(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】被験者分析装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20241114BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61B5/16 120
A61B3/113
(21)【出願番号】P 2021080777
(22)【出願日】2021-05-12
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515274033
【氏名又は名称】株式会社夏目綜合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】臼倉 正
(72)【発明者】
【氏名】弓削 八郎
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/135796(WO,A1)
【文献】特開2016-032587(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0048075(KR,A)
【文献】特開2004-282471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
A61B 5/06 - 5/22
A61B 9/00 -10/06
G06Q 30/00 -30/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に対し,質問を出力する質問出力部(21)と,
前記質問の回答候補を被験者用表示部(3)に表示する回答表示部(5)と,
前記被験者の視線位置を分析する視線位置分析部(7)と,
を有し,
前記質問及び前記回答候補が表示される分析者用表示部(2)の表示画面を複数の領域に分け、複数の領域のうち少なくとも一つ以上の領域の
注目度を求め,求めた注目度を分析者用表示部(2)の表示画面のうち前記複数の領域における対応する領域に表示
し,
前記複数の領域は、前記表示画面を格子状に分割することで形成される同じ形状の単位領域を複数含むものである、
被験者分析装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の被験者分析装置(1)であって,
前記質問及び前記回答候補が表示される分析者用表示部(2)の表示画面を複数の領域に分け、複数の領域のうち少なくとも一つ以上の領域の
注目度を求め,求めた注目度を分析者用表示部(2)の表示画面のうち前記複数の領域における対応する領域に表示するように,前記注目度を前記質問出力部(21)と前記回答表示部(5)の映像情報に付加することで,注目度付加映像情報を生成し,前記注目度付加映像情報に基づいた映像を分析者用表示部(2)に表示する,被験者分析装置(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の被験者分析装置(1)であって,
前記視線位置分析部(7)が分析した視線位置を,前記質問出力部(21)と前記回答表示部(5)の映像情報に付加することで,視線位置付加映像情報を生成し,前記視線位置付加映像情報に基づいた映像を分析者用表示部(2)に表示する,被験者分析装置(1)。
【請求項4】
請求項1に記載の被験者分析装置(1)であって,
前記視線位置分析部(7)が分析した視線位置の変化に基づいて,前記被験者の性格,能力,心身の状況,興味・嗜好又は呈示刺激の評価をする,
被験者分析装置(1)。
【請求項5】
請求項1に記載の被験者分析装置(1)であって,
前記被験者の瞳孔径を分析する瞳孔径分析部(11)をさらに有する,
被験者分析装置(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の被験者分析装置(1)であって,
前記視線位置分析部(7)が分析した視線位置を前記分析者用表示部(2)に表示するとともに,
前記瞳孔径分析部(11)が分析した被験者の瞳孔径に基づいて,前記分析者用表示部(2)に表示される視線位置の色,大きさ,又は形を変化させる,
被験者分析装置(1)。
【請求項7】
請求項1に記載の被験者分析装置(1)であって,前記複数の領域における対応する領域に表示される注目度は、数値である、被験者分析装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,被験者分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許5445981号公報に,視認情景に対する視認者情感判定装置が記載されている。
