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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】仮設床材及びそのつかみ金具
(51)【国際特許分類】
   E04G 7/34 20060101AFI20241114BHJP
   F16B 2/10 20060101ALI20241114BHJP
   E04G 5/08 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E04G7/34 303B
F16B2/10 E
E04G5/08 B
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020177026
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2021131009
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2019203203
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020035139
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315019894
【氏名又は名称】株式会社杉孝グループホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100094835
【弁理士】
【氏名又は名称】島添 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】川久 亮祐
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-145134(JP,A)
【文献】特開平11-159131(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02808464(EP,A1)
【文献】特開2002-161636(JP,A)
【文献】特開2001-164750(JP,A)
【文献】特開平07-269099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/34
F16B 2/10
E04G 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")であって、重力式セルフロック機構(7,8)を有する可動爪(5)からなり、或いは、前記金具本体に一体化し又は固定された固定爪(5')からなる外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有することを特徴とする仮設床材のつかみ金具。
【請求項2】
前記可動フックは、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面(18)と、前記横架材の外周面に摺接可能又は当接可能な従動カム面又は受圧従動面(41)とを備え、或いは、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延び、前記従動カム面又は受圧従動面として機能する横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を備えることを特徴とする請求項1に記載のつかみ金具。
【請求項3】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
該可動フックは、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面(18)と、前記横架材の外周面に摺接可能又は当接可能な従動カム面又は受圧従動面(41)とを備え、或いは、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延び、前記従動カム面又は受圧従動面として機能する横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を備えており、
前記可動フックは、前記従動カム面又は受圧従動面(41)、或いは、該従動カム面又は受圧従動面として機能する前記横架材係合面及びその下縁部分(61,62)が前記横架材の外周面に摺接又は当接することにより受動的に回動又は面内変位するように、前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されることを特徴とする仮設床材のつかみ金具。
【請求項4】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
前記可動フックは、該可動フックの重心を横架材の側に偏心させる重錘部(19)を有することを特徴とする仮設床材のつかみ金具。
【請求項5】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
該可動フックは、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面(18)と、前記横架材の外周面に摺接可能又は当接可能な従動カム面又は受圧従動面(41)とを備え、或いは、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延び、前記従動カム面又は受圧従動面として機能する横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を備えており
仮設構造物の横架材に架設又は懸架された前記仮設床材を該横架材から撤去すべく、前記外れ止めのロック解除操作を行うことなく、前記仮設床材を斜め上方(η)に移動させることにより、前記従動カム面又は受圧従動面(41)、或いは、従動カム面又は受圧従動面として機能する前記横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を前記横架材の上半部外周面に摺接又は当接させて前記可動フックを受動的に回動又は面内変位させ、前記つかみ金具を前記横架材から離脱せしめるようにしたことを特徴とする仮設床材のつかみ金具
【請求項6】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
前記着座面(17)、外れ止め(4,4',4")及び可動フック(13,60)によって画成される横架材収容域(ε)に前記横架材を収容するとともに、前記着座面によって仮設床材の荷重を前記横架材に伝達し、前記外れ止めの横架材係合面(6)と前記横架材との当接又は衝合によって所定寸法以上のつかみ金具の上方変位を阻止し、前記着座面と前記横架材との当接又は衝合、或いは、前記可動フックと前記横架材との当接又は衝合によって、つかみ金具の水平変位を拘束することを特徴とする仮設床材のつかみ金具。
【請求項7】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
横架材収容域(ε)が、前記着座面(17)、外れ止め(4,4',4")及び可動フック(13,60)によって画成されるとともに、前記横架材を受入れ又は該横架材から離脱するための前記横架材収容域の開口部(λ)が、前記可動フックと前記外れ止めとの間に形成され、
前記開口部の開口寸法(D2,D4)は、前記着座面が前記横架材に着座したつかみ金具の係止位置において前記横架材の直径(D1)よりも小さい寸法(D2)に設定され、前記可動フックの回動又は面内変位により前記開口部が拡開した状態において前記横架材の直径よりも大きい寸法(D4)に設定されることを特徴とする仮設床材のつかみ金具。
【請求項8】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
前記金具本体は、前記可動フック(13)を回動可能に支持又は支承する支軸(14)を該金具本体の先端部分(12)に有し、該可動フックの重心は、前記支軸の中心軸線に対し、前記横架材の側に偏心しており、或いは、前記金具本体は、前記可動フック(60)を面内変位可能に支持又は支承する支軸(63,64)を該金具本体の先端部分(12)に有し、該可動フックは、その自重によって前記横架材の上部外周面に接触し又は近接するように前記支軸によって支持又は支承されていることを特徴とする仮設床材のつかみ金具。
【請求項9】
前記支軸は、前記横架材の中心軸線(Bc)と実質的に平行な枢動軸線(14c)を有する枢支軸(14)からなり、前記可動フックは、前記着座面(17)、外れ止め(4,4',4")及び可動フック(13)によって画成される横架材収容域(ε)に前記横架材を収容した状態において、前記可動フックの従動カム面又は受圧従動面(41)が前記横架材に押圧されることにより、前記枢動軸線を中心に受動的に上方に回動して、前記横架材収容域の開口部の開口寸法(D2)を拡大するように、前記先端部分(12)に支持又は支承されていることを特徴とする請求項8に記載のつかみ金具。
【請求項10】
前記横架材の外周面に最も接近した前記従動カム面又は受圧従動面の近接部位(41a)は、前記着座面が前記横架材に着座したつかみ金具の係止位置において前記横架材の中心軸線(Bc)の高さ位置(HL)よりも下方に位置し、前記可動フックの回動又は面内変位により前記開口部の開口寸法を拡大した状態において前記横架材の中心軸線の高さ位置よりも上方に位置することを特徴とする請求項9に記載のつかみ金具。
【請求項11】
前記可動フックは、前記枢動軸線を中心とする円弧状軌道に沿って延在する湾曲スロット(16)を有し、該スロットを貫通するガイドピン(15)が前記金具本体に突設され、前記枢動軸線を中心とした前記可動フックの回動の角度範囲は、前記スロット及び前記ガイドピンによって規制されることを特徴とする請求項9又は10に記載のつかみ金具。
【請求項12】
前記着座面(17)及び横架材係合面(6,18,62)は、前記横架材の外周面に接触し又は近接して延びるように湾曲し又は屈曲しており、前記外れ止めの横架材係合面(6)は、前記着座面が前記横架材に着座した前記つかみ金具の係止位置において前記横架材から離間し、前記可動フックの横架材係合面(18,62)は、該係止位置において前記横架材から僅かに離間し、或いは、該可動フックの自重により前記横架材の外周面に接触し又は着座することを特徴とする請求項2又は3に記載のつかみ金具。
