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  • 特許-感染防止システム及び感染防止方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】感染防止システム及び感染防止方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20241114BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20241114BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20241114BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20241114BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20241114BHJP
   A61L 101/34 20060101ALN20241114BHJP
   A61L 101/06 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
A61L2/18
A61L2/10
A61L9/01 F
A61L9/14
A61L9/20
A61L101:34
A61L101:06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020218468
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103687
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】516383914
【氏名又は名称】ウイルコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 剛治
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-046143(JP,A)
【文献】特開2011-050535(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0282135(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/18
A61L 2/10
A61L 9/01
A61L 9/14
A61L 9/20
A61L 101/34
A61L 101/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体温を検出する検出部と、前記検出部により検出された体温を表示する表示部と、手指を消毒する第1消毒液を吐出する吐出部とを有し、室外からの動線上に配される検温消毒装置と、
前記動線における前記検温消毒装置よりも下流に配される、マスク及び使用済マスクを収容するマスクケースと、
前記動線における前記マスク及びマスクケースよりも下流に配され、前記手指を消毒する第2消毒液を吐出する吐出装置と、
を備える感染防止システム。
【請求項2】
前記検温消毒装置は、前記手指を検出するセンサを有し、前記センサにより前記手指が検出された場合に前記第1消毒液を吐出する請求項1に記載の感染防止システム。
【請求項3】
紫外線を射出し、前記紫外線が照射された照射領域を消毒する紫外線照射装置を、さらに備える請求項1または2に記載の感染防止システム。
【請求項4】
二酸化塩素を霧状に継続的に噴出する噴霧装置を、さらに備える請求項1ないし3のいずれか1項に記載の感染防止システム。
【請求項5】
前記吐出装置の近傍に配され、水が含侵された不織布、織物、紙のいずれかで形成され、除菌対象物を拭うことにより前記除菌対象物を除菌する除菌具を、さらに備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の感染防止システム。
【請求項6】
体温を検出する検出部と、前記検出部により検出された体温を表示する表示部と、手指を消毒する第1消毒液を吐出する吐出部とを有し、室外からの動線上に配される検温消毒装置により、体温の測定と消毒とを行う検温消毒工程と、
前記動線における前記検温消毒装置よりも下流で、使用済マスクをマスクケースに収容し、新たなマスクを装着するマスク交換工程と、
前記マスク交換工程の後に、吐出装置により吐出された第2消毒液により前記手指を消毒する吐出消毒工程と
を有する感染防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染防止システム及び感染防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な感染症に対して、従来より多くの消毒剤や、感染症防御システムなどが提案されている。例えば、ヒノキチオールの含有率が0.02~0.2質量%であるコロナウイルス用消毒剤が特許文献1に開示されている。また、ストローが差し込まれた液体タンクから、コンプレッサを用いて、ストローの排出口が差込まれた閉空間に抗菌剤を霧状に生成して、これを吐出する感染症防御システムが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-134864号公報
