(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】マイクロポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 43/06 20060101AFI20241114BHJP
F04B 43/02 20060101ALI20241114BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F04B43/06 B
F04B43/02 L
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2021073017
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 俊完
(72)【発明者】
【氏名】松原 竜也
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-291187(JP,A)
【文献】特開2012-057872(JP,A)
【文献】特開2010-123851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/04
F04B 43/02
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸引する入口ポートと液体を吐出する出口ポートに繋がる可変容積チャンバと、
前記可変容積チャンバに対向して配置される作動チャンバと、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバとを隔てる弾性膜と、
前記作動チャンバに繋がるポンプ駆動路と、
前記作動チャンバと前記ポンプ駆動路内に注入された作動流体と、
前記ポンプ駆動路内に配置されたポンプ用電極ユニットと、を有し、
前記ポンプ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記ポンプ駆動路内を作動流体が移動して、前記作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記作動チャンバ内の圧力変化に応じて前記弾性膜が弾性変形して、前記可変容積チャンバの容積を変化させることにより、前記入口ポートから前記出口ポートに向かって液体を移動させ
、
前記ポンプ用電極ユニットは、前記ポンプ駆動路に沿って配置された2つの負電極と、前記負電極の間に配置された正電極とを有する、
ことを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項2】
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバは、前記入口ポートから前記出口ポートに向かう通路内に複数個配置され、
隣接する前記作動チャンバ同士の圧力を時間差を置いて変化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項3】
前記入口ポートから前記出口ポートに向かって、前記作動チャンバに番号を付したとき、n番目の作動チャンバと(n+2)番目の作動チャンバとは、同じポンプ駆動路に接続されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のマイクロポンプ。
【請求項4】
複数の前記作動チャンバは、それぞれ異なるポンプ駆動路を介してリザーバに接続されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
液体を吸引する入口ポートと液体を吐出する出口ポートに繋がる可変容積チャンバと、
前記可変容積チャンバに対向して配置される作動チャンバと、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバとを隔てる弾性膜と、
前記作動チャンバに繋がるポンプ駆動路と、
前記作動チャンバと前記ポンプ駆動路内に注入された作動流体と、
前記ポンプ駆動路内に配置されたポンプ用電極ユニットと、を有し、
前記ポンプ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記ポンプ駆動路内を作動流体が移動して、前記作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記作動チャンバ内の圧力変化に応じて前記弾性膜が弾性変形して、前記可変容積チャンバの容積を変化させることにより、前記入口ポートから前記出口ポートに向かって液体を移動させ、
前記入口ポートから前記出口ポートに向かう通路に沿って、前記可変容積チャンバを挟んで両側に、第1弁室及び第2弁室が配置されており、
前記第1弁室及び前記第2弁室は、弾性膜を挟んで第1バルブ作動チャンバ及び第2バルブ作動チャンバに対向しており、
前記第1バルブ作動チャンバ及び前記第2バルブ作動チャンバは、作動流体及びバルブ用電極ユニットを収容したバルブ駆動路に接続されており、
前記バルブ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記バルブ駆動路内を作動流体が移動して、前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力変化に応じて、前記第1弁室または前記第2弁室に面する前記弾性膜が弾性変形して、前記通路を閉止
し、
前記バルブ用電極ユニットは、前記バルブ駆動路に沿って配置された2つの負電極と、前記負電極の間に配置された正電極とを有する、
ことを特徴と
するマイクロポンプ。
【請求項6】
前記バルブ駆動路の一端に前記第1バルブ作動チャンバが接続され、前記バルブ駆動路の他端に前記第2バルブ作動チャンバが接続される、
ことを特徴とする請求項
5に記載のマイクロポンプ。
【請求項7】
前記第1バルブ作動チャンバ及び前記第2バルブ作動チャンバは、それぞれ異なるバルブ駆動路を介してリザーバに接続される、
ことを特徴とする請求項
5に記載のマイクロポンプ。
【請求項8】
前記第1バルブ作動チャンバ、前記可変容積チャンバ及び前記第2バルブ作動チャンバは、異なる通路に沿ってそれぞれ一対配設され、
前記第1バルブ作動チャンバ同士、前記第2バルブ作動チャンバ同士が、異なる前記バルブ駆動路を介して接続され、前記可変容積チャンバが前記ポンプ駆動路を介して接続されている、
ことを特徴とする請求項
5に記載のマイクロポンプ。
【請求項9】
液体を吸引する入口ポートと液体を吐出する出口ポートに繋がる可変容積チャンバと、
前記可変容積チャンバに対向して配置される作動チャンバと、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバとを隔てる弾性膜と、
前記作動チャンバに繋がるポンプ駆動路と、
前記作動チャンバと前記ポンプ駆動路内に注入された作動流体と、
前記ポンプ駆動路内に配置されたポンプ用電極ユニットと、を有し、
前記ポンプ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記ポンプ駆動路内を作動流体が移動して、前記作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記作動チャンバ内の圧力変化に応じて前記弾性膜が弾性変形して、前記可変容積チャンバの容積を変化させることにより、前記入口ポートから前記出口ポートに向かって液体を移動させ、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバは、前記入口ポートから前記出口ポートに向かう通路内に複数個配置され、
隣接する前記作動チャンバ同士の圧力を時間差を置いて変化させ、
前記入口ポートから前記出口ポートに向かって、前記作動チャンバに番号を付したとき、n番目の作動チャンバと(n+2)番目の作動チャンバとは、同じポンプ駆動路に接続されている、
ことを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項10】
液体を吸引する入口ポートと液体を吐出する出口ポートに繋がる可変容積チャンバと、
前記可変容積チャンバに対向して配置される作動チャンバと、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバとを隔てる弾性膜と、
前記作動チャンバに繋がるポンプ駆動路と、
前記作動チャンバと前記ポンプ駆動路内に注入された作動流体と、
前記ポンプ駆動路内に配置されたポンプ用電極ユニットと、を有し、
前記ポンプ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記ポンプ駆動路内を作動流体が移動して、前記作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記作動チャンバ内の圧力変化に応じて前記弾性膜が弾性変形して、前記可変容積チャンバの容積を変化させることにより、前記入口ポートから前記出口ポートに向かって液体を移動させ、
前記入口ポートから前記出口ポートに向かう通路に沿って、前記可変容積チャンバを挟んで両側に、第1弁室及び第2弁室が配置されており、
前記第1弁室及び前記第2弁室は、弾性膜を挟んで第1バルブ作動チャンバ及び第2バルブ作動チャンバに対向しており、
前記第1バルブ作動チャンバ及び前記第2バルブ作動チャンバは、作動流体及びバルブ用電極ユニットを収容したバルブ駆動路に接続されており、
前記バルブ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記バルブ駆動路内を作動流体が移動して、前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力変化に応じて、前記第1弁室または前記第2弁室に面する前記弾性膜が弾性変形して、前記通路を閉止し、
前記バルブ駆動路の一端に前記第1バルブ作動チャンバが接続され、前記バルブ駆動路の他端に前記第2バルブ作動チャンバが接続される、
ことを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項11】
液体を吸引する入口ポートと液体を吐出する出口ポートに繋がる可変容積チャンバと、
前記可変容積チャンバに対向して配置される作動チャンバと、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバとを隔てる弾性膜と、
前記作動チャンバに繋がるポンプ駆動路と、