【0003】
従来,質問等を被験者に対して提示し,その質問に対する回答内容そのものだけに基づいて被験者の性格や能力,心理状態を把握していた。しかし,このような手法では,被験者の持つ潜在的,無意識的な心理状態,パーソナリティ等を把握することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5445981号公報
【文献】特許6651536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで,本発明は,被験者が呈示刺激等の質問内容を感知する際に,その視線情報や瞳孔径,注目度を計測することで,その被験者の性格・能力の判断,心身の状況・興味・嗜好の評価,呈示刺激の評価を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に記載されるある発明は,以下の態様の被験者分析装置1である。
上記の被験者分析装置1は,被験者に対し,質問を出力する質問出力部21を有する。
さらに,上記の被験者分析装置1は,前記質問の回答候補を被験者用表示部3に表示する回答表示部5を有する。さらに,上記の被験者分析装置1は,前記被験者の視線位置を分析する視線位置分析部7を有する。
【0007】
この発明の好ましい例は,視線位置分析部7が分析した視線位置を,質問出力部21と回答表示部5の映像情報に付加し,視線位置付加映像情報を生成し,視線位置付加映像情報に基づいた映像を分析者用表示部2に表示するものである。
【0008】
この発明の好ましい例は,視線位置分析部7が分析した視線位置の変化に基づいて,前記被験者の性格又は能力の判断,心身の状況や興味・嗜好の評価,又は呈示刺激の評価をするものである。
【0009】
この発明の好ましい例は,被験者の瞳孔径を分析する瞳孔径分析部11をさらに有するものである。
【0010】
この発明の好ましい例は,視線位置分析部7が分析した視線位置を分析者用表示部2に表示するとともに,瞳孔径分析部11が分析した被験者の瞳孔径に基づいて,分析者用表示部2に表示される視線位置の色,大きさ,又は形を変化させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は,被験者が質問内容を感知する際に,その視線情報や瞳孔径,注目度を計測することで,その被験者の性格・能力の判断,心身の状況・興味・嗜好の評価,呈示刺激の評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は,本発明の被験者分析装置のブロック図である。
【
図2】
図2は,本発明の瞳孔分析結果再生プレーヤーの画面を例示した図である。
【
図3】
図3は,瞳孔分析結果再生プレーヤーの画面に表示される瞳孔径グラフの一例を示した図である。
【
図4】
図4は,瞳孔分析結果再生プレーヤーの画面に表示される注目度グラフの一例を示した図である。
【
図5】
図5は,本発明において出力されるファイルの内容の例を示した図である。
【
図6】
図6は,本発明において出力されるファイルの内容の例を示した図である。
【
図7】
図7は,本発明にて実行される処理の1例を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0014】
<各要素の説明>
以下で説明する被験者分析装置1は,基本的に,制御演算装置,記憶装置,入力装置,及び出力装置といったハードウェアを有してよい。制御演算装置は,入力装置から入力された情報に基づいて,記憶装置に記憶されているプログラムに従った所定の演算処理を実行し,その演算結果を適宜記憶装置に書き出したり読み出したりしながら,出力装置を制御する。制御演算装置の例は,CPUやGPUなどのプロセッサである。記憶装置のストレージ機能は,例えばHDD及びSSDといった不揮発性メモリによって実現でき,記憶装置のメモリ機能は,例えばRAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。入力装置の例は,ネットワークを介して情報を受信するための通信モジュールや,マウスやキーボードなどの操作用モジュールである。出力装置の例は,ネットワークを介して情報を送信するための通信モジュールや,ディスプレイ,スピーカなどである。
