(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】塗料粘度測定システム、及び塗料粘度測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 11/06 20060101AFI20241114BHJP
G01N 5/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01N11/06
G01N5/00 D
(21)【出願番号】P 2021019815
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】島 純
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瑞樹
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-033639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/06
G01N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のうちいずれかの塗料が貯留される塗料容器が載置されて前記塗料容器内の塗料の重量を測定可能な重量測定器と、
前記重量測定器が測定した重量を取得する取得処理を実行可能な取得処理部と、
前記取得処理部が前記重量測定器から取得した重量が一定状態から減少状態に転じた時刻から増加状態に転じた時刻までの間のいずれかの時刻である第1時刻と、前記第1時刻以降であって前記重量測定器から取得した重量が前記減少状態から前記増加状態に転じた後で更に前記増加状態から一定状態に転じた時刻である第2時刻とを取得し、前記第1時刻から前記第2時刻までの時間を算出する算出処理を実行可能な算出処理部と、
前記算出処理の算出結果をユーザに対して出力する出力処理を実行可能な出力処理部と、
を備える塗料粘度測定システム。
【請求項2】
前記算出処理は、前記重量測定器が測定する重量が初期値から増加して一定状態になった後に所定期間経過した場合、又はユーザの操作を受け付ける入力部に所定の操作が行われた場合に、前記重量測定器が測定した重量とその重量の測定時刻とのデータの記録を開始して、記録された前記データから、前記第1時刻を特定する処理を更に含む、
請求項1に記載の塗料粘度測定システム。
【請求項3】
前記算出処理は、前記データの記録開始後であって、前記重量測定器が測定した重量変化が一定になってから所定期間経過した場合に、前記データの記録を終了して、記録された前記データから、前記第2時刻を特定する処理を更に含む、
請求項2に記載の塗料粘度測定システム。
【請求項4】
複数種類のうちいずれかの塗料が貯留される塗料容器が載置されて前記塗料容器内の塗料の重量を測定可能な重量測定器と、
前記重量測定器に電気的に接続されて前記重量測定器で測定した重量を計算処理する処理装置と、を備える塗料粘度測定システムにおいて、前記処理装置で実行されるプログラムであって、
前記処理装置が有するCPUに、
前記重量測定器が測定した重量を取得する取得処理と、
前記重量測定器から取得した重量が一定状態から減少状態に転じた時刻から増加状態に転じた時刻までの間のいずれかの時刻である第1時刻と、前記第1時刻以降であって前記重量測定器から取得した重量が前記減少状態から前記増加状態に転じた後で更に前記増加状態から一定状態に転じた時刻である第2時刻とを取得し、前記第1時刻から前記第2時刻までの時間を算出し出力する算出処理と、を実行させることができる、
塗料粘度測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、塗料粘度測定システム、及び塗料粘度測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装現場における塗料粘度の測定方法は、作業者の目視による測定方法や装置を用いた自動測定による測定方法が知られている。作業者の目視による測定では、塗料を貯留した塗料容器の中に円筒状の測定用カップを浸した後に測定用カップを引き上げて、塗料が測定用カップの底部に設けられた流出口から滴下する時間を測定することにより行われている。この場合、作業者によって測定用カップ内が空になったと判断されるまでの測定時間によって塗料粘度が求められる。そのため、作業者によって測定終了時点の判断が異なる場合があり、測定結果にバラつきが生じる可能性がある。
【0003】