前記作動チャンバと前記ポンプ駆動路内に注入された作動流体と、
前記ポンプ駆動路内に配置されたポンプ用電極ユニットと、を有し、
前記ポンプ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記ポンプ駆動路内を作動流体が移動して、前記作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記作動チャンバ内の圧力変化に応じて前記弾性膜が弾性変形して、前記可変容積チャンバの容積を変化させることにより、前記入口ポートから前記出口ポートに向かって液体を移動させ、
前記入口ポートから前記出口ポートに向かう通路に沿って、前記可変容積チャンバを挟んで両側に、第1弁室及び第2弁室が配置されており、
前記第1弁室及び前記第2弁室は、弾性膜を挟んで第1バルブ作動チャンバ及び第2バルブ作動チャンバに対向しており、
前記第1バルブ作動チャンバ及び前記第2バルブ作動チャンバは、作動流体及びバルブ用電極ユニットを収容したバルブ駆動路に接続されており、
前記バルブ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記バルブ駆動路内を作動流体が移動して、前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力変化に応じて、前記第1弁室または前記第2弁室に面する前記弾性膜が弾性変形して、前記通路を閉止し、
前記第1バルブ作動チャンバ、前記可変容積チャンバ及び前記第2バルブ作動チャンバは、異なる通路に沿ってそれぞれ一対配設され、
前記第1バルブ作動チャンバ同士、前記第2バルブ作動チャンバ同士が、異なる前記バルブ駆動路を介して接続され、前記可変容積チャンバが前記ポンプ駆動路を介して接続されている、
ことを特徴とするマイクロポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能性流体を利用したマイクロポンプの研究が進められている。機能性流体とは、外的刺激により特有の機能性を発現する流体の総称である。機能性流体には、磁性流体、磁気粘性流体、電気粘性流体、電界共役流体などがあり、これらを用いたアクチュエータは工業製品などに既に使用されている。
【0003】
機能性流体の一つである電界共役流体(Electro-conjugate fluid:以下、ECFという)は、直流電圧の印加によって活発な流動を発生する機能性流体である。ECFを用いたポンプは、機械的構成を必要とせずに微小な電極への電圧印加だけで流動を発生できることから、小型の流体配給システムに適した液圧源として期待されている。
【0004】
特に、ECFを用いたポンプは、電極対の寸法が小さくなるほどパワー密度が大きくなるため、高出力パワー密度を有するマイクロポンプに適しているといえる。特許文献1には、パーソナルコンピュータのCPU等を冷却するために、ECFを用いたポンプを備えた熱拡散装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のECFを用いたポンプにおいては、ECFを送出するのには適しているが、ECF以外の流体を送出できないという問題がある。これに対し、ある種の流体がECFと混ざり合わない性質を利用して、流体に接したECF中にスリット電極と三角柱電極とを配置して直流電圧を交互に印加することにより、ECFと流体との界面を往復変位させる研究も行われている。ECFと流体との界面を往復変位させることができれば、バルブと組み合わせることで、流体を間欠的に送出するECFポンプを実現することができる。
【0007】
しかしながら、このようなECFポンプの特性によれば、ECFと混ざる特性を持つ流体を送出することはできない。また、例えば薬剤などを送出するポンプにおいては、衛生上の観点より、送出すべき薬剤を、ECFを含む他の液体から可能な限り隔離したいという要請もある。
【0008】
本発明は、流体の性質に限らず、ECFを用いて流体を送出することができるマイクロポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、
(1)代表的な本発明のマイクロポンプの一つは、
液体を吸引する入口ポートと液体を吐出する出口ポートに繋がる可変容積チャンバと、
前記可変容積チャンバに対向して配置される作動チャンバと、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバとを隔てる弾性膜と、
前記作動チャンバに繋がるポンプ駆動路と、
前記作動チャンバと前記ポンプ駆動路内に注入された作動流体と、
前記ポンプ駆動路内に配置されたポンプ用電極ユニットと、を有し、
前記ポンプ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記ポンプ駆動路内を作動流体が移動して、前記作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記作動チャンバ内の圧力変化に応じて前記弾性膜が弾性変形して、前記可変容積チャンバの容積を変化させることにより、前記入口ポートから前記出口ポートに向かって液体を移動させ、
前記ポンプ用電極ユニットは、前記ポンプ駆動路に沿って配置された2つの負電極と、前記負電極の間に配置された正電極とを有する、ことにより達成される。
(2)代表的な本発明のマイクロポンプの一つは、
液体を吸引する入口ポートと液体を吐出する出口ポートに繋がる可変容積チャンバと、
前記可変容積チャンバに対向して配置される作動チャンバと、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバとを隔てる弾性膜と、
前記作動チャンバに繋がるポンプ駆動路と、
前記作動チャンバと前記ポンプ駆動路内に注入された作動流体と、
前記ポンプ駆動路内に配置されたポンプ用電極ユニットと、を有し、
前記ポンプ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記ポンプ駆動路内を作動流体が移動して、前記作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記作動チャンバ内の圧力変化に応じて前記弾性膜が弾性変形して、前記可変容積チャンバの容積を変化させることにより、前記入口ポートから前記出口ポートに向かって液体を移動させ、
前記入口ポートから前記出口ポートに向かう通路に沿って、前記可変容積チャンバを挟んで両側に、第1弁室及び第2弁室が配置されており、
前記第1弁室及び前記第2弁室は、弾性膜を挟んで第1バルブ作動チャンバ及び第2バルブ作動チャンバに対向しており、
前記第1バルブ作動チャンバ及び前記第2バルブ作動チャンバは、作動流体及びバルブ用電極ユニットを収容したバルブ駆動路に接続されており、
前記バルブ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記バルブ駆動路内を作動流体が移動して、前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力変化に応じて、前記第1弁室または前記第2弁室に面する前記弾性膜が弾性変形して、前記通路を閉止し、
前記バルブ用電極ユニットは、前記バルブ駆動路に沿って配置された2つの負電極と、前記負電極の間に配置された正電極とを有する、ことにより達成される。
(3)代表的な本発明のマイクロポンプの一つは、
液体を吸引する入口ポートと液体を吐出する出口ポートに繋がる可変容積チャンバと、
前記可変容積チャンバに対向して配置される作動チャンバと、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバとを隔てる弾性膜と、
前記作動チャンバに繋がるポンプ駆動路と、
前記作動チャンバと前記ポンプ駆動路内に注入された作動流体と、
前記ポンプ駆動路内に配置されたポンプ用電極ユニットと、を有し、
前記ポンプ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記ポンプ駆動路内を作動流体が移動して、前記作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記作動チャンバ内の圧力変化に応じて前記弾性膜が弾性変形して、前記可変容積チャンバの容積を変化させることにより、前記入口ポートから前記出口ポートに向かって液体を移動させ、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバは、前記入口ポートから前記出口ポートに向かう通路内に複数個配置され、
隣接する前記作動チャンバ同士の圧力を時間差を置いて変化させ、
前記入口ポートから前記出口ポートに向かって、前記作動チャンバに番号を付したとき、n番目の作動チャンバと(n+2)番目の作動チャンバとは、同じポンプ駆動路に接続されている、ことにより達成される。
(4)代表的な本発明のマイクロポンプの一つは、
液体を吸引する入口ポートと液体を吐出する出口ポートに繋がる可変容積チャンバと、
前記可変容積チャンバに対向して配置される作動チャンバと、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバとを隔てる弾性膜と、
前記作動チャンバに繋がるポンプ駆動路と、
前記作動チャンバと前記ポンプ駆動路内に注入された作動流体と、
前記ポンプ駆動路内に配置されたポンプ用電極ユニットと、を有し、
前記ポンプ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記ポンプ駆動路内を作動流体が移動して、前記作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記作動チャンバ内の圧力変化に応じて前記弾性膜が弾性変形して、前記可変容積チャンバの容積を変化させることにより、前記入口ポートから前記出口ポートに向かって液体を移動させ、
前記入口ポートから前記出口ポートに向かう通路に沿って、前記可変容積チャンバを挟んで両側に、第1弁室及び第2弁室が配置されており、
前記第1弁室及び前記第2弁室は、弾性膜を挟んで第1バルブ作動チャンバ及び第2バルブ作動チャンバに対向しており、
前記第1バルブ作動チャンバ及び前記第2バルブ作動チャンバは、作動流体及びバルブ用電極ユニットを収容したバルブ駆動路に接続されており、