【文献】特開2017-74211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような各種消毒剤や感染症防御システムを用いても、菌やウイルスによる感染症に感染してしまうことは多い。特に、多くの人が出入りする店舗やレンタルルームなどの屋内空間では、人同士の接触の機会を抑制しない限り、感染リスクを低下させることができない。
【0005】
そこで、本発明は、人同士の接触の機会が多い屋内空間でも、感染リスクを低下させる感染防止システム及び感染防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の感染防止システムは、検温消毒装置と、マスク及びマスクケースと、吐出装置とを備える。検温消毒装置は、体温を検出する検出部と、検出部により検出された体温を表示する表示部と、手指を消毒する第1消毒液を吐出する吐出部とを有し、室外からの動線上に配される。マスク及びマスクケースとは、動線における検温消毒装置よりも下流に配され、マスクケースは使用済マスクを収容する。吐出装置は、動線におけるマスク及びマスクケースよりも下流に配され、手指を消毒する第2消毒液を吐出する。
【0007】
検温消毒装置は、手指を検出するセンサを有し、センサにより手指が検出された場合に第1消毒液を吐出する。
【0008】
紫外線を射出し、紫外線が照射された照射領域を消毒する紫外線照射装置を、さらに備えることが好ましい。
【0009】
二酸化塩素を霧状に継続的に噴出する噴霧装置を、さらに備えることが好ましい。
【0010】
吐出装置の近傍に配され、水が含侵された不織布、織物、紙のいずれかで形成され、除菌対象物を拭うことにより除菌対象物を除菌する除菌具を、さらに備えることが好ましい。
【0011】
本発明の感染防止方法は、検温消毒工程と、マスク交換工程と、吐出消毒工程とを有する。検温消毒工程は、体温を検出する検出部と、検出部により検出された体温を表示する表示部と、手指を消毒する第1消毒液を吐出する吐出部とを有し、室外からの動線上に配される検温消毒装置により、体温の測定と消毒とを行う。マスク交換工程は、動線における検温消毒装置よりも下流で、使用済マスクをマスクケースに収容し、新たなマスクを装着する。吐出消毒工程は、マスク交換工程の後に、吐出装置により吐出された第2消毒液により手指を消毒する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、人同士の接触の機会が多い屋内空間でも、感染リスクを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】感染防止システムの概略図である。
図2】感染防止システムの概略図である。
図3】噴霧器及び紫外線照射装置による処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
室外(屋外を含む)から室内(室外が屋外である場合の屋内を含む)、及び室内における、菌やウイルスの流れは概ね以下である。例えば、菌やウイルスを保有する人は、その体内のみならず、着用物(衣類、靴、手袋、マスクなど)、及び持参物(鞄、スマートフォンやタブレット端末、携帯ゲーム機、クレジット(クレジットカード)決済端末などの各種モバイル機器、ペンなど)に菌やウイルスなどが付着した状態でそれらを室内にもちこむ。菌やウイルスを保有する人は、それら菌やウイルス等の感染症の症状が出ていない場合もあるし、検査等において感染していることが確定されていない場合もあるが、ここでは便宜的に「陽性者」と称する。陽性者は、会話の際の発声や、咳などで菌やウイルス等を含む唾液を飛沫(エアロゾル)として空中へ放出する。飛沫中の菌やウイルスは、直接、あるいは周囲の物等を介して、室内にいる他の人の体内に入り込む(飛沫感染)。陽性者はまた、その者の手や着用物、持参品を介して、室内に菌やウイルス等をもち込んでおり、このようにして持ち込んだ菌やウイルスも他の人の感染原因となる(接触感染)。なお、飛沫感染や接触感染などの各種感染形態は、菌やウイルス等によって異なることは周知の通りであり、以下の感染形態は、種々の菌やウイルス等を総合して説明するものである。
【0015】
例えば陽性者が、例えば飲食店等の店舗内に入り、会話等による飛沫を生じさせ、上記のように直接または間接的に他の人に感染させる。また、陽性者は、その手でテーブル等を触ることにより、テーブルに菌やウイルス等を付着させ、そのテーブルに触った他の人の手肌を介して、その人に感染させる(接触感染)。また、陽性者がトイレや洗面所を利用した場合には、陽性者の排泄物や接触対象物を介して、その後利用した他の人の手肌に付着し感染する(接触感染)。
【0016】
また、陽性者がそれまで装着していたマスクや持参物等をテーブルに置いた場合やドアノブに触れた場合には、それらテーブルやドアノブを介して他の人の手肌に付着し感染が起こりうる。陽性者の着用物に付着していた菌やウイルスは椅子などを介して、また、持参物に付着していた菌やウイルスは椅子やテーブルなどを介して、それら椅子やテーブルに触れた他の人の手肌に付着し、感染し得る。
