(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】推力発生機構
(51)【国際特許分類】
F03G 3/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
F03G3/00 E
(21)【出願番号】P 2024047075
(22)【出願日】2024-03-22
【審査請求日】2024-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503317119
【氏名又は名称】株式会社 片野工業
(73)【特許権者】
【識別番号】520043327
【氏名又は名称】エアーサクセスジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100206678
【氏名又は名称】谷口 誠
(72)【発明者】
【氏名】片野 明夫
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0308601(US,A1)
【文献】特開2007-177788(JP,A)
【文献】特開2012-251433(JP,A)
【文献】特開2003-17312(JP,A)
【文献】特開2022-134780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 3/00
H02K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一極性を有する一端面および前記第一極性とは異なる極性である第二極性を有する他端面を有する回転側磁石と、
前記第一極性を有する一端面および前記第一極性とは異なる極性である前記第二極性を有する他端面を有する固定側磁石と、
前記回転側磁石が取り付けられ、回転軸に回転自在に軸支された回転体と、
前記固定側磁石が取り付けられ、前記固定側磁石を変位させる変位機構と、
を備え、
前記回転側磁石は、前記回転側磁石における前記第一極性から前記第二極性への向きが前記回転体の回転軸方向に沿うように配置され、
前記変位機構は、
前記固定側磁石と前記回転側磁石とが離間している場合には、前記固定側磁石の一端面が前記回転側磁石の他端面に向くように前記固定側磁石を変位させるよう構成されている一方、前記固定側磁石と前記回転側磁石とが近接している場合には、前記固定側磁石の他端面が前記固定側磁石の他端面に向くように前記固定側磁石を変位させるよう構成されている
ことを特徴とする推力発生機構。
【請求項2】
前記固定側磁石は、前記回転軸と交差する方向に延びる板状をなしているとともに、前記回転体の回転方向の下流側の端部は、前記回転側磁石に向けて所定の角度で折り曲げられている
ことを特徴とする請求項1に記載の推力発生機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
磁石から発せられる磁力によって回転体を回転させる推力発生機構に関する。
【背景技術】
【0002】
磁石を用いて移動部の移動をさせる推力発生機構として、無接点推進装置などが知られている(例えば、特許文献1参照)が、この装置では、磁石から発せられる磁場を移動部の浮上のために用いるものであり、移動部の移動を充分に行えないものであった。このため、本願の発明者は、特許文献2に係る推力発生機構を開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-264846号公報
【文献】特許第6985671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、本願の発明者は、特許文献2に係る推力発生機構のみにとどまらず、さらに新たな推力発生機構を開発するに至った。
【0005】
本発明の目的とするところは、回転体を回転させることができる推力発生機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る推力発生機構は、
第一極性を有する一端面および前記第一極性とは異なる極性である第二極性を有する他端面を有する回転側磁石と、
前記第一極性を有する一端面および前記第一極性とは異なる極性である前記第二極性を有する他端面を有する固定側磁石と、
前記回転側磁石が取り付けられ、回転軸に回転自在に軸支された回転体と、
前記固定側磁石が取り付けられ、前記固定側磁石を変位させる変位機構と、
を備え、
前記回転側磁石は、前記回転側磁石における前記第一極性から前記第二極性への向きが前記回転体の回転軸方向に沿うように配置され、
前記変位機構は、
前記固定側磁石と前記回転側磁石とが離間している場合には、前記固定側磁石の一端面が前記回転側磁石の他端面に向くように前記固定側磁石を変位させるよう構成されている一方、前記固定側磁石と前記回転側磁石とが近接している場合には、前記固定側磁石の他端面が前記固定側磁石の他端面に向くように前記固定側磁石を変位させるよう構成されている
ことを特徴とする推力発生機構である。
【0007】
また、前記固定側磁石は、前記回転軸と交差する方向に延びる板状をなしているとともに、前記回転体の回転方向の下流側の端部は、前記回転側磁石に向けて所定の角度で折り曲げられているようにしても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転体を回転させることができる推力発生機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係る推力発生機構を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す推力発生機構の配置関係を説明する図であり、(a)は
図1に示す推力発生機構の平面図であり、(b)は(a)に示す推力発生機構に係る板状第三磁石の左側面を示す側面図であり、(c)は(a)に示す推力発生機構に係る板状第二磁石の右側面を示す側面図である。
【
図3】
図1に示す推力発生機構と移動部との関係を説明する背面図である。
【
図4】
図1に示す推力発生機構と移動部との関係を説明する図であり、(a)は直線状第一磁石部を構成する板状第二磁石と直線状第二磁石部を構成する板状第三磁石部との間に移動部が位置している状態を抜き出して示す平面図であり、(b)は(a)に示す移動部を直線状第二磁石部から見た側面図であり、(c)は(a)に示す移動部を直線状第一磁石部側から見た側面図である。
【
図5】
図1に係る推力発生機構において、移動部が移動する状態を模式的に示す斜視図である。
【
図6】第二実施形態に係る推力発生機構を模式的に説明する図であり、(a)は第二実施形態に係る推力発生機構の平面図であり、(b)は(a)に示す推力発生機構の横断面図であり、(c)は(a)に示す推力発生機構に係る円環状第一磁石部の円弧状第二磁石同士の連結、円環状第二磁石部の円弧状第三磁石同士の連結、および円環状第三磁石部の円弧状第四磁石同士の連結を模式的に説明するための側面図である。
【
図7】第一実施形態の変形例1に係る推力発生機構を模式的に説明する図であり、(a)は板状第二磁石と板状第三磁石が互いに重複している状態を説明する平面図であり、(b)は板状第二磁石と板状第三磁石が互いに重複している状態を説明する側面図であり、(c)は板状第二磁石と板状第三磁石が互いに重複していない状態を説明する平面図であり、(d)は板状第二磁石と板状第三磁石が互いに重複していない状態を説明する側面図であり、(e)は、板状第二磁石と板状第三磁石が互いに離間している状態を説明する平面図であり(f)は、板状第二磁石と板状第三磁石が互いに離間している状態を説明する側面図である。
【
図8】第二実施形態の変形例1に係る推力発生機構を模式的に説明する図であり、(a)は円弧状第二磁石と円弧状第三磁石とが互いに重複している状態を説明する平面図であり、(b)は円弧状第二磁石と円弧状第三磁石とが互いに重複していない状態を説明する平面図であり、(c)は円弧状第二磁石と円弧状第三磁石とが互いに離間している状態を説明する平面図である。
【
図9】第一実施形態の変形例2に係る推力発生機構を模式的に説明する図であり、(a)は板状第二磁石および板状第三磁石のそれぞれの下流側に複数の磁石を設けた状態を説明する平面図であり、(b)は板状第一磁石、板状第二磁石および板状第三磁石に厚みを持たせた状態を説明する平面図であり、(c)は板状第一磁石の他の例を示す斜視図である。
【
図10】板状第一磁石の変形例1を模式的に説明する図であり、(a)は板状第一磁石が平面に対して右上がりに傾斜している状態を説明する側面図であり、(b)は板状第一磁石が平面に対して平行な状態を説明する側面図であり、(c)は板状第一磁石が平面に対して左上がりに傾斜している状態を説明する側面図である。
【
図11】磁石体を模式的に説明する図であり、(a)は磁石体の各構成を模式的に説明する図であり、(b)は磁石体の極性を模式的に説明する図である。
【
図12】第三実施形態に係る推力発生機構を模式的に説明する図であり、(a)は推力発生機構を模式的に示す背面図であり、(b)は推力発生機構を模式的に示す平面図である。
【
図13】第四実施形態に係る推力発生機構100を模式的に示す図であり、(a)は推力発生機構を模式的に示す側面図であり、(b)は推力発生機構を模式的に示す平面図である。
【
図14】第四実施形態の変形例に係る推力発生機構100を模式的に示す図であり、(a)は推力発生機構を模式的に示す側面図であり、(b)は推力発生機構を模式的に示す平面図である。
【
図15】テーパ状磁石を用いた変形例を模式的に説明する図であり、(a)はテーパ状磁石を示す平面図であり、(b)はテーパ状磁石を示す側面図であり、(c)はテーパ状磁石を用いた推力発生機構を模式的に示す側面図であり、(d)はテーパ状磁石を用いた推力発生機構を模式的に示す平面図であり、(e)はテーパ状磁石を用いた推力発生機構を模式的に示す側面図である。
【
図16】テーパ状磁石を用いた推力発生機構を模式的に示す側面図である。
【
図17】テーパ状磁石を用いた推力発生機構を模式的に示す平面図である。
【
図18】磁石体と起立状態の板状磁石との位置関係を模式的に示す図であり、(a)は当該位置関係を模式的に背面図であり、(b)は当該位置関係を示す側面図である。
【
図19】磁石体と起立状態の板状磁石との位置関係を模式的に示す図であり、(a)は当該位置関係を模式的に側面図であり、(b)は当該位置関係を示す平面図である。
【
図20】固定側磁石体を模式的に説明する側面図である。
【
図21】移動部の変形例を模式的に説明する図であり、(a)は磁石体の一端部に移動部が設けられた状態を示す背面図であり、(b)は磁石体の両端部にそれぞれ移動部が設けられた状態を示す背面図である。
【
図22】
図21に係る移動部が横になった状態を模式的に示す背面図である。
【
図23】第五実施形態に係る推力発生機構を透過した状態で模式的に示す図である。
【
図24】第五実施形態に係る推力発生機構の揺動機構を拡大して示す側面図である。
【
図25】第五実施形態に係る推力発生機構における変位機構の動作の流れを模式的に示す図である。
【
図26】第五実施形態に係る推力発生機構における変位機構の動作の流れを模式的に示す図である。
【
図27】第五実施形態に係る推力発生機構における変位機構の動作の流れを模式的に示す図である。
【
図28】第五実施形態に係る推力発生機構における変位機構の動作の流れを模式的に示す図である。
【
図29】第五実施形態の変形例に係る推力発生機構を模式的に示す図である。
【
図30】第五実施形態の変形例に係る推力発生機構を模式的に示す図である。
【
図31】第五実施形態の変形例に係る推力発生機構を模式的に示す図である。
【
図32】第五実施形態の変形例に係る推力発生機構を模式的に示す図である。
【
図33】第五実施形態の変形例に係る固定側磁石を示す図である。
【
図34】第五実施形態の変形例に係る固定側磁石を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図4に示すように、第一実施形態に係る推力発生機構(推力発生装置)1は、地面や床等の平面G(
図3および
図4参照)上を移動可能であるとともに板状の板状第一磁石(第一磁石)9が取り付けられた移動部3と、平面G上に載置されているとともに移動部3の両側方にそれぞれ位置する直線状第一磁石部(一方側磁石部)5および第二磁石部(他方側磁石部)7とを有している。なお、本実施形態の移動部3は一つであるが、
図2においては、移動部3が後側から前側(
図2で見て右側から左側)に移動していく状態を示すため、左右2つの移動部3を図示している。
【0011】
移動部3は、永久磁石である板状第一磁石9(
図2参照)と、この板状第一磁石9の周囲を覆う樹脂等からなる非磁性体のケース11(
図1参照)と、このケース11の両側面の下部の前後にそれぞれ設けられて平面G上に載置される4つの車輪13(
図4(a)参照)とを有しており、矢印Aで示す前方向(
図1、
図2および
図4における左方向)に移動するようになっている。なお、
図2では、説明の便宜上、移動部3におけるケース11および車輪13の図示を省略し(換言すれば、板状第一磁石9のみを図示)、
図3および
図4では、移動部3におけるケース11の図示を省略している(換言すれば、板状第一磁石9および車輪13のみを図示)。
【0012】
図2(a)に示すように、板状第一磁石9における
図2(a)で見て下側の左側面(一方の面)9aはN極の磁極を有し、板状第一磁石9における
図2(a)で見て上側の右側面(他方の面)9bはS極の磁極を有している。移動部3が平面Gに載置された状態において、板状第一磁石9の左側面9aおよび右側面9bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている(