一方、装置を用いた自動測定では、駆動機構によって保持された測定用カップの内部に収容された塗料が滴下することに伴う測定用カップの上昇を利用して、測定用カップが予め設定された位置に戻るまでに要する時間を測定する方法が知られている。この場合、測定用カップ内の塗料が滴下しきらずに、測定用カップの内壁面に塗料が残存することがある。したがって、測定終了時点に相当する測定用カップの設定位置は、測定用カップ内の残塗料の重量を考慮して設定する必要がある。そして、塗料の比重が異なる複数種類の塗料粘度を測定しようとすると、その比重の違いから測定用カップ内の残塗料の重量が変化するため、測定対象の塗料に応じて測定用カップの設定位置を都度補正が必要となり、作業負担が課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料粘度の測定の効率化を図りつつ、測定精度を高めることができる塗料粘度測定システム、及び塗料粘度測定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の塗料粘度測定システムは、塗料が貯留される塗料容器が載置されて前記塗料容器内の塗料の重量を測定可能な重量測定器と、前記重量測定器が測定した重量を取得する取得処理を実行可能な取得処理部と、前記取得処理部が前記重量測定器から取得した重量が一定状態から減少状態に転じた時刻から増加状態に転じた時刻までの間のいずれかの時刻である第1時刻と、前記第1時刻以降であって前記重量測定器から取得した重量が前記減少状態から前記増加状態に転じた後で更に前記増加状態から一定状態に転じた時刻である第2時刻とを取得し、前記第1時刻から前記第2時刻までの時間を算出する算出処理を実行可能な算出処理部と、前記算出処理の算出結果をユーザに対して出力する出力処理を実行可能な出力処理部と、を備える。
【0007】
実施形態の塗料粘度測定プログラムは、塗料が貯留される塗料容器が載置されて前記塗料容器内の塗料の重量を測定可能な重量測定器と、前記重量測定器に電気的に接続されて前記重量測定器で測定した重量を計算処理する処理装置と、を備える塗料粘度測定システムにおいて、前記処理装置で実行されるプログラムであって、前記処理装置が有するCPUに、前記重量測定器が測定した重量を取得する取得処理と、前記取得処理部が前記重量測定器から取得した重量が一定状態から減少状態に転じた時刻から増加状態に転じた時刻までの間のいずれかの時刻である第1時刻と、前記第1時刻以降であって前記重量測定器から取得した重量が前記減少状態から前記増加状態に転じた後で更に前記増加状態から一定状態に転じた時刻である第2時刻とを取得し、前記第1時刻から前記第2時刻までの時間を算出し出力する算出処理と、を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態による塗料粘度測定システムの一例を概略的に示す図
【
図2】第1実施形態による塗料粘度測定システムについて、処理装置の電気的構成の一例を示すブロック図
【
図3】第1実施形態による塗料粘度測定システムについて、重量測定器が測定する重量変化の一例を示す図
【
図4】第1実施形態による塗料粘度測定システムについて、塗料粘度の測定の一例を示すフローチャート
【
図5】第2実施形態による塗料粘度測定システムの一例を概略的に示す図
【
図6】第2実施形態による塗料粘度測定システムについて、重量測定器及び処理装置の電気的構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1に示す塗料粘度測定システム1は、例えば液体塗料の塗料粘度を測定できるシステムである。塗料粘度測定システム1は、塗料容器10、測定用カップ20、重量測定器30、及び処理装置40を備えている。塗料容器10は、上部が開口した容器状に構成され、内部に塗料を貯留することができる。
【0010】
測定用カップ20は、例えば円筒状の容器で構成されており、塗料容器10内に貯留した塗料の一部を汲み上げることができるように構成されている。測定用カップ20は、例えば20グラム~30グラム程度の塗料を汲み上げることが可能である。測定用カップ20は、流出口21を有している。流出口21は、測定用カップ20の底部に設けられており、測定用カップ20内の塗料を滴下するためのものである。
【0011】
重量測定器30は、塗料が貯留される塗料容器10が載置されて塗料容器10内の塗料の重量を測定可能である。重量測定器30は、載置台31と、重量センサ32と、を有している。載置台31は、
図1に示すように、塗料容器10を載せるためのものであって、上面が平面状に構成されている。重量センサ32は、載置台31に載せられた塗料を含む塗料容器10全体の重量を検知可能である。なお、本実施形態では、
