(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ストリングをリサイクルする方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
(21)【出願番号】P 2021555382
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2020056985
(87)【国際公開番号】W WO2020183018
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521417303
【氏名又は名称】メネグリエ,ジャン-マチュー
(72)【発明者】
【氏名】メネグリエ,ジャン-マチュー
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-072569(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107738382(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0145409(US,A1)
【文献】特表2016-505650(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212016(WO,A1)
【文献】米国特許第08920932(US,B1)
【文献】特開2002-173828(JP,A)
【文献】米国特許第05236959(US,A)
【文献】特開2012-075514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
B09B 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ストリングのリサイクル方法であって、
ストリングのタイプを識別するステップ(S0)と、
/S1/
ストリングスストランドの剥離ステップ及び/または研磨ステップを含む、機械的分離ステップ、
/S2/
繊維のコーティングを溶媒に溶解することを含む、化学的分離ステップ、
/S3/
ストリングスストランドを150℃を超えて加熱することを伴う、蒸気熱分解ステップを含む、熱的分離ステップ、
/S4/
ストリングスストランド中の特定の対象成分が、活性生物剤によって分解されるように、ストリングスストランドを微細藻類及び/または酵素を含む活性生物剤と長時間接触させることを含む、生物学的分離ステップ
として定義される
、分離ステップ/S1/、/S2/、/S3/、/S4/のうちの1
つを含む、成分を分離する少なくとも1つのステップと、
を含
み、
リサイクルされる前記ストリングがテニスラケットのストリングであり、
識別するステップ(S0)が、断面図を作成することと、拡大して写真を撮ることと、フィラメントの類型を分析することとからなり、そこから少なくとも次のタイプ、シングルマルチフィラメント、マルチコアマルチフィラメント、マルチコアマルチシース、マルチコアシングルシースのうちの分類を推定する、前記方法。
【請求項2】
前記テニスラケットのストリングは、構造繊維(3)とコーティング材(4)の集合体を含み、
前記構造繊維は、アラミド繊維、及び/またはポリエステル、及び/またはポリアミド、及び/またはポリオレフィン、及び/またはポリエチレンを含み、
前記コーティング材は、ポリウレタン及び/またはエラストマーを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
分離ステップ/S1/
~/S4/の1つから得られた生成物
及び/
または成分をアップグレードするステップが設けられ、
前記アップグレードするステップは、前記
生成物及び/または成分を新しいストリング、及び/または詰め物を有す
る衣料、及び/また
は保護衣料、及び/または難燃
性衣料に組み込むことを含
み、
前記アップグレードするステップは、エネルギーアップグレードを含み、前記分離ステップの1つ以上の残留物が焼却され得る、請求項1