【請求項13】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
前記着座面(17)、外れ止め(4,4',4")及び可動フック(13,60)によって画成される下面開口形の横架材収容域(ε) は、前記横架材を該横架材収容域に収容した状態において水平面(HL)に対して30~70度の角度範囲内の傾斜角(θ)をなす方向に開口平面(ω)を配向してなる開口部(λ)を有することを特徴とする仮設床材のつかみ金具。
【請求項14】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
前記可動フックは、前記金具本体(11)の側面に突設されたスタッド又は支軸(63,64)が貫通するスロット又は長孔(65,66)を有し、該スロット又は長孔と前記スタッド又は支軸との相対変位により、面内変位することを特徴とする仮設床材のつかみ金具。
【請求項15】
前記可動フックは、上下方向に間隔を隔てた複数の前記スロット又は長孔と、上下方向に間隔を隔てた複数の前記スタッド又は支軸とを有することを特徴とする請求項14に記載のつかみ金具。
【請求項16】
前記スロット又は長孔は、上下方向又は鉛直方向に延びる縦長のスロット部分又は長孔部分(65a,66a)と、横方向に延びる横長のスロット部分又は長孔部分(65b,66b)とを連接した側面視L形又は逆L形の形態又は輪郭を有することを特徴とする請求項14又は15に記載のつかみ金具。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載された左右一対のつかみ金具を少なくとも一方の端部に備えた仮設床材。
【請求項18】
前記床材本体は、一体成形された単一の床材構成部品(21)から構成され、或いは、複数の床材構成部品(21,22)を並列且つ一体的に連結した複合構造を有し、
前記床材構成部品は、前記作業床又は作業通路の床面を形成する床板部分と、長手方向に延びる補剛リブ(23)とを有するアルミ押出形材からなることを特徴とする請求項17に記載の仮設床材。
【請求項19】
請求項2、3又は12に記載された左右一対のつかみ金具を少なくとも一方の端部に備えた仮設床材の施工方法であって、
仮設構造物の横架材に架設又は懸架された前記仮設床材を該横架材から撤去するために、該仮設床材の少なくとも一方の端部に配置された前記つかみ金具を前記横架材から離脱させる作業において、前記外れ止めのロック解除操作を行うことなく、前記仮設床材を斜め上方(η)に移動させることにより、前記従動カム面又は受圧従動面(41)、或いは、従動カム面又は受圧従動面として機能する前記横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を前記横架材の上半部外周面に摺接又は当接させて前記可動フックを受動的に回動又は面内変位せしめ、前記つかみ金具を前記横架材から離脱させることを特徴とする仮設床材の施工方法。
【請求項20】
前記横架材を斜め上方(η)に移動させる前に、前記つかみ金具を僅かに上方に持ち上げ、前記外れ止めの横架材係合面と前記横架材の下半部外周面とを過渡的に近接、当接又は衝合させることを特徴とする請求項19に記載の仮設床材の施工方法。
【請求項21】
前記横架材を斜め上方に移動させる前に、左右の前記つかみ金具の間に位置する前記床材本体の端部下面に対し、作業者の手で僅かな上向きの衝撃を加えて、前記つかみ金具を僅かに上方に持ち上げることを特徴とする請求項19又は20に記載の仮設床材の施工方法。
【請求項22】
請求項2、3又は12に記載された左右一対のつかみ金具を少なくとも一方の端部に備えた仮設床材の施工方法であって、
前記仮設床材を仮設構造物の横架材に架設又は懸架するために、該仮設床材の少なくとも一方の端部に配置された前記つかみ金具を前記横架材に係止する作業において、前記外れ止めのロック解除操作を行うことなく、前記仮設床材を斜め下方に移動させて前記つかみ金具を前記横架材に接近させることにより、前記従動カム面又は受圧従動面(41)、或いは、従動カム面又は受圧従動面として機能する前記横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を前記横架材の上半部外周面に摺接又は当接させて前記可動フックを受動的に回動又は面内変位せしめ、前記着座面を前記横架材の上半部外周面に着座せしめることを特徴とする仮設床材の施工方法。
【請求項23】
請求項17又は18に記載され、各端部の左右のつかみ金具の外れ止めとして、重力式セルフロック機構(7,8)を有する可動爪(5)を備えた仮設床材の施工方法であって、
仮設構造物の横架材に架設又は懸架された前記仮設床材を該横架材から撤去するために前記つかみ金具を前記横架材から離脱させる作業において、前記外れ止めのロック解除操作を付加的に行うとともに、前記可動フックを上方に回動させて前記つかみ金具の開口部(λ)を拡開し、前記つかみ金具を前記横架材から離間せしめることを特徴とする仮設床材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設床材及びそのつかみ金具に関するものであり、より詳細には、仮設足場の横架材等に係合するつかみ金具によって隣り合う横架材等の間に架設又は懸架され、仮設足場の作業通路又は作業床を形成する仮設床材及びそのつかみ金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物、土木構造物、プラント設備等の建設工事に使用される仮設足場として、枠組足場、単管足場、楔結合式足場等の各種形式の仮設足場が日本国内において広く実用に供されている。枠組足場又は楔結合式足場等において作業通路又は作業床を構成する仮設床材として、「床付き布わく」(床付き布枠)が知られている(特許文献1~4、非特許文献1)。床付き布枠(布わく)は、床材、布材、梁材及びつかみ金具等を一体的に組み付けた構成を有する金属製の仮設床材であり、床付き布枠の各部構造については、比較的厳格な基準が定められている(非特許文献2)。例えば、つかみ金具は、原則として、非特許文献2に記載される如く、「建わくの横架材からの浮き上がりを防止するための外れ止めを有していること」を要する。
【0003】
一般に、床付き布枠は、左右一対のつかみ金具を両端部に有する。各つかみ金具のフック部分は、建てわく(建枠)の横架材、或いは、左右の支柱に楔結合した腕木等に係止する。各つかみ金具の外れ止め(可動爪)は、重力式セルフロック機構を有し、つかみ金具のフック部分を横架材又は腕木等(以下、仮設床材と直交する方向に延在し、横架材、腕木、桁材、梁材等の床荷重を支持する横部材又は水平部材を総称して「横架材」というものとする。)に係止すると、セルフロック機構がこの係止動作に機構連動してつかみ金具を横架材に自動的にロックし、横架材に対するフック部分の係止状態を拘束する。かくして、各つかみ金具は、セルフロック式に横架材上に係留されるが、床付き布枠を横架材から撤去する際には、セルフロック機構を手作業で解放しなければならない。図16(A)及び図16(B)には、従来の床付き布枠100を建枠Aの横架材Bから取り外す過程が例示されている。足場解体時等に床付き布枠を横架材から取り外す際には、図16(A)に示す如く、床付き布枠100の両端部に設けられたつかみ金具104の重力式セルフロック機構を実質的に同時に手動解放して床付き布枠100を全体的に持ち上げるか、或いは、図16(B)に示す如く、床付き布枠100の一端部に設けられたつかみ金具104の重力式セルフロック機構を手動で解放して床付き布枠100の一端部を持ち上げ、その傾斜状態を維持しつつ、床付き布枠100の他端部に設けられたつかみ金具104の重力式セルフロック機構を手動で解放して床付き布枠100の他端部を更に持ち上げる必要が生じる。前者の床付き布枠撤去作業は、一枚の床付き布枠の撤去のために複数の作業従事者等(以下、「作業者」という。)を要する作業形態であるので、実務的には、あまり採用されていない。他方、後者の床付き布枠撤去作業は、作業者が単独で遂行し得る作業であり、これは、一般に採用される作業形態であるが、作業者の負担が比較的大きいことから、作業上の負担を軽減することが望ましい。
【0004】
床付き布枠撤去時の作業上の負担を軽減する対策として、外れ止めの重力式セルフロック機構を過渡的に解放状態に保持し得るように構成された床付き布枠が特許文献5に記載されている。この構成の床付き布枠においては、外れ止めを解放した直後につかみ金具を持ち上げて横架材上に載置することができるので、一端部の荷重を横架材によって過渡的に支持又は支承した状態で他端部の外れ止めを解放することができる。このような床付き布枠を使用した場合、単独の作業者が床付き布枠の端部間で移動して各端部を順次持ち上げ、床付き布枠を比較的容易に撤去し得るかもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-160666号公報
【文献】特開2010-185262号公報
【文献】特開2014-80845号公報
【文献】特開2000-179149号公報
【文献】特開2017-166207号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】建築工事標準仕様書・同解説、JASS2、仮設工事(社団法人日本建築学会発行)
【文献】仮設工事認定基準とその解説、第8版(一般社団法人仮設工業会発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の床付き布枠は、4箇所のつかみ金具の全てにセルフロック式可動爪を外れ止め部材又は外れ止め部分(以下、「外れ止め」という。)として備え、作業者は、床付き布枠撤去時に全てのつかみ金具の手動ロック解除操作を行う必要があり、従って、床付き布枠撤去時に床付き布枠の一端部の荷重を横架材で過渡的に支持又は支承し得たとしても、床付き布枠撤去作業は、一般に作業者が単独で(一人で)遂行することが多いという実務上の実態等を考慮すると、更なる作業者の負担軽減を図る対策が望まれる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、つかみ金具によって横架材間に架設又は懸架された仮設床材を撤去する仮設床材撤去作業の作業性を改善し、撤去作業時の作業者の作業上の負担又は負荷を軽減することにある。
