(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】チタン合金及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 11/26 20060101AFI20241114BHJP
A61L 27/06 20060101ALI20241114BHJP
C01G 23/04 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C25D11/26 302
A61L27/06
C01G23/04
(21)【出願番号】P 2021074013
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2020125634
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(72)【発明者】
【氏名】正橋 直哉
(72)【発明者】
【氏名】花田 修治
(72)【発明者】
【氏名】目代 貴之
(72)【発明者】
【氏名】井樋 栄二
(72)【発明者】
【氏名】森 優
(72)【発明者】
【氏名】井上 博之
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/022960(WO,A1)
【文献】J Biomed Mater Res A.,2015年,Vol.103, No.12,pp.3757-3763,doi: 10.1002/jbm.a.35517.
【文献】Thin Solid Films,2010年,Vol.519,pp.276-283
【文献】Chem. Lett.,2015年,Vol.44,pp.277-278,doi:10.1246/cl.140976
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
C25D 11/26
C01G 23/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiNbSn合金からなる基材の表面にTiO
2被膜が形成されたチタン合金であって、
JIS R 1702に準拠した抗菌性試験により求められる抗菌活性値が2.0以上であ
り、
前記TiO
2
被膜が、X線回折におけるルチル110回折線の半価幅が0.4未満のルチル型TiO
2
を60%以上含有する、チタン合金。
【請求項2】
ヤング率が30~80GPaである、請求項1に記載のチタン合金。
【請求項3】
疑似体液に36.5℃で2週間浸漬後にハイドロキシアパタイトが生成される、請求項1又は2に記載のチタン合金。
【請求項4】
400±10nm、1250mW/cm
2の光を5分間照射した際に発生するヒドロキシラジカル量が1.30μmol以上である、請求項1~
3のいずれか一項に記載のチタン合金。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のチタン合金の製造方法であって、
酒石酸ナトリウムを含む電解液に前記基材を浸漬させ、200V以上の電圧を印加して陽極酸化処理を行う、チタン合金の製造方法。
【請求項6】
前記電解液が過酸化水素をさらに含む、請求項
5に記載のチタン合金の製造方法。
【請求項7】
前記陽極酸化処理の後に、300~450℃で1~5時間加熱処理を行う、請求項
5又は
6に記載のチタン合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工股関節は、応力遮蔽により引き起こされる、大腿骨近位部での骨萎縮によるインプラント周囲の骨折やゆるみを防ぐために骨に近いヤング率を有すること、骨との密着性が高いこと、そして生体活性を有することが求められる。チタン合金は優れた耐食性・生体安全性・強度を示すことから生体材料として広く利用されている。本発明者等は加工熱処理による組織及び相制御と、結晶配向を制御することで40GPa程度の低ヤング率を有するニア-β相からなるTiNbSn合金を開発し、応力遮蔽の抑制を可能とした。
生体材料を体内に埋め込む際には、予めオートクレーブ等を用いて生体材料に低温で滅菌処理を施す。
しかし、TiNbSn合金をオートクレーブで滅菌処理すると、ニア-β相がα相に相変態するため、ヤング率が増加し、低温酸化による脆化という問題がある。
【0003】
ところで、チタンと熱平衡するTiO2は、バンドギャップエネルギー相当の波長の光を照射することによって酸素ラジカルを生成する結果、光触媒効果を発現し、抗菌性や有害物質の酸化分解等の機能を有することが知られている。
従来、陽極酸化法により光触媒活性を有するTiO2被膜を成膜する方法が提案されている。