または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリングをリサイクルするための方法と装置に関するものであり、特に、スポーツ用ラケットのストリングのリサイクルに関する。しかし、本発明は、セーリング、ロッククライミング、登山、あるいはその他のスポーツに使用されるような技術的なストリングをリサイクルすることも目的とする。また、本発明は、楽器、特に弦楽器のストリングにも適用できると考えらる。
【背景技術】
【0002】
現在、スポーツラケット(テニス、スカッシュ、バトミントン)の切れたガットや使用済みのガットは、ゴミ箱に捨てられたり、無造作に捨てられたりする。
【0003】
以前の状況では、ストリングが動物や植物由来の天然繊維から得られていた場合、自然に生分解される材料と考えられるため、そのような場所に埋めたり、あるいは廃棄したりしても、環境の観点からの問題は存在しなかった。
【0004】
しかし、これらのストリングには、直接生分解性ではない合成成分及び技術繊維が含まれているケースが増えていることが判明している。したがって、それらをゴミ箱に捨てることは環境に悪影響を与える。成分の中には、有害廃棄物とみなされるものも存在する。
【0005】
人間の活動に関連した廃棄物を管理し、真の循環経済と非常に高いリサイクル率を達成することに対して、公的機関や非政府組織からの要求がある。
【0006】
本発明は、多くのストリングをリサイクルすることができるソリューションを提供する。
【発明の概要】
【0007】
この目的のために、複合ストリングをリサイクルするプロセスが提案されており、このプロセスは、
ストリングのタイプを識別するステップと、以下に定義される/S1/、/S2/、/S3/、/S4/のうちの1つまたは他のステップを含む、成分を分離する少なくとも1つのステップと、を含む。
/S1/機械的分離ステップ
/S2/化学的分離ステップ
/S3/熱的分離ステップ
/S4/生物学的分離ステップ
【0008】
これらのステップに従うことで、ストリングス、特にスポーツラケットのストリングスを有利にリサイクルすることができ、したがって、ゴミ箱に捨てずに済む。
【0009】
この方法により、ストリングス、特にラケットストリングスの処理において、「グリーンサーキュラーエコノミー」を構築することが可能となる。サーキュラーエコノミーは、汚染された廃棄物を使用してその組成を回収可能な資源に変えることにより可能となる。
【0010】
ストリングの各成分は、その組成に応じて、新たな生産サイクルに再導入することにより変換される。
【0011】
このようにして、残留家庭ゴミの中にストリングを入れないことを可能にすることでソリューションが提案され、廃棄物を地域的にリサイクルまたは回収することにより、ストリングはもはや処分されるのではなく回収される。
【0012】
本システムに関連する本発明の様々な実施形態において、以下の構成の1つ及び/または他の構成を、単独でまたは組み合わせて、任意に使用することもできる。
【0013】
対象とする実施形態によれば、リサイクルされるストリングスは、ストリングス付きのスポーツラケット用のストリングスである。ストリング付きのスポーツ用品には、特にテニス、バドミントン、スカッシュにおけるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
別の実施形態によれば、提案された方法は、セーリング、ロッククライミング、登山、その他のスポーツに使用される技術的なストリングに対して使用することができる。また、楽器のストリング、特にバイオリン、チェロ、ギター、コントラバスなどの弦楽器に使用することも可能である。
【0015】
対象とする一実施形態によれば、リサイクルされるストリングは、テニスラケットのストリングである。本発明者は、テニスラケットのストリングについて、複合ストリングの量がますます多くなっていることを発見した。一方で、プロのプレイヤーも熟練したアマチュアのプレイヤーも、ストリングが切れたり寿命が来たりする前に交換する傾向がある。これは、消費量を大幅に増加させるため、提案するリサイクルソリューションをさらに魅力的なものとする。
【0016】