【0009】
なお、床付き布枠は、床材、布材、梁材及びつかみ金具等を一体化し又は一体的に組み付けた構造を有する作業床等形成用の仮設材である。この種の仮設床材として、踏板、足場板、布板等の名称で各種形式の作業床等形成用の仮設材が市場に流通している。近年においては、アルミ押出形材からなる床材本体につかみ金具等を直に取付けた構造を有するアルミ製仮設床材等の如く、新規な構造を有する多様な作業床等形成用の仮設材が提案されている(例えば、特願2019-22105号明細書・図面)。本明細書の以下の記載においては、多種多様な作業床等形成用の仮設材を総称する用語として、「仮設床材」の用語を使用するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明は、仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止めであって、重力式セルフロック機構(7,8)を有する可動爪(5)からなり、或いは、前記金具本体に一体化し又は固定された固定爪(5')からなる外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有することを特徴とする仮設床材のつかみ金具を提供する(請求項1)
好ましくは、上記可動フックは、床材本体とは反対の側において横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面(18)と、横架材の外周面に摺接可能又は当接可能な従動カム面又は受圧従動面(41)とを備え、或いは、床材本体とは反対の側において横架材の上半部外周面に沿って延び、従動カム面又は受圧従動面として機能する横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を備える(請求項2)
【0011】
本発明の上記構成によれば、可動フックは、横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位するので、横架材間に架設又は懸架された仮設床材を撤去する仮設床材撤去作業の作業性を改善し、撤去作業時の作業者の作業上の負担又は負荷を軽減することができる。殊に、本発明によれば、可動フックの回動又は面内変位によって横架材がつかみ金具から係合離脱し得るように横架材収容域を開放し、或いは、横架材を受入れ可能に横架材収容域を開放するようにつかみ金具を実施設計することができる。このように実施設計した上記構成のつかみ金具によれば、作業者は、仮設床材撤去作業においてつかみ金具を概ね斜め上方に移動させることにより、ロック解除操作等の操作を行うことなく、つかみ金具を横架材から離脱させることができるので、仮設床材撤去作業の作業性は大きく改善し、撤去作業時の作業者の作業上の負担又は負荷は大幅に軽減する。なお、本明細書において、「面内変位」は、可動フック又は本体部分の中心平面と実質的に同一又は平行な平面内、或いは、実質的に鉛直な平面内における可動フックの変位を意味する。この「面内変位」は、側面視における可動フックの挙動により特定し得る可動フックの二次元的変位として把握しても良い。また、本発明が対象とする仮設機材は、一般に当業者が「つかみ金具」として認識し又は特定する仮設機材であり、その素材は、現状では、鋼材(SS400又はSPHC)に限定される(前述の非特許文献2)。他方、本発明の対象は、技術思想的には、必ずしも金属製の部品又は資材に限定されるものではなく、例えば、上記可動フックの部分を金属と同等の強度を有する素材(例えば、高強度の樹脂又はセラミック等)で製作することも可能であるので、厳密には、「つかみ具」又は「つかみ部材」等の名称で表現すべきものであるかもしれない。しかしながら、本明細書においては、仮設工業会等における現状の仮設機材の分類又は名称等に照らして当業者が本発明の対象を容易に認識し又は理解し得るようにすることを意図し、現状において慣用的表現として広く使用されている「つかみ金具」の用語を採用したものである。従って、本明細書においては、つかみ「金具」の語句は、必ずしも素材(金属)を限定することを意図したものではないと理解すべきである。
【0012】
他の観点より、本発明は、仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
該可動フックは、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面(18)と、前記横架材の外周面に摺接可能又は当接可能な従動カム面又は受圧従動面(41)とを備え、或いは、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延び、前記従動カム面又は受圧従動面として機能する横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を備えており
前記可動フックは、前記従動カム面又は受圧従動面(41)、或いは、従動カム面又は受圧従動面として機能する前記横架材係合面及びその下縁部分(61,62)が前記横架材の外周面に摺接又は当接することにより受動的に回動又は面内変位するように、前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されることを特徴とす仮設床材のつかみ金具を提供する(請求項3)
このような本発明の構成によれば、横架材の外周面に摺接又は当接する可動フックは、つかみ金具に対する横架材の相対運動を可動フックの回転運動又は面内挙動に転換するカム従動作用又は受圧従動作用により、受動的(受働的)に回動し又は面内変位する。即ち、可動フックは、横架材に対する相対変位又は相対運動により生じるカム従動作用又は受圧受動作用により作動し、この結果、横架材収容域は、横架材から係合離脱し得るように開放し、或いは、横架材を受入れ可能に開放する。
【0013】
更に他の観点より、本発明は、仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)であって、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有する仮設床材のつかみ金具において、下記(1)、(2)及び(3)の各構成の少なくともいずれか一つの構成をその特徴事項として有する仮設床材のつかみ金具を提供する。

(1)前記可動フックは、可動フックの重心を横架材の側に偏心させる重錘部(19)を有する(請求項4)
(2)前記可動フックは、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面(18)と、前記横架材の外周面に摺接可能又は当接可能な従動カム面又は受圧従動面(41)とを備え、或いは、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延び、前記従動カム面又は受圧従動面として機能する横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を備えており
仮設構造物の横架材に架設又は懸架された前記仮設床材を該横架材から撤去すべく、前記外れ止めのロック解除操作を行うことなく、前記仮設床材を斜め上方(η)に移動させることにより、前記従動カム面又は受圧従動面(41)、或いは、従動カム面又は受圧従動面として機能する前記横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を前記横架材の上半部外周面に摺接又は当接させて前記可動フックを受動的に回動又は面内変位させ、前記つかみ金具を前記横架材から離脱せしめるようにした構造を有する(請求項5)。
(3)前記着座面(17)、外れ止め(4,4',4")及び可動フック(13,60)によって画成される下面開口形の横架材収容域(ε)は、前記横架材を該横架材収容域に収容した状態において水平面(HL)に対して30~70度の角度範囲内の傾斜角(θ)をなす方向に開口平面(ω)を配向してなる開口部(λ)を有する(請求項13)。

好ましくは、可動フックは、枢動軸線を中心とする円弧状軌道に沿って延在する湾曲スロット(16)を有し、湾曲スロットを貫通するガイドピン(15)が金具本体に突設される。
【0014】
本発明は又、仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
前記着座面(17)、外れ止め(4,4',4")及び可動フック(13,60)によって画成される横架材収容域(ε)に前記横架材を収容するとともに、前記着座面によって仮設床材の荷重を前記横架材に伝達し、前記外れ止めの横架材係合面(6)と前記横架材との当接又は衝合によって所定寸法以上のつかみ金具の上方変位を阻止し、前記着座面と前記横架材との当接又は衝合、或いは、前記可動フックと前記横架材との当接又は衝合によって、つかみ金具の水平変位を拘束することを特徴とする仮設床材のつかみ金具を提供する(請求項6)
【0015】
本発明は更に、仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
前記金具本体は、前記可動フック(13)を回動可能に支持又は支承する支軸(14)金具本体の先端部分(12)に有し、該可動フックの重心は、前記支軸の中心軸線に対し、前記横架材の側に偏心しており、或いは、前記金具本体は、前記可動フック(60)を面内変位可能に支持又は支承する支軸(63,64)を該金具本体の先端部分(12)に有し、該可動フックは、その自重によって前記横架材の上部外周面に接触し又は近接するように前記支軸によって支持又は支承されていることを特徴とする仮設床材のつかみ金具を提供する(請求項8)
本発明の好適な実施形態によれば、支軸は、横架材の中心軸線(Bc)と実質的に平行な枢動軸線(14c)を有する枢支軸(14)からなり、可動フックは、横架材収容域に横架材を収容した状態において、従動カム面又は受圧従動面(41)が横架材に押圧されることにより、枢動軸線を中心に受動的に回動し、横架材収容域は、その開口部の開口寸法 (D2)を拡大する。望ましくは、開口部(λ)の開口平面(ω)は、水平面(HL)に対して30~70度の角度範囲内の傾斜角(θ)をなす方向に配向される。
【0016】