例えば,記憶部には,制御プログラムが記憶されていてもよいし,各種情報が記憶されていてもよい。入力装置から所定の情報が入力された場合,制御部は,記憶部に記憶される制御プログラムを読み出す。そして,制御部は,適宜記憶部に記憶された情報を読み出し,演算部へ伝える。また,制御部は,適宜入力された情報を演算部へ伝える。演算部は,受け取った各種情報を用いて演算処理を行い,記憶部に記憶する。制御部は,記憶部に記憶された演算結果を読み出して,出力部から出力する。このようにして,各種処理が実行される。この各種処理を実行するものが,各手段である。
本発明では,まず,被験者に動画や静止画,実物の質問内容を感知してもらい,その時の眼球情報を取得し,その分析を行う。それと同時に,被験者が感知した質問内容を動画として,被験者の視線のカメラアングルで撮影する。その映像情報に対して,時間ごとの上記の映像における被験者の視線位置に位置するマーカーを付加して,瞳孔分析結果動画を加工・生成する。そして,ユーザの操作によってその動画を分析者用表示部2等で再生表示する。さらに,上記の情報に基づきパーソナリティ診断部23にて,被験者のパーソナリティ診断が行なわれる。
【0015】
(被験者分析装置1)
図1は,本発明の被験者分析装置1のブロック図である。
被験者分析装置1は,分析者用表示部2と,視線位置分析部7と,制御部13と,通信部15とを有する。さらに,被験者分析装置1は,注目箇所判断部9と,瞳孔径分析部11とを有することが好ましい。また,被験者分析装置1は,質問提供装置19を有することが好ましい。被験者分析装置1は,パーソナリティ診断部23が設けられてもよい。
被験者分析装置1は,静止画や動画等を見ている被験者の視線位置や視線位置の変化を分析するための装置である。
そして,被検者分析装置1には,被験者の眼球情報,視覚情報を取得するための,カメラや外部デバイスが接続されることが好ましい。
【0016】
(分析者用表示部2)
分析者用表示部2は,液晶ディスプレイなどであり,制御部13からの指示に従って,後述する瞳孔分析結果再生プレーヤー4等の各種情報を表示する。分析者用表示部2は
,後述する被験者用表示部3と同一でもよい。
【0017】
(瞳孔分析結果再生プレーヤー4)
図2は,被験者分析装置1の瞳孔分析結果動画表示プレーヤー4の内容を表した図である。
瞳孔分析結果動画表示プレーヤー4は,質問内容を感知した被験者の瞳孔分析結果を表示するための要素である。
瞳孔分析結果動画表示プレーヤー4は,web上で動作するものであってもよいし,パソコン等の端末内にてオフラインで動作するものであってもよい。
図2の様に,瞳孔分析結果動画表示プレーヤー4は,例えば,被験者の注目度,瞳孔分析結果表示するための分析結果動画表示欄4aを有してよい。
瞳孔分析結果動画表示プレーヤー4には,コンテンツヒートマップ設定欄4dや,瞳孔径・注目度グラフ表示設定欄4cと,ミニメニュー表示位置設定欄4dと瞳孔径・注目度グラフ表示欄4eが設けられてもよい。
【0018】
分析結果動画表示欄4aは,被験者が感知した質問内容,回答候補,被験者の視線位置及び注目度を対応させた映像を表示する部分である。具体的には,例えば,分析結果動画表示欄4aに表示される映像は,被験者が感知する質問内容,回答候補の映像情報を基本映像として以下の様に視線位置及び注目箇所等の情報が付加されたものである。質問内容等を感知中の被験者の視線位置をその基本映像上に,所定のヒートマップマーカーとして付加表示する。
つまり,質問内容と回答候補を感知中の被験者の実際の視線の位置と上記の映像情報のヒートマップマーカーの位置は対応している。また,そのマーカーは被験者の注目度に応じて,色や,大きさ又は形が変化してよい。
分析結果動画表示欄4aの下部には,例えば,動画再生ボタンや,巻き戻しボタン及び早送りボタンが設けられてよい。これ以外にも,再生位置設定と再生速度を設定するためのミニメニューが分析結果動画表示欄4aに表示されてもよい。
【0019】
瞳孔分析結果動画表示プレーヤー4には,分析結果動画にヒートマップのマーカー等を表示させるか否か,ユーザ(分析者)が選択できるラジオボックス等のヒートマップ設定欄4bが,設けらてもよい。例えば,ヒートマップ設定欄4bの非表示を選択して再生ボタンが押下されると,上記の分析結果動画に注目箇所のマーカーが表示されない状態で動画が再生される。また,コンテンツヒートマップ設定欄の表示を選択して再生ボタンが押下されると,上記の分析結果動画に注目箇所のマーカーが表示された動画が再生されされる。さらに,マーカーを分析結果動画に表示させる場合,動画上にメッシュ線が表示されてもよい。
【0020】
瞳孔分析結果動画表示プレーヤー4には,上記のグラフのうち,どちらのグラフを表示させるか否か,ユーザが選択できるラジオボックスを有する瞳孔径・注目度グラフ選択欄4cが,設けらてもよい。