図3参照)。
【0013】
また、
図4(b)に示すように、移動部3が平面Gに載置された状態において、矢印Aで示す前方向および板状第一磁石9の高さ方向(
図4(b)における上下方向)に対して垂直な方向(
図4(b)において紙面を貫通する方向であり、この方向を以後単に「垂直方向」という)から見て、板状第一磁石9における高さ方向の中心を通る第一中心線(移動側中心線)C1が、平面Gと平行となっている。
【0014】
ここで、
図2乃至
図4に示す板状第一磁石9については、N極を白色部分とし、S極を黒色部分としている。これについては、後述する板状第二磁石15および板状第三磁石17についても、後述する
図6についても同様である。なお、本実施形態では、白色部分をN極、黒色部分をS極としたが、白色部分をS極、黒色部分をN極としてもよいことは言うまでもない。
【0015】
本実施形態の移動部3の移動方向は、それぞれの車輪13によって、矢印Aで示す前方向(第一方向)およびこの第一方向とは反対側の後方向のいずれかに規制されている。換言すれば、ケース11および前後左右の4つの車輪13によって移動部3の移動方向を前後方向に規制する移動方向規制部を構成しているともいえる。
【0016】
図2(c)に示すように、直線状第一磁石部5は、板状の永久磁石である複数の板状第二磁石(第二磁石)15が前後方向に沿って並べられることによって構成され、これらの複数の板状第二磁石15は、互いに同一形状となっている。具体的には、直線状第一磁石部5は、前後に隣り合う板状第二磁石15において、前側の板状第二磁石15の後面の上半分に、後側の板状第二磁石15の前面の下半分が接着あるいは溶接等によって互いに連結するよう順次固定された後に、これらの板状第二磁石15の周囲を図示しない非磁性体のケースにて覆うことによって構成されている。なお、
図2(c)においては、説明の便宜上、直線状第一磁石部5を構成するすべての板状第二磁石15のうちの一部を破断して示している。
【0017】
それぞれの板状第二磁石15における
図2(a)で見て下側の左側面15aはS極の磁極を有し、
図2(a)で見て上側の右側面(他方の面)15bは、板状第一磁石9の左側面(一方の面)9aと同じN極の磁極を有している。すなわち、それぞれの板状第二磁石15の右側面(一方側対向面)15bは、
図3に示すように、直線状第一磁石部5および直線状第二磁石部7との間を前方向に移動する移動部3の板状第一磁石9の左側面(一方の面)9aと対面可能であるとともに、この左側面9aと同一極性となっている。このため、板状第一磁石9の左側面9aと、板状第二磁石15の右側面15bとの間には斥力CLが働くようになっている。また、直線状第一磁石部5が平面Gに載置された状態において、それぞれの板状第二磁石15の左側面15aおよび右側面15bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている。
【0018】
図4(b)および(c)に示すように、それぞれの板状第二磁石15における後端部の下端(例えば、
図4(b)および(c)で見て右下の角部)は平面Gに接触している一方、それぞれの板状第二磁石15における先端部の下端(
図4(b)および(c)で見て左下の角部)は平面Gから浮いた状態となっている。換言すれば、それぞれの板状第二磁石15は、この板状第二磁石15の底面と平面Gとのなす傾斜角度が所定角度(鋭角)となるように前上がりに傾斜している。また、それぞれの板状第二磁石15の傾斜角度は互いに同一となっている。したがって、それぞれの板状第二磁石15の高さ方向の中心を通る第二中心線(不動側第一中心線)C2は、直線状第一磁石部5が平面Gに載置された状態では、垂直方向から見て、板状第一磁石9の第一中心線C1と所定角度で交差している。
【0019】
図2(b)に示すように、直線状第二磁石部7は、上述の直線状第一磁石部5と同様に、板状の永久磁石である複数の板状第三磁石17が前後に沿って並べられることによって構成され、これらの複数の板状第三磁石17は、互いに同一形状となっている。具体的には、直線状第二磁石部7は、前後に隣り合う板状第三磁石17において、前側の板状第三磁石17の後面の上半分に、後側の板状第三磁石17の前面の下半分が接着あるいは溶接等によって互いに連結するよう順次固定された後に、これらの第三磁石17の周囲を図示しない非磁性体のケースにて覆うことによって構成されている。なお、
図2(b)においては、
図2(c)と同様に、説明の便宜上、直線状第二磁石部7を構成するすべての板状第三磁石17のうちの一部を示している。
【0020】
それぞれの板状第三磁石17における
図2(a)で見て下側の左側面(他方側対向面)17aは、板状第一磁石9の右側面(他方の面)9bと同じS極の磁極を有し、
図2(a)で見て上側の右側面17bは、N極の磁極を有している。すなわち、それぞれの板状第三磁石17の左側面(他方側対向面)17aは、
図3に示すように、直線状第一磁石部5および直線状第二磁石部7との間を前方向に移動する移動部3の板状第一磁石9の右側面(他方の面)9bと対面可能であるとともに、この右側面9bと同一極性となっている。このため、板状第一磁石9の右側面9bと、板状第三磁石17の左側面17aとの間には斥力CRが働くようになっている。また、直線状第二磁石部7が平面Gに載置された状態において、それぞれの板状第三磁石17の左側面17aおよび右側面17bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている。
【0021】
図4(b)および(c)に示すように、それぞれの板状第三磁石17における後端部の下端(例えば、
図3(b)および(c)で見て右下の角部)は平面Gに接触している一方、それぞれの板状第三磁石17における先端部(
図3(b)および(c)で見て左側の端部)は平面Gから浮いた状態となっている。換言すれば、それぞれの板状第三磁石17は、この板状第三磁石17の底面と平面Gとのなす傾斜角度が、板状第二磁石15と平面Gとのなす傾斜角度と同一の所定角度となるように前上がりに傾斜しているとともに、それぞれの板状第三磁石17の傾斜角度は互いに同一となっている。したがって、それぞれの板状第三磁石17の高さ方向の中心を通る第三中心線(不動側第二中心線)C3は、直線状第二磁石部7が平面Gに載置された状態では、垂直方向から見て、第二中心線C2と平行であるとともに、板状第一磁石9の第一中心線C1と所定角度(鋭角)で交差している。
【0022】
図1に示すように、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは互いに同じ長さに形成されている。直線状第一磁石部5および直線状第二磁石部7は、平面G上において互いに平行にかつ対面するように所定の間隔をあけて配置されている。この状態で、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、垂直方向から見て、直線状第二磁石部7の先端が、直線状第一磁石部5の先端よりも、所定角度で傾斜している板状第三磁石17における前後方向の長さ(以後、単に「磁石の前後長さ」という)の半分だけ前方に位置するように配置されている。すなわち、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17が、垂直方向から見て、互いに磁石の前後長さの半分だけ前後にずれて位置している(
図1参照)。
【0023】
具体的には、
図1において、直線状第一磁石部5を構成するそれぞれの(複数の)板状第二磁石15のうち、最も前側に位置する板状第二磁石15(
図1において最も左側にある板状第二磁石15)と、直線状第二磁石部7を構成するそれぞれの板状第三磁石17のうち、最も前側に位置する板状第三磁石17(
図1において最も左側にある板状第三磁石17)とを見てもわかるように、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、最も前側の板状第二磁石15の下側の先端が、最も前側の板状第三磁石17の中央部に位置するように配置されている。なお、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17が、垂直方向から見て、互いに前後にずれていればよく(換言すれば、垂直方向から見て、板状第二磁石15と板状第三磁石17とが一致するように重なっていなければよい)、どのくらいの割合でずらすのかは、仕様等に応じて適宜設定可能である。また、本実施形態では、直線状第二磁石部7の方が、直線状第一磁石部5よりも前方にずれているが、これに代えて、直線状第一磁石部5の方が直線状第二磁石部7よりも前方にずれるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0024】
本実施形態では、それぞれの板状第二磁石15およびそれぞれの板状第三磁石17とはいれずれも同一形状をなしているため、直線状第一磁石部5の板状第二磁石15、およびこの板状第二磁石15と対面する直線状第二磁石部7の板状第三磁石17は、次に述べる位置関係となる。
【0025】
すなわち、直線状第一磁石部5の最も前側の板状第二磁石15を例にとると、当該板状第二磁石15は、その前半分の部分(
図1において左半分の部分)が、直線状第二磁石部7の最も前側の板状第三磁石17の後半分の部分(
図1において右半分の部分)と対面し、当該板状第二磁石15の後半分の部分が、最も前側の板状第三磁石17の後ろに位置する板状第三磁石17(
図1において、左から二番目の板状第三磁石17)における前半分の部分に対面した状態となる。換言すれば、板状第二磁石15は、互いに隣り合う2つの板状第三磁石17と対面した状態(垂直方向から見て重なりの位置関係の状態)となり、板状第三磁石17も互いに隣り合う2つの板状第二磁石15と対面した状態となる。
【0026】
また、本実施形態では、
図4(b)および(c)に示すように移動部3が平面G上において直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7との間に載置された際、移動部3の板状第一磁石9の第一中心線C1は、直線状第一磁石部5のそれぞれの板状第二磁石15の第二中心線C2以下(
図4(c)において中心線C2の右端以下)で、かつ、直線状第二磁石部7のそれぞれの板状第三磁石17の第三中心線C3以下(
図4(b)において中心線C3の右端以下)となるようになっている。この場合、
図3に示すように、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間には矢印Dで示す方向(
図3において右斜め下)に斥力が働き、板状第一磁石9と板状第三磁石17との間には矢印Eで示す方向(
図3において左斜め下)に斥力が働く。この結果、移動部3は、矢印Bで示すように、平面Gに押し付けられた状態となって、移動部3が平面Gから浮き上がらなくなるため、移動部3は平面G上に安定して水平に載置された状態となる。
【0027】
次に、上述した構成に基づき、本実施形態の作用を説明する。まず、
図5に示すように、平面G上における直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7との間の適宜の第一位置、例えば、垂直方向で見て、前後の板状第三磁石17とこれらの間に位置する板状第二磁石15との間の位置(
図5における右側の移動部3の位置)に、移動部3を載置(配置)する。このとき、上述のように移動部3は平面G上に安定して載置された状態であり、この移動部3の板状第一磁石9も平面Gに対して垂直な状態にある(
図3参照)。
【0028】
この板状第一磁石9に対して、板状第二磁石15および板状第三磁石17は前上がりに傾斜しているとともに互いに前後方向にずれた位置関係にある。このため、板状第一磁石9の右側面9bに対して板状第三磁石17の左側面17aが対面する範囲(
図4(b)参照)は、板状第一磁石9の左側面9aに対して板状第二磁石15の右側面15bが対面する範囲(
図4(c)参照)よりも小さい(換言すれば、板状第一磁石9の右側面9bにおいて板状第三磁石17と重なっていない露出範囲(露出面積)が、板状第一磁石9の左側面9aにおいて板状第二磁石15と重なっていない露出範囲よりも大きい)。これによって、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間の斥力CLは、板状第一磁石9と板状第三磁石17との間の斥力CRよりも大きくなる(CL>CR)。
【0029】
また、板状第一磁石9に対して、板状第二磁石15および板状第三磁石17は前上がりに傾斜していることに起因して、
図4(c)に示すように、板状第一磁石9の左側面9aにおいて、板状第二磁石15の右側面15bに対面する範囲(垂直方向で見て、板状第二磁石15が板状第一磁石9の左側面9aを覆っている面積)が、板状第一磁石9の前側よりも後側の方が大きくなる(換言すれば、板状第一磁石9の左側面9aの露出範囲が、板状第一磁石9の後側よりも前側の方が大きくなる)。同様に、
図4(b)に示すように、板状第一磁石9の右側面9bにおいても、板状第三磁石17の左側面17aに対面する範囲(垂直方向から見て、板状第三磁石17が板状第一磁石9の右側面9bを覆っている面積)が、板状第一磁石9の前側よりも後側の方が大きくなる(換言すれば、板状第一磁石9の右側面9bの露出範囲が、板状第一磁石9の後側よりも前側の方が大きくなる)。この結果、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間の斥力CLおよび板状第一磁石9と板状第三磁石17との間の斥力CRはともに、板状第一磁石9の前側の部分よりも、後側の部分の方が強くなるため、板状第一磁石9が取り付けられた移動部3が、矢印Aで示す前方向に移動する。
【0030】
