(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞及びそれを含む骨疾患治療用組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20241114BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20241114BHJP
【FI】
C12N5/077
C12N5/0775
(21)【出願番号】P 2022561156
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 KR2021013900
(87)【国際公開番号】W WO2022075809
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0130138
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517082560
【氏名又は名称】セフォ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョン スク
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ウン ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハ ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スン レ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ア ルム
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0087870(KR,A)
【文献】国際公開第2020/064791(WO,A1)
【文献】特開2009-256350(JP,A)
【文献】特開2008-297220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0156724(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110577929(CN,A)
【文献】GARG, P et al.,Prospective Review of Mesenchymal Stem Cells Differentiation into Osteoblasts,Orthopaedic Surgery,2017年,Vol. 9,pp. 13-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)空気透過性ポリマー膜をポロキサマー(poloxamer)バブルでコーティングする段階と、
ii)前記段階i)のバブルに間葉系幹細胞を1×10
3~1×10
5個/cm
2の密度で接種する段階と、
iii)前記段階ii)の間葉系幹細胞を分化培地
中で骨芽細胞に分化させる段階と、
iv)前記段階iii)で分化させた骨芽細胞を分離及び得る段階と、
を含み、
前記段階i)のバブルは、前記空気透過性ポリマー膜の上でポロキサマーを入れて動かしてバブルを発生させる段階を含んで製造される、
間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させる方法。
【請求項2】
前記段階ii)の間葉系幹細胞は、臍帯、臍帯血、胎盤、羊膜、骨髄、脂肪、毛包、歯、歯髄及び皮膚真皮からなる群から選ばれるいずれか一つ以上に由来することを特徴とする、請求項1に記載の間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月08日付で出願された大韓民国特許出願第10-2020-0130138号を優先権として主張し、前記明細書の全体は、本出願の参考文献である。
この特許出願は、韓国政府(科学技術情報通信部、保健福祉部)が資金提供する韓国再生医療基金(KFRM)助成金の支援を受けて提出されました。
[プロジェクトID番号]22D0801L1
[プロジェクト番号]22D0801L1
[部局名]韓国政府(科学技術情報通信部、保健福祉部)
[プロジェクト管理(専門)機関名]韓国再生医療基金(KFRM)
[研究計画名]韓国政府再生医療技術開発プロジェクト
[研究プロジェクト名]大腿骨頭骨壊死患者におけるヒト臍帯由来骨芽細胞細胞療法CF-M801の安全性と探索的有効性を評価する第1相臨床試験
[貢献度]50/100
[プロジェクト実施団体名]セフォ カンパニー リミテッド
[研究期間]2022.04.01~2024.12.31
この特許出願は、韓国政府(科学技術情報通信部、保健福祉部)が資金提供する韓国再生医療基金(KFRM)助成金の支援を受けて提出されました。
[プロジェクトID番号]22C0604L1
[プロジェクト番号]22C0604L1
[部局名]韓国政府(科学技術情報通信部、保健福祉部)
[プロジェクト管理(専門)機関名]韓国再生医療基金(KFRM)
[研究計画名]韓国政府再生医療技術開発プロジェクト
[研究プロジェクト名]臍帯由来骨芽細胞を用いた骨粗鬆症性骨折治療のための先端バイオコンバージェンスメディカルプロダクトの開発
[貢献度]50/100
[プロジェクト実施団体名]セフォ カンパニー リミテッド
[研究期間]2022.04.01~2025.12.31
【0002】
本発明は、間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させる方法、前記方法で分化した骨芽細胞を含む骨疾患治療用細胞治療剤ないしその製造方法に関する。
【0003】
また、本発明は、前記方法で得られた骨芽細胞を骨疾患患者に投与する段階を含む骨疾患治療方法に関する。
【背景技術】
【0004】
幹細胞(Stem cell)は、各種細胞に分化(differentiation)できる多能性(pluripotent)を有する未分化細胞を総称し、幹細胞は、特定の分化因子及び/又は環境によって特定の細胞に分化できる。幹細胞の種類としては、胚性幹細胞(embryonic stem cell)、胚性生殖細胞(embryonic germ cell)、成体幹細胞(adult stem cell)、がん幹細胞(cancer stem cell)などがある。近年、多様な細胞に分化可能な幹細胞を用いて損傷した組織の再生、軟骨損傷疾患、糖尿病、白血病、神経疾患、心臓病、脊髄外傷または線維性障害などを始めとした様々な疾患を治療しようとする研究が活発に行われており、これによって幹細胞を特定の細胞に分化させようとする研究が試みられている。また、分化が終わった細胞を逆分化を通じて幹細胞として作製した人工多能性幹細胞(induced Pluripotent stem cell,iPS)なども細胞分化に使用されている。特に、間葉系幹細胞(MSC、Mesenchymal Stem Cell)は、骨、軟骨、脂肪、筋肉細胞を含む様々な中胚葉性細胞に分化する能力を持つ多分化能幹細胞である。このような能力により間葉系幹細胞は、骨疾患、組織損傷の再生医療の分野で治療的製剤として価値があると考えられている。再生医学は、従来では、回復が不可能であった組織や臓器の固有回復メカニズムを活性化させるか、または損傷した組織を交替することにより、損傷した部位を再生させることを目的としているため、身体が自ら治癒できない組織または臓器を実験室で培養し、これを身体内に安全に移植するか、または注入する試みを含む。再生医療に基づく治療法として、難治性疾患に対する治療方法で幹細胞の自己複製能力及び分化能力を用いた幹細胞治療剤が次世代治療剤として脚光を浴びている。