瞳孔径のラジオボックスが選択されれば,瞳孔径グラフが,瞳孔径・注目度グラフ表示欄4eに表示され,注目度のラジオボックスが選択されれば,注目度グラフが瞳孔径・注目度グラフ表示欄4eに表示される。
【0021】
瞳孔分析結果動画表示プレーヤー4は,被験者の瞳孔径を表す瞳孔径グラフと,被験者の注目度を表す注目度グラフとを表示する瞳孔径・注目度グラフ表示欄4dを有してよい。被験者の瞳孔径を表すグラフと被験者の注目度を表すグラフは,どちらか一方だけを表示する態様でもよいし,両方のグラフを表示する態様でもよい。
注目度の計測方法,瞳孔径グラフ及び注目度グラフについては,後述する。
【0022】
この他にも,瞳孔分析結果動画表示プレーヤー4には,ミニメニュー表示位置設定欄4dが設けられてもよい。
ミニメニュー表示位置設定欄4dでは,ミニメニュー表示位置を設定することができる。
【0023】
(瞳孔径,瞳孔径グラフ)
被験者分析装置1は,カメラ等を有する外部の装置から,被験者の瞳孔径情報を受取る。本発明で用いられる瞳孔径の計測方法は,特許6651536号公報で示されるような方法であってよい。
【0024】
特許6651536号公報の発明によれば、明暗、呼吸及び脈拍の影響を排除した瞳孔径を測定することができ、視認者の情感をより正確に判定することが可能となる。
なお本発明においては,瞳孔径を適切に計測できるものであれば,これ以外の公知の方法によって計測できる瞳孔径が用いられてもよい。
【0025】
図3のグラフは,被験者による質問内容感知時の瞳孔径の時間変位を表すグラフである。このグラフは,表示部3の瞳孔径・注目度グラフ表示欄3eに表示されるグラフである。
このグラフの横方向は,分析結果動画の再生中の時間位置(動画再生中時間位置線33)から,どの程度時間的に離れているかを表している。
このグラフにおいて縦線(動画再生中時間位置線33)は,分析者表示部2で表示される瞳孔分析結果動画の,まさに再生中の位置(時間)を示している。グラフ上,動画再生中時間位置線33の左側が,瞳孔分析結果再生プレーヤー4にて再生済みの時間位置における注目度に関する情報であり,その右側が瞳孔分析結果再生プレーヤー4にて未再生の時間位置における注目度に関する情報である。
また,このグラフの縦方向(
図3の上方向が正方向)は,瞳孔径とコンテンツ輝度相当の大きさを表す。
【0026】
このグラフにおいて横線の生測定瞳孔径27は,被験者の再生時間位置ごとの瞳孔径の大きさを表す点の集合で形成される線である。
このグラフにおいて横線のコンテンツ輝度相当29は,被験者の再生時間位置ごとのコンテンツ輝度から想定される瞳孔径の大きさを表す点の集合で形成される線である。
つまり,これらの生測定瞳孔径27とコンテンツ輝度相当29の線は,分析動画の再生位置(時間)が進めば,グラフ左方向に遷移することになる。
また,瞳孔径グラフの仕様は,上記以外に以下の様なものであってもよい。
分析結果動画の全時間分の生測定瞳孔径27とコンテンツ輝度相当29が,動画再生前から先に固定表示され,動画再生中の位置(時間)に対応して,動画再生中時間位置線33が遷移する仕様であってもよい。
【0027】
(注目度・注目度グラフ)
注目度は,被験者がどの程度その対象物に注目しているかを表す指標である。本発明の注目度は,例えば,上記の特許公報665136にて記載されている方法によるものでよい。
なお本発明においては,注目度を適切に計測できるものであれば,これ以外の公知の方法によって計測できる注目度が用いられてもよい。
【0028】
図4(注目度グラフ)のグラフは,被験者の,質問内容感知時の注目度の時間変位を表すグラフである。このグラフは,瞳孔分析結果再生プレーヤー4の瞳孔径・注目度グラフ表示欄4eに表示されるグラフである。
このグラフの横方向は,分析結果動画の再生中の時間位置(動画再生中時間位置線33)から,どの程度時間的に離れているかを表している。
このグラフにおいて縦線の動画再生中時間位置線33は,瞳孔分析結果再生プレーヤー4で表示される分析結果動画の,まさに再生中の位置(時間位置)を示している。グラフ上,動画再生中時間位置線33の左側が,瞳孔分析結果再生プレーヤー4にて再生済みの時間位置における注目度に関する情報であり,その右側が瞳孔分析結果再生プレーヤー4にて未再生の時間位置における注目度に関する情報である。
また,このグラフの縦方向(
図4の上方向が正方向)は,注目度の大きさを表す。
このグラフにおいて横線の注目度31は,被験者の再生時間位置ごとの注目度の大きさを表す点の集合で形成される線である。