例えば特許文献1には、チタン又はチタン合金からなる基材を酒石酸ナトリウムと過酸化水素を含む電解液に浸漬させ、70~140Vの電圧を印加して陽極酸化処理を行った後、400~750℃で1~30分間加熱処理を行うことで、基材の表面にアナターゼ型の結晶構造を示すTiO2被膜を形成した光触媒を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明は、生体活性について何ら考慮されていない。
これまで、陽極酸化法により抗菌性を有するTiO2被膜を成膜する技術を生体材料へ応用することは知られていない。
本発明は、骨に近いヤング率を維持しつつ、高い抗菌性と生体活性を有するチタン合金及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] TiNbSn合金からなる基材の表面にTiO2被膜が形成されたチタン合金であって、JIS R 1702に準拠した抗菌性試験により求められる抗菌活性値が2.0以上である、チタン合金。
[2] ヤング率が30~80GPaである、前記[1]のチタン合金。
[3] 疑似体液に36.5℃で2週間浸漬後にハイドロキシアパタイトが生成される、前記[1]又は[2]のチタン合金。
[4] 前記TiO2被膜が、X線回折におけるルチル110回折線の半価幅が0.4未満のルチル型TiO2を60%以上含有する、前記[1]~[3]のいずれか1つのチタン合金。
[5] 400±10nm、1250mW/cm2の光を5分間照射した際に発生するヒドロキシラジカル量が1.30μmol以上である、前記[1]~[4]のいずれか1つのチタン合金。
[6] 前記[1]~[5]のいずれか1つのチタン合金の製造方法であって、酒石酸ナトリウムを含む電解液に前記基材を浸漬させ、200V以上の電圧を印加して陽極酸化処理を行う、チタン合金の製造方法。
[7] 前記電解液が過酸化水素をさらに含む、前記[6]のチタン合金の製造方法。
[8] 前記陽極酸化処理の後に、300~450℃で1~5時間加熱処理を行う、前記[6]又は[7]のチタン合金の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、骨に近いヤング率を維持しつつ、高い抗菌性と生体活性を有するチタン合金及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1及び比較例1~3で得られたチタン合金の薄膜X線回折のプロファイルである。
【
図2】(a)及び(b)は実施例1で得られたチタン合金を疑似体液に浸漬後の組織写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るチタン合金及びその製造方法について説明する。ただし、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
なお、本明細書において、「骨に近いヤング率」とは、骨のヤング率との差(チタン合金のヤング率-骨のヤング率)が50GPa以内であることを意味する。骨のヤング率との差は、40GPa以内が好ましく、30GPa以内がより好ましい。
【0010】
[チタン合金]
本実施形態のチタン合金(以下、「本チタン合金」ともいう。)は、TiNbSn合金からなる基材の表面にTiO2被膜が形成されたものである。
【0011】
<基材>
基材は、TiNbSn合金からなる。
チタンやチタン合金を陽極酸化処理すると表面にTiO2被膜が形成されるが、特に定電流下で高圧を印加してTiNbSn合金からなる基材を陽極酸化処理すると、チタンを陽極酸化処理する場合に比べてルチル型TiO2の割合が多いTiO2被膜が形成される。係る理由は以下のように考えられる。すなわち、TiNbSn合金は、チタンに比べて電気抵抗値が高く、定電流での陽極酸化処理ではチタンより電位が高くなる。その結果、陽極酸化時の基材表面では、TiNbSn合金表面で絶縁体のTiO2形成と共に自己発熱により放電が起こり、基材表面の温度が高くなり、高温で安定なルチル型TiO2が得られやすくなる。また、拡散が促進されるため、ルチル型TiO2の結晶化が進行する。
【0012】
基材は、TiNbSn合金以外の成分を実質的に含まない。ここで、「実質的に含まない」とは、本発明の効果を損なわない程度の不純物の存在は包含することを意味する。不純物の含有量は、基材の総質量に対して0.04質量%未満が好ましい。
基材の形状としては特に限定されず、本実施形態のチタン合金の使用形態に適合した所望の形状にTiNbSn合金を加工すればよい。
【0013】
TiNbSn合金は、チタンとニオブとスズを含有するチタン合金である。TiNbSn合金の組成は、ニオブの割合が16~35質量%であり、スズの割合が3~13質量%であり、残部がチタン及び不純物である組成(ただし、不純物の割合は0.04質量%未満である。)を有する。
【0014】
<TiO2被膜>
