(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】微細構造体を製造するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241114BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G02B5/18
(21)【出願番号】P 2022519607
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 AU2020050543
(87)【国際公開番号】W WO2020237317
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-26
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518122456
【氏名又は名称】マイクロタウ アイピー ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROTAU IP PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビリンスキー,ヘンリー クラウディウス
(72)【発明者】
【氏名】ビルス-ウイリアムズ,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトロック-ジョーンズ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クイン,ミッチェル エス.
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-537718(JP,A)
【文献】特表2014-507675(JP,A)
【文献】特表2018-531785(JP,A)
【文献】特表2014-500623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0095418(US,A1)
【文献】特表2008-517472(JP,A)
【文献】特開2019-015993(JP,A)
【文献】特開2008-216799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30
G02B 5/18、5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造体を形成するための方法であって、
光硬化性材料に、前記光硬化性材料を硬化するための光又は放射線の少なくとも一つの像であって、前記光又は放射線の近接場回折によって形成され、より低強度のエリアに隣接するより高強度のエリアを含む前記像を、前記像に対応するパターンにおいて適用する工程と、
前記適用する工程の間に、前記光硬化性材料の内部に微細構造体を形成する前記光硬化性材料の硬化をもたらすのに十分な期間にわたり、前記像を維持又は実質的に維持する工程と
を含
み、
前記光又は放射線の少なくとも一つの像を適用する工程は、前記光硬化性材料の、透明又は半透明基板を介したものである方法。
【請求項2】
前記像は、実質的にタルボット長の四分の一の倍数で形成されたタルボット像である
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記像は、実質的にタルボット長の二分の一又は二分の一の倍数で形成されたタルボット像である
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光又は放射線の少なくとも一つの像は、ダイナミックフォトマスクの第一構成によって適用される第一像と、前記ダイナミックフォトマスクの第二構成によって適用される前記第一像とは別個の第二像とを含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光又は放射線は、非単色光である
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光又は放射線は、マルチモーダル光である
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光硬化性材料を硬化するための前記光又は放射線の少なくとも一つの像を適用する工程は、第一回折格子によって形成された第一像と、前記第一回折格子からオフセットがなされた第二回折格子によって形成された第二像とを適用する工程を含む
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一回折格子及び前記第二回折格子は、双方が第一分離距離のスリットを備え、前記オフセットは、前記第一分離距離の半分に実質的に等しい
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記第一像及び前記第二像に前記光硬化性材料を横切らせることにより、前記第一像の前記より高強度のエリアを前記第二像の前記より高強度のエリアとインターリーブする工程を含む
請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記像は、準周期的パターンを有する
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記像は、二次元の、周期的パターン又は準周期的パターンを有する
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記透明又は半透明基板は、ロールからのものであり、前記方法は、前記ロールから別のロールに該基板を移す工程と、前記光又は放射線の少なくとも一つの像を二つのロールの間の中間点に適用する工程とを含む
請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記光は、一つ以上のレーザから供給される
請求項1~1
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記微細構造体の高さは、0.10~250ミクロンの間(両端を含む)である
請求項1~1
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記微細構造体の高さは、25~250ミクロンの間(両端を含む)である
請求項1~1
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記微細構造体の高さは、0.1~5ミクロンの間(両端を含む)である
請求項1~1
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記光硬化性材料内に前記微細構造体を残す工程を含む
請求項1~1
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
光硬化性材料を少なくとも部分的に除去して、前記微細構造体を露出させる工程を含む
請求項1~1
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記光又は放射線の少なくとも一つの像を適用する工程は、適用される前記光を提供するための少なくとも一つの光源と、前記少なくとも一つの光源から光を受け、少なくとも一つの前記像を生成するための光学システムとを備えるポータブルアプリケータによるものである
請求項1~
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記近接場回折が少なくとも一つのフォトマスクを介して行われる
請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記光又は放射線の少なくとも一つの像は、第一像と第二像とを含み、前記第一像と前記第二像とはインターリーブされる
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記適用する工程において、前記少なくとも一つのフォトマスクと前記光硬化性材料との動作距離は、実質的に一定である
請求項20又は請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板表面上に微細構造体を製造するための方法及びシステムに関する。
【0002】
関連出願
本出願の開示は、ビリンスキー(Bilinsky)の国際公開第2017/063040号に関連し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