【0005】
ただし、使用される幹細胞の起源、由来部位、培養程度、分化程度など多様な要因に起因した危険要素により、安全性及び有効性に対する基準が厳しく、許認可に困難性がある。また、多様な細胞に分化できる多能性を有する幹細胞を特定の細胞に分化させ、商業的に使用するためには、大量生産が必要であるが、幹細胞から骨細胞に迅速かつ安全に分化させることは、困難である。
【0006】
幹細胞を特定細胞に分化させる方法について、大韓民国特許10-2016-0034541号では、ゾルゲル相転移を用いてヒドロゲルをコーティングした多孔質膜において幹細胞から骨細胞に分化させる方法が公開されており、大韓民国特許10-2018-0114307号では、間葉系幹細胞の分化を促進するために培地にヘキサノイルグリコールキトサンを含有する方法を公開している。US8,580,757B2では、間葉系幹細胞の分化を調整する方法として、miRNAまたは、siRNAを用いる方法について開示している。このように間葉系幹細胞を骨細胞に分化させるための様々な試みがなされているが、外部の物質を幹細胞に投与することなく、分化培地に高価な組成の追加なしに幹細胞から骨細胞を迅速に大量に分化させることができる方法は、依然として開発されていない状況である。
【0007】
しかし、骨関連疾患に対する細胞治療薬として活用できるように、骨芽細胞を幹細胞から安定的かつ迅速に分化及び培養する方法に対するさらなる研究は、依然として要求されているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、骨疾患を治療するための再生医療方法の一つとして、間葉系幹細胞から分化した骨細胞治療剤を製造する最適な方法を考えながら本発明を創出した。本発明者らは、骨疾患治療用細胞治療剤を製造するための骨芽細胞を製造する方法を提供しようとする。本発明の分化方法を用いる場合、従来の細胞治療剤用幹細胞を分化させる方法に比べて骨芽細胞に安定的かつ迅速に分化でき、前記骨芽細胞の骨再建の効能が非常に優れていることを確認し、本発明を完成した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させる方法、前記方法で分化した骨芽細胞を含む骨疾患治療用細胞治療剤ないしその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、i)空気透過性ポリマー膜を界面活性剤バブルでコーティングする段階、
ii)前記段階i)のバブルに間葉系幹細胞を1×103~1×105個/cm2の密度で接種する段階、
iii)前記段階ii)の間葉系幹細胞を分化培地から骨芽細胞に分化させる段階、
iv)前記段階iii)で分化させた骨芽細胞を分離及び得る段階、
を含む間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させる方法を提供する。
【0011】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記段階i)の界面活性剤は、ポロキサマー(poloxamer)であってもよい。
【0012】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記段階i)のバブルは、前記空気透過性ポリマー膜の上で界面活性剤を入れて動かしてバブルを発生させる段階を含んで製造されるものであってもよい。
【0013】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記段階ii)の間葉系幹細胞は、臍帯、臍帯血、胎盤、羊膜、骨髄、脂肪、毛包、歯、歯髄及び皮膚真皮からなる群から選ばれるいずれか一つ以上に由来するものであってもよい。
【0014】
本発明は、さらに前記方法で得られた骨芽細胞を提供する。
【0015】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記骨芽細胞は、コネキシン43(Connexin 43、CX43)、ランス2(Runt-related transcription factor 2、RUNX2)及びコラーゲンタイプ1A(Collagen type 1A1、COL1A1)の発現レベルが未分化幹細胞及び成熟した骨細胞に比べて高く、アンギオポイエチン(Angiopoietin 1、ANGPT1)及びアルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase、AP)の発現レベルが未分化幹細胞に比べて高く、オステリックス(Osterix、OSX)、オステオカルシン(Osteocalcin、OCN)及びオステオポンチン(Osteopontin、OPN)の発現レベルが成熟した骨細胞に比べて低いものであってもよい。
【0016】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記骨芽細胞は、Ki‐67の発現レベルが未分化幹細胞に比べて低いものであってもよい。
【0017】
本発明は、さらに前記方法で得られた骨芽細胞を含む骨疾患治療用細胞治療剤を提供する。
【0018】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記骨芽細胞は、コネキシン43(Connexin 43、CX43)、ランス2(Runt-related transcription factor 2、RUNX2)及びコラーゲンタイプ1A(Collagen type 1A1、COL1A1)の発現レベルが未分化幹細胞及び成熟した骨細胞に比べて高く、アンギオポイエチン(Angiopoietin 1、ANGPT1)及びアルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase、AP)の発現レベルが未分化幹細胞に比べて高く、オステリックス(Osterix、OSX)、オステオカルシン(Osteocalcin、OCN)及びオステオポンチン(Osteopontin、OPN)の発現レベルが成熟した骨細胞に比べて低いものであってもよい。
【0019】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記骨芽細胞は、Ki‐67の発現レベルが未分化幹細胞に比べて低いものであってもよい。
【0020】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記骨疾患は、骨折、大腿骨頭骨壊死、脊椎癒合、遅延癒合または不癒合、骨粗鬆症、骨壊死症、仮関節症、パジェット病及び骨形成不全症からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であってもよい。
【0021】
本発明は、さらに前記方法で得られた骨芽細胞を骨疾患患者に投与する段階を含む骨疾患治療方法を提供する。
【0022】