更に他の観点より、本発明は、仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
横架材収容域(ε)が、前記着座面(17)、外れ止め(4,4',4")及び可動フック(13,60)によって画成されるとともに、前記横架材を受入れ又は横架材から離脱するための前記横架材収容域の開口部(λ)が、前記可動フックと前記外れ止めとの間に形成され、
前記開口部の開口寸法(D2,D4)は、前記着座面が前記横架材に着座したつかみ金具の係止位置において前記横架材の直径(D1)よりも小さい寸法(D2)に設定され、前記可動フックの回動又は面内変位により前記開口部が拡開した状態において前記横架材の直径よりも大きい寸法(D4)に設定されることを特徴とする仮設床材のつかみ金具を提供する(請求項7)
好適には、横架材の外周面に最も接近した従動カム面又は受圧従動面の近接部位(41a)は、着座面が横架材に着座したつかみ金具の係止位置において横架材の中心軸線(Bc)の高さ位置(HL)よりも下方に位置し、可動フックの回動により上記開口部の開口寸法を拡大した状態において横架材の中心軸線の高さ位置よりも上方に位置する。本発明の好適な実施形態において、横架材の中心軸線(Bc)と枢支軸の枢動軸線(14c)とは、実質的に同一のレベル(高さ位置(HL))に位置する。
【0017】
望ましくは、上記着座面(17)及び横架材係合面(6,18,62)は、横架材の外周面に接触し又は近接して延びるように湾曲し又は屈曲しており、外れ止めの横架材係合面(6)は、着座面が横架材に着座したつかみ金具の係止位置において横架材から離間し、可動フックの横架材係合面(18,62)は、係止位置において横架材から僅かに離間し、或いは、可動フックの自重により横架材の外周面に接触し又は着座する。
【0018】
本発明は更に、仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材(1)に設けられ、仮設床材の床材本体(2)の端部から布方向又は桁方向に突出するように該床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承するための横架材(B)に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具(10)において、
前記床材本体に固定される基部(11a)と、前記横架材の上半部外周面に着座する着座面(17)とを備えた金具本体(11)と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記金具本体に配設された外れ止め(4,4',4")と、
前記金具本体の先端部分(12)に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承されるとともに、前記横架材(B)から離脱する際に該横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フック(13,60)とを有し、
前記可動フックは、前記金具本体(11)の側面に突設されたスタッド又は支軸(63,64)が貫通するスロット又は長孔(65,66)を有し、該スロット又は長孔と前記スタッド又は支軸との相対変位により、面内変位することを特徴とする仮設床材のつかみ金具を提供する(請求項14)
好ましくは、可動フックは、上下方向に間隔を隔てた複数の前記スロット又は長孔と、上下方向に間隔を隔てた複数のスタッド又は支軸とを有し、各スロット又は長孔は、上下方向又は鉛直方向に延びる縦長のスロット部分又は長孔部分(65a,66a)と、横方向に延びる横長のスロット部分又は長孔部分(65b,66b)とを連接した側面視L形又は逆(反転)L形のスロット又は長孔からなる。
【0019】
他の観点より、本発明は、左右一対の上記つかみ金具を少なくとも一方の端部に備えた仮設床材を提供する。好ましくは、床材本体は、一体成形された単一の床材構成部品(21)から構成され、或いは、複数の床材構成部品(21,22)を並列且つ一体的に連結した複合構造を有し、床材構成部品は、作業床又は作業通路の床面を形成する床板部分と、長手方向に延びる補剛リブ(23)とを有するアルミ押出形材からなる。
【0020】
更に他の観点より、本発明は、上記仮設床材の施工方法であって、
仮設構造物の横架材に架設又は懸架された前記仮設床材を該横架材から撤去するために、該仮設床材の少なくとも一方の端部に配置された前記つかみ金具を前記横架材から離脱させる作業において、前記外れ止めのロック解除操作を行うことなく、前記仮設床材を斜め上方(η)に移動させることにより、前記従動カム面又は受圧従動面(41)、或いは、従動カム面又は受圧従動面として機能する前記横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を前記横架材の上半部外周面に摺接又は当接させて前記可動フックを受動的に回動又は面内変位せしめ、前記つかみ金具を前記横架材から離脱させることを特徴とする仮設床材の施工方法を提供する。
【0021】
望ましくは、作業者は、横架材を斜め上方に移動させる前に、つかみ金具を僅かに上方に持ち上げ、外れ止めの横架材係合面と横架材の下半部外周面とを過渡的に近接、当接又は衝合させる。所望により、作業者は、仮設床材を斜め上方(η)に移動させる前に、左右のつかみ金具の間に位置する床材本体の端部下面に対し、作業者の手で僅かな上向きの衝撃を与えて、つかみ金具を僅かに上方に持ち上げるとともに、仮設床材を斜め上方に移動させる。これにより、つかみ金具を比較的円滑に横架材から係合離脱させることが可能となる。
【0022】
本発明に係る上記仮設床材の施工方法として、仮設床材を仮設構造物の横架材に架設又は懸架するために、仮設床材の少なくとも一方の端部に配置されたつかみ金具を横架材に係止する作業において、外れ止めのロック解除操作を行うことなく、仮設床材を斜め下方に移動させてつかみ金具を横架材に接近させるとともに、従動カム面又は受圧従動面(41)、或いは、従動カム面又は受圧従動面として機能する横架材係合面及びその下縁部分(61,62)を横架材の上半部外周面に摺接又は当接させて可動フックを受動的に上方に回動せしめ、着座面を横架材の上半部外周面に着座せしめる施工方法を採用しても良い。
【0023】
また、本発明に係る上記仮設床材の施工方法では、仮設構造物の横架材に架設又は懸架された仮設床材を横架材から撤去するためにつかみ金具を横架材から離脱させる作業において、外れ止めのロック解除操作を付加的に行うとともに、可動フックを上方に回動させ、これにより、つかみ金具の開口部(λ)を大きく拡開して、つかみ金具を横架材から離間せしめる工程を採用しても良い。このような施工方法によれば、予測困難な仮設床材の歪み、変形又は傾斜等に起因して、外れ止めのロック解除操作又は可動フックの回動操作の一方のみではつかみ金具が所望の如く横架材から離脱し難い状態が生じた場合、外れ止めのロック解除操作と可動フックの回動操作との双方を併用し、これにより、つかみ金具を比較的容易に横架材から係合離脱させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の上記構成によれば、横架材の外周面に摺接又は当接して回動又は面内変位する可動フックの挙動又は運動により、横架材間に架設又は懸架された仮設床材を撤去する仮設床材撤去作業の作業性を改善し、撤去作業時の作業者の作業上の負担又は負荷を軽減することができる。
また、本発明によれば、可動フックの回動又は面内変位によって横架材がつかみ金具から係合離脱し得るように横架材収容域を開放し、或いは、横架材を受入れ可能に横架材収容域を開放するようにつかみ金具を実施設計することができる。このように実施設計した上記構成のつかみ金具によれば、仮設床材を斜め上方に移動した際に生じる横架材及びつかみ金具の相対運動をカム従動作用又は受圧従動作用により可動フックの回転運動又は面内挙動に転換して、可動フックを受動的に回動又は面内変位せしめ、これにより、横架材をつかみ金具から係合離脱可能に解放することができるので、つかみ金具によって横架材間に架設又は懸架された仮設床材を撤去する仮設床材撤去作業の作業性を大きく改善し、撤去作業時の作業者の作業上の負担又は負荷を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1(A)~図1(C)は、本発明の好適な実施形態に係るつかみ金具を備えた仮設床材を全体的に示す斜視図、平面図及び側面図であり、つかみ金具は、回動式又は枢動式の可動フックを有する。
図2図2(A)は、図1に示す仮設床材の部分破断拡大側面図であり、図2(B)~図2(D)は、つかみ金具の作動又は使用の態様を示すつかみ金具の側面図である。
図3図3(A)~図3(D)は、つかみ金具の構造を示す平面図、側面図、背面図及び斜視図である。
図4図4は、可動フックの構造を示すつかみ金具の部分拡大側面図である。図4には、横架材を横架材収容域内に収容した状態が示されている。
図5図5は、可動フックの構造を示すつかみ金具の部分拡大側面図である。図5には、可動フックの枢動又は揺動を利用して横架材を横架材収容域から離脱せしめる過程が示されている。
図6図6(A)~図6(C)は、横架材上に架設又は敷設された仮設床材を撤去する際に生じるつかみ金具の作動形態を示す床材本体の部分拡大側面図である。図6には、可動爪をロック解除位置に変位させてつかみ金具を横架材から離脱させる過程が示されている。
図7図7は、横架材上に架設又は敷設された仮設床材を撤去する際に生じるつかみ金具の他の作動形態を示す床材本体の部分拡大側面図である。図7には、受動的な可動フックの変位によって横架材収容域を開放してつかみ金具を横架材から離脱させる過程が示されている。
図8図8(A)~図8(I)は、仮設床材の撤去作業の作業手順を段階的に示す側面図である。
図9図9(A)~図9(H)は、従来構造のつかみ金具を両端部に備えた床付き布枠(比較例)の撤去作業の作業手順を段階的に示す側面図である。
図10図10は、図1図8に示す実施形態の変形例に係るつかみ金具の構成を示す側面図である。
図11図11(A)及び図11(B)は、図1図8に示す実施形態の他の変形例に係るつかみ金具の構成を示す側面図及び斜視図である。
図12図12(A)及び図12(B)は、本発明の他の実施形態に係るつかみ金具の構成を示す側面図である。