微細構造体は、光学システムを用いて基板表面上に生成又はインプリントされている。例えば、フォトポリマーを選択的に照射するために光源及びマスクが用いられている。様々なタイプの光源及びマスクが用いられており、それらに関連して多様な問題がある。例えば、一部のシステムは、マスク、基板又は他の構成要素の移動によって引き起こされる乱れに起因して生じる問題を抱える。別の例では、一部のシステムは、少なくとも一部の用途で処理速度が不十分である。別の例では、一部のシステムは、微細構造体の設計変更に関連するコストが高い(例えば新たな設計ごとに製造すべき高価なマスク又は消耗品のマスク)。別の例では、一部のシステムは、高度に制御されたクリーンルーム環境での使用を要するか、あるいはそれに主に適し、コストが増加し、システムの用途が減少する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、微細構造体を形成するための方法を含む。
【0005】
微細構造体を形成するための方法は、光硬化性材料に、光硬化性材料を硬化するための光又は放射線の少なくとも一つの像を適用する工程を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、光又は放射線は、一つ以上のレーザからの光である。一つ以上のレーザは、ダイオードレーザ、高出力ガスレーザ、周波数同調可能レーザ、又は別のタイプのレーザにできる。
【0007】
像は、光又は放射線の近視野回折によって形成し、より低強度のエリアに隣接するより高強度のエリアを含むことができる。
【0008】
像は、光硬化性材料の硬化をもたらすのに十分な期間にわたり、維持できるか又は実質的に維持できる。例えば、複数の像又は二つ以上の像の間で次第に変化するパターンではなく、実質的に単一の像のみが光硬化性材料に適用される。
【0009】
像は、実質的にタルボット長の四分の一又は二分の一の倍数で形成されるタルボット像にできる。半タルボット長を用いることは、特定の利点がある。
【0010】
像は、実質的に分数タルボット像にすることにより、マスクの像がより高い特徴密度で形成でき、例えば、空間周波数はタルボット長の四分の一で二倍、タルボット長の六分の一で三倍、タルボット長の八分の一で四倍などにできる。分数タルボット像は、更に上述の長さの倍数でも形成される。
【0011】
本方法は、像を形成し、光硬化性材料を硬化するための非単色光の使用を含むことができる。光はマルチモーダル光にできる。
【0012】
本方法は、第一回折格子によって形成された第一像と、第一回折格子からオフセットがなされた第二回折格子によって形成された第二像とを適用する工程を含むことができる。第一回折格子及び第二回折格子は、双方が第一分離距離のスリットを備えることができ、オフセットは、第一分離距離の半分に実質的に等しい。第一像及び第二像は、光硬化性材料を横切ることにより、第一像のより高強度のエリアを、第二像のより高強度のエリアとインターリーブできる。
【0013】
本方法は、相互にオフセットされ、各々の回折格子が一つの像を生成する二つ以上の回折格子の使用を含むことができる。二つ以上の回折格子によって生成される像は、インターリーブされ、光硬化性材料を備える基板上に適用するための結果として生じる像を形成する。
【0014】
本方法は、ダイナミックフォトマスクを用いて別個の光パターンの像(例えばタルボット像)を生成する工程を更に含むことができる。ダイナミックフォトマスクは、基板上に光パターンを適用する間に、光パターンの第一像から光パターンの第二像に遷移する。遷移は実質的に瞬間的にできる(すなわち、遷移中には硬化がほとんど又は全く生じない)。換言すれば、ダイナミックフォトマスクは、適用プロセス中に別個のタルボット像の間で切り替わることができ、像は光硬化性材料の硬化をもたらすのに十分な期間にわたり維持又は実質的に維持され、他の遷移像は光硬化性材料の硬化をもたらすのに十分な期間にわたり維持されない。一実施形態では、ダイナミックフォトマスクは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)である。いくつかの実施形態では、ダイナミックフォトマスクが間を遷移する三つ以上の異なる像が存在する。いくつかの実施形態では、ダイナミックフォトマスクは、二つ以上の像が適用される間に、光硬化性材料から固定された距離又は実質的に固定された距離に維持される。
【0015】
いくつかの実施形態では、像は、周期的又は準周期的パターンを有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、像は、二次元の周期的又は準周期的パターンを有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、光硬化性材料は、光又は放射線に対して透明又は半透明である基板上にあり、少なくとも一つの像の適用は、この透明又は半透明基板を介したものである。一実施形態では、透明又は半透明基板は、複数のシートの形にでき、本方法は、基板の第一シートを提供し、光又は放射線の少なくとも一つの像を基板の第一シートで適用する工程、基板の第一シートを基板の次のシートに置換する工程、及び光又は放射線の少なくとも一つの像を基板の次のシート上に更に適用する工程などを含む(すなわちシート・ツー・シートプロセス)。代替的な実施形態では、透明又は半透明基板は、ロールからのものにでき、本方法は、ロールから別のロールに基板を移す工程と、光又は放射線の少なくとも一つの像を二つのロールの間の中間点に適用する工程とを含むことができる(すなわちロール・ツー・ロールプロセス)。
【0018】
微細構造体の高さは、0.10~250ミクロンの間(両端を含む)、例えば25~250ミクロンの間(両端を含む)又は0.1~5ミクロンの間(両端を含む)である。
【0019】
微細構造体は、光硬化性材料の内部に残して、例えば、光学効果を形成できる。代替的には、硬化された光硬化性材料又は未硬化の光硬化性材料の一方は、部分的又は完全に除去できる。未硬化の光硬化性材料が残っている場合には、該材料及び該材料の内部の硬化された微細構造体は、次いで、全ての光硬化性材料の硬化を完了すべく、ほぼ均一な放射線で非選択的に照射できる。例えば、より低強度の非単色紫外フラッドランプは、用いることができる。
【0020】
光又は放射線の少なくとも一つの像の適用は、ポータブルアプリケータによることができる。ポータブルアプリケーションは、適用される光を提供するための少なくとも一つの光源と、少なくとも一つの光源から光を受け、少なくとも一つの像を生成するための光学システムとを含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、光硬化性材料において構造体を形成するための方法は、光硬化性材料に、光硬化性材料を硬化するための光又は放射線の複数の像を適用する工程を含み、各々の像は、より低強度のエリアに隣接するより高強度のエリアを含み、複数の像は、インターリーブされた像を生成するために適用され、一方の像のより高強度のエリアが他方の像のより低強度の位置において適用される。光又は放射線の複数の像は、複数の回折格子を照射することによって生成される。複数の回折格子は、単一の光源によって又は複数の光源によって照射でき、各々の光源は、各々の一つ以上の格子と一対一又は一対複数の関係で配置される。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数のインターリーブされた像は、第一次元にわたって周期的又は準周期的である第一像と、第一次元にわたって周期的又は準周期的である第二像とを含み、本方法は、第一像及び第二像を光硬化性材料に対して移動させる工程を含み、当該移動は、少なくとも第一次元に対して横切る成分を含む。移動の間、第一像及び/又は第二像は維持される。
【0023】
いくつかの実施形態では、インターリーブされた像の第一像は、インターリーブされた像の第二像からオフセット方向にオフセットされ、オフセット方向は第一次元に対して横切る。
【0024】
いくつかの実施形態では、光硬化性材料において構造体を形成するための方法は、光硬化性材料に、光硬化性材料を硬化するための光又は放射線の少なくとも一つの像を適用する工程を含み、当該像の各々は、より低強度のエリアに隣接するより高強度のエリアを含み、二次元における像を含む。本方法は、硬化された光硬化性材料又は未硬化の光硬化性材料を除去しない工程を含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、例えばラベル、文書、セキュリティ文書、又は家具類等の他の物体に光学効果を与えるための方法である。未硬化の光硬化性材料が残っている場合には、該材料及び該材料の内部の硬化された微細構造体は、次いで、全ての光硬化性材料の硬化を完了するためにほぼ均一な放射線で非選択的に照射できる。例えば、より低強度の非単色紫外フラッドランプは、用いることができる。
【0025】
像は、二次元の周期的又は準周期的像にできる。像は、光硬化性材料を担持する基板から遠位側の光硬化性材料に適用できる。像は、光硬化性材料を担持する基板に対し近位側の光硬化性材料に適用でき、当該基板は、光又は放射線に対して透明又は半透明である。
【0026】