つまり,この注目度31の線は,瞳孔分析結果動画の再生位置が進めば,上記のグラフの左方向に遷移することになる。
【0029】
このグラフにおいて横線の注目度基準線35は,注目度レベル値(好ましくは1.0超)相当の高さに位置する基準線であり,グラフ上に固定表示されたものである。
また,注目度グラフの仕様は,上記以外に以下の様なものであってもよい。
分析結果動画の全時間分の注目度31の線と注目度基準線35が,動画再生前から先に固定表示され,動画再生中の位置(時間)に対応して,動画再生中時間位置線33が遷移する仕様であってもよい。
【0030】
(質問内容提供装置19)
質問内容提供装置19は,被験者に対して質問内容を提供し,回答候補等を提示するための装置である。質問内容提供装置19は,質問出力部21,回答表示部5,被験者用表示部3,制御部37,及び通信部39を備える。
(被験者用表示部3)
被験者用表示部3は,液晶ディスプレイなどであり,制御部37からの指示に従って,後述する回答表示部5等の各種情報を表示する。
【0031】
(質問出力部21)
質問出力部21は,被験者に対して質問内容を提供するための部位である。質問出力部21にて,提供される質問内容は,五感に訴えるもの等多岐にわたる。
それは,例えば,質問内容が視覚に訴えるものであれば,動画を提供するディスプレイやモニター等でよいし,視覚のみならず,嗅覚等に訴えるものであれば,実物を提示する機械装置等であってもよい。また,聴覚に訴えるものであれば,動画等を提供するディスプレイやモニター等でもよいし,スピーカでもよいし,音を発する実物等を提供できる機械装置等であってよい。それが,嗅覚に訴えるものであれば,香りを発するものを提供する機械装置であってよい。
質問出力部21にて提供される内容は,被験者の記憶を想起させる内容であってもよい。
例えば,被験者に対して口頭等によって過去の記憶や経験の有無に関して明示的に問答しても,その被験者の記憶上の真の認識事実を把握することは難しい場合がある。
それに対して,本発明では,被験者に対して,目撃等した記憶を想起させるような情報を呈示することで,その瞳孔反応等から,その記憶上の真の認識事実を推定することもできる。
なお,質問出力部21にて被験者に対して呈示される内容は,明示的な問いだけに限られない。例えば,一見して無意味な無地の画面やTVCMや,色が段階的又は交互に変化する画像又は,ホワイトノイズ等の無意味な音声等が,質問内容として被験者に提供されてもよい。また,
なお,質問出力部21で提供される質問内容が動画等である場合,質問出力部21は,被験者用表示部3と同一のデバイス等であってよい。
【0032】
(回答表示部5)
回答表示部5は,被験者に提供される上記の質問に対する回答の候補を表示するための要素,画面等である。回答表示部5は,ディスプレイやモニターに表示されものであってよい。
例えば,質問出力部21にて被験者に提供される質問内容が,文章による質問であった場合,「あてはまる」,「ややあてはまる」,「ややあてはまらない」,「あてはまらない」等の回答候補が,回答表示部5に表示される。 そして,被験者は,その回答候補の中から自身の回答を選ぶ。そして,その回答内容,その画面における被験者の視線位置と注目度に基づいてパーソナリティ診断部23でその被験者の診断・評価を行うことができる。
【0033】
(視線位置分析部7)
視線位置分析部7は,外部のカメラ等により撮影された被験者の感知する質問内容の映像,被験者の眼球運動の情報から,被験者の視点位置を分析するための要素である。視線位置分析部7は,外部のカメラにより撮影された眼球運動映像を取得する。
質問出力部21で提供されものが,動画等の映像情報の場合,視線位置分析部7は,その映像情報を質問内容の映像情報として取得する。
一方,質問出力部21で提供されものが,映像情報以外の場合,質問出力部21で提供されるものを外部のカメラ等で撮影する。
そして,視線位置分析部7は,上記の質問内容の映像情報と回答表示部5の映像情報を合成して,質問内容と回答の映像情報として,その情報を取得する。
なお,この質問内容と回答の映像情報は,被験者視点のカメラアングルによる映像情報を含むものとする。
以下で言及する質問内容と回答の映像情報は,上記の映像情報を表すものとする。
そして,視線位置分析部7は,上記の質問内容と回答表示部の映像情報及び眼球運動映像から,その映像における被験者の視認位置を特定し,その情報を記憶部17に保存する。
【0034】
なお,視線位置分析部7にて用いられる視点位置の分析方法は,被験者の感知する質問内容の映像における視点位置を特定できる方法であれば,公知の方法が用いられてよい。