図13図13(A)及び図13(B)は、本発明の更に他の実施形態に係る面内変位式又はスライド式の可動フックを備えたつかみ金具の構造を示す側面図及び部分拡大側面図である。図13には、つかみ金具を横架材に係止した状態が示されている。
図14図14(A)及び図14(B)は、図13に示すつかみ金具を横架材から僅かに上昇させた状態を示すつかみ金具の側面図及び部分拡大側面図である。
図15図15(A)及び図15(B)は、図14に示すつかみ金具を横架材に対して斜め上方に移動させた状態を示すつかみ金具の側面図及び部分拡大側面図である。
図16図16(A)及び図16(B)は、従来の床付き布枠を建枠の横架材から取り外す過程を示す仮設足場の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0027】
図1(A)~図1(C)は、本発明の好適な実施形態に係るつかみ金具を備えた仮設床材を全体的に示す斜視図、平面図及び側面図である。図1(A)~図1(C)に示すつかみ金具は、回動式又は枢動式の可動フックを有する。
【0028】
図1(A)には、枠組足場の建枠Aに支持又は支承された仮設床材1が示されている。建枠Aは、横架材B及び脚柱Cを一体化し、補剛材D、E等によって補強してなる鋼製の枠体である。仮設床材1は、床材本体2を有し、床材本体2の上面(床面)20は、仮設足場の作業通路又は作業床を構成する。床面延設部材3が、床材本体2の両端部に一体的に取付けられる。図1(B)及び図1(C)に示す如く、本発明に係る左右一対のつかみ金具10が、床材本体2の各端部に夫々配設される。つかみ金具10は、床材本体2の端部から布方向又は桁方向に突出する。つかみ金具10の取付け位置は、図1(B)に示す如く、仮設床材1の平面視鉛直中心軸線に対して180度の回転対称の位置である。なお、本実施形態においては、仮設床材1は、本発明に係るつかみ金具10を両端部に配設した構造を有するが、所望により、仮設床材1の一端部には、従来の構造を有する左右一対の固定フック・可動爪式(セルフロック式)つかみ金具(図9)を配設しても良い。また、以下の説明においては、枠組足場の建枠Aの横架材B間に仮設床材1を架設又は懸架した構成について説明するが、本実施形態の仮設床材1は、枠組足場のみならず、楔結合式足場においても横架材(腕木)間に架設又は懸架し得るように設計されており、従って、枠組足場及び楔結合式足場の各形式の足場において共用又は兼用可能な仮設床材である。
【0029】
本例において、床材本体2は、布枠(布材及び梁)を備えておらず、補剛リブ23によって補強又は補剛したアルミニウム製又はアルミニウム合金製の押出成形材21、22を一体的に組付けた構成を有する。本例においては、床材本体1は、幅約250mmの押出成形材21を幅約30mm程度のジョイント用押出成形材22によって並列且つ一体的に連結した構造を有する。床面延設部材3も又、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の押出成形材からなり、床材本体2の各端部に一体的に取付けられる。床材本体2及び床面延設部材3の構造については、本出願人の出願に係る特願2019-22105号及び特願2019-31104号の明細書・図面に詳細に記載されているので、特願2019-22105号及び特願2019-31104号の明細書・図面を引用することにより、更なる詳細な説明を省略する。
【0030】
仮設床材1は、つかみ金具10を建枠Aの横架材Bに係止することにより、隣り合う建枠Aの横架材B間に架設又は懸架される。つかみ金具10は、仮設床材1の荷重(自重及び積載荷重)を横架材Bに伝達する。つかみ金具10は夫々、図2及び図3に示す如く、外れ止め4及び可動フック13を備える。
【0031】
図2(A)は、図1に示す仮設床材1の側面図であり、図2(B)~図2(D)は、つかみ金具10の作動又は使用の態様を示すつかみ金具10の側面図である。また、図3(A)~図3(D)は、つかみ金具10の構造を示す平面図、側面図、背面図及び斜視図である。
【0032】
図2及び図3に示す如く、つかみ金具10は、重力式(セルフロック式)の可動爪5を有する外れ止め4と、横架材Bの上面に着座して横架材Bに係止可能なつかみ金具本体11と、つかみ金具本体11(以下、「金具本体11」という。)の先端部に配設された可動フック13とから構成される。本例において、可動爪5及び金具本体11は夫々、一体成形された平面視平板状のアルミ製部品からなる。可動フック13は、一体成形された平面視平板状の鋼製部品からなる。金具本体11の基部11aには、ボルト孔11cが穿設される。基部11aは、ボルト孔11cを貫通するボルト・ナット組立体11bによって床材本体2の補剛リブ23に固定される。つかみ金具10の全体的な厚さ(幅)を比較的小さい寸法に設定すべく、外れ止め4及び可動フック13は、図3(A)に示す如く、いずれも金具本体11の同一側面に配置されている。
【0033】
可動爪5は、全体的に湾曲したスロット(長孔)7を有し、スロット7を貫通する上下一対の水平スタッド(水平支軸)8が、金具本体11の側面に水平に突設される。可動爪5は、図2(A)に示すつかみ金具10の係止位置において、重力下に降下した降下位置(図2(A))に位置する。降下位置において、上側のスタッド8は、スロット7の上縁部分を支承する。可動爪5の横架材係合面6が、横架材Bの下半部外周域において、横架材Bの下部外周面に近接するように湾曲して延在する。横架材Bは、平面視において横架材係合面6と重なり合う。横架材B及び横架材係合面6の重なり寸法α(図2(A)及び図3(A))は、5mm以上且つ15mm以下、例えば、約10mmに設定される。風圧等に起因した仮設床材1の浮き上がり現象は、横架材係合面6が横架材Bに係合又は衝合することによって阻止される。
【0034】
一般に、枠組足場(及び楔結合式足場)においては、横架材Bの直径D1は、42.7mmである。図2(B)~図2(D)に示す如く、つかみ金具10は、横架材Bを収容可能な横架材収容域εを有する。横架材収容域εは、横架材Bを収容し得る概ねC字形断面の下面開口形凹所である。可動爪5及び可動フック13の間に形成される横架材収容域εの開口面ω(図3(B))は、横架材Bの中心軸線Bcを含む水平面HLに対して所定角度θ(図3(B))をなして開口し、開口部λは、横架材収容域εを斜め下方に向かって開放する。本例において、つかみ金具10の係止位置(図2(A))における開口面ωの傾斜角θは、約30~45度(例えば、35度)に設定される。
【0035】
開口部λの開口寸法は、可動爪5及び可動フック13の相対位置に相応して変化する。図2(A)に示す如く、仮設床材1を横架材B間に架設又は懸架した状態では、可動爪5は、ロック位置に位置し、開口部λの開口寸法D2は、横架材Bの直径(外径)D1よりも小さい値に設定される。例えば、開口部λの開口寸法D2は、40~30mmの範囲内の寸法(例えば、約36mm)に設定される。この状態では、横架材Bは、つかみ金具10に実質的に囲繞されており、横架材収容域ε内に拘束される。これに対し、図2(B)に矢印で示す如く、可動爪5を手指で斜め上方に押し上げ、下側のスタッド8をスロット7の下縁部分に当接又は衝合せしめると、可動爪5は、横架材Bの下半部外周域から退避し、横架材収容域εを比較的大きく下方に開放する。開口部λは、横架材Bの直径D1よりも大きく、横架材Bを横架材収容域ε内に比較的容易に受入れ且つ横架材Bを比較的容易に横架材収容域εから離脱させることができる開口寸法D3に拡開する。即ち、可動爪5は、このロック解除位置(図2(B))において、横架材Bに対する仮設床材1の上方変位を許容するので、図2(B)に矢印で示す如く、つかみ金具10を上方に移動させて横架材Bから離間又は離脱させ、或いは、つかみ金具10を横架材Bの上方域から降下させて金具本体11を横架材Bの上部外周面に着座させることができる。
【0036】
金具本体11は、床材本体2の側に位置する横架材Bの上部外周面に着座するように湾曲した湾曲着座面17を有する。仮設床材1を横架材Bの間に架設した状態(図2(A))において、湾曲着座面17は、横架材Bの上部外周面に着座する。このようなつかみ金具10の係止位置(図2(A))において、仮設床材1の荷重は、湾曲着座面17を介して横架材Bに伝達する。湾曲着座面17は、横架材Bの頂部Baの近傍においてその水平面17aに移行し、水平面17aは、床材本体2とは反対の側に延び、傾斜面17b、17cに連続する。本例においては、傾斜面17b、17cは、横架材Bの外周面から離間する。
【0037】
可動フック13は、傾斜面17b、17cを含む金具本体11の先端部分12に配置される。可動フック13を枢動可能又は揺動可能に支持する水平な支軸14が、先端部分12に取付けられる。スタッド形の支軸14は、先端部分12に突設されたボルト、螺子、ピン又はリベット等の機械要素よりなる。本例において、支軸14の中心軸線14cは、図3(D)に示す如く、横架材Bの中心軸線Bcと実質的に平行に配向されるとともに、中心軸線Bcと実質的に同一のレベル又は高さ位置(水平面HL)に配置される。なお、中心軸線14c、Bcは、必ずしも同一レベルに配置しなくとも良く、例えば、中心軸線14c、Bcの高低差を2mm又は3mm程度の寸法に設定しても良い。
【0038】
支軸14の中心軸線14cを中心に可動フック13を回動すると、図2(C)に示す如く、横架材収容域εの開口部λを斜め下方に比較的大きく開放し、開口部λを開口寸法D4に拡開することができる。開口寸法D4は、横架材Bの直径D1よりも大きい寸法に設定される。
【0039】
可動フック13を構造的に安定させ且つ可動フック13の回動を規制するためのスタッド形のガイドピン15が金具本体11の側面に突設される。ガイドピン15は、先端部分12に突設されたボルト、螺子、ピン又はリベット等の機械要素よりなり、可動フック13に穿設された湾曲スロット(長孔)16を貫通する。スロット16の弧状中心線は、中心軸線14cを曲率中心とする曲率半径R(図4及び図5)の円弧状軌道である。
【0040】
図4及び図5は、可動フック13の構造を示すつかみ金具10の部分拡大側面図である。図4には、図2(A)と同じく、横架材Bを横架材収容域ε内に収容した状態が示されており、図5には、可動フック13の枢動又は揺動を利用して横架材Bを横架材収容域εから離脱せしめる過程が示されている。