いくつかの実施形態では、光硬化性材料において構造体を形成するための方法は、光硬化性材料を硬化するための光又は放射線の少なくとも一つの像を光硬化性材料に適用する工程を含み、当該像の各々は、より低強度のエリアに隣接するより高強度のエリアを含み、光硬化性材料は、透明又は半透明材料を備える基板上に提供され、光又は放射線は、基板を通して光硬化性材料に適用される。
【0027】
いくつかの実施形態では、透明又は半透明材料を含む基板は、ロール上に提供され、本方法は、一つのロールから別のロールに基板を移す工程と、光又は放射線の少なくとも一つの像を二つのロールの間の中間点に適用する工程とを含む。いくつかの実施形態では、像の各々は、実質的に一次元であり、中間点で基板に広がる。いくつかの実施形態では、少なくとも二つのインターリーブされた像が存在する。
【0028】
いくつかの実施形態では、物体を生成するための方法は、物体を三次元で印刷する工程を備え、印刷する工程は、物体を形成するために光硬化性材料を適用する工程と、光硬化性材料を硬化するための光又は放射線の少なくとも一つの像を光硬化性材料に適用する工程とを含み、当該像の各々は、より低強度のエリアに隣接するより高強度のエリアを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、本方法は、硬化された光硬化性材料又は未硬化の光硬化性材料を除去する工程と、次いで、更なる硬化光又は放射線を適用する工程とを更に含む。更なる硬化光又は放射線は、当該像が適用された物体の表面にわたる実質的に均一な放射線を含むことができる
【0030】
いくつかの実施形態では、本方法は、未硬化の光硬化性材料を物体から除去する工程を更に含む。除去は、溶媒によることができる。
【0031】
本開示は、微細構造体を形成するための装置を更に含む。装置は、本明細書に記載の方法のいずれかを行うように構成できる。
【0032】
いくつかの実施形態では、本装置は、像を生成するための回折格子を備える。いくつかの実施形態では、同じ又は別個のキャリア上に複数の回折格子があり、各々が像の一つを生成する。
【0033】
いくつかの実施形態では、光又は放射線は、単色ではない。例えば、光又は放射線は、マルチモーダル光にできる。光は、レーザダイオードを備える一つ以上の光源によって提供できる。回折格子の各々に別々の光源が存在できる。代替的には、二つ以上の回折格子は、光源を共有できる。
【0034】
いくつかの実施形態では、装置はポータブル型である。ポータブル型の装置は、一つ以上の光源と、一つ以上の回折格子を含むことができる。
【0035】
本開示の更なる態様は、例として添付の図面を参照して与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、照射前及び照射後のフォトポリマーの概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態による回折格子を用いた光学システムである。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による、
図2の光学システムを用いて基板をパターニングする方法の工程を示している。
【
図4(a)】
図4(a)は、一次元格子によって生成される強度パターンを示している。
【
図4(b)】
図4(b)は、一次元格子の強度パターンによって生成される基板上の微細構造体配置物の例を示している。
【
図4(c)】
図4(c)は、鋸歯リブレット微細構造体パターンを示している。
【
図4(d)】
図4(d)は、スカラップ状リブレットパターンを示している。
【
図5】
図5は、一次元格子を用いて形成された回折パターンを示している。
【
図6】
図6は、回折格子60を照射することによって形成されたタルボット効果の概念を示している。
【
図7】
図7は、タルボット強度プロファイルを格子の回折パターンと組み合わせる方法を説明する光学システムの概略図を示している。
【
図8(a)】
図8(a)は、所望の間隔の微細構造体パターンを印刷するための二つの回折格子の使用を示している。
【
図8(b)】
図8(b)は、所望の間隔の微細構造体パターンを印刷するための二つの回折格子の使用を示している。
【
図8(c)】
図8(c)は、所望の間隔の微細構造体パターンを印刷するための二つの回折格子の使用を示している。
【
図8(d)】
図8(d)は、基板上に微細構造体を印刷するために格子g
1及びg
2によってそれぞれ生成された強度プロファイルI
1及びI
2の組み合わせを示している。
【
図9】
図9は、本願の光学システムを用いて航空機、ボート又は車両の外部表面上に微細構造体パターンを生成するために用いることができるシステムを示している。
【
図10(a)】
図10(a)は、酸素阻害及び微細構造体製造プロセスに対するその効果を示している。
【
図10(b)】
図10(b)は、酸素阻害及び微細構造体製造プロセスに対するその効果を示している。
【
図11(a)】
図11(a)は、曝露の方向及び硬化方向が同一であるような透明基板上の微細製造のための方法及びシステムを示している。
【
図11(b)】
図11(b)は、曝露の方向及び硬化方向が同一であるような透明基板上の微細製造のための方法及びシステムを示している。
【
図12(a)】
図12(a)は、タルボット像のサイズ及び/又はタルボット像の焦点を制御するためのシステムを示している。
【
図12(b)】
図12(b)は、タルボット像のサイズ及び/又はタルボット像の焦点を制御するためのシステムを示している。
【
図12(c)】
図12(c)は、タルボット像のサイズ及び/又はタルボット像の焦点を制御するためのシステムを示している。
【
図13(a)】
図13(a)は、別個の周期的及び準周期的パターンの例を示している。
【
図13(b)】
図13(b)は、別個の周期的及び準周期的パターンの例を示している。
【
図13(c)】
図13(c)は、別個の周期的及び準周期的パターンの例を示している。
【
図13(d)】
図13(d)は、別個の周期的及び準周期的パターンの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本本明細書に開示される方法及びシステムは、基板表面上に微細構造体又は微細構造体パターンを製造することに関する(本明細書においてマイクロパターニングと呼称される)。これらの方法及びシステムは、様々な用途に用いることができる。例えば、航空機、車両、ボート、船、又は他の車両の外部表面上に抗力低減微細構造体をマイクロパターニングすることは、空気又は水等の流体によりもたらされる抵抗を低減するのに役立つがゆえに、距離又は速度を増加させ、燃料消費を低減する。別の例では、反射防止微細構造体をマイクロパターニングすることは、調度品、包装体、又は車両の装飾仕上げのための美的効果を生成できる。別の例では、病院の表面、医療デバイス、又は高頻度接触表面上に抗菌微細構造体をマイクロパターニングすることは、感染の拡大又はリスクを低減するのに役立てることができる。別の例では、可撓性プラスチックフィルム上に任意の数の機能的微細構造体をマイクロパターニングすることは、当該フィルムがその後特定の機能的特性が所望される所望の表面に取り付け可能にすることができる。微細構造体の機能的特性は、抗菌、防汚、反射防止、超疎水、超疎油、超オムニフォビック、疎氷、自浄、ノイズ低減、抗力低減、及び乾燥、又は切り替え可能な接着を含むがこれらに限定されない。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態は、基板上に微細構造体パターンを有効に生成するための特定の技術及び光学システムを提供する。いくつかの実施形態では、本開示にしたがって基板上に製造される微細構造体の高さは、0.10ミクロン~250ミクロンの範囲内(両端を含む)の任意の高さであり、基板上の微細構造体は、全て実質的に等しいもしくは類似の高さであるか、あるいは異なる高さの微細構造体を含む。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、実質的に全て0.10ミクロン、0.20ミクロン、0.50ミクロン、1ミクロン、2ミクロン、10ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、150ミクロンもしくは200ミクロン、又はその間の任意の値のいずれか以上の高さである。上述の微細構造体の幅は、1ミクロン~20ミクロンの間(両端を含む)、又はそれより大きくできる。例えば、微細構造体の幅は、1ミクロン、2ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、又はその間の任意の値より大きくできる。本開示のいくつかの実施形態では、隣接する微細構造体間の間隔は、1ミクロン~150ミクロンの範囲内、又はその間の任意の値にできる。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態では、抗菌特性又は同様の機能的特性の微細構造体は、約0.1ミクロン~5ミクロンの間の高さ、約2ミクロン~10ミクロンの間の幅、及び約2ミクロン~10ミクロンの間の隣接する微細構造体間の間隔で生成される。いくつかの実施形態では、抗力低減構造体として用いるための、又は抗力低減構造として用いる際の基板は、上述の特徴を備えた微細構造体を含む。いくつかの実施形態では、車両が上述のような抗力低減のための基板を含む。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態では、抗菌特性又は同様の機能的特性の微細構造体が、約0.1ミクロン~5ミクロンの間の高さ、約2ミクロン~10ミクロンの間の幅、及び約2ミクロン~10ミクロンの間の隣接する微細構造体間の間隔で生成される。いくつかの実施形態では、抗菌もしくは同様の理由で用いるための、又は抗菌もしくは同様の理由で用いられる際の基板は、上述の特徴を備えた微細構造体を含む。