その後、移動部3が、垂直方向で見て、前後の板状第二磁石15とこれらの間に位置する板状第三磁石17との間の第二位置(
図5における中央の移動部3の位置)に到達した場合も、第一位置と同様に、移動部3は平面G上に安定して載置された状態であり、この移動部3の板状第一磁石9も平面Gに対して垂直な状態にある。この第二位置では、第一位置とは逆に、板状第一磁石9の左側面9aに対して板状第二磁石15の右側面15bが対面する範囲が、板状第一磁石9の右側面9bに対して板状第三磁石17の左側面17aが対面する範囲よりも小さく(換言すれば、板状第一磁石9の左側面9a露出範囲が、板状第一磁石9の右側面9bの露出範囲よりも大きくなる)。これによって、板状第一磁石9と板状第三磁石17との間の斥力CRが、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間の斥力CLよりも大きくなる(CR>CL)。
【0031】
また、この第二位置でも、板状第一磁石9の左側面9aにおいて、板状第二磁石15の右側面15bに対面する範囲が、板状第一磁石9の前側よりも後側の方が大きくなり、板状第一磁石9の右側面9bにおいても、板状第三磁石17の左側面17aに対面する範囲が、板状第一磁石9の前側よりも後側の方が大きくなる。この結果、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間の斥力CLおよび板状第一磁石9と板状第三磁石17との間の斥力CRはともに、板状第一磁石9の前側の部分よりも、板状第一磁石9の後側の部分の方が強くなるため、板状第一磁石9が取り付けられた移動部3が、矢印Aで示す前方向に移動する。
【0032】
このように、移動部3は、
図5に示すように、最初の第一位置(
図5における左側の移動部3の位置)から、この最初の第一位置よりも前方に位置する最初の第二位置(
図5における中央の移動部3の位置)に移動した後、この第二位置よりも前方に位置する二回目の第一位置(
図5における左側の移動部3の位置)と、この二回目の第一位置の前方に位置する二回目の第二位置(図示せず)に移動するということを繰り返すことで、前方に移動する。
【0033】
ここで、移動部3が移動するのは、移動部3の板状第一磁石9から発生する磁力、直線状第一磁石部5のそれぞれの板状第二磁石15から発生する磁力、直線状第二磁石部7のそれぞれの板状第三磁石17がそれぞれから発生する磁力が常に働いていることに起因している。このため、これらの磁石9、15、17の少なくとも1つが、例えば、何らかの要因でキュリー点を超えた温度で加熱されたり、外部からの強い衝撃が長く続いたり、あるいは自己減磁といった要因で、その磁力を失った場合(消磁した場合)には、移動部3を移動させる要因(エネルギー)がなくなるため、移動部3の移動ができなくなる。したがって、本実施形態の推力発生機構1については、いわゆる永久機関に該当するものではないことを付言しておく。
【0034】
以上説明したように、直線状第一磁石部5のそれぞれの板状第二磁石15および直線状第二磁石部7のそれぞれの板状第三磁石17を傾斜させているため、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間の斥力CLおよび板状第一磁石9と板状第三磁石17との間の斥力CRはともに、板状第一磁石9の前側の部分よりも、板状第一磁石9の後側の部分の方が強くなるので、移動部3において前方向への推力を発生させることができ、移動部3を前方向に充分に進めることができる。
【0035】
また、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17を傾斜させるだけの簡単な構成で、移動部3の移動をすることができる。また、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17の傾斜角度を調整することで、移動部3の移動の勢い等を調整することができる。
【0036】
さらに、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、互いに前後にずれて位置している(直線状第一磁石部5を構成するそれぞれの板状第二磁石15と、直線状第二磁石部7を構成するそれぞれの板状第三磁石17とが前後にずれて位置している)ため、これらの磁石部5,7の間に介在して前方向に移動する移動部3の両側に作用する斥力CL、CRが釣り合うことを防止することができる。この結果、磁力の釣り合いによって移動部3が静止することを防止することができ(磁力の釣り合いが移動部3のブレーキとなることを防止することができ)、移動部3の円滑な移動を図ることができる。
【0037】
また、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17は同一形状に形成されかつそれぞれが同じ所定角度で傾斜しているとともに、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17が、互いに磁石の水平長さの半分だけ前後にずれて位置しているため、最初の第一位置から最初の第二位置との間(以後、単に「第一周期」という)の距離と、最初の第二位置から二回目の第一位置との間(以後、単に「第二周期」という)の距離と、二回目の第一位置から二回目の第二位置との間(以後、単に「第三周期」という)の距離とを同じ距離とすることができる。また、それぞれの第一周期乃至第三周期における移動部3に作用する斥力CL、CRの変化度合いを同一とすることができるので、移動部3を一定の速度で移動させることができる。
【0038】
次に、
図6に基づいて第二実施形態を説明するが、その説明にあたり、上述の第一実施形態と同様な構成要素には、同一の符号を付することによって、その説明を省略または簡略化するものとする。これについては、以後に説明する実施形態および変形例等も同様とする。また、第二実施形態の説明にあたっては、第一実施形態との相違点を中心に説明するものとする。なお、
図6は、第二実施形態に係る推力発生機構30を模式的に示す図である。
【0039】
図6(a)および(b)に示すように、第二実施形態に係る推力発生機構(推力発生装置)30は、平面G上に載置されているとともに互いに同心の円環状をなす円環状第一磁石部(一方側磁石部)31、円環状第二磁石部(他方側磁石部または一方側磁石部)33、円環状第三磁石部(他方側磁石部)35と、円環状第一磁石部31と円環状第二磁石部33との間に位置する移動部41、42および円環状第二磁石部33と円環状第三磁石部35との間に位置する移動部43、44と、これらの移動部41、42、43、44(以後、これらをまとめて「移動部41等」ということもある。)の移動方向を規制する移動方向規制部51とを有している。
【0040】
移動方向規制部51は、
図6(b)に示すように、平面Gに設けられた軸受け(図示せず)に回転自在に軸支された回転軸53と、この回転軸53の上端から平面Gに平行に延びた棒状の支持部55とを有している。この支持部55の中央部は回転軸53に取り付けられ、支持部55の両端はそれぞれ、円環状第二磁石部33および円環状第三磁石部35との間に位置している。また、支持部55の両端にはそれぞれ、これらの両端から下方に垂下した垂下部63、64が設けられ、支持部55における円環状第一磁石部31および円環状第二磁石部33の間に相当する箇所にもそれぞれ、これらの箇所から下方に垂下した垂下部61、62が設けられている。これらの垂下部61、62、63、64の下端部にはそれぞれ、第一実施形態で説明した板状第一磁石9が平面Gに対して所定の間隙を有するように(平面Gに対して浮くように)固定されている。
【0041】
すなわち、垂下部61と板状第一磁石9とで移動部41を構成し、垂下部62と板状第一磁石9とで移動部42を構成し、垂下部63と板状第一磁石9とで移動部43を構成し、垂下部64と板状第一磁石9とで移動部44を構成している。そして、これらの移動部41等の移動は、回転軸53と支持部55とからなる移動方向規制部51によって、回転軸53を中心とした円周方向(回転方向)に規制されている。これらの移動部41等は、後述するように、
図6(a)で見て矢印Fで示す第一方向である時計回り方向(右回り方向)に移動するようになっている。
【0042】
図6(a)に示すように、円環状第一磁石部31は、円弧状に湾曲された複数の円弧状第二磁石65を円環状に連結することによって、回転軸53を中心とした円環状に形成されている。すなわち、円弧状第二磁石65は、板状の磁石全体を、円環状第一磁石部31に沿った円弧状に湾曲させた形状をなしており、それぞれの円弧状第二磁石65が、円環状第一磁石部31の円環の一部を構成している。また、本実施形態では、それぞれの円弧状第二磁石65は互いに同一形状となっている。
【0043】
具体的には、
図6(c)に示すように、円環状第一磁石部31は、互いに隣り合う円弧状第二磁石65、65において、移動部41等の移動方向の上流側(
図6(c)で見て右側)の円弧状第二磁石65の前面の上半分に、移動部41等の回転方向の下流側(
図6(c)で見て左側)の円弧状第二磁石65の後面の下半分が接着あるいは溶接等によって互いに連結するよう順次固定された後に、これらの円弧状第二磁石65の周囲を図示しない非磁性体のケースにて覆うことによって構成されている。なお、
図6(c)においては、説明の便宜上、円環状第一磁石部31を構成するすべての円弧状第二磁石65のうちの一対を示している。
【0044】
それぞれの円弧状第二磁石65における
図6(a)で見て外側の外側面(一方側対向面)65aは、移動部41の板状第一磁石9の内側面(第一実施形態における左側面)9aおよび移動部42の板状第一磁石9の内側面(第一実施形態における左側面)9aと同じN極の磁極を有し、
図6(a)で見て内側の内側面65bは、S極の磁極を有している。すなわち、それぞれの円弧状第二磁石65の外側面65aは、
図6(b)に示すように、円環状第一磁石部31および円環状第二磁石部33との間を矢印F方向に移動する移動部41の板状第一磁石9の内側面(一方の面)9aおよび移動部42の板状第一磁石9の内側面(一方の面)9aと対面可能であるとともに、これらの内側面9a、9aと同一極性となっている。このため、移動部41の板状第一磁石9の内側面9aおよび移動部42の板状第一磁石9の内側面9aと、円弧状第二磁石65の外側面65aとの間には斥力が働くようになっている。また、円環状第一磁石部31が平面Gに載置された状態において、それぞれの円弧状第二磁石65の外側面65aおよび内側面65bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている。
【0045】
図6(c)に示すように、それぞれの円弧状第二磁石65における後端部の下端(
図6(c)で見て右下の角部)は平面Gに接触している一方、それぞれの円弧状第二磁石65における先端部の下端(
図6(c)で見て左下の角部)は平面Gから浮いた状態となっている。換言すれば、それぞれの円弧状第二磁石65は、これらの円弧状第二磁石65の底面と平面Gとのなす傾斜角度が所定角度(鋭角)となるように前上がりに傾斜している。また、それぞれの円弧状第二磁石65の傾斜角度は互いに同一となっている。したがって、それぞれの円弧状第二磁石65の高さ方向の中心を通る第四中心線(不動側第一中心線)C4は、円環状第一磁石部31が平面Gに載置された状態では、垂直方向から見て、板状第一磁石9の第一中心線C1と所定角度で交差するように傾斜している。換言すれば、第四中心線C4は平面Gに対して所定角度で傾斜している(第四中心線C4は、第一中心線C1に対して平行とはならない)。
【0046】
図6(a)に示すように、円環状第二磁石部33は、円環状第一磁石部31よりも大きい。この円環状第二磁石部33は、円弧状に湾曲された複数の円弧状第三磁石66を円環状に連結することによって、回転軸53を中心とした円環状に形成されている。すなわち、円弧状第三磁石66は、円弧状の磁石全体を、円環状第二磁石部33に沿った円弧状に湾曲させた形状をなしており、それぞれの円弧状第三磁石66が、円環状第二磁石部33の円環の一部を構成している。また、本実施形態では、それぞれの円弧状第三磁石66は、円弧状第二磁石65に対して高さは同じである一方、円弧状第二磁石65よりも長くなっている。また、これらの円弧状第三磁石66は、互いに同一形状となっている。
【0047】
具体的には、
図6(c)に示すように、円環状第二磁石部33は、互いに隣り合う円弧状第三磁石66、66において、移動部41等の移動方向の上流側(
図6(c)で見て右側)の円弧状第三磁石66の前面の上半分に、移動部41等の回転方向の下流側(
図6(c)で見て左側)の円弧状第三磁石66の後面の下半分が接着あるいは溶接等によって互いに連結するよう順次固定された後に、これらの円弧状第三磁石66の周囲を図示しない非磁性体のケースにて覆うことによって構成されている。なお、
図6(c)においては、説明の便宜上、円環状第二磁石部33を構成するすべての円弧状第三磁石66のうちの一対を示している。
【0048】
それぞれの円弧状第三磁石66における
図6(a)で見て外側の外側面(一方側対向面)66aは、移動部43の板状第一磁石9の内側面9aおよび移動部44の板状第一磁石9の内側面9aと同じN極の磁極を有し、
図6(a)で見て内側の内側面(他方側対向面)66bは、移動部41の板状第一磁石9の外側面(第一実施形態における右側面)9bおよび移動部42の板状第一磁石9の外側面(第一実施形態における右側面)9bと同じS極の磁極を有している。すなわち、それぞれの円弧状第三磁石66の外側面66aは、