【0035】
(注目箇所判断部11)
注目箇所判断部11は,質問内容と回答候補を感知する被験者が,その質問内容と回答候補のどの部分に注目しているかを判断するための要素である。例えば,注目箇所判断部11は,眼球測定用のカメラ等の外部デバイスから取得した,被験者の感知する質問内容と回答の映像情報及び被験者の眼球運動の情報等を受け取る。そして,映像画面の画面箇所の情報とその部分の被験者の注目度を記憶部17に保存する。
これらの情報を用いることにより,瞳孔分析結果再生プレーヤー4にて表示される瞳孔分析結果動画に対して,後述する様々なマーカーによって表される被験者の視線位置を,付加することができる。
【0036】
(視線位置の表示)
被験者分析装置1は,視線位置分析部7等により得られる情報に基づいて分析結果動画上に表示される視線位置のマーカーの表示態様の情報を生成する。そして,上記の情報を,質問内容と回答の映像情報に付加して視線位置付加映像情報を生成する。
そして,分析者用表示部2に視線位置付加映像情報に基づいた映像を表示する。
これにより,被験者が感知した質問内容と回答の映像における被験者の視線位置に,上記の視線位置のマーカーを表示することが可能となる。
例えば,動画の再生位置時間及び視線位置ごとの注目度に基づいて,分析結果動画における,その視線位置のマーカーの色を設定する。注目度が一定値以上であれば,そのマーカーの部分を赤色にし,その値未満であれば,その色を青色にする。
また,視線位置のマーカーの表示態様は,色が変わるだけでなく,マーカーの大きさや形が変化するものであってもよい。
【0037】
(瞳孔径分析部13)
瞳孔径分析部13は,被験者の瞳孔径を分析するための要素である。瞳孔径分析部13は,外部のカメラ等から得られた被験者の眼球情報を取得する。
本発明における瞳孔径の計測方法は,上記の(瞳孔径,瞳孔径グラフ)で述べる様に,特許6651536号公報で示されるような方法を想定している。本発明の瞳孔径の計測方法には,これ以外の方法であっても,瞳孔径を正確に計測できる方法であれば公知となっている方法が用いられてよい。
【0038】
(パーソナリティ診断部23)
被験者分析装置1は,パーソナリティ診断部23を有してもよい。パーソナリティ診断部23は,被験者に対して,性格・能力の判断や心身の状況,興味・嗜好の評価又は呈示刺激の評価を行うための要素である。そのパーソナリティの診断結果は,分析者用表示部2等に表示されてもよいし,レポートファイルとして出力されてもよい。
また,パーソナリティ診断部23の診断処理は,学習済みモデル25を用いて行なわれてもよい。学習済みモデル25は,多数の被験者の生体データに対して機械学習を行うことによりパラメータ(いわゆる「重み」)が調整されたモデルデータである。
例えば,多数の被験者に提供した質問(コンテンツ),視線位置,注目度,及びその被験者のパーソナリティ(性格,能力,心身の状況,興味・嗜好,呈示刺激に対する真の反応)を教師データとしてディープラーニング等の機械学習を実施することにより,学習済みモデル25が作成される。この場合,ある被験者に提供した質問内容,回答候補,視線位置,瞳孔径,注目度を入力値としてこの学習済みモデル25を参照することで,その入力値に対応した出力値としてパーソナリティ診断結果を得られるようになっている。被験者分析装置1は,このような学習済みモデルを予め有していることとしてもよい。ただし,この学習済みモデル25は,必須の要素ではない。
【0039】
(制御部13,制御部37)
制御部13は,被験者分析装置1の各要素に対して処理指示をするための要素である。また,記憶部等にアクセスし,データを参照,登録,更新等を行うための要素である。
制御部37は,質問提供装置の各要素に対して処理指示をするための要素である。
【0040】
(通信部15,通信部39)
通信部15は,被験者分析装置1が質問内容提供装置19等との間で情報の送受信を行うための機能を有する。通信部15は,任意の通信規格に準拠した通信を行う要素である。
通信部39は,質問内容提供装置19が被験者分析装置1等との間で情報の送受信を行うための機能を有する。通信部39は,任意の通信規格に準拠した通信を行う要素である。
【0041】
(分析結果出力ファイル)
上記の被験者分析装置による被験者の瞳孔径や注目度の計測結果は,レポートファイルとして出力される。その出力先は,被験者分析装置内であってもよいし,外部のデバイス等であってもよい。
【0042】
図5は,出力されるファイルデータのうち,各被験者の注目度の時間推移,その平均値のグラフデータを図示したものである。