【0017】
図1に示す感染防止システム11は、本発明の一実施態様であり、感染防止システム11は、検温消毒装置12と、マスク13及びマスクケース14を有するマスクキット17と、吐出装置18とを備える。検温消毒装置12と、マスクキット17と、吐出装置18とは、室外ODから室内IDへの人の動線ML上に、この順で配される。室内IDは、建物内において仕切られた仕切空間であってもよいし、屋外から仕切られた建物の内部でもよい。室外ODは、建物の中で仕切られて形成されている例えば店舗などを部屋とみなしたときの廊下などの共用スペースであってもよいし、屋外であってもよい。
【0018】
検温消毒装置12は、人の体温を検出し、また、手指を消毒する。検温消毒装置12は、図1に示す例では室外ODに配しているが、室内IDに配してもよい。検温消毒装置12は、検出部21と、表示部22と、吐出部23とを備える。検温消毒装置12は、図1に示す本例では、床面あるいは地面に起立したいわゆるスタンド型としている。サイズは、幅115mm、奥行き132mmであり、高さは690mm~1220mmの範囲で調節可能である。ただし、検温消毒装置12は、例えば建物の壁面に設けるいわゆる壁掛け型や、台(図示無し)に載置するいわゆる置型などでもよい。検温消毒装置12は電池で作動するが、充電式のバッテリで作動するようにしてもよいし、外部電源から供給される電力を用いてもよい。
【0019】
検出部21は、人の手のひらや手首の温度を検知するセンサ(図示無し)と、この検出した温度に基づいて体温を求める検出回路(図示無し)と、求めた体温を表示部22に表示させる制御部(図示無し)とを有する。これにより、検出部21は、センサに手のひらや手首がかざされると、検知した温度に基づいて体温を求めることにより、人の体温を検出して表示部22に表示させる。表示部22は、検出部21により検出された体温を表示する。このように、検温消毒装置12は、非接触で人の体温を検出するので、検温に際してのウイルスや菌による感染が防がれる。なお、体温は、数値が表示されてもよいし、温度に応じた色でライト(LEDライトなど)が点灯することで表示されてもよい。例えば37.2℃以下が緑色、37.3℃以上38.0℃以下の範囲内が黄色、38.1℃以上が赤というライトが点灯表示されるよう構成されていてもよい。この検温消毒装置12により、感染が疑われる体温が検出された人に対しては、入室を制限するなどの対処を講じることができるから、室内IDでの感染を事前に抑えることができる。
【0020】
検温消毒装置12は、人の手指を消毒する第1消毒液を貯留する貯留部(図示無し)を内部に備え、吐出部23は、貯留部(図示無し)の第1消毒液を吐出する。検温消毒装置12は、人の手指を検出するセンサを吐出部23の近傍に備えることが好ましく、センサにより手指が検出されると、例えば所定量(本例では概ね0.5ml)の第1消毒液を吐出する。第1消毒液は、例えばアルコール水溶液である。これにより、手指の消毒は、検温消毒装置12に非接触で行うことができるので、この検温消毒装置12を介した感染が防がれる。また、入室しようとする人が陽性者であっても陽性者ではなくても、検温消毒装置12により手指が消毒されるから、手指に付着している菌やウイルスが室内IDに入り込むことが抑制される。このようにして、室外ODからの動線ML上に配される検温消毒装置12により、体温の測定と消毒とが行われる(検温消毒工程)。
【0021】
動線MLにおける検温消毒装置12よりも下流に配されるマスクキット17は、検温消毒装置12により検温と消毒をした人が、それまで装着していた使用済みのマスク(以下、使用済マスクと称する)を新たなマスク13に交換するためのものである。マスク13とマスクケース14とは、それぞれ、例えば透明なプラスチック製の袋に収容されており、袋に入った状態のマスク13が複数容器に入れられ、袋に入った状態のマスクケース14が複数容器に入れられている。ただし、マスク13とマスクケース14とは、台26等の上に平積みされていてもよい。マスクケース14は、使用済マスクを収容するためのものである。これにより、検温消毒装置12により手指を消毒した人は、マスクの交換をすることができ(マスク交換工程)、菌やウイルスに汚染された可能性がある使用済マスクが室内IDにおいて露呈したままになることがない。また、使用済マスクはマスクケース14内に収容されるから、使用済マスクに付着した菌やウイルスが室内IDの各所(テーブルや椅子など)に付着することが抑えられ、室内IDにおいて使用済マスクを介した感染が抑えられる。なお、マスクキット17は室内IDに配することが好ましいが、室外ODに配してもよい。
【0022】
マスク13は特に限定されず、本例では2枚の不織布が重なった2層構造のマスク本体(図示無し)を有し、薄い。マスク本体の側部には、弾性変形するガーゼまたは不織布で形成され、伸縮する耳掛け部が設けられている。
【0023】
マスクケース14は、市販されている一般的なサイズのマスク(例えば不織布製のマスク)を収容することができ、プラスチックシートで形成されたケースであるが、本例に限定されない。
【0024】