図1における重量測定器30に塗料容器10が設置された状態での重力方向を上下方向とする。
【0012】
処理装置40は、重量測定器30に電気的に接続されて重量測定器30で測定した重量を計算処理する機能を有する。また、処理装置40は、重量測定器30から取得した各種情報をユーザである作業者に提示する機能を有する。本実施形態では、
図1に示すように、処理装置40と重量測定器30とは、互いに独立した機器つまり別体に構成されている。なお、処理装置40と重量測定器30とは、別体な構成に限らず、処理装置40と重量測定器30とが互いに一体として構成されていても良い。また、処理装置40は、塗料粘度測定システム1専用のものであっても良いし、他の機器と共有して用いられるものであっても良い。
【0013】
処理装置40は、入力部41、表示部42、計時部43、スピーカ44、及び制御部45を有している。入力部41は、例えばタッチセンサや押しボタン等で構成されており、作業者の操作を受け付ける。入力部41には、制御部45による重量及び時刻の取得の実行要求を作業者から受け付けるためのスタートボタン等がある。
【0014】
表示部42は、例えば液晶ディスプレイで構成することができる。表示部42は、作業者の入力部41に対する操作により入力される情報や測定結果等の各種情報を提示する機能を有する。この場合、入力部41と表示部42とは、タッチパネルディスプレイで構成することができる。
【0015】
計時部43は、任意の時点の時刻を取得する機能、又は基準となるある時点からの経過時間を測定する機能の一方又は両方を有している。本明細書において、時刻とは、例えば何時何分何秒というような絶対的な時刻、又はある時点を基準とした相対的な時刻を意味する。また、時間とは、ある一点の時刻からある一点の時刻までの時の長さを意味する。スピーカ44は、処理装置40の周囲に対して音声を発する機能を有している。この場合、表示部42及びスピーカ44は、作業者に対して表示又は音声等で各種の情報を提示する機能を有する。
【0016】
制御部45は、
図2に示すように、例えばCPU451や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリ等の記憶領域452を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。重量センサ32、入力部41、表示部42、計時部43、及びスピーカ44は、それぞれ制御部45に電気的に接続されている。
【0017】
記憶領域452は、重量測定器30を塗料粘度測定システム1に適用させるためのプログラム、例えば塗料粘度測定プログラムを記憶している。そして、制御部45は、CPU451において上記プログラムを実行することにより、取得処理部51、算出処理部52、及び出力処理部53をソフトウェアにより仮想的に実現する。すなわち、処理装置40が有する取得処理部51、算出処理部52、及び出力処理部53は、CPU451が上述した記憶領域452に格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、取得処理部51、算出処理部52、及び出力処理部53は、例えば制御部45と一体の集積回路としてハードウェアにより実現されても良いし、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより実現しても良い。
【0018】
取得処理部51は、取得処理を実行することができる。取得処理は、重量測定器30が測定した重量を取得する処理を含む。この場合、取得処理は、重量センサ32が検知した重量を取得する処理を含む。
【0019】
次に、
図3も参照して、塗料粘度の測定方法について説明する。塗料粘度測定システム1における塗料粘度の測定では、まず塗料を貯留した塗料容器10内に測定用カップ20を投入する。次に、測定用カップ20内に塗料が満たされた状態となった後に、測定用カップ20を塗料容器10から引き上げる。そして、測定用カップ20を塗料容器10の上方に引き上げた状態を維持して、測定用カップ20の流出口21から塗料容器10内へ塗料の滴下が完了するまでの時間を測定することによって塗料粘度が測定される。
【0020】
この場合、塗料粘度は、塗料が満たされた状態の測定用カップ20を塗料容器10内から引き上げ後に、測定用カップ20からの塗料の滴下が完了するまでの時間によって表される。なお、塗料粘度の測定の開始時点は、測定用カップ20が塗料容器10内から引き上げられた時点に限らず、塗料容器10内から測定カップ20が引き上げられて、測定用カップ20内の塗料が流出口21から滴下して塗料容器10内に到達した際に重量測定器30の測定する重量が増加した時点としても良い。