一つの選択肢によれば、テニスラケットのストリングは、コーティング材を備えた構造繊維の集合体からなり、構造繊維は、アラミド、及び/またはポリエステル、及び/またはポリアミド繊維、及び/またはポリオレフィン、及び/またはポリエチレンを含み、コーティング材は、ポリウレタン及び/またはエラストマーを含む。したがって、提案されたプロセスは、非常に多様なタイプのテニス用テクニカルストリングまたはその他の用途のストリングを加工することを可能にする。このように、繊維に関する通常の成分のほとんどが含まれており、非常に高いリサイクル率を達成することが可能である。
【0017】
一実施形態によれば、繊維とコーティングの機械的分離ステップ(S1)のために、コードストランドの剥離ステップ及び/または研磨ステップが設けられる。処理するストリングの長さが許せば、ストリングを押出機のような機械に通すことができ、その機械では、少なくともその外周部のコーティング材をグレーターで剥離することができる。研磨ステップでは、ストリングストランドを小片に切断し、その後、化学的、熱的、または生物学的分離ステップで処理することができる。
【0018】
一実施形態によれば、化学的分離ステップのために、繊維のコーティングの溶媒への溶解が条件付けられ得る。その結果、テクニカル繊維をコーティング材から完全かつ確実に分離することができる。
【0019】
一実施形態によれば、熱的分離ステップは、コードストランドを150°を超えて加熱する蒸気熱分解ステップを含むことができる。これにより、異なる成分の融点に応じて、温度を上昇させ、最初に最も低い融点を有する成分を回収し、後に最も高い融点を有する成分を回収することにより、段階的に分離することが可能である。
【0020】
別の実施形態によれば、生物学的分離ステップは、コーデージストランドを微細藻類及び/または酵素を含む活性生物剤と接触させて長時間置くことを含み、コーデージストランドに含まれる特定の注目すべき成分は、活性生物剤によって分解される。このように、必要な時間が長くなっても、この解決策は、成分の分離を達成するためのエネルギーにおいて最も経済的である。
【0021】
別の実施形態によれば、このような生物学的分離ステップは、天然ガットのストリングをリサイクルして処理するために使用することができる。微細藻類及び/または酵素を含む活性生物剤は、天然ガットのストリングを基本的な化学成分に分解し、このことはもはや環境にいかなる問題をはらむ影響も与えない。
【0022】
一実施形態によれば、テニスラケットのストリングを識別するステップは、断面図を作成することと、拡大して写真を撮ることと、フィラメントの類型を分析して、少なくとも次の、シングルマルチフィラメント、マルチコアマルチフィラメント、マルチコアマルチシース、マルチコアシングルシースの中の分類を導き出すことである。これにより、得られた識別に応じて、最も適切な分離ステップ(複数可)を選択することができる。
【0023】
一実施形態によれば、得られた断面図は、一例として、Smartphone(登録商標)アプリケーションからの参照断面図と比較することができる。
【0024】
本発明はまた、複合ストリング、特にテニスラケットのストリングをリサイクルする機械であって、上述の方法を部分的または全体的に実施するように構成されていることを特徴とする機械にも関するものである。
【0025】
本発明の他の態様、目的及び利点は、非限定的な例として与えれる本発明の実施形態の以下の説明を読むことにより、より明らかとなる。また、本発明は、添付の図面を参照することにより、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ストリングを有するテニスラケットの図を示す。
【
図2】リサイクルされるストリングの断面図のいくつかのタイプを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
様々な図面において、同符号は同一または類似の要素を指す。説明の明瞭性のため、特定の要素は必ずしも縮尺通りに表されていない。
【0028】
図1は、ストリングを有するテニスラケットを部分的に示す。ラケットは、フレーム1及びストリング2を含む。ストリングは、フレームに作られた穴を通る。フレームはシーブを形成する。縦断面は横断面と交差する。ストリングを取り付ける作業を完了するために、いくつかのノットが作成される。
【0029】