動線MLにおけるマスクキット17よりも下流に配される吐出装置18は、手指を消毒する第2消毒液を吐出する。第2消毒液はこの例ではアルコール水溶液であり、このように第2消毒液は第1消毒液と同じでもよいし、異なってもよい。吐出装置18は、手指を検出する例えば赤外線センサ27が設けられている。この赤外線センサ27に手指がかざされると、吐出装置18は、上部の吐出部28から所定量の第2消毒液を例えばナノミスト状(微細な液滴状)に吐出する。これにより、非接触で手指が消毒され(吐出消毒工程)、この消毒により、手指に付着していた菌やウイルスが室内IDの物に付着する可能性を低下させる。なお、吐出装置18は室内IDに配してあるが、室内IDに代えて、または加えて、室外ODに配してもよい。吐出装置18は充電式のバッテリで作動するが、電池で作動するようにしてもよいし、外部電源から供給される電力を用いてもよい。
【0025】
感染防止システム11は、室外ODからの動線ML上に配された検温消毒装置12による検温及び消毒の後に、マスクの交換が促進し、その後、吐出装置18によって、手指の消毒がなされるから人同士の接触の機会が多い屋内空間でも、感染リスクが低下する。
【0026】
吐出装置18は、この例では、マスクキット17の近傍に配している他に、図2に示すように、動線ML、すなわち、人の移動方向におけるさらに下流にも配してある。図2に示すテーブル31は台26よりも動線MLにおける下流に設置されてあり、例えば椅子(図示無し)に人が着席して飲食などをする。テーブル31の上に吐出装置18が配されているから、人は、着席時や、その後、離席して戻った際にも手指の消毒ができる(吐出消毒工程)。このようにして、手指を介した感染がより抑えられる。マスク13は入室した人に既に渡っているから、マスク13を装着しながらの会食等も可能となっている。
【0027】
テーブル31上の吐出装置18の近傍には、水が含侵された不織布、織物、紙のいずれかで形成され、除菌対象物を拭うことにより除菌対象物を除菌する除菌具33A,33Bが配され、これらの除菌具33A~33Bも感染防止システム11を構成している。水に加えてアルコールが含侵されていてもよい。本例の除菌具33Aは、エタノールと精製水とグリセリンとがポリエステルとレーヨンとで形成された不織布に含侵されたアリコールティッシュが袋に入ったものであり、手指、前述のスマートフォンやタブレット端末などの各種持参物、カラオケルームなどにおいては設置品であるマイク、飲食店においてはメニュー、店舗のスタッフなどを呼び出す呼び出しボタン、テーブル31を除菌することができる。また、店舗において料金を支払うカウンタ台(図示無し)上に除菌具33Aを置いておくことで、サインをする場合のペン等の除菌をすることができる。これにより、こうした物を介しての感染(接触感染)が防止される。本例の除菌具33Bは、水とエタノールとプロマノールとが不織布に含侵されたものであり、スマートフォン、タブレット端末、マイクなどを除菌することができる。除菌具33Cは、抗菌ナノ粒子(オウシロポリマー)を保持した不織布で形成されたおしぼりである。これにより、除菌対象物のウイルスなどに吸着し、不活化する。除菌具33B,33Cは除菌具33Aと同様に使用することができ、また同様の効果がある。
【0028】
室内IDには、二酸化塩素(安定化二酸化塩素)を霧状に継続的に噴出する噴霧装置35が配されており、この噴霧装置35も感染防止システム11を構成する。噴霧装置35は、600ppmの液剤濃度を30ppmに希釈(20倍)した液が内部の容器に貯留されており、この液を継続的に噴出部35aにより噴出する。なお300ppmで除菌してもよい。噴出部35aは、図2に示すように、噴霧装置35の側面に設けていてもよいし、例えば上面に設けてもよい。霧状であるから、空間の演出がされつつ、室内IDに行き渡るので空間に存在する菌やウイルスに対する不活性化や除菌効果があり、空気感染や飛沫感染を抑えるという空間除菌ができる。また、この例の噴霧装置35は、湿度を検出して表示するよう構成されており、これにより、室内IDの湿度管理が容易になっている。表示される湿度に応じて、室内IDの換気をしたり、加湿器(図示せず)を運転して加湿するなどの対策を講じることができる。本例における加湿器での加湿は、例えば40%RH(相対湿度)以上の湿度となるように行うことが好ましく、飛沫感染に有効とされる例えば40%RH~60%RHの湿度に確保することが望ましい。また、本例ではさらに、二酸化炭素の濃度を検出して表示する二酸化炭素濃度検出器(図示無し)も設けてあり、これによる検出値に応じて、換気の要否を判断することができる。このように、二酸化炭素の濃度の検出は、換気を促す動機付けになり、換気を積極的に行うことが感染の予防につながる。本例の二酸化炭素濃度検出器は、温度(気温)と湿度も表示されるように構成されている。
【0029】
また、感染防止システム11は、さらに、洗浄剤(図示無し)や、図3に示すように、二酸化塩素を噴霧する噴霧器41、紫外線照射装置43を備えてもよい。洗浄剤としては、例えば天然由来であり、脂肪酸ナトリウムが配合されている洗浄剤が挙げられ、水で希釈して用いるものでもよい。この洗浄剤により、例えば室内の種々の箇所(トイレ,洗面台,ソファなどの椅子,テーブル31,キッチン,カウンタなど)を拭くなどすることにより、感染(接触感染)を防止する。また、この洗浄剤は、水洗いも不要となっており、時間短縮や清掃作業の短縮ができる。洗浄剤,噴霧器41,紫外線照射装置43、及び前述の噴霧装置35は、室内IDの衛生管理対策として、接触感染を防止する。