本発明の間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)とは、多能性(multipotent)未分化細胞と同じ意味で使用されるが、脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、心臓細胞または筋肉細胞を含む様々な中胚葉性細胞または神経細胞のような外胚葉性細胞にも分化する能力を持つ成体幹細胞を意味する。また、胚幹細胞で一般的に問題となるがん(cancer)化や倫理的な問題から自由であるだけでなく、移植後も免疫拒絶反応を起こさない場合がある。
【0023】
本発明の「骨芽細胞(osteoblast)」とは、脊椎動物の骨細胞(osteocyte)を作る細胞であって、造骨細胞ともいう。骨基質を合成及び分泌して骨を作ることもあり、自分が作った骨組織の中に埋もれて自ら一般骨細胞になりもする。その他に骨に必要なCa、Mgイオンなどの物質を骨に沈着させて骨組織を石灰化させることができる。内部物質の違いと活性によって休止期と形成期に分かれ、分裂能力は大きいが、古い骨ではその数が減少する。
【0024】
本発明の「骨疾患(bone disease)」とは、骨(bone)に損傷が生じ、骨の構成及び密度が変化し、骨折が起こりやすい状態を意味する。骨は、骨格系の安定性を維持する身体内で最も硬い組織であって、筋肉のテコとして使用され、内部の臓器を保護するだけでなく、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを貯蔵する役割を果たす。このような骨疾患は、殆ど骨折などの外傷、または無血性壊死、骨粗鬆症などの代謝性疾患によって発生し、原因に関係なく身体の機械的支持に問題が生じ、運動能が低下するだけでなく、気管節の形成などで持続的な痛みを誘発する。本明細書において骨疾患は、骨粗鬆症、骨壊死症、仮関節症、パジェット病または骨形成不全症を含む。
【0025】
前記「骨粗鬆症(osteoporosis)」とは、骨の量が減少し、質的な変化により骨の強度が弱くなり、骨折が起こる可能性が高い状態を意味し、主に遺伝、早期閉経、過度な食事療法またはステロイド薬剤などが主な原因になる。
【0026】
前記「骨壊死症」とは、骨に血液供給ができず、骨組織が死んでいく疾患である。身体のどこでも発生することがあるが、主に大腿部(太ももの骨)の上側、腕の上側、肩、膝や脊椎などで発生する。
【0027】
前記「仮関節症」とは、「仮関節」とも呼ばれ、骨が折れた後にその部位がくっつかず(不癒合)、まるで関節のように動くことをいう。骨折後の治療過程で、間違いがあって、或いは骨折部位の細菌感染が原因となって発生することがある。
【0028】
前記「パジェット病」とは、骨が新たに生じて成長し、吸収される過程である骨再形成(bone remodeling)が過度に現れ、様々な部位の骨格系が侵される局所性骨疾患である。主に骨盤、大腿部または頭蓋骨で発生する。
【0029】
前記「骨形成不全症」とは、先天的に骨が弱く、特別な原因なしに骨が折れやすい症状を総称し、骨異形成症ともいう。
【0030】
本発明の「分化(differentiation)」とは、細胞が分裂増殖して成長している間に互いに構造や機能が特殊化する現象、すなわち、生物の細胞、組織などがそれぞれに与えられた役割を行うために形態や機能が変わっていくことをいう。例えば、個体発生で最初に同質であったある生物系の部分の間に質的な違いが生じること、またはその結果として、質的に区別できる部分系に分かれている状態を分化という。
【0031】
本発明の「細胞療法剤(cell therapeutic agent)」とは、個体から分離、培養及び特殊な操作で製造された細胞及び組織を治療、診断又は予防の目的で使用する医薬品であって、細胞又は、組織の機能を復元させるため、生きている者が同種または異種細胞を体外で増殖選別するか、または他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなどの一連の行為を通じて使用されてもよい。
【0032】
前述したように、従来の幹細胞を用いた細胞治療剤は、高い単価などの問題により大衆的に商用化されにくく、特に幹細胞を骨芽細胞に分化するのに時間と費用がかかりすぎるという短所が存在した。
【0033】
一方、本発明による分化方法は、継代培養初期の幹細胞を骨芽細胞に短期間で安定的かつ迅速に分化させることができる。従来の幹細胞分化方法は、8回以上継代培養された幹細胞を約20日以上分化させなければ骨芽細胞を得ることができなかったのに対し、本発明では、5回継代培養された幹細胞を約3日だけ分化させると、分化した骨芽細胞を得ることができる(
図1)。特に、本発明の分化方法を用いる場合、幹細胞の出所(donor)による反応偏差(variation)なしにすべて骨芽細胞に分化できるため、同種細胞治療剤として活用しうる。
【0034】
したがって、本発明は、i)空気透過性ポリマー膜を界面活性剤バブルでコーティングする段階、
ii)前記段階i)のバブルに間葉系幹細胞を1×103~1×105個/cm2の密度で接種する段階、
iii)前記段階ii)の間葉系幹細胞を分化培地から骨芽細胞に分化させる段階、
iv)前記段階iii)で分化させた骨芽細胞を分離及び得る段階、
を含む間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させる方法ないし前記方法で分化した骨芽細胞を提供しうる。
【0035】
前記段階i)のポリマー膜は、ハイパーフラスコの多孔質膜であってもよい。
【0036】
前記段階ii)の密度は、好ましくは、1×103~1×105個/cm2であってもよく、より好ましくは、1×104個/cm2であってもよい。
【0037】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記段階i)の界面活性剤は、ポロキサマー(poloxamer)であってもよい。ポロキサマー以外の他の界面活性剤は、細胞毒性を細胞毒性を帯びており(実施例4)、本発明に適していない。前記ポロキサマーは、ポロキサマー184、ポロキサマー185、ポロキサマー188、ポロキサマー124、ポロキサマー237、ポロキサマー338及びポロキサマー407からなる群から選ばれるいずれか1つ以上であってもよい。
【0038】
前記段階i)の界面活性剤は、最大10%界面活性剤であってもよい。
【0039】
前記段階i)のバブルは、前記空気透過性ポリマー膜上に界面活性剤を入れて動かして発生されるものであってもよい。例えば、前記段階i)のバブルは、前記空気透過性ポリマー膜の上で界面活性剤を振って発生するか、またはピペッティングを通じて発生されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記段階ii)の間葉系幹細胞は、臍帯、臍帯血、胎盤、羊膜、骨髄、脂肪、毛包、歯、歯髄及び皮膚真皮からなる群から選ばれるいずれか一つ以上に由来するものであってもよい。より好ましくは、段階ii)の間葉系幹細胞は、臍帯由来間葉系幹細胞であってもよい。
【0041】
前記臍帯由来間葉系幹細胞の場合、出産後に廃棄される臍帯組織を用いることにより、採取が容易で多量の幹細胞を容易に確保できるという長所がある。脂肪や骨髄由来幹細胞は、分離、抽出される供与者の年齢や健康状態などに影響を受けて増殖力や分化能などに制限があり、変動性が多いが、臍帯由来幹細胞の場合、成体幹細胞の中で最も早い時期に得ることができる幹細胞として、供与者の年齢などの変数によって幹細胞能に影響をほとんど受けず、優れた増殖力及び分化能を持つ。また、臍帯由来間葉系幹細胞は、神経系疾患、肝疾患、筋骨格系疾患など様々な疾患に活用可能な幹細胞群を分離できるという長所がある。