【0041】
本開示の更なる実施形態では、光学効果、例えば艶消し効果をもつ微細構造体は、約0.1ミクロン~5ミクロンの間の高さ、約2ミクロン~10ミクロンの幅、及び約2ミクロン~50ミクロンの隣接する微細構造体間の間隔を含む。いくつかの実施形態では、光学効果、例えば装飾又はセキュリティ目的のために用いるための、又はそのために用いられる際の基板は、上述の特徴を備えた微細構造体を含む。基板は、装飾基板又はセキュリティ文書もしくはラベルに含まれるか、あるいは装飾基板又はセキュリティ文書もしくはラベルから実質的になることができる。
【0042】
フォトポリマー等の光硬化性材料は、コンピュータマイクロチップ製造のために開発されたフォトリソグラフィ技術から知られ、
図1に概略的に示されるように、フォトポリマー1は、より小さな分子(モノマー2及びオリゴマー3)と光開始剤4との混合物からなる。通常はマスクを介した紫外光6又は放射線への曝露後、光開始剤がモノマー2とオリゴマー3との間の重合反応を触媒し、より大きなネットワークポリマー分子に架橋させることによって硬化したポリマーを形成する。上述のネットワークポリマーは、その化学的特性及び構造的特性を変化させる。いわゆる「ネガティブフォトポリマー」は、不溶性で未曝露のフォトポリマーよりも強くなる。しかし、いわゆる「ポジティブフォトポリマー」は可溶性になるがゆえに、未曝露のフォトポリマーよりも弱くなる。
【0043】
微細構造体は、基板にフォトポリマーの層を施し、本開示の方法及びシステムを用いて光又は放射線、例えばUV光に選択的に曝露することによって生成できる。選択的曝露により、パターンでの微細構造体の形成が可能になる。いくつかの実施形態では、例えば光学効果が必要とされる場合には、微細構造体を露出させるためにフォトポリマーが除去されることはない。いくつかの他の実施形態では、例えば未曝露のフォトポリマーを洗い流す現像液を用いることによって、未曝露のネガティブフォトポリマーが除去されることにより曝露されたフォトポリマーが微細構造体とともに残される。代替的には、曝露されたポジティブフォトポリマーが除去される。いくつかの実施形態では、フォトポリマーは、例えば一つ以上の圧縮空気のジェット又はストリーム等の圧力下でフォトポリマー上に向けられる流体を用いて、物理的に除去される。いくつかの実施形態では、物理的除去は、未曝露のフォトポリマーの粘度を低減するために熱を加えることによって補助される。いくつかの実施形態では、フォトポリマー除去技術の組み合わせ、例えば物理的分離とそれに続く現像液が用いられるか、あるいはその逆で用いられる。他の実施形態では、未曝露のフォトポリマー及び曝露されたフォトポリマーはいずれも、一部保持される。他の実施形態では、基板の複数の微細構造体の各々の一部分が基板内(すなわち除去されていないフォトポリマー内)にあり、一部分が基板から突出するように、未曝露のフォトポリマー及び/又は曝露されたフォトポリマーが部分的に除去される。いくつかの実施形態では、更なる硬化光又は放射線を用いることができる。更なる硬化光又は硬化放射線は、残る曝露されたフォトポリマー及び又は未曝露のフォトポリマーにわたり実質的に均一な放射線を含むことができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、次に、基板をアタックするが残るフォトポリマーをアタックしないエッチング剤が施される。エッチング剤は、例えば液体エッチング剤にできる。プラズマによるなど他のエッチング方法を用いることができる。これらの実施形態では、微細構造体は、a)エッチングによって形成される構造体(この場合には残るフォトポリマーもエッチングの後に除去できる)、又はb)エッチングとフォトポリマーとの組み合わせによって形成される構造体(この場合には残るフォトポリマーは保持されるか又は一部だけ除去できる)のいずれかである。
【0045】
光又は放射線の干渉パターンを生成することによって、フォトポリマーの選択的曝露が達成される。いくつかの実施形態では、干渉パターンは回折格子によって形成される。いくつかの実施形態では、回折格子はスリットを含む。いくつかの実施形態では、回折格子のスリットは等スペースの溝に設けられる。
図2は、基板23上に微細構造体を製造するために光学プロファイル25を生成する、隣接するスリット間の溝間隔が「d」であり(基板部分28の間のスペースによって表される)、基板23から距離「D」に位置するそのような回折格子21の動作を示す。基板には、光硬化性層22が提供される。
【0046】
基板の光硬化性層を硬化するために光を放出する光源29が提供される。一実施形態では、光源は紫外(UV)光を放出する。他の実施形態では、光源は、近UV又は遠UV光源にできる。光源29は、所望の又は必要な結果を達成するために、単色、非単色、シングルモード又はマルチモードより選択される。いくつかの実施形態では、放出される光の波長は、例えば二つ以上の異なる波長の間で、又は一つ以上の波長範囲にわたって調整可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、光源は、コリメートされた光のビームを生成する。光源は、光をコリメートビームにコリメートする一つ以上の光学構成要素を含むことができる。一実施形態では、光源によって生成された光ビームは、レンズによってコリメートされる。他の実施形態では、光ビームはコリメートされない(すなわち収束又は発散する)。
【0048】
一実施形態では、光ビームは、回折格子21の表面に対して垂直又はほぼ垂直である。他の実施形態では、光ビームは、回折格子21の表面に対して非垂直である。更に他の実施形態では、光ビームは回折格子21に対して二つ以上の異なる向きに配向可能である。一実施形態では、光ビームは、回折格子21上に均一に照射される。
【0049】
図2の例では、光源29は、光ビームをコリメートするためのコリメートレンズシステム24と共に用いられる。コリメートされた光ビームは、格子21を均一に照射するのが示される。光ビームは、格子のスリットを通って回折して、基板23の光硬化性層22の上に放射照度プロファイル25(干渉パターン)を生成する。干渉パターンは、定義された間隔「a」の交互に生じる極大値(明るい縞)及び極小値(暗い縞)で形成される。隣接する極大値又は極小値の間の間隔「a」は、格子21の溝間隔「d」、光源29の波長(単数又は複数)、光源29のタイプ(単色、非単色、シングルモード、マルチモード)及び格子表面上への光ビームの入射角(単数又は複数)(
図2には垂直入射が示される)を含む多様なパラメータに依存する。これらのパラメータは全て固定されてもよく、又は変更時に放射照度プロファイル25の変動をもたらすために一部が可変であってもよい。一実施形態では、光源は一つ以上のレーザを含むことができる。光を供給するために用いられるレーザは、ダイオードレーザ、高出力ガスレーザ、周波数同調可能レーザ、又は別のタイプのレーザにできる。
【0050】
基板上に微細構造体を製造するために、格子の放射照度プロファイル25が用いられる。例えば、放射照度プロファイルのピーク(極大値)に曝露されるフォトポリマー層22の部分は硬化される。フォトポリマー層22の硬化された部分は、現像及びリンス工程(あれば)の後に残る。いくつかの実施形態では、更なる硬化光又は放射線を用いることができる。更なる硬化光又は硬化放射線は、残る曝露されたフォトポリマー及び又は未曝露のフォトポリマーにわたり実質的に均一な放射線を含むことができる。
【0051】
したがって、例えば強度プロファイル(空間的及び/又は時間的に)、曝露期間、基板に対する格子の相対的配置、及び/又は連続曝露と不連続曝露との間の選択又は制御(及び/又は本明細書に記載される他の変数の一つ以上)を含むシステムの変数を制御することにより、様々なサイズ(微細構造体の長さ、幅及び高さの任意の一つ以上を含む制御されたサイズ)、形状及び間隔の微細構造体の形成を可能にできる。いくつかの実施形態では、単回の曝露がある。制御された変数の一つ以上の使用により、単回の曝露の結果、多様なサイズ、形状、及び/又はスペースの微細構造体を生じさせることができる。
【0052】