図6(b)に示すように、円環状第二磁石部33および円環状第三磁石部35との間を矢印F方向に移動する移動部43の板状第一磁石9の内側面(一方の面)9aおよび移動部44の板状第一磁石9の内側面(一方の面)9aと対面可能であるとともに、これらの内側面9a、9aと同一極性となっている。また、それぞれの円弧状第三磁石66の内側面66bは、円環状第一磁石部31および円環状第二磁石部33との間を矢印F方向に移動する移動部41の板状第一磁石9の外側面(他方の面)9bおよび移動部42の板状第一磁石9の外側面(他方の面)9bと対面可能であるとともに、これらの外側面9b、9bと同一極性となっている。このため、移動部43の板状第一磁石9の内側面9aおよび移動部44の板状第一磁石9の内側面9aと円弧状第三磁石66の外側面66aとの間、および移動部41の板状第一磁石9の外側面9bおよび移動部42の板状第一磁石9の外側面9bと円弧状第三磁石66の内側面66bとの間にはそれぞれ斥力が働くようになっている。また、円環状第二磁石部33が平面Gに載置された状態において、それぞれの円弧状第三磁石66の外側面66aおよび内側面66bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている。
【0049】
図6(c)に示すように、それぞれの円弧状第三磁石66における後端部の下端(
図6(c)で見て右下の角部)は平面Gに接触している一方、それぞれの円弧状第三磁石66における先端部の下端(
図6(c)で見て左下の角部)は平面Gから浮いた状態となっている。換言すれば、それぞれの円弧状第三磁石66は、これらの円弧状第三磁石66の底面と平面Gとのなす傾斜角度が所定角度(鋭角)となるように前上がりに傾斜している。また、それぞれの円弧状第三磁石66の傾斜角度は互いに同一となっている。したがって、それぞれの円弧状第三磁石66の高さ方向の中心を通る第五中心線(不動側第一中心線または不動側第二中心線)C5は、円環状第二磁石部33が平面Gに載置された状態では、垂直方向から見て、板状第一磁石9の第一中心線C1と所定角度で交差するように傾斜している。換言すれば、第四中心線C4は平面Gに対して所定角度で傾斜している(第四中心線C4は、第一中心線C1に対して平行とはならない)。なお、本実施形態では、円弧状第三磁石66の傾斜角度は、上述の円弧状第二磁石65と同一となっている。
【0050】
図6(a)に示すように、円環状第三磁石部35は、円環状第二磁石部33よりも大きい。この円環状第三磁石部35は、円弧状に湾曲された複数の円弧状第四磁石67を円環状に連結することによって、回転軸53を中心とした円環状に形成されている。すなわち、円弧状第四磁石67は、円弧状の磁石全体を、円環状第三磁石部35に沿った円弧状に湾曲させた形状をなしており、それぞれの円弧状第四磁石67が、円環状第三磁石部35の円環の一部を構成している。また、本実施形態では、それぞれの円弧状第四磁石67は、円弧状第三磁石66に対して高さは同じである一方、円弧状第三磁石66よりも長くなっている。また、これらの円弧状第四磁石67は、互いに同一形状となっている。
【0051】
具体的には、
図6(c)に示すように、円環状第三磁石部35は、互いに隣り合う円弧状第四磁石67、67において、移動部41等の移動方向の上流側(
図6(c)で見て右側)の円弧状第四磁石67の後面の上半分に、移動部41等の回転方向の下流側(
図6(c)で見て左側)の円弧状第四磁石67の前面の下半分が接着あるいは溶接等によって互いに連結するよう順次固定された後に、これらの円弧状第四磁石67の周囲を図示しない非磁性体のケースにて覆うことによって構成されている。なお、
図6(c)においては、説明の便宜上、円環状第三磁石部35を構成するすべての円弧状第四磁石67のうちの一対を示している。また、
図6(c)においては、円弧状第二磁石65と円弧状第三磁石66と円弧状第四磁石67とは、上述のように互いの長さが異なるのみであるため、説明の便宜上、これらの磁石65、66、67を同じ図として図示している。
【0052】
それぞれの円弧状第四磁石67における
図6(a)で見て外側の外側面(一方側対向面)67aは、N極の磁極を有し、
図6(a)で見て内側の内側面(他方側対向面)67bは、移動部43の板状第一磁石9の外側面9bおよび移動部44の板状第一磁石9の外側面9bと同じS極の磁極を有している。すなわち、それぞれの円弧状第四磁石67の内側面67bは、円環状第二磁石部33および円環状第三磁石部35との間を矢印F方向に移動する移動部43の板状第一磁石9の外側面9bおよび移動部44の板状第一磁石9の外側面9bと対面可能であるとともに、これらの外側面9b、9bと同一極性となっている。このため、移動部43の板状第一磁石9の外側面9bおよび移動部44の板状第一磁石9の外側面9bと円弧状第四磁石67の内側面67bとの間にはそれぞれ斥力が働くようになっている。また、円環状第三磁石部35が平面Gに載置された状態において、それぞれの円弧状第四磁石67の外側面67aおよび内側面67bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている。
【0053】
図6(c)に示すように、それぞれの円弧状第四磁石67における後端部の下端(
図6(c)で見て右下の角部)は平面Gに接触している一方、それぞれの円弧状第四磁石67における先端部の下端(
図6(c)で見て左下の角部)は平面Gから浮いた状態となっている。換言すれば、それぞれの円弧状第四磁石67は、これらの円弧状第四磁石67の底面と平面Gとのなす傾斜角度が所定角度(鋭角)となるように前上がりに傾斜している。また、それぞれの円弧状第四磁石67の傾斜角度は互いに同一となっている。したがって、それぞれの円弧状第四磁石67の高さ方向の中心を通る第六中心線(不動側第二中心線)C6は、円環状第三磁石部35が平面Gに載置された状態では、垂直方向から見て、板状第一磁石9の第一中心線C1と所定角度で交差するように傾斜している。換言すれば、第四中心線C4は平面Gに対して所定角度で傾斜している(第四中心線C4は、第一中心線C1に対して平行とはならない)。なお、本実施形態では、円弧状第四磁石67の傾斜角度は、上述の円弧状第二磁石65および円弧状第三磁石66と同一となっている。
【0054】
次に、円環状第一磁石部31のそれぞれの円弧状第二磁石65、円環状第二磁石部33のそれぞれの円弧状第三磁石66、および円環状第三磁石部35のそれぞれの円弧状第四磁石67の相互の位置関係を説明するが、その説明の便宜上、
図6(a)において、或る円弧状第二磁石65を符号X1とし、この円弧状第二磁石X1において矢印Fにおける下流側(以後、単に「下流側」といい、併せて、矢印Fにおける上流側を単に「上流側」という。)に隣り合う円弧状第二磁石65をX2とする。また、円環状第二磁石部33のそれぞれの円弧状第三磁石66のうち、垂直方向で見て、上記円弧状第二磁石X1、X2の少なくとも一部と重なり合うとともに互いに隣り合う円弧状第三磁石66をそれぞれ符号Y1、Y2、Y3とし、円環状第三磁石部35のそれぞれの円弧状第四磁石67のうち、垂直方向で見て、上記円弧状第三磁石Y1,Y2、Y3の少なくとも一部と重なり合うとともに互いに隣り合う円弧状第四磁石67をそれぞれ符号Z1、Z2、Z3、Z4として説明することとする。
【0055】
図6(a)に示すように、互いに同心の円環状第一磁石部31と円環状第二磁石部33とは、平面G上において互いに平行に対面するように所定の間隔をあけて配置されている。また、互いに同心の円環状第二磁石部33と円環状第三磁石部35とも、平面G上において互いに平行に対面するように上記同じ所定の間隔をあけて配置されている。
【0056】
この状態で、円環状第一磁石部31の円弧状第二磁石X1は、垂直方向で見て、この円弧状第二磁石X1の左端aが、円環状第二磁石部33の円弧状第三磁石Y1の左端eおよび右端fの間(左右端e、f間の略中央)に位置するとともに、円弧状第二磁石X1の右端bが、円弧状第三磁石Y1の下流側にて隣り合う円弧状第三磁石Y2の左端gおよび右端hの間(左右端g、hの略中央)に位置するように配置されている。また、この円弧状第二磁石X1の下流側にて隣り合う円弧状第二磁石X1は、垂直方向で見て、この円弧状第二磁石X1の左端cが、円弧状第三磁石Y1の下流側にて隣り合う円弧状第三磁石Y2の左端gおよび右端hの間(左右端g、hの略中央)に位置するとともに、円弧状第二磁石X1の右端dが、円弧状第三磁石Y2の下流側にて隣り合う円弧状第三磁石Y3の左端iおよび右端jとの間(左右端i、jの略中央)に位置するように配置されている。
【0057】
また、円環状第二磁石部33の円弧状第三磁石Y1は、垂直方向で見て、この円弧状第三磁石Y1の左端eが、円環状第三磁石部37の円弧状第四磁石Z1の左端kおよび右端lの間(左右端k、l間の略中央)に位置するとともに、円弧状第三磁石Y1の右端fが、円弧状第四磁石Z1の下流側にて隣り合う円弧状第四磁石Z2の左端mおよび右端nとの間(左右端m、nの略中央)に位置するように配置されている。また、この円弧状第三磁石Y1の下流側にて隣り合う円弧状第三磁石Y2は、垂直方向で見て、この円弧状第三磁石Y2の左端gが、円弧状第四磁石Z1の下流側にて隣り合う円弧状第四磁石Z2の左端mおよび右端nの間(左右端m、nの略中央)に位置するとともに、円弧状第三磁石Y2の右端hが、円弧状第四磁石Z2の下流側にて隣り合う円弧状第四磁石Z3の左端oおよび右端pとの間(左右端o、pの略中央)に位置するように配置されている。さらに、この円弧状第三磁石Y2の下流側にて隣り合う円弧状第三磁石Y3は、垂直方向で見て、この円弧状第三磁石Y3の左端iが、円弧状第四磁石Z3の左端oおよび右端pの間(左右端o、pの略中央)に位置するとともに、円弧状第三磁石Y3の右端jが、円弧状第四磁石Z3の下流側にて隣り合う円弧状第四磁石Z4の左端qおよび右端rとの間(左右端q、rの略中央)に位置するように配置されている。
【0058】
このように、例えば、円弧状第二磁石X1は、垂直方向で見て、円弧状第三磁石Y1およびY2との間に跨るように配置され、円弧状第二磁石X1の上流側部分(
図6(a)において左半分の部分)が、円弧状第三磁石Y1の矢印Fの下流側部分(
図6(a)において右半分の部分)と対面し、円弧状第二磁石X1の下流側部分が、円弧状第三磁石Y2の上流側部分と対面した状態となる。また、例えば、円弧状第三磁石Y1は、垂直方向で見て、円弧状第四磁石Z1およびZ2との間に跨るように配置され、円弧状第三磁石Y1の上流側部分が、円弧状第四磁石Z1の下流側部分と対面し、円弧状第三磁石Y1の下流側部分が、円弧状第四磁石Z2の上流側部分と対面した状態となる。
【0059】
すなわち、円環状第一磁石部31と円環状第二磁石部33とは、垂直方向で見て、円環状第一磁石部31のそれぞれの円弧状第二磁石65の両端に対し、円環状第二磁石部33のぞれぞれの円弧状第三磁石66の両端が円周方向にずれるような位置関係になるように配置されている。また、円環状第二磁石部33と円環状第三磁石部35とは、垂直方向で見て、円環状第二磁石部33のそれぞれの円弧状第三磁石66の両端に対し、円環状第三磁石部35のぞれぞれの円弧状第四磁石67の両端が円周方向にずれるような位置関係になるように配置されている。なお、上述の第一実施形態と同様に、円環状第一磁石部31、円環状第二磁石部33および円環状第三磁石部35は、それぞれの円弧状第二磁石65,円弧状第三磁石66,円弧状第四磁石67が、垂直方向から見て、互いに円周方向にずれていればよく、(換言すれば、垂直方向から見て、互いに対面する円弧状第二磁石65の両端の少なくとも一方と円弧状第三磁石66の両端の少なくとも一方とが一致するように重なっていないとともに、互いに対面する円弧状第三磁石66の両端の少なくとも一方と円弧状第四磁石67の両端の少なくも一方とが一致するように重なっていなければよい)、どのくらいの割合でずらすのかは、仕様等に応じて適宜設定可能である。
【0060】
また、
図6(c)に示すように、本実施形態では、上述のように平面Gに対して間隙を有するように位置する移動部41等の板状第一磁石9の第一中心線C1はそれぞれ、第一実施形態と同様に、垂直方向で見て、円環状第一磁石部31のそれぞれの円弧状第二磁石65の第四中心線C4以下となり、円環状第二磁石部33のそれぞれの円弧状第三磁石66の第五中心線C5以下となり、円環状第三磁石部35のそれぞれの円弧状第四磁石67の第六中心線C6以下となるように配置されている。このため、第一実施形態に係る
図3で説明した通り、円環状第一磁石部31と円環状第二磁石部33との間の移動部41、42は、平面Gに向けて押し付けられる方向(矢印B参照)に斥力が働き、円環状第二磁石部33と円環状第三磁石部35との間の移動部43、44も、平面Gに向けて押し付けられる方向に斥力が働く。この結果、移動部41等が平面Gから浮き上がらなくなった安定した状態を保つこととなる。
【0061】
このような構成の本実施形態においては、上述の第一実施形態と同様に、移動部41等のそれぞれの板状第一磁石9に対して、円弧状第二磁石65、円弧状第三磁石66、円弧状第四磁石67がそれぞれ前上がりに傾斜しているとともに、互いに円周方向にずれた位置関係にあることに起因して、
図6(a)に示す矢印F方向に移動(回転軸53を中心に回転)するというように、第一実施形態と同様な作用効果を奏する。また、第二実施形態では、回転軸53が磁力(斥力)のみによって回転するようになっているため、回転軸53の回転から電気エネルギーを取り出せるように(回転によるエネルギーを電気的なエネルギーに変換可能なように)することで、回転軸53が磁力によって回転し続ける限り発電を行うことも可能である。なお、本実施形態においても、上述の第一実施形態と同様に、板状第一磁石9、円弧状第二磁石65、円弧状第三磁石66、円弧状第四磁石67の少なくとも1つが、何らかの要因で磁力を失うと、移動部41等の移動ができなくなるため、本実施形態に係る推力発生機構30もいわゆる永久機関に該当するものではないことを付言しておく。
【0062】