前記バルブ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記バルブ駆動路内を作動流体が移動して、前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力変化に応じて、前記第1弁室または前記第2弁室に面する前記弾性膜が弾性変形して、前記通路を閉止し、
前記バルブ駆動路の一端に前記第1バルブ作動チャンバが接続され、前記バルブ駆動路の他端に前記第2バルブ作動チャンバが接続される、ことにおり達成される。
(5)代表的な本発明のマイクロポンプの一つは、
液体を吸引する入口ポートと液体を吐出する出口ポートに繋がる可変容積チャンバと、
前記可変容積チャンバに対向して配置される作動チャンバと、
前記可変容積チャンバと前記作動チャンバとを隔てる弾性膜と、
前記作動チャンバに繋がるポンプ駆動路と、
前記作動チャンバと前記ポンプ駆動路内に注入された作動流体と、
前記ポンプ駆動路内に配置されたポンプ用電極ユニットと、を有し、
前記ポンプ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記ポンプ駆動路内を作動流体が移動して、前記作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記作動チャンバ内の圧力変化に応じて前記弾性膜が弾性変形して、前記可変容積チャンバの容積を変化させることにより、前記入口ポートから前記出口ポートに向かって液体を移動させ、
前記入口ポートから前記出口ポートに向かう通路に沿って、前記可変容積チャンバを挟んで両側に、第1弁室及び第2弁室が配置されており、
前記第1弁室及び前記第2弁室は、弾性膜を挟んで第1バルブ作動チャンバ及び第2バルブ作動チャンバに対向しており、
前記第1バルブ作動チャンバ及び前記第2バルブ作動チャンバは、作動流体及びバルブ用電極ユニットを収容したバルブ駆動路に接続されており、
前記バルブ用電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記バルブ駆動路内を作動流体が移動して、前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力が変化し、
前記第1バルブ作動チャンバまたは前記第2バルブ作動チャンバ内の圧力変化に応じて、前記第1弁室または前記第2弁室に面する前記弾性膜が弾性変形して、前記通路を閉止し、
前記第1バルブ作動チャンバ、前記可変容積チャンバ及び前記第2バルブ作動チャンバは、異なる通路に沿ってそれぞれ一対配設され、
前記第1バルブ作動チャンバ同士、前記第2バルブ作動チャンバ同士が、異なる前記バルブ駆動路を介して接続され、前記可変容積チャンバが前記ポンプ駆動路を介して接続されている、ことにより達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、流体の性質に限らず、ECFを用いて流体を送出することができるマイクロポンプを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかるマイクロポンプの斜視図であり、内部を透視した状態で示している。
【
図2】
図2は、マイクロポンプを分解して示す斜視図である。
【
図3】
図3は、内部構造を透視した状態で示す上板の斜視図である。
【
図4】
図4は、駆動路内に配置された両側電極ユニットを模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のマイクロポンプの概略構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のマイクロポンプの断面を示す模式図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態のマイクロポンプの動作を示す模式図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態のマイクロポンプの別な動作例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態にかかるマイクロポンプの概略構成を示す模式図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態にかかるマイクロポンプの断面を示す模式図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態のマイクロポンプの動作を示す模式図である。
【
図12】
図12は、駆動路内に配置された片側電極ユニットを模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態のマイクロポンプの別な動作例を示す模式図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態の変形例1にかかるマイクロポンプの概略構成を示す模式図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態にかかるマイクロポンプの斜視図である。
【
図16】
図16は、マイクロポンプを分解して示す斜視図である。
【
図17】
図17は、内部構造を透視した状態で示す上板の斜視図である。
【
図18】
図18は、第3実施形態のマイクロポンプの概略構成を示す模式図である。
【
図19】
図19は、第3実施形態のマイクロポンプの断面を示す模式図である。
【
図20】
図20は、第3実施形態のマイクロポンプの動作を示す模式図である。
【
図21】
図21は、第3実施形態の変形例1にかかるマイクロポンプの概略構成を示す模式図である。
【
図22】
図22は、第3実施形態の変形例2にかかるマイクロポンプの概略構成を示す模式図である。
【
図23】
図23は、第3実施形態の変形例3にかかるマイクロポンプの概略構成を示す模式図である。
【
図24】
図24は、第3実施形態の変形例4にかかるマイクロポンプの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかるマイクロポンプ10の斜視図であり、内部を透視した状態で示している。
図2は、マイクロポンプ10を分解して示す斜視図である。
図3は、内部構造を透視した状態で示す上板の斜視図である。
【0014】
マイクロポンプ10は、図に示すように薄形の矩形板形状であって、上板11と、弾性膜12と、中間板13と、下板14と、基板15とから構成される。マイクロポンプ10は、半導体製造工程を使用して形成されると、微細な構成を有するにも関わらず大量生産が可能であるが、その製造方法には制限されない。
【0015】
図2において、上板11には、長手方向両端近傍に形成された入口孔11p及び出口孔11qと、ECF(作動流体)の注入用の4つの注入孔11a、11b、11b、11dとが、それぞれ上下方向に貫通するように形成されている。また、
図3に示すように、上板11の下面には、入口孔11pと出口孔11qの中心間を結ぶライン上に、上面に貫通しない4つの円形開口11e、11f、11g、11hが形成され、さらに該円形開口を通過して入口孔11pと出口孔11qとをつなぐ直線溝11kが形成されている。
【0016】
可撓性を有する弾性膜12には、注入孔11a、11b、11c、11dに対応して、膜孔12a、12b、12c、12dのみが上下方向に貫通するように形成されている。したがって、入口孔11p及び出口孔11qの下側は、弾性膜12により遮蔽され、
図1に示すように、それぞれ入口ポートIPと出口ポートOPが形成される。
【0017】
また、円形開口11e、11f、11g、11hの下側も、弾性膜12によって遮蔽され、それぞれ可変容積チャンバVC1、VC2,VC3,VC4が形成されるとともに、円形開口11e、11f、11g、11h以外の直線溝11kの下側も、弾性膜12により遮蔽され、入口ポートIPから可変容積チャンバVC1、VC2,VC3,VC4を順次通過して出口ポートOPに至る通路PPが形成される。弾性膜12の素材としては、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)が好適に用いられる。
【0018】
中間板13には、膜孔12a、12b、12c、12dに対応して、中間孔13a、13b、13c、13dが上下方向に貫通するように形成されている。また、中間板13には、円形開口11e、11f、11g、11hにそれぞれ対応して、中間円形孔13e、13f、13g、13hが形成されている。
【0019】
下板14には、中間孔13a、13b、13c、13dに対応して、下孔14a、14b、14c、14dが上下方向に貫通するように形成され、また中間円形孔13e、13f、13g、13hに対応して、下円形孔14e、14f、14g、14hが形成されている。
【0020】
下円形孔14e、14f、14g、14h及び中間円形孔13e、13f、13g、13hは、弾性膜12を介して円形開口11e、11f、11g、11hに対向する。したがって、下円形孔14e、14f、14g、14h及び中間円形孔13e、13f、13g、13hにより、可変容積チャンバVC1、VC2,VC3,VC4に対向して、第1作動チャンバOC1,第2作動チャンバOC2,第3作動チャンバOC3,第4作動チャンバOC4が形成される。
【0021】
さらに、下板14には、下孔14aと下円形孔14eとをつなぐスリット溝14iと、下孔14cと下円形孔14fとをつなぐスリット溝14jと、下孔14bと下円形孔14gとをつなぐスリット溝14kと、下孔14dと下円形孔14hとをつなぐスリット溝14oとが形成されている。
【0022】
加えて、下板14には、下円形孔14eと下円形孔14gとをつなぎ、ジグザグ状に延在する屈曲スリット溝14pと、下円形孔14fと下円形孔14hとをつなぎ、ジグザグ状に延在する屈曲スリット溝14qとが形成されている。
【0023】
スリット溝14i、14j,14k,14oは、上側が中間板13により遮蔽され、下側が基板15により遮蔽されて、それぞれECFの注入路PS1,PS2,PS3,PS4が形成される。また、屈曲スリット溝14p、14qも、上側が中間板13により遮蔽され、下側が基板15により遮蔽されて第1駆動路DP1と第2駆動路DP2がそれぞれ形成される。第1実施形態においては、第1駆動路DP1により第1作動チャンバOC1と第3作動チャンバOC3とを連結し、第2駆動路DP2により第2作動チャンバOC2と第4作動チャンバOC4とを連結する。換言すれば、入口ポートIPから出口ポートOPに向かって、作動チャンバに番号を付したとき、n番目の作動チャンバと(n+2)番目の作動チャンバとは、同じ駆動路に接続されている。