【0021】
なお、塗料容器10に対する測定用カップ20の投入及び引き上げ等の移動操作は、作業者が手動で操作することにより行われる。測定用カップ20の移動操作は、作業者が手動で行う構成に限らず、測定用カップ20を上下方向に直線的に往復移動させるための例えば直動アクチュエータ等の他の機器に接続して自動で行う構成としても良い。
【0022】
図3は、塗料粘度の測定を経時的に示したものであり、横軸に時間、縦軸に重量を示している。期間Taにおいて、塗料を貯留した塗料容器10が重量測定器30の上に載せられた状態つまり重量が初期値W0を示す。その後、期間Tbでは、塗料容器10内に測定用カップ20が投入されると、測定用カップ20の重量に対応して重量測定器30の測定する重量が増加状態となる。そして、期間Tcにおいて、測定用カップ20内に塗料が満たされるまでは重量変化が生じない一定状態が継続する。
【0023】
次に、期間Tdにおいて、塗料で満たされた測定用カップ20が塗料容器10から引き上げられると、測定用カップ20の重量及び測定用カップ20内に移動した塗料の重量に対応して重量測定器30が測定する重量が減少状態に移行する。その後、期間Teでは、測定用カップ20の流出口21からの塗料の滴下により徐々に塗料容器10内に塗料が戻ることで重量変化は増加状態となり、最終的に流出口21からの塗料の滴下が完了すると重量変化がない一定状態へと遷移する。なお、通常、塗料粘度の測定は、10秒~60秒以内で行われる。
【0024】
このとき、
図3に示すように、測定用カップ20の内壁面には少量の塗料が付着した状態となり、測定用カップ20内には塗料の残存量Wrが存在する場合がある。すなわち、測定用カップ20から塗料容器10への塗料の滴下は、測定用カップ20内に塗料が残存した状態で完了する場合がある。更に、測定用カップ20内の塗料の残存量Wrは、使用する塗料の比重によって変化する。そのため、正確な塗料粘度を効率的に把握するためには、測定用カップ20内の塗料の残存を考慮して、測定用カップ20から塗料容器10への塗料の滴下が完了したことを判断する必要がある。
【0025】
そこで、本実施形態では、塗料粘度測定システム1は、算出処理部52を備えている。算出処理部52は、算出処理を実行することができる。算出処理は、重量測定器30が測定する重量が初期値W0から増加して一定状態になった後に所定期間経過した場合、又は入力部41に所定の操作が行われた場合に、重量測定器30が測定した重量とその重量の測定時刻とのデータの記録を開始する処理を含む。また、算出処理は、データの記録開始後であって、重量測定器30が測定した重量変化が一定になってから所定期間経過した場合に、データの記録を終了する処理を含む。
【0026】
更に、算出処理は、記録したデータから第1時刻T1と第2時刻T2とを特定する処理を含む。そして、算出処理は、第1時刻T1と第2時刻T2とを取得し、第1時刻T1から第2時刻T2までの時間Tvを算出し出力する処理を含む。第1時刻T1は、取得処理部51が重量測定器30から取得した重量が一定状態から減少状態に転じた時刻から増加状態に転じた時刻までの間のいずれかの時刻である。本実施形態の場合、第1時刻T1は、
図3に示すように、取得処理部51が重量測定器30から取得した重量が増加状態又は一定状態から減少状態に転じた時刻である。つまり、第1時刻T1は、塗料容器10内に投入された測定用カップ20が塗料容器10から引き上げられた時点を示す時刻である。
【0027】
一方、第2時刻T2は、
図3に示すように、第1時刻T1以降であって重量測定器30から取得した重量が減少状態から増加状態に転じた後で更に増加状態から一定状態に転じた時刻である。つまり、第2時刻T2は、測定用カップ20から塗料容器10への塗料の滴下が完了したとみなされる重量を重量測定器30が最初に取得した時点を示す時刻である。
【0028】
このように、算出処理によって算出される第1時刻T1は、塗料粘度の測定開始時点を表し、第2時刻T2は、塗料粘度の測定終了時点を表す。よって、第1時刻T1から第2時刻T2までの時間Tvは、塗料粘度に相当する時間となる。すなわち、算出処理によって、塗料粘度を自動で算出することができる。更に、塗料粘度の測定の終了時点の判断基準を明確にすることができる。よって、塗料粘度の測定対象となる塗料が変更されて、測定用カップ20内に残存する塗料の量が変化した場合であっても、塗料粘度を正確かつ効率的に把握することができる。
【0029】