TiO2被膜は、基材の表面に形成された、被膜状のTiO2である。
TiO2被膜は、バンドギャップエネルギー相当の波長の光を照射されることにより励起種を生成し、大気中の酸素や水分と反応して、酸化性の強いヒドロキシラジカル(OHラジカル)を生成する。OHラジカルは菌をはじめとした基質を酸化分解して無害化できるので、滅菌処理した場合と同等の抗菌性を発現できる。
【0015】
バンドギャップエネルギーに相当する波長の光を照射したときに発生するOHラジカルの発生量(OHラジカル量)が多いほど、抗菌性は高まる傾向にある。OHラジカル量は、TiO2の結晶性や、詳しくは後述するが、基材を陽極酸化処理する際に用いる電解液成分に起因するTiO2へのドーピングがもたらすバンド構造改質に依存する。例えばTiO2の結晶性が高いほど、励起種の再結合サイトである格子欠陥の減少により、OHラジカル量は多くなる。
TiO2の結晶性は、TiO2の構成元素であるチタンと酸素の拡散が促進することで高まる。その方策の一つが熱処理であり、TiO2に熱処理を施すと、結晶性が高く、熱力学的に安定なルチル型TiO2の分率が高まる。
このような観点から、TiO2被膜は、結晶性の高いルチル型TiO2を含有することが好ましい。具体的には、TiO2被膜は、X線回折におけるルチル110回折線の半価幅が0.4未満のルチル型TiO2を60%以上含有することが好ましく、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、特に好ましくは85%以上であり、よりさらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは95%以上である。なお、X線回折におけるルチル110回折線の半価幅が0.4未満のルチル型TiO2を60%以上含有するTiO2被膜を特に「ルチル型TiO2被膜」ともいう。
TiO2被膜がルチル型TiO2を60%以上含有していることは、TiO2の構成元素の拡散が促進され、結晶性が高いことを意味する。よって、バンドギャップエネルギーに相当する波長の光をTiO2被膜に照射したときに発生するOHラジカル量が増加し、抗菌性がより高まる傾向にある。また、ルチル型TiO2は、アナターゼ型TiO2に比べて、約0.2Vバンドギャップエネルギーが低く、紫外線領域より可視光線領域に近い光を利用することもでき、可視光活性も高まる。
【0016】
<抗菌性>
本実施形態のチタン合金は高い抗菌性を有しており、具体的には抗菌活性値が2.0以上である。抗菌活性値は2.5以上が好ましい。
本チタン合金の抗菌活性値は、JIS R 1702に準拠した抗菌性試験により求めた値である。
【0017】
<ヤング率>
本実施形態のチタン合金のヤング率は30~80GPaが好ましく、30~60GPaがより好ましく、30~50GPaがさらに好ましく、30~40GPaが特に好ましい。一般的に、骨のヤング率は10~30GPa程度とされていることから、本チタン合金のヤング率が上記範囲内であれば、骨に近いヤング率となり、人工股関節インプラント材に用いた際に応力遮蔽により引き起こされる、大腿骨近位部での骨萎縮によるインプラント周囲の骨折やゆるみを防ぐことができる。
本チタン合金のヤング率は、JIS Z 2280に準拠した共振法により、室温(例えば20℃)で求めた値である。
【0018】
<生体活性>
基材を構成するTiNbSn合金は、人工股関節インプラント用の材料である。インプラント用材料の要件である生体活性評価は、疑似体液(SBF:Simulated Body Fluid)にチタン合金を36.5℃で2週間浸漬した後に、合金表面に、骨の主成分であるハイドロキシアパタイトを析出するかどうかで判断し、析出した場合は生体活性を示す。
疑似体液としては、例えばハンクス平衡塩溶液(HBSS:Hanks’ Balanced Salt Solution)を用いる。
本チタン合金の表面に生成するハイドロキシアパタイトは、薄膜X線回折による相分析、SEM(走査電子顕微鏡)やEPMA(電界放出形電子線マイクロアナライザー)を用いた組織観察、EDX(エネルギー分散型X線分析装置)やWDX(波長分散型X線分析装置)による組成分析、そしてXPS(X線光電子分光装置)を用いた表面分析等により確認できる。例えば、疑似体液に浸漬後のチタン合金表面の組織観察と組成分析から、ハイドロキシアパタイトが確認された場合、生体活性を有すると判断できる。
【0019】
<OHラジカル量>
本実施形態のチタン合金は、基材の表面にTiO2被膜が形成され、バンドギャップエネルギー相当の波長の光をTiO2被膜に照射することにより酸素ラジカルを発生するが、その中の主たるラジカルがOHラジカルである。具体的には、400±10nm、1250mW/cm2の光をTiO2被膜に5分間照射した際に発生するOHラジカル量が1.30μmol以上であることが好ましく、より好ましくは1.50μmol以上であり、さらに好ましくは1.60μmol以上である。