本発明は、上述の各実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において、適宜の変更が可能である。
【0063】
例えば、第一実施形態では、複数の板状第二磁石15からなる直線状第一磁石部5、および複数の板状第三磁石17からなる直線状第二磁石部7とによって、移動部3を移動させていたが、これに代えて、単一の板状第二磁石15と、この板状第二磁石15に対して、前後方向のいずれかにずれて配置された単一の板状第三磁石17と、移動部3とで推力発生機構1を構成するようにしてもよく、この場合であっても、移動部3の移動は可能である。また、この場合においては、板状第二磁石15および板状第三磁石17における磁石の前後長さは、移動部3の板状第一磁石9における磁石の前後長さの倍以上であることが望ましい。これについては、第二実施形態においても同様のことがいえる。
【0064】
また、上述の第一実施形態では、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17は同一形状に形成されかつそれぞれが同じ所定角度で傾斜しているように構成したが、これに代えて、一部の第二磁石(あるいは、一部の第三磁石)の形状を、他の第二磁石(あるいは、他の第三磁石)とは異なる形状や大きさとしたり、あるいは、一部の第二磁石(あるいは第三磁石)の傾斜角度を他の傾斜角度とは異ならせたりすることで、移動部3の移動速度を移動中に変化させることも可能である。すなわち、一部の第二磁石あるいは第三磁石の形状、大きさ、傾斜角度を異ならせることによって、移動部3の移動に関する挙動を調整するようにしてもよい。これについては、第二実施形態においても同様のことがいえる。
【0065】
また、上述の第二実施形態においては、板状に形成された板状第一磁石9を用いたが、これに代えて、板状第一磁石9全体を円環状第一磁石部31に沿った円弧状に湾曲させた形状とした円弧状第一磁石を用いるようにしてもよい。この場合、この円弧状第一磁石が、円環状第一磁石部31と円環状第二磁石部33との間(円環状第二磁石部33と円環状第三磁石部35との間)のどこに位置していても、円弧状第一磁石と円環状第一磁石部31の円弧状第二磁石65との間の距離(円弧状第一磁石と円環状第二磁石部33の円弧状第三磁石66との間の距離)、円弧状第一磁石と円環状第二磁石部33の円弧状第二磁石66との間の距離(円弧状第一磁石と円環状第三磁石部35の円弧状第四磁石67との間の距離)が常に同一となるため、移動部41等の移動をより円滑にすることができる。
【0066】
次に、
図7に基づいて、第一実施形態の変形例1を説明する。この変形例1では、主に、直線状第一磁石部5を構成するそれぞれの板状第二磁石15が互いに離間しているとともに、直線状第二磁石部7を構成するそれぞれの板状第三磁石17が互いに離間している点が第一実施形態と相違する。
【0067】
図7(a)に示すように、複数の板状第二磁石15は互いに等間隔となるように離間して配置されており、複数の板状第三磁石17も互いに等間隔となるように離間して配置されている。また、複数の板状第二磁石15と複数の板状第三磁石17との位置関係は、
図7(b)に示すように、垂直方向から見て、互いに隣り合う板状第三磁石17、17のうち、下流側の板状第三磁石17(例えば、
図7(a)において一番左側の板状第三磁石17であり、以後、単に「一番左側の板状第三磁石17」という)、および互いに隣り合う板状第三磁石17、17のうち、下流側の板状第三磁石17(例えば、上記一番左側の板状第三磁石17の右隣の中央の板状第三磁石17であり、以後、単に「中央の板状第三磁石17」という)の間(互いに隣り合う板状第三磁石17、17の間)に、板状第二磁石15(例えば、
図7(a)において一番左側の板状第二磁石15であり、以後、単に「一番左側の板状第二磁石15」という)が介在している位置関係となっている。この位置関係を前提として、
図7(b)に示すように、垂直方向から見て、一番左側の板状第二磁石15の下流側端部と一番左側の板状第三磁石17の上流側端部とが互いに重なり合うとともに、一番左側の板状第二磁石15の上流側端部と中央の板状第三磁石17の下流側端部とが互いに重なり合う「重複有の位置関係」となっている。このように構成しても第一実施形態と同様な作用効果を奏する。なお、複数の板状第二磁石15および複数の板状第三磁石17が等間隔とならないように離間して配置されるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0068】
なお、
図7(a)、(b)においては、複数の板状第二磁石15と複数の板状第三磁石17との位置関係を「重複有の位置関係」としたが、これに限定されず、
図7(c)、(d)あるいは
図7(e)、(f)に示す位置関係としてもよく、これらのように構成しても第一実施形態と同様な作用効果を奏する。すなわち、
図7(c)、(d)に示すように、一番左側の板状第三磁石17の後端面(
図7(c)で見て、一番左側の板状第三磁石17の右側の端面)と一番左側の板状第二磁石15の先端面(
図7(c)で見て、一番左側の板状第二磁石15の左側の端面)とが、垂直方向から見て面接触し、かつ中央の板状第三磁石17の先端面と一番左側の板状第二磁石15の後端面とが垂直方向から見て面接触するような「重複無の位置関係」となるようにしてもよい。また、
図7(e)、(f)に示すように、一番左側の板状第三磁石17の後端面と一番左側の板状第二磁石15の先端面とが互いに離間しているとともに、中央の板状第三磁石17の先端面と一番左側の板状第二磁石15の後端面とが互いに離間している位置関係、換言すれば、互いに隣り合う板状第三磁石17、17と、これらの板状第三磁石17、17間に垂直方向から見て介在する板状第二磁石15とが、垂直方向で見て互いに間隔をあけている「間隔有の位置関係」とするようにしてもよい。
【0069】
次に、
図8に基づいて、第二実施形態の変形例1を説明する。第二実施形態の変形例1では、円環状第一磁石部31および円環状第二磁石部33は設けられているが、
図6に示す円環状第三磁石部35は設けられていない例を示している。また、第二実施形態の変形例1では、概して、上述の第一実施形態の変形例1に係る「重複有の位置関係」、「重複無の位置関係」、「間隔有の位置関係」を第二実施形態に適用したものであり、円環状第一磁石部31に係る複数の円弧状第二磁石65と、円環状第二磁石部33に係る複数の円弧状第三磁石66との位置関係を主に説明する。
【0070】
図8(a)乃至(c)に示すように、複数の円弧状第二磁石65は互いに等間隔となるように離間して配置されており、複数の円弧状第三磁石66も互いに等間隔となるように離間して配置されているとともに、垂直方向から見て(
図8では垂直方向から見た図示は省略する)、互いに隣り合う円弧状第三磁石66、66との間に、円弧状第二磁石65が介在している位置関係となっている。この位置関係を前提とした複数の円弧状第二磁石65と複数の円弧状第三磁石66との位置関係の類型としては、第一実施形態の変形例1と同様に、
図8(a)に示す「重複有の位置関係」と、
図8(b)に示す「重複無の位置関係」と、
図8(c)に示す「間隔有の位置関係」となる。
【0071】
すなわち、
図8(a)には、円弧状第二磁石65の下流側端部と、互いに隣り合う円弧状第三磁石66、66のうち、下流側の円弧状第三磁石66の上流側端部とが互いに重なり合うとともに、円弧状第二磁石65の上流側端部と、互いに隣り合う円弧状第三磁石66、66のうち、上流側の円弧状第三磁石66の下流側端部とが互いに重なり合う「重複有の位置関係」が示されている。また、
図8(b)には、上記下流側の円弧状第三磁石66の後端面と上記円弧状第二磁石65の先端面とが垂直方向から見て面接触し、かつ上記上流側の円弧状第三磁石66の先端面と上記円弧状第二磁石65の後端面とが垂直方向から見て面接触するような「重複無の位置関係」が示されている。さらに、
図8(c)には、互いに隣り合う円弧状第三磁石66、66と、これらの円弧状第三磁石66、66間に垂直方向から見て介在する円弧状第二磁石65とが、垂直方向で見て互いに間隔をあけている「間隔有の位置関係」が示されている。このような第二実施形態の変形例1であっても、第二実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0072】
次に、
図9に基づいて、第一実施形態の変形例2を説明する。
図9(a)および(b)に示すように、板状第二磁石15と板状第三磁石17との位置関係は、上述の「重複有の位置関係」となっている。また、板状第二磁石15は、その左側面15aにおける下流側端部に、板状第二磁石15よりも短い板状の第一付加磁石71と、この第一付加磁石71よりも短い第二付加磁石73とが、この順に重なるように固定されることで構成されており、板状第二磁石15においては、その上流側の磁力よりも下流側の方の磁力が強くなるようになっている。なお、これらの第一付加磁石71および第二付加磁石73のそれぞれの先端面は、板状第二磁石15の先端面と面一となっている。また、板状第三磁石17も同様に、その左側面17aにおける下流側端部に、板状第三磁石17よりも短い板状の第三付加磁石75と、この第三付加磁石75よりも短い第四付加磁石77とがこの順に重なるように固定されることで構成されており、板状第三磁石17においては、その上流側の磁力よりも下流側の方の磁力が強くなるようになっている。なお、これらの第三付加磁石75および第四付加磁石77のそれぞれの先端面は、板状第三磁石17の先端面と面一となっている。
【0073】
このように、「重複有の位置関係」にある板状第二磁石15および板状第三磁石17において、その板状第二磁石15においては、その上流側の磁力よりも下流側の方の磁力が強くなるように構成しているため、板状第三磁石17の上流側端部と板状第二磁石15の下流側端部との間(
図9(a)において左側の板状第三磁石17の上流側端部と、左側の板状第二磁石15の下流側端部との間)に、板状第一磁石9を有する移動部3が到達した場合、この板状第一磁石9が板状第二磁石15および板状第三磁石17から受ける斥力は、板状第一磁石9の下流側の部分の方が、その上流側の部分よりも大きくなる。換言すれば、移動方向が矢印Aに規制されている移動部3において、その移動方向の先端部側が受ける斥力よりも、その移動方向の後端部側が受ける斥力の方が大きくなるため、移動部3は移動が規制されている矢印A方向に押し出されることとなり、より強く矢印A方向に移動することができる。
【0074】
なお、板状第二磁石15および板状第三磁石17の下流側端部の磁力を強くするには、
図9(a)に示す第一付加磁石71、第二付加磁石73、第三付加磁石75および第四付加磁石77を設けることに限定されず、例えば、
図9(b)に示すように、板状第二磁石15および板状第三磁石17において、それぞれの下流側端部の厚みを、それぞれの上流側端部の厚みよりも大きくするというように、板状第二磁石15および板状第三磁石17の形状を変更することで、板状第二磁石15および板状第三磁石17の下流側端部の磁力を強くすることもできる。
【0075】
また、板状第一磁石9においても、
図9(b)に示すように、
図9(a)で示した板状第二磁石15および板状第三磁石17と同様に、板状第一磁石9の上流側端部の厚みを、その下流側端部の厚みよりも大きくすることで(テーパ状とすることで)、板状第一磁石9の上流側端部の磁力を強くするようにしてもよい。このようにすることで、移動部3をより強く矢印A方向に移動することができる。また、板状第一磁石9については、この
図9(b)で示した例の他、例えば、
図9(c)に示すように、板状第一磁石9として、その両側面における中央部にそれぞれ、板状第一磁石9よりも短い付加磁石91乃至97を重ねるように構成されたものを用いることもできる。この
図9(c)に示す例では、板状第一磁石9の両端部の磁力が、その中央部の磁力よりも弱くなるようになっているが、板状第一磁石9の両端部の少なくとも一方の磁力が、その中央部の磁力よりも弱くなるようにしてもよい(
図9(b)に示す第一磁石9については、その中央部の磁力よりも、上流側端部の磁力の方が弱いともいえる)。
【0076】
また、上述の第一および第二実施形態や各変形例において、板状第一磁石9は、
図3、
図4および
図10(b)等に示すように、移動部3が平面Gに載置された状態において、平面Gと平行になるようにしていたが、これに限定されず、板状第一磁石9を平面Gに対して傾斜(板状第一磁石9を第一方向に対して平行にならないように傾斜)するようにしてもよい。具体的には、
図10(a)に示すように、この図において、左側の車輪13aの大きさを、右側の車輪13よりも大きくすることで、板状第一磁石9(移動部3)が図において右上に傾斜するようにしたり、あるいは、
図10(c)に示すように、この図において、右側の車輪13aの大きさを、左側の車輪13よりも大きくすることで、板状第一磁石9(移動部3)が図において左上に傾斜するようにしたりしてもよい。
【0077】
図10(b)に示すように、平面Gに対して平行な板状第一磁石9の第一中心線(移動側中心線)C1は、図において、矩形の板状第一磁石9の対角線の中心を通っている。換言すれば、板状第一磁石9の最も高い箇所と最も低い箇所との中央を通っている。
図10(a)、(c)に示すように、平面Gに対して傾斜した板状第一磁石9の場合も、上述の平行な場合と同様に、板状第一磁石9の最も高い箇所(
図10(a)においてはこの図で見て第一磁石9の左上の角、
図10(c)においてはこの図で見て第一磁石9の右上の角)と、最も低い箇所(
図10(a)においてはこの図で見て第一磁石9の右下の角、
図10(c)においてはこの図で見て第一磁石9の左下の角)との中央を通っている。すなわち、