いくらかの摩耗後、または対象のストリングのタイプによって耐え得る閾値を超える応力が持続した場合、ストリング2は破損する。一部のユーザまたはプレイヤーは、既に述べた通り、ストリングを予防的に交換する。
【0030】
フレームからストリングを除去するために、ストリングの糸は、ストリングを何度か切断した後、フレームの穴を通して除去され得る。
【0031】
ストリング2自体が、コーティング材を有する構造繊維の組立体から形成される多くの場合を、対象としている。ストリングの組成物について詳述するとき、ストリング全体の単一要素を指すために「ストリングストランド」という用語もまた使用され得る。ストリングストランドは、いくつかの場合、ソリッドコア32を含む。
【0032】
特に対象となるのは、0.8mm~1.6mmの間の外径を有するストリングストランドである。実施例によれば、特に、1mm~1.5mmの間の外径を有するストリングの糸が処理される。
【0033】
テニスラケット用のストリングストランドに関し、ストランドの断面は、1.2mm~1.4mmの間の直径を有する。しかしながら、本発明の方法において、より小さい直径からより大きい直径までも考慮されることに留意されたい。
【0034】
4と符号が付されたコーティング材は、ポリウレタン及び/またはエラストマーを含む。「コーティングする」は、「シースする」ことを指すことにも留意されたい。コーティング材ストリングの引張強度の機械的特性は、構造繊維のもの未満であるが、コーティング材は、ストリングストランドの結束性に寄与する。
【0035】
図2に示されるように、ストリングストランドの構造は、シングルマルチフィラメント、マルチコアマルチフィラメント、マルチコアマルチシース、マルチコアシングルシース、のいくつかのタイプであり得る。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
図において3と概して符号が付された構造繊維は、アラミド及び/またはポリエステル及び/またはポリアミド及び/またはポリオレフィン及び/またはポリエチレン繊維を含む。
【0044】
テニスストリングまたは他のストリングのタイプ(上記のリスト参照)に使用される構造繊維は、特に、下記を含む。
-アラミド:Zylon(PBO)、Kevlar(PPD-T)、Kevlar49、Black Technora
-ポリエステル:PenまたはPentex(PEN)、ポリエステル(PES)、ポリアミド:ナイロン、ポリアミド
-ポリオレフィン:SpectraまたはDyneema、HDPEポリエチレン
-チタニウム:チタニウム(Ti)
-炭素:炭素繊維
-エラストマー:ポリブチレン、エラストマー(ゴム)
【0045】
アラミド
【0046】
アラミド繊維は、その優れた衝撃抵抗性で認識されており、個人用防護具(ヘルメット、耐切創性手袋、防弾ベスト等)の製造で広く使用される。ボート競技では、Kevlar(登録商標)またはTechnora(登録商標)製品は、その優良な強度及び低い破損時伸度(約3.5%)ならびにその静的荷重下における顕著な安定度(クリープなし)で高い評価を受けている。換言すると、これらの繊維は、非常に強く(ステンレス鋼の5倍強い)、非常に弱い弾性で経時的に伸長しない。
【0047】
アラミド繊維は、最終製品に良好な温度安定性を提供するために(マトリックスに応じて最大200℃)、複合材料の補強としても使用される。しかしながら、いくつかのあまり肯定的ではない点、すなわち、UVに対する限られた抵抗性及び莫大なコスト、を注記し得る。
【0048】
ポリエステル
【0049】
ポリエステル繊維は、その耐用年数、UV抵抗性と優れた機械的及び化学的抵抗性に関して知られている消費者繊維である。
【0050】
ポリエステル繊維は、機械的及び化学的にリサイクルされ得、各方法は特定の利点及び不利な点を有する。機械的方法は、プラスチックボトル及び産業廃棄物を収集することを伴う一方、化学的処理は、ポリエステルから作られた繊維製品を再利用してモノマーに還元し、次にそれらを繊維へと変換し戻すことを含む。
【0051】
ポリエステルのリサイクル方法は、材料がほぼ無限に再作成されることを可能にする、すなわち、品物や生地が品質を損なうことなく何度もリサイクルされ得る。加えて、化学的に生産されリサイクルされたポリエステルは、新しく抽出された石油で作られたその相対物とは異なり、重金属を含有しない。