放射照度プロファイル25における最も高い放射線強度に対応するピークが微細構造体の最も大きな高さを生成する一方で、放射照度プロファイル25におけるより低強度の放射線は、比較的小さな高さの微細構造体を生成することが観察されている(
図2には微細構造体の高さの変動は示されない)。
図2に示される放射照度パターン25は、放射線強度が異なる交互に生じる極大値を有する。中央の極大値(0次の極大値)が最も高い強度を有するのが示される。中央の極大値の両側の残りの極大値の強度は、中央の極大値からの距離が増加するにしたがい徐々に減少している。したがって、放射照度プロファイル25により、極大値の異なる放射線強度への曝露のために異なる硬化高さが生成され、その結果異なる高さの微細構造体が生じる。
【0053】
図3は、基板354の第一表面上に微細構造体を生成する方法工程を示す。
図3(a)では、説明される方法300は、基板354を形成するために光硬化性材料の層352をキャリアの外部表面に施す工程302を備える。あるいは、本方法は、光硬化性材料352が既に施された基板354のレセプトから開始できる。一実施形態では、光硬化性材料は、0.1~5000ミクロン、又は5~1000ミクロン、又は10~800ミクロン、又は50~500ミクロン、又は100~200ミクロン(両端を含む)の厚さである。その後、工程304で、例えば放射照度プロファイル25を適用するために
図2の光学システム20を用いて、基板354に放射照度プロファイルが適用される。放射線は、照射された光硬化性材料の硬化を開始し、光硬化性材料の層全体に強度プロファイルに対応する硬化深さプロファイルを引き起こす。
【0054】
工程306で、微細構造体を形成するために、未硬化の光硬化性材料が除去される。一実施形態では、形成された微細構造体は、微細構造体パターンを構成できる。除去工程306は、硬化の完了後又は硬化の部分的な完了後に行うことができる。
【0055】
図3(b)及び3(c)は、説明される方法300の工程302~306の各々の後の中間又は最終出力の例の側面図及び上面図をそれぞれ概略的に示す。この例では、光硬化性材料の層は、UV硬化性又は近UV硬化性被覆352であり、硬化時に外部表面に接着する。被覆352は、MIL‐PRF‐85285規格を含む軍用規格に合致するなど、特定の使途のために設計できる。別の実例では、被覆352は、プライマーサーフェイサーCromax3130Sである。別の実例では、被覆352は他のUV硬化性被覆であり、そのいくつかは市販されている。この例では、外部表面は車両のトップコート等の基板354である。
図3(b)及び3(c)に示される例では、所定の照射強度プロファイルは、鋸歯照射強度プロファイル356である。強度対硬化深さの対応が線形関係であるこの説明例では、結果として生じる微細構造体パターンは、鋸歯リブレット形状360を含む。強度対硬化深さの対応が非線形関係である別の例では、結果として生じる微細構造体パターンは、スカラップ状リブレット形状を含む。実際のシステムでは、強度と硬化深さとの間に対数関係が存在し得、この関係を考慮して必要な微細構造体又はリブレット形状が形成できる。
【0056】
いくつかの実施形態では、基板354は、並進ステージのマウント上に設置されることができ、及び/又は光学システム(例えば光学システム20)は、移動可能マウント上に提供できる。この場合、基板354及び光学システム20は、例えばコンピュータ制御下で、互いに対してx方向及び/又はy方向の一つ以上に移動できる。移動は、要件に応じて一定速度又は可変速度にできる。例えば、可変速度は、微細構造体のサイズ及び/又は形状に対応する変動をもたらすことができる。したがって、格子の放射照度強度プロファイルが基板のフォトポリマー層を照射する間に、基板及び強度プロファイルは所望の方向に並進できる。これにより、基板上の微細構造体の連続成長につながるフォトポリマー層の連続照射が提供される。並進の速度により、微細構造体の特定の形状が提供できる。
【0057】
図4(b)は、
図2の光学システム20において一次元格子を用いて達成できる基板上の微細構造体配置物の例を示す。フォトポリマー層が1D格子によって生成される
図4(a)に示される強度パターン41で曝露される間に基板/光学システムをy軸に沿って並進させることによって、基板のフォトポリマー層上の連続リブレットパターンが達成される。
【0058】
第一例として、
図4(c)に示される鋸歯リブレット微細構造体が基板上に形成できる。このタイプのパターンは通常、強度対硬化深さの対応が線形関係であり、基板/光学システムが一定速度でY軸に沿って移動される場合に得られる。第二例では、強度対硬化深さの対応が非線形関係である、
図4(d)に示されるようなスカラップ状リブレット形状が達成される。
【0059】
図5は、複数のスリット51を有する一次元格子50を示す。単色光源(図示せず)が、垂直入射で格子50を照射している。遠視野回折パターン53の強度プロファイルは、複数のピークを有する。最大強度(すなわち強度ピーク)のための条件は、格子の式d(sinθ
i-sinθ
m)=mλにより与えられ、式中θ
iは入射角であり、光の垂直入射では90°である。θ
mは回折角、mは回折モードを指し、m=0、+/-1、+/-2、+/-3などである。格子の式から、入射光の異なる波長が異なる角度で回折することが明らかである。
【0060】
タルボット効果は、1836年にヘンリー・フォックス・タルボットによって最初に観察されたものと本出願人により理解される。タルボット効果は、回折格子の格子から一定距離での自己結像の近視野効果として理解される。換言すれば、平面波が回折格子又は他の周期的構造体を透過すると、結果として生じる波面は、タルボット長ZTとして知られるある定義された距離の倍数で格子構造体を複製するように伝播する。
【0061】
図6は、タルボット効果の概念を示す。回折格子60が照射される。格子から発せられる光は、タルボット長Z
Tの整数倍、すなわちZ
T、2Z
T、3Z
Tなどで格子の像(「一次像62」)を形成する。加えて、二次像64は、格子の間隔の半分、すなわちd/2だけシフトされ、半タルボット長Z
Tの整数倍、すなわち1/2Z
T、3/2Z
T、5/2Z
Tなどで現れる。1/4Z
T、1/6Z
T、1/8Z
T、1/10Z
T、1/12Z
T、1/14Z
T、1/16Z
Tなどの整数倍で現れる他の像もある。
【0062】
本出願人は、非コリメート及び/又は非単色光源、例えばマルチモード光源を用いて、微細構造体を生成できることを観察している。タルボット距離ZTは、格子を照射するために用いられる光の波長に依存する。したがって、非単色光源(又はマルチモード光源)では、異なる波長のタルボット像が異なるタルボット長で形成される。中心周波数の周りの波長の分布の場合には、中心周波数のタルボット長を中心とした、対応するタルボット像の分布が存在することとなる。非単色光源の波長分布によって引き起こされるタルボット像の分布が望ましくないときには、小さなタルボット長、例えばZT/2を動作距離として選択することによって、その効果が低減又は最小化できる。
【0063】
近視野のタルボット像の位置で動作することの一つの利点は、それによりピーク強度プロファイルにおいてより高い光強度が提供されることである。したがって、より大きな動作距離Dを利用して、光源の所与の強度で基板上の微細構造体パターンを有効に生成することができる。ピークはZT/2の整数倍で最も高く、分数タルボット長が増加するにしたがって、例えばZT/4、ZT/6...ZT/2nで次第に小さくなる。
【0064】
加えて、より小さなタルボット長は、タルボット像のより小さな焦点深度にも関連し、より大きなタルボット長は、タルボット像のより大きな焦点深度に関連する。焦点深度は、印刷表面に当たる放射照度プロファイルが許容可能な微細構造体を印刷するのに十分に焦点が合っていることを保証する動作距離の変動である。より大きな焦点深度は、微細構造体の形状/サイズに影響可能なマイクロパターニング中の配置誤差又はポジションの変動に対する光学システム及び/又は基板の許容度がより高いことを意味する。そのような変動は、例えば不均一/非平面基板表面をマイクロパターニングする際に、又は基板/格子の揺れに起因して生じさせることができる。これにより、そのような不均一/非平面基板表面、揺れ又は振動が一般的であるクリーンルーム環境外での印刷が可能になる。
【0065】
本開示の方法及びシステムは、タルボット像に対応する、上記の変数のバランスをとった動作距離(回折格子とフォトポリマーとの間の距離)でのマイクロパターニングを含む。動作距離は一定又は実質的に一定とすることができ、それにより硬化プロセスの全体又は実質的に全体にわたってタルボット像が存在する。換言すれば、基板上の光硬化性材料の一部分を硬化するときには、動作距離は変更されないか、又は少なくとも異なる干渉パターンにしたがって実質的な硬化が生じる程度にまで変更されない。ある好ましい実施形態では、動作距離は、タルボット長の整数(n)倍、すなわちZT、2ZT、3ZT、4ZT...nZTのうちの一つである。他の実施形態では、動作距離は1/2m整数(m)倍であり、例えば1/2ZT、1/4ZT、1/6ZT、1/8ZTなどの整数倍である。例えば、特定の実施形態は、1/2ZT、1ZT、1.5ZT、2ZT、3/2ZT、2ZT、5/2ZT、3ZT、7/2Zなどのいずれかで結像できる。いくつかの実施形態では、動作距離は、6ZT以下である。いくつかの実施形態では、動作距離は、2ZTと4ZTとの間で選択される。いくつかの実施形態では、動作距離は、半タルボット長(1/2ZT)である。