OHラジカル量は、電子スピン共鳴法(ESR)によるスピントラッピング法により測定する。測定には、直径10mmの円板状の本チタン合金を用いる。
【0020】
<製造方法>
本実施形態の、TiO2被膜がTiNbSn合金からなる基材の表面に形成されたチタン合金は、例えば酒石酸ナトリウムを含む電解液を用い、TiNbSn合金からなる基材をアノード電極とし、対極との間で200V以上の電圧を印加して陽極酸化処理を行うことで得られる。必要に応じて、陽極酸化処理の後に加熱処理を行ってもよい。
【0021】
(陽極酸化処理)
基材のTiNbSn合金に陽極酸化処理を施すことで、基材表面にTiO2被膜が形成される。上述したように、基材はTiNbSn合金とするが、この合金の電気伝導度は純チタンの1/3~1/2のため、定電流での陽極酸化処理を施すことで、絶縁体のTiO2形成と共に自己発熱により基材表面の温度が高くなり、TiO2の結晶化が促進される。その結果、熱力学的に平衡するルチル型TiO2が生成されやすくなる。
【0022】
陽極酸化処理に用いる電解液は、酒石酸ナトリウムを含む水溶液である。
このような電解液を用いて基材を陽極酸化することで、バンドギャップエネルギーに相当する波長の光を照射したときにOHラジカル等の酸素ラジカル発生するTiO2被膜(陽極酸化膜)を基材表面に形成することができる。
電解液は、過酸化水素をさらに含むことが好ましい。電解液が過酸化水素をさらに含むことで、抗菌活性値がより高まる。特に、陽極酸化処理を行う際の極間の電圧が200V以上、350V未満の場合は、酒石酸ナトリウムと過酸化水素とを併用することが好ましい。
【0023】
電解液中の酒石酸ナトリウムのモル濃度は、0.01~0.5mol/Lが好ましく、0.02~0.1mol/Lがより好ましく、0.03~0.07mol/Lがさらに好ましい。酒石酸ナトリウムのモル濃度が上記下限値以上であれば、TiO2被膜の形成が緩慢となることを抑制できる。酒石酸ナトリウムのモル濃度が上記上限値以下であれば、溶液抵抗が増加することを抑制できる。
電解液中の過酸化水素のモル濃度は、0.1~2mol/Lが好ましく、0.2~1mol/Lがより好ましく、0.3~0.7mol/Lがさらに好ましい。過酸化水素のモル濃度が上記下限値以上であれば、TiO2被膜の形成が緩慢となることを抑制できる。過酸化水素のモル濃度が上記上限値以下であれば、酸素発生が助長されることを抑制できる。
【0024】
陽極酸化処理を行う際の極間の電圧は200V以上である。電圧が200V以上であれば、TiNbSn合金が定電流での陽極酸化時に、絶縁体のTiO2形成と共に自己発熱することにより基材表面の温度が高くなり、TiO2の結晶化が促進され、ルチル型TiO2が得られやすくなる。その結果、TiO2被膜に特定波長の光を照射したときに発生するOHラジカルの量が増加する。定電流制御では、電圧が高いほど自己発熱の温度も高まり、TiO2の結晶化が促進されてルチル型TiO2の割合が増える傾向にある。定電流制御の陽極酸化反応では、時間とともに電圧は増加し設定電圧に達すると定電圧制御となり、電流は低下して酸化反応が進まない。すなわち設定電圧は高いほど好ましく、具体的には300V以上が好ましく、400V以上がより好ましい。電圧の上限値については特に制限されないが、実験の安全性を配慮し500V程度である。
【0025】
陽極酸化処理の時間は、定電流制御下においては設定電位に依存するが、例えば、設定電位が充分に高く陽極酸化時間内で電流低下が起こらないという条件下では、0.016~2時間が好ましく、0.016~1時間がより好ましく、0.05~1時間がさらに好ましく、0.08~1時間が特に好ましく、0.08~0.5時間が最も好ましい。
【0026】
陽極酸化処理を行う際の電流密度は特に限定されないが、例えば、10mA/cm2以上が好ましく、20mA/cm2以上がより好ましく、30mA/cm2以上がさらに好ましく、50mA/cm2以上が特に好ましい。
【0027】
陽極酸化処理は、通常、室温(例えば20℃)で行われるが、電極の自己発熱による電解浴温度の上昇を抑えるために、一般的には電解液を冷却して行い、例えば電解液の温度を5~15℃に維持して実施することが好ましい。
陽極酸化処理は、直流、交直重畳、又はパルス波を印加して行ってよい。また、サイリスタ方式による直流電源を用いて、単相半波、三相半波、六相半波を印加して行うことも可能である。
本陽極酸化処理によれば、結晶性の高いTiO2形成が可能で、基材の形状が複雑であっても、抗菌性を有するTiO2被膜を基材表面に形成できる。特に、電圧や電流密度を制御することにより、形成されるTiO2被膜の膜厚を制御できる。
【0028】