出力処理部53は、出力処理を実行することができる。出力処理は、算出処理の算出結果を作業者に対して出力する処理を含む。この場合、算出処理によって算出された第1時刻T1から第2時刻T2までの時間Tvつまり塗料粘度の出力は、処理装置40が有する表示部42への表示やスピーカ44からの報知等によって行うことができる。また、塗料粘度の出力は、時間Tvを報知しても良いし、他の単位系に変換された数値等の形式で報知されても良い。
【0030】
以下では、
図4も参照して、塗料粘度の測定における制御内容の一例について説明する。なお、以下の説明において、取得処理部51、算出処理部52、及び出力処理部53で行われる処理は、全て制御部45が主体となって行うものとして説明する。
【0031】
制御部45は、
図4に示すように、作業者が塗料を貯留した塗料容器10を載置台31の上に載せることで、取得処理部51の処理により重量測定器30が測定した重量が初期値W0を示すと(スタート)、ステップS11において、表示部42やスピーカ44を用いて、例えば「カップを投入してください。」と表示や報知することによって、塗料容器10内へ測定用カップ20を投入するよう作業者に促す。
【0032】
次に、制御部45は、算出処理部52の処理によって、作業者が測定用カップ20を塗料容器10内に投入して重量測定器30が測定した重量が初期値W0から増加して一定状態になって所定期間例えば3秒経過した場合、又は作業者が入力部41のスタートボタンを操作した場合のいずれか一方又は両方の条件が満たされたか否かを判断する。これら所定の条件が満たされた場合(ステップS12でYES)、制御部45はステップS13に処理を移行させる。
【0033】
次に、制御部45は、ステップS13において、算出処理部52の処理により重量測定器30が測定した重量とその重量の測定時刻とのデータの記録を開始する。次に、制御部45は、ステップS14において、表示部42やスピーカ44を用いて、例えば「カップを引き上げてください。」と表示や報知することによって、塗料容器10内から測定用カップ20を引き上げるよう作業者に促す。
【0034】
そして、塗料容器10内から測定用カップ20が引き上げられることで、重量測定器30から取得した重量が測定用カップ20及び測定用カップ20に移動した塗料分減少する。その後、測定用カップ20の流出口21からの塗料の滴下により徐々に塗料容器10内に塗料が戻ることで重量が増加していく。
【0035】
次に、制御部45は、ステップS15において、算出処理部52の処理により所定期間重量変化があるか否かを判断する。所定期間例えば5秒間重量変化がない場合(ステップS15でYES)、制御部45はステップS16に処理を移行させる。そして、制御部45は、ステップS16において、算出処理部52の処理によりデータの記録を終了して、制御部45は処理をステップS17に移行させる。
【0036】
制御部45は、ステップS17において、算出処理部52の処理により記録されたデータに基づいて第1時刻T1及び第2時刻T2を特定し取得する。その後、制御部45は、ステップS18において、第1時刻T1つまり塗料粘度の測定を開始した時点の時刻から第2時刻T2つまり塗料粘度の測定を終了した時点の時刻までの時間Tvつまり塗料粘度を算出する。そして、制御部45は、ステップS19において、出力処理部53の処理により表示部42やスピーカ44を用いて、作業者に対して塗料粘度を出力して、塗料粘度の測定が完了する(エンド)。
【0037】
以上説明した実施形態によれば、塗料粘度測定システム1は、重量測定器30、取得処理部51、算出処理部52、及び出力処理部53を備えている。重量測定器30は、塗料が貯留される塗料容器10が載置されて塗料容器10内の塗料の重量を測定可能である。取得処理部51は、取得処理を実行可能である。取得処理は、重量測定器30が測定した重量を取得する処理を含む。算出処理部52は、算出処理を実行可能である。算出処理は、第1時刻T1と、第2時刻T2とを取得し、第1時刻T1から第2時刻T2までの時間Tvを算出することができる。
【0038】
ここで、第1時刻T1は、取得処理部51が重量測定器30から取得した重量が一定状態から減少状態に転じた時刻から増加状態に転じた時刻までの間のいずれかの時刻である。そして、第1時刻T1は、塗料粘度の測定を開始した時点を示す時刻である。一方、第2時刻T2は、第1時刻T1以降であって重量測定器30から取得した重量が減少状態から増加状態に転じた後で更に増加状態から一定状態に転じた時刻である。つまり、第2時刻T2は、塗料粘度の測定を終了した時点を示す時刻である。すなわち、第1時刻T1から第2時刻T2までの時間Tvは塗料粘度に相当する時間である。