【0024】
基板15は、平板状である。基板15上には、屈曲スリット溝14p、14qに対応して、直列に配置された複数の両側電極ユニット(ポンプ用電極ユニットともいう)16と、給電用の配線(不図示)が形成されている。基板15に、下板14と中間板13とを接合することで、両側電極ユニット16は、駆動路(ポンプ駆動路ともいう)DP1,DP2内に配置されることとなる。
【0025】
図4は、第1駆動路DP1内に配置された両側電極ユニット16を模式的に示す図である。両側電極ユニット16は、スリット電極(正電極ともいう)16aと、スリット電極16aを挟んで配置された一対の三角柱電極(負電極ともいう)16b、16cとを有する。他の両側電極ユニット16も同様の構成を有する。第1駆動路DP1の内壁を構成する基板15、下板14、および中間板13(
図4にて不図示)は、それぞれ絶縁体から形成されている。
【0026】
スリット電極16aの四角柱は、駆動路DP1(またはDP2)の軸線を挟んで両側に、隙間を開けて配置されている。一方、三角柱電極16b、16cは、駆動路DP1(またはDP2)に沿ってスリット電極16aを挟んで両側に配置され、尖った先端をスリット電極16aの隙間に向けている。
【0027】
直流電源から、スリット電極16aと、三角柱電極16b、16cに対し、数十V~数十kVの高電圧である直流電圧を印加可能である。スリット電極16aは正極側に接続され、三角柱電極16b、16cは負極側に接続されるが、スイッチング装置を介して、三角柱電極16b、16cの一方が負極に対して開成するときは、他方が負極に対して閉成するものとする。第2駆動路DP2内に配置された両側電極ユニット16も、同様な構成を有する。
【0028】
図2において、基板15、下板14、中間板13、弾性膜12、および上板11を積層して接合することにより、マイクロポンプ10が形成される。このとき、注入孔11a、11b、11c、11d、膜孔12a、12b、12c、12d、中間孔13a、13b、13c、13d、および下孔14a、14b、14c、14dが整列することにより、ECFの注入ポートPT1,PT2,PT3,PT4が形成される。
【0029】
図1を参照して、注入ポートPT1からECFを注入すると、注入されたECFは、注入路PS1を介して第1作動チャンバOC1を通過し、さらに第1駆動路DP1を介して第3作動チャンバOC3に至る。余剰のECFは、第3作動チャンバOC3から注入路PS3を通過して注入ポートPT3より外部に溢れ出る。注入が完了した後に、注入ポートPT1と注入ポートPT3を、クランプなどを用いて閉じる。ただし、注入ポートを閉じる手法は以上に限られない。
【0030】
同様に、注入ポートPT2からECFを注入すると、注入されたECFは、注入路PS2を介して第2作動チャンバOC2を通過し、さらに第2駆動路DP2を介して第4作動チャンバOC4に至る。余剰のECFは、第4作動チャンバOC4から注入路PS4を通過して注入ポートPT4より外部に溢れ出る。注入が完了した後に、注入ポートPT2と注入ポートPT4を、クランプなどを用いて閉じる。ただし、注入ポートを閉じる手法は以上に限られない。以上により、弾性膜12の下方の空間は、ECFで満たされることとなる。ECFとしては、例えば米国特許第6495071号に記載された流体が用いられるが、これに限られない。
【0031】
(マイクロポンプの動作)
図5は、第1実施形態のマイクロポンプ10の概略構成を示す模式図である。
図6は、第1実施形態のマイクロポンプ10の断面を示す模式図である。
図7は、第1実施形態のマイクロポンプ10の動作を示す模式図であるが、駆動路DP1,DP2は省略している。また、
図5,6中、単一の両側電極ユニット16が示されているが、実際には複数の両側電極ユニット16が直列に配置されている。なお、両側電極ユニット16の三角柱電極16cは、第1作動チャンバOC1及び第2作動チャンバOC2側に配置され、また三角柱電極16bは、第3作動チャンバOC3及び第4作動チャンバOC4側に配置されているものとする。
【0032】
図6,7において、マイクロポンプ10にて送出したい液体LQが、入口ポートIPと出口ポートOPとの間の通路PP内に注入されている。
【0033】
各両側電極ユニット16への給電は、不図示の制御装置により駆動路DP1,DP2毎に統合的に制御される。制御装置から両側電極ユニット16への給電が行われないときは、マイクロポンプ10は静止状態となり、液体LQの送出は行われない。
【0034】
マイクロポンプ10の動作開始時に、制御装置からの信号により、第1駆動路DP1内の両側電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加すると、電気流体力学現象により第1駆動路DP1内のECFが、
図7(a)に示すように、第3作動チャンバOC3から第1作動チャンバOC1に向かって流動する。
【0035】
これにより、第3作動チャンバOC3内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が下方に弾性変形し、それに応じて第3作動チャンバOC3の上方に位置する可変容積チャンバVC3の容積が大きくなる。それと同時に、第1作動チャンバOC1内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第1作動チャンバOC1の上方に位置する可変容積チャンバVC1の容積が小さくなる。上方に変形する弾性膜12は、上板11に密着してもよいし、密着しなくてもよい(以下、同様とする)。
【0036】
可変容積チャンバVC3の容積が大きくなると同時に、可変容積チャンバVC1の容積が小さくなると、可変容積チャンバVC3、VC1の間の通路PP内に存在する液体LQは、可変容積チャンバVC3側へと移動することとなる。
【0037】
次に、制御装置からの信号により、第2駆動路DP2内の両側電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加することにより、
図7(b)に示すように、電気流体力学現象により第2駆動路DP2内のECFが、第4作動チャンバOC4から第2作動チャンバOC2に向かって流動する。また制御装置からの信号により、第1駆動路DP1内の両側電極ユニット16への給電を中断すると、第1作動チャンバOC1と第3作動チャンバOC3に面する弾性膜12が変形より復帰し、可変容積チャンバVC1、VC3の容積が元の状態に戻る。
【0038】
以上の動作により、第2作動チャンバOC2内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第2作動チャンバOC2の上方に位置する可変容積チャンバVC2の容積が小さくなる。また第4作動チャンバOC4内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が下方に弾性変形し、それに応じて第4作動チャンバOC4の上方に位置する可変容積チャンバVC4の容積が大きくなる。
【0039】
可変容積チャンバVC2の容積が小さくなり、また可変容積チャンバVC4の容積が大きくなると、可変容積チャンバVC4、VC2の間の通路PP内に存在する液体LQは、可変容積チャンバVC4側へと移動することとなる。
【0040】
次に、制御装置からの信号により、第1駆動路DP1内の両側電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16cとに対して直流電圧を印加することにより、電気流体力学現象により、
図7(c)に示すように、第2駆動路DP2内のECFが、第1作動チャンバOC1から第3作動チャンバOC3に向かって流動する。また制御装置からの信号により、第2駆動路DP2内の両側電極ユニット16への給電を中断すると、第2作動チャンバOC2と第4作動チャンバOC4に面する弾性膜12が変形より復帰し、可変容積チャンバVC2、VC4の容積が元の状態に戻る。
【0041】
以上の動作により、第3作動チャンバOC3内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第3作動チャンバOC3の上方に位置する可変容積チャンバVC3の容積が小さくなる。また第1作動チャンバOC1内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が下方に弾性変形し、それに応じて第1作動チャンバOC1の上方に位置する可変容積チャンバVC1の容積が大きくなる。
【0042】
可変容積チャンバVC3の容積が小さくなると、可変容積チャンバVC3と出口ポートOPの間の通路PP内に存在する液体LQは、出口ポートOP側へと移動することとなる。また、可変容積チャンバVC1の容積が大きくなると、入口ポートIPと可変容積チャンバVC1の間の通路PP内に存在する液体LQは、可変容積チャンバVC1側へと移動するため、入口ポートIPから新たな液体LQを吸引することができる。
【0043】
次に、制御装置からの信号により、第2駆動路DP2内の両側電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16cとに対して直流電圧を印加することにより、電気流体力学現象により、
図7(d)に示すように、第2駆動路DP2内のECFが、第2作動チャンバOC2から第4作動チャンバOC4に向かって流動する。また制御装置からの信号により、第1駆動路DP1内の両側電極ユニット16への給電を中断すると、第1作動チャンバOC1と第3作動チャンバOC3に面する弾性膜12が変形より復帰し、可変容積チャンバVC1、VC3の容積が元の状態に戻る。
【0044】
以上の動作により、第4作動チャンバOC4内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第4作動チャンバOC4の上方に位置する可変容積チャンバVC4の容積が小さくなる。また第2作動チャンバOC2内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が下方に弾性変形し、それに応じて第2作動チャンバOC2の上方に位置する可変容積チャンバVC2の容積が大きくなる。
【0045】
可変容積チャンバVC4の容積が小さくなると、可変容積チャンバVC4と出口ポートOPの間の通路PP内に存在する液体LQは、出口ポートOP側へと移動して排出されることとなる。また、可変容積チャンバVC2の容積が大きくなると、入口ポートIPと可変容積チャンバVC2の間の通路PP内に存在する液体LQは、可変容積チャンバVC2側へと移動するため、入口ポートIP流入した液体LQを順繰りに移動させることができる。