図10(a)乃至(c)でも示すように、平面Gに対して第一磁石9が平行になっている場合であっても、傾斜している場合であっても、第一中心線C1は共通しており、この第一中心線C1と、上述の第二乃至第六中心線との関係も何ら変わりはない。このように構成しても、上述の各実施形態や各変形例と同様な作用効果を奏する。
【0078】
上述の各実施形態および各変形例においては、第一磁石が平面Gに対して起立した起立状態、換言すれば、
図3に示す板状第一磁石9の周面(例えば、
図3において、板状第一磁石9の下面)が平面Gに平行に対面した状態で、かつ、板状第一磁石9の両側面9a、9bが平面Gに対して平行な方向(例えば、
図3において、左右方向)に向いた起立状態とし、第二および板状第三磁石も同様に起立状態としていた。すなわち、第一乃至第三磁石の位置関係として、概して、第一乃至第三磁石のいずれもが起立状態の位置関係(例えば、
図3に示す板状第一磁石9、板状第二磁石15、板状第三磁石17の位置関係)となっていたが、これに代えて、
図11に示すように、第二および第三磁石を起立した状態とする一方、第一磁石を平伏した状態した位置関係にするようにしても良い。
【0079】
例えば、
図11(a)に示すように、移動部3に取り付けられる第一磁石の一例として、円盤状をなす円盤状磁石110を用い、この円盤状磁石110を複数積み重ねてなる磁石体120を用いることができる。磁石体120は、複数の円盤状磁石110を互いに磁力によって接着(隣り合う円盤状磁石110が互いに引き寄せ合って密接)するように積み重ねることによって一体化した円柱形状をなしている。なお、磁石体120は、複数の円盤状磁石110相互間の磁力による接着に加え、接着剤による接着あるいはネジなどの固定具によってさらに強固に一体化するようにしても良い。また、磁石体120としては、円盤状磁石に代えて、板状の板状磁石を積み重なることによって一体化した柱形状とするようにしても良く、その形状については適宜変更可能である。
【0080】
この磁石体120を構成する複数の円盤状磁石110のうち、磁石体120の一端部を構成する円盤状磁石110(
図11(a)で見て、一番上の円盤状磁石110)の一方の面(
図11(a)で見て上端面)110aはN極(第一極性)の磁極を有し、磁石体120の一方の面(一端面)120aを構成している。磁石体120を構成する複数の円盤状磁石110のうち、磁石体120の他端部を構成する円盤状磁石110(
図11(a)で見て、一番下の円盤状磁石110)の他方の面(
図11(a)で見て下端面)110bはS極(第二極性)の磁極を有し、磁石体120の他方の面(他端面)120bを構成する。複数の円盤状磁石110のそれぞれの外周面110cは、磁石体120の外周面120cを構成する。なお、以後の説明において、円盤状磁石110の一端面および他端面を総括して両端面と称することもある。
【0081】
なお、
図11(a)における符号MCは、磁石体120の高さ方向(
図11(a)における上下方向)に対して垂直な方向(
図11(a)において左右方向)から見て、磁石体120の中心を通る中心線、換言すれば、磁石体120を構成する複数の円盤状磁石110のうち中央の円盤状磁石110におけるN極とS極との境界となる境界線を示す(以後、境界線MCという)。また、
図11(a)の平面Gは、円盤状磁石110が平伏している状態を分かりやすく示すために記載したものである。
【0082】
この磁石体120の磁極について、磁極を計測する磁気チェッカー等の測定器で実際に計測したところ、
図11(b)に示すように、磁石体120外周面120cのうち、磁石体120の一方の面120aから境界線MCまでの範囲R1がN極の極性を有し、磁石体120の他方の面120bから境界線MCまでの範囲R2がS極の極性を有していた。換言すれば、磁石体120の外周面のうち、上半分の領域R1がN極あり、下半分の領域R2がS極であった。このため、磁石体120の外周面における領域R1に対し、
図1等に示す板状第二磁石15を
図1に示す状態のまま配置することによって、移動部3が
図1の矢印A方向に移動することとなる。同様に、磁石体120の外周面における領域R2に
図1等に示す板状第三磁石17を
図1に示す状態のまま配置することによっても、移動部3が
図1の矢印A方向に移動することとなる。これについては、
図6乃至
図10に示す実施形態についても同様である。すなわち、磁石体120については、上述の各実施形態および各変形例に係る板状第一磁石9に代えて適用することが可能であり、この場合であっても上述の各実施形態および各変形例と同様な作用効果を奏する。
【0083】
次に、この磁石体120を用いた他の実施形態について順次説明する。
図12は、第三実施形態に係る推力発生機構100を模式的に示す図である。
図12に示すように、推力発生機構100は、磁石体120と、この磁石体120が矢印Aで示す移動方向に対して垂直(
図11(a)で見て上下方向)になるよう取り付けられた移動部3と、磁石体120の両側方にそれぞれ配置された板状第二磁石(固定側磁石)15および板状第三磁石(固定側磁石)17とを有している。なお、磁石体120は、矢印Aで示す移動方向に対して垂直(換言すれば、円盤状磁石110の両端面が当該移動方向に対して垂直な方向を向く)ではなく、例えば、
図12(a)で見て、左あるいは右に傾斜(換言すれば、円盤状磁石110の両端面が当該移動方向に対して垂直な方向)するように取り付けられていても良い。要は、磁石体120の設置方向は、矢印Aに示す移動方向とは異なる方向(換言すれば、当該移動方向に対して交差する方向であり、円盤状磁石110からすると、その両端面が当該移動方向に対して異なる方向)であれば良く、仕様に応じて適宜変更可能である。
【0084】
移動部3は、鉄等の磁性体からなる板状のベース部材11Aと、このベース部材11Aの両側面の下部の前後にそれぞれ設けられて平面G上に載置される4つの車輪13(
図12(b)参照)とを有しており、矢印Aで示す前方向(
図12における上方向)に移動可能となっている。このベース部材11Aの上面には、磁石体120が磁力により接着することで取り付けられている。なお、ベース部材11Aを、上述のケース11と同様に樹脂等の非磁性体から構成してもよく、この場合、磁石体120をベース部材11Aに接着剤による接着、溶接、ネジ等の固定具によって固定するようにしても良い。
【0085】
図12(a)に示すように、板状第二磁石15および板状第三磁石17はともに平伏状態で磁石体120の両側方に間隔を空けた位置に固定されている。板状第二磁石15における
図12(a)で見て下側の左側面15aは、S極の磁極を有するとともに平面Gに平行となっている。板状第二磁石15における
図12(a)で見て上側の右側面15bは、N極の磁極を有するとともに平面Gに平行となっている。板状第三磁石17も同様に、その左右の側面17a、17bが、それぞれS極、N極の磁極を有するとともに平面Gに平行となっている。これらの板状第二磁石15および板状第三磁石17の境界線は、磁石体120の境界線MCに一致している。
【0086】
これにより、板状第二磁石15および板状第三磁石17の外周面のうち、N極の部分(
図12(a)における板状第二磁石15および板状第三磁石17の上半分である白部分)と、磁石体120の外周面のうちのN極の部分である領域R1(
図12(b)参照)とが対面した状態となる。同様に、板状第二磁石15および板状第三磁石17の外周面のうち、S極の部分(
図12(a)における板状第二磁石15の下半分である黒部分)と、磁石体120の外周面のうちのS極の部分である領域R2(
図12(b)参照)とが対面した状態となる。
【0087】
図12(b)に示すように、板状第二磁石15は、矢印Aで示す移動部3の移動方向(以後、単に「移動方向」ということもある)に対して、平面視において左上方に傾斜するように固定されている。換言すれば、板状第二磁石15は、この板状第二磁石15と磁石体120との距離が矢印Aで示す移動方向に向かうにつれて次第に大きくなるように固定されている。これにより、板状第二磁石15と磁石体120との間の距離は、矢印Aで示す移動方向の下流側(以後、単に「下流側」ということもある)に向かうほど大きくなっており、板状第二磁石15の下流側の部分と磁石体120との間の距離が、板状第二磁石15における矢印Aで示す移動方向の上流側(以後、単に「上流側」ということもある)の部分と磁石体120との間の距離よりも大きくなっている。
【0088】
板状第三磁石17も同様に、移動方向に対して、平面視において右上方に傾斜するように固定されている。換言すれば、板状第三磁石17は、この板状第三磁石17と磁石体120との距離が下流側に向かうにつれて次第に大きくなるように固定されている。これにより、板状第三磁石17と磁石体120との間の距離は、下流側に向かうほど大きくなっており、板状第三磁石17の下流側の部分と磁石体120との間の距離が、板状第三磁石17の上流側の部分と磁石体120との間の距離よりも大きくなっている。
【0089】
すなわち、板状第二磁石15および板状第三磁石17は、移動部3の移動方向に対して垂直に起立した磁石体120に対して、平面視で傾斜したねじれの位置となるように配置されている。このような構成により、板状第二磁石15と磁石体120との間に発生する斥力および、板状第三磁石17と磁石体120との間に発生する斥力によって、移動部3が矢印Aで示す移動方向に移動することとなる。なお、
図12においては、左右の磁石15、17を配置しているが、これに代えて、板状第二磁石15のみ、あるいは板状第三磁石17のみを配置するようにしても良く、この場合であっても、移動部3は矢印Aで示す移動方向に移動する。
【0090】
図13は、第四実施形態に係る推力発生機構100を模式的に示す図である。
図13(a)に示すように、平伏状態の板状第二磁石15は、磁石体120の外周面における領域R1(
図11(b)参照)の範囲内でかつ境界線MCの上方(以後、単に「境界線MCの上方」ということもある)に位置している。この板状第二磁石15は、側面視(
図13(a)から見て正面視)において、境界線MCに対して左上に傾斜、換言すれば、下流側に向かうにつれて次第に境界線MCとの距離が大きくなるように傾斜している。また、板状第二磁石15は、
図13(b)に示すように、移動方向に対して平行になるように配置されている。
【0091】
すなわち、板状第二磁石15は、移動方向に対して垂直に起立した磁石体120に対して、側面視で傾斜したねじれの位置となるように配置されている。このように構成しても、移動部3は矢印Aで示す移動方向に移動する。この
図13においては、境界線MCの上方に板状第二磁石15のみを配置した状態を例示したが、
図14に示すように、平伏状態の板状第三磁石17を、磁石体120の外周面における領域R2(
図11(b)参照)の範囲内でかつ境界線MCの下方(以後、単に「境界線MCの下方」ということもある)に位置するように配置しても良い。
【0092】
図14(a)に示すように、この板状第三磁石17は、側面視において、境界線MCに対して左下に傾斜、換言すれば、下流側に向かうにつれて次第に境界線MCとの距離が大きくなるように傾斜している。また、板状第三磁石17は、
図14(b)に示すように、移動部3の移動方向に対して平行になるように配置されている。すなわち、
図14に示す板状第三磁石17は、移動方向に対して垂直に起立した磁石体120に対して、側面視で傾斜したねじれの位置となるように配置されている。このように構成しても、移動部3は矢印Aで示す移動方向に移動する。
【0093】
なお、
図13および
図14においては、磁石体120両側方のうちの一方でかつ境界線MCの上方または下方のうちの一方のみに、板状第二磁石15または板状第三磁石17を設けた状態を例示したが、磁石体120における境界線MCの上方でかつ磁石体120の両側方にそれぞれ、板状第二磁石15、板状第三磁石17を配置しても良い。また、磁石体120における境界線MCの下方でかつ磁石体120の両側方にそれぞれ、板状第二磁石15、板状第三磁石17を配置しても良い。要は、磁石体120の両側方の少なくとも一方でかつ境界線MCの上方および下方の少なくとも一方に、板状第二磁石15または板状第三磁石17を設けても良い。また、これらの板状第二磁石15および板状第三磁石17を移動方向に沿って複数並べるように配置しても良い(例えば、
図4および
図7等を参照)。これらのいずれの場合であっても、移動部3は矢印Aで示す移動方向に移動する。
【0094】
また、
図13および
図14では、板状に形成された板状第二磁石15(板状第三磁石17)を用いたが、これに代えて、
図15(a)および(b)に示すように、矢印Aで示す移動方向に向かうにつれて次第に径(厚み)が大きくなるようなテーパ状としたテーパ状磁石130を用いることができる。このようなテーパ状とすることにより、テーパ状磁石130は、
図9(b)でも説明したように、その上流側端部の磁力よりも下流側端部の磁力の方が強くなる。なお、
図15(a)は、テーパ状磁石130の平面視であり、(b)は側面視である。このテーパ状磁石130は平伏状態であり、例えば、
図15(c)および(d)に示すように、磁石体120の両側方のうちの一方でかつ境界線MCの上方にて、矢印Aに示す移動方向に沿って複数個並べるように配置されている。このように構成しても、移動部3は矢印Aで示す移動方向に移動する。
【0095】
なお、
図15(e)に示すように、テーパ状磁石130を、磁石体120の両側方のうちの一方でかつ境界線MCの下方にて、矢印Aで示す移動方向に沿って複数並べるように配置するようにしても良い。また、
図16に示すように、テーパ状磁石130を、磁石体120における境界線MCの上方および下方の両方に配置しても良い。要は、テーパ状磁石130は、磁石体120の両側方のうちの少なくとも一方でかつ境界線MCの上方および下方の少なくとも一方に設けられていればよく、いずれの場合においても、移動部3は矢印Aで示す移動方向に移動する。