【0039】
出力処理部53は、出力処理を実行可能である。出力処理は、算出処理の算出結果を作業者に対して出力する処理を含む。
【0040】
これによれば、塗料粘度の測定を自動で行うことができる。したがって、作業者が塗料粘度の測定の終了を判断する必要がなくなるため、塗料粘度の判断にバラつきが生じることを防ぐことができる。これにより、塗料粘度の測定の効率化を図りつつ、測定精度を高めることができる。
【0041】
また、塗料粘度の算出基準の明確化を図ることができる。これにより、塗料粘度の誤った判断に起因した塗料品質に関する問題の発生を抑制することができる。よって、例えば塗料原料と希釈剤とを混合した塗料の品質に問題が生じた場合に、問題原因の特定やそれに伴う必要な処置を合理的に行うことができる。
【0042】
また、算出処理は、重量測定器30が測定する重量が初期値W0から増加して一定状態になった後に所定期間経過した場合、又は作業者の操作を受け付ける入力部41に所定の操作が行われた場合に、重量測定器30が測定した重量とその重量の測定時刻とのデータの記録を開始して、記録されたデータから、第1時刻T1を特定する処理を更に含む。これによれば、算出処理によって、一旦記録されたデータに基づいて、より正確に塗料粘度の測定開始時点を特定することができる。これにより、塗料粘度の測定精度を高めることができる。
【0043】
更に、算出処理は、データの記録開始後であって、重量測定器30が測定した重量変化が一定になってから所定期間経過した場合に、データの記録を終了して、記録されたデータから、第2時刻T2を特定する処理を含む。これによれば、算出処理によって、一旦記録されたデータに基づいて、より正確に塗料粘度の測定終了時点を特定することができる。これにより、塗料粘度の測定精度を更に高めることができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図5及び
図6を参照して説明する。本実施形態の構成は、塗料粘度測定システム1を構成する構成要素の内容が上記第1実施形態と異なる。具体的には、この第2実施形態では、処理装置40は、例えば作業者が所有している情報端末60、いわゆるスマートフォンやタブレットPC等の多機能携帯端末に搭載されている。この場合、処理装置40は、通信部46を有している。通信部46は、有線又は無線による通信ネットワークを介して重量測定器30と直接的に接続する機能を有する。
【0045】
そして、本実施形態では、重量測定器30は、通信部33と、制御部34と、を有している。通信部33は、有線又は無線による通信ネットワークを介して重量測定器30と直接的に接続する機能を有する。また、制御部34は、
図6に示すように、例えばCPU341や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリ等の記憶領域342を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。重量センサ32及び通信部33は、それぞれ制御部34に電気的に接続されている。
【0046】
次に、本実施形態において塗料粘度を測定する際に、重量測定器30及び処理装置40で実行される制御内容の一例について説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態と同様に、取得処理部51、算出処理部52、及び出力処理部53で行われる処理は、全て制御部45が主体となって行うものとして説明する。
【0047】
まず、作業者は、情報端末60にインストールされたアプリケーションソフトウェアを起動させて、その後、重量測定器30と処理装置40との通信を確立する。そして、作業者が塗料を貯留した塗料容器10を載置台31の上に載せることで、取得処理部51の処理により重量測定器30が測定した重量が初期値W0を示すと(
図4のスタート)、制御部45は、
図4に示す制御フローを実行する。
【0048】
以上説明した第2実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。更に、作業者の手元にある情報端末60によって塗料粘度の測定及び測定結果の確認をすることができるため、利便性を向上することができる。
【0049】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…塗料粘度測定システム、10…塗料容器、30…重量測定器、40…処理装置、41…入力部、CPU…451、51…取得処理部、52…算出処理部、53…出力処理部