【0042】
前記段階ii)で間葉系幹細胞をバブルに接種することは、空気透過性ポリマー膜を界面活性剤バブルでコーティングした後、少なくとも2時間以上経過してバブルが消滅し始めたときに接種するものであってもよい。
【0043】
前記段階ii)の間葉系幹細胞は、5~8継代培養した幹細胞であってもよい。より好ましくは、5~6継代培養した幹細胞であってもよい。
【0044】
前記段階ii)で接種された間葉系幹細胞は、分化培地から骨芽細胞に分化する前にα-MEM、DMEM及びFBSからなる群から選ばれるいずれか1つ以上を含んでもよい培養液で12時間~48時間培養するものであってもよい。より好ましくは、前記培養液中で20時間~30時間培養するものであってもよい。
【0045】
前記段階iii)の分化は、24時間~120時間分化させるものであってもよい。より好ましくは、60時間~80時間分化させるものであってもよい。
【0046】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記骨芽細胞は、コネキシン43(Connexin 43、CX43)、ランス2(Runt-related transcription factor 2、RUNX2)及びコラーゲンタイプ1A(Collagen type 1A1、COL1A1)の発現レベルが未分化幹細胞及び成熟した骨細胞に比べて高く、アンギオポイエチン(Angiopoietin 1、ANGPT1)及びアルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase、AP)の発現レベルが未分化幹細胞に比べて高く、オステリックス(Osterix、OSX)、オステオカルシン(Osteocalcin、OCN)及びオステオポンチン(Osteopontin、OPN)の発現レベルが、成熟した骨細胞に比べて低いものであってもよい。
【0047】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記骨芽細胞は、Ki‐67の発現レベルが未分化幹細胞に比べて低いものであってもよい。
【0048】
本発明の骨芽細胞は、初期骨芽細胞から発現するコネキシン43(Connexin 43、CX43)、ランス2(Runt-related transcription factor 2、RUNX2)、コラーゲンタイプ1A(Collagen type 1A1、COL1A1)及びアルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase、AP)の発現が未分化幹細胞に比べて著しく高く、細胞増殖マーカーであるKi-67の発現が未分化より減少はするが、発現されており、コロニーを形成することで細胞増殖が起こる初期骨芽細胞であることが分かる。これに比べて十分に成熟した骨細胞になるほど発現が増加するオステリックス(Osterix、OSX)、オステオカルシン(Osteocalcin、OCN)及びオステオポンチン(Osteopontin、OPN)の発現レベルは、成熟した骨細胞(NHOst)に比べて低かった。また、初期骨芽細胞において明確に発現するアンジオポエチン(Angiopoietin 1、ANGPT1)の発現も遺伝子及びタンパク質の発現が数百倍以上増加して初期の骨芽細胞の特性を明らかに示していた(表1)。
【0049】
【0050】
前記CX43は、GJA1遺伝子によって暗号化され、軟骨細胞、造骨細胞、骨細胞破骨細胞などの骨細胞の類型で発現される最も一般的な間隙接合タンパク質である。CX43は、様々な骨細胞の類型間の信号伝達を調節するのに重要な役割を果たし、骨の発達、分化、モデリング及びリモデリングだけでなく、病理を調節する。特に、CX43は、造骨細胞の生存、増殖及び分化に必要であり、様々な骨形成マーカーの発現を向上させることができる。
【0051】
前記RUNX2は、骨細胞分化の主な調節子であり、骨芽細胞分化の初期表現形質であるアルカリホスファターゼ(ALP)と後期表現形質であるオステオカルシン(Osteocalcin、OCN)の発現を調節する重要な転写因子である。初期段階の骨芽細胞(osteo-progenitors、immature osteoblasts)は、RUNX2+であり、増殖能を有し、成熟した骨細胞に分化し、無機質化(mineralization)過程がさらに行われる。骨芽細胞は、一定期間は、細胞分裂が止まらない状態であり、分化が行われることにより分裂能を次第に失って骨細胞に分化するようになる(
図17a及び
図17b)。
【0052】
前記コラーゲンタイプ1A(COL1A1)は、骨芽細胞への分化時に特徴的に発現される骨形成マーカーである。
【0053】
前記オステリックス(OSX)は、骨細胞形成に関連した分化因子に該当する。OSXは、COL1A1プロモーター活性を高めることにより、骨マットレスの発現を増加させて造骨芽細胞が成熟した造骨細胞に分化するのに重要な役割を果たす。
【0054】
前記オステオカルシン(OCN)は、骨細胞形成に関連した分化因子に該当する。OCNは、骨芽細胞で形成された後に骨基質中に沈着し、その後、新たに形成されるものの一部は、血液内に放出されるので、血中濃度を測定すると、骨形成の程度が分かる。
【0055】
前記オステオポンチン(OPN)は、骨細胞形成に関連した分化因子であり、骨形成マーカータンパク質に該当する。
【0056】
本発明は、さらに前記方法で得られた骨芽細胞を含む骨疾患治療用細胞治療剤を提供しうる。
【0057】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記骨芽細胞は、コネキシン43(Connexin 43、CX43)、ランス2(Runt-related transcription factor 2、RUNX2)及びコラーゲンタイプ1A(Collagen type 1A1、COL1A1)の発現レベルが未分化幹細胞及び成熟した骨細胞に比べて高く、アンギオポイエチン(Angiopoietin 1、ANGPT1)及びアルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase、AP)の発現レベルが未分化幹細胞に比べて高く、オステリックス(Osterix、OSX)、オステオカルシン(Osteocalcin、OCN)及びオステオポンチン(Osteopontin、OPN)の発現レベルが成熟した骨細胞に比べて低いものであってもよい。
【0058】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記骨芽細胞は、Ki‐67の発現レベルが未分化幹細胞に比べて低いものであってもよい。
【0059】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記骨疾患は、骨折、大腿骨頭骨壊死、脊椎癒合、遅延癒合または不癒合、骨粗鬆症、骨壊死症、仮関節症、パジェット病及び骨形成不全症からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であってもよい。
【0060】
