済みガスから水が除去される。処理済みガスの湿度を低下させることにより、処理済みガスの温度低下により処理済みガスライン5において水分が凝縮することが抑制される。その結果、処理済みガス中の硫黄酸化物、塩化水素等の酸性ガスが、凝縮した水に溶け込むことによる処理済みガスライン5の管壁の腐食が抑制される。分離膜51aでは、他の成分が水と共に処理済みガスから除去されてもよい。
【0053】
分離膜65は、脱水部であり、例えば、アモルファスシリカ膜である。分離膜65は、他の種類の脱水膜であってもよい。分離膜65は、再循環排ガスライン6において任意の位置に設けられる。分離膜65では、再循環排ガスから水が除去される。これにより、再循環排ガスライン6における水の凝縮および管壁の腐食が抑制される。分離膜65では、酸性ガス等、他の成分が水と共に再循環排ガスから除去されてもよい。
【0054】
以上のように、図6のごみ焼却設備1は、排ガス流路4において集じん器42よりも下流側に設けられ、排ガスに対して水を含む液体を供給して排ガスから所定成分を除去する排ガス処理部45(図6では、湿式洗煙塔43および二酸化炭素回収装置44)と、排ガス処理部45を通過した直後の排ガスから水を除去する分離膜51aとを備える。これにより、湿式の処理が行われる排ガス処理部45の下流側において水の凝縮に起因する腐食が生じることを抑制することができる。また、分離膜51aにより処理済みガスの湿度を低下させることにより、ごみピット2内のごみを処理済みガスにより効率よく乾燥させることも可能となる。
【0055】
ごみ焼却設備1は、再循環排ガスライン6に設けられ、再循環排ガスから水を除去する脱水部(図6では、分離膜65)を備える。これにより、再循環排ガスにおける水の凝縮をより確実に抑制し、再循環排ガスライン6において水の凝縮に起因する腐食が生じることを抑制することができる。ごみ焼却設備1の設計によっては、脱水部が分離膜65以外であってもよい。排ガス流路4では、集じん器42と取出位置P1との間に(図6では、取出位置P1の直前に)湿式洗煙塔43が設けられる。湿式洗煙塔43では、酸性ガスの濃度の抑制に加えて、排ガス温度の低下により排ガスに含まれる水分の絶対量を低くすることが可能となる。
【0056】
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6実施形態に係るごみ焼却設備1を示すブロック図である。図7のごみ焼却設備1では、再循環排ガスライン6が接続される取出位置P1が、排ガス流路4において集じん器42と湿式洗煙塔43との間に設けられる。他の構成は、図6と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0057】
図7のごみ焼却設備1では、排ガス流路4において集じん器42を通過した直後の排ガスの一部が、再循環排ガスライン6により再循環排ガスとして取り出される。再循環排ガスライン6では、分離膜65により再循環排ガスから水が除去され、再循環排ガスの湿度が低下する。これにより、再循環排ガスの温度低下により再循環排ガスライン6において水分が凝縮することが抑制される。その結果、再循環排ガス中の硫黄酸化物、塩化水素等の酸性ガスが、凝縮した水に溶け込むことによる再循環排ガスライン6の管壁の腐食が抑制される。分離膜65では、他の成分が水と共に再循環排ガスから除去されてもよい。
【0058】
上述のごみ焼却設備1と同様に、再循環排ガスには、酸素混合部68で生成された高濃度酸素ガスが混合され、取出位置P1における排ガスよりも酸素濃度が高い再循環排ガスが得られる。再循環排ガスライン6は、焼却炉3の一次燃焼室33または/および二次燃焼室34に接続されており、当該再循環排ガスが、一次燃焼用ガスまたは/および二次燃焼用ガスとして利用される。
【0059】
以上のように、図7のごみ焼却設備1においても、再循環排ガスに高濃度酸素ガスを混合して、焼却炉3における燃焼用ガスとして利用することにより、再循環排ガスに空気を混合する場合に比べて、排ガス流路4から取り出す再循環排ガスの量を多くすることができる。その結果、排ガス流路4において再循環排ガスライン6の接続位置(すなわち、取出位置P1)よりも下流側に流れる排ガス量を容易に低減することができる。図1ないし図5のごみ焼却設備1において、取出位置P1が集じん器42と湿式洗煙塔43との間に設けられてもよい。
【0060】
上記ごみ焼却設備1では様々な変形が可能である。
【0061】
ごみ焼却設備1では、再循環排ガスライン6が省略されてもよい。
【0062】
ごみ焼却設備1では、二酸化炭素回収装置44を通過した処理済みガスの全部がごみピット2または/および焼却炉3、または、再循環排ガスライン6へと供給され、煙突59が省略されてもよい。ごみ焼却設備1において外部に排出する排ガス量を低減するには、二酸化炭素回収装置44を通過した排ガス(分離膜51aを設ける場合、二酸化炭素回収装置44および分離膜51aを通過した排ガス)の少なくとも一部を処理済みガスとして、ごみピット2または/および焼却炉3、または、再循環排ガスライン6へと供給する処理済みガスライン5を設けることが好ましい。
【0063】
再循環排ガスライン6の取出位置は、排ガス流路4において集じん器42よりも下流側、かつ、二酸化炭素回収装置44よりも上流側の任意の位置であってよい。抜き出しガスライン21は、ごみピット2の任意の位置に接続されてよい。
【0064】
焼却炉3は、ストーカ式の焼却炉以外の焼却炉(例えば、流動床炉、キルン炉等)であってもよい。ごみ焼却設備1は、ごみ以外の一般廃棄物や、産業廃棄物を焼却する廃棄物焼却設備として利用されてよい。脱水部(分離膜65)を用いて再循環排ガスから水を除去する手法、および、分離膜51aを用いて排ガス処理部45を通過した直後の排ガスから水を除去する手法は、独立して用いられてよい。
【0065】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0066】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。
【符号の説明】
【0067】
1 ごみ焼却設備
2 ごみピット
3 焼却炉
4 排ガス流路
5,5a 処理済みガスライン
6 再循環排ガスライン
21 抜き出しガスライン
22 プラットホーム
42 集じん器
44 二酸化炭素回収装置
51a (処理済みガス用の)分離膜
91 ごみ堆積層
211 (抜き出しガス用の)酸素混合部
221,222 扉
P1 取出位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7