【0041】
図3及び図4に示す如く、可動フック13は、横架材Bの上半部外周域において屈曲して延びる横架材係合面18を有する。横架材係合面18は、床材本体2とは反対の側において横架材Bの上部外周面に近接して延在する。可動フック13の重心は、支軸14の中心軸線14cに対して偏心しており、中心軸線14cを含む水平面に対してその上方に位置するとともに、中心軸線14cを含む鉛直面に対してその横架材B側に位置する。可動フック13の重心を横架材Bの側に比較的大きく偏心させる重錘部19が可動フック13の上部に延設される。可動フック13は、常時は、図4に示す如く、可動フック13の自重に従って重力下に横架材収容域εの側に傾倒し、横架材Bとは反対の側(金具本体11の先端側)に位置する湾曲スロット16の縁部がガイドピン15に実質的に係合する位置において静止する。従って、仮設床材1を横架材Bに架設した状態(図2(A))では、横架材係合面18は、可動フック13の自重により傾倒して横架材Bの上部外周面に接触し又は近接するにすぎず、仮設床材1の荷重及びその反力は、横架材係合面18に作用せず、従って、仮設床材1の荷重は、前述のとおり、湾曲着座面17を介して横架材Bに伝達する。なお、所望により、横架材係合面18を湾曲着座面17と同様の湾曲面又は円弧面に設計しても良い。
【0042】
図4に示す如く、仮設床材1を横架材B間に架設又は懸架したつかみ金具10の係止位置では、可動フック13の先端下面40は、横架材Bの中心軸線Bc(及び中心軸線14c)を含む水平面HLよりも僅かに下方に位置する。横架材係合面18と先端下面40と連接域には、微小曲率半径の曲面によって従動カム面又は受圧従動面41(以下、「従動カム面41」という。)が形成される。つかみ金具10の係止位置において、開口部λの開口寸法D2は、従動カム面41と可動爪5の先端部51との離間距離である。横架材係合面18の曲率半径は、好ましくは、8mm以下(1mm以上)、更に好ましくは、2~6mmの範囲内の寸法、例えば、約4~5mmに設定される。横架材Bの外周面に最も接近した従動カム面41の近接部位41aは、水平面HLよりも高低差Δh1だけ下方に位置する。高低差Δh1は、好ましくは、8mm以下(2mm以上)、更に好ましくは、2~6mmの範囲内の寸法、例えば、約3~4mmに設定される。横架材Bに対するつかみ金具10の水平変位は、湾曲着座面17又は横架材係合面18と横架材Bとの係合又は衝合によって阻止される。
【0043】
横架材Bの下半部外周面と横架材係合面6との間には、間隙μが形成されており、図4に矢印で示す如く、つかみ金具10を上方に移動させると、横架材Bは、図4に仮想線(一点鎖線)で示すように、相対的に下方に変位し、この結果、間隙μは消失し、横架材Bの下半部外周面は横架材係合面6に当接する。この状態では、横架材Bの中心軸線Bcは、従動カム面41の近接部位41aよりも下方に位置する。更に、図4に矢印ηで示す係合離脱方向(斜め上方)につかみ金具10を移動させると、従動カム面41は、横架材Bの外周面を摺動し、図5に示す如く、可動フック13は、横架材Bの外周面に押圧され、支軸14の中心軸線14cを中心に矢印ν方向(反時計廻り方向)に回動する。即ち、つかみ金具10に対する横架材Bの相対運動を可動フック13の回転運動に転換する従動カム面41のカム従動作用又は受圧従動作用により、横架材収容域εの開口部λは、斜め下方に比較的大きく開放し、開口部λを開口寸法D4に拡開する。前述のとおり、開口寸法D4は、横架材Bの直径D1よりも大きい寸法に設定される。
【0044】
図2(C)には、このようにして可動フック13を矢印ν方向(反時計廻り方向)に回動させて横架材収容域εの開口部λを開口寸法D4に拡開した状態が示されている。可動フック13は、この拡開位置(図2(C)及び図5)において、横架材Bに対するつかみ金具10の離脱方向ηの運動を可能にし、或いは、横架材Bの上方域からつかみ金具10を離脱方向ηと逆の方向に移動させて金具本体11を横架材Bの上部外周面に着座させることができる。
【0045】
なお、図2(D)には、下側のスタッド8をスロット7の拡大部分7a(図2(A))に位置決めし、横架材収容域εを縮小した状態が示されている。図2(D)に示す形態は、図2(D)に仮想線(破線)で示す如く、つかみ金具10を上下に積層した状態において高さ寸法を縮小するためのものであり、多数の床材本体1を積重ねた状態で保管し又は輸送する際に好ましく使用し得る。
【0046】
図6及び図7は、横架材B上に架設又は敷設された仮設床材1を撤去する際に生じるつかみ金具10の作動形態を示す床材本体1の部分拡大側面図である。図6には、可動爪5をロック解除位置に変位させて横架材収容域εを開放し、これにより、つかみ金具10を横架材Bから離脱させる過程が示されており、図7には、受動的な可動フック13の変位によって横架材収容域εを開放し、これにより、つかみ金具10を横架材Bから離脱させる過程が示されている。以下、図6及び図7を参照して各離脱過程について説明する。
【0047】
図6(A)には、つかみ金具10を横架材Bに係止した状態が示されている。この状態では、金具本体11の湾曲着座面17は、横架材Bの外周面に着座し、仮設床材1の鉛直荷重は、湾曲着座面17を介して横架材Bに伝達する。図6(A)に矢印で示す如く、可動爪5を手指で押し上げ、下側のスタッド8をスロット7の下縁部分に当接又は衝合せしめると、可動爪5は、前述のとおり、横架材収容域εからの横架材Bの離脱を可能にする開口寸法D3に開口部λを拡開し、外れ止め4によるロックを解除する(図6(B))。図6(B)に矢印で示す如く、仮設床材1を全体的に持ち上げると、図6(C)に示す如く、つかみ金具10は、横架材Bから離間し、仮設床材1は、全体的に上方に移動する。
【0048】
他方、図7(A)に矢印で示す如く、つかみ金具10を横架材Bに係止した状態から仮設床材1を若干上方に持ち上げ且つ係合離脱方向ηに移動させると、従動カム面41が横架材Bの外周面に接し、横架材Bの外周面上を摺動する。可動フック13は、横架材Bの外周面の反作用又は反力を受け、カム従動作用又は受圧従動作用により支軸14の中心軸線14c(図4図5)を中心に矢印ν方向(時計廻り方向)に回動する。この結果、横架材収容域εの開口部λは、図7(B)に示す如く、斜め下方に比較的大きく開放し、開口部λを開口寸法D4に拡開する。仮設床材1を離脱方向ηに更に移動させると、図7(C)に示す如く、つかみ金具10は、横架材Bから離間し、仮設床材1は、全体的に斜め上方に移動する。
【0049】
所望により、図6に示す外れ止め4のロック解除操作と、図7に示す可動フック13のカム従動式又は受圧従動式回動操作とを併用しても良い。例えば、仮設床材1の歪み又は変形や、予測不能な傾斜等により、外れ止め4のロック解除操作(図6)又は可動フック13の回動操作(図7)の一方のみでは開口部λを所望の如く拡開し難い状況が生じた場合には、可動爪5を手指で押し上げて開口部λを拡開するとともに、可動フック13を回動せしめて開口部λを拡開しても良い。
【0050】
図8は、仮設床材1の撤去作業の作業手順を段階的に示す側面図であり、図9は、従来構造のつかみ金具を両端部に備えた床付き布枠(比較例)の撤去作業の作業手順を段階的に示す側面図である。本発明と従来技術との相違に関する理解を容易にするため、仮設床材1の撤去作業について説明する前に、比較例に係る床付き布枠の撤去作業について、図9を参照して説明する。
【0051】
図9(A)には、従来構造のつかみ金具104によって仮設足場の横架材Bに支持された床付き布枠100が示されている。床付き布枠100は、床材101、布材102及び梁材(はり材)103を一体的に組み付けてなる鋼製の仮設部材である。左右一対のつかみ金具104が左右の布材102の両端部に一体的に取付けられており、従って、実質的に同じ構造を有するつかみ金具104が、床付き布枠100の4つの角部に夫々配設されている。図9(B)に示す如く、各つかみ金具104は、重力式可動爪からなる外れ止め105と、横架材Bに着座可能な固定式フック本体106とから構成される。外れ止め105は、湾曲したスロット(長孔)107を有し、フック本体に水平に固定されたスタッド(支軸)108がスロット107を貫通する。各つかみ金具104の外れ止め105は、横架材Bの下半部外周域に延び、フック本体106の上方変位を阻止する降下位置(以下、「ロック位置」という。)に位置する。外れ止め105は、ロック位置において、風圧等に起因した床付き布枠100の浮き上がり等を防止する。なお、図9には、前述の特許文献5に記載された構造及び形態を有する外れ止め105が例示されている。
【0052】
仮設足場の解体撤去時等に床付き布枠100を横架材Bから撤去する場合には、図9(B)に矢印で示す如く、一端部(図9において左側の端部)の外れ止め105を手指で上方に変位させ、図9(C)に示す如く、フック本体106の下面を開放し(以下、この位置を「ロック解除位置」という。)、フック本体106を上方変位させる。図9(C)に矢印で示すように床付き布枠100の一方の端部を上方に持ち上げた後、図9(D)及び図9(E)に示すように外れ止め105を手指で下方に変位させると、外れ止め105の下端部が横架材Bの上面に着座し、床付き布枠100の一端部が横架材Bによって支持又は支承される。この状態では、他端部(図9において右側の端部)のつかみ金具104の外れ止め105は、依然としてロック位置に位置する(図9(F))。
【0053】
作業者が床付き布枠100の他端部に移動し、図9(F)に矢印で示すように他端部の外れ止め105を手指でロック解除位置に変位させ、図9(G)に矢印で示すように床付き布枠100の他端部を上方に持ち上げると、床付き布枠100は、図9(H)に示す如く、横架材Bから完全に離脱する。作業者は、図9(H)に矢印で示すように床付き布枠100を全体的に持ち上げ、或いは、傾倒させ、これにより、床付き布枠100を横架材Bから撤去することができる。
【0054】
このような従来の床付き布枠100を使用した場合、作業者は、床付き布枠100の端部間で移動し、各端部の外れ止め105を手指でロック解除位置に変位させる手動ロック解除操作を実施しなければならない。このような端部間の移動の間、作業者は、床付き布枠100の姿勢及び位置等の安定状態を維持しなければならず、これは、従来より、作業上の負担又は負荷として作業者に意識又は認識されていた。これに対し、本実施形態に係る仮設床材1のつかみ金具10は、以下に説明するとおり、一方の端部の外れ止め105を操作する必要をなくし、作業上の負担又は負荷を大幅に軽減する。