陽極酸化処理の典型的な態様の一例は、以下の通りである。
まず、所望の形状に成形され、必要に応じて研磨・洗浄等の前処理を施された、TiNbSn合金からなる基材をアノードに接続し、カソードには純チタン板を接続する。酒石酸ナトリウムと過酸化水素を含む電解液が満たされたセル中で各電極に、設定した電流密度(例えば50mA/cm2)と電位(例えば300V)で通電し陽極酸化処理を行う。その結果、基材表面にTiO2被膜(陽極酸化膜)を形成する。このとき、設定電圧を高くしたり、電流密度を高くしたり、陽極酸化処理の時間を長くしたりするなどして、ルチル型TiO2の結晶性と割合を高めることが好ましい。
【0029】
陽極酸化処理された基材は、洗浄液により洗浄される。
洗浄液としては、アルコールを使用する。
【0030】
(加熱処理)
加熱処理は、陽極酸化処理の後に行われる工程である。
陽極酸化処理の後に加熱処理を行えば、TiO2の結晶化がより促進する。
定電流制御の陽極酸化処理の際の設定電圧が低くなるほど、短時間に設定電位に到達して定電圧制御に変わるため自己発熱の発生時間が短いため、陽極酸化処理の後に加熱処理することが好ましい。
なお、上述したように、TiO2の結晶性は、TiO2を熱処理することで高まる。TiO2を高温で熱処理すると、結晶性が高く、高温で安定なルチル型TiO2が得られるが、基材のTiNbSn中にα相が析出してヤング率が増加する。しかし、陽極酸化処理の際の設定電圧が高く、また使用する基材の電気伝導度が低いほど、熱処理と同等の効果が得られ、熱処理を施さなくてもルチル型TiO2が得られ、基材のヤング率は増加しにくい。本実施形態の製造方法では、陽極酸化処理の際の設定電圧が200V以上であるため、TiO2の結晶化が促進され、ルチル型TiO2が得られやすい。よって、基材の電気伝導度によっては加熱処理を必ずしも行う必要がない。
【0031】
加熱処理の温度は300~450℃が好ましく、350~400℃がより好ましい。加熱処理の温度が上記下限値以上であれば、TiO2の結晶性を向上できる。加熱処理の温度が上記上限値以下であれば、ヤング率の上昇を抑制できる。
加熱処理の時間は1~5時間が好ましく、2~5時間がより好ましい。
加熱処理の雰囲気は大気中でかまわない。
【0032】
<作用効果>
以上説明した本実施形態のチタン合金は、基材の表面にTiO2被膜が形成されるので、バンドギャップエネルギー相当の波長の光を照射することによりOHラジカルが発生し、抗菌活性値が2.0以上の抗菌性を発現する。これは、滅菌処理した場合と同等の効果があり、オートクレーブ滅菌処理によるTiNbSn合金のヤング率の増加を防ぐことができる。
しかも、基材表面に形成される被膜は生体親和性に優れるTiO2であるため、生体活性を有する。
【0033】
<用途>
本実施形態のチタン合金は生体用として好適であり、骨に近いヤング率を維持できることから、人工股関節等の生体材料として特に好適である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
【0035】
[実施例1]
<チタン合金の製造>
直径10mm、厚さ1mmの円板状のTiNbSn合金(ニオブの割合が33質量%、スズの割合が4質量%、残部がチタン及び不純物(ただし、不純物の割合は0.04質量%未満である。))からなる基材を、酒石酸ナトリウムと過酸化水素を含む電解液に浸漬した。電解液中の酒石酸ナトリウムのモル濃度は0.05mol/Lであり、過酸化水素のモル濃度は0.7mol/Lであった。
電圧220V、電流密度50mA/cm2、電解液の温度10℃の条件で、0.5時間の陽極酸化処理を行い、基材の表面にTiO2被膜を形成した。
陽極酸化処理の後、エタノールにて洗浄し、室温で乾燥させ、チタン合金を得た。
乾燥後のチタン合金を450℃で5時間、大気中にて加熱処理した。
加熱処理後のチタン合金について、以下のようにしてTiO2被膜の結晶構造を薄膜X線回折により分析した。
また、加熱処理後のチタン合金について、以下のようにして抗菌活性値、ヤング率、メチレンブルー分解率(MB分解率)、OHラジカル量及び過酸化水素量を測定した。
さらに、加熱処理前のチタン合金について、以下のようにして生体活性を評価した。
【0036】
<測定・評価>
(薄膜X線回折)
基材の表面に形成されたTiO
2被膜の結晶構造を薄膜X線回折装置(Panalytical社製、ターゲットCu)を用い、2θ=24~28.5°の範囲で分析した。薄膜X線回折のプロファイルを
図1に示す。
また、2θ=25°付近の回折線(アナターゼ101)及び2θ=27°付近の回折線(ルチル110)における半価幅をプロファイルより計算した。また、ルチル型TiO
2の割合(分率)を下記式(1)より求めた。これらの結果を表1に示す。
f
rutile={0.679×I