【0046】
図7(a)~(d)に示す動作を繰り返し行うことで、マイクロポンプ10は、入口ポートIPから吸引した液体LQを出口ポートOPから排出する動作を連続して行うことができる。制御装置からすべての両側電極ユニット16への給電を中断することで、マイクロポンプ10が停止する。
【0047】
第1実施形態によれば、送出される液体LQはECFに対して弾性膜で隔てられており、両者が接することがないので、液体LQの性質に関わらず、その送出を連続的に行うことができる。また、液体LQは通路PP内を通過するのみであるため、例えば人体に適用する液体LQなどを、衛生上の配慮を行いつつ送出することができる。
【0048】
(第1実施形態の別な動作例)
図8は、第1実施形態のマイクロポンプ10の別の動作例を示す模式図であるが、駆動路は省略している。
【0049】
マイクロポンプ10は、上述した第1実施形態と共通の構造を備えるため、重複する説明を省略する。
【0050】
図6を参照して、制御装置からの信号により、駆動路DP1、DP2内の両側電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加する。これにより、
図8(a)に示すように、電気流体力学現象により駆動路DP1、DP2内のECFが、第1作動チャンバOC1及び第2作動チャンバOC2に向かって流動する。
【0051】
これにより、第3作動チャンバOC3及び第4作動チャンバOC4内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が下方に弾性変形し、それに応じて第3作動チャンバOC3及び第4作動チャンバOC4の上方に位置する可変容積チャンバVC3、VC4の容積が大きくなる。それと同時に、第1作動チャンバOC1及び第2作動チャンバOC2内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第1作動チャンバOC1及び第2作動チャンバOC2の上方に位置する可変容積チャンバVC1、VC2の容積が小さくなる。上方に変形する弾性膜12は、上板11に密着してもよいし、密着しなくてもよい(以下、同様とする)。
【0052】
可変容積チャンバVC3、VC4の容積が大きくなると同時に、可変容積チャンバVC1、VC2の容積が小さくなると、通路PP内に存在する液体LQは、出口ポートOP側へと移動することとなる。
【0053】
次に、制御装置からの信号により、駆動路DP2内の両側電極ユニット16への直流電圧を同様に印加し続けるが、駆動路DP1内の両側電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16cに対して直流電圧を印加するように切り換える。
【0054】
これにより、
図8(b)に示すように、可変容積チャンバVC2、VC4の容積は不変であるが、可変容積チャンバVC1の容積が大きくなると同時に、可変容積チャンバVC3の容積が小さくなる。
【0055】
可変容積チャンバVC1の容積が大きくなることにより、入口ポートIPから液体LQが通路PP内に吸引され、また可変容積チャンバVC3の容積が小さくなることにより、通路PP内の液体LQが出口ポートOP側に向かうこととなる。
【0056】
次に、制御装置からの信号により、駆動路DP1内の両側電極ユニット16への直流電圧を同様に印加し続けるが、駆動路DP2内の両側電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16cに対して直流電圧を印加するように切り換える。
【0057】
これにより、
図8(c)に示すように、可変容積チャンバVC1、VC3の容積は不変であるが、可変容積チャンバVC2の容積が大きくなると同時に、可変容積チャンバVC4の容積が小さくなる。
【0058】
可変容積チャンバVC2の容積が大きくなることにより、入口ポートIPから通路PP内へと吸引された液体LQは可変容積チャンバVC2側へと移動し、また可変容積チャンバVC4の容積が小さくなることにより、通路PP内の液体LQが押し出されて出口ポートOPから排出されることとなる。
【0059】
次に、制御装置からの信号により、駆動路DP2内の両側電極ユニット16への直流電圧を同様に印加し続けるが、駆動路DP1内の両側電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bに対して直流電圧を印加するように切り換える。
【0060】
これにより、
図8(d)に示すように、可変容積チャンバVC2、VC4の容積は不変であるが、可変容積チャンバVC1の容積が小さくなると同時に、可変容積チャンバVC3の容積が大きくなる。
【0061】
可変容積チャンバVC1の容積が小さくなり、可変容積チャンバVC3の容積が大きくなることにより、通路PP内への液体LQは出口ポートOP側へと移動することとなる。以上を繰り返すことで、入口ポートIPから吸引した液体LQを、出口ポートOPから連続的に排出できる。
【0062】
この動作例は、以下のステップからなる。
ステップ1:VC1(容積小)、VC2(容積小)、VC3(容積大)、VC4(容積大)
ステップ2:VC1(容積大)、VC2(容積小)、VC3(容積小)、VC4(容積大)
ステップ3:VC1(容積大)、VC2(容積大)、VC3(容積小)、VC4(容積小)
ステップ4:VC1(容積小)、VC2(容積大)、VC3(容積大)、VC4(容積小)
【0063】
可変容積チャンバが4つの場合には、以上のステップ1~4を繰り返すことで、通路PP内における液体LQの移動が可能になる。なお、入口ポートIPから数えてn番目の可変容積チャンバの容積を小さくするとともに、(n+1)番目の可変容積チャンバの容積を大きくする動作を、ステップが進むごとに(時間差を置いて)nに1を加えて順次実行することで、通路PPに蠕動動作を行わせて、通路PPに沿って液体LQを移動させることができる。
【0064】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態にかかるマイクロポンプ10Aの概略構成を示す模式図である。
図10は、第2実施形態にかかるマイクロポンプ10Aの断面を示す模式図である。
図11は、第2実施形態のマイクロポンプ10Aの動作を示す模式図である。
図12は、マイクロポンプ10Aの駆動路内に配置された片側電極ユニット17を模式的に示す図である。
【0065】
図12において、駆動路DP1内に配置された片側電極ユニット17は、作動チャンバ側に配置されたスリット電極(正電極ともいう)17aと、リザーバ側に配置された三角柱電極(負電極ともいう)17bとを有する。他の駆動路内に配置された片側電極ユニット17も同様の構成を有する。
【0066】
上述した第1実施形態では、制御装置を介して両側電極ユニット16に、極性を変えた直流電圧を印加することで、作動チャンバ内の圧力を増大させ、または減少させており、それにより弾性膜12を上下いずれかに変位させることができた。
【0067】
これに対し第2実施形態によれば、片側電極ユニット17には、スリット電極17aと三角柱電極17bとに、決められた極性の電圧を印加するのみである。すなわち、制御装置を介して片側電極ユニット17に直流電圧を印加したとき、対応する作動チャンバに向かってECFが流れ、それにより弾性膜12が可変容積チャンバ側に弾性変形する。一方、片側電極ユニット17への直流電圧の印加を中断すると、作動チャンバ内の圧力が元に戻るため、可変容積チャンバ側に弾性変形していた弾性膜12が元の状態へと復帰する。
【0068】
このように弾性膜12の弾性を利用して、例えば
図10に示すように、可変容積チャンバごとに弾性膜12を順繰りに弾性変形させることで、液体の移動を実現できる。片側電極ユニット17は、両側電極ユニット16に比して、構成が簡素化され、また配線も容易になるという利点がある。以下、片側電極ユニット17を利用したマイクロポンプ10Aの動作について説明する。
【0069】
マイクロポンプ10Aは、上述した第1実施の形態に対し、作動チャンバの数を3つとしており、また作動チャンバOC1~OC3と、ECFのリザーバRV1~RV3とが、駆動路DP1~DP3を介して接続されている点が異なる。ECFで満たされた駆動路DP1~DP3内には、それぞれ片側電極ユニット17が配置され、これらは不図示の制御装置を介して給電され、独立して動作可能となっている。それ以外の構成については、上述した第1実施形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0070】
片側電極ユニット17の三角柱電極17bは、リザーバRV1~RV3側に配置されているものとする。
【0071】
図10,11において、マイクロポンプ10Aにて送出したい液体LQが、入口ポートIPと出口ポートOPとの間の通路PP内に注入されている。
【0072】
各片側電極ユニット17への給電は、不図示の制御装置により統合的に制御される。制御装置から片側電極ユニット17への給電が行われないときは、マイクロポンプ10Aは静止状態となり、液体LQの送出は行われない。
【0073】
マイクロポンプ10Aの動作開始時に、制御装置からの信号により、第1駆動路DP1内の片側電極ユニット17のスリット電極17aと、三角柱電極17bとに対して直流電圧を印加すると、電気流体力学現象により第1駆動路DP1内のECFが、
図11(a)に示すように、リザーバRV1から第1作動チャンバOC1に向かって流動する。
【0074】
これにより、第1作動チャンバOC1内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第1作動チャンバOC1の上方に位置する可変容積チャンバVC1の容積が小さくなる。上方に変形する弾性膜12は、上板11に密着してもよいし、密着しなくてもよい(以下、同様とする)。
【0075】
可変容積チャンバVC1の容積が小さくなると、可変容積チャンバVC1から押し出された液体LQは、通路PP内を可変容積チャンバVC2側へと移動することとなる。
【0076】
次に、制御装置からの信号により、第2駆動路DP2内の片側電極ユニット17のスリット電極17aと、三角柱電極17bとに対して直流電圧を印加することにより、
図11(b)に示すように、電気流体力学現象により第2駆動路DP2内のECFが、リザーバRV2から第2作動チャンバOC2に向かって流動する。また制御装置からの信号により、第1駆動路DP1内の片側電極ユニット17への給電を中断すると、第1作動チャンバOC1に面する弾性膜12が変形より復帰し、可変容積チャンバVC1の容積が元の状態に戻る。