本発明は、さらに前記方法で得られた骨芽細胞を骨疾患患者に投与する段階を含む骨疾患治療方法を提供しうる。
【0061】
前記投与は、非経口投与であってもよく、前記骨芽細胞は、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療及び生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して投与されてもよい。
【発明の効果】
【0062】
本発明による分化方法は、間葉系幹細胞を骨芽細胞に安定的かつ迅速に分化させることができる。前記分化した骨芽細胞は、血管形成能に優れており、骨形成能に優れている。したがって、本発明による幹細胞を骨芽細胞に分化させる方法ないし前記方法で得られた骨芽細胞は、骨疾患に関連した細胞治療剤の用途としても効果的に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1は、本発明の臍帯由来骨芽細胞を分化及び得る工程を示す。
【
図2】
図2は、ポロキサマーバブルコーティング後、ポロキサマー溶液は除去し、多孔質膜上に残っているポロキサマーバブルが保持されているかどうかを7時間(0H~7H)観察した結果を示す。ポロキサマー溶液の除去後、2時間後(2H)にバブルが消えることが確認できた。
【
図3】
図3は、ポロキサマーバブルコーティング後、QD処理した細胞をロードしたものを蛍光顕微鏡3Dイメージで撮影した結果を示す。
【
図4】
図4は、界面活性剤の種類別の細胞毒性実験の結果を示す。CCK-8(cell counting kit-8)1日目の結果であるP407(ポロキサマー407)を除いた残りの界面活性剤(DIAPON K-SF及びTween-20)は、細胞に毒性を示すことが確認できた。
【
図5】
図5は、界面活性剤の種類別の細胞毒性実験の結果を示す。CCK-8(cell counting kit-8)1日から3日までの細胞増殖を確認した結果、P407(ポロキサマー407)を除いた残りの界面活性剤(DIAPON K-SF及びTween-20)は、細胞毒性で細胞が増殖しないことが確認できた。
【
図6】
図6は、界面活性剤の種類別の細胞毒性実験の結果を示す。CCK-8(cell counting kit-8)1日目の結果であるP407(ポロキサマー407)を除いた残りの界面活性剤(Methylprednisolone及びTween-20)は、細胞に毒性を示すことが確認できた。
【
図7】
図7は、界面活性剤の種類別の細胞毒性実験の結果を示す。CCK-8(cell counting kit-8)1日から3日までの細胞増殖を確認した結果、P407(ポロキサマー407)を除いた残りの界面活性剤(Methylprednisolone及びTween-20)は、細胞毒性で細胞が増殖しないことが確認できた。
【
図8】
図8は、未分化細胞またはゲル(Gel)状の界面活性剤から分化させた細胞に比べてバブル状(Bubble foam)の界面活性剤から分化させた細胞の遺伝子(COL1A)発現レベルが有意的に高いことを示す。
【
図9】
図9は、未分化細胞またはゲル(Gel)状の界面活性剤から分化させた細胞に比べてバブル状(Bubble foam)の界面活性剤から分化させた細胞のタンパク質(VEGF)発現レベルが有意的に高いことを示す。
【
図10】
図10は、未分化細胞(RCB001、RCB002、RCB005)に対して本発明の分化した細胞治療剤(RCB001‐DP1~RCB005‐DP5)の骨誘導遺伝子の発現レベルを比較した結果を示す。未分化細胞に対して本発明の細胞治療剤から分泌されるコネキシン43(Connexin 43、CX43)及びランス2(Runt-related transcription factor 2、RUNX2)の発現レベルが有意的に増加したことが確認できた。
【
図11】
図11は、未分化細胞(RCB005)に対して本発明の分化した細胞治療剤(RCB005‐DP1)の骨誘導遺伝子の発現レベルを骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)及び成熟した(mature)骨芽細胞(NHOst)と比較した結果を示す。前記骨芽細胞は、初期の骨芽細胞マーカーであるコネキシン43(Connexin 43、CX43)、ランス2(Runt-related transcription factor 2、RUNX2)及びコラーゲンタイプ1A(Collagen type 1A1、COL1A1)の発現レベルが未分化細胞及び成熟した骨芽細胞に比べて高く、オーステリック(Osterix、OSX)、オステオカルシン(Osteocalcin、OCN)及びオステオポンチン(Osteopontin、OPN)の発現レベルは、成熟した(mature)骨芽細胞(NHOst)に比べて低いことが確認できた。
【
図12】
図12は、骨形成マーカータンパク質と血管誘導マーカータンパク質が未分化細胞に対して本発明の分化した骨細胞治療剤において増加したことが確認できた。(A)は、COL1A1、(B)は、オステオポンチン(OPN)及び(C)は、アンジオポエチン(Angiopoietin)を意味する。
【
図13】
図13は、本発明の分化した細胞治療剤が解凍後、3日目ないし7日目後でも骨形成マーカータンパク質と血管誘導マーカータンパク質が維持されることを示す。(A)は、COL1A1、(B)は、オステオポンチン(OPN)及び(C)は、アンジオポエチン(Angiopoietin)を意味する。
【
図14】
図14は、本発明の臍帯由来骨芽細胞の血管内皮血管形成能を示す。血管新生誘導因子として知られているVEGF陽性対照群(Positive Control)程度に臍帯由来の原料細胞(Undifferentiation UCMSC)及び骨分化細胞治療剤(Osteogenic differentiation)による血管生成が誘導されることが確認でき、特に細胞治療剤により分泌されたタンパク質によって形成された血管は、より厚くて丈夫に形成されることが確認できた。
【
図15】
図15a及び
図15bは、本発明の細胞治療剤の大動物(ヤギ)に対する有効性の結果を示す。
【
図16】
図16は、本発明の細胞治療剤の小動物(ラット)に対する有効性の結果を示す。
【
図17】
図17a及び
図17bは、間葉系幹細胞から骨細胞への分化段階を示す。点線で示す領域が本発明の細胞治療剤の段階を意味する。
【
図18】
図18は、未分化UCMSC(原料)と分化した骨芽細胞(DP)の2バッチで細胞分裂能をKi‐67(細胞分裂の指標)で確認した結果を示す。一貫してKi-67発現がDPから1%以下に急激に減少することが確認でき、これはCF-M801が骨芽細胞モデルの初期段階の骨芽細胞であることを意味する。
【
図19】
図19a及び
図19bは、未分化幹細胞BMMSC、UCMSC(原料)と分化した骨芽細胞(DP)の2バッチを用いてCFU‐Fを測定した結果を示す。分化した骨芽細胞(DP、CF-M801)は、Ki-67(細胞分裂の指標)発現と類似したパターンでCFU-Fが減少することが確認できた。
【
図20】
図20は、未分化幹細胞UCMSC(原料)と分化した骨芽細胞(DP)の2バッチを用いてコロニー形成後、アルカリ性リン酸分解酵素(Alkaline Phosphatase)で染色して吸光度を測定した結果を示す。分化した骨芽細胞(DP)が作ったコロニーは、未分化細胞に比べてアルカリ性リン酸分解酵素が染色され、その吸光度値が増加したことから、この細胞治療剤が増殖して作ったコロニーは、骨芽細胞であることが確認できた。