rutile/(I
rutile+I
anatase)}+0.312×{I
rutile/(I
rutile+I
anatase)}
2 ・・・(1)
式(1)中、「I
rutile」はルチル110回折線の積分強度であり、「I
anatase」はアナターゼ101回折線の積分強度であり、「f
rutile」はルチル型TiO
2の分率である。
【0037】
(抗菌活性値の測定)
JIS R 1702に準拠した抗菌性試験により抗菌活性値を測定した。具体的には、以下のようにして行った。なお、実施例1では、同一条件で作製した異なる3個のチタン合金について、抗菌性試験を行った。
ニュートリエント寒天培地を用い、独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入した大腸菌(NBRC3972)を37℃、24時間の条件で培養後、凍結保存した。実験時には新たなニュートリエント寒天培地を用い、37℃、20時間の条件で凍結保存した大腸菌を培養し使用した。
培養した大腸菌を1/500濃度普通ブイヨン培地で、菌数が1×107個/mLとなるように調製し、これを試験菌液とした。
チタン合金をシャーレ内に配置し、チタン合金のTiO2被膜表面に試験菌液を20μL(2×105個)接種し、滅菌済みのOHPフィルムで菌液を密着させた。乾燥を防ぐ目的で厚さ1.1mmのガラス板をシャーレの上に乗せた。OHPフィルムとガラス板を透過する365±25nmの紫外線量が0.25mW/cm2になるように調整し、紫外線を照射しながら25℃で21時間照射した。
紫外線照射後、SCDLP培地10mLを入れたチューブにチタン合金とOHPフィルムを入れて、試験菌液を洗い流した。
回収したSCDLP培地10mLを生理食塩水で希釈した。SCDLP培地及び得られた希釈液50μLをニュートリエント寒天培地に塗布して、37℃で16時間培養した後に形成されたコロニー数を測定し、生菌数(A)を求めた。
別途、チタン合金の代わりにソーダガラスを用いた以外は同様にして抗菌性試験を行い、生菌数(B)を求めた。
下記式(2)より、チタン合金の抗菌活性値を算出した。結果を表2に示す。
抗菌活性値=log10(生菌数(B)/生菌数(A)) ・・・(2)
なお、チタン合金において、生残菌が認められない場合は、式(2)中の生菌数(A)に「10」を代入して計算した。
【0038】
(ヤング率の測定)
JIS Z 2280に準拠した共振法により、室温(20℃)でチタン合金のヤング率を測定した。
同一条件で作製した異なる5個のチタン合金についてヤング率を測定し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0039】
(MB分解率の測定)
JIS R 1703-2に準拠して、MB分解率を測定した。具体的には以下のようにして行った。
25mg/Lのメチレンブルー水溶液を満たした石英製セルにチタン合金を浸漬し、3時間、365±25nm、1500mW/cm2の紫外線を室温(20℃)20分間照射した。照射している間、定期的に石英ガラスからメチレンブルー水溶液を採取し、分光光度計にて664nmの吸光度を測定し、吸光度変化からMB分解率を算出した。
同一条件で作製した異なる3個のチタン合金についてMB分解率を測定し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0040】
(OHラジカル量の測定)
OH捕捉剤として、5,5-ジメチル-1-ピロリンN-オキシド(DMPO)を用いた。DMPOの濃度が0.3mol/LとなるようにDMPOを純水に溶解させ、DMPO水溶液を調製した。
24ウェルプレートにチタン合金を静置し、DMPO水溶液500μLを滴下し、400±10nm、1250mW/cm2の紫外線を室温(20℃)で5分間照射した。次いで、ウェルから200μLの試験液を扁平型の水溶液用セルに採取し、ESRによるスピントラッピング法に基づき、OHラジカル量を測定した。ESR測定には電子スピン共鳴装置(日本電子株式会社製、「JES-FA-100」)を用い、X-band(9.4GHz)のマイクロ波で測定した。
同一条件で作製した異なる3個のチタン合金についてOHラジカル量を測定し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0041】
(過酸化水素量の測定)
純水24mLと、濃度0.1mol/L硫酸6mLと、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物11.8mgとを混合し、混合液Aを調製した。
別途、純水30mLとキシレノールオレンジ四ナトリウム9.1mgと、D-ソルビトール2186.0mgとを混合し、混合液Bを調製した。