【0030】
本例においては、脂肪酸ナトリウムが配合されている上記洗浄剤は、奈良県立医科大学で下記のエビデンスが出されている市販品(脂肪酸ナトリウム0.3%含有)と同じ成分及び配合であることの品質証明を、該市販品の販売会社から得ている。エビデンスには、以下の通り記載されている。なお、以下のエビデンス記載において、「***」は該市販品の名称が記載されていたものを本明細書において置き換えて記載したものである。
【0031】
「3.試験微生物:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)
新型コロナウイルスをVeroE6/TMPRSS2細胞に感染させ、細胞変性効果が確認されたものを回収し、-80℃のフリーザーに凍結保存した。凍結融解を2回繰り返したものを遠心分離し、上清を限外濾過膜で濃縮・精製した。これを試験ウイルス液とし、試験まで-80℃のフリーザーに凍結保存した。
なお、SARS-CoV-2は国立感染症研究所より、VeroE6/TMPRSS2細胞は国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所JCRB細胞バンクよりそれぞれ入手した。
4.試験内容
・ウイルス液20μlに試験品180μlを混合し、それぞれ1分および10分間静置した。
・反応後、EDTA含有SCDLP培地1,800μlを混ぜて反応を停止した。
・回収液を用いてウイルス感染価(PFU/mL)をプラーク法にて測定した。
・反応温度(室温)は20~25℃であった。
・各2回実施した。

不活化効果は以下のように算出した。
不活化効果(Mv)=log(Ct/C)-log(Nt/N
=logCt/Nt
Ct:コントロールt時間後の感染価
:コントロール0時間後の感染価
Nt:試験品t時間後の感染価
:試験品0時間後の感染価
減少率は対数減少値より次の通り算出した。
減少率=(1-1/10対数減少値)×100%
なお全試験は、本学内のバイオセーフティレベル3(BSL3)の実験施設において、適切な病原体封じ込め措置のもとに行なった。
5.結果
結果を表1~2と図1に示した。数値は試験2回の平均値である。
新型コロナウイルスに対して、試験品は8.50×10PFU/mlから1分で<1.00×10PFU/ml(減少率>99.998%)と検出限界まで感染価が減少した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
6.まとめ
本試験で使用した***(脂肪酸ナトリウム0.3%含有)は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して不活化効果を有することが判明した。本試験品を使用することにより、物質の表面についた新型コロナウイルスによる接触感染防止に有効である可能性が考えられた。なお、浮遊するウイルス、人体への影響については検証を行っていない。」
【0034】
噴霧器41は、二酸化塩素(安定化二酸化塩素)を霧状に噴霧する。室内IDの手などが触れる部分、例えば壁や室内IDの設置物(テーブル31など)に噴霧することで、アルコールに代えて消毒を行う。床などに噴霧してもよい。また、清掃作業ができない場合などに、アルコールに代えて消毒を行うことができる。洗浄剤による洗浄を行う場合には、洗浄の後に噴霧することで感染防止の効果が向上する。
【0035】
紫外線照射装置43は、紫外線(185nm~254nm)を射出し、紫外線が照射された照射領域を殺菌し消毒する。これにより、感染(接触感染)がより確実に防止される。例えば店舗などで、開店前や閉店後に室内IDの壁や床、種々の設置物に、紫外線を照射するとよい。紫外線照射装置43は、紫外線と、生成するオゾンとの両作用により、殺菌する。この例の紫外線照射装置43はUVCを射出し、長さ170mm×径35mmの小型サイズであり、所定時間で自動消灯する。紫外線照射装置43による照射は、アルコールや二酸化塩素の吹き付けや、清掃がしにくい箇所に対しても処理ができるので有効である。
【0036】
以上の構成によると、また、脂肪酸ナトリウムを含む前述の洗浄剤による洗浄と、噴霧装置35及び噴霧器41の二酸化塩素(安定化二酸化塩素であり、本例では高藤式安定化二酸化塩素)による除菌と、第1消毒液,第2消毒液及び紫外線照射装置43による殺菌とにより、より確実な消毒がなされ、感染リスクがより低下する。また、人と物との両方に対して、殺菌、除菌などによる消毒措置がなされるから、感染リスクが確実に低下する。
【符号の説明】
【0037】
11 感染防止システム
12 検温消毒装置
13 マスク
14 マスクケース
18 吐出装置
21 検出部
22 表示部
23 吐出部
27 赤外線センサ
28 吐出部
33A~33C 除菌具
35 噴霧装置
43 紫外線照射装置
ID 室内
ML 動線
OD 室外
図1
図2
図3