【
図21】
図21a及び
図21bは、本発明の分化させた骨芽細胞(DP1~DP3)は、CD10を80%以上発現することに対し、未分化間葉系幹細胞は、CD10を15%以下で発現する。これは、本発明の骨芽細胞は、従来の幹細胞標識因子ではない骨芽細胞特異的な標識因子を確認し、純度を確認して管理していることを意味した。
【発明を実施するための形態】
【0064】
[実施例1]
臍帯由来幹細胞の分離及び収得
分離した臍帯からまず動脈と静脈血管を除去し、残った組織を細かく刻んで、AdiColTM(CEFO)と37℃で30分以上反応させた後、細胞を抽出した。抽出された細胞は、CEFOgroTM培地で37℃、5%CO2条件で培養し、間葉系幹細胞を確保した。
【0065】
[実施例2]
空気透過性ポリマー膜を界面活性剤バブルでコーティング
ハイパーフラスコの多孔質膜上でPBSに完全に溶かした8%ポロキサマー407(poloxamer 407)を振ってバブルを発生させた後、残ったポロキサマー溶液を注ぎ込んだ。2時間の間、37℃で空気透過性ポリマー膜をポロキサマーバブルでコーティングした。顕微鏡3Dイメージングを通じてポロキサマー407バブル発生後、溶液を除去してバブルが維持されているかどうかを観察した結果、2時間後(2H)にバブルが消え始め、5時間後(5H)には、バブルが完全に消えることが確認できた(
図2)。
【0066】
また、臍帯由来間葉系幹細胞を追跡できるように幹細胞にquantum dot-conjugated silica nanoparticle(QD)を24時間uptakeした。ポロキサマー407バブル発生後に溶液を除去し、細胞をloadingした後、顕微鏡Z-stackを用いて3Dでイメージ化した(
図3)。
【0067】
[実施例3]
骨芽細胞への分化及び培養
前記[実施例2]においてポロキサマーバブルでコーティングしてから2時間後、前記[実施例1]で得られた臍帯由来幹細胞を1×104個/cm2密度で接種し、DMEM及びFBSを含む培養液で24時間培養した。培養した幹細胞を骨分化培地で72時間骨芽細胞に分化させた。
【0068】
[実施例4]
空気透過性ポリマー膜コーティングに適した界面活性剤の選別
代表的な生体適合性界面活性剤として知られているポロキサマー(poloxamer 407、P407)、ココイルメチルタウリン(Sodium Methyl Cocoyl Taurate,DIAPON K-SF),ツイン20(polyoxyethylene sorbitan monolaurate、Tween 20)またはメチルプレドニゾロン(Methylprednisolone)の毒性を確認した。
【0069】
具体的には、3次元多孔質膜を含むトランスウェル(transwell)に上のチャンバー(chamber)には界面活性剤P407、DIAPON K-SFまたはTween 20をそれぞれ0、0.51、5または15%(v/v)でそれぞれ処理して前記[実施例2]と同様の方法で2時間コーティングした後、前記[実施例1]で得られた臍帯由来間葉系幹細胞を20,000cell/cm
2でseedingした。下のチャンバーには細胞増殖培地を入れて3日間培養した。1、2、3日目にCCK-8(Cat.CK04、DOJINDO)溶液を入れ、37℃CO
2incubatorで3時間反応後、450nmで吸光度を測定して細胞毒性(
図4)及び細胞増殖程度(
図5)を分析した。
【0070】
また、3次元多孔質膜を含むトランスウェル(transwell)に上のチャンバー(chamber)には界面活性剤P407、MethylprednisoloneまたはTween 20を4mM濃度で処理して前記[実施例2]と同様の方法で2時間コーティングした後、前記[実施例1]で得られた臍帯由来間葉系幹細胞を20,000cell/cm
2でseedingした。下のチャンバーには細胞増殖培地を入れて3日間培養した。1、2、3日目にCCK‐8溶液を入れ、37℃CO
2incubatorで3時間反応後、450nmで吸光度を測定して細胞毒性(
図6)及び細胞増殖程度(
図7)を分析する。
【0071】
その結果、[
図4]~[
図7]に示すように、P407を除いた残りのDIAPON K-SF、ツイン20及びメチルプレドニゾロンは、すべて細胞に毒性を示すことが確認できた。
【0072】
[実施例5]
界面活性剤コーティング方法の選別
ポロキサマー(poloxamer)をハイパーフラスコ多孔質膜上にバブルまたはゲル状でコーティングした後、[実施例3]の方法で分化させた臍帯由来幹細胞の骨分化の程度を比較した。
【0073】
具体的には、分化誘導された骨芽細胞と未分化細胞をそれぞれ捕集してTrizol
TMとクロロホルム(Sigma)を処理し、遠心分離で層分離してmRNAのみを得た。Transcriptor Universal cDNA Master Kit(Roche)を用いて得られたmRNAをcDNAで合成した。その後、COL1A1を対象としてRT-PCRを通じてDNAを増幅し、遺伝子レベルでのDNA copyー数の差を確認した。ポリメラーゼ連鎖反応条件は、95℃10秒、54℃10秒、72℃30秒で50cyclesであった(
図8)。
【0074】
また、前記[実施例3]の方法で製造及び分化誘導された骨芽細胞及び未分化細胞の培養液を捕集し、血管内皮細胞成長因子Vascular endothelial growth factor(VEGF)の分泌程度を酵素免疫分析法(Enzyme-linked immunosorbent assay,ELISA)を行った(
図9)。
【0075】
その結果、[
図8]及び[
図9]に示すように、未分化又はゲル状のポロキサマーから分化した細胞に比べて、本発明の方法で分化した細胞の骨誘導遺伝子及び血管形成誘導タンパク質の発現の程度が非常に優れていることが確認できた。
【0076】
[実施例6]
得られた骨芽細胞の骨形成能の評価
<6-1>骨芽細胞の骨形成能(遺伝子レベル)
骨芽細胞の分化過程で採取した骨芽細胞からRNAを分離してcDNAを合成した後、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Real Time-Polymerase Chain Reaction;RT-PCR)を用いて骨形成遺伝子マーカーであるランス2(Runt-related transcription factor 2、RUNX2)及びコネキシン43(Connexin 43、CX43)の遺伝子発現レベルを未分化細胞と比較した。
【0077】
具体的には、前記[実施例3]の方法で製造及び分化誘導された骨芽細胞と未分化細胞をそれぞれ捕集し、TrizolTMとクロロホルム(Sigma)を処理し、遠心分離を通じて層分離してmRNAのみを得た。Transcriptor Universal cDNA Master Kit(Roche)を用いて得られたmRNAをcDNAで合成した。その後、RUNX2、CX43を対象としてRT-PCRを通じてDNAを増幅し、遺伝子レベルでの発現量差を確認した。ポリメラーゼ連鎖反応条件は、95℃10秒、54℃10秒、72℃30秒で50サイクルであった。
【0078】