【0077】
以上の動作により、第2作動チャンバOC2内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第2作動チャンバOC2の上方に位置する可変容積チャンバVC2の容積が小さくなる。また第1作動チャンバOC1内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が変形より復帰し、それに応じて第1作動チャンバOC1の上方に位置する可変容積チャンバVC1の容積が元に戻る。
【0078】
可変容積チャンバVC2の容積が小さくなると、可変容積チャンバVC2から押し出された液体LQは、通路PP内を可変容積チャンバVC3側へと移動することとなる。また、可変容積チャンバVC1の容積が元に戻ると、液体LQが入口ポートIPから通路PP内へと吸引される。
【0079】
次に、制御装置からの信号により、第3駆動路DP3内の片側電極ユニット17のスリット電極17aと、三角柱電極17bとに対して直流電圧を印加することにより、電気流体力学現象により、
図11(c)に示すように、第3駆動路DP3内のECFが、リザーバRV3から第3作動チャンバOC3に向かって流動する。また制御装置からの信号により、第2駆動路DP2内の片側電極ユニット17への給電を中断すると、第2作動チャンバOC2に面する弾性膜12が変形より復帰し、可変容積チャンバVC2の容積が元の状態に戻る。
【0080】
以上の動作により、第3作動チャンバOC3内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第3作動チャンバOC3の上方に位置する可変容積チャンバVC3の容積が小さくなる。また第2作動チャンバOC2内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が変形より復帰し、それに応じて第2作動チャンバOC2の上方に位置する可変容積チャンバVC2の容積が元に戻る。
【0081】
可変容積チャンバVC3の容積が小さくなると、可変容積チャンバVC3と出口ポートOPの間の通路PP内に存在する液体LQは、出口ポートOP側へと移動することとなる。また、可変容積チャンバVC2の容積が元に戻ると、可変容積チャンバVC1と可変容積チャンバVC2との間の通路PP内に存在する液体LQは、可変容積チャンバVC2側へと移動するため、入口ポートIPから新たな液体LQを吸引することができる。
【0082】
図11(a)~(c)に示す動作を繰り返し行うことで、マイクロポンプ10Aは、入口ポートIPから吸引した液体LQを出口ポートOPから排出する動作を連続して行うことができる。制御装置からすべての片側電極ユニット17への給電を中断することで、マイクロポンプ10Aが停止する。
【0083】
(第2実施形態の別の動作例)
図13は、第2実施形態のマイクロポンプ10Aの別な動作例を示す模式図である。マイクロポンプ10Aは、上述した第2実施形態と共通の構造を備えるため、重複する説明を省略する。
【0084】
マイクロポンプ10Aの動作開始時に、制御装置からの信号により、第1駆動路DP1及び第2駆動路DP内の片側電極ユニット17のスリット電極17aと、三角柱電極17bとに対して直流電圧を印加すると、
図13(a)に示すように、電気流体力学現象により第1駆動路DP1内のECFが、リザーバRV1から第1作動チャンバOC1に向かって流動するとともに、第2駆動路DP2内のECFが、リザーバRV2から第2作動チャンバOC2に向かって流動する。
【0085】
これにより、第1作動チャンバOC1及び第2作動チャンバOC2内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第1作動チャンバOC1及び第2作動チャンバOC2の上方に位置する可変容積チャンバVC1及び可変容積チャンバVC2の容積が小さくなる。上方に変形する弾性膜12は、上板11に密着してもよいし、密着しなくてもよい(以下、同様とする)。
【0086】
可変容積チャンバVC1及び可変容積チャンバVC2の容積が小さくなると、可変容積チャンバVC1及び可変容積チャンバVC2から押し出された液体LQは、通路PP内を可変容積チャンバVC3側へと移動することとなる。
【0087】
次に、制御装置からの信号により、第2駆動路DP2内の片側電極ユニット17のスリット電極17aと、三角柱電極17bとに対して直流電圧を印加したまま、第3駆動路DP3内の片側電極ユニット17のスリット電極17aと、三角柱電極17bとに対して直流電圧を印加する。これにより、
図13(b)に示すように、電気流体力学現象により第3駆動路DP3内のECFが、リザーバRV3から第3作動チャンバOC3に向かって流動する。また制御装置からの信号により、第1駆動路DP1内の片側電極ユニット17への給電を中断すると、第1作動チャンバOC1に面する弾性膜12が変形より復帰し、可変容積チャンバVC1の容積が元の状態に戻る。
【0088】
以上の動作により、第3作動チャンバOC3内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第3作動チャンバOC3の上方に位置する可変容積チャンバVC3の容積が小さくなる。また第1作動チャンバOC1内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が変形より復帰し、それに応じて第1作動チャンバOC1の上方に位置する可変容積チャンバVC1の容積が元に戻る。
【0089】
可変容積チャンバVC3の容積が小さくなると、可変容積チャンバVC3から押し出された液体LQは、通路PP内を出口ポートOP側へと移動することとなる。また、可変容積チャンバVC1の容積が元に戻ると、液体LQが入口ポートIPから通路PP内へと吸引される。
【0090】
次に、制御装置からの信号により、第3駆動路DP3内の片側電極ユニット17のスリット電極17aと、三角柱電極17bとに対して直流電圧を印加したまま、第1駆動路DP1内の片側電極ユニット17のスリット電極17aと、三角柱電極17bとに対して直流電圧を印加する。これにより、電気流体力学現象により、
図11(c)に示すように、第1駆動路DP1内のECFが、リザーバRV1から第1作動チャンバOC1に向かって流動する。また制御装置からの信号により、第2駆動路DP2内の片側電極ユニット17への給電を中断すると、第2作動チャンバOC2に面する弾性膜12が変形より復帰し、可変容積チャンバVC2の容積が元の状態に戻る。
【0091】
以上の動作により、第1作動チャンバOC1内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、それに応じて第1作動チャンバOC1の上方に位置する可変容積チャンバVC1の容積が小さくなる。また第2作動チャンバOC2内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が変形より復帰し、それに応じて第2作動チャンバOC2の上方に位置する可変容積チャンバVC2の容積が元に戻る。
【0092】
可変容積チャンバVC1の容積が小さくなり、可変容積チャンバVC2の容積が元に戻ると、通路PP内に存在する液体LQは、可変容積チャンバVC2側へと移動することとなる。
【0093】
図13(a)~(c)に示す動作を繰り返し行うことで、マイクロポンプ10Aは、入口ポートIPから吸引した液体LQを出口ポートOPから排出する動作を連続して行うことができる。制御装置からすべての片側電極ユニット17への給電を中断することで、マイクロポンプ10Aが停止する。
【0094】
(第2実施形態の変形例1)
図14は、第2実施形態の変形例1にかかるマイクロポンプ10Bの概略構成を示す模式図である。マイクロポンプ10Bは、第2実施形態のマイクロポンプ10Aに対して、片側電極ユニット17の代わりに、両側電極ユニット16を設けた点が異なる。マイクロポンプ10Aにおいては、片側電極ユニット17への直流電圧の印加と中断を交互に行っているが、マイクロポンプ10Bにおいては、両側電極ユニット16の三角柱電極16b、16cに交互に直流電圧を印加させることができる。これにより弾性膜12を、中立位置に対して上下に弾性変形させることができるため、マイクロポンプ10Bの容量を増大させることができる。
【0095】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態にかかるマイクロポンプ20の斜視図であり、内部を透視した状態で示している。
図16は、マイクロポンプ20を分解して示す斜視図である。
図17は、内部構造を透視した状態で示す上板の斜視図である。第3実施形態のマイクロポンプ20は、バルブ構造を内包している。
【0096】
マイクロポンプ20は、図に示すように薄形の矩形板形状であって、上板21と、弾性膜22と、中間板23と、下板24と、基板25とから構成される。マイクロポンプ20は、半導体製造工程を使用して形成されると、微細な構成を有するにも関わらず大量生産が可能であるが、その製造方法には制限されない。
【0097】
図16において、上板21には、入口孔21p及び出口孔21qと、ECFの注入用の3つの注入孔21a、21b、21cと、リザーバへの接続口21dが、それぞれ上下方向に貫通するように形成されている。また、
図17に示すように、上板21の下面には、入口孔21pが中心に接続された上円形孔21fが形成され、また出口孔21qが中心に接続された上円形孔21gが形成されている。さらに、上板21の下面には、上円形孔21f、21gの中心間を結ぶラインの中間位置に、円形開口21eが上面に貫通することなく形成され、さらに該円形開口を通過して入口孔21pと出口孔21qとをつなぐ直線溝21hが形成されている。入口孔21p及び出口孔21qにより、それぞれ入口ポートIPと出口ポートOPが形成される。
【0098】
可撓性を有する弾性膜22には、注入孔21a、21b、21c、および接続口21dに対応して、膜孔22a、22b、22c、22dのみが上下方向に貫通するように形成されている。
【0099】