【0096】
図17に示すように、テーパ状磁石130は、
図12(b)で説明した板状第二磁石15、板状第三磁石17と同様に、平面視において矢印Aで示す移動方向に対して傾斜するように配置(磁石体120に対してねじれの位置関係となるように配置)しても良い。このように構成しても、移動部3は矢印Aで示す移動方向に移動する。なお、
図17においては、複数のテーパ状磁石130は、磁石体120の両側方において矢印A方向に示す移動方向に沿って複数並べるように配置されている。
【0097】
上述の
図11から
図17に示す実施形態では、移動側磁石である円盤状磁石110を複数積み重ねることで棒状に延びる磁石体120に対し、固定側磁石である板状第二磁石15、板状第三磁石17、テーパ状磁石130のいずれもが平伏状態であったが、上述のように、磁石体120の両側方に配置される固定側磁石においては、起立状態であっても良い。具体的には、
図18および
図19に示す通りである。
【0098】
図18(a)に示すように、磁石体120の両側方でかつ境界線MCの上方および下方にはそれぞれ、起立状態の板状第二磁石15、起立状態の板状第三磁石17が配置されている。上下の板状第二磁石15のうち、上方の板状第二磁石15は、そのN極の極性を有する一方の面(
図18(a)で見て右側面)15bが、磁石体120の外周面のうち、N極の磁極を有する上半分の領域R1(
図11(b)参照)に対面している。また、上下の板状第二磁石15のうち、下方の板状第二磁石15は、そのS極の磁極を有する他方の面(
図18(a)で見て右側面)15aが、磁石体120の外周面のうち、S極の磁極を有する下半分の領域R2(
図11(b)参照)に対面している。また、板状第三磁石17も同様に、上方の板状第三磁石17におけるN極の極性を有する一方の面(
図18(a)で見て左側面)17bが、磁石体120の外周面のうち、上半分の領域R1に対面し、下方の板状第三磁石17におけるS極の磁極を有する他方の面(
図18(a)で見て左側面)17aが、磁石体120の外周面のうち、下半分の領域R2に対面している。さらに、板状第二磁石15(板状第三磁石17)は、
図18(b)に示すように、側面視において境界線MCに対して傾斜している(磁石体120に対してねじれの位置関係となっている)。このように構成しても、移動部3(
図18では図示を省略)は矢印Aで示す移動方向に移動する。
【0099】
図19(a)に示すように、板状第二磁石15(板状第三磁石17)は、側面視において境界線MCに平行である一方、
図19(b)に示すように、板状第二磁石15(板状第三磁石17)は、平面視において境界線MCに傾斜するように配置される(磁石体120に対してねじれの位置関係となっている)ようにしても良い。このように構成しても、移動部3(
図19では図示を省略)は矢印Aで示す移動方向に移動する。
【0100】
なお、固定側磁石としては、板状の板状第二磁石15および板状第三磁石17を用いたが、これに代えて、
図20に示すように、板状第二磁石15(板状第三磁石17)を積み重ねてなる固定側磁石体135を用いるようにしても良く、この場合であっても、移動部3(
図20では図示を省略)は矢印Aで示す移動方向に移動する。
【0101】
ここで、
図12乃至
図14、
図18および
図19にて説明した磁石体120と板状第二磁石15および板状第三磁石17との位置関係をまとめると、概して、以下の(1)乃至(4)通りである。以下の説明において、説明の簡単のため、板状第二磁石15を「左」、板状第三磁石17を「右」とする。
(1)左右ともに平伏状態であり、左右ともに平面視で傾斜(
図12参照)
(2)左右ともに平伏状態であり、左右ともに側面視で傾斜(
図13参照)
(3)左右ともに起立状態であり、左右ともに平面視で傾斜(
図19参照)
(4)左右ともに起立状態であり、左右ともに側面視で傾斜(
図18参照)
【0102】
また、磁石体120と板状第二磁石15および板状第三磁石17との位置関係は、上記(1)乃至(4)のみならず、以下の(5)乃至(9)であっても良い。要は、板状第二磁石15および板状第三磁石17が、磁石体120に対してねじれの位置関係になっていればよい。これについては、
図15乃至
図17に示すテーパ状磁石130についても同様のことが言える。
(5)左右のいずれか一方が平伏状態で他方が起立状態であり、左右ともに平面視で傾斜
(6)左右のいずれか一方が平伏状態で他方が起立状態であり、左右ともに側面視で傾斜
(7)左右のいずれか一方が平伏状態で他方が起立状態であり、左右のいずれか一方が平面視で傾斜し他方が側面視で傾斜
(8)上記いずれかの平伏状態において、背面視(正面視)で左右の少なくとも一方が境界線MCに対して交差する方向に僅かに傾斜(例えば、
図12(a)の板状第二磁石15が境界線MCに対して傾斜した状態等)
(9)上記いずれかの起立状態において、背面視(正面視)で左右の少なくとも一方が境界線MCに対して交差する方向に僅かに傾斜(例えば、
図18(a)に示す板状第二磁石15が磁石体120の中心軸線(図示せず。
図18(a)で見て境界線MCに垂直な上下方向)に対して傾斜した状態等)
【0103】
また、上述の
図11から
図17に示す実施形態では、移動側磁石である円盤状磁石110を複数積み重ねることで棒状に延びる磁石体120を用いたが、これに代えて、単一の移動側磁石を用いるようにしても良い。具体的には、
図11(b)に示す円盤状磁石110を細長い棒状とした図示しない棒状磁石(
図11(b)に示す磁石体120の形状をした一本の棒状の棒状磁石)を用いるようにしても良い。この棒状磁石については、矢印Aに示す移動に対して垂直に延びていても良いし、当該移動方向に対して交差する方向に延びていても良い。また、磁石体としては、上記棒状磁石を、例えば、アルファベットのE型や、方形状に組むことで形成したものを用いるようにしても良く、これらのいずれの場合であっても、上述の各実施形態および各変形例と同様な作用効果を奏する。
【0104】
上述の各実施形態および各変形例では、ケース11および車輪13によって移動部3の移動方向を規制する移動方向規制部としていたが、この移動方向規制部については、ケース11および車輪13に限定されず、図示を省略するが、例えば、平面Gに形成された溝条のレール部と板状第一磁石9の底面に形成されているとともに溝条のレール部に挿入される凸部とで移動方向規制部を構成したり、あるいは平面Gに移動部3のケース11の底部を挿入可能な溝条を移動方向規制部としたりする等の態様を適宜採用可能である。また、移動方向規制部としては、前後方向のみならず、前方向のみに移動を規制するものであってもよく、要は、直線状第一磁石部5および直線状第二磁石部7からの磁力(斥力)によって移動する移動部3の移動方向を規制できるものであればよい。この移動方向規制部を有する移動部3の具体的な一例を
図21に示す。
【0105】
図21(a)に示すように、移動部3は、平面Gに載置され、移動部3の移動方向に沿って延びるレール体140と、レール体140に沿って移動(滑走)する移動体150とを備えている。レール体140は、平面Gに載置される(床或いは構造体の壁等に取り付けられる場合も含む)板状の第一板状部141と、この第一板状部141に平行な板状の第二板状部142と、これらの板状部141、142を連結する連結部143とで略H字状に形成されている。移動体150は、磁石体120が取り付けられる板状の載置部151と、載置部151の両端から平面Gに向けて延びて移動体150における
図21(a)で見て左右への移動を規制する第一規制部152、152と、それぞれの第一規制部152、152の内側面から連結部143に向けて延びて移動体150における
図21(a)で見て上方向への移動を規制する第二規制部153、153と、これらの第二規制部153、153にそれぞれ取り付けられた車輪13、13とを有している。このように構成することにより、移動部3は、
図21(a)で見て左右上下の移動を規制され、その移動方向が前後のいずれかに記載されることとなる。
【0106】
図21(a)では、磁石体120の他端部に移動部3が取り付けられていたが、
図21(b)に示すように、磁石体120の両端部にそれぞれ移動部3、3が取り付けられるようにしても良い。また、
図21では、磁石体120が
図21で見て上下方向に延びるように取り付けられているが、これに限定されず、例えば、
図22に示すように、磁石体120が
図22で見て左右方向に延びるように取り付けられるようにしても良く、その設置方向については特に限定されない。
【0107】
図23は、第五実施形態に係る推力発生機構を透過した状態で模式的に示す図である。
図24は、第五実施形態に係る推力発生機構の揺動機構を拡大して示す側面図である。
図25乃至
図28は、第五実施形態に係る推力発生機構における変位機構の動作の流れを模式的に示す図である。
【0108】
図23および
図24に示すように、第五実施形態に係る推力発生機構200は、載置面に載置された土台部201に起立した状態(鉛直方向)で固定された回転軸202に軸支された回転体210と、回転軸202と同方向でかつ平行に延びるように回転体210に固定された3つの回転側磁石221、222、223と、回転体210の周囲に配置された3つの揺動機構(変位機構)231、232、233(
図23では図示を省略、模式的に示した
図27(a)参照)と、揺動機構231、232、233によって揺動される3つの固定側磁石241等とを有している。なお、固定側磁石としては、固定側磁石241のみ図示し、他の2つの固定側磁石については図示および符号の付与を省略する。ここで、3つの回転側磁石221、222、223を総括して回転側磁石221等と称することもある。また、3つの固定側磁石を総括して、上述のように固定側磁石241等と称することとする。
【0109】
図25に示すように、回転側磁石221等はそれぞれ、上述の
図11(a)に示す磁石体120と同様な構成をなしており、
図11(b)で示したように、境界線MCから上の部分の周面(端面)がN極の極性を有し、境界線MCから下の部分の周面(端面)がS極の極性を有する。なお、回転側磁石221等は、
図23においては、模式的に直方体形状で描画している。なお、回転側磁石221として、
図11(b)に示す磁石体120ではなく、単一の細長い棒状の磁石を用いるようにしても良いことは言うまでもない。
【0110】
図26に示すように、固定側磁石241等は、矢印Gで示す回転体210の回転方向に向かうにつれて次第に径(厚み)が大きくなるようなテーパ状をなしている。固定側磁石241をこのようなテーパ状とすることにより、固定側磁石241は、上述の
図9(b)でも説明したように、その上流側端部の磁力よりも下流側端部の磁力の方が強くなる。
【0111】
回転体210は、樹脂等からなる円盤状の上支持部211および下支持部212と、上支持部211の下面から垂下するように設けられた3つの磁石固定部213等(
図25(a)参照)とを有している。なお、磁石固定部としては、磁石固定部213のみ図示し、他の2つの磁石固定部については図示および符号の付与を省略する。ここで、3つの磁石固定部を総括して、上述のように磁石固定部213等と称することとする。
【0112】
上支持部211および下支持部212はそれぞれ、その中心部が回転軸202に回転可能に軸支されている。磁石固定部213等は互いに、上支持部211の回転方向(
図27(a)に示す矢印G参照。平面視で反時計回り方向)に沿って互いに等間隔となるように設けられている。換言すれば、磁石固定部213等は、上支持部211の中心(軸芯)からみて、互いに120度の角度をなすように位置している。磁石固定部213等にはそれぞれ、回転側磁石221等が固定されている。これにより、
図27(a)に示すように、回転側磁石221等も、上支持部211の回転方向に沿って互いに等間隔となるように(互いに120度の角度をなすように)位置する。
【0113】
図23、
図25および
図26に示すように、上支持部211の外周縁部の下面において、回転側磁石221等に対応した位置にはそれぞれ、側面視で下に向けて突出した半楕円形情をなす凸部214、215、216が設けられている(以後、これらの凸部214、215、216を総括して、凸部214等と称することもある)。また、下支持部212の外周縁部の上面において、それぞれの凸部214等の真下にも、側面視で上に向けて突出した半楕円形情をなす凸部217、218、219が設けられている(以後、これらの凸部217、218、219を総括して、凸部217等と称することもある)。
【0114】
図27に示すように、揺動機構231等は、回転体210の周方向の外側でかつ回転体210の近傍に配置されている。揺動機構231等は互いに、回転体210の回転方向に沿って互いに等間隔となるように配置されている。換言すれば、揺動機構231等も、回転体210の中心(軸芯)からみて、互いに120度の角度をなすように配置されている。また、揺動機構231等は、回転体210とは別体に構成されており、その配置位置を調整可能となっているが、揺動機構231等を回転体210に一体的に設けるようにしても良い。なお、揺動機構231等はいずれも同様な構成をなしているため、揺動機構231の説明のみを行い、他の揺動機構232、233の説明は省略するものとする。
【0115】
図24に示すように、揺動機構231は、載置面に載置された土台部251に起立した状態(鉛直方向)で固定された支持柱部252と、支持柱部252の上端から回転軸202に向けて水平に延びた上支持部253と、上支持部253の先端部に設けられ、かつ固定側磁石241が固定された第一揺動軸部254と、回転体210の回転に連動して固定側磁石241を揺動(回動)させる連動部255とを有している。連動部255は、有底箱状のホルダ部256と、固定側磁石241の上端面に設けられているとともにホルダ部256が固定された第二揺動軸部257と、ホルダ部256の側面(