【0066】
半タルボット長(1/2ZT)を動作距離として用いる利点の一つは、元のフォトマスクの特徴と同じサイズの特徴を有するフォトマスクのタルボット像を生成する最短距離であることである(すなわち1:1の特徴比)。半タルボット長(1/2ZT)を動作距離として用いることにより、エッジ効果が最小化され、結果として生じるタルボット像の良好な分解能が提供されるフォトマスクの1:1像を生成する印刷表面からの最短距離にフォトマスクを保持できる。更に、半タルボット長(1/2ZT)を動作距離として用いて、比較的大きな焦点深度がなお提供される。その結果、マルチモード又は非単色光源を用いる際の波長分布に起因する「ぼやけ」も少なくなる。したがって、半タルボット長(1/2ZT)を動作距離として用いることにより、単色光源よりも一般的に安価な、より広いスペクトルの光源の使用が容易になる。
【0067】
したがって、光源によって生成される光の強度(一般により高強度の光源はより高価であり、より低強度の光源はより高価でなく、また単一波長レーザダイオードは複数波長レーザダイオードよりも高価である)と動作距離に関連して上述した変数との間のバランスが達成される。本開示者は、実験室環境外で、例えば航空機の外部表面上に直接マイクロパターニングすることを可能にする有効な方法及び光学システムを開発する必要性を特定している。これは一般に、表面/光学構成要素の揺れ及び航空機の不均一/非平坦な外部を補うために、より大きな動作距離D及びより大きな焦点深度を要する。同時に、より低コストの光源を用いることが好ましい。
【0068】
本開示の実施形態は、大きな動作距離で大きな焦点深度でマイクロスケールの繰り返し又は準繰り返し強度プロファイルを可能にするためにタルボット効果を利用する光学システムを対象とする。これにより、大きな面積に繰り返し微細構造体を製造するための光硬化性材料の実用的で低コストでスケーラブルな曝露が可能になる。
【0069】
約100ミクロンのスペースでの抗力低減リブレット微細構造体の生成を可能にするように選択される制御可能な変数の選択例では、約200ミクロンのスリット間隔のフォトマスクが用いられる。スリット幅は約10ミクロンにできる。基板上に二つのパスが作製され、第二パスは第一パスからオフセットされて、必要な100ミクロン間隔でインターリーブされた印刷物が生成される。光源として405nmのレーザダイオードが用いられることができ、動作距離はタルボット長の半分である。
【0070】
図7は、基板上に微細構造体を製造するための光学システム700の実施形態の概略図を示す。
【0071】
この実施形態では、光学システムは光源700を備える。光源700は、本明細書に記載の光源73の特徴であるか又はその特徴を有することができる。コリメートされた光のビームを生成するために、レンズ702及び703を備えるビームコリメータが用いられる。他の実施形態では、ビームコリメータは省略されるか又は必要なビームプロファイルを生成するために異なる光学構成要素が用いられる。光ビームは、回折格子705を照射するように向けられ、タルボット像を含む回折パターンを生成する。この実施形態では、動作距離Dは2ZTである。この実施形態では、格子間隔dは、強度プロファイルピークの間隔aに等しく、したがって基板上の微細構造体パターンの所望の間隔は、回折格子705のスリットの分離距離dに等しい。
【0072】
他の実施形態では、光学パラメータは、Dが1/2ZT、3/2ZT、5/2ZT、7/2ZTなどのインターバルのいずれかであるように選択できる。更に他の実施形態では、光学パラメータは、Dが1/4ZT、3/4ZT、5/4ZT、7/4ZTなどのインターバルのいずれかであるように選択できる。異なる分数距離を選択することは、格子間隔に対する光強度プロファイルピークの相対的間隔に影響する。
【0073】
いくつかの実施形態では、光学システムは、基板上に微細構造体パターンを印刷するための複数の回折格子を含む。回折格子は、インターリーブされた微細構造体パターンを生成するために互いからオフセットできる。例えば、光学システムの実施形態は、それぞれ溝間隔が「d」の、d/2だけオフセットされた二つの格子を含む。二つの格子は組み合わせてa=d/2の間隔で微細構造体を生成する。したがって、二つの格子のそれぞれのスリット分離は、必要な微細構造体の間隔の二倍の間隔を有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、一つ又は複数のフォトマスク(例えば単数又は複数の回折格子21)は全てスタティックである。他の実施形態では、一つ以上の回折格子はダイナミックである。例えば、二つ(又はそれ以上)の異なる光硬化像を生成するために、第一溝間隔の一つの構成と、別の(すなわち異なる)溝間隔の別の構成との間でダイナミック格子が構成可能にできる。例えば、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)が、マイクロミラーが一つの状態(これらのマイクロミラーは格子のスリットの等価物を形成するため本明細書において「スリット状態」と呼称される)で基板上に光を向け、別の状態(これらは格子のスリット間の基板の等価物を形成するため本明細書において「基板状態」と呼称される)では基板上に光を向けないように構成できる。像間を遷移するためには、スリット状態で形成する一つ以上のマイクロミラー、典型的にはスリットを形成する全て又は実質的に全てのマイクロミラーが基板状態に切り替えられ、及び/又は基板状態で形成する一つ以上のマイクロミラー、典型的には二つのスリット間の基板を形成する全て又は実質的に全てのマイクロミラーがスリット状態に切り替えられる。
【0075】
いくつかの実施形態では、ダイナミックフォトマスクによって生成される二つ以上の像は、それぞれ光硬化性材料上にタルボット像を生成する。したがって、本方法は、ダイナミックフォトマスクを用いて光パターンの異なる像(例えばタルボット像)を生成し、材料を硬化するために異なる像を同じ光硬化性材料に適用する工程を更に含むことができる。ダイナミックフォトマスクは、適用プロセス中に異なるタルボット像の間で切り替わることができ、像は、光硬化性材料の硬化をもたらすのに十分な期間にわたり維持又は実質的に維持され、他の遷移像は光硬化性材料の硬化をもたらすのに十分な期間にわたり維持されない。いくつかの実施形態では、ダイナミックフォトマスクが間を遷移する三つ以上の異なる像が存在する。いくつかの実施形態では、ダイナミックフォトマスクは、二つ以上の像が適用される間に光硬化性材料から固定された距離又は実質的に固定された距離に維持される。
【0076】
タルボット長及びタルボット像の焦点深度は、格子周期dの増加とともに増加する。特に、ZT=2d2/λであり、焦点深度はスリット間隔の二乗により増加し、したがってdのわずかな増加が焦点深度の大きな増加を提供すると理解される。したがって、格子周期を二倍にすると、それに対応してタルボット長ZT及び焦点深度が増加する。したがって、二つのオフセットされた格子を用いる結果、マイクロパターニングにある利点をもたらすことができる。例えば、オフセットされた格子を用いることにより、複雑さが軽減され、配置誤差に対する許容度が高められ、不均一/非平面基板に対する許容度が高められ、揺れ/移動に対する許容度が高められた実施形態を容易にすることができ、及び/又はより費用効果の高い光源が容易になり、例えば高価なクリーンルーム環境を必要とせずに、より制御されない動作環境でのマイクロパターニングが可能になる。上記の例は、(一つの回折格子を用いる同様のシステムと比較して)タルボット長及びタルボット像の焦点深度の増加を得るための二つの回折格子の使用を特に説明するが、タルボット長及びタルボット像の焦点深度を更に向上させるために三つ以上の回折格子を用いることができることが理解されよう。
【0077】
図8(a)~(c)は、所望の間隔の微細構造体パターンを印刷するための二つの回折格子の使用を示す。
図8(a)を参照すると、二つの格子g1及びg2を照射する単一の光源が示される。これらの二つの格子の各々は、「d」の溝間隔を有し、同じ平面内にあり、基板80の光硬化性材料から「D=2Z
T」の距離にある。少なくとも一方が他方に対して移動可能な二つの格子を有することにより、微細構造体の形成に影響を与えるために用いることができる追加の制御可能な変数が提供される。
【0078】