また、上円形孔21fの下側は弾性膜22によって遮蔽され、第1弁室VL1が形成され、上円形孔21gの下側も弾性膜22によって遮蔽され、第2弁室VL2が形成され、円形開口21eの下側も弾性膜22によって遮蔽され、可変容積チャンバVCが形成される。さらに、円形開口21e以外の直線溝21hの下側も、弾性膜22により遮蔽され、入口ポートIPから可変容積チャンバVCを通過して出口ポートOPに至る通路PPが形成される。弾性膜22の素材としては、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)が好適に用いられる。
【0100】
中間板23には、膜孔22a、22b、22c、22dに対応して、中間孔23a、23b、23c、23dが上下方向に貫通するように形成されている。さらに、中間板23には、円形開口21eに対応して中間円形孔23eが上下方向に貫通するように形成されており、また上円形孔21f及び上円形孔21gに対向して、円形の中間弁孔23f、23gが上下方向に貫通するように形成されている。
【0101】
下板24には、中間孔23a、23b、23c、23dに対応して、下孔24a、24b、24c、24dが上下方向に貫通するように形成され、また中間円形孔23eに対応して、下円形孔24eが上下方向に貫通するように形成されている。また、下板24には、中間弁孔23f、23gに対向して、円形の下弁孔24f、24gが上下方向に貫通するように形成されている。
【0102】
下弁孔24f及び中間弁孔23fは、弾性膜22を介して上円形孔21fに対向する。このため、
図15に示すように、下弁孔24f及び中間弁孔23fにより、入口ポートIPに繋がる第1弁室VL1に対向する第1バルブ作動チャンバVO1が形成される。第1バルブ作動チャンバVO1の内圧が高まると、第1弁室VL1との間に配置された弾性膜22が弾性変形して、入口孔21pの下端を閉止する。また、下弁孔24g及び中間弁孔23gは、弾性膜22を介して上円形孔21gに対向する。このため、下弁孔24g及び中間弁孔23gにより、出口ポートOPに繋がる第2弁室VL2に対向する第2バルブ作動チャンバVO2が形成される。第2バルブ作動チャンバVO2の内圧が高まると、第2弁室VL2との間に配置された弾性膜22が弾性変形して、出口孔21qの下端を閉止する。
【0103】
また、下円形孔24e及び中間円形孔23eは、弾性膜22を介して円形開口21eに対向する。このため、下円形孔24e及び中間円形孔23eにより、可変容積チャンバVCに対向して、ポンプ作動チャンバPOが形成される。
【0104】
さらに、下板24には、下孔24aと下弁孔24fとをつなぐスリット溝24iと、下孔24cと下弁孔24gとをつなぐスリット溝24jと、下孔24bと下円形孔24eと24bとをつなぐスリット溝24kが形成されている。
【0105】
加えて、下板24には、下弁孔24fと下弁孔24gとをつなぎ、ジグザグ状に延在する屈曲スリット溝24pが形成され、また下円形孔24eと下孔24dとをつなぎ、ジグザグ状に延在する屈曲スリット溝24qとが形成されている。
【0106】
スリット溝24i、24j,24kは、上側が中間板23により遮蔽され、下側が基板25により遮蔽されて、それぞれECFの注入路PS1,PS2,PS3が形成される。また、屈曲スリット溝24pも、上側が中間板23により遮蔽され、下側が基板25により遮蔽されてバルブ駆動路VDPを形成し、屈曲スリット溝24qも、上側が中間板23により遮蔽され、下側が基板25により遮蔽されてポンプ駆動路PDPが形成される。
【0107】
基板25は、平板状である。基板25上には、屈曲スリット溝24p、24qに対応して、複数の両側電極ユニット16と、給電用の配線(不図示)が形成されている。両側電極ユニット16は、
図4に示すものと同様であるため、詳細な説明は省略する。基板25に、下板24と中間板23とを接合することで、両側電極ユニット16は、バルブ駆動路VDP及びポンプ駆動路PDP内に配置されることとなる。バルブ駆動路VDPに配置された両側電極ユニット16がバルブ用電極ユニットになり、ポンプ駆動路PDPに配置された両側電極ユニット16がポンプ用電極ユニットになる。
【0108】
基板25、下板24、中間板23、弾性膜22、および上板21を積層して接合することにより、マイクロポンプ20が形成される。このとき、注入孔21a、21b、21cと接続口21d、膜孔22a、22b、22c、22d、中間孔23a、23b、23c、23d、および下孔24a、24b、24c、24dが整列することにより、ECFの注入ポートPT1,PT2,PT3,PT4が形成される。なお、ポンプ駆動路PDPは、注入ポートPT4に繋がる配管を介して、ECFのリザーバRV(
図19)に連結されている、
【0109】
図15を参照して、注入ポートPT1からECFを注入すると、注入されたECFは、注入路PS1を介して第1バルブ作動チャンバVO1を通過し、さらにバルブ駆動路VDPを介して第2バルブ作動チャンバVO2に至る。余剰のECFは、第2バルブ作動チャンバVO2から注入路PS2を通過して注入ポートPT3より外部に溢れ出る。注入が完了した後に、注入ポートPT1と注入ポートPT3を、クランプなどを用いて閉じる。ただし、注入ポートを閉じる手法は以上に限られない。
【0110】
同様に、注入ポートPT2からECFを注入すると、注入されたECFは、注入路PS3を介してポンプ作動チャンバPOを通過し、さらにポンプ駆動路PDPに注入される。余剰のECFは、注入ポートPT4よりリザーバRV側に溢れ出る。注入が完了した後に、注入ポートPT2をクランプなどを用いて閉じる。ただし、注入ポートを閉じる手法は以上に限られない。以上により、弾性膜22の下方の空間は、ECFで満たされることとなる。ECFとしては、例えば米国特許第6495071号に記載された流体が用いられるが、これに限られない。
【0111】
(マイクロポンプの動作)
図18は、第3実施形態のマイクロポンプ20の概略構成を示す模式図である。
図19は、第3実施形態のマイクロポンプ20の断面を示す模式図である。
図20は、第3実施形態のマイクロポンプ20の動作を示す模式図であるが、バルブ駆動路VDP及びポンプ駆動路PDPは省略している。また、
図18,19中、単一の両側電極ユニット16が示されているが、実際には複数の両側電極ユニット16が直列に配置されている。
【0112】
以下、
図4を参照して、両側電極ユニット16の一方の三角柱電極とスリット電極に印加する直流電圧を正極性の直流電圧といい、他方の三角柱電極とスリット電極に印加する直流電圧を負極性の直流電圧といい、両者を区別する。
【0113】
図19,20において、マイクロポンプ20にて送出したい液体LQが、入口ポートIPと出口ポートOPとの間の通路PP内に注入されている。
【0114】
各両側電極ユニット16への給電は、不図示の制御装置により統合的に制御される。制御装置から両側電極ユニット16への給電が行われないときは、マイクロポンプ20は静止状態となり、液体LQの送出は行われない。
【0115】
(ステップ1)
マイクロポンプ20の動作開始時に、制御装置からの信号により、バルブ駆動路VDP内の両側電極ユニット16に対して正極性の直流電圧を印加すると、電気流体力学現象によりバルブ駆動路VDP内のECFが、第1バルブ作動チャンバVO1から第2バルブ作動チャンバVO2に向かって流動する。
【0116】
これにより、
図20(a)に示すように、第1バルブ作動チャンバVO1内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が下方に弾性変形し、それに応じて第1バルブ作動チャンバVO1の上方に位置する第1弁室VL1の容積が大きくなるため、入口ポートIPから液体LQが第1弁室VL1に吸引される。それと同時に、第2バルブ作動チャンバVO2内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、第2弁室VL2内に進入して出口ポートOPを閉止するため、出口ポートOPから液体LQを吸引することが阻止される。
【0117】
(ステップ2)
次いで、制御装置が、バルブ駆動路VDP内の両側電極ユニット16への直流電圧の印加を継続しつつ、ポンプ駆動路PDP内の両側電極ユニット16に正極性の直流電圧を印加すると、電気流体力学現象によりポンプ駆動路PDP内のECFが、ポンプ作動チャンバPOからリザーバRVに向かって流動する。
【0118】
これにより、
図20(b)に示すように、ポンプ作動チャンバPO内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が下方に弾性変形し、それに応じてポンプ作動チャンバPOの上方に位置する可変容積チャンバVCの容積が大きくなるため、入口ポートIPから吸引された液体LQが、第1弁室VL1を通過して可変容積チャンバVC側へと移動する。
【0119】
(ステップ3)
次いで、制御装置が、ポンプ駆動路PDP内の両側電極ユニット16への直流電圧の印加を継続しつつ、バルブ駆動路VDP内の両側電極ユニット16に負極性の直流電圧を印加すると、電気流体力学現象によりバルブ駆動路VDP内のECFが、第2バルブ作動チャンバVO2から第1バルブ作動チャンバVO1に向かって流動する。
【0120】
これにより、
図20(c)に示すように、第1バルブ作動チャンバVO1内の圧力が増大して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、第1弁室VL1内に進入して、入口ポートIPを閉止する。それと同時に、第2バルブ作動チャンバVO2内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が下方に弾性変形し、第2弁室VL2内から離間して出口ポートOPを開放する。
【0121】
(ステップ4)
次いで、制御装置が、バルブ駆動路VDP内の両側電極ユニット16への直流電圧の印加を継続しつつ、ポンプ駆動路PDP内の両側電極ユニット16に負極性の直流電圧を印加すると、電気流体力学現象によりポンプ駆動路PDP内のECFが、リザーバRVからポンプ作動チャンバPOに向かって流動する。
【0122】
これにより、
図20(d)に示すように、ポンプ作動チャンバPO内の圧力が増大して、それに面する弾性膜22が上方に弾性変形し、それに応じてポンプ作動チャンバPOの上方に位置する可変容積チャンバVCの容積が小さくなる。ここで、弾性膜22により入口ポートIPが閉止される一方、出口ポートOPは開放されているため、弾性膜22により可変容積チャンバVCから押し出された液体LQは、第2弁室VL2を通過して出口ポートOPから吐出される。
【0123】
(ステップ5)