図5のグラフの横軸は時間軸であり,縦軸は被験者の注目度である。
図6は,出力されるファイルデータのうち,各被験者の注目度総数分布データを図示したものである。上記の注目度総数分布データは,出力されるファイルデータのうち,各被験者の注目度総数分布の集計用データを図示したものである。
また,上記のファイル以外にも,複数の被験者間の注目度のばらつきを示す標準偏差の情報や,一人の被験者の測定中における注目度のばらつきを示す標準偏差の情報を含むファイルが出力されてもよい。
【0043】
<被験者分析装置1における情報処理の動作>
続いて本発明の実施形態の一例による情報処理システムの処理について説明する。
図7は,本発明にて実行される処理の例を示したフロー図である。
なお,以下で述べる処理フローは,本発明の被験者分析装置1を実現するための,内部処理の一例であり,本発明の被験者分析装置1に用いることができる内部処理は,以下の例に限定されない。
(1.被験者の視覚情報と映像情報の取得,分析用動画情報の作成)
ユーザ(分析者等)が,質問提供装置の提供開始ボタン等を押下すると,被験者に対する質問内容提供(サンプル動画再生等)が開始される(S01質問内容提供)。
S01質問内容提供と同時に,被験者の眼球運動の映像情報と質問内容と回答の映像情報が,外部のカメラ等にて公知の方法により取得される。
【0044】
そして,被験者の眼球運動の情報及び質問内容と回答の映像情報が所定の方式で,視線位置分析部7に送られる。そして,それらの情報を基に視線位置分析部7にて,被験者の質問内容等の映像における時間毎の,視線位置情報が作成される。それらの質問内容の映像情報,視線位置情報,眼球運動の情報は,記憶部17等に保存されてもよい(S02視線位置情報作成)。
【0045】
その後,上記の質問内容と回答の映像情報,視線位置情報及び眼球運動情報は,所定の方式にて瞳孔径分析部11に送られる。瞳孔径分析部11は,上記の眼球運動と質問内容と回答の映像情報とその輝度等から,公知の方法にて瞳孔径分析部を計測する。そして,被験者の質問内容等の映像における時間及び視線位置情報毎に,瞳孔径の情報が作成される。上記の情報は記憶部17等に保存されてよい(S03瞳孔径情報作成)。
【0046】
その後,上記の質問内容と回答の映像情報,視線位置情報及び眼球運動情報は,所定の方式にて注目箇所判断部9に送られる。注目箇所判断部9は,上記の眼球運動とコンテンツ映像とその輝度等から,公知の方法にて注目度を計測する。そして,被験者の質問内容と回答の映像情報における時間及び視線位置情報毎に,瞳孔径,注目度の情報が作成される。(S04注目度情報作成)。
上記,S01からS04までの処理により,被験者の瞳孔分析結果動画のための情報が作成される。また,それらの情報を基に上記の分析結果出力ファイルが作成される(S05分析結果出力ファイル作成)。
【0047】
(2.瞳孔分析結果表示)
ユーザ(分析者)によって,瞳孔分析結果再生プレーヤー4の動画再生ボタン等が押下されると,瞳孔分析結果再生プレーヤー4の分析結果動画表示欄4aに,上記S01からS04にて生成された情報に基づいて視線位置付加映像情報が生成される。
そして,視線位置付加映像情報に基づいた映像である分析結果動画が再生表示される(S06分析結果動画再生)。その際,上記の動画再生と同時に,瞳孔分析結果再生プレーヤー4の瞳孔径・注目度グラフ表示設定部4cの選択内容に基づいて,瞳孔径グラフ,注目度グラフが表示される(S07グラフ表示)。さらに,ユーザ(分析者)の操作に応じて,パーソナリティ診断結果が表示,出力されてもよい(S08パーソナリティ診断)。
【0048】
以上,本願明細書では,本発明の内容を実現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は,情報解析分野にて利用され得る。
【符号の説明】
【0050】
1 被験者分析装置
2 分析者用表示部
3 被験者用表示部
4 瞳孔分析結果再生プレーヤー
4a 分析結果動画表示欄
4b ヒートマップ表示設定欄
4c 瞳孔径・注目度グラフ選択欄
4d ミニメニュー表示位置設定部
4e 瞳孔径・注目度グラフ表示欄
5 回答表示部
7 視線位置分析部
9 注目箇所判断部
11 瞳孔径分析部
13 制御部
15 通信部
17 記憶部
19 質問提供装置
21 質問出力部
23 パーソナリティ診断部
25 学習済みモデル
27 生測定瞳孔径
29 コンテンツ輝度相当
31 注目度
33 動画再生中時間位置線
35 注目度基準線
37 制御部
39 通信部