図8(b)は、二つの格子g1及びg2が同じ格子基板G上に形成され、両方の格子が単一の光源を用いて照射される実施形態を示す。このような実施形態は、微細構造体の規則的パターンを保証するために、二つの格子がスリット格子の半分だけずらされることを保証するのに役立てることができる。
【0079】
図8(c)は、二つの別々の光源S1及びS2が、格子g1及びg2をそれぞれ照射するために用いられる実施形態を示す。二つの別々の光源S1及びS2を用いることができるため、各々が比較的低電力で安価な光源を利用することができる。微細構造体の形成に影響を与えるために、各々が独立して制御されること、ならびに/又は光源と回折格子との間の光学系が変動及び/もしくは制御されることもできる。
【0080】
図8(d)は、
図8(a)~(c)のいずれか一つの格子g
1及びg
2によってそれぞれ生成された強度プロファイルI
1及びI
2の組み合わせを示す。光硬化性材料の層802が、基板800上にある。光硬化性層802は、基板が格子に直交して横切る間に強度パターンI
1及びI
2に連続的に曝露される。このようにして、光硬化性材料802内に微細構造体804が形成される。隣接する微細構造体の間の間隔は、a=d/2である。本明細書に記載されるように、微細構造体は、例えば現像及びリンスによって光硬化性層の非照射部分を除去することによって露出できる。いくつかの実施形態では、光硬化性層の非照射部分を除去する工程は行われない。いくつかの実施形態では、残る曝露された光硬化性材料及び又は未曝露の光硬化性材料にわたり実質的に均一な放射線を含めることが可能な、更なる硬化光又は放射線を用いることができる。
【0081】
上記の方法は、所望の微細構造体間隔の二倍の溝間隔(すなわちd=2a)を各々有する二つの格子の使用を可能にする。例えば、一つの格子によって生成された曝露ドットが
図8(d)に図式的に示される。これにより、例えばクリーンルーム以外の状況での及び/又は非平坦表面上の、例えば航空機上に直接、コンベヤ製作プラント、ロール・ツー・ロール印刷システムなど、微細構造体の実用的な印刷を可能にする焦点深度の大幅な増加(特に焦点深度はd
2に正比例するため焦点深度の四倍の増加)が提供される。
【0082】
他の実施形態では、二つの格子は異なるスリット分離を有し、不均一なパターンを可能にできる。更に、格子は、強度ピークの分布の対応する変化を伴ってスリット分離の半分だけオフセットされる必要はない。他の実施形態では、三つ以上の格子が互いからオフセットされ、各格子が同じプロファイルを有するか、又は格子のうちの一つ以上が他とは異なるプロファイルを有することができる。
【0083】
図12(a)~(c)のシステムは、タルボット像のサイズ及びタルボット像の焦点を制御するために本開示に記載された実施形態と共に用いることができる。タルボット像のサイズ及びタルボット像の焦点は独立して制御できる。
【0084】
図12(a)~(c)は、光場1202を放出する光源1201を示す。凸レンズ1203が、光場の形状を改変するために用いられる。代替的実施形態では、光場の形状を改変するために、凹レンズ又は多様なレンズの組み合わせ(
図12(a)~(c)には示されない)を用いることができる。フォトマスク1204(例えば回折格子)が、改変された光場1207に曝露されて、光学パターン(例えばタルボット像)を生成する。基板1205が、フォトマスク1204によって生成される光学パターンに曝露される光硬化性層1206を備える。光硬化性層は、フォトマスク1204からD及びレンズ1203の軸からMの距離に置かれる。光硬化性層上の光学パターンの曝露により、光硬化性層1206内に微細構造体が生成される。
図12(a)から明らかなように、光場1207はコリメートされ、それによりサイズN1の光学パターンを生成する。
図12(b)では、光場1208は収束し、それにより比較的小さなサイズN2の光学パターンを生成する。
図12(c)では、光場1209は発散し、それにより比較的大きなサイズN3の光学パターンを生成する。
【0085】
図12(a)~(c)のシステムは、タルボット像のサイズ(N1/N2/N3)及びタルボット像の焦点のそれぞれに対する独立した制御を提供する。タルボット像のサイズは、(a)光源1201に対するレンズ1203のポジションを変更することによって(すなわちL1/L2/L3を変動させることによって)、及び(b)レンズ1203に対する光硬化性層1206のポジションを変更することによって(すなわちMを変動させることによって)調整できる。タルボット像の焦点は、光硬化性層1206とフォトマスク1204との間の距離Dを変動させることによって調整できる。
【0086】
いくつかの実施形態では、周期的又は準周期的パターン(一次元及び二次元)の一つ以上の格子を用いることができる。
図13(a)~(d)は、様々な周期的及び準周期的パターンの例を示す。
図13(a)は、左上に様々なスリットサイズのフォトマスクの例を示す。特に、最大幅のスリットは格子に沿って周期的に置かれ、これらの間にいくつかのより小さなスリットがある。より小さなスリットは光強度におけるより高い周波数変動を生み出し、これが微細構造体上の微細な特徴につながる(
図13(a)の左下及び右下を参照)。これらは「蓮の葉」様構造体と呼称できる。このような構造体は、例えば超疎水性を生み出すための用途を見出すことができるが、これに限定されない。
【0087】
図13(b)は、二次元格子及び対応する強度プロファイルの例(左)、ならびに光学顕微鏡法を用いて観察されるこの格子を用いて形成される微細構造体の例(右)を示す。この構造体は、例えば抗菌特性を備えた表面を生成するための用途を見出すことができるが、これに限定されない。
【0088】
図13(c)は、二次元強度プロファイルの別の例(左)、及び光学顕微鏡法を用いて観察されるこの格子を用いて形成される微細構造体の例(右)を示す。この構造体は、例えば防汚特性を備えた表面を生成するための用途を見出すことができるが、これに限定されない。
【0089】
図13(d)は、タルボット効果の結果生じるマイクロパターニングのための準周期的フォトマスク強度プロファイルの更なる例を示す。
【0090】
本開示の実施形態は、光源を選択すること、ならびに/又は、特定の微細構造体の形状もしくはパターンを達成するためならびに/もしくは基板にわたる微細構造体の形状及び/もしくはパターンの変動を達成するために、選択された光源もしくは光学システムの他の変数を制御することを含む。微細構造体の形状又はパターンに影響する変数には、波長(単数又は複数)、波長分布(単数又は複数)、光が収束光か、発散光か又はコリメート光か、格子に対する光の入射角、格子と基板表面との相対角度、及び光の強度が含まれる。光源の制御は、適切なコントローラ、例えばプログラムされたコンピュータ、マイクロコントローラ又は適切なハードウェアによることができる。
【0091】
したがって、コリメートされない安価なレーザダイオードにより、微細構造体の印刷に適した上述の強度プロファイルの組み合わせが達成できる。これにより、基板上に所望の微細構造体を生成するための光学システムの複雑さ及びコストが大幅に低減される。これによって、より安価で単純な光学システムが可能になるだけでなく、収束ビーム又は発散ビームを用いてマスクを照射することができ、それによりマスク/格子から出てくる放射照度プロファイルが縮小又は拡大される。これにより、単一のマスク/回折格子により放射照度プロファイルを調整することができる。これは、能動光学系(例えばレンズ)で行われることもでき、これにより微細構造体パターンを印刷時にライブ調整できる。
【0092】
入射光ビームは、コリメートされるか、収束するか又は発散できる。微細構造体の形状及び間隔を操作するために、収束又は発散光ビームを用いることができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、表面上に直接その場で微細構造体を製造するために、ポータブル微細製造アプリケータが提供される。
図9は、光学システム904を用いて外部表面902(例えば航空機、ボート又は車両の外部表面)をマイクロパターニングするために用いることができる例示的なポータブル微細製造アプリケータ900を示す。このようなポータブルシステムは、様々な用途のための微細構造体を製造する容易で安価でより手間のかからない手順を提供する。例えば、1.燃料効率を改善するために航空機上に抗力低減リブレット微細構造体を製造するため、2.出力電力効率を改善するために風力タービンブレード上に抗力低減リブレット微細構造体を製造するため、3.汚れを防止するため及び/又は抗力を低減するために船体上に防汚及び/又は抗力低減微細構造体を製造するため、4.衛生及び清潔さを維持するために自浄疎水性又は抗菌性微細構造体の床又はその他の表面を製造するため、及び5.木製家具及びその他の美的用途のために艶消し及びソフトタッチの微細構造体を製造するため。
【0094】