次いで、制御装置が、ポンプ駆動路PDP内の両側電極ユニット16への直流電圧の印加を継続しつつ、バルブ駆動路VDP内の両側電極ユニット16に正極性の直流電圧を印加すると、電気流体力学現象によりバルブ駆動路VDP内のECFが、第1バルブ作動チャンバVO1から第2バルブ作動チャンバVO2に向かって流動する。
【0124】
これにより、
図20(e)に示すように、第1バルブ作動チャンバVO1内の圧力が低下して、それに面する弾性膜12が下方に弾性変形し、それに応じて第1バルブ作動チャンバVO1の上方に位置する第1弁室VL1の容積が大きくなるため、入口ポートIPから液体LQが第1弁室VL1に吸引される。それと同時に、第2バルブ作動チャンバVO2内の圧力が上昇して、それに面する弾性膜12が上方に弾性変形し、第2弁室VL2内に進入して出口ポートOPを閉止するため、出口ポートOPから液体LQの吐出が中断される。
【0125】
以下、ステップ2~5を順次実行することで、マイクロポンプ20により液体LQの間欠的な送出が可能となる。
【0126】
第3実施形態によれば、送出される液体LQはECFに対して弾性膜で隔てられており、両者が接することがないので、液体LQの性質に関わらず、その送出を行うことができる。また、液体LQは通路PP内を通過するのみであるため、例えば人体に適用する液体LQなどを、衛生上の配慮を行いつつ送出することができる。
【0127】
(第3実施形態の変形例1)
図21は、第3実施形態の変形例1にかかるマイクロポンプ20Aの概略構成を示す模式図である。
【0128】
第3実施形態の変形例1にかかるマイクロポンプ20Aにおいて、第1バルブ作動チャンバVO1とリザーバRV1とが、第1バルブ駆動路VD1により接続され、また第2バルブ作動チャンバVO2とリザーバRV2とが、第2バルブ駆動路VD2により接続されている。ECFで満たされた第1バルブ駆動路VD1及び第2バルブ駆動路VD2内には、それぞれ両側電極ユニット16が配置され、これらは不図示の制御装置を介して給電され、独立して動作可能となっている。それ以外の構成については、上述した第3実施形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0129】
第3実施形態の変形例1によれば、制御装置を介して、第1バルブ駆動路VD1内の両側電極ユニット16に、例えば正極性の直流電圧を印加することで、弾性膜22により入口ポートIPを閉止し、また負極性の直流電圧を印加することで、入口ポートIPを開放することができる。また、制御装置を介して、第2バルブ駆動路VD2内の両側電極ユニット16に、例えば正極性の直流電圧を印加することで、弾性膜22により出口ポートOPを閉止し、また負極性の直流電圧を印加することで、出口ポートOPを開放することができる。
【0130】
したがって、ポンプ作動チャンバPOの動作と組み合わせることで、上述した第3実施形態のステップ1~5を実行して、液体LQを送出することができる。第3実施形態の変形例1によれば、入口ポートIPの開閉タイミングと、出口ポートOPの開閉タイミングを独立して調整できるため、より精度良く液体LQを送出することができる。
【0131】
(第3実施形態の変形例2)
図22は、第3実施形態の変形例2にかかるマイクロポンプ20Bの概略構成を示す模式図である。
【0132】
第3実施形態の変形例2にかかるマイクロポンプ20Bは、
図21の変形例1に対して、第1バルブ駆動路VD1及び第2バルブ駆動路VD2内に、
図12に示す片側電極ユニット17が配置されている点が異なる。それ以外の構成については、上述した第3実施形態の変形例1と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0133】
第3実施形態の変形例2によれば、制御装置を介して、第1バルブ作動チャンバVO1に繋がる第1バルブ駆動路VD1内の片側電極ユニット17に直流電圧を印加することで、弾性膜22により入口ポートIPを閉止することができる。また、第2バルブ作動チャンバVO2に繋がる第2バルブ駆動路VD2内の片側電極ユニット17に直流電圧を印加することで、弾性膜22により出口ポートOPを閉止することができる。一方、片側電極ユニット17への印加を中断すると、弾性膜22は自身の弾性により元の状態に復帰する。
【0134】
このように弾性膜12の弾性を利用して、入口ポートIP及び出口ポートOPの閉止及び開放(バルブ動作)を行わせることができ、さらにポンプ作動チャンバPOの動作と組み合わせることで、上述した第3実施形態のステップ1~5を実行して、液体LQを送出することができる。第3実施形態の変形例2によれば、
図21に示す変形例1に比して電極ユニットの構成が簡素化され、また配線も容易になる。
【0135】
(第3実施形態の変形例3)
図23は、第3実施形態の変形例3にかかるマイクロポンプ20Cの概略構成を示す模式図である。
【0136】
第3実施形態の変形例3にかかるマイクロポンプ20Cは、
図22の変形例2に対して、ポンプ駆動路PDP内に、
図12に示す片側電極ユニット17が配置されている点が異なる。それ以外の構成については、上述した第3実施形態の変形例2と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0137】
第3実施形態の変形例3によれば、制御装置を介して、ポンプ駆動路PDP内の片側電極ユニット17に直流電圧を印加することで、弾性膜22を可変容積チャンバVC側に張り出させることができる。一方、片側電極ユニット17への印加を中断すると、弾性膜22は自身の弾性により元の状態に復帰する。
【0138】
このように弾性膜12の弾性を利用して、可変容積チャンバVC側への張り出しと復帰を行わせることができ、さらに第1バルブ作動チャンバVO1及び第2バルブ作動チャンバVO2の動作と組み合わせることで、上述した第3実施形態のステップ1~5を実行して、液体LQを送出することができる。第3実施形態の変形例3によれば、
図22に示す変形例2に比して電極ユニットの構成が簡素化され、また配線も容易になる。
【0139】
(第3実施形態の変形例4)
図24は、第3実施形態の変形例4にかかるマイクロポンプ20Dの概略構成を示す模式図である。
【0140】
第3実施形態の変形例4にかかるマイクロポンプ20Dにおいては、入口ポートIPと出口ポートOPとが、同一平面上にある表通路PPAと裏通路PPBの2経路を介して接続されている。さらに、表通路PPAに沿って、第1バルブ作動チャンバV1Aに対応する入口側の第1弁室と、ポンプ作動チャンバPOAに対応する可変容積チャンバと、第2バルブ作動チャンバV2Aに対応する出口側の第2弁室とが配設されている。
【0141】
また、裏通路PPBに沿って、第1バルブ作動チャンバV1Bに対応する入口側の第1弁室と、ポンプ作動チャンバPOBに対応する可変容積チャンバと、第2バルブ作動チャンバV2Bに対応する出口側の第2弁室とが配設されている。第1弁室、可変容積チャンバ、第2弁室については、上述した第3実施形態と同様な構成を備えるため、重複する説明を省略する。
【0142】
第1バルブ作動チャンバV1Aと第1バルブ作動チャンバV1Bとは、バルブ駆動路VP1を介して連通しており、ポンプ作動チャンバPOAとポンプ作動チャンバPOBとは、ポンプ駆動路DPを介して連通しており、第2バルブ作動チャンバV2Aと第2バルブ作動チャンバV2Bとは、バルブ駆動路VP2を介して連通している。バルブ駆動路VP1,VP2,ポンプ駆動路DP内に、
図4に示す両側電極ユニット16がそれぞれ配置され、これらは不図示の制御装置により、独立して制御される。
【0143】
ここで、バルブ駆動路VP1内の両側電極ユニット16への正極性の直流電圧への印加により、第1バルブ作動チャンバV1A内の圧力が増大して表通路PPAの第1弁室内で弾性膜が張り出して、表通路PPAを閉鎖する(第1弁室を閉止する)とともに、第1バルブ作動チャンバV1B内の圧力が減少して表通路PPAの第1弁室から弾性膜が退避して裏通路PPBを開放する(第1弁室を開放する)。これに対し、両側電極ユニット16への負極性の直流電圧への印加により、表通路PPAの第1弁室が開放され、裏通路PPBの第1弁室が閉止される。表通路PPAの第1弁室が開いているときを、AX状態とし、裏通路PPBの第1弁室が開いているときを、BX状態とする。
【0144】
また、ポンプ駆動路DP内の両側電極ユニット16への直流電圧への印加により、表通路PPAと裏通路PPBにおける可変容積チャンバの容積のうち、一方の容積が増大しているときは、他方の容積は減少する。表通路PPAの可変容積チャンバの容積が拡大しているときを、AY状態とし、裏通路PPBの可変容積チャンバの容積が拡大しているときを、BY状態とする。
【0145】
さらに、バルブ駆動路VP2内の両側電極ユニット16への正極性の直流電圧への印加により、第2バルブ作動チャンバV2A内の圧力が増大して裏通路PPBの第2弁室内で弾性膜が張り出して、表通路PPAを閉鎖する(第2弁室を閉止する)とともに、第2バルブ作動チャンバV2B内の圧力が減少して裏通路PPBの第2弁室内で弾性膜が退避して裏通路PPBを開放する(第2弁室を開放する)。これに対し、両側電極ユニット16への負極性の直流電圧への印加により、表通路PPAの第2弁室が開放され、裏通路PPBの第2弁室が閉止される。表通路PPAの第2弁室が開いているときを、AZ状態とし、裏通路PPBの第2弁室が開いているときを、BZ状態とする。
【0146】
以下、制御装置から各両側電極ユニット16に直流電圧を印加することで、各ステップに応じて、入口側バルブ、可変容積チャンバ、出口側バルブを以下の状態とする。
【0147】
ステップ1:(AX,AY、BZ)
ステップ1により、入口ポートIPから表通路PPA内に液体を吸引するとともに、裏通路PPB内の液体を出口ポートOPから吐出することができる。
【0148】
ステップ2:(BX,AY、AZ)
ステップ2により、表通路PPAの入口側バルブを閉じ、また出口側バルブを開き、且つ裏通路PPBの入口側バルブを開き、また出口側バルブを閉じる。
【0149】
ステップ3:(BX,BY、AZ)
ステップ3により、入口ポートIPから裏通路PPB内に液体を吸引するとともに、表通路PPA内の液体を出口ポートOPから吐出することができる。
【0150】
第3実施形態の変形例4によれば、上述したステップ1~3を繰り返し実行することで、液体LQを連続的に送出することができる。
【符号の説明】
【0151】
10、20 マイクロポンプ
11,21 上板
12,22 弾性膜
13,23 中間板
14,24 下板
15,25 基板
16 両側電極ユニット
17 片側電極ユニット