【0055】
本発明に係る仮設床材1の撤去作業の過程又は工程が図8に示されている。前述の如く、仮設床材1は、外れ止め4及び可動フック13を備えた左右一対のつかみ金具10を床材本体2の両端部に配設した構成を有する。外れ止め4は、図9に示すつかみ金具104の外れ止め105と同様、常時は、金具本体11の上方変位を阻止するロック位置に位置し(図8(B))、風圧等に起因した仮設床材1の浮き上がり等を防止する。仮設足場の解体撤去時等に仮設床材1を横架材Bから取り外す際には、図8(B)に矢印で示す如く、片側(図において左側の端部)のつかみ金具10の可動爪5を手指で上方に押し上げ、図8(D)に示すロック解除位置に可動爪5を変位させると、図8(D)及び図8(G)に矢印で示すように金具本体11を上方変位させることができる。この作業自体は、図9に示す比較例の作業形態と同じものである。
【0056】
しかしながら、このようにして一端部の可動爪5のロックを解除した後、図8(C)及び図8(F)に示す如く、反対側の端部のつかみ金具10を僅かに上昇させ、矢印η方向(係合離脱方向)の外力を仮設床材1に加えると、ロック位置の可動フック13の従動カム面41が横架材Bの外周面を摺動し、横架材Bの外周面の反力又は反作用を受け、カム従動作用又は受圧従動作用により支軸14の中心軸線14c(図4図5)を中心に回動して横架材収容域εの開口部λを斜め下方に比較的大きく開放する(図8(F)及び図8(I))。この結果、つかみ金具10は、外れ止め4のロック解除操作を行うことなく、横架材Bから容易に離脱することができる(図8(H))。
【0057】
図8を参照して仮設床材1の撤去作業の作業手順を段階的に説明すると、以下のとおりである。
【0058】
(1)作業者は、図8(B)に矢印で示す如く、片側(本例では、図8において左側の端部)の外れ止め4の可動爪5を手指で上方に押し上げ、図8(D)に示すロック解除位置に可動爪5を変位させ、横架材収容域εを下方に比較的大きく開放させる。
(2)作業者は、つかみ金具10又はその近傍において仮設床材1の端部を手指で押し上げ(図8(G))、仮設床材1を図8(E)に示すように全体的に傾斜させる。
(3)次に、作業者は、仮設床材1を若干押し上げ又は上方に僅かな衝撃を加えるとともに、図8(F)及び図8(H)に示す如く、仮設床材1を全体的に係合離脱方向ηに移動させ、図8(I)に示す如く、反対側(本例では、図8において右側)のつかみ金具10を横架材Bから離脱させる。
【0059】
即ち、図8(A)、図8(B)及び図8(D)に示す如く、片側のつかみ金具10の手動ロック解除操作を行った後、仮設床材1を僅かに持ち上げ、しかる後、図8(E)、図8(F)及び図8(G)に矢印で示すように仮設床材1を全体的に斜め上方に移動させると、反対側のつかみ金具10が横架材Bとの係合を円滑に解き、図8(I)に示すように横架材Bから離脱する。
【0060】
かくして、本実施形態の仮設床材1によれば、作業者は、一端部のつかみ金具10を解放して仮設床材1の端部を若干押し上げ且つ仮設床材1を僅かに傾斜させた後、仮設床材1を僅かに押し上げ且つ斜め上方(係合離脱方向η)に移動させることにより、仮設床材1を撤去することができ、従って、仮設床材1を若干持ち上げた状態で仮設床材1の端部間を移動して両端部のつかみ金具10の手動ロック解除操作を行う煩雑な作業を要しない。このため、仮設床材撤去作業に伴う作業者の労力は大幅に低減し、作業上の負担又は負荷は大幅に軽減する。また、本実施形態の仮設床材1によれば、このような仮設床材撤去作業において、予測し難い仮設床材1の歪み、変形又は傾斜等により、外れ止め4のロック解除操作(図8(B))又は可動フック13の回動操作(図8(F))の一方のみではつかみ金具10を横架材Bから所望の如く離脱させることが困難な場合には、外れ止め4のロック解除操作と可動フック13の回動操作とを併用する(即ち、可動爪5を手指で押し上げ且つ可動フック13を回動させる)ことにより、横架材収容域εの開口部λを大きく開放することができるので、仮設床材1の歪み、変形又は傾斜等が生じた場合においても、仮設床材1を確実に撤去することが可能となる。
【0061】
図10は、上記実施形態の変形例に係るつかみ金具の構成を示す側面図である。図10において、前述の実施形態の各構成要素又は構成部材と実質的に同一又は同等の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
【0062】
前述の実施形態においては、仮設床材1の両端のつかみ金具10は、いずれも、重力式セルフロック機構を有する外れ止め4を備えるが、図8に示す作動形態より明らかなとおり、図8において図の右側の端部に位置するつかみ金具10については、重力式セルフロック機構を要しない。このような観点より、図10に示すつかみ金具10は、固定爪5'からなる外れ止め4’を備える。外れ止め4’は、一体成形されたアルミ製部品からなり、溶接等の固着手段により金具本体11に一体的に接合又は固着される。なお、図10には、従動カム面41が横架材Bの外周面を摺動し、可動フック13が回動する過程が示されている。
【0063】
図11(A)及び図11(B)は、上記実施形態の他の変形例に係るつかみ金具の構成を示す側面図及び斜視図である。なお、各図には、つかみ金具10及び横架材Bのみが図示されており、床材本体2及び床面延設部材3は、図示を省略されている。また、各図において、前述の各実施形態の各構成要素又は構成部材と実質的に同一又は同等の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
【0064】
前述の実施形態においては、つかみ金具10は、可動フック13の重心を横架材Bの側に比較的大きく偏心させる重錘部19を付加的に備えるが、図11に示す可動フック13は、そのような重錘部19を備えていない。しかしながら、図11に示された可動フック13の幾何学的形状より明らかなとおり、可動フック13の重心は、支軸14の中心軸線14cに対し、横架材Bの側に偏心しており、従って、前述の実施例に関して説明したとおり、可動フック13は、常時は、図11に示す如く、可動フック13の自重に従って重力下に横架材収容域εの側に傾倒し、横架材Bとは反対の側(金具本体11の先端側)に位置する湾曲スロット16の縁部がガイドピン15に実質的に係合する位置において静止する。また、図1図8に示す実施形態においては、外れ止め4の可動爪5は、格納時又は保管時等に下側のスタッド8を位置決めすべきスロット7の拡大部分7a(図2(A))を備えるが、図11に示す可動フック13においては、拡大部分7aは、省略されている。
【0065】
図12(A)及び図12(B)は、本発明の他の実施形態に係るつかみ金具の構成を示す側面図である。なお、各図には、つかみ金具10及び横架材Bのみが図示されており、床材本体2及び床面延設部材3は、図示を省略されている。また、各図において、前述の各実施形態の各構成要素又は構成部材と実質的に同一又は同等の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
【0066】
図12に示す外れ止め4”は、矢印で示す如く可動爪5を手指で押し上げた際に重錘部19に当接して重錘部19を押圧する押圧部9を備える。図12(B)に示す如く、重錘部19は、可動爪5の反時計廻り方向の運動に伴って押圧部9に押圧され、可動フック13は、矢印ν方向に回動し、開口部λを拡開する。可動爪5も又、開口部λを拡開するように変位するので、開口部λは、大きく拡開する。
【0067】
図13図14及び図15は、本発明の更に他の実施形態に係る面内変位式又はスライド式の可動フックを備えたつかみ金具10の構造を示す側面図及び部分拡大側面図である。図13図14及び図15には、仮設床材1の撤去作業と関連したつかみ金具10の作動態様が段階的に示されている。なお、各図には、つかみ金具10及び横架材Bのみが図示されており、床材本体2及び床面延設部材3は、図示を省略されている。また、各図において、前述の各実施形態における各構成要素又は構成部材と実質的に同一又は同等の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
【0068】
図13に示す如く、本例のつかみ金具10は、横架材Bに係止可能な本体11と、重力式(セルフロック式)の可動爪5を備えた外れ止め4と、面内変位可能に本体11に支承された面内変位式又はスライド式の平板状可動フック60とを有する。
【0069】
前述の各実施形態と同じく、本体11は、横架材Bの上部外周面に着座するように湾曲した湾曲着座面17を備える。湾曲着座面17は、横架材Bの頂部Baの近傍において水平延長面17aに移行し、水平延長面17aは、床材本体2とは反対の側に延び、傾斜面17b、17cに連続する。本例において、傾斜面17b、17cは、横架材Bの外周面から離間する。図20には、湾曲着座面17又はその水平延長面17a が横架材Bに着座した状態、即ち、つかみ金具10の係止位置が示されている。仮設床材1の荷重は、湾曲着座面17又はその水平延長面17aを介して横架材Bに伝達する。
【0070】
可動爪5は、前述の各実施形態と同様、湾曲スロット(長孔)7を有し、スロット7を貫通する上下一対の水平スタッド(水平支軸)8が、本体11の側面に水平に突設される。可動爪5は、常時は、重力下に降下し、本体11の上方変位を阻止するロック位置に位置しており、風圧等に起因した仮設床材1の浮き上がり等を防止する。図13(A)に矢印で示す如く、可動爪5を手指で上方に押し上げることにより、前述の実施形態(図2(B)及び図6)において説明したとおり、可動爪5をロック解除位置に変位せしめ、つかみ金具10の開口部λを下方に大きく拡開することができる。
【0071】