【0052】
ポリアミド
【0053】
ポリアミドまたはナイロン繊維は、いわゆる「テクニカルな」合成繊維である。それは、織物及びプラスチック産業用途において使用され、高い強度の材料を必要とする幅広い範囲の製品に用途を見出す。ポリアミドは、基本的な部品として、自動車産業においてギア、装具及びベアリング用に、及び電動工具のハウジング用の材料として、広く使用されている。また、ストランド、ストリング、フィラメント、網及びタイヤコード、ならびに靴下及びニット製衣服の多種多様な製造においても使用される。
【0054】
「PAx.x」の略称で知られる、産業的に入手可能なポリアミドの多種多様な及び多くのタイプのグレードがある。
【0055】
ポリアミドの主な強みは、その非常に良好な機械的特性(牽引、疲労、衝撃、摩耗に対する抵抗性)、ならびに、燃料及び油に対する良好な抵抗性である。一方、周囲の空気の湿気に対して敏感であり、かなり限られたUV抵抗性を有する。全てにもかかわらず、ポリアミドは、優れたコスト/パフォーマンスのバランスを示す。
【0056】
ポリアミドは、ポリマの化学的性質に関連した理由(ナイロンはポリエステルよりもリサイクルが難しい)により、現在、リサイクルされる頻度は非常に低い。
【0057】
ポリオレフィン
【0058】
ポリオレフィン系由来のポリエチレンは、いわゆる「量販」プラスチックの一部であり、非常に高消費のものである。これらは、多くの場合で低付加価値用途に向けられたものではあるが、これら自体がリサイクルに向いているプラスチックのうちの1つである。これらは、多くのサブカテゴリに細分化され、各々が特定の特徴(PEHD、PEBD、PEBDL、UWMWPE…)を有する。
【0059】
高強力ポリエチレン繊維(通称「超高分子量ポリエチレン、または「UHMWPE」と呼ばれる)は、軽量(1.44のアラミドのものと比較して0.95の密度)及び運動エネルギーを熱エネルギーに変換する高能力の利点を有する。これらは一層、防弾ベスト及び他のバリスティック用途に使用されており、軽量化のため、Kevlarとの競合にある。
【0060】
Dyneema(商標)のポリエチレン繊維の範囲(製造業者DSMから)及びSpectra(商標)(製造業者Honeywellから)は、非常に高い抵抗性、及びこのために最小重量であることによって特徴付けられる。確かに、等しい重量に関して、そのような繊維は、高級鋼よりも最大15倍強く、アラミド繊維よりも40%強い。加えて、これらの繊維は、水よりも軽く、極めて耐久性があり、カビ、UV光線及び化学物質に対して抵抗性がある。
【0061】
欠点については、温度に対する抵抗性が低いこと(90℃からクリープ、アラミドは400℃でのみ分解する)、ならびに複合物の用途をデリケートにさせる(表面処理が必要である)接着特性が乏しいことに留意されたい。
【0062】
チタニウム
【0063】
チタニウムは、「ノーブル」と見做される軽くて抵抗性のある金属である。耐腐食性、耐浸食性、及び耐火性のような興味深い産業特性を示す。延性及び生体適合性があり、薄く軽い部品の成形を可能にする機械的特性も示す。
【0064】
その多くの品質のため、軽量化が性能評価の基準となる、高付加価値を有する多くの分野、すなわち、医療、航空学、石油化学、及び新しい機械的及びレジャースポーツで使用されている。チタニウムは、非常に興味深い機械的品質と腐食環境における優れた抵抗性とを組み合わせる金属であるため、表面処理を不要にし、チタニウムを「エコロジカル」にする。加えて、その密度は、鋼のものよりも2倍低い。
【0065】
チタニウムは主に、航空学及び多くの産業用途(エネルギー、化学物質等)において、合金の形態で使用される。生産廃棄物の大部分を考慮すると、チップのリサイクルは可能な限り多くの材料を回収するためによく整備されている。機械加工チップが、部品の生産においてチタニウム消費の最大90%を表し得ることを見ることは珍しくない。これらのチップは、ストリングの構造繊維の場合のように、副産物として使用される。
【0066】
炭素
【0067】
炭素繊維は、石油由来であり、非常に興味深い特性、すなわち、確実な剛性及び機械的な安定性、超軽量及びUV光線に対する非感受性を示す。衝撃に曝されないという条件で、炭素繊維の寿命は事実上無限である。