また、前記[実施例3]の方法で製造及び分化誘導された骨芽細胞、未分化細胞、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)及び成熟した骨細胞(NHOst)をそれぞれ捕集してmRNAを得て、Transcriptor Universal cDNA Master Kit(Roche)を用いて得られたmRNAをcDNAで合成した。その後、RUNX2、CX43、COL1Aを対象としてRT-PCRを通じてDNAを増幅し、遺伝子レベルでの発現量差を確認した。ポリメラーゼ連鎖反応条件は、95℃10秒、54℃10秒、72℃30秒で50cyclesであった。
【0079】
その結果、[
図10]及び[
図11]に示すように、本発明の骨芽細胞において、RUNX2、CX43又はCOL1Aが未分化幹細胞及び成熟した骨細胞(NHOst)に対して高く発現されることが確認できた。[
図10]において、RCB001、RCB002及びRCB005は、未分化細胞を意味し、RCB001‐DP1~RCB005‐DP5は、分化した本願発明の細胞治療剤を意味する。
【0080】
一方、OSX、OCNまたはOPNの場合、成熟した骨細胞(NHOst)において本発明の骨芽細胞よりも高く発現されたが、これは本発明の骨芽細胞がNHOstに比べて未成熟骨分化段階にあることを示す(
図11)。
図11において、RCB001、RCB002及びRCB005は、未分化細胞を意味し、RCB001‐DP1~RCB005‐DP5は、分化した本願発明の細胞治療剤を意味する。
【0081】
<6-2>骨芽細胞の骨形成能(タンパク質レベル)
前記[実施例3]の骨芽細胞分化過程で採取した培養液及び骨芽細胞において骨形成または血管形成タンパク質マーカーとして知られているコラーゲンタイプ1A(Collagen type 1A、COL1A)、オステオポンチン(Osteopontin)またはアンジオポエチン(Angiopoirtin、ANGPT-1)のタンパク質濃度の変化を確認した。さらに、凍結した本発明の細胞治療剤が解凍後にも骨形成タンパク質ないし血管誘導タンパク質を維持できるかどうかを確認した。
【0082】
具体的には、前記[実施例3]の方法で調製及び分化誘導された骨芽細胞、未分化細胞及び分化培養液をそれぞれ捕集し、酵素免疫分析法(Enzyme‐linked inmunosorbent assay、ELISA)を行った。COL1Aは、分化誘導された細胞と未分化細胞を採取して細胞を溶解させた細胞内のタンパク質発現変化の程度を確認し、オステオポンチン、アンジオポエチンは、分化72時間目までの培養液でタンパク質分泌の程度を確認した。
【0083】
その結果、[
図12]に示すように、前記本発明の骨芽細胞においてCOL1Aタンパク質の発現が増加し、オステオポンチン及びアンジオポエチンの分泌がすべて高く発現されることが確認できた。また、[
図13]に示すように、解凍後3日~7日まで経過しても本発明の細胞治療剤の骨形成タンパク質ないし血管誘導タンパク質が維持されることが確認できた。[
図12]及び[
図13]において、(A)はCOL1A1、(B)はオステオポンチン(OPN)及び(C)はアンジオポエチン(Angiopoietin)を意味する。
【0084】
[実施例7]
得られた骨芽細胞の血管形成能の評価
得られた骨芽細胞によって分泌される血管形成タンパク質によるヒト臍帯静脈内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cell,HUVEC)の血管形成能を確認した。
【0085】
具体的には、8.0μmpore sizeの多孔質膜が含まれた12wellトランスウェルプレート上には、未分化幹細胞または骨芽細胞を4×104cell/wellで接種し、培養中のHUVEC細胞を用いてquantum-dotを24時間uptakeさせた後、細胞を採取してトランスウェルの下に25,000/cm2密度で接種した。接種した後、1日間共培養してHUVECの血管チューブ形成分析実験を行った。各細胞は、12well plateにseeding後、transwellを用いて培地及び物質交換を発生させた後、12時間培養してHUVEC細胞の血管誘導を確認した。Transwellの上には骨分化細胞と未分化細胞を入れて比較した。陰性対照群は、コーティングされたMatrigelの上にHUVEC細胞のみを接種してVEGFのないHUVEC培地を用いて12時間培養したものであり、陽性対照群は、陰性対照群と同じ条件でVEGF20ng/mlを添加して培養したものである。
【0086】
その結果、[
図14]に示すように、血管新生誘導因子として知られているVEGF陽性対照群(Positive Control)と似たレベルで臍帯由来の原料細胞(Undifferentiation UC‐MSC)と骨細胞治療剤の共培養時にチューブ(tube)の形成が起こることを確認できた。また、骨分化細胞治療剤(Osteogenic differentiation)と共培養したとき、厚くて丈夫な血管が形成されることが確認でき、特に細胞治療剤によって分泌されたタンパク質によって形成された血管は、より厚くて丈夫に形成されることが確認できた。
【0087】
[実施例8]
得られた骨芽細胞の骨再生能の確認-in vivo
大動物(ヤギ)または小動物(ラット)モデルにおいて骨欠損を誘導した後、本発明の細胞治療剤の骨再生能を確認した。
【0088】
具体的には、免疫抑制させたヤギモデルにおいて大腿骨欠損を誘導した後、ヤギ1匹あたり1×107骨芽細胞を処理して26週間骨再生効果を確認した(表2)。また、ヤギモデルに対する有効性試験として骨組織を2ヶ月半脱灰し、H&E及びMasson’s Trichrome染色で本細胞治療剤の有効性に対する組織学的評価を行った。
【0089】
免疫抑制させたラットモデルの場合、橈骨欠損を誘導した後、ラット1匹あたり1×106骨芽細胞を処理して12週間の骨再生効果を確認した(表3)。Sham対照群は、アルジネートから構成されたスキャフォールドのみを処理した。骨再生の程度はμCTイメージによって確認し、骨組織固定、脱灰及びセクションしてスライドを作製し、染色後に新生骨再生を確認した。
【0090】
【0091】
【0092】
ヤギモデルに対する有効性試験の結果、[
図15a]及び[
図15b]に示したように、26週において雄と雌ともに、対照群のproximalとdistal部分の新生骨の形成が非常に不十分であり、部分的にのみ確認され、傷の治癒過程にあることが確認できた。一方、細胞投与群のproximalとdistalでは、欠損部位に細胞が詰まって増殖及び骨細胞に分化して新生骨柱が途切れることなく有機的によく連結されており、厚さもかなり厚くなったことが確認できた(
図15aの左下の白矢印)。血管も規則的によく形成されていることが分かった。13週目、26週目のいずれも新生骨の形成は、細胞投与群でのみ有意的に観察されることが確認できた。
【0093】
ラットモデルに対する有効性試験の結果、[
図16]に示すように、G3グループは、passage 7で2日分化させた細胞治療剤、G5グループは、passage 5で3日分化させた治療剤グループで、両グループとも対照群に比べて骨のボリューム、骨のボリューム密度、BMDなどが増加する傾向を示したが、特にpassage 5で3日分化させた治療剤グループの骨のボリュームがより有意的に増加したことが確認できた。
【0094】
[実施例9]