いくつかの実施形態では、本開示の方法及びシステムは、光硬化性層の非放射部分を除去する工程を実施しない曝露のみの微細製造に用いられる。結果として生じる微細構造体は、UV硬化被覆内に形成される。そのような微細構造体を作製するために、例えば
図2~9を参照して本明細書に記載される光学システムを用いて、高コントラスト高ピークの放射照度パターンが生成される。高コントラスト高ピークの放射照度パターンは、UV硬化性層を硬化するために基板のUV硬化性層上に照射される。この後、UV硬化性層を更に硬化するために、より低強度のUVが光硬化性材料に適用される。より低強度のUVは、例えばUVランプを用いて実質的に均一に適用できる。このプロセスは屈折率の差を生み出し、これにより結果として生じる微細構造体は視認可能であるが、実質的にUV硬化性層の上面の下にある。このプロセスは、反射率の低下(例えば表面上の艶消し仕上げ)を含む様々な光学効果及び様々な回折効果を生み出すことができる。いくつかの実施形態では、このプロセスは、結果として生じる微細構造体のUV硬化性層の上面からの小さな突起も生成できる。例えば、2ミクロン未満の典型的な突起が観察できる。したがって、光硬化性材料の非放射部分を除去する工程が行われないこのプロセスを用いて低アスペクト比の微細構造体が作製できる。
【0095】
更に、本開示の実施形態は、包装産業における用途も提供する。UV硬化性被覆が包装産業において既に用いられている。本開示の少なくともいくつかの実施形態は、包装体のUV硬化性被覆内に微細構造体を製造するために用いることができる。パッケージのUV硬化性被覆内の微細構造体の製造には、例えば1.パッケージのUV硬化性被覆内のセキュリティ機能として回折又はホログラフィ光学効果を与えるため、2.抗菌特性を与えるため、及び3.より艶消しな又はソフトタッチの仕上げ特性を与えるためなど、多数の利点及び用途がある。
【0096】
いくつかの実施形態では、微細製造統合ユニットを用いて、そのような製品の表面をマイクロパターニングするためにUV硬化性被覆を利用するラインを生産に統合することができる。このような微細製造統合ユニットは、様々な用途の微細構造体を製造するための簡単で安価な方法のために既存のUV被覆及び硬化インフラストラクチャを活用することができる。例えば、1.木材加工ラインにおいて艶消しもしくはソフトタッチ又は抗菌の表面を製造するため、2.食品包装ラインにおける光学表面又は抗菌表面のため、3.グラフィックアート印刷における超疎水性又は防汚表面のため。
【0097】
本開示の実施形態は、3D印刷産業における用途も提供できる。例えば、UV硬化性材料から印刷される3D印刷物体の表面上に微細構造体を製造できる。通常、DLP又はSLA 3Dプリンタが物体を印刷した後に、最終的な材料特性を達成する前に、最終的なUVポストキュア又は溶剤中での未硬化樹脂の洗い流しが行われる。本開示の実施形態は、3D印刷の後及び最終的なUVポストキュア又は溶媒中での未硬化樹脂の洗い流しの前に、印刷物体の表面上に機能的微細構造体特性を与えるために3D印刷物体上に微細構造体を製造するために用いることができる。
【0098】
更に、本プロセスは焦点深度が大きく、並列で稼働できる低コストの構成要素による連続的で非接触の方法であるため、大きな基板にスケーラブルであり、適用の時間及びコストの低減を可能にする。
【0099】
図10(a)及び10(b)は、光硬化性層が、空気と接触する上側表面を通して光場に直接曝露される微細構造体製造のプロセスを示す。
図10(a)は、その第一表面1002上に光硬化性材料の層1003を備えた基板1001を示す。方向1004が、光硬化性層1003に対する光場の曝露の方向である。いくつかの実施形態では、プロセスは、フォトポリマーの硬化が反対方向1009であるボトムアップ硬化によって作用する。
図10(b)は、光硬化性材料の上側表面1007が光学プロファイル1005によって照射されるときの微細構造体1006の製造を示す。光場1005は、硬化光が光硬化性層1003の底部に到達し、光硬化性層1003を硬化及び接着させるのに十分な強度を有する。光が第一表面1002に到達して光硬化性材料のボトムアップ硬化を開始するために光硬化性層1003を通過することにより光場強度のある部分は減損しているため、結果として生じる微細構造体の高さは制限される。したがって、一般に、より背が高い微細構造体が所望されるときには、より高強度の光場が必要である。
【0100】
本開示の他の実施形態は、光硬化性材料の光源に面する側で硬化が始まるように、透明又は半透明基板を通して光硬化性材料を照射することに基づいて微細構造体又は微細構造体パターンを製造する。このアプローチは、硬化された光硬化性材料の基板への接着を保証するのに役立てることができる。このアプローチは、所与の光強度で
図10(a)のアプローチと比較してより背が高い微細構造体も容易にできる。
【0101】
図11(a)は、透明基板1101を示す。基板の透明度は、硬化光を基準に決定され、光硬化性材料を硬化するために有効な量の光が基板を横切るとき、基板は硬化光にとって透明である。一実施形態では、基板は透明なガラス基板である。別の実施形態では、基板は透明なプラスチック基板にできる。光硬化性材料の層1103が、透明基板の第一表面1102の上に施されるか又は存在する。光学プロファイル1101が、透明基板の第二表面1109上に照射される。このようにして、光硬化性層は、透明基板を通して下からすなわちその上面1107からではなくその下面1108から光学プロファイルに曝露される。
【0102】
ある実施形態では、透明基板の下から曝露される光学プロファイルは、本明細書に既に記載されたのと同じ又は類似の様式で回折格子を用いて生成される。
【0103】
透明基板の下から硬化する方法の潜在的用途の一つは、微細構造体が可撓性透明基板、例えば透明プラスチック基板/シート/フィルム上に製造されるロール・ツー・ロールタイプの生産ラインにできる。これにより、微細構造基板/シート/フィルムのハイスループット印刷が可能になる。透明プラスチック基板/シート/フィルムは、微細構造体がそれらの上に製造された後の多数の表面上への施用のために接着剤で裏打ちできる。例えば1.空中、陸上及び水中スポーツを含む競技用途で効率又は速度を改善するために抗力低減リブレットフィルムが作製されることができ、2.感染拡大のリスクを低減するために病院、航空機、公共交通機関又はその他の高頻度接触表面の用途において抗菌性微細構造体フィルムが用いられることができ、3.グレアを低減し、又は透過効率を高めるために反射防止又は放射線吸収フィルムが用いられることができる。
【0104】
本開示の上記の実施形態の一つ以上の他の利点は、以下を含む。1.非接触微細製造方法であることにより、鋸歯形状リブレット設計の最大二倍のより大きな抗力低減性能を有するがナノインプリントリソグラフィ等の代替の接触製造方法で製造することが困難又は不可能である高アスペクト比の微細構造体、例えば背が高い薄い「ブレード」タイプのリブレットの製造が可能である。2.数分の一秒のタイムスケールで生じる光重合によってのみ制限されるハイスループット製造が可能である。3.強度硬化プロファイルの調整により微細構造体の設計変更が行われることができ、前述のようにこれは倍率を調整するために発散又は収束光ビームを用いて、又は時間内に出力されるレーザ出力を調整することによって操作できる。これにより、設計変更のために高価なインプリントマスクが製造されることを要する代替方法、例えばナノインプリントリソグラフィと比較して、製造中の微細構造体設計に対する低コストで高速でリアルタイムでもある調整が可能になる。4.非接触方法であるため、フォトマスク/回折格子は製造中に損傷されず、例えばインプリント中に損傷を受けやすく大きなインプリントスタンプにわたって作製される特殊な3D設計を有するナノインプリントリソグラフィの一部の方法と比較して比較的低コストの単純な2Dパターンである。5.非接触方法であることにより、必要な処方の変更を最小限として又は変更を全く要さずに、産業で既に用いられている既存のUV硬化性被覆による微細製造が可能になる。例えば、既存のUV硬化性木材被覆から艶消し微細構造体を印刷し、又は航空宇宙もしくは自動車被覆からリブレット抗力低減微細構造体を印刷する。これは、被覆が微細構造体を生成するのに十分に、しかし微細構造体が損傷されるか又はマスク自体に付着したままになるほどではなくインプリントマスクと正しく相互作用するように処方される必要があるナノインプリントリソグラフィなどの代替の接触方法と対比される。
【0105】
本明細書で用いられるところの、「含む」及び「備える」という用語(及び「含んでいる」、「含んだ」、「備えている」、「備えた」、「備えられる」などのこれらの用語の変化形)は、包括的であることが意図され、更なる特徴、構成要素、整数又は工程を除外することは意図されない。
【0106】
本明細書に開示及び定義された実施形態は、本文又は図面から言及されるか又は明らかな個別の特徴の二つ以上の全ての代替的組み合わせに及ぶことが理解されよう。これらの異なる組み合わせの全ては、実施形態の多様な代替的態様を構成する。