【0068】
非常に低い密度と組み合わせた機械的抵抗性が良好な資源である、スポーツ用品、自動車、航空学、ロボット工学、軍用装備品、ヘリコプターのプロペラ、風力タービン、ドローンにおいて、炭素繊維は、今では多くの先進技術用途に見られる。
【0069】
炭素繊維をリサイクルする最適な技術のうちの1つは、熱分解である。樹脂の分解及び構成成分の分離を引き起こすために、材料は、高温(400℃~700℃の間)に供される。固体または気体の残留物はこうして取得され、状態に応じて燃料として使用され得る(エネルギー回収、下記参照)。繊維はプロセスの最後に回収され、プラスチックまたは複合材に再度導入される。この技術の主な利点は、リサイクルされた炭素繊維の機械的特性の保持である。
【0070】
方法
【0071】
収集後、リサイクルのプロセスは、ストリングの識別ステップ(S0と示す)で開始する。特にテニスラケットのストリングについて、識別ステップは、例えばスマートフォンまたはデジタルカメラを使用して拡大して写真を撮影した後、横切断すること(のみ、カッターまたは他の鋭い工具によって)で構成される。
【0072】
断面図及びプレートによる識別のステップは、少なくとも次の、シングルマルチフィラメント、マルチコアマルチフィラメント、マルチコアマルチコアシース、シングルシースマルチコア、の中の分類を推定するために、フィラメントの類型の分析を含み得る。次に、ウェブページの断面図の参照用ベースと照合し、直前に取得したプレートと最も酷似した断面図を決定する。このプロセスは、有利にもスマートフォンのアプリケーションでサポートされている。
【0073】
代替的に、識別ステップは、コード自体に記述された参照を取ることである。次に、製品識別シートはウェブページ上で照合され、フィラメント状構造のタイプ及びコーティングがそこで見つけられる。
【0074】
代替的に、識別ステップは、ストリングストランドの製造業者を表すマークを識別することである。
【0075】
さらに別の実施形態によれば、ストリングストランドの外側シースに存在する色または複数の色は、ストリングのタイプを決定するために使用され得、それは識別ステップS0のための別の方法を形成する。
【0076】
さらに別の実施形態によれば、製造業者を表すマーク及びストリングストランドのタイプを表す色の両方は、リサイクルされるストリングストランドのタイプの識別(ステップS0)を完結させるために記録される。
【0077】
識別後、プロセスは、ストリングストランドを成分または小さな個々の破片に分離するために、下記の1つまたは複数のステップを選択することを伴う。
【0078】
好ましくは、使用されたストリングを収集するステップは、それぞれストリングの特定のタイプを受け入れるように設計された回収容器、特に選択的容器の使用をサポートする。
【0079】
S1-機械的分離ステップ
【0080】
図3は、剥離ステップ及び/またはストリングストランドを研磨するステップを示す。処理されるストリングストランドの長さが許容するとき、ストリングストランドは
図3の押出機36と同様の機械を通過し得る。
【0081】
この機械36では、ローラー37に取り付けられたやすりは一緒に挟まれ、ローラーの回転運動を使用して、やすりは、ストリングストランドの断面の少なくとも外周部からコーティング材を剥離する。ストリングの中心部21は、応力下にあり、外周部のコーティング22なしで機械から出て、剥離マシン36の出口でコンテナ内に収集される。例示では、配置は水平である。直列にいくつかのやすりがあってもよい(剥離を数回通過)。
【0082】
研磨ステップについて、後者はストリングストランドが小さな破片に切断され、次に化学的、熱的または生物学的分離ステップによって処理され得る。これに関し、
図4に図示する通り、粉砕機44は、ストリングストランドの破片が注ぎ込まれるホッパー46を含む。2つ(またはそれ以上)の反転ローラー47は、複数の表面歯によってストリングストランドを細断する。下側出口において、小さなユニット要素48はコンテナ内に収集される。
【0083】
S2-化学的分離ステップ
【0084】