図24で見て左右の側面)を水平に貫通するように(
図24で見て左右方向)設けられた回転軸258と、この回転軸258に回転可能に支持された円盤状の回転板259とを有している。
【0116】
第五実施形態では、固定側磁石241は、回転側磁石221等に対して、上述の実施形態と同様にねじれの位置となるように設けられている。具体的には、
図25(a)および
図26(a)で示すように、固定側磁石241の下端よりも上端の方が回転側磁石221等に近接するように傾斜(
図25(a)で見て左上がりの傾斜)しているとともに、固定側磁石241の下流側端(
図26(a)で見て右端)が、固定側磁石241の上流側端(
図26(a)で見て左端)よりも高い位置にあるように傾斜(
図26(a)で見て右上がりの傾斜)するように設けられている。また、固定側磁石241は、
図25(a)にも示すように、その上端(
図26(a)に示す右上端)が、回転側磁石221等の上面に水平な線分HC以下の位置になるように配置され、本実施形態では、固定側磁石241等は、中心線MCと線分HCとの間でかつ固定側磁石241の上端が線分HCに接する位置となっている。
【0117】
第一揺動軸部254は、この第一揺動軸部254に固定された固定側磁石241を上下に揺動させるものである。また、第一揺動軸部254は、図示しないばね等によって固定側磁石241が上方を向くように常時付勢されている。これにより、回転側磁石221等と固定側磁石241とが離間している状態(例えば、
図26(a)や
図27(a)に示すように、固定側磁石241が回転側磁石221、222の間に位置している状態)では、回転板259が上支持部211の下面に突き当たった状態となっている。換言すれば、この位置(
図25(a)で示す位置)が、固定側磁石241の初期位置ともいえる。また、この状態では、固定側磁石241は、
図25(a)で見て、斜め左上に傾斜するように起立した状態であり、
図28(a)に示すように、S極の極性を有する端面(
図25(a)で見て左端面)が回転側磁石221等のN極の極性を有する周面に向いた状態となっている。この場合、
図28(a)に示すように、固定側磁石241と回転側磁石221等との間には、異極同士の引力が強く働くこととなる。
【0118】
この状態で、回転板259が凸部214に突き当たると、
図25(b)や
図26(b)に示すように、この凸部214によって回転板259が押し下げられる。これに伴い、ホルダ部256が押し下げられると、固定側磁石241がばねの付勢力に抗して第一揺動軸部254を中心に、
図25(b)で見て左下に向けて回動する。換言すれば、この位置(
図25(b)で示す位置)が、固定側磁石241の中間位置ともいえる。また、この状態では、
図26(b)や
図27(b)に示すように、固定側磁石241と回転側磁石221とが近接している状態であり、固定側磁石241は、左斜め下に向けて傾斜していく。これに伴い、固定側磁石241のN極の極性を有する端面(
図25(a)で見て右端面)が、
図25(b)に示すように、回転側磁石221等のN極の極性を有する周面に徐々に向いていく。この場合、固定側磁石241と回転側磁石221等の間には、
図28(b)に示すように、異極同士の引力と、同極同士の斥力の双方が略同等に働くこととなる。
【0119】
そして、回転板259が凸部214の頂点に突き当たると、
図25(c)や
図26(c)に示すように、この凸部214によって回転板259がさらに押し下げられ、固定側磁石241がさらに斜め下に傾斜する。換言すれば、この位置(
図25(c)で示す位置)が、固定側磁石241の最終位置ともいえる。これに伴い、固定側磁石241のN極の極性を有する端面がさらに回転側磁石221等のN極の極性を有する周面に向く。この場合、固定側磁石241と回転側磁石221等との間には、
図28(c)に示すように、同極同士の斥力が強く働くこととなる。
【0120】
次に、上述した構成に基づき、第五実施形態の推力発生機構の作用を説明する。
図25(a)、
図26(a)、
図27(a)に示すように、固定側磁石241が、回転側磁石221および222との間に位置しており(
図26(a)では、回転側磁石221が固定側磁石241の上流側端部に到達した状態を示している)、固定側磁石241と回転側磁石221とが離間している状態においては、
図28(a)に示すように、固定側磁石241は、S極の極性を有する端面が回転側磁石221のN極の極性を有する周面(回転側磁石221の上半分の周面)を向いた状態となっており、固定側磁石241と回転側磁石221との間には、
図28(a)に示すように、異極同士の引力(この場合、固定側磁石241のS極と回転側磁石221のN極との引力)が強く働く。このため、固定側磁石241と回転側磁石221との間の引力によって、回転側磁石221が固定側磁石241に引き寄せられることで、回転体210に対して矢印Gで示す回転方向への回転力が付与されて、回転体210が回転する。また、この状態では、揺動機構231の回転板259は、回転体210の上支持部211の下面に接しながら回転する。
【0121】
その後、
図25(b)、
図26(b)、
図27(b)に示すように、固定側磁石241が中間位置(回転側磁石221が固定側磁石241の略中央部と対面した位置に到達した位置)に位置した状態では、固定側磁石241と回転側磁石221の間には、
図28(b)に示すように、異極同士の引力と同極同士の斥力の双方が働くこととなり、回転体210への影響が減少している状態となっている。このため、回転中の回転体210のブレーキとはなり難いため(回転体210の回転の勢いの方が大きいため)、回転体210の回転は継続する。
【0122】
その後、
図25(c)、
図26(c)、
図27(c)に示すように、固定側磁石241が最終位置(回転側磁石221が固定側磁石241の下流側端部に到達した位置)に位置した状態では、固定側磁石241と回転側磁石221の間には、
図28(c)に示すように、同極同士の斥力が強く働く。このため、このため、固定側磁石241と回転側磁石221との間の斥力によって、回転側磁石221が固定側磁石241に反発することで、回転体210に対して矢印Gで示す回転方向への回転力が付与されて、回転体210が回転する。
【0123】
この回転体210の回転によって、固定側磁石241が、回転側磁石221および223との間に位置することとなり、以後、同様の作用を繰り返すことで、回転体210の回転が継続する。これについては、固定側磁石241以外の他の固定側磁石と回転側磁石221等との間であっても同様である。
【0124】
以上説明したように、回転体210に固定された回転側磁石221等に対し、揺動機構231等の固定側磁石241等を揺動させて、異極同士の引力および同極同士の斥力を切り換えることによって、回転体210をスムーズに回転させることができる。また、揺動機構231等においては、上支持部211に接触する部材として、回転自在な回転板259を設けていることによって、回転中の回転体210に対する抵抗を低減することができ、回転体210の回転の妨げとなることを防止することができる。このため、回転板259としては摩擦係数の低い樹脂や金属等を用いることが好ましい。さらに、固定側磁石241は、下流側に向かうほど厚みの増すテーパ状をなしているので、固定側磁石241が最終位置に位置しているときの固定側磁石241と回転側磁石221等との間の斥力をより強くすることができ、回転体210回転力をより付与することができる。
【0125】
本実施形態では、固定側磁石241を中心線MCと線分HCとの間でかつ固定側磁石241の上端と線分HCが接触する位置に設けたが、この固定側磁石241の位置としては、例えば、
図29(a)乃至(c)に示すように、中心線MCと線分HCとの略中央に固定側磁石241が位置するようにしても良い。また、
図30(a)乃至(c)に示すように、固定側磁石241を中心線MCと、回転側磁石221の下面に水平な線分LCとの間に設けるようにしても良い。
図30(a)乃至(c)に示す例では、固定側磁石221の下端が線分LCに接する位置に固定側磁石221が配置されている。この場合、回転側磁石221の下半分の周面はS極の極性であるため(
図11(b)参照)、固定側磁石241においては、初期位置では、N極の極性を有する端面が回転側磁石221を向き、その反対側にS極の極性を有する端面が向くように、第一揺動軸部に固定されることとなる。また、揺動機構231の回転板259は、下支持部212の上面または凸部217等に接することとなる。要は、固定側磁石241の位置としては、線分HCと線分LCの間の範囲内のいずれかに位置していれば良く、いずれの位置にあっても上述と同様な作用効果を奏する。もちろん
図25(a)の位置に位置した固定側磁石241と、
図30(a)の位置に位置した固定側磁石241とを同時に設けるようにしても良いことは言うまでもない。
【0126】
本実施形態では、固定側磁石241を回転体210の外側に配置したが、これに代えて、固定側磁石241を回転体210の内側、換言すれば、回転軸202と回転側磁石221等との間に位置するように配置しても良いし、固定側磁石241を回転体210の外側および内側の両方に設けるようにしても良い。このような場合であっても、上述の実施形態と同様な作用効果を得る。
【0127】
本実施形態では、3つの回転側磁石221等を設けたが、回転側磁石の設置個数は、単数でも、3以外の複数個あってもよい。また、複数の回転側磁石221を設ける場合、等間隔ではなく、互いの距離がばらつくように配置しても良い。要は、回転側磁石の設置個数や互いの配置間隔については、仕様に応じて適宜設定可能である。この場合であっても、上述の実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0128】
本実施形態では、揺動機構231を設けて固定側磁石241を機械的に揺動させたが、例えば、ソレノイド等を用いて電気的に固定側磁石241を揺動させたり、或いは、モータ等によって固定側磁石241を揺動させたりするようにしても良い。また、固定側磁石241については、揺動ではなく回転するようにしても良い。具体的には、
図28(a)の状態では、固定側磁石241のS極の端面が回転側磁石221のN極の周面に対面する位置に位置させ、
図28(c)の状態では、固定側磁石241を180度回転させることで、固定側磁石241のN極の端面が回転側磁石221のN極の周面と対面する位置に位置させるようにしても良い。要は、機械的または電気的のいずれかにて、固定側磁石241の位置を変位させることができれば良い。
【0129】
本実施形態では、回転体210として、
図23に示すものを適用したが、これに限定されない。例えば、
図31および
図32に示すように、回転軸202に回転可能に軸支されかつラジアル方向に延びた複数の支持部材250を設け、この支持部材250のそれぞれの先端に回転側磁石221を固定した回転体300としてもよい。また、支持部材250の側面に、回転側磁石221A(回転側磁石221と同じであるが、識別を容易にするために末尾にアルファベットの「A」を付した)を取り付けるようにしても良い。この場合、この回転側磁石221Aの上側または下側の少なくとも一方に、固定側磁石が配置されることとなる。このようにしても上述の実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0130】
また、
図31および
図32に示すように、固定側磁石としては、回転軸202に垂直な方向に延びる板状をなしているとともに、回転方向の下流側端部が回転側磁石221に向けて所定の角度(例えば、30度)で折り曲げられた形状の固定側磁石260を用いるようにしても良い。この場合、例えば、
図28(c)の固定側磁石241を固定側磁石260に置き換えたものとして説明すると、この
図28(c)の固定側磁石260の右端部が回転側磁石221に向けて折り曲げられているため、固定側磁石241のN極の極性を有する端面が、回転側磁石により近づくとともに、この端面と回転側磁石221のN極の周面とがより対面した状態となるため、回転側磁石221と固定側磁石241との間の斥力をより強くすることができる。なお、この固定側磁石260については、回転軸202に対して垂直な方向のみならず、傾斜した方向に延びるようにしても良い。要は、固定側磁石は、回転軸202に対して交差する方向に延びるように(回転側磁石に対してねじれの位置関係となるように)配置されていればよい。
【0131】
図31および
図32に示す固定側磁石260は、平面とのなす角度が30度になるように折り曲げられたものを例示したが、これに代えて、
図33(a)に示す90度に折り曲げられた固定側磁石261、
図33(b)に示す120度に折り曲げられた固定側磁石262、或いは、
図34(a)にし示す45度に折り曲げられた固定側磁石263を用いるようにしても良く、その折り曲げ角度は仕様に応じて適宜設定可能である。また、板状の固定側磁石の折り曲げについては、
図32(b)、
図33(a)および(b)に示すように、板状の固定側磁石の一部を起こすように折り曲げた形状であっても良いし、
図34(b)に示すように、固定側磁石の左右を捩じるようにした形状であっても良い。
【符号の説明】
【0132】
210 回転体
221 回転側磁石
241 固定側磁石
231 揺動機構(変位機構)
【要約】
【課題】 回転体を回転させることができる推力発生機構を提供する。
【解決手段】 回転側磁石221と、固定側磁石241と、回転側磁石221が取り付けられ、回転軸202に回転自在に軸支された回転体210と、固定側磁石241が取り付けられ、固定側磁石241を揺動させる揺動機構231とを備える。
【選択図】
図26