可動フック60は、傾斜面17b、17cを有する本体11の先端部分に配置される。図13(B)に示す如く、可動フック60は、横架材Bの上部外周面に近接するように横架材Bの上半部外周域に湾曲して延びる横架材係合面62を有する。横架材係合面62は、先端下面68との境界部分に位置する可動フック60の内側縁部(横架材係合面62の下縁部分)61を含み、内側縁部61は、可動爪5の先端部51と対向する。横架材係合面62及び内側縁部61は、全体として受圧受動面又は従動カム面として機能し、前述した「従動カム面又は受圧従動面として機能する横架材係合面及びその下縁部分」を構成する。開口部λの開口寸法D2は、内側縁部61と先端部51との離間距離である。内側縁部61は、前述の各実施形態と同様、微小曲率半径の曲面である。前述の各実施例と同様、開口部λの開口平面ωは、水平面HLに対して傾斜しており、開口平面ωの垂線μは、水平面HLに対して傾斜角θaをなす方向に配向される。
【0072】
可動フック60を面内変位可能に支承する水平なスタッド形の支軸63、64が、対をなして本体11の先端部分12に水平に突設される。各支軸63、64は、本体11の先端部分に一体的に取付けられた段付きリベット、ボルト、螺子又はピン等の機械要素よりなる。本例において、支軸63、64の中心軸線は、本体11の中心平面(中心軸線を含む鉛直平面)と直交し、横架材Bの中心軸線Bcと実質的に平行に配向される。下側に位置する支軸63の中心軸線は、中心軸線Bcのレベル(高さ位置)HLと実質的に同一又はその上下方向に±15mm以内(好ましくは、±10mm以内)の高低差を隔てた位置に位置決めされる。上側に位置する支軸64の中心軸線は、横架材Bの頂部Baのレベル(高さ位置)と実質的に同一又はその上下方向に±15mm以内(好ましくは、±10mm以内)の高低差を隔てた位置に位置決めされる。可動フック60の先端下面68は、横架材Bの中心軸線Bcのレベル(高さ位置)HLよりも下方に位置し、レベルHLと先端下面68との高低差Δh1は、好ましくは、15mm以下(5mm以上)、更に好ましくは、7~12mmの範囲内の寸法、例えば、約10mmに設定される。
【0073】
可動フック60は、支軸63、64が夫々貫通する一対のL形(又は逆L形)スロット(長孔)65、66を有する。支軸63、64は、可動フック60を支承する。可動フック60は、本体11の側面と、支軸63、64の拡大ヘッド部分63a、64aとの間に遊動可能に挟持され、可動フック60又は本体11の中心平面と実質的に同一又は平行な平面内(従って、実質的に鉛直な平面内)において変位可能又はスライド可能に本体11に支持又は保持される。なお、以下の説明において、可動フック60又は本体11の中心平面と実質的に同一又は平行な平面内、或いは、実質的に鉛直な平面内における可動フック60の変位を「面内変位」というものとする。この「面内変位」は、側面視における可動フック60の挙動又はスライドにより特定し得る可動フック60の二次元的変位として把握しても良い。
【0074】
下側のL形スロット65は、上下方向又は鉛直方向に延びる縦長スロット部分65aと、本体11の基部11aの側(横架材Bの側)に向かって横方向又は水平方向に延びる横長スロット部分65bとを概ね直角に連接した構成を有する。上側のL形スロット66は、上下方向又は鉛直方向に延びる縦長スロット部分66aと、若干斜め上方に傾斜して本体11の先端側(横架材Bと反対の側)に延びる横向きの横長スロット部分66bとを鈍角に連接した構成を有する。図13に示すつかみ金具10の係止位置では、可動フック60は、横架材Bによって相対的に上方に押圧され又は支承され、その最上昇位置に面内変位しており、支軸63、64は、縦長スロット部分65a、66aの最下部に位置する。
【0075】
かくして、つかみ金具10の係止位置においては、横架材係合面62は、自重により横架材Bの上部外周面に接触し又は近接するが、仮設床材1の荷重及びその反力は、横架材係合面62に作用せず、仮設床材1の荷重は、湾曲着座面17又はその水平延長部分17aを介して横架材Bに伝達する。また、横架材Bに対するつかみ金具10の水平変位は、湾曲着座面17又は横架材係合面62と横架材Bとの係合又は衝合によって阻止される。
【0076】
以下、前述した仮設床材1の撤去作業(図8等)における本実施形態のつかみ金具10の作動態様について説明する。
【0077】
図13(B)に上向き鉛直の外力Fvで示すように、つかみ金具10を持ち上げると、本体11及び外れ止め4は、図14に示す如く、横架材Bに対して上方に変位し、横架材Bの下半部外周面が外れ止め4の横架材係合面6に近接、衝合又は当接する。図13(B)に破線の矢印τ1、τ2で示す如く、横架材Bが本体11及び外れ止め4に対して相対的に下方に変位する結果、可動フック60も又、その自重により、本体11に対して相対的に下方に変位し、支軸63、64は、矢印τ3、τ4で示す如く、縦長スロット部分65a、66aの最上部に相対移動する。
【0078】
図14に示す如く、前述した矢印η方向(係合離脱方向)の外力Fηがつかみ金具10に作用すると、内側縁部61、或いは、その近傍の横架材係合面62の部分が横架材Bに押圧され、可動フック60の下部は、横架材Bの外周面の反力又は反作用により、矢印ν1で示す如く、本体11から延出するように水平方向又は横方向に変位し、支軸63は、破線の矢印τ5で示す如く、横長スロット部分65bに沿ってその末端部又は終端部に相対移動する。また、横架材Bが本体11及び外れ止め4に対して相対的に下方に変位する結果、可動フック60は、その自重により、矢印ν2、ν3で示す如く、横架材Bの側に傾倒し、支軸64は、破線の矢印τ6で示す如く、横長スロット部分66bに沿ってその末端部又は終端部に相対移動する。
【0079】
かくして可動フック60が面内変位した状態が図15に示されている。横架材収容域εの開口部λは、斜め下方に比較的大きく開放し、開口部λを開口寸法D4に拡開する。前述のとおり、開口寸法D4は、横架材Bの直径D1よりも大きい寸法に設定される。かくして、横架材収容域εは、斜め下方に比較的大きく開放するので、つかみ金具10は、外れ止め4のロック解除操作を行うことなく、横架材Bから離脱することができる。このように、つかみ金具10を横架材Bに対して相対移動させ、これにより生じる可動フック60の面内変位により、横架材収容域εの開口部λを斜め下方に比較的大きく開放せしめる本実施形態のつかみ金具10によれば、前述の各実施形態と同じく、つかみ金具10の手動ロック解除の操作を格別に要しない仮設床材1の撤去作業を実施することが可能となる。また、本実施形態のつかみ金具10は、重力式(セルフロック式)の可動爪5からなる外れ止め4を備えるので、前述の実施形態と同様、所望により、手動ロック解除操作によって外れ止め4を解放する従来の撤去作業の作業工程を採用し、或いは、可動フック60の面内変位と外れ止め4の手動ロック解除とを併用して、開口部λを下方に大きく拡開した状態で撤去作業を実施することも可能である。
【0080】
なお、仮設床材1を横架材B間に架設又は懸架する工程では、可動フック60は、つかみ金具10を横架材B上に着座させる際に横架材Bに当接して相対的に上方に面内変位し、開口部λの開口を過渡的に拡開するので、横架材Bを横架材収容域ε内に比較的容易に収容することができる。
【0081】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態では、つかみ金具は、単一の可動フック及び外れ止めを備えた構成のものであるが、複数の可動フックを金具本体に回動可能に支持し、或いは、複数の外れ止めを金具本体に固定し又は一体化しても良い。
【0083】
また、上記実施形態に係る仮設床材は、アルミ押出形材の床材本体に直につかみ金具を取付けた構造のものであるが、従来の床付き布枠の布枠等に本発明のつかみ金具を配設しても良い。
【0084】
更に、上記実施形態の説明は、主として、枠組足場の建枠によって仮設床材を支持した構成に関するものであるが、前述のとおり、本発明の仮設床材は、楔結合式足場の横架材(腕木)によっても支持することができる。所望により、本発明の仮設床材をブラケット足場、移動式足場等の他の形式の足場において使用し、或いは、他の形式の足場において好適に使用し得るように設計変更することも可能である。
【0085】
また、上記つかみ金具の各構成要素の材質及び各部構造については、本発明に適合する限りにおいて、任意の材質、形態、寸法又は設計を適宜採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、建築・土木工事等において使用される枠組足場、楔結合式足場等において、仮設足場の横架材等に係合するつかみ金具によって隣り合う横架材の間に架設又は懸架され、仮設足場の作業通路又は作業床を形成する仮設床材及びそのつかみ金具に適用される。本発明を適用した仮設床材及びそのつかみ金具によれば、仮設床材撤去作業の作業性を改善し、撤去作業時の作業者の作業上の負担又は負荷を軽減することができるので、本発明は、仮設工事の作業性等を向上する上で極めて有利である。
また、本発明に従って好適に実施設計した上記構成のつかみ金具によれば、仮設床材を斜め上方に移動した際に生じる横架材及びつかみ金具の相対運動をカム従動作用又は受圧従動作用により可動フックの回転運動又は面内挙動に転換して、可動フックを受動的に回動又は面内変位せしめ、これにより、横架材をつかみ金具から係合離脱可能に解放することができる。従って、本発明によれば、ロック解除操作等の操作を行うことなく、つかみ金具を横架材から離脱させる作業工程を採用し、これにより、仮設足場の設置又は撤去作業に従事する作業者の作業上の負担又は負荷を大幅に軽減することが可能となるので、その実用的効果は、顕著である。
【符号の説明】
【0087】
1 仮設床材
2 床材本体
3 床面延設部材
4、4’、4” 外れ止め
5 可動爪
5' 固定爪
6 横架材係合面
7 湾曲スロット(長孔)
8 水平スタッド(水平支軸)
10 つかみ金具
11 つかみ金具本体
11a 基部
12 先端部分
13 可動フック
14 水平支軸
14c 中心軸線
15 ガイドピン
16 湾曲スロット(長孔)
17 湾曲着座面
18 横架材係合面
19 重錘部
40 先端下面
41 従動カム面
41a 近接部位
60 可動フック
61 内側縁部
62 横架材係合面
63、64 支軸
65、66 L形スロット(長孔)
68 先端下面
A 建枠
B 横架材
Ba 頂部
Bc 中心軸線
D1 横架材の直径
D2、D3、D4 開口寸法
Δh1 高低差
α 重なり寸法
ε 横架材収容域(凹所)
λ 開口部
η 係合離脱方向
ω 開口平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16