この場合、コーティング材からテクニカル繊維を完全に及び確実に分離するために溶媒が使用される。トリクロロエチレン、トリクロロエタン、ジクロロメタン、テトラクロロエタン、アセトン等を使用し得る。
【0085】
図5は、前述の溶媒54と共に溶液で満たされたタンク53を含む溶解装置を示す。ストリングストランド55はその中に浸漬されており、ストリングストランドの長さ(短いストランド、長いストランド)については特に何も制約はない。
【0086】
所定の時間後、溶媒溶液の作用が十分であると考えられ、得られた溶液がふるい分けられ、繊維はふるいによって保持されて溶媒溶液中に分解したコーティング材は通過する。
【0087】
S3-熱的分離ステップ
【0088】
図6は、ストリングストランドの150℃を超える加熱を伴う、蒸気熱分解ステップを含む機器の一部である。ここでは、固定機器が示されているが、進行的な変位を有する実施形態もまた提供される。
【0089】
異なる成分の融点に応じて、構成成分は、温度を上昇させることによって徐々に分離される。最も低い融点を有する成分は最初に回収され、最も高い融点を有する成分は最後となる。
【0090】
例示では、ストリングストランド65が、その長さ(短いストランド、長いストランド)については特に何も制約はなく、オーブン63内に配置され、次に、コードの構成成分のうちの1つを溶融させるために、第1の所定の温度T1、例えば160℃まで加熱される。加熱66は、バーナー、赤外線ランプレール、誘導炉等、異なる手段で行われ得る。
【0091】
次に、溶融部分が抽出され、残留物が分離される。
【0092】
当然のことながら、溶融部分として次に分離される、コードの別の成分を溶融させるために、第2の所定の温度T2、例えば220℃で上記の作業を繰り返すことも可能である。
【0093】
実施例によれば、上昇する温度の論理では、最初にポリオレフィンを分離し、次にポリエステル、次にポリウレタン、その次にポリアミド等を分離し得る。炭素繊維及びチタニウム繊維は最後に残る成分である。
【0094】
S4-生物学的分離ステップ
【0095】
生物学的分離ステップは、ストリングストランドの、微細藻類及び/または酵素を含む活性生物剤との長時間の接触を伴う。
【0096】
このようにして、ロープストランド内の対象とする特定の成分が、当該活性生物剤により分解される。もし、より長い時間が必要であったとしても、このソリューションは、成分の分離を達成するためにエネルギーにおいて最も経済的であることに留意されたい。
【0097】
さらに、そのような生物学的分離ステップは、また、リサイクルのための天然ガットのストリングを処理するためにも使用される。微細藻類及び/または酵素を含む活性生物剤は、天然ガットのストリングを元素化学成分に分解し、これは、もはや環境に対していかなる負の影響を齎すことはない。
【0098】
図7は、グリーディー酵素(greedy enzymes)74及び/または微細藻類と共に溶液で満たされたタンク73を含む溶解装置を示す。ストリング糸75はその中に浸漬されており、ストリング糸の長さ(短いストランド、長いストランド)については特に何も制約はない。
【0099】
所定の時間後、グリーディー酵素及び/または微細藻類の作用が十分であると考えられ、得られた溶液はふるい分けされ、繊維はふるいによって保持されて溶液に溶解したコーティング材は通過する。
【0100】
分離した構成成分の回収
【0101】
加えて、/S1/~/S4/のステップのうちの1つから、製品/成分をアップグレードするステップがある。
【0102】
回収ステップは、例えば、新しいストリングへの、及び/または詰め物を用いたテクニカル衣類への、及び/またはテクニカル防護服への、及び/または難燃性テクニカル衣類への成分の組み込みを含む。
【0103】
回収ステップは、エネルギー回収を含み得、それにより前述の分離ステップからの1つまたは複数の残留物が焼却される。
【0104】
その他の考慮事項
【0105】
識別、分離及び回収のステップのための異なるステップ及びソリューションが、テニスストリング以外のストリングのタイプに対して、特に、セーリング、ロッククライミング、登山、あるいはその他のスポーツに使用されるような技術的なストリング、ならびに弦楽器のストリングに対しても準用され得ることに留意されたい。