細胞治療剤の段階(Stage)確認
本発明の細胞治療剤の段階を確認した。
【0095】
<9-1>Ki-67の発現確認
ヒトKi-67は、細胞周期中に停止期(G0)には発現せず、増殖期(G1、S、G2、M期)に発現することが知られており、細胞治療剤は、骨細胞への分化後には細胞が増殖しないため発現しない。そこで、未分化UCSMC(原料)と本発明の分化した骨芽細胞(DP)の2バッチで細胞分裂能を細胞分裂の指標であるKi-67に対する発現程度を細胞免疫蛍光法(Immunocytochemistry,ICC)で確認し、核染色物質であるDAPIを染色して細胞数に対してKi‐67の発現程度に補正した。
【0096】
具体的には、slide plateを準備して各wellに3×105分量で未分化、分化細胞を接種した後、24時間CO2incubatorで培養した。4%ホルムアルデヒドで10分間常温で細胞を固定し、1%Triton X‐100で常温で10分間細胞をpermeabilizationした。BSAで常温で30分間blockingした後、Ki-671次抗体を常温で1時間、蛍光連結した2次抗体を光を遮光した後、常温で1時間反応させた。DAPIが含まれているProLongTM Gold Antifade Mountant(Invitrogen)を用いてmountingし、蛍光顕微鏡を用いて細胞を観察した。
【0097】
その結果、[
図18]に示すように、一貫してKi-67発現が骨芽細胞(DP)において1%以下に急激に減少することが確認できた。
【0098】
<9-2>CFU-F発現の確認
未分化幹細胞BMMSC、UCMSC(原料)と本発明の分化した骨芽細胞(DP)の2バッチを用いてCFU-Fを測定した。また、間葉系幹細胞は、体外培養を始めると、増殖を始めて特徴的な細胞集落を形成することが知られているが、集落内の細胞は、線維芽細胞のような形状を示し、それぞれの細胞集落をColony forming unit-fibroblastといい、これは幹細胞の重要な特徴として知られている。そこで、形成されたコロニーを2%crystal violet染色実施後、目視及びカメラ写真で観察し、染色されたコロニーを3mm以上、density 80%以上であることを計数することにより定量した。
【0099】
その結果、[
図19a]及び[
図19b]に示すように、分化した骨芽細胞(DP、CF-M801)は、Ki-67(細胞分裂の指標)発現と類似したパターンでCFU-Fが減少することを確認できた。また、骨髄由来幹細胞、臍帯由来幹細胞である原料細胞では、コロニーが多量に形成されたが、細胞治療剤では、コロニー形成がほとんどできないことを確認した。これにより、臍帯由来幹細胞原料細胞は、骨分化細胞に分化することにより、コロニー形成能を喪失したものと判断した。この結果から細胞治療剤は、原料細胞からほとんどが分化したことを確認した。
【0100】
<9-3>ALP発現の確認
細胞治療剤CF‐M801を用いたCFU‐Fにおいて平均1%未満で現れるコロニーを形成する細胞が未分化間葉系幹細胞であるか、骨分化誘導された細胞(Osteoblast)であるかを確認した。
【0101】
具体的には、前記実施例<9-2>においてCFU-Fと同様の方法で培養して現れるコロニーをALP(Alkaline Phosphatase)染色法で染色して骨分化の有無を確認した。10,000個の細胞を接種して1週間維持した後、ALP染色を行った。ALP染色後、Dimethylsulfoxideを反応させて染色を十分に溶かして上清液のみを採取した後、Microplate readerで吸光度を測定した。
【0102】
その結果、[
図20]に示すように、同種臍帯由来間葉系幹細胞である未分化UCMSCは、ALP染色が殆ど行われなかったが、骨分化誘導されたCF-M801は、互いに異なる3つのlotでコロニーがすべてALP陽性であることが確認できた。また、骨分化誘導されたCF-M801が未分化細胞に比べて高い吸光度を示した。これを相対値に変換して分析した結果、未分化UCMSCに対してすべての場合において1.5倍以上高い値を示した。結果として、分化した骨芽細胞(DP)は、一定期間は、細胞分裂が止まらない状態であり、分化が進むにつれて分裂能を次第に失い、骨細胞に分化することを確認した。
【0103】
総合的に、本発明の細胞治療剤は、骨細胞分化のmaster regulatorであるRUNX2が間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させることができる。初期段階の骨芽細胞(osteo-progeniotrs、immature osteoblasts)は、RUNX2+であり、増殖能を有し、成熟した骨細胞に分化し、mineralizationがさらに行われることが分かった(
図17a及び
図17b)。
【0104】
<9-4>CD-10発現の確認
細胞治療剤分化の確認のためにCD10に対する発現程度をフローサイトメトリー(Flowcytometry、FACS)及び細胞免疫蛍光法(Immunocytochemistry、ICC)により確認した。
【0105】
具体的には、前記[実施例3]の方法により製造及び分化誘導された骨芽細胞、未分化細胞及び骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)を2%BSA/DPBS溶液で細胞を浮遊させた。CD101次抗体を常温で1時間反応させ、ウォッシングした後にFITC蛍光が連結した2次抗体を常温で30分間反応させた。細胞をウォッシングした後、上清液を除去し、3.7%ホルムアルデヒドを入れて常温で20分間固定した後、フローサイトメトリー(BD Accuri C6 Plus)を用いてCD10の発現程度を確認した。
【0106】
ICCは、slide plateを準備し、各wellに3×105分量で未分化、分化細胞を接種した後、24時間CO2incubatorで培養した。4%ホルムアルデヒドで10分間常温で細胞を固定し、1%Triton X-100で常温で10分間細胞をpermeabilizationした。BSAで常温で30分間blockingした後、CD101次抗体を常温で1時間、FITC蛍光連結した2次抗体を光を遮光した後、常温で1時間反応させた。DAPIが含まれているProLongTM Gold Antifade Mountant(Invitrogen)を用いてmountingし、蛍光顕微鏡を用いて細胞を観察した。
【0107】
その結果、[
図21a]及び[
図21b]に示したように、本発明の分化させた骨芽細胞(DP1~DP3)は、CD10を80%以上発現することに対し、未分化間葉系幹細胞は、CD10を15%以下で発現することを確認できた。これは、本発明の骨芽細胞は、従来の幹細胞標識因子ではない骨芽細胞特異的な標識因子を確認し、純度を確認管理していることを意味した。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明による分化方法は、間葉系幹細胞を骨芽細胞に安定的かつ迅速に分化させることができる。前記分化した骨芽細胞は、血管形成能に優れており、骨形成能に優れている。したがって、本発明による幹細胞を骨芽細胞に分化させる方法ないし前記方法で得られた骨芽細胞は、骨疾患に関連した細胞治療剤ないし治療方法用途としても効果的に使用でき、産業上の利用可能性がある。