24ウェルプレートにチタン合金を静置し、純水500μLを滴下し、400±10nm、1250mW/cm2の紫外線を室温(20℃)で5分間照射した。
混合液Aの200μLと、混合液Bの200μLを混合し、キシレノールオレンジ混合液を調製した。
次いで、ウェルから400μLの試験液を試験管に採取し、比色法により過酸化水素量を測定した。具体的には、試験液を採取した試験管に400μLのキシレノールオレンジ混合液を加え、撹拌した。その後、室温(20℃)で45分間静置して反応を完了させ、分光光度計(Biochrom社製、「GeneQuant1300」)を用いて波長560nmの吸光度を測定した。
さらに、市販の試薬(特級)である過酸化水素を用いて、比色法により過酸化水素量を測定し、検量線を作成した。
以上の実験を通して、吸光度から過酸化水素検量線により、過酸化水素量を算出した。
同一条件で作製した異なる3個のチタン合金について過酸化水素量を測定し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0042】
(生体活性の評価)
チタン合金を80℃の温水中に12時間浸漬させて、温水処理を施した。
温水処理後のチタン合金を、疑似体液としてGibco社製のハンクス平衡塩溶液25mLに36.5℃で1週間浸漬した。
その後、ハンクス平衡塩溶液からチタン合金を取り出し、蒸留水で洗浄し、ドライインキュベーター内で24時間乾燥させた。
乾燥後のチタン合金をハンクス平衡塩溶液25mLに36.5℃で1週間浸漬した。この間、中間期間経過時にハンクス平衡塩溶液を新鮮なものに交換した。
その後、ハンクス平衡塩溶液からチタン合金を取り出し、蒸留水で洗浄し、ドライインキュベーター内で24時間乾燥させた。
乾燥後のチタン合金について、FE-EPMA(日本電子株式会社製)による組織観察とWDX分析からハイドロキシアパタイトの生成の有無を確認し、以下の評価基準にて評価した。結果を表2に示す。また、組織写真を
図2(a)、(b)に示す。
〇:ハイドロキシアパタイトを確認できた。
×:ハイドロキシアパタイトを確認できない。
【0043】
[実施例2]
陽極酸化処理を行う際の電圧を380Vに変更した以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、実施例1と同様にして抗菌活性値を測定した。結果を表2に示す。
【0044】
[実施例3]
酒石酸ナトリウムのモル濃度が0.05mol/Lであり、過酸化水素のモル濃度が0mol/Lである電解液を用い、かつ陽極酸化処理を行う際の電圧を380Vに変更した以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、実施例1と同様にして抗菌活性値を測定した。結果を表2に示す。
【0045】
[比較例1]
陽極酸化処理の後に加熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、実施例1と同様にしてTiO
2被膜の結晶構造を薄膜X線回折により分析した。これらの結果を
図1及び表1に示す。
また、得られたチタン合金について、実施例1と同様にして抗菌活性値、ヤング率、MB分解率、OHラジカル量及び過酸化水素量を測定し、生体活性を評価した。これらの結果を表2に示す。なお、比較例1では、同一条件で作製した異なる2個のチタン合金について、抗菌性試験を行った。
【0046】
[比較例2]
酒石酸ナトリウムのモル濃度が0.05mol/Lであり、過酸化水素のモル濃度が0mol/Lである電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、実施例1と同様にしてTiO
2被膜の結晶構造を薄膜X線回折により分析した。これらの結果を
図1及び表1に示す。
また、得られたチタン合金について、実施例1と同様にして抗菌活性値、ヤング率、MB分解率、OHラジカル量及び過酸化水素量を測定し、生体活性を評価した。これらの結果を表2に示す。
【0047】
[比較例3]
酒石酸ナトリウムのモル濃度が0.05mol/Lであり、過酸化水素のモル濃度が0mol/Lである電解液を用い、陽極酸化処理の後に加熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、実施例1と同様にしてTiO
2被膜の結晶構造を薄膜X線回折により分析した。これらの結果を
図1及び表1に示す。
また、得られたチタン合金について、実施例1と同様にしてヤング率、MB分解率、OHラジカル量及び過酸化水素量を測定し、生体活性を評価した。これらの結果を表2に示す。
【0048】
[比較例4]
直径10mm、厚さ1mmの円板状のTiNbSn合金(ニオブの割合が33質量%、スズの割合が4質量%、残部がチタン及び不純物(ただし、不純物の割合は0.04質量%未満である。))からなる基材について、実施例1と同様にしてヤング率及びMB分解率を測定し、生体活性を評価した。これらの結果を表2に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
図1及び表1から明らかなように、TiNbSn合金を陽極酸化処理すると、ルチル型TiO
2の割合が多いTiO
2被膜が基材の表面に形成された。ルチル型TiO
2の割合は、陽極酸化処理した後に加熱処理することで増加した。
また、
図2及び表2から明らかなように、TiNbSn合金からなる基材を用いて製造したチタン合金を疑似体液に2週間浸漬することでハイドロキシアパタイトが生成したが、陽極酸化処理を施さない場合は、ハイドロキシアパタイトが生成しなかった。
また、表2から明らかなように、実施例1で得られたチタン合金は、骨に近いヤング率を有していた。また、抗菌活性値、MB分解率、OHラジカル量及び過酸化水素量が比較例1~3で得られたチタン合金に比べて高く、抗菌性にも優れていた。実施例2、3で得られたチタン合金も抗菌活性値が高く、抗菌性に優れていた。
【0052】
[実施例4]
陽極酸化処理を行う際の電圧を380Vに変更した以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、実施例1と同様にして抗菌活性値を測定した。結果を表3に示す。なお、実施例4では、同一条件で作製した異なる2個のチタン合金について、抗菌性試験を行った。
【0053】
[実施例5]
陽極酸化処理を行う際の電圧を380Vに変更した以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、大腸菌(E.coli)の代わりにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を培養した以外は実施例1と同様にして抗菌活性値を測定した。結果を表3に示す。なお、実施例5では、同一条件で作製した異なる2個のチタン合金について、抗菌性試験を行った。
【0054】
[実施例6]
陽極酸化処理を行う際の電圧を380Vに変更した以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、大腸菌の代わりに黄色ブドウ球菌(S.aureus)を培養した以外は実施例1と同様にして抗菌活性値を測定した。結果を表3に示す。なお、実施例6では、同一条件で作製した異なる2個のチタン合金について、抗菌性試験を行った。
【0055】
[実施例7]
酒石酸ナトリウムのモル濃度が0.05mol/Lであり、過酸化水素のモル濃度が0mol/Lである電解液を用い、かつ陽極酸化処理を行う際の電圧を380Vに変更した以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、実施例1と同様にして抗菌活性値を測定した。結果を表3に示す。なお、実施例7では、同一条件で作製した異なる2個のチタン合金について、抗菌性試験を行った。
【0056】
[実施例8]
酒石酸ナトリウムのモル濃度が0.05mol/Lであり、過酸化水素のモル濃度が0mol/Lである電解液を用い、かつ陽極酸化処理を行う際の電圧を380Vに変更した以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、大腸菌の代わりにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を培養した以外は実施例1と同様にして抗菌活性値を測定した。結果を表3に示す。なお、実施例8では、同一条件で作製した異なる2個のチタン合金について、抗菌性試験を行った。
【0057】
[実施例9]
酒石酸ナトリウムのモル濃度が0.05mol/Lであり、過酸化水素のモル濃度が0mol/Lである電解液を用い、かつ陽極酸化処理を行う際の電圧を380Vに変更した以外は、実施例1と同様にしてチタン合金を製造した。
得られたチタン合金について、大腸菌の代わりに黄色ブドウ球菌を培養した以外は実施例1と同様にして抗菌活性値を測定した。結果を表3に示す。なお、実施例9では、同一条件で作製した異なる2個のチタン合金について、抗菌性試験を行った。
【0058】
【0059】
表3から明らかなように、実施例4~9で得られたチタン合金は、菌の種類を変えても抗菌活性値が高く、抗菌性に優れていた。特に、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は耐性菌であるが、本発明のチタン合金であれば、耐性菌であっても高い抗菌性を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のチタン合金は、骨に近いヤング率を維持しつつ、高い抗菌性と生体活性を有し、生体材料として好適である。